JP6589315B2 - 電池用正極材料、それを用いた正極の作製方法及び全固体リチウムイオン電池 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
硫黄粉体とポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT−PSS)とを含有し、かつ、
下記一般式(2)で表される構造を有するポリマーを含有することを特徴とする電池用正極材料。
3.第1項又は第2項に記載の電池用正極材料を用いた正極の作製方法であって、前記電池用正極材料に真空紫外光を照射して改質処理する工程を有することを特徴とする正極の製造方法。
5.前記電池用正極材料を含有するポリシラザン改質層からなる正極を有することを特徴とする第4項に記載の全固体リチウムイオン電池。
全固体リチウムイオン電池1は、正極集電体10、正極20、電解質層30、負極40及び負極集電体50等を備え、これらを順次積層することによって構成される(図1)。
正極集電体10は、導電性を有する導電性基材であり、導電性を有していれば特に限られることはないが、例えば、銅、アルミニウム、インジウム・スズ酸化物(ITO)又はガラス基材等を用いることができる。
正極20は、メタロキサン骨格又はシラザン骨格の繰り返し構造を有するポリマーに、正極活物質等を含んで構成された電池用正極材料から構成されている。また、電池用正極材料には、イオン伝導補助剤及び導電補助剤を含むことが好ましい。
また、ポリシラザン化合物は、数平均分子量(Mn)で10000〜150000g/モル(ポリスチレン換算)の範囲内であることが好ましい。数平均分子量(Mn)を10000g/モル(ポリスチレン換算)以上とすることによって、全固体電池として使用に耐え得るために十分な剛直性を得ることができる。また、数平均分子量(Mn)を150000g/モル(ポリスチレン換算)以下とすることによって、剛直にしすぎず、衝撃や熱応力によって亀裂を入り難くすることができる。
また、ポリシラザン化合物は、少なくとも一部が三次元に架橋されていることが好ましい。ポリシラザン化合物は、三次元に架橋されるとより剛直な構造となるとため、高温での充放電特性が向上する。
本発明でいうシラザン骨格とは、Si−N結合を有する骨格である。シラザン骨格を有するポリマーとは、このSi−N結合の繰り返しを主鎖骨格とする高分子化合物である。
また、本発明の電池用正極材料には、一般式(1)及び一般式(2)で表される構造を有する化合物がそれぞれ結合して含まれていても良く、どちらか一方の化合物のみが含まれていても良い。
真空紫外光の照射により、ポリシラザンがシラノールを経由することなく直接酸化されることから(光量子プロセスと呼ばれる光子の作用)、当該酸化過程において体積変化が少なく、高密度で欠陥の少ない酸化ケイ素、窒化ケイ素、及び酸化窒化ケイ素等を含む膜が得られうる。
また、真空紫外光では、反応雰囲気中に存在する酸素等から高い酸化能力を有するオゾンや活性酸素が生成され、当該オゾンや活性酸素によってもポリシラザンの改質処理を行うことができる。その結果、より緻密な酸化ケイ素、窒化ケイ素、及び酸化窒化ケイ素等の膜が得られうる。なお、真空紫外光照射は、塗膜形成後であればいずれの時点で実施してもよい。
一方で、硫黄原子だけでは導電性に乏しいため、NiSやTiS2など遷移金属と複合化して使用しても良い。この場合、硫黄原子以外は、Liを保持することができないため、容量はトレードオフの関係となる。
粒子径累積分布曲線の作成において、まず、走査型顕微鏡を用いて写真撮影を行い、正極活物質粒子100個を無作為に選択し、正極活物質粒子の直径を粒子径として測定した。次いで、横座標に、測定した正極活物質粒子の粒子径をプロットし、縦座標に正極活物質粒子の粒子数の累積粒子個数(積分曲線)をプロットして、正極活物質粒子の粒子径の粒子径累積分布曲線を作成した。
硫化物固体電解質は、Li2S−MxSy構造を有している。Li2S−MxSy構造中、MxはP、Si、Ge、B及びAlから選択され、x及びyはMの種類に応じて化学量論比を与える整数である。正極20に占める全ての硫化物固体電解質のうち、好ましくは30〜95質量%の範囲内の硫化物固体電解質が結晶構造を有している。正極20において、電解質を一部含むことでイオン伝導性が高まり、電池の出力密度が向上する。
導電性高分子は、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリパラフェニレン、PEDOT−PSS(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸))が好ましく、ポリチオフェンやPEDOT−PSSが特に好ましい。ポリチオフェンやPEDOT−PSS等は、硫黄原子を組成に含むため、正極20(正極活物質としての硫黄原子)や電解質層30の硫化物固体電解質(後述参照)等との相性がよく、相分離や剥がれ等の発生を抑制することができる。
なお、正極20には結着材が添加されてもよい。
電解質層30は主に、上記で説明したLi2S−MxSy構造を有する硫化物固体電解質と同様の電解質で構成されている。当該硫化物固体電解質の電解質層30に占める割合は、好ましくは90質量%以上であり、より好ましくは100質量%(全量)である。
電解質層30の厚さは、薄い方が好ましいが、正極と負極のリークを防ぐため、10〜100μmの範囲内とすることが好ましい。
電解質層30は、例えば、当該硫化物固体電解質をプレスすることで、ペレット状として得ることができる。
負極40は特に限定されず、全固体リチウムイオン電池に通常使用される負極をいずれも使用できる。
負極40は負極活物質のみでもよいが、結着材、導電材及び電解質等と混合されていてもよい。負極40としてスズやケイ素等のリチウム合金等を用いると、導電性の問題がなくなるため、より高容量となる。また、負極40としてインジウムを用いることも可能である。負極40には電解質層30を一部含んでもよい。
負極40として、液体系リチウムイオン電池で使用されるカーボン系負極材料も用いることができる。ただし、これらはリチウムイオンを有しないためプレドープが必要となる。
負極集電体50は金属的な導電性能を有すれば特に限られることはないが、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼が好ましく、銅又は銅合金がより好ましい。
(1)全固体リチウムイオン電池1の製造
(1.1)固体電解質の調製
Li2S(出光興産社製:純度99.9%以上)及びP2S5(アルドリッチ社製純度99%)を、75:25のモル比で遊星型ボールミルに投入し、乾式メカニカルミリング処理を実行し、硫化物固体電解質を調製した。
遊星型ボールミルは、Fritsch社製Pulverisette P−7を使用した。ポット及びボールは酸化ジルコニウム製であり、45mlのポット内に直径4mmのボールが500個入っているミルを使用した。
乾式メカニカルミリング処理は、500rpmの回転速度、室温、乾燥窒素グローブボックス内で8時間行った。
(正極混合材料〔a1〕の調製)
正極活物質として硫黄原子は、硫黄(S)粉体の分級処理を行い、粒子径D90が0.85μmとなる硫黄粉体を準備した。また、導電補助剤としては、PEDOT−PSS(へレウス社製PH750)を準備した。
その後、硫黄粉体と、水を溶媒とするPEDOT−PSSとを混合し、乾燥させることによって、正極活物質と導電補助剤との正極複合材料を調製した。ここで、正極複合材料中に占める硫黄原子の含有量は質量換算で50%であった。
その後、当該複合材料中の硫黄粉体と、当該複合材料中の導電補助剤と、上記固体電解質の質量比が、7:1:2の割合となるように、当該複合材料と上記固体電解質を混合し、正極混合材料〔a1〕を調製した。
パーヒドロポリシラザン(アクアミカ NN120−10、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)の10質量%ジブチルエーテル溶液と、アミン触媒(アクアミカ LExp. NAXCAT−10DB、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)のN,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサンの10質量%ジブチルエーテル溶液を、99対1の割合で混合し、ポリシラザン塗布液〔b1〕を調製した。
ポリシラザン塗布液〔b1〕中に、40質量%となるように正極混合材料〔a1〕を入れて塗布試料を調製した。次に、当該塗布試料を集電体であるアルミ箔上に塗布して、アルミ箔上にポリシラザン層を形成させた。その後、温度90℃、湿度55%RHで20分間放置し、乾燥させた後、ポリシラザン層にエキシマ改質処理(露点温度−20℃)を施し、アルミ箔上にポリシラザン改質層を形成させた。次に、プレス機で70MPa/cm2の圧力をかけることによって、集電体上に正極を作製した。
上記のとおり作製した集電体、正極及び固体電解質に、負極としてのインジウム(In)箔をこの順で順次積層し、プレス機にて70MPa/cm2の圧力をかけた。その後、これら積層体を正極集電体及び負極集電体としてのアルミ箔で封止して全固体リチウムイオン電池を製造した。
全固体リチウムイオン電池2は、全固体リチウムイオン電池1の製造方法において、集電体上への正極の作製を以下に示す方法に変更した以外は、同様の方法で製造した。
(正極の作製)
ポリシラザン塗布液〔b1〕中に、40質量%となるように正極混合材料〔a1〕を入れて塗布試料を調製した。次に、当該塗布試料を集電体であるアルミ箔上に塗布して、アルミ箔上にポリシラザン層を形成させた。その後、温度50℃、湿度35%RHで6時間処理し、乾燥させた後、ポリシラザン層にエキシマ改質処理(露点温度−20℃)を施し、アルミ箔上にポリシラザン改質層を形成させた。次に、プレス機で70MPa/cm2の圧力をかけることによって、正極を作製した。
全固体リチウムイオン電池3は、全固体リチウムイオン電池1の製造方法において、ポリシラザン塗布液〔b1〕を、以下に示すポリシラザン塗布液〔b2〕に変更した以外は、同様の方法で製造した。
パーヒドロポリシラザン(アクアミカ NN120−10、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)の10質量%ジブチルエーテル溶液と、メチルヒドロポリシラザン(トレスマイルANAMH、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)の10質量%ジブチルエーテル溶液を9対1の割合で混合した。この混合液と、アミン触媒(アクアミカ LExp. NAXCAT−10DB、AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製)のN,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサンの10質量%ジブチルエーテル溶液を、99対1の割合で混合し、ポリシラザン塗布液〔b2〕とした。
全固体リチウムイオン電池4は、全固体リチウムイオン電池1の製造方法において、正極の作製方法を以下示す方法に変更した以外は、同様の方法で製造した。
正極活物質としての硫黄変性ポリアクリロニトリルと、上記固体電解質と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)と、気相法炭素繊維(VGCF:vapor grown carbon fiber)とを、質量比が50:50:3:2の割合となるように乳鉢で混合して正極混合材料〔a2〕を調製した。
アルミ箔上に、正極混合材料〔a2〕を積層し、プレス機で70MPa/cm2の圧力をかけることによって、正極を製造した。
全固体リチウムイオン電池5は、全固体リチウムイオン電池1の製造方法において、正極の作製方法を以下示す方法に変更した以外は、同様の方法で製造した。
硫黄粉体(粒子径D90=0.85μm)と上記固体電解質との質量比を80:20としてメカニカルミリング法にて混合し、正極混合材料〔a3〕を調製した。
アルミ箔上に、正極混合材料〔a3〕を積層し、プレス機で70MPa/cm2の圧力をかけることによって、正極を作製した。
(1)高温放置後の放電容量の評価
(1.1)製造直後の放電容量の測定
全固体リチウムイオン電池1〜5について、製造直後のサンプルを、80℃の環境下、下限電圧1.0V、電流密度0.025mA/cm2で充放電測定を行い、放電容量を測定した。
上記の製造直後の放電容量を測定した後、全固体リチウムイオン電池1〜5を80℃・85%RHの環境下で12時間放置した後、20℃・70%RHの環境下で12時間放置した。この合計24時間の操作を1回として、この操作を合計21回繰り返した。また、高温放置開始から1週間後及び2週間後に、100℃まで加温して3分間放置し、再度80℃に冷却する操作を行った。
そして、高温放置開始から3週間後に、80℃の環境下で、下限電圧1.0V、電流密度0.025mA/cm2で充放電測定を行い、放電容量を測定した。
また、製造直後と高温放置後の放電容量について、放電容量比率(%)を算出した。ここで、表中の放電容量比率(%)は以下の式を用いて計算した。
放電容量比率(%)=(高温放置後の放電容量)÷(製造直後の放電容量)×100
ここで、本発明の全固体リチウムイオン電池1〜3は、100℃まで加温して3分間放置しても放電容量の低下が抑えられていることから、高温でも安定に硫黄を保持できることが分かった。
上記高温放置後の放電容量の評価において、高温放置後に充放電測定を行った後の全固体リチウムイオン電池1〜4を、20℃の環境下、下限電圧1.0V、電流密度0.50mA/cm2で、高温放置直後(1回目)と、充放電を繰り返して1000回目の放電容量を測定した。
また、高温放置直後(1回目)の放電容量と、1000回目の放電容量について、以下の式によって放電容量比率(%)を算出した。
放電容量比率(%)=(1000回目の放電容量)÷(1回目の放電容量)×100
全固体リチウムイオン電池1〜5を、80℃の環境下、下限電圧1.0V、電流密度0.50mA/cm2で、製造直後(1回目)と、充放電を繰り返して1000回目の放電容量を測定した。
また、製造直後(1回目)と1000回目の放電容量について、以下の式によって放電容量比率(%)を算出した。
放電容量比率(%)=(1000回目の放電容量)÷(1回目の放電容量)×100
10 正極集電体
20 正極
30 電解質層
40 負極
50 負極集電体
Claims (5)
- 前記ポリマーが三次元架橋構造を有することを特徴とする請求項1に記載の電池用正極材料。
- 請求項1又は請求項2に記載の電池用正極材料を用いた正極の作製方法であって、前記電池用正極材料に真空紫外光を照射して改質処理する工程を有することを特徴とする正極の作製方法。
- 請求項1又は請求項2に記載の電池用正極材料を備えることを特徴とする全固体リチウムイオン電池。
- 前記電池用正極材料を含有するポリシラザン改質層からなる正極を有することを特徴とする請求項4に記載の全固体リチウムイオン電池。
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