JP6954249B2 - 電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法 - Google Patents

電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法 Download PDF

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Description

本明細書では、電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法を開示する。
従来、リチウムイオン二次電池などの蓄電デバイスとしては、芳香族環構造を有するジカルボン酸アニオンである芳香族化合物を含む有機骨格層と、カルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を有する層状構造体を負極活物質に用いたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。負極活物質としての層状構造体は、導電性を有さないが、非水系電解液に溶けにくく、結晶構造を保つことにより充放電サイクル特性の安定性をより高めることができる。
特開2012−221754号公報
しかしながら、上述の特許文献1の蓄電デバイスでは、サイクル特性の安定性をより高めることができるものの、充放電における電池容量、放電電位及び抵抗などの電池特性を制御する自由度については、検討されていなかった。このように、充放電における電池容量、放電電位及び抵抗などを制御することができる新規な電極活物質及びその製造方法が求められていた。
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、新規の構造を有する電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、芳香族ジカルボン酸金属塩を複数種含む調製溶液を用いて構造体を作製するものとすると、新規な電極活物質を作製することができることを見いだし、本開示を完成するに至った。
即ち、本明細書で開示する電極活物質は、
蓄電デバイス用の電極活物質であって、
2種以上の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える混合塩構造体であり、アルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで、電気エネルギーを貯蔵出力するものである。
本明細書で開示する蓄電デバイスは、
上述した電極活物質を含む負極と、
正極活物質を含む正極と、
正極と負極との間に介在し、キャリアイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
を備えたものである。
本明細書で開示する電極活物質の製造方法は、
蓄電デバイス用の電極活物質の製造方法であって、
2種以上の芳香族ジカルボン酸アニオンと、アルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液を用い、前記2種以上の芳香族骨格を有するジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える混合塩構造体を析出させる析出工程、
を含むものである。
本明細書では、新規の構造を有する電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法を提供することができる。この電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法では、複数種の芳香族ジカルボン酸アニオンを適宜配合した調製溶液を用いることにより、新規な構造の混合塩構造体を調整することができ、これにより、例えば、電池容量、放電電位及び抵抗などの電池特性を制御することができるものと推察される。
各芳香族ジカルボン酸ジリチウムの層状構造体の化合物構造の説明図。 蓄電デバイス20の一例を示す模式図。 各芳香族ジカルボン酸ジリチウム構造体の三成分組成図。 実験例1,6,7のXRDパターン。 実験例1、5〜8の充放電カーブ。 実験例1の充放電サイクルと容量維持率との関係図。 実験例2,5,6のXRDパターン。 実験例3,5,6のXRDパターン。 実験例4,5,7のXRDパターン。 実験例2〜4のSEM像。 実験例2の充放電カーブ。 実験例3の充放電カーブ。 実験例4の充放電カーブ。
(電極活物質)
本明細書で開示する電極活物質は、蓄電デバイス用の電極活物質である。電極活物質は、キャリアであるアルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで電気エネルギーを貯蔵出力する。キャリアであるアルカリ金属イオンとしては、例えば、LiイオンやNaイオン、Kイオンなどのうち1以上が挙げられる。この電極活物質は、2種以上の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える混合塩構造体である。また、電極活物質は、その形状が直径5μm以下の球状であるものとしてもよい。この電極活物質は、後述する噴霧乾燥法により作製することができる。なお、「球状」とは、表面に凹凸がある球形、断面が楕円状の球形など、真球のほかおおよそ球体であるものを含むものとする。この噴霧乾燥法による混合塩構造体の球状粒子は、直径が0.1μm以上5μm以下の範囲で得ることができる。
この電極活物質は、1つの芳香環構造を含む有機骨格層を有するものとしてもよいし、2以上の芳香環構造が接続した有機骨格層を有するものとしてもよいし、2以上の芳香環構造が縮合した有機骨格層を有するものとしてもよい。この電極活物質は、芳香族化合物のπ電子相互作用により層状に形成されることが、構造的に安定であり、好ましい。この有機骨格層は、2以上の芳香環構造を有する場合、例えば、ビフェニルなど2以上の芳香環が結合した芳香族多環化合物としてもよいし、ナフタレンやアントラセン、ピレンなど2以上の芳香環が縮合した縮合多環化合物としてもよい。この芳香環は、五員環や六員環、八員環としてもよく、六員環が好ましい。また、芳香環は、2以上5以下とするのが好ましい。芳香環が2以上では層状構造を形成しやすく、芳香環が5以下ではエネルギー密度をより高めることができる。この有機骨格層は、芳香環に1又は2以上のカルボキシアニオンが結合した構造を有するものとしてもよい。有機骨格層は、ジカルボン酸アニオンのうちカルボン酸アニオンの一方と他方とが芳香環構造の対角位置に結合されている芳香族化合物を含むものとするのが好ましい。カルボン酸が結合されている対角位置とは、一方のカルボン酸の結合位置から他方のカルボン酸の結合位置までが最も遠い位置としてもよく、例えば芳香環構造がナフタレンであれば2,6位が挙げられる。この有機骨格層は、式(1)〜(3)のうち1以上で表される構造のうち少なくとも2種以上を有するものとしてもよい。但し、この式(1)〜(3)において、aは2以上5以下の整数であり、bは0以上3以下の整数であり、これらの芳香族化合物は、この構造中に置換基、ヘテロ原子を有してもよい。具体的には、芳香族化合物の水素の代わりに、ハロゲン、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホニル基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、アシル基、アミド基、水酸基を置換基として持っていてもよいし、芳香族化合物の炭素の代わりに、窒素、硫黄、酸素が導入された構造であってもよい。より具体的には、有機骨格層は、式(4)〜(6)のうち1以上で表される構造のうち少なくとも2種以上を有することが好ましい。即ち、式(4)のテレフタル酸アニオンと式(5)の4,4’−ビフェニルジカルボン酸アニオンとの組み合わせや、式(4)のテレフタル酸アニオンと式(6)の2,6−ナフタレンジカルボン酸アニオンとの組み合わせ、式(5)と式(6)との組み合わせなどが挙げられる。
Figure 0006954249
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アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属は、例えば、Li,Na及びKなどのうちいずれか1以上とすることができるが、Liが好ましい。なお、蓄電デバイスのキャリアであり、充放電により電極活物質に吸蔵・放出される金属イオンは、アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属元素と異なる種類のものとしてもよいし、同じ種類のものとしてもよく、例えば、Li,Na及びKなどのうちいずれか1以上とすることができる。また、アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属元素は、混合塩構造体の骨格を形成することから、充放電に伴うイオン移動には関与しないもの、すなわち、充放電時に吸蔵放出されないものと推察される。エネルギー貯蔵メカニズムにおいては、混合塩構造体の有機骨格層はレドックス(e-)サイトとして機能する一方、アルカリ金属元素層はキャリアである金属イオンの吸蔵サイト(アルカリ金属イオン吸蔵サイト)として機能するものと考えられる。
この混合塩構造体は、式(7)〜(9)に示す芳香族ジカルボン酸アルカリ金属塩としてもよい。より具体的には、式(10)〜(12)に示す芳香族ジカルボン酸アルカリ金属塩としてもよい。なお、式(7)〜(12)において、Aはアルカリ金属である。また、混合塩構造体は、異なるジカルボン酸アニオンの酸素4つとアルカリ金属元素とが4配位を形成する次式(13)の構造を備えているものとすることが、構造的に安定であり、好ましい。但し、この式(7)において、Rは2種類以上の芳香環構造を含むものとする。また、Aはアルカリ金属である。このように、アルカリ金属元素によって有機骨格層が結合した構造を有することが好ましい。
Figure 0006954249
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混合塩構造体は、有機骨格層が式(4)及び式(6)で表される構造を有し、X線回折測定において2θが9.30°、19.56°、23.70°、28.16°、29.06°、30.48°、及び48.60°付近に回折ピークを示さず且つ2θが8.32°、10.48°、20.29°、23.12°、28.27°及び29.66°付近に回折ピークを示すものとしてもよい。また、混合塩構造体は、有機骨格層が式(4)及び式(5)で表される構造を有し、X線回折測定において2θが9.30°、17.04°、21.24°、26.80°、30.48°、31.58°及び48.62°付近には回折ピークを示さず且つ10.58°及び29.72°付近に回折ピークを示すものとしてもよい。なお、この2θの値は、±0.1°のずれが許容される。この混合塩構造体は、複数種の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む調製溶液から作製されており、単独の第1の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む第1の層状構造体と、単独の第2の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む第2の層状構造体との物理混合物とは異なる新規な結晶構造を有する。このような結晶構造の変化により、例えば、電池容量、放電電位及び抵抗などの電池特性を制御することができる。
ここで、単独の芳香族ジカルボン酸ジリチウムアルカリ金属塩からなる層状構造体の一例について説明する。図1は、各芳香族ジカルボン酸ジリチウムアルカリ金属塩の化合物構造の説明図であり、図1Aがテレフタル酸ジリチウム、図1Bが4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム、図1Cが2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムである。図1には、各層状構造体の格子定数、a−c面およびb−c面からの結晶構造を示した。テレフタル酸ジリチウム、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム及び2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムにおいて、それぞれの結晶の格子定数は、a−c面から確認できる芳香族骨格の長さに相当するa軸が変化するのに対して、b−c面の格子定数はほとんど同じである。よって、2種類以上の芳香族ジカルボン酸とアルカリ金属とを溶解した調製溶液から層状構造体の合成を行うことで、a−b面から観察される各化合物の有機-無機の積層構造を形成し、b−c面において各有機骨格のπスタッキング相互採用によりパッキングされた有機層を形成しながら、カルボン酸ジリチウムのLiO4四面体から構成される無機層部分を共有した結晶を形成することができるものと推察される。
(電極活物質の製造方法)
本開示の電極活物質の製造方法は、上述した蓄電デバイス用の電極活物質の製造方法である。この製造方法は、溶液調製工程と、析出工程とを含むものとしてもよい。なお、調製溶液を別途調製するものとして、溶液調製工程を省略してもよい。
溶液調製工程では、2種以上の芳香族ジカルボン酸アニオンと、アルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液を調製する。この調製溶液の溶媒は、特に限定されないが、水系溶媒としてもよいし、有機系溶媒としてもよいが、水であることが好ましい。この工程では、芳香族ジカルボン酸アニオンの全体の濃度が0.1mol/L以上、より好ましくは0.2mol/L以上である調製溶液を調製することが好ましい。また、この工程では、芳香族ジカルボン酸アニオンの濃度が5mol/L以下である調製溶液を調製することが好ましい。このような濃度範囲では、次工程の析出工程をより行いやすい。また、この工程では、上述した式(1)〜(3)のうち少なくとも2種以上の芳香族ジカルボン酸アニオンを用いるものとしてもよい。より具体的には、上述した式(4)〜(6)のうち少なくとも2種以上の芳香族ジカルボン酸アニオンを用いることが好ましい。更に、この工程では、リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上のアルカリ金属カチオンを含む調製溶液を調製することが好ましい。この工程では、例えば、芳香族ジカルボン酸アニオンのモル数A(mol)に対するアルカリ金属カチオンのモル数B(mol)であるモル比B/Aが2.0を超える調製溶液を得ることが好ましく、B/Aが2.2以上である調製溶液を得ることがより好ましい。このように、アルカリ金属カチオンを過剰とすることにより、蓄電デバイス用電極の抵抗をより低減することができ、好ましい。このモル比B/Aは、2.5以上であるものとしてもよい。また、このモル比B/Aは、3.0以下であるものとしてもよい。
析出工程では、上記溶液調製工程で調製した調製溶液を用い、2種以上の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と、有機骨格層のカルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える混合塩構造体を析出させる。この工程では、調製溶液を撹拌したのち溶媒を取り除く溶液混合法により混合塩構造体を析出させてもよい。また、調製溶液を噴霧乾燥装置を用いて噴霧乾燥する噴霧乾燥法により、混合塩構造体を析出させてもよい。この方法では、より短時間に混合塩構造体を析出させることができ、好ましい。噴霧乾燥は、スプレードライヤーにより行うものとしてもよい。噴霧乾燥条件は、例えば、装置の規模や作製する電極活物質の量によって適宜調整すればよい。乾燥温度は、例えば、溶媒の沸点以上とすればよく、100℃以上300℃以下の範囲とすることが好ましい。100℃以上では、溶媒を十分に除去することができ、300℃以下では、消費エネルギーをより低減でき好ましい。乾燥温度は、150℃以上がより好ましく、180℃以上がより好ましく、200℃以上としてもよい。また、供給液量は、作製する規模にもよるが、例えば、0.1L/h以上2L/h以下の範囲としてもよい。また、調製溶液を噴霧するノズルサイズは、作製する規模にもよるが、例えば、直径0.5mm以上5mm以下の範囲としてもよい。このように噴霧乾燥して混合塩構造体を作製すると、球状構造を有する電極活物質が得られる。
(蓄電デバイス)
本明細書で開示する蓄電デバイスは、上述した電極活物質を含む負極と、正極活物質を含む正極と、正極と負極との間に介在しキャリアイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えている。この蓄電デバイスは、例えば、電気二重層キャパシタやハイブリッドキャパシタ、疑似電気二重層キャパシタ、リチウムイオン二次電池などとしてもよい。正極は、キャリアイオンを吸蔵放出する正極活物質を含むものとしてもよい。負極は、キャリアであるアルカリ金属イオンを吸蔵放出する上述した電極活物質を含むものとしてもよい。また、イオン伝導媒体は、キャリアイオン(カチオン及びアニオンのいずれか)を伝導するものである。ここでは、負極のキャリアをリチウムイオンとする蓄電デバイスを主として説明する。
負極は、上述した電極活物質を含むものである。上述した電極活物質は、その電位がリチウム金属基準で1.0〜1.5V程度であるため、負極活物質とすることが好ましい。負極は、上述した電極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の負極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。この負極において、上記電極活物質は、できるだけ多く含まれることが好ましく、例えば、負極合材中に60質量%以上95質量%以下の範囲で含まれるものとしてもよい。導電材は、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、鉄、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどを用いることができる。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
正極は、キャパシタやリチウムイオンキャパシタなどに用いられている公知の正極を用いてもよい。正極は、例えば、正極活物質として炭素材料を含むものとしてもよい。炭素材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類、カーボンナノチューブ類、ポリアセン類などが挙げられる。このうち、高比表面積を示す活性炭類が好ましい。炭素材料としての活性炭は、比表面積が1000m2/g以上であることが好ましく、1500m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m2/g以上では、放電容量をより高めることができる。この活性炭の比表面積は、作製の容易性から3000m2/g以下であることが好ましく、2000m2/g以下であることがより好ましい。なお、正極では、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を吸着、脱離して蓄電するものと考えられるが、さらに、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を挿入、脱離して蓄電するものとしてもよい。
あるいは、正極は、一般的なリチウムイオン二次電池に用いられる正極としてもよい。この場合、正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0≦x≦1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn24などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiaCobMnc2(a+b+c=1)やLi(1-x)NiaCobMnc4(a+b+c=2)などとするリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV23などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV25などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。また、正極活物質は、リン酸鉄リチウムなどとしてもよい。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiV23などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素を含んでもよい趣旨である。
正極は、例えば上述した正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極に用いる導電材、結着材、溶剤、集電体は、例えば、負極で例示したものなどを適宜用いることができる。
この蓄電デバイスにおいて、イオン伝導媒体は、例えば、支持塩と有機溶媒とを含む非水系電解液としてもよい。支持塩としては、例えば、キャリアをリチウムイオンとした場合、公知のリチウム塩を含むものとしてもよい。このリチウム塩としては、例えば、LiPF6,LiBF4、LiClO4,LiAsF6,Li(CF3SO22N,LiN(C25SO22などが挙げられ、このうちLiPF6やLiBF4などが好ましい。この支持塩は、非水電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。支持塩を溶解する濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、電解液をより安定させることができる。また、この非水電解液には、リン系、ハロゲン系などの難燃剤を添加してもよい。有機溶媒としては、例えば、非プロトン性の有機溶媒を用いることができる。このような有機溶媒としては、例えば環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状エステル、環状エーテル、鎖状エーテル等が挙げられる。環状カーボネートとしては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等がある。鎖状カーボネートとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等がある。環状エステルカーボネートとしては、例えばガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン等がある。環状エーテルとしては、例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等がある。鎖状エーテルとしては、例えばジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等がある。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。また、非水系電解液としては、そのほかにアセトニトリル、プロピルニトリルなどのニトリル系溶媒やイオン液体、ゲル電解質などを用いてもよい。
この蓄電デバイスは、正極と負極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、蓄電デバイスの使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複合して用いてもよい。
この蓄電デバイスの形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図2は、蓄電デバイス20の一例を示す模式図である。この蓄電デバイス20は、カップ形状の電池ケース21と、正極活物質を有しこの電池ケース21の下部に設けられた正極22と、負極活物質を有し正極22に対してセパレータ24を介して対向する位置に設けられた負極23と、絶縁材により形成されたガスケット25と、電池ケース21の開口部に配設されガスケット25を介して電池ケース21を密封する封口板26と、を備えている。この蓄電デバイス20は、正極22と負極23との間の空間にイオン伝導媒体27が満たされている。また、この負極23は、2種以上の芳香族ジカルボン酸アニオンを構造体として含む混合塩構造体を負極活物質として有する。
以上詳述した電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法では、新規な混合塩構造体を提供することができる。この電極活物質、蓄電デバイス及び電極活物質の製造方法では、複数種の芳香族ジカルボン酸アニオンを適宜配合した調製溶液を用いることにより、2種類以上の均一結晶物である新規な構造の混合塩構造体を調整することができる。これにより、本開示では、例えば、電池容量、放電電位及び抵抗などの電池特性を制御することができるものと推察される。
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、電極活物質及び蓄電デバイスを具体的に実施した例を実験例として説明する。なお、実験例1〜4が本開示の実施例に相当し、実験例5〜8が比較例に相当する。
[実験例1]
(溶液混合法によるナフタレンジカルボン酸ジリチウム及びビフェニルジカルボン酸ジリチウムの1:1混合塩構造体の合成)
出発原料として、2,6−ナフタレンジカルボン酸および4,4’−ビフェニルジカルボン酸、水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)を用いた。水酸化リチウム1水和物(4.62g)にメタノール200mLを加え撹拌した。水酸化リチウム1水和物が溶けた後に2.6−ナフタレンジカルボン酸(5.40g)および4,4’−ビフェニルジカルボン酸(6.06g)を加え10時間、撹拌した。撹拌後溶媒を除去し、真空下120℃で16時間乾燥することにより、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムと4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムとのモル比が1:1である混合塩構造体を溶液混合法によって合成し、これを実験例1とした。
(電極作製)
上記作製した混合塩構造体の粉末を78質量%、炭素導電材としてカーボンブラック(東海カーボン製、TB5500)を14質量%、カルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム製、CMC1120)を5質量%、スチレンブタジエン共重合体(日本ゼオン製、AX−A533)を3質量%混合し、分散剤として水を適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚さの銅箔集電体に単位面積当たりの混合塩構造体の活物質が3mg/cm2となるように均一に塗布し、120℃で真空加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2cm2の面積に打ち抜いて円盤状の電極を準備した。
(二極式評価セルの作製)
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)と、エチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で30:40:30の割合に混合した非水溶媒へ、支持電解質のLiPF6を1.1mol/Lになるように添加して非水電解液を作製した。上記作製した混合塩構造体電極を作用極とし、リチウム金属箔(厚さ300μm)を対極とし、両電極の間に上記非水電解液を含浸させたセパレータ(東レ東燃製)を挟んで二極式評価セルを作製した。20℃の温度環境下、0.1mAで0.5Vまで還元し、0.1mAで1.5Vまで酸化した。この操作を10サイクル繰り返した。更に、電流を0.2mAにて上限電圧1.5V、下限電圧0.5Vにて100サイクル、充放電を行った。
[実験例2]
(スプレードライ法によるナフタレンジカルボン酸ジリチウム及びテレフタル酸ジリチウムの1:1混合塩構造体の合成)
出発原料として、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびテレフタル酸、水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)を用いた。0.44mol/Lとなるように水に水酸化リチウムを加え撹拌し、水溶液を調製した。そして、2,6−ナフタレンジカルボン酸とテレフタル酸とを1:1のモル比で混ぜ、その混合物に対する水酸化リチウムのモル比が2.2となるように、すなわち、2,6−ナフタレンジカルボン酸とテレフタル酸との混合物が0.20mol/Lとなるように、水溶液を調整した。調製した水溶液を用いてスプレードライヤー(日本ビュッヒ製、Mini Spray Dryer B−290)を用いて噴霧乾燥させ、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウム+テレフタル酸ジリチウムの1:1混合塩構造体を析出させた。用いたスプレードライヤーのノズル直径は1.4mm、溶液の噴霧量は0.4L/h、乾燥温度は150℃で行い、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムとテレフタル酸ジリチウムの1:1混合塩構造体をスプレードライ法によって合成し、これを実験例2とした。
(電極作製)
実験例1と同様に、上記作製した混合塩構造体の粉末を78質量%、炭素導電材としてカーボンブラックを14質量%、カルボキシメチルセルロースを2.8質量%、スチレンブタジエン共重合体を4.2質量%混合し、分散剤として水を適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚さの銅箔集電体に単位面積当たりの混合塩構造体の活物質が3mg/cm2となるように均一に塗布し、120℃で真空加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2cm2の面積に打ち抜いて円盤状の電極を準備した。
[実験例3]
出発原料として、2,6−ナフタレンジカルボン酸およびテレフタル酸をモル比で3:1となるようにして用いた以外は、実験例2と同様の工程を経て得られた混合塩構造体を実験例3とした。
[実験例4]
出発原料として、4,4’−ビフェニルジカルボン酸およびテレフタル酸をモル比で1:1となるようにして用いた以外は、実験例2と同様の工程を経て得られた混合塩構造体を実験例4とした。
[実験例5〜7]
出発原料として、テレフタル酸のみを用いた以外は、実験例1と同様の工程を経て得られた混合塩構造体を実験例5とした。出発原料として、2,6−ナフタレンジカルボン酸のみを用いた以外は、実験例1と同様の工程を経て得られた混合塩構造体を実験例6とした。出発原料として、4,4’−ビフェニルジカルボン酸のみを用いた以外は、実験例1と同様の工程を経て得られた混合塩構造体を実験例7とした。
[実験例8]
実験例6および実験例7で合成した2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムと4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムとを電極作製時にモル比で1:1となるように混合して電極に用いたものを実験例8とした。実験例8は、実験例6,7を単純に物理混合した混合物である。
(X線回折測定)
実験例2〜4の混合塩構造体のX線回折測定を行った。測定は、放射線としてCuKα線(波長1.54051Å)を使用し、X線回折装置(リガク製UltimaIV)を用いて行った。また、測定は、X線の単色化にはグラファイトの単結晶モノクロメーターを用い、印加電圧を40kV、電流30mAに設定し、5°/分の走査速度、2θ=5°〜50°の角度範囲で行った。
(SEM観察)
作製した構造体を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。SEM観察は、走査型電子顕微鏡(日本FEI社製Quanta200FEG)を用い、1000〜50000倍の条件で行った。
(蓄電デバイス:二極式評価セルの作製)
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で30:40:30の割合で混合した非水溶媒に、支持電解質の六フッ化リン酸ジリチウムを1.0mol/Lになるように添加して非水電解液を作製した。上記作製した電極を作用極とし、リチウム金属箔(厚さ300μm)を対極として、両電極の間に上記非水電解液を含浸させたセパレータ(東レ東燃製)を挟んで二極式評価セルを作製した。
(充放電特性評価)
上記作製した二極式評価セルを20℃の温度環境下、0.1mAで0.5Vまで還元した容量を放電容量とした。また、その後0.1mAで1.5Vまで酸化した容量を充電容量とした。また、上記作製した実験例1の二極式評価セルを用い、20℃の温度環境下、上記条件で100サイクルの連続充放電試験を行い、容量維持率を検討した。この充放電操作の1回目の充電容量をQs、n回目の充電容量をQnとし、Qn/Qs×100をnサイクル後の容量維持率(%)とした。
図1に示すように、テレフタル酸ジリチウム、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウム、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムのそれぞれの結晶の格子定数は、a−c面から確認できる芳香族骨格の長さに相当するa軸が変化するのに対して、b−c面の格子定数はほとんど同じである。よって、2種類以上の各芳香族ジカルボン酸とリチウム源が溶解した溶液を用いて合成を行うことで、a−b面から観察される各化合物の有機−無機の積層構造を形成し、b−c面で各有機骨格のπスタッキング相互採用によりパッキングされた有機層を形成しながら、カルボン酸ジリチウムのLiO4四面体から構成される無機層部分を共有した結晶を形成することを目的とした。図3は各芳香族ジカルボン酸ジリチウム構造体の三成分組成図である。図3には、上記実験例1〜7を示した。三成分組成図に示されるような割合で原料をあらかじめ準備し、合成を行うことで混合結晶物を得ることができた。得られた材料の物性及び電気化学特性を検討した。
図4は、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムおよび4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムの1:1混合塩構造体(実験例1)とその単独塩構造体(実験例6、7)のXRDパターンである。単独塩の実験例6,7では、各有機骨格のπスタッキング相互採用によりパッキングされた有機層に相当する100面、200面が確認でき、層状構造体を形成していることが確認された。また、混合原料溶液を用いて合成を実験例1においても、各有機骨格のπスタッキング相互採用によりパッキングされた有機層に相当する100面、200面が確認でき、有機骨格層とアルカリ金属元素層とを含む混合塩構造体が形成されていることが確認された。
図5は、実験例1、5〜8の充放電カーブであり、図5Aが実験例1、5〜7、図5Bが実験例1、8である。実験例1の混合塩構造体は、テレフタル酸ジリチウム単独(実験例5)、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウム単独(実験例6)、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム単独(実験例7)とは異なる充放電カーブを示した。特に、実験例1は、テレフタル酸ジリチウム単独(実験例5)よりも低電位領域でかつ高容量な充放電を示した。また、実験例1は、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウム単独(実験例6)に比べても容量が変わらないまま、充放電電位が低くなった。そして、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム単独(実験例7)では、100〜200mAh/gの範囲において充放電分極は小さいものの、0〜100mAh/gの範囲において充放電分極が大きくなることが示された。一方、実験例1では、混合塩構造体とすることによって、充放電分極の著しい変化は抑えられ、全領域で比較的小さい充放電分極を示した。また、合成時に2つの化合物が混合状態で結晶化した実験例1では、2種類の層状構造体を単純に物理混合した実験例8とは異なる挙動を示した。即ち、実験例1は、実験例8とは異なる結晶構造を有しているものと推測された。図6は、実験例1の充放電サイクルと容量維持率との関係図である。図6に示すように、100サイクル後も80%以上の容量維持率示すため、実験例1の混合塩構造体の電極活物質は、良好な充放電サイクル特性を示すことが分かった。
図7は、スプレードライにより作製した2,6−ナフタレンジカルボン酸及びテレフタル酸ジリチウムの1:1混合塩構造体(実験例2)と、単独系(実験例5,6)のXRDパターンである。図7Bは、図7Aの部分拡大図である。実験例2においても、実験例1と同様に、実験例5,6の各有機骨格のπスタッキング相互採用によりパッキングされた有機層に相当する100面、200面が確認できた。更に、高角度領域においては、2θ=8.32°、10.48°、20.29°、23.12°、28.27°及び29.66°付近に単独材料とは異なる新規なピーク(▼)が見られ、2θ=9.30°、19.56°、23.70°、28.16°、29.06°、30.48°、及び48.60°付近には従来ピークの消失(▽)が見られた。即ち、新規な構造が確認された。
図8は、スプレードライにより作製した2,6−ナフタレンジカルボン酸及びテレフタル酸ジリチウムの1:3混合塩構造体(実験例3)と、単独系(実験例5,6)のXRDパターンである。図8Bは、図8Aの部分拡大図である。実験例3では、実験例2と同様に、各有機骨格のπスタッキング相互採用によりパッキングされた有機層に相当する100面、200面が確認できた。更に、高角度領域においては、実験例2と同様に、単独材料とは異なる新規なピーク(▼)や、従来ピークの消失(▽)が見られた。
図9は、スプレードライにより作製した4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム及びテレフタル酸ジリチウムの1:1混合塩構造体(実験例4)と、単独系(実験例5,7)のXRDパターンである。図9Bは、図9Aの部分拡大図である。実験例4においても、実験例1と同様に、実験例5,7の各有機骨格のπスタッキング相互採用によりパッキングされた有機層に相当する100面、200面が確認できた。更に、高角度領域においては、単独材料とは異なり、2θ=10.58°、29.72°付近に単独材料とは異なる新規なピーク(▼)が見られ、2θ=9.30°、17.04°、21.24°、26.80°、30.48°、31.58°及び48.62°付近には従来ピークの消失(▽)が見られた。即ち、新規な構造が確認された。
図10は、実験例2〜4のSEM像であり、図10Aが実験例2、図10Bが実験例3、図10Cが実験例4である。スプレードライを用いて合成した粉末は、5μm以下の球状粒子であることが分かった。これは、空中において液滴状態で乾燥が完了したことによるものと推察された。
図11〜13は、スプレードライを用いて合成した実験例2〜4の充放電カーブである。図11、12に示すように、実験例2、3では、充放電分極が小さく約200mAh/gの容量を発現することが分かった。また、図13に示すように、実験例4では、図5に示した実験例5,7の充放電カーブに比べて、高容量を示すことがわかった。
表1に上記測定結果をまとめて示す。以上説明したように、2種以上の芳香族ジカルボン酸を含む溶液から構造体を形成させると、単独の溶液で形成させた層状構造体とは異なる新規な構造が得られ、それぞれの特有の充放電カーブを示すことがわかった。溶液混合法及びスプレードライ法のいずれにおいても、新規な混合塩構造体が得られることがわかった。また、これらの製法においては、スプレードライ法がより短時間で混合塩構造体を形成可能であり、有望であることがわかった。
Figure 0006954249
本発明は、電池産業に利用可能である。
20 蓄電デバイス、21 電池ケース、22 正極、23 負極、24 セパレータ、25 ガスケット、26 封口板、27 イオン伝導媒体。

Claims (14)

  1. 蓄電デバイス用の電極活物質であって、
    2種以上の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える混合塩構造体であり、アルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで、電気エネルギーを貯蔵出力
    前記有機骨格層は、式(1)及び式(2)で表される構造を有し、
    X線回折測定において2θが9.30°、17.04°、21.24°、26.80°、30.48°、31.58°及び48.62°には回折ピークを示さず且つ10.58°及び29.72°に回折ピークを示す、電極活物質。
    Figure 0006954249
  2. 蓄電デバイス用の電極活物質であって、
    2種以上の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える混合塩構造体であり、アルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで、電気エネルギーを貯蔵出力
    前記有機骨格層は、式(1)及び式(3)で表される構造を有し、
    X線回折測定において2θが9.30°、19.56°、23.70°、28.16°、29.06°、30.48°、及び48.60°に回折ピークを示さず且つ2θが8.32°、10.48°、20.29°、23.12°、28.27°及び29.66°に回折ピークを示す、電極活物質。
    Figure 0006954249
  3. 前記混合塩構造体は、その形状が直径5μm以下の球状である、請求項1又は2に記載の電極活物質。
  4. 蓄電デバイス用の電極活物質であって、
    2種以上の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える混合塩構造体であり、アルカリ金属イオンを吸蔵、放出することで、電気エネルギーを貯蔵出力
    前記有機骨格層は、式(1)〜(3)で表される構造のうち少なくとも2種以上を有し、
    前記混合塩構造体は、その形状が直径5μm以下の球状である、電極活物質。
    Figure 0006954249
  5. 前記アルカリ金属元素層は、リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の電極活物質。
  6. 請求項1〜のいずれか1項に記載の電極活物質を含む負極と、
    正極活物質を含む正極と、
    正極と負極との間に介在し、キャリアイオンを伝導するイオン伝導媒体と、
    を備えた蓄電デバイス。
  7. 蓄電デバイス用の電極活物質の製造方法であって、
    2種以上の芳香族ジカルボン酸アニオンと、アルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液を用い、前記2種以上の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える混合塩構造体を析出させる析出工程、をみ、
    前記析出工程では、式(1)〜(3)のうち少なくとも2種以上の前記芳香族ジカルボン酸アニオンを用い、噴霧乾燥装置を用いて噴霧乾燥することによって、前記混合塩構造体を析出させる、電極活物質の製造方法。
    Figure 0006954249
  8. 蓄電デバイス用の電極活物質の製造方法であって、
    2種以上の芳香族ジカルボン酸アニオンと、アルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液を用い、前記2種以上の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える混合塩構造体を析出させる析出工程、をみ、
    前記析出工程では、式(1)〜(3)のうち少なくとも2種以上の前記芳香族ジカルボン酸アニオンを用い、前記芳香族ジカルボン酸アニオンの濃度が0.1mol/L以上である前記調製溶液を用いる、電極活物質の製造方法。
    Figure 0006954249
  9. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用の電極活物質の製造方法であって、
    2種以上の芳香族ジカルボン酸アニオンと、アルカリ金属カチオンとを溶解した調製溶液を用い、前記2種以上の芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える混合塩構造体を析出させる析出工程、
    を含む電極活物質の製造方法。
  10. 前記析出工程では、噴霧乾燥装置を用いて噴霧乾燥することによって、前記混合塩構造体を析出させる、請求項8又は9に記載の電極活物質の製造方法。
  11. 前記析出工程では、150℃以上の乾燥温度で前記調製溶液を噴霧乾燥させる、請求項7又は10に記載の電極活物質の製造方法。
  12. 前記析出工程では、前記芳香族ジカルボン酸アニオン全体に対する前記アルカリ金属カチオンのモル比が2.0を超える前記調製溶液を用いる、請求項11のいずれか1項に記載の電極活物質の製造方法。
  13. 前記析出工程では、前記芳香族ジカルボン酸アニオンの濃度が0.1mol/L以上である前記調製溶液を用いる、請求項12のいずれか1項に記載の電極活物質の製造方法。
  14. 前記析出工程では、リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上の前記アルカリ金属カチオンを含む前記調製溶液を用いる、請求項13のいずれか1項に記載の電極活物質の製造方法。
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