JP2020164388A - セメント組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、非特許文献1では、高炉セメント等の混合セメント系において、混合材の使用量を増加させる取り組みがなされている。
その際懸念される物性として、圧縮強さと、低水セメント比配合での自己収縮が挙げられる。
[1] ポルトランドセメント、フライアッシュ及び沈降性シリカを含み、
前記フライアッシュの含有量及び前記沈降性シリカの含有量の合計が、5質量%超10質量%以下であり、
前記フライアッシュの含有量が前記沈降性シリカの含有量以上である、セメント組成物。
[2] 前記沈降性シリカのブレーン比表面積が、4,000cm2/g以上20,000cm2/g未満である、上記[1]に記載のセメント組成物。
[3] 前記沈降性シリカの含有量(SI)に対する前記フライアッシュの含有量(FA)の比(FA/SI)が、1.0〜9.0である、上記[1]又は[2]に記載のセメント組成物。
例えば、少量混合成分としてこれまで主に用いられてきた石灰石を用いる場合、その添加量を増加させると、圧縮強さは優れるものの、自己収縮が大幅に増大する問題があった。一方で、少量混合成分として、石灰石に替えてフライアッシュを用いると、自己収縮は低減されるが、添加量の増加に伴い、圧縮強さが低下する問題があった。
本発明において、構成成分としての「ポルトランドセメント」とは、JIS R5210:2009「ポルトランドセメント」の規格を満足する、ポルトランドセメントクリンカーと石膏とからなるものを示す。したがって、単に「ポルトランドセメント」と表記した場合は、少量混合成分を含まないものを指す。なお、本発明において、更に少量混合成分を含む場合は、「セメント組成物」と表記して区別するものとする。
本発明のセメント組成物では、少量混合成分の一つとしてフライアッシュを用いることにより、廃棄物利用の観点から環境負荷を低減でき、更に自己収縮の抑制効果も期待できる。
フライアッシュとしては、JIS A 6201:2015「コンクリート用フライアッシュ」に規定されるもののフライアッシュI種およびフライアッシュII種が挙げられる。特に、フライアッシュII種に相当するものがより好ましい。
なお、フライアッシュのブレーン比表面積はJIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法、8 粉末度試験、8.1比表面積試験」に記載の方法に従って測定した比表面積の数値をいう。
なお、フライアッシュの未燃炭素含有量は、JIS M8819:1997「石炭類及びコークス類−機器分析装置による元素分析方法」に従って測定した数値をいう。
本発明のセメント組成物では、少量混合成分の一つとして沈降性シリカをフライアッシュと共に用いることにより、自己収縮を抑制しつつ圧縮強さの向上効果が期待できる。
沈降性シリカは、特に限定されるものではないが、比表面積及び平均粒径の観点からはシリカフュームとは明確に区別されるものである。
また、沈降性シリカとしては、SiO2含有量が60質量%以上のものが好ましい。
なお、沈降性シリカのブレーン比表面積はJIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法、8 粉末度試験、8.1比表面積試験」に記載の方法に従って測定した比表面積の数値をいう。
なお、平均粒径(MV)は、実施例に記載の粒度分布の測定に従って測定した平均粒径の数値をいう。
セメント組成物は、JIS R5210:2009「ポルトランドセメント」の規格を満足し、本発明の効果を妨げない範囲で、上記以外のその他の成分を含むことができる。
その他の成分としては、例えば、石灰石、高炉スラグが挙げられる。
本発明のセメント組成物を用いたモルタルやコンクリートは、環境負荷を低減しつつ、高強度で、自己収縮を抑制できる。
・普通ポルトランドセメントクリンカー:実機プラントで製造され、粉砕されたもの(ブレーン比表面積3260cm2/g、平均粒径(MV)20.6μm、メジアン径(D50)17.8μm、化学組成は表1に示す。)
・半水石膏:火力発電所で得られる排脱石膏を120℃で保持した後、粉砕されたもの(ブレーン比表面積12900cm2/g)。
・フライアッシュ:火力発電所由来の石炭灰(JIS A6201:2015 フライアッシュII種相当、密度2.2g/cm3、ブレーン比表面積3620cm2/g、平均粒径(MV)31.7μm、メジアン径(D50)22.8μm)
・沈降性シリカ:関東化学株式会社 試薬 特級沈降性シリカ(密度2.2g/cm3、ブレーン比表面積17600cm2/g、平均粒径(MV)73.0μm、メジアン径(D50)51.4μm)
・石灰石:関東化学株式会社製 鹿1級試薬 炭酸カルシウム(密度2.9g/cm3、ブレーン比表面積9760cm2/g、平均粒径(MV)6.4μm、メジアン径(D50)5.4μm)
セメントクリンカーの化学組成は、JIS R5204:2002「セメントの蛍光X線分析方法」に準じて蛍光X線測定装置(PRIMUS II、株式会社リガク製)を用いて、ガラスビード法にて成分分析を行った。
密度の測定は、ガス置換型真密度測定装置(ULTRAPYCNOMETER1000、QUANTACHROME INSTRUMENTS製)を用いて、窒素ガス置換により行った。
ブレーン比表面積の測定は、JIS R5201:2015「セメントの物理試験方法」に準じて行った。
粒度分布の測定は、レーザー回折・散乱式 粒子径分布測定装置(MT−3000、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて、エタノール中への分散による湿式法で行った。
普通ポルトランドセメントクリンカーと、半水石膏とを、その混合物中のSO3の含有量が1.9質量%となるようにそれぞれ配合して、ポルトランドセメントを得た。
上記製造例で作製したポルトランドセメントと、フライアッシュ、沈降性シリカ及び石灰石のいずれか1種以上とを、表2に示す配合比率で配合して、セメント組成物を得た。
上記実施例及び比較例に係るセメント組成物と、リファレンス(参考例)として添加成分無配合の、上記製造例で作製したポルトランドセメントについて、下記に示す特性評価を行った。各特性の評価条件は下記の通りである。結果を表2に示す。
圧縮強さは、JIS R 5201:2009「セメントの物理試験方法」に準拠し、モルタル供試体を作製し、耐圧試験機を用いて、材齢7日及び28日の圧縮強さを測定し、評価した。本実施例では、材齢28日において60N/mm2以上を合格と評価した。
自己収縮は、実験室温度20℃、湿度60%の環境下で下記の条件で作製したモルタル供試体中に、温度測定機能付き歪みゲージを埋め込んで、材齢3日、7日、14日、21日及び28日の自己収縮ひずみを測定し、下記の評価基準にて評価した。
まず、継ぎ目箇所にビニールテープを用いて漏水対策処置を行った蓋部付きのテフロンシート製の内部型枠(40mm×40mm×160mm)を、木製の外部型枠内に設置し、糸を用いて、歪みゲージが供試体中心に水平配置されるよう固定した。その際、固定に用いた糸の端部は、テフロンシート製内部型枠、木製外部型枠に設けた穴を通じて、型枠外まで通され、養生テープにて固定した。
自己収縮を評価するモルタル配合は、細骨材/セメント比が質量比で1とし、減水剤/セメント比は1.2質量%とし、(水+減水剤)/セメント比は35質量%とした。なお、細骨材は一般社団法人セメント協会製のセメント強さ試験用標準砂を使用し、減水剤はBASFジャパン株式会社製のポリカルボン酸エーテル系高性能AE減水剤 マスターグレニウムSP8SBSを使用した。
モルタルの混錬手順は、上記JIS R 5201:2009に準拠した。
上記テフロンシート製内部型枠内に、混練直後のフレッシュモルタルを投入し、内部型枠の上面を、テフロンシート蓋部と養生テープによって封止処理を行い、材齢24時間までの水分の逸散を防止した。歪みゲージの固定に用いた糸は、モルタルの凝結の始発開始後に切断して開放し、歪みゲージの伸縮の妨げとならないようにした。
材齢24時間で、木製型枠から脱型し、継ぎ目箇所をブチルゴム系のテープにて封止し、供試体全体をアルミニウム箔粘着テープで封止し、更にビニール袋内に供試体を封止した。なお、歪みゲージの測定用ケーブルのみ、ビニール袋外に配した。
上記構成として、自己収縮ひずみ(μ)の計測を、打ち込み後28日目まで行った。
なお、自己収縮の評価は、添加成分無配合のポルトランドセメント(参考例)を用いた供試体の各材齢における自己収縮ひずみを基準値として、該基準値からの差([参考例の自己収縮ひずみ]−[実施例及び比較例の各自己収縮ひずみ])を算出して評価した。本実施例では、材齢28日において基準値からの差が−90μ〜0μである場合を合格と評価した。
一方、セメント組成物においてポルトランドセメントにフライアッシュのみを配合した場合には、自己収縮は効果的に抑制できるが、圧縮強さが低下することが確認された(比較例2)。
また、セメント組成物においてポルトランドセメントに沈降性シリカのみを配合した場合も、自己収縮が大幅に増加することが確認された(比較例4)。
Claims (3)
- ポルトランドセメント、フライアッシュ及び沈降性シリカを含み、
前記フライアッシュの含有量及び前記沈降性シリカの含有量の合計が、5質量%超10質量%以下であり、
前記フライアッシュの含有量が前記沈降性シリカの含有量以上である、セメント組成物。 - 前記沈降性シリカのブレーン比表面積が、4,000cm2/g以上20,000cm2/g未満である、請求項1に記載のセメント組成物。
- 前記沈降性シリカの含有量(SI)に対する前記フライアッシュの含有量(FA)の比(FA/SI)が、1.0〜9.0である、請求項1又は2に記載のセメント組成物。
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