JP2022036330A - タイヤ用樹脂ゴム複合体及びタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】繰り返し負荷をかけることに起因する樹脂層の亀裂が抑制されたタイヤ用樹脂ゴム複合体を提供する。
【解決手段】樹脂を含む樹脂層と、接着剤を含む組成物の硬化層であり、前記樹脂層に直接接して設けられ、引張追従指数が80以上である接着剤層と、ゴムを含むゴム層と、をこの順に有し、前記引張追従指数は、試験用特定樹脂からなる第1の試験片を100mm/minの速度で引っ張り試験を行ったときの破断伸びを100とした場合における、前記試験用特定樹脂上に前記接着剤層が設けられた第2の試験片を100mm/minの速度で引っ張り試験を行ったときの破断伸びを表す指数である、タイヤ用樹脂ゴム複合体。
【選択図】なし

Description

本発明は、タイヤ用樹脂ゴム複合体及びタイヤに関する。
従来から、一対のビード部と、ビード部からタイヤ径方向外側へ延びる一対のタイヤサイド部と、一方のタイヤサイド部から他方のタイヤサイド部へ延びるトレッド部と、を有する空気入りタイヤが用いられている。中でも、空気入りタイヤとして、ゴム、有機繊維材料、及びスチール部材で形成されているタイヤが知られている。
一方、近年、軽量化やリサイクルのし易さ等の観点から、タイヤの一部に樹脂を用いることが求められている。例えば特許文献1には、コードを樹脂材料で被覆してなる被覆コードをビードコアに用いたタイヤが提案されている。
特開2011-207157号公報
上記のように、タイヤの一部に樹脂を用いる場合、タイヤ耐久性の観点から、樹脂を含む樹脂層とゴムを含むゴム層との接着性が求められることがある。
上記接着性を向上させる方法としては、例えば、樹脂層とゴム層とを接着剤により接着させる方法が挙げられる。しかしながら、樹脂層とゴム層とを接着剤により接着させると、接着性は向上するものの、繰り返し負荷をかけることに起因する樹脂層の亀裂が生じやすくなる場合がある。そのため、接着性を向上させつつ樹脂層の亀裂を抑制することで、タイヤの耐久性をさらに向上させる余地がある。
本発明は、上記事情に鑑み、繰り返し負荷をかけることに起因する樹脂層の亀裂が抑制されたタイヤ用樹脂ゴム複合体、及び耐久性に優れたタイヤを提供することを目的とする。
前記課題は、以下の本発明により解決される。
<1> 樹脂を含む樹脂層と、接着剤を含む組成物の硬化層であり、前記樹脂層に直接接して設けられ、引張追従指数が80以上である接着剤層と、ゴムを含むゴム層と、をこの順に有し、
前記引張追従指数は、試験用特定樹脂からなる第1の試験片を100mm/minの速度で引っ張り試験を行ったときの破断伸びを100とした場合における、前記試験用特定樹脂上に前記接着剤層が設けられた第2の試験片を100mm/minの速度で引っ張り試験を行ったときの破断伸びを表す指数である、
タイヤ用樹脂ゴム複合体。
<2> 前記接着剤層の平均厚みは、0.5μm以上80μm以下である<1>に記載のタイヤ用樹脂ゴム複合体。
<3> 前記接着剤は、エポキシ樹脂系接着剤、イソシアネート系接着剤、及びフェノール樹脂系接着剤から選択される少なくとも1種を含む<1>又は<2>に記載のタイヤ用樹脂ゴム複合体。
<4> 前記ゴム層に直接接するように前記接着剤層と前記ゴム層との間に設けられたゴム側接着層であって、イソシアネート系接着剤を含む組成物の硬化層であるゴム側接着層をさらに有する<1>~<3>のいずれか1つに記載のタイヤ用樹脂ゴム複合体。
<5> 前記樹脂層は、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、及びポリアミド系熱可塑性樹脂から選択される少なくとも1種を含む<1>~<4>のいずれか1つに記載のタイヤ用樹脂ゴム複合体。
<6> <1>~<5>のいずれか1つに記載のタイヤ用樹脂ゴム複合体を有するタイヤ。
本発明によれば、繰り返し負荷をかけることに起因する樹脂層の亀裂が抑制されたタイヤ用樹脂ゴム複合体、及び耐久性に優れたタイヤを提供することができる。
第1実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図である。 第1実施形態に係るタイヤの構成を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。 第2実施形態に係るタイヤの構成を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である 第3実施形態に係るタイヤの構成を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である 第4実施形態に係るタイヤのビード部を拡大した断面図である 第5実施形態に係るタイヤのビード部を拡大した断面図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本明細書において「樹脂」とは、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、及び熱硬化性樹脂を含む概念であり、加硫ゴムは含まない。また、以下の樹脂の説明において「同種」とは、エステル系同士、スチレン系同士等、樹脂の主鎖を構成する骨格と共通する骨格を備えたものを意味する。
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「工程」との語には、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その目的が達成されるものであれば、当該工程も本用語に含まれる。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、各成分に該当する物質が組成物中に複数存在する場合には、特に断りがない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「主成分」とは、特に断りがない限り、混合物中における質量基準の含有量が最も多い成分を意味する。
また、本明細書において「熱可塑性樹脂」とは、温度上昇とともに材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になるが、ゴム状弾性を有しない高分子化合物を意味する。
本明細書において「熱可塑性エラストマー」とは、ハードセグメント及びソフトセグメントを有する共重合体を意味する。熱可塑性エラストマーとして具体的には、例えば、結晶性で融点の高いハードセグメント又は高い凝集力のハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーと、を有する共重合体が挙げられる。また、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、温度上昇とともに材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になり、かつ、ゴム状弾性を有するものが挙げられる。
なお、上記ハードセグメントは、例えば、主骨格に芳香族基若しくは脂環式基等の剛直な基を有する構造、又は分子間水素結合若しくはπ-π相互作用による分子間パッキングを可能にする構造等のセグメントが挙げられる。また、ソフトセグメントは、例えば、主鎖に長鎖の基(例えば長鎖のアルキレン基等)を有し、分子回転の自由度が高く、伸縮性を有する構造のセグメントが挙げられる。
[タイヤ用樹脂ゴム複合体]
本発明に係るタイヤ用樹脂ゴム複合体(以下「複合体」ともいう)は、樹脂を含む樹脂層と、接着剤を含む組成物の硬化層であり樹脂層に直接接して設けられ引張追従指数が80以上である接着剤層と、ゴムを含むゴム層と、をこの順に有する。
<引張追従指数>
まず、引張追従指数について説明する。
引張追従指数は、試験用特定樹脂からなる第1の試験片を100mm/minの速度で引っ張り試験を行ったときの破断伸びを100とした場合における、前記試験用特定樹脂上に前記接着剤層が設けられた第2の試験片を100mm/minの速度で引っ張り試験を行ったときの破断伸びを表す指数である。
第1の試験片及び第2の試験片の作製は、例えば以下のようにして行う。
試験用特定樹脂として、例えば、ダンベル型(JIS3号サイズ)、厚み2mm、ポリエステル系熱可塑性エラストマー製(東レデユポン製、品番:ハイトレル5557)の樹脂片を2枚準備する。一方の樹脂片の中央部に、測定対象の接着剤層を形成するための接着剤を、複合体の接着剤層の平均厚みと同じ厚みになるように塗布し、160℃、2MPaの条件下で20分間の加圧及び加熱を行い、「第2の試験片」とする。つまり、第2の試験片は、樹脂片に測定対象の接着剤層が設けられた試験片である。なお、第2の試験片に設けられる接着剤層は、樹脂片の片側表面の全面に設け、全体にわたって厚みが±10%の範囲で均一となるようにする。
一方、接着剤を塗布していない樹脂についても同様に、160℃、2MPaの条件下で20分間の加圧及び加熱を行い、「第1の試験片」とする。
次に、第1の試験片及び第2の試験片それぞれを、引張試験機(例えば、島津製作所製オートグラフ AG-X)にセットして、JIS K7161-1:2014年に基づいて破断伸び(%)を測定する。具体的には、室温環境(23℃)下で、100mm/分の速度で試験片を引っ張り、破断伸びの値を測定する。
そして、第1の試験片における破断伸びを100とした場合における、第2の試験片における破断伸びの指数を「引張追従指数」とする。
つまり、接着剤層における引張追従指数が100である場合、上記第1の試験片における破断伸び(%)と第2の試験片における破断伸び(%)とは、同じ値である。また、接着剤層における引張追従指数が100より小さい値である場合、上記第1の試験片における破断伸び(%)に比べて第2の試験片における破断伸び(%)が小さい値である。
<作用効果>
樹脂層に接する接着剤層の引張追従指数が80以上であることにより、繰り返し負荷をかけることに起因する樹脂層の亀裂が抑制される理由は定かではないが、以下のように推測される。
樹脂層とゴム層とを接着剤により接着させた複合体は、接着剤を用いずに樹脂層とゴム層とを直接接触させたものに比べ、樹脂層とゴム層との接着性は向上するものの、繰り返し負荷をかけることに起因する樹脂層の亀裂が生じやすくなる場合がある。特に、上記複合体をタイヤに適用する場合、走行時に負荷がかかりやすいため、繰り返し負荷がかかっても亀裂が生じにくいことが求められる。
上記複合体における樹脂層の亀裂は、樹脂層に接する接着剤層の亀裂に起因するものと考えられる。具体的には、まず、複合体に負荷がかかると、ゴム弾性を有するゴム層は大きく変形しやすいのに対し、樹脂層は変形しにくいことにより、ゴム層の変形度と樹脂層の変形度との間に大きな差が生じると考えられる。そして、ゴム層と樹脂層との間に設けられた接着剤層が上記変形度の差に耐え切れず、接着剤層に亀裂が生じたのち、複合体にさらに負荷がかかることで、接着剤層に接する樹脂層にまで前記亀裂が伝播した結果、樹脂層にも亀裂が生じるものと推測される。
これに対して、本発明の複合体は、樹脂層に接する接着剤層の引張追従指数が80以上である。そのため、接着剤層の引張追従指数が80未満である場合に比べ、複合体に負荷がかかりゴム層の変形度と樹脂層の変形度との間に大きな差が生じても、接着剤層に亀裂が生じにくいため、接着剤層の亀裂に起因する樹脂層の亀裂が生じにくいものと推測される。
以上のことから、上記複合体は、繰り返し負荷をかけることに起因する樹脂層の亀裂が抑制されるとともに、上記複合体を有するタイヤは、耐久性に優れるものと推測される。
<層構成>
複合体は、樹脂層、樹脂層に接する接着剤層、及びゴム層を少なくともこの順に有していればよく、他の層をさらに有してもよい。他の層としては、例えば、ゴム層に直接接するように接着剤層とゴム層との間に設けられたゴム側接着層のほか、樹脂層のゴム層と反対側に設けられた他の樹脂層、ゴム層の樹脂層と反対側に設けられた他のゴム層等が挙げられる。
すなわち、複合体は、接着剤層が樹脂層及びゴム層の両方に直接接する形態であってもよく、接着剤層が樹脂層及びゴム側接着層に接し、ゴム側接着層がゴム層に直接接する形態であってもよい。接着剤層が樹脂層及びゴム層に接する形態では、接着剤層が単体で、樹脂層とゴム層とを接着させる接着層(以下「一層系接着層」ともいう)の役割を果たしている。また、複合体が接着剤層及びゴム側接着層を有する形態では、接着剤層及びゴム側接着層の両方によって、樹脂層とゴム層とを接着させる接着層(以下「二層系接着層」ともいう)の役割を果たしている。
なお、二層系接着層を有する複合体では、樹脂層に接する接着剤層の引張追従指数が80以上であればよく、ゴム側接着層の組成及び特性については、特に限定されるものではない。
以下、複合体を構成する各層について説明する。
<樹脂層>
樹脂層は、少なくとも樹脂を含み、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。
樹脂層は、樹脂を主成分として含むことが好ましい。具体的には、樹脂層の総量に対する樹脂の含有率が、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。
樹脂層は、樹脂として、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、及び熱硬化性樹脂のいずれを含んでもよいが、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、熱可塑性エラストマーを含むことがより好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリスチレン系熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂、塩化ビニル系熱可塑性樹脂等が挙げられる。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール系熱硬化性樹脂、ユリア系熱硬化性樹脂、メラミン系熱硬化性樹脂、エポキシ系熱硬化性樹脂等が挙げられる。
樹脂層は、これらの樹脂が単独で含まれていてもよく、2種以上の樹脂が組み合わせて含まれていてもよい。
これらの中でも、樹脂としては、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、又はポリオレフィン系熱可塑性樹脂が好ましい。
樹脂層は、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、及びポリアミド系熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、ポリエステル系熱可塑性エラストマー及びポリエステル系熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
-熱可塑性エラストマー-
(ポリエステル系熱可塑性エラストマー)
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリエステルが結晶性で融点の高いハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリエステル又はポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。
ハードセグメントを形成するポリエステルとしては、芳香族ポリエステルを用いることができる。芳香族ポリエステルは、例えば、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールとから形成することができる。芳香族ポリエステルは、好ましくは、テレフタル酸及びジメチルテレフタレートの少なくとも1種と、1,4-ブタンジオールと、から誘導されるポリブチレンテレフタレートである。また、芳香族ポリエステルは、例えば、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、ジフェニル-4,4’-ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸、若しくはこれらのエステル形成性誘導体等のジカルボン酸成分と、分子量300以下のジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオール;1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロール等の脂環式ジオール;キシリレングリコール、ビス(p-ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(2-ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシ-p-ターフェニル、4,4’-ジヒドロキシ-p-クオーターフェニル等の芳香族ジオール;等)と、から誘導されるポリエステル、又はこれらのジカルボン酸成分及びジオール成分を2種以上併用した共重合ポリエステルであってもよい。また、3官能以上の多官能カルボン酸成分、多官能オキシ酸成分、多官能ヒドロキシ成分等を5モル%以下の範囲で共重合することも可能である。
ハードセグメントを形成するポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
また、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエーテル等が挙げられる。
脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等が挙げられる。
脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が挙げられる。
これらの脂肪族ポリエーテル及び脂肪族ポリエステルの中でも、得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性の観点から、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が好ましい。
また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量は、強靱性及び低温柔軟性の観点から、300~6000が好ましい。さらに、ハードセグメント(x)とソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、99:1~20:80が好ましく、98:2~30:70が更に好ましい。
上述のハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、例えば、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。これらの中でも、上述のハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、ハードセグメントがポリブチレンテレフタレートであり、ソフトセグメントが脂肪族ポリエーテルである組み合わせが好ましく、ハードセグメントがポリブチレンテレフタレートであり、ソフトセグメントがポリ(エチレンオキシド)グリコールである組み合わせが更に好ましい。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、東レ・デュポン(株)製の「ハイトレル」シリーズ(例えば、3046、5557、6347、4047N、4767N等)、東洋紡(株)製の「ペルプレン」シリーズ(例えば、P30B、P40B、P40H、P55B、P70B、P150B、P280B、E450B、P150M、S1001、S2001、S5001、S6001、S9001等)等を用いることができる。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
(ポリアミド系熱可塑性エラストマー)
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとは、結晶性で融点の高いハードセグメントを形成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性の樹脂材料であって、ハードセグメントを形成するポリマーの主鎖にアミド結合(-CONH-)を有するものを意味する。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリアミドが結晶性で融点の高いハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリエステル、ポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメント及びソフトセグメントの他に、ジカルボン酸等の鎖長延長剤を用いて形成されてもよい。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、JIS K6418:2007に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)等や、特開2004-346273号公報に記載のポリアミド系エラストマー等を挙げることができる。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーにおいて、ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、例えば、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーによって生成されるポリアミドを挙げることができる。
Figure 2022036330000001
一般式(1)中、Rは、炭素数2~20の炭化水素の分子鎖(例えば炭素数2~20のアルキレン基)を表す。
Figure 2022036330000002
一般式(2)中、Rは、炭素数3~20の炭化水素の分子鎖(例えば炭素数3~20のアルキレン基)を表す。
一般式(1)中、Rとしては、炭素数3~18の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数3~18のアルキレン基が好ましく、炭素数4~15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数4~15のアルキレン基が更に好ましく、炭素数10~15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数10~15のアルキレン基が特に好ましい。
また、一般式(2)中、Rとしては、炭素数3~18の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数3~18のアルキレン基が好ましく、炭素数4~15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数4~15のアルキレン基が更に好ましく、炭素数10~15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数10~15のアルキレン基が特に好ましい。
一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーとしては、ω-アミノカルボン酸又はラクタムが挙げられる。また、ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、これらω-アミノカルボン酸又はラクタムの重縮合体、ジアミンとジカルボン酸との共縮重合体等が挙げられる。
ω-アミノカルボン酸としては、6-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、8-アミノオクタン酸、10-アミノカプリン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸等の炭素数5~20の脂肪族ω-アミノカルボン酸等を挙げることができる。また、ラクタムとしては、ラウリルラクタム、ε-カプロラクタム、ウデカンラクタム、ω-エナントラクタム、2-ピロリドン等の炭素数5~20の脂肪族ラクタム等を挙げることができる。
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、3-メチルペンタメチレンジアミン、メタキシレンジアミン等の炭素数2~20の脂肪族ジアミン等のジアミン化合物を挙げることができる。
また、ジカルボン酸は、HOOC-(R-COOH(R:炭素数3~20の炭化水素の分子鎖、m:0又は1)で表すことができ、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、ラウリルラクタム、ε-カプロラクタム、又はウデカンラクタムを開環重縮合したポリアミドを好ましく用いることができる。
また、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリエーテル等が挙げられ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ABA型トリブロックポリエーテル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ポリエーテルの末端にアンモニア等を反応させることによって得られるポリエーテルジアミン等も用いることができる。
ここで、「ABA型トリブロックポリエーテル」とは、下記一般式(3)に示されるポリエーテルを意味する。
Figure 2022036330000003
一般式(3)中、x及びzは、1~20の整数を表す。yは、4~50の整数を表す。
一般式(3)において、x及びzは、それぞれ、1~18の整数が好ましく、1~16の整数がより好ましく、1~14の整数が更に好ましく、1~12の整数が特に好ましい。また、一般式(3)において、yは、5~45の整数が好ましく、6~40の整数がより好ましく、7~35の整数が更に好ましく、8~30の整数が特に好ましい。
ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。これらの中でも、ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリエチレングリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリプロピレングリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの組合せ、又はラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルの組合せが好ましく、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルの組合せがより好ましい。
ハードセグメントを形成するポリマー(ポリアミド)の数平均分子量は、溶融成形性の観点から、300~15000が好ましい。また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、200~6000が好ましい。さらに、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、50:50~90:10が好ましく、50:50~80:20がより好ましい。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、宇部興産(株)の「UBESTA XPA」シリーズ(例えば、XPA9068X1、XPA9063X1、XPA9055X1、XPA9048X2、XPA9048X1、XPA9040X1、XPA9040X2XPA9044等)、ダイセル・エポニック(株)の「ベスタミド」シリーズ(例えば、E40-S3、E47-S1、E47-S3、E55-S1、E55-S3、EX9200、E50-R2等)等を用いることができる。
(ポリスチレン系熱可塑性エラストマー)
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリスチレンがハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエチレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。ハードセグメントを形成するポリスチレンとしては、例えば、公知のラジカル重合法、イオン性重合法等で得られるものが好ましく用いられ、具体的には、アニオンリビング重合を持つポリスチレンが挙げられる。また、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(2,3-ジメチル-ブタジエン)等が挙げられる。
ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。これらの中でも、ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、ポリスチレン/ポリブタジエンの組合せ、又はポリスチレン/ポリイソプレンの組合せが好ましい。また、熱可塑性エラストマーの意図しない架橋反応を抑制するため、ソフトセグメントは水素添加されていることが好ましい。
ハードセグメントを形成するポリマー(ポリスチレン)の数平均分子量は、5000~500000が好ましく、10000~200000がより好ましい。
また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、5000~1000000が好ましく、10000~800000がより好ましく、30000~500000が更に好ましい。さらに、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との体積比(x:y)は、成形性の観点から、5:95~80:20が好ましく、10:90~70:30がより好ましい。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン系共重合体[SBS(ポリスチレン-ポリ(ブチレン)ブロック-ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン-ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック-ポリスチレン)]、スチレン-イソプレン共重合体(ポリスチレン-ポリイソプレンブロック-ポリスチレン)、スチレン-プロピレン系共重合体[SEP(ポリスチレン-(エチレン/プロピレン)ブロック)、SEPS(ポリスチレン-ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン)、SEEPS(ポリスチレン-ポリ(エチレン-エチレン/プロピレン)ブロック-ポリスチレン)、SEB(ポリスチレン(エチレン/ブチレン)ブロック)]等が挙げられる。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、旭化成(株)製の「タフテック」シリーズ(例えば、H1031、H1041、H1043、H1051、H1052、H1053、H1062、H1082、H1141、H1221、H1272等)、(株)クラレ製の「SEBS」シリーズ(8007、8076等)、「SEPS」シリーズ(2002、2063等)等を用いることができる。
(ポリウレタン系熱可塑性エラストマー)
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリウレタンが物理的な凝集によって疑似架橋を形成しているハードセグメントを形成し、他のポリマーが非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、JIS K6418:2007に規定されるポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)が挙げられる。ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、下記式Aで表される単位構造を含むソフトセグメントと、下記式Bで表される単位構造を含むハードセグメントとを含む共重合体として表すことができる。
Figure 2022036330000004
式中、Pは、長鎖脂肪族ポリエーテル又は長鎖脂肪族ポリエステルを表す。Rは、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素を表す。P’は、短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素を表す。
式A中、Pで表される長鎖脂肪族ポリエーテル又は長鎖脂肪族ポリエステルとしては、例えば、分子量500~5000のものを使用することができる。Pは、Pで表される長鎖脂肪族ポリエーテル及び長鎖脂肪族ポリエステルを含むジオール化合物に由来する。このようなジオール化合物としては、例えば、分子量が前記範囲内にある、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリ(ブチレンアジペート)ジオール、ポリ-ε-カプロラクトンジオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、ABA型トリブロックポリエーテル等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
式A及び式B中、Rは、Rで表される脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素を含むジイソシアネート化合物を用いて導入された部分構造である。Rで表される脂肪族炭化水素を含む脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,2-エチレンジイソシアネート、1,3-プロピレンジイソシアネート、1,4-ブタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
また、Rで表される脂環族炭化水素を含むジイソシアネート化合物としては、例えば、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4-シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。さらに、Rで表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
式B中、P’で表される短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素としては、例えば、分子量500未満のものを使用することができる。また、P’は、P’で表される短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素を含むジオール化合物に由来する。P’で表される短鎖脂肪族炭化水素を含む脂肪族ジオール化合物としては、例えば、グリコール及びポリアルキレングリコールが挙げられ、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール等が挙げられる。
また、P’で表される脂環族炭化水素を含む脂環族ジオール化合物としては、例えば、シクロペンタン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,3-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール等が挙げられる。
さらに、P’で表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジオール化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、クロロヒドロキノン、ブロモヒドロキノン、メチルヒドロキノン、フェニルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、フェノキシヒドロキノン、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノールA、1,1-ジ(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,2-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)エタン、1,4-ジヒドロキシナフタリン、2,6-ジヒドロキシナフタリン等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ハードセグメントを形成するポリマー(ポリウレタン)の数平均分子量は、溶融成形性の観点から、300~1500が好ましい。また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの柔軟性及び熱安定性の観点から、500~20000が好ましく、500~5000が更に好ましく、500~3000が特に好ましい。また、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、15:85~90:10が好ましく、30:70~90:10が更に好ましい。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、特開平5-331256号公報に記載の熱可塑性ポリウレタンを用いることができる。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、芳香族ジオールと芳香族ジイソシアネートとからなるハードセグメントと、ポリ炭酸エステルからなるソフトセグメントとの組合せが好ましく、より具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)/ポリエステル系ポリオール共重合体、TDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、TDI/カプロラクトン系ポリオール共重合体、TDI/ポリカーボネート系ポリオール共重合体、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)/ポリエステル系ポリオール共重合体、MDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI/カプロラクトン系ポリオール共重合体、MDI/ポリカーボネート系ポリオール共重合体、及びMDI+ヒドロキノン/ポリヘキサメチレンカーボネート共重合体から選ばれる少なくとも1種が好ましく、TDI/ポリエステル系ポリオール共重合体、TDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI/ポリエステルポリオール共重合体、MDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、及びMDI+ヒドロキノン/ポリヘキサメチレンカーボネート共重合体から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
また、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、BASF社製の「エラストラン」シリーズ(例えば、ET680、ET880、ET690、ET890等)、(株)クラレ社製「クラミロンU」シリーズ(例えば、2000番台、3000番台、8000番台、9000番台等)、日本ミラクトラン(株)製の「ミラクトラン」シリーズ(例えば、XN-2001、XN-2004、P390RSUP、P480RSUI、P26MRNAT、E490、E590、P890等)等を用いることができる。
(ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー)
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリオレフィンが結晶性で融点の高いハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリオレフィン、他のポリオレフィン、ポリビニル化合物等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。ハードセグメントを形成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられる。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン-α-オレフィンランダム共重合体、オレフィンブロック共重合体等が挙げられ、具体的には、プロピレンブロック共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-4-メチル-1ペンテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-ペンテン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、1-ブテン-4-メチル-ペンテン、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、プロピレン-メタクリル酸共重合体、プロピレン-メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン-メチルアクリレート共重合体、プロピレン-エチルアクリレート共重合体、プロピレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、プロピレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
これらの中でも、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、プロピレンブロック共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ヘキセン共重合体、プロピレン-4-メチル-1ペンテン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-ペンテン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メタクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート共重合体、プロピレン-メタクリル酸共重合体、プロピレン-メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン-メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン-メチルアクリレート共重合体、プロピレン-エチルアクリレート共重合体、プロピレン-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及びプロピレン-酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種が好ましく、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、及びエチレン-ブチルアクリレート共重合体から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
また、エチレンとプロピレンといったように2種以上のオレフィン樹脂を組み合わせて用いてもよい。また、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー中のオレフィン樹脂含有率は、50質量%以上100質量%以下が好ましい。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量は、5000~10000000であることが好ましい。ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量が5000~10000000であると、熱可塑性樹脂材料の機械的物性が十分であり、加工性にも優れる。同様の観点から、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量は、7000~1000000であることが更に好ましく、10000~1000000が特に好ましい。これにより、熱可塑性樹脂材料の機械的物性及び加工性を更に向上させることができる。また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、200~6000が好ましい。更に、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、50:50~95:15が好ましく、50:50~90:10が更に好ましい。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、公知の方法によって共重合することで合成することができる。
また、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを酸変性してなるものを用いてもよい。
「ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを酸変性してなるもの」とは、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーに、カルボン酸基、硫酸基、燐酸基等の酸性基を有する不飽和化合物を結合させたものをいう。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーに、カルボン酸基、硫酸基、燐酸基等の酸性基を有する不飽和化合物を結合させることとしては、例えば、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーに、酸性基を有する不飽和化合物として、不飽和カルボン酸(一般的には、無水マレイン酸)の不飽和結合部位を結合(例えば、グラフト重合)させることが挙げられる。
酸性基を有する不飽和化合物としては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの劣化抑制の観点からは、弱酸基であるカルボン酸基を有する不飽和化合物が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等が挙げられる。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、三井化学(株)製の「タフマー」シリーズ(例えば、A0550S、A1050S、A4050S、A1070S、A4070S、A35070S、A1085S、A4085S、A7090、A70090、MH7007、MH7010、XM-7070、XM-7080、BL4000、BL2481、BL3110、BL3450、P-0275、P-0375、P-0775、P-0180、P-0280、P-0480、P-0680等)、三井・デュポンポリケミカル(株)製の「ニュクレル」シリーズ(例えば、AN4214C、AN4225C、AN42115C、N0903HC、N0908C、AN42012C、N410、N1050H、N1108C、N1110H、N1207C、N1214、AN4221C、N1525、N1560、N0200H、AN4228C、AN4213C、N035C)等、「エルバロイAC」シリーズ(例えば、1125AC、1209AC、1218AC、1609AC、1820AC、1913AC、2112AC、2116AC、2615AC、2715AC、3117AC、3427AC、3717AC等)、住友化学(株)の「アクリフト」シリーズ、「エバテート」シリーズ等、東ソー(株)製の「ウルトラセン」シリーズ等、プライムポリマー製の「プライムTPO」シリーズ(例えば、E-2900H、F-3900H、E-2900、F-3900、J-5900、E-2910、F-3910、J-5910、E-2710、F-3710、J-5910、E-2740、F-3740、R110MP、R110E、T310E、M142E等)等も用いることができる。
-熱可塑性樹脂-
(ポリエステル系熱可塑性樹脂)
ポリエステル系熱可塑性樹脂としては、前述のポリエステル系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを形成するポリエステルを挙げることができる。
ポリエステル系熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ-3-ブチル酪酸、ポリヒドロキシ-3-ヘキシル酪酸、ポリ(ε-カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等の脂肪族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等の芳香族ポリエステルなどを例示することができる。これらの中でも、耐熱性及び加工性の観点から、ポリエステル系熱可塑性樹脂としては、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
ポリエステル系熱可塑性樹脂の市販品としては、例えば、ポリプラスチック(株)製の「ジュラネックス」シリーズ(例えば、2000、2002等)、三菱エンジニアリングプラスチック(株)製の「ノバデュラン」シリーズ(例えば、5010R5、5010R3-2等)、東レ(株)製の「トレコン」シリーズ(例えば、1401X06、1401X31等)等を用いることができる。
(ポリアミド系熱可塑性樹脂)
ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、前述のポリアミド系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを形成するポリアミドを挙げることができる。
ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、具体的には、ε-カプロラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド6)、ウンデカンラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド11)、ラウリルラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド12)、ジアミンと二塩基酸とを重縮合したポリアミド(アミド66)、メタキシレンジアミンを構成単位として有するポリアミド(アミドMX)等を例示することができる。
アミド6は、例えば、{CO-(CH-NH}で表すことができる。アミド11は、例えば、{CO-(CH10-NH}で表すことができる。アミド12は、例えば、{CO-(CH11-NH}で表すことができる。アミド66は、例えば、{CO(CHCONH(CHNH}で表すことができる。アミドMXは、例えば、下記構造式(A-1)で表すことができる。ここで、nは繰り返し単位数を表す。
Figure 2022036330000005
アミド6の市販品としては、例えば、宇部興産(株)製の「UBEナイロン」シリーズ(例えば、1022B、1011FB等)を用いることができる。アミド11の市販品としては、例えば、アルケマ(株)製の「Rilsan B」シリーズを用いることができる。アミド12の市販品としては、例えば、宇部興産(株)製の「UBEナイロン」シリーズ(例えば、3024U、3020U、3014U等)を用いることができる。アミド66の市販品としては、例えば、旭化成(株)製の「レオナ」シリーズ(例えば、1300S、1700S等)を用いることができる。アミドMXの市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)製の「MXナイロン」シリーズ(例えば、S6001、S6021、S6011等)を用いることができる。
ポリアミド系熱可塑性樹脂は、上記の構成単位のみで形成されるホモポリマーであってもよく、上記の構成単位と他のモノマーとのコポリマーであってもよい。コポリマーの場合、各ポリアミド系熱可塑性樹脂における上記構成単位の含有率は、40質量%以上であることが好ましい。
(ポリオレフィン系熱可塑性樹脂)
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂としては、前述のポリオレフィン系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを形成するポリオレフィンを挙げることができる。
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリエチレン系熱可塑性樹脂、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂、ポリブタジエン系熱可塑性樹脂等を例示することができる。これらの中でも、耐熱性及び加工性の点から、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂が好ましい。
ポリプロピレン系熱可塑性樹脂の具体例としては、プロピレンホモ重合体、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィンブロック共重合体等が挙げられる。α-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素数3~20程度のα-オレフィン等が挙げられる。
-他の成分-
樹脂層は、樹脂以外にも、効果を損なわない範囲で添加剤等の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、ゴム、各種充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ等)、老化防止剤、オイル、可塑剤、発色剤、耐候剤等が挙げられる。
<接着剤層>
接着剤層は、接着剤を含む組成物の硬化層であり、引張追従指数が80以上であれば、特に限定されるものではない。
接着剤層の引張追従指数は、80以上120以下であることが好ましく、85以上120以下であることがより好ましく、90以上120以下であることがさらに好ましい。
上記接着剤層の引張追従指数は、少なくとも、接着剤層の組成、物性、及び厚みに依存する値である。
組成物に含まれる接着剤(すなわち、接着剤層用の接着剤)としては、例えば、溶液系接着剤、ホットメルト接着剤等が挙げられる。接着剤は、1種のみ用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、接着剤層の形成に用いる接着剤が非反応性の接着剤である場合、接着剤層は前記非反応性の接着剤を含み、接着剤層の形成に用いる接着剤が反応性の接着剤である場合、接着剤層は前記反応性の接着剤の反応生成物を含む。
溶液系接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂を主成分として含むエポキシ樹脂系接着剤、イソシアネート化合物を含むイソシアネート系接着剤、フェノール系樹脂を主成分として含むフェノール樹脂系接着剤、オレフィン系樹脂を主成分として含むオレフィン樹脂系接着剤、ポリウレタン系樹脂を主成分として含むポリウレタン樹脂系接着剤、ビニル系樹脂(例えば、酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等)を主成分として含むビニル樹脂系接着剤、合成ゴムを主成分として含むゴム系接着剤、レゾルシノール及びホルマリンを主原料とするRFL系接着剤等が挙げられる。
ホットメルト接着剤としては、例えば、変性オレフィン系樹脂(変性ポリエチレン系樹脂、変性ポリプロピレン系樹脂等)、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、変性ポリエステル系樹脂、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等の1種又は2種以上の熱可塑性樹脂を主成分(主剤)として含むものが挙げられる。
接着剤は、引張追従指数が80以上である接着剤層が得られるものであれば特に限定されず、市販品を用いてもよい。
引張追従指数が80以上である接着剤層を得る観点から、接着剤として、エポキシ樹脂系接着剤、イソシアネート系接着剤、及びフェノール樹脂系接着剤から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、エポキシ樹脂系接着剤及びイソシアネート系接着剤から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。
さらに、これらの中でも、一層系接着層である接着剤層に用いる接着剤としては、イソシアネート系接着剤が好ましく挙げられる。また、二層系接着層である接着剤層に用いる接着剤としては、エポキシ系接着剤が好ましく挙げられる。
引張追従指数が80以上である接着剤層が得られるエポキシ樹脂系接着剤の市販品としては、例えば、メタロックN-20(東洋化学研究所製)、メタロックN-23(東洋化学研究所製)、メタロックPH-37(東洋化学研究所製)等が挙げられる。
また、引張追従指数が80以上である接着剤層を得られるイソシアネート系接着剤の市販品としては、例えば、メタロックF-112(東洋化学研究所製)、ケムロック233X(LORD製)、ケムロック6125(LORD製)等が挙げられる。
さらに、引張追従指数が80以上である接着剤層を得られるフェノール樹脂系接着剤の市販品としては、例えば、PH-56(東洋化学研究所製)等が挙げられる。
接着剤を含む組成物は、接着剤以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、ラジカル捕捉剤、ゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂、各種充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ等)、老化防止剤、オイル、可塑剤、発色剤、耐候剤等が挙げられる。
ただし、接着剤層においては、接着剤に起因する成分の割合が、接着剤層全体に対し、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。
接着剤層の形成は、接着剤を含む組成物を、接着剤層が直接接する層(例えば樹脂層)に塗布し、硬化させることで行われる。
接着剤を含む組成物の塗布方法としては、例えば、浸漬法、バーコート法、ニーダーコート法、カーテンコート法、ローラコート法、スピンコート法、刷毛塗法、スプレー法等が挙げられる。
接着剤を含む組成物を硬化させる方法としては、例えば、加熱する方法、加熱及び加圧を行う方法等が挙げられる。
接着剤層の平均厚みは、0.5μm以上80μm以下が好ましく、0.5μm以上70μm以下がより好ましく、0.5μm以上60μm以下がさらに好ましく、0.5μm以上40μm以下が特に好ましく、0.5μm以上30μm以下が極めて好ましい。接着剤層の平均厚みが上記範囲であることにより、・上記範囲よりも薄い場合に比べて樹脂層とゴム層との接着性が得られやすくなり、上記範囲よりも厚い場合に比べて繰り返し負担をかけることに起因する樹脂層の亀裂が抑制される。
なお、接着剤層の平均厚みは、タイヤ幅方向における切断面のSEM画像を任意の5箇所から取得し、得られたSEM画像から測定される接着剤層の厚みの数平均値とする。
<ゴム側接着層>
複合体は、必要に応じて、接着剤層とゴム層との間にゴム側接着層を設けてもよい、
ゴム側接着層としては、例えば、接着剤層と同様に、ゴム側接着層用の接着剤を含む組成物の硬化層が挙げられる。
ゴム側接着層に用いる組成物に含まれる接着剤についても、接着剤層に用いる組成物に含まれるものと同様のものが挙げられる。なお、ゴム側接着層用の接着剤は、接着剤層の組成に応じて選択される。例えば、接着剤層がエポキシ系接着剤を含む組成物の硬化層である場合、ゴム側接着層用の接着剤としては、イソシアネート系接着剤が好ましく挙げられる。
ゴム側接着層に用いる組成物に含まれうる他の成分及びゴム側接着層の形成方法についても、接着剤層の場合と同様である。
ゴム側接着層の引張追従指数は、特に限定されるものではなく、例えば80上120以下が挙げられ、85以上120以下が好ましく、90以上120以下がより好ましい。ゴム側接着層の引張追従指数は、接着剤層の引張追従指数と同様の方法で測定される。
ゴム側接着層の平均厚みとしては、例えば、0.5μm以上80μm以下が挙げられ、0.5μm以上70μm以下が好ましく、0.5μm以上60μm以下がより好ましく、0.5μm以上30μm以下が特に好ましく、0.5μm以上20μm以下が極めて好ましい。ゴム側接着層の平均厚みは、前記接着剤層の平均厚みと同様の方法で求められる。
<ゴム層>
ゴム層は、少なくともゴムを含み、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。
ゴム層は、ゴムを主成分として含むことが好ましい。具体的には、ゴム層の総量に対するゴムの含有率が、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。
ゴムとしては、特に限定されず、例えば、天然ゴム(NR);ポリイソプレン合成ゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)等の共役ジエン系合成ゴム;エチレン-プロピレン共重合体ゴム(EPM);エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム(EPDM);ポリシロキサンゴムなどのゴムが挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ゴムは未加硫ゴムであってもよく、加硫ゴムであってもよい。
ゴム層は、ゴムを含む組成物を一般的な方法で混練後、加硫して得たものであることが好ましい。
その他の成分としては、例えば、カーボンブラック等の補強材、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、脂肪酸又はその塩、金属酸化物、プロセスオイル、老化防止剤等が挙げられる。
加硫剤としては、公知の加硫剤、例えば硫黄、有機過酸化物、樹脂加硫剤等が用いられる。その中でも、加硫剤として硫黄が用いられていることが好ましい。
加硫促進剤としては、公知の加硫促進剤、例えばアルデヒド類、アンモニア類、アミン類、グアニジン類、チオウレア類、チアゾール類、スルフェンアミド類、チウラム類、ジチオカーバメイト類、キサンテート類等が用いられる。
脂肪酸としては、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸などが挙げられ、また、これらはステアリン酸亜鉛のように塩の状態で配合されてもよい。これらの中でも、ステアリン酸が好ましい。
また、金属酸化物としては、亜鉛華(ZnO)、酸化鉄、酸化マグネシウム等が挙げられ、中でも亜鉛華が好ましい。
プロセスオイルは、アロマティック系、ナフテン系、パラフィン系のいずれを用いてもよい
老化防止剤としては、アミン-ケトン系、イミダゾール系、アミン系、フェノール系、硫黄系及び燐系などが挙げられる。
<用途>
複合体における樹脂層及びゴム層の組合せとしては、例えば以下の組合せが挙げられる。
・樹脂層としてのベルト層と、ゴム層としてのトレッド、タイヤ骨格部材、及びベルト層の表面に接着されたゴムシートから選択される少なくとも1種の部材と、の組合せ。
・樹脂層としてのビード部材と、ゴム層としてのタイヤ骨格部材、及びビード部材の表面に接着されたゴムシートから選択される少なくとも1種の部材と、の組合せ。
・樹脂層としてのタイヤ骨格部材と、ゴム層としてのトレッド、ベルト層、ビード部材、及びタイヤ骨格部材の表面に接着されたゴムシートから選択される少なくとも1種の部材と、の組合せ。
・樹脂層としてのベルトコードと、ゴム層としてのベルトコードを被覆するコード被覆層、及び前記ベルトコードの表面に接着されたゴムシートから選択される少なくとも1種の部材と、の組合せ(つまりベルト層が複合体である)。
・樹脂層としてのビードワイヤーと、ゴム層としてのビードワイヤーを被覆するワイヤー被覆層、及び前記ビードワイヤーの表面に接着されたゴムシートから選択される少なくとも1種の部材と、の組合せ(つまりビードコアが複合体である)。
[タイヤ]
本発明のタイヤは、少なくとも前述の複合体を有する。
以下、前述の複合体を有するタイヤの実施形態について、図を参照して説明するが、本発明のタイヤはこれらの例に限定されるものではない。
<第1実施形態>
第1実施形態では、樹脂を含む環状のタイヤ骨格部材と、タイヤ骨格部材のタイヤ径方向外側に設けられ、複数の補強コードと補強コードを被覆する被覆樹脂とを含むベルト層と、ベルト層のタイヤ径方向外側の面に設けられたゴム部材と、を有し、ベルト層とゴム部材との間に一層系接着層である接着剤層が設けられている。つまり、第1実施形態では、前記樹脂層に相当するベルト層の被覆樹脂と、接着剤層と、前記ゴム層に相当するゴム部材と、をこの順に有する複合体を有する。
なお、一層系接着層である接着剤層の代わりに、二層系接着層を設けてもよい。つまり、前記樹脂層に相当するベルト層の被覆樹脂と、接着剤層と、ゴム側接着層と、前記ゴム層に相当するゴム部材と、をこの順に有する複合体を有してもよい。
以下、第1実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。なお、図2中、矢印Wはタイヤ回転軸と平行な方向(以下、「タイヤ幅方向」と称する場合がある)を示し、矢印Sはタイヤの回転軸を通りタイヤ幅方向と直交する方向(以下、「タイヤ径方向」と称する場合がある)を示す。さらに、一点鎖線CLは、タイヤのセンターライン(以下「タイヤ赤道面」ともいう)を示す。
図1は、第1実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図であり、図2は、第1実施形態に係るタイヤの構成を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。
図1及び図2に示すように、第1実施形態に係るタイヤ10は、樹脂を含む樹脂材料で構成された環状のタイヤ骨格部材であるタイヤケース17と、タイヤケース17のタイヤ径方向外側に設けられたベルト層12と、タイヤケース17のタイヤ径方向外側の面のうちベルト層12が設けられてない領域並びにベルト層12のタイヤ径方向外側の面及びタイヤ幅方向外側の面に設けられた接着剤層11と、接着剤層11のタイヤ径方向外側の面に設けられたゴム部材の一例であるトレッド30と、を備えている。また、ベルト層12は、被覆樹脂26で被覆された複数の補強コード24を備えている。
-タイヤ骨格部材-
タイヤケース17は、例えば、樹脂材料の一例である熱可塑性エラストマーを用いて構成され、タイヤ周方向に円環状に形成されている。
タイヤケース17は、タイヤ幅方向に間隔をあけて配置された一対のビード部14と、これら一対のビード部14からタイヤ径方向外側へそれぞれ延出する一対のサイド部16と、一対のサイド部16を連結するクラウン部18と、を含んで構成されている。ビード部14は、リム(図示せず)に接触する部位である。また、サイド部16は、タイヤ10の側部を形成し、ビード部14からクラウン部18に向かってタイヤ幅方向外側に凸となるように緩やかに湾曲している。
クラウン部18は、一方のサイド部16のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部16のタイヤ径方向外側端とを連結する部位であり、タイヤ径方向外側に配設されるトレッド30を支持する。
また、本実施形態では、クラウン部18は、略一定厚みとされている。タイヤケース17のクラウン部18における外周面18Aは、タイヤ幅方向断面において平坦状に形成されていてもよいし、またタイヤ径方向外側に膨らんだ湾曲形状であってもよい。なお、本実施形態のクラウン部18の外周面18Aは、ベルト層12が設けられるタイヤケース17の外周である。
また、タイヤケース17は、1つのビード部14、一つのサイド部16、及び半幅のクラウン部18を有する円環状のタイヤ半体17Hを一対形成し、これらのタイヤ半体17Hを互いに向かい合わせ、各々の半幅のクラウン部18の端部同士をタイヤ赤道面CLで接合して形成されている。この端部同士は、例えば溶接用樹脂材料17Aを用いて接合されている。
ビード部14には、タイヤ周方向に沿って延びる円環状のビードコア20が埋設されている。このビードコア20は、ビードコード(図示せず)で構成されている。このビードコードは、スチールコード等の金属コード、有機繊維コード、樹脂被覆した有機繊維コード、または硬質樹脂などで構成される。なお、ビード部14の剛性を十分に確保できれば、ビードコア20自体を省略してもよい。
なお、タイヤケース17を一体成型品としてもよく、タイヤケース17を3以上の樹脂部材に分けて製造し、これらを接合して形成してもよい。例えば、タイヤケース17を各部位(例えば、ビード部14、サイド部16、クラウン部18)ごとに分けて製造し、これらを接合して形成してもよい。このとき、タイヤケース17の各部位(例えば、ビード部14、サイド部16、クラウン部18)を異なる特徴を有する樹脂材料で形成してもよい。
また、タイヤケース17に、補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布等)を埋設配置してもよい。
また、ビード部14の表面のうち、リム(図示せず)との接触部分に、該リムとの間の気密性を高めるための被覆層21を形成してもよい。被覆層21の材料としては、例えば、タイヤケース17よりも軟質で且つ耐候性が高いゴム等の材料が挙げられる。被覆層21は、ビード部14のタイヤ幅方向内側の内面からタイヤ幅方向外側へ折り返され、サイド部16の外面を経由して、ベルト層12のタイヤ幅方向外側の端部近傍まで延びているように設けられてもよい。また、被覆層の延出端部は、後述するトレッド30によって覆われていてもよい。ただし、タイヤケース17のビード部14のみにより、リム(図示せず)との間のシール性(気密性)を確保できれば、被覆層21を設けなくてもよい。
なお、被覆層21がゴムを含むゴム部材である場合、タイヤケース17と被覆層21との間に、接着剤層11と同様の接着剤層を設けることにより、タイヤケース17と接着剤層と被覆層21とをこの順に有する複合体としてもよい。
-ベルト層-
次に、ベルト層12について説明する。
ベルト層12は、樹脂被覆コード28がタイヤケース17の外周にタイヤ周方向に螺旋状に巻かれてタイヤケース17に接合されると共に、樹脂被覆コード28におけるタイヤ幅方向に互いに隣接する部分同士が接合されることで構成されている。なお、樹脂被覆コード28は、補強コード24を被覆樹脂26で被覆して構成されている
補強コード24は、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)で構成され、被覆樹脂26は、例えば熱可塑性エラストマーで構成されている。
補強コード24としては、例えば、一本の金属コードからなるモノフィラメント(単線)、複数本の金属コードを撚ったマルチフィラメント(撚り線)等が挙げられるが、タイヤの耐久性をより向上させる観点からは、マルチフィラメントが好ましい。複数本の金属コードの数としては、例えば2本~10本が挙げられ、5本~9本が好ましい。
タイヤの耐内圧性と軽量化とを両立する観点からは、補強コード24の太さは、0.2mm~2mmであることが好ましく、0.8mm~1.6mmであることがより好ましい。
なお、図1及び図2に示すベルト層12では、樹脂被覆コード28の層が単層であり、補強コード24がタイヤ幅方向に一列に並んだ構成となっているが、これに限られない。ベルト層12は、樹脂被覆コード28がタイヤ周方向に螺旋状に巻かれて層を形成した後に、前記層の外周面にさらに樹脂被覆コード28が巻かれた積層構造のベルト層であってもよい。
また、図1及び図2に示すベルト層12は、タイヤケース17の外周面に樹脂被覆コード28を螺旋状に巻いて接合することで構成されているが、これに限られない。例えば、複数本の補強コード24と被覆樹脂26とがシート状に一体化されたものをタイヤケース17の外周面に巻くことで構成されたベルト層であってもよい。
-ゴム部材-
次に、ゴム部材の一例であるトレッド30について説明する。
図1及び図2に示すように、ベルト層12のタイヤ径方向外側に、トレッド30が配置されている。なお、トレッド30は、例えば、タイヤケース17上のベルト層12に、接着剤層11となる組成物を介して未加硫の状態で積層された後、加硫接着される。
トレッド30のタイヤ径方向の外周面には、タイヤ周方向に延びる排水用の溝30Aが形成されている。本実施形態では、2本の溝30Aが形成されているが、これに限らず、さらに多くの溝30Aを形成してもよい。また、トレッドパターンとしては、公知のものを用いることができる。
なお、図1及び図2においては、トレッド30が単層のゴム部材で構成されているが、これに限られず、例えば、クッションゴムの層とトレッドの層とが積層されたゴム部材であってもよい。
-タイヤの製造方法-
次に、本実施形態のタイヤ10の製造方法について説明する。まず、熱可塑性材料を用いた射出成型により、ビードコア20を含むタイヤ半体17Hを一組形成する。
次に、一対のタイヤ半体17Hを互いに向かい合わせ、クラウン部18となる部分の端部同士を突き合わせ、突き合わせ部分に溶融状態の溶接用樹脂材料17Aを付着させて一対のタイヤ半体17Hを接合する。このようにして、円環状のタイヤケース17が形成される。
次に、タイヤケース17の外周に樹脂被覆コード28を巻き付ける工程について説明する。具体的には、クラウン部18の外周面18Aに向かって樹脂被覆コード28を送り出しつつ、樹脂被覆コード28の熱可塑性樹脂及びクラウン部18の外周面18Aに熱風を吹き当てて加熱し溶融させる。そして、熱可塑性樹脂が溶融した状態の樹脂被覆コード28を、溶融した状態のクラウン部18の外周面18Aに押し付けて接合させ、これらを冷却することで固化させる。
このようにして、タイヤケース17の外周、具体的には、クラウン部18の外周に樹脂被覆コード28の層が形成され、ベルト層12となる。
なお、必要に応じて、タイヤケース17とベルト層12との間に接着層を設けてもよい。
次に、ベルト層12の外周面に、接着剤層11及びトレッド30を形成する。
具体的には、まず、ベルト層12の外周面に、接着剤層11となる組成物を塗布し、必要に応じて乾燥させ、組成物層を形成させる。次に、組成物層の外周面に、加硫前のトレッドを巻き付ける。なお、組成物の塗布及び加硫前のトレッドの巻き付けは、ベルト層12が設けられたタイヤケース17を回転させながら行ってもよい。
そして、ベルト層12、組成物層、及び加硫前のトレッドが積層されたタイヤケース17(すなわち、生タイヤ)を加硫する。具体的には、例えば、タイヤケース17を加硫缶やモールドに収容して加熱することで、組成物層が硬化して接着剤層11が形成され、かつ、加硫前のトレッドが加硫されてトレッド30が形成される。加硫温度としては、例えば160℃~220℃が挙げられ、加硫時間としては、例えば1分間~20分間が挙げられる。
以上のようにして、第1実施形態のタイヤ10が得られる。
<第2実施形態>
第2実施形態では、ゴムを含む環状のタイヤ骨格部材と、タイヤ骨格部材のタイヤ径方向外側に設けられ、複数の補強コードと補強コードを被覆する被覆樹脂とを含むベルト層と、ベルト層のタイヤ径方向外側の面に設けられたゴム部材と、を有し、ベルト層とゴム部材との間に一層系接着層である接着剤層が設けられている。第2実施形態は、タイヤ骨格部材がゴムを含むこと以外は第1実施形態と同様であり、前記樹脂層に相当するベルト層と、接着剤層と、前記ゴム層に相当するゴム部材と、をこの順に有する複合体を有する。
なお、第2実施形態においても、一層系接着層である接着剤層の代わりに、二層系接着層を設けてもよい。つまり、前記樹脂層に相当するベルト層と、接着剤層と、ゴム側接着層と、前記ゴム層に相当するゴム部材と、をこの順に有する複合体を有してもよい。
以下、第2実施形態について、図3を参照して説明する。
図3は、第2実施形態に係るタイヤの構成を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。図3において他の図と共通する部材については同様の符号を付して説明を省略する。
図3に示すように、第2実施形態に係るタイヤ80は、ゴムを含有するゴム材料を含んで構成された環状のタイヤ骨格部材の一例であるタイヤケース94と、ベルト層12と、接着剤層11と、ゴム部材の一例であるトレッド30と、を備えている。
ベルト層12、接着剤層11、及びトレッド30については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態のタイヤ80は、例えば、所謂ラジアルタイヤであり、ビードコア20が埋設された一対のビード部14を備え、一方のビード部14と他方のビード部14との間に、1枚のカーカスプライ82からなるカーカス86が跨っている。なお、図3は、タイヤ80の空気充填前の自然状態の形状を示している。
カーカスプライ82は、例えば、空気入りタイヤ80のラジアル方向に延びる複数本のコード(図示せず)をコーティングゴム(図示せず)で被覆して形成されている。カーカスプライ82のコードの材料は、例えば、PETが挙げられるが、従来公知の他の材料であってもよい。
カーカスプライ82は、タイヤ幅方向の端部分がビードコア20においてタイヤ径方向外側に折り返されている。カーカスプライ82は、一方のビードコア20から他方のビードコア20に跨る部分が本体部82Aと呼ばれ、ビードコア20から折り返されている部分が折り返し部82Bと呼ばれる。
カーカスプライ82の本体部82Aと折返し部82Bとの間には、ビードコア20からタイヤ径方向外側に向けて厚さが漸減するビードフィラー88が配置されている。なお、タイヤ80において、ビードフィラー88のタイヤ径方向外側端88Aからタイヤ径方向内側の部分がビード部14とされている。
カーカス86のタイヤ内側にはゴムからなるインナーライナー90が配置されており、カーカス86のタイヤ幅方向外側には、ゴムを含有するゴム材料からなるサイドゴム層92が配置されている。
なお、本実施形態では、ビードコア20、カーカス86、ビードフィラー88、インナーライナー90、及びサイドゴム層92によってタイヤケース94が構成されている。
カーカス86のクラウン部の外側、言い換えればカーカス86のタイヤ径方向外側には、接着剤層11を介してベルト層12が配置されており、ベルト層12はカーカス86の外周面に密着している。
そして、ベルト層12のタイヤ径方向外側には、接着剤層11を介して、ゴムを含有するゴム材料からなるトレッド30が配置されている。トレッド30に用いるゴム材料は、従来一般公知のものが用いられる。トレッド30には、排水用の溝30Aが形成されている。トレッド30の溝30Aにおけるパターンも従来一般公知のものが用いられる。
(タイヤの製造方法)
次に、本実施形態のタイヤ80の製造方法の一例を説明する。
まず、公知のタイヤ成形ドラム(不図示)の外周に、ゴム材料からなるインナーライナー90、ビードコア20、ゴム材料からなるビードフィラー88、コードをゴム材料で被覆したカーカスプライ82、及びサイドゴム層92からなる未加硫のタイヤケース94を形成する。
一方、ベルト層12は、以下のようにして形成する。
具体的には、ベルト成形ドラム(図示せず)の外周面に向かって樹脂被覆コード28を送り出す。樹脂被覆コード28は、熱風により加熱され溶融した状態でベルト成形ドラムの外周面に押し付けられ、その後冷却される。このようにして、樹脂被覆コード28をベルト成形ドラムの外周面に螺旋状に巻き付けると共に該外周面に押し付けていくことで、ベルト成形ドラムの外周面に樹脂被覆コード28の層が形成される。
次に、樹脂被覆コード28が冷却されて被覆樹脂26が固化したベルト層12を、ベルト成形ドラムから取り外す。そして、取り外したベルト層12の内周面に、接着剤層11となる組成物を塗布して組成物層を形成させた後、タイヤ成形ドラムにおける前記未加硫のタイヤケース94の径方向外側に上記ベルト層12を配置する。その後、タイヤケース94を拡張し、タイヤケース94の外周面、言い換えればカーカス86の外周面を、ベルト層12の内周面に圧着する。
最後に、ベルト層12の外周面に、接着剤層11となる組成物を塗布して組成物層を形成させた後、未加硫のトレッドを貼り付け、生タイヤが完成する。
このようにして製造された生タイヤは、加硫成形モールドで加硫成形され、タイヤ80が完成する。
<第3実施形態>
第3実施形態では、樹脂を含む環状のタイヤ骨格部材と、タイヤ骨格部材のタイヤ径方向外側に設けられ、複数の補強コードと補強コードを被覆する被覆樹脂とを含むベルト層と、ベルト層のタイヤ径方向外側の面に設けられた第1のゴム部材と、タイヤ骨格部材のタイヤ幅方向外側に設けられた第2のゴム部材と、を有し、タイヤ骨格部材と第2のゴム部材との間に一層系接着層である接着剤層が設けられている。つまり、第3実施形態では、前記樹脂層に相当するタイヤ骨格部材と、接着剤層と、前記ゴム層に相当する第2のゴム部材と、をこの順に有する複合体を有する。
なお、一層系接着層である接着剤層の代わりに、二層系接着層を設けてもよい。つまり、前記樹脂層に相当するタイヤ骨格部材と、接着剤層と、ゴム側接着層と、前記ゴム層に相当するゴム部材と、をこの順に有する複合体を有してもよい。
また、第1実施形態と同様に、ベルト層と第1のゴム層との間に一層系接着層である接着剤層を設けてもよく、ベルト層と第1のゴム層との間に二層系接着層を設けてもよい。
図4は、第3実施形態に係るタイヤの構成を示すタイヤ幅方向に沿った断面図である。図4において他の図と共通する部材については同様の符号を付して説明を省略する。
図4に示すように、第3実施形態に係るタイヤ110は、樹脂を含む樹脂材料で構成された環状のタイヤ骨格部材であるタイヤケース17と、タイヤケース17のタイヤ径方向外側に設けられたベルト層12と、ベルト層12のタイヤ径方向外側の面並びにタイヤケース17のタイヤ径方向外側及びタイヤ幅方向外側の面に設けられた接着剤層11と、接着剤層11のタイヤ径方向外側の面に設けられた第1のゴム部材の一例であるトレッド30と、接着剤層11のタイヤ幅方向外側の面に設けられた第2のゴム部材の一例であるサイドゴム層13と、を備えている。
タイヤケース17、ベルト層12、接着剤層11、及びトレッド30については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。また、サイドゴム層13としては、第2実施形態におけるサイドゴム層92と同様のものが用いられる。
なお、第3実施形態では、第2のゴム部材として、タイヤケース17のタイヤ幅方向外側に接着剤層11を介してサイドゴム層13を設けたが、タイヤケース17のタイヤ幅方向内側に接着剤層を介してインナーゴム層を設けてもよい。
<第4実施形態>
第4実施形態では、ゴムを含む環状のタイヤ骨格部材のビード部に前記複合体を有する形態の一例である。具体的には、ビードワイヤーが被覆樹脂で被覆されたビードコアと、前記ビードコア間に位置する本体部と前記ビードコア周りに内側から外側へ折り返された折返し部とを有するカーカスと、ビードコアと前記本体部と前記折返し部との間に設けられた樹脂製のビードフィラーと、ビードコア及びビードフィラーの周囲に設けられた一層系接着層である接着剤層と、接着剤層の周囲に設けられたゴム部材と、によりタイヤ骨格部材が構成されている。つまり、第4実施形態では、前記樹脂層に相当するビードコアの被覆樹脂及びビードフィラーと、接着剤層と、前記ゴム層に相当するゴム部材と、をこの順に有する複合体を有する。
なお、一層系接着層である接着剤層の代わりに、二層系接着層を設けてもよい。つまり、前記樹脂層に相当するビードコアの被覆樹脂及びビードフィラーと、接着剤層と、ゴム側接着層と、前記ゴム層に相当するゴム部材と、をこの順に有する複合体を有してもよい。
図5は、第4実施形態に係るタイヤのビード部を拡大した断面図である。図5において他の図と共通する部材については同様の符号を付して説明を省略する。
図5に示すように、第4実施形態に係るタイヤのビード部14は、ゴム部材91と、樹脂製のビードフィラー89と、ビードコア20と、ビードフィラー89及びビードコア20の周囲を取り囲む接着剤層11と、カーカス86と、を備えている。
図5に示すビード部14では、ビードコア20とビードフィラー89とが、ゴム部材91内に埋設され、ビードコア20とビードフィラー89とが、一体に構成されたコア・フィラ部材50を構成し、その周囲に接着剤層11が設けられている。ただし、ビードコア20とビードフィラー89とは別体でもよい。
図5に示すように、ビードコア20は、それぞれ、タイヤ幅方向断面を観たときに、ビードワイヤー束62と、ビードワイヤー束62の周囲を囲むとともに樹脂材料から構成された被覆層65と、を有している。
図5の例では、ビードフィラー89が、ビードコア20の被覆層65と一体に、被覆層65と同じ樹脂材料から構成されている。ただし、ビードフィラー89を構成する樹脂材料は、ビードコア20の被覆層65とは異なるものでもよい。また、ビードフィラー89を構成する樹脂材料は、ビードフィラー89の部分ごとに異なっていてもよい。
図5の例において、ビードコア20のビードワイヤー束62は、タイヤ幅方向断面を観たときに、ビードコア20を構成するビードワイヤーの断面が複数現れる構成を指しているにすぎず、ビードコア20を構成するビードワイヤーの実際の本数は、1本でも複数本でもよい。すなわち、ビードワイヤー束62は、1本のビードワイヤーがタイヤ周方向に複数回にわたって巻回されることによって構成されてもよいし、複数本のビードワイヤーがそれぞれタイヤ周方向に1回又は複数回にわたって巻回されることによって構成されてもよい。
ビードワイヤーは、任意の既知の材料を用いることができ、例えばスチールコードを用いることができる。スチールコードは、例えば、スチールのモノフィラメント又は撚り線からなるものとすることができる。また、有機繊維やカーボン繊維等を用いることもできる。
ビードコア20の被覆層65は、タイヤ周方向に沿って連続して延在しているとともに、タイヤ周方向の少なくとも一部において、タイヤ幅方向断面を観たときに、ビードコア20のビードワイヤー束62を全周にわたって囲むように、環状に構成されている。被覆層65は、タイヤ周方向の一部において、タイヤ幅方向断面を観たときに、環状でなくてもよく、例えばC字型等でもよい。
本例では、タイヤ幅方向断面を観たときに、被覆層65のなす環形状の内側で、各ビードワイヤーが、樹脂材料からなる被覆樹脂63によって被覆されている。言いかえれば、被覆層65と各ビードワイヤーとの間の隙間領域が、被覆樹脂63によって埋められている。
本例では、被覆樹脂63を構成する樹脂材料は、被覆層65を構成する樹脂材料とは異なる。ただし、被覆樹脂63を構成する樹脂材料は、被覆層65を構成する樹脂材料と同じでもよい。
本例に限られず、タイヤ幅方向断面を観たときに、被覆層65のなす環形状の内側で、各ビードワイヤーは、被覆樹脂63の代わりに、ゴムからなる被覆ゴムによって被覆されていてもよい。言いかえれば、被覆層65と各ビードワイヤーとの間の隙間領域が、被覆ゴムによって埋められていてもよい。
本実施形態のタイヤの製造は、前述の第2実施形態のタイヤと同様にして行われる。
なお、本実施形態では、ビードフィラー89とビードコア20とを一体に成形することにより得られたコア・フィラ部材50を用いる。本実施形態では、コア・フィラ部材50の周囲に、接着剤層11となる組成物を塗布して組成物層を形成させた後、未加硫のゴム部材91を貼り付け、未加硫のタイヤケースを形成する。そして、必要に応じてベルト層及び未加硫のトレッドを設けて得られた生タイヤを、加硫成形することにより、タイヤを得る。
以下、コア・フィラ部材50を製造する方法の一例について、説明する。
コア・フィラ部材50の製造方法は、例えば、環状体形成工程と、射出成形工程と、冷却工程と、を含んでいる。
環状体形成工程では、1本以上のビードワイヤーを被覆樹脂63で被覆してなるストリップ部材を巻回して、環状体を形成する。図5に示すビードコア20では、例えば、3本のビードワイヤーを被覆樹脂63で被覆してなるストリップ部材が渦巻状に巻回されて3段積層されている。
本例では、環状体形成工程において、溶融状態の被覆樹脂63をビードワイヤーの外周側に被覆し、冷却により固化させることによって、ストリップ部材を形成する。そして、環状体は、ストリップ部材を巻回して段積みすることにより形成することができ、段同士の接合は、例えば、熱板溶着等で被覆樹脂63を溶融させながらストリップ部材を巻回して、溶融した被覆樹脂63を固化することにより行うことができる。あるいは、段同士を接着剤等により接着することにより接合することもできる。
環状体形成工程に次いで、射出成形工程では、環状体形成工程において形成した環状体を、樹脂材料で被覆することにより、被覆層65と、被覆層65と一体のビードフィラー89と、を形成する。
射出成形工程に次いで、冷却工程では、被覆層65及びビードフィラー89を、冷却により固化させる。コア・フィラ部材50におけるビードコア20は、環状体の周囲が、固化した被覆層65により覆われた構成となっている。また、被覆層65のタイヤ径方向外側には、ビードフィラー89が被覆層65と一体に構成されている。
<第5実施形態>
第5実施形態では、ゴムを含む環状のタイヤ骨格部材のビード部に前記複合体を有する形態の他の一例である。具体的には、ビードワイヤーが被覆樹脂で被覆されたビードコアと、前記ビードコア間に位置する本体部と前記ビードコア周りに内側から外側へ折り返された折返し部とを有するカーカスと、ビードコアと前記本体部と前記折返し部との間に設けられたゴム製のビードフィラーと、ビードコアの周囲に設けられた一層系接着層である接着剤層と、ビードフィラー及び接着剤層の周囲に設けられたゴム層と、によりタイヤ骨格部材が構成されている。つまり、第5実施形態では、前記樹脂層に相当するビードコアの被覆樹脂と、接着剤層と、前記ゴム層に相当するビードフィラー及びゴム部材と、をこの順に有する複合体を有する。
なお、一層系接着層である接着剤層の代わりに、二層系接着層を設けてもよい。つまり、前記樹脂層に相当するビードコアの被覆樹脂と、接着剤層と、ゴム側接着層と、前記ゴム層に相当するビードフィラー及びゴム部材と、をこの順に有する複合体を有してもよい。
図6は、第5実施形態に係るタイヤのビード部を拡大した断面図である。図6において他の図と共通する部材については同様の符号を付して説明を省略する。
図6に示すように、第5実施形態に係るタイヤのビード部14は、ゴム部材91と、ゴム製のビードフィラー88と、ビードコア20と、ビードコア20の周囲を取り囲む接着剤層11と、カーカス86と、を備えている。
図6に示すビード部14は、ビードフィラー88がゴム製であるためビードコア20とビードフィラー88とが別体であり、ビードコア20の周囲のみに接着剤層11が設けられていること以外は、第4実施形態に係るタイヤのビード部と同様である。
また、本実施形態のタイヤの製造方法も、ビードフィラー88とビードコア20とを別々に製造し、ビードコア20の周囲にのみ接着剤層11となる組成物を塗布して組成物層を形成する以外は、前述の第5実施形態のタイヤの製造方法と同様である。
以上、本発明における実施形態の一例を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、他の種々の実施形態が可能である。
さらに、前記第1実施形態~第5実施形態は、適宜組み合わせることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。なお、特に断りのない限り「部」は質量基準を表す。
[実施例A1~実施例A4、比較例A1]
<被覆樹脂コードの作製>
平均直径φ1.15mmのマルチフィラメント(φ0.35mmのモノフィラメント(スチール製、強力:280N、伸度:3%)7本を撚った撚り線)に、加熱溶融した接着剤(三菱ケミカル株式会社製、無水マレイン酸変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー、品名:プリマロイ-AP GQ730)を付着させる。次いで、その外周に、押出機にて押し出した被覆樹脂(東レ・デュポン社製、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、品名:ハイトレル5557)を付着させて被覆し、冷却する。なお、押出条件は、金属部材の温度を200℃、被覆樹脂の温度を240℃、押出速度を30m/分とする。以上のようにして、被覆樹脂コードを作製する。
<未加硫のトレッド(ゴム部材)の作製>
下記成分をバンバリミキサー((株)神戸製鋼製、MIXTRON BB MIXER)で混練してシート形状に成形し、未加硫のトレッド(ゴム部材)を作製する。
・天然ゴム:RSS#3・・・50質量部
・スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR):#1500(乳化重合SBR)、JSR社製・・・50質量部
・カーボンブラック:ISAF、旭カーボン社製・・・50質量部
・老化防止剤:アンチゲン6C、住友化学社製・・・1質量部
・加硫促進剤:ノクセラーCZ、大内新興化学工業社製・・・0.5質量部
・加硫促進剤:ノクセラーDM、大内新興化学工業社製・・・1質量部
・加硫促進剤:ノクセラーD、大内新興化学工業社製・・・0.5質量部
・硫黄・・・1.5質量部
<タイヤの作製>
前述の第2実施形態に従って、未加硫のタイヤケース及びベルト層を作製する。
ベルト層の内周面に、表1に示す接着剤層用の接着剤及びゴム側接着層用の接着剤を順に塗布した後、前述の第2実施形態に従って、内周面に接着剤が塗布されたベルト層を未加硫のタイヤケースの外周面に設置する。
さらに、ベルト層の外周に、表1に示す接着剤層用の接着剤及びゴム側接着層用の接着剤を順に塗布した後、前述の方法で得られた未加硫のトレッド(ゴム部材)を巻きつけ、生タイヤを得る。そして、得られた生タイヤを160℃で20分間加熱することで加硫し、タイヤを得る。
なお、接着剤層用の接着剤及びゴム側接着層用の接着剤の塗布量は、それぞれ、得られたタイヤにおける接着剤層及びゴム側接着層の平均厚みが表1に示す値になる量とする。
以上のようにして、樹脂層に相当するベルト層の被覆樹脂と、接着剤層と、ゴム側接着層と、ゴム層に相当するトレッド(ゴム部材)と、をこの順に有する複合体(すなわち、二層系接着層を有する複合体)を有するタイヤを得る。
<測定>
タイヤの作製に用いた接着剤層用の接着剤及びゴム側接着層用の接着剤それぞれを用いて、前述の方法により、接着剤層及びゴム側接着層の引張追従指数をそれぞれ求める。
<評価>
(タイヤ走行評価)
実施例及び比較例で作製したタイヤ(サイズ225/40 R18)を、空気圧の調整を行い、JIS荷重の2倍荷重をタイヤに負荷して、直径3mのドラム上で、最大2万km走行させた。そして、タイヤが故障するまでに走行した距離を計測し、下記の評価基準に従って評価を行った。走行距離が長いほどタイヤの耐久性が優れていることを示し、評価がA又はBであると、実用上好ましいといえる。
A: 3000km以上走行し、亀裂の発生がないもの
B: 3000km以上走行したが、3000kmで亀裂が発生しているもの
C: 1000km以上走行したが、1000kmで亀裂が発生しているもの
D: 1000kmまでも走行しなかったもの
亀裂の有無については、走行後のタイヤ幅方向における切断面を目視にて観察し、ベルト層の被覆樹脂における亀裂の有無を確認した。結果を表1に示す。
Figure 2022036330000006
表中の成分は、次のとおりである。
・接着剤A1:メタロックN-20(東洋化学研究所)
・接着剤A2:メタロックN-23(東洋化学研究所)
・接着剤A3:メタロックF-112(東洋化学研究所)
なお、上記表1に示す接着剤層の引張追従指数の数値に関して、実施例A1及び実施例A2は実際に測定を実施して得たデータであり、一方、実施例A3、比較例A1、及び実施例A4はシミュレーションによる予測データである。また、上記表に示すゴム側接着層の引張追従指数の数値及び評価結果はいずれも、シミュレーションによる予測データである。
[実施例B1~実施例B4]
二層系接着層の代わりに一層系接着層を適用した以外は、実施例A1と同様にしてタイヤを作製する。
具体的には、実施例A1と同様にして未加硫のタイヤケース及びベルト層を形成し、ベルト層の内周面に、表2に示す接着剤層用の接着剤を塗布した後、内周面に接着剤が塗布されたベルト層を未加硫のタイヤケースの外周面に設置する。さらに、ベルト層の外周に、表2に示す接着剤層用の接着剤を塗布した後、未加硫のトレッド(ゴム部材)を巻きつけ、生タイヤを得る。そして、得られた生タイヤを160℃で20分間加熱することで加硫し、タイヤを得る。
なお、接着剤層用の接着剤の塗布量は、得られたタイヤにおける接着剤層の平均厚みが表2に示す値になる量とする。
以上のようにして、樹脂層に相当するベルト層の被覆樹脂と、接着剤層と、ゴム層に相当するトレッド(ゴム部材)と、をこの順に有する複合体(すなわち、一層系接着層を有する複合体)を有するタイヤを得る。
なお、接着剤層における引張追従指数の測定方法及びタイヤ走行評価方法については、実施例A1と同様である。
Figure 2022036330000007
表中の成分は、次のとおりである。
・接着剤A4:ケムロック233X(LORD)
なお、上記表2に示す接着剤層の引張追従指数の数値及び評価結果に関して、実施例B2は実際に測定を実施して得たデータであり、一方、実施例B1、比較例B3、及び実施例B4はシミュレーションによる予測データである。
[実施例C1~実施例C3、比較例C1]
第3実施形態のタイヤを作製する。
具体的には、まず、実施例A1と同様にして、被覆樹脂コード及び未加硫のトレッド(第1のゴム部材)を作製する。また、未加硫のトレッド(第1のゴム部材)と同様にして、未加硫のサイドゴム層(第2のゴム部材)を作製する。
次に、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(東レ・デュポン社製、品名:ハイトレル5557)からなる樹脂材料で形成されたタイヤ骨格部材を作製する。また、前述の第1実施形態に従って、タイヤ骨格部材の外周に前述の方法で得られた樹脂被覆コードを巻きつけ、ベルト層を形成する。
タイヤ骨格部材及びベルト層の外周に、表3に示す接着剤層用の接着剤及びゴム側接着層用の接着剤を順に塗布した後、未加硫のトレッド(第1のゴム部材)及び未加硫のサイドゴム層(第2のゴム部材)を巻きつけ、生タイヤを得る。そして、得られた生タイヤを160℃20分間加熱することで加硫し、タイヤを得る。
なお、接着剤層用の接着剤及びゴム側接着層用の接着剤の塗布量は、それぞれ、得られたタイヤにおける接着剤層及びゴム側接着層の平均厚みが表3に示す値になる量とする。
以上のようにして、樹脂層に相当するタイヤ骨格部材と、接着剤層と、ゴム側接着層と、ゴム層に相当するサイドゴム(第2のゴム部材)と、をこの順に有する複合体(すなわち、二層系接着層を有する複合体)を有するタイヤを得る。
なお、接着剤層及びゴム側接着層における引張追従指数の測定方法並びにタイヤ走行評価方法については、実施例A1と同様である。ここで、亀裂の有無については、走行後のタイヤ幅方向における切断面を目視にて観察し、タイヤ骨格部材のサイド部における亀裂の有無を確認する。
Figure 2022036330000008
表中の成分は、次のとおりである。
・接着剤A1:メタロックN-20(東洋化学研究所)
・接着剤A2:メタロックN-23(東洋化学研究所)
・接着剤A3:メタロックF-112(東洋化学研究所)
なお、上記表3に示す接着剤層及びゴム側接着層の引張追従指数の数値並びに評価結果はいずれも、シミュレーションによる予測データである。
[実施例D1~実施例D4]
二層系接着層の代わりに一層系接着層を適用した以外は、実施例C1と同様にしてタイヤを作製する。
具体的には、実施例C1と同様にしてタイヤ骨格部材及びベルト層を形成し、タイヤ骨格部材及びベルト層の外周に、表4に示す接着剤層用の接着剤を塗布した後、未加硫のトレッド(第1のゴム部材)及び未加硫のサイドゴム層(第2のゴム部材)を巻きつけ、生タイヤを得る。そして、得られた生タイヤを160℃で20分間加熱することで加硫し、タイヤを得る。
なお、接着剤層用の接着剤の塗布量は、得られたタイヤにおける接着剤層の平均厚みが表4に示す値になる量とする。
以上のようにして、樹脂層に相当するタイヤ骨格部材と、接着剤層と、ゴム層に相当するサイドゴム(第2のゴム部材)と、をこの順に有する複合体(すなわち、一層系接着層を有する複合体)を有するタイヤを得る。
なお、接着剤層における引張追従指数の測定方法及びタイヤ走行評価方法については、実施例C1と同様である。
Figure 2022036330000009
表中の成分は、次のとおりである。
・接着剤A4:ケムロック233X(LORD)
なお、上記表4に示す接着剤層の引張追従指数の数値及び評価結果はいずれも、シミュレーションによる予測データである。
表1~表4に示した評価結果から分かるように、引張追従指数が80以上である接着剤層を有する本実施例は、比較例に比べ、樹脂層の亀裂が抑制され、タイヤの耐久性に優れている。
つまり、タイヤ走行時に特に大きな負荷がかかるタイヤのトレッド部及びサイド部に前述の複合体を適用することで、タイヤの耐久性が向上する。このことから、タイヤのビード部において前述の複合体を適用した場合においても、耐久性の高いタイヤが得られるものと推測される。
10 タイヤ
11 接着剤層
12 ベルト層
13 サイドゴム層
14 ビード部
16 サイド部
17 タイヤケース
17A 溶接用樹脂材料
17H タイヤ半体
18 クラウン部
18A クラウン部の外周面
20 ビードコア
24 補強コード
26 被覆樹脂
28 樹脂被覆コード
30 トレッド
30A トレッドの溝
50 コア・フィラ部材
62 ビードワイヤー束
63 被覆樹脂
65 被覆層
80 タイヤ
82 カーカスプライ
86 カーカス
88 ビードフィラー
89 ビードフィラー
90 インナーライナー
92 ゴム部材
92 サイドゴム層
94 タイヤケース
110 タイヤ

Claims (6)

  1. 樹脂を含む樹脂層と、接着剤を含む組成物の硬化層であり、前記樹脂層に直接接して設けられ、引張追従指数が80以上である接着剤層と、ゴムを含むゴム層と、をこの順に有し、
    前記引張追従指数は、試験用特定樹脂からなる第1の試験片を100mm/minの速度で引っ張り試験を行ったときの破断伸びを100とした場合における、前記試験用特定樹脂上に前記接着剤層が設けられた第2の試験片を100mm/minの速度で引っ張り試験を行ったときの破断伸びを表す指数である、
    タイヤ用樹脂ゴム複合体。
  2. 前記接着剤層の平均厚みは、0.5μm以上80μm以下である請求項1に記載のタイヤ用樹脂ゴム複合体。
  3. 前記接着剤は、エポキシ樹脂系接着剤、イソシアネート系接着剤、及びフェノール樹脂系接着剤から選択される少なくとも1種を含む請求項1又は請求項2に記載のタイヤ用樹脂ゴム複合体。
  4. 前記ゴム層に直接接するように前記接着剤層と前記ゴム層との間に設けられたゴム側接着層であって、イソシアネート系接着剤を含む組成物の硬化層であるゴム側接着層をさらに有する請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ用樹脂ゴム複合体。
  5. 前記樹脂層は、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、及びポリアミド系熱可塑性樹脂から選択される少なくとも1種を含む請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のタイヤ用樹脂ゴム複合体。
  6. 請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のタイヤ用樹脂ゴム複合体を有するタイヤ。
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