第1の態様では、本発明は、ヒトHER2及びヒトAPLP2に結合する二重特異性抗体及びその抗原結合フラグメントを提供する。本発明のこの態様による二重特異性抗体は、とりわけ、例えば、HER2または抗体の分解及びリソソーム輸送が有益または望ましい状況下で、細胞、例えば、二重特異性抗体の内部移行を刺激するHER2及びAPLP2を発現する、乳癌細胞を標的とするために有用である。例えば、二重特異性抗体は、二重特異性抗HER2xAPLP2抗体薬物コンジュゲート(ADC)を、薬物コンジュゲートの放出及び標的細胞毒性のために、乳房腫瘍細胞などの特定のHER2発現細胞のリソソームに向け得る。本発明はまた、ヒトHER2に結合する抗体及びその抗原結合フラグメントも提供する。本発明のこの態様による抗体は、とりわけ、HER2を発現する細胞を標的化するために有用である。本発明はまた、ヒトAPLP2に結合する抗体及びその抗原結合フラグメントも提供する。本発明のこの態様による抗体は、とりわけ、APLP2による細胞への結合分子の迅速な内部移行のために、APLP2、及び標的抗原、例えば、HER2を発現する細胞を標的とするために有用である。
本発明の例示的な抗HER2抗体を、表1に列挙する。表1は、重鎖可変領域(HCVR)及び軽鎖可変領域(LCVR)のアミノ酸及び核酸配列識別子、ならびに例示的な抗HER2抗体の重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)、及び軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)も示す。
本発明は、表1に列挙された任意のHCVRアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含むHCVRを含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
本発明はまた、表1に列挙された任意のLCVRアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含むLCVRを含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
本発明はまた、表1に列挙された任意のLCVRアミノ酸配列と対になっている、表1に列挙された任意のHCVRアミノ酸配列を含むHCVR及びLCVRアミノ酸配列対(HCVR/LCVR)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある特定の実施形態によれば、本発明は、表1に列挙された、任意の例示的な抗HER2抗体内に含まれるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある特定の実施形態において、HCVR/LCVRアミノ酸配列対は、配列番号2/10(例えば、H4H135050P2)及び18/10(例えば、H4H13055P2)からなる群より選択される。
本発明はまた、表1に列挙された任意のHCDR1アミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む、重鎖CDR1(HCDR1)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
本発明はまた、表1に列挙された任意のHCDR2アミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む、重鎖CDR2(HCDR2)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
本発明はまた、表1に列挙された任意のHCDR3アミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む、重鎖CDR3(HCDR3)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
本発明はまた、表1に列挙された任意のLCDR1アミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む、軽鎖CDR1(LCDR1)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
本発明はまた、表1に列挙された任意のLCDR2アミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む、軽鎖CDR2(LCDR2)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
本発明はまた、表1に列挙された任意のLCDR3アミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む、軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
本発明はまた、表1に列挙された任意のLCDR3アミノ酸配列と対になっている、表1に列挙された任意のHCDR3アミノ酸配列を含むHCDR3及びLCDR3アミノ酸配列対(HCDR3/LCDR3)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある特定の実施形態によれば、本発明は、表1に列挙された任意の例示的な抗HER2抗体に含まれるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある特定の実施形態において、HCDR3/LCDR3アミノ酸配列対は、配列番号2/10(例えば、H4H135050P2)及び18/10(例えば、H4H13055P2)からなる群より選択される。
本発明はまた、表1に列挙された任意の例示的な抗HER2抗体内に含まれる6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある特定の実施形態において、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットは、配列番号4-6-8-12-14-16(例えば、H4H13050P2)及び20-22-24-12-14-16(例えば、H4H13055P2)からなる群より選択される。
関連する実施形態において、本発明は、表1に列挙された任意の例示的な抗HER2抗体によって定義されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対内に含まれる6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。例えば、本発明は、配列番号2/10(例えば、H4H135050P2)及び18/10(例えば、H4H13055P2)からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対内に含まれるHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットを含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。HCVR及びLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するための方法及び技術は、当該技術分野で周知であり、本明細書に開示される特定のHCVR及び/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するために使用され得る。CDRの境界を識別するために使用され得る例示的な規則としては、例えば、Kabat定義、Chothia定義、及びAbM定義が挙げられる。一般論として、Kabatの定義は、配列の変動性に基づいており、Chothiaの定義は、構造ループ領域の位置に基づいており、AbMの定義はKabat及びChothiaのアプローチ間の妥協点である。例えば、Kabat,“Sequences of Proteins of Immunological Interest”,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)、Al-Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273:927-948(1997)、及びMartin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9268-9272(1989)を参照のこと。抗体内のCDR配列を特定するための公開データベースも利用可能である。
本発明はまた、抗HER2抗体またはその一部をコードする核酸分子も提供する。例えば、本発明は、表1に列挙された任意のHCVRアミノ酸配列をコードする核酸分子を提供する。ある特定の実施形態において、この核酸分子は、表1に列挙された任意のHCVR核酸配列から選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。
本発明はまた、表1に列挙された任意のLCVRアミノ酸配列をコードする核酸分子を提供する。ある特定の実施形態において、この核酸分子は、表1に列挙された任意のLCVR核酸配列から選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。
本発明はまた、表1に列挙された任意のHCDR1アミノ酸配列をコードする核酸分子を提供する。ある特定の実施形態において、この核酸分子は、表1に列挙された任意のHCDR1核酸配列から選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。
本発明はまた、表1に列挙された任意のHCDR2アミノ酸配列をコードする核酸分子を提供する。ある特定の実施形態において、この核酸分子は、表1に列挙された任意のHCDR2核酸配列から選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。
本発明はまた、表1に列挙された任意のHCDR3アミノ酸配列をコードする核酸分子を提供する。ある特定の実施形態において、この核酸分子は、表1に列挙された任意のHCDR3核酸配列から選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。
本発明はまた、表1に列挙された任意のLCDR1アミノ酸配列をコードする核酸分子を提供する。ある特定の実施形態において、この核酸分子は、表1に列挙された任意のLCDR1核酸配列から選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。
本発明はまた、表1に列挙された任意のLCDR2アミノ酸配列をコードする核酸分子を提供する。ある特定の実施形態において、この核酸分子は、表1に列挙された任意のLCDR2核酸配列から選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。
本発明はまた、表1に列挙された任意のLCDR3アミノ酸配列をコードする核酸分子を提供する。ある特定の実施形態において、この核酸分子は、表1に列挙された任意のLCDR3核酸配列から選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。
本発明はまた、HCVRをコードする核酸分子を提供し、ここで、HCVRは、3つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3)を含み、ここで、このHCDR1-HCDR2-HCDR3アミノ酸配列セットは、表1に列挙されている任意の例示的な抗HER2抗体によって定義される。
本発明はまた、LCVRをコードする核酸分子を提供し、ここで、LCVRは、3つのCDRのセット(すなわち、LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含み、ここで、LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットは、表1に記載されている任意の例示的な抗HER2抗体によって定義される。
本発明はまた、HCVR及びLCVRの両方をコードする核酸分子を提供し、ここで、このHCVRは、表1に列挙された任意のHCVRアミノ酸配列のアミノ酸配列を含み、このLCVRは、表1に列挙された任意のLCVRアミノ酸配列のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、この核酸分子は、表1に列挙された任意のHCVR核酸配列から選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列、及び表1に列挙された任意のLCVR核酸配列から選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。本発明のこの態様によるある特定の実施形態において、この核酸分子は、HCVR及びLCVRをコードし、ここで、HCVR及びLCVRは、両方とも、表1に列挙された同じ抗HER2抗体に由来する。
本発明はまた、抗HER2抗体の重鎖または軽鎖可変領域を含むポリペプチドを発現し得る組換え発現ベクターを提供する。例えば、本発明は、上記の任意核酸分子、すなわち、表1に記載の任意のHCVR、LCVR、及び/またはCDR配列をコードする核酸分子を含む組換え発現ベクターを含む。本発明の範囲内にはまた、そのようなベクターが導入された宿主細胞、ならびに抗体または抗体フラグメントの産生を可能にする条件下で宿主細胞を培養すること、そのように産生された抗体及び抗体フラグメントを回収することによって抗体またはその一部を産生する方法も含まれる。
本発明は、改変されたグリコシル化パターンを有する抗HER2抗体を含む。いくつかの実施形態では、望ましくないグリコシル化部位を除去するための改変が有用であるか、またはオリゴ糖鎖上に存在するフコース部分を欠く抗体が、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能を増大させるために有用である場合がある(Shields et al.(2002)JBC 277:26733を参照のこと)。他の用途では、補体依存性細胞毒性(CDC)を改変するために、ガラクトシル化の改変を行ってもよい。
別の態様では、本発明は、HER2及び薬学的に許容される担体に特異的に結合する組換えヒト抗体またはそのフラグメントを含む医薬組成物を提供する。関連する態様において、本発明は、抗HER2抗体と第2の治療剤との組み合わせである組成物を特徴とする。一実施形態では、第2の治療剤は、抗HER2抗体と有利に組み合わされる任意の薬剤である。本発明の抗HER2抗体を含む追加の併用療法及び共製剤は、本明細書の他の場所に開示されている。
別の態様では、本発明は、本発明の抗HER2抗体を使用してHER2を発現する腫瘍細胞を標的化/殺滅するための治療方法を提供し、この治療方法は、治療有効量の本発明の抗HER2抗体を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象へ投与することを含む。場合によっては、この抗HER2抗体(またはその抗原結合フラグメント)は、乳癌の治療に使用してもよく、またはADCCを増大させるための改変Fcドメイン(例えば、Shield et al.(2002)JBC 277:26733を参照のこと)、放射免疫療法、抗体薬物コンジュゲート、または腫瘍切除の効率を高めるための他の方法を含むがこれに限定されない方法によって、より細胞毒性になるように改変してもよい。
本発明はまた、HER2発現細胞に関連するか、またはそれによって引き起こされる疾患または障害(例えば、がん)の治療のための薬剤の製造における本発明の抗HER2抗体の使用を含む。一態様では、本発明は、医薬で使用するための、本明細書に開示されるような、抗HER2抗体もしくは抗原結合フラグメント、または二重特異性抗HER2xAPLP2抗体を含む化合物に関する。一態様では、本発明は、医薬で使用するための、本明細書に開示されるような抗体薬物コンジュゲート(ADC)を含む化合物に関する。
さらに別の態様では、本発明は、例えば、画像化試薬などの診断用途のための単一特異性抗HER2抗体を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、抗APLP2抗体または本発明の抗体の抗原結合部分を使用して、リソソームへのHER2内部移行及び/またはリソソームによる分解を増強するための治療方法を提供し、この治療方法は、抗体を含む治療有効量の薬学的組成物を投与することを含む。
別の態様において、本発明は、表面プラズモン共鳴または同等のアッセイによって測定した場合、10nM未満のKDでHER2に結合する、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。別の態様において、本発明は、FACS分析または同等のアッセイによって測定した場合、50nM未満のEC50でHER2発現細胞に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。別の態様では、本発明は、HER2発現細胞のリソソームに結合して内部移行する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。いくつかの実施形態において、HER2発現細胞は、IHC2+分類を有する。
本発明はさらに、表1に記載のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と、ヒトHER2への結合について競合する抗体または抗原結合フラグメントを提供する。別の態様において、本発明は、配列番号2/10(例えば、H4H135050P2)及び18/10(例えば、H4H13055P2)からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と、ヒトHER2への結合について競合する抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
本発明はさらに、抗体または抗原結合フラグメントを提供し、ここで、抗体またはその抗原結合フラグメントは、表1に記載されるようなHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と同じ、ヒトHER2上のエピトープに結合する。別の態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号2/10(例えば、H4H135050P2)及び18/10(例えば、H4H13055P2)からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と同じ、ヒトHER2上のエピトープに結合する。
本発明はさらに、ヒトHER2に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、ここで、抗体または抗原結合フラグメントは、表1に記載されているアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)、及び表1に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)のCDRを含む。別の態様では、単離された抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号2/10(例えば、H4H135050P2)及び18/10(例えば、H4H13055P2)からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対の重鎖及び軽鎖のCDRを含む。さらに別の態様において、単離された抗体または抗原結合フラグメントは、それぞれ、配列番号4-6-8-12-14-16(例えば、H4H13050P2)及び20-22-24-12-14-16(例えば、H4H13055P2)からなる群より選択されるHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含む。別の態様では、本発明は、ヒトHER2に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、ここで、抗体または抗原結合フラグメントは、以下を含む:(a)配列番号4、6、8、20、22、24からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)、及び(b)配列番号12、14、16からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)。さらなる態様において、単離された抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号2/10(例えば、H4H135050P2)及び18/10(例えば、H4H13055P2)からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
別の態様によれば、本発明は、抗HER2抗体またはその抗原結合フラグメント及び治療剤(例えば、細胞毒性剤)を含む抗体薬物コンジュゲートを提供する。いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合フラグメント及び細胞毒性剤は、本明細書で考察されるように、リンカーを介して共有結合されている。様々な実施形態において、抗HER2抗体または抗原結合フラグメントは、本明細書に記載の抗HER2抗体またはフラグメントのいずれであってもよい。
別の態様において、本発明は、ヒトアミロイド前駆体様タンパク質2(APLP2)に結合する抗体及びその抗原結合フラグメントを提供し、これらの抗体及び抗原結合フラグメントは、APLP2に対して低い親和性を有する。本発明のこの態様による抗体は、とりわけ、標的及びAPLP2が同じ細胞、例えば腫瘍細胞によって発現される場合に、別の標的、例えば、HER2の内部移行及び/または分解を特異的に指示するために有用である。しかし、それらの低い親和性に起因して、そのような抗APLP2抗体は、それ自体で不活性のままであり、例えば、標的化アームによって結合された標的及びAPLP2の両方の細胞による発現がない、例えば、二重特異性抗体として、標的化アームとの会合がない場合に結合し得ない。したがって、本発明の一態様は、腫瘍関連抗原と腫瘍細胞上のAPLP2との結合力駆動型ペアリングに有効な二重特異性抗原結合分子を提供する。したがって、本発明のこの態様はまた、ヒトAPLP2及びヒト標的、例えば、HER2に結合する二重特異性抗体及びその抗原結合フラグメントも提供する。本発明のこの態様による二重特異性抗体は、とりわけ、例えば、APLP2の分解及び/またはリソソーム輸送または抗体が有益または望ましいものである状況下で、二重特異性抗体の内部移行を刺激する、APLP2及びHER2を発現する細胞、例えば、乳癌細胞を標的とするために有用である。例えば、二重特異性抗体は、二重特異性抗HER2xAPLP2抗体薬物コンジュゲート(ADC)を、薬物コンジュゲートの放出及び標的細胞毒性のために、乳房腫瘍細胞などの特定のHER2発現細胞のリソソームに向け得る。
本発明の例示的な抗APLP2抗体を表2に列挙する。表2は、重鎖可変領域(HCVR)及び軽鎖可変領域(LCVR)のアミノ酸及び核酸配列識別子、ならびに例示的な抗APLP2抗体の重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)、及び軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)も示す。
本発明は、表2に列挙された任意のHCVRアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含むHCVRを含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
本発明はまた、表2に列挙された任意のLCVRアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含むLCVRを含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
本発明はまた、表2に列挙された任意のLCVRアミノ酸配列と対になっている表2に列挙された任意のHCVRアミノ酸配列を含むHCVR及びLCVRアミノ酸配列対(HCVR/LCVR)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある特定の実施形態によれば、本発明は、表2に列挙された任意の例示的な抗APLP2抗体に含まれるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある特定の実施形態において、HCVR/LCVRアミノ酸配列対は、配列番号26/10(例えば、H4xH21362P2)、34/10(例えば、H4xH21387P2)、及び42/10(例えば、H4xH21371P2)からなる群より選択される。
本発明はまた、表2に列挙された任意のHCDR1アミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に同様の配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
本発明はまた、表2に列挙された任意のHCDR2アミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に同様の配列を含む重鎖CDR2(HCDR2)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
本発明はまた、表2に列挙された任意のHCDR3アミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、その実質的に同様の配列を含む重鎖CDR3(HCDR3)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
本発明はまた、表2に列挙された任意のLCDR1アミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む、軽鎖CDR1(LCDR1)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
本発明はまた、表2に列挙された任意のLCDR2アミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む、軽鎖CDR2(LCDR2)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
本発明はまた、表2に列挙された任意のLCDR3アミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む、軽鎖CDR3(LCDR3)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
本発明はまた、表2に列挙された任意のLCDR3アミノ酸配列と対になっている、表2に列挙された任意のHCDR3アミノ酸配列を含むHCDR3及びLCDR3アミノ酸配列対(HCDR3/LCDR3)を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある特定の実施形態によれば、本発明は、表2に記載されている任意の例示的な抗APLP2抗体に含まれるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある特定の実施形態において、HCDR3/LCDR3アミノ酸配列対は、配列番号26/10(例えば、H4xH21362P2)、34/10(例えば、H4xH21387P2)、及び42/10(例えば、H4xH21371P2)からなる群より選択される。
本発明はまた、表2に列挙されている任意の例示的な抗APLP2抗体内に含まれる6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む、抗体、またはその抗原結合フラグメントを提供する。ある特定の実施形態では、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットは、配列番号28-30-32-12-14-16(例えば、H4xH21362P2)、36-38-40-12-14-16(例えば、H4xH21387P2)、及び44-46-48-12-14-16(例えば、H4xH21371P2)からなる群より選択される。
関連する実施形態において、本発明は、表2に列挙されている任意の例示的な抗APLP2抗体内によって定義されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対内に含まれる6つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含む抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。例えば、本発明は、配列番号26/10(例えば、H4xH21362P2)、34/10(例えば、H4xH21387P2)、及び42/10(例えば、H4xH21371P2)からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対内に含まれる、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3アミノ酸配列セットを含む、抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。HCVR及びLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するための方法及び技術は、当該技術分野で周知であり、本明細書に開示される特定のHCVR及び/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するために使用してもよい。CDRの境界を識別するために使用し得る例示的な規則としては、例えば、Kabat定義、Chothia定義、及びAbM定義が挙げられる。一般論として、Kabatの定義は配列の変動性に基づいており、Chothiaの定義は構造ループ領域の位置に基づいており、AbMの定義は、KabatとChothiaのアプローチ間の妥協点である。例えば、Kabat、“Sequences of Proteins of Immunological Interest”,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)、Al-Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273:927-948(1997)、及びMartin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9268-9272(1989)を参照のこと。抗体内のCDR配列を特定するための公開データベースも利用可能である。
本発明はまた、抗APLP2抗体またはその一部をコードする核酸分子を提供する。例えば、本発明は、表2に列挙された任意のHCVRアミノ酸配列をコードする核酸分子を提供する。ある特定の実施形態において、この核酸分子は、表2に列挙された任意のHCVR核酸配列から選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。
本発明はまた、表2に列挙された任意のLCVRアミノ酸配列をコードする核酸分子を提供する。ある特定の実施形態において、この核酸分子は、表2に列挙された任意のLCVR核酸配列から選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。
本発明はまた、表2に列挙された任意のHCDR1アミノ酸配列をコードする核酸分子を提供する。ある特定の実施形態において、この核酸分子は、表2に列挙された任意のHCDR1核酸配列から選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。
本発明はまた、表2に列挙された任意のHCDR2アミノ酸配列をコードする核酸分子を提供する。ある特定の実施形態において、この核酸分子は、表2に列挙された任意のHCDR2核酸配列から選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。
本発明はまた、表2に列挙された任意のHCDR3アミノ酸配列をコードする核酸分子を提供する。ある特定の実施形態において、この核酸分子は、表2に列挙された任意のHCDR3核酸配列から選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。
本発明はまた、表2に列挙された任意のLCDR1アミノ酸配列をコードする核酸分子を提供する。ある特定の実施形態において、この核酸分子は、表2に列挙された任意のHCDR1核酸配列から選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。
本発明はまた、表2に列挙された任意のLCDR2アミノ酸配列をコードする核酸分子を提供する。ある特定の実施形態において、この核酸分子は、表2に列挙された任意のLCDR2核酸配列から選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。
本発明はまた、表2に列挙された任意のLCDR3アミノ酸配列をコードする核酸分子を提供する。ある特定の実施形態において、この核酸分子は、表2に列挙された任意のLCDR3核酸配列から選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。
本発明はまた、HCVRをコードする核酸分子を提供し、ここで、このHCVRは、3つのCDRのセット(すなわち、HCDR1-HCDR2-HCDR3)を含み、ここで、HCDR1-HCDR2-HCDR3アミノ酸配列セットは、表2に列挙された任意の例示的な抗APLP2抗体によって定義される。
本発明はまた、LCVRをコードする核酸分子を提供し、ここで、LCVRは、3つのCDRのセット(すなわち、LCDR1-LCDR2-LCDR3)を含み、ここで、LCDR1-LCDR2-LCDR3のアミノ酸配列セットは、表2に列挙された任意の例示的な抗APLP2抗体によって定義される。
本発明はまた、HCVR及びLCVRの両方をコードする核酸分子を提供し、ここで、HCVRは、表2に列挙された任意のHCVRアミノ酸配列のアミノ酸配列を含み、LCVRは、表2に列挙された任意のLCVRアミノ酸配列のアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態において、この核酸分子は、表2に列挙された任意のHCVR核酸配列から選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列、及び表2に列挙された任意のLCVR核酸配列から選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれに対して少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。本発明のこの態様によるある特定の実施形態において、この核酸分子は、HCVR及びLCVRをコードし、ここで、HCVR及びLCVRは、両方とも、表2に列挙された同じ抗APLP2抗体に由来する。
本発明はまた、抗APLP2抗体の重鎖または軽鎖可変領域を含むポリペプチドを発現し得る組換え発現ベクターを提供する。例えば、本発明は、上記の任意核酸分子、すなわち、表2に記載の任意のHCVR、LCVR、及び/またはCDR配列をコードする核酸分子を含む組換え発現ベクターを含む。本発明の範囲内にはまた、そのようなベクターが導入された宿主細胞、ならびに抗体または抗体フラグメントの産生を可能にする条件下で宿主細胞を培養することによって抗体またはその一部を産生し、そのように生成された抗体及び抗体フラグメントを回収する方法も含まれる。
本発明は、改変されたグリコシル化パターンを有する抗APLP2抗体を含む。いくつかの実施形態では、望ましくないグリコシル化部位を除去するための改変が有用である場合もあるし、またはオリゴ糖鎖上に存在するフコース部分を欠く抗体が、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能を増大させるために有用である場合もある(Shield et al.(2002)JBC 277:26733を参照のこと)。他の用途では、補体依存性細胞毒性(CDC)を改変するために、ガラクトシル化の改変を行ってもよい。
別の態様では、本発明は、APLP2及び薬学的に許容される担体に特異的に結合する組換えヒト抗体またはそのフラグメントを含む薬学的組成物を提供する。関連する態様では、本発明は、抗APLP2抗体と第2の治療剤との組み合わせである組成物を特徴とする。一実施形態では、第2の治療剤とは、抗APLP2抗体と有利に組み合わされる任意の薬剤である。本発明の抗APLP2抗体を含む追加の併用療法及び共製剤は、本明細書の他のいずれかの場所に開示されている。
別の態様では、本発明は、本発明の抗APLP2抗体を使用してAPLP2を発現する腫瘍細胞を標的化/殺滅するための治療方法を提供し、この治療方法は、治療有効量の、本発明の抗APLP2抗体を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象へ投与することを含む。場合によっては、抗APLP2抗体(またはその抗原結合フラグメント)を乳癌の治療に使用してもよく、またはADCCを増大させるための改変Fcドメイン(例えば、Shield et al.(2002)JBC 277:26733を参照のこと)、放射免疫療法、抗体薬物コンジュゲート、または腫瘍切除の効率を高めるための他の方法、を含むがこれに限定されない方法によってより細胞毒性になるように改変してもよい。
本発明はまた、APLP2発現細胞に関連するかまたはそれによって引き起こされる疾患または障害(例えば、がん)の治療のための医薬の製造における本発明の抗APLP2抗体の使用を含む。一態様では、本発明は、医薬で使用するための、本明細書に開示されるような抗APLP2抗体もしくは抗原結合フラグメント、または二重特異性抗APLP2xAPLP2抗体を含む化合物に関する。一態様では、本発明は、医薬で使用するための、本明細書に開示されるような抗体薬物コンジュゲート(ADC)を含む化合物に関する。
さらに別の態様では、本発明は、例えば、画像化試薬などの診断用途のための単一特異性抗APLP2抗体を提供する。
さらに別の態様では、本発明は、抗APLP2抗体または本発明の抗体の抗原結合部分を使用して、リソソームへのAPLP2内部移行及び/またはリソソームによる分解を増強するための治療方法を提供し、この治療方法は、抗体を含む治療有効量の薬学的組成物を投与することを含む。
別の態様において、本発明は、表面プラズモン共鳴または同等のアッセイによって測定した場合、100nMを超えるKDでAPLP2発現細胞に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。別の態様において、本発明は、FACS分析によって測定した場合、100nMを超えるEC50でAPLP2発現細胞に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。別の態様では、本発明は、抗体が同じ細胞上で発現されるHER2にも結合する場合に、APLP2発現細胞のリソソームに結合し、そこに内部移行される、抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
本発明はさらに、表2に記載のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体とヒトAPLP2への結合について競合する抗体または抗原結合フラグメントを提供する。別の態様において、本発明は、配列番号26/10(例えば、H4xH21362P2)、34/10(例えば、H4xH21387P2)及び42/10(例えば、H4xH21371P2)からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体とヒトAPLP2への結合について競合する抗体または抗原結合フラグメントを提供する。
本発明はさらに、抗体または抗原結合フラグメントを提供し、ここで、この抗体またはその抗原結合フラグメントは、表2に記載されるようなHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と同じ、ヒトAPLP2上のエピトープに結合する。別の態様では、抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号26/10(例えば、H4xH21362P2)、34/10(例えば、H4xH21387P2)、及び42/10(例えば、H4xH21371P2)からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と同じ、ヒトAPLP2上のエピトープに結合する。
本発明はさらに、ヒトAPLP2に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、ここで、この抗体または抗原結合フラグメントは、以下を含む:表2に記載されているアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)、及び表2に記載されているアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)のCDR。別の態様では、この単離された抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号26/10(例えば、H4xH21362P2)、34/10(例えば、H4xH21387P2)、及び42/10(例えば、H4xH21371P2)からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対の重鎖及び軽鎖のCDRを含む。さらに別の態様では、この単離された抗体または抗原結合フラグメントは、それぞれ、配列番号28-30-32-12-14-16(例えば、H4xH21362P2)、36-38-40-12-14-16(H4xH21387P2)及び44-46-48-12-14-16(例えば、H4xH21371P2)からなる群より選択されるHCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含む。別の態様において、本発明は、ヒトAPLP2に結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントを提供し、ここで、この抗体または抗原結合フラグメントは、以下を含む:(a)配列番号28、30、32、36、38、40、44、46、及び48からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)、ならびに(b)配列番号12、14、16からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)。さらなる態様において、この単離された抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号26/10(例えば、H4xH21362P2)、34/10(例えば、H4xH21387P2)、及び42/10(例えば、H4xH21371P2)からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む。
別の態様によれば、本発明は、抗APLP2抗体またはその抗原結合フラグメント及び治療剤(例えば、細胞毒性剤)を含む抗体薬物コンジュゲートを提供する。いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合フラグメント及び細胞毒性剤は、本明細書での考察どおり、リンカーを介して共有結合されている。様々な実施形態において、抗APLP2抗体または抗原結合フラグメントは、本明細書に記載の抗APLP2抗体またはフラグメントのいずれであってもよい。
別の態様によれば、本発明は、HER2及びAPLP2に結合する二重特異性抗原結合分子(例えば、抗体)を提供する。このような二重特異性抗原結合分子はまた、本明細書では「抗HER2xAPLP2結合タンパク質」、「抗HER2/抗APLP2二重特異性分子」、「抗APLP2/抗HER2二重特異性分子」、または「HER2xAPLP2 bsAb」とも呼ばれる。抗HER2/抗APLP2二重特異性分子の抗HER2部分は、HER2(例えば、乳房腫瘍)を発現する細胞(例えば、腫瘍細胞)を標的化するのに有用であり、二重特異性分子の抗APLP2部分は、結合したHER2分子の内部移行及び/または分解に有用であり、これにより、該当する場合、この薬物コンジュゲートが放出され得る。腫瘍細胞、例えば乳癌細胞へのHER2及びAPLP2の同時結合は、抗HER2xAPLP2結合分子の内部移行を促進し、薬物とコンジュゲートすると、薬物による標的腫瘍細胞の細胞毒性を媒介し得る薬物である。したがって、本発明の抗HER2/抗APLP2二重特異性分子は、とりわけ、HER2発現腫瘍(例えば、乳癌)に関連するかまたはそれによって引き起こされる疾患及び障害を治療するために有用である。
本発明のこの態様による二重特異性抗原結合分子は、ヒトAPLP2に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン、及びHER2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む。本発明は、抗HER2/抗APLP2二重特異性分子(例えば、二重特異性抗体、二重特異性結合分子など)を含み、各抗原結合ドメインは、軽鎖可変領域(LCVR)と対になった重鎖可変領域(HCVR)を含む。本発明のある特定の例示的な実施形態では、抗APLP2抗原結合ドメイン及び抗HER2抗原結合ドメインはそれぞれ、共通のLCVRと対になっている異なる別個のHCVRを含む。例えば、本明細書の実施例2に示されるように、二重特異性抗体は、APLP2に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン(この第1の抗原結合ドメインは、抗APLP2抗体に由来するLCVR(例えば、抗HER2抗原結合ドメインに含まれるのと同じLCVR)と対になった抗APLP2抗体由来のHCVRを含む)、及びHER2抗体に特異的に結合する第2の抗原結合ドメイン(この第2の抗原結合ドメインは、抗HER2抗体に由来するHCVR/LCVRを含む)を含んで構築された。言い換えれば、本明細書に開示される例示的な分子において、抗APLP2抗体由来のHCVRと抗HER2抗体由来のLCVRとの対形成は、APLP2に特異的に結合する(しかしHER2には結合しない)抗原結合ドメインを作成する。そのような実施形態では、第1及び第2の抗原結合ドメインは、別個の抗APLP2及び抗HER2 HCVRを含むが、共通のLCVRを共有する。このLCVRのアミノ酸配列は、例えば、配列番号10に示され、対応するCDR(すなわち、LCDR1-LCDR2-LCDR3)のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号12-14-16に示されている。遺伝子改変マウスを使用して、2つの異なるヒト軽鎖可変領域遺伝子セグメントの1つに由来する可変ドメインを含む同一の軽鎖と会合する2つの異なる重鎖を含む完全ヒト二重特異性抗原結合分子を産生し得る。あるいは、可変重鎖を1つの一般的な軽鎖と対にして、宿主細胞での組換え発現を介して産生してもよい。したがって、本発明の抗体は、単一の再配列された軽鎖に関連する免疫グロブリン重鎖を含み得る。いくつかの実施形態において、この軽鎖は、ヒトVκ1-39遺伝子セグメントまたはVκ3-20遺伝子セグメントに由来する可変ドメインを含む。他の実施形態では、この軽鎖は、ヒトJκ5またはヒトJκ1遺伝子セグメントと再配列されたヒトVκ1-39遺伝子セグメントに由来する可変ドメインを含む。
本発明は、抗APLP2/抗HER2二重特異性分子を提供し、ここでAPLP2に特異的に結合するこの第1の抗原結合ドメインは、任意のHCVRアミノ酸配列、任意のLCVRアミノ酸配列、任意のHCVR/LCVRアミノ酸配列対、任意の重鎖CDR1-CDR2-CDR3アミノ酸配列、または表2に示す任意の軽鎖CDR1-CDR2-CDR3アミノ酸配列を含む。
さらに、本発明は、抗APLP2/抗HER2二重特異性分子を提供し、APLP2に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、本明細書の表2及び3に記載されるような任意のHCVRアミノ酸配列を含む。APLP2に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインはまた、本明細書の表2に記載されるような任意のLCVRアミノ酸配列を含み得る。ある特定の実施形態によれば、APLP2に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、本明細書の表2に記載されるようなHCVR/LCVRアミノ酸配列対のいずれかを含む。本発明はまた、抗APLP2/抗HER2二重特異性分子を提供し、APLP2に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、本明細書の表2に記載の重鎖CDR1-CDR2-CDR3アミノ酸配列のいずれか、及び/または本明細書の表1に記載の軽鎖CDR1-CDR2-CDR3アミノ酸配列のいずれかを含む。
ある特定の実施形態によれば、本発明は、抗APLP2/抗HER2二重特異性分子を提供し、APLP2に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、本明細書の表2において記載されたアミノ酸配列を有する重鎖可変領域(HCVR)、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。
本発明はまた、抗APLP2/抗HER2二重特異性分子を提供し、ここでAPLP2に特異的に結合するこの第1の抗原結合ドメインは、本明細書の表1、2、及び3に示されるようなアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。
本発明はまた、抗APLP2/抗HER2二重特異性分子を提供し、ここでAPLP2に特異的に結合するこの第1の抗原結合ドメインは、本明細書の表1、2、及び3に示されるようなHCVR及びLCVR(HCVR/LCVR)アミノ酸配列対を含む。
本発明はまた、抗APLP2/抗HER2二重特異性分子を提供し、ここでAPLP2に特異的に結合するこの第1の抗原結合ドメインは、本明細書の表2に記載のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3(HCDR3)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するそれに実質的に同様の配列、ならびに本明細書の表1、2、及び3に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3(LCDR3)ドメイン、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を含む。
ある特定の実施形態において、APLP2に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、本明細書の表2及び3に記載されるようなHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む。
本発明はまた、抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子を提供し、ここでAPLP2に特異的に結合するこの第1の抗原結合ドメインは、本明細書の表2及び3に記載されるようなアミノ酸、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する重鎖CDR1(HCDR1)ドメイン、表2及び3に記載のアミノ酸、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する重鎖CDR2(HCDR2)ドメイン、2及び3に記載のアミノ酸、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する重鎖CDR3(HCDR3)ドメイン、本明細書の表1、2、及び3に記載のアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する軽鎖CDR1(LCDR1)ドメイン、本明細書の表1、2、及び3に記載のアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する軽鎖CDR2(LCDR2)ドメイン、ならびに表1、2、及び3に記載のアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する軽鎖CDR3(LCDR3)ドメインを含む。
本発明のある特定の非限定的で例示的な抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子は、それぞれ、本明細書の表2及び3に記載のアミノ酸配列を有する、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含むAPLP2に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインを含む。
本発明はさらに、二重特異性抗原結合分子を提供し、ここでヒトAPLP2に特異的に結合するこの第1の抗原結合ドメインは、表2及び表3に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)由来の重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)、ならびに表1、表2及び/または表3に記載のアミノ酸配列を含む共通軽鎖可変領域(LCVR)由来の軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)を含む。
別の態様において、本発明は、二重特異性抗原結合分子を提供し、ヒトAPLP2に特異的に結合するこの第1の抗原結合ドメインは、配列番号26、34、及び42からなる群より選択される重鎖可変領域(HCVR)由来の重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)、ならびに配列番号10からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域(LCVR)由来の軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)を含む。
本発明はさらに、ヒトAPLP2に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、3つの重鎖相補性決定領域(A1-HCDR1、A1-HCDR2及びA1-HCDR3)及び3つの軽鎖相補性決定領域(A1-LCDR1、A1-LCDR2及びA1-LCDR3)を含む、二重特異性抗原結合分子を提供し、ここで、A1-HCDR1は、配列番号28、36、及び44からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、A1-HCDR2は、配列番号30、38、及び46からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、A1-HCDR3は、配列番号32、40、及び48からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、A1-LCDR1は配列番号12のアミノ酸配列を含み、A1-LCDR2は、配列番号14のアミノ酸配列を含み、A1-LCDR3は、配列番号16のアミノ酸配列を含む。
さらなる態様において、本発明は、二重特異性抗原結合分子を提供し、ここで、ヒトAPLP2に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、配列番号26/10、34/10、及び42/10からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対の重鎖及び軽鎖CDRを含む。
別の態様において、本発明は、二重特異性抗原結合分子を提供し、ここで、ヒトAPLP2に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(A1-HCDR1、A1-HCDR2及びA1-HCDR3)及び3つの軽鎖相補性決定領域(A1-LCDR1、A1-LCDR2及びA1-LCDR3)を含み、ここでヒトHER2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(A2-HCDR1、A2-HCDR2及びA2-HCDR3)及び3つの軽鎖相補性決定領域(A2-LCDR1、A2-LCDR2及びA2-LCDR3))を含む。ここで、A1-HCDR1は、配列番号28、36、及び44からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。A1-HCDR2は、配列番号30、38、及び46からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。A1-HCDR3は、配列番号32、40、及び48からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。A1-LCDR1は、配列番号12のアミノ酸配列を含む。A1-LCDR2は、配列番号14のアミノ酸配列を含む。及びA1-LCDR3は、配列番号16のアミノ酸配列を含む。及びここで、A2-HCDR1は、配列番号4及び20からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。A2-HCDR2は、配列番号6及び22からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。A2-HCDR3は、配列番号8及び24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。A2-LCDR1は配列番号12のアミノ酸配列を含む。A2-LCDR2は、配列番号14のアミノ酸配列を含む。及びA2-LCDR3は配列番号16のアミノ酸配列を含む。
より多くの実施形態において、本発明の例示的な抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子は、ヒトAPLP2に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、配列番号28-30-32、36-38-40、及び44-46-48からなる群より選択されるアミノ酸配列を有するHCDR1-HCDR2-HCDR3を含むHCVRを含む二重特異性抗原結合分子を含む。
本発明はまた、抗APLP2/抗HER2二重特異性分子を提供し、ここで、HER2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号2及び18からなる群より選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する重鎖可変領域(HCVR)を含む。
本発明はまた、抗APLP2/抗HER2二重特異性分子を提供し、ここで、HER2に特異的に結合するこの第2の抗原結合ドメインは、配列番号10からなる群より選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する軽鎖可変領域(LCVR)を含む。
本発明はまた、抗APLP2/抗HER2二重特異性分子を提供し、ここで、HER2に特異的に結合するこの第2の抗原結合ドメインは、配列番号2/10及び18/10からなる群より選択されるHCVR及びLCVR(HCVR/LCVR)アミノ酸配列対を含む。
本発明はまた、抗APLP2/抗HER2二重特異性分子を提供し、ここで、HER2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号20のアミノ酸配列または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それに対して実質的に同様の配列を有する重鎖CDR3(HCDR3)ドメイン、及び配列番号12のアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する軽鎖CDR3(LCDR3)ドメインを含む。
ある特定の実施形態において、HER2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号18/10からなる群より選択されるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列対を含む。
本発明はまた、抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子を提供し、ここで、HER2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号4及び20からなる群より選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する重鎖CDR1(HCDR1)ドメイン、配列番号6及び22からなる群より選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する重鎖CDR2(HCDR2)ドメイン、配列番号8及び24からなる群より選択されるアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する重鎖CDR3(HCDR3)ドメイン、配列番号12のアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する軽鎖CDR1(LCDR1)ドメイン、ならびに配列番号14のアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する軽鎖CDR2(LCDR2)ドメイン、ならびに配列番号16のアミノ酸配列、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有するその実質的に同様の配列を有する軽鎖CDR3(LCDR3)ドメインを含む。
本発明のある特定の非限定的で例示的な抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子は、それぞれ、配列番号20-22-24-12-14-16からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する、HCDR1-HCDR2-HCDR3-LCDR1-LCDR2-LCDR3ドメインを含むHER2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む。
関連する実施形態において、本発明は、抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子を含み、HER2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインは、配列番号18/10からなる群より選択される重鎖及び軽鎖可変領域(HCVR/LCVR)配列内に含まれる重鎖及び軽鎖CDRドメインを含む。
別の態様において、本発明は、ヒトAPLP2に結合する第1の抗原結合ドメイン及びヒトHER2に結合する第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子を提供し、この第2の抗原結合ドメインは、本発明の抗HER2抗体のいずれか1つの抗体または抗原結合フラグメント由来である。さらなる態様において、本発明は、ヒトAPLP2に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン、及びヒトHER2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子を提供する。
本発明はさらに、ヒトAPLP2を発現するヒト細胞及び/またはカニクイザルAPLP2を発現するカニクイザル細胞に結合する二重特異性抗原結合分子を提供する。別の態様では、この二重特異性抗原結合分子は、ヒトHER2を発現するヒト細胞及び/またはカニクイザルHER2を発現するカニクイザル細胞に結合する。
別の態様において、本発明は、ヒト乳癌異種移植片を有する免疫無防備状態のマウスにおける腫瘍増殖を阻害する二重特異性抗原結合分子を提供する。
ある特定の実施形態において、本発明の抗APLP2抗体、その抗原結合フラグメント及びその二重特異性抗体は、生殖系列配列と親抗体配列との間の差異に基づいて段階的に親のアミノ酸残基を置換することによって作製された。したがって、抗APLP2抗体は、CDRのアミノ酸残基を置換して、APLP2への親和性結合をさらに低くすることによって改変してもよい。
いくつかの実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子を提供し、この第2の抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(A2-HCDR1、A2-HCDR2及びA2-HCDR3)及び3つの軽鎖相補性決定領域(A2-LCDR1、A2-LCDR2及びA2-LCDR3)を含む参照抗原結合タンパク質と、ヒトHER2への結合について競合し、ここで、A2-HCDR1は、配列番号20からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。A2-HCDR2は、配列番号22のアミノ酸配列を含む。A2-HCDR3は、配列番号24のアミノ酸配列を含む。A2-LCDR1は、配列番号12のアミノ酸配列を含む。A2-LCDR2は、配列番号14のアミノ酸配列を含む。及び、A2-LCDR3は、配列番号16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子を提供し、この第2の抗原結合ドメインは、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)、及び配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む参照抗原結合タンパク質と、ヒトHER2への結合について競合する。
いくつかの実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子を提供し、ここで、この第1の抗原結合ドメインは、3つの重鎖相補性決定領域(A1-HCDR1、A1-HCDR2及びA1-HCDR3)及び3つの軽鎖相補性決定領域(A1-LCDR1、A1-LCDR2及びA1-LCDR3)を含む参照抗原結合タンパク質と、ヒトAPLP2への結合について競合し、ここで、A1-HCDR1は、配列番号28、36、及び44からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。A1-HCDR2は、配列番号30、38、及び46からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。A1-HCDR3は、配列番号32、40及び48からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。A1-LCDR1は、配列番号12のアミノ酸配列を含む。A1-LCDR2は、配列番号14のアミノ酸配列を含む。及び、A1-LCDR3は、配列番号16のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子を提供し、ここで、第1の抗原結合ドメインは、ヒトAPLP2への結合について、配列番号26、34、及び42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)、及び配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む参照抗原結合タンパク質と競合する。
いくつかの実施形態において、本発明は、二重特異性抗原結合分子を提供し、ここで、第1の抗原結合ドメインは、配列番号26、34、及び42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)、ならびに配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む参照抗原結合タンパク質と、ヒトAPLP2への結合について競合する、及びここで、この第2の抗原結合ドメインは、配列番号2及び18からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)、及び配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む参照抗原結合タンパク質と、ヒトHER2への結合について競合する。
一態様では、本発明は、抗HER2抗原結合分子または抗HER2/抗APLP2二重特異性抗原結合分子、及び薬学的に許容される担体または希釈剤を含む薬学的組成物を提供する。本発明はさらに、対象におけるがんを治療するための方法を提供し、この方法は、抗HER2抗原結合分子または抗HER2/抗APLP2二重特異性抗原結合分子、及び薬学的に許容される担体または希釈剤を含む薬学的組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、このがんとは、前立腺癌、膀胱癌、子宮頸癌、肺癌、結腸癌、腎臓癌、乳癌、膵臓癌、胃癌、子宮癌、及び卵巣癌からなる群より選択される。場合によっては、このがんは乳癌である。場合によっては、この乳癌はIHC2+乳癌である。
別の態様において、本発明は、本明細書に開示される抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子のHCVR、LCVRまたはCDR配列のいずれかをコードする核酸分子(本明細書の表1及び2に記載のポリヌクレオチド配列を含む核酸分子を含む)、ならびに表3に見られる組み合わせなどの、その任意の機能的組み合わせまたは配置で表1及び2に記載の2つ以上のポリヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。本発明の核酸を保有する組換え発現ベクター、及びそのようなベクターが導入された宿主細胞もまた、抗体の産生を可能にし、産生された抗体を回収する条件下で宿主細胞を培養することによって抗体を産生する方法と同様に、本発明に含まれる。
本発明は、APLP2に特異的に結合する任意の前述の抗原結合ドメインが、HER2に特異的に結合する任意の前述の抗原結合ドメインと組み合わされるか、接続されるか、さもなければ会合されて、APLP2及びHER2に結合する二重特異性抗原結合分子を形成する、抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子を含む。
本発明は、改変されたグリコシル化パターンを有する抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子を含む。いくつかの用途では、望ましくないグリコシル化部位を除去するための改変が有用である場合もあるし、またはオリゴ糖鎖に存在するフコース部分を欠く抗体は、例えば、抗体依存性細胞傷害(ADCC)機能を増大させるために有用である場合もある(Shield et al.(2002)JBC 277:26733を参照のこと)。他の用途では、補体依存性細胞毒性(CDC)を改変するために、ガラクトシル化の改変を行ってもよい。
別の態様によれば、本発明は、抗HER2xAPLP2抗体またはその抗原結合フラグメント及び治療剤(例えば、細胞毒性剤)を含む抗体薬物コンジュゲートを提供する。いくつかの実施形態では、抗体または抗原結合フラグメント及び細胞毒性剤は、本明細書で考察されるように、リンカーを介して共有結合されている。様々な実施形態において、抗HER2xAPLP2抗体または抗原結合フラグメントは、本明細書に記載の抗HER2xAPLP2抗体またはフラグメントのいずれであってもよい。
いくつかの実施形態において、この細胞毒性剤は、オーリスタチン、メイタンシノイド、ツブリシン、トマイマイシン、カリケアマイシン、またはドラスタチン誘導体から選択される。場合によっては、細胞毒性剤は、MMAEもしくはMMAFから選択されたオーリスタチン、またはDM1もしくはDM4から選択されたメイタンシノイドである。いくつかの実施形態では、細胞毒性剤は、本明細書で考察されるように、式の構造を有するメイタンシノイドである。
いくつかの実施形態において、この細胞毒性剤は、以下の構造:
を有するメイタンシノイドである。
いくつかの実施形態において、この細胞毒性剤は、以下の構造:
を有するメイタンシノイドである。
いくつかの実施形態において、この抗体薬物コンジュゲートは、抗HER2x抗APLP2抗原結合タンパク質もしくは抗HER2抗体、またはそのフラグメント、及び
を含み、
ここで、
は、抗体またはそのフラグメントに対する結合である。
いくつかの実施形態において、この抗体薬物コンジュゲートは、抗HER2x抗APLP2抗原結合タンパク質もしくは抗HER2抗体、またはそのフラグメント、及び
を含み、
ここで、
は、抗体またはそのフラグメントに対する結合である。
いくつかの実施形態において、この抗体薬物コンジュゲートは、抗HER2x抗APLP2抗原結合タンパク質または抗HER2抗体もしくはそのフラグメント、及び
その混合物を含み、
ここで、
は、抗体またはそのフラグメントに対する結合である。
いくつかの実施形態において、この結合は、システイン残基の硫黄成分を介して抗体またはそのフラグメントと接触する。
いくつかの実施形態において、この結合は、リジン残基の窒素成分を介して抗体またはそのフラグメントと接触する。
上記または本明細書で考察される抗体薬物コンジュゲートの様々な実施形態のいずれにおいても、抗体薬物コンジュゲートは、抗HER2×抗APLP2抗原結合タンパク質、または抗HER2抗体もしくはそのフラグメント1つあたり1~10の細胞毒性剤を含み得る。
別の態様では、本発明は、本明細書に開示されるような抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子及び薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。関連する態様では、本発明は、抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子と第2の治療剤との組み合わせである組成物を特徴とする。一実施形態では、第2の治療剤は、抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子と有利に組み合わされる任意の薬剤である。抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子と有利に組み合わされ得る例示的な薬剤は、本明細書の他のいずれかに詳細に考察されている。
さらに別の態様において、本発明は、本発明の抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子を使用して、HER2を発現する腫瘍細胞を標的化/殺滅するための治療方法を提供し、この治療方法は、治療有効量の本発明の抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子を含む薬学的組成物を、それを必要とする対象に対して投与することを含む。
本発明はまた、HER2発現細胞に関連するかまたはそれによって引き起こされる疾患または障害の治療のための薬剤の製造における本発明の抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子の使用を含む。
他の実施形態は、次の詳細な説明の検討から明らかになるであろう。
本明細書で提供されるのは、二重特異性抗HER2xAPLP2抗体が、HER2の内部移行、リソソーム輸送、及び分解を増大させたことの実証である。さらに、二重特異性抗HER2xAPLP2抗体薬物コンジュゲート(ADC)は、インビトロ及びインビボでT-DM1よりも有意に強力であった。さらに、APLP2アームの親和性が低く、そのため、二重特異性抗HER2xAPLP-ADCは、HER2発現を欠くか、または最小限のHER2発現である細胞の最小限の内部移行及び細胞毒性を示す。APLP2は、ほとんどの乳癌細胞株、PDXモデル、及び試験された患者試料で発現していることがわかり(データは示していない)、二重特異性抗HER2xAPLP2-ADCが、IHC2+と見なされる患者を含み、幅広いHER2陽性乳癌患者に利益をもたらす可能性があることが示唆されている。
本発明を詳細に説明する前に、本発明は、記載された特定の方法及び実験条件に限定されず、したがって、そのような方法及び条件は変動し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することを目的とするに過ぎず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定することを意図しないことも理解されたい。
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。「約」という用語は、特定の列挙された数値に関して使用される場合、その値が列挙された値から1%未満変化し得ることを意味する。例えば、「約100」という表現には、99と101、及びその間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4など)が含まれる。
本明細書に記載されたものと類似または同等の任意の方法及び材料を本発明の実施または試験に使用し得るが、好ましい方法及び材料をここで説明する。本明細書に記載されている全ての特許、出願、及び非特許刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
定義
「APLP2」という表現には、ヒトにおいてAPLP2遺伝子によってコードされ、配列番号50として示されるアミノ酸配列を有するタンパク質を含む。APLP2は遍在的に発現され、グルコース及びインスリン恒常性の重要なモジュレーターである。本明細書におけるタンパク質、ポリペプチド、及びタンパク質フラグメントへの全ての言及は、非ヒト種に由来するものとして明示的に指定されない限り、それぞれのタンパク質、ポリペプチド、またはタンパク質フラグメントのヒトバージョンを指すものとする。したがって、「APLP2」という表現は、例えば「マウスAPLP2」、「サルAPLP2」などの非ヒト種に由来するものとして指定されない限り、ヒトAPLP2を意味する。
「APLP2に結合する抗体」または「抗APLP2抗体」という句は、単一のAPLP2サブユニット(例えば、イプシロン、デルタ、ガンマまたはゼータ)を特異的に認識する抗体及びその抗原結合フラグメント、ならびに2つのAPLP2サブユニットの二量体複合体(例えば、ガンマ/イプシロン、デルタ/イプシロン、及びゼータ/ゼータAPLP2二量体)を特異的に認識する抗体及びその抗原結合フラグメントを含む。本発明の抗体及び抗原結合フラグメントは、可溶性APLP2及び/または細胞表面に発現されたAPLP2に結合し得る。可溶性APLP2には、天然のAPLP2タンパク質と、膜貫通ドメインを欠いているか、そうでなければ細胞膜と結合していない組換えAPLP2タンパク質バリアント(例えば、単量体及び二量体APLP2構築物など)が含まれる。
「細胞表面発現APLP2」という表現は、APLP2タンパク質の少なくとも一部が細胞膜の細胞外側に露出され、抗体の抗原結合部分にアクセス可能であるように、インビトロまたはインビボで細胞の表面に発現される、1つ以上のAPLP2タンパク質(複数可)を指す。「細胞表面発現APLP2」は、細胞膜の機能的T細胞受容体の文脈内に含まれるAPLP2タンパク質を含む。「細胞表面発現APLP2」という表現は、細胞の表面上のホモ二量体またはヘテロ二量体の一部として発現されるAPLP2タンパク質(例えば、ガンマ/イプシロン、デルタ/イプシロン、及びゼータ/ゼータAPLP2二量体)を含む。「細胞表面発現APLP2」という表現はまた、他のAPLP2鎖タイプなしで、細胞の表面上でそれ自体によって発現されるAPLP2鎖(例えば、APLP2-イプシロン、APLP2-デルタまたはAPLP2-ガンマ)を含む。「細胞表面発現APLP2」は、通常APLP2タンパク質を発現する細胞の表面に発現されるAPLP2タンパク質を含んでもよいし、またはそれからなってもよい。あるいは、「細胞表面発現APLP2」は、通常はその表面にヒトAPLP2を発現しないが、その表面にAPLP2を発現するように人工的に操作された細胞の表面に発現されるAPLP2タンパク質を含んでもよいし、またはそれからなってもよい。
「HER2」または「ヒト上皮成長因子受容体2」という表現は、ヒト上皮成長因子受容体ファミリーのメンバーを指す。このがん遺伝子の増幅または過剰発現は、特定の悪性のタイプの乳癌の発症及び進行に重要な役割を果たすことが示されている。近年、このタンパク質は、乳癌患者の約30%にとって重要なバイオマーカー及び治療の標的となっている。HER2のアミノ酸配列は、配列番号49として示されている。本明細書におけるタンパク質、ポリペプチド、及びタンパク質フラグメントへの全ての言及は、非ヒト種由来であると明示しない限り、それぞれのタンパク質、ポリペプチド、またはタンパク質フラグメントのヒトバージョンを指すものとする。したがって、「HER2」という表現は、例えば「マウスHER2」、「サルHER2」などの非ヒト種に由来するものとして指定されない限り、ヒトHER2を意味する。
「HER2に結合する抗体」または「抗HER2抗体」という句は、HER2を特異的に認識する抗体及びその抗原結合フラグメントを含む。
「抗原結合分子」という用語は、抗体及び抗体の抗原結合フラグメント、例えば、二重特異性抗体を含む。
「アビディティ」という用語は、その所望の効果を達成するために、抗原結合分子が標的関与の閾値に到達する能力を指す。複数の標的抗原及び多重特異性抗原結合分子の文脈における「アビディティ(結合力)駆動型結合」または「アビディティ(結合力)駆動型ペアリング(対合)」という句は、多重特異性抗原結合分子が少なくとも2つの一価結合アームを提供して、第1の結合アーム(複数可)が、高い親和性で第1の標的抗原に結合する作用機序を指す。第2の結合アーム(複数可)は、両方の抗原が同じ細胞上に存在するなど、互いに近接していない限り、第2の結合アームが第2の標的抗原に結合しないように、低い親和性で第2の標的抗原に結合する。したがって、第1の標的抗原への高親和性結合は、第2の結合アームに対する低親和性アームの結合力を増大させ、第2の標的への結合を媒介する(Rhoden,J.J.,et al.,May 20,2016,J Biol Chem.291,11337-11347,2016年3月28日に最初に公開doi:10.1074/jbc.M116.714287、Jarantow,S.W.,et al.,October 9,2015,J Biol Chem.290(41):24689-704.doi:10.1074/jbc.M115.651653.Epub 2015 Aug 10)。一例では、HER2×APLP2二重特異性抗体は、高いHER2親和性(例えば、3~5nM)及び低いAPLP2親和性(例えば、145~976nM)を示す。提案された作用機序は、高親和性HER2アームを使用してHER2陽性腫瘍細胞に結合するHER2 x APLP2二重特異性抗体(bsAb)を提供する。これにより、APLP2に対する低親和性APLP2アームの結合力が高まり、第2の標的への結合を媒介してHER2の望ましい内部移行をもたらす。したがって、APLP2の内部移行の際に、複合体全体(すなわち、APLP2標的、HER2×APLP2 bsAb及びHER2標的)は、リソソーム分解のために内部移行される。
HER2xAPLP2 bsAbが標的細胞と相互作用する程度は、HER2との相互作用によって決定されることが観察された。1つの理論に拘束されることなく、HER2xAPLP2 bsAbの高親和性HER2アームとHER2受容体との間の最初の相互作用により、bsAbの局所的な細胞表面濃度が増大する。続いて、bsAbは、その低親和性APLP2アームでAPLP2に接触し、二重受容体結合力(dual-receptor avidity)によりAPLP2-HER2xAPLP2bsAb-HER2複合体が形成される。この複合体はその後、細胞の表面からリソソーム区画へのAPLP2を介した内部移行を受ける。
「抗体」という用語は、特定の抗原(例えば、HER2またはAPLP2)に特異的に結合するか、または相互作用する少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含む任意の抗原結合分子または分子複合体を指す。「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互接続された4つのポリペプチド鎖、2つの重鎖(H)鎖及び2つの軽鎖(L)鎖を含む免疫グロブリン分子、ならびにそれらの多量体(例えば、IgM)を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVHと略される)及び重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、CH1、CH2、及びCH3の3つのドメインを含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVLと略される)及び軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン(CL1)で構成される。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存された領域が点在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分化されてもよい。各VH及びVLは、3つのCDRと4つのFRで構成され、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置されている。本発明の異なる実施形態において、抗HER2抗体または抗APLP2抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒト生殖系列配列と同一であってもよいし、または天然もしくは人工的に改変されてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、2つ以上のCDRのサイドバイサイド分析に基づいて定義され得る。
「抗体」という用語はまた、完全な抗体分子の抗原結合フラグメントを含む。抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合フラグメント」などの用語は、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然に存在する、酵素的に得られる、合成の、または遺伝子操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合フラグメントは、例えば、抗体可変及び任意に定常ドメインをコードするDNAの操作及び発現を含む、タンパク質分解消化または組換え遺伝子工学技術などの任意の適切な標準技術を使用して、完全な抗体分子から誘導され得る。そのようなDNAは、公知であるか、及び/または、例えば、商業的供給源、DNAライブラリー(例えば、ファージ抗体ライブラリーを含む)から容易に入手可能であるか、または合成されてもよい。DNAは、化学的に、または分子生物学技術を使用して、例えば、1つ以上の可変及び/または定常ドメインを、適切な構成に配置するため、またはコドンを導入するため、システイン残基を作成するため、アミノ酸を改変、追加または削除するためなどのために配列決定されて操作され得る。
抗原結合フラグメントの非限定的な例としては、以下が挙げられる:(i)Fabフラグメント、(ii)F(ab’)2フラグメント、(iii)Fdフラグメント、(iv)Fvフラグメント、(v)一本鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAbフラグメント、及び(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))を模倣するアミノ酸残基または拘束FR3-CDR3-FR4ペプチドからなる最小認識単位。他の操作された分子、例えば、ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失抗体、キメラ抗体、CDRグラフト抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小さいモジュラー免疫医薬品(SMIP)、及びサメ可変IgNARドメインもまた、「抗原結合フラグメント」という表現に含まれる。
抗体の抗原結合フラグメントは、典型的には、少なくとも1つの可変ドメインを含むであろう。この可変ドメインは、任意のサイズまたはアミノ酸組成のものであり得、一般には、1つ以上のフレームワーク配列に隣接するかまたはそれとインフレームである少なくとも1つのCDRを含む。VLドメインに関連するVHドメインを有する抗原結合フラグメントにおいて、VH及びVLドメインは、任意の適切な配置で互いに対して配置され得る。例えば、可変領域は、二量体であってもよく、VH-VH、VH-VLまたはVL-VL二量体を含んでもよい。あるいは、抗体の抗原結合フラグメントは、単量体のVHまたはVLドメインを含んでもよい。
ある特定の実施形態において、抗体の抗原結合フラグメントは、少なくとも1つの定常ドメインに共有結合された少なくとも1つの可変ドメインを含み得る。本発明の抗体の抗原結合フラグメント内に見出され得る、可変ドメイン及び定常ドメインの非限定的で例示的な構成には、以下が含まれる:(i)VH-CH1、(ii)VH-CH2、(iii)VH-CH3、(iv)VH-CH1-CH2、(v)VH-CH1-CH2-CH3、(vi)VH-CH2-CH3、(vii)VH-CL、(viii)VL-CH1、(ix)VL-CH2、(x)VL-CH3、(xi)VL-CH1-CH2、(xii)VL-CH1-CH2-CH3、(xiii)VL-CH2-CH3、及び(xiv)VL-CL。上記の例示的な構成のいずれかを含む、可変ドメイン及び定常ドメインの任意の構成において、可変ドメイン及び定常ドメインは、互いに直接連結されてもよいし、または完全もしくは部分的なヒンジもしくはリンカー領域によって連結されてもよい。ヒンジ領域は、単一のポリペプチド分子内の隣接する可変ドメイン及び/または定常ドメイン間の可塑性または半可塑性の結合をもたらす少なくとも2つ(例えば、5、10、15、20、40、60またはそれ以上)のアミノ酸からなってもよい。さらに、本発明の抗体の抗原結合フラグメントは、互いに、及び/または、1つ以上の単量体VHもしくはVLドメインと(例えば、ジスルフィド結合(複数可)によって)非共有結合して、上記に列挙された可変及び定常ドメイン構成のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含んでもよい。
完全な抗体分子と同様に、抗原結合フラグメントは、単一特異性であっても、または多重特異性(例えば、二重特異性)であってもよい。抗体の多重特異性抗原結合フラグメントは、典型的には、少なくとも2つの異なる可変ドメインを含み、ここで各可変ドメインは、別個の抗原または同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合し得る。本明細書に開示される例示的な二重特異性抗体フォーマットを含む任意の多重特異性抗体フォーマットは、当該技術分野で利用可能な慣用的な技術を使用して、本発明の抗体の抗原結合フラグメントの状況での使用に適合され得る。
本発明の抗体は、補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を介して機能し得る。「補体依存性細胞媒介細胞毒性」(CDC)は、補体の存在下での本発明の抗体による抗原発現細胞の溶解を指す。「抗体依存性細胞媒介細胞傷害(毒性)」(ADCC)とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が、標的細胞上で結合した抗体を認識し、それにより標的細胞の溶解をもたらす細胞媒介性の反応を指す。CDC及びADCCは、当該技術分野において周知で利用可能なアッセイを使用して測定され得る。(例えば、米国特許第5,500,362号及び同第5,821,337号、ならびにClynes et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:652-656を参照のこと)。抗体の定常領域は、抗体が補体を固定し、細胞依存性細胞傷害を媒介する能力において重要である。したがって、抗体のアイソタイプは、抗体が細胞毒性を媒介することが望ましいか否かに基づいて選択され得る。
本発明のある特定の実施形態において、本発明の抗HER2単一特異性抗体または抗HER2/抗APLP2二重特異性抗体は、ヒト抗体である。「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有する抗体を指す。本発明のヒト抗体は、例えば、CDR、特にCDR3において、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的変異誘発、またはインビボでの体細胞変異によって導入される変異)を含み得る。しかし、「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含むことを意図していない。
本発明の抗体は、いくつかの実施形態において、組換えヒト抗体であり得る。「組換えヒト抗体」という用語は、組換え手段によって、調製、発現、作成または単離されている全てのヒト抗体、例えば、宿主細胞にトランスフェクトされた組換え発現ベクターを使用して発現された抗体(以下でさらに説明される)、組換えから単離された抗体、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリー(以下でさらに説明)、ヒト免疫グロブリン遺伝子についてトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287-6295を参照)または他のDNA配列へのヒト免疫グロブリン遺伝子配列のスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、作成または単離された抗体を含むものとする。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変及び定常領域を有する。しかし、ある特定の実施形態において、そのような組換えヒト抗体は、インビトロ変異誘発に(または、ヒトIg配列についてトランスジェニックな動物が使用される場合、インビボ体細胞変異誘発に)供され、したがって、ヒト生殖細胞系列のVH及びVL配列に由来し、関連しているが、インビボでのヒト抗体生殖細胞系列レパートリー内に自然には存在しない可能性がある組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列が配列決定される。
ヒト抗体は、ヒンジの不均一性に関連する2つの形態で存在し得る。一形態では、免疫グロブリン分子は、二量体が鎖間重鎖ジスルフィド結合によって一緒に保持されている、約150~160kDaの安定な4本鎖構築物を含む。第2の形態では、二量体は鎖間ジスルフィド結合を介して結合せず、共有結合した軽鎖及び重鎖(半抗体)から構成される約75~80kDaの分子が形成される。これらの形態は、アフィニティー精製後でさえ分離が極めて困難であった。
様々なインタクトなIgGアイソタイプにおける第2の形態の出現の頻度は、限定するものではないが、抗体のヒンジ領域アイソタイプに関連する構造の違いに起因する。ヒトIgG4ヒンジのヒンジ領域における単一のアミノ酸置換は、第2の形態(Angal et al.(1993)Molecular Immunology 30:105)の出現を、ヒトIgG1ヒンジを使用して通常観察されるレベルまで有意に減少し得る。本発明は、ヒンジ、CH2またはCH3領域に1つ以上の変異を有する抗体を包含し、これは、例えば、生成において、所望の抗体形態の収量を改善するために望ましい場合がある。
本発明の抗体は、単離された抗体であり得る。「単離された抗体」とは、その自然環境の少なくとも1つの成分から同定され、分離されるか、及び/または回収された抗体を指す。例えば、生物の少なくとも1つの成分から、または抗体が天然に存在するかもしくは天然に産生される組織または細胞から分離または除去された抗体が、本発明の目的のための「単離された抗体」である。単離された抗体はまた、組換え細胞内のインサイチュでの抗体を含む。単離された抗体とは、少なくとも1つの精製または単離工程に供された抗体である。ある特定の実施形態によれば、単離された抗体とは、他の細胞物質及び/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
本発明はまた、HER2に結合するワンアーム(one-arm)抗体を含む。「ワンアーム抗体」という用語は、単一の抗体の重鎖及び単一の抗体の軽鎖を含む抗原結合分子を指す。本発明のワンアーム抗体は、表1に記載されるようなHCVR/LCVRまたはCDRアミノ酸配列のいずれを含んでもよい。
本明細書に開示される抗HER2または抗HER2/抗APLP2抗体は、抗体が由来した、対応する生殖系列配列と比較して、重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのフレームワーク及び/またはCDR領域における1つ以上のアミノ酸置換、挿入及び/または欠失を含み得る。そのような変異は、本明細書に開示されるアミノ酸配列を、例えば、公開されている抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することによって容易に確認され得る。本発明は、本明細書に開示されるアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体及びその抗原結合フラグメントを含み、1つ以上のフレームワーク及び/またはCDR領域内の1つ以上のアミノ酸は、抗体が由来する生殖細胞系列配列の対応する残基(複数可)に対して、または別のヒト生殖細胞系列配列の対応する残基(複数可)に対して、または対応する生殖細胞系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換に対して変異されている(このような配列変化は、本明細書では「生殖細胞変異」として総称的に言及される)。本明細書に開示される重鎖及び軽鎖可変領域配列から始めて、当業者は、1つ以上の個々の生殖細胞変異またはそれらの組み合わせを含む多数の抗体及び抗原結合フラグメントを容易に生成し得る。ある特定の実施形態において、VH及び/またはVLドメイン内のフレームワーク及び/またはCDR残基の全ては、抗体が由来する元の生殖系列配列に見出される残基に変異して戻される。他の実施形態では、ある特定の残基のみが元の生殖系列配列に変異して戻される(例えば、FR1の最初の8アミノ酸内もしくはFR4の最後の8アミノ酸内に見られる変異残基のみ、またはCDR1、CDR2もしくはCDR3内に見られる変異残基のみ)。他の実施形態では、フレームワーク及び/またはCDR残基(複数可)のうちの1つ以上が、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体がもともと由来する生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基(複数可)に変異されている。さらに、本発明の抗体は、フレームワーク及び/またはCDR領域内の2つ以上の生殖細胞変異の任意の組み合わせを含み得、例えば、ある特定の個々の残基は、特定の生殖細胞配列の対応する残基に変異されるが、一方、元の生殖細胞系列配列とは異なるある特定の他の残基は、維持されるか、または異なる生殖細胞系列配列の対応する残基に変異される。一旦得られれば、1つ以上の生殖細胞変異を含む抗体及び抗原結合フラグメントを、1つ以上の所望の特性、例えば、結合特異性の改善、結合親和性の増大、拮抗的またはアゴニスト的な生物学的特性の改善または増強(場合によって)、免疫原性の低下などについて容易に試験し得る。この一般的な方法で得られた抗体及び抗原結合フラグメントは、本発明内に含まれる。
本発明はまた、1つ以上の保存的置換を有する、本明細書に開示されるHCVR、LCVR、及び/またはCDRアミノ酸配列のいずれかのバリアントを含む抗HER2または抗HER2/抗APLP2抗体を含む。例えば、本発明は、本明細書の表1に記載されているか、または本明細書の表2及び3に記載されている、HCVR、LCVR、及び/またはCDRアミノ酸配列のいずれかに対して、例えば、10以下、8以下、6以下、4以下などの保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、及び/またはCDRアミノ酸配列を有する抗HER2または抗HER2/抗APLP2抗体を含む。
「エピトープ」という用語は、パラトープとして公知の抗体分子の可変領域における特定の抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原が、複数のエピトープを有する場合がある。したがって、異なる抗体は、抗原上の異なる領域に結合する場合があり、異なる生物学的効果を有する場合がある。エピトープは、立体配座または線形のいずれであってもよい。立体配座(コンフォメーション)エピトープは、線状ポリペプチド鎖の異なるセグメントからの空間的に並置されたアミノ酸によって生成される。線状エピトープは、ポリペプチド鎖の隣接するアミノ酸残基によって生成されるものである。ある特定の状況において、エピトープは、抗原上の糖類、ホスホリル基、またはスルホニル基の部分を含み得る。
「実質的同一性」または「実質的に同一」という用語は、核酸またはそのフラグメントを指す場合、別の核酸(またはその相補鎖)との適切なヌクレオチド挿入または欠失と最適に整列される場合、以下に考察されるように、FASTA、BLASTまたはGapのような任意の周知の配列同一性のアルゴリズムによって測定した場合、ヌクレオチド塩基の少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約96%、97%、98%または99%のヌクレオチド配列同一性があることを示す。参照核酸分子と実質的な同一性を有する核酸分子は、ある特定の例において、参照核酸分子によってコードされるポリペプチドと同じか、または実質的に同様のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードし得る。
ポリペプチドに適用される場合、「実質的類似性」または「実質的に類似」という用語は、デフォルトのギャップ重みを使用するプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適に整列された場合、2つのペプチド配列が少なくとも95%の配列同一性を、さらにより好ましくは、少なくとも98%または99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されるものである。一般に、保存的なアミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変更しない。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合、配列同一性パーセントまたは類似度は、置換の保存的性質を補正するために上方に調整され得る。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれるPearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307-331を参照のこと。同様の化学的性質を有する側鎖を有するアミノ酸の群の例としては、以下が挙げられる(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン、(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリン及びスレオニン、(3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン、(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン、(5)塩基性の側鎖:リジン、アルギニン、及びヒスチジン、(6)酸性側鎖:アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩、ならびに(7)硫黄含有側鎖はシステイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸塩-アスパラギン酸塩、及びアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保守的な置換は、参照により本明細書に組み込まれる、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443-1445に開示されている、PAM250対数尤度行列に正の値を持つ任意の変更である。「適度に保守的な」置換とは、PAM250対数尤度行列に負でない値を持つ任意の変更のことである。
配列同一性とも呼ばれるポリペプチドの配列類似性は、典型的には、配列分析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質分析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む、様々な置換、欠失、及びその他の改変に割り当てられた類似性の尺度を使用して、同様の配列を照合する。例えば、GCGソフトウェアには、Gap及びBestfitなどのプログラムが含まれており、これによって、デフォルトのパラメーターを使用して、異なる種の生物由来の相同ポリペプチドなどの密接に関連するポリペプチド間、または野生型タンパク質とそのムテインとの間の、配列相同性または配列同一性を決定し得る。例えば、GCGバージョン6.1を参照のこと。ポリペプチド配列はまた、GCGバージョン6.1のプログラムであるデフォルトまたは推奨パラメーターを使用したFASTAを使用しても比較され得る。FASTA(例えば、FASTA2及びFASTA3)は、クエリ配列と検索配列との間の最良の重複の領域のアラインメント及び配列同一性パーセントを提供する(上記のPearson(2000))。本発明の配列を、異なる生物由来の多数の配列を含むデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、デフォルトのパラメーターを使用するコンピュータープログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-402を参照のこと。
生殖系列変異
本明細書に開示される抗APLP2抗体は、抗体が由来する対応する生殖系列配列と比較して、重鎖可変ドメインのフレームワーク及び/またはCDR領域における1つ以上のアミノ酸置換、挿入及び/または欠失を含み得る。
本発明はまた、本明細書に開示されるアミノ酸配列のいずれかに由来する抗APLP2抗体、及びその抗原結合フラグメントを含み、ここで1つ以上のフレームワーク及び/またはCDR領域内の1つ以上のアミノ酸は、抗体が由来する生殖細胞系列配列の対応する残基(複数可)に対して、または別のヒト生殖細胞系列配列の対応する残基(複数可)に対して、または対応する生殖細胞系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換に対して変異しており(そのような配列変化は、本明細書では総称的に「生殖細胞変異」と呼ばれる)、APLP2抗原への弱い結合も検出可能な結合も有さない。APLP2を認識するいくつかのそのような例示的な抗体は、本明細書の表2に記載されている。
さらに、本発明の抗体は、フレームワーク及び/またはCDR領域内の2つ以上の生殖細胞変異の任意の組み合わせを含み得、例えば、ある特定の個々の残基が特定の生殖細胞配列の対応する残基に変異され、一方で、元の生殖細胞系列配列とは異なる、ある特定の他の残基は、維持されるか、または異なる生殖細胞系列配列の対応する残基に対して変異されている。一旦、得られれば、1つ以上の生殖細胞変異を含む抗体及び抗原結合フラグメントを、結合特異性の改善、結合親和性の弱さまたは低下、薬物動態特性の改善または増強、免疫原性の低下などの1つ以上の所望の特性について試験し得る。本開示のガイダンスが与えられたこの一般的な方式で得られた抗体及び抗原結合フラグメントは、本発明に含まれる。
本発明はまた、1つ以上の保存的置換を有する、本明細書に開示されるHCVR、LCVR、及び/またはCDRアミノ酸配列のいずれかのバリアントを含む抗APLP2及び/または抗HER2抗体も含む。例えば、本発明は、本明細書の表1、2、及び3に記載されているHCVR、LCVR、及び/またはCDRのアミノ酸配列のいずれかに対して、例えば、10以下、8以下、6以下、4以下などの保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、及び/またはCDRアミノ酸配列を有する、抗APLP2及び/または抗HER2抗体を含む。本発明の抗体及び二重特異性抗原結合分子は、個々の抗原結合ドメインが誘導された、対応する生殖系列配列と比較して、重鎖及び軽鎖可変ドメインのフレームワーク及び/またはCDR領域における1つ以上のアミノ酸置換、挿入及び/または欠失を含むが、一方で、例えば、APLP2への所望の弱い~検出不可能な結合を維持または改善している。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されるものである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変化させず、すなわち、アミノ酸置換は、抗APLP2結合分子の場合、所望の弱い~検出不能な結合親和性を維持または改善する。同様の化学的特性を有する側鎖を有するアミノ酸の群の例としては、以下が挙げられる(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン、(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリン及びスレオニン、(3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン、(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン、(5)塩基性の側鎖:リジン、アルギニン、及びヒスチジン、(6)酸性側鎖:アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩、ならびに(7)硫黄含有側鎖はシステイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換の群は:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸塩-アスパラギン酸塩、及びアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保守的な置換は、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443-1445に開示されているPAM250対数尤度行列に正の値を有する任意の変更である。「適度に保守的な」置換とは、PAM250対数尤度行列に負でない値を有する任意の変更のことである。
本発明はまた、APLP2抗原に対する望ましい弱い親和性を維持または改善しながら、本明細書に開示されるHCVR及び/またはCDRアミノ酸配列のいずれかと実質的に同一であるHCVR及び/またはCDRアミノ酸配列を有する抗原結合ドメインを含む抗原結合分子を含む。アミノ酸配列を指す場合の「実質的な同一性」または「実質的に同一」という用語は、デフォルトのギャップ重みを使用するプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適に整列された場合、2つのアミノ酸配列が少なくとも95%の配列同一性を、さらにより好ましくは、少なくとも98%または99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合、配列同一性パーセントまたは類似度は、置換の保存的性質を補正するために上方に調整され得る。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。例えば、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307-331を参照のこと。
配列同一性とも呼ばれるポリペプチドの配列類似性は、典型的には、配列分析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質分析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む、様々な置換、欠失、及びその他の改変に割り当てられた類似性の尺度を使用して、同様の配列を照合する。例えば、GCGソフトウェアには、Gap及びBestfitなどのプログラムが含まれており、これによって、デフォルトのパラメーターを使用して、異なる種の生物由来の相同ポリペプチドなどの密接に関連するポリペプチド間、または野生型タンパク質とそのムテイン間の、配列相同性または配列同一性を決定し得る。例えば、GCGバージョン6.1を参照のこと。ポリペプチド配列はまた、GCGバージョン6.1のプログラムであるデフォルトまたは推奨パラメーターを使用したFASTAを使用して比較してもよい。FASTA(例えば、FASTA2及びFASTA3)は、クエリ配列と検索配列との間の最良の重複の領域のアラインメント及び配列同一性パーセントを提供する(上記のPearson(2000))。本発明の配列を、異なる生物由来の多数の配列を含むデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、デフォルトのパラメーターを使用するコンピュータープログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-402を参照のこと。
一旦得られると、1つ以上の生殖細胞変異を含む抗原結合ドメインを、1つ以上のインビトロアッセイを利用して、結合親和性の低下について試験した。特定の抗原を認識する抗体は、通常、抗原に対する高い(すなわち強い)結合親和性を試験することによって、その目的に関してスクリーニングされるが、本発明の抗体は、弱い結合を示すか、または検出可能な結合を示さない。この一般的な方法で得られた1つ以上の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子もまた、本発明に包含され、結合力駆動型腫瘍療法として有利であることが見出された。
予期しない利益、例えば、改善された薬物動態特性及び患者への低い毒性は、本明細書に記載の方法によって本発明の抗体をさらに改変することから実現され得る。
抗体の結合特性
抗体、免疫グロブリン、抗体結合フラグメント、またはFc含有タンパク質の、例えば、細胞表面タンパク質またはそのフラグメントなどの所定の抗原のいずれかへの結合の文脈における「結合」という用語は、典型的には、抗体-抗原相互作用など、少なくとも2つの実体または分子構造間の相互作用または関連を指す。
例えば、結合親和性は、典型的には、抗原をリガンドとして使用し、及び抗体、Ig、抗体結合フラグメント、またはFc含有タンパク質を分析物(または抗リガンド)として使用して、例えば、BIAcore 3000機器の表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定される場合、約10-7M以下、例えば、約10-8M以下、例えば、約10-9M以下のKD値に対応する。蛍光活性化セルソーティング(FACS)結合アッセイなどの細胞ベースの結合戦略も慣用的に使用されており、細胞表面に発現するタンパク質に関する結合特性データを提供する。FACSデータは、放射性リガンド競合結合及びSPRなどの他の方法とよく相関する(Benedict,CA,J Immunol Methods.1997,201(2):223-31、Geuijen,CA,et al.J Immunol Methods.2005,302(1-2):68-77)。
したがって、本発明の抗体または抗原結合タンパク質は、非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)に対する結合について、その親和性よりも少なくとも10倍低いKD値に対応する親和性を有する所定の抗原または細胞表面分子(受容体)に結合する。本発明によれば、非特異的抗原よりも10倍以下低いKD値に対応する抗体の親和性は、検出不可能な結合と見なされ得るが、そのような抗体は、本発明の二重特異性抗体を産生するための第2の抗原結合アームと対になり得る。
「KD」または「KD」のモル(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数、または抗原に結合する抗体もしくは抗体結合フラグメントの解離平衡定数を指す。KDと結合親和性との間には反比例の関係があるため、KD値が小さいほど、親和性は高く、すなわち強くなる。したがって、「より高い親和性」または「より強い親和性」という用語は、相互作用を形成するより高い能力に、したがってより小さなKD値に関連し、逆に、「より低い親和性」または「より弱い親和性」という用語は、相互作用を形成する能力が低いこと、したがってより大きなKD値に関する。いくつかの状況では、別の相互作用パートナー分子(例えば、抗原Y)に対する分子(例えば抗体)の結合親和性と比較して、相互作用パートナー分子(例えば、抗原X)に対する特定の分子(例えば抗体)の結合親和性(またはKD)が高いことは、より小さなKD(より高いまたはより強い親和性)で、より大きなKD値(より低いまたはより弱い親和性)を割ることによって決定される結合比として表され得、場合によって、例えば5倍または10倍大きい結合親和性として表される。
いくつかの実施形態において、二重特異性抗原結合分子またはそのコンジュゲートは、APLP2へのその結合親和性の10倍を超える結合親和性(KD値)でHER2に結合する。このように、二重特異性分子は、APLP2へのその結合親和性よりもHER2への結合親和性がはるかに強い。場合によっては、結合親和性は、37℃での表面プラズモン共鳴アッセイまたは同等のアッセイによって測定される。
「kd」(秒-1または1/s)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数、または抗体または抗体結合フラグメントの解離速度定数を指す。このような値はまた、koff値とも呼ばれる。
用語「ka」(M-1×秒-1または1/M)は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度定数、または抗体もしくは抗体結合フラグメントの会合速度定数を指す。
「KA」(M-1または1/M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の会合平衡定数、または抗体もしくは抗体結合フラグメントの会合平衡定数を指す。会合平衡定数は、kaをkdで割ることによって得られる。
「EC50」または「EC50」という用語は、最大有効濃度の半分を指し、これは、指定された曝露時間後にベースラインと最大の中間の応答を誘導する抗体の濃度を含む。EC50は本質的に、最大効果の50%が観察される抗体の濃度を表す。ある特定の実施形態において、EC50値は、例えば、FACS結合アッセイで決定した場合、APLP2または腫瘍関連抗原を発現する細胞への最大の半分の結合を与える本発明の抗体の濃度に等しい。したがって、結合の減少または弱化は、EC50の増大、または最大有効濃度値の半分で観察される。
一実施形態では、結合の減少は、最大量の半分の標的細胞への結合を可能にするEC50抗体濃度の増大として定義され得る。
二重特異性抗原結合分子
本発明の抗体は、単一特異性であっても、二重特異性であっても、または多重特異性であってもよい。多重特異性抗体は、1つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに特異的である場合もあれば、複数の標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含む場合もある。例えば、Tutt et al.,1991,J.Immunol.147:60-69、Kufer et al.,2004,Trends Biotechnol.22:238-244。本発明の抗HER2単一特異性抗体または抗HER2/抗APLP2二重特異性抗体は、別の機能的分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質に連結されてもよいし、またはそれらと共発現されてもよい。例えば、抗体またはそのフラグメントは、(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合などによって)1つ以上の他の分子実体、例えば、別の抗体または抗体フラグメントに機能的に連結されて、二重特異性抗体または第2もしくは追加の結合特異性を有する多重特異性抗体を生成し得る。
本明細書における「抗APLP2抗体」または「抗HER2抗体」という表現の使用は、単一特異性抗APLP2または抗HER2抗体、ならびにAPLP2結合アーム及びHER2結合アームを含む二重特異性抗体の両方を含むものとする。したがって、本発明は、免疫グロブリンの一方のアームがヒトAPLP2に結合し、免疫グロブリンの他方のアームがヒトHER2に特異的である二重特異性抗体を含む。APLP2結合アームは、本明細書の表1、2及び3に記載されるようなHCVR/LCVRまたはCDRアミノ酸配列のいずれを含んでもよい。
ある特定の実施形態において、APLP2結合アームは、ヒトAPLP2に結合し、そしてAPLP2及びそれに結合した抗体の内部移行を誘導する。ある特定の実施形態において、APLP2結合アームは、ヒトAPLP2に弱く結合し、APLP2及びそれに結合した抗体の内部移行を誘導する。他の実施形態では、APLP2結合アームは、ヒトAPLP2に弱く結合し、二重特異性または多重特異性抗体という状況では、腫瘍関連抗原発現細胞殺滅を誘導する。他の実施形態では、APLP2結合アームは、ヒト及びカニクイザル(サル)APLP2に結合するか、または弱く会合するが、結合相互作用は、当該技術分野で公知のインビトロアッセイでは検出できない。HER2結合アームは、本明細書の表1に記載されるようなHCVR/LCVRまたはCDRアミノ酸配列のいずれを含んでもよい。HER2結合アームは、本明細書の実施例4に記載の表面プラズモン共鳴アッセイなどのインビトロ親和性結合アッセイで測定した場合、10nM KD未満の結合親和性を有する任意の抗HER2抗体を含んでもよい。
ある特定の例示的な実施形態によれば、本発明は、APLP2及びHER2に特異的に結合する二重特異性抗原結合分子を含む。そのような分子は、本明細書では、例えば、「抗APLP2/抗HER2」、または「抗APLP2xHER2」または「APLP2xHER2」二重特異性分子、または他の同様の用語(例えば、抗HER2/抗APLP2)と呼ばれ得る。
「HER2」という用語は、非ヒト種(例えば、「マウスHER2」、「サルHER2」など)に由来するものとして指定されない限り、ヒトHER2タンパク質を指す。ヒトHER2タンパク質は、配列番号49に示されるアミノ酸配列を有する。
APLP2及びHER2に特異的に結合する前述の二重特異性抗原結合分子は、インビトロの親和性結合アッセイにより測定した場合、約40または50nMを超えるKDを示すなどの弱い結合親和性でAPLP2に結合する、抗APLP2抗原結合分子を含み得る。場合によっては、APLP2結合アームは、(例えば、表面プラズモン共鳴アッセイので測定されるものとして)約100nMを超える、約200nMを超える、約300nMを超える、約400nMを超える、約500nMを超える、または約1μMを超えるKDまたはEC50でAPLP2に結合する。場合によっては、第1の抗原結合ドメインは、APLP2に特異的に結合する(例えば、ヒトAPLP2とカニクイザルAPLP2のいずれかまたは両方とも、親和性が弱いか測定不能で結合する)。
APLP2及びHER2に特異的に結合する二重特異性抗原結合分子は、インビトロ結合アッセイによって測定した場合、二重特異性抗原結合分子がHER2に結合するよりも10倍以上弱い結合で、APLP2に結合し得る。場合によっては、二重特異性抗原結合分子は、表面プラズモン共鳴アッセイまたは細胞ベース結合アッセイ(すなわちFACS)などのインビトロの結合アッセイで測定した場合、約20倍超弱い、または25倍、30倍、35倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、100倍、150倍、または200倍弱いKDまたはEC50でAPLP2に結合する。
「抗原結合分子」という表現は、単独で、または1つ以上の追加のCDR及び/またはフレームワーク領域(FR)と組み合わせて、特定の抗原に特異的に結合する、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含むかまたはそれらからなるタンパク質、ポリペプチドまたは分子複合体を指す。ある特定の実施形態において、抗原結合分子は、それらの用語が本明細書の他の場所で定義されているように、抗体または抗体のフラグメントである。
「二重特異性抗原結合分子」という表現は、少なくとも第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインを含むタンパク質、ポリペプチド、または分子複合体を指す。二重特異性抗原結合分子内の各抗原結合ドメインは、単独で、または1つ以上の追加のCDR及び/またはFRと組み合わせて、特定の抗原に特異的に結合する、少なくとも1つのCDRを含む。本発明の文脈において、第1の抗原結合ドメインは、第1の抗原(例えば、APLP2)に特異的に結合し、第2の抗原結合ドメインは、第2の別個の抗原(例えば、HER2)に特異的に結合する。
本発明のある特定の例示的な実施形態において、二重特異性抗原結合分子は、二重特異性抗体である。二重特異性抗体の各抗原結合ドメインは、重鎖可変ドメイン(HCVR)及び軽鎖可変ドメイン(LCVR)を含む。第1及び第2の抗原結合ドメイン(例えば、二重特異性抗体)を含む二重特異性抗原結合分子の文脈において、第1の抗原結合ドメインのCDRは、接頭辞「A1」で指定され得、かつ第2の抗原結合ドメインのCDRは、接頭辞「A2」で指定され得る。したがって、第1の抗原結合ドメインのCDRは、本明細書では、A1-HCDR1、A1-HCDR2、及びA1-HCDR3と呼ばれ得る。そして、第2の抗原結合ドメインのCDRは、本明細書では、A2-HCDR1、A2-HCDR2、及びA2-HCDR3と呼ばれ得る。
第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインは、互いに直接的または間接的に接続されて、本発明の二重特異性抗原結合分子を形成し得る。あるいは、第1の抗原結合ドメイン及び第2の抗原結合ドメインは、それぞれ、別個の多量体化ドメインに接続され得る。ある多量体化ドメインと別の多量体化ドメインとの会合は、2つの抗原結合ドメイン間の会合を促進し、それにより、二重特異性抗原結合分子を形成する。「多量体化ドメイン」は、同じまたは類似の構造または構成の第2の多量体化ドメインと会合する能力を有する、任意の高分子、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、またはアミノ酸である。例えば、多量体化ドメインは、免疫グロブリンCH3ドメインを含むポリペプチドであり得る。多量体化成分の非限定的な例は、免疫グロブリンのFc部分(CH2-CH3ドメインを含む)、例えば、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から選択されるIgGのFcドメイン、ならびに各アイソタイプ群内の任意のアロタイプである。
本発明の二重特異性抗原結合分子は、典型的には、2つの多量体化ドメイン、例えば、それぞれが別個の抗体重鎖の個々の部分である2つのFcドメインを含むであろう。第1及び第2の多量体化ドメインは、例えば、IgG1/IgG1、IgG2/IgG2、IgG4/IgG4などの同じIgGアイソタイプのものであり得る。あるいは、第1及び第2の多量体化ドメインは、例えば、IgG1/IgG2、IgG1/IgG4、IgG2/IgG4などのような異なるIgGアイソタイプのものであり得る。
ある特定の実施形態において、多量体化ドメインは、Fcフラグメント、または少なくとも1つのシステイン残基を含む長さが1~約200アミノ酸のアミノ酸配列である。他の実施形態では、多量体化ドメインは、システイン残基、または短いシステイン含有ペプチドである。他の多量体化ドメインには、ロイシンジッパー、ヘリックスループモチーフ、もしくはコイルドコイルモチーフを含むか、またはそれらからなるペプチドまたはポリペプチドが含まれる。
任意の二重特異性抗体フォーマットまたは技術を使用して、本発明の二重特異性抗原結合分子を作製し得る。例えば、第1の抗原結合特異性を有する抗体またはそのフラグメントは、第2の抗原結合特異性を有する別の抗体または抗体フラグメントなどの1つ以上の他の分子実体に機能的に連結され得(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、非共有結合などによって)、二重特異性抗原結合分子を生成し得る。本発明の文脈で使用され得る特定の例示的な二重特異性フォーマットとしては、限定するものではないが、例えば、scFvベースまたはダイアボディ二重特異性フォーマット、IgG-scFv融合、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、クアドロマ、ノブ-イントゥ-ホール、一般的な軽鎖(例えば、ノブ-イントゥ-ホールが付いた一般的な軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、Duobody、IgG1/IgG2、二重作用Fab(DAF)-IgG、及びMab2二重特異性フォーマット(前述のフォーマットの概説については、例えば、Klein et al.2012,mAbs 4:6,1-11、及びそこに引用されている参考文献を参照)が挙げられる。
本発明の二重特異性抗原結合分子の文脈において、多量体化ドメイン、例えば、Fcドメインは、Fcドメインの天然に存在するバージョンである野生型と比較して、1つ以上のアミノ酸変化(例えば、挿入、欠失または置換)を含み得る。例えば、本発明は、FcとFcRnとの間の改変された結合相互作用(例えば、増強または減少)を有する改変されたFcドメインをもたらすFcドメインにおける1つ以上の改変を含む、二重特異性抗原結合分子を含む。一実施形態では、二重特異性抗原結合分子は、CH2またはCH3領域における改変を含み、この改変は、酸性環境において(例えば、pHが約5.5~約6.0の範囲のエンドソームにおいて)、FcRnに対するFcドメインの親和性を増大させる。そのようなFc改変の非限定的な例としては、例えば、位置250(例えば、EまたはQ)、250及び428(例えば、LまたはF)、252(例えば、L/Y/F/WまたはT)、254(例えば、SまたはT)、及び256(例えば、S/R/Q/E/DまたはT)、あるいは位置428及び/または433(例えば、L/R/S/P/QまたはK)及び/または434(例えば、H/FまたはY)での改変、あるいは位置250及び/または428での改変、あるいは、位置307または308(例えば、308F、V308F)、及び434での改変が挙げられる。一実施形態では、この改変は、428L(例えば、M428L)及び434S(例えば、N434S)改変、428L、259I(例えば、V259I)、及び308F(例えば、V308F)の変更、433K(例えば、H433K)及び434(例えば、434Y)の改変、252、254、及び256(例えば、252Y、254T、及び256E)の改変、250Q及び428Lの改変(例えば、T250Q及びM428L)、ならびに307及び/または308の改変(例えば、308Fまたは308P)を含む。
本発明はまた、第1のCH3ドメイン及び第2のIg CH3ドメインを含む二重特異性抗原結合分子を含み、ここで、第1及び第2のIg CH3ドメインは、少なくとも1つのアミノ酸が互いに異なり、少なくとも1つのアミノ酸の相違は、アミノ酸の相違がない二重特異性抗体と比較して、プロテインAへの二重特異性抗体の結合を減少させる。一実施形態では、第1のIg CH3ドメインはプロテインAに結合し、第2のIg CH3ドメインは、H95R改変(IMGTエクソン番号付けによる、EU番号付けによるH435R)などのプロテインA結合を低減または無効にする変異を含む。第2のCH3は、Y96F改変(IMGTによる、EUによるY436F)をさらに含み得る。例えば、米国特許第8,586,713号を参照のこと。第2のCH3内に見られ得るさらなる改変には、以下が挙げられる:IgG1抗体の場合はD16E、L18M、N44S、K52N、V57M、及びV82I(IMGTによる。EUで、D356E、L358M、N384S、K392N、V397M、及びV422I)、IgG2抗体の場合はN44S、K52N、及びV82I(IMGT。EUで、N384S、K392N、及びV422I)、ならびにIgG4抗体の場合、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、及びV82I(IMGTによる。EUで、Q355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、及びV422I)。
ある特定の実施形態において、Fcドメインは、複数の免疫グロブリンアイソタイプに由来するFc配列を組み合わせたキメラであり得る。例えば、キメラFcドメインは、ヒトIgG1、ヒトIgG2またはヒトIgG4 CH2領域に由来するCH2配列の一部または全部、及びヒトIgG1、ヒトIgG2またはヒトIgG4に由来するCH3配列の一部または全部を含み得る。キメラFcドメインはまた、キメラヒンジ領域を含んでもよい。例えば、キメラヒンジは、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「上部ヒンジ」配列を、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4ヒンジ領域に由来する「下部ヒンジ」配列と組み合わせて含み得る。本明細書に記載の抗原結合分子のいずれかに含まれてもよいキメラFcドメインの特定の例は、N末端からC末端まで、以下を含む:[IgG4 CH1]-[IgG4上部ヒンジ]-[IgG2下部ヒンジ]-[IgG4 CH2]-[IgG4 CH3]。本明細書に記載の抗原結合分子のいずれかに含めてもよいキメラFcドメインの別の例は、N末端からC末端まで、以下を含む:[IgG1 CH1]-[IgG1上部ヒンジ]-[IgG2下部ヒンジ]-[IgG4 CH2]-[IgG1 CH3]。本発明の抗原結合分子のいずれかに含めることができるキメラFcドメインのこれら及び他の例は、2014年8月28日に公開された米国公開2014/0243504に記載されており、これはその全体が本明細書に組み込まれる。これらの一般的な構造配列を有するキメラFcドメイン、及びそのバリアントは、Fc受容体結合が変化している可能性があり、これは次にFcエフェクター機能に影響を与える。
ある特定の実施形態において、本発明は、重鎖定常領域(CH)領域が、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、または配列番号78のいずれか1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む抗体重鎖を提供する。いくつかの実施形態において、重鎖定常領域(CH)領域は、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、または配列番号78からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
他の実施形態では、本発明は、Fcドメインが、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、または配列番号77のうちのいずれか1つと少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、抗体重鎖を提供する。いくつかの実施形態において、Fcドメインは、配列番号66、配列番号67、配列番号68、配列番号69、配列番号70、配列番号70、配列番号71、配列番号72、配列番号73、配列番号74、配列番号75、配列番号76、または配列番号77からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
配列バリアント
本発明の抗体及び二重特異性抗原結合分子は、個々の抗原結合ドメインが由来する対応する生殖系列配列と比較して、重鎖及び/または軽鎖可変ドメインのフレームワーク及び/またはCDR領域における1つ以上のアミノ酸置換、挿入及び/または欠失を含み得る。そのような変異は、本明細書に開示されるアミノ酸配列を、例えば、公的な抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することによって、容易に確認され得る。本発明の抗原結合分子は、本明細書に開示される例示的なアミノ酸配列のいずれかに由来する抗原結合ドメインを含み得、ここで、1つ以上のフレームワーク及び/またはCDR領域内の1つ以上のアミノ酸は、抗体が由来する生殖細胞系列配列の対応する残基(複数可)に対して、または別のヒト生殖細胞系列配列の対応する残基(複数可)に対して、または対応する生殖細胞系列残基(複数可)の保存的アミノ酸置換に対して変異される(そのような配列変化は、本明細書では総称して「生殖細胞変異」と呼ばれる)。本明細書に開示される重鎖及び軽鎖可変領域配列から始めて、当業者は、1つ以上の個々の生殖細胞変異またはそれらの組み合わせを含む、多数の抗体及び抗原結合フラグメントを容易に産生し得る。ある特定の実施形態において、VH及び/またはVLドメイン内のフレームワーク及び/またはCDR残基の全ては、抗原結合ドメインがもともと由来した元の生殖系列配列に見出される残基へ変異して戻される。他の実施形態では、ある特定の残基のみ、例えば、FR1の最初の8アミノ酸内もしくはFR4の最後の8アミノ酸内に見られる変異残基のみ、またはCDR1、CDR2もしくはCDR3内に見られる変異残基のみが元の生殖系列配列へ変異して戻される。他の実施形態では、フレームワーク及び/またはCDR残基(複数可)のうちの1つ以上が、異なる生殖系列配列(すなわち、抗原結合ドメインがもともと由来する生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基(複数可)へ変異されている。さらに、抗原結合ドメインは、フレームワーク及び/またはCDR領域内の2つ以上の生殖細胞変異の任意の組み合わせを含み得、例えば、ここで、ある特定の個々の残基が特定の生殖細胞配列の対応する残基に変異し、一方、元の生殖細胞系列配列と異なるある特定の他の残基は維持されるか、または異なる生殖細胞系列配列の対応する残基に変異される。一旦得られれば、1つ以上の生殖細胞変異を含む抗原結合ドメインを、結合特異性の改善、結合親和性の増大、拮抗的またはアゴニスト的生物学的特性の改善または増強(場合によっては)、免疫原性の低下などの1つ以上の所望の特性について容易に試験し得る。この一般的な方法で得られた1つ以上の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子は、本発明に含まれる。
本発明はまた、一方または両方の抗原結合ドメインが、1つ以上の保存的置換を有する本明細書に開示されるHCVR、LCVR、及び/またはCDRアミノ酸配列のいずれかのバリアントを含む、抗原結合分子を含む。例えば、本発明は、本明細書に開示されるHCVR、LCVR、及び/またはCDRアミノ酸配列のいずれかに対して、例えば、10以下、8以下、6以下、4以下などの保存的アミノ酸置換を有するHCVR、LCVR、及び/またはCDRアミノ酸配列を有する、抗原結合ドメインを含む抗原結合分子を含む。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を有する側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されているものである。一般に、保存的なアミノ酸置換は、タンパク質の機能特性を実質的に変更しない。同様の化学的性質を有する側鎖を有するアミノ酸の群の例としては、以下が挙げられる(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン、(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリン及びスレオニン、(3)アミド含有側鎖:アスパラギン及びグルタミン、(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン、(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、及びヒスチジン、(6)酸性側鎖:アスパラギン酸塩及びグルタミン酸塩、ならびに(7)硫黄含有側鎖はシステイン及びメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換の群は以下である:バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸塩-アスパラギン酸塩、及びアスパラギン-グルタミン。あるいは、保守的な置換は、参照により本明細書に組み入れられる、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443-1445に開示されているPAM250対数尤度行列に正の値を有する任意の変更である。「適度に保守的な」置換とは、PAM250対数尤度行列に負でない値を有する任意の変更である。
本発明はまた、本明細書に開示されるHCVR、LCVR、及び/またはCDRアミノ酸配列のいずれかと実質的に同一である、HCVR、LCVR、及び/またはCDRアミノ酸配列を有する抗原結合ドメインを含む抗原結合分子を含む。アミノ酸配列を指す場合の「実質的な同一性」または「実質的に同一」という用語は、デフォルトのギャップ重みを使用するプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適に整列された場合、2つのアミノ酸配列が少なくとも95%の配列同一性を共有し、さらにより好ましくは、少なくとも98%または99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換によって異なる。2つ以上のアミノ酸配列が保存的置換によって互いに異なる場合、配列同一性パーセントまたは類似度は、置換の保存的性質を補正するために上方に調整され得る。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれるPearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307~331を参照のこと。
配列同一性とも呼ばれるポリペプチドの配列類似性は、典型的には、配列分析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質分析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む、様々な置換、欠失、及びその他の改変に割り当てられた類似性の尺度を使用して、同様の配列を照合する。例えば、GCGソフトウェアには、Gap及びBestfitなどのプログラムが含まれており、これによって、デフォルトのパラメーターを使用して、異なる種の生物由来の相同ポリペプチドなどの密接に関連するポリペプチド間、または野生型タンパク質とそのムテインとの間の配列相同性または配列同一性を決定し得る。例えば、GCGバージョン6.1を参照のこと。ポリペプチド配列はまた、GCGバージョン6.1のプログラムであるデフォルトまたは推奨パラメーターを使用したFASTAを使用して比較され得る。FASTA(例えば、FASTA2及びFASTA3)は、クエリ配列と検索配列との間の最良の重複の領域のアラインメント及び配列同一性パーセントを提供する(上記のPearson(2000))。本発明の配列を、異なる生物からの多数の配列を含むデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、デフォルトのパラメーターを使用するコンピュータープログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、それぞれが参照により本明細書に組み込まれる、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410及びAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-402を参照のこと。
pH-依存性結合
本発明は、pH依存性結合特徴を有する抗HER2抗体、及び抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子を含む。例えば、本発明の抗HER2抗体は、中性pHと比較して、酸性pHでHER2への結合の低下を示し得る。あるいは、本発明の抗HER2抗体は、中性pHと比較して、酸性pHでHER2への結合の増強を示し得る。「酸性pH」という表現は、約6.2未満、例えば、約6.0、5.95、5、9、5.85、5.8、5.75、5.7、5.65、5.6、5.55、5.5、5.45、5.4、5.35、5.3、5.25、5.2、5.15、5.1、5.05、5.0、またはそれ未満のpH値を含む。「中性pH」という表現は、約7.0~約7.4のpHを意味する。「中性pH」という表現は、約7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、及び7.4のpH値を含む。
特定の例において、「中性pHと比較して酸性pHでの結合の低下」は、中性pHでその抗原に結合する抗体のKD値に対する、酸性pHでのその抗原に結合する抗体のKD値の比に関して(またはその逆)表される。例えば、抗体またはその抗原結合フラグメントは、その抗体またはその抗原結合フラグメントが、約3.0以上という酸性/中性KD比を示す場合、本発明の目的に関しては、「中性pHと比較して酸性pHでHER2への結合の低下」を示すと見なされ得る。ある特定の例示的な実施形態において、本発明の抗体または抗原結合フラグメントの酸性/中性KD比は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、20.0、25.0、30.0、40.0、50.0、60.0、70.0、100.0以上であり得る。
pH依存性結合特徴を有する抗体は、例えば、中性pHと比較して酸性pHでの特定の抗原への結合の減少(または増強)について抗体の集団をスクリーニングすることによって得てもよい。さらに、アミノ酸レベルでの抗原結合ドメインの改変は、pH依存性の特徴を有する抗体を生じ得る。例えば、抗原結合ドメインの1つ以上のアミノ酸(例えば、CDR内)をヒスチジン残基で置換することにより、中性pHと比較して酸性pHで抗原結合が低下した抗体を得てもよい。
Fc領域を含む抗体
本発明のある特定の実施形態によれば、抗HER2抗体、及び抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子は、例えば、中性pHと比較して酸性pHで、FcRn受容体に対する抗体の結合を増強または減少させる、1つ以上の変異を含むFcドメインを含んで提供される。例えば、本発明は、FcドメインのCH2またはCH3領域に変異を含む抗体を含み、ここで、この変異(複数可)は、酸性環境において(例えば、pH範囲が約5.5~約6.0であるエンドソームにおいて)FcRnに対するFcドメインの親和性を増大させる。そのような変異は、動物に投与された場合、抗体の血清半減期の増大を生じ得る。そのようなFc改変の非限定的な例としては、例えば、位置250(例えば、EまたはQ)、250及び428(例えば、LまたはF)、252(例えば、L/Y/F/WまたはT)、254(例えば、SまたはT)、及び256(例えば、S/R/Q/E/DまたはT)での改変、あるいは、位置428及び/または433(例えば、H/L/R/S/P/QまたはK)及び/または434(例えば、H/FまたはY)での改変、あるいは位置250及び/または428での改変、あるいは、位置307または308(例えば、308F、V308F)、及び434での改変が挙げられる。一実施形態では、改変は、428L(例えば、M428L)及び434S(例えば、N434S)改変、428L、259I(例えば、V259I)、及び308F(例えば、V308F)の改変、433K(例えば、H433K)及び434(例えば、434Y)の改変、252、254、及び256(例えば、252Y、254T、及び256E)の改変、250Q及び428Lの改変(例えば、T250Q及びM428L)、ならびに307及び/または308の改変(例えば、308Fまたは308P)を含む。
例えば、本発明は、抗HER2抗体、及び抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子を含み、これは、以下からなる群より選択される変異の1つ以上の対または群を含むFcドメインを含む:250Q及び248L(例えば、T250Q及びM248L)、252Y、254T、及び256E(例えば、M252Y、S254T、及びT256E)、428L及び434S(例えば、M428L及びN434S)、ならびに433K及び434F(例えば、H433K及びN434F)。前述のFcドメイン変異、及び本明細書に開示される抗体可変ドメイン内の他の変異の全ての可能な組み合わせが、本発明の範囲内で企図される。
抗体及び二重特異性抗原結合分子の生物学的特徴
本発明は、高い親和性(例えば、ナノモルからサブナノモルのKD値)でヒトHER2に結合する抗体及びその抗原結合フラグメントを含む。
本発明はまた、ヒト乳癌異種移植片を有する免疫無防備状態のマウスにおける腫瘍増殖を阻害する抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子も含む。(例えば、実施例12及び13を参照のこと)。
本発明は、治療状況及び所望の特定の標的化特性に応じて、中程度または低い親和性でヒトAPLP2に結合する抗体及びその抗原結合フラグメントを含む。例えば、一方のアームがAPLP2に結合し、もう一方のアームが標的抗原(例えば、HER2)に結合する、二重特異性抗原結合分子の状況では、標的抗原結合アームが標的抗原に高い親和性で結合することが望ましい場合があるが、抗APLP2アームは中程度または低い親和性でのみAPLP2に結合する。このようにして、標的抗原を発現する細胞への抗原結合分子の優先的標的化は、一般的/非標的化APLP2結合及びそれに関連する結果として生じる有害な副作用を回避しながら達成され得る。
本発明は、ヒトAPLP2及びヒトHER2に同時に結合し得る、二重特異性抗原結合分子(例えば、二重特異性抗体)を含む。APLP2を発現する細胞と相互作用する結合アームは、適切なインビトロの結合アッセイで測定した場合、結合が弱い~検出不能である場合がある。二重特異性抗原結合分子がAPLP2及び/またはHER2を発現する細胞に結合する程度は、蛍光活性化セルソーティング(FACS)によって評価され得る。
本発明はまた、HER2発現細胞及び細胞株(例えば、乳管腺癌T47D細胞)に結合する抗体、抗原結合フラグメント、及びそれらの二重特異性抗体も含み、EC50値は、細胞膜結合抗原との抗体相互作用を測定するFACS結合アッセイ、または実質的に同様のアッセイを使用して決定した場合、約1nM~50nMの間である。ある特定の実施形態において、HER2発現細胞及び細胞株(例えば、T47D細胞)に結合する抗体、抗原結合フラグメント、及びそれらの二重特異性抗体は、FACS結合アッセイまたは実質的に同様のアッセイを使用して決定した場合、約50nM、約40nM、約30nM、約20nM、約15nM未満、約10nM、約5nM、約4nM、約3nM、または約2nM、約1nMというEC50値を有する。
本発明は、弱い(すなわち、低い)か、または検出不能な親和性でさえヒトAPLP2に結合する、抗体、抗原結合フラグメント、及びそれらの二重特異性抗体を含む。ある特定の実施形態によれば、本発明は、表面プラズモン共鳴によって測定した場合、約100nM超えるKDでヒトAPLP2に(例えば、37℃で)結合する抗体及び抗体の抗原結合フラグメントを含む。ある特定の実施形態において、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、表面プラズモン共鳴(例えば、mAbキャプチャーまたは抗原キャプチャーフォーマット)、または実質的に同様のアッセイによって測定した場合、約110nM超、少なくとも120nM、約130nM超、約140nM超、約150nM超、少なくとも160nM、約170nM超、約180nM超、約190nM超、約200nM超、約250nM超、約300nM超、約400nM超、約500nM超、約600nM超、約700nM超、約800nM超、約900nM超、または約1μM超、または検出不能な親和性のKDでAPLP2に結合する。
本発明は、サル(すなわちカニクイザル)APLP2に弱い(すなわち低い)または検出不能な親和性で結合する抗体、抗原結合フラグメント、及びそれらの二重特異性抗体を含む。
本発明は、本明細書の実施例3によって定義されるアッセイフォーマットまたは実質的に同様のアッセイによって測定した場合、ヒトHER2発現細胞(例えば、T47D細胞)に結合し、それらによって内部移行される抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子を含む。本発明は、ヒトHER2への結合に特異的な抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子を含む。ある特定の実施形態において、本発明の抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子は、本明細書の実施例3によって定義されるアッセイフォーマットまたは実質的に同様のアッセイによって測定した場合、HEK293細胞において一過性に発現されるヒトHER2に結合する。ある特定の実施形態において、本発明の抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子は、本明細書における実施例3によって定義されるアッセイフォーマットまたは実質的に同様のアッセイによって測定した場合、HEK293細胞において一過性に発現されるヒトHER1、ヒトHER2、またはヒトHER4に結合しない。
本発明は、HER2発現(例えば、JIMT-1)腫瘍増殖を阻害し得る、抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子を含む(例えば、実施例10を参照のこと)。例えば、ある特定の実施形態によれば、抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子が提供され、ここで、例えば、約0.1mg/kgまたは約0.01mg/kgの用量での単回投与は、例えば、本明細書において実施例10に示されるような、標準的なキャリパー測定方法を用いて対象で検出した場合、腫瘍移植の46日後に測定したとき、アイソタイプ対照二重特異性抗体を投与した動物と比較して腫瘍サイズの低下を生じる。
本発明はまた、インビボHER2陽性乳癌異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を阻害する抗HER2抗体薬物コンジュゲートを含む(例えば、実施例12及び13を参照、または実質的に同様のアッセイにおいて)。ある特定の実施形態において、化合物Iとの抗HER2抗体薬物コンジュゲートが提供され、ここで腫瘍移植後13日目に投与される10、20、または40mg/kgの1回投与は、インビボHER2陽性乳癌異種移植モデルにおいて腫瘍増殖を阻害する。ある特定の実施形態において、化合物Iとの抗HER2抗体薬物コンジュゲートが提供され、移植後14日目に投与される5または20mg/kgでの1回の用量が、インビボHER2陽性の乳癌異種移植モデルにおいてJIMT-1及び/またはMDA-MB-361腫瘍増殖を阻害する。ある特定の実施形態において、化合物Iとの抗HER2抗体薬物コンジュゲートが提供され、ここで移植後17日目に投与される150μg/kgでの1回の用量が、インビボHER2陽性乳癌異種移植モデルにおけるJIMT-1及び/またはMDA-MB-361腫瘍増殖を阻害する。他の実施形態において、化合物IIとの抗HER2抗体薬物コンジュゲートが提供され、移植後29日目に少なくとも2.5mg/kgの1用量が投与され、インビボHER2陽性の乳癌異種移植モデルにおけるJIMT-1及び/またはMDA-MB-361腫瘍増殖を阻害する。
エピトープマッピング及び関連の技術
本発明の抗原結合分子が結合するAPLP2及び/またはHER2上のエピトープは、APLP2またはHER2タンパク質の3つ以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20以上)のアミノ酸の単一の連続した配列からなり得る。あるいは、エピトープは、APLP2またはHER2の複数の非隣接アミノ酸(またはアミノ酸配列)からなり得る。本発明の抗体は、単一のAPLP2鎖内に含まれるアミノ酸(例えば、APLP2-イプシロン、APLP2-デルタまたはAPLP2-ガンマ)と相互作用する場合もあるし、または2つ以上の異なるAPLP2鎖上のアミノ酸と相互作用する場合もある。「エピトープ」という用語は、パラトープとして公知の抗体分子の可変領域内の特定の抗原結合部位と相互作用する抗原決定基を指す。単一の抗原が複数のエピトープを有する場合がある。したがって、異なる抗体は、抗原上の異なる領域に結合する場合があり、異なる生物学的効果を有する場合がある。エピトープは、立体配座または線形のいずれであってもよい。コンフォメーションエピトープは、線状ポリペプチド鎖の異なるセグメントからの空間的に並置されたアミノ酸によって生成される。線状エピトープは、ポリペプチド鎖の隣接するアミノ酸残基によって生成されるものである。特定の状況において、エピトープは、抗原上の糖類、ホスホリル基、またはスルホニル基の部分を含み得る。
当業者に公知の様々な技術を使用して、抗体の抗原結合ドメインがポリペプチドまたはタンパク質内の「1つ以上のアミノ酸と相互作用する」か否かを決定し得る。例示的な技術としては、例えば、Antibodies,Harlow and Lane(Cold Spring Harbour Press,Cold Spring Harb.,NY)に記載されているような慣用的なクロスブロッキングアッセイ、アラニンスキャニング変異分析、ペプチドブロット分析(Reineke,2004,Methods Mol Biol 248:443-463)、及びペプチド切断分析が挙げられる。さらに、エピトープ切除、エピトープ抽出、及び抗原の化学改変などの方法を使用してもよい(Tomer,2000,Protein Science 9:487-496)。抗体の抗原結合ドメインが相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するために使用できる別の方法は、質量分析によって検出される水素/重水素交換である。一般論として、水素/重水素交換法では、目的のタンパク質を重水素標識した後、抗体を重水素標識タンパク質に結合させることを含む。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移して、抗体によって保護されている残基(重水素標識されたまま)を除く全ての残基で水素-重水素交換が発生するようにする。抗体の解離後、標的タンパク質を、プロテアーゼ切断及び質量分析に供し、それにより、抗体が相互作用する特定のアミノ酸に対応する重水素標識残基が明らかになる。例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267(2):252-259、Engen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A-265Aを参照のこと。抗原/抗体複合体のX線結晶学はまた、エピトープマッピングの目的で使用されてもよい。
本発明は、本明細書に記載の特定の例示的な抗体のいずれかと同じエピトープに結合する抗HER2抗体(例えば、本明細書の表1に記載の任意のアミノ酸配列を含む抗体)をさらに含む。同様に、本発明はまた、HER2への結合について本明細書に記載の任意の特定の例示的な抗体と競合する抗HER2抗体(例えば、本明細書の表1に記載のアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)を含む。
本発明はまた、ヒトAPLP2及び/またはカニクイザルAPLP2に低いかまたは検出可能な結合親和性で特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン、及びヒトHER2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、二重特異性抗原結合分子を含み、ここでこの第1の抗原結合ドメインは、本明細書に記載の特定の例示的なAPLP2特異的抗原結合ドメイン(例えば、本明細書の表2に記載のアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)のいずれかと同じ、APLP2上のエピトープに結合するか、及び/またはここで、この第2の抗原結合ドメインは、本明細書に記載の特定の例示的なHER2特異的抗原結合ドメインのいずれかと同じ、HER2上のエピトープに結合する。
同様に、本発明はまた、ヒトAPLP2に特異的に結合する第1の抗原結合ドメイン、及びヒトHER2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子を含み、ここでこの第1の抗原結合ドメインは、本明細書に記載の特定の例示的なAPLP2特異的抗原結合ドメインのいずれかとAPLP2に対する結合について競合するか、及び/またはこの第2の抗原結合ドメインは、本明細書に記載の特定の例示的なHER2特異的抗原結合ドメインのいずれかとHER2への結合について競合する。
特定の抗原結合分子(例えば、抗体)またはその抗原結合ドメインが、当該技術分野で公知の慣用的な方法を用いることによって、本発明の参照抗原結合分子と同じエピトープに結合するか、またはそれと結合について競合するか否かを容易に決定し得る。例えば、試験抗体が本発明の参照二重特異性抗原結合分子と同じ、HER2(またはAPLP2)上のエピトープに結合するか否かを決定するために、参照二重特異性分子は、最初にHER2タンパク質(またはAPLP2タンパク質)に結合され得る。次に、試験抗体がHER2(またはAPLP2)分子に結合する能力を評価する。参照二重特異性抗原結合分子との飽和結合に続いて試験抗体がHER2(またはAPLP2)に結合可能である場合、試験抗体は参照二重特異性抗原結合分子とは異なるHER2(またはAPLP2)のエピトープに結合すると結論付けることができる。一方、参照二重特異性抗原結合分子との飽和結合後に試験抗体がHER2(またはAPLP2)分子に結合できないならば、その試験抗体は、本発明の参照二重特異性抗原結合分子によって結合されるエピトープと同じ、HER2(またはAPLP2)のエピトープに結合し得る。次に、追加のルーチン実験(例えば、ペプチド変異及び結合分析)を実行して、観察された試験抗体の結合の欠如が、実際に参照二重特異性抗原結合分子と同じエピトープへの結合に起因するか、または立体的ブロッキング(または別の現象)が、観察された結合の欠如の原因であるかを確認してもよい。この種の実験は、ELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリー、または当該技術分野で利用可能な任意の他の定量的もしくは定性的抗体結合アッセイを使用して実施してもよい。本発明のある特定の実施形態によれば、例えば、1つの抗原結合タンパク質の1倍、5倍、10倍、20倍、または100倍過剰が、競合的結合アッセイで測定した場合、他方の結合を少なくとも50%、好ましくは75%、90%、さらには99%阻害する場合、同じ(または重複する)エピトープに2つの抗原結合タンパク質が結合する(例えば、Junghans et al.,Cancer Res.1990:50:1495-1502を参照のこと)。あるいは、一方の抗原結合タンパク質の結合を減少または排除する抗原の本質的に全てのアミノ酸変異が、他方の結合を減少または排除する場合、2つの抗原結合タンパク質は同じエピトープに結合すると見なされる。一方の抗原結合タンパク質の結合を減少または排除するアミノ酸変異のサブセットのみが他方の結合を減少または排除する場合、2つの抗原結合タンパク質は「重複するエピトープ」を有すると見なされる。
抗体またはその抗原結合ドメインが参照抗原結合分子との結合について競合するか否かを決定するために、上記の結合方法論を2つの方向で実施する:第1の方向では、参照抗原結合分子は、飽和条件下でHER2タンパク質(またはAPLP2タンパク質)に結合し、続いてHER2(またはAPLP2)分子への試験抗体の結合を評価することが可能である。第2の方向では、試験抗体は、飽和条件下でHER2(またはAPLP2)分子に結合し得、その後、参照抗原結合分子のHER2(またはAPLP2)分子への結合の評価が続く。両方の方向で、最初の(飽和)抗原結合分子のみがHER2(またはAPLP2)分子に結合できる場合、試験抗体及び参照抗原結合分子は、HER2(またはAPLP2)への結合について競合すると結論付けられる。当業者によって理解されるように、参照抗原結合分子との結合について競合する抗体は、必ずしも参照抗体と同じエピトープに結合する必要はないが、重複または隣接するエピトープに結合することによって、参照抗体の結合を立体的に遮断し得る。
抗原結合ドメインの調製及び二重特異性分子の構築
特定の抗原に特異的な抗原結合ドメインは、当該技術分野で公知の任意の抗体生成技術によって調製され得る。一旦得られれば、2つの異なる抗原(例えば、APLP2及びHER2)に特異的な2つの異なる抗原結合ドメインを、慣用的な方法を使用して本発明の二重特異性抗原結合分子を生成するために、互いに対して適切に配置し得る。(本発明の二重特異性抗原結合分子を構築するために使用し得る例示的な二重特異性抗体フォーマットの考察は、本明細書の他のいずれかに示される)。ある特定の実施形態において、本発明の多重特異性抗原結合分子の1つ以上の個々の成分(例えば、重鎖及び軽鎖)は、キメラ、ヒト化、または完全ヒト抗体に由来する。そのような抗体を作製するための方法は、当該技術分野で周知である。例えば、本発明の二重特異性抗原結合分子の重鎖及び/または軽鎖のうちの1つ以上は、VELOCIMMUNE(商標)技術を使用して調製し得る。VELOCIMMUNE(商標)テクノロジー(またはその他のヒト抗体生成テクノロジー)を使用して、ヒト可変領域及びマウス定常領域を有している、特定の抗原(例えば、APLP2またはHER2)に対する高親和性キメラ抗体を、最初に単離する。この抗体は、親和性、選択性、エピトープなどを含む望ましい特徴について特徴付けられ、選択される。マウス定常領域は、本発明の二重特異性抗原結合分子に組み込み得る完全ヒト重鎖及び/または軽鎖を生成するために、所望のヒト定常領域で置き換える。
遺伝子操作された動物を使用して、ヒト二重特異性抗原結合分子を作製してもよい。例えば、内因性マウス免疫グロブリン軽鎖可変配列を再配列及び発現し得ない遺伝子改変マウスを使用してもよく、ここではこのマウスは、内因性マウスカッパ遺伝子座でマウスカッパの定常遺伝子に作動可能に連結されたヒト免疫グロブリン配列によってコードされる1つまたは2つのヒト軽鎖可変ドメインのみを発現する。このような遺伝子改変マウスを使用して、重鎖及び軽鎖の可変領域を単離し、完全にヒトの二重特異性抗原結合分子を産生してもよい。このように、完全にヒトの二重特異性抗原結合分子は、同じ軽鎖に会合する2つの異なる重鎖を含む。(例えば、US 2011/0195454を参照のこと)。完全ヒトとは、抗体またはその抗原結合フラグメントまたは免疫グロブリンドメインを指し、これは抗体、またはその抗原結合フラグメントまたは免疫グロブリンドメインの各ポリペプチドの全長にわたって、ヒト配列に由来するDNAによってコードされるアミノ酸配列を含む。場合によっては、完全にヒトの配列は、ヒトに内因性のタンパク質に由来する。他の例では、完全にヒトのタンパク質またはタンパク質配列は、各構成要素配列がヒト配列に由来するキメラ配列を含む。いずれの理論にも拘束されないが、キメラタンパク質またはキメラ配列は、一般に、例えば、任意の野生型のヒト免疫グロブリン領域またはドメインと比較して、構成要素配列の接合部における免疫原性エピトープの生成を最小限に抑えるように設計されている。
二重特異性抗原結合分子は、プロテインAへのその結合を無効にする改変Fcドメインを有する1つの重鎖で構築され得、したがって、ヘテロ二量体タンパク質を生じる精製方法を可能にする。例えば、米国特許第8,586,713号を参照のこと。したがって、二重特異性抗原結合分子は、第1のCH3ドメイン及び第2のIg CH3ドメインを含み、この第1及び第2のIg CH3ドメインは、少なくとも1つのアミノ酸が互いに異なり、ここで少なくとも1つのアミノ酸の違いが、アミノ酸の相違を欠く二重特異性抗体と比較した、プロテインAに対する二重特異性抗体の結合を減少させる。一実施形態では、第1のIg CH3ドメインは、プロテインAに結合し、第2のIg CH3ドメインは、H95R改変(IMGTエクソン番号付けによる。EU番号付けによるH435R)などのプロテインA結合を低減または無効にする変異/改変を含む。第2のCH3は、Y96F改変(IMGTによる。EUによるY436F)をさらに含んでもよい。
生物学的等価物
本発明は、本明細書に開示される例示的な分子のものとは異なるが、APLP2及び/またはHER2に結合する能力を保持するアミノ酸配列を有する抗原結合分子を包含する。そのようなバリアント分子は、親配列と比較した場合、アミノ酸の1つ以上の付加、欠失、または置換を含み得るが、記載された二重特異性抗原結合分子の生物学的活性と本質的に同等である生物学的活性を示す。
本発明は、本明細書に記載の任意の例示的な抗原結合分子のいずれかと生物学的に同等である抗原結合分子を含む。2つの抗原結合タンパク質または抗体は、例えば、それらが、単一用量または複数用量のいずれでも、同様の実験条件下で、同じモル用量で投与された場合、吸収の速度及び程度が有意な相違を示さない、薬学的な等価物または薬学的な代替物である場合、生物学的等価物であると見なされる。一部の抗原結合タンパク質は、吸収の程度は同等だが、吸収の程度は等価でない場合は、等価物であるか、または代替医薬品と見なされ、それでも生物学的に同等であると見なされることができ、これは、吸収速度のそのような違いは意図的であり、ラベリングに反映されており、例えば慢性的な使用において有効な体内薬物濃度を達成するために必須ではなく、研究された特定の医薬品にとって医学的に重要でないと見なされるためである。
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、それらの安全性、純度、及び効力に臨床的に意味のある相違がない場合、生物学的に等価である。
一実施形態では、患者が参照生成物と生物学的生成物との間で1回以上切り替えることができ、これが、免疫原性の臨床的に有意な変化を含む有害作用のリスクの予想される増大もなく、または有効性の低下もないものである(そのような切り替えなしの継続的な治療と比較して)場合、2つの抗原結合タンパク質は生物学的に等価である。
一実施形態では、2つの抗原結合タンパク質は、それらが両方とも、使用条件(複数可)に対する共通の機序または作用機序によって、そのような機序が知られている範囲で作用する場合、生物学的に同等である。
生物学的等価性は、インビボ及びインビトロの方法によって実証され得る。生物学的等価性の測定としては、例えば、(a)抗体またはその代謝物の濃度が時間の関数として血液、血漿、血清、または他の生体液中で測定される、ヒトまたは他の哺乳動物におけるインビボ試験、(b)ヒトのインビボのバイオアベイラビリティデータと相関しており、それを合理的に予測できるインビトロの試験、(c)抗体(またはその標的)の適切な急性薬理効果が時間の関数として測定される、ヒトまたは他の哺乳動物におけるインビボ試験、ならびに(d)抗原結合タンパク質の安全性、有効性またはバイオアベイラビリティもしくは生物学的等価性を確立する、十分に管理された臨床試験が挙げられる。
本明細書に記載の例示的な二重特異性抗原結合分子の生物学的等価バリアントは、例えば、残基もしくは配列の様々な置換を行うか、または生物学的活性に必要のない末端もしくは内部の残基もしくは配列を削除することによって構築され得る。例えば、生物学的活性に必須ではないシステイン残基を削除するか、他のアミノ酸に置き換えて、再生時に不必要または不正確な分子内ジスルフィド架橋が形成されるのを防いでもよい。他の文脈において、生物学的に等価の抗原結合タンパク質は、分子のグリコシル化特徴を改変するアミノ酸変更、例えば、グリコシル化を排除または除去する変異を含む、本明細書に記載の例示的な二重特異性抗原結合分子のバリアントを含み得る。
種選択性及び種交差反応性
本発明のある特定の実施形態によれば、ヒトAPLP2に結合するが他の種からのAPLP2には結合しない抗原結合分子が提供される。また、ヒトHER2に結合するが他の種由来のHER2には結合しない抗原結合分子も提供される。本発明はまた、ヒトAPLP2及び1つ以上の非ヒト種由来のAPLP2に結合する抗原結合分子、ならびに/またはヒトHER2に、及び1つ以上の非ヒト種由来のHER2に結合する抗原結合分子も含む。
本発明のある特定の例示的な実施形態によれば、ヒトAPLP2及び/またはヒトHER2に結合し、場合によっては、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル、マーモセット、アカゲザルまたはチンパンジーのAPLP2及び/またはHER2のうちの1つ以上に結合してもよいし、または結合しなくてもよい、抗原結合分子が提供される。例えば、本発明の特定の例示的な実施形態では、ヒトAPLP2及びカニクイザルAPLP2に結合する第1の抗原結合ドメイン、ならびにヒトHER2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインを含む、二重特異性抗原結合分子が提供される。
抗体薬物コンジュゲート(ADC)
本発明は、細胞毒性剤、化学療法薬、免疫抑制剤または放射性同位元素などの治療部分にコンジュゲートした抗HER2x抗APLP2抗体またはその抗原結合フラグメントを含む抗体薬物コンジュゲート(ADC)を提供する。治療部分にコンジュゲートした抗HER2抗体またはその抗原結合フラグメントも提供される。一般論として、ADCは以下を含む:A-[L-P]y、ここで、Aは抗原結合分子、例えば、抗HER2x抗APLP2抗体、またはそのフラグメント(例えば、表1または2に列挙された任意のHCDR3アミノ酸配列から選択される少なくともHCDR3を含むフラグメント)、Lはリンカーであり、Pはペイロードまたは治療部分(例えば、細胞毒性剤)であり、yは1から30までの整数である。
様々な実施形態において、ADCは、HCVRアームのCDR、及び表3に記載の配列番号のアミノ酸配列を有する同じLCVRアーム(例えば、HCVR1-HCVR2-LCVR配列番号2-26-10、2-34-10、2-42-10、18-26-10、18-34-10、または18-42-10)表3に記載、または2つの特定のHCVR/LCVR対(例えば、配列番号2/10及び26/10、2/10及び34/10、2/10及び42/10、18/10及び26/10、18/10及び34/10、または18/10及び42/10)を含む、抗HER2x抗APLP2抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。場合によっては、抗HER2x抗APLP2抗体またはフラグメントは、表1及び2に示される配列番号(例えば、配列番号4-6-8-12-14-16及び28-30-32-12-14-16)のアミノ酸配列を有するHC-CDR及びLC-CDRを含む。別の実施形態において、ADCは、表3に記載の配列番号(例えば、配列番号2/10及び26/10、2/10及び34/10、2/10及び42/10、18/10及び26/10、18/10及び34/10、または18/10及び42/10)のアミノ酸配列を有する、HCVRアーム及び同じLCVRアームを含む抗HER2x抗APLP2抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。
様々な実施形態において、ADCは、表1に記載される配列番号(例えば、配列番号2、18及び10)のアミノ酸配列を有するHCVR及びLCVRのCDR、または特定のHCVR/LCVR対(例えば、配列番号2/10または18/10)を含む抗HER2抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。場合によっては、抗HER2抗体またはフラグメントは、表1に記載の配列番号(例えば、配列番号4-6-8-12-14-16、20-22-24-12-14-16)のアミノ酸配列を有するCDRを含む。場合によっては、抗HER2抗体またはフラグメントは、表1に記載の配列番号(例えば、配列番号2、18及び10)のアミノ酸配列、または特定のアミノ酸配列対(例えば、配列番号2/10及び18/10)を有するHCVR及びLCVRを含む。
細胞毒性剤としては、チューブリン相互作用剤及びDNA損傷剤が挙げられるがこれらに限定されない、細胞の成長、生存能力または増殖に有害である任意の薬剤が挙げられる。本開示のこの態様に従って抗HER2抗体にコンジュゲートされ得る適切な細胞毒性剤及び化学療法剤の例としては、例えば、1-(2クロロエチル)-1,2-ジメタンスルホニルヒドラジド、1,8-ジヒドロキシ-ビシクロ[7.3.1]トリデカ-4,9-ジエン-2,6-ジイン-13-オン、1-デヒドロテストステロン、5-フルオロウラシル、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、9-アミノカンプトテシン、アクチノマイシンD、アマニチン、アミノプテリン、アンギジン、アントラサイクリン、アントラマイシン(AMC)、オーリスタチン、ブレオマイシン、ブスルファン、酪酸、カリケアマイシン(例えば、カリケアマイシンγ1)、カンプトテシン、カルミノマイシン、カルムスチン、セマドチン、シスプラチン、コルヒチン、コンブレタスタチン、シクロホスファミド、シタラビン、サイトカラシンB、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デカルバジン、ジアセトキシペンチルドキソルビシン、ジブロモマンニトール、ジヒドロキシアントラシンジオン、ジソラゾール、ドラスタチン(例えば、ドラスタチン10)、ドキソルビシン、デュオカルマイシン、エキノマイシン、エレウテロビン、エメチン、エポチロン、エスペラマイシン、エストラムスチン、エチジウムブロマイド、エトポシド、フルオロウラシル、ゲルダナマイシン、グラミシジンD、グルココルチコイド、イリノテカン、キネシン紡錘体タンパク質(KSP)阻害剤、レプトマイシン、ロイロシン、リドカイン、ロムスチン(CCNU)、メイタンシノイド、メクロレタミン、メルファラン、メルカトプリン、メトプテリン、メトトレキサート、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、N8-アセチルスペルミジン、ポドフィロトキシン、プロカイン、プロプラノロール、プテリジン、ピューロマイシン、ピロロベンゾジアゼピン(PBD)、リゾキシン、ストレプトゾトシン、タリソマイシン、タキソール、テノポシド、テトラカイン、チオエパクロラムブシル、トマイマイシン、トポテカン、チューブリシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、及び任意の前述の誘導体が挙げられる。
ある特定の実施形態によれば、抗HER2抗体にコンジュゲートされる細胞毒性剤は、DM1またはDM4などのメイタンシノイド、トマイマイシン誘導体、またはドラスタチン誘導体である。ある特定の実施形態によれば、抗HER2抗体にコンジュゲートされる細胞毒性剤は、MMAE、MMAF、またはそれらの誘導体などのオーリスタチンである。当該技術分野で公知である他の細胞毒性剤は、例えば、リシン、C.difficile毒素、シュードモナス外毒素、リシン、ジフテリア毒素、ボツリヌス毒素、ブリオジン、サポリン、ヤマゴボウ毒素(すなわち、フィラカトキシン及びフィトラシゲニン)などのタンパク質毒素、ならびにSapra et al.,Pharmacol.& Therapeutics,2013,138452-469に記載の毒性剤などの他の毒性剤を含み、本開示の範囲内で企図されている。
ある特定の実施形態において、細胞毒性剤は、メイタンシノイド、例えば、メイタンシンの誘導体である。適切なメイタンシノイドとしては、DM1、DM4、またはそれらの誘導体、立体異性体、もしくは同位体分子種が挙げられる。適切なメイタンシノイドとしてはまた、限定するものではないが、全体が参照によって本明細書に組み込まれる、WO2014/145090A1、WO2015/031396A1、US2016/0375147A1、及びUS2017/0209591A1に開示されているものが挙げられる。
いくつかの実施形態において、メイタンシノイドは以下の構造を有し:
式中、Aは、任意に置換されているアリーレンまたはヘテロアリーレンである。
いくつかの実施形態において、メイタンシノイドは以下の構造を有し:
式中、Aは、任意に置換されているアリーレンまたはヘテロアリーレンである。
いくつかの実施形態において、メイタンシノイドは以下の構造を有し:
式中、nは、1~12の整数であり、R1は、アルキルである。
いくつかの実施形態において、メイタンシノイドは以下である:
いくつかの実施形態において、メイタンシノイドは:
である。
いくつかの実施形態において、メイタンシノイドは:
である。
1つ以上の放射性核種にコンジュゲートされた抗HER2抗体を含む抗体-放射性核種コンジュゲート(ARC)も本明細書で提供される。本開示のこの態様の文脈で使用され得る例示的な放射性核種としては、限定するものではないが、例えば、225Ac、212Bi、213Bi、131I、186Re、227Th、222Rn、223Ra、224Ra、及び90Yが挙げられる。
本明細書で提供されるある特定の実施形態では、リンカー分子を介して細胞毒性剤(例えば、上記で開示された細胞毒性剤のいずれか)にコンジュゲートされた抗MET抗体または抗HER2x抗APLP2二重特異性抗原結合タンパク質を含むADCが提供される。リンカーは、本明細書に記載の抗体または抗原結合タンパク質を、治療部分、例えば、細胞毒性剤と連結、接続、または結合する任意の基または部分である。適切なリンカーは、それぞれの内容が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、例えば、Antibody-Drug Conjugates and Immunotoxins;Phillips,G.L.,Ed.;Springer Verlag:New York,2013、Antibody-Drug Conjugates;Ducry,L.,Ed.,;Humana Press,2013、Antibody-Drug Conjugates;Wang,J.,Shen,W.-C., and Zaro,J.L.,Eds.;Springer International Publishing,2015,に見出され得る。一般に、本明細書に記載の抗体コンジュゲートに適した結合剤リンカーは、抗体の循環半減期を利用するのに十分に安定であり、同時に、コンジュゲートの抗原媒介性内部移行後にそのペイロードを放出し得るリンカーである。リンカーは、切断可能であっても、切断不可能であってもよい。切断可能なリンカーには、内部移行に続く細胞内代謝によって切断されるリンカー、例えば、加水分解、還元、または酵素反応による切断が含まれる。切断不可能なリンカーとしては、内部移行後の抗体のリソソーム分解を介して付着したペイロードを放出するリンカーが挙げられる。適切なリンカーとしては、限定するものではないが、酸に不安定なリンカー、加水分解に不安定なリンカー、酵素的に切断可能なリンカー、還元に不安定なリンカー、自己犠牲リンカー、及び切断不可能なリンカーが挙げられる。適切なリンカーとしては、また、限定するものではないが、ペプチド、グルクロニド、スクシンイミド-チオエーテル、ポリエチレングリコール(PEG)単位、ヒドラゾン、マル-カプロイル単位、ジペプチド単位、バリン-シトルリン単位、及びパラ-アミノベンジル(PAB)単位であるか、またはそれらを含むリンカーが挙げられる。
当該技術分野で公知の任意のリンカー分子またはリンカー技術を使用して、本開示のADCを作成または構築し得る。ある特定の実施形態において、リンカーは、切断可能なリンカーである。他の実施形態によれば、リンカーは、切断不可能なリンカーである。本開示の文脈で使用し得る例示的なリンカーとしては、例えば、MC(6-マレイミドカプロイル)、MP(マレイミドプロパノイル)、val-cit(バリン-シトルリン)、val-ala(バリン-アラニン)、val-gly(バリン-グリシン)、プロテアーゼ切断可能リンカーのジペプチド部位、ala-phe(アラニン-フェニルアラニン)、プロテアーゼ切断可能リンカーのジペプチド部位、PAB(p-アミノベンジルオキシカルボニル)、SPP(N-スクシンイミジル4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート)、SMCC(N-スクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1カルボキシレート)、SIAB(N-スクシンイミジル(4-ヨード-アセチル)アミノベンゾエート)、ならびにそれらのバリアント及び組み合わせを含むか、それからなるリンカーが挙げられる。本開示の文脈で使用され得るリンカーの追加の例は、内容全体が参照により本明細書に組み込まれる、例えば、米国特許第7,754,681号及びDucry,Bioconjugate Chem.,2010,21:5-13、及びそこに引用されている参考文献に示されている。
ある特定の実施形態において、リンカーは、生理学的条件において安定である。ある特定の実施形態では、リンカーは切断可能であり、例えば、酵素の存在下で、または特定のpH範囲もしくは値で、少なくともペイロード部分を放出し得る。いくつかの実施形態において、リンカーは、酵素切断可能な部分を含む。例示的な酵素切断可能部分としては、限定するものではないが、ペプチド結合、エステル結合、ヒドラゾン、及びジスルフィド結合が挙げられる。いくつかの実施形態において、リンカーは、カテプシン切断可能なリンカーを含む。
いくつかの実施形態において、リンカーは、切断不可能な部分を含む。
適切なリンカーとしては、また単一の結合剤、例えば抗体の2つのシステイン残基に化学的に結合しているリンカーも含まれるが、これらに限定されない。このようなリンカーは、コンジュゲーションプロセスの結果として破壊される抗体のジスルフィド結合を模倣するのに役立ち得る。
いくつかの実施形態において、リンカーは、1つ以上のアミノ酸を含む。適切なアミノ酸としては、天然、非天然、標準、非標準、タンパク新生、非タンパク新生、及びL-またはD-α-アミノ酸が挙げられる。いくつかの実施形態において、リンカーは、アラニン、バリン、グリシン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、トリプトファン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、またはシトルリン、その誘導体、またはそれらの組み合わせを含む。ある特定の実施形態において、アミノ酸の1つ以上の側鎖は、以下に記載される側鎖基に連結されている。いくつかの実施形態において、リンカーは、バリン及びシトルリンを含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、リジン、バリン、及びシトルリンを含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、リジン、バリン、及びアラニンを含む。いくつかの実施形態において、リンカーは、バリン及びアラニンを含む。
いくつかの実施形態において、リンカーは、自己犠牲基を含む。自己犠牲基は、当業者に公知の任意のそのような基であり得る。特定の実施形態では、自己犠牲基は、p-アミノベンジル(PAB)、またはその誘導体である。有用な誘導体としては、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PABC)が挙げられる。当業者は、自己犠牲基が、ペイロードからリンカーの残りの原子を放出する化学反応を実行し得ることを認識するであろう。
いくつかの実施形態において、リンカーは以下であり:
式中、
は、抗体または抗原結合タンパク質に(例えば、リジン残基を介して)対する結合であり、かつ
は、細胞毒性剤(例えば、DM1)に対する結合である。いくつかの実施形態において、リンカーは以下であり:
式中、
は、抗体または抗原結合タンパク質に(例えば、リジン残基を介して)対する結合であり、かつ
は、細胞毒性剤(例えば、DM1)に対する結合である。ある特定の実施形態では、リンカーは:
である。
ある特定の実施形態では、リンカーは:
である。
いくつかの実施形態において、リンカーは、マレイミジルメチル-4-トランス-カルボヘキサンカルボキシスクシネート:
由来である。
いくつかの実施形態において、リンカーは以下であり:
式中、
は、抗体または抗原結合タンパク質に(例えば、リジン残基を介して)対する結合であり、かつ
は、細胞毒性剤(例えば、以下の構造を有する化合物:
)に対する結合である。
本開示は、リンカーが、抗体または抗原結合分子内の特定のアミノ酸での付着を通じて、抗HER2×抗APLP2二重特異性抗原結合タンパク質または抗HER2抗体を薬物または細胞毒素に接続する、ADCを含む。この態様の文脈で使用され得る例示的なアミノ酸付着、例えば、リジン(例えば、米国特許第5,208,020号、US2010/0129314、Hollander et al.,Bioconjugate Chem.,2008,19:358-361、WO2005/089808、米国特許第5,714,586号、及びUS2013/0101546を参照のこと)、システイン(例えば、US2007/0258987、WO2013/055993、WO2013/055990、WO2013/053873、WO2013/053872、WO2011/130598、US2013/0101546、及び米国特許第7,750,116号を参照のこと)、セレノシステイン(例えば、WO2008/122039、及びHofer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA、2008,105:12451-12456を参照のこと)、ホルミルグリシン(例えば、Carrico et al.,Nat.Chem.Biol.,2007,3:321-322、Agarwal et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,2013、110:46-51、及びRabuka et al.,Nat.Protocols,2012,10:1052-1067を参照のこと)、非天然アミノ酸(例えば、WO2013/068874、及びWO2012/166559を参照のこと)、及び酸性アミノ酸(例えば、WO2012/05982を参照のこと)。リンカーはまた、炭水化物への付着を介して抗原結合タンパク質にコンジュゲートされてもよい(例えば、US2008/0305497、WO2014/065661、及びRyan et al.,Food&Agriculture Immunol.,2001,13:127-130を参照のこと)及びジスルフィドリンカー(例えば、WO2013/085925、WO2010/010324、WO2011/018611、及びShaunak et al.,Nat.Chem.Biol.,2006、2:312-313を参照のこと)。部位特異的コンジュゲーション技術を使用して、抗体または抗原結合タンパク質の特定の残基にコンジュゲーションを向けてもよい(例えば、Schumacher et al.J Clin Immunol(2016)36(Suppl 1):100を参照のこと)。部位特異的コンジュゲーション技術には、限定するものではないが、トランスグルタミナーゼを介したグルタミンコンジュゲーションが挙げられる(例えば、Schibli,Angew Chemie Inter Ed.2010,49,9995を参照のこと)。
ある特定の実施形態によれば、本開示は、ADCを提供し、ここで、本明細書に記載の抗HER2x抗APLP2二重特異性抗原結合タンパク質または抗HER2抗体は、その開示が、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際特許公開WO2014/145090に記載のリンカー薬物組成物にコンジュゲートされている(例えば、化合物「7」はまた、本明細書では「M0026」とも呼ばれ、以下に示される)。
本明細書に開示される抗HER2×抗APLP2二重特異性抗原結合タンパク質または抗HER2抗体を含む、抗体薬物コンジュゲートも本明細書で提供され、ここで、当該抗HER2×抗APLP2二重特異性抗原結合タンパク質または抗HER2抗体は細胞毒性剤にコンジュゲートされている。ある特定の実施形態において、この細胞毒性剤は、メイタンシノイドである。ある特定の実施形態において、メイタンシノイドは、以下の式:
を有する化合物であり、
式中、nは、1~12の整数であり、R1はアルキルである。ある特定の実施形態では、メイタンシノイドは、
である。ある特定の実施形態において、この細胞毒性剤はメイタンシノイドであり、メイタンシノイドは、切断不可能なリンカーを介して抗体に共有結合されている。ある特定の実施形態において、細胞毒性剤はメイタンシノイドであり、メイタンシノイドは、切断可能なリンカーを介して抗体に共有結合されている。
一実施形態では、この抗体は、以下にコンジュゲートされ:
式中、
は、抗体に対する結合である。
一実施形態では、この抗体は、以下にコンジュゲートされ:
式中、
は、抗体に対する結合である。
一実施形態では、この抗体は、以下に対してコンジュゲートされ:
式中、
は、抗体に対する結合である。
一実施形態では、この抗体は、以下に対してコンジュゲートされ:
式中、
は、抗体に対する結合である。
いくつかの実施形態において、これらのコンジュゲートは、以下の構造を有し:
Ab-[L-Pay]n
式中:
Abは、本明細書において記載されるような抗HER2x抗APLP2二重特異性抗原結合タンパク質または抗HER2抗体であり、
Lはリンカーであり、
Payは、細胞毒性剤であり、かつ
nは1~10の整数である。
いくつかの実施形態において、Abは、表1または3に記載される任意の抗体または抗原結合タンパク質である。
いくつかの実施形態において、Payload(ペイロード)は、メイタンシノイドである。
いくつかの実施形態において、Payは:
であり、
式中、R1はアルキルである。
いくつかの実施形態において、Payは:
である。
いくつかの実施形態において、Payは:
である。
いくつかの実施形態において、nは、2~5の整数である。
いくつかの実施形態において、-L-Payは:
であり、
式中、
は、抗体に対する結合である。
いくつかの実施形態において、-L-Payは:
であり、
式中
は、抗体に対する結合である。
いくつかの実施形態において、-L-Payは、
であり、
式中、
は、抗体に対する結合である。
いくつかの実施形態において、-L-Payは:
であり、
式中、
は、
抗体に対する結合である。
いくつかの実施形態において、-L-Payは:
であり、
式中、
は、抗体に対する結合である。
本発明は、抗HER2抗体またはその抗原結合フラグメント、及びDM1などであるがこれらに限定されない治療剤(「Pay」)(例えば、細胞毒性剤)を含む抗体薬物コンジュゲート(ADC)を提供する。いくつかの実施形態において、抗HER2抗体または抗原結合フラグメント及び細胞毒性剤(DM1などであるがこれに限定されない)は、SMCCなどであるがこれに限定されないリンカー(「L」)を介して共有結合される。様々な実施形態において、ADCは、
表1に記載の配列番号(例えば、配列番号2、18及び10)のアミノ酸配列を有するHCVR及びLCVRのCDR、特定のHCVR/LCVR対(例えば、配列番号2/10または18/10)、及び/または表1に示される配列番号(例えば、配列番号4-6-8-12-14-16、20-22-24-12-14-16)のアミノ酸配列を有するCDR、を含む抗HER2抗体またはその抗原結合フラグメント、ならびに
メイタンシノイド、任意にDM1、を含み、
任意に、ここでこの抗HER2抗体またはその抗原結合フラグメント及びメイタンシノイドは、リンカー、例えば、SMCCを介して共有結合されている。
いくつかの実施形態において、ADCは、表1に記載の配列番号(例えば、配列番号2、18及び10)のアミノ酸配列を有するHCVR及びLCVRのCDR、特定のHCVR/LCVR対(例えば、配列番号2/10または18/10)、及び/または表1に記載の配列番号(例えば、配列番号4-6-8-12-14-16、20-22-24-12-14-16)のアミノ酸配列を有するCDRを含み、
にコンジュゲートされた、抗HER2抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。
いくつかの実施形態において、ADCは、表1に記載の配列番号(例えば、配列番号2、18及び10)のアミノ酸配列を有するHCVR及びLCVRのCDR、特定のHCVR/LCVR対(例えば、配列番号2/10または18/10)、及び/または表1に記載される配列番号(例えば、配列番号4-6-8-12-14-16、20-22-24-12-14-16)のアミノ酸配列を有するCDRを含む抗HER2抗体またはその抗原結合フラグメント、ならびに
を含み、
式中、
は、抗HER2抗体またはその抗原結合フラグメントに対する結合である。
いくつかの実施形態において、ADCは、表1に記載される、配列番号(例えば、配列番号2、18及び10)のアミノ酸配列を有するHCVR及びLCVRのCDR、特定のHCVR/LCVR対(例えば、配列番号2/10または18/10)、及び/または配列番号(例えば、配列番号4-6-8-12-14-16、20-22-24-12-14-16)のアミノ酸配列を有するCDRを含む、抗HER2抗体またはその抗原結合フラグメント、ならびに
を含み、
式中、
は、抗HER2抗体またはその抗原結合フラグメントに対する結合である。
いくつかの実施形態において、ADCは、表1に記載の配列番号(例えば、配列番号2、18及び10)のアミノ酸配列を有するHCVR及びLCVRのCDR、特定のHCVR/LCVR対(例えば、配列番号2/10または18/10)、及び/または表1に記載されている配列番号(例えば、4-6-8-12-14-16、20-22-24-12-14-16)のアミノ酸配列を有するCDRを含む、抗HER2抗体またはその抗原結合フラグメント、ならびに
を含み、
式中、
は、抗HER2抗体またはその抗原結合フラグメントに対する結合である。
様々な実施形態において、ADCは、表1に記載の配列番号(例えば、配列番号2、18及び10)のアミノ酸配列を有するHCVR及びLCVRのCDR、または特定のHCVR/LCVR対(例えば、配列番号2/10または18/10)を含む、抗HER2抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。場合によっては、抗HER2抗体またはフラグメントは、表1に記載の配列番号(例えば、配列番号4-6-8-12-14-16、20-22-24-12-14-16)のアミノ酸配列を有するCDRを含む。場合によっては、抗HER2抗体またはフラグメントは、表1に記載の配列番号(例えば、配列番号2、18及び10)のアミノ酸配列を有するHCVR及びLCVR、または特定のアミノ酸配列対(例えば、配列番号2/10及び18/10)を含む。
様々な実施形態において、ADCは、HCVRアームのCDR、及び表3に記載の配列番号のアミノ酸配列を有する同じLCVRアーム(例えば、HCVR1-HCVR2-LCVR配列番号2-26-10、2-34-10、2-42-10、18-26-10、18-34-10、または18-42-10を有する)、または2つの特定のHCVR/LCVR対(例えば、配列番号2/10及び26/10、2/10及び34/10、2/10及び42/10、18/10及び26/10、18/10及び34/10、または18/10及び42/10)を含む、抗HER2x抗APLP2抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。場合によっては、抗HER2x抗APLP2抗体またはフラグメントは、表1及び2に記載の配列番号(例えば、配列番号4-6-8-12-14-16及び28-30-32-12-14-16)のアミノ酸配列を有するHC-CDR及びLC-CDRを含む。別の実施形態において、ADCは、HCVRアーム、及び表3に記載の配列番号(例えば、配列番号2/10及び26/10、2/10及び34/10、2/10及び42/10、18/10及び26/10、18/10及び34/10、または18/10及び42/10)のアミノ酸配列を有する同じLCVRアームを含む、抗HER2x抗APLP2抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。
いくつかの実施形態において、ADCは、抗HER2x抗APLP2抗体またはその抗原結合フラグメント、ならびにDM1などであるがこれに限定されない治療剤(「Pay」)(例えば、細胞毒性剤)を含む。いくつかの実施形態において、抗HER2x抗APLP2抗体またはその抗原結合フラグメント及び細胞毒性剤(DM1などであるがこれに限定されない)は、限定するものではないが、SMCCなど、リンカー(「L」)を介して共有結合されている。様々な実施形態において、ADCは、
表3に記載の配列番号のアミノ酸配列を有するHCVRアーム及び同じLCVRアームのCDR(例えば、HCVR1-HCVR2-LCVR配列番号2-26-10、2-34-10、2-42-10、18-26-10、18-34-10、または18-42-10を有する)、2つの特定のHCVR/LCVR対(例えば、配列番号2/10及び26/10、2/10及び34/10、2/10及び42/10、18/10及び26/10、18/10及び34/10、または18/10及び42/10)、表1及び2に記載の配列番号のアミノ酸配列を有するHC-CDR及びLC-CDR(例えば、配列番号4-6-8-12-14-16及び28-30-32-12-14-16)、ならびに/または表3に記載の配列番号のアミノ酸配列を有するHCVRアーム及び同じLCVRアーム(例えば、配列番号2/10及び26/10、2/10及び34/10、2/10及び42/10、18/10及び26/10、18/10及び34/10、または18/10及び42/10)を含む、抗HER2x抗APLP2抗体またはその抗原結合フラグメント、ならびに
メイタンシノイド、任意にDM1、
を含み、
任意に、この抗HER2x抗APLP2抗体またはその抗原結合フラグメント及びメイタンシノイドが、リンカー、例えば、SMCCを介して共有結合されている。
いくつかの実施形態において、ADCは、表3に記載する配列番号のアミノ酸配列を有する、HCVRアーム及び同じLCVRアームのCDR(例えば、HCVR1-HCVR2-LCVR配列番号2-26-10、2-34-10、2-42-10、18-26-10、18-34-10、または18-42-10を有する)、2つの特定のHCVR/LCVR対(例えば、配列番号2/10及び26/10、2/10及び34/10、2/10及び42/10、18/10及び26/10、18/10及び34/10、または18/10及び42/10)、表1及び2に記載の配列番号のアミノ酸配列を有するHC-CDR及びLC-CDR(例えば、配列番号4-6-8-12-14-16及び28-30-32-12-14-16)、及び/または表3に記載の配列番号のアミノ酸配列を有するHCVRアーム及び同じLCVRアーム(例えば、配列番号2/10及び26/10、2/10及び34/10、2/10及び42/10、18/10及び26/10、18/10及び34/10、または18/10及び42/10)を含む、以下
にコンジュゲートされた、抗HER2x抗APLP2抗体またはその抗原結合フラグメントを含む。
いくつかの実施形態において、ADCは、表3に記載の配列番号のアミノ酸配列を有するHCVRアーム及び同じLCVRアームのCDR(例えば、HCVR1-HCVR2-LCVR配列番号2-26-10、2-34-10、2-42-10、18-26-10、18-34-10、または18-42-10)、2つの特定のHCVR/LCVR対(例えば、配列番号2/10及び26/10、2/10及び34/10、2/10及び42/10、18/10及び26/10、18/10及び34/10、または18/10及び42/10)、表1及び2に記載の配列番号のアミノ酸配列を有するHC-CDR及びLC-CDR(例えば、配列番号4-6-8-12-14-16及び28-30-32-12-14-16)、及び/または表3に記載の配列番号のアミノ酸配列を有するHCVRアーム及び同じLCVRアーム(例えば、配列番号2/10及び26/10、2/10及び34/10、2/10及び42/10、18/10及び26/10、18/10及び34/10、または18/10及び42/10)を含む、抗HER2x抗APLP2抗体またはその抗原結合フラグメント、ならびに
を含み、
式中、
は、抗HER2x抗APLP2抗体またはその抗原結合フラグメントに対する結合である。
いくつかの実施形態において、ADCは、表3に記載の配列番号のアミノ酸配列を有するHCVRアーム及び同じLCVRアームのCDR(例えば、HCVR1-HCVR2-LCVR配列番号2-26-10、2-34-10、2-42-10、18-26-10、18-34-10、または18-42-10)、2つの特定のHCVR/LCVR対(例えば、配列番号2/10及び26/10、2/10及び34/10、2/10及び42/10、18/10及び26/10、18/10及び34/10、または18/10及び42/10)、表1及び2に記載の配列番号のアミノ酸配列を有するHC-CDR及びLC-CDR(例えば、配列番号4-6-8-12-14-16及び28-30-32-12-14-16)、及び/または表3に記載の配列番号のアミノ酸配列を有するHCVRアーム及び同じLCVRアーム(例えば、配列番号2/10及び26/10、2/10及び34/10、2/10及び42/10、18/10及び26/10、18/10及び34/10、または18/10及び42/10)、を含む抗HER2x抗APLP2抗体またはその抗原結合フラグメント、ならびに
を含み、
式中、
は、抗HER2x抗APLP2抗体またはその抗原結合フラグメントに対する結合である。
いくつかの実施形態において、ADCは、表3に記載の配列番号のアミノ酸配列を有するHCVRアーム及び同じLCVRアームのCDR(例えば、HCVR1-HCVR2-LCVR配列番号2-26-10、2-34-10、2-42-10、18-26-10、18-34-10、または18-42-10)、2つの特定のHCVR/LCVR対(例えば、配列番号2/10及び26/10、2/10及び34/10、2/10及び42/10、18/10及び26/10、18/10及び34/10、または18/10及び42/10)、表1及び2に記載の配列番号のアミノ酸配列を有するHC-CDR及びLC-CDR(例えば、配列番号4-6-8-12-14-16及び28-30-32-12-14-16)、ならびに/または表3に記載の配列番号のアミノ酸配列を有するHCVRアーム及び同じLCVRアーム(例えば、配列番号2/10及び26/10、2/10及び34/10、2/10及び42/10、18/10及び26/10、18/10及び34/10、または18/10及び42/10)を含む抗HER2x抗APLP2抗体またはその抗原結合フラグメント、ならびに
を含み、
式中、
は、抗HER2x抗APLP2抗体またはその抗原結合フラグメントに対する結合である。
本明細書に記載の抗体薬物コンジュゲートは、当業者に公知のコンジュゲーション条件を使用して調製され得る(例えば、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、Doronina et al.Nature Biotechnology 2003,21,7,778を参照のこと)。いくつかの実施形態において、抗HER2×抗APLP2二重特異性抗原結合タンパク質または抗HER2抗体薬物コンジュゲートは、本明細書に記載の抗HER2×抗APLP2二重特異性抗原結合タンパク質または抗HER2抗体を、所望のリンカー及び細胞毒性剤を含む化合物と接触させることによって調製され、ここで当該リンカーは、抗体または抗原結合タンパク質と反応するある部分、例えば、抗体または抗原結合タンパク質の所望の残基で、その部分を有する。
いくつかの実施形態において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の抗HER2×抗APLP2二重特異性抗原結合タンパク質または抗HER2抗体を、以下の式A1を有する化合物
及び水性希釈液と接触させることを含む抗体薬物コンジュゲートを調製するためのプロセスである。
いくつかの実施形態において、式A1の化合物は、化学量論的に過剰に存在する。いくつかの実施形態において、式A1の化合物は、5~6倍の化学量論的に過剰で存在する。いくつかの実施形態において、水性希釈剤は、HEPESを含む。いくつかの実施形態において、水性希釈剤は、DMAを含む。
いくつかの実施形態において、式A1の化合物は、式A2またはA3の化合物である:
いくつかの実施形態において、式A2の化合物は、立体的に純粋なA3である。いくつかの実施形態において、式A1の化合物は、式A1またはA2の化合物を含み、ここで、A1またはA2の化合物は、50%を超えるジアステレオマー過剰率で存在する。ある特定の実施形態において、ジアステレオマー過剰率は、70%を超える。ある特定の実施形態において、ジアステレオマー過剰率は、90%を超える。ある特定の実施形態において、ジアステレオマー過剰率は、95%を超える。構造A1、A2、及びA3は、個別にまたは総称的にSMCC-DM1として知られている。
「ジアステレオマー過剰率」という用語は、組成物中の残りのジアステレオマーと比較した、所望の単一のジアステレオマーのモル分率の間の相違を指す。ジアステレオマー過剰率は次のように計算される:(単一のジアステレオマーの量)-(他のジアステレオマーの量)/1。例えば、90%の1及び10%の2、3、4、またはそれらの混合物を含む組成物は、80%のジアステレオマー過剰率を有する[(90-10)/1]。95%の1及び5%の2、3、4、またはそれらの混合物を含む組成物は、90%[(95-5)/1]のジアステレオマー過剰率を有する。99%の1及び1%の2、3、4、またはそれらの混合物を含む組成物は、98%[(99-1)/1]のジアステレオマー過剰率を有する。ジアステレオマー過剰率は、1、2、3、または4のいずれかについて同様に計算され得る。
いくつかの実施形態において、式A1の化合物は、式(a)の化合物:
と式(b)の化合物
とを、シリカゲル及び希釈液の存在下で接触させることによって調製される。いくつかの実施形態において、この希釈液は、有機溶媒及び水を含む。
本明細書に提供されるのはまた、以下のプロセスによって調製される生成物である:
(i)式(a)の化合物:
と、式(b)の化合物:
とを、シリカゲル及び希釈液の存在下で接触させて、中間体を合成することと、
(ii)本明細書に記載の抗HER2x抗APLP2二重特異性抗原結合タンパク質または抗HER2抗体とこの中間体及び水性希釈液とを接触させること。
いくつかの実施形態において、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の抗HER2×抗APLP2二重特異性抗原結合タンパク質または抗HER2抗体を、以下の式B:
を有する化合物と接触させることを含む、抗体薬物コンジュゲートを調製するためのプロセスであり、
式中、LGは、脱離基、及び水性希釈液である。
いくつかの実施形態において、式Bの化合物は、化学量論的に過剰に存在する。いくつかの実施形態において、式Bの化合物は、5~6倍の化学量論的過剰で存在する。いくつかの実施形態において、水性希釈剤は、HEPESを含む。いくつかの実施形態において、水性希釈剤は、DMAを含む。いくつかの実施形態において、-C(O)-LGは、エステル、例えば、NHSまたはペンタフルオロフェニルエステルである。
いくつかの実施形態において、式Bの化合物は、化合物Iとして公知の式B1の化合物である:
いくつかの実施形態において、式Cの化合物は、化合物IIとして公知である:
薬物対抗体比(DAR)は、抗体または抗原結合フラグメントにコンジュゲートした薬物の平均数であり、これは、ADCの効力、力価、及び薬物動態に重要な影響を有する。様々な実施形態において、DARは、1抗体あたり1、2、3、4、5、6、7、または8個の薬物分子からのものである。いくつかの実施形態では、DARは1から4である。ある特定の実施形態では、DARは2~4である。ある場合には、DARは2~3である。ある場合には、DARは3~4である。ある実施形態では、DARは、1~10、1~20または1~30(すなわち、1抗体またはその抗原結合フラグメントあたり1~30の薬物分子)である。
治療の処方及び投与
本発明は、本発明の抗原結合分子を含む薬学的組成物を提供する。本発明の薬学的組成物は、改善された移動、送達、耐性などを提供する適切な担体、賦形剤、及び他の薬剤と共に処方される。多数の適切な処方が、全ての医薬品化学者に公知の処方集に見出され得る:Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PA。これらの製剤としては、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質類、脂質(カチオン性またはアニオン性)含有ベシクル(LIPOFECTIN(商標),Life Technologies,Carlsbad,CAなど)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油型及び油中水型エマルジョン、エマルジョンカーボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、及びカーボワックスを含む半固体混合物が挙げられる。Powell et al.“Compendium of excipients for parenteral formulations”PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238-311も参照のこと。
患者に投与される抗原結合分子の用量は、患者の年齢及びサイズ、標的疾患、状態、投与経路などに応じて変化し得る。好ましい用量は、通常、体重または体表面積に従って計算される。本発明の二重特異性抗原結合分子が成人患者の治療目的で使用される場合、本発明の二重特異性抗原結合分子を、通常、体重1kgあたり約0.01~約20mg/kg、より好ましくは約0.02~約7、約0.03~約5、または約0.05~約3mg/kgの単回用量で静脈内投与することが有利であり得る。状態の重症度に応じて、治療の頻度及び期間を調整してもよい。二重特異性抗原結合分子を投与するための効果的な投与量及びスケジュールは、経験的に決定され得る。例えば、患者の進行は、定期的なアセスメントによってモニターされ得、それに応じて用量が調整され得る。さらに、投与量の種間での拡大縮小は、当該技術分野で周知の方法を使用して実施され得る(例えば、Mordenti et al.,1991,Pharmaceut.Res.8:1351)。
様々な送達システムが公知であり、本発明の薬学的組成物、例えば、リポソームへのカプセル化、微粒子、マイクロカプセル、変異ウイルスを発現し得る組換え細胞、受容体媒介エンドサイトーシスを投与するために使用され得る(例えば、Wu et al.,1987,J.Biol.Chem.262:4429-4432を参照のこと)。導入の方法としては、限定するものではないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路が挙げられる。組成物は、任意の便利な経路によって、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮または粘膜皮膚内層(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜など)を介した吸収によって投与してもよく、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与してもよい。投与は全身的であっても、または局所的であってもよい。
本発明の薬学的組成物は、標準的な針及び注射器を用いて皮下または静脈内に送達され得る。さらに、皮下送達に関して、ペン送達デバイスは、本発明の薬学的組成物を送達する際の用途を容易に有する。そのようなペン送達デバイスは、再利用可能であっても、または使い捨て可能であってもよい。再利用可能なペン送達デバイスは、一般に、薬学的組成物を含む交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内の全ての薬学的組成物が一旦投与され、カートリッジが空になったら、その空のカートリッジは容易に廃棄され得、薬学的組成物を含む新しいカートリッジと交換され得る。その後、ペン送達デバイスは再利用され得る。使い捨てペン送達デバイスには、交換可能なカートリッジはない。むしろ、使い捨てペン送達デバイスは、デバイス内のリザーバーに保持された薬学的組成物が事前に充填されている。リザーバーから薬学的組成物が一旦、空になれば、そのデバイス全体が廃棄される。
多数の再利用可能なペン及び自動注射器送達デバイスは、本発明の薬学的組成物の皮下送達において用途を有する。例としては、限定するものではないが、ほんの数例を挙げると、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.,Woodstock,UK)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems,Bergdorf,Switzerland)、HUMALOG MIX75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.,Indianapolis,IN)、NOVOPEN(商標)I、II及びIII(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk,Copenhagen,Denmark)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson、Franklin Lakes,NJ)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、及びOPTICLIK(商標)(sanofi-aventis、Frankfurt,Germany)が、挙げられる。本発明の薬学的組成物の皮下送達に用途を有する使い捨てペン送達デバイスの例としては、限定するものではないが、ほんの数例を挙げれば、SOLOSTAR(商標)ペン(sanofi-aventis)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk)、及びKWIKPEN(商標)(Eli Lilly)、SURECLICK(商標)Autoinjector(Amgen,Thousand Oaks,CA)、PENLET(商標)(Haselmeier、Stuttgart,Germany)、EPIPEN(Dey,L.P.)、及びHUMIRA(商標)Pen(Abbott Labs,Abbott Park IL)が挙げられる。
ある特定の状況において、薬学的組成物は、制御放出システムで送達され得る。一実施形態では、ポンプを使用してもよい(Langer,前出、Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用してもよい。Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),1974,CRC Pres.,Boca Raton,Floridaを参照のこと。さらに別の実施形態では、制御放出システムは、組成物の標的の近くに配置してもよく、したがって、全身用量のほんの一部しか必要としない(例えば、Goodson,1984,Medical Applications of Controlled Release,前出,vol.2,pp.115-138を参照のこと)。他の制御放出システムは、Langer,1990,Science 249:1527-1533による概説で考察されている。
注射可能な調製物は、静脈内、皮下、皮内及び筋肉内注射、点滴注入などのための剤形を含み得る。これらの注射可能な調製物は、公に知られている方法によって調製され得る。例えば、注射可能な調製物は、例えば、上記の抗体またはその塩を、注射に従来使用されている滅菌水性媒体または油性媒体中に溶解、懸濁、または乳化することによって調製され得る。注射用の水性媒体として、例えば、生理食塩水、グルコース及び他の補助剤を含む等張液などがあり、これらは、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50モル)付加物)]などのような適切な可溶化剤と組み合わせて使用され得る。油性媒体として、例えば、ゴマ油、大豆油などを使用し、これらは、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と組み合わせて使用してもよい。このようにして調製された注射剤は、好ましくは、適切なアンプルに充填される。
有利には、上記の経口または非経口使用のための薬学的組成物は、有効成分の用量に適合するのに適した単位用量の剤形に調製される。単位用量におけるそのような剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル、注射(アンプル)、坐剤などが挙げられる。含まれる前述の抗体の量は、一般に、単位用量において1剤形あたり約5~約500mgである。特に注射の形態では、前述の抗体は、約5~約100mgで、及び他の剤形では約10~約250mgで含まれることが好ましい。
抗原結合分子の治療用途
本発明は、それを必要とする対象に、抗HER2抗体もしくはその抗原結合フラグメント、またはAPLP2及びHER2に特異的に結合する二重特異性抗原結合分子を含む治療用組成物を投与することを含む方法を含む。この治療用組成物は、本明細書に開示される抗体または二重特異性抗原結合分子のいずれか、及び薬学的に許容される担体または希釈剤を含み得る。「それを必要とする対象」という表現は、がんの1つ以上の症状または徴候を示すヒトまたは非ヒト動物(例えば、腫瘍を発現するか、または以下に記載の任意のがんに罹患している対象)、またはそうでない場合、HER2活性の阻害もしくは低下、またはHER2+細胞(例えば、乳癌細胞など)の枯渇から恩恵を受けるであろうヒトまたは非ヒト動物を意味する。
本発明の抗体及び二重特異性抗原結合分子(及びそれを含む治療用組成物)は、とりわけ、免疫応答の刺激、活性化及び/または標的化が有益である任意の疾患または障害を治療するために有用である。特に、本発明の抗HER2抗体または抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子は、HER2発現もしくは活性、またはHER2+細胞の増殖に関連するか、またはそれらによって媒介される任意の疾患または障害の治療、予防及び/または改善のために使用され得る。本発明の治療方法が達成される作用機序としては、例えば、CDC、アポトーシス、ADCC、食作用による、またはこれらの機構の2つ以上の組み合わせによる、エフェクター細胞の存在下でのHER2を発現する細胞の殺滅が挙げられる。本発明の二重特異性抗原結合分子を使用して阻害または殺滅され得る、HER2を発現する細胞としては、例えば、乳房腫瘍細胞が挙げられる。
本発明の抗原結合分子は、例えば、前立腺、膀胱、子宮頸部、肺、結腸、腎臓、乳房、膵臓、胃、子宮、及び/または卵巣に生じる原発性及び/または転移性腫瘍を治療するために使用され得る。ある特定の実施形態において、本発明の二重特異性抗原結合分子は、以下のがんのうちの1つ以上を治療するために使用される:前立腺癌、膀胱癌、子宮頸癌、肺癌、結腸癌、腎臓癌、乳癌、膵臓癌、胃癌、子宮癌、及び卵巣癌。本発明のある特定の実施形態によれば、抗HER2抗体または抗HER2/抗APLP2二重特異性抗体は、IHC2+以上である乳癌細胞に罹患している患者を治療するために有用である。本発明の他の関連する実施形態によれば、本明細書に開示される抗HER2抗体または抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子を、IHC2+以上である乳癌細胞に罹患している患者に投与することを含む方法が提供される。腫瘍スキャンなどのような当該技術分野で公知の分析/診断方法を使用して、患者が去勢抵抗性の腫瘍を抱えているか否かを確認し得る。
本発明はまた、対象における残存がんを治療するための方法を含む。「残存がん」という用語は、抗がん療法による治療後の対象における1つ以上のがん性細胞の存在または持続を意味する。
ある特定の態様によれば、本発明は、本明細書の他の場所に記載の抗HER2または二重特異性抗原結合分子の1つ以上を、対象が乳癌(例えば、IHC2+乳癌)であると決定された後の対象に投与することを含む、HER2発現に関連する疾患または障害(例えば、乳癌)を治療するための方法を提供する。例えば、本発明は、抗HER2抗体または抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子を、対象がホルモン療法(例えば、抗アンドロゲン療法)を受けてから1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、2週間、3週間または4週間、2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、1年、またはそれ以上後に患者に投与することを含む、乳癌を治療するための方法を含む。
併用療法及び処方物
本発明は、1つ以上の追加の治療剤と組み合わせて、本明細書に記載の例示的な抗体及び二重特異性抗原結合分子のいずれかを含む、薬学的組成物を投与することを含む方法を提供する。本発明の抗原結合分子と組み合わされ得るか、または組み合わせて投与され得る例示的な追加の治療剤としては、例えば、EGFRアンタゴニスト(例えば、抗EGFR抗体[例えば、セツキシマブまたはパニツムマブ]またはEGFRの小分子阻害剤[例えば、ゲフィチニブまたはエルロチニブ])、Her2/ErbB2、ErbB3またはErbB4などの別のEGFRファミリーメンバーのアンタゴニスト(例えば、抗ErbB2、抗ErbB3もしくは抗ErbB4抗体またはErbB2、ErbB3もしくはErbB4活性の小分子阻害剤)、EGFRvIIIのアンタゴニスト(例えば、EGFRvIIIに特異的に結合する抗体)、cMETアンタゴニスト(例えば、抗cMET抗体)、IGF1Rアンタゴニスト(例えば、抗IGF1R抗体)、B-raf阻害剤(例えば、ベムラフェニブ、ソラフェニブ、GDC-0879、PLX-4720)、PDGFR-α阻害剤(例えば、抗PDGFR-α抗体)、PDGFR-β阻害剤(例えば、抗PDGFR-β抗体)、VEGFアンタゴニスト(例えば、VEGF-トラップ、例えば、米国特許第7,087,411号を参照のこと(本明細書では「VEGF阻害性融合タンパク質」とも呼ばれる)、抗VEGF抗体(例えば、ベバシズマブ)、VEGF受容体の小分子キナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ、ソラフェニブまたはパゾパニブ))、DLL4アンタゴニスト(例えば、REGN421などのUS2009/0142354に開示された抗DLL4抗体)、Ang2アンタゴニスト(例えば、H1H685PなどのUS2011/0027286に開示されている抗Ang2抗体)、FOLH1(PSMA)アンタゴニスト、PRLRアンタゴニスト(例えば、抗PRLR抗体)、HER1またはHER2アンタゴニスト(例えば、抗HER1抗体または抗HER2抗体)、TMPRSS2アンタゴニスト(例えば、抗TMPRSS2抗体)、MSLNアンタゴニスト(例えば、抗MSLN抗体)、CA9アンタゴニスト(例えば、抗CA9抗体)、ウロプラキンアンタゴニスト(例えば、抗ウロプラキン抗体)などが挙げられる。本発明の抗原結合分子と組み合わせて有益に投与され得る他の薬剤としては、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-11、IL-12、IL-13、IL-17、IL-18などのサイトカインに、またはそれらのそれぞれの受容体に結合する、小分子サイトカイン阻害剤及び抗体を含むサイトカイン阻害剤が挙げられる。本発明の薬学的組成物(例えば、本明細書に開示されるような抗APLP2/抗HER2二重特異性抗原結合分子を含む薬学的組成物)はまた、「ICE」:イホスファミド(例えば、Ifex(登録商標))、カルボプラチン(例えば、Paraplatin(登録商標))、エトポシド(例えば、Etopophos(登録商標)、Toposar(登録商標)、VePesid(登録商標)、VP-16)、「DHAP」:デキサメタゾン(例えば、Decadron(登録商標))、シタラビン(例えば、Cytosar-U(登録商標)、シトシンアラビノシド、ara-C)、シスプラチン(例えば、Platinol(登録商標)-AQ)、及び「ESHAP」:エトポシド(例えば、Etopophos(登録商標)、Toposar(登録商標)、VePesid(登録商標)、VP-16)、メチルプレドニゾロン(例えば、Medrol(登録商標))、高用量シタラビン、シスプラチン(例えば、Platinol(登録商標)-AQ)から選択される1つ以上の治療的組み合わせを含む治療レジメンの一部として投与され得る。
本発明はまた、本明細書に記載の抗原結合分子のいずれかと、VEGF、Ang2、DLL4、EGFR、ErbB2、ErbB3、ErbB4、EGFRvIII、cMet、IGF1R、B-raf、PDGFR-α、PDGFR-β、FOLH1(PSMA)、PRLR、HER1、HER2、TMPRSS2、MSLN、CA9、ウロプラキン、または任意の前述のサイトカインのうちの1つ以上の阻害剤とを含む治療的組み合わせを含み、ここでこの阻害剤はアプタマー、アンチセンス分子、リボザイム、siRNA、ペプチボディ、ナノボディまたは抗体フラグメント(例えば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント、scFv、dAbフラグメント、または他の操作された分子、例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ及び最小認識単位)である。本発明の抗原結合分子はまた、抗ウイルス剤、抗生物質、鎮痛剤、コルチコステロイド及び/またはNSAIDと組み合わせて投与及び/または共処方され得る。本発明の抗原結合分子はまた、放射線治療及び/または従来の化学療法も含む治療レジメンの一部として投与されてもよい。
追加の治療的に活性な成分(複数可)は、本発明の抗原結合分子の投与の直前、同時、または直後に投与され得る、(本開示の目的に関しては、そのような投与レジメンは、追加の治療的に活性な成分と「組み合わせて」抗原結合分子の投与と見なされる)。
本発明は、本発明の他の場所に記載されるように、本発明の抗原結合分子が1つ以上の追加の治療的に活性な成分(複数可)と共処方される薬学的組成物を含む。
投与レジメン
本発明のある特定の実施形態によれば、複数用量の抗原結合分子(例えば、抗HER2抗体またはHER2及びAPLP2に特異的に結合する二重特異性抗原結合分子)を、対象に、定義された時間経過にわたって投与してもよい。本発明のこの態様による方法は、本発明の抗原結合分子の複数回投与を対象に連続的に投与することを含む。「連続投与」という句は、抗原結合分子の各用量が、異なる時点で、例えば、所定の間隔(例えば、時間、日、週、または月)で隔てられた異なる日に、対象に投与されることを意味する。本発明は、患者に抗原結合分子の単一の初期用量、続いて抗原結合分子の1つ以上の二次用量、及び任意に続いて抗原結合分子の1つ以上の三次用量を連続的に投与することを含む方法を含む。
「初期用量」、「二次用量」、及び「三次用量」という用語は、本発明の抗原結合分子の投与の時間的順序を指す。したがって、「初期用量」とは、治療レジメンの開始時に投与される用量(「ベースライン用量」とも呼ばれる)である。「二次用量」とは、最初の用量の後に投与される用量である。「三次用量」とは、二次用量の後に投与される用量である。初回、二次、及び三次用量は、全て同じ量の抗原結合分子を含んでもよいが、一般に投与の頻度に関して互いに異なってもよい。しかしながら、ある特定の実施形態において、初期、二次及び/または三次用量に含まれる抗原結合分子の量は、治療の過程中に互いに変化する(例えば、任意に上下に調整される)。ある特定の実施形態において、2つ以上(例えば、2、3、4、または5)の用量は、治療レジメンの開始時に「負荷用量」として投与され、その後、引き続く用量が、より低い基準頻度で投与される(例えば、維持用量」)。
本発明の1つの例示的な実施形態において、各二次及び/または三次用量は、直前の投与から1~26(例えば、1、11/2、2、21/2、3、31/2、4、41/2、5、51/2、6、61/2、7、71/2、8、81/2、9、91/2、10、101/2、11、111/2、12、121/2、13、131/2、14、141/2、15、151/2、16、161/2、17、171/2、18、181/2、19、191/2、20、201/2、21、211/2、22、221/2、23、231/2、24、241/2、25、251/2、26、261/2、またはそれ以上)週後に投与される。「直前の用量」という句は、一連の複数回の投与において、介在する用量なしで、連続した直後の用量の投与の前に患者に投与される抗原結合分子の用量である。
本発明のこの態様による方法は、抗原結合分子(例えば、抗HER2抗体または特異的にHER2とAPLP2に結合する二重特異性抗原結合分子)の任意の回数の二次及び/または三次用量を患者に投与することを含み得る。例えば、ある特定の実施形態では、単一の二次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上)の二次用量が患者に投与される。同様に、ある特定の実施形態では、単一の三次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、またはそれ以上)の三次用量が患者に投与される。
複数の二次用量を含む実施形態において、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与され得る。例えば、各二次用量は、直前の用量の1~2週間後に患者に投与され得る。同様に、複数の三次用量を含む実施形態では、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与され得る。例えば、各三次用量は、直前の用量の2~4週間後に患者に投与され得る。あるいは、二次及び/または三次用量が患者に投与される頻度は、治療レジメンの過程にわたって変化し得る。投与の頻度はまた、臨床検査後の個々の患者の必要性に応じて、医師による治療の過程で調整され得る。
抗体の診断的使用
本発明の抗HER2抗体はまた、例えば診断目的のために、試料中のHER2またはHER2発現細胞を検出及び/または測定するためにも使用され得る。例えば、抗HER2抗体またはそのフラグメントは、HER2の異常な発現(例えば、過剰発現、過少発現、発現の欠如など)を特徴とする状態または疾患を診断するために使用され得る。HER2の例示的な診断アッセイは、例えば、患者から得られた試料を、本発明の抗HER2抗体と接触させることを含み得、ここで、抗HER2抗体は、検出可能な標識またはレポーター分子で標識される。あるいは、非標識抗HER2抗体は、それ自体が検出可能に標識されている二次抗体と組み合わせて、診断用途で使用されてもよい。検出可能な標識またはレポーター分子は、放射性同位元素、例えば、3H、14C、32P、35S、または125I、蛍光または化学発光部分、例えば、フルオレセインイソチオシアネート、もしくはローダミン、または、酵素、例えば、アルカリホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、もしくはルシフェラーゼであってもよい。本発明の抗HER2抗体の別の例示的な診断用途としては、対象における腫瘍細胞の非侵襲的同定及び追跡を目的とした、89Zr標識抗体、例えば89Zr-デスフェリオキサミン標識抗体(例えば、陽電子放出断層撮影(PET)イメージング)が挙げられる。(例えば、Tavare,R.et al.Cancer Res.2016 Jan 1;76(1):73-82、及びAzad,BB.et al.Oncotarget.2016 Mar 15;7(11):12344-58を参照のこと)。試料中のHER2を検出または測定するために使用され得る特定の例示的なアッセイとしては、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び蛍光活性化セルソーティング(FACS)が挙げられる。
本発明によるHER2診断アッセイで使用され得る試料としては、正常または病理学的条件下で、検出可能な量のHER2タンパク質またはそのフラグメントを含む、患者から入手可能な任意の組織または流体試料が挙げられる。一般に、健康な患者(例えば、異常なHER2レベルまたは活性に関連する疾患または状態に罹患していない患者)から得られた特定の試料中のHER2のレベルを測定して、HER2のベースラインまたは標準のレベルを最初に確立する。次に、このベースラインレベルのHER2を、HER2関連疾患(例えば、HER2発現細胞を含む腫瘍)または状態を有すると疑われる個体から得られた試料中で測定されたHER2のレベルと比較してもよい。
本発明は、多数の実施形態を参照して具体的に示され、説明されてきたが、形態及び詳細の変更が、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される種々の実施形態に対して行われ得ること、本明細書に開示される種々の実施形態が、特許請求の範囲に対する制限として機能することを意図するものではないことが当業者によって理解される。
以下の実施例は、当業者に、本発明の方法及び組成物を作製及び使用する方法の完全な開示及び説明を提供するために提示されており、本発明者が自身の発明と考える範囲を限定することを意図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確さを確保するための努力がなされてきたが、いくつかの実験誤差と偏差を考慮する必要がある。別段示さない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、かつ圧力は大気圧またはそれに近い。
実施例1:抗HER2、抗APLP2、及び抗HER2xAPLP2抗体の生成
抗HER2または抗APLP2抗体は、マウス(例えば、ヒト免疫グロブリン重鎖及びヒトカッパ軽鎖可変領域をコードするDNAを含む操作されたマウス)を、それぞれ、ヒトHER2の細胞外ドメイン(アミノ酸配列NP_004439.2(配列番号51)のT23-T652のアミノ酸)またはヒトAPLP2の細胞外ドメイン(アミノ酸配列NP_001633.1(配列番号52)のアミノ酸G32-S692))のいずれかで免疫することによって得られた。ヒトHER2及びヒトAPLP2抗原のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号49及び配列番号50として示されている。
免疫化に続いて、脾細胞を各マウスから収集し、(1)マウス骨髄腫細胞と融合して、それらの生存能力を維持して、ハイブリドーマ細胞を形成し、ヒトHER2特異性についてスクリーニングするか、または(2)反応性抗体(抗原陽性B細胞)に結合して同定する選別試薬として、ヒトHER2フラグメントまたはヒトAPLP2フラグメントのいずれかを使用して、B細胞(US2007/0280945A1に記載されるように)を選別した。
ヒト可変領域及びマウス定常領域を有する、ヒトHER2またはヒトAPLP2に対するキメラ抗体を、最初に、単離した。抗HER2特異的結合ドメイン及び抗APLP2特異的結合ドメインを含む二重特異性抗体を、標準的な分子クローニング方法論によって組換え的に構築し、CHO細胞で発現し、ここで、抗HER2抗原結合ドメイン及び抗APLP2抗原結合ドメインそれぞれが、共通の軽鎖可変領域(LCVR)と対になった異なる別個の重鎖可変領域(HCVR)を含む。例示された二重特異性抗体において、分子は、抗HER2抗体由来の重鎖、抗APLP2抗体由来の重鎖、及び抗HER2抗体と抗APLP2抗体の両方に共通の軽鎖(例えば、配列番号10を参照)を利用して構築し、CHO細胞で発現した。場合によっては、二重特異性抗体は、抗HER2抗体由来の重鎖、抗APLP2抗体由来の重鎖、及び抗HER2抗体由来の軽鎖、抗APLP2抗体由来の軽鎖、または無差別であるか、もしくは様々な重鎖アーム、例えば、Vκ1-39Jκ5もしくはVκ3-20Jκ1(例えば、US2011/0195454を参照のこと)と効果的に対になることが公知である別の抗体軽鎖を利用して構築されてもよい。
抗体は、親和性、選択性などを含む望ましい特性について特徴付けられ、選択された。
必要に応じて、マウス定常領域を、所望のヒト定常領域、例えば、野生型ヒトCHまたは改変ヒトCH(例えば、IgG1、IgG2またはIgG4アイソタイプ)、及び軽鎖定常領域(CL)で置き換えて、完全ヒト抗HER2、完全ヒト抗APLP2抗体、または完全ヒト二重特異性抗HER2xAPLP2抗体を生成した。選択される定常領域は、特定の用途に応じて変化し得るが、高親和性の抗原結合及び標的特異性の特徴が可変領域に存在する。「H4」または「H4H」で始まる抗体名の指定またはID番号は、完全なヒト抗体を示す。抗体はB細胞ソーティング法により同定され、「P」または「P2」で終わる抗体ID番号で指定される。二重特異性抗体は、「D」で終わる抗体ID番号で指定される。
この実施例の方法に従って生成された例示的な抗HER2、抗APLP2、及び抗HER2xAPLP2抗体の特定の生物学的特性は、以下に記載される実施例に詳細に記載されている。
実施例2:抗体の特徴付け
実施例2.1 抗HER2抗体の特徴付け
抗HER2抗体の重鎖及び軽鎖可変領域アミノ酸及び核酸の配列
表1は、本明細書に開示される二重特異性抗HER2xAPLP2抗体を生成するために使用される、選択された抗HER2抗体の重鎖もしくは軽鎖可変領域(それぞれ、HCVRまたはLCVR)、または重鎖または軽鎖のCDR(それぞれ、HCDR及びLCDR)をコードする核酸(NA)配列及び括弧内にはそのアミノ酸(AA)配列の配列識別子を示す。
実施例2.2 抗APLP2抗体の特徴付け
抗APLP2抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域アミノ酸及び核酸配列
表2は、本明細書に開示される二重特異性抗HER2xAPLP2抗体を生成するために使用される、選択された抗APLP2抗体の、重鎖もしくは軽鎖可変領域(それぞれ、HCVRまたはLCVR)、または重鎖もしくは軽鎖のCDR(それぞれHCDR及びLCDR)をコードする核酸(NA)配列及び括弧内にはそのアミノ酸(AA)配列の配列識別子を示す。
実施例2.3 抗HER2xAPLP2抗体の特徴付け
抗HER2xAPLP2抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域アミノ酸及び核酸の配列
本明細書に記載されているのは、HER2及びAPLP2に結合する二重特異性抗原結合分子である。このような二重特異性抗原結合分子は、本明細書では、二重特異性「抗HER2/抗APLP2」または「抗HER2xAPLP2」抗体、抗原結合タンパク質または分子とも呼ばれる。抗HER2/抗APLP2二重特異性分子の抗HER2部分は、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)を発現する腫瘍細胞を標的とするのに有用であり、二重特異性分子の抗APLP2部分は、HER2のリソソームへの内部移行を媒介し、HER2の分解を媒介するために有用である。
以下の実施例に記載される二重特異性抗体は、ヒトHER2及びヒトAPLP2の細胞外部分に対して様々な結合親和性を有する抗HER2及び抗APLP2結合アームからなる(上記の実施例1~2を参照のこと)。2014年8月28日に公開された米国特許出願公開第US20140243504A1号に記載されているように、野生型カッパCL及び改変(キメラ)IgG4 CHドメインを有する、例示的な二重特異性抗体を製造した。
構築された様々な抗HER2xAPLP2二重特異性抗体の抗原結合ドメインの構成要素の要約を表3に示す。
表3:
表3に列挙された軽鎖は、二重特異性抗体のHER2及びAPLP2標的化アームの両方に共通であった。表1は、抗HER2アーム(すなわち、HCVRは、H4H13050P2またはH4H13055P2に由来する)の様々な重鎖可変領域の核酸及びアミノ酸配列識別子、ならびにそれらに対応するCDRを示しており、表3で特徴付けられる二重特異性抗体を構築する。表2は、この実施例の二重特異性抗体の抗APLP2アームの様々な重鎖可変領域の核酸及びアミノ酸配列識別子、ならびにそれらの対応するCDRを示している。
実施例2.4 対照抗体の特徴付け
本明細書の以下の実施例で言及されるアイソタイプ対照抗体は、ヒトAPLP2またはHER2との交差反応性を伴わない、無関係の抗原、すなわちFelD1(ネコアレルギー)抗原と相互作用するアイソタイプ適合(改変IgG4)抗体である。
本明細書の以下の実施例において言及されるHER2/T対照抗体は、トラスツズマブとして公知の抗体に由来する組換え的に作製された抗HER2抗体である。
H4H28697Dと呼ばれる二重特異性抗FelD1xAPLP2は、本明細書に記載の同じ方法によって、本明細書の上記に言及したアイソタイプ対照抗体に由来するFelD1に結合する第1の重鎖アーム及びH4H13055P親抗体に由来するAPLP2に結合する第2の重鎖アームを用いて構築した。
実施例3:可溶性短縮型ヒトHER2またはAPLP2タンパク質へのバイオコア(Biacore)KDの結合
精製された抗HER2xAPLP2二重特異性及び親抗体に結合するHER2及びAPLP2の平衡解離定数(KD値)を、Biacore4000機器を使用したリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサーを使用して決定した。Biacoreセンサー表面は、最初に、モノクローナルマウス抗ヒトFc抗体(GE、カタログ番号BR-1008-39)とのアミンカップリングによって誘導体化して、抗HER2xAPLP2二重特異性モノクローナル抗体を捕捉した。全ての結合研究は、0.01M Hepes pH 7.4、0.15MのNaCl、1mMのCaCl2、0.5mMのMgCl2、及び0.05%v/v Surfactant Tween-20(HBS-P泳動用緩衝液)中で、37℃で実施した。異なる濃度の試薬、C末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグで発現されたヒトHER2細胞外ドメイン(hHER2-MMH、配列番号53)またはC末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグで発現されたヒトAPLP2細胞外ドメイン(hAPLP2-MMH、配列番号54)を、HBS-P泳動用緩衝液(300nM~3.7nMの範囲、3倍希釈)中で、抗HER2xAPLP2二重特異性抗体で捕捉された表面上に30μL/分の流速で4分間注入し、HBS-P泳動用緩衝液でのそれらの解離を10分間モニターした。速度論的会合速度定数(ka)及び解離速度定数(kd)は、Scrubber 2.0cカーブフィッティングソフトウェアを使用して、リアルタイムセンサーグラムを1:1結合モデルにフィッティングすることによって決定した。結合解離平衡定数(KD)及び解離半減期(t1/2)は、反応速度定数から以下のように計算された:
37℃での本発明の異なる抗HER2xAPLP2二重特異性抗体及びそれらの親抗体へのhHER2-MMH、またはhAPLP2-MMH結合の結合速度論的パラメーターを、表4及び5に示す。37℃で、hHER2-MMHは、表4に示すように、3.37nM~5.15nMの範囲のK
D値で本発明の全ての抗HER2xAPLP2二重特異性抗体に結合した。hHER2-MMHは、4.11nM及び5.20nMというK
D値で全ての抗HER2親抗体に結合した。抗APLP2親抗体はいずれもhHER2-MMHへの結合を示さなかった。37℃で、表5Aに示すように、hAPLP2-MMHは、145nM~976nMの範囲のK
D値で、本発明の全ての抗HER2xAPLP2二重特異性抗体に結合した。hAPLP2-MMHは、145nM~899nMの範囲のK
D値で全ての抗APLP2親抗体に結合した。抗HER2親抗体はいずれもhAPLP2MMHへの結合を示さなかった。25℃で、表5Bに示すように、hAPLP2-MMHは、8.5nM~17.2nMの範囲のKD値で、本発明の全ての抗HER2xAPLP2二重特異性抗体に結合した。hAPLP2-MMHは、11.2nM~21.7nMの範囲のKD値で全ての抗APLP2親抗体に結合した。
2つの二重特異性抗体(H4H25018D及びH4H25019D)は、100~200nMの範囲内で低い親和性でAPLP2に結合するが、HER2へのそれらの抗体の結合親和性は、10nM未満(それぞれ4.21及び5.15nM)であることに注意のこと。2つの二重特異性抗体(H4H25014D及びH4H25017D)は、200~300nMの範囲内で適度に低い親和性でAPLP2に結合するが、HER2へのそれらの抗体の結合親和性は、10nM未満、さらには5nM未満(それぞれ3.37及び4.85nM)である。最後に、2つの二重特異性抗体(H4H25020D及びH4H25021D)は、800nM~1μMの範囲内でAPLP2に対して非常に低い結合親和性を示し、10nM未満(それぞれ4.20及び5.15nM)でやはりHER2に対して強い結合親和性を示す。表4及び表5の両方を参照のこと。
実施例4:がん細胞株及び正常な初代培養物におけるHER2及びAPLP2の相対的発現
11個のがん細胞株[MDA-MB-468(ATCC、カタログ番号HTB-132)、T47D(ATCC、カタログ番号HTB-133)、トランスジェニックHER2及びCas9を過剰発現するT7D、MCF7(ATCC、カタログ番号HTB-22)、JIMT-1(DSMZ、カタログ番号ACC589)、BT483(ATCC、カタログ番号HTB-121)、MDA-MB-361(ATCC、カタログ番号HTB-27)、MDA-MB-231(ATCC、カタログ番号HTB-26)、MDA-MB-453(ATCC、カタログ番号HTB-131)、SK-BR3(ATCC、カタログ番号HTB-30)、及びNCI-N87(ATCC、カタログ番号CRL5822)、ならびに二つ(2)の正常な初代培養物[正常な肺上皮(NLE。ATCC、カタログ番号PCS-300-010)及び正常な乳房上皮(NBE。ATCC、カタログ番号PCS-600-010)]におけるHER2及びAPLP2の相対的発現を決定するために、ウエスタンブロット分析を行った。分析のために、細胞を、6ウェルの細胞培養プレートに1×10
6細胞/ウェルで、表6の各細胞株/培養について説明されている、それらの適切な培地にプレートし、5%CO
2中37℃で一晩インキュベートした。
インキュベーション後、細胞を培養培地中のDPBS(DPBS/CM)で1回洗浄し、そして氷上に置いた。続いて、DPBS/CMを、150uLの溶解緩衝液[13mLの1xRIPA緩衝液(Boston Bioproducts、カタログ番号BP-116)、200uLプロテアーゼ阻害剤(Thermo Fisher、カタログ番号1861280)、5mLの4xLaemmli(Invitrogen、カタログ番号NP0007)、及び2mLの10x還元剤(Invitrogen、カタログ番号NP0009)からなる]で置き換えた。続いて細胞をこすり取り、次に試料を、1つの穴/ウェルを備えたフィルムで覆われた、深さ1.2mLの96ウェルプレートに移した。そのプレートを50%のパワーで10回(毎回1秒)超音波処理した。超音波処理後、そのプレートを80℃の水浴中で10分間煮沸した。その後、試料を凍結した。その後、試料を解凍し、各試料20uLを、くさび型4~12%TRIS-グリシンゲル(Invitrogen、カタログ番号XP04125BOX)にロードし、150Vで1~1.5時間泳動した。次に、そのゲルをiBlot2ドライブロッティングシステム(ThermoFisher、カタログ番号IB21001)を使用してPVDFメンブレン(ThermoFisher、カタログ番号IB24001)に転写した。次に、そのメンブレンを、TRIS緩衝生理食塩水(TBS。ThermoFisher、カタログ番号28376)中の5%ミルク(BioRad、カタログ番号170-6404)で、室温で1~3時間、ブロックした。TBS中に2.5%ミルク及び0.1%Tween(Sigma、カタログ番号P8074)を含む溶液中の一次抗体[ウサギ抗HER2抗体(Dako、カタログ番号A048529)またはマウス抗APLP2抗体(Millipore、カタログ番号MABN782)]を、次に、メンブレンに添加し、4℃で一晩インキュベートした。次に、そのメンブレンを室温で5分間、TBSで3回洗浄した。その後、TBS中に2.5%のミルク及び0.1%のTweenを含む溶液中で、抗ウサギHRP抗体(Promega、#W401B)または抗マウスHRP抗体(Promega、カタログ番号W402B)のいずれか、及び抗アクチン-HRP抗体(Santa Cruz、カタログ番号sc-47779)を一緒に、次いで、このメンブレンに添加し、室温で1時間インキュベートした。次に、このメンブレンを、0.1%Tweenを含むTBSで、室温で5分間2回洗浄し、次にTBSを用いて室温で5分間さらに2回洗浄した。次に、ECL検出試薬(GE healthcare、カタログ番号RPN2106)を使用してブロットを発色させ、Azure C300イメージャーで画像化した。バンドの定量化(平均蛍光強度からバックグラウンドを引いたもの)は、ImageJソフトウェアを使用して実行した。定量化のために、HER2/アクチン及びAPLP2/アクチンの比率を決定し、その後、最高値に正規化し、これは、HER2/アクチンの場合はSK-BR-3、及びAPLP2/アクチンの場合はJIMT-1であった。(図1を参照のこと。)
11個のがん細胞株及び2つの正常な初代培養物におけるアクチンレベルと比較したHER2及びAPLP2発現レベルを表7に示す。
実施例5:HER2発現細胞への二重特異性抗HER2xAPLP2抗体の結合は、抗HER2アームによって媒介され、それに依存する
本明細書に記載の二重特異性抗HER2xAPLP2分子が様々なレベルのHER2を発現する細胞株に結合する能力を試験するために、ハイコンテントイメージングアッセイを実施した。このアッセイには、8つのがん細胞株[MDA-MB-468(ATCC、HTB-132)、T47D(ATCC、HTB-133)、MCF-7(ATCC、HTB-22)、JIMT-1(DSMZ、ACC589)、BT-483(ATCC、HTB-121)、MDA-MB-361(ATCC、HTB-27)、MDA-MB-453(ATCC、HTB-131)、及びSK-BR-3(ATCC、HTB-30)]及び2つの正常な初代培養物[正常な肺上皮(NLE。ATCC(登録商標)、カタログ番号PCS-300-010)及び正常な乳房上皮(Normal Breast Epithelium)(NBE。ATCC(登録商標)、カタログ番号PCS-600-010)]を使用した。細胞を、コラーゲンでコーティングされた、ブラックウォールの96ウェル光学プレート(Greiner、カタログ番号655936)に、それらの適切な培養培地中で1ウェルあたり2.5×105細胞でプレートし、これは、表6の各細胞株/培養で説明されており、5%CO2中37℃で一晩インキュベートした。
翌日、細胞を、4℃で50μLのDMEM中で、10μg/mLのAlexa647標識(Thermo、カタログ番号A37573)二重特異性抗HER2xAPLP2分子(H4H25014D、H4H25018D、H4H25020D、H4H25017D、H4H25019D、及びH4H25021D)と共に1時間インキュベートした。その後、細胞を冷DMEM+10%FBSで2回洗浄した。冷DMEM+10%FBSに対して、DPBS/CM中の8%パラホルムアルデヒド(Electron Microcopy Sciences、カタログ番号15710)+0.15%サポニン(Sigma、カタログ番号S4521)+20ug/mlのHoechst(Lifetech、#H3569)で構成される100μLの溶液を添加し、室温で20分間インキュベートして、細胞を固定して透過処理し、一方で細胞の核を染色した。その後、その溶液を、DPBS/CMに置き換えた。Image Xpress
Micro自動顕微鏡(Molecular Devices)を使用して、各細胞タイプへの二重特異性抗体の結合を測定した。蛍光標識されたAPLP2xHER2二重特異性抗体の細胞への結合(表8)は、実施例4で決定されたHER2発現レベルに正比例した。(図2もまた参照のこと。)
HER2及びAPLP2の両方を発現する細胞への本明細書に記載の二重特異性抗HER2xAPLP2結合タンパク質の各アームの結合の寄与を試験するために、MDA-MB-361(ATCC、カタログ番号HTB-27)乳癌細胞株を使用して競合結合アッセイを実施した。このアッセイでは、細胞を、コラーゲンコーティングされたブラックウェルの96ウェル光学プレート(Greiner、カタログ番号655936)に、適切な培養培地(前の例で説明)で1ウェルあたり2.5×105細胞でプレートし、5%CO2中37℃で一晩インキュベートした。翌日、その細胞を4℃で30分間冷蔵した。67μMのAlexa647(Thermo、カタログ番号A37573)で標識された二重特異性抗HER2xAPLP2抗体(H4H25014D、H4H25018D、H4H25020D、H4H25017D、H4H25019D、またはH4H25021D)の溶液、または10%FBSを含むDMEM中の抗体なし(ブランク)を4℃で準備した。各抗体溶液に対して、PBSのみ、C末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグ(hHER2-MMH、配列番号53)のみで発現したヒトHER2細胞外ドメイン、C末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグ(hAPLP2-MMH、配列番号54)のみで発現したヒトAPLP2細胞外ドメイン、またはhHER2-MMHとhAPLP2-MMHの組み合わせを、333mMの濃度で添加した。インキュベーション及び培地を除去した後、50μL/ウェルの二重特異性抗体、及び可溶性タンパク質溶液を、4℃で30分間細胞に添加した。続いて、細胞を、10%FBSを含む150μL/ウェルのDMEMで、4℃で10分間洗浄した。この洗浄後、50μLの固定緩衝液[培養培地に9mLのPBS(PBS/CM)、3mLの16%パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences、カタログ番号15710)及び10μg/mlのHoechst(最終濃度)、(Lifetech、カタログ番号H3569)を含む]を各ウェルに加え、室温で20分間インキュベートした。次に、固定緩衝液を除去し、100uLのDPBS/CMを添加し、画像を取得する前に室温で約20分間インキュベートさせた。Image XpressMicro自動顕微鏡(Molecular Devices)を使用して、各細胞タイプへの二重特異性抗体の結合を測定した。取得したデータは、MetaXpressソフトウェア(Molecular Devices)を使用して分析した。二重特異性抗体の結合シグナルは、二重特異性抗体が存在しない場合(ブランクと呼ばれる)に得られたシグナルに対して正規化した。
可溶性hHER2-MMHの存在は、MDA-MB-361乳癌細胞への試験された各二重特異性抗HER2xAPLP2抗体の結合を有意に阻害したが、そのような効果は、可溶性hAPLP2-MMHでは見られなかった。(以下の表9及び図3も参照のこと)。
これらのデータは、本明細書に記載の二重特異性抗HER2xAPLP2抗体の結合が、抗APLP2アームではなく、抗HER2アームによって主に媒介されることを示している。したがって、APLP2へのより低い結合を含む記載された特性を有する二重特異性抗原結合分子は、APLP2及びHER2の両方を発現する細胞に特異的に結合するが、APLP2のみを発現する細胞への結合を減少させることが期待される。
実施例6:HER2ではなくAPLP2が急速に内部移行され、分解される
APLP2及びHER2抗体が、T47D細胞(ATCC、HTB-133)に内部移行する能力を、表6に従って培地中で培養したT47D細胞で試験した。T47D細胞を、コラーゲンコーティングした96ウェル光学プレート(Greiner、カタログ番号655936)に、培地中50,000細胞/ウェルでプレートし、5%CO2中37℃で一晩インキュベートした。翌日、細胞を1mg/mlフルオレセイン標識デキストランと共に、37℃で60分間インキュベートした。CF594標識抗APLP2(R&D MAB49451)または抗HER2(HER2/T対照)抗体を、デキストランと共に67nMで、5、10、20、30、45、または60分間インキュベートし、その後、細胞を1回洗浄し、温かい(37℃)培地で10分間インキュベートした。その後、細胞をDPBS+カルシウム/マグネシウム(CM)中の4%PFAで、室温で10分間固定し、DPBS/CMで2回洗浄した。
取得は、LSM780 Zeiss共焦点顕微鏡を用いて実施した。取得した画像は、Zeiss Zenソフトウェアを使用して分析した。内部移行された抗体のリソソームへの輸送は、共焦点スタック内の蛍光デキストランピクセルと抗体ピクセルの共局在化によって定量化した。その抗体がリソソームと共局在するまでの時間(分)を表10に示す。
さらに、APLP2及びHER2の分解速度を、T47D細胞で試験した。アッセイでは、T47D細胞を、6ウェルプレート(Corning#3516)に10
6細胞/ウェルでプレートした。この細胞を、RPMI 1640+10%FBS+1mMピルビン酸ナトリウム+10mMのHEPES+10ug/mLのインスリン+5mLのペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミンからなる培地中で、5%CO
2中37℃で一晩増殖させた。翌日、細胞を50ug/mlシクロヘキシミド(Sigma#C4859-1ML)で0、0.5、1.5、2.5、3.5、4.5、及び5.5時間処理した。インキュベーション後、細胞を、1mlのDPBS/CMで1回洗浄し、続いて氷上に置き、次にDPBS/CMを、800uLの溶解緩衝液[1xRIPA(Boston Bioproducts、カタログ番号BP-116)+プロテアーゼ阻害剤(Thermo Fisher、1861280)で置き換え、細胞をこすり取り、溶解物を1.5mlエッペンドルフチューブに移した。その後、その試料を25パルスで超音波処理し、各パルスは50%のパワーで1秒である。その後、試料を-20℃で凍結した。その後、試料を解凍し、各試料の52ulを、20ul 4xLaemmli(Invitrogen、NP0007)+8uL 10x還元剤(Invitrogen、カタログ番号NP0009)]と混合した。試料を95℃で10分間煮沸し、14000RPMで、10分間室温で遠心分離した。各試料40uLを、3つのウェッジ4-20%TRIS-グリシンゲル(Invitrogen、XP04125BOX)にロードし、150Vで泳動した。次に、ゲルを、iBlot2ドライブロッティングシステム(ThermoFisher、IB21001)を備えた2つのPVDFメンブレン(ThermoFisher、IB24001)に転写した。次に、メンブレンを、TBS中の5%ミルク(BioRad、カタログ番号170-6404)で、室温で3時間ブロックした。一次抗体、ウサギ抗HER2抗体(Dako、カタログ番号A048529)またはウサギ抗APLP2抗体(abcam、カタログ番号ab140624)が含有される2.5%ミルク+0.1%Tween(Sigma、カタログ番号P8074)を含む、TRIS緩衝生理食塩水(TBS。ThermoFisher、カタログ番号28376)を、次いでメンブレンに添加し、4℃で一晩インキュベートした。次いで、そのメンブレンを室温で5分間、TBSで3回洗浄した。その後、抗ウサギHRP抗体(Promega、#W4011)及び抗アクチン-HRP抗体(Santa Cruz、カタログ番号sc-47779)が含有される2.5%ミルク+0.1%Tweenを含むTBSを、メンブレンに添加し、室温で1時間インキュベートした。次いで、そのメンブレンをTBS+0.1%Tweenで、室温で5分間2回洗浄し、次に室温で5分間、TBSを用いてさらに2回洗浄した。次いで、ECL検出試薬(GEヘルスケア、カタログ番号RPN2106)を使用してブロットを作成し、Azure C300イメージャーで画像化した。バンドの定量化(平均蛍光強度からバックグラウンドを引いたもの)は、ImageJを使用して実行した。表11は、シクロヘキシミド(CHX)処理後のHER2、APLP、またはT47D細胞を、CHX接触のない細胞に正規化してまとめたものである。
表10に示されるように、APLP2のリソソーム輸送は、HER2のそれよりも有意に速かった。表11に示すように、APLP2は急速な代謝回転を受けたが、HER2はそうではなかった。シクロヘキシミド処理は、5.5時間後に22%のHER2分解のみを誘発したが、94%のAPLP2分解が同じ時間で見られた。APLP2の88%は、わずか1.5時間で分解した(図4も参照のこと)。
実施例7:二重特異性抗HER2xAPLP2抗体の結合後の細胞表面発現HER2の分解
HER2を分解する二重特異性抗HER2xAPLP2結合タンパク質または適切な結合タンパク質対照の能力を、表7に列挙された乳腺腫瘍細胞株と比較してより低いレベルのHER2を発現するT47D細胞で試験した。このアッセイのために、T47D細胞を、コラーゲンコーティングされた96ウェル光学プレート(Greiner、カタログ番号655936)に25,000細胞/ウェルでプレートした。この細胞を、RPMI 1640+10%FBS+1mMピルビン酸ナトリウム+10mM HEPES+10ug/mLインスリン+5mLペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミンからなる培地中で、5%CO2中37℃でインキュベートした。翌日、二重特異性抗HER2xAPLP2結合タンパク質(H4H25018D、H4H25019D、H4H25014D、H4H25020D、H4H25017D、及びH4H25021D)、単一特異性抗HER2結合タンパク質(HER2/T対照及びH4H13055P)またはアイソタイプ対照結合タンパク質を、10μg/mLの最終濃度で細胞に添加した。結合タンパク質を、細胞上で、5%CO2中37℃で4時間インキュベートした。インキュベーション後、細胞を氷上でカルシウム及びマグネシウムを含むDPBSの溶液(DPBS/CM)100μLで1回洗浄し、その後、DPBS/CM溶液を、溶解緩衝液80μL[6500uL 1x RIPA(Boston Bioproducts、カタログ番号BP-116)、65uLプロテアーゼ阻害剤(Thermo Fisher、1861280)、2500uLの4xLaemmli(Invitrogen、NP0007)及び1000μL 10x還元剤(Invitrogen、カタログ番号NP0009)]で置き換えた。バッファーを加えた後、プレートをオービタルプレートシェーカー(Scientific Industries、SI 0401)で中速(約1250RPM)、4℃で30分間、インキュベートした。その後、試料を-20℃で凍結した。その後、試料を解凍し、4000RPMで、4℃で10分間遠心分離した後、PCRプレートに移し、サーモサイクラーで、85℃で10分間煮沸した。次いで、その試料を4000RPMで10秒間、4℃で遠心分離した。各試料40μLを、くさび型4~12%TRIS-グリシンゲル(Invitrogen、XP04125BOX)にロードし、150Vで泳動した。次いで、そのゲルを、iBlot2ドライブロッティングシステム(ThermoFisher、IB21001)を使用してPVDFメンブレン(ThermoFisher、IB24001)に転写した。次いで、TRIS緩衝化生理食塩水(TBS。ThermoFisher、カタログ番号28376)中の5%ミルク(BioRad、カタログ番号170-6404)で、室温で1~3時間、そのメンブレンをブロックした。メンブレンは、2.5%ミルク+0.1%Tween(Sigma、カタログ番号P8074)を含むTBS中で、一次ウサギ抗HER2抗体(Dako、カタログ番号A048529)と共に4℃で一晩インキュベートした。続いて、そのメンブレンを室温で5分間、TBSで3回洗浄した。その後、抗ウサギHRP抗体(Promega、#W401B)及び抗アクチン-HRP抗体(Santa Cruz、カタログ番号sc-47779)が含有される2.5%ミルク+0.1%Tweenを含むTBSを、このメンブレンに添加し、室温で1時間インキュベートした。次いで、そのメンブレンをTBS+0.1%Tweenで、室温で5分間2回洗浄し、次にTBSを用いて室温で5分間さらに2回洗浄した。次いで、ECL検出試薬(GEヘルスケア、カタログ番号RPN2106)を使用してブロットを発色させ、Azure C300イメージャーで画像化した。バンドの定量化(平均蛍光強度からバックグラウンドを引いたもの)は、ImageJを使用して実行した。
表12に示されるように、二重特異性抗HER2xAPLP2結合タンパク質(H4H25018D、H4H25019D、H4H25014D、H4H25020D、H4H25017D、及びH4H25021D)は、HER2分解を誘導し、HER2発現の約12%~38%がT47D細胞に残った。対照的に、単一特異性抗HER2抗体、HER2/T対照及びH4H13055P(試験抗体H4H25014D、H4H25020D、及びH4H25021Dの抗HER2結合アームが由来)は、HER2分解を誘導し、それぞれ、HER2発現の約73%及び90%がT47D細胞に残っていた。アイソタイプ対照はHER2分解を誘発しなかった。図5も参照のこと。
最も注目すべきことに、H4xH21387P2 APLP2アームを含み、100~200nMのAPLP2への結合親和性を有する、2つの抗APLP2xHER2二重特異性抗体、H4H25018D及びH4H25019Dは、他の二重特異性抗体と比較して、T47D細胞において最も効率的にHER2分解を誘導し、細胞は20%未満の残りのHER2発現を示す。単一特異性抗体(HER2/T及びH4H13055P親抗体)によるHER2分解は、二重特異性抗体H4H25018D及びH4H25019Dよりも50%超効率が低かった。
実施例8:APLP2に対するAPLP2アームの親和性は、二重特異性抗HER2xAPLP2抗体内部移行の効率を調節する
MDA-MB-361細胞単層またはMDA-MB-361腫瘍スフェロイドに内部移行する二重特異性抗HER2xAPLP2抗体のサブセットの能力を試験した。アッセイでは、MDA-MB-361細胞(ATCC、カタログ番号HTB-27)を、それぞれコラーゲンコーティングした96ウェル光学プレート(Greiner、カタログ番号655936)に、25,000細胞/ウェルで、またはCorning(登録商標)96Well Black Clear Round Bottom Ultra Low Attachment Spheroid Microplate(Corning#4520)に、10%FBSを含むDMEMで1,000細胞/ウェルで、プレートして、5%CO2中37℃で一晩(細胞の場合)または3日間(腫瘍スフェロイドの場合)インキュベートした。インキュベーション後、細胞を、冷(4℃)培地で30分間インキュベートし、スフェロイドを温かい(37℃)培地で3時間インキュベートし、各培地には10μg/mLのAlexa647(Thermo、カタログ番号A37573)標識された抗HER2xAPLP2結合タンパク質(H4H25014D、H4H25018DまたはH4H25020D)が含まれている。その後、細胞を冷(4℃)培地で1回または2回洗浄した。
洗浄後、細胞を室温の基本上皮培地(ATCC、カタログ番号PCS-600-030)に入れ、次いで、ライブ画像取得を、Zeiss Spinning Disc共焦点顕微鏡で1~2分後に開始した。スフェロイドは、4%PFA+0.075%サポニン+10μg/mLのHoechstで固定し、その後DPBSで洗浄した。スフェロイドの中心からの共焦点画像は、Zeiss Spinning Disc共焦点顕微鏡で取得した。取得した画像は、Zeiss Zenソフトウェアを使用して分析した。MDA-MB-361細胞に内部移行された二重特異性の量は、任意の単位で表しており、1分あたりで表13に示している。
表13に示されるように、同じHER2アーム及び異なるAPLP2アームを含む3つの二重特異性抗HER2xAPLP2抗体は、細胞によって内部移行され、腫瘍スフェロイドの中心に浸透した。図6を参照のこと。H4xH21387P2 APLP2アームを含むH4H25018Dは、細胞内小胞の数の増大(矢印)の存在によって証明された、最速の内部移行率(表13)及びH4H24020Dよりも効率的な内部移行を示した。図6(下部パネル)を参照のこと。理論に拘束されることを望まないが、このデータは、二重特異性抗HER2xAPLP2結合タンパク質の内部移行が、APLP2アームの内部移行反応速度論、及び二重特異性抗HER2xAPLP2結合タンパク質がHER2アームを使用して細胞表面に結合し、その後APLP2アームを使用して内部移行される作用機序に依存し得ることを示唆している。
実施例9:薬物コンジュゲート抗HER2xAPLP2結合タンパク質の生成及び特徴付け
薬物コンジュゲーションの2つの方法を使用した。第1の方法では、50mM HEPES、150mM NaCl、pH 8.0、及び10~15%(v/v)DMA中の抗体(10~20mg/mL)を、5~6倍過剰のSMCC-DM1または(化合物I、)とリジンを介して、周囲温度で2時間、コンジュゲートさせた。(2017年11月15日に出願されたPCT国際出願番号PCT/US2017/061757のように、本明細書に記載の抗体または二重特異性抗原結合タンパク質を、式Bを有する化合物と接触させることを含むプロセスも参照のこと。)第2の方法では、抗体(10mg/mL)含有の50mMのHEPES、150mMのNaCl、pH7.5を、37℃で、30分間、1mMジチオスレイトールで処理した。ゲル濾過(G-25、pH4.5酢酸ナトリウム)の後、マレイミドリンカーペイロード誘導体化合物II(WO2016160615の化合物60も参照)(1.2当量/SH基)DMSO(10mg/ml)を、還元抗体に添加し、その混合物を1MのHEPES(pH7.4)を使用してpH7.0に調整して、還元された鎖間システインにコンジュゲートさせた。
各コンジュゲートは、サイズ排除クロマトグラフィーまたは広範な限外濾過によって精製し、次いで滅菌濾過した。タンパク質濃度は、UVスペクトル分析によって決定した。サイズ排除HPLCにより、使用した全てのコンジュゲートが95%を超えて単量体であることが確認された。全てのコンジュゲート抗体は、Hamblett et al(American Association for Cancer Research.2004 Oct 15;10(20):7063-70)に従うリンカーペイロード負荷値(薬物対抗体比、DAR値)についてUVによって、及び/または天然対コンジュゲートの質量差を使用した質量分析によって、分析した。その結果は、表14にまとめられている。
コンジュゲーションの第1の方法のための抗体へのリンカーペイロードの負荷を決定するために、コンジュゲートを、脱グリコシル化し、LC-MSによって分析した。簡単に説明すると、50μgのコンジュゲートを、milli-Q水で最終濃度1mg/mLに希釈した。10μLのPNGaseF溶液[PNGaseF溶液は、150μLのPNGase Fストック(New England Biolabs、カタログ番号P0704L)及び850μLのmilli-Q水を加えることによって調製し、よく混合した]を希釈したコンジュゲート溶液に加え、次いで37℃で一晩インキュベートした。各試料5μLをLC-MS(Waters Synat G2-Si)に注入し、0.1mL/分の勾配移動相20~40%で25分かけて溶出した(移動相A:0.1%v/vギ酸含有H2O、移動相B:0.1%v/vギ酸含有アセトニトリル)。LC分離は、Waters Acquity BEH C4カラム(1.0 X 50mM、1.7μM)で、80℃で達成した。Masslynxソフトウェアを使用して質量分析スペクトルをデコンボリューションし、次の式を使用して薬物対抗体比(DAR)を計算した。
分布ピークの完全性(PI)による薬物(Dn)の相対パーセント(%):
Dn%=PIn/Σ(PI0+PI1+PI2.......+PIi)×100(n=0,1,2,3,…,i)
平均DAR計算:
DAR=Σ(1×D1%+2×D2%+3×D3%+......+i×Di%)
コンジュゲーションの第2の方法のための抗体へのリンカーペイロードの負荷を決定するために、コンジュゲートを脱グリコシル化し、還元し、そしてLC-MSによって分析した。簡単に説明すると、50μgのコンジュゲートを、milli-Q水を用いて最終濃度1mg/mLに希釈した。10μLのPNGaseF溶液[PNGaseF溶液は、150μLのPNGase Fストック(New England Biolabs、カタログ番号P0704L)及び850μLのmilli-Q水を加えることによって調製し、よく混合した]を、希釈したコンジュゲート溶液に加え、次いで37℃で一晩インキュベートした。得られた材料が、最終TCEP濃度が20mMになるように、2.4μLの0.5MのTCEPを試料に添加し、次いで、これを50℃で30分間インキュベートした。各試料10μLを、LC-MS(Waters Synat G2-Si)に注入し、0.1mL/分の勾配移動相20~40%を使って、25分かけて溶出した(移動相A:0.1%v/vのギ酸含有H2O、移動相B:0.1%v/vのギ酸含有アセトニトリル)。LC分離は、Waters Acquity BEH C4カラム(1.0 X 50mM、1.7μM)で、80℃で達成された。
質量分析スペクトルを、デコンボリューションして、リンカーペイロード値=0及び1の軽鎖(L)、ならびにリンカーペイロード値=0、1、2及び3の重鎖(H)によって表される軽鎖及び重鎖のピークを同定した。各種の強度値から、ホモダイマーまたはヘテロダイマー抗体コンジュゲートについて以下の式を使用して、薬物対抗体比(DAR)を計算した。デコンボリューションされた各ピークの強度を計算に使用した。
実施例10:SMCC-DM1、化合物Iコンジュゲート、または化合物IIコンジュゲート抗HER2xAPLP2結合タンパク質のインビトロの細胞毒性
SMCC-DM1、化合物Iまたは化合物II毒素のいずれかとコンジュゲートした二重特異性HER2xAPLP2抗体薬物コンジュゲート(ADC)のIC
50を比較するために、インビトロ細胞毒性アッセイを実施した。このアッセイは、ADC濃度を下げて6日間処理したJIMT-1細胞で実施し、処理後に核を数えることで細胞生存率を測定した。アッセイでは、JIMT-1(DSMZ、カタログ番号ACC589)を、コラーゲンコーティングされた96ウェル光学プレート(Greiner、カタログ番号655936)に3×10
3細胞/ウェルで播種し、DMEM、10%FBS、及び10ug/mLインスリンを含む培地中で一晩、5%CO
2中37℃で増殖させた。翌日、二重特異性抗HER2xAPLP2 ADC(H4H25018D-SMCC-DM1、H4H25019D-SMCC-DM1、H4H25018D-化合物I、H4H25019D-化合物I、H4H25018D-化合物II、H4H25019D-化合物II)またはSMCC-DM1、化合物I、もしくは化合物IIのいずれかとコンジュゲートした非結合対照抗体のいずれかを、DMEM及び10%FBS中で、66.67nM~0.01nMの範囲の最終濃度で細胞に添加し、次いで、6日間インキュベートした。インキュベーション後、110uLの核染色液[0.15%サポニン(Sigma、カタログ番号S4521)及び20ug/mLのHoechst(Lifetech、カタログ番号H3569)を含む8%パラホルムアルデヒド50mL]を各ウェルに加え、室温で15~25分間インキュベートした。続いて、培地及び染色剤を除去し、カルシウム及びマグネシウムを含むDPBS(DPBS/CM)を使用して、このウェルを1回洗浄した。洗浄後、ウェルを、DPBS/CMに入れた。次いで、ImageXpress
Micro自動顕微鏡(Molecular Devices)で10倍の対物レンズを使用して、1ウェルあたり9つの視野を画像化した。MetaXpressソフトウェア(Molecular Devices)を使用して、取得した画像から核を定量化した。IC
50値は、10ポイントの応答曲線(GraphPad Prism)での2相減衰方程式から決定された。全てのIC
50値はnM濃度で表される。
表15に示されるように、DM1とコンジュゲートした二重特異性抗HER2xAPLP2結合タンパク質(H4H25018D-SMCC-DM1及びH4H25019D-SMCC-DM1)は両方とも、それぞれ0.07nM及び0.13nMのIC50値で殺滅を示した。化合物Iまたは化合物IIのいずれかとコンジュゲートされたH4H25018D及びH4H25019Dは、それぞれのDM1コンジュゲートと匹敵するIC50値を示した。SMCC-DM1、化合物I、または化合物IIのいずれかとコンジュゲートした非結合対照抗体は、効率の低い殺滅を示し、IC50値は15~>67nMの範囲であった。
実施例11:二重特異性抗HER2xAPLP2 ADCは、単一特異性抗HER2抗体と比較して、HER2発現細胞に対してより大きな標的細胞毒性を示す。
実験1
バイオアッセイ細胞を殺滅する本発明のHER2×APLP2二重特異性抗体薬物コンジュゲート(ADC)の能力を試験するために、インビトロ細胞毒性アッセイを実施した。このアッセイは、ADC濃度を下げて6日間処理した、様々なレベルのHER2発現を伴う細胞で実施し、処理後に核を数えることで細胞生存率を測定した。アッセイには、MDA-MB-231(ATCC、HTB-26)、MDA-MB-468(ATCC、カタログ番号HTB-132)、MCF7(ATCC、カタログ番号HTB-22)、T47D細胞(ATCC、HTB-133)、JIMT-1(DSMZ、ACC589)、MDA-MB-361(ATCC、カタログ番号HTB-27)、MDA-MB-453(ATCC、カタログ番号HTB-131)、またはSKBR3(ATCC、HTB-30)のいずれかをコラーゲンでコーティングした96ウェル光学プレート(Greiner、カタログ番号655936)に3×10
3細胞/ウェルで播種し、表6による培地中で37℃、5%CO
2中で一晩培養した。翌日、二重特異性抗HER2xAPLP2 ADC(H4H25018D-SMCC-DM1及びH4H25019D-SMCC-DM1)、二重特異性抗FelD1xAPLP2 ADC(H4H28697D-SMCC-DM1)、HER2/T対照Ab-SMCC-DM1、またはアイソタイプ対照-SMCC-DM1を、DMEM及び10%FBS中で66.67nM~0.01nMの範囲の最終濃度で、細胞に添加し、次いで6日間インキュベートした。インキュベーション後、110uLの核染色液[0.15%サポニンを含む8%パラホルムアルデヒド50mL(Sigma、カタログ番号S4521)及び20ug/mL Hoecsht(Lifetech、カタログ番号H3569)]を各ウェルに加え、室温で15~25分間インキュベートした。続いて、培地及び染色剤を除去し、カルシウム及びマグネシウムを含むDPBS(DPBS/CM)を使用して、ウェルを1回洗浄した。洗浄後、そのウェルを、DPBS/CMに入れた。次に、Image Xpress
Micro自動顕微鏡(Molecular Devices)で10倍の対物レンズを使用して、1ウェルあたり9つの視野を画像化した。MetaXpressソフトウェア(Molecular Devices)を使用して、取得した画像から核を定量化した。IC
50値は、10ポイントの応答曲線(GraphPad Prism)での2相減衰方程式から決定された。全てのIC
50値はnM濃度で表される。そのデータは表16Aに要約されている。図7もまた参照のこと。
表16A及び図7に示されるように、非常に低いHER2レベルを発現するMDA-MB-231及びMDA-MB468細胞において、抗HER2xAPLP2結合タンパク質ADC、H4H25018D-DM1及びH4H25019D-SMCC-DM1は、IC50値が5~9nMという殺滅を示した。同じ細胞で、HER2/T対照-SMCC-DM1 ADCは、10~25nMのIC50値で効率の低い殺滅を示した。アイソタイプ対照-SMCC-DM1 ADCは、18~35nMのIC50値で効率の低い殺滅を示した。
低HER2レベルを発現するMCF-7及びT47D細胞において、抗HER2xAPLP2結合タンパク質ADC二重特異性ADC、H4H25018D-SMCC-DM1及びH4H25019D-SMCC-DM1は、2nMのIC50値で殺滅を示した。同じ細胞で、HER2/T対照-SMCC-DM1 ADCは、10~40nMのIC50値で効率の低い殺滅を示した。アイソタイプ対照-SMCC-DM1 ADCは、30~50nMというIC50値で効率の低い殺滅を示した。
中間HER2レベルを発現するJIMT-1、MDA-MB-361及びMDA-MB-453細胞において、抗HER2xAPLP2結合タンパク質ADC、H4H25018D-SMCC-DM1及びH4H25019D-SMCC-DM1は、0.03~0.8nMの間というIC50値での殺滅を示した。同じ細胞で、HER2/T対照-SMCC-DM1 ADC及び抗FelD1xAPLP2 ADC(H4H28697D-SMCC-DM1)は、それぞれ0.25~5nM及び2~5nMというIC50値で効率の低い殺滅を示した。アイソタイプ対照-SMCC-DM1 ADCは、8~30nMというIC50値で効率の低い殺滅を示した。
高いHER2レベルを発現するSK-BR-3細胞において、抗HER2xAPLP2結合タンパク質ADC、H4H25018D-SMCC-DM1及びH4H25019D-SMCC-DM1は両方とも、それぞれ0.02nM及び0.03nMというIC50値で殺滅を示した。同じ細胞で、HER2/T対照-SMCC-DM1 ADCは、0.1nMというIC50値で効率の低い殺滅を示した。アイソタイプ対照-SMCC-DM1 ADCは、10nMのIC50値で効率の低い殺滅を示した。
抗HER2xAPLP2結合タンパク質ADC、H4H25018D-SMCC-DM1及びH4H25019D SMCC-DM1は、試験された全ての細胞株において、HER2対照Ab-SMCC-DM1 ADCよりも強力な細胞殺滅を誘導した。抗HER2xAPLP2結合タンパク質ADCは、非常に低いHER2レベルを発現する細胞を殺滅するのに、より高いHER2レベルの細胞を殺滅するほど効率的ではなかった。二重特異性抗FELD1xAPLP2結合タンパク質は、中間のHER2レベルを発現する細胞株の殺滅をほとんど誘発せず、APLP2アームだけでは効率的な細胞殺滅を駆動するのに十分ではなかったことが示されている。
実験2
異なるAPLP2アームからなる本発明のHER2xAPLP2二重特異性抗体薬物コンジュゲート(ADC)がバイオアッセイ細胞を殺滅する能力を試験するために、インビトロ細胞毒性アッセイを実施した。このアッセイは、ADC濃度を下げて6日間処理した様々なレベルのHER2発現を伴う細胞で実施し、その細胞生存率を、Cell Titer Glow(Promega G7571)でATP産生を測定することにより処理後に測定した。
アッセイについては、MDA-MB-231(ATCC、カタログ番号HTB-26)、MCF7(ATCC、カタログ番号HTB-22)、T47D(ATCC、カタログ番号HTB-133)、ZR75-1(ATCC、カタログ番号CRL1500)、JIMT1(DSMZ、ACC589)、MDA-MB-361(ATCC、カタログ番号HTB-27)、MDA-MB-453(ATCC、カタログ番号HTB-131)、SKBR3(ATCC、カタログ番号HTB-30)またはN87(ATCC、CRL5822)を、コラーゲンでコーティングされた96ウェル光学プレート(Greiner、カタログ番号655936)に3×103個の細胞/ウェルで播種した。
MDA-MB-231、MDA-MB-361及びMDA-MB-453細胞を、DMEM及び10%FBSを含む培地で培養した。MCF-7は、MEM、10%FBS、及び10ug/mLインスリンを含む培地中で培養した。T47D細胞は、RPMI1640、10%FBS、グルタミン、1mMピルビン酸ナトリウム、10mMのHEPES、及び10ug/mLインスリンを含む培地中で培養した。SKBR3は、10%FBSを含むMcCoyを含む培養培地であった。ZR75-1及びN87は、RPMI1640、10%FBSを含む培地中で培養した。JIMT1細胞は、DMEM、10%FBS、及び10ug/mLのインスリンを含む培地中で培養した。
翌日、HER2xAPLP2二重特異性ADC(H4H25014D-DM1、H4H25018D-DM1及びH4H25020D-DM1)、外因性標的×APLP2 ADC(H4H28695D-DM1、H4H28697D-DM1及びH4H28696D-DM1)、HER2対照Ab-DM1、またはアイソタイプ対照-DM1を、DMEM及び10%FBS中で66.67nM~0.01nMの範囲の最終濃度で細胞に添加し、次いで、6日間インキュベートした。インキュベーション後、100uLのCell Titer Glow溶液(Promega、カタログ番号G7571)を、各ウェルに添加し、オービタルシェーカー(400RPM)で、室温で5分間インキュベートした。発光は、Spectramax M3リーダー(Molecular Devices)で定量した。IC50値は、10ポイントの応答曲線(GraphPad Prism)での2相減衰方程式から決定した。全てのIC50値は、nM濃度で表される。
表16Bに示されるように、高いHER2レベル(SKBR3及びN87)を発現する細胞株において、HER2-ADC及び3つのHER2xAPLP2二重特異性ADCは、0.004~0.05nMの範囲のIC
50値で同程度に効率的な細胞殺滅を誘導したが、アイソタイプ対照-ADCは、7nMのIC
50値で非効率的な細胞殺滅を誘導した。中間のHER2レベルを発現する細胞株(MDAMB453、MDAMB361、JIMT1、及びZR751)では、強力なAPLP2アームを備えたHER2xAPLP2二重特異性ADC、H4H25018Dが、中程度及び弱いAPLP2アーム、H4H25014D及びH4H25020Dを備えたHER2xAPLP2二重特異性ADCよりも、0.04~0.15nMの範囲のIC
50値でより効率的な細胞殺滅を誘導し、これは、IC
50 0.06~3nMというIC
50値で殺滅を示した。中間のHER2レベルを発現する細胞株(MDAMB453、MDAMB361、JIMT1、及びZR751)では、HER2-ADCは、3つの二重特異性のいずれよりも効率の低い細胞殺滅を誘発した。これらの細胞では、アイソタイプ対照-ADCは、1~30nMの範囲のIC
50値で非効率的な細胞殺滅を誘発した。低HER2レベルを発現する細胞株では(T47D及びMCF7)、アイソタイプ対照-ADC、HER2-ADC、ならびに中程度及び弱いAPLP2アームを備えたHER2xAPLP2二重特異性ADCは、10~70nMの範囲のIC
50値で非効率的な細胞殺滅を誘発した。強力なAPLP2アームを備えたHER2xAPLP2二重特異性ADCは、他のADCよりもわずかに強力な殺滅を示したが、その効果は3.5~5nMの範囲のIC
50値で制限されていた。非常に低いHER2レベルを発現する細胞株(MDAMB231)では、ADCのいずれも効率的な殺滅を誘発しなかった。試験した全ての細胞株で、中程度または弱い一価APLP2-ADCは、IC
50値が6nMを超えるアイソタイプ対照ADCと重複する、非効率的な細胞殺滅を誘発したが、強い一価APLP2-ADCは、IC
50値が2nMを超える限定的な殺滅効果を示した。
結論として、HER2xAPLP2-ADCは、試験された細胞株を殺滅する際に、高HER2発現細胞におけるHER2-ADCと同じくらい効率的であり、中間のHER2発現細胞においてより効率的であった。正常細胞におけるHER2発現よりもわずかに高い、低いHER2レベルを発現する細胞では、HER2xAPLP2-ADCは、細胞殺滅がないことに限定されていることを示した。一価のAPLP2-ADCは、試験した任意の細胞株で効率的な細胞殺滅を誘導するのに十分ではなかった。
実施例12:二重特異性抗HER2xAPLP2 ADCは、単一特異性抗HER2抗体と比較して、JIMT-1腫瘍退縮のインビボモデルにおいて、より大きな標的細胞毒性を示す。
例示的な二重特異性抗HER2xAPLP2二重特異性抗体薬物コンジュゲート(ADC)の有効性をさらに試験するために、インビボ異種移植腫瘍研究を実施した。アッセイには、8週齢の雌性SCIDマウス(Taconic Biosciences、n=70)を使用した。JIMT-1(DSMZ、ACC589)細胞を、Matrigel(Corning、カタログ番号354234)及び150uLの細胞と混合し、5×10
6個の細胞を含むマトリゲル懸濁液を、SCIDマウスに注入した。3週間後、二重特異性抗HER2xAPLP2 ADC(H4H25018D-SMCC-DM1及びH4H25019D-SMCC-DM1)、HER2対照-SMCC-DM1、及びアイソタイプ対照-SMCC-DM1を、10mg/kg(1治療群あたりn=6)で、腫瘍サイズに基づいて無作為化したSCIDマウスに皮下投与した。最初の投与から33日後、2回目の投与を全ての群に投与した。各マウスの異種移植片のサイズは、Caliper(Roboz、カタログ番号RS6466)を使用して、最初のADC投与後1日目~83日目まで週に2回測定した。測定された各時点の1治療群あたりの平均腫瘍サイズを、表17Aに示す。
二重特異性抗HER2xAPLP2 H4H25018D-SMCC-DM1 ADCを投与されたマウスでは、JIMT-1異種移植片サイズが16mm3未満の平均サイズに有意かつ持続的に減少したことが見られた。二重特異性抗HER2xAPLP2 H4H25019D-SMCC-DM1 ADCを投与されたマウスでは、JIMT-1異種移植片のサイズが最小の平均サイズである77mm3まで有意に減少することが見られたが、異種移植片のサイズは後で437mm3に再成長した。HER2/T対照-SMCC-DM1 ADCを投与されたマウスでは、JIMT-1異種移植片のサイズが最小の平均サイズである140mm3に減少することが見られたが、その後、異種移植片のサイズは1600mm3を超えて再成長した。アイソタイプ対照-SMCC-DM1 ADCを投与されたマウスでは、各測定を通じてJIMT-1異種移植片のサイズが1933mm3の平均サイズに増大することが見られた。図8を参照のこと。
同様の実験において、JIMT-1(DSMZ、ACC589)細胞を、マトリゲル(Corning、カタログ番号354234)及び150uLの細胞と混合し、5×106個の細胞を含むマトリゲル懸濁液を、SCIDマウスに注射した。移植後11日及び25日に、抗HER2xAPLP2二重特異性ADC(H4H25014D-DM1、H4H25018D-DM1、及びH4H25020D-DM1)、抗APLP2x無関係なAb対照ADC(H4H28695D-DM1、H4H28696D-DM1、及びH4H28697D-DM1)、HER2対照-DM1、及びアイソタイプ対照-DM1を、腫瘍サイズに基づいて無作為化されたSCIDマウスに10mg/kg(1治療群あたりn=6)で皮下投与した。各マウスの異種移植片サイズは、移植後11、13、16、19、23、25、30、33、37、44、48、53、56、59、68、及び74日目に、Caliper(Roboz、カタログ番号RS6466)を使用して測定した。測定された各時点の1治療群あたりの平均腫瘍サイズを、表17Bに示す。
抗HER2xAPLP2二重特異性ADC、H4H25018D-DM1を投与されたマウスは、JIMT-1異種移植片サイズの平均サイズ93mm
3への有意な減少を示した。抗HER2xAPLP2二重特異性ADC、H4H25014D-DM1及びH4H25020D-DM1を投与されたマウスは、JIMT1異種移植片の腫瘍停滞を示し、これは30日間、平均サイズ200mm
3という処置前に近いままであった。対照的に、アイソタイプ対照-DM1 ADCまたはHER2対照-DM1 ADCのいずれかを投与されたマウスでは、各測定を通じてJIMT-1異種移植片のサイズが、30日目までに400mm
3超、53日目で1000mm
3超という平均サイズに増大することが見られた。抗APLP2x無関係のAb対照ADCを投与されたマウスでは、JIMT-1異種移植片のサイズが増大することが見られ、腫瘍の停滞がほとんどなく、30日目までに283~366mm
3、及び53日目で800mm
3超という平均サイズまで増大した。
実施例13:二重特異性抗HER2xAPLP2 ADCは、単一特異性抗HER2抗体と比較して、MDA-MB-361腫瘍退縮のインビボのモデルにおいてより大きな標的細胞毒性を示す
例示的な二重特異性抗HER2xAPLP2抗体薬物コンジュゲート(ADC)の有効性をさらに試験するために、インビボ異種移植腫瘍研究を実施した。要するに、6週齢の雌性SCIDマウス(Taconic Biosciences、n=60)にエストロゲンペレット(0.72mg/ペレット。Innovative Research of America、カタログ番号NE-121)を皮下移植した。翌日、MDA-MB-361細胞(ATCC、HTB-27)をマトリゲル(Corning、カタログ番号354234)と混合し、5×106個の細胞を含むマトリゲル懸濁液を有する150μLの細胞を、SCIDマウスに注射した。12日後、二重特異性抗HER2xAPLP2 ADC(H4H25018D-SMCC-DM1)、HER2/T対照-SMCC-DM1、及びアイソタイプ対照-DM1を、腫瘍サイズに基づいて無作為化されたSCIDマウスに10mg/kg(1治療群あたりn=7)で皮下投与した。各マウスの異種移植片サイズは、Caliper(Roboz、カタログ番号RS6466)を使用して、ADC投与後1日目~95日目まで測定した。
測定された各時点についての1治療群あたりの腫瘍サイズの平均(AVG)及び標準偏差(SD)を表18に示す。
二重特異性抗HER2xAPLP2 H4H25018D-SMCC-DM1 ADCを投与されたマウスでは、MDA-MB-361異種移植片のサイズの有意でかつ持続的な減少が見られた。HER2対照-SMCC-DM1 ADCを投与されたマウスでは、MDA-MB-361異種移植片のサイズが、83mm3という最小の平均サイズまでの減少が見られたが、その後、異種移植片のサイズは、744mm3を超えて再成長した。アイソタイプ対照-SMCC-DM1 ADCを投与されたマウスでは、MDA-MB-361異種移植片のサイズが、各測定を通じて、平均サイズ2041mm3まで増大することが見られた。
実施例13:ヒト化APLP2マウスにおける抗Her2xAPLP2二重特異性抗体(bsAb)の薬物動態学的評価
3つの抗HER2xAPLP2二重特異性抗体(H4H25018D、H4H25014D、H4H25020D)及びhIgG4P二価の非結合アイソタイプ対照の薬物動態の評価を、マウスAPLP2の代わりに、ヒトAPLP2の発現についてホモ接合性のマウスで実施した(APLP2hu/huマウス)。1群あたり5匹のマウスのコホートは、各抗体の単回皮下(SC)5mg/kg用量を投与された。血液試料は、投与後6時間、ならびに1、2、3、4、7、10、14、21、及び30日目に採取された。血液は血清に処理され、分析されるまで80℃で凍結された。H4H25018D、H4H25014D、H4H25020D及びアイソタイプ対照抗体の血清濃度は、GyroLab xPloreプラットフォーム(Gyros)を使用して測定した。
ジャイロ技術は、レーザー誘起蛍光検出を伴う自動イムノアッセイのためにアフィニティーフロースルーフォーマットを使用する。試料は、複数の放射状に配置されたナノリットルスケールのアフィニティーキャプチャーカラムを含む、コンパクトディスクにロードされる。液体の流れは、遠心力及び毛細管力によって制御される。
簡単に言えば、リン酸緩衝化生理食塩水中の0.05%Tween-20で構成される、緩衝液(抗体希釈緩衝液)中で100μg/mLに希釈されたビオチン化マウス抗ヒトIgG4/IgG1特異的モノクローナル抗体を、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズ(Dynospheres(商標))が事前に充填されたアフィニティーカラムを備えた、Gyrolab Bioaffy 200コンパクトディスクで捕捉した。このアッセイでキャリブレーションに使用した標準は、H4H25018D、H4H25014D、H4H25020D、または0.488~2000ng/mLの範囲の濃度のアイソタイプ対照抗体であった。標準試料と血清試料の段階希釈は、0.1%NMSを含むPBS中の0.5%BSAで構成される緩衝液(希釈緩衝液)で調製した。1:50に希釈された血清試料の一重項及び標準の複製が、室温でコンパクトディスク上の抗ヒトIgG4/IgG1特異的mAbでコーティングされたアフィニティーカラムに捕捉された。H4H25018D、H4H25014D、H4H25020D、またはアイソタイプ対照抗体は、Rexxip F緩衝液(Gyros、カタログ番号P0004825)で希釈した0.5μg/mLのAlexa-647結合マウス抗ヒトカッパモノクローナル抗体の添加により検出され、得られた蛍光シグナルを、GyroLab xPlore機器による応答単位(RU)で記録した。キャリブレーションに使用されたそれぞれの抗体標準の最低濃度は、アッセイのダイナミックレンジ内にあり、アッセイの検出下限(LLOQ)[0.02μg/mL]として定義された。試料濃度は、Gyrolab Evaluator Softwareの5パラメーターロジスティックカーブフィットを使用して作成された標準カーブからの補間によって決定された。2回の反復実験からの平均濃度を報告した。
PKパラメーターは、Phoenix(登録商標)WinNonlin(登録商標)ソフトウェアバージョン6.3(Certara,L.P.,Princeton,NJ)及び血管外投薬モデルを使用する非コンパートメント分析(NCA)によって決定された。各抗体のそれぞれの平均濃度値を使用して、血清中の観察された最大濃度(Cmax)、観察された推定半減期(t1/2)、及び最後の測定可能な濃度までの時間に対する濃度曲線下の面積(AUClast)を含む全てのPKパラメーターは、線形補間及び均一な重み付けを使用した線形台形公式を使用して決定された。
APLP2hu/huマウスにおける抗HER2xAPLP2二重特異性抗体の投与後、H4H25018D、H4H25014D、H4H25020Dは全て、血清中で抗体の異なる最大濃度(Cmax)を示した。H4H25020DのCmax濃度は47μg/mLであったが、H4H25014Dは、35μg/mLで1.3低い濃度を示し、H4H25018Dは、12μg/mLで最低のCmaxを示した(H4H25020Dより4倍低い)。H4H25020D、H4H25014D、及びH4H25018Dは全て、アイソタイプ対照抗体よりも低いCmax濃度(それぞれ1.7、2.3、6.5倍)を示した。H4H25018D、H4H25014D、H4H25020Dは全て、アイソタイプ対照抗体と比較してより速い薬物クリアランスを示し、これによって標的を介したクリアランスが示唆されている。H4H25018D及びH4H25020DのPKは、迅速な抗体クリアランスを特徴とし、それぞれ21日目及び30日目に抗体濃度は検出不能である。さらに、H4H25018D及びH4H25020Dは両方とも、T1/2が4日であるH4H25014DまたはT1/2が約11日であるアイソタイプ対照と比較して、それぞれ1.6日及び1.8日という貧弱な半減期(T1/2)を有している。H4H25018D、H4H25020D、及びH4H25014Dは全て、アイソタイプ対照抗体(1070d*μg/mL)よりも低い薬物曝露(AUC、それぞれ34、212、234d*μg/mL)を示す。H4H25014D及びアイソタイプ対照の平均終末抗体濃度は、それぞれ0.67μg/mL及び13.1μg/mLであった。
総抗HER2xAPLP2二重特異性抗体濃度のデータの要約を表19に示しており、平均PKパラメーターを表20に記載しており、平均総抗体濃度対時間を図10に示す。
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるべきではない。実際、本明細書に記載されたものに加えて本発明の様々な改変が、前述の説明及び添付の図から当業者に明らかになるであろう。そのような改変は、添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
ヒトAPLP2に結合する第1の抗原結合ドメイン、及びヒトHER2に結合する第2の抗原結合ドメインを含む二重特異性抗原結合分子。
(項目2)
前記第2の抗原結合ドメインが、ヒトHER2を発現するヒト細胞に結合する、項目1に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目3)
前記第1の抗原結合ドメインがAPLP2に低い親和性で結合する、項目1または項目2に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目4)
前記第1の抗原結合ドメイン及び前記第2の抗原結合ドメインのそれぞれが完全にヒトである、項目1~3のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目5)
前記抗原結合分子が、細胞上に発現されたヒトAPLP2及びヒトHER2の両方に結合し、その細胞においてAPLP2の内部移行及び/またはHER2の分解を誘導する、項目1~4のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目6)
前記抗体が、ヒトAPLP2を発現するがヒトHER2を発現しない細胞によって内部移行されない、項目1~5のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目7)
前記抗体が完全にヒトである、項目1~6のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目8)
前記第1の抗原結合ドメインがAPLP2に低い親和性で結合し、前記第2の抗原結合ドメインがHER2に高い親和性で結合して、HER2への前記第2の抗原結合ドメインの親和性が、APLP2への前記第1の抗原結合ドメインの結合力を増大させる、項目1~7のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目9)
前記第1の抗原結合ドメインが、表面プラズモン共鳴または同等のアッセイによって測定した場合、約100nM~約1μMのKDでヒトAPLP2に結合する、項目1~8のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目10)
前記第1の抗原結合ドメインが、表面プラズモン共鳴または同等のアッセイによって測定した場合、約100nM~約200nMのKDでヒトAPLP2に結合する、項目1~9のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目11)
前記第1の抗原結合ドメインが、表面プラズモン共鳴または同等のアッセイによって測定した場合、約200nM~約800nMのKDでヒトAPLP2に結合する、項目1~10のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目12)
前記第1の抗原結合ドメインが、表面プラズモン共鳴または同等のアッセイによって測定した場合、約800nM~約1μMのKDでヒトAPLP2に結合する、項目1~11のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目13)
前記第2の抗原結合ドメインが、表面プラズモン共鳴または同等のアッセイによって測定した場合、10nM未満のKDでヒトHER2に結合する、項目1~12のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目14)
前記第2の抗原結合ドメインが、表面プラズモン共鳴または同等のアッセイによって測定した場合、約3nM~約5nMのKDでヒトHER2に結合する、項目1~13のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目15)
前記第1の抗原結合ドメインが約100nM~約1μMのKDでヒトに結合し、前記第2の抗原結合ドメインが10nM未満のKDでヒトに結合し、ここで、KDが表面プラズモン共鳴または同等のアッセイによって測定される、項目1~14のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目16)
前記第1の抗原結合ドメインが、表2に記載のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む抗体または抗原結合フラグメントに由来し、かつ前記第2の抗原結合ドメインが、表1に記載されているHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む抗体または抗原結合フラグメントに由来する、項目1~15のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目17)
ヒトAPLP2への結合について、表2に記載のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と競合する、項目1~16のいずれか1項に記載の抗体または抗原結合フラグメント。
(項目18)
前記参照抗体が、配列番号26/10、34/10、及び42/10からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、項目1~17のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目19)
表2に記載のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と同じ、ヒトAPLP2上のエピトープに結合する、項目1~18のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目20)
配列番号26/10、34/10、及び42/10からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と同じ、ヒトAPLP2上のエピトープに結合する、項目1~19のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目21)
前記抗原結合分子が、ヒト乳癌異種移植片を保有する免疫無防備状態のマウスにおいて腫瘍増殖を阻害する、項目1~20のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目22)
二重特異性抗体またはその二重特異性抗原結合フラグメントである、項目1~21のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目23)
項目1~22のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子であって、ヒトHER2に特異的に結合する前記第2の抗原結合ドメインが、配列番号2及び18からなる群より選択される重鎖可変領域(HCVR)由来の重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)を含み、
ヒトHER2に特異的に結合する前記第2の抗原結合ドメインが、配列番号2及び18からなる群より選択される重鎖可変領域(HCVR)由来の重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)、ならびに配列番号10からなるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)由来の軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)を含む、前記二重特異性抗原結合分子。
(項目24)
項目1~23のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子であって、ヒトHER2に特異的に結合する前記第2の抗原結合ドメインが、3つの重鎖相補性決定領域(A2-HCDR1、A2-HCDR2及びA2-HCDR3)、ならびに3つの軽鎖相補性決定領域(A2-LCDR1、A2-LCDR2及びA2-LCDR3)を含み、ここで、A2-HCDR1が、配列番号4及び20からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、A2-HCDR2が、配列番号6及び22からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、A2-HCDR3が、配列番号8及び24からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、A2-LCDR1が、配列番号12のアミノ酸配列を含み、A2-LCDR2が、配列番号14のアミノ酸配列を含み、かつA2-LCDR3が配列番号16のアミノ酸配列を含む、前記二重特異性抗原結合分子。
(項目25)
ヒトHER2に特異的に結合する前記第2の抗原結合ドメインが、配列番号18/10のHCVR/LCVRアミノ酸配列対の重鎖及び軽鎖CDRを含む、項目1~24のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目26)
項目1~25のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子であって、ヒトAPLP2に特異的に結合する前記第1の抗原結合ドメインが、表2に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)由来の重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)、ならびに表2に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)由来の軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)を含む、前記二重特異性抗原結合分子。
(項目27)
項目1~26のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子であって、ヒトAPLP2に特異的に結合する前記第1の抗原結合ドメインが、配列番号26、34及び42からなる群より選択される重鎖可変領域(HCVR)由来の重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2及びHCDR3)、ならびに配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)由来の軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2及びLCDR3)を含む、前記二重特異性抗原結合分子。
(項目28)
項目1~27のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子であって、ヒトAPLP2に特異的に結合する前記第1の抗原結合ドメインが、3つの重鎖相補性決定領域(A1-HCDR1、A1-HCDR2及びA1-HCDR3)、ならびに3つの軽鎖相補性決定領域(A1-LCDR1、A1-LCDR2及びA1-LCDR3)を含み、
ここで、A1-HCDR1が、配列番号28、36、及び44からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、A1-HCDR2が、配列番号30、38、及び46からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、A1-HCDR3が、配列番号32、40及び48からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、A1-LCDR1が配列番号12のアミノ酸配列を含み、A1-LCDR2が配列番号14のアミノ酸配列を含み、かつA1-LCDR3が配列番号16のアミノ酸配列を含む、前記二重特異性抗原結合分子。
(項目29)
ヒトAPLP2に特異的に結合する前記第1の抗原結合ドメインが、配列番号26/10、34/10、及び42/10からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対の重鎖及び軽鎖CDRを含む、項目1~28のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目30)
項目1~29のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子であって、ヒトAPLP2に特異的に結合する前記第1の抗原結合ドメインが3つの重鎖相補性決定領域(A1-HCDR1、A1-HCDR2及びA1-HCDR3)、ならびに3つの軽鎖相補性決定領域(A1-LCDR1、A1-LCDR2及びA1-LCDR3)を含み、ヒトHER2に特異的に結合する第2の抗原結合ドメインが、3つの重鎖相補性決定領域(A2-HCDR1、A2-HCDR2及びA2-HCDR3)、ならびに3つの軽鎖相補性決定領域(A2-LCDR1、A2-LCDR2及びA2-LCDR3)を含み、
ここで、A1-HCDR1が、配列番号28、36及び44からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、A1-HCDR2が、配列番号30、38、及び46からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、A1-HCDR3が、配列番号32、40、及び48からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、A1-LCDR1が、配列番号12のアミノ酸配列を含み、A1-LCDR2が配列番号14のアミノ酸配列を含み、かつA1-LCDR3が配列番号16のアミノ酸配列を含み、かつ
ここで、A2-HCDR1が、配列番号20のアミノ酸配列を含み、A2-HCDR2が、配列番号22のアミノ酸配列を含み、A2-HCDR3が、配列番号24のアミノ酸配列を含み、A2-LCDR1が、配列番号12のアミノ酸配列を含み、A2-LCDR2が、配列番号14のアミノ酸配列を含み、かつA2-LCDR3が配列番号16のアミノ酸配列を含む、前記二重特異性抗原結合分子。
(項目31)
ヒトAPLP2に特異的に結合する第1の抗原結合ドメインが、配列番号36-38-30のアミノ酸配列を有するHCDR1-HCDR2-HCDR3を含むHCVRを含む、項目1~30のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子。
(項目32)
項目1~31のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子であって、前記第2の抗原結合ドメインが、3つの重鎖相補性決定領域(A2-HCDR1、A2-HCDR2及びA2-HCDR3)及び3つの軽鎖相補性決定領域(A2-LCDR1、A2-LCDR2及びA2-LCDR3)を含む参照抗原結合タンパク質と、ヒトHER2への結合について競合し、ここで、A2-HCDR1は、配列番号20のアミノ酸配列を含み、A2-HCDR2が配列番号22のアミノ酸配列を含み、A2-HCDR3が配列番号24のアミノ酸配列を含み、A2-LCDR1が、配列番号12のアミノ酸配列を含み、A2-LCDR2が配列番号14のアミノ酸配列を含み、かつA2-LCDR3が配列番号16のアミノ酸配列を含む、前記二重特異性抗原結合分子。
(項目33)
項目1~32のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子であって、前記第2の抗原結合ドメインが、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)、及び配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む参照抗原結合タンパク質と、ヒトHER2への結合について競合する、前記二重特異性抗原結合分子。
(項目34)
項目1~33のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子であって、前記第1の抗原結合ドメインが、3つの重鎖相補性決定領域(A1-HCDR1、A1-HCDR2及びA1-HCDR3)及び3つの軽鎖相補性決定領域(A1-LCDR1、A1-LCDR2及びA1-LCDR3)を含む参照抗原結合タンパク質と、ヒトAPLP2への結合について競合し、ここで、A1-HCDR1が、配列番号28、36、及び44からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、A1-HCDR2が、配列番号30、38及び46からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、A1-HCDR3が、配列番号32、40、及び48からなる群より選択されるアミノ酸配列を含み、A1-LCDR1が配列番号12のアミノ酸配列を含み、A1-LCDR2が配列番号14のアミノ酸配列を含み、かつA1-LCDR3が配列番号16のアミノ酸配列を含む、前記二重特異性抗原結合分子。
(項目35)
項目1~34のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子であって、前記第1の抗原結合ドメインが、配列番号26、34及び42からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)、ならびに配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む参照抗原結合タンパク質と、ヒトAPLP2への結合について競合する、前記二重特異性抗原結合分子。
(項目36)
項目1~35のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子であって、前記第1の抗原結合ドメインが、配列番号34のアミノ酸を含む重鎖可変領域(HCVR)、及び配列番号10のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む参照抗原結合タンパク質と、ヒトAPLP2への結合について競合し、かつここで、前記第2の抗原結合ドメインが、配列番号18のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)及び配列番号10のアミノ酸を含む軽鎖可変領域(LCVR)を含む参照抗原結合タンパク質と、ヒトHER2への結合について競合する、前記二重特異性抗原結合分子。
(項目37)
項目1~36のいずれか1項に記載の二重特異性抗原結合分子及び細胞毒性剤を含む抗体薬物コンジュゲート(ADC)であって、任意に、前記二重特異性抗原結合分子及び前記細胞毒性剤が、リンカーを介して共有結合されており、ここで、任意に前記細胞毒性剤がメイタンシノイドであり、任意に前記メイタンシノイドがDM1またはDM4であり、任意に前記リンカーがSMCCであり、かつ任意に前記細胞毒性剤がDM1であり、かつ前記リンカーがSMCCである、前記抗体薬物コンジュゲート(ADC)。
(項目38)
表2に記載のHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と、ヒトAPLP2への結合について競合する、単離された抗APLP2抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目39)
前記第1の抗原結合ドメインが、約100nM~約1μMのKDでヒトAPLP2に結合し、任意に、前記第1の抗原結合ドメインが、約100nM~約200nMのKDでヒトAPLP2に結合し、任意に、表面プラズモン共鳴または同等のアッセイによって測定した場合、前記第1の抗原結合ドメインが約200nM~約800nMのKDでヒトAPLP2に結合し、任意に前記第1の抗原結合ドメインが、表面プラズモン共鳴または同等のアッセイで測定した場合、約800nM~約1μMのKDでヒトAPLP2に結合する、項目38に記載の抗APLP2抗体またはその抗原結合フラグメント。
(項目40)
前記参照抗体が、配列番号26/10、34/10、及び42/10からなる群より選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む、項目38または項目39に記載の抗APLP2抗体または抗原結合フラグメント。
(項目41)
表2に記載されているHCVR/LCVRアミノ酸配列対を含む参照抗体と同じ、ヒトAPLP2上のエピトープに結合する、項目38~40のいずれか1項に記載の抗APLP2抗体または抗原結合フラグメント。
(項目42)
項目38~41のいずれか1項に記載の抗APLP2抗体または抗原結合フラグメント、及び細胞毒性剤を含み、前記二重特異性抗原結合分子及び細胞毒性剤が、リンカーを介して共有結合されている抗体薬物コンジュゲート(ADC)。
(項目43)
項目1~36に記載の二重特異性抗原結合分子、項目38~42のいずれか1項に記載の単離された抗APLP2抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または項目37もしくは項目42に記載のADC、ならびに薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む、薬学的組成物。
(項目44)
対象におけるがんを治療するための方法であって、項目43に記載の薬学的組成物を前記対象に投与することを含む、前記方法。
(項目45)
前記がんが、前立腺癌、膀胱癌、頸部癌、肺癌、結腸癌、腎臓癌、乳癌、膵臓癌、胃癌、子宮癌、及び卵巣癌からなる群より選択される、項目44に記載の方法。
(項目46)
前記がんが乳癌であり、任意にIHC2+乳癌である、項目45に記載の方法。
(項目47)
HER2の発現に関連する疾患または障害の治療における項目43に記載の薬学的組成物の使用。
(項目48)
前記疾患または障害ががんである、項目47に記載の使用。
(項目49)
がんの治療における使用のための医薬の製造のための、項目1~36に記載の二重特異性抗原結合分子、項目38~42のいずれか1項に記載の単離された抗APLP2抗体もしくはその抗原結合フラグメント、または項目37もしくは項目42に記載のADCの使用であって、任意に、前記がんが乳癌である、前記使用。