本発明の方法では、前記式(2)で表されるフルオレノン類(単に、フルオレノン類ともいう)と、前記式(3a)及び(3b)で表されるヒドロキシル基含有アレーン類(単に、ヒドロキシル基含有アレーン類ともいう)とを、酸触媒及びチオール類の存在下、特定の溶媒中で反応させて、前記式(1)で表されるフルオレン誘導体(単に、フルオレン誘導体(1)ともいう)を製造する。
[フルオレン誘導体(1)]
(式中、Z1及びZ2はそれぞれ独立してアレーン環を示し、R1並びにR2a及びR2bはそれぞれ独立して置換基を示し、A1及びA2はそれぞれ独立して直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基を示し、kは0~8の整数を示し、m1及びm2並びにn1及びn2はそれぞれ独立して0以上の整数を示し、p1及びp2はそれぞれ独立して1以上の整数を示す)。
前記式(1)において、環Z1及びZ2で表されるアレーン環(芳香族炭化水素環)としては、例えば、ベンゼン環などの単環式アレーン環、多環式アレーン環などが挙げられ、多環式アレーン環には、縮合多環式アレーン環(縮合多環式芳香族炭化水素環)、環集合アレーン環(環集合芳香族炭化水素環)などが含まれる。
縮合多環式アレーン環としては、例えば、縮合二環式アレーン環、縮合三環式アレーン環などの縮合二乃至四環式アレーン環などが挙げられる。縮合二環式アレーン環としては、例えば、ナフタレン環、インデン環などの縮合二環式C10-16アレーン環などが挙げられる。縮合三環式アレーン環としては、例えば、アントラセン環、フェナントレン環などが挙げられる。
好ましい縮合多環式アレーン環としては、ナフタレン環、アントラセン環などの縮合多環式C10-16アレーン環、さらに好ましくは縮合多環式C10-14アレーン環が挙げられ、特に、ナフタレン環が好ましい。
環集合アレーン環としては、例えば、ビアレーン環、テルアレーン環などが挙げられる。ビアレーン環としては、例えば、ビフェニル環、ビナフチル環、フェニルナフタレン環などのビC6-12アレーン環などが挙げられる。前記フェニルナフタレン環としては、例えば、1-フェニルナフタレン環、2-フェニルナフタレン環などが挙げられる。テルアレーン環としては、例えば、テルフェニレン環などのテルC6-12アレーン環などが挙げられる。
好ましい環集合アレーン環としては、ビC6-10アレーン環などが挙げられ、特にビフェニル環が好ましい。
2つの環Z1及びZ2の種類は、互いに同一又は異なっていてもよく、通常、同一であることが多い。環Z1及びZ2のうち、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環などのC6-12アレーン環などが好ましく、なかでも、ベンゼン環、ナフタレン環などのC6-10アレーン環がより好ましく、特に、ナフタレン環が好ましい。環Z1及びZ2がナフタレン環などの縮合多環式アレーン環であると、硫黄成分などの不純物をより一層有効に低減し易いようである。
なお、フルオレン環の9位に結合する環Z1及びZ2の置換位置は、特に限定されない。例えば、環Z1及びZ2がベンゼン環の場合、1~6位のいずれかの位置であってもよい。環Z1及びZ2がナフタレン環の場合、1位又は2位のいずれかの位置であってもよく、2位であるのが好ましい。環Z1及びZ2がビフェニル環の場合、2位、3位、4位のいずれかの位置であってもよく、3位であるのが好ましい。
R1で表される置換基としては、炭化水素基、シアノ基、ハロゲン原子などが挙げられる。
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アリール基などが挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基などが挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基などのC6-10アリール基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。
これらの基R1のうち、アルキル基、シアノ基、ハロゲン原子が好ましく、なかでもアルキル基、特に、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基が好ましい。
基R1の置換数kは、例えば、0~7程度の整数、好ましくは、以下段階的に、0~6の整数、0~5の整数、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数、さらに好ましくは0又は1、特に0である。なお、フルオレン環を構成する2つの異なるベンゼン環において、それぞれの置換数は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、前記異なるベンゼン環に置換する基R1の種類は、互いに異なっていてもよく、通常、同一である場合が多い。kが2以上である場合、同一の又は異なるベンゼン環に置換する2以上の基R1の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。また、基R1の置換位置は、特に制限されず、例えば、フルオレン環の2位乃至7位、例えば、2位、3位、7位などであってもよい。
基R2a及びR2bで表される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、シクロアルキルオキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、シクロアルキルチオ基、アリールチオ基、アラルキルチオ基、メルカプト基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、置換アミノ基、これらの置換基同士が結合した基などが挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
炭化水素基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基などが挙げられる。好ましいアルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基であり、さらに好ましくは直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基である。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC5-10シクロアルキル基などが挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル基、アルキルフェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基などのC6-12アリール基などが挙げられる。アルキルフェニル基としては、例えば、メチルフェニル基(トリル基)、ジメチルフェニル基(キシリル基)などが挙げられる。
アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基などのC6-10アリール-C1-4アルキル基などが挙げられる。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルコキシ基などが挙げられる。
シクロアルキルオキシ基としては、例えば、シクロヘキシルオキシ基などのC5-10シクロアルキルオキシ基などが挙げられる。
アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基などのC6-10アリールオキシ基などが挙げられる。
アラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルオキシ基などが挙げられる。
アルキルチオ基としては、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基などのC1-10アルキルチオ基などが挙げられる。
シクロアルキルチオ基としては、例えば、シクロヘキシルチオ基などのC5-10シクロアルキルチオ基などが挙げられる。
アリールチオ基としては、例えば、チオフェノキシ基(フェニルチオ基)などのC6-10アリールチオ基などが挙げられる。
アラルキルチオ基としては、例えば、ベンジルチオ基などのC6-10アリール-C1-4アルキルチオ基などが挙げられる。
アシル基としては、例えば、アセチル基などのC1-6アシル基などが挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基などのC1-6アルコキシ-カルボニル基などが挙げられる。
置換アミノ基としては、例えば、ジアルキルアミノ基、ビス(アルキルカルボニル)アミノ基などが挙げられる。ジアルキルアミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基などのジC1-4アルキルアミノ基などが挙げられる。ビス(アルキルカルボニル)アミノ基としては、例えば、ジアセチルアミノ基などのビス(C1-4アルキル-カルボニル)アミノ基などが挙げられる。
これらの置換基同士が結合した基としては、例えば、アルコキシアリール基、具体的には、メトキシフェニル基などのC1-6アルコキシC6-10アリール基;アルコキシカルボニルアリール基、具体的には、メトキシカルボニルフェニル基などのC1-6アルコキシ-カルボニルC6-10アリール基などが挙げられる。
これらの基R2a及びR2bのうち、代表的には、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アシル基、ニトロ基、シアノ基、置換アミノ基などが挙げられる。置換数m1、m2が1以上である場合、好ましい基R2a、R2bとしては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基が挙げられる。アルキル基としては、メチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基が好ましく、アリール基としては、フェニル基などのC6-12アリール基が好ましく、アルコキシ基としては、メトキシ基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルコキシ基が好ましい。なかでも、アルキル基、アリール基が好ましく、より好ましくはメチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-4アルキル基、フェニル基などのC6-10アリール基であり、さらに好ましくはメチル基、フェニル基であり、特にメチル基が好ましい。
基R2a、R2bの置換数m1、m2は、環Z1及びZ2の種類に応じて適宜選択でき、例えば、それぞれ0~8程度の整数であってもよく、好ましくは以下段階的に、0~6の整数、0~4の整数、0~3の整数、0~2の整数であり、なかでも、0又は1、特に0である。なお、2つの異なる環Z1及びZ2において、基R2a及びR2bの種類並びに置換数m1及びm2は、それぞれ互いに同一又は異なっていてもよい。また、置換数m1、m2が2以上である場合、同一の環Z1、Z2に置換する2以上の基R2a、R2bの種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。基R2a、R2bの置換位置は、特に制限されず、環Z1、Z2と、基[-(OA1)n1-OH]、[-(OA2)n2-OH]及びフルオレン環の9位との結合位置以外の位置に置換していればよい。
基A1及びA2で表される直鎖状又は分岐鎖状アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基(1,2-プロパンジイル基)、トリメチレン基、1,2-ブタンジイル基、テトラメチレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2-6アルキレン基などが挙げられる。好ましいアルキレン基A1及びA2としては、直鎖状又は分岐鎖状C2-4アルキレン基、さらに好ましくはエチレン基、プロピレン基などの直鎖状又は分岐鎖状C2-3アルキレン基、特に、エチレン基である。
オキシアルキレン基(OA1)、(OA2)の繰り返し数(付加モル数)n1、n2は、それぞれ0以上、例えば、0~20程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、0~15の整数、0~10の整数、0~8の整数、0~6の整数、0~5の整数、0~4の整数、0~3の整数であり、さらに好ましくは0~2の整数、特に0又は1である。また、不純物をより有効に低減できる点から、繰り返し数n1、n2はそれぞれ1以上であるのがより好ましい。そのため、繰り返し数n1、n2は、それぞれ1以上、例えば、1~20程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、1~15の整数、1~10の整数、1~8の整数、1~6の整数、1~5の整数、1~4の整数、1~3の整数であり、さらに好ましくは1又は2の整数、特に1である。繰り返し数n1、n2が大きすぎると、フルオレン誘導体の純度が低下するおそれがある。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「繰り返し数(付加モル数)n1、n2」は、平均値(算術平均値又は相加平均値)又は平均付加モル数であってもよく、好ましい態様は、前記好ましい整数の範囲と同様であってもよい。
また、2つの繰り返し数n1、n2は、それぞれ同一又は異なっていてもよい。n1、n2が2以上の場合、2以上のオキシアルキレン基(OA1)、(OA2)の種類は、同一又は異なっていてもよい。また、異なる環Z1及びZ2に結合するオキシアルキレン基(OA1)、(OA2)の種類は、互いに同一又は異なっていてもよい。
ヒドロキシル基含有基[-(OA1)n1-OH]、[-(OA2)n2-OH]の置換数p1、p2は、それぞれ1以上の整数であればよく、例えば、1~4程度の範囲から選択でき、好ましくは1~3の整数、さらに好ましくは1又は2、特に、1である。
ヒドロキシル基含有基[-(OA1)n1-OH]、[-(OA2)n2-OH]の置換位置は、環Z1及びZ2とフルオレン環の9位との結合位置以外の位置であれば、特に限定されず、例えば、環Z1及びZ2がベンゼン環、p1及びp2が1である場合、フルオレン環の9位に結合するフェニル基の1位に対して、2~6位のいずれかの位置であればよく、好ましくは3位、4位、さらに好ましくは4位である。環Z1及びZ2がナフタレン環、p1及びp2が1である場合、通常、フルオレン環の9位に対して、1位又は2位で結合するナフチル基の5~8位のいずれかの位置に置換している場合が多く、フルオレン環の9位に対して、ナフタレン環の1位又は2位が置換し(1-ナフチル又は2-ナフチルの関係で置換し)、この置換位置に対して、ヒドロキシル基含有基[-(OA1)n1-OH]、[-(OA2)n2-OH]が1,5位、2,6位の関係で置換するのが好ましく、特に、2,6位の関係で置換しているのが好ましい。環Z1及びZ2がビフェニル環、p1及びp2が1である場合、ヒドロキシル基含有基[-(OA1)n1-OH]、[-(OA2)n2-OH]はビフェニル環の2~6位及び2’~6’位のいずれかの位置に置換していればよいが、例えば、ビフェニル環の3位又は4位がフルオレンの9位に結合していてもよく、ビフェニル環の3位がフルオレン環の9位に結合する場合、ヒドロキシル基含有基[-(OA1)n1-OH]、[-(OA2)n2-OH]の置換位置は、例えば、ビフェニル環の2位、4位、5位、6位、2’位、3’位、4’位のいずれの位置であってもよく、好ましくは6位、4’位のいずれかの位置、特に、6位に置換しているのが好ましい。ビフェニル環の4位がフルオレン環の9位に結合している場合、ヒドロキシル基含有基[-(OA1)n1-OH]、[-(OA2)n2-OH]の置換位置は、ビフェニル環の2位、3位、2’位、3’位、4’位のいずれの位置であってもよく、好ましくは2位、4’位のいずれかの位置、特に、2位に置換しているのが好ましい。
フルオレン誘導体(1)として代表的には、例えば、前記式(1)において、p1及びp2がそれぞれ1、n1及びn2がそれぞれ0である9,9-ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類;p1及びp2がそれぞれ1、n1及びn2がそれぞれ1以上、例えば、1~10、好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3、特に1である9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類などが挙げられる。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、特に断りのない限り、「(ポリ)アルコキシ」とは、アルコキシ基及びポリアルコキシ基の双方を含む意味に用いる。
9,9-ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類としては、例えば、9,9-ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(アルキル-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(アリール-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシC6-14アリール]フルオレン類が挙げられる。
9,9-ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス(アルキル-ヒドロキシフェニル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(モノ又はジC1-4アルキル-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス(アリール-ヒドロキシフェニル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(C6-10アリール-ヒドロキシフェニル)フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス(6-ヒドロキシ-2-ナフチル)フルオレン、9,9-ビス(5-ヒドロキシ-1-ナフチル)フルオレンなどが挙げられる。
また、9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類としては、例えば、9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス[アルキル-ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス[アリール-ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシC6-14アリール]フルオレン類などが挙げられる。
9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2-6アルコキシフェニル]フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス[アルキル-ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3.5-ジメチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[モノ又はジC1-4アルキル-ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2-6アルコキシフェニル]フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス[アリール-ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル]フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシプロポキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9-ビス[C6-10アリール-ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2-6アルコキシフェニル]フルオレンなどが挙げられる。
9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル]フルオレンとしては、例えば、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシプロポキシ)-2-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[5-(2-ヒドロキシエトキシ)-1-ナフチル]フルオレン、9,9-ビス[6-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)-2-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2-6アルコキシ-ナフチル]フルオレンなどが挙げられる。
これらのフルオレン誘導体(1)のうち、硫黄成分などの不純物、例えば、全硫黄含量をより一層有効に低減できる点から、前記式(1)において、Z1及びZ2が縮合多環式アレーン環、n1及びn2が1以上である9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ縮合多環式アリール]フルオレン類が好ましく、9,9-ビス[ヒドロキシ(モノ乃至ヘキサ)アルコキシ縮合多環式C10-14アリール]フルオレン類がより好ましく、なかでも、9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレンなどの9,9-ビス[ヒドロキシC2-4アルコキシナフチル]フルオレンが特に好ましい。
このようなフルオレン誘導体(1)は、フルオレノン類(2)及びヒドロキシル基含有アレーン類(3a)及び(3b)を原料として製造できる。
[フルオレノン類(2)]
(式中、R1及びkはそれぞれ好ましい態様を含めて前記式(1)に同じ)。
代表的なフルオレノン類(2)としては、例えば、9-フルオレノンなどが挙げられる。また、フルオレノン類(2)は、市販品などを使用してもよく、フルオレン類を空気酸化するなどの用法により調製してもよい。なお、使用するフルオレノン類(2)の純度は、特に制限されないが、通常、95重量%以上、好ましくは97重量%以上、さらに好ましくは99重量%以上である。
[ヒドロキシル基含有アレーン類(3a)及び(3b)]
(式中、Z1、Z2、R2a、R2b、A1、A2、m1、m2、n1、n2、p1及びp2はそれぞれ好ましい態様を含めて前記式(1)に同じ)。
代表的なヒドロキシル基含有アレーン類(3a)及び(3b)としては、例えば、前記フルオレン誘導体(1)の項において、9,9-ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類、9,9-ビス[ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール]フルオレン類として例示した代表的なフルオレン誘導体に対応する化合物などが挙げられる。これらのヒドロキシル基含有アレーン類(3a)及び(3b)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。なお、2種以上組み合わせて添加する場合、種類ごとに分けて、反応の進行段階に応じて添加してもよい。通常、ヒドロキシル基含有アレーン類(3a)及び(3b)は、互いに同一の化合物であることが多い。
好ましいヒドロキシル基含有アレーン類(3a)及び(3b)としては、前記式(3a)及び(3b)において、Z1及びZ2が縮合多環式アレーン環、p1及びp2が1、n1及びn2が1以上、例えば、1~10、好ましくは1~6、さらに好ましくは1~3、特に1であるヒドロキシ(ポリ)アルコキシ縮合多環式アレーン類が挙げられる。ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ縮合多環式アレーン類としては、例えば、ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフタレンなどのヒドロキシ(ポリ)C2-6アルコキシ-縮合多環式C10-14アレーン類などが挙げられる。
ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフタレンとしては、例えば、2-(2-ヒドロキシエトキシ)-ナフタレン、2-(2-ヒドロキシプロポキシ)-ナフタレン、1-(2-ヒドロキシエトキシ)-ナフタレン、2-[2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]-ナフタレンなどのヒドロキシ(モノ乃至デカ)C2-6アルコキシナフタレンなどが挙げられる。
ヒドロキシ(ポリ)アルコキシ縮合多環式アレーン類のうち、全硫黄含量などを有効に低減できる点から、好ましくはヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシ-縮合多環式C10-14アレーン類であり、なかでも、ヒドロキシ(ポリ)C2-4アルコキシ-ナフタレンが好ましく、特に、2-(2-ヒドロキシエトキシ)-ナフタレンなどのヒドロキシC2-4アルコキシナフタレンが好ましい。
これらのヒドロキシル基含有アレーン類(3a)及び(3b)は、市販品を使用できる。また、ヒドロキシル基含有アレーン類(3a)及び(3b)のうち、n1及びn2が1以上であるヒドロキシ(ポリ)アルコキシアレーン類は、対応するフェノール類と、アルキレンオキシド(アルキレンカーボネート又はハロアルカノール)とを反応させて調製してもよい。なお、使用するヒドロキシル基含有アレーン類(3a)及び(3b)の純度は、特に制限されないが、通常、95質量%以上、好ましくは97質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上である。
反応において、目的とするフルオレン誘導体(1)に対応するヒドロキシル基含有アレーン類(3a)及び(3b)の合計使用割合は、フルオレノン類(2)1モルに対して、例えば、2~20モル程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、2~10モル、2~8モル、2~6モル、2~5モル、2~4モルであり、さらに好ましくは2.2~3.8モル、特に2.5~3.5モルである。ヒドロキシル基含有アレーン類(3a)及び(3b)の総量の割合が少なすぎると、フルオレノン類(2)の転化率(反応率)が低下するおそれがある。
[溶媒]
本発明において、前記反応は、少なくとも非プロトン性極性溶媒を含む溶媒の存在下で行われる。非プロトン性極性溶媒は、従来、その高い極性によって反応中間体を安定化し易い点から、反応の進行を阻害すると考えられていた。しかし、予想に反して、非プロトン性極性溶媒を含む溶媒を用いることにより、純度が高いフルオレン誘導体(1)を意外にも効率よく製造できることを見出した。
詳しくは、非プロトン性極性溶媒は、反応系の均一性を向上できるのみならず、反応生成物であるフルオレン誘導体(1)を容易に溶解できるためか、反応系の粘度を有効に低減でき、反応性を大きく向上できるものと推測される。従来の方法では、反応性が低いため、反応温度を上げたり、ヒドロキシル基含有アレーン類(3a)及び(3b)を過剰に添加して反応させる必要があったが、本発明の方法では、反応温度を有効に低減でき、ヒドロキシル基含有アレーン類(3a)及び(3b)の使用量も低減できるため、簡便に、かつ効率よくフルオレン誘導体(1)を製造できる。さらに、本発明の方法では、従来の方法に比べて反応温度が低くても効率よく反応が進行するため、副生成物の生成を有効に抑制できる。そのため、得られるフルオレン誘導体(1)は、硫黄成分などの不純物が著しく低減されており、より一層純度が高いフルオレン誘導体(1)を調製することができる。そのため、加熱溶融によるフルオレン誘導体(1)の着色を有効に抑制することもできる。
このような非プロトン性極性溶媒としては、例えば、エーテル類、ケトン類、エステル類、カーボネート類、アミド類、尿素類、ニトリル類、ニトロ化炭化水素類、ホスホルアミド類スルホン類、スルホキシド類などが挙げられ、これらの溶媒から選択された少なくとも1種を含む場合が多い。
エーテル類としては、例えば、鎖状エーテル類、環状エーテル類などが挙げられる。
鎖状エーテル類としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテルなどのジC1-6アルキルエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテルなどの(モノ乃至ヘキサ)C2-4アルキレングリコールジC1-6アルキルエーテルなどが挙げられる。
環状エーテル類としては、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフランなどの置換基を有していてもよいテトラヒドロフラン類;テトラヒドロピラン、4-メチルテトラヒドロピランなどの置換基を有していてもよいテトラヒドロピラン類;1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキサンなどの置換基を有していてもよいジオキサン類;1,3-ジオキソラン、2-メチル-1,3-ジオキソランなどの置換基を有していてもよいジオキソラン類などが挙げられる。前記置換基としては、例えば、アルキル基などの炭化水素基などが挙げられる。置換基を有する場合、好ましい置換基としては、メチル基、エチル基などのC1-6アルキル基、さらに好ましくはC1-4アルキル基、特にメチル基である。前記置換基の置換数は特に制限されず、通常、0~3程度、好ましくは0~2、さらに好ましくは0又は1であり、特に0である。
ケトン類としては、例えば、鎖状ケトン類、環状ケトン類などが挙げられる。
鎖状ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのジC1-6アルキル-ケトンなどが挙げられる。
環状ケトン類としては、例えば、シクロヘキサノンなどのC5-10シクロアルカノンなどが挙げられる。
エステル類としては、例えば、鎖状エステル類、環状エステル類(又はラクトン類)などが挙げられる。
鎖状エステル類としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのC2-6アルカン酸C1-6アルキルエステルなどが挙げられる。
ラクトン類としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン(又はγ-ヘキサノラクトン)などの置換基を有していてもよい5~7員環ラクトンなどが挙げられる。なお、前記置換基及び置換数としては、前記環状エーテル類に例示した置換基及び置換数と好ましい態様を含めて同様である。
カーボネート類としては、例えば、鎖状カーボネート類、環状カーボネート類などが挙げられる。
鎖状カーボネート類としては、例えば、ジメチルカーボネート(又は炭酸ジメチル)、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(又は炭酸ジエチル)などのジC1-6アルキル-カーボネートなどが挙げられる。
環状カーボネート類としては、例えば、エチレンカーボネート(又は炭酸エチレン)、プロピレンカーボネート(又は炭酸プロピレン)などの置換基を有していてもよいジ乃至テトラメチレンカーボネートなどが挙げられる。なお、前記置換基及び置換数としては、前記環状エーテル類に例示した置換基及び置換数と好ましい態様を含めて同様である。
アミド類としては、例えば、鎖状アミド類、環状アミド類(又はラクタム類)などが挙げられる。
鎖状アミド類としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)などのN,N-ジC1-6アルキル-C1-6アルカン酸アミドなどが挙げられる。
環状アミド類としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの置換基を有していてもよいラクタム、好ましくは置換基を有していてもよい5~7員環ラクタムが挙げられる。なお、前記置換基及びその置換数としては、前記環状エーテル類に例示した置換基及びその置換数と好ましい態様を含めて同様である。
尿素類(又はウレア類)としては、例えば、鎖状尿素類、環状尿素類などが挙げられる。
鎖状尿素類としては、例えば、テトラメチル尿素、テトラエチル尿素、テトライソプロピル尿素などのテトラC1-6アルキル-尿素などが挙げられる。
環状尿素類としては、例えば、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI又はN,N’-ジメチルエチレン尿素)、N,N’-ジメチル-N,N’-トリメチレン尿素(又はN,N’-プロピレン尿素)などのN,N’-ジC1-6アルキル-N,N’-ジ乃至テトラメチレン尿素などが挙げられる。なお、これらの環状尿素類は置換基を有していてもよく、置換基及びその置換数としては、前記環状エーテル類に例示した置換基及びその置換数と好ましい態様を含めて同様である。
ニトリル類としては、例えば、シアン化炭化水素、具体的には、アセトニトリル、プロピオノニトリルなどのシアン化C1-6アルカン、ベンゾニトリルなどのシアン化アレーンなどが挙げられる。
ニトロ化炭化水素類としては、例えば、ニトロメタン、ニトロエタン、1-ニトロプロパン、2-ニトロプロパンなどのニトロC1-6アルカン、ニトロベンゼンなどのニトロアレーンなどが挙げられる。
ホスホルアミド類としては、例えば、ヘキサメチルホスホルアミドなどのヘキサC1-6アルキルホスホルアミドなどが挙げられる。
スルホン類としては、例えば、鎖状スルホン類、環状スルホン類などが挙げられる。
鎖状スルホン類としては、例えば、エチルメチルスルホン、イソプロピルエチルスルホンなどのジC1-6アルキルスルホンなどが挙げられる。
環状スルホン類としては、例えば、スルホラン(又はテトラメチレンスルホン若しくはテトラヒドロチオフェン-1,1-ジオキシド)、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホランなどの置換基を有していてもよいトリ乃至ヘキサメチレンスルホン類などが挙げられる。なお、前記置換基及びその置換数としては、前記環状エーテル類に例示した置換基及びその置換数と好ましい態様を含めて同様である。好ましい環状スルホン類としては、スルホランなどのC1-6アルキル基を有していてもよいテトラ乃至ペンタメチレンスルホン類などが挙げられる。
スルホキシド類としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのジC1-6アルキルスルホキシドなどが挙げられる。
これらの非プロトン性極性溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。非プロトン性極性溶媒のうち、エーテル類、スルホン類、スルホキシド類、尿素類及びアミド類から選択される少なくとも1種、なかでも、エーテル類、スルホン類、尿素類及びアミド類から選択される少なくとも1種を含むのが好ましく、特に、少なくとも分子内に環状構造を有する環式化合物(環状構造を有する非プロトン性極性溶媒)を含むのが好ましく、なかでも、環状エーテル類、環状スルホン類、環状尿素類及び環状アミド類から選択される少なくとも1種を含むのが好ましい。
前記環状エーテル類としては、THF、1,4-ジオキサンなどのC1-4アルキル基を有していてもよいテトラヒドロフラン類又はジオキサン類が挙げられ、なかでも、C1-3アルキル基を有していてもよいジオキサン類が好ましく、特に、1,4-ジオキサンなどのC1-2アルキル基を有していてもよい1,4-ジオキサン類が好ましく、1,4-ジオキサンが最も好ましい。
前記環状スルホン類としては、スルホランなどのC1-4アルキル基を有していてもよいテトラ乃至ペンタメチレンスルホン類が挙げられ、C1-3アルキル基を有していてもよいスルホラン類がより好ましく、C1-2アルキル基を有していてもよいスルホラン類がさらに好ましく、スルホランが最も好ましい。
前記環状尿素類としては、DMI、N,N’-ジメチル-N,N’-トリメチレン尿素などのC1-4アルキル基を有していてもよいN,N’-ジC1-6アルキル-N,N’-ジ乃至トリメチレン尿素類が挙げられ、C1-3アルキル基を有していてもよいN,N’-ジC1-4アルキル-エチレン尿素類がより好ましく、C1-2アルキル基を有していてもよいN,N’-ジC1-3アルキル-エチレン尿素類がさらに好ましく、DMIが最も好ましい。
前記環状アミド類としては、NMPなどのC1-4アルキル基を有していてもよい5~7員環ラクタムが挙げられ、C1-3アルキル基を有していてもよい5~6員環ラクタムがより好ましく、C1-2アルキル基を有していてもよい5員環ラクタムがさらに好ましく、NMPが最も好ましい。
溶媒は、前記非プロトン性極性溶媒のみで構成されていてもよいが、反応性をより一層向上する観点から、通常、非プロトン性極性溶媒(第1の溶媒ともいう)に加えて、さらに、炭化水素類及びハロゲン化炭化水素類から選択される第2の溶媒を含む場合が多い。
炭化水素類としては、例えば、脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類などが挙げられる。脂肪族炭化水素類としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカンなどの直鎖状又は分岐鎖状C5-12アルカンなどが挙げられる。脂環族炭化水素類としては、シクロヘキサンなどのC5-10シクロアルカンなどが挙げられる。芳香族炭化水素類としては、例えば、ベンゼン;トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどのモノ乃至トリC1-6アルキル-ベンゼンなどが挙げられる。
ハロゲン化炭化水素類としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタンなどのハロC1-6アルカンなど;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロベンゼンなどが挙げられる。
これらの第2の溶媒は単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。これらの第2の溶媒のうち、芳香族炭化水素類が好ましく、さらに好ましくはモノ乃至トリC1-4アルキル-ベンゼンであり、なかでも、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどのモノ又はジC1-2アルキル-ベンゼンが好ましく、特に、トルエンが好ましい。
非プロトン性極性溶媒(第1の溶媒)と第2の溶媒との総量の割合は、溶媒全体に対して、例えば、10質量%以上(すなわち、10~100質量%)程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、30質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、90質量%以上であり、さらに好ましくは95質量%以上であり、特に100質量%、すなわち、実質的に非プロトン性極性溶媒及び第2の溶媒のみで構成されるのが好ましい。なお、実質的に非プロトン性極性溶媒及び第2の溶媒以外の他の溶媒(第3の溶媒ともいう)を含む場合、非プロトン性極性溶媒と第2の溶媒との総量の割合は、例えば、60~99質量%程度の範囲から選択してもよく、好ましくは80~95質量%である。
溶媒が、非プロトン性極性溶媒(第1の溶媒)と第2の溶媒との双方を含む場合、非プロトン性極性溶媒と、芳香族炭化水素類などの第2の溶媒との質量割合は、例えば、前者/後者=0.01/99.99~50/50程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.05/99.95~30/70、0.1/99.9~20/80、0.5/99.5~18/82、0.8/99.2~15/85、1/99~13/87であり、さらに好ましくは3/97~10/90であり、特に、5/95~8/92である。非プロトン性極性溶媒の割合が多すぎると、反応性(反応率又は反応速度)が低下するおそれがあり、少なすぎると、粘度を低減できずに反応性が低下するおそれがある。
また、エーテル類、好ましくは1,4-ジオキサンなどの環状エーテル類と、トルエンなどの芳香族炭化水素類との質量割合は、例えば、前者/後者=0.01/99.99~50/50程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.05/99.95~30/70、0.1/99.9~10/90、0.3/99.7~8/92、0.5/99.5~5/95であり、さらに好ましくは0.8/99.2~3/97であり、特に、1/99~2/98である。1,4-ジオキサンなどのエーテル類の割合が多すぎると、反応性(反応率又は反応速度)が低下するおそれがあり、少なすぎると、粘度を低減できずに反応性が低下するおそれがある。
スルホン類、好ましくはスルホランなどの環状スルホン類と、トルエンなどの芳香族炭化水素類との質量割合は、例えば、前者/後者=0.1/99.9~50/50程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.5/99.5~30/70、1/99~20/80、3/97~15/85、4/96~12/88であり、さらに好ましくは5/95~10/90であり、特に、6/94~8/92である。スルホランなどのスルホン類の割合が多すぎると、反応性(反応率又は反応速度)が低下するおそれがあり、少なすぎると、粘度を低減できずに反応性が低下するおそれがある。
尿素類、好ましくはDMIなどの環状尿素類と、トルエンなどの芳香族炭化水素類との質量割合は、例えば、前者/後者=0.1/99.9~50/50程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.5/99.5~30/70、1/99~20/80、3/97~15/85、4/96~12/88であり、さらに好ましくは5/95~10/90であり、特に、6/94~8/92である。DMIなどの尿素類の割合が多すぎると、反応性(反応率又は反応速度)が低下するおそれがあり、少なすぎると、粘度を低減できずに反応性が低下するおそれがある。
アミド類、好ましくはNMPなどの環状アミド類と、トルエンなどの芳香族炭化水素類との質量割合は、例えば、前者/後者=0.1/99.9~50/50程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.5/99.5~30/70、1/99~20/80、3/97~15/85、5/95~12/88であり、さらに好ましくは6/94~10/90であり、特に、7/93~8/92である。NMPなどのアミド類の割合が多すぎると、反応性(反応率又は反応速度)が低下するおそれがあり、少なすぎると、粘度を低減できずに反応性が低下するおそれがある。
溶媒の割合は、フルオレノン類(2)100質量部に対して、例えば、100~1000質量部程度の範囲から選択してもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、150~700質量部、200~500質量部であり、さらに好ましくは250~450質量部であり、なかでも、280~400質量部であり、特に、300~350質量部である。溶媒の割合が多すぎると、原料の濃度が低すぎて反応性が低下するおそれがあり、溶媒の割合が少なすぎると、粘度が高すぎて反応性が低下するおそれがある。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、硫酸や塩酸などの酸触媒が水を含む形態である場合、酸触媒として含まれる水分は、溶媒ではなく酸触媒として扱い、上記溶媒の割合には加算しないものとする。
[酸触媒]
酸触媒としては、例えば、無機酸、有機酸、固体酸などが挙げられる。
無機酸としては、例えば、硫酸、塩化水素、リン酸などが挙げられる。無機酸は水溶液の形態、例えば、塩酸などであってもよく、前記塩酸の濃度としては、例えば、5~36質量%、好ましくは20~36質量%である。
有機酸としては、例えば、スルホン酸などが挙げられる。スルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの(ハロ)アルカンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などのアレーンスルホン酸などが挙げられる。
固体酸としては、例えば、無機固体酸、有機固体酸などが挙げられる。無機固体酸としては、例えば、金属酸化物、複合金属酸化物、金属硫化物、金属硫酸塩、ポリ酸などの金属化合物、非金属硫酸塩、粘土鉱物、ゼオライト、カオリンなどが挙げられる。有機固体酸としては、例えば、強酸性陽イオン交換樹脂、弱酸性陽イオン交換樹脂などの陽イオン交換樹脂が挙げられる。強酸性陽イオン交換樹脂としては、例えば、デュポン社製のナフィオンなどのスルホン酸基を有するイオン交換樹脂などが挙げられる。弱酸性陽イオン交換樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸-ジビニルベンゼンコポリマーなどのカルボン酸基を有するイオン交換樹脂などが挙げられる。
これらの酸触媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。好ましい酸触媒は、硫酸などの無機酸、陽イオン交換樹脂であり、反応の進行により生成する水の脱水剤としても作用する点から、硫酸、特に、濃硫酸が好ましい。
前記硫酸には、例えば、濃度30~90質量%程度の希硫酸、濃度90質量%以上の濃硫酸、発煙硫酸などが含まれ、反応系において硫酸に転化可能であれば、硫酸前駆体として、三酸化硫黄を使用してもよい。通常、硫酸としては、H2SO4換算で、濃度が80~99質量%程度の範囲から選択してもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、90~99質量%、93~99質量%、96~99質量%の濃硫酸であり、さらに好ましくは97~98.5質量%の濃硫酸であり、特に98質量%の濃硫酸が好ましい。
酸触媒の割合は、前記フルオレノン類(2)100質量部に対して、例えば、10~1000質量部程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、50~700質量部、100~500質量部、150~400質量部であり、さらに好ましくは200~350質量部、特に250~300質量部である。酸触媒の割合が少なすぎると、反応を効率よく進行できない(又は反応速度が著しく低下する)おそれがある。
[チオール類]
反応において、チオール類は酸触媒の助触媒又は共触媒として作用するようである。本発明者らは、前記特許文献3などで慣用的に使用されているβ-メルカプトプロピオン酸などを用いると、得られるフルオレン誘導体が不純物として多くの硫黄成分(又は硫黄含有成分)を含み、強塩基処理などの慣用の精製方法により精製しても除去には限界があること、また、前記硫黄成分及び/又は強塩基処理の影響のためか、加熱溶融によってフルオレン誘導体が着色し易いことを見出した。さらに、本発明者らは、チオール類が、2-メルカプトアルカン酸、アミノアルカンチオール、及びこれらの塩などの第1のチオール類を含むことにより、フルオレン誘導体(1)の全硫黄含量を効率よく低減できること、さらには、加熱溶融による着色を有効に低減できることを見出した。
本発明では、チオール類としては、特に制限されないが、上記観点から、2-メルカプトアルカン酸、アミノアルカンチオール、及びこれらの塩から選択される少なくとも1種の第1のチオール類を含むのが好ましい。
2-メルカプトアルカン酸としては、例えば、チオグリコール酸(メルカプト酢酸又はメルカプトエタン酸)、チオ乳酸(又はα-メルカプトプロピオン酸)、2-メルカプト酪酸(2-メルカプト-n-ブタン酸)、2-メルカプトイソ酪酸(2-メルカプト-イソブタン酸)などの2-メルカプトC2-6アルカン酸などが挙げられる。好ましい2-メルカプトアルカン酸としては、2-メルカプトC2-4アルカン酸であり、特に、チオグリコール酸、チオ乳酸などの2-メルカプトC2-3アルカン酸が好ましい。
アミノアルカンチオールとしては、例えば、2-アミノエタンチオール(又はシステアミン)、2-アミノプロパンチオール、3-アミノプロパンチオール、2-アミノブタンチオール、3-アミノブタンチオール、4-アミノブタンチオール、6-アミノヘキサンチオール、8-アミノオクタンチオール、11-アミノウンデカンチオール、16-アミノヘキサデカンチオールなどのアミノC2-20アルカンチオールなどが挙げられる。好ましいアミノアルカンチオールとしては、アミノC2-16アルカンチオールである。
これらの第1のチオール類は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。これらの第1のチオール類のうち、後述する加熱溶融後の色相(YI)を有効に低減できる観点からは、2-メルカプトアルカン酸又はその塩が好ましく、なかでも、チオグリコール酸、チオ乳酸、又はそれらの塩が好ましく、特に、チオ乳酸又はその塩が好ましい。また、全硫黄含量を大きく低減でき、収率もより一層向上できる観点からは、アミノアルカンチオール又はその塩を少なくとも含むのが好ましい。これらの第1のチオール類のうち、アミノアルカンチオール又はその塩が特に好ましく、好ましいアミノアルカンチオールとしては、以下段階的に、アミノC2-12アルカンチオール、アミノC2-8アルカンチオール、アミノC2-6アルカンチオール、アミノC2-4アルカンチオールであり、さらに好ましくはアミノC2-3アルカンチオールであり、特に、システアミンが好ましい。
なお、代表的な塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩などの無機酸塩;酢酸塩などの有機酸塩;ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩などのテトラアルキルアンモニウム塩;又はこれらの複塩などが挙げられる。
チオール類は、必要に応じて、前記第1のチオール類以外の他のチオール類(単に、第2のチオール類ともいう)を含んでいてもよい。第2のチオール類としては、例えば、チオカルボン酸、メルカプトカルボン酸(ただし、2-メルカプトアルカン酸を除く)、アルキルメルカプタン、アラルキルメルカプタン、及びこれらの塩などが挙げられる。
チオカルボン酸としては、例えば、チオ酢酸、チオシュウ酸などが挙げられる。
メルカプトカルボン酸(ただし、2-メルカプトアルカン酸を除く)としては、例えば、β-メルカプトプロピオン酸、メルカプトコハク酸、メルカプト安息香酸などが挙げられる。
アルキルメルカプタンとしては、例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n-ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのC1-16アルキルメルカプタンなどが挙げられる。好ましいアルキルメルカプタンはC1-4アルキルメルカプタンである。
アラルキルメルカプタンとしては、例えば、ベンジルメルカプタンなどが挙げられる。
これらの塩としては、例えば、前述のアルカリ金属塩、代表的にはナトリウム塩などが挙げられ、具体的な化合物としては、例えば、メチルメルカプタンナトリウム、エチルメルカプタンナトリウムなどが挙げられる。
これらの第2のチオール類は、単独で又は2種以上組み合わせて使用することもできる。
第1のチオール類の割合は、チオール類全体に対して、例えば、10質量%以上(例えば、10~100質量%)程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、30質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上、なかでも、95質量%以上であるのが好ましく、特に、100質量%(チオール類が実質的に第1のチオール類のみを含む態様)が好ましい。第1のチオール類の割合が少なすぎると、全硫黄含量や加熱溶融後の色相(YI)を有効に低減できなくなるおそれがある。なお、チオール類が、第2のチオール類を含む場合、第1のチオール類の割合は、チオール類全体に対して、例えば、60~99.9質量%程度の範囲から選択してもよく、好ましくは80~99質量%、さらに好ましくは90~98質量%である。
チオール類の割合は、前記フルオレノン類(2)100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、具体的には、1~50質量部程度の範囲から選択してもよく、好ましい範囲としては、以下段階的に、2~30質量部、3~20質量部、4~15質量部、5~13質量部であり、さらに好ましくは6~12質量部であり、なかでも、6.5~11質量部が好ましく、特に、7~10質量部である。また、チオール類の割合は、前記フルオレノン類(2)1モルに対して、例えば、0.01~0.5モル程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.05~0.4モル、0.08~0.3モル、0.1~0.25モルであり、さらに好ましくは0.12~0.22モル、特に、0.15~0.2モルである。
なお、チオール類の割合は、前記酸触媒100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、具体的には、0.1~50質量部程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.5~30質量部、1~20質量部、1.5~10質量部、2~5質量部であり、さらに好ましくは2.3~4質量部であり、なかでも、2.5~3.8質量部であるのが好ましく、特に、2.5~3.5質量部であるのが好ましく、極めて好ましくは2.5~3質量部である。
チオール類の割合が少な過ぎると、反応が効率よく進行しないおそれがあるのみならず、未反応成分などの不純物により着色するおそれがある。多すぎると、チオール類が硫黄成分などの不純物として残留するおそれがあるが、第1のチオール類を用いると、硫黄成分などの不純物を有効に低減でき、フルオレン誘導体(1)の溶融時の着色も効果的に抑制できる。
反応温度は、特に限定されないが、例えば、0~200℃程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、5~150℃、10~100℃、15~80℃、20~60℃である。なかでも、より一層高い純度のフルオレン誘導体(1)を効率よく製造でき、溶融による着色も抑制できる観点から、反応温度が50℃以下であるのが好ましく、さらに好ましくは20~50℃であり、特に、25~45℃であるのが好ましく、30~40℃であるのが最も好ましい。本発明では、反応温度が比較的低くても、反応系の均一性が高いのみならず、反応系の粘度も低いため効率よく反応が進行する。そのため、反応温度を低減して副反応を抑制することにより、高い純度と高い製造効率とを両立できる。
また、反応時間は、特に制限されず、例えば、30分~48時間程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、1~24時間、2~12時間、4~8時間である。
反応は、攪拌しながら行ってもよく、空気中、又は窒素ガスや希ガスなど不活性雰囲気中で行ってもよく、常圧又は加圧下で行ってもよい。また、反応は、脱水しながら行ってもよい。
本発明の方法では、前記特定の条件で反応を行うことにより、前記フルオレノン類(2)をほぼ完全に反応させることができる。そのため、前記フルオレノン類(2)の転化率は、通常、99モル%以上、例えば、99.2~100モル%であり、好ましくは99.3モル%以上、より好ましくは99.5モル%以上、さらに好ましくは99.7モル%以上、中でも99.75モル%以上、特に99.8モル%以上、最も好ましくは99.85モル%以上である。なお、転化率は後述の実施例に記載の方法(HPLCを使用する方法)などにより測定できる。
なお、反応終了後の反応混合物(反応液又は反応混合液)には、目的生成物又は反応生成物であるフルオレン誘導体(1)以外に、未反応の前記ヒドロキシル基含有アレーン類(3a)及び(3b)、酸触媒、チオール類、溶媒、水などが含まれる。このような反応混合物からのフルオレン誘導体(1)の分離(又は精製)には、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、中和、洗浄、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの精製又は分離手段や、これらを組み合わせた精製又は分離手段を利用できる。例えば、アルカリ水溶液を加えて中和する方法などにより酸触媒(及びチオール類)を除去したのち、フルオレン誘導体(1)を結晶化させ、分離(精製)してもよい。
なお、本発明の方法では、得られるフルオレン誘導体(1)が高純度であるにも拘らず、高収率で製造でき、反応における収率は、使用したフルオレノン類(2)に対して、例えば、50モル%以上(50~100モル%)であり、好ましい範囲としては、以下段階的に、53モル%以上、56モル%以上、58モル%以上であり、さらに好ましくは59モル%以上、特に、59.5モル%以上である。本発明の方法における収率は、通常、53~100モル%程度であり、以下段階的に、56~90モル%、58~80モル%、59~70モル%、特に、59.5~65モル%であることが多い。
[フルオレン誘導体(1)の特性及び用途]
本発明の方法により得られるフルオレン誘導体(1)は、純度が高く、HPLC(高性能又は高速液体クロマトグラフ)により測定される純度(HPLC純度)は、例えば、95%以上程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、96%以上、97%以上、97.5%以上であり、さらに好ましくは98%以上、特に、98.5%以上である。HPLC純度は、通常、96~100%程度の範囲から選択でき、好ましくは98.5~99.99%、さらに好ましくは98.7~99.9%であることが多い。
特に、フルオレン誘導体(1)は全硫黄含量が極めて低く、溶融状態における着色を有効に抑制できる。前記全硫黄含量は、質量基準で、例えば、150ppm以下、具体的には、0(又は検出下限値未満)~120ppm程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.001~100ppm、0.005~80ppm、0.01~50ppm、 0.05~30ppm、0.1~20ppm、0.5~15ppm、0.8~10ppmであり、さらに好ましくは1~8ppm、なかでも、1.2~5ppm、特に、1.5~3ppmである。
また、溶融状態、代表的には、窒素雰囲気下、280℃で2時間加熱して溶融した状態における色相(YI)[又は黄色度(YI)]は、例えば、0~80程度の範囲から選択でき、好ましい範囲としては、以下段階的に、0.1~70、0.5~65、1~60、5~55、10~50であり、さらに好ましくは15~45であり、なかでも、20~40、特に、25~35である。
なお、上記HPLC純度、全硫黄含量、溶融時の色相(YI)及び収率は、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
フルオレン誘導体(1)は、特定のフルオレン骨格を有しているため、種々の特性、例えば、光学特性、耐熱性、耐水性、耐湿性、耐薬品性、電気特性、機械的特性、寸法安定性などに優れており、様々な用途においてこれらの特性を付与(向上又は改善)するのに有用である。例えば、フルオレン誘導体(1)は、前記骨格により、高い屈折率も有しているため、機能性材料、代表的には、レジスト用添加剤、樹脂用添加剤、硬化剤(樹脂用硬化剤)などの添加剤又はその原料若しくは中間体;医薬、農薬などの原料又は中間体;モノマーなどの樹脂原料などとして好適に用いることができ、前述のような優れた特性を効率よく付与するための化合物として用いることができる。これらの用途の中でも、フルオレン誘導体(1)は、着色、特に、溶融状態における着色を著しく抑制(又は低減)できるので、樹脂原料、なかでも、100~300℃程度の高い温度で合成(反応又は重合)される樹脂、具体的には、ポリエステル樹脂やポリカーボネート樹脂などの原料(又はモノマー)などとして好適に利用できる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。評価方法を以下に示す。
[評価方法]
(HPLC純度)
HPLC(高性能又は高速液体クロマトグラフ)装置として(株)島津製作所製「LC-2010A HT」、カラムとして東ソー(株)製「ODS-80TM」を用いて測定した。
(全硫黄含量)
参考例、比較例又は実施例で得られた化合物の全硫黄含量は、(株)三菱化学アナリテック製「TS-2100H」を用いて、酸化分解-紫外蛍光法により測定した。
(色相(YI))
参考例、比較例又は実施例で得られた化合物の色相(YI)[又は黄色度(YI)]は、窒素気流下、280℃にて2時間溶融し、色彩・濁度同時測定器(日本電色工業(株)製「COH-400」)を用いて測定した。
(融点)
参考例、比較例又は実施例で得られた化合物の融点は、示差走査熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製「EXSTAR DSC6200」)を用いて、窒素気流下、昇温速度10℃/分、40~300℃の温度範囲で、示差走査熱量測定(DSC)により測定した。
(X線回折測定(XRD))
参考例、比較例又は実施例で得られた化合物のXRDは、X線回折装置(リガク(株)製「全自動多目的水平型X線回折装置Smart Lab」)を用いて、出力3kW、線源(Cu管球)、測定角10~90°の条件下で測定した。
[参考例1]
2Lのセパラブルフラスコに、9-フルオレノン(大阪ガスケミカル(株)製、99.0%以上)90.1g(0.500モル)、2-(2-ナフトキシ)エタノール(大阪ガスケミカル(株)製、99.0%以上)329.4g(1.750モル)、トルエン281.3g及びチオグリコール酸(メルカプト酢酸、東京化成工業(株)製、95.0%以上)7.8g(0.085モル)を加えて、50℃に昇温して溶解した。溶解後、50~65℃の温度範囲で濃硫酸(関東化学(株)製、98重量%)245.0gを滴下した後、50~55℃で3時間撹拌した。次いで、2-フェノキシエタノール(関東化学(株)製、99.0%以上)69.1g(0.500モル)を添加し、さらに3時間撹拌したところ、9-フルオレノンの転化率が99%以上であることがHPLCにより確認された。
得られた反応液にメチルエチルケトン281.3g、蒸留水294.0gを70℃以下で添加した後、70℃に昇温して十分に撹拌し、水相を除去して得られた有機相に、さらに、10重量%水酸化ナトリウム水溶液392.0gを温度上昇に注意しつつ添加した。30分撹拌して水相を除去した後、得られた有機相を蒸留水で十分に洗浄し、冷却晶析を行った。
冷却晶析は、40℃にて得られた溶液(有機相)に種晶を添加し、3時間熟成して結晶を析出させた後、10℃/時間の速度で10℃以下まで冷却した。10℃以下に到達後、さらに4時間熟成させて、ろ過により粗結晶を得た。得られた粗結晶の3倍重量のメタノールを用いて、前記粗結晶を60℃で加熱洗浄することにより目的物(9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(BNEF))153.5g(収率57%、HPLC純度98.8%)を得た。得られた目的物の全硫黄含量は5.6ppm、溶融状態における色相(YI)は45であった。
[参考例2]
チオグリコール酸7.8g(0.085モル)に代えて、チオ乳酸(α-メルカプトプロピオン酸、東京化成工業(株)製、97.0%以上)9.0g(0.085モル)を使用する以外は、参考例1と同様にしてBNEFを得た。得られたBNEFの収量は142.7g(収率53%、HPLC純度98.8%)、全硫黄含量は5.3ppm、溶融状態における色相(YI)は30であった。
[参考例3]
チオグリコール酸7.8g(0.085モル)に代えて、システアミン(2-アミノエタンチオール、東京化成工業(株)製、97.0%以上)6.6g(0.085モル)を使用する以外は、参考例1と同様にしてBNEFを得た。得られたBNEFの収量は161.6g(収率60%、HPLC純度98.6%)、全硫黄含量は5.0ppm、溶融状態における色相(YI)は56であった。
[比較例1]
チオグリコール酸7.8g(0.085モル)に代えて、β-メルカプトプロピオン酸(東京化成工業(株)製、98.0%以上)9.0g(0.085モル)を使用し、2-(2-ナフトキシ)エタノールの添加量を376.5g(2.000モル)に変更する以外は、参考例1と同様にしてBNEFを得た。得られたBNEFの収量は150.8g(収率56%、HPLC純度98.5%)、全硫黄含量は185ppm、溶融状態における色相(YI)は81であった。
[実施例1]
2Lのセパラブルフラスコに、9-フルオレノン(大阪ガスケミカル(株)製、99.0%以上)90.1g(0.500モル)、2-(2-ナフトキシ)エタノール(大阪ガスケミカル(株)製、99.0%以上)282.0g(1.50モル)、トルエン281.3g及びシステアミン(東京化成工業(株)製、95.0%以上)6.6g(0.085モル)、1,4-ジオキサン 4.41g(関東化学(株)製、99.0%以上、0.10モル)を加えて、40℃に昇温して溶解した。溶解後、30~40℃の温度範囲で濃硫酸(関東化学(株)製、98質量%)245.0gを滴下した後、30~40℃で3時間撹拌した。次いで、2-フェノキシエタノール(関東化学(株)製、99.0%以上)69.1g(0.500モル)を添加し、さらに3時間撹拌したところ、9-フルオレノンの転化率が99%以上であることがHPLCにより確認された。
得られた反応液にメチルイソブチルケトン281.3g、蒸留水294.0gを70℃以下で添加した後、70℃に昇温して十分に撹拌し、水相を除去して得られた有機相に、さらに、10質量%水酸化ナトリウム水溶液392.0gを温度上昇に注意しつつ添加した。30分撹拌して水相を除去した後、得られた有機相を蒸留水で十分に洗浄し、冷却晶析を行った。
冷却晶析は、40℃にて得られた溶液(有機相)に種晶を添加し、3時間熟成して結晶を析出させた後、10℃/時の速度で10℃以下まで冷却した。10℃以下に到達後、さらに4時間熟成させて、ろ過により粗結晶を得た。得られた粗結晶の3倍質量のメタノールを用いて、前記粗結晶を60℃で加熱洗浄することにより目的物(9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(BNEF))165.3g(収率61%、HPLC純度99.0%)を得た。得られた目的物の全硫黄含量は2.7ppm、溶融状態における色相(YI)は42であった。DSCにて測定した融点は、218.8℃であった。DSCチャート及びXRD測定結果を図1及び2に示す。
[実施例2]
1,4-ジオキサンに代えて、スルホラン21.0g(関東化学(株)製、99.0%以上、0.18モル)を用い、メチルイソブチルケトンに代えて、メチルエチルケトン281.3gを得られた反応液に添加する以外は、実施例1と同様の操作により、目的物(9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(BNEF))162.6g(収率60%、HPLC純度99.1%)を得た。得られた目的物の全硫黄含量は2.0ppm、溶融状態における色相(YI)は50であった。DSCにて測定した融点は、216.7℃であった。DSCチャート及びXRD測定結果を図3及び4に示す。
[実施例3]
1,4-ジオキサンに代えて、N,N’-ジメチルエチレンウレア(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン又はDMI)21.0g(関東化学(株)製、98.0%以上、0.18モル)を用いる以外は、実施例1と同様の操作により、目的物(9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(BNEF))167.2g(収率62%、HPLC純度98.9%)を得た。得られた目的物の全硫黄含量は2.9ppm、溶融状態における色相(YI)は33あった。DSCにて測定した融点は、218.1℃であった。DSCチャート及びXRD測定結果を図5及び6に示す。
[実施例4]
2Lのセパラブルフラスコに、9-フルオレノン(大阪ガスケミカル(株)製、99.0%以上)90.1g(0.500モル)、2-(2-ナフトキシ)エタノール(大阪ガスケミカル(株)製、99.0%以上)282.3g(1.50モル)、トルエン210.9g及びシステアミン(東京化成工業(株)製、95.0%以上)6.6g(0.085モル)、N-メチル-2-ピロリドン(関東化学(株)製、99.0%以上、NMPともいう)17.4g(0.18モル)を加えて、40℃に昇温して溶解した。溶解後、30~40℃の温度範囲で濃硫酸(関東化学(株)製、98質量%、第1の濃硫酸ともいう)245.0gを滴下した後、30~40℃で6時間撹拌した。次いで、2-フェノキシエタノール(関東化学(株)製、99.0%以上)96.7g(0.700モル)を添加し、5時間撹拌した後、濃硫酸(関東化学(株)製、98質量%、第2の濃硫酸ともいう)24.5gを滴下し、11時間撹拌したところ、9-フルオレノンの転化率が99%以上であることがHPLCにより確認された。
得られた反応液にトルエン70.6g、メチルイソブチルケトン281.3g、蒸留水323.7gを70℃以下で添加した後、75℃に昇温して十分に撹拌し、水相を除去して得られた有機相に、さらに、10質量%水酸化ナトリウム水溶液431.6gを温度上昇に注意しつつ添加した。30分撹拌して水相を除去した後、得られた有機相を蒸留水で十分に洗浄し、冷却晶析を行った。
冷却晶析は、40℃にて得られた溶液(有機相)に種晶を添加し、3時間熟成して結晶を析出させた後、10℃/時の速度で10℃以下まで冷却した。10℃以下に到達後、さらに4時間熟成させて、ろ過により粗結晶を得た。得られた粗結晶の3倍質量のメタノールを用いて、前記粗結晶を60℃で加熱洗浄することにより目的物(9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(BNEF))152.8g(収率57%、HPLC純度98.2%)を得た。得られた目的物の全硫黄含量は3.8ppm、溶融状態における色相(YI)は61であった。DSCにて測定した融点は、218.7℃であった。DSCチャート及びXRD測定結果を図7及び8に示す。
[実施例5]
1Lのセパラブルフラスコに、9-フルオレノン45.1g(0.250モル)、2-(2-ナフトキシ)エタノール131.8g(0.70モル)、トルエン105.5g及びシステアミン3.3g(0.043モル)、NMP8.7g(0.09モル)を仕込んで溶解したこと;第1の濃硫酸の滴下量を122.5gとしたこと;2-フェノキシエタノールの添加量を48.4g(0.350モル)としたこと;第2の濃硫酸の滴下量を12.3gとしたこと;得られた反応液にトルエン35.3g、メチルイソブチルケトン140.7g、蒸留水161.9gを70℃以下で添加した後、75℃に昇温して十分に撹拌し、水相を除去して得られた有機相に、さらに、10質量%水酸化ナトリウム水溶液215.8gを添加したこと以外は、実施例4と同様の操作により、目的物(9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(BNEF))80.1g(収率59%、HPLC純度98.8%)を得た。得られた目的物の全硫黄含量は2.6ppm、溶融状態における色相(YI)は32であった。DSCにて測定した融点は、218.3℃であった。DSCチャート及びXRD測定結果を図9及び10に示す。
[実施例6]
第1の濃硫酸の滴下量を147.0gとしたこと以外は、実施例5と同様の操作により、目的物(9,9-ビス[6-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-ナフチル]フルオレン(BNEF))77.4g(収率57%、HPLC純度98.8%)を得た。得られた目的物の全硫黄含量は2.9ppm、溶融状態における色相(YI)は67であった。DSCにて測定した融点は、220.2℃であった。DSCチャート及びXRD測定結果を図11及び12に示す。
参考例、比較例及び実施例の結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例及び参考例は、比較例と比べて、収率及びHPLC純度を維持又は向上でき、さらに、全硫黄含量が極めて低く、加熱溶融後の色相(YI)も低かった。また、実施例は、参考例に比べて、収率を維持又は向上できるにもかかわらず、より一層高い純度、低い全硫黄含量及び/又は低いYIを示した。