JP2020062935A - タイヤ用ワイヤー樹脂複合部材、及びタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】耐久性に優れたタイヤ用ワイヤー樹脂複合部材の提供。【解決手段】撚線からなるワイヤーと、接着剤組成物からなる接着層と、樹脂組成物からなる被覆樹脂層と、をこの順に有し、前記接着剤組成物が前記ワイヤー中に浸透しており、前記接着層における空隙率が0%以上2.2%以下であるタイヤ用ワイヤー樹脂複合部材。【選択図】図1

Description

本発明は、タイヤ用ワイヤー樹脂複合部材、及びタイヤに関する。
従来から、タイヤの耐応力、耐内圧、及び剛性等を高める試みのひとつとして、タイヤの外周に、ワイヤー(所謂補強コード)を螺旋状に巻回した補強ベルト部材を設けることが行なわれている。
また、通常、タイヤがリムと接する位置にはリムへの固定の役割を担うビード部材が設けられており、このビード部材にはビードワイヤーが用いられている。
例えば、特許文献1には、少なくとも熱可塑性樹脂材料で形成され且つ環状のタイヤ骨格体を有するタイヤであって、前記タイヤ骨格体の外周部に周方向に巻回されて補強コード層を形成する補強ベルト部材を有し、前記熱可塑性樹脂材料が少なくともポリエステル系熱可塑性エラストマーを含むタイヤが提案されている。
また、特許文献2には、タイヤ骨格体と、少なくとも該タイヤ骨格体の外周部に巻回される補強金属コード部材と、を有するタイヤが提案されており、さらに金属材料からなる環状のビードコアが埋設された構造が開示されている。
特開2012−046025号公報 国際公開第2017/002872号
上記のように特許文献1には、タイヤ骨格体の外周部に補強ベルト部材を有するタイヤが開示されている。また、特許文献2には、金属材料からなる環状のビードコアが埋設された技術が開示されている。
こうしたタイヤが車に装着されると、車の駆動によって様々な方向から負荷が加えられ、補強ベルト部材やビードコア等のワイヤーを備えた部材に対しても負荷が掛かる。特にランフラットタイヤにおいては、内圧が低下した状態で走行する場合に、補強ベルト部材やビードコア等のワイヤーを備えた部材にも大きな負荷が加えられる。そのため、車の走行等によって断続的に加えられる負荷に対し、ワイヤーの耐久性を高めることが求められている。
本発明は、上記事情に鑑み、耐久性に優れたタイヤ用ワイヤー樹脂複合部材、及び該タイヤ用ワイヤー樹脂複合部材を備えるタイヤを提供することを目的とする。
前記課題は、以下の本発明により解決される。
<1>
撚線からなるワイヤーと、接着剤組成物からなる接着層と、樹脂組成物からなる被覆樹脂層と、をこの順に有し、
前記接着剤組成物が前記ワイヤー中に浸透しており、
前記接着層における空隙率が0%以上2.2%以下であるタイヤ用ワイヤー樹脂複合部材。
<2>
前記接着剤組成物は、270℃での粘度が40Pa・s以上5000Pa・s以下である<1>に記載のタイヤ用ワイヤー樹脂複合部材。
<3>
前記接着剤組成物が、オレフィン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、及びポリエステル系熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含む、<1>又は<2>に記載のタイヤ用ワイヤー樹脂複合部材。
<4>
前記接着剤組成物の270℃での粘度[Vb]に対する、前記樹脂組成物の270℃での粘度[Vr]の比率[Vr/Vb]が0.06以上7.5以下である<1>〜<3>のいずれか1項に記載のタイヤ用ワイヤー樹脂複合部材。
<5>
<1>〜<4>のいずれか1項に記載のタイヤ用ワイヤー樹脂複合部材を備えるタイヤ。
<6>
前記タイヤ用ワイヤー樹脂複合部材が、前記タイヤのタイヤ骨格体又はカーカスの外周部に配置される補強ベルト部材を構成する<5>に記載のタイヤ。
<7>
前記タイヤ用ワイヤー樹脂複合部材が、前記タイヤがリムと接する箇所に配置されるビード部材を構成する<5>に記載のタイヤ。
本発明によれば、耐久性に優れたタイヤ用ワイヤー樹脂複合部材、及び該タイヤ用ワイヤー樹脂複合部材を備えるタイヤを提供することができる。
本実施形態に係るタイヤ用ワイヤー樹脂複合部材を適用したビード部材の一例を示す、ビードワイヤーの長手方向に対する垂直切断面の模式図である。 第一の実施形態に係るタイヤをタイヤ幅方向に沿って切断した切断面を示すタイヤ断面図である。 第二の実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図である。 第二の実施形態に係るタイヤにおける、リムに装着したビード部の断面図である。 第二の実施形態に係るタイヤのタイヤ骨格体のクラウン部に補強ベルト部材が埋設された状態を示すタイヤ回転軸に沿った断面図である。 空隙率が2.2%を超えるワイヤー樹脂複合部材の一例の断面を示す模式図である。
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
本明細書において「樹脂」とは、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、及び熱硬化性樹脂を含む概念であり、加硫ゴムは含まない。また、以下の樹脂の説明において「同種」とは、エステル系同士、スチレン系同士等、樹脂の主鎖を構成する骨格と共通する骨格を備えたものを意味する。
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「工程」との語には、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その目的が達成されるものであれば、当該工程も本用語に含まれる。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、各成分に該当する物質が組成物中に複数存在する場合には、特に断りがない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「主成分」とは、特に断りがない限り、混合物中における質量基準の含有量が最も多い成分を意味する。
また、本明細書において「熱可塑性樹脂」とは、温度上昇とともに材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になるが、ゴム状弾性を有しない高分子化合物を意味する。
本明細書において「熱可塑性エラストマー」とは、ハードセグメント及びソフトセグメントを有する共重合体を意味する。熱可塑性エラストマーとしては、温度上昇とともに材料が軟化、流動し、冷却すると比較的硬く強度のある状態になり、かつ、ゴム状弾性を有するものが挙げられる。熱可塑性エラストマーとして具体的には、例えば、結晶性で融点の高いハードセグメント又は高い凝集力のハードセグメントを構成するポリマーと、非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを構成するポリマーと、を有する共重合体が挙げられる。
なお、上記ハードセグメントは、ソフトセグメントよりも相対的に硬い成分を指す。ハードセグメントは塑性変形を防止する架橋ゴムの架橋点の役目を果たす分子拘束成分であることが好ましい。例えばハードセグメントとしては、主骨格に芳香族基若しくは脂環式基等の剛直な基を有する構造、又は分子間水素結合若しくはπ−π相互作用による分子間パッキングを可能にする構造等のセグメントが挙げられる。
また、上記ソフトセグメントは、ハードセグメントよりも相対的に柔らかい成分を指す。ソフトセグメントはゴム弾性を示す柔軟性成分であることが好ましい。例えばソフトセグメントとしては、主鎖に長鎖の基(例えば長鎖のアルキレン基等)を有し、分子回転の自由度が高く、伸縮性を有する構造のセグメントが挙げられる。
<タイヤ用ワイヤー樹脂複合部材>
本実施形態に係るタイヤ用ワイヤー樹脂複合部材(以下単に「ワイヤー樹脂複合部材」とも称す)は、撚線からなるワイヤーと、接着剤組成物からなる接着層と、樹脂組成物からなる被覆樹脂層と、をこの順に有する。
そして、このワイヤー樹脂複合部材では、接着剤組成物がワイヤー中に浸透しており、接着層における空隙率が0%以上2.2%以下である。
一般的なタイヤでは、リムへの固定性能を高める観点で、ビードワイヤーを備えたビードコアが埋設された構造が採用されている。また、タイヤの耐応力、耐内圧、及び剛性等を高める観点で、タイヤの外周にワイヤー(所謂補強コード)を螺旋状に巻回した補強ベルト部材を設けた構造も採用されている。このように、タイヤにおいてはワイヤーを備える部材が各所に用いられることがある。
なお、車に装着されたタイヤに対しては車の駆動によって様々な方向から負荷が加えられ、補強ベルト部材やビードコア等のワイヤーを備える部材に対しても負荷が掛かる。なお、特にランフラットタイヤにおいてパンク等によりタイヤ内の圧力が低下した状態又は圧力がゼロとなった状態で走行する場合には、タイヤ自体に大きな荷重が掛かり、ワイヤーを備える部材に対して掛かる負荷も大きくなる。そして、こうした車の走行等による断続的な負荷によって、ワイヤーを備える部材、つまり補強ベルト部材やビードコア等の中のワイヤーに損傷が発生することも考えられる。
そのため、ワイヤーを備えたタイヤ用の部材において、ワイヤーの耐久性に優れることが求められている。
これに対し、本実施形態によれば、高い耐久性を有するタイヤ用ワイヤー樹脂複合部材が提供される。
その理由は、以下のように推察される。
撚線からなるワイヤーと、接着剤組成物からなる接着層と、樹脂組成物からなる被覆樹脂層と、をこの順に有するワイヤー樹脂複合部材では、ワイヤーの長手方向に直交する垂直断面を観察すると、撚線を構成する複数のフィラメントと、この複数のフィラメント同士の間に形成された空間とが観察される。そして、前記空間の少なくとも一部には、接着剤組成物が浸透していることが観察される。さらに、この複数のフィラメントはその周囲が接着剤組成物で覆われ、つまりワイヤーの周囲に接着層が形成されている。
ここで、空隙率が2.2%を超えるワイヤー樹脂複合部材の一例の断面(ワイヤーの長手方向に直交する垂直断面)の模式図を図5に示す。図5に示すワイヤー樹脂複合部材では、撚線を構成する複数のフィラメント1と、この複数のフィラメント1同士の間の空間に浸透するとともに、複数のフィラメント1の周囲を覆う接着剤組成物2と、が観察される。なお、複数のフィラメント1同士の間の空間に浸透する接着剤組成物2、及び複数のフィラメント1の周囲を覆う接着剤組成物2の両者によって、接着層が形成されている。また、接着層の周囲には樹脂組成物3からなる被覆樹脂層が設けられている。
そして、この接着層中には、接着剤組成物2が存在していない領域5(本明細書において「空隙」と称す)が存在する。
ここで、「空隙率」とは、ワイヤーの長手方向に直交する垂直断面を観察した際において、撚線を構成する複数のフィラメント間の空間に浸透する接着剤組成物及び複数のフィラメントの周囲を覆う接着剤組成物で形成される接着層の断面積と、この接着層内において接着剤組成物が存在していない領域の断面積との総面積[A]に対する、前記接着層内において接着剤組成物が存在していない領域の面積[B]の比率[(B/A)×100(%)]を意味する。
例えば、図5に示すワイヤー樹脂複合部材の断面であれば、撚線を構成する複数のフィラメント1の間の空間に浸透する接着剤組成物2及び複数のフィラメント1の周囲を覆う接着剤組成物2で形成される接着層の断面積と、接着剤組成物2が存在していない領域5の断面積との和が、総面積[A]に相当する。また、接着剤組成物2が存在していない領域5の面積が、面積[B]に相当する。
本実施形態では、この空隙率が2.2%以下であり、つまりワイヤーにおける複数のフィラメント間の空間に接着剤組成物が浸透しており、接着層中における空隙(つまり接着剤組成物が存在していない領域)が低減されている。そのため、タイヤの駆動によってワイヤーに負荷が掛かりこのワイヤーを構成する複数のフィラメント同士に動きが生じた場合であっても、フィラメント間の空間及びフィラメントの周囲が接着剤組成物で埋められて空隙が抑制されているため、フィラメント同士の擦れを抑制することできる。これにより、ワイヤーにおける耐久性が高められるものと考えられる。
またこれに加えて、本実施形態では、ワイヤーにおけるフィラメント間の空間及びフィラメントの周囲の空隙が低減されているため、フィラメントが空気等の気体と接触する領域も低減されているものと考えられる。これにより、ワイヤーが金属である場合にはその錆の発生も抑制される。
・空隙率
接着層における空隙率は、0%以上2.2%以下であり、0%以上2.0%以下であることが好ましく、0%以上1.0%以下であることがより好ましい。
空隙率が2.2%以下であることで、ワイヤーにおける耐久性が高められる。一方、ワイヤー樹脂複合部材の製造容易性等の観点から空隙率は0%以上としてもよい。
接着層における空隙率は、例えば接着層を形成する際の接着剤組成物の粘度(例えば270℃での粘度)、接着層を形成する際の接着剤組成物及びワイヤーの温度、及び接着層を形成する際の接着剤組成物の供給量、等を制御する方法が挙げられる。また、被覆樹脂層を形成する際の樹脂組成物の粘度(例えば270℃での粘度)を制御し、つまり被覆樹脂層を形成する際に樹脂組成物から接着剤組成物に対して加えられる圧力を調整する方法も挙げられる。
空隙率の測定は、以下のようにして行われる。
ワイヤーの長手方向に直交する垂直断面の50倍画像(光学顕微鏡画像)を撮影する。この画像から、複数のフィラメント間の空間に浸透する接着剤組成物及び複数のフィラメントの周囲を覆う接着剤組成物で形成される接着層の断面積、及び前記接着層の中で接着剤組成物が浸透していない領域の断面積をそれぞれ求める。その上で、接着層の断面積と接着層内において接着剤組成物が存在していない領域の断面積との総面積[A]に対する、前記接着層内において接着剤組成物が存在していない領域の断面積[B]の比率[(B/A)×100(%)]を求める。この操作を、任意の10箇所における断面画像についてそれぞれ実施し、その算術平均を空隙率とする。
・接着剤組成物の粘度
接着剤組成物は270℃での粘度が40Pa・s以上5000Pa・s以下であることが好ましく、50Pa・s以上3000Pa・s以下であることがより好ましく、60Pa・s以上1000Pa・s以下であることがさらに好ましい。
接着剤組成物の270℃での粘度が5000Pa・s以下であること、つまり接着剤組成物の粘度が低いことにより、接着層における空隙率を前記範囲に制御し易くなる。一方、粘度が40Pa・s以上であることで、溶融状態の接着剤組成物をワイヤー表面に付与した際に良好に被覆することができ、接着層の形成性が高められる。
接着剤組成物の270℃での粘度は、接着剤組成物に含まれる接着剤、その他の添加剤等の材料の組成の調整により行われる。
・樹脂組成物の粘度
樹脂組成物は270℃での粘度が150Pa・s以上600Pa・s以下であることが好ましく、150Pa・s以上300Pa・s以下であることがより好ましく、150Pa・s以上250Pa・s以下であることがさらに好ましい。
樹脂組成物の270℃での粘度が150Pa・s以上であること、つまり樹脂組成物の粘度が高いことにより、接着層における空隙率を前記範囲に制御し易くなる。一方、粘度が600Pa・s以下であることで、溶融状態の樹脂組成物をワイヤー表面に付与し易くなり、被覆樹脂層の形成容易性が維持し易くなる。
樹脂組成物の270℃での粘度は、樹脂組成物に含まれる樹脂、その他の添加剤等の材料の組成の調整により行われる。
・接着剤組成物と樹脂組成物との粘度比
接着剤組成物の270℃での粘度[Vb]に対する、樹脂組成物の270℃での粘度[Vr]の比率[Vr/Vb]は、0.060以上7.5以下であることが好ましく、0.10以上5.5以下であることがより好ましく、0.20以上4.5以下であることがさらに好ましい。
比率[Vr/Vb]が0.060以上であることで、接着層における空隙率を前記範囲に制御し易くなる。一方、比率[Vr/Vb]が7.5以下であることで、被覆樹脂層の形成容易性が維持し易くなる。
なお、接着剤組成物及び樹脂組成物の粘度の測定は、以下のようにして行われる。
接着層を構成する接着剤組成物又は被覆樹脂層を構成する樹脂組成物について、フローテスター(CFT−D、島津製作所製)を用い、測定条件を温度270℃、荷重1.00kg、オリフィス1.00Φ×10L(mm)として、測定する。
次いで、本実施形態に係るワイヤー樹脂複合部材における各部材(ワイヤー、接着層、及び被覆樹脂層)の構成と、その材料等について説明する。
=ワイヤー樹脂複合部材の構成=
ワイヤー樹脂複合部材は、ワイヤーと、ワイヤー上に設けられる接着層と、接着層の周囲に設けられる被覆樹脂層と、を有する。また、ワイヤー樹脂複合部材における前記被覆樹脂層の周囲にはさらに他の被覆樹脂層(第2被覆樹脂層)を備えていてもよい。
=ワイヤー樹脂複合部材における各部の材料=
[ワイヤー]
ワイヤーには、撚線つまり複数のモノフィラメントを撚ったマルチフィラメントが用いられる。例えば、ゴム製タイヤに用いられる一般的な撚線、つまり金属製又は有機樹脂製のモノフィラメント(単線)等を撚ったマルチフィラメント(撚線)を適宜用いることができる。中でも、金属製の撚線が好ましく、より好ましくは鉄製の撚線、つまりスチールコードである。
ワイヤーの断面形状、サイズ(直径)等は、特に限定されるものではなく、所望のタイヤに適したものを適宜選定して用いることができる。
ワイヤーに用いる撚線としては、モノフィラメントの数が、例えば2本〜10本のものが挙げられ、5本〜9本が好ましい。
ワイヤーの表面は、例えばCu、Zn、Fe、Al、及びCoからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を主成分とする金属材料で構成されていてもよい。
例えば、Fe元素を主成分とする構成としては、スチールコードが挙げられる。
また、Cu、Zn、Al、及びCoからなる群より選択される少なくとも一種の金属元素を主成分とする構成としては、スチールコードの表面がめっきにより被覆された構成が挙げられる。
めっきの付着量としては、例えばめっきの平均厚さとして、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.2μm以上8.0μm以下がより好ましい。なお、めっき厚さは走査型電子顕微鏡(SEM)による観察により測定することができる。
ワイヤーの太さ(つまり平均径)は、ワイヤー樹脂複合部材がタイヤのどの部材として用いられるかによって適宜選定される。例えば、タイヤの耐内圧性と軽量化とを両立する観点から、0.3mm〜3mmであることが好ましく、0.5mm〜2mmであることがより好ましい。なお、ワイヤーの平均径は、任意に選択した5箇所の断面(ワイヤーの長手方向に対する垂直断面)において測定した太さの数平均値とする。また、太さの測定は、撚線の断面中において直線を引いた場合に最大長さとなる部分の長さを測定することで行う。
ワイヤー自体の強力は、ワイヤー樹脂複合部材がタイヤのどの部材として用いられるかによって適宜選定される。例えば、通常1000N〜3000Nであり、1200N〜2800Nであることが好ましく、1300N〜2700Nであることがさらに好ましい。なお、ワイヤーの強力は、引張試験機にてZWICK型チャックを用いて応力−歪曲線を描き、その破断点から算出する。
ワイヤー自体の破断伸び(引張破断伸び)は、ワイヤー樹脂複合部材がタイヤのどの部材として用いられるかによって適宜選定される。例えば、通常0.1%〜15%であり、1%〜15%が好ましく、1%〜10%が更に好ましい。ワイヤーの引張破断伸びは、引張試験機にてZWICK型チャックを用いて応力−歪曲線を描き、歪から求めることができる。
[接着層]
接着層は接着剤組成物からなる。
接着剤組成物は、少なくとも接着剤を含み、例えば接着剤として接着性の樹脂を含むことが好ましい。また、この樹脂としては熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーが好ましい。
接着剤としての熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリスチレン系熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性樹脂、及びオレフィン系熱可塑性樹脂(例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等)等が挙げられる。
接着剤としての熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、及びオレフィン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
中でも、接着剤として用いられる樹脂には、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、及びポリアミド系熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、及びオレフィン系熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを含むことがさらに好ましい。
また、接着剤として用いられる樹脂に、酸変性された熱可塑性材料を用いることも好ましい。酸変性熱可塑性材料とは、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーの分子の一部に酸基が導入された熱可塑性材料である。酸基としては、カルボキシ基(−COOH)及びその無水物基、硫酸基、燐酸基等が挙げられ、中でもカルボキシ基及びその無水物基が好ましい。
接着剤組成物は、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーを単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
接着剤組成物に含まれる接着剤(例えば接着性の樹脂等)の含有率は、接着剤組成物の総量に対して50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。
接着剤組成物は、接着剤を少なくとも含んでいればよいが、さらに添加剤等の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば接着性を有しない樹脂成分、ゴム成分、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、ガラス繊維等のフィラー、パラフィンオイル等の可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、架橋剤、架橋助剤、着色剤、難燃剤、分散剤、帯電防止剤、防菌剤、蛍光増白剤等の各種添加物が挙げられる。
接着層の平均厚みは、特に制限されないが、走行時の乗り心地及びタイヤの耐久性の観点で、5μm〜500μmであることが好ましく、20μm〜150μmであることがより好ましく、20μm〜100μmであることがさらに好ましい。
接着層の平均厚みは、ワイヤーの長手方向に直交する垂直断面の50倍画像(光学顕微鏡画像)を任意の10箇所から取得し、得られた画像から測定される接着層の厚みの数平均値とする。各画像における接着層の厚みは、最も厚みの小さい部分(ワイヤーと接着層との間の界面と、接着層と被覆樹脂層との間の界面との距離が最小となる部分)で測定される値とする。
[被覆樹脂層]
被覆樹脂層は樹脂組成物からなる。
樹脂組成物は、少なくとも樹脂を含む。樹脂組成物に含まれる樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、及び熱硬化性樹脂が挙げられる。
樹脂組成物は、成形容易性の観点から、樹脂として、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーを含むことが好ましく、熱可塑性エラストマーを含むことがより好ましい。
樹脂組成物は、樹脂を少なくとも含んでいればよく、本実施形態による効果を損なわない範囲で、添加剤等の他の成分を含んでもよい。ただし、樹脂組成物における樹脂の含有量は、樹脂組成物の総量に対して、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましい。
樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂としては、ポリエステル系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性樹脂、オレフィン系熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性樹脂、塩化ビニル系熱可塑性樹脂、ポリスチレン系熱可塑性樹脂等を例示することができる。
樹脂組成物に含まれる熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。
樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール系熱硬化性樹脂、ユリア系熱硬化性樹脂、メラミン系熱硬化性樹脂、エポキシ系熱硬化性樹脂等が挙げられる。
中でも、樹脂組成物に用いられる樹脂には、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性樹脂、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、及びポリアミド系熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、ポリエステル系熱可塑性エラストマーを含むことがより好ましい。
また、樹脂組成物に用いられる樹脂に、酸変性された熱可塑性材料を用いることも好ましい。酸変性における酸基としては、カルボキシ基(−COOH)及びその無水物基、硫酸基、燐酸基等が挙げられ、中でもカルボキシ基及びその無水物基が好ましい。
ここで、樹脂組成物に含まれる各種熱可塑性エラストマー及び熱可塑性樹脂について、詳述する。
−熱可塑性エラストマー−
(ポリエステル系熱可塑性エラストマー)
ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリエステルが結晶性で融点の高いハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリエステル又はポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。
ハードセグメントを形成するポリエステルとしては、芳香族ポリエステルを用いることができる。芳香族ポリエステルは、例えば、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と脂肪族ジオールとから形成することができる。芳香族ポリエステルは、好ましくは、テレフタル酸及びジメチルテレフタレートの少なくとも1種と、1,4−ブタンジオールと、から誘導されるポリブチレンテレフタレートである。また、芳香族ポリエステルは、例えば、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸、若しくはこれらのエステル形成性誘導体等のジカルボン酸成分と、分子量300以下のジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロール等の脂環式ジオール;キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(2−ヒドロキシ)フェニル]スルホン、1,1−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシ−p−ターフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−p−クオーターフェニル等の芳香族ジオール;等)と、から誘導されるポリエステル、又はこれらのジカルボン酸成分及びジオール成分を2種以上併用した共重合ポリエステルであってもよい。また、3官能以上の多官能カルボン酸成分、多官能オキシ酸成分、多官能ヒドロキシ成分等を5モル%以下の範囲で共重合することも可能である。
ハードセグメントを形成するポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられ、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
また、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエーテル等が挙げられる。
脂肪族ポリエーテルとしては、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランとの共重合体等が挙げられる。
脂肪族ポリエステルとしては、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が挙げられる。
これらの脂肪族ポリエーテル及び脂肪族ポリエステルの中でも、得られるポリエステルブロック共重合体の弾性特性の観点から、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等が好ましい。
また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量は、強靱性及び低温柔軟性の観点から、300〜6000が好ましい。さらに、ハードセグメント(x)とソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、99:1〜20:80が好ましく、98:2〜30:70が更に好ましい。
上述のハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、例えば、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。これらの中でも、上述のハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、ハードセグメントがポリブチレンテレフタレートであり、ソフトセグメントが脂肪族ポリエーテルである組み合わせが好ましく、ハードセグメントがポリブチレンテレフタレートであり、ソフトセグメントがポリ(エチレンオキシド)グリコールである組み合わせが更に好ましい。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、東レ・デュポン(株)製の「ハイトレル」シリーズ(例えば、3046、5557、6347、4047N、4767N等)、東洋紡(株)製の「ペルプレン」シリーズ(例えば、P30B、P40B、P40H、P55B、P70B、P150B、P280B、E450B、P150M、S1001、S2001、S5001、S6001、S9001等)等を用いることができる。
ポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
(ポリアミド系熱可塑性エラストマー)
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとは、結晶性で融点の高いハードセグメントを形成するポリマーと非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成するポリマーとを有する共重合体からなる熱可塑性の樹脂材料であって、ハードセグメントを形成するポリマーの主鎖にアミド結合(−CONH−)を有するものを意味する。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリアミドが結晶性で融点の高いハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリエステル、ポリエーテル等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。また、ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメント及びソフトセグメントの他に、ジカルボン酸等の鎖長延長剤を用いて形成されてもよい。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、JIS K6418:2007に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)等や、特開2004−346273号公報に記載のポリアミド系エラストマー等を挙げることができる。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーにおいて、ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、例えば、下記一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーによって生成されるポリアミドを挙げることができる。
一般式(1)中、Rは、炭素数2〜20の炭化水素の分子鎖(例えば炭素数2〜20のアルキレン基)を表す。
一般式(2)中、Rは、炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖(例えば炭素数3〜20のアルキレン基)を表す。
一般式(1)中、Rとしては、炭素数3〜18の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数3〜18のアルキレン基が好ましく、炭素数4〜15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数4〜15のアルキレン基が更に好ましく、炭素数10〜15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数10〜15のアルキレン基が特に好ましい。
また、一般式(2)中、Rとしては、炭素数3〜18の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数3〜18のアルキレン基が好ましく、炭素数4〜15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数4〜15のアルキレン基が更に好ましく、炭素数10〜15の炭化水素の分子鎖、例えば炭素数10〜15のアルキレン基が特に好ましい。
一般式(1)又は一般式(2)で表されるモノマーとしては、ω−アミノカルボン酸又はラクタムが挙げられる。また、ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、これらω−アミノカルボン酸又はラクタムの重縮合体、ジアミンとジカルボン酸との共縮重合体等が挙げられる。
ω−アミノカルボン酸としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等の炭素数5〜20の脂肪族ω−アミノカルボン酸等を挙げることができる。また、ラクタムとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタム、ウデカンラクタム、ω−エナントラクタム、2−ピロリドン等の炭素数5〜20の脂肪族ラクタム等を挙げることができる。
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミン、メタキシレンジアミン等の炭素数2〜20の脂肪族ジアミン等のジアミン化合物を挙げることができる。
また、ジカルボン酸は、HOOC−(R−COOH(R:炭素数3〜20の炭化水素の分子鎖、m:0又は1)で表すことができ、例えば、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸を挙げることができる。
ハードセグメントを形成するポリアミドとしては、ラウリルラクタム、ε−カプロラクタム、又はウデカンラクタムを開環重縮合したポリアミドを好ましく用いることができる。
また、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリエーテル等が挙げられ、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ABA型トリブロックポリエーテル等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ポリエーテルの末端にアンモニア等を反応させることによって得られるポリエーテルジアミン等も用いることができる。
ここで、「ABA型トリブロックポリエーテル」とは、下記一般式(3)に示されるポリエーテルを意味する。
一般式(3)中、x及びzは、1〜20の整数を表す。yは、4〜50の整数を表す。
一般式(3)において、x及びzは、それぞれ、1〜18の整数が好ましく、1〜16の整数がより好ましく、1〜14の整数が更に好ましく、1〜12の整数が特に好ましい。また、一般式(3)において、yは、5〜45の整数が好ましく、6〜40の整数がより好ましく、7〜35の整数が更に好ましく、8〜30の整数が特に好ましい。
ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。これらの中でも、ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリエチレングリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリプロピレングリコールの組合せ、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ポリテトラメチレンエーテルグリコールの組合せ、又はラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルの組合せが好ましく、ラウリルラクタムの開環重縮合体/ABA型トリブロックポリエーテルの組合せがより好ましい。
ハードセグメントを形成するポリマー(ポリアミド)の数平均分子量は、溶融成形性の観点から、300〜15000が好ましい。また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、200〜6000が好ましい。さらに、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、50:50〜90:10が好ましく、50:50〜80:20がより好ましい。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
ポリアミド系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、宇部興産(株)の「UBESTA XPA」シリーズ(例えば、XPA9068X1、XPA9063X1、XPA9055X1、XPA9048X2、XPA9048X1、XPA9040X1、XPA9040X2XPA9044等)、ダイセル・エポニック(株)の「ベスタミド」シリーズ(例えば、E40−S3、E47−S1、E47−S3、E55−S1、E55−S3、EX9200、E50−R2等)等を用いることができる。
(ポリスチレン系熱可塑性エラストマー)
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリスチレンがハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリエチレン、水添ポリブタジエン、水添ポリイソプレン等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。ハードセグメントを形成するポリスチレンとしては、例えば、公知のラジカル重合法、イオン性重合法等で得られるものが好ましく用いられ、具体的には、アニオンリビング重合を持つポリスチレンが挙げられる。また、ソフトセグメントを形成するポリマーとしては、例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリ(2,3−ジメチル−ブタジエン)等が挙げられる。
ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、上述で挙げたハードセグメントとソフトセグメントとのそれぞれの組合せを挙げることができる。これらの中でも、ハードセグメントとソフトセグメントとの組合せとしては、ポリスチレン/ポリブタジエンの組合せ、又はポリスチレン/ポリイソプレンの組合せが好ましい。また、熱可塑性エラストマーの意図しない架橋反応を抑制するため、ソフトセグメントは水素添加されていることが好ましい。
ハードセグメントを形成するポリマー(ポリスチレン)の数平均分子量は、5000〜500000が好ましく、10000〜200000がより好ましい。
また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、5000〜1000000が好ましく、10000〜800000がより好ましく、30000〜500000が更に好ましい。さらに、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との体積比(x:y)は、成形性の観点から、5:95〜80:20が好ましく、10:90〜70:30がより好ましい。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン系共重合体[SBS(ポリスチレン−ポリ(ブチレン)ブロック−ポリスチレン)、SEBS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン)]、スチレン−イソプレン共重合体(ポリスチレン−ポリイソプレンブロック−ポリスチレン)、スチレン−プロピレン系共重合体[SEP(ポリスチレン−(エチレン/プロピレン)ブロック)、SEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEEPS(ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン)、SEB(ポリスチレン(エチレン/ブチレン)ブロック)]等が挙げられる。
ポリスチレン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、旭化成(株)製の「タフテック」シリーズ(例えば、H1031、H1041、H1043、H1051、H1052、H1053、H1062、H1082、H1141、H1221、H1272等)、(株)クラレ製の「SEBS」シリーズ(8007、8076等)、「SEPS」シリーズ(2002、2063等)等を用いることができる。
(ポリウレタン系熱可塑性エラストマー)
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリウレタンが物理的な凝集によって疑似架橋を形成しているハードセグメントを形成し、他のポリマーが非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、JIS K6418:2007に規定されるポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)が挙げられる。ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、下記式Aで表される単位構造を含むソフトセグメントと、下記式Bで表される単位構造を含むハードセグメントとを含む共重合体として表すことができる。
式中、Pは、長鎖脂肪族ポリエーテル又は長鎖脂肪族ポリエステルを表す。Rは、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素を表す。P’は、短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素を表す。
式A中、Pで表される長鎖脂肪族ポリエーテル又は長鎖脂肪族ポリエステルとしては、例えば、分子量500〜5000のものを使用することができる。Pは、Pで表される長鎖脂肪族ポリエーテル及び長鎖脂肪族ポリエステルを含むジオール化合物に由来する。このようなジオール化合物としては、例えば、分子量が前記範囲内にある、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリ(ブチレンアジペート)ジオール、ポリ−ε−カプロラクトンジオール、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール、ABA型トリブロックポリエーテル等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
式A及び式B中、Rは、Rで表される脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素を含むジイソシアネート化合物を用いて導入された部分構造である。Rで表される脂肪族炭化水素を含む脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,3−プロピレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
また、Rで表される脂環族炭化水素を含むジイソシアネート化合物としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4−シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。さらに、Rで表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジイソシアネート化合物としては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
式B中、P’で表される短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素としては、例えば、分子量500未満のものを使用することができる。また、P’は、P’で表される短鎖脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素、又は芳香族炭化水素を含むジオール化合物に由来する。P’で表される短鎖脂肪族炭化水素を含む脂肪族ジオール化合物としては、例えば、グリコール及びポリアルキレングリコールが挙げられ、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。
また、P’で表される脂環族炭化水素を含む脂環族ジオール化合物としては、例えば、シクロペンタン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,2−ジオール、シクロヘキサン−1,3−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等が挙げられる。
さらに、P’で表される芳香族炭化水素を含む芳香族ジオール化合物としては、例えば、ヒドロキノン、レゾルシン、クロロヒドロキノン、ブロモヒドロキノン、メチルヒドロキノン、フェニルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、フェノキシヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノールA、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)エタン、1,4−ジヒドロキシナフタリン、2,6−ジヒドロキシナフタリン等が挙げられる。
これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ハードセグメントを形成するポリマー(ポリウレタン)の数平均分子量は、溶融成形性の観点から、300〜1500が好ましい。また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの柔軟性及び熱安定性の観点から、500〜20000が好ましく、500〜5000が更に好ましく、500〜3000が特に好ましい。また、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、15:85〜90:10が好ましく、30:70〜90:10が更に好ましい。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントを形成するポリマー及びソフトセグメントを形成するポリマーを公知の方法によって共重合することで合成することができる。ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、特開平5−331256号公報に記載の熱可塑性ポリウレタンを用いることができる。
ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、具体的には、芳香族ジオールと芳香族ジイソシアネートとからなるハードセグメントと、ポリ炭酸エステルからなるソフトセグメントとの組合せが好ましく、より具体的には、トリレンジイソシアネート(TDI)/ポリエステル系ポリオール共重合体、TDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、TDI/カプロラクトン系ポリオール共重合体、TDI/ポリカーボネート系ポリオール共重合体、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)/ポリエステル系ポリオール共重合体、MDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI/カプロラクトン系ポリオール共重合体、MDI/ポリカーボネート系ポリオール共重合体、及びMDI+ヒドロキノン/ポリヘキサメチレンカーボネート共重合体から選ばれる少なくとも1種が好ましく、TDI/ポリエステル系ポリオール共重合体、TDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、MDI/ポリエステルポリオール共重合体、MDI/ポリエーテル系ポリオール共重合体、及びMDI+ヒドロキノン/ポリヘキサメチレンカーボネート共重合体から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
また、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、BASF社製の「エラストラン」シリーズ(例えば、ET680、ET880、ET690、ET890等)、(株)クラレ社製「クラミロンU」シリーズ(例えば、2000番台、3000番台、8000番台、9000番台等)、日本ミラクトラン(株)製の「ミラクトラン」シリーズ(例えば、XN−2001、XN−2004、P390RSUP、P480RSUI、P26MRNAT、E490、E590、P890等)等を用いることができる。
(ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー)
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、少なくともポリオレフィンが結晶性で融点の高いハードセグメントを形成し、他のポリマー(例えば、ポリオレフィン、他のポリオレフィン、ポリビニル化合物等)が非晶性でガラス転移温度の低いソフトセグメントを形成している材料が挙げられる。ハードセグメントを形成するポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイソタクチックポリプロピレン、ポリブテン等が挙げられる。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン−α−オレフィンランダム共重合体、オレフィンブロック共重合体等が挙げられ、具体的には、プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1ペンテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、1−ブテン−1−ヘキセン共重合体、1−ブテン−4−メチル−ペンテン、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、プロピレン−メタクリル酸共重合体、プロピレン−メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン−メチルアクリレート共重合体、プロピレン−エチルアクリレート共重合体、プロピレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
これらの中でも、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−4−メチル−1ペンテン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−ペンテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、プロピレン−メタクリル酸共重合体、プロピレン−メタクリル酸メチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸エチル共重合体、プロピレン−メタクリル酸ブチル共重合体、プロピレン−メチルアクリレート共重合体、プロピレン−エチルアクリレート共重合体、プロピレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びプロピレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれる少なくとも1種が好ましく、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、及びエチレン−ブチルアクリレート共重合体から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
また、エチレンとプロピレンといったように2種以上のオレフィン樹脂を組み合わせて用いてもよい。また、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー中のオレフィン樹脂含有率は、50質量%以上100質量%以下が好ましい。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量は、5000〜10000000であることが好ましい。ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量が5000〜10000000であると、熱可塑性樹脂材料の機械的物性が十分であり、加工性にも優れる。同様の観点から、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量は、7000〜1000000であることが更に好ましく、10000〜1000000が特に好ましい。これにより、熱可塑性樹脂材料の機械的物性及び加工性を更に向上させることができる。また、ソフトセグメントを形成するポリマーの数平均分子量としては、強靱性及び低温柔軟性の観点から、200〜6000が好ましい。更に、ハードセグメント(x)及びソフトセグメント(y)との質量比(x:y)は、成形性の観点から、50:50〜95:15が好ましく、50:50〜90:10が更に好ましい。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーは、公知の方法によって共重合することで合成することができる。
また、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを酸変性してなるものを用いてもよい。
「ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを酸変性してなるもの」とは、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーに、カルボン酸基、硫酸基、燐酸基等の酸性基を有する不飽和化合物を結合させたものをいう。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーに、カルボン酸基、硫酸基、燐酸基等の酸性基を有する不飽和化合物を結合させることとしては、例えば、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーに、酸性基を有する不飽和化合物として、不飽和カルボン酸(一般的には、無水マレイン酸)の不飽和結合部位を結合(例えば、グラフト重合)させることが挙げられる。
酸性基を有する不飽和化合物としては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの劣化抑制の観点からは、弱酸基であるカルボン酸基を有する不飽和化合物が好ましく、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等が挙げられる。
ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーの市販品としては、例えば、三井化学(株)製の「タフマー」シリーズ(例えば、A0550S、A1050S、A4050S、A1070S、A4070S、A35070S、A1085S、A4085S、A7090、A70090、MH7007、MH7010、XM−7070、XM−7080、BL4000、BL2481、BL3110、BL3450、P−0275、P−0375、P−0775、P−0180、P−0280、P−0480、P−0680等)、三井・デュポンポリケミカル(株)製の「ニュクレル」シリーズ(例えば、AN4214C、AN4225C、AN42115C、N0903HC、N0908C、AN42012C、N410、N1050H、N1108C、N1110H、N1207C、N1214、AN4221C、N1525、N1560、N0200H、AN4228C、AN4213C、N035C)等、「エルバロイAC」シリーズ(例えば、1125AC、1209AC、1218AC、1609AC、1820AC、1913AC、2112AC、2116AC、2615AC、2715AC、3117AC、3427AC、3717AC等)、住友化学(株)の「アクリフト」シリーズ、「エバテート」シリーズ等、東ソー(株)製の「ウルトラセン」シリーズ等、プライムポリマー製の「プライムTPO」シリーズ(例えば、E−2900H、F−3900H、E−2900、F−3900、J−5900、E−2910、F−3910、J−5910、E−2710、F−3710、J−5910、E−2740、F−3740、R110MP、R110E、T310E、M142E等)等も用いることができる。
−熱可塑性樹脂−
(ポリエステル系熱可塑性樹脂)
ポリエステル系熱可塑性樹脂としては、前述のポリエステル系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを形成するポリエステルを挙げることができる。
ポリエステル系熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ−3−ブチル酪酸、ポリヒドロキシ−3−ヘキシル酪酸、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエナントラクトン、ポリカプリロラクトン、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート等の脂肪族ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等の芳香族ポリエステルなどを例示することができる。これらの中でも、耐熱性及び加工性の観点から、ポリエステル系熱可塑性樹脂としては、ポリブチレンテレフタレートが好ましい。
ポリエステル系熱可塑性樹脂の市販品としては、例えば、ポリプラスチック(株)製の「ジュラネックス」シリーズ(例えば、2000、2002等)、三菱エンジニアリングプラスチック(株)製の「ノバデュラン」シリーズ(例えば、5010R5、5010R3−2等)、東レ(株)製の「トレコン」シリーズ(例えば、1401X06、1401X31等)等を用いることができる。
(ポリアミド系熱可塑性樹脂)
ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、前述のポリアミド系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを形成するポリアミドを挙げることができる。
ポリアミド系熱可塑性樹脂としては、具体的には、ε−カプロラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド6)、ウンデカンラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド11)、ラウリルラクタムを開環重縮合したポリアミド(アミド12)、ジアミンと二塩基酸とを重縮合したポリアミド(アミド66)、メタキシレンジアミンを構成単位として有するポリアミド(アミドMX)等を例示することができる。
アミド6は、例えば、{CO−(CH−NH}で表すことができる。アミド11は、例えば、{CO−(CH10−NH}で表すことができる。アミド12は、例えば、{CO−(CH11−NH}で表すことができる。アミド66は、例えば、{CO(CHCONH(CHNH}で表すことができる。アミドMXは、例えば、下記構造式(A−1)で表すことができる。ここで、nは繰り返し単位数を表す。
アミド6の市販品としては、例えば、宇部興産(株)製の「UBEナイロン」シリーズ(例えば、1022B、1011FB等)を用いることができる。アミド11の市販品としては、例えば、アルケマ(株)製の「Rilsan B」シリーズを用いることができる。アミド12の市販品としては、例えば、宇部興産(株)製の「UBEナイロン」シリーズ(例えば、3024U、3020U、3014U等)を用いることができる。アミド66の市販品としては、例えば、旭化成(株)製の「レオナ」シリーズ(例えば、1300S、1700S等)を用いることができる。アミドMXの市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)製の「MXナイロン」シリーズ(例えば、S6001、S6021、S6011等)を用いることができる。
ポリアミド系熱可塑性樹脂は、上記の構成単位のみで形成されるホモポリマーであってもよく、上記の構成単位と他のモノマーとのコポリマーであってもよい。コポリマーの場合、各ポリアミド系熱可塑性樹脂における上記構成単位の含有率は、40質量%以上であることが好ましい。
(ポリオレフィン系熱可塑性樹脂)
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂としては、前述のポリオレフィン系熱可塑性エラストマーのハードセグメントを形成するポリオレフィンを挙げることができる。
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリエチレン系熱可塑性樹脂、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂、ポリブタジエン系熱可塑性樹脂等を例示することができる。これらの中でも、耐熱性及び加工性の点から、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン系熱可塑性樹脂が好ましい。
ポリプロピレン系熱可塑性樹脂の具体例としては、プロピレンホモ重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体等が挙げられる。α−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数3〜20程度のα−オレフィン等が挙げられる。
樹脂組成物は、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーを単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物は、樹脂以外にも他の成分を含んでもよい。他の成分としては、ゴム、各種充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ等)、老化防止剤、オイル、可塑剤、発色剤、耐候剤等が挙げられる。
=ワイヤー樹脂複合部材の用途=
本実施形態に係るワイヤー樹脂複合部材は、例えば、タイヤを構成するタイヤ骨格体又はカーカスの外周部に周方向に巻回される補強ベルト部材、タイヤがリムと接する箇所に配置されるビード部材等として用いられる。
ここで、本実施形態に係るワイヤー樹脂複合部材が、ビード部材として用いられる場合の構成について説明する。
ビード部材は、ビードワイヤーと、ビードワイヤー上に設けられる接着層と、接着層の周囲に設けられる被覆樹脂層と、を有するビードコアを備える。また、ビードコアの周囲には第2被覆樹脂層を備えていてもよく、さらに第2被覆樹脂層からタイヤ径方向外側へ延びるビードフィラーを有していてもよい。なお、ビード部材における上記ビードワイヤー、接着層、及び被覆樹脂層が、それぞれ本実施形態に係るワイヤー樹脂複合部材におけるワイヤー、接着層、及び被覆樹脂層に相当する。
ここで、本実施形態に係るワイヤー樹脂複合部材を用いたビード部材について、一例を挙げて図面に基づき説明する。
図1は、ビード部材110の周方向(つまりビードワイヤーの長手方向)に直交する断面を示す断面図である。図1には、3本のビードワイヤー111が並列に並べられると共に3段に積層された態様、つまり9本のビードワイヤー111を有する態様のビード部材110が示されている。各ビードワイヤー111はそれぞれ接着層112で被覆される。なお、ビードワイヤー111は撚線からなり(不図示)、接着層を構成する材料である接着剤組成物がビードワイヤー中に浸透している。さらに、ビードワイヤー111及び接着層112の周囲が被覆樹脂層113で被覆されて、ビードコア101を形成する。また、ビード部材110はビードコア101の周囲を覆う第2被覆樹脂層114を有し、且つ第2被覆樹脂層114からタイヤ径方向外側へ延びるビードフィラー103を有する。
なお、図1に示すビード部材110では、第2被覆樹脂層114とビードフィラー103とが別体として描かれているが、第2被覆樹脂層114とビードフィラー103とは一体成形された同一体の部材であってもよい。
また、図1では、ビードコア101中のビードワイヤー111の数は9本であるが、これに限定されるものではなく、ビードワイヤー111の本数は1本以上であればよい。
第2被覆樹脂層は樹脂を含む。第2被覆樹脂層に含まれる樹脂としては、前述の本実施形態に係るワイヤー樹脂複合部材において被覆樹脂層に含まれる樹脂として列挙されたものが同様に用いられる。また、その好ましい樹脂の種類、好ましい含有量、含んでもよい他の成分等も、前記被覆樹脂層と同様である。
また、本実施形態におけるビード部材は、第2被覆樹脂層に替えてゴム(加硫ゴム)製の被覆層を有していてもよい。
本実施形態に係るタイヤは、ビード部材において、第2被覆樹脂層又はゴム製の被覆層からタイヤ径方向外側へ延びるビードフィラーを有していてもよい。また、このビードフィラーは、第2被覆樹脂層又はゴム製の被覆層と一体成形された同一体の部材であってもよい。
ビードフィラーの材質としては、特に限定されるものではなく、樹脂又はゴム等の従来公知の弾性材料が用いられる。ビードフィラーは、弾性材料として樹脂を含むことが好ましく、例えば前述の本実施形態に係るワイヤー樹脂複合部材において被覆樹脂層に含まれる樹脂として列挙されたものが同様に用いられる。また、その好ましい樹脂の種類、好ましい含有量、含んでもよい他の成分等も、前記被覆樹脂層と同様である。
=ビード部材の形成方法=
ここで、本実施形態に係るワイヤー樹脂複合部材をビード部材として用いた場合の形成方法について、一例を挙げて説明する。具体的には、図1に示す構成のビード部材を例にして形成方法を説明する。
図1は、ビードワイヤー111を複数本有するビード部材110の周方向(ビードワイヤー111の長手方向)に直交する断面を示す断面図である。図1には、3本のビードワイヤー111が並列に並べられると共に3段に積層された態様、つまり9本のビードワイヤー111を有する態様のビード部材110が示されている。なお、ここで「並列に並べられる」とは、タイヤに適用する際に必要な長さに切断したビード部材110中で、複数のビードワイヤー111同士が交差しない位置関係にあることを意味する。
各ビードワイヤー111はそれぞれ接着層112で被覆され、さらにビードワイヤー111及び接着層112の周囲が被覆樹脂層113で被覆されて、ビードコア101を形成する。さらに、ビードコア101の周囲を覆う第2被覆樹脂層114を有する。また、第2被覆樹脂層114からタイヤ径方向外側へ延びるビードフィラー103を有する。
・接着層及び被覆樹脂層の形成
図1に示すビード部材110におけるビードコア101は、まずビードワイヤー111の周囲を接着層112で被覆し、その後接着層112で被覆された3本のビードワイヤー111を被覆樹脂層113で被覆してなるストリップ部材を形成する。さらに、このストリップ部材を巻回して、断面での形状が略長方形であるストリップ部材を3段積層することで、ビードコア101を形成する。
なお、図1では、ビードコア101中のビードワイヤー111の数は9本であるが、これに限定されるものではなく、ビードワイヤー111の本数は1本以上であればよい。また、図1では、ストリップ部材が断面で3段に積層された態様を示すが、これに限定されるものではなく、例えば1段又は2段であっても、4段以上積層されていてもよい。
本実施形態では、溶融状態の接着層112を形成する材料(つまり接着剤組成物)をビードワイヤー111の外周表面に被覆し、さらに接着剤組成物の表面に溶融状態の被覆樹脂層113を形成する材料(つまり樹脂組成物)を被覆して、冷却により固化させることで、ストリップ部材を形成する。ストリップ部材の断面形状(ビードワイヤー111の長手方向に直交する断面の形状)は、本実施形態では略長方形であるが、これに限られず、例えば略平行四辺形等の様々な形状とすることができる。接着層112の形成及び被覆樹脂層113の形成は、公知の方法により行うことができ、例えば押出成形等の方法が挙げられる。そして、ビードコア101はストリップ部材を巻回して段積みすることにより形成することができ、段同士の接合は、例えば熱板溶着等の公知の方法で被覆樹脂層113を溶融させながらストリップ部材を巻回して、溶融した被覆樹脂層113を固化することにより行うことができる。あるいは、段同士を接着剤等により接着することにより接合することもできる。
・第2被覆樹脂層の形成
次いで、得られたビードコア101の表面に、溶融状態の第2被覆樹脂層114を形成する材料(例えば樹脂を含む材料)を被覆して、冷却により固化させることで、第2被覆樹脂層114を形成する。第2被覆樹脂層114の形成は、公知の方法により行うことができ、例えば射出成形等の方法が挙げられる(以下、射出成形により形成される第2被覆樹脂層を「射出樹脂層」とも称す)。
具体的には、射出成形金型のキャビティにビードコア101を配置し、溶融状態の第2被覆樹脂層114を形成する材料をキャビティに射出する。次に、射出した材料を冷却により固化させることで、第2被覆樹脂層(射出樹脂層)114を形成する。
・ビードフィラーの形成
図1に示すビード部材110は、第2被覆樹脂層114のタイヤ径方向外側に向かって、ビードフィラー103が配置された構造を有する。ビードフィラー103の形成は、公知の方法により行うことができ、例えばビードフィラー103を樹脂で形成する場合には射出成形等の方法が挙げられる。なお、ビードフィラー103が第2被覆樹脂層114と一体成形された同一体の部材である場合、ビードフィラー103及び第2被覆樹脂層114の形状に加工された射出成形金型を用いて、一度の射出により両部材を一体成形することもできる。
<タイヤ>
本実施形態に係るタイヤは、前述の本実施形態に係るタイヤ用ワイヤー樹脂複合部材を備える。
ワイヤー樹脂複合部材は、例えば、タイヤを構成するタイヤ骨格体又はカーカスの外周部に周方向に巻回される補強ベルト部材、ビード部材等として用いられる。
ここで、本実施形態に係るタイヤを構成するタイヤ骨格体又はカーカスについて説明する。
〔タイヤ骨格体又はカーカス〕
本明細書において「カーカス(carcass)」とは、従来タイヤにおいてタイヤの骨格をなす部材であり、いわゆるラジアルカーカス、バイアスカーカス、セミラジアルカーカス等が含まれる。カーカスは一般に、コード、繊維等の補強材がゴム材料で被覆された構造を有する。
本明細書において「タイヤ骨格体(tire frame)」とは、従来タイヤのカーカスに相当する部材であって、樹脂材料から形成されるもの(いわゆる樹脂タイヤ用のタイヤ骨格体)を意味する。
カーカスを形成する弾性材料としては後述するゴム材料が挙げられ、タイヤ骨格体を形成する弾性材料としては後述する樹脂材料が挙げられる。
(弾性材料:ゴム材料)
ゴム材料は、ゴム(ゴム成分)を少なくとも含んでいればよく、本実施形態の効果を損なわない範囲で、添加剤等の他の成分を含んでもよい。ただし、前記ゴム材料中におけるゴム(ゴム成分)の含有量は、ゴム材料の総量に対して、50質量%以上が好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
ゴム成分としては、特に限定はなく、公知のゴム配合に使用される天然ゴム及び各種合成ゴムを、単独もしくは2種以上混合して用いることができる。例えば、下記に示すゴム、もしくはこれらの2種以上のゴムブレンドを使用することができる。
上記天然ゴムとしては、シートゴムでもブロックゴムでもよく、RSS#1〜#5の総てを用いることができる。
上記合成ゴムとしては、各種ジエン系合成ゴムやジエン系共重合体ゴム及び特殊ゴムや変性ゴム等を使用できる。具体的には、例えば、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンと芳香族ビニル化合物との共重合体(例えばSBR、NBRなど)、ブタジエンと他のジエン系化合物との共重合体等のブタジエン系重合体;ポリイソプレン(IR)、イソプレンと芳香族ビニル化合物との共重合体、イソプレンと他のジエン系化合物との共重合体等のイソプレン系重合体;クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR);エチレン−プロピレン系共重合体ゴム(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体ゴム(EPDM)及びこれらの任意のブレンド物等が挙げられる。
ゴム材料は、目的に応じてゴムに添加物等の他の成分を加えてもよい。
添加物としては、例えば、カーボンブラック等の補強材、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、脂肪酸又はその塩、金属酸化物、プロセスオイル、老化防止剤等が挙げられ、これらを適宜配合することができる。
ゴム材料で形成されるカーカスは、未加硫のゴム材料を加熱によってゴムを加硫することで得られる。
(弾性材料:樹脂材料)
樹脂材料は、樹脂(樹脂成分)を少なくとも含んでいればよく、本実施形態の効果を損なわない範囲で、添加剤等の他の成分を含んでもよい。ただし、前記樹脂材料中における樹脂(樹脂成分)の含有量は、樹脂材料の総量に対して、50質量%以上が好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
樹脂材料に含まれる樹脂(樹脂成分)としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、及び熱硬化性樹脂が挙げられる。走行時の乗り心地の観点から、樹脂材料は、熱可塑性エラストマーを含むことが好ましく、ポリアミド系熱可塑性エラストマーを含むことがより好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール系熱硬化性樹脂、ユリア系熱硬化性樹脂、メラミン系熱硬化性樹脂、エポキシ系熱硬化性樹脂等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、オレフィン系熱可塑性樹脂、ポリウレタン系熱可塑性樹脂、塩化ビニル系熱可塑性樹脂、ポリスチレン系熱可塑性樹脂等を例示することができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、熱可塑性樹脂としては、ポリアミド系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂、及びオレフィン系熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ポリアミド系熱可塑性樹脂及びオレフィン系熱可塑性樹脂から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられる。なお、走行時に必要とされる弾性、製造時の成形性等を考慮すると、樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーからなる群より選択される少なくとも一種を用いることが好ましく、熱可塑性エラストマーを用いることが更に好ましい。
タイヤ骨格体を形成する樹脂材料としては、ワイヤー樹脂複合部材に含まれる被覆樹脂層と同種の樹脂を含むものを用いることが好ましい。例えば、被覆樹脂層にポリエステル系の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーを含む場合、タイヤ骨格体にもポリエステル系の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーを用いることが、接着性の観点で好ましい。
−他の成分−
弾性材料(ゴム材料又は樹脂材料)は、所望に応じて、ゴム又は樹脂以外の他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、各種充填剤(例えば、シリカ、炭酸カルシウム、クレイ)、老化防止剤、オイル、可塑剤、着色剤、耐候剤、補強材等が挙げられる。
−弾性材料の物性−
弾性材料として樹脂材料を用いる場合(つまり樹脂タイヤ用のタイヤ骨格体の場合)、樹脂材料に含まれる樹脂の融点は、例えば100℃〜350℃程度が挙げられ、タイヤの耐久性及び生産性の観点から、100℃〜250℃程度が好ましく、120℃〜250℃が更に好ましい。
弾性材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113:1995に規定される引張弾性率は、50MPa〜1000MPaが好ましく、50MPa〜800MPaが更に好ましく、50MPa〜700MPaが特に好ましい。弾性材料の引張弾性率が、50MPa〜1000MPaであると、タイヤ骨格体の形状を保持しつつ、リム組みを効率的に行なうことができる。
弾性材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113(1995)に規定される引張強さは、通常、15MPa〜70MPa程度であり、17MPa〜60MPaが好ましく、20MPa〜55MPaが更に好ましい。
弾性材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113(1995)に規定される引張降伏強さは、5MPa以上が好ましく、5MPa〜20MPaが更に好ましく、5MPa〜17MPaが特に好ましい。弾性材料の引張降伏強さが、5MPa以上であると、走行時等にタイヤにかかる荷重に対する変形に耐えることができる。
弾性材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113(1995)に規定される引張降伏伸びは、10%以上が好ましく、10%〜70%が更に好ましく、15%〜60%が特に好ましい。弾性材料の引張降伏伸びが、10%以上であると、弾性領域が大きく、リム組み性を良好にすることができる。
弾性材料(タイヤ骨格体)自体のJIS K7113(1995)に規定される引張破断伸びは、50%以上が好ましく、100%以上が更に好ましく、150%以上が特に好ましく、200%以上が最も好ましい。弾性材料の引張破断伸びが、50%以上であると、リム組み性が良好であり、衝突に対して破壊し難くすることができる。
弾性材料(タイヤ骨格体)自体のISO 75−2又はASTM D648に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)は、50℃以上が好ましく、50℃〜150℃が更に好ましく、50℃〜130℃が特に好ましい。弾性材料の荷重たわみ温度が、50℃以上であると、タイヤの製造において加硫を行う場合であってもタイヤ骨格体の変形を抑制するこができる。
<タイヤの構造>
以下、図面に従って、本実施形態に係るタイヤについて説明する。
なお、以下に示す各図は、模式的に示した図であり、各部の大きさ及び形状は、理解を容易にするために、適宜誇張して示している。
(第一の実施形態)
第一の実施形態に係るタイヤは、カーカスを備える。また、第一の実施形態ではワイヤー樹脂複合部材を補強ベルト部材及びビード部材に適用している。
図2は、本実施形態に係るタイヤ100の構成を概略的に示す、タイヤ幅方向断面図である。図2には、便宜のため、タイヤ100が組み付けられるリムRを、破線により示している。
タイヤ100は、図2に示すように空気入りタイヤである。
タイヤ100は、図2に示すように、タイヤ赤道面CLに対して両側に配置される一対のビード部210と、一対のビード部210からそれぞれタイヤ径方向外側へ延びる一対のサイド部220と、前記一対のサイド部220をつなぐトレッド部230と、を備えている。一対のビード部210は、それぞれ本実施形態に係るワイヤー樹脂複合部材を含むビード部材110を有する。
図2に示すタイヤ100のビード部材110は、図1に示すビード部材110の構成を有する。図2の例では、ビード部材110はゴム140内に埋設されている。
図2の例において、一対のビード部210に含まれるビード部材110の間には、少なくとも一層(図の例では1層)のカーカスプライを含むカーカス120が、トロイド状に延びている。カーカス120のカーカスプライは、例えば、スチール製又は有機繊維製等のコードがゴムにより被覆された構成を有する。
図2の例において、カーカス120は、一対のビード部材110の間をトロイド状に延びる本体部120aと、タイヤ赤道面CLに対する両側のそれぞれにおいて、本体部120aのタイヤ径方向最内端から、ビード部材110の周りでタイヤ幅方向外側に向けて折り返された、一対の折り返し部120bと、を含んでいる。
図2の例において、トレッド部230及びサイド部220の内側には、タイヤの空気漏れを防ぐためのインナーライナー180が配置されている。さらに、トレッド部230の、カーカス120のクラウン域よりもタイヤ径方向外側には、少なくとも1層(図の例では1層)のベルト層からなる補強ベルト部材130が配置されている。補強ベルト部材130は、本実施形態に係るワイヤー樹脂複合部材を含む。
図2の例において、補強ベルト部材130及びビード部材110は、それぞれ前述の本実施形態に係るワイヤー樹脂複合部材を含んでいるが、これに限定されるものではない。つまり、補強ベルト部材130及びビード部材110のいずれか一方が前述の本実施形態に係るワイヤー樹脂複合部材を含んで形成されてもよく、双方が前述の本実施形態に係るワイヤー樹脂複合部材を含んで形成されてもよい。
第一の実施形態に係るタイヤ100の製造方法としては、公知のタイヤ成形ドラムの外周に、ゴム材料からなるインナーライナー180、ビード部材110、コードをゴム材料で被覆したカーカス120、ゴム材料で形成されるタイヤサイド部220におけるカーカス120の周囲の領域、等を有する、未加硫のタイヤケースを形成する。
タイヤケースのトレッド部230に補強ベルト部材130を形成する方法としては、例えば、前記タイヤケースを回転させながらリールに巻き取ったワイヤー等の部材を巻き出し、ワイヤーをトレッド部230に所定の回数巻き付けて補強ベルト部材130を形成する方法が挙げられる。なお、樹脂で被覆されているワイヤーに対し、加熱及び加圧を行って被覆されている樹脂をトレッド部230に溶着させてもよい。
最後に、補強ベルト部材130の外周面に、未加硫のトレッドを貼り付け、生タイヤが得られる。このようにして製造された生タイヤは、加硫成形モールドで加硫成形され、タイヤ100が完成する。
(第二の実施形態)
第二の実施形態に係るタイヤは、樹脂を含むタイヤ骨格体を備える。また、第二の実施形態ではワイヤー樹脂複合部材を補強ベルト部材に適用しているが、補強ベルト部材に加えてビード部材等のその他の部位にワイヤー樹脂複合部材を適用してもよい。
図3Aは、第二の実施形態に係るタイヤの一部の断面を示す斜視図である。図3Bは、タイヤのビード部をリム(タイヤとは別体である)に装着した状態の断面図である。
図3Aに示すように、第二の実施形態に係るタイヤ10は空気入りタイヤであり、従来の一般的なゴム製の空気入りタイヤと略同様の断面形状を呈している。
タイヤ10は、リム20のビードシート21とリムフランジ22とに接触する1対のビード部12と、ビード部12からタイヤ径方向外側に延びるサイド部14と、一方のサイド部14のタイヤ径方向外側端と他方のサイド部14のタイヤ径方向外側端とを連結するクラウン部(外周部)16と、からなるタイヤ骨格体17を備えている。タイヤ骨格体17は、樹脂材料を用いて形成されている。
タイヤ骨格体17は、一つのビード部12と一つのサイド部14と半幅のクラウン部16とを一体として射出成形された同一形状の円環状のタイヤ骨格体半体(タイヤ骨格片)17Aを互いに向かい合わせ、タイヤ赤道面部分で接合することにより形成されている。
ビード部12には、スチールコードからなる円環状のビードコア18が埋設されている。また、ビード部12のリム20と接触する部分や、少なくともリム20のリムフランジ22と接触する部分には、タイヤ骨格体17を構成する樹脂材料よりもシール性に優れた材料であるゴムからなる円環状のシール層24が形成されている。
クラウン部16には、本実施形態に係るワイヤー樹脂複合部材を適用した補強ベルト部材26が、タイヤ骨格体17の軸方向に沿った断面視で、少なくとも一部がクラウン部16に埋設された状態で、タイヤ骨格体17の周方向に螺旋状に巻回されている。また、補強ベルト部材26のタイヤ径方向外周側には、タイヤ骨格体17を構成する樹脂材料よりも耐摩耗性に優れた材料であるゴムからなるトレッド30が配置されている。なお、補強ベルト部材26の詳細については、後述する。
タイヤ骨格体半体17Aは左右対称形状、即ち、一方のタイヤ骨格体半体17Aと他方のタイヤ骨格体17Aとが同一形状であるので、タイヤ骨格体半体17Aを成形する金型が1種類で済むというメリットがある。
なお、第二の実施形態に係るタイヤ10では、タイヤ骨格体17は、単一の樹脂材料で形成されているが、このような態様に限定されず、タイヤ骨格体17の各部位(例えば、サイド部14、クラウン部16、ビード部12等)毎に異なる特徴を有する樹脂材料を用いてもよい。
また、タイヤ骨格体17の各部位(例えば、サイド部14、クラウン部16、ビード部12等)に、補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布等)を埋設配置し、該補強材でタイヤ骨格体17を補強してもよい。補強材の埋設配置は、なくてもよい。
第二の実施形態に係るタイヤ10では、タイヤ骨格体半体17Aが射出成形により成形されているが、これに限定されず、例えば、真空成形、圧空成形、メルトキャスティング等により成形されていてもよい。また、第二の実施形態に係るタイヤ10では、タイヤ骨格体17は、2つの部材(タイヤ骨格体半体17A)を接合して形成されているが、これに限定されず、低融点金属を用いた溶融中子方式、割り中子方式、又はブロー成形によってタイヤ骨格体を1つの部材としてもよく、3つ以上の部材を接合して形成されていてもよい。
タイヤ10のビード部12には、スチールコード等の金属製のコードからなる円環状のビードコア18が埋設されている。なお、ビードコア18を含む部材として、前述の本実施形態に係るワイヤー樹脂複合部材を用いてもよく、例えばビード部12をワイヤー樹脂複合部材で構成してもよい。
また、ビードコア18は、スチールコード以外に、有機繊維コード、樹脂被覆した有機繊維コード、又は硬質樹脂で形成されていてもよい。なお、ビードコア18は、ビード部12の剛性が確保され、リム20との嵌合に問題がないのであれば、省略してもよい。
ビード部12のリム20と接触する部分や、少なくともリム20のリムフランジ22と接触する部分には、ゴムからなる円環状のシール層24が形成されている。シール層24は、タイヤ骨格体17(ビード部12)とビードシート21とが接触する部分にも形成されていてもよい。シール層24の形成材料としてゴムを用いる場合には、従来の一般的なゴム製の空気入りタイヤのビード部外面に用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。なお、タイヤ骨格体17を樹脂材料で形成する場合、ゴムのシール層24は、タイヤ骨格体17を形成する樹脂材料のみでリム20との間のシール性が確保できるのであれば、省略してもよい。
シール層24は、タイヤ骨格体17を形成する樹脂材料よりもシール性に優れる他の熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマーを用いて形成されてもよい。このような他の熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の樹脂や、これら樹脂とゴム若しくはエラストマーとのブレンド物等が挙げられる。また、熱可塑性エラストマーを用いることもでき、例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、又はこれらエラストマー同士の組み合わせや、ゴムとのブレンド物等が挙げられる。
次に、図4を参照しながら、本実施形態に係るワイヤー樹脂複合部材で形成される補強ベルト部材26について説明する。
図4は、第二の実施形態に係るタイヤ10のタイヤ回転軸に沿った断面図であり、補強ベルト部材26がタイヤ骨格体17のクラウン部に埋設された状態を示す。
図4に示すように、補強ベルト部材26は、タイヤ骨格体17の軸方向に沿った断面視で、その少なくとも一部がクラウン部16に埋設された状態で螺旋状に巻回されている。そして、補強ベルト部材26のクラウン部16に埋設された部分は、クラウン部16(タイヤ骨格体17)を構成する樹脂材料と密着した状態となっている。図4におけるLは、クラウン部16(タイヤ骨格体17)に対する補強ベルト部材26のタイヤ回転軸方向への埋設深さを示す。ある実施態様では、補強ベルト部材26のクラウン部16に対する埋設深さLは、補強ベルト部材26の直径Dの1/2である。
補強ベルト部材26は、ワイヤー27を芯として、ワイヤー27の外周が、接着層25を介して、被覆樹脂層28で被覆された構造を有している。なお、補強ベルト部材26における上記ワイヤー27、接着層25、及び被覆樹脂層28が、それぞれ本実施形態に係るワイヤー樹脂複合部材におけるワイヤー、接着層、及び被覆樹脂層に相当する。
補強ベルト部材26のタイヤ径方向外周側には、ゴム製のトレッド30が配置されている。また、トレッド30には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝からなるトレッドパターンが形成されている。
ある実施態様では、タイヤ10では、熱可塑性エラストマーを含む被覆樹脂層28で被覆した補強ベルト部材26が、同種の熱可塑性エラストマーを含む樹脂材料で形成されているタイヤ骨格体17に密着した状態で埋設されている。そのため、ワイヤー27を被覆する被覆樹脂層28とタイヤ骨格体17との接触面積が大きくなり、補強ベルト部材26とタイヤ骨格体17との耐久性が向上し、その結果、タイヤの耐久性が優れたものとなる。
補強ベルト部材26がクラウン部16に埋設されている場合、補強ベルト部材26のクラウン部16に対する埋設深さLは、補強ベルト部材26の直径Dの1/5以上であれば好ましく、1/2を超えることがより好ましい。そして、補強ベルト部材26の全体がクラウン部16に埋設されることが更に好ましい。補強ベルト部材26の埋設深さLが、補強ベルト部材26の直径Dの1/2を超えると、補強ベルト部材26の寸法上、埋設部から飛び出し難くなる。そして、補強ベルト部材26の全体がクラウン部16に埋設されると、表面(外周面)がフラットになり、補強ベルト部材26が埋設されたクラウン部16上に部材が載置された場合であっても、補強ベルト部材26の周辺部に空気が入るのを抑制することができる。
第二の実施形態に係るタイヤ10では、トレッド30がゴムで形成されているが、ゴムの代わりに、耐摩耗性に優れる熱可塑性樹脂材料で形成したトレッドを用いてもよい。
ついで、第二の実施形態に係るタイヤの製造方法について説明する。
[タイヤ骨格体成形工程]
まず、薄い金属の支持リングに支持されたタイヤ骨格体半体同士を互いに向かい合わせる。次に、タイヤ骨格体半体の突き当て部分の外周面と接するように、接合金型を設置する。ここで、上記接合金型は、タイヤ骨格体半体の接合部(突き当て部分)周辺を所定の圧力で押圧するように構成されている(図示せず)。次に、タイヤ骨格体半体の接合部周辺を、タイヤ骨格体を形成する樹脂材料の融点(又は軟化点)以上で押圧する。タイヤ骨格体半体の接合部が接合金型によって加熱・加圧されると、上記接合部が溶融し、タイヤ骨格体半体同士が融着し、これら部材が一体となってタイヤ骨格体17が形成される。
[樹脂コード部材成形工程]
次に、樹脂コード部材を本実施形態に係るワイヤー樹脂複合部材で形成する、樹脂コード部材成形工程について説明する。
まず、例えば、リールからワイヤー27を巻出し、その表面を洗浄する。次に、ワイヤー27の外周を、押出機から押し出した接着剤(つまり接着剤組成物)で被覆して、接着層25となる層を形成する。さらにその上を、押出機から押し出した樹脂(つまり樹脂組成物)で被覆することで、ワイヤー27の外周が接着層25を介して被覆樹脂層28で被覆された樹脂コード部材を形成する。そして、得られた樹脂コード部材をリールに巻き取る。
[樹脂コード部材巻回工程]
次に、リールから巻き出した樹脂コード部材を、加熱(例えば、樹脂コード部材の温度を100℃〜250℃程度に加熱)する。加熱された樹脂コード部材を、回転するタイヤ骨格体17のクラウン部16の外周面に、一定のテンションをもって螺旋状に巻きつける。ここで、加熱された樹脂コード部材の被覆樹脂層がクラウン部16の外周面に接触すると、接触部分の樹脂材料が溶融又は軟化し、タイヤ骨格体の樹脂と溶融接合してクラウン部16の外周面に一体化される。このとき、樹脂コード部材は隣接する樹脂コード部材とも溶融接合される為、隙間のない状態で巻回される。これにより、補強ベルト部材26を埋設した部分へのエア入りが抑制される。
補強ベルト部材26の埋設深さLは、補強ベルト部材26の加熱温度、補強ベルト部材26に作用させるテンション等によって調整することができる。ある実施態様では、補強ベルト部材26の埋設深さLが、補強ベルト部材26の直径Dの1/5以上となるように設定される。
次に、補強ベルト部材26が埋設されたタイヤ骨格体17の外周面に帯状のトレッド30を巻き付け、これを加硫缶やモールドに収容して加熱(加硫)する。トレッド30は、未加硫ゴムであっても、加硫ゴムであってもよい。
そして、タイヤ骨格体17のビード部12に、加硫済みのゴムからなるシール層24を、接着剤等を用いて接着すれば、タイヤ10の完成となる。
第二の実施形態に係るタイヤの製造方法では、接合金型を用いてタイヤ骨格体半体17Aの接合部を加熱したが、第二の実施形態はこれに限定されず、例えば、別に設けた高周波加熱機等によって上記接合部を加熱したり、予め熱風や赤外線の照射等によって軟化又は溶融させ、接合金型によって加圧したりして、タイヤ骨格体半体17Aを接合させてもよい。
第二の実施形態に係るタイヤの製造方法では、補強ベルト部材26を加熱し、加熱した補強ベルト部材26が接触する部分のタイヤ骨格体17の表面を溶融又は軟化させる態様としたが、第二の実施形態はこの態様に限定されず、補強ベルト部材26を加熱せずに熱風生成装置を用い、補強ベルト部材26が埋設されるクラウン部16の外周面を加熱した後、補強ベルト部材26をクラウン部16に埋設するようにしてもよい。
補強ベルト部材26は、螺旋巻きすることが製造上は容易であるが、幅方向で補強ベルト部材26を不連続に配置する方法等も考えられる。
第二の実施形態に係るタイヤでは、補強ベルト部材26は1層のみであるが、2層以上としてもよい。
第二の実施形態に係るタイヤの製造方法では、補強ベルト部材26が埋設されたタイヤ骨格体17の外周面に帯状のトレッド30を巻き付け、その後に加熱(加硫)する態様としたが、第二の実施形態はこの態様に限定されず、加硫済みの帯状のトレッドをタイヤ骨格体17の外周面に接着剤等により接着する態様としてもよい。加硫済みの帯状のトレッドとしては、例えば、更生タイヤに用いられるプレキュアトレッドが挙げられる。
第二の実施形態に係るタイヤ10は、ビード部12をリム20に装着することでタイヤ10とリム20との間で空気室を形成する、いわゆるチューブレスタイヤであるが、本実施形態はこの態様に限定されず、完全なチューブ形状であってもよい。
以上、各種実施形態を挙げて説明したが、これらの実施形態は一例であり、本開示は、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加えて実施することができる。また、本開示の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載に何ら制限を受けるものではない。
〔実施例1〜11、比較例1〕
<樹脂被覆コードの作製>
ワイヤーとして、平均直径φ1.15mmのマルチフィラメント(φ0.35mmのモノフィラメント(スチール製、強力:280N、伸度:3%)7本を撚った撚線を使用する。
表1に示す接着剤を加熱溶融した状態で上記のワイヤーの表面に押出機にて押し出し付着させる。なお、押出成形機を用い、押出し時の接着剤の温度、及びワイヤーの温度を表1に記載の条件に設定する。また、押出成形機の回転数を表1に記載の条件に設定することで、接着剤の供給量を調整する。
次いで、表1に示す樹脂を加熱溶融した状態で、上記の接着剤を付着させたワイヤーの表面に押出機にて押し出し付着させる。なお、押出成形機を用い、押出し時のワイヤーの温度200℃に設定する。また、押出成形機の回転数を30回/分に設定することで、樹脂の供給量を調整する。こうして、樹脂被覆コードを作製する。
なお、得られた樹脂被覆コードに関し、ワイヤーの長手方向に直交する垂直断面を観察して、接着層における空隙率を、既述の方法により算出した。結果を表1に示す。
<補強ベルト部材を備えるタイヤの作製>
前記樹脂被覆コードを補強ベルト部材に用いて、上述の第一の実施形態で示した図2に示す態様のタイヤを、作製する。
ビード部、ポリエチレンテレフタレート製のプライコードからなるカーカス、天然ゴム(NR)とスチレンブタジエンゴム(SBR)との混合ゴム材料を用いたタイヤサイド部(カーカスのタイヤ幅方向外側の領域)、及びゴム製のインナーライナーを備えたタイヤケースを準備する。次に、前記樹脂被覆コードを加熱して、回転するタイヤケースのクラウン部の外周面に、一定のテンションをもって螺旋状に巻きつけて補強ベルト部材を形成する。次に、補強ベルト部材の外周面に、未加硫のトレッドを貼り付けて生タイヤを得る。この生タイヤを160℃、21分の条件で加熱(ゴムの加硫)してタイヤを得る。
このタイヤは、タイヤサイズ225/40R18、トレッド部の厚み10mmである。
なお、各実施例及び比較例において、被覆樹脂層の形成に用いる樹脂の詳細は、以下の通りである。
・樹脂1
ポリエステル系熱可塑性エラストマー(東レ・デュポン株式会社製、商品名「ハイトレル5557」)、融点207℃、粘度(270℃)450Pa・s
・樹脂2
ポリエステル系熱可塑性エラストマー(東レ・デュポン株式会社製、商品名「ハイトレル6347」)、融点215℃、粘度(270℃)350Pa・s
・樹脂3
ポリエステル系熱可塑性エラストマー(東レ・デュポン株式会社製、商品名「ハイトレル2571」)、融点228℃、粘度(270℃)400Pa・s
また、各実施例及び比較例において、接着層の形成に用いた接着剤の詳細は、以下の通りである。
・接着剤1
酸変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ホットメルト接着剤(三菱ケミカル株式会社製、商品名「プリマロイAP GQ730」)、粘度(270℃)60Pa・s
・接着剤2
酸変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ホットメルト接着剤(三菱ケミカル株式会社製、商品名「プリマロイAP GQ741」)粘度(270℃)80Pa・s
・接着剤3
酸変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ホットメルト接着剤(三菱ケミカル株式会社製、商品名「プリマロイAP GQ331」)、粘度(270℃)110Pa・s
・接着剤4
酸変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ホットメルト接着剤(特許第3806323号に記載の方法より作製した接着剤)、粘度(270℃)200Pa・s
・接着剤5
酸変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ホットメルト接着剤(特許第3806323号に記載の方法より作製した接着剤)、粘度(270℃)3000Pa・s
・接着剤6
酸変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ホットメルト接着剤(特許第3806323号に記載の方法より作製した接着剤)粘度(270℃)1700Pa・s
・接着剤7
酸変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ホットメルト接着剤(特許第3806323号に記載の方法より作製した接着剤)、粘度(270℃)2400Pa・s
・接着剤8
酸変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ホットメルト接着剤(特許第3806323号に記載の方法より作製した接着剤)、粘度(270℃)8000Pa・s
・接着剤9
酸変性ポリプロピレン樹脂、ホットメルト接着剤(三井化学株式会社製、商品名「アドマーQE060」)、粘度(270℃)260Pa・s
・接着剤10
酸変性ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ホットメルト接着剤(接着剤5と接着剤8を90:10の割合(質量比)でブレンドしたもの)、粘度(270℃)3500Pa・s
〔評価試験〕
<初期接着性試験>
実施例及び比較例で作製される、樹脂被覆コード(つまりワイヤーに接着層、及び被覆樹脂層を形成した状態の部材)に対し、接着層とワイヤーとの間の接着性の指標として、上記部材の作製直後にワイヤーから接着層、及び被覆樹脂層を剥離した際の剥離力を測定する。
具体的には、(株)エー・アンド・デイ製の「TENSIRON RTF−1210」を用いて、室温環境(25℃)で引張速度100mm/minで180°剥離試験により、剥離力(単位:N)を測定し、以下の評価基準に従って接着性を評価する。
−評価基準−
A 剥離力が17N以上である。
B 剥離力が14N以上17N未満である。
C 剥離力が10N以上14N未満である。
D 剥離力が10N未満である。
<JISドラム試験>
実施例及び比較例で作製されるタイヤを25±2℃の室内で内圧3.0kg/cmに調整した後、24時間放置する。その後、空気圧の再調整を行い、JIS荷重の2倍荷重をタイヤに負荷して、直径約3mのドラム上で、速度60km/hにて最大2万km走行させる。そして、タイヤが故障するまでに走行する距離を計測し、下記の評価基準に従って評価を行う。走行距離が長いほどタイヤの耐久性が優れていることを示し、[A]に分類されるものであれば実用上好ましいと言える。
−評価基準−
A:2万km完走する。
B:故障発生までの走行距離が1万km以上2万km未満である。
C:故障発生までの走行距離が1万km未満である。
なお、上記表に示す各評価試験の結果に関して、実施例1〜3は実際に試験を実施して得たデータであり、一方実施例4〜11、及び比較例1はシミュレーションによる予測データである。
表に示すように、接着層における空隙率が2.2%以下である実施例のタイヤは、上記条件を満たさない比較例のタイヤに比べて、いずれの試験においても良好な評価が得られる。
1 フィラメント
2 接着剤組成物
3 樹脂組成物
5 接着剤組成物が存在していない領域
10 タイヤ
12 ビード部
14 サイド部
16 クラウン部
17 タイヤ骨格体
17A タイヤ骨格体半体
18 ビードコア
20 リム
21 ビードシート
22 リムフランジ
24 シール層
25 接着層
26 補強ベルト部材
27 ワイヤー
28 被覆樹脂層
30 トレッド
100 タイヤ
101 ビードコア
103 ビードフィラー
110 ビード部材
111 ビードワイヤー
112 接着層
113 被覆樹脂層
114 第2被覆樹脂層
120 カーカス
120a カーカス本体部
120b 折り返し部
130 補強ベルト部材
140 ゴム
180 インナーライナー
210 ビード部
220 タイヤサイド部
230 トレッド部
CL タイヤ赤道面
R リム

Claims (7)

  1. 撚線からなるワイヤーと、接着剤組成物からなる接着層と、樹脂組成物からなる被覆樹脂層と、をこの順に有し、
    前記接着剤組成物が前記ワイヤー中に浸透しており、
    前記接着層における空隙率が0%以上2.2%以下であるタイヤ用ワイヤー樹脂複合部材。
  2. 前記接着剤組成物は、270℃での粘度が40Pa・s以上5000Pa・s以下である請求項1に記載のタイヤ用ワイヤー樹脂複合部材。
  3. 前記接着剤組成物が、オレフィン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、及びポリエステル系熱可塑性樹脂からなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1又は請求項2に記載のタイヤ用ワイヤー樹脂複合部材。
  4. 前記接着剤組成物の270℃での粘度[Vb]に対する、前記樹脂組成物の270℃での粘度[Vr]の比率[Vr/Vb]が0.06以上7.5以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ用ワイヤー樹脂複合部材。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のタイヤ用ワイヤー樹脂複合部材を備えるタイヤ。
  6. 前記タイヤ用ワイヤー樹脂複合部材が、前記タイヤのタイヤ骨格体又はカーカスの外周部に配置される補強ベルト部材を構成する請求項5に記載のタイヤ。
  7. 前記タイヤ用ワイヤー樹脂複合部材が、前記タイヤがリムと接する箇所に配置されるビード部材を構成する請求項5に記載のタイヤ。
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