JP7320347B2 - ブルーム抑制材 - Google Patents

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Description

本発明は、チョコレートのブルーム現象の発生を抑制するためのブルーム抑制材に関する。
チョコレートは、一般的に、カカオ豆由来のカカオマスとココアバターと、砂糖及び粉乳類等とを混ぜ合わせ、微細化工程、精錬工程、調温(テンパリング)工程、成形工程、冷却工程、固化工程等を経て製造される。
チョコレートは、製造時や保存時の温度管理等が適切でない場合、ブルーム現象と呼ばれる外観や食味の品質低下が起こりやすい。
このため、ブルーム耐性を有するチョコレートを得るために、チョコレート中にココアバター以外の機能性油脂を含有させることが従来から行われている。
例えば特許文献1では、ジヒドロキシステアリン酸を含むトリグリセリドを含有するブルーム防止剤が提案されている。特許文献2では、エステル交換油脂を有効成分とする常温ブルーム防止剤が提案されている。
また、乳化剤を使用することでブルーム現象を防止する手法についても従来行われている。例えば特許文献3では、特定の脂肪酸組成を有するショ糖脂肪酸エステルを主剤とするファットブルーム防止剤が提案されている。特許文献4では、1,3-ジ飽和-2-不飽和グリセリドの安定型結晶粒子を含有する油溶性の乳化剤からなる、ブルーム発生を抑制するチョコレート添加剤が提案されている。
ところで、近年、カカオ豆に含まれるカカオポリフェノールの生理機能が注目されていること、また、良好なカカオ風味を強く感じられやすいことから、カカオ分の割合を多くしたチョコレート(以下、単にハイカカオチョコレートと記載する場合がある)の人気と需要が高まっている。
ハイカカオチョコレートにおいても、通常のチョコレートと同様に上記のブルーム現象が起きるため、ブルーム現象の発生の抑制が望まれている。ところで、ハイカカオチョコレートは、通常のチョコレートと比較してカカオ分を高める必要があるため、砂糖を除けば、カカオ分以外の成分を含有する余地がほとんどない。
そのため、特許文献1及び2に記載のブルーム防止剤のような、従来知られた、チョコレートに対してブルーム耐性を付与する機能性油脂は、その機能が発現する量をハイカカオチョコレートに含有させることが難しく、ハイカカオチョコレートのブルーム現象の発生を十分に抑制することができなかった。
特許文献3及び4に記載の乳化剤を使用する手法は、ブルーム発生現象の発生を抑制することができる。しかしながら、十分に効果を呈する量の乳化剤をハイカカオチョコレートに乳化剤を含有させると、風味発現が乏しくなりやすいため、ハイカカオチョコレートの特徴を損ねてしまいやすい。そのため、特許文献3及び4に記載の手法をハイカカオチョコレートに適用することは敬遠されている。
さらに、近年、日本国内の菓子メーカー各社では、国内生産された菓子類の海外輸出や海外輸出を見越した商品設計が活発になっている。しかしながら、法規制の点から、日本国内で使用できても海外で使用できない乳化剤も多く、乳化剤の効果に頼らないブルーム現象の発生の抑制方法が求められている。
このため、チョコレートに対して極少量の添加であっても、十分にブルーム現象の発生を抑制することができるブルーム抑制材や手法が求められている。
WO2010/113969パンフレット 特開2012‐000039号公報 特開平2-249452号公報 特開2007-267716号公報
本発明が解決しようとする課題はチョコレート中の含有量が少量であっても十分にブルーム現象の発生を抑制できるブルーム抑制材を提供することにある。
本発明者らによる鋭意検討により、下記の条件(1)~(3)を全て満たす油脂を用いることで、少量の添加量であってもチョコレートのブルーム現象の発生を抑制することができることが知見された。
(1)トリ飽和トリグリセリド組成中に混酸型トリ飽和トリグリセリドを65~95質量%含有する。
(2)混酸型トリ飽和トリグリセリド中のP2Stの含有量が30~90質量%である。
(3)脂肪酸組成中の炭素数20以上の飽和脂肪酸の含有量が8.5質量%以下である。
Pはパルミチン酸残基を表し、Stはステアリン酸残基を表し、P2Stはトリグリセリドを構成する脂肪酸残基としてPを2個、Stを1個有するトリグリセリドを表す。
本発明はこの知見に基づいて開発されたものである。
本発明のブルーム抑制材によれば、チョコレート中の含有量が少量であっても十分にブルーム現象の発生を抑制できる。
以下、本発明について詳述する。
本発明のブルーム抑制材は、下記の条件(1)~(3)を全て満たす油脂(A)を有効成分として含有する。
(1)トリ飽和トリグリセリド組成中に混酸型トリ飽和トリグリセリドを65~95質量%含有する。
(2)混酸型トリ飽和トリグリセリド中のP2Stの含有量が30~90質量%である。
(3)脂肪酸組成中の炭素数20以上の飽和脂肪酸の含有量が8.5質量%以下である。
Pはパルミチン酸残基を表し、Stはステアリン酸残基を表し、P2Stはトリグリセリドを構成する脂肪酸残基としてPを2個、Stを1個有するトリグリセリドを表す。
本発明において、トリ飽和トリグリセリドとは、グリセリン骨格に3つの飽和脂肪酸残基が結合したグリセリドを意味する。混酸型トリ飽和トリグリセリドとは、グリセリン骨格に結合する3つの飽和脂肪酸残基が、単一の種類の飽和脂肪酸残基でないトリグリセリドを意味する。
初めに、本発明のブルーム抑制材に含有される油脂(A)が満たすべき条件(1)~(3)について述べる。
先ず、条件(1)について述べる。
本発明のブルーム抑制材は、有効成分として含有する油脂(A)のトリ飽和トリグリセリド組成中に、混酸型トリ飽和トリグリセリドを65~95質量%含有することが必要である。トリ飽和トリグリセリド組成中の混酸型トリ飽和トリグリセリドの含有量が、上記範囲内である油脂(A)を用いることで、チョコレート中のブルーム抑制材の含有量が少量であっても、ブルームの発生を効果的に抑制することができる。油脂(A)のトリ飽和トリグリセリド組成中の混酸型トリ飽和トリグリセリドの含有量が65質量%よりも少ない場合、チョコレートのブルーム現象の発生を抑制することができない。また、工業的な観点から、トリ飽和トリグリセリド組成中の混酸型トリ飽和トリグリセリドの含有量を95質量%超となるまで高めることは非常に困難である。本発明のブルーム抑制材に用いられる油脂(A)のトリ飽和トリグリセリド組成中の混酸型トリ飽和トリグリセリドの含有量は、工業的な生産性の観点、及びブルーム現象の発生をより長期にわたって効果的に抑制する観点から、好ましくは70~95質量%であり、より好ましくは75~90質量%である。
本発明のブルーム抑制材に用いられる油脂(A)中のトリ飽和トリグリセリドの含有量は、該油脂のトリグリセリド組成中、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。トリ飽和トリグリセリドの含有量の上限値は100質量%である。
本発明のブルーム抑制材に用いられる油脂(A)中の、ジ不飽和モノ飽和トリグリセリドとトリ不飽和トリグリセリドとを合計した含有量は、チョコレートのブルーム現象の発生を抑制する観点から、油脂(A)のトリグリセリド組成中、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。下限値は0質量%である。
本発明のブルーム抑制材に含有される油脂(A)のトリグリセリド組成は、例えば、逆相HPLCで行われるトリグリセリド分子種分析等により分析することが可能である。この逆相HPLCは、日本油化学会制定「基準油脂分析試験法2.4.6.2」に則って、任意の条件で実施することができる。
次に、条件(2)について述べる。
本発明のブルーム抑制材に有効成分として含有される油脂(A)の混酸型トリ飽和トリグリセリドは、P2Stを30~90質量%含有することが必要である。混酸型トリ飽和トリグリセリド中のP2Stの含有量が上記範囲内である油脂(A)をチョコレートに含有させることによって、チョコレート中のブルーム抑制材の含有量が少量であっても、ブルームの発生を効果的に抑制することができる。混酸型トリ飽和トリグリセリド中のP2Stの含有量が30質量%未満である場合、経日的なブルームの発生を抑制することができない。また、工業的な生産手法では、混酸型トリ飽和トリグリセリド中のP2Stの含有量を90質量%超となるまで濃縮することが困難である。本発明のブルーム抑制材に有効成分として含有される油脂(A)の混酸型トリ飽和トリグリセリド中のP2Stの含有量は、チョコレートのブルーム現象の発生をより効果的により長期にわたって抑制する観点、及びチョコレートを長期間にわたって良好な艶を有すものとする観点から、35~90質量%であることが好ましく、40~85質量%であることがより好ましく、40~65質量%であることが最も好ましい。
チョコレートのブルーム現象の発生を抑制する観点から、油脂(A)に含まれる混酸型トリ飽和トリグリセリド中の、炭素数16~18の飽和脂肪酸残基以外の飽和脂肪酸残基を含有する混酸型トリ飽和トリグリセリドの含有量が10質量%以下であることが好ましく、該混酸型トリ飽和トリグリセリドは、実質的に全ての構成脂肪酸残基が炭素数16の飽和脂肪酸残基と炭素数18の飽和脂肪酸残基とからなることがより好ましい。本発明において「混酸型トリ飽和トリグリセリドは実質的に全ての構成脂肪酸残基が炭素数16の飽和脂肪酸残基と炭素数18の飽和脂肪酸残基とからなる」とは、混酸型トリ飽和トリグリセリドにおける炭素数16~18の飽和脂肪酸残基以外の飽和脂肪酸残基を含有する混酸型トリ飽和トリグリセリドの含有量が5質量%以下であることを意味する。構成脂肪酸残基が炭素数16の飽和脂肪酸残基と炭素数18の飽和脂肪酸残基とからなる混酸型トリ飽和トリグリセリドとは、P2Stと、PSt2(トリグリセリドを構成する脂肪酸残基としてPを1個、Stを2個有するトリグリセリド)とが挙げられる。
本発明のブルーム抑制材に含有される油脂の、混酸型トリ飽和トリグリセリド中のP2St含有量は、例えば、上記のトリ飽和トリグリセリド組成の測定と同様に、逆相HPLCで行われるトリグリセリド分子種分析等により、同様の条件で分析することが可能である。
次に、条件(3)について述べる。
本発明のブルーム抑制材においては、有効成分として含有される油脂(A)の脂肪酸組成中の炭素数20以上の飽和脂肪酸の含有量が8.5質量%以下であること必要がある。脂肪酸組成中の炭素数20以上の飽和脂肪酸の含有量が上記範囲内である油脂(A)を用いることで、チョコレート中のブルーム抑制材の含有量が少量であっても、ブルーム現象の発生を効果的に抑制することができる。油脂(A)の脂肪酸組成中の炭素数20以上の飽和脂肪酸の含有量は、チョコレートのブルーム現象の発生をより効果的に抑制する観点、及びチョコレートの食味を低下させない観点から、7質量%以下であることが好ましく、6質量%以下であることが好ましい。脂肪酸組成中の炭素数20以上の飽和脂肪酸の含有量の下限値は0質量%である。
ブルーム現象の発生を一層抑制する観点から、本発明のブルーム抑制材に用いられる油脂(A)は、脂肪酸組成中の炭素数12以下の飽和脂肪酸含有量が7.5質量%以下であることが好ましく、6.5質量%以下であることがより好ましい。脂肪酸組成中の炭素数12以下の飽和脂肪酸含有量の下限値は0質量%である。
油脂(A)の脂肪酸組成は、例えば「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.4.2.3-2013」や「日本油化学会制定 基準油脂分析試験法2.4.4.3-2013」を参考に、キャピラリーガスクロマトグラフ法により測定することができる。
本発明のブルーム抑制材に用いられる油脂(A)は、上記条件(1)~(3)に加えて、下記の条件(4)を満たすことが好ましい。
(4)トリ飽和トリグリセリド組成中のPPPの含有量が10質量%以下である。
PPPはトリグリセリドを構成する脂肪酸残基としてPを3個有するトリグリセリドを表す。
上記条件(1)~(3)を全て満たし、かつトリ飽和トリグリセリド組成中のPPPの含有量が10質量%以下の油脂(A)を、本発明のブルーム抑制材中に有効成分として含有させることによって、ブルーム現象の発生がより好ましく抑制される。本発明のブルーム抑制材においては、ブルームの発生をより効果的に抑制する観点から、油脂(A)のトリ飽和トリグリセリド組成中のPPPの含有量が8質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることが最も好ましい。油脂(A)のトリ飽和トリグリセリド組成中のPPPの含有量の下限値は0質量%である。
本発明のブルーム抑制材の効果を一層高める観点から、油脂(A)のトリ飽和トリグリセリド組成中のStStSt(トリグリセリドを構成する脂肪酸残基としてStを3個有するトリグリセリド)の含有量が、20質量%以下であることが好ましく、13質量%以下であることがより好ましく、11質量%以下であることが最も好ましい。StStStの含有量の下限値は0.1質量%である。
本発明のブルーム抑制材に含有される油脂(A)のトリ飽和トリグリセリド中のPPP含有量、及びStStSt含有量は、例えば、上記のトリ飽和トリグリセリド組成の測定と同様に、逆相HPLCで行われるトリグリセリド分子種分析等を行うことにより、同様の条件で分析することが可能である。
本発明のブルーム抑制材に含有される油脂(A)は公知の食用油脂を用いて製造することができる。食用油脂としては、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、菜種油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、シア脂、サル脂及びカカオ脂等の植物油脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油及び鯨油等の動物油脂、並びにこれらの油脂に水素添加、分別及びエステル交換から選択される1つ又は2つ以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。本発明においては、これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組合せて用いることもできる。トリ飽和トリグリセリド中の混酸型トリ飽和トリグリセリド含有量が高められていることから、油脂(A)は水素添加された油脂であることが好ましく、脂肪酸中のトランス不飽和脂肪酸を低減する観点から、極度硬化油脂であることがより好ましい。
油脂(A)として好ましく用いられる極度硬化油脂としては、上記条件(1)~(3)を満たすものであれば特に限定はされないが、混酸型トリ飽和トリグリセリドの含有量を一層高める観点、及び脂肪酸中にトランス不飽和脂肪酸を極力含まないものとする観点から、ヨウ素価が3以下の極度硬化油脂を用いることが好ましく、1以下の極度硬化油脂を用いることがより好ましい。
ここで、上記条件(1)~(4)を満たし、より良好なブルーム抑制効果を得ることができる点で、本発明のブルーム抑制材の油脂(A)はパーム系油脂の極度硬化油脂であることが好ましい。
本発明においては、パーム油を初めとして、パーム分別軟部油、パーム分別硬部油、パームスーパーオレイン、パームミッドフラクション、及びにこれらの油脂に水素添加、分別及びエステル交換から選択される1つ又は2つ以上の処理を施した油脂が、パーム系油脂に含まれる。また、本発明においては、これらの油脂から選択される2種以上の油脂の混合物や、該油脂混合物に対して水素添加、分別、及びエステル交換から選択される1つ又は2つ以上の処理を施した油脂についてもパーム系油脂に含まれる。
本発明のブルーム抑制材中の油脂(A)がパーム系油脂の極度硬化油脂であることで、より良好なブルーム抑制効果が得られる機序については不明だが、ブルーム抑制材中の、混酸型トリ飽和トリグリセリドの分子種が少ない方がより効果的にブルーム抑制効果を得ることができるものと推定され、パーム系油脂の極度硬化油脂に比較的多く含まれる、構成脂肪酸残基が炭素数16の飽和脂肪酸残基と炭素数18の飽和脂肪酸残基とからなる混酸型トリ飽和トリグリセリドが、ブルーム現象の発生の抑制に一層効果的であると推定される。
本発明のブルーム抑制材中の油脂(A)の含有量は、本発明の効果を十分に得る観点から、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが最も好ましい。ブルーム抑制材中の油脂(A)の含有量の上限値は100質量%である。すなわち、上記油脂(A)をそのまま本発明のブルーム抑制材とすることができる。
本発明のブルーム抑制材は、上述の油脂(A)に加え、その他の食用油脂を含有していてもよい。その他の食用油脂としては、上述の食用油脂を用いることができる。また、本発明のブルーム抑制材は、本発明のブルーム抑制材としての機能を損ねない範囲で任意の副成分を含有していてもよい。本発明のブルーム抑制材が含有することができる副成分として、例えば、乳化剤、酸化抑制剤、着色料及び香料等を挙げることができる。
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグルセリン縮合リシノレイン酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びレシチンが挙げられる。本発明では、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル及びレシチンからなる群から選択される1種又は2種以上を使用することが好ましい。上記乳化剤を使用する場合、その添加量はブルーム抑制材100質量部中0.01~5質量部の範囲であることが好ましく、0.03~3質量部であることがより好ましい。
酸化抑制剤としては、風味を損ねるものでなければ、限定されるものではないが、トコフェロール又は茶抽出物を使用することが好ましい。
次に本発明のチョコレートについて述べる。
本発明のチョコレートは、上記のブルーム抑制材を、チョコレートの原料の1つとして含有するものである。
本発明のチョコレートは、全国チョコレート業公正取引協議会で規定されたチョコレート、準チョコレートだけでなく、カカオマス、ココアバター、ココア等を利用した生チョコレート、ホワイトチョコレート、カラーチョコレート等の油脂加工食品も含むものであり、カカオマスやココアパウダー、粉乳等の各種粉末食品、油脂類、糖類、乳化剤、香料、色素等の中から選択した原料を任意の割合で混合し、常法により、ロール掛け、コンチング処理して得たものをいう。
本発明のチョコレートにおける上記ブルーム抑制材の含有量は、ブルーム現象の発生の抑制効果や得られるチョコレートの食味を損ねない範囲で任意の量とすることができ、チョコレートの油脂分中に油脂(A)が、好ましくは0.1~2.5質量%、より好ましくは0.3~1.8質量%、さらに好ましくは0.5~1.5質量%となるようにチョコレートにブルーム抑制材を含有させる。ブルーム抑制材の含有量を上述の範囲とすることによって、チョコレートを製造する際の作業性が良好となり、かつ得られたチョコレートが、表面の艶が長期間にわたって維持されるものとなるため好ましい。
本発明のチョコレートは、上記のブルーム抑制材を含有する以外は、チョコレートの種類等に応じた通常の製法によって製造することができる。その具体的な方法としては、カカオマス・カカオパウダー・カカオバター等のカカオ原料、ブルーム抑制材に加えて、必要に応じ油脂類を添加し、溶解後、ここに糖類、その他原料を加えて混合し、ロール掛け、コンチング処理をしてチョコレート生地を得たのち、必要に応じテンパリング処理を行い、型に入れ、冷却する方法が挙げられる。牛乳、生クリーム、水、果汁等の水性成分を含有させる場合は、水溶性成分を別途混合した水相を調製してから添加、乳化・混合することができる。
本発明のチョコレートを製造する際、その製造時に上記のブルーム抑制材をそのままチョコレート生地中に加えてもよい。チョコレート中に上記のブルーム抑制材を均一に混合・分散させる観点、及びチョコレート製造時の作業性を向上させる観点から、パームミッドフラクション等の、上記油脂(A)以外の油脂を賦形剤として用い、一旦、該賦形剤と上記油脂(A)とを混合してから、チョコレート生地に加える方法をとることもできる。
本発明のチョコレートに上記ブルーム抑制材を含有させる際に賦形剤として用いることのできる油脂としては、通常チョコレートを製造する際に用いられる油脂であれば特に限定されないが、例えばパーム分別中融点部(パームミッドフラクション)、シアステアリン及びハードバター等を挙げることができる。上記賦形剤と本発明のブルーム抑制材との混合比率は、特に制限されるものではなく、任意に設定されるが、より良好な作業性を得る観点から、本発明のブルーム抑制材と上記賦形剤との質量比が、好ましくは5:95~30:70の範囲(前者:後者)で混合され、より好ましくは7:93~20:80である。本発明のチョコレートを製造する際に、賦形剤を用いてブルーム抑制材をチョコレートに含有させる場合、その添加量については、ブルーム抑制材がチョコレート中に上記の範囲で含有されるように適宜調整される。
本発明のチョコレートはテンパリング型チョコレートであってもよく、ノーテンパリング型チョコレートであってもよい。本発明のブルーム抑制材は少量であってもブルーム抑制効果を呈するため、カカオ分を多く含有させカカオ風味の強いチョコレートを得ることができる点、及び、本発明の改良効果がより顕著に得られる点から、本発明のチョコレートはテンパリング型チョコレートであることが好ましい。
テンパリングとは、チョコレートの製造時に一定の温度条件を満たしながら冷却操作を行うことであり、トリグリセリド分子の配列を整え、適当な結晶型を有する油脂結晶を生じさせる操作である。テンパリング操作を行うことで、口溶けや風味が良好なチョコレートとなりやすい。テンパリング型チョコレートとは、チョコレートの製造の過程で、このテンパリング操作を行ったチョコレートであることを意味する。
本発明のブルーム抑制材は少量の含有量でチョコレートのブルーム現象の発生を抑制することができる。そのため、本発明のブルーム抑制材を含有するチョコレートにはカカオ分などのその他原料をより多く配合することができることから、本発明のチョコレートはハイカカオチョコレートであることが好ましい。本発明においてハイカカオチョコレート(ダークチョコレート又は高カカオチョコレートともいう)とは、チョコレート中のカカオマスの含有量が40~95質量%、好ましくは50~95質量%、より好ましくは60~95質量%、さらに好ましくは65~95質量%である、カカオ分を多く含むチョコレートをいう。本発明におけるカカオ分とは、カカオマスやココアパウダー、ココアバター、カカオニブ、カカオリカー等を指す。
ハイカカオチョコレートの原料の配合については、カカオ分を多く含む他は、従前知られたチョコレートと大きく変わらないが、カカオ分と砂糖以外のその他原料の含有量が好ましくは5質量%以下である。
本発明のチョコレートは、ナッツ類や焼菓子と組合せた複合菓子とすることもできる。一般的に複合菓子はマイグレーションを引き起こしやすく、その結果としてブルーム現象が発生しやすい。しかしながら、本発明のブルーム抑制材を含有するチョコレートの使用により、ブルーム現象の発生が効果的に抑制された複合菓子が得られる。
本発明のチョコレートと好ましく複合することのできる上記焼菓子としては、シュガーバッター法、フラワーバッター法、オールインミックス法等によって得られた菓子生地を焼成して得られる焼菓子が挙げられる。具体例としては、パウンドケーキ、フルーツケーキ、マドレーヌ、バウムクーヘン、カステラ等のバターケーキ類、アイスボックスクッキー、ワイヤーカットクッキー、サブレ、ラング等のクッキー類が挙げられる。
また、本発明のチョコレートと好ましく複合することのできる上記ナッツ類としては、ピーナッツ、アーモンド、カシューナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、ピーカンナッツ、オーナッツ、マカデミアナッツ、ブラジルナッツ、ココナッツ、松、けし、ヒマワリ等の種実や堅果、それらのホール品・割物品・スライス品、それらを用いたペースト・ピューレ等の加工品等が挙げられる。
本発明のチョコレートを用いて複合菓子を得る場合の複合方法の例としては、本発明のチョコレートをフィリング用、サンド用、トッピング用、コーティング用、エンローバー用等として焼菓子と組合せたり、砕いた焼菓子をチョコレート中に埋め込む方法が挙げられる。また焼成前の焼菓子生地に小片状のチョコレートを分散させる方法も挙げられる。ナッツ類の場合についても、これに準じて複合することができる。
次に、本発明のチョコレートのブルーム発生の抑制方法について述べる。
本発明のチョコレートのブルーム発生の抑制方法は、チョコレートを製造する際に、上記の(1)~(3)を満たす油脂(A)を含むブルーム抑制材を用いることを特徴とする。
本方法によれば、ハイカカオチョコレートのように、チョコレート生地中にカカオ分と砂糖以外の副原料をほとんど含有することができない場合であっても、チョコレートにおけるブルーム現象の発生が抑制される。
本発明のチョコレートのブルーム発生の抑制方法を適用することのできるチョコレートとしては特に限定されず、全国チョコレート業公正取引協議会で規定されたチョコレート、準チョコレートだけでなく、カカオマス、ココアバター、ココア等を利用した生チョコレート、ホワイトチョコレート、カラーチョコレート等の油脂加工食品についても適用される。
チョコレートを製造する際に使用されるブルーム抑制材の量は特に限定されず、チョコレート中に任意に含有させることができるが、チョコレートの油脂分中に油脂(A)が、好ましくは0.1~2.5質量%、より好ましくは0.3~1.80質量%、さらに好ましくは0.3~1.5質量%、特に好ましくは0.5~1.5質量%となるようにブルーム抑制材を含有させる。
以下、実施例を基に本発明をさらに詳述する。
<検討1>
下記の実施例1~4、及び比較例1~3のとおりにブルーム抑制材を調製し、これらのブルーム現象の発生を抑制する効果を、調製されたブルーム抑制材を用いて製造されたハイカカオチョコレートの保管試験により評価した。
(実施例1)
パーム油に対して、ヨウ素価1以下となるまで水素添加処理を行い、常法により、漂白処理、脱臭処理を行い、精製して得られたパーム油の極度硬化油脂を、そのまま実施例1のブルーム抑制材(1)とした。
(実施例2)
パームスーパーオレイン(ヨウ素価60)に対して、ヨウ素価1以下となるまで水素添加処理を行い、常法により、漂白処理、脱臭処理を行い、精製して得られたパームスーパーオレインの極度硬化油脂を、そのまま実施例2のブルーム抑制材(2)とした。
(実施例3)
パーム油55質量部と、ヨウ素価1以下となるまで水素添加を施したパーム極度硬化油45質量部とからなる油脂配合物に対して、ナトリウムメトキシドを触媒としてランダムエステル交換反応を行いランダムエステル交換油脂を得た。このランダムエステル交換油脂に対して、ヨウ素価1以下となるまで水素添加処理を行い、常法により、漂白処理、脱臭処理を行い、精製して得られた極度硬化油脂を、そのまま実施例3のブルーム抑制材(3)とした。
(実施例4)
パーム分別軟部油(ヨウ素価55)に対しナトリウムメトキシドを触媒としてランダムエステル交換反応を行い、ランダムエステル交換油脂を得た。得られたランダムエステル交換油脂に対して、ヨウ素価1以下となるまで水素添加処理を行い、常法により、漂白処理、脱臭処理を行い、精製して得られた極度硬化油脂を、そのまま実施例4のブルーム抑制材(4)とした。
(比較例1)
パーム油60質量部、パーム核油20質量部及び菜種油20質量部からなる油脂配合物に対して、ナトリウムメトキシドを触媒としてランダムエステル交換反応を行いランダムエステル交換油脂を得た。このランダムエステル交換油脂に対して、ヨウ素価1以下となるまで水素添加処理を行い、常法により、漂白処理、脱臭処理を行い、精製して得られた極度硬化油脂をそのまま比較例1のブルーム抑制材(5)とした。
(比較例2)
ヨウ素価55のパーム分別軟部油80質量部とハイエルシン菜種極度硬化油20質量部とからなる油脂配合物に対して、ナトリウムメトキシドを触媒としてランダムエステル交換反応を行い、ランダムエステル交換油脂を得た。このランダムエステル交換油脂に対して、ヨウ素価1以下となるまで水素添加処理を行い、常法により、漂白処理、脱臭処理を行い、精製して得られた極度硬化油脂をそのまま比較例2のブルーム抑制材(6)とした。
(比較例3)
大豆油に対して、ヨウ素価1以下となるまで水素添加処理を行い、常法により、漂白処理、脱臭処理を行い、精製して得られた大豆油の極度硬化油脂をそのまま比較例3のブルーム抑制材(7)とた。
得られたブルーム抑制材(1)~(7)の各値について表1に示す。


Figure 0007320347000001
上記の実施例1~4及び比較例1~3で得られたブルーム抑制材(1)~(7)を用いて、下記の製法でハイカカオチョコレートを製造し、別途調製したワイヤーカットクッキーと複合させてチョコレート複合クッキーを得た。得られたチョコレート複合クッキーのチョコレート表面のブルーム現象の発生の程度について下記評価基準で評価を行った。その結果を表2に示す。
製造したハイカカオチョコレートについては、チョコレート単体の風味評価用に別途取り分けておいた。
<ハイカカオチョコレートの製造方法>
カカオマス(油分含有量:55質量%)75.3質量部、砂糖24質量部、ブルーム抑制材(1)~(7)のいずれか1種を0.3質量部、レシチン0.4質量部の配合で定法に従い、ミキシング、微細化、コンチングを行って、ハイカカオチョコレート生地を得た。この生地をテンパリング処理した後、型に流し込んで、20℃で冷却・固化した。これを離型して、ハイカカオチョコレート(1)~(7)を得た。ブルーム抑制材の番号とハイカカオチョコレートの番号はそれぞれ対応している。また、上記ブルーム抑制材をココアバターで置換し、ブルーム抑制材を含有させないものを本検討のコントロールとした。
(ワイヤーカットクッキーの製造方法)
15℃に調温した無塩バター(油分83%)を49.5質量部、上白糖を40質量部ミキサーボウルに量って、卓上ミキサーにセットし、軽く混合した後、高速で5分間クリーミングした。次いで、低速で混合しながら、30秒かけて水11.5質量部を添加した後、全卵(油分10.3%)12質量部、食塩1質量部を添加し、さらに1分混合した。ここに、予め混合して篩っておいた薄力粉(油分1.7%)100質量部とベーキングパウダー1質量部の混合物を添加し、低速で1分混合して、ワイヤーカットクッキー生地を得た。
得られたクッキー生地を、厚さ5ミリ、直径45ミリの丸型にワイヤーカット成型した。成型したクッキー生地をオーブン(フジサワ社製)で、上火180℃下火170℃にて17分焼成し、ワイヤーカットクッキーを得た。
(チョコレートとの複合方法)
上記のようにして得られたハイカカオチョコレートをテンパリング後、ワイヤーカットクッキーとチョコレートの重量比が5:1となるように、クッキーに薄くエンローバーし、チョコレート複合クッキーを製造した。尚、以下でチョコレート複合クッキーを単に複合菓子として記載する場合がある。
<チョコレートの評価>
・ブルーム現象の評価基準
複合菓子、チョコレートを15℃の恒温槽で保管し、2週間、4週間、8週間、10週間、12週間、14週間のそれぞれの時点で、以下の評価基準でそれぞれのサンプルを評価した。製造後14週間経過時点での評価が◎、○であるサンプルについて合格とした。
◎:チョコレート表面の艶は良好であり、ブルーム現象はみられない。
○:チョコレート表面の艶が失われているが、ブルーム現象は発生していない。
△:チョコレートの一部にブルーム現象が発生している。
×:チョコレートの全体に激しいブルーム現象が発生している。
Figure 0007320347000002
評価の結果、いずれのハイカカオチョコレートを用いた複合菓子であっても、製造後4週間目まではハイカカオチョコレートの表面にブルームの発生はみられなかった。
ブルーム抑制材(2)を用いた場合については、その他の実施例と比較して、ハイカカオチョコレートの表面の艶の消失が早期に確認された。これは、ブルーム抑制材(2)に用いられた極度硬化油脂の、混酸型トリ飽和トリグリセリド中のP2Stの含有量が比較的少ないことに起因するものとみられ、ブルーム抑制材(5)~(7)の結果と合わせて、ブルーム現象や艶の消失については、混酸型トリ飽和トリグリセリド中のP2StとPSt2の質量比が寄与していると推察される。
また、ブルーム抑制材(5)及び(6)のようにベヘン酸のような炭素数20以上の飽和脂肪酸、さらにラウリン酸のような炭素数12以下の飽和脂肪酸の脂肪酸組成中の含有量が高いものは総じてブルーム抑制効果が乏しく、例えばブルーム抑制材(1)のように構成脂肪酸残基が炭素数16の飽和脂肪酸残基と炭素数18の飽和脂肪酸残基からなる混酸型トリ飽和トリグリセリドを多く含む油脂を用いることがブルーム抑制材の機能を高める観点から重要であることが知見された。
また、例えばブルーム抑制材(1)とブルーム抑制材(2)の比較から、ブルーム抑制材中の炭素数16の飽和脂肪酸残基と炭素数18の飽和脂肪酸残基からなる混酸型トリ飽和トリグリセリドの質量比によっても得られる効果が異なることが示唆された。
添加したブルーム抑制材によってはテンパリング性が低下する傾向がみられ、とりわけStStStの含有量の高いブルーム抑制材(7)ではテンパリング性が悪化する傾向がみられた。
また、製造後6週間のハイカカオチョコレートを喫食すると、比較例のブルーム抑制材を用いたハイカカオチョコレートでは、コントロールと比較してカカオ風味の発現性が低く、ハイカカオチョコレートの特徴を阻害していた。
一方、実施例のブルーム抑制材を用いたハイカカオチョコレートでは、コントロールと同等程度のカカオ風味の発現性を得ることができた。
良好なブルーム抑制効果を得る観点に加えて、風味発現を阻害しない観点から、検討1で試験した中では、ブルーム抑制材(1)の使用が最も良好な結果を得ることができた。
<検討2>
検討2では、本発明のブルーム抑制材の、チョコレート中の好ましい含有量について評価を行った。検討1で良好な結果が得られたブルーム抑制材(1)を用いて検討を行った。具体的には、表3に示す配合で、検討1と同様の手法でハイカカオチョコレートを得た後にワイヤーカットクッキーと複合し複合菓子を得た。得られた複合菓子について上記の評価基準でブルームの発生抑制効果について評価を行った。評価結果を表4に示す。


Figure 0007320347000003
Figure 0007320347000004
表4から明らかなように、実施例1のブルーム抑制材(1)によれば、少量の添加量にもかかわらず、ブルーム現象の発生を効果的に抑制できることが分かる。また、添加量によって、ブルーム現象の発生を抑制する効果の程度に差がみられ、ハイカカオチョコレート中のブルーム抑制材の含有量に最適範囲が存在することが示唆された。
また、ハイカカオチョコレート(11)及び(12)では、ハイカカオチョコレート生地調製時の生地粘度が高くなり、ハイカカオチョコレート(1)製造時と比較して、混練しにくくなっていた他、テンパリングを行いにくく、製造作業性に乏しくなっていた。また、このテンパリングがとりづらかったために、その他の実施例と比較して、ハイカカオチョコレート表面の艶の消失が早く確認された。
<検討3>
検討1で良好な結果が得られたブルーム抑制材(1)について、賦形剤を用いてチョコレートに含有させる場合のブルーム現象の発生を抑制する効果を、検討1と同様に、ハイカカオチョコレートを用いた複合菓子の保管試験により評価すると共に、ハイカカオチョコレート製造時の製造作業性についても評価を行った。本検討では、賦形剤として、パーム中融点部(パームミッドフラクション)を用いた。
(実施例5)
ブルーム抑制材(1)を10質量部、パーム中融点部を90質量部をそれぞれ融解した状態で混合・撹拌したものを、ブルーム抑制材(1)-Aとした。
(実施例6)
ブルーム抑制材(1)を15質量部、パーム中融点部を85質量部をそれぞれ融解した状態で混合・撹拌したものを、ブルーム抑制材(1)-Bとした。
(実施例7)
ブルーム抑制材(1)を20質量部、パーム中融点部を80質量部をそれぞれ融解した状態で混合・撹拌したものを、ブルーム抑制材(1)-Cとした。
<ハイカカオチョコレートの製造方法>
表5に示した配合で定法に従い、ミキシング、微細化、コンチングを行って、ハイカカオチョコレート生地を得た。この生地をテンパリング処理した後、型に流し込んで、15℃で冷却・固化した。これを離型して、ハイカカオチョコレート(1)-A~Cを得た。
ブルーム抑制材の番号とハイカカオチョコレートの番号はそれぞれ対応している。上記ブルーム抑制材をココアバターで置換し、ブルーム抑制材を含有させないものを本検討のコントロールとした。上記ブルーム抑制材(1)を用いたハイカカオチョコレート(1)を参考品として表5に示した。検討2で製造したハイカカオチョコレート(1)及びハイカカオチョコレート(1)-A~(1)-C中のブルーム抑制材の含有量は同じであり、それぞれのハイカカオチョコレート中の油分含有量は略同一となっている。
上記のとおり、ブルーム抑制材(1)-A~(1)-Cを用いて得られたハイカカオチョコレートを、検討1と同様の手法でワイヤーカットクッキーと複合させ複合菓子とし、該複合菓子を評価に用いた。
ブルーム現象の評価基準については検討1と同様に行った。また、ハイカカオチョコレートを製造する際の製造作業性については、下記評価基準により評価を行った。
<製造作業性>
◎:コントロールと同様の生地粘度であり、作業性は良好である。
○:コントロールよりもやや粘度が高い、もしくはやや粘度が低いが、問題なく作業することができる。
×:コントロールよりも粘度が高い、もしくは粘度が低いために、作業性が不良である。
Figure 0007320347000005
Figure 0007320347000006
表6から明らかなとおり、賦形剤の使用によるブルーム現象の発生の抑制に与える影響がみられなかった。ことから、本検討により、本発明のブルーム抑制材は、賦形剤の使用の有無に関わらず、ブルーム現象の発生を効果的に抑制することができることが分かった。
また、賦形剤を使用することにより、ハイカカオチョコレート生地の製造時、ブルーム抑制材を含有させる際に、ハイカカオチョコレート中に上記のブルーム抑制材を均一に混合・分散させやすく、作業性が高められていることを確認した。
<検討4>
ハイカカオチョコレートと比較してカカオ分含有量の少ないチョコレートにおける、本発明のブルーム抑制材のブルーム現象の発生抑制効果について、検討1と同様に、ブルーム抑制材(1)~(7)を用いて、複合菓子の形態で評価した。評価は複合菓子を15℃の恒温槽で保管し、1週間、2週間、4週間、6週間、8週間、12週間のそれぞれの時点で、上記の評価基準でそれぞれのサンプルを評価した。
<チョコレートの製造方法>
カカオマス(油分含有量:55質量%)3質量部、ココアパウダー13質量部、砂糖46.6質量部、テンパー型ハードバター((株)ADEKA製 ファントム950)36.7質量部、ブルーム抑制材(1)~(8)のいずれか1種を0.3質量部、レシチン0.4質量部の配合で定法に従い、ミキシング、微細化、コンチングを行って、チョコレート生地を得た。この生地をテンパリング処理した後、型に流し込んで、20℃で冷却・固化した。これを離型して、チョコレート(1)’~(7)’を得た。
ブルーム抑制材の番号とチョコレートの番号はそれぞれ対応している。上記ブルーム抑制材をハードバターで置換し、ブルーム抑制材を含有させないものを本検討のコントロールとした。
得られたチョコレート(1)’~(7)’を用いて、検討1と同様に、ワイヤーカットクッキーと複合させて、複合菓子を得た。得られた複合菓子に対し、検討1と同じ評価基準で評価を行った。その評価結果を表5に示す。
製造後12週間経過時点での評価が◎、○であるサンプルについて合格とした。
検討4で調製したチョコレートは、ハイカカオチョコレートと比較してカカオ分の少ないチョコレートである。表4から明らかように、本発明のブルーム抑制材によれば、チョコレート中のカカオ分の量に関係なく、ブルーム現象の発生を効果的に抑制できることを確認した。
Figure 0007320347000007

Claims (6)

  1. 下記の条件(1)~(4)を全て満たす油脂(A)を有効成分として含有する、テンパリング型チョコレート用のブルーム抑制材。
    (1)トリ飽和トリグリセリド組成中に混酸型トリ飽和トリグリセリドを65~95質量%含有する。
    (2)混酸型トリ飽和トリグリセリド中のP2Stの含有量が30~90質量%である。(3)脂肪酸組成中の炭素数20以上の飽和脂肪酸の含有量が8.5質量%以下である。(4)トリ飽和トリグリセリド組成中のPPPの含有量が10質量%以下である。
    Pはパルミチン酸残基を表し、Stはステアリン酸残基を表し、P2Stはトリグリセリドを構成する脂肪酸残基としてPを2個、Stを1個有するトリグリセリドを表し、PPPはトリグリセリドを構成する脂肪酸残基としてPを3個有するトリグリセリドを表す。
  2. 上記油脂(A)が極度硬化油脂である、請求項1に記載のブルーム抑制材。
  3. テンパリング型チョコレートの油脂分中、0.1~2.5質量%となるように用いられる、請求項1又は2記載のブルーム抑制材。
  4. 請求項1~3の何れか一項に記載のブルーム抑制材を含有するテンパリング型チョコレートであって、
    前記ブルーム抑制材を油分中に0.1~2.5質量%含有する、テンパリング型チョコレート
  5. ハイカカオチョコレートである請求項に記載のテンパリング型チョコレート。
  6. 下記の条件(1)~(4)を全て満たす油脂(A)をチョコレートに含有させる、テンパリング型チョコレートのブルーム発生の抑制方法。
    (1)トリ飽和トリグリセリド組成中に混酸型トリ飽和トリグリセリドを65~95質量%含有する。
    (2)混酸型トリ飽和トリグリセリド中のP2Stの含有量が30~90質量%である。(3)脂肪酸組成中の炭素数20以上の飽和脂肪酸の含有量が8.5質量%以下である。(4)トリ飽和トリグリセリド組成中のPPPの含有量が10質量%以下である。
    Pはパルミチン酸残基を表し、Stはステアリン酸残基を表し、P2Stはトリグリセリドを構成する脂肪酸残基としてPを2個、Stを1個有するトリグリセリドを表し、PPPはトリグリセリドを構成する脂肪酸残基としてPを3個有するトリグリセリドを表す。
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