JP7331316B2 - タイヤ - Google Patents
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Description
また、通常、タイヤにはリムへの固定の役割を担うビードが設けられており、ビードワイヤーとして金属製のワイヤーが用いられている。
本発明は、上記事情に鑑み、タイヤに設けられる金属部材を含む部材であって、接着層の金属部材に対する接着性に優れたタイヤ用樹脂金属複合部材を提供することを課題とする。
前記金属部材の上に直に接するよう設けられた接着層と、
前記接着層の上に設けられた被覆樹脂層と、を有し、
前記金属部材における、前記接着層が設けられる面が粗化表面であるタイヤ用樹脂金属複合部材。
前記[1]~[5]のいずれか1項に記載のタイヤ用樹脂金属複合部材と、を有するタイヤ。
本開示において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示において、「主成分」とは、特に断りがない限り、混合物中における質量基準の含有量が最も多い成分を意味する。
なお、上記ハードセグメントは、ソフトセグメントよりも相対的に硬い成分を指す。ハードセグメントは塑性変形を防止する架橋ゴムの架橋点の役目を果たす分子拘束成分であることが好ましい。例えばハードセグメントとしては、主骨格に芳香族基若しくは脂環式基等の剛直な基を有する構造、又は分子間水素結合若しくはπ-π相互作用による分子間パッキングを可能にする構造等のセグメントが挙げられる。また、上記ソフトセグメントは、ハードセグメントよりも相対的に柔らかい成分を指す。ソフトセグメントはゴム弾性を示す柔軟性成分であることが好ましい。ソフトセグメントは、例えば、主鎖に長鎖の基(例えば長鎖のアルキレン基等)を有し、分子回転の自由度が高く、伸縮性を有する構造のセグメントが挙げられる。
本開示に係るタイヤ用樹脂金属複合部材(以下単に「樹脂金属複合部材」とも称す)は、金属部材と、前記金属部材の上に直に接するよう設けられた接着層と、前記接着層の上に設けられた被覆樹脂層と、を有し、前記金属部材における、前記接着層が設けられる面が粗化表面である。本開示に係るタイヤ用樹脂金属複合部材は、その他の層を含んで構成されていてもよい。
本開示に係る樹脂金属複合部材は、金属部材を含む。
めっきの種類としては、銅めっき、亜鉛めっき、銅-亜鉛めっき、アルミニウムめっき、コバルトめっき等が挙げられる。
なお、めっき厚さは、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察により測定することができる。
次にめっき浴を通過浸漬させた金属部材に熱拡散処理を施すことにより、銅及び亜鉛がめっき層全体にわたって均一拡散される。熱拡散処理では、例えば500℃~650℃かつ1分以内程度(例えば5秒~25秒)の条件で加熱処理され、銅-亜鉛めっき化される。
次に熱拡散処理された金属部材を伸線加工することにより、所定のめっき厚さのめっきを有しかつ所定の線径を有する金属部材が形成される。
なお、めっきの形成方法は、上述のような工程の順に限定されるものではない。
金属部材は、接着層が設けられる面が粗化表面である。
化学剤を含むエッチング液としては、例えば、アルカリ性又は酸性のエッチング液が挙げられる。
アルカリ性又は酸性のエッチング液としては、例えば、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ性溶液;塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸等の酸を含む酸性溶液などが挙げられる。
エッチング液を用いた粗化処理は、エッチング液に金属部材を浸漬させる手法であってもよく、スプレーでエッチング液を金属部材に吹き付ける手法であってもよい。
レーザー照射としては、例えば、半導体レーザー、ファイバーレーザー、ディスクレーザー、CO2レーザー、パルスレーザー等を用いる方法が挙げられる。上記の中でも、レーザー照射としては、パルスレーザーを用いることが好ましい。
レーザーの照射時間、照射回数、波長、ピーク出力及び加工周期としては、金属部材と前記金属部材の上に直に接するよう設けられた接着層とをアンカー効果により接着することができる程度に表面が粗化されるまでの照射時間、照射回数、波長、ピーク出力及び加工周期であればよい。
粗化表面がパルスレーザーによるレーザー処理表面である場合、例えば、ピーク出力は1.0×102W以上1.0×1010W以下であることが好ましく、1.0×103W以上1.0×108W以下であることがより好ましく、1.0×104W以上1.0×107W以下であることが更に好ましい。
レーザー照射におけるスポット径は、例えば、アンカー効果をより高める観点から、0.1μm以上100μm以下であることが好ましく、0.5μm以上50μm以下であることがより好ましく、1μm以上30μm以下であることが更に好ましい。
レーザー照射の回数は、例えば、アンカー効果をより高める観点から、10回以上であることが好ましく、50回以上であることが好ましく、80回以上200回以下であることが更に好ましい。
サンドの粒度は、♯400以下であることが好ましく、#30以上#100以下であることがより好ましく、#40以上#80以下であることが更に好ましい。
サンドブラストに用いる研削材としては、適宜公的な材料を適用してよい。研削材としては、例えば、ガラスビーズ、SiC、SiO2、Al2O3、ZrO等の2μm~100μm程度の微粒子が挙げられる。これらの微粒子は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
サンドブラスト処理における研削の圧力としては、0.1MPa~5.0MPであることが好ましく、0.5MPa~2.0MPaであることがより好ましく、0.8MPa~1.5MPaであることが更に好ましい。
金属部材の形状は、特に制限されず、例えば、タイヤの補強に用いられる金属製のコード等を適宜用いることができる。金属製のコードとしては、例えば、一本の金属コードからなるモノフィラメント(単線)、複数本の金属コードを撚ったマルチフィラメント(撚線)等が挙げられる。また、金属部材の形状は線状(コード状)に限られるものではなく、例えば板状の金属部材であってもよい。
本開示に係る樹脂金属複合部材は、前記金属部材の上に直に接するように接着層が設けられている。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、及びオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
接着層は被覆樹脂層よりも引張弾性率が小さい層であることが好ましい。接着層の引張弾性率は、例えば、接着層の形成に用いる接着剤の種類、接着層の形成条件や熱履歴(例えば、加熱温度、加熱時間等)等によって制御することができる。
接着層の引張弾性率は、例えば下限値は、1MPa以上が好ましく、20MPa以上がより好ましく、50MPa以上がさらに好ましい。引張弾性率が上記下限値以上であることで、金属部材との接着性能及びタイヤ耐久性に優れる。
また、接着層の引張弾性率の上限値は、乗り心地の観点から、1500MPa以下が好ましく、600MPa以下がより好ましく、400MPa以下がさらに好ましい。
なお、接着層の引張弾性率の測定は、被覆樹脂層の引張弾性率と同様の方法で行うことができる。
また、接着層の引張弾性率をE1とし、被覆樹脂層の引張弾性率をE2としたとき、E1/E2の値としては、例えば0.05以上0.5以下が挙げられ、0.05以上0.3以下が好ましく、0.05以上0.2以下がより好ましい。E1/E2の値が前記範囲であることにより、前記範囲よりも小さい場合に比べてタイヤの耐久性に優れ、前記範囲よりも大きい場合に比べて走行時の乗り心地に優れる。
接着層の平均厚みは、特に制限されないが、走行時の乗り心地及びタイヤの耐久性の観点で、5μm~500μmであることが好ましく、20μm~150μmであることがより好ましく、20μm~100μmであることが更に好ましい。
本開示に係る樹脂金属複合部材は、前記接着層の上に被覆樹脂層を設ける。
被覆樹脂層の材質は特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の熱可塑性材料を用いることができる。
被覆樹脂層は、成形容易性の観点及び接着層に対する接着性の観点から、熱可塑性エラストマーを含むことが望ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、後述のタイヤ骨格体に用いられる熱可塑性エラストマーと同様であり、好ましい態様も同様である。したがって、ここでは、詳細な説明を省略する。
熱可塑性樹脂としては、後述のタイヤ骨格体に用いられる熱可塑性樹脂と同様であり、好ましい態様も同様である。したがって、ここでは、詳細な説明を省略する。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、オレフィン系熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性樹脂、塩化ビニル系熱可塑性樹脂、ポリスチレン系熱可塑性樹脂等を例示することができる。
被覆樹脂層が熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種を含む場合、その総含有率は被覆樹脂層全体に対して50質量%以上含ませることが好ましく、60質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましい。
・厚み
被覆樹脂層の平均厚みは、特に限定されない。耐久性に優れる点や溶着性の観点から、10μm以上1000μm以下であることが好ましく、50μm以上700μm以下であることがより好ましい。
被覆樹脂層の引張弾性率は、接着層の引張弾性率よりも大きいことが好ましく、例えば50MPa以上1000MPa以下が挙げられ、乗り心地、走行性能の観点から50MPa以上800MPa以下が好ましく、50MPa以上700MPa以下がより好ましい。
被覆樹脂層の引張弾性率は、例えば、被覆樹脂層に含まれる樹脂の種類等によって制御することができる。
なお、引張弾性率の測定は、JIS K7113:1995に準拠して行う。
具体的には、例えば、島津製作所社製、島津オートグラフAGS-J(5KN)を用い、引張速度を100mm/minに設定し、引張弾性率の測定を行う。なお、樹脂金属複合部材に含まれる被覆樹脂層の引張弾性率を測定する場合、例えば、上記被覆樹脂層と同じ材料の測定試料を別途準備して弾性率測定してもよい。
本実施形態に係るタイヤは、環状のタイヤ骨格体又はカーカスと、前述の本実施形態に係るタイヤ用樹脂金属複合部材と、を有する。
なお、タイヤ用樹脂金属複合部材は、例えばタイヤ骨格体又はカーカスの外周部に周方向に巻回される補強ベルト部材、ビード部材等として用いられる。
ここで、本実施形態に係るタイヤを構成するタイヤ骨格体及びカーカスについて説明する。
本開示において「カーカス(carcass)」とは、従来タイヤにおいてタイヤの骨格をなす部材であり、いわゆるラジアルカーカス、バイアスカーカス、セミラジアルカーカス等が含まれる。カーカスは一般に、コード、繊維等の補強材がゴム材料で被覆された構造を有する。
本開示において「タイヤ骨格体(tire frame)」とは、従来タイヤのカーカスに相当する部材であって、樹脂材料から形成されるもの(いわゆる樹脂タイヤ用のタイヤ骨格体)を意味する。
ゴム材料は、ゴム(ゴム成分)を少なくとも含んでいればよく、本実施形態に係る効果を損なわない範囲で、添加剤等の他の成分を含んでもよい。ただし、前記ゴム材料中におけるゴム(ゴム成分)の含有量は、ゴム材料の総量に対して、50質量%以上が好ましく、90質量%以上が更に好ましい。カーカスは、例えばゴム材料を用いて形成することができる。
上記天然ゴムとしては、シートゴムでもブロックゴムでもよく、RSS#1~#5の総てを用いることができる。
上記合成ゴムとしては、各種ジエン系合成ゴムやジエン系共重合体ゴム及び特殊ゴムや変性ゴム等を使用できる。具体的には、例えば、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体(例えばSBR、NBRなど)、ブタジエンと他のジエン系化合物との共重合体等のブタジエン系重合体;ポリイソプレン(IR)、イソプレンと芳香族ビニル化合物との共重合体、イソプレンと他のジエン系化合物との共重合体等のイソプレン系重合体;クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X-IIR);エチレン-プロピレン系共重合体ゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン系共重合体ゴム(EPDM)及びこれらの任意のブレンド物等が挙げられる。
添加物としては、例えば、カーボンブラック等の補強材、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、脂肪酸又はその塩、金属酸化物、プロセスオイル、老化防止剤等が挙げられ、これらを適宜配合することができる。
樹脂材料は、樹脂(樹脂成分)を少なくとも含んでいればよく、本実施形態に係る効果を損なわない範囲で、添加剤等の他の成分を含んでもよい。ただし、前記樹脂材料中における樹脂(樹脂成分)の含有量は、樹脂材料の総量に対して、50質量%以上が好ましく、90質量%以上が更に好ましい。タイヤ骨格体は、例えば樹脂材料を用いて形成することができる。
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、オレフィン系熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性樹脂、塩化ビニル系熱可塑性樹脂、ポリスチレン系熱可塑性樹脂等を例示することができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、及びオレフィン系熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ポリアミド系熱可塑性樹脂及びオレフィン系熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとは、結晶性で融点の高いハードセグメントを形成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性の樹脂材料であって、ハードセグメントを形成するポリマーの主鎖にアミド結合(-CONH-)を有するものを意味する。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリアミドが結晶性で融点の高いハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリエステル、ポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメント及びソフトセグメントの他に、ジカルボン酸等の鎖長延長剤を用いて形成されてもよい。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、JIS K6418:2007に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)等や、特開2004-346273号公報に記載のポリアミド系エラストマー等を挙げることができる。
また、一般式(2)中、R2としては、炭素数3~18の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数3~18のアルキレン基が好ましく、炭素数4~15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数4~15のアルキレン基が更に好ましく、炭素数10~15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数10~15のアルキレン基が特に好ましい。
一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーとしては、ω-アミノカルボン酸又はラクタムが挙げられる。また、ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、これらω-アミノカルボン酸又はラクタムの重縮合体、ジアミンとジカルボン酸との共縮重合体等が挙げられる。
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、3-メチルペンタメチレンジアミン、メタキシレンジアミン等の炭素数2~20の脂肪族ジアミン等のジアミン化合物を挙げることができる。
また、ジカルボン酸は、HOOC-(R3)m-COOH(R3:炭素数3~20の炭化水素の分子鎖、m:0又は1)で表すことができ、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、ラウリルラクタム、ε-カプロラクタム、又はウデカンラクタムを開環重縮合したポリアミドを好ましく用いることができる。
ここで、「ABA型トリブロックポリエーテル」とは、下記一般式(3)に示されるポリエーテルを意味する。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリスチレンがハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエチレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。ハードセグメントを形成するポリスチレンとしては、例えば、公知のラジカル重合法、イオン性重合法等で得られるものが好ましく用いられ、具体的には、アニオンリビング重合を持つポリスチレンが挙げられる。また、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(2,3-ジメチル-ブタジエン)等が挙げられる。
また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、5000~1000000が好ましく、10000~800000がより好ましく、30000~500000が更に好ましい。さらに、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との体積比(x:y)は、成形性の観点から、5:95~80:20が好ましく、10:90~70:30がより好ましい。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン系共重合体[SBS(ポリスチレン-ポリ(ブチレン)ブロック-ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン)]、スチレン-イソプレン共重合体(ポリスチレン-ポリイソプレンブロック-ポリスチレン)、スチレン-プロピレン系共重合体[SEP(ポリスチレン-(エチレン/プロピレン)ブロック)、SEPS(ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン)、SEEPS(ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン)、SEB(ポリスチレン(エチレン/ブチレン)ブロック)]等が挙げられる。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリウレタンが物理的な凝集によって疑似架橋を形成しているハードセグメントを形成し、他のポリマーが非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、JIS K6418:2007に規定されるポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)が挙げられる。ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、下記式Aで表される単位構造を含むソフトセグメントと、下記式Bで表される単位構造を含むハードセグメントとを含む共重合体として表すことができる。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、Rで表される脂環族炭化水素を含むジイソシアネート化合物としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4-シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。さらに、Rで表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、P’で表される脂環族炭化水素を含む脂環族ジオール化合物としては、例えば、シクロペンタン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,3-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール等が挙げられる。
さらに、P’で表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジオール化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、クロロヒドロキノン、ブロモヒドロキノン、メチルヒドロキノン、フェニルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、フェノキシヒドロキノン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノールA、1,1-ジ(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)エタン、1,4-ジヒドロキシナフタリン、2,6-ジヒドロキシナフタリン等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、芳香族ジオールと芳香族ジイソシアネートとからなるハードセグメントと、ポリ炭酸エステルからなるソフトセグメントとの組合せが好ましく、より具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)/ポリエステル系ポリオール共重合体、TDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、TDI/カプロラクトン系ポリオール共重合体、TDI/ポリカーボネート系ポリオール共重合体、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)/ポリエステル系ポリオール共重合体、MDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI/カプロラクトン系ポリオール共重合体、MDI/ポリカーボネート系ポリオール共重合体、及びMDI+ヒドロキノン/ポリヘキサメチレンカーボネート共重合体から選ばれる少なくとも1種が好ましく、TDI/ポリエステル系ポリオール共重合体、TDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI/ポリエステルポリオール共重合体、MDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、及びMDI+ヒドロキノン/ポリヘキサメチレンカーボネート共重合体から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリオレフィンが結晶性で融点の高いハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリオレフィン、他のポリオレフィン、ポリビニル化合物等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。ハードセグメントを形成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられる。
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン-α-オレフィンランダム共重合体、オレフィンブロック共重合体等が挙げられ、具体的には、プロピレンブロック共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-4-メチル-1ペンテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-ペンテン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、1-ブテン-4-メチル-ペンテン、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、プロピレン-メタクリル酸共重合体、プロピレン-メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン-メチルアクリレート共重合体、プロピレン-エチルアクリレート共重合体、プロピレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
また、エチレンとプロピレンといったように2種以上のオレフィン樹脂を組み合わせて用いてもよい。また、オレフィン系熱可塑性エラストマー中のオレフィン樹脂含有率は、50質量%以上100質量%以下が好ましい。
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、公知の方法によって共重合することで合成することができる。
「オレフィン系熱可塑性エラストマーを酸変性してなるもの」とは、オレフィン系熱可塑性エラストマーに、カルボン酸基、硫酸基、燐酸基等の酸性基を有する不飽和化合物を結合させることをいう。
オレフィン系熱可塑性エラストマーに、カルボン酸基、硫酸基、燐酸基等の酸性基を有する不飽和化合物を結合させることとしては、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマーに、酸性基を有する不飽和化合物として、不飽和カルボン酸(一般的には、無水マレイン酸)の不飽和結合部位を結合(例えば、グラフト重合)させることが挙げられる。
酸性基を有する不飽和化合物としては、オレフィン系熱可塑性エラストマーの劣化抑制の観点からは、弱酸基であるカルボン酸基を有する不飽和化合物が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等が挙げられる。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリエステルが結晶性で融点の高いハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリエステル又はポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。
ハードセグメントを形成するポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等が挙げられる。
脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が挙げられる。
これらの脂肪族ポリエーテル及び脂肪族ポリエステルの中でも、得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性の観点から、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が好ましい。
ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、前述のタイヤ骨格体に用いられるポリアミド系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを形成するポリアミドを挙げることができる。ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、具体的には、ε-カプロラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド6)、ウンデカンラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド11)、ラウリルラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド12)、ジアミンと二塩基酸とを重縮合したポリアミド(アミド66)、メタキシレンジアミンを構成単位として有するポリアミド(アミドMX)等を例示することができる。
アミド6の市販品としては、例えば、宇部興産(株)製の「UBEナイロン」シリーズ(例えば、1022B、1011FB等)を用いることができる。アミド11の市販品としては、例えば、アルケマ(株)製の「Rilsan B」シリーズを用いることができる。アミド12の市販品としては、例えば、宇部興産(株)製の「UBEナイロン」シリーズ(例えば、3024U、3020U、3014U等)を用いることができる。アミド66の市販品としては、例えば、旭化成(株)製の「レオナ」シリーズ(例えば、1300S、1700S等)を用いることができる。アミドMXの市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)製の「MXナイロン」シリーズ(例えば、S6001、S6021、S6011等)を用いることができる。
ポリエステル系熱可塑性樹脂としては、前述のタイヤ骨格体に用いられるポリエステル系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを形成するポリエステルを挙げることができる。
ポリエステル系熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ-3-ブチル酪酸、ポリヒドロキシ-3-ヘキシル酪酸、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等の脂肪族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等の芳香族ポリエステルなどを例示することができる。これらの中でも、耐熱性及び加工性の観点から、ポリエステル系熱可塑性樹脂としては、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
オレフィン系熱可塑性樹脂としては、前述のタイヤ骨格体に用いられるオレフィン系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを形成するポリオレフィンを挙げることができる。
オレフィン系熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリエチレン系熱可塑性樹脂、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂、ポリブタジエン系熱可塑性樹脂等を例示することができる。これらの中でも、耐熱性及び加工性の点から、オレフィン系熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂が好ましい。
ポリプロピレン系熱可塑性樹脂の具体例としては、プロピレンホモ重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体等が挙げられる。α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素数3~20程度のα-オレフィン等が挙げられる。
弾性材料(ゴム材料又は樹脂材料)は、所望に応じて、ゴム又は樹脂以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、樹脂、ゴム、各種充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ)、老化防止剤、オイル、可塑剤、着色剤、耐候剤、補強材等が挙げられる。
弾性材料として樹脂材料を用いる場合(つまり樹脂タイヤ用のタイヤ骨格体の場合)、樹脂材料に含まれる樹脂の融点は、例えば100℃~350℃程度が挙げられ、タイヤの耐久性及び生産性の観点から、100℃~250℃程度が好ましく、120℃~250℃が更に好ましい。
図1は、ビード部10の周方向に直交する断面を示す断面図である。図1のビード部10は、ビードワイヤー11と、ビードワイヤー11を被覆する接着層12と、接着層12の周囲を覆う第1被覆樹脂層13と、を有するビードコア1を有し、さらにビードコア1の周囲を覆う第2被覆樹脂層14を有する。また、第2被覆樹脂層14からタイヤ径方向外側へ延びるビードフィラー3を有する。なお、図1に示すビード部10では、第2被覆樹脂層14とビードフィラー3とが別体として描かれているが、第2被覆樹脂層14とビードフィラー3とは一体成形された同一体の部材であってもよい。
なお、このビード部10においては、ビードワイヤー11が本実施形態に係るタイヤ用樹脂金属複合部材における金属部材に相当し、接着層12が接着層に相当し、第1被覆樹脂層13が被覆樹脂層に相当する。
図2は、ビード部110の周方向に直交する断面を示す断面図である。図2には、3本のビードワイヤー111が並列に並べられると共に3段に積層された態様、つまり9本のビードワイヤー111を有する態様のビード部110が示されている。なお、ここで「並列に並べられる」とは、タイヤに適用する際に必要な長さに切断したビード部110中で、複数のビードワイヤー111同士が交差しない位置関係にあることを意味する。
各ビードワイヤー111はそれぞれ接着層112で被覆され、さらにビードワイヤー111及び接着層112の周囲が第1被覆樹脂層113で被覆されて、ビードコア101を形成する。さらに、ビードコア101の周囲を覆う第2被覆樹脂層114を有する。また、第2被覆樹脂層114からタイヤ径方向外側へ延びるビードフィラー103を有する。なお、図2に示すビード部110では、第2被覆樹脂層114とビードフィラー103とが別体として描かれているが、第2被覆樹脂層114とビードフィラー103とは一体成形された同一体の部材であってもよい。
なお、このビード部110においては、ビードワイヤー111が本実施形態に係るタイヤ用樹脂金属複合部材における金属部材に相当し、接着層112が接着層に相当し、第1被覆樹脂層113が被覆樹脂層に相当する。
本実施形態に係るタイヤは、ビード部において、第2被覆樹脂層からタイヤ径方向外側へ延びるビードフィラーを有していてもよい。また、このビードフィラーは、第2被覆樹脂層と一体成形された同一体の部材であってもよい。
ここで、本実施形態に係るタイヤにおけるビード部の形成方法について、一例を挙げて説明する。具体的には、図2に示す構成のビード部を例にして形成方法を説明する。
図2に示すビード部110におけるビードコア101は、まずビードワイヤー111の周囲を接着層112で被覆し、その後、接着層112で被覆された3本のビードワイヤー111を第1被覆樹脂層113で被覆してなるストリップ部材を形成する。さらに、このストリップ部材を巻回して、断面での形状が略長方形であるストリップ部材を3段積層することで、ビードコア101を形成する。
次いで、得られたビードコア101の表面に、溶融状態の第2被覆樹脂層114を形成する材料(例えば樹脂)を被覆して、冷却により固化させることで、第2被覆樹脂層114を形成する。第2被覆樹脂層114の形成は、公知の方法により行うことができ、例えば射出成形等の方法が挙げられる。
具体的には、射出成形金型のキャビティにビードコア101を配置し、溶融状態の第2被覆樹脂層114を形成する材料をキャビティに射出する。次に、射出した材料を冷却により固化させることで、第2被覆樹脂層114を形成する。
図2に示すビード部材110は、第2被覆樹脂層114のタイヤ径方向外側に向かって、ビードフィラー103が配置された構造を有する。ビードフィラー103の形成は、公知の方法により行うことができ、例えばビードフィラー103を樹脂で形成する場合には射出成形等の方法が挙げられる。なお、ビードフィラー103が第2被覆樹脂層114と一体成形された同一体の部材である場合、ビードフィラー103及び第2被覆樹脂層114の形状に加工された射出成形金型を用いて、一度の射出により両部材を一体成形することもできる。
また、本実施形態では、タイヤ径方向に沿ってタイヤ20の回転軸側を「タイヤ径方向内側」、タイヤ径方向に沿ってタイヤ20の回転軸と反対側を「タイヤ径方向外側」と記載する。一方、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道CL側を「タイヤ幅方向内側」、タイヤ幅方向に沿ってタイヤ赤道CLと反対側を「タイヤ幅方向外側」と記載する。
また、カーカス16、ベルト17、キャップ層及びレイヤー層には、従来公知のタイヤで用いる各部材の構造を用いることができる。
図3に示されるタイヤ20は、主にゴム材料で構成される。つまり、ビード部110におけるカーカス16の周囲の領域、タイヤサイド部18におけるカーカス16の周囲の領域、トレッド部19におけるベルト17の周囲の領域等がゴム材料で構成される。
図4は、本実施形態に係る別の態様のタイヤのタイヤ回転軸に沿った断面図であり、樹脂コード部材36がタイヤ骨格体のクラウン部に埋設された状態を示す。ただし、樹脂コード部材の埋設配置はなくてもよい。
図4に示すように、樹脂コード部材36は、タイヤ骨格体の軸方向に沿った断面視で、その少なくとも一部がクラウン部216に埋設された状態で螺旋状に巻回されている。そして、樹脂コード部材36のクラウン部216に埋設された部分は、クラウン部216(タイヤ骨格体)を構成する弾性材料(ゴム材料又は樹脂材料)と密着した状態となっている。図4におけるLは、クラウン部216(タイヤ骨格体)に対する樹脂コード部材36のタイヤ回転軸方向への埋設深さを示す。ある実施態様では、樹脂コード部材36のクラウン部216に対する埋設深さLは、樹脂コード部材36の直径Dの1/2である。
樹脂コード部材36のタイヤ径方向外周側には、ゴム製のトレッド30が配置されている。また、トレッド30には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝からなるトレッドパターンが形成されている。
ここで、本実施形態の樹脂金属複合部材を、樹脂コード部材36として用いる態様について説明する。
例えば、一本又は複数本のコード状の樹脂金属複合部材がタイヤ骨格体の外周部に、タイヤの周方向に沿って配置されて形成されたベルト層、複数のコード状の樹脂金属複合部材がタイヤの周方向に対して角度を有し、互いに交錯するように配置された交錯ベルト層等として用いることができる。
式:金属部材間の平均距離={ベルト部の幅-(金属部材の太さ×n)}/(n-1)
上記「ベルト部」とは、タイヤ骨格体の外周部に樹脂金属複合部材が配置されている部分を意味する。
上記式において「n」は、樹脂金属複合部材が配置されたタイヤ骨格体をタイヤの径方向に垂直な方向に切断して得られる断面において観察される樹脂金属複合部材の数である。
上記式において「ベルト部の幅」は、上記断面において観察される樹脂金属複合部材のうち、ベルト部の両端部(タイヤ骨格体のセンターラインから左右方向にそれぞれ最も離れた位置)にある樹脂金属複合部材の間の長さであって、タイヤ骨格体の外周面に沿った長さを意味する。
上記式において「金属部材の太さ」は、任意に選択した5箇所における太さの測定値の数平均値とする。太さの測定値は、金属部材が1本の金属コードからなる場合は、金属部材の断面の最大径(金属部材の断面の輪郭線上で任意に選択される2点間の距離が最大となるときの当該2点間の距離)とする。金属部材が複数の金属コードからなる場合は、金属部材の断面に観察される複数の金属コードの断面が全て含まれる円のうち最も小さい円の直径とする。
なお、太さの異なる金属部材がベルト部に含まれている場合は、最も太い金属部材の太さを「金属部材の太さ」とする。
[実施例1]
横幅140mm×縦幅20mm×厚み0.3mmの鉄板を用意し、黄銅めっき浴に通過浸漬させる。次に、熱拡散処理(500℃~650℃かつ5秒~25秒の条件に設定)を施すことにより、黄銅をめっき層全体にわたって均一拡散させる。なお、めっきの厚さは、4.0μmである。このめっき処理後、接着層が設けられる面の全面を、化学エッチング処理(アマルファ処理A-10201、メック(株)社製)し、粗化表面を有する金属部材を作製する。なお、粗化表面は、SEM観察により粗化されていることを確認する。
次に、前記金属部材と、前記金属部材の粗化表面の上に、接着剤:三菱ケミカル社製の無水マレイン酸変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー「プリマロイ-AP GQ730」(融点204℃、弾性率300MPa)と、をセットし、モールドにて230℃で溶融圧着し、金属部材の粗化表面の上に接着層を有する金属部材-接着層貼り合わせ試験片を作製する。
接着層として使用する接着剤を、三菱ケミカル社製の酸変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー「プリマロイ-AP GQ741」(融点213℃、弾性率587MPa)とする以外は、実施例1と同様の仕様により、金属部材と接着層を有する金属部材-接着層貼り合わせ試験片を作製する。
接着層として使用する接着剤を、三井化学社製の無水マレイン酸変性プロピレン「アドマー QE060」(融点139℃)とする以外は、実施例1と同様の仕様により、金属部材と接着層を有する金属部材-接着層貼り合わせ試験片を作製する。
化学エッチング処理を、下記の条件によるパルスレーザー処理とする以外は、実施例1と同様の仕様により、金属部材と接着層を有する金属部材-接着層貼り合わせ試験片を作製する。
・パルス幅 :10×10-12s
・波長 :500nm
・スポット径:16μm
・ピーク出力:2.0×106W
・照射回数 :100回
・加工周期 :50μm
化学エッチング処理を、下記の条件によるサンドブラスト処理とする以外は、実施例1と同様の仕様により、金属部材と接着層を有する金属部材-接着層貼り合わせ試験片を作製する。
・研削材:アルミナ(Al2O3)
・粒度 :#50(100μm)
・噴射圧:1.0MPa
めっきの種類を、黄銅めっきから銅めっきへと変更する仕様とする以外は、実施例1と同様の仕様により、金属部材と接着層を有する金属部材-接着層貼り合わせ試験片を作製する。
めっきの種類を、黄銅めっきから亜鉛めっきへと変更する仕様とする以外は、実施例4と同様の仕様により、金属部材と接着層を有する金属部材-接着層貼り合わせ試験片を作製する。
金属の形状を、単線から撚線へと変更する仕様とする以外は、実施例1と同様の仕様により、金属部材と接着層を有する金属部材-接着層貼り合わせ試験片を作製する。
化学エッチング処理を、施さない仕様とする以外は、実施例1と同様の仕様により、金属部材と接着層を有する金属部材-接着層貼り合わせ試験片を作製する。
化学エッチング処理を、施さない仕様とする以外は、実施例8と同様の仕様により、金属部材と接着層を有する金属部材-接着層貼り合わせ試験片を作製する。
各例にて作製した試験片を使用し、(株)エー・アンド・デイ製の「TENSIRON RTF-1210」を用いて、室温環境(25℃)で引張速度100mm/minで180°剥離試験を行う。測定される剥離力(単位:N/20mm)について、以下の評価基準に従って接着性を評価する。評価結果を表1に示す。
-ビード部材の作製-
表1に記載の単線(平均直径φ1.25mmのモノフィラメント、スチール製、強力:2700N、伸度:7%)又は撚線(平均直径φ0.35mmの単線(スチール製、弾力280N、伸度3%)7本を撚った撚線)の表面に、各例に記載の方法と同様のめっき処理を施す。
次いで、めっき処理後の単線又は撚線に対して、各実施例で行った粗化処理(実施例1~3、6及び8での化学エッチング処理、実施例4及び7でのパルスレーザー処理、又は実施例5でのサンドブラスト処理)を施して、各実施例のビードワイヤーサンプルを得る。また、粗化処理を施さない仕様とした単線又は撚線を、比較例のビードワイヤーサンプルとする。
上述の本実施形態で示した図3に示す態様のタイヤを、前記より得たビード部材を一対のビード部として用いて作製する。
前記より得たビード部材、及びポリエチレンテレフタレート製のプライコードからなるカーカスを準備し、これに天然ゴム(NR)とスチレンブタジエンゴム(SBR)との混合ゴム材料を用いたタイヤサイド部(カーカスのタイヤ幅方向外側の領域)、サイド補強ゴム、及びトレッド部、並びに撚り線のベルト層を用いて、生タイヤを作製する。
作製される生タイヤについて、160℃、21分の条件で加熱(ゴムの加硫)を行う。得られるタイヤは、タイヤサイズ225/40R18、トレッド部の厚み10mmである。
その後、走行後のタイヤにおけるビード部材の断面を観察し、ビードワイヤー(金属部材)と接着層との接着性を目視で確認し、下記の評価基準に従って評価する。なお、[A]に分類されるものであれば実用上好ましいと言える。結果を表1に示す。
(評価基準)
A:金属部材と接着層とが剥離していない。
B:金属部材と接着層とが、部分的に剥離している。
C:金属部材と接着層とが、全面的に剥離している。
3、103 ビードフィラー
10、110 ビード部
11、111 ビードワイヤー
12、25、112 接着層
13、113 第1被覆樹脂層
14、114 第2被覆樹脂層
16 カーカス
17 ベルト
18 タイヤサイド部
19、30 トレッド部
20 空気入りタイヤ
27 金属部材
28 被覆樹脂層
36 樹脂コード部材
216 クラウン部
CL 赤道面
D 金属部材の直径
L 金属部材の埋設深さ
Claims (5)
- 環状のタイヤ骨格体又はカーカスと、
タイヤ用樹脂金属複合部材と、
を有し、
タイヤ用樹脂金属複合部材は、
金属部材と、
前記金属部材の上に直に接するよう設けられた接着層と、
前記接着層の上に設けられた被覆樹脂層と、を有し、
前記金属部材における、前記接着層が設けられる面が粗化表面であり、
前記粗化表面は、化学エッチング処理表面、パルスレーザー処理表面又はサンドブラスト処理表面であり、
前記接着層は、前記被覆樹脂層よりも引張弾性率が小さく、かつ、ポリエステル系熱可塑性樹脂、オレフィン系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、及びポリアミド系熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも1種を含有し、
前記タイヤ用樹脂金属複合部材が、ビード部材を構成するタイヤ。 - 前記粗化表面が、亜鉛めっき、銅めっき及び亜鉛-銅めっきからなる群より選択される少なくとも1種のめっきで被覆される、請求項1に記載のタイヤ。
- 前記めっきの処理表面が前記粗化表面である、請求項2に記載のタイヤ。
- 前記金属部材は、単線又は撚線である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ。
- 前記接着層は酸変性された熱可塑性樹脂又は酸変性された熱可塑性エラストマーからなる、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のタイヤ。
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