JP7334659B2 - セメント組成物及びセメント組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
<1>クリンカと、フライアッシュと、石灰石とを含み、前記クリンカ中のSO3含有量が、0.5質量%以上であり、前記フライアッシュの含有量が、10質量%以上18質量%以下であり、前記石灰石の含有量が、1質量%以上5質量%以下である、セメント組成物。
<2>前記フライアッシュ及び前記石灰石の合計含有量が、11質量%以上17質量%以下である、<1>に記載のセメント組成物。
<3>前記クリンカ中の前記SO3含有量が、1.0質量%以上である、<2>に記載のセメント組成物。
<4>フライアッシュの含有量が10質量%以上18質量%以下、かつ、石灰石の含有量が1質量%以上5質量%以下となるように、SO3含有量が0.5質量%以上のクリンカと、前記フライアッシュと、前記石灰石とを混合する工程を含むセメント組成物の製造方法。
本発明のセメント組成物は、クリンカと、フライアッシュと、石灰石とを含み、前記クリンカ中のSO3含有量が、0.5質量%以上であり、前記フライアッシュの含有量が、10質量%以上18質量%以下であり、前記石灰石の含有量が、1質量%以上5質量%以下である。すなわち、本発明のセメント組成物は、SO3含有量が比較的高いクリンカと、少量混合成分として特定量のフライアッシュ及び石灰石を含むものであり、これにより自己収縮を抑制し得る。
具体的に、本発明のセメント組成物は、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメントである。
以下で、上記セメント組成物の各成分について説明する。
本発明のセメント組成物に使用されるクリンカは、JIS R 5210:2009「ポルトランドセメント」に規定されている品質を満たし、かつ、SO3含有量0.5質量%以上であれば特に限定されるものではない。SO3含有量が0.5質量%未満であると、モルタルやコンクリートとしたときの自己収縮が大きくなる。自己収縮をより効果的に抑制するとの観点から、クリンカ中のSO3含有量は、0.6質量%以上であることがより好ましく、0.7質量%以上であることが更に好ましく、1.0質量%以上であることが特に好ましい。なお、クリンカ中のSO3含有量は、JIS R 5210:2009「ポルトランドセメント」に規定されているSO3含有量の上限を超えない範囲とする。例えば、クリンカ中のSO3含有量は、1.5質量%以下、好ましくは1.2質量%以下とする。
本発明のセメント組成物は、少量混合成分としてフライアッシュ及び石灰石の両方を含むことを要件とする。本発明者の検討の結果、フライアッシュ及び石灰石のいずれか一方のみを含んでも自己収縮抑制への効果が低いことが判明した。更に、フライアッシュ及び石灰石の含有量が所定の範囲である場合に、自己収縮の抑制に特に効果があることが判明した。
フライアッシュ及び石灰石について、以下で詳細に説明する。
本発明のセメント組成物では、少量混合成分の一つとしてフライアッシュを含む。フライアッシュを用いることにより、モルタルやコンクリートとしたときの自己収縮を抑制するとともに、廃棄物利用の観点から環境負荷を低減することができる。
フライアッシュのブレーン比表面積は、好ましくは2500cm2/g以上であり、より好ましくは2500~4200cm2/gであり、更に好ましくは2500~3800cm2/gである。上記範囲であると、セメント組成物とした場合の自己収縮を充分に抑制できると同時に、混練時の流動性を良好な範囲にすることができる。
なお、フライアッシュのブレーン比表面積はJIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法、8 粉末度試験、8.1 比表面積試験」に記載の方法に従って測定した比表面積の数値をいう。
なお、フライアッシュの強熱減量は、JIS A 6201:2015「コンクリート用フライアッシュ」に従って測定した数値をいう。
本発明のセメント組成物では、少量混合成分の一つとして石灰石を含む。石灰石をフラアッシュと併用したときに、モルタルやコンクリートとしたときの自己収縮を抑制することができる。
なお、石灰石のブレーン比表面積はJIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法、8 粉末度試験、8.1 比表面積試験」に記載の方法に従って測定した比表面積の数値をいう。
セメント組成物は、JIS R 5210:2009「ポルトランドセメント」の規格を満足し、本発明の効果を妨げない範囲で、上記以外のその他の成分を含むことができる。
その他の成分としては、例えば、石膏、シリカ質混合材、高炉スラグ、粉砕助剤、が挙げられる。
また、本発明において、ベースセメント中のSO3含有量は、1.8質量%以上であることが好ましい。ベースセメントのブレーン比表面積は3000cm2/g以上3400cm2/g以下であることが好ましく、3100cm2/g以上3300cm2/g以下がより好ましい。
本発明のセメント組成物の製造方法は、フライアッシュの含有量が10質量%以上18質量%以下、かつ、石灰石の含有量が1質量%以上5質量%以下となるように、SO3含有量が0.5質量%以上のクリンカと、前記フライアッシュと、前記石灰石とを混合する工程を含む。
混合手段としては、ボールミル、容器回転型混合機(水平円筒型混合機,V型混合機,二重円錐型混合機等)、容器固定型混合機(機械的攪拌型混合機,気流攪拌型混合機等)などが挙げられる。
(1)まず、クリンカ、石灰石、及び、石膏を、所定のブレーン比表面積となるように粉砕混合する。その後、該混合物に所定量のフライアッシュを混合して、セメント組成物を調製する。
(2)まず、クリンカ及び石膏を、所定のブレーン比表面積となるように粉砕混合してクリンカ混合物を製造する。別途、石灰石を所定のブレーン比表面積となるように粉砕する。その後、クリンカ混合物に所定量のフライアッシュ及び石灰石を混合して、セメント組成物を調製する。
(3)クリンカ、フライアッシュ、石灰石、及び、石膏を一度に粉砕機に投入し、所定のブレーン比表面積となるように粉砕混合して、セメント組成物を調製する。
(4)各成分を、所定のブレーン比表面積となるように別個に粉砕する。その後、所定の配合比となるように、各成分を混合手段で混合し、セメント組成物を調製する。
以下の実施例及び比較例では、以下の材料を使用した。
(1)クリンカ
普通ポルトランドセメントクリンカ:実機プラントで製造されたもの3種類。化学組成を表1に示す。
(2)フライアッシュ
火力発電所由来の石炭灰(JIS A 6201:2015 フライアッシュII種相当、密度2.2g/cm3、ブレーン比表面積3620cm2/g)。
(3)石灰石
関東化学株式会社製 鹿1級試薬 炭酸カルシウム(密度2.9g/cm3、ブレーン比表面積9760cm2/g)。
(4)石膏
半水石膏、火力発電所で得られる排脱石膏を120℃で保持した後、粉砕されたもの(ブレーン比表面積12900cm2/g)。石膏中のSO3量は、JIS R 5202:2015「セメントの化学分析法」に従って測定した。
クリンカの化学組成、セメント組成物中の各材料の密度、ブレーン比表面積は、下記の条件で測定した。
クリンカの化学組成は、JIS R 5204:2019「セメントの蛍光X線分析方法」に準じて蛍光X線測定装置(PRIMUS IV、株式会社リガク製)を用いて、ガラスビード法にて成分分析を行った。
密度の測定は、ガス置換型真密度測定装置(ULTRAPYCNOMETER1000、QUANTACHROME INSTRUMENTS製)を用いて、窒素ガス置換により行った。
ブレーン比表面積の測定は、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」に準じて行った。
試料番号1~3のクリンカに、表2に示すSO3配合量となる半水石膏と、更に粉砕助剤(ジエチレングリコール、200ppm)を添加し、ボールミルで粉砕を行い、ブレーン比表面積が3200±200cm2/gとなるようにベースセメントを作製した。表2に、作製した各ベースセメントについて、クリンカ、石膏、ベースセメント中の各SO3含有量、及び、ブレーン比表面積を示す。ベースセメント中のSO3含有量は、クリンカ中のSO3含有量と石膏中のSO3含有量の合計とした。
モルタル供試体の配合は、細骨材/セメント比が質量比で1、減水剤/セメント比は1.2質量%、(水+減水剤)/セメント比は35質量%とした。細骨材として、一般社団法人セメント協会製のセメント強さ試験用標準砂を使用した。減水剤として、BASFジャパン株式会社製のポリカルボン酸エーテル系高性能AE減水剤 マスターグレニウム SP8SBSを使用した。
モルタルの混錬手順は、JIS R 5201:2015に準拠した。
上記テフロンシート製内部型枠内に、混練直後のフレッシュモルタルを投入し、内部型枠の上面を、テフロンシート蓋部と養生テープによって封止処理を行い、材齢24時間までの水分の逸散を防止した。歪みゲージの固定に用いた糸は、モルタルの凝結の始発開始後に切断して開放し、歪みゲージの伸縮の妨げとならないようにした。
材齢24時間で、木製型枠から脱型し、継ぎ目箇所をブチルゴム系のテープにて封止し、供試体全体をアルミニウム箔粘着テープで封止し、更にビニール袋内に供試体を封止した。なお、歪みゲージの測定用ケーブルのみ、ビニール袋外に配した。
上記構成として、打ち込み後28日目での自己収縮ひずみ(μ)の計測を行った。
参考例の配合のポルトランドセメント(クリンカ中のSO3含有量:0.72質量%、石膏中のSO3含有量:1.28質量%、フライアッシュ及び石灰石の添加量:0質量%)を用いた供試体の材齢28日における自己収縮ひずみを基準値として、該基準値からの差([参考例の自己収縮ひずみ]-[実施例及び比較例の各自己収縮ひずみ])を算出した。結果を表3に示す。本実施例では、材齢28日において基準値からの差が-100μ~0μである場合を合格と評価した。
比較例7,8に示すように、フライアッシュの含有量を10~18質量%としても、石灰石を配合しない場合には、自己収縮が大きくなることが判明した。
また、フライアッシュ及び石灰石の含有量がそれぞれ範囲外である場合(比較例9~15)も、自己収縮抑制に効果がないことが判明した。
Claims (2)
- クリンカと、フライアッシュと、石灰石とを含み、
前記クリンカ中のSO3含有量が、1.0質量%以上であり、
前記フライアッシュの含有量が、10質量%以上18質量%以下であり、
前記石灰石の含有量が、1質量%以上5質量%以下であり、
前記フライアッシュ及び前記石灰石の合計含有量が、11質量%以上17質量%以下であり、
前記フライアッシュ及び前記石灰石の合計含有量に対する前記フライアッシュの含有率が0.82以上である、セメント組成物。 - フライアッシュの含有量が10質量%以上18質量%以下、石灰石の含有量が1質量%以上5質量%以下、前記フライアッシュ及び前記石灰石の合計含有量が、11質量%以上17質量%以下、かつ前記フライアッシュ及び前記石灰石の合計含有量に対する前記フライアッシュの含有率が0.82以上となるように、SO3含有量が1.0質量%以上のクリンカと、前記フライアッシュと、前記石灰石とを混合する工程を含むセメント組成物の製造方法。
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