JP5840534B2 - タイヤ - Google Patents

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本発明は、リムに装着されるタイヤに関し、特に、少なくとも一部が熱可塑性材料で形成されたタイヤに関する。
従来、乗用車等の車両には、ゴム、有機繊維材料、スチール部材などから構成された空気入りタイヤが用いられている。
近年では、軽量化や、成形の容易さ、リサイクルのしやすさから、樹脂材料、特に熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーなどをタイヤ材料として用いることが検討されている。
例えば、特許文献1および特許文献2には、熱可塑性の高分子材料、特にポリエステル系熱可塑性エラストマーを用いて成形された空気入りタイヤが開示されている。
熱可塑性の高分子材料(樹脂材料)を用いたタイヤは、ゴム製の従来タイヤと比べて、製造が容易で且つ低コストである。また、熱可塑性の高分子材料を用いてタイヤを製造する場合、製造効率を高め、低コストを実現しながらも、従来のゴム製タイヤと比して遜色のない性能(タイヤの要求特性)を実現することが求められている。
しかし、前記特許文献1のようにカーカスプライなどの補強部材を内包せず均一な熱可塑性樹脂のみでタイヤを形成した場合、ゴム製の従来タイヤと同等の耐応力、耐内圧及び剛性を発揮することは容易には実現し難い。一方、前記特許文献2では、タイヤ本体(タイヤ骨格体)のトレッド底部のタイヤ半径方向外面に、補強コードをタイヤ周方向に連続して螺旋状に巻回した補強層を設け、タイヤ本体の耐カット性や耐パンク性を改善している。
また、補強層(ベルト層)に用いられるスチールコード(ワイヤー)に関する技術としては、ラジアルタイヤのカーカス層、ビード補強層及びベルト層に用いることのできるタイヤ用スチールコード(下記特許文献3参照)や、熱可塑性エラストマー組成物でスチールワイヤーを被覆してなるスチールコードをベルト層(ベルト部)やカーカス部の補強材として用いた空気入りタイヤが提案されている(下記特許文献4参照)。
特開2003−104008号公報 特開平03−143701号公報 特許第4423772号公報 特許第4465916号公報
一般に、補強コードを用いる場合には、タイヤの性能上、タイヤ骨格体に補強コードが十分に固定されることが要求される。しかし、補強コードとしてスチールコード等の金属部材を用いた場合、通常の成型条件では補強コードとタイヤ骨格体との接着性を良好にすることは難しい。また、本出願人が検討したところ、走行時の振動等にも耐えうるようなタイヤ骨格体とスチールコード等の補強部材との接着耐久性を向上させることで、タイヤ自体の耐久性を向上させることができることを見出した。
これに対し、前記特許文献3に記載のタイヤ用スチールコードは、ワイヤーにより構成されるコアとシースとからなる撚り構造のスチール構造に対して熱可塑性エラストマー配合物を充填するものである。しかし、当該技術はゴム製のラジアルタイヤに装着することを意図したものであり、樹脂材料を用いたタイヤと補強部材との関係については開示されていない。また、前記特許文献4に記載のタイヤにおいても、タイヤ骨格体として樹脂材料を用いたタイヤについて、補強部材とタイヤ骨格体との接着耐久性を向上させることについては開示されていない。
本発明は、前記問題を解決すべく成されたものであり、樹脂材料で形成され、補強コードとタイヤ骨格体との接着耐久性に優れたタイヤを提供することを目的とする。
上記課題は以下の手段によって解決される。
[1] 樹脂材料で形成され且つ環状のタイヤ骨格体と、前記タイヤ骨格体の外周部に巻回される補強金属コード部材と、を有し、前記補強金属コード部材の少なくとも一部が、少なくとも熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む被覆用混合物で被覆され、前記被覆用混合物は、前記熱可塑性樹脂を含む海相と前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーを含む島相とを含む海島構造を有するタイヤである。
本発明のタイヤは、補強金属コード部材が少なくとも熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーを含む被覆用混合物で被覆されている。熱可塑性樹脂は、溶融状態で金属表面に接触させてそのまま硬化させると金属表面に強固に接着させることができる(補強金属コード部材に対する被覆用混合物の引き抜き耐性の向上)。また、補強金属コード部材とタイヤ骨格体を形成する樹脂材料との界面に前記被覆用混合物が存在していると、補強金属コード部材とタイヤ骨格体との間の剛性段差を緩和させることができる。特に、前記被覆用混合物は、熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーの含有比を調整することで容易に柔軟性(引張弾性率)、破断伸び等の特性を調整することができ、また、熱可塑性樹脂を単一で用いた場合に比して柔軟性を容易に高めることができる。このため、補強金属コード部材が前記被覆用混合物で被覆されていると、タイヤ骨格体を構成する樹脂材料と補強金属コード部材との剛性段差を効果的に緩和しながら、前記補強金属コード部材の引き抜き耐性を向上させることができるため、補強コードとタイヤ骨格体との接着耐久性を向上させることができる。
更に、接着性を改善するために、補強金属コード部材を表面処理し、活性化したり、接着剤を塗布してもよい。
また、前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、他の樹脂との接着性も良好であることが多い。このため、タイヤ骨格体と前記被覆用混合物材料との接着性の観点から、タイヤ骨格体を構成する樹脂材料の選択自由度が高い。
また、本発明のタイヤは、タイヤ骨格体が樹脂材料で形成されているため、従来のゴム製タイヤで必須工程であった加硫工程を必須とせず、例えば、射出成形等でタイヤ骨格体を成形することができる。このため、製造工程の簡素化、時間短縮およびコストダウンなど生産性の向上を図ることができる。更に、樹脂材料をタイヤ骨格体に用いると、従来のゴム製タイヤに比してタイヤの構造を簡素化でき、その結果、タイヤの軽量化を実現することが可能となる。このため、タイヤ骨格体として形成した場合にタイヤの耐摩耗性、耐久性を向上させることができる。
本発明のタイヤは、前記被覆用混合物を熱可塑性樹脂のマトリックスに前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーが分散した海島構造とすることで、被覆用混合物の引張強さ及び破断伸び等の特性や、被覆用混合物に対する補強金属コード部材の引き抜き耐性を向上させることができる。
] 前記被覆用混合物中における、前記熱可塑性樹脂(p)と前記スチレン系熱可塑性エラストマー(e)との質量比(p/e)が、95/5〜55/45である前記[1]タイヤである。
熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとの質量比を前記範囲に規定すると、前記熱可塑性樹脂を含む海相と前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーを含む島相とで構成される海島構造を容易に形成することができる。
] 前記タイヤ骨格体の引張弾性率(x1)、前記被覆用混合物の引張弾性率(x2)及び前記補強金属コード部材の引張弾性率(x3)が、x1<x2<x3の関係を満たす前記[1]又は]のタイヤである。
本発明のタイヤは、被覆用混合物の引張弾性率を、タイヤ骨格体の引張弾性率よりも大きく、補強金属コード部材の引張弾性率よりも小さく設定することで、タイヤ骨格体を構成する樹脂材料と補強金属コード部材との剛性段差を効果的に緩和させて接着耐久性を向上させることができる。
] 前記タイヤ骨格体の破断伸び(y1)、前記被覆用混合物の破断伸び(y2)、及び前記補強金属コード部材の破断伸び(y3)が、y1>y2>y3の関係を満たす前記[1]〜[]のタイヤである。
本発明のタイヤは、被覆用混合物の破断伸びを、補強金属コード部材の破断伸びよりも大きく、タイヤ骨格体の破断伸びよりも小さく設定することで、タイヤ骨格体を構成する樹脂材料と補強金属コード部材との剛性段差を効果的に緩和させて接着耐久性を向上させることができる。
] 前記タイヤ骨格体を形成する前記樹脂材料と、前記被覆用混合物に含まれる前記熱可塑性樹脂とが同種の樹脂である前記[1]〜[]のタイヤである。
本発明のタイヤは、タイヤ骨格体を形成する樹脂材料と被覆用混合物の熱可塑性樹脂とに同種の樹脂を用いることで、タイヤ骨格体と被覆用混合物との接着性を更に高めることができる。
] 前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーが、未変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、又は、これらの組み合わせである[1]〜[]の記載のタイヤ。
前記未変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、特に補強金属コード部材に対する引き抜き耐性、材料の流動性(取り扱い性)、タイヤ骨格体との接着性に優れる材料である。また、酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、特に破断伸びに優れる材料である。更に、酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、未変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーと併用すると、タイヤ骨格体との接着性や補強金属コード部材に対する引き抜き耐性と、優れた破断伸び特性と、の両立を図ることができる。
] 前記被覆用混合物に含まれる前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド系熱可塑性樹脂である[1]〜[]の記載のタイヤ。
前記被覆用混合物の熱可塑性樹脂としてポリアミド系熱可塑性樹脂を用いると、補強金属コード部材に対する引き抜き耐性を更に向上させることができる。
] 前記タイヤ骨格体を形成する前記樹脂材料が、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含む[1]〜[]の記載のタイヤ。
ポリアミド系エラストマーは、弾性率(柔軟性)や強度などの観点からタイヤ骨格体として要求される性能を満たすために好適な樹脂材料であるとともに、熱可塑性樹脂との接着性も良好であることが多い。このため、前記タイヤ骨格体を形成する樹脂材料として、ポリアミド系エラストマーを用いるタイヤ骨格体と前記被覆用混合物材料との接着性の観点から、前記被覆用混合物の材料の選択自由度が高い。
以上説明したように、本発明によれば、樹脂材料で形成され、補強金属コード部材とタイヤ骨格体との接着耐久性に優れたタイヤを提供することができる。
(A)は本発明の一実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図であり、(B)は、リムに装着したビード部の断面図である。 第1の実施形態のタイヤのタイヤケースのクラウン部に補強コードが埋設された状態を示すタイヤ回転軸に沿った断面図である。 コード加熱装置、およびローラ類を用いてタイヤケースのクラウン部に補強コードを埋設する動作を説明するための説明図である。 第2の実施形態のタイヤのタイヤケースのクラウン部上に補強金属コード部材が埋設された補強コード被覆層を有する態様を示すタイヤ回転軸に沿った断面図である。
本発明のタイヤは、樹脂材料で形成され且つ環状のタイヤ骨格体と、前記タイヤ骨格体の外周部に巻回される補強金属コード部材と、を有するタイヤであって、前記補強金属コード部材の少なくとも一部が、少なくとも熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む被覆用混合物で被覆されている。また、被覆用混合物は、前記熱可塑性樹脂を含む海相と前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーを含む島相とを含む海島構造を有している。
補強金属コード部材を用いてタイヤを形成する場合、タイヤの耐久性の観点から補強金属コード部材がタイヤ骨格体に対して十分に固定されていることが望まれる。また、タイヤの耐久性の観点からは、タイヤ形成の際に補強金属コード部材の移動の原因となるコード周囲の空気の残存(気泡)の発生を防止することが好ましい。また、自動車等の乗り心地の観点から樹脂タイヤのタイヤ骨格体に用いられる材料は柔軟であることが好ましい。しかし、金属補強コード部材としてスチールコードなど剛直な部材を用いた場合、柔軟な樹脂材料と補強金属コード部材との弾性率の差(剛性段差)が大きくなってしまい、タイヤ骨格体と補強金属コード部材との十分な接着耐久性を維持することが困難となる。
これに対し、熱可塑性樹脂は、溶融状態で金属表面に接触させてそのまま硬化させると金属表面に強固に接着させることができるため、補強金属コード部材に対する被覆用混合物の引き抜き耐性を向上させることができる。また、補強金属コード部材とタイヤ骨格体を形成する樹脂材料との界面に少なくとも熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む被覆用混合物が存在していると、補強金属コード部材とタイヤ骨格体との間の剛性段差を緩和させることができる。特に、前記被覆用混合物は、熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとの含有比を調整することで容易に柔軟性(引張弾性率)、引張強さ、破断伸び等の特性を調整することができ、また、熱可塑性樹脂を単一で用いた場合に比して柔軟性を容易に高めることができる。更に本発明被覆用混合物は、熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーと主成分としているため、樹脂材料を用いたタイヤ骨格体との接着性にも優れる。このため、補強金属コード部材が前記被覆用混合物で被覆されていると、タイヤ骨格体を構成する樹脂材料と補強金属コード部材との剛性段差を効果的に緩和しながら、前記補強金属コード部材の引き抜き耐性及びタイヤ骨格体との接着性を向上させることができるため、補強金属コード部材とタイヤ骨格体との接着耐久性を向上させることができる。
ここで、「前記補強金属コード部材の少なくとも一部が、少なくとも熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む被覆用混合物で被覆されている」とは、補強金属コード部材の表面の一部又は全部が前記被覆用混合物で被覆されている状態を意味し、例えば、補強金属コード部材を芯としてその外周の一部又は全体が前記被覆用混合物で被覆されている状態や、前記被覆用混合物を含んで構成される補強コード被覆層をタイヤ骨格体の外周部に設けた場合に、補強金属コード部材の一部又は全部が前記補強コード被覆層に埋設された状態が挙げられる。
また、前記補強金属コード部材は、少なくとも一部が前記タイヤ骨格体に埋設されるように構成することができる。例えば、補強金属コード部材を芯としてその外周の一部又は全体が前記被覆用混合物で被覆されている場合には、前記補強金属コード部材が前記タイヤ骨格体に埋設されていると、補強金属コード部材を被覆する被覆用混合物とタイヤ骨格体との接触面積を大きくすることができるため、更に補強金属コード部材の接着耐久性を向上させることができる。また、前記被覆用混合物を含んで構成される補強コード被覆層をタイヤ骨格体の外周部に設けた場合には、タイヤ骨格体表面に補強金属コード部材を埋設させることでタイヤ骨格体に補強金属コード部材を密着固定できると共に、補強コード被覆層としての前記被覆用混合物とタイヤ骨格体との表面とが広く密着して接着されるため、更に補強金属コード部材の接着耐久性を向上させることができる。
以下、本発明における補強金属コード部材及びこれを被覆する少なくとも熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む被覆用混合物、及び、タイヤ骨格体を構成する樹脂材料について説明し、続いて本発明のタイヤの具体的な実施形態について図を用いて説明する。
尚、本明細書において「樹脂」とは、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂を含む概念であり、天然ゴムは含まない。また、「熱可塑性エラストマー」とは、結晶性で融点の高いハードセグメント若しくは高い凝集力のハードセグメントを構成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料を意味する。また、以下樹脂の説明において「同種」とは、エステル系同士、スチレン系同士などの形態を指す。
<補強金属コード部材>
前記補強金属コード部材としては、従来のゴム製タイヤに用いられる金属製のコードなどを適宜用いることができる。前記補強金属コード部材としては、例えば、金属繊維のモノフィラメント(単線)、または、スチール繊維を撚ったスチールコードなどこれら繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)などを用いることができる。また、補強金属コード部材の断面形状やサイズ(直径)等は特に規定されず、所望のタイヤに適したものを適宜選定して用いることができる。
補強金属コード部材は、1本又は複数本がタイヤ骨格体の周方向に巻回されていてもよいし、連続的に周方向に連続して螺旋状に巻回されていてもよい。また、補強金属コード部材は、タイヤ骨格体の幅方向に均一な間隔で周方向に巻回されていてもよいし、交差して巻回されていてもよい。
更に、接着性を改善するために、補強金属コード部材を表面処理し、活性化したり、接着剤を塗布してもよい。
前記補強金属コード部材自体の引張弾性率(以下、特に特定しない限り本明細書で「弾性率」とは引張弾性率を意味する。)としては、通常、100000Mpa〜300000Mpa程度であり、120000Mpa〜270000Mpaが好ましく、150000Mpa〜250000Mpaが更に好ましい。尚、前記補強金属コード部材の引張弾性率は、引張試験機にてZWICK型チャックを用い応力-歪曲線を描き、その傾きから算出する。
前記補強金属コード部材自体の破断伸び(引張破断伸び)としては、通常、0.1%〜15%程度であり、1%〜15%が好ましく、1%〜10%が更に好ましい。前記補強金属コード部材の引張破断伸びは、引張試験機にてZWICK型チャックを用い応力-歪曲線を描き、歪から求められる。
<被覆用混合物>
前記補強金属コード部材を被覆する被覆用混合物は、少なくとも熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む。前記被覆用混合物は、熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとの含有比を調整することで容易に被覆用混合物の柔軟性(弾性率)や引張強さ、破断伸び等の特性を調整することができ、特に熱可塑性樹脂を単一で用いた場合に比して柔軟性を高めることができる。
前記補強金属コード部材は少なくとも一部が前記被覆用混合物に被覆されていればよく、上述のように、補強金属コード部材を芯としてその外周の一部又は全体が前記被覆用混合物で被覆されている状態や、前記被覆用混合物を含んで構成される補強コード被覆層をタイヤ骨格体の外周部に設けた場合に、補強金属コード部材の一部又は全部が前記補強コード被覆層に埋設された状態であればよい。また、補強金属コード部材とタイヤ骨格体との界面となる部位全体が前記被覆用混合物で被覆されていることが好ましく、補強金属コード部材の表面全体として前記被覆用混合物で被覆されていることが更に好ましい。
前記補強金属コード部材を前記被覆用混合物で被覆する方法については特に限定はなく、公知のコードの被覆方法等を適宜応用することができる。例えば、補強金属コード部材を芯としてその外周の一部又は全体が前記被覆用混合物で被覆されている場合には、公知のクロスヘッド押出機を用いてスチールコードに溶融状態の熱可塑性樹脂を被覆させる方法を用いることができる。また、補強コード被覆層を形成する場合は、溶融状態の補強コード被覆層にスチールコードを埋設させたり、スチールコードをタイヤ骨格体に巻回した後に補強コード被覆層を形成してもよい。更に、溶融状態の補強コード被覆層にスチールコードを埋設させた後更に溶融状態の被覆用混合物を積層して完全に補強コード被覆層に埋設させる方法なども用いることができる。
前記被覆用混合物自体のJIS K7113(1995)に規定される引張弾性率としては、タイヤ骨格と補強金属コード部材との剛性段差を効果的に抑制する観点から、50〜2000Mpaが好ましく、50〜1700Mpaがさらに好ましく、50〜1600MPaが特に好ましい。
前記被覆用混合物自体の弾性率は、補強金属コード部材とタイヤ骨格体との剛性段差を効果的に緩和する観点から、タイヤ骨格体を形成する樹脂材料の弾性率の0.1倍〜20倍の範囲内に設定することが好ましく、0.2倍〜10倍の範囲内に設定することが更に好ましく、0.5倍〜5倍の範囲内に設定することが特に好ましい。前記被覆用混合物の弾性率がタイヤ骨格体を形成する熱可塑性樹脂材料の弾性率の20倍以下の場合は、剛性段差の緩和に加えて、クラウン部が硬くなり過ぎずリム組み性が容易になる。また、被覆用混合物の弾性率がタイヤ骨格体を形成する熱可塑性樹脂材料の弾性率の0.1倍以上の場合には、被覆用混合物が柔らかすぎず、ベルト面内せん断剛性に優れタイヤのコーナリング力が向上する。
また、前記被覆用混合物自体の弾性率は、タイヤ骨格体と補強金属コード部材との剛性段差を効果的に緩和させるという観点から、前記タイヤ骨格体の弾性率よりも高く、前記補強金属コード部材の弾性率よりも低いように設定することが好ましい。
また、前記被覆用混合物自体の引張弾性率は、タイヤ骨格体を構成する樹脂材料と補強金属コード部材との剛性段差を効果的に緩和させて接着耐久性を向上させる観点から、タイヤ骨格体の引張弾性率(x1)、被覆用混合物の引張弾性率(x2)、補強金属コード部材の引張弾性率(x3)が、x1<x2<x3の関係を満たすことが好ましい。
前記被覆用混合物自体のJIS K7113(1995)に規定される破断伸びとしては、通常、10〜600%程度であり、10〜500%が好ましく、10〜300%が更に好ましい。
また、前記被覆用混合物自体の破断伸びは、タイヤ骨格体を構成する樹脂材料と補強金属コード部材との剛性段差を効果的に緩和させて接着耐久性を向上させると共に、破断状態を延性破壊とする観点から、タイヤ骨格体の破断伸び(y1)、被覆用混合物の破断伸び(y2)、及び補強金属コード部材の破断伸び(y3)が、y1>y2>y3の関係を満たすことが好ましい。
(熱可塑性樹脂)
前記被覆用混合物に含まれる熱可塑性樹脂としては、後述のタイヤ骨格体に用いられる熱可塑性樹脂のハードセグメントを構成するポリマーを適宜挙げることができる。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン系熱可塑性樹脂、オレフィン系熱可塑性樹脂、塩化ビニル系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、ポリスチレン系熱可塑性樹脂等が挙げられ、ポリアミド系熱可塑性樹脂が特に好ましい。前記被覆用混合物の熱可塑性樹脂としてポリアミド系熱可塑性樹脂を用いると、補強金属コード部材に対する引き抜き耐性を更に向上させることができる。
また、被覆用混合物に含まれる熱可塑性樹脂は、タイヤ骨格体に用いられる樹脂材料との接着性を考慮して選定されることが好ましい。特に、タイヤ骨格体を形成する樹脂材料と、被覆用混合物に含まれる熱可塑性樹脂とで同種の樹脂を用いると、タイヤ骨格体と被覆用混合物との接着性を更に高めることができる。同種の樹脂を用いるとは、例えば、被覆用混合物に含まれる熱可塑性樹脂としてポリアミド系熱可塑性樹脂を用いた場合には、タイヤ骨格体としてポリアミド系熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
被覆用混合物に含まれる熱可塑性樹脂自体のJIS K7113(1995)に規定される引張弾性率としては、50〜2000Mpaが好ましく、70〜1700Mpaがさらに好ましく、100〜1600MPaが特に好ましい。
以下、本発明における被覆用混合物に含まれる熱可塑性樹脂としてポリアミド系熱可塑性樹脂を例に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
−ポリアミド系熱可塑性樹脂−
前記ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、後述のポリアミド系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを構成するポリアミドを挙げることができる。前記ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、例えば、ε-カプロラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド6)、ウンデカンラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド11)、ラウリルラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド12)、ジアミンと二塩基酸とを重縮合ポリアミド(アミド66)又はメタキシレンジアミンを構成単位として有するポリアミド(アミドMX)等を挙げることができる。
前記アミド6は、例えば、{CO−(CH−NH}で表すことができる。前記アミド11は、{CO−(CH10−NH}で表すことができる。前記アミド12は、{CO−(CH11−NH}で表すことができる。前記アミド66は、{CO(CHCONH(CHNH}で表すことができる。また、メタキシレンジアミンを構成単位として有するアミドMXは、例えば、下記構造式(A−1)で表わすことができる〔(A−1)中、nは繰り返し単位数を表す〕。前記アミド6としては、例えば、市販品の宇部興産社製「UBEナイロン」1022B、1011FB等を用いることができる。前記アミド11としては、アルケマ社製 Rilsan Bを用いることができる。前記アミド12としては、宇部興産社製「UBEナイロン」3024U、3020U,3014Uを用いることができる。前記アミド66としては、「UBEナイロン」2020B,2015B等を用いることができる。また、前記アミドMXとしては、例えば、市販品の三菱ガス化学社製のMXナイロン(S6001、S6021,S6011)等を用いることができる。
前記ポリアミド系熱可塑性樹脂は、前記各構成単位のみで構成されるホモポリマーであってもよく、上述の構成単位と他のモノマーとのコポリマーであってもよい。コポリマーの場合、各ポリアミド系熱可塑性樹脂において、各々の構成単位の含有率が40質量%以上であることが好ましい。
前記ポリアミド系熱可塑性樹脂の数平均分子量としては、被覆用混合物の弾性率を制御し、接着性等を向上させる観点から、300〜30000が好ましい。また、前記ソフトセグメントを構成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性および低温柔軟性の観点から、200〜20000が好ましい。
(ポリスチレン系熱可塑性エラストマー)
前記被覆用混合物にはポリスチレン系熱可塑性エラストマー含まれる。前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、他の樹脂との接着性も良好であることが多く、タイヤ骨格体と前記被覆用混合物材料との接着性の観点から、タイヤ骨格体を構成する樹脂材料の選択自由度が高い。前記スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、酸基によって変性されている酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、または、未変性のポリスチレン系熱可塑性エラストマーのいずれをも用いることができる。また、未変性のポリスチレン系熱可塑性エラストマーと酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを併用してもよい。前記未変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、特に補強金属コード部材に対する引き抜き耐性、材料の流動性(取り扱い性)、タイヤ骨格体との接着性に優れる材料である。また、酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、特に破断伸びに優れる材料である。更に、酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、未変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーと併用すると、タイヤ骨格体との接着性や補強金属コード部材に対する引き抜き耐性と、優れた破断伸び特性と、の両立を図ることができる。
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、少なくともポリスチレンがハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエチレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン等)がガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。また、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、加硫されたSBR樹脂等の合成ゴムを用いてもよい。
前記ハードセグメントを形成するポリスチレンとしては、例えば、公知のラジカル重合法、イオン性重合法で得られるものが好適に使用でき、例えばアニオンリビング重合を持つポリスチレンが挙げられる。また、前記ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(2,3−ジメチル−ブタジエン)等が挙げられる。また、酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、後述するように未変性のポリスチレン系熱可塑性エラストマーを酸変性することで得られる。
上述のハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。この中でもポリスチレン/ポリブタジエンの組合せ、ポリスチレン/ポリイソプレンの組合せが好ましい。また、熱可塑性エラストマーの意図しない架橋反応を抑制するため、ソフトセグメントは水素添加されていることが好ましい。
前記ハードセグメントを構成するポリマー(ポリスチレン)の数平均分子量としては、5000〜500000が好ましく、10000〜200000が好ましい。
また、前記ソフトセグメントを構成するポリマーの数平均分子量としては、5000〜1000000が好ましく、10000〜800000が更に好ましく、30000〜500000が特に好ましい。更に、前記ハードセグメント(x)およびソフトセグメント(y)との体積比(x:y)は、成形性の観点から、5:95〜80:20が好ましく、10:90〜70:30が更に好ましい。
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、前記ハードセグメントを形成するポリマーおよびソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン系共重合体[SBS(ポリスチレン−ポリ(ブチレン)ブロック−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン)]、スチレン−イソプレン共重合体[ポリスチレン−ポリイソプレンブロック−ポリスチレン)、スチレン−プロピレン系共重合体[SEP(ポリスチレン−(エチレン/プロピレン)ブロック)、SEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEB(ポリスチレン(エチレン/ブチレン)ブロック)等が挙げられ、SEBSが特に好ましい。
前記未変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、市販品の旭化成社製の「タフテック」シリーズ(例えば、H1031、H1041、H1043、H1051、H1052、H1053、H1062、H1082、H1141、H1221、H1272)、(株)クラレ製のSEBS(「ハイブラー」5127、5125等)、SEPS(「セプトン」2002、2063、S2004、S2006等)等を用いることができる。
前記「酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー」は、未変性のポリスチレン系熱可塑性エラストマーに、カルボン酸基、硫酸基、燐酸基等の酸性基を有する不飽和化合物を結合させて酸変性させたポリスチレン系熱可塑性エラストマーを意味する。酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、例えば、不飽和カルボン酸や不飽和カルボン酸無水物の不飽和結合部位をポリスチレン系熱可塑性エラストマーに結合(例えば、グラフト重合)させることで得ることができる。
酸性基を有する(不飽和)化合物としては、ポリアミド系熱可塑性エラストマーの劣化抑制の観点からは、弱酸基であるカルボン酸基を有する化合物が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等が挙げられる。
前記酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、旭化成社製、タフテック、例えば、M1943、M1911、M1913、Kraton社製、FG19181G等が挙げられる。
酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの酸価は、0mg(CHONa)/gを超え20mg(CHONa)/g以下であることが好ましく、0mg(CHONa)/gを超え17mg(CHONa)/g以下であることがさらに好ましく、0mg(CHONa)/gを超え15mg(CHONa)/g以下であることが特に好ましい。
−被覆用混合物中の熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマーとの含有量−
上述のように前記被覆用混合物は、被覆用混合物の引張弾性率及び破断伸び等の特性や、被覆用混合物に対する補強金属コード部材の引き抜き耐性を向上させる観点から、熱可塑性樹脂で構成されるマトリックス相である海相と、前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーと、で構成される分散相である島相とを有する海島構造を有する態様が好ましい。前記被覆用混合物を熱可塑性樹脂のマトリックスに前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーが分散した海島構造とすることで、被覆用混合物の引張弾性率及び破断伸び等の特性や、被覆用混合物に対する補強金属コード部材の引き抜き耐性を向上させることができる。
前記被覆用混合物において、熱可塑性樹脂の含有量は特に限定はないが、例えば、前記熱可塑性樹脂を含む海相と前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーを含む島相とを含んで構成される海島構造を形成する場合には、体積基準では、被覆用混合物の全量に対して、51〜95体積%が好ましく、60〜90体積%が更に好ましく、65〜90体積%が好ましい。同様に質量基準では、選択される熱可塑性樹脂の比重によっても異なるが、前記熱可塑性樹脂の含有量は、被覆用混合物の全量に対して、55〜95質量%が好ましく、60〜90質量%が更に好ましく、65〜90質量%が好ましい。
同様に、被覆用混合物中のポリスチレン系熱可塑性エラストマーの含有量は特に限定はないが、前記熱可塑性樹脂を含む海相と前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーを含む島相とを含んで構成される海島構造を形成する場合には、体積基準では、被覆用混合物の全量に対して、5〜49体積%が好ましく、10〜40体積%が更に好ましく、15〜40体積%が好ましい。同様に質量基準では、選択される熱可塑性樹脂の比重によっても異なるが、前記熱可塑性樹脂の含有量は、被覆用混合物の全量に対して、5〜45質量%が好ましく、10〜40質量%が更に好ましく、15〜40質量%が好ましい。
前記熱可塑性樹脂を含む海相と前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーを含む島相とで構成される海島構造を容易に形成する観点から、前記被覆用混合物中における、前記熱可塑性樹脂(p)と前記スチレン系熱可塑性エラストマー(e)との質量比(p/e)は、95/5〜55/45が好ましく、90/10〜60/40が更に好ましく、85/15〜70/30が好ましい。
また、上記海島構造において、酸変性のポリスチレン系熱可塑性エラストマーの酸価が高いほど島相が小さく、酸価が低いほど島相が大きくなる傾向にある。このように、島相が樹脂材料中に微分散していると、耐衝撃性が特に向上する。また、酸変性のポリスチレン系熱可塑性エラストマーの酸化が高いほど、ポリアミド系熱可塑性樹脂との相互作用が大きくなり、樹脂材料の溶融粘度が増大する。酸変性のポリスチレン系熱可塑性エラストマーと未変性のポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを併せて使用し、酸化を調整することで、被覆用混合物の溶融粘度を高くなりすぎるのを抑制することができる。
また、前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとして、未変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(w)と酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(z)とを併用する場合には、取り扱い性等の観点から、質量比(w/z)10/90〜90/10が好ましく、15/85〜85/15が更に好ましく、20/80〜80/20が特に好ましい。
なお、一般に酸変性エラストマー等の変性エラストマーを用いた場合、混練り(分散)時に少ない比エネルギー及び高い混練り技術を必要としないという効果が得られるが、その配合量が多いと樹脂のゲル化を引き起こし、押出し時、肌荒れ等の外観不良(フィッシュアイ)を引き起こすこともある。かかる観点から、前記酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーを用いる場合、被覆用混合物中の酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの含有量は20質量%以下、例えば5〜20質量%とすることが好ましい。
ポリエチレン系熱可塑性エラストマーの島相が熱可塑性樹脂中に微分散していることは、SEM(走査型電子顕微鏡、scanning electron microscope)を用いた写真観察から確認することができる。
また、ポリスチレン系熱可塑性エラストマーを含む島相のサイズ(島相の長径)は、
0.4μm〜10.0μm程度であることが好ましく、0.5μm〜7μm程度であることが更に好ましく、0.5μm〜5μm程度であることが特に好ましい。これら各相のサイズは、SEM(走査型電子顕微鏡、scanning electron microscope)を用いた観察写真を用いて測定することができる。
[樹脂材料]
次に、タイヤ骨格体を形成する樹脂材料について説明する。ここで、「樹脂材料」とは、熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)及び熱硬化性樹脂を含む概念であり、加硫ゴムは含まない。
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
前記熱可塑性エラストマーは、一般に、ハードセグメントを構成するポリマーとソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料を意味する。前記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。なお、走行時に必要とされる弾性と製造時の成形性等を考慮すると前記タイヤ骨格体は、前記樹脂材料として、熱可塑性樹脂を用いるのが好ましく、熱可塑性エラストマーを用いることが更に好ましい。更に、補強金属コード部材を被覆する熱可塑性樹脂としてポリアミド系熱可塑性樹脂を用いる場合には、特にポリアミド系熱可塑性エラストマーを用いるのが好ましい。
−ポリアミド系熱可塑性エラストマー−
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーとは、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーの主鎖にアミド結合(−CONH−)を有するものを意味する。ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418:2007に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)等や、特開2004−346273号公報に記載のポリアミド系エラストマー等を挙げることができる。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリアミドが結晶性で融点の高いハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、ポリエステルまたはポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーはハードセグメントおよびソフトセグメントの他に、ジカルボン酸等の鎖長延長剤を用いてもよい。前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、例えば、下記一般式(1)または一般式(2)で表されるモノマーによって生成されるポリアミドを挙げることができる。
一般式(1)

[一般式(1)中、Rは、炭素数2〜20の炭化水素の分子鎖、または、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。]
一般式(2)

[一般式(2)中、Rは、炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、または、炭素数3〜20のアルキレン基を表す。]
一般式(1)中、Rとしては、炭素数3〜18の炭化水素の分子鎖または炭素数3〜18のアルキレン基が好ましく、炭素数4〜15の炭化水素の分子鎖または炭素数4〜15のアルキレン基が更に好ましく、炭素数10〜15の炭化水素の分子鎖または炭素数10〜15のアルキレン基が特に好ましい。また、一般式(2)中、Rとしては、炭素数3〜18の炭化水素の分子鎖または炭素数3〜18のアルキレン基が好ましく、炭素数4〜15の炭化水素の分子鎖または炭素数4〜15のアルキレン基が更に好ましく、炭素数10〜15の炭化水素の分子鎖または炭素数10〜15のアルキレン基が特に好ましい。
前記一般式(1)または一般式(2)で表されるモノマーとしては、ω−アミノカルボン酸やラクタムが挙げられる。また、前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、これらω−アミノカルボン酸やラクタムの重縮合体や、ジアミンとジカルボン酸との共縮重合体等が挙げられる。
前記ω−アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸などの炭素数5〜20の脂肪族ω−アミノカルボン酸等を挙げることができる。また、ラクタムとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタム、ウデカンラクタム、ω−エナントラクタム、2−ピロリドンなどの炭素数5〜20の脂肪族ラクタムなどを挙げることができる。
前記ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミン、メタキシレンジアミンなどの炭素数2〜20の脂肪族ジアミンなどのジアミン化合物を挙げることができる。また、ジカルボン酸は、HOOC−(R)m−COOH(R:炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、m:0または1)で表すことができ、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタムまたはウデカンラクタムを開環重縮合したポリアミドを好ましく用いることができる。
また、前記ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリエーテルが挙げられ、例えば、ポリエチレングリコール、プリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ABA型トリブロックポリエーテル等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を用いることができる。また、ポリエーテルの末端にアニモニア等を反応させることによって得られるポリエーテルジアミン等を用いることができる。
ここで、「ABA型トリブロックポリエーテル」とは、下記一般式(3)に示されるポリエーテルを意味する。
一般式(3)

[一般式(3)中、xおよびzは、1〜20の整数を表す。yは、4〜50の整数を表す。]
前記一般式(3)において、xおよびzとしては、それぞれ、1〜18の整数が好ましく、1〜16の整数が更に好ましく、1〜14の整数が特に好ましく、1〜12の整数が最も好ましい。また、前記一般式(3)において、yとしては、それぞれ、5〜45の整数が好ましく、6〜40の整数が更に好ましく、7〜35の整数が特に好ましく、8〜30の整数が最も好ましい。
前記ハードセグメントと前記ソフトセグメントとの組合せとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。この中でも、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリエチレングリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリプロピレングリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルの組合せ、が好ましく、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルの組合せが特に好ましい。
前記ハードセグメントを構成するポリマー(ポリアミド)の数平均分子量としては、溶融成形性の観点から、300〜15000が好ましい。また、前記ソフトセグメントを構成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性および低温柔軟性の観点から、200〜6000が好ましい。更に、前記ハードセグメント(x)およびソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、50:50〜90:10が好ましく、50:50〜80:20が更に好ましい。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、前記ハードセグメントを形成するポリマーおよびソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、市販品の宇部興産(株)の「UBESTA XPA」シリーズ(例えば、XPA9063X1、XPA9055X1、XPA9048X2、XPA9048X1、XPA9040X1、XPA9040X2XPA9044等)、ダイセル・エポニック(株)の「ベスタミド」シリーズ(例えば、E40−S3、E47−S1、E47−S3、E55−S1、E55−S3、EX9200、E50−R2)等を用いることができる。
−ポリスチレン系熱可塑性エラストマー
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリスチレンがハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエチレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。前記ハードセグメントを形成するポリスチレンとしては、例えば、公知のラジカル重合法、イオン性重合法で得られるものが好適に使用でき、例えば、アニオンリビング重合を持つポリスチレンが挙げられる。
また、前記ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(2,3−ジメチル−ブタジエン)等が挙げられる。
上述のハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。この中でもポリスチレン/ポリブタジエンの組合せ、ポリスチレン/ポリイソプレンの組合せが好ましい。また、熱可塑性エラストマーの意図しない架橋反応を抑制するため、ソフトセグメントは水素添加されていることが好ましい。
前記ハードセグメントを構成するポリマー(ポリスチレン)の数平均分子量としては、5000〜500000が好ましく、10000〜200000が好ましい。
また、前記ソフトセグメントを構成するポリマーの数平均分子量としては、5000〜1000000が好ましく、10000〜800000が更に好ましく、30000〜500000が特に好ましい。更に、前記ハードセグメント(x)およびソフトセグメント(y)との体積比(x:y)は、成形性の観点から、5:95〜80:20が好ましく、10:90〜70:30が更に好ましい。
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、前記ハードセグメントを形成するポリマーおよびソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン系共重合体[SBS(ポリスチレン−ポリ(ブチレン)ブロック−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン)]、スチレン−イソプレン共重合体[ポリスチレン−ポリイソプレンブロック−ポリスチレン)、スチレン−プロピレン系共重合体[SEP(ポリスチレン−(エチレン/プロピレン)ブロック)、SEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEB(ポリスチレン(エチレン/ブチレン)ブロック)等が挙げられる。
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、市販品の旭化成社製の「タフテック」シリーズ(例えば、H1031、H1041、H1043、H1051、H1052、H1053、タフテックH1062、H1082、H1141、H1221、H1272)、(株)クラレ製のSEBS(8007、8076等)、SEPS(2002、2063等)等を用いることができる。
−ポリウレタン系熱可塑性エラストマー−
前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリウレタンが物理的な凝集によって疑似架橋を形成しているハードセグメントを構成し、他のポリマーが非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられ、例えば、下記式Aで表される単位構造を含むソフトセグメントと、下記式Bで表される単位構造を含むハードセグメントとを含む共重合体として表すことができる。

[前記式中、Pは、長鎖脂肪族ポリエーテルまたは長鎖脂肪族ポリエステルを表す。Rは、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素を表す。P’は、短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、または、芳香族炭化水素を表す。]
前記式A中、Pで表される長鎖脂肪族ポリエーテルおよび長鎖脂肪族ポリエステルとしては、例えば、分子量500〜5000のものを使用することができる。前記Pは、前記Pで表される長鎖脂肪族ポリエーテルおよび長鎖脂肪族ポリエステルを含むジオール化合物に由来する。このようなジオール化合物としては、例えば、分子量が前記範囲内にある、ポリエチレングリコール、プリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリ(ブチレンアジベート)ジオール、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、前記ABA型トリブロックポリエーテル等が挙げられる。
これらは単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
前記式Aおよび式B中、前記Rは、前記Rで表される脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素または芳香族炭化水素を含むジイソシアネート化合物に由来する。前記Rで表される脂肪族炭化水素を含む脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,3−プロピレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、および1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
また、前記Rで表される脂環族炭化水素を含むジイソシアネート化合物としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネートおよび4,4−シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。更に、前記Rで表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジイソシアネート化合物としては例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートが挙げられる。
これらは単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
前記式B中、P’ で表される短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、または、芳香族炭化水素としては、例えば、分子量500未満のものを使用することができる。また、前記P’は、前記P’ で表される短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素または芳香族炭化水素を含むジオール化合物に由来する。前記P’で表される短鎖脂肪族炭化水素を含む脂肪族ジオール化合物としては、グリコールおよびポリアルキレングリコールが挙げられ、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオールおよび1,10−デカンジオールが挙げられる。
また、前記P’で表される脂環族炭化水素を含む脂環族ジオール化合物としては、例えば、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,3−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、およびシクロヘキサン−1,4−ジメタノール等が挙げられる。
更に、前記P’で表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジオール化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、クロロヒドロキノン、ブロモヒドロキノン、メチルヒドロキノン、フェニルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、フェノキシヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノールA、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)エタン、1,4−ジヒドロキシナフタリン、および2,6−ジヒドロキシナフタリン等が挙げられる。
これらは単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
前記ハードセグメントを構成するポリマー(ポリウレタン)の数平均分子量としては、溶融成形性の観点から、300〜1500が好ましい。また、前記ソフトセグメントを構成するポリマーの数平均分子量としては、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの柔軟性および熱安定性の観点から、500〜20000が好ましく、500〜5000が更に好ましく、特に好ましくは500〜3000である。また、前記ハードセグメント(x)およびソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、15:85〜90:10が好ましく、30:70〜90:10が更に好ましい。
前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、前記ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、特開平5−331256に記載の熱可塑性ポリウレタンを用いることができる。
前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとして、具体的には、芳香族ジオールと芳香族ジイソシアネートとからなるハードセグメントと、ポリ炭酸エステルからなるソフトセグメントの組合せが好ましく、トリレンジイソシアネート(TDI)/ポリエステル系ポリオール共重合体、TDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、TDI/カプロラクトン系ポリオール共重合体、TDI/ポリカーボネート系ポリオール共重合体、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)/ポリエステル系ポリオール共重合体、MDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI/カプロラクトン系ポリオール共重合体、MDI/ポリカーボネート系ポリオール共重合体、MDI+ヒドロキノン/ポリヘキサメチレンカーボネート共重合体が好ましく、TDI/ポリエステル系ポリオール共重合体、TDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI/ポリエステルポリオール共重合体、MDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI+ヒドロキノン/ポリヘキサメチレンカーボネート共重合体が更に好ましい。
また、前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、市販品のBASF社製の「エラストラン」シリーズ(例えば、ET680、ET880、ET690、ET890等)、(株)クラレ社製「クラミロンU」シリーズ(例えば、2000番台、3000番台、8000番台、9000番台)、日本ミラクトラン(株)製の「ミラクトラン」シリーズ(例えば、XN−2001、XN−2004、P390RSUP、P480RSUI、P26MRNAT、E490、E590、P890)等を用いることができる。
−ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー−
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリオレフィンが結晶性で融点の高いハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、前記ポリオレフィン、他のポリオレフィン、ポリビニル化合物)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。前記ハードセグメントを形成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられる。
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン−α−オレフィンランダム共重合体、オレフィンブロック共重合体等が挙げられ、例えば、プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1ペンテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、1−ブテン−4−メチル−ペンテン、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、プロピレン−メタクリル酸共重合体、プロピレン−メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン−メチルアクリレート共重合体、プロピレン−エチルアクリレート共重合体、プロピレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1ペンテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、プロピレン−メタクリル酸共重合体、プロピレン−メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン−メチルアクリレート共重合体、プロピレン−エチルアクリレート共重合体、プロピレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体が好ましく、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体が更に好ましい。
また、エチレンとプロピレンといったように2種以上のポリオレフィン樹脂を組み合わせて使用してもよい。また、前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー中のポリオレフィン含率は、50質量%以上100質量%以下が好ましい。
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量としては、5,000〜10,000,000であることが好ましい。ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量が5,000〜10,000,000にあると、熱可塑性樹脂材料の機械的物性が十分であり、加工性にも優れる。同様の観点から、7,000〜1,000,000であることが更に好ましく、10,000〜1,000,000が特に好ましい。これにより、熱可塑性樹脂材料の機械的物性及び加工性を更に向上させることができる。また、前記ソフトセグメントを構成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、200〜6000が好ましい。更に、前記ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、50:50〜95:15が好ましく、50:50〜90:10が更に好ましい。
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、公知の方法によって共重合することで合成することができる。
また、前記ポリオレフィン熱可塑性エラストマーとしては、熱可塑性エラストマーを酸変性してなるものを用いてもよい。
前記「ポリオレフィン熱可塑性エラストマーを酸変性してなるもの」とは、ポリオレフィン熱可塑性エラストマーに、カルボン酸基、硫酸基、燐酸基等の酸性基を有する不飽和化合物を結合させることをいう。例えば、酸性基を有する不飽和化合物として、不飽和カルボン酸(一般的には、無水マレイン酸)を用いるとき、オレフィン系熱可塑性エラストマーに、不飽和カルボン酸の不飽和結合部位を結合(例えば、グラフト重合)させることが挙げられる。
酸性基を有する化合物は、ポリオレフィン熱可塑性エラストマーの劣化抑制の観点からは、弱酸基であるカルボン酸基を有する化合物が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等が挙げられる。
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、市販品の三井化学社製の「タフマー」シリーズ(例えば、A0550S、A1050S、A4050S、A1070S、A4070S,A35070S、A1085S、A4085S、A7090、A70090、MH7007、MH7010、XM−7070、XM−7080、BL4000、BL2481、BL3110、BL3450、P−0275、P−0375、P−0775、P−0180、P−0280、P−0480、P−0680)、三井・デュポンポリケミカル(株)「ニュクレル」シリーズ(例えば、AN4214C、AN4225C、AN42115C、N0903HC、N0908C、AN42012C、N410、N1050H、N1108C、N1110H、N1207C、N1214、AN4221C、N1525、N1560、N0200H、AN4228C、AN4213C、N035C、「エルバロイAC」シリーズ(例えば、1125AC、1209AC、1218AC、1609AC、1820AC、1913AC、2112AC、2116AC、2615AC、2715AC、3117AC、3427AC、3717AC)、住友化学(株)「アクリフト」シリーズ、「エバテート」シリーズ、東ソー(株)「ウルトラセン」シリーズ等を用いることができる。
更に、前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、市販品のプライムポリマー製の「プライムTPO」シリーズ(例えば、E−2900H、F−3900H、E−2900、F−3900、J−5900、E−2910、F−3910、J−5910、E−2710、F−3710、J−5910、E−2740、F−3740、R110MP、R110E、T310E、M142E等)等も用いることができる。
−ポリエステル系熱可塑性エラストマー−
前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリエステルが結晶性で融点の高いハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、ポリエステルまたはポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。
前記ハードセグメントを形成するポリエステルとしては、芳香族ポリエステルを用いることができる。芳香族ポリエステルは、例えば、芳香族ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールとから形成することができる。前記芳香族ポリエステルとしては、好ましくは、テレフタル酸およびまたはジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールから誘導されるポリブチレンテレフタレートであり、更に、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、あるいはこれらのエステル形成性誘導体などのジカルボン酸成分と、分子量300以下のジオール、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコールなどの脂肪族ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどの脂環式ジオール、キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−p−クオーターフェニルなどの芳香族ジオールなどから誘導されるポリエステル、あるいはこれらのジカルボン酸成分およびジオール成分を2種以上併用した共重合ポリエステルであってもよい。また、3官能以上の多官能カルボン酸成分、多官能オキシ酸成分および多官能ヒドロキシ成分などを5モル%以下の範囲で共重合することも可能である。
前記ハードセグメントを形成するポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、プリブチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
また、前記ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエーテルが挙げられる。
前記脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体等が挙げられる。
前記脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。
これらの脂肪族ポリエーテルおよび脂肪族ポリエステルのなかでも、得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性の観点から、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが好ましい。
また、前記ソフトセグメントを構成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性および低温柔軟性の観点から、300〜6000が好ましい。更に、前記ハードセグメント(x)およびソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、99:1〜20:80が好ましく、98:2〜30:70が更に好ましい。
上述のハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。この中でもハードセグメントがポリブチレンテレフタレート、ソフトセグメント脂肪族ポリエーテルの組み合わせが好ましく、ハードセグメントがポリブチレンテレフタレート、ソフトセグメントがポリ(エチレンオキシド)グリコールが更に好ましい。
前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、市販品の東レ・デュポン製の「ハイトレル」シリーズ(例えば、3046、5557、6347、4047、4767等)、東洋紡社製「ペルプレン」シリーズ(P30B、P40B、P40H、P55B、P70B、P150B、P280B、P450B、P150M、S1001、S2001、S5001、S6001、S9001等))を用いることができる。
上述の熱可塑性エラストマーは、前記ハードセグメントを形成するポリマーおよびソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
前記樹脂材料の融点としては、通常100℃〜350℃程度であるが、タイヤの生産性の観点から100〜250℃程度が好ましく、100℃〜200℃が更に好ましい。
また、タイヤの耐久性や生産性を向上させることができる。前記樹脂材料には、所望に応じて、ゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂、各種充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ)、老化防止剤、オイル、可塑剤、発色剤、耐候剤等の各種添加剤を含有(ブレンド)させてもよい。
前記樹脂材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113(1995)に規定される引張弾性率としては、50〜1000MPaが好ましく、50〜800MPaがさらに好ましく、50〜700MPaが特に好ましい。前記樹脂材料の引張弾性率が、100〜1000MPaであると、タイヤ骨格の形状を保持しつつリム組みを効率的におこなうことができる。
前記樹脂材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113(1995)に規定される引張強さとしては、通常、15〜70Mpa程度であり、17〜60Mpaが好ましく、20〜50MPaが更に好ましい。
前記樹脂材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113(1995)に規定される引張降伏強さは、5MPa以上が好ましく、5〜20MPaが好ましく、5〜17MPaがさらに好ましい。前記樹脂材料の引張降伏強さが、5MPa以上であると、走行時などにタイヤにかかる荷重に対する変形に耐えることができる。
前記樹脂材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113(1995)に規定される引張降伏伸びは、10%以上が好ましく、10〜70%が好ましく、15〜60%がさらに好ましい。前記樹脂材料の引張降伏伸びが、10%以上であると、弾性領域が大きく、リム組み性をよくすることができる。
前記樹脂材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113(1995)に規定される引張破断伸びとしては、50%以上が好ましく、100%以上が好ましく、150%以上がさらに好ましく、200%以上が特に好ましい。前記樹脂材料の引張破断伸びが、50%以上であると、リム組み性がよく、衝突に対して破壊しにくくすることができる。
前記樹脂材料(タイヤ骨格体)自体のISO75−2又はASTM D648に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)としては、50℃以上が好ましく、50〜150℃が好ましく、50〜130℃がさらに好ましい。前記樹脂材料の荷重たわみ温度が、50℃以上であると、タイヤの製造において加硫を行う場合であってもタイヤ骨格体の変形を抑制することができる。
[第1の実施形態]
以下に、図面に従って本発明のタイヤの第1の実施形態に係るタイヤを説明する。
本実施形態のタイヤ10について説明する。図1(A)は、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図である。図1(B)は、リムに装着したビード部の断面図である。図1に示すように、本実施形態のタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。本実施形態においては、補強金属コード部材として撚り構造を有するスチールコード(引張弾性率210000MPa、破断伸び8%、)が用いられており、これを芯としてその外周を少なくとも熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む被覆用混合物で被覆した補強コード26が用いられている。本形態においては、ポリアミド系熱可塑性樹脂としてアミド12(例えば、宇部興産社製「3024U」)70質量%とポリスチレン系熱可塑性エラストマー(未変性SEBS;例えば、タフテック社製H1052)30質量%との混合物(引張弾性率740MPa、破断伸び35%、引張強さ22MPa)を用いた例について説明する。
更に、本実施形態においては、環状のタイヤ骨格体(タイヤケース17)の軸方向に沿った断面視で、熱可塑性樹脂で被覆された補強金属コード部材(即ち、補強コード26)の少なくとも一部がタイヤ骨格体の外周部に埋設された状態で螺旋状に巻回されている。
図1(A)に示すように、タイヤ10は、図1(B)に示すリム20のビードシート21およびリムフランジ22に接触する1対のビード部12と、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14と、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部16(外周部)と、からなるタイヤケース17を備えている。
ここで、本実施形態のタイヤケース17は、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(例えば、宇部興産社製、UBESTA、「XPA9055X1」:引張弾性率303MPa、破断伸び350%)、引張強さ41MPa)を用いて構成されている。
本実施形態においてタイヤケース17は、単一の熱可塑性樹脂材料で形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと同様に、タイヤケース17の各部位毎(サイド部14、クラウン部16、ビード部12など)に異なる特徴を有する熱可塑性樹脂材料を用いてもよい。また、タイヤケース17(例えば、ビード部12、サイド部14、クラウン部16等)に、補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布等)を埋設配置し、補強材でタイヤケース17を補強してもよい。
本実施形態のタイヤケース17は、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含む樹脂材料で形成された一対のタイヤケース半体(タイヤ骨格片)17A同士を接合させたものである。タイヤケース半体17Aは、一つのビード部12と一つのサイド部14と半幅のクラウン部16とを一体として射出成形等で成形された同一形状の円環状のタイヤケース半体17Aを互いに向かい合わせてタイヤ赤道面部分で接合することで形成されている。なお、タイヤケース17は、2つの部材を接合して形成するものに限らず、3以上の部材を接合して形成してもよい。
前記樹脂材料で形成されるタイヤケース半体17Aは、例えば、真空成形、圧空成形、インジェクション成形、メルトキャスティング等で成形することができる。このため、従来のようにゴムでタイヤケースを成形する場合に比較して、加硫を行う必要がなく、製造工程を大幅に簡略化でき、成形時間を省略することができる。
また、本実施形態では、タイヤケース半体17Aは左右対称形状、即ち、一方のタイヤケース半体17Aと他方のタイヤケース半体17Aとが同一形状とされているので、タイヤケース半体17Aを成形する金型が1種類で済むメリットもある。
本実施形態において、図1(B)に示すようにビード部12には、従来一般の空気入りタイヤと同様のスチールコードからなる円環状のビードコア18が埋設されている。しかし、本発明はこの構成に限定されず、ビード部12の剛性が確保され、リム20との嵌合に問題なければ、ビードコア18を省略することもできる。なお、スチールコード以外に、有機繊維コード、樹脂被覆した有機繊維コード、または硬質樹脂などで形成されていてもよい。
本実施形態では、ビード部12のリム20と接触する部分や、少なくともリム20のリムフランジ22と接触する部分に、タイヤケース17を構成する樹脂材料よりもシール性に優れた材料、例えば、ゴムからなる円環状のシール層24が形成されている。このシール層24はタイヤケース17(ビード部12)とビードシート21とが接触する部分にも形成されていてもよい。タイヤケース17を構成する樹脂材料よりもシール性に優れた材料としては、タイヤケース17を構成する樹脂材料に比して軟質な材料を用いることができる。シール層24に用いることのできるゴムとしては、従来一般のゴム製の空気入りタイヤのビード部外面に用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。また、タイヤケース17を形成する樹脂材料のみでリム20との間のシール性が確保できれば、ゴムのシール層24は省略してもよく、前記樹脂材料よりもシール性に優れる他の熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマー)を用いてもよい。このような他の熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル樹脂等の樹脂やこれら樹脂とゴム若しくはエラストマーとのブレンド物等が挙げられる。また、熱可塑性エラストマーを用いることもでき、例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、或いは、これらエラストマー同士の組み合わせや、ゴムとのブレンド物等が挙げられる。
図1に示すように、クラウン部16には、タイヤケース17を構成するスチールコードを少なくとも熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む被覆用混合物で被覆した補強コード26がタイヤケース17の周方向に巻回されている。補強コード26は、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視で、少なくとも一部がクラウン部16に埋設された状態で螺旋状に巻回されている。補強コード26のタイヤ径方向外周側には、タイヤケース17を構成する樹脂材料よりも耐摩耗性に優れた材料、例えばゴムからなるトレッド30が配置されている。
図2を用いて補強コード26について説明する。図2は、第1の実施形態のタイヤのタイヤケースのクラウン部に補強コードが埋設された状態を示すタイヤ回転軸に沿った断面図である。図2に示されるように、補強コード26は、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視で、少なくとも一部がクラウン部16に埋設された状態で螺旋状に巻回されている。補強コード26のクラウン部16に埋設された部分は、クラウン部16(タイヤケース17)を構成する樹脂材料と密着した状態となっている。
図2に示すように、補強コード26は、スチール繊維を撚ったスチールコード27が芯となり、スチールコード27の外周が少なくとも熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む被覆用混合物28で被覆された構造を有している。スチールコード27を被覆する被覆用混合物28の層厚は特に限定はないが、おおよそ平均層厚0.2mm〜4.0mmが好ましく、0.5mm〜3.0mmが更に好ましく、0.5mm〜2.0mmが特に好ましい。上述のように、被覆用混合物28の弾性率は、タイヤケース17を形成する樹脂材料の弾性率の0.1倍から20倍の範囲内に設定することが好ましい。
また、図2において埋設量Lは、タイヤケース17(クラウン部16)に対する補強コード26のタイヤ回転軸方向への埋設量を示す。補強コード26のクラウン部16に対する埋設量Lは、補強コード26の直径Dの1/5以上であれば好ましく、1/2を超えることがさらに好ましい。そして、補強コード26全体がクラウン部16に埋設されることが最も好ましい。補強コード26の埋設量Lが、補強コード26の直径Dの1/2を超えると、補強コード26の寸法上、埋設部から飛び出し難くなる。また、補強コード26全体がクラウン部16に埋設されると、表面(外周面)がフラットになり、補強コード26が埋設されたクラウン部16上に部材が載置されても補強コード周辺部に空気が入るのを抑制することができる。
上述のように補強コード26のタイヤ径方向外周側にはトレッド30が配置されている。このトレッド30に用いるゴムは、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。なお、トレッド30の代わりに、タイヤケース17を構成する樹脂材料よりも耐摩耗性に優れる他の種類の熱可塑性樹脂材料で形成したトレッドを用いてもよい。また、トレッド30には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝からなるトレッドパターンが形成されている。
以下、本発明のタイヤの製造方法について説明する。
(タイヤケース成形工程)
まず、薄い金属の支持リングに支持されたタイヤケース半体同士を互いに向かい合わせる。次いで、タイヤケース半体の突き当て部分の外周面と接するように図を省略する接合金型を設置する。ここで、前記接合金型はタイヤケース半体Aの接合部(突き当て部分)周辺を所定の圧力で押圧するように構成されている。次いで、タイヤケース半体の接合部周辺を、タイヤケースを構成する熱可塑性樹脂材料の融点(または軟化点)以上で押圧する。タイヤケース半体の接合部が接合金型によって加熱・加圧されると、前記接合部が溶融しタイヤケース半体同士が融着しこれら部材が一体となってタイヤケース17が形成される。尚、本実施形態においては接合金型を用いてタイヤケース半体の接合部を加熱したが、本発明はこれに限定されず、例えば、別に設けた高周波加熱機等によって前記接合部を加熱したり、予め熱風、赤外線の照射等によって軟化または溶融させ、接合金型によって加圧して。タイヤケース半体を接合させてもよい。
(補強金属コード部材巻回工程)
次に、補強コード巻回工程について図3を用いて説明する。図3は、コード加熱装置、およびローラ類を用いてタイヤケースのクラウン部に補強コードを埋設する動作を説明するための説明図である。図3において、コード供給装置56は、補強コード26を巻き付けたリール58と、リール58のコード搬送方向下流側に配置されたコード加熱装置59と、補強コード26の搬送方向下流側に配置された第1のローラ60と、第1のローラ60をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第1のシリンダ装置62と、第1のローラ60の補強コード26の搬送方向下流側に配置される第2のローラ64と、および第2のローラ64をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第2のシリンダ装置66と、を備えている。第2のローラ64は、金属製の冷却用ローラとして利用することができる。また、本実施形態において、第1のローラ60または第2のローラ64の表面は、溶融または軟化した樹脂材料の付着を抑制するためにフッ素樹脂(本実施形態では、テフロン(登録商標))でコーティングされている。なお、本実施形態では、コード供給装置56は、第1のローラ60または第2のローラ64の2つのローラを有する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、何れか一方のローラのみ(即ち、ローラ1個)を有している構成でもよい。また、リール58に巻き付けられたコード部材26は被覆用混合物28で被覆されたスチールコード27を巻き付けたものが用いられる。
また、コード加熱装置59は、熱風を生じさせるヒーター70およびファン72を備えている。また、コード加熱装置59は、内部に熱風が供給される、内部空間を補強コード26が通過する加熱ボックス74と、加熱された補強コード26を排出する排出口76とを備えている。
本工程においては、まず、コード加熱装置59のヒーター70の温度を上昇させ、ヒーター70で加熱された周囲の空気をファン72の回転によって生じる風で加熱ボックス74へ送る。次に、リール58から巻き出した補強コード26を、熱風で内部空間が加熱された加熱ボックス74内へ送り加熱(例えば、補強コード26の温度を100〜200℃程度に加熱)する。加熱された補強コード26は、排出口76を通り、図3の矢印R方向に回転するタイヤケース17のクラウン部16の外周面に一定のテンションをもって螺旋状に巻きつけられる。ここで、加熱された補強コード26がクラウン部16の外周面に接触すると、接触部分の樹脂材料が溶融または軟化し、加熱された補強コード26の少なくとも一部がクラウン部16の外周面に埋設される。このとき、溶融または軟化した樹脂材料に加熱された補強コード26が埋設されるため、樹脂材料と補強コード26とが隙間がない状態、つまり密着した状態となる。これにより、補強コード26を埋設した部分へのエア入りが抑制される。このようにすることで、クラウン部16の外周面に補強コード26を埋設しやすくなると共に、効果的にエア入りを抑制することができる。
また、補強コード26の埋設量Lは、補強コード26の加熱温度、補強コード26に作用させるテンション、および第1のローラ60による押圧力等によって調整することができる。そして、本実施形態では、補強コード26の埋設量Lが、補強コード26の直径Dの1/5以上となるように設定されている。なお、補強コード26の埋設量Lとしては、直径Dの1/2を超えることがさらに好ましく、補強コード26全体が埋設されることが最も好ましい。
次に、タイヤケース17の外周面に加硫済みの帯状のトレッド30を1周分巻き付けてタイヤケース17の外周面にトレッド30を、接着剤などを用いて接着する。なお、トレッド30は、例えば、従来知られている更生タイヤに用いられるプレキュアトレッドを用いることができる。本工程は、更生タイヤの台タイヤの外周面にプレキュアトレッドを接着する工程と同様の工程である。
そして、タイヤケース17のビード部12に、加硫済みのゴムからなるシール層24を、接着剤等を用いて接着すれば、タイヤ10の完成となる。
(作用)
本実施形態のタイヤ10では、ポリアミド系熱可塑性エラストマーで形成されたタイヤケース17の外周面に、スチールコード27を芯としこれを被覆用混合物28で被覆した補強コード26が巻回されている。ポリアミド系熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む被覆用混合物28は、タイヤケース17を形成するポリアミド系樹脂熱可塑エラストマーと接着性が高く、また、スチールコードに比してポリアミド系熱可塑性エラストマーとの剛性段差が小さい。このように補強コード26がポリアミド系熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む被覆用混合物で被覆されていると、スチールコード27を単にクッションゴムで固定する場合と比してタイヤケース17と補強コード16との硬さの差を小さくできるため、スチールコード27を芯とする補強コード26をタイヤケース17に十分に密着・固定することができる。更に、被覆用混合物28は、スチールコード27に対する引き抜き耐性に優れると共に、タイヤケース17との接着性も良好である。これにより、タイヤ製造時に気泡が残存するのを効果的に防止することができ、走行時に補強金属コード部材が動くのを効果的に抑制することができる。更に、ポリアミド系熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む被覆用混合物は、ポリアミド系熱可塑性樹脂を単独で用いた場合に比して柔軟性を得やすい。このため、ポリアミド系熱可塑性樹脂を単独で用いた場合よりも少量の被覆で所望の柔軟性を得ることができる。
また、本実施形態のタイヤ10では、樹脂材料で形成されたタイヤケース17のクラウン部16の外周面に前記樹脂材料よりも剛性が高い補強コード26が周方向へ螺旋状に巻回されていることから耐パンク性、耐カット性、およびタイヤ10の周方向剛性が向上する。なお、タイヤ10の周方向剛性が向上することで、熱可塑性樹脂材料で形成されたタイヤケース17のクリープが防止される。
また、タイヤケース17の軸方向に沿った断面視(図1に示される断面)で、樹脂材料で形成されたタイヤケース17のクラウン部16の外周面に補強コード26の少なくとも一部が埋設され且つ樹脂材料に密着していることから、製造時のエア入りが抑制されており、走行時の入力などによって補強コード26が動くのが抑制される。これにより、補強コード26、タイヤケース17、およびトレッド30に剥離などが生じるのが抑制され、タイヤ10の耐久性が向上する。
そして、図2に示すように、補強コード26の埋設量Lが直径Dの1/5以上となっていることから、製造時のエア入りが効果的に抑制されており、走行時の入力などによって補強コード26が動くのがさらに抑制される。
さらに、ビード部12には、金属材料からなる環状のビードコア18が埋設されていることから、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、リム20に対してタイヤケース17、すなわちタイヤ10が強固に保持される。
上述の実施形態では、補強コード26を加熱し、加熱した補強コード26が接触する部分のタイヤケース17の表面を溶融または軟化させる構成としたが、本発明はこの構成に限定されず、補強コード26を加熱せずに熱風生成装置を用い、補強コード26が埋設されるクラウン部16の外周面を加熱した後、補強コード26をクラウン部16に埋設するようにしてもよい。
また、第1の実施形態では、コード加熱装置59の熱源をヒーターおよびファンとしているが、本発明はこの構成に限定されず、補強コード26を輻射熱(例えば、赤外線など)で直接加熱する構成としてもよい。
さらに、第1の実施形態では、補強コード26を埋設した熱可塑性樹脂材料が溶融または軟化した部分を金属製の第2のローラ64で強制的に冷却する構成としたが、本発明はこの構成に限定されず、熱可塑性樹脂材料が溶融または軟化した部分に冷風を直接吹きかけて、熱可塑性樹脂材料の溶融または軟化した部分を強制的に冷却固化する構成としてもよい。
また、補強コード26は螺旋巻きするのが製造上は容易だが、幅方向で補強コード26を不連続とする方法等も考えられる。
第1の実施形態のタイヤ10は、ビード部12をリム20に装着することで、タイヤ10とリム20との間で空気室を形成する、所謂チューブレスタイヤであるが、本発明はこの構成に限定されず、完全なチューブ形状であってもよい。
[第2の実施形態]
次に、図面に従って本発明のタイヤの第2の実施形態について説明する。図4は、第2の実施形態のタイヤのタイヤケースのクラウン部上に補強金属コード部材が埋設された補強コード被覆層を有する態様を示すタイヤ回転軸に沿った断面図である。本実施形態のタイヤは、図4に示すように、タイヤケースのクラウン部16表面にスチールコード27(補強金属コード部材)が埋設された補強コード被覆層29を有し、補強コード被覆層29上にトレッド30が配置されている。第2の実施形態に係るタイヤは、上記の点以外は第1の実施形態と同様の構成を有し、前記第1の実施形態と同様の構成については同様の番号が付される。
第2の実施形態のタイヤは、タイヤケース17及びスチールコード27として、上述の第1の実施形態と同様に、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを用いて構成されている。
本実施形態におけるタイヤは、図4に示すように、クラウン部16に、タイヤケース17の周方向に巻回されたスチールコード27が埋設された補強コード被覆層29が設けられている。ここで、スチールコード27は、一部がタイヤケース17のクラウン部16表面に埋設されている。補強コード被覆層29は、少なくとも熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む被覆用混合物(前記第1の実施形態と同様の被覆用混合物)で構成されている。補強コード被覆層29の層厚は特に限定されるものではないが、耐久性及びタイヤケース17及びトレッド30との接着性を考慮すると、おおよそ平均層厚0.2mm〜4.0mmが好ましく、0.5mm〜3.0mmが更に好ましく、0.5mm〜2.0mmが特に好ましい。
また、補強コード被覆層29の弾性率は、タイヤケース17を形成する樹脂材料の弾性率よりも高く、スチールコード27の弾性率よりも低い範囲内に設定することが好ましい。また、補強コード被覆層29の弾性率がタイヤケース17を形成する熱可塑性樹脂材料の弾性率の20倍以下の場合は、クラウン部が硬くなり過ぎずリム組み性が容易になる。
次に本実施形態のタイヤの製造方法について説明する。
(骨格形成工程)
まず、上述の第1の実施形態と同様にして、タイヤケース半体17Aを形成し、これを接合金型によって加熱・押圧し、タイヤケース17を形成する。
(補強金属コード部材巻回工程)
本実施形態におけるタイヤの製造装置は、上述の第1の実施形態と同様であり、上述の第1の実施形態の図3に示すコード供給装置56において、リール58にはスチールコード27を巻き付けたものが用いられる。次いで、リール58に巻き付けられたスチールコード27は、第1の実施形態と同様にして、タイヤケース17の外周面にその一部が埋設されながら外周面に沿って巻回される。本実施形態においては、補強コード被覆層29を形成して当該層にスチールコード27を埋設することで、スチールコード27の表面に少なくとも熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む被覆用混合物材料を被覆させる。このため、スチールコード27の直径Dに対するタイヤケース17への埋設量Lは、スチールコード27の直径Dの1/5以下となるように設定することが好ましい。
(積層工程)
次に、スチールコード27を埋設させたタイヤケース17の外周面に前記被覆用混合物を、図示を省略する溶融押出機等を用いて塗布し、補強コード被覆層29を形成する。
次に、補強コード被覆層29上に未加硫状態のクッションゴム29を1周分巻き付け、そのクッションゴム29の上に例えば、ゴムセメント組成物などの接合剤を塗布し、その上に加硫済みまたは半加硫状態のトレッドゴム30Aを1周分巻き付けて、生タイヤケース状態とする。
次に、タイヤケース17の外周面に加硫済みの帯状のトレッド30を1周分巻き付けてタイヤケース17の外周面にトレッド30を、接着剤などを用いて接着する。なお、トレッド30は、例えば、従来知られている更生タイヤに用いられるプレキュアトレッドを用いることができる。本工程は、更生タイヤの台タイヤの外周面にプレキュアトレッドを接着する工程と同様の工程である。
そして、タイヤケース17のビード部12に、加硫済みのゴムからなるシール層24を、接着剤等を用いて接着すれば、タイヤ10の完成となる。
(作用)
本実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えて、タイヤケース17の外周面上に補強コード被覆層29を設けることで、スチールコード27を更に強固にタイヤケース17上に固定することができる。
また、第2の実施形態においても、スチールコード27をクラウン部16へ螺旋状に巻回する構成としたが、本発明はこれに限らず、スチールコード27が幅方向で不連続となるように巻回する構成としてもよい。
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
以下、本発明について実施例を用いて、本発明を具体的に説明する。
<破断伸び、引張強さ、引張弾性率の評価>
下記表に記載の樹脂(被覆用混合物)の組成で混合(質量基準)して、(株)東洋精機製作所製、LABOPLASTOMILL 50MR 2軸押出し機により混練し、ペレットを得た。
用意したペレットを用いて、200℃にて熱プレスによってペレットをプレスし、トリミングを行なって120mm×120mm 厚さ2.0mmの試験片を作製した。
各試料片を打ち抜き、JISK6251−1993に規定されるダンベル状試料片(5号形試料片)を作製した。
次いで、島津製作所社製、島津オートグラフAGS−J(5KN)を用いて、引張速度を200mm/minに設定し、前記各ダンベル状試料片の引張弾性率、引張強さ、破断伸びを調べた。結果を下記表に示す。
<熱融着剥離強度>
200℃にて熱プレスによって下記表に記載の樹脂(被覆用混合物)をプレスし、トリミングを行なって厚さ2.5mmのシートAを作製した。次いで、得られたシートAと被着体としてタイヤ骨格体に用いられるポリアミド系熱可塑性エラストマー(宇部興産社製、UBESTA、「XPA9055X1」:引張弾性率303MPa、破断伸び350%、引張強さ41MPa)を融着し厚さ4.5mmのシートを作製し25mmの幅にカットして、サイズ130mm×25mm×4.5mmのサンプル片を作製した。作製したサンプル片を島津製作所社製、島津オートグラフAGS−J(5KN)用いて、23℃・50mm/minの条件でT型(180°)剥離引張試験を行なって熱融着剥離強度を測定した。当該試験は2回行い、その平均値を評価値とした。評価値が大きいほど、被覆用混合物とタイヤ骨格体の接着性に優れていることを示す。結果を下記表に示す。
<流動性評価〔MFR(g/10分、200℃)〕>
上記で作製した各ペレットについて、東洋精機製作所社製、セミメルトインデクサ 2A型を用い、ASTM A1238(B法)に基づき、98.07Nの荷重をかけて、流動性(MFR:単位g/10min)を測定した。測定値は、数値が大きいほど被覆用混合物の取り扱い性に優れることを示す。結果を各表に示す。
<引き抜き試験>
まず、φ0.8mmのモノフィラメントを、φ10mm、長さ60mmの円柱状金型の中心にセットした。
次いで、前記円柱状金型のキャビティー部に下記表に記載の樹脂(被覆用混合物)を充填して射出成型を行った。得られた樹脂を冷却して、樹脂部の中心にブラスメッキワイヤーがセットされた円柱状の試験片を得た。
得られた試験片について、樹脂部からワイヤーを50mm/minで引き抜き、島津製作所(株)製「AG−5KNK」を用い、引き抜きの際の引抜力(単位:N)を測定した。測定値に基づき、下記の基準に従って、各試験片の引き抜き耐性について評価した。前記引抜力が大きいほど、補強金属コード部材の引き抜き耐性に優れることを示す。
※表中の略称は以下を表す。
・アミド12:宇部興産(株)製の「3024U」
・未変性SEBS:旭化成社製の「タフテック」H1052(スチレン20質量%含有)
・酸変性SEBS:旭化成社製の「タフテック」M1943(スチレン20質量%含有)

・ゴム成分:ゴム成分は、次のようにして得た。
表2に示される各成分を密閉式バンバリミキサーにて初期温度40℃で3分間混合し、ゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物をロールでシール化した後、ゴム用ペレタイザーでペレット化し、ゴムペレットを得た。
表の結果から分かるように、実施例の被覆用混合物は引き抜き耐性が比較例に比して高く、また、タイヤ骨格体を形成する熱可塑性エラストマー(ポリアミド系熱可塑性エラストマー)との接着性にも優れていた。このため、実施例の被覆用混合物を用いてワイヤーを被覆し、これを保護ベルトとして樹脂材料を用いたタイヤ骨格体に設置して得られたタイヤは、保護金属コード部材(ワイヤー)とタイヤ骨格体との接着耐久性に優れることがわかった。また、実際に上記実施例及び比較例の材料を用いてタイヤを形成し走行実験を行ったところ、上記と同様に実施例の材料を用いたタイヤが接着耐久性に優れた結果となった。
10 タイヤ
12 ビード部
16 クラウン部(外周部)
18 ビードコア
20 リム
21 ビードシート
22 リムフランジ
17 タイヤケース(タイヤ骨格体)
24 シール層
26 補強コード
27 スチールコード(補強金属コード部材)
28 被覆用混合物
29 補強コード被覆層
30 トレッド
D 補強コードの直径
L 補強コードの埋設量

Claims (8)

  1. 樹脂材料で形成され且つ環状のタイヤ骨格体と、前記タイヤ骨格体の外周部に巻回される補強金属コード部材と、を有し、
    前記補強金属コード部材の少なくとも一部が、少なくとも熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む被覆用混合物で被覆され
    前記被覆用混合物は、前記熱可塑性樹脂を含む海相と前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーを含む島相とを含む海島構造を有するタイヤ。
  2. 前記被覆用混合物中における、前記熱可塑性樹脂(p)と前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(e)との質量比(p/e)が、95/5〜55/45である請求項1記載のタイヤ。
  3. 前記タイヤ骨格体の引張弾性率(x1)、前記被覆用混合物の引張弾性率(x2)、及び前記補強金属コード部材の引張弾性率(x3)が、x1<x2<x3の関係を満たす請求項1又は2に記載のタイヤ。
  4. 前記タイヤ骨格体の破断伸び(y1)、前記被覆用混合物の破断伸び(y2)、及び前記補強金属コード部材の破断伸び(y3)が、y1>y2>y3の関係を満たす請求項1〜のいずれか1項に記載のタイヤ。
  5. 前記タイヤ骨格体を形成する前記樹脂材料と、前記被覆用混合物に含まれる前記熱可塑性樹脂とが同種の樹脂である請求項1〜のいずれか1項に記載のタイヤ。
  6. 前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーが、酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、未変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、又は、これらの組み合わせである請求項1〜のいずれか1項に記載のタイヤ。
  7. 前記被覆用混合物に含まれる前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド系熱可塑性樹脂である請求項1〜のいずれか1項に記載のタイヤ。
  8. 前記タイヤ骨格体を形成する前記樹脂材料が、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含む請求項1〜のいずれか1項に記載のタイヤ。
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