JP7311973B2 - 蓄電デバイス - Google Patents
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正極活物質を含む正極と、
負極活物質として、芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体を含む負極と、
前記正極と前記負極との間に介在し、キャリアイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
前記イオン伝導媒体に添加されたハロゲン化カーボネートと、
を備えたものである。
以下には、層状構造体を噴霧乾燥法及び溶液混合法により合成し、負極を作製して評価した例を参考例として説明する。
(負極活物質:4,4’-ビフェニルジカルボン酸ジリチウムの層状構造体の合成)
噴霧乾燥法により層状構造体を作製した。4,4’-ビフェニルジカルボン酸ジリチウムの合成には、出発原料として4,4’-ビフェニルジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)を用いた。0.44mol/Lとなるように水に水酸化リチウムを加え撹拌し、水溶液を調製した。そして、4,4’-ビフェニルジカルボン酸のモル数A(mol)に対する水酸化リチウムのモル数B(mol)であるモル比B/Aが2.2となるように、すなわち、4,4’-ビフェニルジカルボン酸が0.20mol/Lとなるように水溶液を調製した。調製した水溶液を用いてスプレードライヤー(Mini Spray Dryer B-290、日本ビュッヒ製)を用いて噴霧乾燥させ、4,4’-ビフェニルジカルボン酸ジリチウムを析出させた。用いたスプレードライヤーのノズル直径は1.4mm、溶液の噴霧量は0.4L/時間、乾燥温度は150℃で行い、4,4’-ビフェニルジカルボン酸リチウムを合成した。
上記手法で作製した4,4’-ビフェニルジカルボン酸リチウムを79質量%、粒子状炭素導電材としてカーボンブラック(東海カーボン、TB5500)を14質量%、水溶性ポリマーであるポリビニルアルコール(ゴウセネックス,T-330,日本合成化学)を2.8質量%、スチレンブタジエン共重合体(日本ゼオン、BM-400B)を4.2質量%を混合し、分散剤として水を適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚の銅箔集電体に単位面積当たりの4,4’-ビフェニルジカルボン酸ジリチウム活物質が3mg/cm2となるように均一に塗布し、120℃で真空加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2cm2の面積に打ち抜いて円盤状の電極を準備した。
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で30:40:30の割合で混合した非水溶媒に、支持電解質の六フッ化リン酸リチウムを1.0mol/Lになるように添加して非水電解液を作製した。上記の手法にて作製した4,4’-ビフェニルジカルボン酸ジリチウム電極を作用極とし、リチウム金属箔(厚さ300μm)を対極として、両電極の間に上記非水電解液を含浸させたセパレータ(東レ東燃製)を挟んで二極式評価セルを作製した。
スプレードライヤーにて4,4’-ビフェニルジカルボン酸ジリチウムを合成した後に、120℃で真空乾燥を行った以外は、参考例1と同じものを参考例2とした。4,4’-ビフェニルジカルボン酸に対する水酸化リチウムのモル比を2.5として水溶液を調製し,スプレードライヤーにて合成した以外は、参考例1と同じものを参考例3とした。また、スプレードライヤーにて4,4’-ビフェニルジカルボン酸リチウムを合成した後に、120℃で真空乾燥を行った以外は参考例3と同じものを参考例4とした。
溶液混合法により層状構造体を作製した。出発原料として4,4’-ビフェニルジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)を用いて、水酸化リチウム1水和物(0.556g)にメタノール(100mL)を加え撹拌した後に4,4’-ビフェニルジカルボン酸1.0gを加え、1時間撹拌した。その後、撹拌後溶媒を除去し、真空下150℃で16時間乾燥することにより、白色の粉末試料の4,4’-ビフェニルジカルボン酸リチウムを得た。これを用いた以外は、参考例1と同様の処理を行ったものを参考例5とした。
参考例1~5の電極活物質及び電極のX線回折測定を行った。測定は、放射線としてCuKα線(波長1.54051Å)を使用し、X線回折装置(リガク製UltimaIV)を用いて行った。また、測定は、X線の単色化にはグラファイトの単結晶モノクロメーターを用い、印加電圧を40kV、電流30mAに設定し、5°/分の走査速度で、電極活物質については2θ=5°~60°の角度範囲で行い、電極については2θ=5°~30°の角度範囲で行った。
上記作製した二極式評価セルを20℃の温度環境下、0.1mAで0.5Vまで還元した容量を放電容量とした。また、その後0.1mAで1.5Vまで酸化した容量を充電容量とした。また、得られた充放電カーブを用い、電位差に対して充放電カーブの微分値を算出し微分曲線を得た。また、この微分曲線にある2つの異なる内部抵抗性微分カーブのピーク差から充放電分極を算出し、印加電流を考慮してIV抵抗を算出した。なお、IV抵抗は、2サイクル目の充放電カーブを用いた。
表1に参考例1~5の製造方法、電極のピーク強度比及びIV抵抗値をまとめて示した。また、図5は、参考例1~5の電極のXRD測定結果である。図5に示すように、噴霧乾燥法により作製した電極活物質を含む参考例1~4の電極においては、活物質の120℃真空乾燥の有無にかかわらず、従来の溶液混合法と同じ2θ位置にピークが出現した。ピーク強度においては噴霧乾燥法により作製した電極において、n00面に相当するピーク強度が大きくなる傾向を示した。これは電極内部に存在する活物質の小さな剥片が特異的な配向をしていることを示す。特に、参考例1~4の電極では、X線回折測定において(300)のピーク強度が(111)や(011)のピーク強度の2倍以上を示し、また、(100)のピーク強度が(111)や(011)のピーク強度の5倍以上を示すことがわかった。具体的には、ピーク強度比P(300)/P(111)が2.0以上、P(300)/P(011)が2.0以上、P(100)/P(111)が6.0以上、P(100)/P(011)が5.0以上、及びP(100)/P(300)が1.5以上を示した。このピーク強度比は、いずれか1以上を満たせば、剥片状の配向した活物質であると推定できるものと推察された。また、表1に示すように、スプレードライ法で合成した層状構造体により作製した電極では、溶液混合法に比してIV抵抗がより低減することがわかった。
以下には、蓄電デバイスを具体的に作製した例について説明する。実験例2~4,6,7が実施例に相当し、実験例1,5,8~11が比較例に相当する。
(負極活物質:4,4’-ビフェニルジカルボン酸ジリチウムの層状構造体の合成)
実験例1では、上記参考例1と同様に負極活物質を合成した。得られた負極活物質について、走査型電子顕微鏡(日本FEI社製Quanta200FEG)を用い、1000~50000倍の条件で観察したところ、粒径が10μm以下の中空粒子であった。また、内部が露出している粒子を拡大視すると、この負極活物質は、図2に示すような、数nmの厚さの層状構造体の剥片の集合を内包して形成される中空球状構造を有していた。また、この負極活物質は、層状構造体の剥片が中心から不規則に外周側へ向かう構造(剥片が外周側から不規則に中心へ向かう構造と同義)を有していた。
上記手法で作製した4,4’-ビフェニルジカルボン酸リチウムを79質量%、粒子状炭素導電材としてカーボンブラック(東海カーボン、TB5500)を14質量%、水溶性ポリマーであるカルボキシメチルセルロース(ダイセル、CMC-1120)を2.8質量%、スチレンブタジエン共重合体(日本ゼオン、BM-451B)を4.2質量%、の割合で混合し、分散媒として水を適量添加、分散してスラリーとした。このスラリーを10μm厚の銅箔集電体に単位面積当たりの負極活物質が3mg/cm2となるように均一に塗布し、120℃で真空加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、10cm2の長方形の電極を準備した。実験例1の負極は、水溶性ポリマーの種類が上述した参考例とは異なるが、層状構造体は上述した参考例と同じである。このため、実験例1の負極のX線回折測定では、参考例1~4と同様の結果が得られた。
正極活物質として活性炭(クラレ、YP-50F)を83.3質量%、粒子状炭素導電材としてカーボンブラック(東海カーボン、TB5500)を10.5質量%、水溶性ポリマーであるポリビニルアルコール(日本合成化学、T-330)を3.9質量%、スチレンブタジエン共重合体(JSR、TRD2001)を2.3質量%、の割合で混合し、分散媒として水を適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリーを10μm厚のアルミニウム箔集電体に、単位体積あたりの正極活物質が4.5mg/cm2となるように均一に塗布し、120℃で真空乾燥して塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、10cm2の長方形の電極を準備した。
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で30:40:30の割合で混合した非水溶媒に、支持電解質の六フッ化リン酸リチウムを1.1mol/Lになるように添加してイオン伝導媒体を調製した。
上述した負極を作用極とし、リチウム金属箔を対極として、両電極の間にイオン伝導媒体を含浸させたセパレータを挟んで二極式評価セルを作製した。この二極式評価セルを用いて、20℃の温度環境下、電圧範囲0.5~1.5V(vs.Li/Li+)、電流値0.6mA(C/10相当)で充放電を行うことにより、負極の容量確認を行い、負極にSOC75%に相当するリチウムを吸蔵させた。
上述した正極と、調整した負極との間に、イオン伝導媒体を含侵させたセパレータを挟んで非対称型のキャパシタを作製した。このキャパシタを用いて、20℃の温度環境下、電圧範囲1.5~3.1V(vs.Li/Li+)、電流値10mA(10C相当)の充放電を、1000サイクル繰り返し、初回の放電容量Q1と1000サイクル後の放電容量Q1000を算出した。そして、Q1000×100/Q1の式で表される容量維持率を算出した。
実験例2は、イオン伝導媒体と4-フルオロエチレンカーボネート(以下4-FECとも称する)との合計のうちの4-FECが1質量%となるように、イオン伝導媒体に4-FECを添加した以外は、実験例1と同様とした。実験例3は、4-FECの添加量を3質量%とした以外は、実験例2と同様とした。実験例4は、4-FECの添加量を10質量%とした以外は、実験例2と同様とした。
実験例5は、噴霧乾燥法ではなく溶液混合法で負極活物質を合成した以外は、実験例1と同様とした。実験例5では、上記参考例5と同様に負極活物質を合成した。実験例1と同様に負極活物質をSEM観察したところ、図3に示すような、1μm程度の粒子が凝集した構造を有するものであった。また、負極のX線回折測定を行ったところ、参考例5と同様の結果が得られた。
実験例6は、イオン伝導媒体に、イオン伝導媒体と4-FECとの合計のうち4-FECが0.5質量%となるように4-FECを添加した以外は、実験例5と同様とした。実験例7は、4-FECの添加量を1質量%とした以外は、実験例5と同様とした。
実験例8は、スチレンブタジエン共重合体をJSR製のTRD2001に変更した以外は、実験例1と同様とした。
実験例9は、イオン伝導媒体に、イオン伝導媒体とビニレンカーボネート(以下VCとも称する)との合計に対してVCが0.1質量%となるようにVCを添加した以外は、実験例8と同様とした。実験例10は、VCの添加量を0.5質量%とした以外は、実験例9と同様とした。実験例11は、VCの添加量を1質量%とした以外は、実験例9と同様とした。
表2に、実験例1~11についての、添加剤の種類及び添加量、負極活物質の合成法、1000サイクル後容量維持率をまとめて示す。表2に示すように、添加剤としてビニレンカーボネートを用いた実験例8~11では、添加剤を添加しても容量維持率がほとんど増加しないか減少したのに対して、添加剤としてハロゲン化カーボネートを用いた実験例1~7では、添加剤を添加することで容量維持率が増加した。特に、噴霧乾燥法で負極を合成した実験例1~4では、添加剤の添加による容量維持率の増加が顕著であった。ここで、図6を用いて添加剤の添加量について検討した。図6は実験例1~4での、添加剤の添加量と1000サイクル後容量維持率との関係を示すグラフである。図6より、添加剤を添加すれば容量維持率が向上するが、添加量が0.1質量%以上10質量%以下では容量維持率がより向上し、添加量が0.2質量%以上3質量%以下では容量維持率がさらに向上し、添加量が0.5質量%以上2質量%以下では容量維持率が一層向上することがわかった。
Claims (4)
- 正極活物質を含む正極と、
負極活物質として、芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体を含む負極と、
前記正極と前記負極との間に介在し、キャリアイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
前記イオン伝導媒体に添加されたハロゲン化カーボネートと、を備え、
前記負極は、下記(1)~(5)のうち1以上を満たし、
前記ハロゲン化カーボネートの添加量は、前記イオン伝導媒体と前記ハロゲン化カーボネートとの合計のうちの0.5質量%以上2.0質量%以下である、蓄電デバイス。
(1)X線回折測定での(111)のピーク強度に対する(300)のピーク強度比P(300)/P(111)が2.0以上を示す。
(2)X線回折測定での(011)のピーク強度に対する(300)のピーク強度比P(300)/P(011)が2.0以上を示す。
(3)X線回折測定での(111)のピーク強度に対する(100)のピーク強度比P(100)/P(111)が6.0以上を示す。
(4)X線回折測定での(011)のピーク強度に対する(100)のピーク強度比P(100)/P(011)が5.0以上を示す。
(5)X線回折測定での(300)のピーク強度に対する(100)のピーク強度比P(100)/P(300)が1.5以上を示す。 - 前記ハロゲン化カーボネートは、水素原子を1つ以上有するフッ素化環状カーボネートである、請求項1に記載の蓄電デバイス。
- 前記正極活物質は、比表面積が1000m2/g以上の活性炭である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
- 前記ハロゲン化カーボネートは、4-フルオロエチレンカーボネート及び4,5-ジフルオロエチレンカーボネートのうち1以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
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