JP2005157119A - 反射防止光学素子及びこれを用いた光学系 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光学素子11の少なくとも1つ以上の光学面11aに、可視光波長よりも短い周期の微細凹凸周期構造12を備えてなる。微細凹凸周期構造12を備える光学面11aは、曲率を有する光学曲面であって、光学曲面の面頂から光学有効径位置までの光軸方向に沿う距離をDとし、該光学曲面の曲率半径をRとしたとき、 |R|/D<5 の関係にある。微細凹凸周期構造12を構成する材料と光学素子11を構成する材料との屈折率差が0.1以下となっている。
【選択図】 図4
Description
なお、真空蒸着法やスパッタリング法では、高価な真空装置を必要とし、単層膜の場合は1回、また多層膜の場合は複数回の成膜を行う必要がある。また、屈折率および膜厚を高精度に制御する必要があり、制御系に関しても高価な制御装置が要求される。
また、一般に、真空蒸着法やスパッタ法などで薄膜の反射防止膜をつける光学素子の光学面が曲率を持つ光学曲面の場合には、光学素子周辺部になるほど蒸着源に対する光学面の角度が大きくなる。このため、光学素子周辺部での膜厚が光学素子中心部に比較して薄くなり、光学素子面全体に均質な反射防止能が得られ難くなる。特に、曲率の強いレンズでは、レンズ周辺部での反射防止能が極度に低下し、このレンズを用いた光学系では周辺光量の低下を起してしまうという問題がある。
光学素子の用途により要求される反射防止効果は異なるが、一般に反射率が1%以下であれば、充分な反射防止効果が得られているといえる。
しかるに、画角が広い光学系における先端レンズでは、光の入射角が大きくなるため、反射防止効果が大きく低下し、このレンズを用いた光学系での入射光量が不足してしまうという問題がある。
また、CCDのような既に組み立てられたデバイスにおいては、真空蒸着法やスパッタ法を行う真空環境では、真空環境と素子内部との圧力差によりデバイスが破壊されるおそれがあるため、表面のカバーガラスなどへは真空蒸着法やスパッタ法による反射防止膜の形成ができないという問題がある。
しかるに、接合レンズのような積層された光学素子では、光の反射の原理から、積層する光学素子の屈折率に応じて、接合に用いる接着剤の屈折率を接合する光学素子の屈折率の中間にすることで、接合界面での光の反射を低減することは理論上では可能である。
しかしながら、屈折率の異なる光学素子の組合せのバリエーションは無数にある。その無数にあるバリエーションのそれぞれに対し、十分に光の反射を低減できる屈折率を持つように接着剤の種類を用意することは実際には困難である。このため、屈折率の異なる光学素子の組合せに対し、十分に光の反射を低減できないという課題がある。
反射防止の原理
まず、本発明の反射防止光学素子による反射防止の原理について説明する。図1は本発明の反射防止光学素子における微細凹凸周期構造の説明図、図2(a)〜(d)は本発明の反射光学素子における微細凹凸周期構造の凹凸形状の構成例をそれぞれ示す斜視図である。
本発明の反射防止光学素子は、光学素子の光学面に可視光波長λよりも短い周期の微細な凹凸を持つ構造体を形成して構成されている。なお、本発明における微細凹凸構造における凹凸は、側面がテーパ状に形成されている。
このため、本発明の反射防止光学素子によれば、微細凹凸の底部から上部にかけて屈折率を連続的に変化させることができ、従来の真空蒸着法やスパッタリング法で形成した反射防止膜を用いて屈折率が連続的に変化する層を構成した場合と同等の効果を持つことができる。
即ち、光の反射は、異なる屈折率を持つ材料の界面を光が透過する際に、屈折率差があるために生じる。本発明の反射防止光学素子における微細凹凸周期構造によれば、凹凸の底面から上面にかけて連続的に屈折率変化を与えることになるため、光反射が防止されるようになる。
θc=sin-1(n1/n2)
但し、n1、n2は、それぞれの材料の屈折率である。
上述のように、本発明の反射防止光学素子における微細凹凸周期構造では、屈折率が連続的に変化する層と同等の効果が得られるため、微細凹凸層は微視的な範囲では、n1≒n2となり、非常に大きな臨界角となる。このため、本発明の反射防止光学素子における微細凹凸周期構造によれば、光の入射角が大きくなっても良好な反射防止効果を得ることができる。
しかるに、本発明の反射防止光学素子における微細凹凸周期構造によれば、上述のように、広い光線入射角に対して、反射防止効果が得られるようになる。特に、光学曲面の面頂から光学有効径位置までの光軸方向に沿う距離をDとし、該光学曲面の曲率半径をRとしたとき(図3参照)、 |R|/D<5 の関係となる形状のレンズにおいては、従来用いられていた干渉作用を利用した反射防止膜に比べて、レンズ周辺部での反射防止能の低下が著しく抑制され、高性能な反射防止能が得られる。
しかるに、本発明の反射防止光学素子を用いて入射側第一面が微細凹凸周期構造を有するようにすれば、画角の広い光学系においても、十分な反射防止能が得られるようになる。
次に、本発明の反射防止光学素子における微細凹凸周期構造の形成方法について、説明する。
本発明の反射防止光学素子においては、どのような方法を用いて光学素子の光学面に微細凹凸周期構造を形成してもかまわない。
微細凹凸周期構造を形成する方法としては、例えば、形成しようとする微細凹凸周期構造とは逆の形状を持つ型を用いて、光学素子を成形すると同時に光学面に微細凹凸周期構造を成形する方法や、半導体製造技術の応用により光学素子の光学面を直接エッチングして、微細凹凸周期構造を形成する方法や、全体形状が完成している光学素子の光学面に別の成形、例えば、固化可能材料で層(膜)を形成して、形成しようとする微細凹凸周期構造とは逆の形状を持つ型を用いて、光学面に微細凹凸周期構造を成形し、層(膜)を固化する方法等があり、いずれの方法を用いても良い。なお、全体形状が完成している光学素子の光学面上に層を形成し、成形により微細凹凸周期構造を形成する場合、層の厚さは微細凹凸の高さH以上であればよく、この場合には層の底面の全面が光学面と接触することになって、密着性が高くなり、耐久性に優れる。
さらに望ましくは、光学素子を形成した材料と微細凹凸周期構造を形成した材料との屈折率差が、0.05以下であるのがよい。
実施例1の反射防止光学素子は、図4(a),(b)に示すように、プラスチックレンズ11の凸面11aに、円錐形状で断面が楔形形状の凹凸で、凹凸ピッチ150nm、凹凸の高さ150nmの微細凹凸周期構造12を備えて構成されている。
プラスチックレンズ11は、アモルファスシクロポリオレフィン樹脂の日本ゼオン製Zeonex480Rを射出成形により作製した。このレンズ11の凸面11aの曲率半径Rは8.50mm、凸面11aの面頂から光学有効径位置までの光軸方向に沿う距離Dは1.63mm、R/D=5.21、有効光路径(光学有効径ともいう)は10.0mmである。また、プラスチックレンズ11の成形に用いた型には、プラスチックレンズ11の凸面11aを成形するSUS製入れ子型に半導体リソグラフィー技術を応用して、パターンを形成し、原子線エッチングにより、図4(b)に示した形状とは逆の微細凹凸周期構造を形成したものを用いた。
プラスチックレンズ11の微細凹凸周期構造12が形成された面の反射率を測定したところ、図4(c)に示すように良好な反射防止効果が確認された。
本実施例で用いたZeonex480Rの屈折率ndは、1.52であり、図4(a)に示す凸面11aと同形状で且つ反射防止処置を行わない状態では、約4%の反射率となる。これに対し、本実施例では、可視光域での反射率が0.8%以下であって、反射防止処置を行わない状態と比較して、反射率を1/5以下にすることができ、充分な反射防止効果が得られた。また、成形の型(入れ子型)に微細凹凸周期構造(逆形状)を形成して、レンズを成形したため、微細凹凸周期構造を形成する材料とレンズ本体の材料は同一で屈折率差がなく、微細凹凸周期構造とレンズ本体の界面では反射しない。
実施例2の反射防止光学素子は、d線での屈折率(nd)が1.52のガラスレンズ21の凹面21aに、nd=1.53の紫外線硬化型透明樹脂(三菱レイヨン(株)製、ダイヤビームMP202)を用いて微細凹凸周期構造22を形成した複合光学レンズ23として構成されている。この凹面21aの曲率半径Rは35.0mm、凹面21aの面頂から光学有効径位置までの光軸方向に沿う距離Dは2.80mm、R/D=12.5、有効光路径(光学有効径ともいう)は27.4mmである。
微細凹凸周期構造22は、図5(b)に示すように、凹凸のピッチ200nm、凹凸の高さ250nmであって、円錐形状で凹凸の断面が楔状形状に形成されている。
複合光学レンズ23は、ガラスレンズ21の凹面21aに紫外線硬化型透明樹脂を所定量塗布し、ガラスレンズ21の凹面21aと同じ曲率半径を持つSUS製金型上に、実施例1と同様のリソグラフィー技術を応用した方法で、図5(b)に示した微細凹凸周期構造とは逆の形状を形成した金型を押し付け、金型とは反対の面から所定の紫外線照射手段を介して紫外線を照射して、上述の紫外線硬化型透明樹脂を硬化させた後、離型することで層厚さ2μmとして作製した。
実施例2の反射光学素子における微細凹凸周期構造22が形成された面は、光反射が抑制され、実施例1と同様に反射率が0.8%以下となって、良好な反射防止の結果が得られた。(実施例1と同様に)ガラス単体では、反射率が約4%であるのに対し、本実施例では、可視光での反射率を1%未満にすることができ、充分な反射防止効果が得られた。
図6(a)の例の反射防止光学素子に用いるガラスレンズ21’は、凹面21a’の面頂から光学有効径位置までの光軸方向に沿う距離Dが4.68mm、凹面21a’の曲率半径Rが20mm、|R|/D=4.3であり、曲率が比較的きついレンズに構成されている。
図6(a)に示すガラスレンズ21’の凹面21a’に対しても、図5に示したガラスレンズ21の凹面21aに対する微細凹凸周期構造22と同様に紫外線硬化型透明樹脂により微細凹凸周期構造を形成して実施例2の変形例にかかる反射防止光学素子を構成した。この微細周期構造における光入射角に対する反射特性は、図6(b)に示すようなものになった。一般に、屈折率nd=1.52のガラスレンズでは、臨界角が41°であるので、反射防止処理をしない場合で本実施例と同様の凹面を形成した場合には、著しい反射が起こってしまう。しかるに、本実施例の微細凹凸周期構造を設けたレンズ21の凹面21’aの最外径部は光軸に対し光入射角が40°の角度となっている。このため、図6(b)に示す反射特性から凹面21a’の最外径部においても、充分な反射防止効果が得られた。
実施例3の反射防止光学素子は、光学設計上での画角が130度の光学系における先端レンズとして配置されており、図7(a),(b)に示すように、入射側第一面となるガラスレンズ31の平面(又は曲率半径が∞に近い面)31aに、円錐形状で断面が楔形形状の凹凸で、凹凸ピッチ200nm、凹凸の高さ200nmの微細凹凸周期構造32を備えて構成されている。なお、ガラスレンズ31の第一面は平面31aであるので、 R/D≒∞ となる。
ガラスレンズ31の面31aにテトラメトキシシランとテトラプロポキシチタネートとが7:3の物質量比からなる溶液をスピンコート法により塗布した。次に、図7(b)に示した微細凹凸周期構造とは逆の形状を持つニッケル製金型を面(膜形成面)31aへ押し付けた後、100℃に加熱して、塗布されたテトラメトキシシランとテトラプロポキシチタネートを重縮合させて、離型し、ガラスレン31の面31aに微細凹凸周期構造を形成した。さらに大気中約400℃で2時間ほど加熱して、微細凹凸周期構造32を得た。この層全体の厚さは、0.4μmであった。
また、微細凹凸周期構造32を形成したテトラメトキシシランとテトラプロポキシチタネートとの混合物を焼結したものは、d線での屈折率が1.70であり、ガラスレンズ31の屈折率(nd=1.67)との屈折率差が0.1以下となるように設定した。
微細凹凸周期構造32が形成された面の光反射率の入射角依存性を評価した結果、微細凹凸構造を形成しない、即ち、反射防止処理を施していないガラスレンズ31では、屈折率より臨界角が37°となるのに対し、本実施例の微細凹凸周期構造32が形成されたガラスレンズ31では図7(c)に示すように光入射角が60°でも、十分な反射防止効果が得られた。
実施例4の反射防止光学素子は、図8(a)に示すように、屈折率nd≒1.47のガラスレンズ41と屈折率nd≒1.65のガラスレンズ42とを接着剤43により積層した積層レンズとして構成されている。この積層レンズにおける接合面の曲率半径Rは13.5mm、この接合面の面頂から光学有効径位置までの光軸方向に沿う距離Dは1.91mm、R/D=7.07、有効光路径(光学有効径ともいう)は13.85mmである。
ガラスレンズ41の積層界面側の光学面41aには、実施例3のテトラメトキシシランとテトラプロポキシチタネートの物質量比7:3混合物をテトラエトキシシランにおきかえて、実施例3と同様の方法により、図8(b)に示すように微細凹凸周期構造(ピッチ200nm、高さ200nm、層全体の厚さ0.4μm)を形成した。テトラエトキシシランの硬化時の屈折率nd≒1.44である。ガラスレンズ42の積層界面側の光学面42aには、実施例3と同様の微細凹凸周期構造の形成方法によりテトラメトキシシラン/テトラプロポキシチタネート(物質量比7:3であり、硬化時のd線の屈折率ndは1.70となる。)を用いて微細凹凸周期構造(ピッチ200nm、高さ200nm、層全体の厚さ0.3μm)を形成した。次に、ガラスレンズ41の積層界面側の光学面41aに紫外線硬化型の接着剤(ノーランド社製、ノーランド61、屈折率nd=1.52)43を所定量塗布し、上からガラスレンズ42を被せた後、所定の紫外線照射手段を介して紫外線を照射して接着剤43を硬化させ、積層レンズを作成した。このときは、接着剤層厚は約10μmである。本実施例においても、ガラスレンズ41,42上に形成した微細凹凸周期構造の材料は、基材となるガラスレンズ41,42の材料の屈折率とほぼ同じになるように設定した。
実施例4の接合レンズを図8(c)に示すような8群10枚構成のカメラの撮像光学系の6群目に組み込んで評価したところ、フレア、ゴーストの発生はなく良好な結果が得られた。一方、微細凹凸周期構造を形成しない場合では、若干のゴーストが見られた。
実施例5の反射防止光学素子は、図9(a),(b)に示すように、固体撮像素子であるCCD51のカバーガラス52である光学素子上に紫外線硬化型樹脂54により微細凹凸周期構造53を形成して構成されている。この光学素子として用いたカバーガラス52の光入射面側は平面であり、R/D≒∞となる。
微細凹凸周期構造53は、図9(c)に示すように、凹凸ピッチ150nm、凹凸の高さ155nmの楔形形状を有し、凸部は円錐形状となっている。
実施例5の反射防止光学素子の具体的な製造は、次のようにして行った。
図9(a)に示すように、CCD51のカバーガラス52上に、紫外線硬化型樹脂54を所定量塗布し、図9(c)に示した微細凹凸周期構造とは逆の形状を有しているガラス型55をその紫外線硬化型樹脂54の上から押し付け、ガラス型55の上方から所定の紫外線照射手段を介して紫外線を照射して、紫外線硬化型樹脂54を硬化させた後、離型した。紫外線硬化型樹脂層全体の厚さは3μmであった。ガラス型55は、ガラス基材へリソグラフィー技術を応用してパターン形成し、原子線エッチングにより図9(c)の微細凹凸周期構造とは逆の形状を形成したものを用いた。また、紫外線硬化型樹脂54は、アクリレート系の屈折率1.50のものを用いた。また、カバーガラス52(屈折率nd≒1.52)と紫外線硬化型樹脂54との屈折率差が、0.1以下となるようにした。
実施例5の反射防止光学素子によれば、CCD51のカバーガラス表面の反射は大幅に低減され、可視域での反射率が1%未満であって、良好な結果が得られた。また、常温常圧下で作製処理を行うことができたため、CCD51にはまったくダメージを与えなかった。
11a 凸面
12,22,32,53 微細凹凸周期構造
21,21’,31,41,42 ガラスレンズ
21a,21a’ 凹面
23 複合光学レンズ
31a 平面(又は曲率半径が∞に近い面)
43 接着剤
51 CCD
52 カバーガラス
54 紫外線硬化型樹脂
55 ガラス型
Claims (6)
- 光学素子の少なくとも1つ以上の光学面に、可視光波長よりも短い周期の微細凹凸周期構造を備えてなることを特徴とする反射防止光学素子。
- 前記光学面は、曲率を有する光学曲面であって、光学曲面の面頂から光学有効径位置までの光軸方向に沿う距離をDとし、該光学曲面の曲率半径をRとしたとき、 |R|/D<5 の関係にある前記光学素子の光学曲面に、前記微細凹凸周期構造を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の反射防止光学素子。
- 前記反射防止光学素子が、少なくとも2層以上に積層された積層レンズであって、該積層レンズにおける少なくとも1つ以上の積層界面に、前記微細凹凸周期構造を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の反射防止光学素子。
- 前記微細凹凸周期構造を構成する材料と前記光学素子を構成する材料との屈折率差が0.1以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止光学素子。
- 前記光学素子は、撮像素子上に配置される光学素子であって、その入射面側に前記微細凹凸周期構造を備えてなることを特徴とする請求項1に記載の反射防止光学素子。
- 画角が80〜150度の光学系であって、入射側第一面が微細凹凸周期構造を備えた光学面となるように請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止光学素子を備えたことを特徴とする光学系。
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