JP2020164388A - セメント組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、少量混合成分の含有量が増えても、圧縮強さを良好に維持しつつ、自己収縮を抑制し得るセメント組成物を提供することを目的とする。【解決手段】ポルトランドセメント、フライアッシュ及び沈降性シリカを含み、前記フライアッシュの含有量及び前記沈降性シリカの含有量の合計が、5質量%超10質量%以下であり、前記フライアッシュの含有量が前記沈降性シリカの含有量以上である、セメント組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、セメント組成物に関する。
従来から、環境負荷を低減し、また製造に係るコストを削減することを目的として、セメント原料には、廃棄物由来のものが一定量利用されている。これらの廃棄物の種類は多岐に渡り、環境負荷の低減という観点からは、セメント産業の貢献は極めて大きいと言える。
しかし、セメント原料において、上記のような廃棄物を利用するにあたっては、上記廃棄物等を高温で焼成して得られるセメントクリンカーとして利用することが大部分であり、このようなセメントクリンカーの製造では、二酸化炭素の排出を伴う。
そのため、セメント産業から排出される二酸化炭素を低減する観点では、セメントクリンカーの使用量を低減すること(省クリンカー)が、有効な対策の一つとして着目されている。
例えば、非特許文献1では、高炉セメント等の混合セメント系において、混合材の使用量を増加させる取り組みがなされている。
混合セメントにおいて、セメントクリンカーの使用量を低減する方策として、混合材の使用量の増加させることは極めて有効であるが、日本国内ではポルトランドセメントの需要が高く、とりわけ普通ポルトランドセメントの出荷量が国内セメント出荷量の7割近くを占めるため、混合セメントの製造による二酸化炭素排出量の低減効果は、セメント業界全体への寄与としては、やや限定的なものとなっている。
そのため、今後、セメント業界全体での二酸化炭素の排出量の低減が求められた場合には、特に汎用品として利用される普通ポルトランドセメントに対しての取り組みが必要となると考えられる。
現在のJIS R5210:2009「ポルトランドセメント」の規格上では、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント及び超早強ポルトランドセメントでは、セメントクリンカー及び石膏以外に、少量混合成分として石灰石、高炉スラグ、フライアッシュ(I種またはII種)及びシリカ質混合材を、これらの合計量で5質量%を上限として添加することが許されている。
仮に、今後、省クリンカーを目的として、上記JIS規格の少量混合成分の添加量の上限が緩和され、現状の5質量%から10質量%に添加量が拡大された場合には、更にセメントクリンカー使用量を最大で3.5質量%程度削減することが可能となることが予想される。
そして、上記のように少量混合成分の添加量の上限が緩和された場合、増量して使用される少量混合成分としては、現在主に用いられている石灰石ではなく、他の産業から排出される廃棄物である高炉スラグや、フライアッシュ等を、焼成を経ずに、積極的に利用することが、更なる環境負荷の低減の観点では望まれる。
坂井悦郎、他、「初期水和性状を考慮した高炉スラグ高含有セメントの材料設計」、Cement Science and ConcreteTechnology,No.65,2011
しかし、普通ポルトランドセメントは、その使用用途も多岐に渡るため、少量混合成分の添加量の上限が大きくなる場合、少量成分無添加の製品との物性差が拡大する恐れがある。
その際懸念される物性として、圧縮強さと、低水セメント比配合での自己収縮が挙げられる。
そこで本発明は、少量混合成分の含有量が増えても、圧縮強さを良好に維持でき、自己収縮を抑制し得るセメント組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意検討した結果、ポルトランドセメント、フライアッシュ及び沈降性シリカを含み、前記フライアッシュの含有量及び前記沈降性シリカの含有量の合計が、5質量%超10質量%以下であり、前記フライアッシュの含有量が前記沈降性シリカの含有量以上であることにより、少量混合成分の含有量が増えても、圧縮強さを良好に維持でき、自己収縮を抑制し得るセメント組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨構成は、以下のとおりである。
[1] ポルトランドセメント、フライアッシュ及び沈降性シリカを含み、
前記フライアッシュの含有量及び前記沈降性シリカの含有量の合計が、5質量%超10質量%以下であり、
前記フライアッシュの含有量が前記沈降性シリカの含有量以上である、セメント組成物。
[2] 前記沈降性シリカのブレーン比表面積が、4,000cm/g以上20,000cm/g未満である、上記[1]に記載のセメント組成物。
[3] 前記沈降性シリカの含有量(SI)に対する前記フライアッシュの含有量(FA)の比(FA/SI)が、1.0〜9.0である、上記[1]又は[2]に記載のセメント組成物。
本発明によれば、今後、省クリンカーを目的として、JIS規格の少量混合成分の添加量の上限が緩和され、現状の5質量%から10質量%に添加量が拡大された場合でも、圧縮強さを良好に維持でき、自己収縮を抑制し得るセメント組成物を提供することができる。
本発明に従うセメント組成物の実施形態について、以下で詳細に説明する。
本発明のセメント組成物は、ポルトランドセメント、フライアッシュ及び沈降性シリカを含み、前記フライアッシュの含有量及び前記沈降性シリカの含有量の合計が、5質量%超10質量%以下であり、前記フライアッシュの含有量が前記沈降性シリカの含有量以上であることを特徴とする。
このような本発明のセメント組成物によれば、今後、省クリンカーを目的として、JIS規格の少量混合成分の添加量の上限が緩和され、現状の5質量%から10質量%に添加量が拡大された場合でも、圧縮強さを良好に維持しつつ、自己収縮を効果的に抑制し得る。
従来、普通ポルトランドセメントにおいて、省クリンカーを実現する上では、次のような問題があった。
例えば、少量混合成分としてこれまで主に用いられてきた石灰石を用いる場合、その添加量を増加させると、圧縮強さは優れるものの、自己収縮が大幅に増大する問題があった。一方で、少量混合成分として、石灰石に替えてフライアッシュを用いると、自己収縮は低減されるが、添加量の増加に伴い、圧縮強さが低下する問題があった。
本発明者らは、セメント組成物の配合組成を鋭意研究した結果、少量混合成分としてフライアッシュ及び沈降性シリカを所定の量的関係で配合することで、少量混合成分の添加量を増大させても、圧縮強さを良好に維持しつつ、自己収縮を効果的に抑制し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
以下、構成成分ごとに詳しく説明する。
(ポルトランドセメント)
本発明において、構成成分としての「ポルトランドセメント」とは、JIS R5210:2009「ポルトランドセメント」の規格を満足する、ポルトランドセメントクリンカーと石膏とからなるものを示す。したがって、単に「ポルトランドセメント」と表記した場合は、少量混合成分を含まないものを指す。なお、本発明において、更に少量混合成分を含む場合は、「セメント組成物」と表記して区別するものとする。
このようなポルトランドセメントとしては、特に限定されるものではなく、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等が挙げられる。
また、ポルトランドセメントに使用されるポルトランドセメントクリンカーは、JIS R5210:2009「ポルトランドセメント」に規定される早強、普通、中庸熱、低熱ポルトランドセメントクリンカーが挙げられる。なお、現状のJIS規格上の少量混合成分添加の可否の観点及びクリンカー製造量に対する本発明の省クリンカー効果の観点からは、普通ポルトランドセメントクリンカーが望ましい。
また、ポルトランドセメントに使用される石膏は、JIS R5210:2009「ポルトランドセメント」に規定されるものが挙げられる。
セメント組成物中のポルトランドセメントの含有量は、95質量%未満であり、好ましくは90質量%以上95質量%未満であり、より好ましくは90質量%以上94質量%未満であり、更に好ましくは90質量%以上92質量%未満である。上記範囲であると、少量混合成分の添加量を大きくすることができ、省クリンカーの効果を発揮することができる。
(フライアッシュ)
本発明のセメント組成物では、少量混合成分の一つとしてフライアッシュを用いることにより、廃棄物利用の観点から環境負荷を低減でき、更に自己収縮の抑制効果も期待できる。
フライアッシュとしては、JIS A 6201:2015「コンクリート用フライアッシュ」に規定されるもののフライアッシュI種およびフライアッシュII種が挙げられる。特に、フライアッシュII種に相当するものがより好ましい。
フライアッシュのブレーン比表面積は、好ましくは2500cm/g以上であり、より好ましくは2500〜4200cm/gであり、更に好ましくは2500〜3800cm/gである。上記範囲であると、セメント組成物とした場合の自己収縮を充分に抑制できると同時に、混練時の流動性を良好な範囲にすることができる。
なお、フライアッシュのブレーン比表面積はJIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法、8 粉末度試験、8.1比表面積試験」に記載の方法に従って測定した比表面積の数値をいう。
フライアッシュの未燃炭素含有量は、好ましくは5.0質量%以下であり、より好ましくは4.0質量%以下である。
なお、フライアッシュの未燃炭素含有量は、JIS M8819:1997「石炭類及びコークス類−機器分析装置による元素分析方法」に従って測定した数値をいう。
セメント組成物中のフライアッシュの含有量は、好ましくは3質量%以上10質量%未満、より好ましくは6質量%以上10質量%未満、更に好ましくは8質量%以上10質量%未満である。上記範囲であると、自己収縮の抑制効果を十分に発揮しつつ、圧縮強さを良好に維持でき、好適に省クリンカーを実現できる。
(沈降性シリカ)
本発明のセメント組成物では、少量混合成分の一つとして沈降性シリカをフライアッシュと共に用いることにより、自己収縮を抑制しつつ圧縮強さの向上効果が期待できる。
沈降性シリカは、特に限定されるものではないが、比表面積及び平均粒径の観点からはシリカフュームとは明確に区別されるものである。
また、沈降性シリカとしては、SiO含有量が60質量%以上のものが好ましい。
沈降性シリカのブレーン比表面積は、好ましくは4,000cm/g以上20,000cm/g未満であり、より好ましくは6000〜20000cm/gであり、更に好ましくは8000〜20000cm/gである。上記範囲であると、過剰な微粉の添加による流動性低下を抑えることができる。
なお、沈降性シリカのブレーン比表面積はJIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法、8 粉末度試験、8.1比表面積試験」に記載の方法に従って測定した比表面積の数値をいう。
沈降性シリカの平均粒径(MV)は、好ましくは5〜100μmであり、より好ましくは10〜90μmであり、更に好ましくは15〜80μmである。上記範囲であると、過剰な微粉の添加による流動性低下を抑えることができる。
なお、平均粒径(MV)は、実施例に記載の粒度分布の測定に従って測定した平均粒径の数値をいう。
セメント組成物中の沈降性シリカの含有量は、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1〜5質量%であり、更に好ましくは2〜4質量%である。上記範囲であると、圧縮強さの向上効果を十分に発揮しつつ、自己収縮も良好に抑制できる。
セメント組成物中のフライアッシュの含有量及び沈降性シリカの含有量の合計は、5質量%超10質量%以下であり、好ましくは6〜10質量%であり、より好ましくは8〜10質量%である。上記範囲であると、省クリンカーを実現しつつ、圧縮強さを良好に維持でき、自己収縮も良好に抑制できる。なお、フライアッシュの含有量及び沈降性シリカの含有量の合計が、5質量%未満であると本発明の目指す省クリンカーが達成されず、10質量%超であると本発明の定義上の少量混合成分の添加量範囲の上限を超えてしまう。
セメント組成物中のフライアッシュの含有量は、沈降性シリカの含有量以上である。フライアッシュの含有量を沈降性シリカの含有量以上とすることにより、圧縮強さを良好に維持しつつ、自己収縮を効果的に抑制し得る。なお、フライアッシュの含有量が、沈降性シリカの含有量より少ないと、圧縮強さは増加するが自己収縮が大きくなる傾向にある。また、フライアッシュは沈降性シリカに比べて安価であるため経済的であり、更に環境負荷の低減効果を高める観点から、フライアッシュの含有量は沈降性シリカの含有よりも多いことが好ましい。
また、沈降性シリカの含有量(SI)に対するフライアッシュの含有量(FA)の比(FA/SI)は、好ましくは1.0〜9.0であり、より好ましく1.5〜7.0であり、更に好ましくは1.6〜7.0である。上記範囲であると、圧縮強さを良好に維持しつつ、自己収縮を効果的に抑制し得る。
(その他の成分)
セメント組成物は、JIS R5210:2009「ポルトランドセメント」の規格を満足し、本発明の効果を妨げない範囲で、上記以外のその他の成分を含むことができる。
その他の成分としては、例えば、石灰石、高炉スラグが挙げられる。
なお、上記のようなその他の成分は、フライアッシュ及び沈降性シリカと同様に少量混合成分に該当する。そのため、その他の成分を含む場合、その含有量は、フライアッシュ、沈降性シリカ及びその他の成分の各含有量の合計で、10質量%以下となるように調整する。また、フライアッシュ及び沈降性シリカの添加効果を高める観点からは、その他の成分の含有量は、5質量%未満であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
セメント組成物の製造方法は、特に限定されず、公知の方法により上記成分を配合及び混合することで調製することができる。
本発明のセメント組成物は、細骨材及び粗骨材等の骨材、及び各種化学混和剤等と混合して、モルタルやコンクリートを作製する際に好適に用いることができる。
本発明のセメント組成物を用いたモルタルやコンクリートは、環境負荷を低減しつつ、高強度で、自己収縮を抑制できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
以下の製造例、並びに実施例及び比較例では、以下の材料を使用した。
・普通ポルトランドセメントクリンカー:実機プラントで製造され、粉砕されたもの(ブレーン比表面積3260cm/g、平均粒径(MV)20.6μm、メジアン径(D50)17.8μm、化学組成は表1に示す。)
・半水石膏:火力発電所で得られる排脱石膏を120℃で保持した後、粉砕されたもの(ブレーン比表面積12900cm/g)。
・フライアッシュ:火力発電所由来の石炭灰(JIS A6201:2015 フライアッシュII種相当、密度2.2g/cm、ブレーン比表面積3620cm/g、平均粒径(MV)31.7μm、メジアン径(D50)22.8μm)
・沈降性シリカ:関東化学株式会社 試薬 特級沈降性シリカ(密度2.2g/cm、ブレーン比表面積17600cm/g、平均粒径(MV)73.0μm、メジアン径(D50)51.4μm)
・石灰石:関東化学株式会社製 鹿1級試薬 炭酸カルシウム(密度2.9g/cm、ブレーン比表面積9760cm/g、平均粒径(MV)6.4μm、メジアン径(D50)5.4μm)
上記クリンカー組成、並びに上記各材料の密度、ブレーン比表面積及び粒度分布(平均粒径(MV)及びメジアン径(D50))は、下記の条件で測定した。
<クリンカー組成>
セメントクリンカーの化学組成は、JIS R5204:2002「セメントの蛍光X線分析方法」に準じて蛍光X線測定装置(PRIMUS II、株式会社リガク製)を用いて、ガラスビード法にて成分分析を行った。
Figure 2020164388
<密度>
密度の測定は、ガス置換型真密度測定装置(ULTRAPYCNOMETER1000、QUANTACHROME INSTRUMENTS製)を用いて、窒素ガス置換により行った。
<ブレーン比表面積>
ブレーン比表面積の測定は、JIS R5201:2015「セメントの物理試験方法」に準じて行った。
<粒度分布>
粒度分布の測定は、レーザー回折・散乱式 粒子径分布測定装置(MT−3000、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて、エタノール中への分散による湿式法で行った。
(製造例)
普通ポルトランドセメントクリンカーと、半水石膏とを、その混合物中のSOの含有量が1.9質量%となるようにそれぞれ配合して、ポルトランドセメントを得た。
(実施例1〜10及び比較例1〜4)
上記製造例で作製したポルトランドセメントと、フライアッシュ、沈降性シリカ及び石灰石のいずれか1種以上とを、表2に示す配合比率で配合して、セメント組成物を得た。
(評価)
上記実施例及び比較例に係るセメント組成物と、リファレンス(参考例)として添加成分無配合の、上記製造例で作製したポルトランドセメントについて、下記に示す特性評価を行った。各特性の評価条件は下記の通りである。結果を表2に示す。
[圧縮強さ]
圧縮強さは、JIS R 5201:2009「セメントの物理試験方法」に準拠し、モルタル供試体を作製し、耐圧試験機を用いて、材齢7日及び28日の圧縮強さを測定し、評価した。本実施例では、材齢28日において60N/mm以上を合格と評価した。
[自己収縮]
自己収縮は、実験室温度20℃、湿度60%の環境下で下記の条件で作製したモルタル供試体中に、温度測定機能付き歪みゲージを埋め込んで、材齢3日、7日、14日、21日及び28日の自己収縮ひずみを測定し、下記の評価基準にて評価した。
まず、継ぎ目箇所にビニールテープを用いて漏水対策処置を行った蓋部付きのテフロンシート製の内部型枠(40mm×40mm×160mm)を、木製の外部型枠内に設置し、糸を用いて、歪みゲージが供試体中心に水平配置されるよう固定した。その際、固定に用いた糸の端部は、テフロンシート製内部型枠、木製外部型枠に設けた穴を通じて、型枠外まで通され、養生テープにて固定した。
自己収縮を評価するモルタル配合は、細骨材/セメント比が質量比で1とし、減水剤/セメント比は1.2質量%とし、(水+減水剤)/セメント比は35質量%とした。なお、細骨材は一般社団法人セメント協会製のセメント強さ試験用標準砂を使用し、減水剤はBASFジャパン株式会社製のポリカルボン酸エーテル系高性能AE減水剤 マスターグレニウムSP8SBSを使用した。
モルタルの混錬手順は、上記JIS R 5201:2009に準拠した。
上記テフロンシート製内部型枠内に、混練直後のフレッシュモルタルを投入し、内部型枠の上面を、テフロンシート蓋部と養生テープによって封止処理を行い、材齢24時間までの水分の逸散を防止した。歪みゲージの固定に用いた糸は、モルタルの凝結の始発開始後に切断して開放し、歪みゲージの伸縮の妨げとならないようにした。
材齢24時間で、木製型枠から脱型し、継ぎ目箇所をブチルゴム系のテープにて封止し、供試体全体をアルミニウム箔粘着テープで封止し、更にビニール袋内に供試体を封止した。なお、歪みゲージの測定用ケーブルのみ、ビニール袋外に配した。
上記構成として、自己収縮ひずみ(μ)の計測を、打ち込み後28日目まで行った。
なお、自己収縮の評価は、添加成分無配合のポルトランドセメント(参考例)を用いた供試体の各材齢における自己収縮ひずみを基準値として、該基準値からの差([参考例の自己収縮ひずみ]−[実施例及び比較例の各自己収縮ひずみ])を算出して評価した。本実施例では、材齢28日において基準値からの差が−90μ〜0μである場合を合格と評価した。
Figure 2020164388
表2に示されるように、セメント組成物においてポルトランドセメントに石灰石のみを配合した場合には、高い圧縮強さを実現できるが、自己収縮が大幅に増加するため、添加成分無配合のポルトランドセメント(参考例)の自己収縮に比べて、自己収縮が著しく大きくなることが確認された(比較例1)。
一方、セメント組成物においてポルトランドセメントにフライアッシュのみを配合した場合には、自己収縮は効果的に抑制できるが、圧縮強さが低下することが確認された(比較例2)。
これに対し、セメント組成物においてポルトランドセメントにフライアッシュ及び沈降性シリカを所定の量的関係で配合した場合には、圧縮強さを良好に維持しつつ、自己収縮を効果的に抑制し得ることが確認された(実施例1〜10)。
なお、セメント組成物においてフライアッシュ及び沈降性シリカを併用した場合であっても、フライアッシュの含有量が沈降性シリカよりも少ない場合には、自己収縮が大幅に増加することが確認された(比較例3)。
また、セメント組成物においてポルトランドセメントに沈降性シリカのみを配合した場合も、自己収縮が大幅に増加することが確認された(比較例4)。

Claims (3)

  1. ポルトランドセメント、フライアッシュ及び沈降性シリカを含み、
    前記フライアッシュの含有量及び前記沈降性シリカの含有量の合計が、5質量%超10質量%以下であり、
    前記フライアッシュの含有量が前記沈降性シリカの含有量以上である、セメント組成物。
  2. 前記沈降性シリカのブレーン比表面積が、4,000cm/g以上20,000cm/g未満である、請求項1に記載のセメント組成物。
  3. 前記沈降性シリカの含有量(SI)に対する前記フライアッシュの含有量(FA)の比(FA/SI)が、1.0〜9.0である、請求項1又は2に記載のセメント組成物。
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