JP5840534B2 - タイヤ - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1および特許文献2には、熱可塑性の高分子材料、特にポリエステル系熱可塑性エラストマーを用いて成形された空気入りタイヤが開示されている。
更に、接着性を改善するために、補強金属コード部材を表面処理し、活性化したり、接着剤を塗布してもよい。
尚、本明細書において「樹脂」とは、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂を含む概念であり、天然ゴムは含まない。また、「熱可塑性エラストマー」とは、結晶性で融点の高いハードセグメント若しくは高い凝集力のハードセグメントを構成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料を意味する。また、以下樹脂の説明において「同種」とは、エステル系同士、スチレン系同士などの形態を指す。
前記補強金属コード部材としては、従来のゴム製タイヤに用いられる金属製のコードなどを適宜用いることができる。前記補強金属コード部材としては、例えば、金属繊維のモノフィラメント(単線)、または、スチール繊維を撚ったスチールコードなどこれら繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)などを用いることができる。また、補強金属コード部材の断面形状やサイズ(直径)等は特に規定されず、所望のタイヤに適したものを適宜選定して用いることができる。
更に、接着性を改善するために、補強金属コード部材を表面処理し、活性化したり、接着剤を塗布してもよい。
前記補強金属コード部材を被覆する被覆用混合物は、少なくとも熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む。前記被覆用混合物は、熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとの含有比を調整することで容易に被覆用混合物の柔軟性(弾性率)や引張強さ、破断伸び等の特性を調整することができ、特に熱可塑性樹脂を単一で用いた場合に比して柔軟性を高めることができる。
また、前記被覆用混合物自体の弾性率は、タイヤ骨格体と補強金属コード部材との剛性段差を効果的に緩和させるという観点から、前記タイヤ骨格体の弾性率よりも高く、前記補強金属コード部材の弾性率よりも低いように設定することが好ましい。
前記被覆用混合物に含まれる熱可塑性樹脂としては、後述のタイヤ骨格体に用いられる熱可塑性樹脂のハードセグメントを構成するポリマーを適宜挙げることができる。このような熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン系熱可塑性樹脂、オレフィン系熱可塑性樹脂、塩化ビニル系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、ポリスチレン系熱可塑性樹脂等が挙げられ、ポリアミド系熱可塑性樹脂が特に好ましい。前記被覆用混合物の熱可塑性樹脂としてポリアミド系熱可塑性樹脂を用いると、補強金属コード部材に対する引き抜き耐性を更に向上させることができる。
前記ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、後述のポリアミド系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを構成するポリアミドを挙げることができる。前記ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、例えば、ε-カプロラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド6)、ウンデカンラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド11)、ラウリルラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド12)、ジアミンと二塩基酸とを重縮合ポリアミド(アミド66)又はメタキシレンジアミンを構成単位として有するポリアミド(アミドMX)等を挙げることができる。
前記被覆用混合物にはポリスチレン系熱可塑性エラストマー含まれる。前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、他の樹脂との接着性も良好であることが多く、タイヤ骨格体と前記被覆用混合物材料との接着性の観点から、タイヤ骨格体を構成する樹脂材料の選択自由度が高い。前記スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、酸基によって変性されている酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、または、未変性のポリスチレン系熱可塑性エラストマーのいずれをも用いることができる。また、未変性のポリスチレン系熱可塑性エラストマーと酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを併用してもよい。前記未変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、特に補強金属コード部材に対する引き抜き耐性、材料の流動性(取り扱い性)、タイヤ骨格体との接着性に優れる材料である。また、酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、特に破断伸びに優れる材料である。更に、酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、未変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーと併用すると、タイヤ骨格体との接着性や補強金属コード部材に対する引き抜き耐性と、優れた破断伸び特性と、の両立を図ることができる。
前記ハードセグメントを形成するポリスチレンとしては、例えば、公知のラジカル重合法、イオン性重合法で得られるものが好適に使用でき、例えばアニオンリビング重合を持つポリスチレンが挙げられる。また、前記ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(2,3−ジメチル−ブタジエン)等が挙げられる。また、酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、後述するように未変性のポリスチレン系熱可塑性エラストマーを酸変性することで得られる。
また、前記ソフトセグメントを構成するポリマーの数平均分子量としては、5000〜1000000が好ましく、10000〜800000が更に好ましく、30000〜500000が特に好ましい。更に、前記ハードセグメント(x)およびソフトセグメント(y)との体積比(x:y)は、成形性の観点から、5:95〜80:20が好ましく、10:90〜70:30が更に好ましい。
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン系共重合体[SBS(ポリスチレン−ポリ(ブチレン)ブロック−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン)]、スチレン−イソプレン共重合体[ポリスチレン−ポリイソプレンブロック−ポリスチレン)、スチレン−プロピレン系共重合体[SEP(ポリスチレン−(エチレン/プロピレン)ブロック)、SEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEB(ポリスチレン(エチレン/ブチレン)ブロック)等が挙げられ、SEBSが特に好ましい。
上述のように前記被覆用混合物は、被覆用混合物の引張弾性率及び破断伸び等の特性や、被覆用混合物に対する補強金属コード部材の引き抜き耐性を向上させる観点から、熱可塑性樹脂で構成されるマトリックス相である海相と、前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーと、で構成される分散相である島相とを有する海島構造を有する態様が好ましい。前記被覆用混合物を熱可塑性樹脂のマトリックスに前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーが分散した海島構造とすることで、被覆用混合物の引張弾性率及び破断伸び等の特性や、被覆用混合物に対する補強金属コード部材の引き抜き耐性を向上させることができる。
0.4μm〜10.0μm程度であることが好ましく、0.5μm〜7μm程度であることが更に好ましく、0.5μm〜5μm程度であることが特に好ましい。これら各相のサイズは、SEM(走査型電子顕微鏡、scanning electron microscope)を用いた観察写真を用いて測定することができる。
次に、タイヤ骨格体を形成する樹脂材料について説明する。ここで、「樹脂材料」とは、熱可塑性樹脂(熱可塑性エラストマーを含む)及び熱硬化性樹脂を含む概念であり、加硫ゴムは含まない。
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマーとは、結晶性で融点の高いハードセグメントを構成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性樹脂材料であって、ハードセグメントを構成するポリマーの主鎖にアミド結合(−CONH−)を有するものを意味する。ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418:2007に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)等や、特開2004−346273号公報に記載のポリアミド系エラストマー等を挙げることができる。
[一般式(1)中、R1は、炭素数2〜20の炭化水素の分子鎖、または、炭素数2〜20のアルキレン基を表す。]
[一般式(2)中、R2は、炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、または、炭素数3〜20のアルキレン基を表す。]
前記一般式(1)または一般式(2)で表されるモノマーとしては、ω−アミノカルボン酸やラクタムが挙げられる。また、前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、これらω−アミノカルボン酸やラクタムの重縮合体や、ジアミンとジカルボン酸との共縮重合体等が挙げられる。
前記ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミン、メタキシレンジアミンなどの炭素数2〜20の脂肪族ジアミンなどのジアミン化合物を挙げることができる。また、ジカルボン酸は、HOOC−(R3)m−COOH(R3:炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、m:0または1)で表すことができ、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
前記ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタムまたはウデカンラクタムを開環重縮合したポリアミドを好ましく用いることができる。
ここで、「ABA型トリブロックポリエーテル」とは、下記一般式(3)に示されるポリエーテルを意味する。
[一般式(3)中、xおよびzは、1〜20の整数を表す。yは、4〜50の整数を表す。]
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリスチレンがハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエチレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。前記ハードセグメントを形成するポリスチレンとしては、例えば、公知のラジカル重合法、イオン性重合法で得られるものが好適に使用でき、例えば、アニオンリビング重合を持つポリスチレンが挙げられる。
また、前記ソフトセグメントを構成するポリマーの数平均分子量としては、5000〜1000000が好ましく、10000〜800000が更に好ましく、30000〜500000が特に好ましい。更に、前記ハードセグメント(x)およびソフトセグメント(y)との体積比(x:y)は、成形性の観点から、5:95〜80:20が好ましく、10:90〜70:30が更に好ましい。
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン系共重合体[SBS(ポリスチレン−ポリ(ブチレン)ブロック−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン)]、スチレン−イソプレン共重合体[ポリスチレン−ポリイソプレンブロック−ポリスチレン)、スチレン−プロピレン系共重合体[SEP(ポリスチレン−(エチレン/プロピレン)ブロック)、SEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEB(ポリスチレン(エチレン/ブチレン)ブロック)等が挙げられる。
前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリウレタンが物理的な凝集によって疑似架橋を形成しているハードセグメントを構成し、他のポリマーが非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられ、例えば、下記式Aで表される単位構造を含むソフトセグメントと、下記式Bで表される単位構造を含むハードセグメントとを含む共重合体として表すことができる。
[前記式中、Pは、長鎖脂肪族ポリエーテルまたは長鎖脂肪族ポリエステルを表す。Rは、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、芳香族炭化水素を表す。P’は、短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、または、芳香族炭化水素を表す。]
これらは単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
また、前記Rで表される脂環族炭化水素を含むジイソシアネート化合物としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネートおよび4,4−シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。更に、前記Rで表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジイソシアネート化合物としては例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートが挙げられる。
これらは単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
また、前記P’で表される脂環族炭化水素を含む脂環族ジオール化合物としては、例えば、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,3−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、およびシクロヘキサン−1,4−ジメタノール等が挙げられる。
更に、前記P’で表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジオール化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、クロロヒドロキノン、ブロモヒドロキノン、メチルヒドロキノン、フェニルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、フェノキシヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノールA、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)エタン、1,4−ジヒドロキシナフタリン、および2,6−ジヒドロキシナフタリン等が挙げられる。
これらは単独で使用されてもよく、また2種以上が併用されてもよい。
前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、前記ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、特開平5−331256に記載の熱可塑性ポリウレタンを用いることができる。
前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとして、具体的には、芳香族ジオールと芳香族ジイソシアネートとからなるハードセグメントと、ポリ炭酸エステルからなるソフトセグメントの組合せが好ましく、トリレンジイソシアネート(TDI)/ポリエステル系ポリオール共重合体、TDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、TDI/カプロラクトン系ポリオール共重合体、TDI/ポリカーボネート系ポリオール共重合体、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)/ポリエステル系ポリオール共重合体、MDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI/カプロラクトン系ポリオール共重合体、MDI/ポリカーボネート系ポリオール共重合体、MDI+ヒドロキノン/ポリヘキサメチレンカーボネート共重合体が好ましく、TDI/ポリエステル系ポリオール共重合体、TDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI/ポリエステルポリオール共重合体、MDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI+ヒドロキノン/ポリヘキサメチレンカーボネート共重合体が更に好ましい。
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリオレフィンが結晶性で融点の高いハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、前記ポリオレフィン、他のポリオレフィン、ポリビニル化合物)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。前記ハードセグメントを形成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられる。
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン−α−オレフィンランダム共重合体、オレフィンブロック共重合体等が挙げられ、例えば、プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1ペンテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、1−ブテン−4−メチル−ペンテン、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、プロピレン−メタクリル酸共重合体、プロピレン−メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン−メチルアクリレート共重合体、プロピレン−エチルアクリレート共重合体、プロピレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
また、エチレンとプロピレンといったように2種以上のポリオレフィン樹脂を組み合わせて使用してもよい。また、前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー中のポリオレフィン含率は、50質量%以上100質量%以下が好ましい。
前記「ポリオレフィン熱可塑性エラストマーを酸変性してなるもの」とは、ポリオレフィン熱可塑性エラストマーに、カルボン酸基、硫酸基、燐酸基等の酸性基を有する不飽和化合物を結合させることをいう。例えば、酸性基を有する不飽和化合物として、不飽和カルボン酸(一般的には、無水マレイン酸)を用いるとき、オレフィン系熱可塑性エラストマーに、不飽和カルボン酸の不飽和結合部位を結合(例えば、グラフト重合)させることが挙げられる。
更に、前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、市販品のプライムポリマー製の「プライムTPO」シリーズ(例えば、E−2900H、F−3900H、E−2900、F−3900、J−5900、E−2910、F−3910、J−5910、E−2710、F−3710、J−5910、E−2740、F−3740、R110MP、R110E、T310E、M142E等)等も用いることができる。
前記ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、少なくともポリエステルが結晶性で融点の高いハードセグメントを構成し、他のポリマー(例えば、ポリエステルまたはポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成している材料が挙げられる。
前記ハードセグメントを形成するポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、プリブチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
前記脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体等が挙げられる。
前記脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが挙げられる。
これらの脂肪族ポリエーテルおよび脂肪族ポリエステルのなかでも、得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性の観点から、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペートなどが好ましい。
また、タイヤの耐久性や生産性を向上させることができる。前記樹脂材料には、所望に応じて、ゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂、各種充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ)、老化防止剤、オイル、可塑剤、発色剤、耐候剤等の各種添加剤を含有(ブレンド)させてもよい。
以下に、図面に従って本発明のタイヤの第1の実施形態に係るタイヤを説明する。
本実施形態のタイヤ10について説明する。図1(A)は、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図である。図1(B)は、リムに装着したビード部の断面図である。図1に示すように、本実施形態のタイヤ10は、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。本実施形態においては、補強金属コード部材として撚り構造を有するスチールコード(引張弾性率210000MPa、破断伸び8%、)が用いられており、これを芯としてその外周を少なくとも熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む被覆用混合物で被覆した補強コード26が用いられている。本形態においては、ポリアミド系熱可塑性樹脂としてアミド12(例えば、宇部興産社製「3024U」)70質量%とポリスチレン系熱可塑性エラストマー(未変性SEBS;例えば、タフテック社製H1052)30質量%との混合物(引張弾性率740MPa、破断伸び35%、引張強さ22MPa)を用いた例について説明する。
更に、本実施形態においては、環状のタイヤ骨格体(タイヤケース17)の軸方向に沿った断面視で、熱可塑性樹脂で被覆された補強金属コード部材(即ち、補強コード26)の少なくとも一部がタイヤ骨格体の外周部に埋設された状態で螺旋状に巻回されている。
また、本実施形態では、タイヤケース半体17Aは左右対称形状、即ち、一方のタイヤケース半体17Aと他方のタイヤケース半体17Aとが同一形状とされているので、タイヤケース半体17Aを成形する金型が1種類で済むメリットもある。
(タイヤケース成形工程)
まず、薄い金属の支持リングに支持されたタイヤケース半体同士を互いに向かい合わせる。次いで、タイヤケース半体の突き当て部分の外周面と接するように図を省略する接合金型を設置する。ここで、前記接合金型はタイヤケース半体Aの接合部(突き当て部分)周辺を所定の圧力で押圧するように構成されている。次いで、タイヤケース半体の接合部周辺を、タイヤケースを構成する熱可塑性樹脂材料の融点(または軟化点)以上で押圧する。タイヤケース半体の接合部が接合金型によって加熱・加圧されると、前記接合部が溶融しタイヤケース半体同士が融着しこれら部材が一体となってタイヤケース17が形成される。尚、本実施形態においては接合金型を用いてタイヤケース半体の接合部を加熱したが、本発明はこれに限定されず、例えば、別に設けた高周波加熱機等によって前記接合部を加熱したり、予め熱風、赤外線の照射等によって軟化または溶融させ、接合金型によって加圧して。タイヤケース半体を接合させてもよい。
次に、補強コード巻回工程について図3を用いて説明する。図3は、コード加熱装置、およびローラ類を用いてタイヤケースのクラウン部に補強コードを埋設する動作を説明するための説明図である。図3において、コード供給装置56は、補強コード26を巻き付けたリール58と、リール58のコード搬送方向下流側に配置されたコード加熱装置59と、補強コード26の搬送方向下流側に配置された第1のローラ60と、第1のローラ60をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第1のシリンダ装置62と、第1のローラ60の補強コード26の搬送方向下流側に配置される第2のローラ64と、および第2のローラ64をタイヤ外周面に対して接離する方向に移動する第2のシリンダ装置66と、を備えている。第2のローラ64は、金属製の冷却用ローラとして利用することができる。また、本実施形態において、第1のローラ60または第2のローラ64の表面は、溶融または軟化した樹脂材料の付着を抑制するためにフッ素樹脂(本実施形態では、テフロン(登録商標))でコーティングされている。なお、本実施形態では、コード供給装置56は、第1のローラ60または第2のローラ64の2つのローラを有する構成としているが、本発明はこの構成に限定されず、何れか一方のローラのみ(即ち、ローラ1個)を有している構成でもよい。また、リール58に巻き付けられたコード部材26は被覆用混合物28で被覆されたスチールコード27を巻き付けたものが用いられる。
本実施形態のタイヤ10では、ポリアミド系熱可塑性エラストマーで形成されたタイヤケース17の外周面に、スチールコード27を芯としこれを被覆用混合物28で被覆した補強コード26が巻回されている。ポリアミド系熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む被覆用混合物28は、タイヤケース17を形成するポリアミド系樹脂熱可塑エラストマーと接着性が高く、また、スチールコードに比してポリアミド系熱可塑性エラストマーとの剛性段差が小さい。このように補強コード26がポリアミド系熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む被覆用混合物で被覆されていると、スチールコード27を単にクッションゴムで固定する場合と比してタイヤケース17と補強コード16との硬さの差を小さくできるため、スチールコード27を芯とする補強コード26をタイヤケース17に十分に密着・固定することができる。更に、被覆用混合物28は、スチールコード27に対する引き抜き耐性に優れると共に、タイヤケース17との接着性も良好である。これにより、タイヤ製造時に気泡が残存するのを効果的に防止することができ、走行時に補強金属コード部材が動くのを効果的に抑制することができる。更に、ポリアミド系熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む被覆用混合物は、ポリアミド系熱可塑性樹脂を単独で用いた場合に比して柔軟性を得やすい。このため、ポリアミド系熱可塑性樹脂を単独で用いた場合よりも少量の被覆で所望の柔軟性を得ることができる。
次に、図面に従って本発明のタイヤの第2の実施形態について説明する。図4は、第2の実施形態のタイヤのタイヤケースのクラウン部上に補強金属コード部材が埋設された補強コード被覆層を有する態様を示すタイヤ回転軸に沿った断面図である。本実施形態のタイヤは、図4に示すように、タイヤケースのクラウン部16表面にスチールコード27(補強金属コード部材)が埋設された補強コード被覆層29を有し、補強コード被覆層29上にトレッド30が配置されている。第2の実施形態に係るタイヤは、上記の点以外は第1の実施形態と同様の構成を有し、前記第1の実施形態と同様の構成については同様の番号が付される。
(骨格形成工程)
まず、上述の第1の実施形態と同様にして、タイヤケース半体17Aを形成し、これを接合金型によって加熱・押圧し、タイヤケース17を形成する。
本実施形態におけるタイヤの製造装置は、上述の第1の実施形態と同様であり、上述の第1の実施形態の図3に示すコード供給装置56において、リール58にはスチールコード27を巻き付けたものが用いられる。次いで、リール58に巻き付けられたスチールコード27は、第1の実施形態と同様にして、タイヤケース17の外周面にその一部が埋設されながら外周面に沿って巻回される。本実施形態においては、補強コード被覆層29を形成して当該層にスチールコード27を埋設することで、スチールコード27の表面に少なくとも熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む被覆用混合物材料を被覆させる。このため、スチールコード27の直径D2に対するタイヤケース17への埋設量Lは、スチールコード27の直径D1の1/5以下となるように設定することが好ましい。
次に、スチールコード27を埋設させたタイヤケース17の外周面に前記被覆用混合物を、図示を省略する溶融押出機等を用いて塗布し、補強コード被覆層29を形成する。
次に、タイヤケース17の外周面に加硫済みの帯状のトレッド30を1周分巻き付けてタイヤケース17の外周面にトレッド30を、接着剤などを用いて接着する。なお、トレッド30は、例えば、従来知られている更生タイヤに用いられるプレキュアトレッドを用いることができる。本工程は、更生タイヤの台タイヤの外周面にプレキュアトレッドを接着する工程と同様の工程である。
本実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えて、タイヤケース17の外周面上に補強コード被覆層29を設けることで、スチールコード27を更に強固にタイヤケース17上に固定することができる。
下記表に記載の樹脂(被覆用混合物)の組成で混合(質量基準)して、(株)東洋精機製作所製、LABOPLASTOMILL 50MR 2軸押出し機により混練し、ペレットを得た。
用意したペレットを用いて、200℃にて熱プレスによってペレットをプレスし、トリミングを行なって120mm×120mm 厚さ2.0mmの試験片を作製した。
各試料片を打ち抜き、JISK6251−1993に規定されるダンベル状試料片(5号形試料片)を作製した。
200℃にて熱プレスによって下記表に記載の樹脂(被覆用混合物)をプレスし、トリミングを行なって厚さ2.5mmのシートAを作製した。次いで、得られたシートAと被着体としてタイヤ骨格体に用いられるポリアミド系熱可塑性エラストマー(宇部興産社製、UBESTA、「XPA9055X1」:引張弾性率303MPa、破断伸び350%、引張強さ41MPa)を融着し厚さ4.5mmのシートを作製し25mmの幅にカットして、サイズ130mm×25mm×4.5mmのサンプル片を作製した。作製したサンプル片を島津製作所社製、島津オートグラフAGS−J(5KN)用いて、23℃・50mm/minの条件でT型(180°)剥離引張試験を行なって熱融着剥離強度を測定した。当該試験は2回行い、その平均値を評価値とした。評価値が大きいほど、被覆用混合物とタイヤ骨格体の接着性に優れていることを示す。結果を下記表に示す。
上記で作製した各ペレットについて、東洋精機製作所社製、セミメルトインデクサ 2A型を用い、ASTM A1238(B法)に基づき、98.07Nの荷重をかけて、流動性(MFR:単位g/10min)を測定した。測定値は、数値が大きいほど被覆用混合物の取り扱い性に優れることを示す。結果を各表に示す。
まず、φ0.8mmのモノフィラメントを、φ10mm、長さ60mmの円柱状金型の中心にセットした。
次いで、前記円柱状金型のキャビティー部に下記表に記載の樹脂(被覆用混合物)を充填して射出成型を行った。得られた樹脂を冷却して、樹脂部の中心にブラスメッキワイヤーがセットされた円柱状の試験片を得た。
得られた試験片について、樹脂部からワイヤーを50mm/minで引き抜き、島津製作所(株)製「AG−5KNK」を用い、引き抜きの際の引抜力(単位:N)を測定した。測定値に基づき、下記の基準に従って、各試験片の引き抜き耐性について評価した。前記引抜力が大きいほど、補強金属コード部材の引き抜き耐性に優れることを示す。
・アミド12:宇部興産(株)製の「3024U」
・未変性SEBS:旭化成社製の「タフテック」H1052(スチレン20質量%含有)
・酸変性SEBS:旭化成社製の「タフテック」M1943(スチレン20質量%含有)
・ゴム成分:ゴム成分は、次のようにして得た。
表2に示される各成分を密閉式バンバリミキサーにて初期温度40℃で3分間混合し、ゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物をロールでシール化した後、ゴム用ペレタイザーでペレット化し、ゴムペレットを得た。
12 ビード部
16 クラウン部(外周部)
18 ビードコア
20 リム
21 ビードシート
22 リムフランジ
17 タイヤケース(タイヤ骨格体)
24 シール層
26 補強コード
27 スチールコード(補強金属コード部材)
28 被覆用混合物
29 補強コード被覆層
30 トレッド
D 補強コードの直径
L 補強コードの埋設量
Claims (8)
- 樹脂材料で形成され且つ環状のタイヤ骨格体と、前記タイヤ骨格体の外周部に巻回される補強金属コード部材と、を有し、
前記補強金属コード部材の少なくとも一部が、少なくとも熱可塑性樹脂とポリスチレン系熱可塑性エラストマーとを含む被覆用混合物で被覆され、
前記被覆用混合物は、前記熱可塑性樹脂を含む海相と前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーを含む島相とを含む海島構造を有するタイヤ。 - 前記被覆用混合物中における、前記熱可塑性樹脂(p)と前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(e)との質量比(p/e)が、95/5〜55/45である請求項1に記載のタイヤ。
- 前記タイヤ骨格体の引張弾性率(x1)、前記被覆用混合物の引張弾性率(x2)、及び前記補強金属コード部材の引張弾性率(x3)が、x1<x2<x3の関係を満たす請求項1又は2に記載のタイヤ。
- 前記タイヤ骨格体の破断伸び(y1)、前記被覆用混合物の破断伸び(y2)、及び前記補強金属コード部材の破断伸び(y3)が、y1>y2>y3の関係を満たす請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ。
- 前記タイヤ骨格体を形成する前記樹脂材料と、前記被覆用混合物に含まれる前記熱可塑性樹脂とが同種の樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤ。
- 前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーが、酸変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、未変性ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、又は、これらの組み合わせである請求項1〜5のいずれか1項に記載のタイヤ。
- 前記被覆用混合物に含まれる前記熱可塑性樹脂が、ポリアミド系熱可塑性樹脂である請求項1〜6のいずれか1項に記載のタイヤ。
- 前記タイヤ骨格体を形成する前記樹脂材料が、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含む請求項1〜7のいずれか1項に記載のタイヤ。
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