JP7323759B2 - 旋盤 - Google Patents

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Description

本発明は、互いに対向する二つの主軸にワークを把持させる旋盤に関する。
旋盤として、正面主軸に把持されているワークに正面加工を行って正面加工後のワークを背面主軸に渡して背面加工を行うNC(数値制御)旋盤が知られている。正面主軸と背面主軸は、コレット等、ワークを把持する把持部を有している。NC旋盤は、正面主軸の把持部に把持されている正面加工後のワークの方へ背面主軸が移動して当該ワークを背面主軸の把持部が把持する処理を行う。ここで、正面加工後のワークと背面主軸の把持部との間に切り屑等の異物が入り込んでいる場合、ワークの不良や把持部の破損といった問題が生じる可能性がある。例えば、ワークを把持する背面主軸の主軸中心線方向における位置がずれると、ワークの全長不良が生じることがある。ワークが傾いて背面主軸の把持部に把持されると、ワークの形状不良や把持部の破損が生じることがある。そこで、正面加工後のワークと背面主軸の把持部との間に異物があるか否かの判別が行われている。
特許文献1には、第1の主軸ヘッドで加工されたワークを第2の主軸ヘッドのチャックが正常に把持したことを確認する旋盤のワーク交換方法が開示されている。この旋盤は、第2の主軸ヘッドの送りを制御するサーボモーターをトルクリミット状態にして、第2の主軸ヘッドを第1の主軸ヘッドの方向に送り、第2の主軸ヘッドの移動が完了した時点で、プログラミングされた第2の主軸ヘッドの位置と実際の位置との差であるエラー量を調べ、エラー量が所定の値以下であることによって、第2の主軸ヘッドのチャックが正常にワークを把持したことを確認している。
特許第2702575号公報
しかし、第2の主軸ヘッド等に衝撃等の外乱要因が入ると、サーボモーターの出力トルクが急激に上昇して第2の主軸ヘッドの移動が完了したと誤って検知されることがある。すると、ワークと第2の主軸ヘッドとの間に異物が無くても第2の主軸ヘッドがワークを把持する位置に誤差が生じ、その分、製品の寸法精度が低下する。
尚、上述のような問題は、種々の旋盤に存在する。
本発明は、製品の寸法精度を向上させることが可能な旋盤を開示するものである。
本発明の旋盤は、ワークを把持する第一把持部を有する第一主軸を設けた第一主軸台と、
前記第一主軸に対向して前記ワークを把持する第二把持部を有する第二主軸を設けた第二主軸台と、
該第二主軸台を前記第二主軸の中心線方向へ移動させるサーボ装置と、
前記第一把持部及び前記第二把持部の開閉動作、並びに、前記サーボ装置を介した前記第二主軸台の移動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第二把持部を開いて前記サーボ装置を最大トルクよりも低いトルクに制限した状態で前記第二主軸台を前記第一主軸台の方へ移動させ、前記サーボ装置に平均トルクを中心として前記最大トルクよりも低い範囲で前記平均トルクよりも高いトルクと前記平均トルクよりも低いトルクとが交互に現れるトルク変動を与えて前記中心線方向における前記第二主軸台の位置の極大値と極小値との差である変動幅を複数取得し、前記第二把持部が前記ワークを把持する範囲において取得した前記複数の変動幅に基づいて前記第二把持部と前記ワークとの間の異物の有無を判別する、態様を有する。
また、本発明の旋盤は、ワークを把持する第一把持部を有する第一主軸を設けた第一主軸台と、
前記第一主軸に対向して前記ワークを把持する第二把持部を有する第二主軸を設けた第二主軸台と、
該第二主軸台を前記第二主軸の中心線方向へ移動させるサーボ装置と、
前記第一把持部及び前記第二把持部の開閉動作、並びに、前記サーボ装置を介した前記第二主軸台の移動を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記第二把持部を開いて前記サーボ装置を最大トルクよりも低いトルクに制限した状態で前記第二主軸台を前記第一主軸台の方へ移動させ、前記サーボ装置に所定のトルク変動を与えて前記中心線方向における前記第二主軸台の位置の時間変化を表す検出データを取得し、前記第二把持部が前記ワークを把持する範囲において取得した前記検出データと、前記第二把持部と前記ワークとの間に異物が入り込んでいない場合のマスターデータと、のパターンマッチングを行うことにより前記第二把持部と前記ワークとの間の異物の有無を判別する、態様を有する。
さらに、本発明の旋盤は、ワークを把持する第一把持部を有する第一主軸を設けた第一主軸台と、
前記第一主軸に対向して前記ワークを把持する第二把持部を有する第二主軸を設けた第二主軸台と、
該第二主軸台を前記第二主軸の中心線方向へ移動させるサーボ装置と、
前記第一把持部及び前記第二把持部の開閉動作、並びに、前記サーボ装置を介した前記第二主軸台の移動を制御する制御部と、
前記第一把持部に把持されている前記ワークと、該ワークから離れている前記第二把持部と、の少なくとも一方を清掃可能な清掃装置と、を備え、
前記制御部は、
前記第二把持部を開いて前記サーボ装置を最大トルクよりも低いトルクに制限した状態で前記第二主軸台を前記第一主軸台の方へ移動させ、前記サーボ装置に所定のトルク変動を与えて前記中心線方向における前記第二主軸台の位置の変化を検出し、前記第二把持部が前記ワークを把持する範囲において検出した位置の変化に基づいて前記第二把持部と前記ワークとの間の異物の有無を判別し、
前記第二把持部と前記ワークとの間の異物の有無を判別する異物判別処理において前記第二把持部と前記ワークとの間に異物が有ると判別すると、前記第二主軸台を前記第一主軸台から遠ざかる方へ移動させて前記清掃装置に清掃を行わせ、再び前記異物判別処理を行う、態様を有する。
本発明によれば、製品の寸法精度を向上させる旋盤を提供することができる。
旋盤の構成例を模式的に示す図である。 旋盤の電気回路の構成例を模式的に示すブロック図である。 第二主軸が正面加工後のワークの方へ移動している例を模式的に示す図である。 正面加工後のワークと第二把持部との間に異物が入り込んでいる例を模式的に示す図である。 サーボ装置に与えられたトルク変動、第二主軸台の位置の変化、及び、第二主軸台の変動幅の例を模式的に示す図である。 数値制御装置で行われるワーク受け取り処理の例を示すフローチャートである。 第二主軸をワークから離して清掃を行う例を模式的に示す図である。 清掃後に第二主軸をワークの方へ移動させた例を模式的に示す図である。 数値制御装置で行われるワーク受け取り処理の別の例を示すフローチャートである。
以下、本発明の実施形態を説明する。むろん、以下の実施形態は本発明を例示するものに過ぎず、実施形態に示す特徴の全てが発明の解決手段に必須になるとは限らない。
(1)本発明に含まれる技術の概要:
まず、図1~9に示される例を参照して本発明に含まれる技術の概要を説明する。尚、本願の図は模式的に例を示す図であり、これらの図に示される各方向の拡大率は異なることがあり、各図は整合していないことがある。むろん、本技術の各要素は、符号で示される具体例に限定されない。
また、本願において、数値範囲「Min~Max」は、最小値Min以上、且つ、最大値Max以下を意味する。
[態様1]
本技術の一態様に係る旋盤1は、第一主軸台(例えば正面主軸台11)、第二主軸台(例えば背面主軸台21)、サーボ装置(例えばZ2軸モーターMZ2)、及び、制御部U1を備えている。前記第一主軸台(11)は、ワークW0を把持する第一把持部13を有する第一主軸(例えば正面主軸12)が設けられている。前記第二主軸台(21)は、前記第一主軸(12)に対向して前記ワークW0を把持する第二把持部23を有する第二主軸(例えば背面主軸22)が設けられている。前記サーボ装置(MZ2)は、前記第二主軸台(21)を前記第二主軸(22)の中心線方向(例えばZ軸方向)へ移動させる。前記制御部U1は、前記第一把持部13及び前記第二把持部23の開閉動作、並びに、前記サーボ装置(MZ2)を介した前記第二主軸台(21)の移動を制御する。前記制御部U1は、前記第二把持部23を開いて前記サーボ装置(MZ2)を最大トルクよりも低いトルクに制限した状態で前記第二主軸台(21)を前記第一主軸台(11)の方へ移動させ、前記サーボ装置(MZ2)に所定のトルク変動を与えて前記中心線方向における前記第二主軸台(21)の位置の変化(例えば変動幅ΔZi)を検出し、前記第二把持部23が前記ワークW0を把持する範囲において検出した位置の変化(ΔZi)に基づいて前記第二把持部23と前記ワークW0との間の異物800の有無を判別する。
上記態様1では、第一主軸(12)の把持部13に把持されているワークW0を第二主軸(22)の把持部23で把持する際の第二主軸(22)の把持部23とワークW0との間の異物800の有無がサーボ装置(MZ2)の所定のトルク変動による第二主軸台(21)の位置の変化(ΔZi)に基づいて判別される。これにより、第二主軸(22)の把持部23とワークW0との間の異物800の有無が精度良く判別される。従って、本態様は、製品の寸法精度を向上させる旋盤を提供することができる。
ここで、前記制御部が前記サーボ装置に所定のトルク変動を与えることを開始するタイミングは、前記第二把持部が前記ワークを把持する範囲になった後でもよいし、前記第二把持部が前記ワークを把持する範囲になる前でもよい。後者の場合、前記制御部が前記中心線方向における前記第二主軸台の位置の変化を検出することを開始するタイミングは、前記第二把持部が前記ワークを把持する範囲になった後でもよいし、前記第二把持部が前記ワークを把持する範囲になる前でもよい。
[態様2]
また、本旋盤1は、前記第一把持部13に把持されている前記ワークW0と、該ワークW0から離れている前記第二把持部23と、の少なくとも一方を清掃可能な清掃装置40をさらに備えていてもよい。前記制御部U1は、前記第二把持部23と前記ワークW0との間の異物800の有無を判別する異物判別処理(例えば図6に示すステップS102~S108)において前記第二把持部23と前記ワークW0との間に異物800が有ると判別すると、前記第二主軸台(21)を前記第一主軸台(11)から遠ざかる方へ移動させて前記清掃装置40に清掃を行わせ(例えば図7参照)、再び前記異物判別処理を行ってもよい。本態様は、第二主軸(22)の把持部23とワークW0との間に異物800が有ると判別されると第二主軸(22)の把持部23とワークW0との少なくとも一方が清掃されるので、清掃により異物800が除去されると次の異物判別処理において第二主軸(22)の把持部23とワークW0との間に異物800が無いと判別される。従って、本態様は、ワークを連続して加工する好適な旋盤を提供することができる。
(2)旋盤の構成の具体例:
図1は、旋盤の例として正面主軸12が移動する主軸移動型のNC(数値制御)旋盤1の構成を模式的に例示している。図1は、本技術を説明するために簡略化した一例を示しているに過ぎず、本技術を限定するものではない。尚、各部の位置関係の説明は、例示に過ぎない。従って、左右方向を上下方向又は前後方向に変更したり、上下方向を左右方向や前後方向に変更したり、前後方向を左右方向や上下方向に変更したり、回転方向を逆方向に変更したり等することも、本技術に含まれる。また、方向や位置等の同一は、厳密な一致に限定されず、誤差により厳密な一致からずれることを含む。
図1に示す旋盤1は、NC装置70、固定されたベース10に設置された正面主軸台11、固定されたベース20に設置された背面主軸台21、固定されたベース30に設置された刃物台31、清掃装置40、等を備えている。NC装置70は、前述の各部11,21,31,40等の動作を制御する。
正面主軸台11は、主軸中心線AX1に沿ったZ軸方向へ移動可能とされている。NC装置70は、図2に例示するZ1軸モーターMZ1等の駆動部を介して正面主軸台11のZ軸方向における位置を制御する。正面主軸台11に設けられた正面主軸12は、コレット等の第一把持部13を有し、Z軸方向へ挿入された円柱状(棒状)のワークW1を第一把持部13で解放可能に把持する。NC装置70は、回転モーター15等の駆動部を介して、ワークW1の長手方向に沿う主軸中心線AX1を中心として正面主軸12を回転させる。これにより、正面主軸12は、主軸中心線AX1を中心としてワークW1を回転させる。
図1において二点鎖線で示すように、正面主軸12の前方にガイドブッシュ18が配置されてもよい。この場合のガイドブッシュ18は、正面主軸12の前方に配置され、正面主軸12を貫通した長手状のワークW1をZ軸方向へ摺動可能に支持し、正面主軸12と同期して主軸中心線AX1を中心として回転駆動される。
背面主軸台21は、主軸中心線AX2に沿ったZ軸方向、及び、このZ軸方向と直交(交差)するY軸方向へ移動可能とされている。NC装置70は、図2に例示するZ2軸モーターMZ2やY2軸モーターMY2等の駆動部を介して背面主軸台21のZ軸方向及びY軸方向における位置を制御する。背面主軸台21に設けられた背面主軸22は、コレット等の第二把持部23を有し、主軸中心線AX1,AX2同士が合わせられた状態でZ軸方向へ挿入された正面加工後のワークW2を第二把持部23で解放可能に把持する。NC装置70は、回転モーター25等の駆動部を介して、主軸中心線AX2を中心として背面主軸22を回転させる。これにより、背面主軸22は、主軸中心線AX2を中心としてワークW2を回転させる。背面主軸22は、正面主軸と対向する意味で対向主軸と呼ばれることがある。
尚、正面加工前のワークW1と正面加工後のワークW2をワークW0と総称し、正面主軸12の把持部13から背面主軸22に受け渡されるワークをワークW0と呼ぶことにする。
刃物台31は、ワークW0を加工するための複数の工具T0が取り付けられ、X軸方向及びZ軸方向へ移動可能とされている。ここで、X軸方向は、Z軸方向及びY軸方向と直交(交差)する方向である。NC装置70は、図2に例示するX3軸モーターMX3やZ3軸モーターMZ3等の駆動部を介して刃物台31のX軸方向及びZ軸方向における位置を制御する。複数の工具T0には、両主軸12,22の把持部13,23に把持されているワークW0を突っ切るための突っ切り工具T1が含まれている。刃物台には、タレット刃物台、櫛型刃物台、等を用いることができる。旋盤には、複数種類の刃物台が設置されてもよい。また、各部11,21,31等の移動方向は、図1に示す方向に限定されない。
清掃装置40は、正面主軸12の把持部13に把持されているワークW0の先端に流体を吐出するためのノズル41、及び、ワークW0から離れている背面主軸22の把持部23に流体を吐出するためのノズル42を有している。流体は、エアー(気体)でもよいし、クーラント(液体)でもよい。清掃装置40は、NC装置70の制御に従ってノズル41,42から流体を吐出したりノズル41,42からの流体の吐出を停止したりする。ノズル41,42が流体としてエアーを吐出する場合、把持部13に把持されているワークW0の先端にエアーが吹き当てられる位置にノズル41が配置され、Z軸方向における所定の位置にある背面主軸22の把持部23にエアーが吹き当てられる位置にノズル42が配置される。ノズル41,42が流体としてクーラントを吐出する場合、把持部13に把持されているワークW0の先端にクーラントが浴びせられる位置にノズル41が配置され、Z軸方向における所定の位置にある背面主軸22の把持部23にクーラントが浴びせられる位置にノズル42が配置される。
図2は、NC旋盤1の電気回路の構成を模式的に例示している。図2に示す旋盤1において、NC装置70には、操作パネル80、Z1軸モーターMZ1、Y2軸モーターMY2、Z2軸モーターMZ2、X3軸モーターMX3、Z3軸モーターMZ3、正面主軸12を回転駆動する回転モーター15、背面主軸22を回転駆動する回転モーター25、正面主軸12の把持部13を開閉するアクチュエーター14、背面主軸22の把持部23を開閉するアクチュエーター24、清掃装置40、等が接続されている。NC装置70は、CPU(Central Processing Unit)71、半導体メモリーであるROM(Read Only Memory)72、半導体メモリーであるRAM(Random Access Memory)73、タイマー回路74、I/F(インターフェイス)75、等を有している。図2では、操作パネル80、サーボモーターMZ1,MY2,MZ2,MX3,MZ3、回転モーター15,25、アクチュエーター14,24、及び、清掃装置40のI/FをまとめてI/F75と示している。ROM72には、加工プログラムP2を解釈して実行するための解釈実行プログラムP1が書き込まれている。RAM73には、ユーザーにより作成された加工プログラムP2が書き換え可能に記憶される。加工プログラムは、NCプログラムとも呼ばれる。CPU71は、RAM73をワークエリアとして使用し、ROM72に記録されている解釈実行プログラムP1を実行することにより、コンピューターをNC装置70として機能させる。むろん、解釈実行プログラムP1により実現される機能の一部又は全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)といった他の手段により実現させてもよい。
操作パネル80は、入力部81及び表示部82を備え、NC装置70のユーザーインターフェイスとして機能する。入力部81は、例えば、オペレーターから操作入力を受け付けるためのボタンやタッチパネルから構成される。表示部82は、例えば、オペレーターから操作入力を受け付けた各種設定の内容やNC旋盤1に関する各種情報を表示するディスプレイで構成される。オペレーターは、操作パネル80や外部コンピューターを用いて加工プログラムP2をRAM73に記憶させることが可能である。
Z1軸モーターMZ1は、NC装置70からの指令に従って正面主軸台11をZ軸方向へ移動させる。Y2軸モーターMY2は、NC装置70からの指令に従って背面主軸台21をY軸方向へ移動させる。Z2軸モーターMZ2は、本技術のサーボ装置の例であり、NC装置70からの指令に従って背面主軸台21をZ軸方向へ移動させる。X3軸モーターMX3は、NC装置70からの指令に従って刃物台31をX軸方向へ移動させる。Z3軸モーターMZ3は、NC装置70からの指令に従って刃物台31をZ軸方向へ移動させる。
各サーボモーターMZ1,MY2,MZ2,MX3,MZ3は、駆動対象11,21,31の位置に応じた基準角パルスを発生するエンコーダーを有し、エンコーダーの発生パルスに基づいて駆動対象11,21,31の位置をNC装置70からの指令に合わせる。図2には、Z2軸モーターMZ2のエンコーダーENが示されている。エンコーダーENは背面主軸台21のZ軸方向における位置に応じた基準角パルスを発生し、Z2軸モーターMZ2はエンコーダーEN発生パルスに基づいて背面主軸台21のZ軸方向における位置を指令に合わせる。
回転モーター15は、NC装置70からの指令に従った回転速度で正面主軸12を回転駆動する。回転モーター25は、NC装置70からの指令に従った回転速度で背面主軸22を回転駆動する。尚、回転速度は、回転数とも呼ばれ、単位時間当たりの回転の回数を意味する。
アクチュエーター14は、NC装置70の制御に従い、スリーブ部材等の動力伝達機構を介して正面主軸12の把持部13を開閉する。把持部13を開くとワークがZ軸方向へ移動可能となり、把持部13が閉じるとワークが把持部13に把持される。アクチュエーター24は、NC装置70の制御に従い、スリーブ部材等の動力伝達機構を介して背面主軸22の把持部23を開閉する。把持部23を開くと把持部23に正面加工後のワークをZ軸方向へ挿入したり把持部23から製品をZ軸方向へ排出したりすることが可能となり、正面加工後のワークを受け入れた把持部23が閉じるとワークが把持部23に把持される。アクチュエーター14,24には、リニアモーターを含むサーボモーター、エアーシリンダー、油圧シリンダー、等を用いることができる。アクチュエーター14,24は、ボールねじ機構といった減速機構等を含んでもよい。
清掃装置40は、ノズル41,42に繋がる流路を開閉する電磁弁を有し、NC装置70の制御に従って前述の電磁弁を駆動することによりノズル41,42に繋がる流路を開閉する。流路が開くとノズル41,42から流体が吐出され、流路が閉じるとノズル41,42からの流体の吐出が停止する。
本具体例において、正面主軸台11は第一主軸台の例であり、正面主軸12は第一主軸の例であり、背面主軸台21は第二主軸台の例であり、背面主軸22は第二主軸の例である。また、NC装置70、及び、背面主軸台21のZ軸方向における位置を検出するZ2軸モーターMZ2は、制御部U1の例である。
(3)ワーク受け取り処理の具体例:
まず、図3,4を参照して、正面主軸12の把持部13に把持されている正面加工後のワークW0を背面主軸22が受け取るワーク受け取り処理の例を説明する。図3は、背面主軸22が正面加工後のワークW0の方へ移動している様子を模式的に例示している。図4は、正面加工後のワークW0と背面主軸22の把持部23との間に異物800が入り込んでいる様子を模式的に例示している。図3,4にはガイドブッシュを使用していない旋盤のワーク受け取り処理が示されているが、ガイドブッシュを使用する場合も正面主軸12の把持部13に把持されている正面加工後のワークW0を背面主軸22が受け取るワーク受け取り処理が行われる。
ワークW0の正面加工時、背面主軸22は、ワークW0からZ軸方向において離れている。背面主軸22が正面加工後のワークW0を把持するため、把持部23が開いた状態で背面主軸22を含む背面主軸台21がZ軸方向へ近付いていく。把持部23がワークW0に突き当たった時にZ2軸モーターMZ2が背面主軸台21を正面主軸台11の方へ移動させようとすると、Z2軸モーターMZ2の出力トルクが増大する。出力トルクが過大とならないように、Z2軸モーターMZ2の出力トルクは最大トルクよりも低い所定の低トルクに制限されている。その状態で、Z2軸モーターMZ2の出力トルクが所定の低トルクに合わせられた規定のトルク幅となり、且つ、指定されたZ位置(Z軸方向における位置)の範囲内になると、NC装置70は、把持部23がワークW0に接触した、すなわち、ワークW0に把持部23が十分に押し付けられたと判断して把持部23を閉じて突っ切り加工等の加工を続ける制御を行う。
ワークW0に切り屑やゴミといった異物800が付着している場合、背面主軸22の把持部23がワークW0を把持する時に、Z軸方向においてワークW0を把持する位置がずれたり、ワークW0が傾いて把持部23に把持されたりする可能性がある。図4は、ワークW0に異物800が付着していることにより背面主軸22の把持部23がワークW0を把持するZ位置にずれΔErが生じた様子を示している。
ワークW0を把持する位置がずれるとワークW0の全長に誤差が生じ、ワークW0が傾いて把持部23に把持されるとワークW0の形状に誤差が生じる。誤差が大きくて把持部23のZ位置、すなわち、背面主軸台21のZ位置が押し付け検出の指定範囲外となれば、押し付け検出をやり直す処理が行われるか、警告が出力されて連続加工運転が停止する。
把持部23を閉じて運転を続ける条件が上述した押し付け検出だけである場合、誤った押し付け検出が行われる可能性がある。これは、背面主軸台21等に衝撃等の外乱要因が入ると、Z2軸モーターMZ2の出力トルクが急激に上昇して背面主軸台21のZ軸方向への移動が完了したと誤って検知されることがあるためである。また、地震やプレス機の振動といった外部からの振動が背面主軸台21等に入っても、同様である。誤った押し付け検出が行われると、背面主軸22の把持部23とワークW0との間に異物が無くても把持部23がワークW0を把持する位置に誤差が生じ、その分、製品の寸法精度が低下する。また、誤った押し付け検出時に背面主軸台21のZ位置が指定範囲外であれば、押し付け検出をやり直す処理が行われるか、警告が出力されて連続加工運転が停止する。従って、誤った押し付け検出によりワーク加工のサイクルタイムが長くなったり運転が停止したりするという時間のロスが生じ、製造効率が低下することになる。
尚、押し付け検出時にワークと背面主軸の把持部との間に異物が入り込んでいるか否かを判別するために、ワークと背面主軸の把持部との隙間にエアーを供給するエアーギャップセンサーを旋盤に設けることが考えられる。異物が存在しなければワークと背面主軸の把持部との隙間が狭くなってエアーの供給時にエアーの内圧が上がり、異物が存在すればワークと背面主軸の把持部との隙間が広くなってエアーの供給時にエアーの内圧があまり上がらない。従って、エアーの供給時にエアーの内圧を検出することにより、異物の有無をより確実に検出することができる。
しかし、エアーギャップセンサーのための設置スペースが必要であるうえ、エアーギャップセンサーのために背面主軸にエアーの通り道を形成する必要があるため、背面主軸の構造が複雑になる。従って、旋盤自体のコストが高くなる。また、背面主軸の把持部をワークに近付ける度にエアーを供給してエアーの内圧を検出する必要があるため、その分、ワーク加工のサイクルタイムが長くなる。
本具体例では、Z2軸モーターMZ2に所定のトルク変動を与えてZ軸方向における背面主軸台21の位置の変化を検出し、検出した位置の変化に基づいて背面主軸22の把持部23とワークW0との間の異物800の有無を判別することにしている。これにより、旋盤にエアーギャップセンサーといった専用の構造を設ける必要が無く、ワーク加工のサイクルタイムを短くすることができるうえ、ワークの加工位置の精度を向上させ、製品の寸法精度を向上させることができる。
図5は、ワークW0に把持部23が十分に押し付けられた後において、Z2軸モーターMZ2に与えられたトルク変動、背面主軸台21のZ位置の変化、及び、背面主軸台21の変動幅ΔZを模式的に例示している。ここで、グラフG1はZ2軸モーターMZ2に与えられたトルクMの時間変化を示し、グラフG2は異物が存在しない場合の背面主軸台21のZ位置の時間変化を示し、グラフG3はグラフG2から得られる変動幅ΔZiを時間順に示し、グラフG4は異物が存在する場合の背面主軸台21のZ位置の時間変化を示し、グラフG5はグラフG4から得られる変動幅ΔZiを時間順に示している。各グラフG1~G5の横軸は、時間tを示している。ここで、Z軸方向において、背面主軸22の把持部23をワークW0に押し付ける方向を+Z方向とし、把持部23をワークW0から離す方向を-Z方向とする。
Z2軸モーターMZ2により発生するトルクは、Z2軸モーターMZ2に供給される電流の大きさに比例する。従って、Z2軸モーターMZ2に与えるトルクMは、Z2軸モーターMZ2に与える電流値により制御することができる。Z2軸モーターMZ2に与えられるトルク変動は、把持部23がワークW0を押し付けている時の平均トルクMmeanを中心として、最大値Mmaxと最小値Mminとが交互に現れるように制御される。平均トルクMmeanと最大値Mmaxとの差の絶対値、及び、平均トルクMmeanと最小値Mminとの差の絶対値は、トルク変動の振幅である。最大値Mmaxは、Z2軸モーターMZ2の最大トルクよりも小さい。グラフG1に示されるようなトルク制御が行われることにより、背面主軸22の把持部23とワークW0との間に異物が入り込んでいなければ、背面主軸台21のZ位置がグラフG2に示すように変化する。概ね、Z2軸モーターMZ2に最大値Mmaxのトルクが与えられると背面主軸台21が+Z方向へ変位し、Z2軸モーターMZ2に最小値Mminのトルクが与えられると背面主軸台21が-Z方向へ変位する。グラフG2に示される変動幅ΔZiは、背面主軸台21のZ位置の最大値と最小値との差を意味し、中心値からの最大変位を表す振幅の2倍となる。グラフG2にはi=1~6の変動幅ΔZ1~ΔZ6が示されており、これらの変動幅ΔZ1~ΔZ6がグラフG3に示されている。把持部23とワークW0との間に異物が入り込んでいない場合、各変動幅ΔZiは比較的安定した値となる。
背面主軸22の把持部23とワークW0との間に異物が入り込んでいる場合、背面主軸台21のZ位置がグラフG4に示すように変化する。グラフG4に示される変動幅ΔZ1~ΔZ6は、グラフG5に示されている。把持部23とワークW0との間に異物が入り込んでいる場合、異物が入り込んでいない場合と比較して、把持部23とワークW0を含む系全体の剛性が低くなる。その結果、変動幅ΔZiは全体として大きくなり、各変動幅ΔZiは比較的ばらつきが多い値となる。
そこで、背面主軸22の把持部23とワークW0との間に異物が入り込んでいない場合のマスターデータD1に基づいて変動幅ΔZiの許容される上限値ΔZmaxを設定することにより、異物の有無を判別することができる。グラフG3に示すように変動幅ΔZiが上限値ΔZmax以下となる場合、把持部23とワークW0との間に異物が入り込んでいないと判別することができる。グラフG5に示すように変動幅ΔZiが上限値ΔZmaxを超える場合、把持部23とワークW0との間に異物が入り込んでいると判別することができる。
尚、Z2軸モーターMZ2に与えるトルク変動の振幅は、例えば、背面主軸22の把持部23とワークW0との間に異物が入り込んでいない場合に変動幅ΔZiが1~10μm程度となる振幅とすることができる。トルク変動の周波数f1は、例えば、1~1000Hz程度とすることができる。例えば、f1=500Hzである場合、変動幅ΔZiを0.1秒間に50回サンプリング可能である。サンプリングの回数が増えることにより、短時間で多くの変動幅ΔZiをサンプリングすることができ、異物の有無が精度良く判別される。また、異物の有無の判別する際、短時間で多くの変動幅ΔZiをサンプリングすることにより、突発的に発生する外乱要因の影響を少なくすることも可能となる。
(4)NC装置で行われるワーク受け取り処理の例:
図6は、解釈実行プログラムP1を実行するNC装置70で行われるワーク受け取り処理を例示している。この処理は、加工プログラムP2に記述されたワーク受け取り指令をNC装置70が読み込んだ時に開始される。図5で示したようなトルク変動を実現させる加工プログラムをユーザーが作成するのは、容易ではない。そこで、解釈実行プログラムP1を実行するNC装置70がZ2軸モーターMZ2のトルク変動を実現させることにして、その例を図6に示している。ここで、ステップS102~S108の処理は、背面主軸22の把持部23とワークW0との間の異物を判別する異物判別処理の例である。
以下、図2~5も参照して、図6に示すワーク受け取り処理を説明する。
ワーク受け取り処理が開始されると、NC装置70は、図2で示したアクチュエーター24を制御して背面主軸22の把持部23を開いた状態にしておき、且つ、Z2軸モーターMZ2を所定の低トルクに制限した状態でZ2軸モーターMZ2を駆動させて背面主軸台21を正面主軸台11の方へ移動させる(ステップS102)。正面主軸12に把持されているワークW0に把持部23が押し付けられると、Z2軸モーターMZ2が背面主軸台21を正面主軸台11の方へ移動させようとするので、Z2軸モーターMZ2の出力トルクが上昇する。
そこで、NC装置70は、Z2軸モーターMZ2から出力トルクの値と背面主軸台21のZ位置を取得し、出力トルクの値が規定のトルク幅に入っており、且つ、加工プログラムP2により指定されたZ位置の範囲内に背面主軸台21が入っているか否かを判断する(ステップS104)。加工プログラムP2により指定されたZ位置の範囲は、背面主軸22の把持部23がワークW0を把持する範囲である。むろん、把持部23がワークW0を把持する範囲は、加工プログラムP2により指定された目標のZ位置からNC装置70により求められてもよい。所定期間、出力トルクの値が規定のトルク幅に入っていて、指定範囲内に背面主軸台21が入っている場合、NC装置70は、処理をステップS106に進める。出力トルクの値が規定のトルク幅に入ったにも関わらずステップS104の条件が満たされない場合や、背面主軸台21が指定範囲内に入ったにも関わらずステップS104の条件が満たされない場合は、ステップS112に処理が進められる。
尚、ステップS104の判断処理において外乱要因による出力トルクの突出値を除くために、NC装置70は、所定期間に得られる複数の出力トルク値から最大値、又は、大きい順から2以上の所定数の値を除いて規定のトルク幅に入っているか否かの判断を行ってもよい。
ステップS106において、NC装置70は、図5のグラフG1に示したような所定のトルク変動をZ2軸モーターMZ2に与えてZ2軸モーターMZ2から背面主軸台21のZ位置を取得し、背面主軸台21のZ位置の変動幅ΔZi、すなわち、Z位置の変化を求める。次に、NC装置70は、背面主軸台21のZ位置の変動幅が許容される上限値ΔZmax以下であるか否かを判断する(ステップS108)。上限値ΔZmaxと対比される変動幅は、変動幅ΔZiの最大値でもよいし、変動幅ΔZiから最大値、又は、大きい順から2以上の所定数の値を除いた最大値でもよいし、変動幅ΔZiの平均値でもよい。
図5のグラフG3に示したように変動幅が上限値ΔZmax以下である場合、背面主軸22の把持部23とワークW0との間に異物が無いと検出されたことになる。この場合、NC装置70は、背面主軸22の把持部23を閉じるようにアクチュエーター24を駆動させ、連続加工運転を続行させ(ステップS110)、ワーク受け取り処理を終了させる。
図5のグラフG5に示したように変動幅が上限値ΔZmaxを超えている場合、図4で示したように背面主軸22の把持部23とワークW0との間に異物800が有ると検出されたことになる。この場合、NC装置70は、処理をステップS112に進める。
ステップS112の処理は、ステップS104,108で条件が不成立であった場合に行われる。ステップS112において、NC装置70は、ステップS102~S108の異物判別処理について加工プログラムP2により指定された回数のリトライを行ったか否かを判断する。むろん、リトライの回数は、加工プログラムP2によらず解釈実行プログラムP1等により決められた回数でもよい。リトライが指定回数に到達していない場合、NC装置70は、所定の清掃処理を行い(ステップS114)、処理をステップS102に戻す。リトライが指定回数に到達した場合、NC装置70は、ワークの連続加工運転を続けることができないことを示す警告を出力し、ワークの連続加工運転を停止させ(ステップS116)、ワーク受け取り処理を終了させる。警告の出力には、図2で示した表示部82に警告を表示すること、図示しない音声出力装置から警告音を出力すること、等が含まれる。
図7は、ステップS114で行われる清掃処理を模式的に例示している。清掃処理が開始すると、NC装置70は、図2で示したZ2軸モーターMZ2を駆動させて背面主軸台21を正面主軸台11から遠ざかる方へ移動させる。背面主軸22の把持部23がノズル42の先となる位置まで背面主軸台21が退避すると、NC装置70は、一定期間、清掃装置40を駆動させ、ノズル41からワークW0に清掃用の流体を吐出し、ノズル42から把持部23に清掃用の流体を吐出する。この状態を図7に示している。流体がエアーである場合、ノズル41からワークW0にエアーが吹き当てられてワークW0から異物800がエアーにより吹き飛ばされ、ノズル42から把持部23にエアーが吹き当てられて把持部23から異物がエアーにより吹き飛ばされる。流体がクーラントである場合、ノズル41からワークW0にクーラントが浴びせられて異物800がクーラントにより洗い流され、ノズル42から把持部23にクーラントが浴びせられて異物がクーラントにより洗い流される。
清掃処理が行われると、図6のステップS102~S108の異物判別処理が行われる。ステップS102において背面主軸台21が正面主軸台11の方へ移動すると、図8に例示するように背面主軸22の把持部23がワークW0に押し付けられる。ここで、異物800が除去されていると、把持部23がワークW0を把持するZ位置のずれΔErが少なくなる。また、図6のステップS106において取得される変動量ΔZiが全体として少なくなり、背面主軸台21のZ位置の変動量が上限値ΔZmax以下となって、連続加工運転が続行される。
以上説明したように、Z2軸モーターMZ2に所定のトルク変動を与えた状態で背面主軸台21について検出されるZ位置の変化に基づいて背面主軸22の把持部23とワークW0との間の異物の有無を判別することにより、様々な有用な効果が得られる。本具体例は、エアーギャップセンサーのような専用の構造を設ける必要が無いため、旋盤の大型化及びコストアップを抑制することができ、ワーク加工のサイクルタイムを短くすることもできる。また、衝撃等の外乱要因の影響を少なくすることができるため、把持部23とワークW0との間の異物の有無が精度良く判別される。従って、本具体例は、ワークの加工位置の精度を向上させ、製品の寸法精度を向上させることができる。
(5)変形例:
本発明は、種々の変形例が考えられる。
例えば、本技術を適用可能な旋盤は、主軸移動型旋盤に限定されず、正面主軸が移動しない主軸固定型旋盤等でもよい。
上述した清掃装置40はワーク清掃用のノズル41と第二把持部清掃用のノズル42の両方を有していたが、ノズル41,42の一方を省略することも可能である。ノズル41,42の一方を省略しても、異物が除去される可能性があるので、本技術を適用可能である。むろん、ノズル41からエアーを吹き出してノズル42からクーラントを吐出してもよく、ノズル41からクーラントを吐出してノズル42からエアーを吹き出してもよい。尚、清掃装置40のノズル41,42は正面主軸12や背面主軸22の内部に組み込まれていても良い。
図6のステップS108において背面主軸台21のZ位置の変動幅が上限値ΔZmax以下であるか否かを判断する処理は、変動幅ΔZiの移動平均を上限値ΔZmaxと対比する処理でもよいし、図5で示したマスターデータD1に対するパターンマッチングを利用する処理でもよい。
変動幅ΔZiの移動平均を上限値ΔZmaxと対比する場合、移動平均をとる数をN(Nは2以上の整数)として、以下のように変動幅のN個の移動平均が上限値ΔZmaxと対比される。
最初に、変動幅ΔZ1,ΔZ2,…の順にN個の平均が上限値ΔZmaxと対比される。次に、変動幅ΔZ2,ΔZ3,…の順にN個の平均が上限値ΔZmaxと対比される。以下、一つずつ変動幅をずらしたN個の平均が上限値ΔZmaxと対比される。従って、各変動幅ΔZiのうち或る変動幅が衝撃等の外乱要因により大きく検出されても、連続した複数の変動幅ΔZiが平均されて上限値ΔZmaxと対比されるので、異物の有無の判別に対する外乱要因の影響が少なくなる。
マスターデータD1に対するパターンマッチングを利用する場合、マスターデータD1と背面主軸台21のZ位置の検出データ(例えば図5に示すデータD2)とを用いることにより、以下のように異物の有無を判別することができる。ここで、マスターデータD1と検出データD2との一致度(Cとする。)に対する閾値をTH(TH>0)とする。
最初に、背面主軸22の把持部23がワークW0に押し付けられてZ2軸モーターMZ2に所定のトルク変動が与えられた状態にしておき、Z2軸モーターMZ2により背面主軸台21について検出されるZ位置の変化を表す検出データD2をNC装置70が取得する。次に、NC装置70は、マスターデータD1と検出データD2とのパターンマッチングを行い、マスターデータD1と検出データD2との一致度Cを求める。一致度Cが閾値TH以上である場合に異物が無いと判別することができ、一致度Cが閾値TH未満である場合に異物があると判別することができる。パターンマッチングには背面主軸台21のZ位置について多数の検出データD2が使用されるため、背面主軸台21のZ位置の或る検出値が外乱要因により異常値となっても全体としては僅かな違いとなり、異物の有無の判別に対する外乱要因の影響が少なくなる。
さらに、ワーク受け取り処理において、Z2軸モーターMZ2にトルク変動を与え始めるタイミングは、背面主軸22の把持部23がワークW0に押し付けられる前でもよい。
図9は、NC装置70で行われるワーク受け取り処理の別の例を示している。図9に示すワーク受け取り処理は、図6で示したワーク受け取り処理と比べて、ステップS104~S106がステップS202~S206に置き換わっている。
NC装置70は、背面主軸22の把持部23を開いた状態にしてZ2軸モーターMZ2を所定の低トルクに制限した状態で背面主軸台21を正面主軸台11の方へ移動させると(ステップS102)、Z2軸モーターMZ2に所定のトルク変動を与える処理を開始させる(ステップS202)。ステップS202の処理を開始させるタイミングは、Z軸方向において把持部23がワークW0に押し当てられる前の所定位置まで背面主軸台21が移動したタイミングとしている。尚、Z軸方向において背面主軸台21の移動を開始させた直後にステップS202の処理を行うことも可能である。
次に、NC装置70は、加工プログラムP2により指定されたZ位置の範囲内に背面主軸台21が入っているか否かを判断する(ステップS204)。所定期間、指定範囲内に背面主軸台21が入っている場合、NC装置70は、処理をステップS206に進める。ステップS204の条件が満たされない場合は、ステップS112に処理が進められる。
ステップS206において、既に所定のトルク変動がZ2軸モーターMZ2に与えられているので、NC装置70は、Z2軸モーターMZ2から背面主軸台21のZ位置を取得し、背面主軸台21のZ位置の変動幅ΔZi、すなわち、Z位置の変化を求める。次に、NC装置70は、背面主軸台21のZ位置の変動幅が許容される上限値ΔZmax以下であるか否かを判断する(ステップS108)。変動幅が上限値ΔZmax以下である場合、NC装置70は、背面主軸22の把持部23を閉じるようにアクチュエーター24を駆動させ、連続加工運転を続行させ(ステップS110)、ワーク受け取り処理を終了させる。変動幅が上限値ΔZmaxを超えている場合、清掃処理を含む上述した処理が行われる(ステップS112~S116)。
図9に示すワーク受け取り処理が行われても、把持部23とワークW0との間の異物の有無が精度良く判別され、旋盤の大型化及びコストアップが抑制され、ワーク加工のサイクルタイムが短くなる。
(6)結び:
以上説明したように、本発明によると、種々の態様により、製品の寸法精度を向上させることが可能な旋盤等の技術を提供することができる。むろん、独立請求項に係る構成要件のみからなる技術でも、上述した基本的な作用、効果が得られる。
また、上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術及び上述した例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
1…旋盤、
11…正面主軸台(第一主軸台の例)、12…正面主軸(第一主軸の例)、
13…把持部、14…アクチュエーター、15…回転モーター、18…ガイドブッシュ、
21…背面主軸台(第二主軸台の例)、22…背面主軸(第二主軸の例)、
23…把持部、24…アクチュエーター、25…回転モーター、
31…刃物台、
40…清掃装置、41,42…ノズル、
70…NC装置、
AX1,AX2…主軸中心線、
EN…エンコーダー、
MZ2…Z2軸モーター(サーボ装置の例)、
U1…制御部、
W0,W1,W2…ワーク。

Claims (3)

  1. ワークを把持する第一把持部を有する第一主軸を設けた第一主軸台と、
    前記第一主軸に対向して前記ワークを把持する第二把持部を有する第二主軸を設けた第二主軸台と、
    該第二主軸台を前記第二主軸の中心線方向へ移動させるサーボ装置と、
    前記第一把持部及び前記第二把持部の開閉動作、並びに、前記サーボ装置を介した前記第二主軸台の移動を制御する制御部と、を備え、
    前記制御部は、前記第二把持部を開いて前記サーボ装置を最大トルクよりも低いトルクに制限した状態で前記第二主軸台を前記第一主軸台の方へ移動させ、前記サーボ装置に平均トルクを中心として前記最大トルクよりも低い範囲で前記平均トルクよりも高いトルクと前記平均トルクよりも低いトルクとが交互に現れるトルク変動を与えて前記中心線方向における前記第二主軸台の位置の極大値と極小値との差である変動幅を複数取得し、前記第二把持部が前記ワークを把持する範囲において取得した前記複数の変動幅に基づいて前記第二把持部と前記ワークとの間の異物の有無を判別する、旋盤。
  2. ワークを把持する第一把持部を有する第一主軸を設けた第一主軸台と、
    前記第一主軸に対向して前記ワークを把持する第二把持部を有する第二主軸を設けた第二主軸台と、
    該第二主軸台を前記第二主軸の中心線方向へ移動させるサーボ装置と、
    前記第一把持部及び前記第二把持部の開閉動作、並びに、前記サーボ装置を介した前記第二主軸台の移動を制御する制御部と、を備え、
    前記制御部は、前記第二把持部を開いて前記サーボ装置を最大トルクよりも低いトルクに制限した状態で前記第二主軸台を前記第一主軸台の方へ移動させ、前記サーボ装置に所定のトルク変動を与えて前記中心線方向における前記第二主軸台の位置の時間変化を表す検出データを取得し、前記第二把持部が前記ワークを把持する範囲において取得した前記検出データと、前記第二把持部と前記ワークとの間に異物が入り込んでいない場合のマスターデータと、のパターンマッチングを行うことにより前記第二把持部と前記ワークとの間の異物の有無を判別する、旋盤。
  3. ワークを把持する第一把持部を有する第一主軸を設けた第一主軸台と、
    前記第一主軸に対向して前記ワークを把持する第二把持部を有する第二主軸を設けた第二主軸台と、
    該第二主軸台を前記第二主軸の中心線方向へ移動させるサーボ装置と、
    前記第一把持部及び前記第二把持部の開閉動作、並びに、前記サーボ装置を介した前記第二主軸台の移動を制御する制御部と、
    前記第一把持部に把持されている前記ワークと、該ワークから離れている前記第二把持部と、の少なくとも一方を清掃可能な清掃装置と、を備え、
    前記制御部は、
    前記第二把持部を開いて前記サーボ装置を最大トルクよりも低いトルクに制限した状態で前記第二主軸台を前記第一主軸台の方へ移動させ、前記サーボ装置に所定のトルク変動を与えて前記中心線方向における前記第二主軸台の位置の変化を検出し、前記第二把持部が前記ワークを把持する範囲において検出した位置の変化に基づいて前記第二把持部と前記ワークとの間の異物の有無を判別し、
    前記第二把持部と前記ワークとの間の異物の有無を判別する異物判別処理において前記第二把持部と前記ワークとの間に異物が有ると判別すると、前記第二主軸台を前記第一主軸台から遠ざかる方へ移動させて前記清掃装置に清掃を行わせ、再び前記異物判別処理を行う旋盤。
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