JP2014201551A - アントロン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】種々の樹脂材料の原料として有用なアントラキノン誘導体を工業的有利にかつ高収率で得ることが可能な製造方法の提供。【解決手段】ヘテロポリ酸、硫酸、スルホン酸、スルホン酸基を有する重合物及びポリリン酸から選ばれる酸の内少なくとも1種の酸存在下、アントラキノンとフェノール及びその誘導体を反応させる際、助触媒を添加することなく反応系から水を除去しながら反応させることにより前記課題が解決可能であることを見出した。【選択図】なし
Description
本発明は、種々の樹脂材料(例えば、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、その他熱硬化、又は光硬化樹脂)の原料として有用なアントロン誘導体の製造方法に関する。
アントラキノンにフェノール類を2つ付加させたアントロン誘導体は各種樹脂原料として注目され始めているが、その製造方法は多くは知られていない。例えば、これらアントロン誘導体の内、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンの製造法としては、硫酸存在下、アントラキノン、フェノールに助触媒として3−メルカプトプロピオン酸を添加し、加熱攪拌する方法が記載されているが、本方法の収率は約4%と非常に低く、工業的に利用可能な方法とは言えない。(特許文献1)
また、アントラキノン、フェノール、塩化アルミニウム、塩化第二錫を加熱攪拌する製法も知られているが、この方法では収率が74%と高いものの、毒性のある塩化第二錫をアントラキノンに対し等モル量使用しているといった安全性や環境上問題がある。更には、発明者らが本方法を追試した所、反応マスが固化し工業的に実施が困難であることを確認し、本方法も工業的に利用可能な方法とは言い難いことが判明した。(特許文献2)
本発明は、種々の樹脂原料として有用なアントロン誘導体の効率的な製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の酸を触媒として使用する場合、一般的にケトンとフェノール類との反応で助触媒として用いられるメルカプタン類を触媒量添加した場合、アントラキノンとフェノール類との反応では副生成物を生成させ、却って反応選択率が低下する原因となること、及び反応時、反応系から水を除去させることが必須であることを見出し、アントロン誘導体の効率的な製造方法を完成させた。具体的には下記〔1〕〜〔4〕の発明を含む。
〔1〕
ヘテロポリ酸、硫酸、スルホン酸、スルホン酸基を有する重合物及びポリリン酸から選ばれる酸の内少なくとも1種の酸存在下、アントラキノンと下記式(1)
〔1〕
ヘテロポリ酸、硫酸、スルホン酸、スルホン酸基を有する重合物及びポリリン酸から選ばれる酸の内少なくとも1種の酸存在下、アントラキノンと下記式(1)
で表されるフェノール類を、助触媒を添加することなく反応系から水を除去しながら反応させることを特徴とする、下記式(2)
本発明によれば、種々の樹脂材料(例えば、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ樹脂、ポリアレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、その他熱硬化、又は光硬化樹脂)の原料として有用なアントロン誘導体を工業的に有利に、かつ高収率で得ることができる。
以下、本発明をその実施の形態とともに記載する。
本発明で用いられる酸は、ヘテロポリ酸、硫酸、スルホン酸、スルホン酸基を有する重合物及びポリリン酸から選ばれる群の内少なくとも1種の酸を用いる。これらの酸は必要に応じ、2種以上を混合して使用することも可能である。これらの酸は通常、アントラキノン1モルに対し酸分として0.001〜5.0倍モル使用し、好ましくは0.01〜2.5倍モル使用する。使用量が0.001倍モルより少ない場合、反応速度が遅くなり工業的有利にアントロン誘導体を製造できない場合があり、5.0倍モルより多い場合、後処理の際多量の塩基で中和をする必要がある等、経済的に不利となる場合がある。また、これら酸は水溶液状のものを用いることも可能であるが、反応時に水を反応系から除去する必要があることから、これら酸に含まれる水分は少ない方が好ましい。
本発明で用いられる酸の具体例の内、ヘテロポリ酸とは、一般的には異なる2種以上の酸化物複合体からなる複合酸化物酸、およびこれらのプロトンの一部もしくはすべてを他のカチオンで置き換えたものである。ヘテロポリ酸は、例えば、リン、ヒ素、スズ、ケイ素、チタン、ジルコニウムなどの元素の酸素酸イオン(例えば、リン酸、ケイ酸)とモリブデン、タングステン、バナジウム、ニオブ、タンタルなどの元素の酸素酸イオン(バナジン酸、モリブデン酸、タングステン酸)とで構成されており、その組み合わせにより種々のヘテロポリ酸が可能である。
ヘテロポリ酸を構成する酸素酸の元素は特に限定されるものではないが、例えば、銅、ベリリウム、ホウ素、アルミニウム、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、チタン、ジルコニウム、セリウム、トリウム、窒素、リン、ヒ素、アンチモン、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、ウラン、セレン、テルル、マンガン、ヨウ素、鉄、コバルト、ニッケル、ロジウム、オスミウム、イルジウム、白金などが挙げられる。 これらのうち構成元素として(A)リンまたはケイ素、および(B)バナジウム、モリブデンまたはタングステンから選ばれた少なくとも1種を含むものが好ましい。
ヘテロポリ酸骨格を構成するヘテロポリ酸アニオンとしては種々の組成のものを使用できる。例えば、XM12O40、XM12O42、XM18O62、XM6O24などが挙げられる。好ましいヘテロポリ酸アニオンの組成は、XM12O40である。各式中、Xはケイ素、リンなどの元素であり、Mはバナジウム、モリブデン、タングステンなどの元素である。これらの組成を有するヘテロポリ酸として、具体的には、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、リンバナドモリブデン酸、リンタングストモリブテン酸、リンバナドモリブテン酸、ケイタングストモリブデン酸、リンバナドタングステン酸などが例示される。
ヘテロポリ酸は、遊離のヘテロポリ酸であってもよく、プロトンの一部もしくはすべてを他のカチオンで置き換えて、ヘテロポリ酸の塩として使用することもできる。従って、本発明で言うヘテロポリ酸とはこれらのヘテロポリ酸の塩も含まれる。プロトンと置換可能なカチオンとしては、例えば、アンモニウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられる。
ヘテロポリ酸は無水物であってもよく、結晶水含有物であってもよいが、無水物の方がより反応が早く、また副生成物の生成が抑制され好ましい。結晶水含有物の場合、予め減圧乾燥や溶媒との共沸脱水等の脱水処理を行なうことにより無水物と同様の効果を得ることができる。ヘテロポリ酸は活性炭、アルミナ、シリカ−アルミナ、ケイソウ土などの担体に担持した形態で用いてもよい。これらのヘテロポリ酸は単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
本発明で用いられる酸の具体例の内、スルホン酸としてはメタンスルホン酸などのアルカンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸のような芳香族スルホン酸、クロロスルホン酸などのハロスルホン酸などが例示される。また、スルホン酸基を有する重合物としては例えばスルホ化されたテトラフルオロエチレンを主骨格に有するフッ素樹脂であるナフィオン(登録商標)が例示される。
本発明で用いるフェノール類としては式(1)
である。この中でもm=0または1、n=0または1であるフェノール類が好ましく、更にはフェノール、クレゾールが好ましい。これらフェノール類は必要に応じ2種類以上を混合して使用することも可能である。また、フェノール類の使用量は特に限定されるものではないが、副反応抑制及び経済性の点から、通常、アントラキノン1モルに対して、2.5〜50モル、好ましくは5〜20モル使用する。2.5モル以下の場合、後述の溶媒を使用しない場合、アントラキノンが溶解せず反応溶液が高粘度となるため、工業的に実施困難となる場合があり、50モル以上の場合、反応は進行するが経済的有利に本発明が実施できなくなる場合がある。
本発明における助触媒として例えば特開平5−32576号公報や特開2000−191577号公報、特開2000−26349号公報等に記載されるようなメルカプタン系触媒が公知である。これらメルカプタン系触媒として例えば、メルカプトカルボン酸(チオ酢酸、β−メルカプトプロピオン酸、α−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオシュウ酸、メルカプトコハク酸、メルカプト安息香酸など)、アルキルメルカプタン(例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのC1−20アルキルメルカプタンなど)、アラルキルメルカプタン(ベンジルメルカプタンなど)などが例示される。なお、触媒作用を示さないメルカプタン系化合物、例えばtert−ブチルメルカプタンや2,6−ジ−tert−ブチルフェニルメルカプタンは本発明における助触媒には該当しない。
本発明はこれら助触媒を全く加えないか、加えたとしても一般的に触媒効果が発現しない量、例えばアントラキノンに対し1モル%以上加えないことを特徴とする。助触媒を触媒効果が発現する十分な量を添加した場合、以下式(3)
本発明において規定する「反応系から水を除去しながら」反応させるとは、反応によって生成する水や反応時に使用する酸、溶媒等に含まれる水を反応系外へと除去することを意味する。具体的な除去方法として例えば、反応系を減圧とすることにより反応系より水を除去する方法、反応系に気体を通気させることにより水を気体に同伴させ除去する方法、水と共沸する溶媒を反応系に添加し、溶媒と共に水を共沸留去させる方法等が例示され、反応系を減圧とすることにより反応系より水を除去する方法、反応系に気体を通気させる方法が好ましい。また、これら水を除去する方法は、一つの方法だけでなく、複数の方法(例えば水とともに共沸する溶媒を反応系に添加し、反応系を減圧とした上で溶媒と共に水を共沸留去させることにより水を除去する方法)を適宜選択することも可能である。
これらの反応を実施する際、必要に応じ反応系に溶媒を添加して実施することも可能である。ここで使用する溶媒としては特に限定されるものではないが、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素溶媒、ジエチルエーテル、ジ−iso−プロピルエーテル、ターシャリーブチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの脂肪族および環状エーテル溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、1−メチル−2−ピロリジノンなどのアミド溶媒、などが挙げられる。好ましくは芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン化芳香族炭化水素溶媒であり、さらに好ましくはトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンである。その使用量は特に限定されるものではないが、通常、アントラキノンに対し5重量部以下、好ましくは2重量部以下である。5重量部より多い場合、反応が遅くなる場合がある。
これら反応を実施する際の反応温度は特に限定されないが、好ましくは65〜180℃であり、さらに好ましくは100〜150℃である。反応温度が65℃以下の場合反応が進行しないか、または反応が完結するのに長時間を要する場合があり、180℃以上の場合、副生成物の増加により純度、収率が低下する場合がある。また、溶媒の非存在下、反応系に気体を通気させることにより水を気体に同伴させ除去する方法にて本反応を実施する場合は、水の沸点である100℃以上とすることが好ましく、添加した溶媒とともに水を共沸留去する場合は、添加した溶媒と水との共沸点以上とすることが好ましい。
本反応は通常10〜35時間で実施される。反応終点については、例えば反応マスを高速液体クロマトグラフィーにより分析し、原料であるアントラキノンやフェノール類の残存量から決定することが可能である。
反応系を減圧とすることにより反応系より水を除去する方法にて反応を実施する場合、その際の減圧度は特に限定されないが、好ましくは内圧を9.3×104Pa以下とし、さらに好ましくは2.7×104Pa以下とする。減圧度が9.3×104Paを超えた場合には、反応が進行しないかまたは反応が完結するのに長時間を要する場合がある。
気体を通気させることにより水を気体に同伴させ除去する方法にて反応を実施する場合、この方法にて使用される気体は本反応に影響を与えない気体であればどのようなものでも良く、このようなものの例としては乾燥空気、酸素、二酸化炭素、窒素や希ガス(ヘリウム、ネオン、アルゴンなど)が例示され、これらの中でも窒素や希ガスが好ましい。気体の通気量は特に限定されず、当業者であれば脱水に必要な通気量をスケールに応じ適宜設定可能であるが、例えばアントラキノン1kg当たり、0.5L/分以上通気させることにより十分脱水が可能である。また、通気方法としては、反応器の上部に気体を通気させる方法、反応器の下部から気体を導入し、いわゆるバブリング状態として反応系に十分気体を通気させる方法等が例示され、反応器の下部から気体を導入する方法が効率的に反応系から水を除去可能であることから好ましい。
溶媒と共に水を共沸留去させる方法にて反応を実施する場合、使用する溶媒は水と共に共沸する溶媒であれば特に限定されるものではない。具体的には前述した溶媒が例示される。また、その使用量は特に限定されるものではないが、通常、アントラキノンに対し5重量部以下、好ましくは2重量部以下である。5重量部より多い場合、反応が遅くなる場合がある。また、本方法は常圧下でなく、減圧下で実施することも可能であり、その際の減圧度は添加した溶媒及び水との共沸点及び所望の内温に応じ適宜設定することができる。
こうして得られたアントロン誘導体を含む反応生成物は、通常の分離、精製手段、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組み合わせた分離手段により所望のアントロン誘導体を分離精製できる。具体的には、例えば特開2009−249307号公報に記載される方法により取り出し、精製することが可能である。
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明する。
本発明について以下実施例を以って詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例中、特に断らない限り記載される純度は下記条件で分析した高速液体クロマトグラフィー(以下HPLCと略する)によって得られた面積百分率である。
例中、特に断らない限り記載される純度は下記条件で分析した高速液体クロマトグラフィー(以下HPLCと略する)によって得られた面積百分率である。
<HPLC測定条件>
装置 :株式会社島津製作所、LC−10A
カラム:L−Column ODS(5μm、4.6mmφ×250mm)
移動相:A液:水/メタノール=70/30(v/v)、B液:メタノール
B液濃度:30%→100%(25分)→100%(40分)
流量:1.0ml/min、カラム温度:40℃、検出波長:254nm
<1H−NMRスペクトル>
分析装置:NMR分光光度計(日本電子(株)、JNM−ECS400)
分析溶媒:重水素置換アセトン(アセトン−d6)
装置 :株式会社島津製作所、LC−10A
カラム:L−Column ODS(5μm、4.6mmφ×250mm)
移動相:A液:水/メタノール=70/30(v/v)、B液:メタノール
B液濃度:30%→100%(25分)→100%(40分)
流量:1.0ml/min、カラム温度:40℃、検出波長:254nm
<1H−NMRスペクトル>
分析装置:NMR分光光度計(日本電子(株)、JNM−ECS400)
分析溶媒:重水素置換アセトン(アセトン−d6)
<実施例及び比較例中の化合物>
以下実施例及び比較例に記載するアントロン誘導体の具体的一実施例である10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンとは以下式(4)で表される化合物である。
以下実施例及び比較例に記載するアントロン誘導体の具体的一実施例である10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンとは以下式(4)で表される化合物である。
10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンとの構造異性体(以下副生物と称する)は以下式(5)で表される化合物である。
<実施例1>
攪拌機、温度計およびジムロート冷却管を付けたガラス製反応器に、アントラキノン20g(0.10モル)、フェノール94g(1.0モル)および触媒としてリンタングステン酸2.8gを加え、反応によって生成する水を1.3×104Paの減圧下で系外に除去しながら内温120℃で20時間反応させた。反応終了後、反応混合物をHPLCにて分析した所、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンと副生物との面積百分率の比率は4.7:1であった。その後、反応混合物に50重量%のメタノール水溶液を40g加え、冷却し、これをろ過、乾燥することで、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンおよびアントラキノンの混合物を28g得た。この固体に50重量%のメタノール水溶液と24%水酸化ナトリウム水溶液を加え、攪拌、ろ過をし、不溶解分を除くことで赤褐色の溶液を得た。この溶液を一規定の塩酸水溶液で中和し、沈殿した固体をろ過、乾燥することで、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンの白色固体を23g(収率63.4%、純度98.7%)得た。
得られた化合物を1H−NMRにて分析した所、以下のような結果が得られ、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンが得られたことが確認された。
1HNMR(Acetone−d6)δ8.45ppm(2H,s)、8.20( 2H,dd),7.58(2H,t ),7.48(2H,t),7.24(2H,d)、6.83(4H,d)、6.73(4H,d)
攪拌機、温度計およびジムロート冷却管を付けたガラス製反応器に、アントラキノン20g(0.10モル)、フェノール94g(1.0モル)および触媒としてリンタングステン酸2.8gを加え、反応によって生成する水を1.3×104Paの減圧下で系外に除去しながら内温120℃で20時間反応させた。反応終了後、反応混合物をHPLCにて分析した所、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンと副生物との面積百分率の比率は4.7:1であった。その後、反応混合物に50重量%のメタノール水溶液を40g加え、冷却し、これをろ過、乾燥することで、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンおよびアントラキノンの混合物を28g得た。この固体に50重量%のメタノール水溶液と24%水酸化ナトリウム水溶液を加え、攪拌、ろ過をし、不溶解分を除くことで赤褐色の溶液を得た。この溶液を一規定の塩酸水溶液で中和し、沈殿した固体をろ過、乾燥することで、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンの白色固体を23g(収率63.4%、純度98.7%)得た。
得られた化合物を1H−NMRにて分析した所、以下のような結果が得られ、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンが得られたことが確認された。
1HNMR(Acetone−d6)δ8.45ppm(2H,s)、8.20( 2H,dd),7.58(2H,t ),7.48(2H,t),7.24(2H,d)、6.83(4H,d)、6.73(4H,d)
<実施例2>
攪拌機、窒素吹込管、温度計およびディーンスターク管を付けたガラス製反応器に、アントラキノン50g(0.24モル)、フェノール235g(2.5モル)および触媒としてリンタングステン酸7.1gを加え、窒素ガスを反応液に流速100ml/分で吹き込み、反応により生成する水を系外に除去しながら内温120℃で27時間反応させた。反応終了後、反応混合物をHPLCにて分析した所、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンと副生物との面積百分率の比率は5.2:1であった。
その後、実施例1と同様の操作を行うことで10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンの白色固体を59g(収率65.0%、純度98.7%)得た。
攪拌機、窒素吹込管、温度計およびディーンスターク管を付けたガラス製反応器に、アントラキノン50g(0.24モル)、フェノール235g(2.5モル)および触媒としてリンタングステン酸7.1gを加え、窒素ガスを反応液に流速100ml/分で吹き込み、反応により生成する水を系外に除去しながら内温120℃で27時間反応させた。反応終了後、反応混合物をHPLCにて分析した所、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンと副生物との面積百分率の比率は5.2:1であった。
その後、実施例1と同様の操作を行うことで10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンの白色固体を59g(収率65.0%、純度98.7%)得た。
<実施例3>
攪拌機、温度計およびジムロート冷却管を付けたガラス製反応器に、フェノール94g(0.96モル)および触媒として98%硫酸4.8gを加え、反応によって生成する水を2.8×103Paの減圧下で系外に除去しながら内温80℃で1時間攪拌を行った。攪拌後アントラキノン20gを加え、更に1.3×104Paの減圧下、内温120℃で反応によって生成する水を系外に除去しながら30時間反応させた。反応終了後、反応混合物をHPLCにて分析した所、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンと副生物との面積百分率の比率は2.6:1であった。
その後、実施例1と同様の操作を行うことで10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンの白色固体を25g(収率69.3%、純度96.3%)得た。
攪拌機、温度計およびジムロート冷却管を付けたガラス製反応器に、フェノール94g(0.96モル)および触媒として98%硫酸4.8gを加え、反応によって生成する水を2.8×103Paの減圧下で系外に除去しながら内温80℃で1時間攪拌を行った。攪拌後アントラキノン20gを加え、更に1.3×104Paの減圧下、内温120℃で反応によって生成する水を系外に除去しながら30時間反応させた。反応終了後、反応混合物をHPLCにて分析した所、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンと副生物との面積百分率の比率は2.6:1であった。
その後、実施例1と同様の操作を行うことで10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンの白色固体を25g(収率69.3%、純度96.3%)得た。
<実施例4>
攪拌機、窒素吹込管、温度計およびディーンスターク管を付けたガラス製反応器に、アントラキノン1g(0.10モル)、フェノール90g(0.96モル)、触媒としてパラトルエンスルホン酸・一水和物9.3g加え、反応によって生成する水を1.3×104Paの減圧下で系外に除去しながら内温120℃で35時間反応させた。反応終了後、反応混合物をHPLCにて分析した所、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンと副生物との面積百分率の比率は10.7:1であった。その後、実施例1と同様の操作を行うことで10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンの白色固体を18g(収率49.7%、純度98.0%)得た。
攪拌機、窒素吹込管、温度計およびディーンスターク管を付けたガラス製反応器に、アントラキノン1g(0.10モル)、フェノール90g(0.96モル)、触媒としてパラトルエンスルホン酸・一水和物9.3g加え、反応によって生成する水を1.3×104Paの減圧下で系外に除去しながら内温120℃で35時間反応させた。反応終了後、反応混合物をHPLCにて分析した所、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンと副生物との面積百分率の比率は10.7:1であった。その後、実施例1と同様の操作を行うことで10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンの白色固体を18g(収率49.7%、純度98.0%)得た。
<比較例1>
実施例1に記載される方法と同様に、攪拌機、温度計およびジムロート冷却管を付けたガラス製反応器に、アントラキノン20g(0.10モル)、フェノール90g(0.96モル)および触媒としてリンタングステン酸2.8gを加え、大気圧下、反応系から水を除去することなく、内温120℃で34時間反応させた。反応終了後、反応混合物をHPLCにて分析した所、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンと副生物との面積百分率の比率は40:1であった。その後、実施例1と同様の操作を行うことで10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンの白色固体を11g(収率30.2%、純度98.2%)得た。
実施例1に記載される方法と同様に、攪拌機、温度計およびジムロート冷却管を付けたガラス製反応器に、アントラキノン20g(0.10モル)、フェノール90g(0.96モル)および触媒としてリンタングステン酸2.8gを加え、大気圧下、反応系から水を除去することなく、内温120℃で34時間反応させた。反応終了後、反応混合物をHPLCにて分析した所、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンと副生物との面積百分率の比率は40:1であった。その後、実施例1と同様の操作を行うことで10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンの白色固体を11g(収率30.2%、純度98.2%)得た。
<比較例2>
実施例1に記載される方法と同様に、攪拌機、温度計およびジムロート冷却管を付けたガラス製反応器に、アントラキノン20g(0.10モル)、フェノール90g(0.96モル)および触媒としてリンタングステン酸2.8g、1−ドデシルメルカプタンを1.9g(1.0×10−2モル)加え、反応によって生成する水を1.3×104Paの減圧下で系外に除去しながら内温120℃で26時間反応させた。反応終了後、反応混合物をHPLCにて分析した所、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンと副生物との面積百分率の比率は2.0:1であった。その後、実施例1と同様の操作を行うことで10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンの白色固体を13g(収率35.9%、純度95.8%)得た。
実施例1に記載される方法と同様に、攪拌機、温度計およびジムロート冷却管を付けたガラス製反応器に、アントラキノン20g(0.10モル)、フェノール90g(0.96モル)および触媒としてリンタングステン酸2.8g、1−ドデシルメルカプタンを1.9g(1.0×10−2モル)加え、反応によって生成する水を1.3×104Paの減圧下で系外に除去しながら内温120℃で26時間反応させた。反応終了後、反応混合物をHPLCにて分析した所、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンと副生物との面積百分率の比率は2.0:1であった。その後、実施例1と同様の操作を行うことで10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンの白色固体を13g(収率35.9%、純度95.8%)得た。
<比較例3>
実施例1に記載される方法と同様に、攪拌機、温度計、ガラス管およびジムロート冷却管を付けたガラス製反応器に、アントラキノン20g(0.10モル)、フェノール90g(0.96モル)を加え、触媒として塩化水素ガスを395mL/分の流速でバブリング状態とし、反応により生成する水を系外に除去可能な状態としながら内温120℃で5時間反応させた。反応終了後、反応混合物をHPLCにて分析した所、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンが殆ど検出されなかった。そこで、反応温度を65℃に変更し、更に9.5時間反応させ、その後反応混合物をHPLCにて分析したが同様に10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンが殆ど検出されなかった。
実施例1に記載される方法と同様に、攪拌機、温度計、ガラス管およびジムロート冷却管を付けたガラス製反応器に、アントラキノン20g(0.10モル)、フェノール90g(0.96モル)を加え、触媒として塩化水素ガスを395mL/分の流速でバブリング状態とし、反応により生成する水を系外に除去可能な状態としながら内温120℃で5時間反応させた。反応終了後、反応混合物をHPLCにて分析した所、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンが殆ど検出されなかった。そこで、反応温度を65℃に変更し、更に9.5時間反応させ、その後反応混合物をHPLCにて分析したが同様に10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンが殆ど検出されなかった。
<比較例4>
実施例1に記載される方法と同様に、攪拌機、温度計およびジムロート冷却管を付けたガラス製反応器に、アントラキノン20g(0.10モル)、フェノール90g(0.96モル)および触媒として85重量パーセントのリン酸水溶液を5.6gを加え、反応によって生成する水及びリン酸水溶液の水を除去することを目的として1.3×104Paの減圧とし、反応により生成する水及びリン酸水溶液の水分を系外に除去可能な状態としながら内温120℃で16時間反応させた。反応終了後、反応混合物をHPLCにて分析した所、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンが殆ど検出されなかった。
実施例1に記載される方法と同様に、攪拌機、温度計およびジムロート冷却管を付けたガラス製反応器に、アントラキノン20g(0.10モル)、フェノール90g(0.96モル)および触媒として85重量パーセントのリン酸水溶液を5.6gを加え、反応によって生成する水及びリン酸水溶液の水を除去することを目的として1.3×104Paの減圧とし、反応により生成する水及びリン酸水溶液の水分を系外に除去可能な状態としながら内温120℃で16時間反応させた。反応終了後、反応混合物をHPLCにて分析した所、10,10−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−9−アントロンが殆ど検出されなかった。
Claims (4)
- 減圧下、反応系から水を除去することを特徴とする請求項1記載のアントロン誘導体の製造方法。
- 反応器に気体を通気させることにより反応系から水を除去することを特徴とする請求項1記載のアントロン誘導体の製造方法。
- フェノール類がフェノール、クレゾールであることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項記載のアントロン誘導体の製造方法。
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JP2013079042A JP2014201551A (ja) | 2013-04-05 | 2013-04-05 | アントロン誘導体の製造方法 |
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WO2020079225A1 (en) | 2018-10-19 | 2020-04-23 | Reuter Chemische Apparatebau E.K. | Polycyclic compounds |
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- 2013-04-05 JP JP2013079042A patent/JP2014201551A/ja active Pending
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