JP2020149941A - 蓄電デバイス - Google Patents

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由佳 牧野
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信宏 荻原
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Abstract

【課題】層状構造体を用いた負極の充放電特性をより高める。【解決手段】蓄電デバイスは、正極と、芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体を負極活物質として含む負極と、支持塩と有機溶媒と第2族カチオンとフッ素含有スルホニルイミドとを含み正極と負極との間に介在しアルカリ金属イオンを伝導する非水系電解液と、を備える。【選択図】図2

Description

本明細書は、蓄電デバイスを開示する。
従来、リチウムイオン二次電池などの蓄電デバイスとしては、黒鉛負極を備え、非水電解液に支持塩としてLiPF6やリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を用いるものが提案されている(例えば、非特許文献1など参照)。このリチウムイオン二次電池では、支持塩としてLiPF6やリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を用いても、セルの内部抵抗に関しては、大きな差はない。また、蓄電デバイスとしては、2以上の芳香族環構造を有するジカルボン酸アニオンである芳香族化合物を含む有機骨格層と、カルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層と、を有する層状構造体を負極活物質に用いたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。負極活物質としての層状構造体は、導電性を有さないが、非水系電解液に溶けにくく、結晶構造を保つことにより充放電サイクル特性の安定性をより高めることができる。
特開2012−221754号公報
Electrochimica. Acta. 259 (2018) 949-954
しかしながら、上述の特許文献1の蓄電デバイスでは、充放電サイクル特性の安定性をより高めることができるものの、まだ十分でなく、例えば、クーロン効率や放電容量、充放電サイクル特性の向上など、充放電特性を高めることが望まれていた。
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、層状構造体を用いた負極の充放電特性をより高めることができる蓄電デバイスを提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、芳香族ジカルボン酸金属塩の層状構造体を用いる際に、第2族カチオンのイミド塩を支持塩のほかに添加すると、クーロン効率や放電容量、充放電サイクル特性などの充放電特性をより向上することができることを見いだし、本開示の発明を完成するに至った。
即ち、本開示の蓄電デバイスは、
正極と、
芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体を負極活物質として含む負極と、
支持塩と有機溶媒と第2族カチオンとフッ素含有スルホニルイミドとを含み、前記正極と前記負極との間に介在し、アルカリ金属イオンを伝導する非水系電解液と、
を備えたものである。
本明細書で開示する蓄電デバイスでは、層状構造体を負極活物質に用いたものにおいて、充放電特性をより向上することができる。このような効果が得られる理由は、例えば、層状構造体の負極活物質を用いた負極に対して、第2族カチオン及びフッ素含有スルホニルイミドを添加すると、負極と電解液界面に低抵抗な皮膜が形成されるためであると推察される。例えば、第2族カチオンは、一価のアルカリ金属カチオンよりも、被膜の主成分であるRCOO−と強く相互作用するため、被膜を安定化し、被膜の溶出を防ぐことで、負極表面からの自己放電や副反応を防ぐことができる。これにより、サイクル特性の向上や、クーロン効率向上などの効果が得られるものと推察される。
ビフェニル骨格を有する層状構造体の構造の一例を示す説明図。 蓄電デバイス20の一例を示す説明図。 参考例1〜5の電極のXRD測定結果。 参考例6〜8の電極のXRD測定結果。 実験例1〜3、5〜7のサイクル数に対する放電容量の関係図。 実験例1〜3、5〜7のサイクル数に対するクーロン効率の関係図。 実験例1〜7の添加剤添加量と10サイクル後の充放電特性との関係図。 実験例1〜7の添加剤添加量と抵抗値との関係図。 実験例1、8〜12のサイクル数に対する放電容量の関係図。 実験例1、8〜12のサイクル数に対するクーロン効率の関係図。 実験例1、8〜12の添加剤添加量と充放電特性との関係図。
(蓄電デバイス)
本開示の蓄電デバイスは、正極と、負極と、非水系電解液とを備えている。この蓄電デバイスは、例えば、電気二重層キャパシタやハイブリッドキャパシタ、疑似電気二重層キャパシタ、リチウムイオン電池などとしてもよい。この負極は、有機骨格層とアルカリ金属元素層とを有する層状構造体を負極活物質として含んでいる。この負極活物質は、キャリアであるアルカリ金属イオンを吸蔵放出するものである。この負極活物質は、芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体を含む。キャリアのアルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンなどが挙げられ、このうちリチウムイオンが好ましい。以下、キャリアをリチウムイオンとする蓄電デバイスについて、主として説明する。
この層状構造体は、2以上の芳香環構造が接続した有機骨格層を有するものとしてもよい。この層状構造体は、芳香族化合物のπ電子相互作用により層状に形成され、空間群P21/cに帰属される単斜晶型の結晶構造を有するものとすることが、構造的に安定であり、好ましい。この層状構造体は、式(1)〜(3)のうち1以上で表される構造を有するものとしてもよい。但し、この式(1)〜(3)において、aは1以上5以下の整数であり、bは0以上3以下の整数であり、これらの芳香族化合物は、この構造中に置換基、ヘテロ原子を有してもよい。具体的には、芳香族化合物の水素の代わりに、ハロゲン、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホニル基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、アシル基、アミド基、水酸基を置換基として持っていてもよいし、芳香族化合物の炭素の代わりに、窒素、硫黄、酸素が導入された構造であってもよい。より具体的には、この層状構造体は、式(4)〜(5)に示す芳香族化合物としてもよい。なお、式(1)〜(5)において、Aはアルカリ金属である。また、層状構造体は、異なるジカルボン酸アニオンの酸素4つとアルカリ金属元素とが4配位を形成する次式(6)の構造を備えているものとすることが、構造的に安定であり、好ましい。但し、この式(6)において、Rは2以上の芳香環構造を有し、複数あるRのうち2以上が同じであってもよいし、1以上が異なっていてもよい。また、Aはアルカリ金属である。このように、アルカリ金属元素によって有機骨格層が結合した構造を有することが好ましい。
この層状構造体において、有機骨格層は、2以上の芳香環構造を有する場合、例えば、ビフェニルなど2以上の芳香環が結合した芳香族多環化合物としてもよいし、ナフタレン
やアントラセン、ピレンなど2以上の芳香環が縮合した縮合多環化合物としてもよい。この芳香環は、五員環や六員環、八員環としてもよく、六員環が好ましい。また、芳香環は、2以上5以下とするのが好ましい。芳香環が2以上では層状構造を形成しやすく、芳香環が5以下ではエネルギー密度をより高めることができる。この有機骨格層は、芳香環に1又は2以上のカルボキシアニオンが結合した構造を有するものとしてもよい。有機骨格層は、ジカルボン酸アニオンのうちカルボン酸アニオンの一方と他方とが芳香環構造の対角位置に結合されている芳香族化合物を含むものとするのが好ましい。カルボン酸が結合されている対角位置とは、一方のカルボン酸の結合位置から他方のカルボン酸の結合位置までが最も遠い位置としてもよく、例えば芳香環構造がビフェニルであれば、4,4’位が挙げられ、ナフタレンであれば2,6位が挙げられる。
アルカリ金属元素層は、例えば図1に示すように、カルボン酸アニオンに含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成している。図1は、4、4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムを具体例とする、層状構造体の構造の一例を示す説明図である。アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属は、例えば、Li,Na及びKなどのうちいずれか1以上とすることができるが、Liが好ましい。なお、蓄電デバイスのキャリアであり、充放電により層状構造体に吸蔵・放出される金属イオンは、アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属元素と異なるものとしてもよいし、同じものとしてもよく、例えば、Li,Na及びKなどのうちいずれか1以上とすることができる。また、アルカリ金属元素層に含まれるアルカリ金属元素は、層状構造体の骨格を形成することから、充放電に伴うイオン移動には関与しないもの、すなわち、充放電時に吸蔵放出されないものと推察される。このように構成された層状構造体は、図1に示すように、構造においては、有機骨格層とこの有機骨格層の間に存在するLi層(アルカリ金属元素層)とにより形成されている。エネルギー貯蔵メカニズムにおいては、層状構造体の有機骨格層はレドックス(e-)サイトとして機能する一方、アルカリ金属元素層はキャリアである金属イオンの吸蔵サイト(アルカリ金属イオン吸蔵サイト)として機能するものと考えられる。この層状構造体は、例えば、4、4’−ビフェニルジカルボン酸アルカリ金属塩、2、6−ナフタレンジカルボン酸アルカリ金属塩及びテレフタル酸アルカリ金属塩のうち1以上が好ましく、4、4’−ビフェニルジカルボン酸アルカリ金属塩がより好ましい。
この層状構造体は、芳香族ジカルボン酸アニオンとアルカリ金属カチオンとを含む溶液を噴霧乾燥する噴霧乾燥法により作製されるものとしてもよい。噴霧乾燥は、スプレードライヤーにより行うものとしてもよい。噴霧乾燥条件は、例えば、装置の規模や作製する電極活物質の量によって適宜調整すればよい。噴霧乾燥する調製溶液は、芳香族ジカルボン酸アニオンの濃度が0.1mol/L以上、より好ましくは、0.2mol/L以上であることが好ましい。また、調製溶液は、芳香族ジカルボン酸アニオンのモル数A(mol)に対するアルカリ金属カチオンのモル数B(mol)であるモル比B/Aが2.2以上であることが好ましい。このように、アルカリ金属カチオンを過剰とすることにより、負極の抵抗をより低減することができ、好ましい。このモル比B/Aは、2.5以上であるものとしてもよい。また、このモル比B/Aは、3.0以下であるものとしてもよい。乾燥温度は、例えば、100℃以上250℃以下の範囲とすることが好ましい。100℃以上では、溶媒を十分に除去することができ、250℃以下では、消費エネルギーをより低減でき好ましい。乾燥温度は、120℃以上や150℃以上がより好ましく、220℃以下がより好ましい。また、供給液量は、作製する規模にもよるが、例えば、0.1L/h以上2L/h以下の範囲としてもよい。また、調製溶液を噴霧するノズルサイズは、作製する規模にもよるが、例えば、直径0.5mm以上5mm以下の範囲としてもよい。
ビフェニル骨格を有する有機骨格層を備える層状構造体では、噴霧乾燥法による作製時には、層状構造体の剥片の集合を内包して形成される中空球状構造を有する。この中空粒子は、0.1μm以上10μm以下の範囲で得られる。中空球状構造や剥片状構造における剥片の厚みは、例えば1nm以上100nm以下であり、好ましくは、1nm以上20nm以下である。また、剥片構造の平板部の最大長さは、5μm以下であり、2μm以下としてもよい。この負極は、この中空球状構造を解砕し剥片状の層状構造体を用いるため、所定の結晶面で配向している。この負極は、電極をX線回折測定したときに、(111)のピーク強度に対する(300)のピーク強度比P(300)/P(111)が2.0以上を示すものとしてもよい。即ち、(300)のピーク強度が(111)のピーク強度の2倍以上を示すものとしてもよい。この強度比は、2.5以上を示すことがより好ましく、3.0以上を示すことが更に好ましい。また、この強度比は、5.0以下であるものとしてもよい。この範囲では、層状構造体の層間隔などが良好であり、電極抵抗をより低減することができる。また、この負極は、電極をX線回折測定したときに、X線回折測定での(011)のピーク強度に対する(300)のピーク強度比P(300)/P(011)が2.0以上を示すものとしてもよい。即ち、(300)のピーク強度が(011)のピーク強度の2倍以上を示すものとしてもよい。この強度比は、2.5以上を示すことがより好ましく、3.0以上を示すことが更に好ましい。また、この強度比は、5.0以下であるものとしてもよい。この範囲では、層状構造体の層間隔などが良好であり、電極抵抗をより低減することができる。また、この負極は、電極をX線回折測定したときに、X線回折測定での(111)のピーク強度に対する(100)のピーク強度比P(100)/P(111)が6.0以上を示すものとしてもよい。即ち、(100)のピーク強度が(111)のピーク強度の6倍以上を示すものとしてもよい。この強度比は、6.5以上を示すことがより好ましく、6.6以上を示すことが更に好ましい。また、この強度比は、10.0以下であるものとしてもよい。この範囲では、層状構造体の層間隔などが良好であり、電極抵抗をより低減することができる。また、この負極は、電極をX線回折測定したときに、(011)のピーク強度に対する(100)のピーク強度比P(100)/P(011)が5.0以上を示すものとしてもよい。即ち、(100)のピーク強度が(011)のピーク強度の5倍以上を示すものとしてもよい。この強度比は、6.0以上を示すことがより好ましく、6.5以上を示すことが更に好ましい。また、この強度比は、10.0以下であるものとしてもよい。この範囲では、層状構造体の層間隔などが良好であり、電極抵抗をより低減することができる。また、この負極は、電極をX線回折測定したときに、(300)のピーク強度に対する(100)のピーク強度比P(100)/P(300)が1.5以上を示すものとしてもよい。即ち、(100)のピーク強度が(300)のピーク強度の1倍以上を示すものとしてもよい。この強度比は、1.8以上を示すことがより好ましく、2.0以上を示すことが更に好ましい。また、この強度比は、5.0以下であるものとしてもよい。この範囲では、層状構造体の層間隔などが良好であり、電極抵抗をより低減することができる。また、負極は、電極をX線回折測定したときに、このように、負極は、電極内部に存在する活物質の小さな剥片が特異的な配向をしており、n00面に相当するピーク強度が大きくなる傾向を示す。また、この負極は、表面を走査型電子顕微鏡で観察したときに平滑な面を有するものとしてもよい。この電極活物質は、容易に解砕され、剥片を高分散した電極とすることができるため、電極表面がより平滑になる。このピーク強度比を満たす負極は、特に4、4’−ビフェニルジカルボン酸アルカリ金属塩を含むものとしてもよい。
また、ナフタレン骨格を有する有機骨格層を備える層状構造体を含む負極では、噴霧乾燥法により作製すると、その層状構造体を含む電極は、X線回折測定結果が下記(1)〜(5)のうち1以上を満たす。更に、この負極は、下記(6)〜(10)のうち1以上を満たすことが好ましい。ナフタレン骨格を有する層状構造体において、[110]面、[11−1]面、[10−2]面、[102]面及び[112]面の面間隔は、有機骨格層における、ナフタレン骨格とナフタレン骨格との層状構造に基づく間隔である。また、[200]面の面間隔は、アルカリ金属元素層とアルカリ金属元素層との間における有機骨格層に基づく間隔である。[011]面のピーク強度P011に対する[X]面のピーク強度Pxのピーク強度比Px/P011をが下記範囲内にあると、結晶性が良好な層状構造体であるといえ、また、噴霧乾燥法で作製されたものであるともいえる。
(1)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[110]面ピーク強度の比である強度比P110/P011が0.6以下を示す。
(2)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[11−1]面ピーク強度の比である強度比P11-1/P011が0.2以上を示す。
(3)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[10−2]面ピーク強度の比である強度比P10-2/P011が0.2以上を示す。
(4)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[102]面ピーク強度の比である強度比P102/P011が0.4以上を示す。
(5)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[112]面ピーク強度の比である強度比P112/P011が0.4以上を示す。
(6)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[110]面ピーク強度の比である強度比P110/P011が0.2以上0.4以下の範囲内である。
(7)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[11−1]面ピーク強度の比である強度比P11-1/P011が0.2以上0.5以下の範囲内である。
(8)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[10−2]面ピーク強度の比である強度比P10-2/P011が0.2以上0.5以下の範囲内である。
(9)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[102]面ピーク強度の比である強度比P102/P011が0.6以上を示す。
(10)電極のX線回折測定での[011]面ピーク強度に対する[112]面ピーク強度の比である強度比P112/P011が0.5以上を示す。
この負極は、負極活物質としての上述した層状構造体と、結着材と、導電材とを含む負極合材が集電体に形成されているものとしてもよい。負極合材は、結着材として水溶性ポリマーを含むものとしてもよい。水溶性ポリマーとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)や、ポリビニルアルコール(PVA)やスチレンブタジエン共重合体(SBR)、ポリエチレンオキシド(PEO)のうちいずれか1以上を含むものとしてもよい。カルボキシメチルセルロースは、例えば、カルボキシメチル基の末端がナトリウムやカルシウムなどである無機塩としてもよいし、カルボキシメチル基の末端がアンモニウムであるアンモニウム塩としてもよい。ポリエチレンオキシドは、分子量が50万以上であることが好ましく、100万以上がより好ましく、200万以上が更に好ましい。この分子量は、50万以上では、より良好な機能を奏する。この分子量は、300万以下の範囲としてもよい。また、負極は、上述した水溶性ポリマーに加えて、又はこれに代えて他の結着材を含むものとしてもよい。結着材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン−ジエン−モノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等としてもよい。これらは、単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。
負極合材は、負極活物質と導電材と結着材との全体(以下、合材全体とも称する)のうち結着材を1.0質量%以上15質量%以下の範囲で含むことが好ましい。結着材が1.0質量%以上では、結着性を十分確保することができる。また、結着材が15質量%以下では、負極活物質亜導電材の配合量が相対的に確保できるため、電極容量や電極抵抗などの面で好ましい。この結着材は、合材全体のうち3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上としてもよい。また、結着材は、合材全体のうち10質量%以上であることがより好ましく、8質量%以下としてもよい。
導電材は、電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、天然黒鉛(鱗状黒鉛、鱗片状黒鉛)や人造黒鉛などの黒鉛、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維などの炭素材料、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。負極は、電極合材全体のうち導電材を5質量%以上25質量%以下の範囲で含むことが好ましく、10質量%以上としてもよいし、15質量%以上としてもよい。5質量%以上であれば、電極に十分な導電性を持たせることができ、充放電特性の劣化を抑制できる。また、25質量%以下であれば、活物質や結着材が少なくなり過ぎないため、活物質や結着材の機能を十分に発揮できる。
負極は、負極活物質をより多く含むことが好ましく、負極合材全体のうち負極活物質が65質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上としてもよい。また、負極活物質は、85質量%以下や75質量%以下の範囲としてもよい。負極活物質を85質量%以下の範囲で含むものでは、導電材や結着材の量が少なくなり過ぎないため、導電材や結着材の機能を十分に発揮できる。
負極において、負極合材は、溶剤を用いてペースト状又は坏土状にして集電体に形成されることが好ましい。この溶剤としては、水を用いてもよいし、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いてもよい。ここでは水溶性ポリマーを用いるため、水が好適である。集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al−Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。このうち、集電体は、アルミニウム金属とすることがより好ましい。即ち、層状構造体は、アルミニウム金属の集電体に形成されていることが好ましい。アルミニウムは、豊富に存在し、耐食性に優れるからである。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1〜500μmのものが用いられる。
正極は、キャパシタやリチウムイオンキャパシタなどに用いられている公知の正極を用いてもよい。正極は、例えば、正極活物質として炭素材料を含むものとしてもよい。炭素材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類、カーボンナノチューブ類、ポリアセン類などが挙げられる。このうち、高比表面積を示す活性炭類が好ましい。炭素材料としての活性炭は、比表面積が1000m2/g以上であることが好ましく、1500m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m2/g以上では、放電容量をより高めることができる。この活性炭の比表面積は、作製の容易性から3000m2/g以下であることが好ましく、2000m2/g以下であることがより好ましい。なお、正極では、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を吸着・脱離して蓄電するものと考えられるが、さらに、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を挿入・脱離して蓄電するものとしてもよい。
あるいは、正極は、一般的なリチウムイオン電池に用いられる正極としてもよい。この場合、正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0<x<1など、以下同じ)やLi(1-x)Mn24などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiaCobMnc2(a+b+c=1)やLi(1-x)NiaCobMnc4(a+b+c=2)などとするリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、基本組成式をLiV23などとするリチウムバナジウム複合酸化物、基本組成式をV25などとする遷移金属酸化物などを用いることができる。また、正極活物質は、リン酸鉄リチウムなどとしてもよい。これらのうち、リチウムの遷移金属複合酸化物、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素を含んでもよい趣旨である。
正極は、例えば上述した正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極に用いる導電材、結着材、溶剤、集電体は、例えば、負極で例示したものなどを適宜用いることができる。
この蓄電デバイスにおいて、非水系電解液は、支持塩と有機溶媒とを含む。支持塩は、公知のリチウム塩としてもよい。このリチウム塩としては、例えば、LiPF6,LiBF4、LiClO4,LiAsF6などが挙げられ、このうちLiPF6やLiBF4などが好ましい。この支持塩は、非水電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2.0mol/L以下であることがより好ましい。支持塩を溶解する濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、電解液をより安定させることができる。また、この非水電解液には、リン系、ハロゲン系などの難燃剤を添加してもよい。有機溶媒としては、例えば、非プロトン性の有機溶媒を用いることができる。このような有機溶媒としては、例えば環状カーボネート、鎖状カーボネート、環状エステル、環状エーテル、鎖状エーテル等が挙げられる。環状カーボネートとしては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等がある。鎖状カーボネートとしては、例えばジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等がある。環状エステルカーボネートとしては、例えばガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトン等がある。環状エーテルとしては、例えばテトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等がある。鎖状エーテルとしては、例えばジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等がある。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。また、非水系電解液としては、そのほかにアセトニトリル、プロピルニトリルなどのニトリル系溶媒やイオン液体、ゲル電解質などを用いてもよい。
この非水系電解液は、更に第2族カチオンとフッ素含有スルホニルイミドとを含む。即ち、非水系電解液は、添加剤として第2族カチオンのフッ素含有スルホニルイミド塩を含む。非水系電解液は、第2族カチオンとして、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンのうち1以上を含むことが好ましい。また、非水電解液は、フッ素含有スルホニルイミドとして、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)及びビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)のうち1以上を含むことが好ましく、TFSIがより好ましい。この非水系電解液は、第2族カチオンのフッ素含有スルホニルイミド塩を0.1質量%以上5.0質量%以下の範囲で含有することが好ましい。含有量が0.1質量%以上では、添加効果を十分発揮することができ、5.0質量%以下では、例えば電極の抵抗の増加などをより抑制することができ好ましい。このイミド塩の非水電解液中の含有量は、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が更に好ましく、0.5質量%以上としてもよい。また、このイミド塩の非水電解液中の含有量は、3.0質量%以下がより好ましく、2.0質量%以下が更に好ましく、1.0質量%以上としてもよい。
この蓄電デバイスは、正極と負極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、蓄電デバイスの使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の微多孔フィルムが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複合して用いてもよい。
この蓄電デバイスの形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図2は、蓄電デバイス20の一例を示す模式図である。この蓄電デバイス20は、カップ形状の電池ケース21と、正極活物質を有しこの電池ケース21の下部に設けられた正極22と、負極活物質を有し正極22に対してセパレータ24を介して対向する位置に設けられた負極23と、絶縁材により形成されたガスケット25と、電池ケース21の開口部に配設されガスケット25を介して電池ケース21を密封する封口板26と、を備えている。この蓄電デバイス20は、正極22と負極23との間の空間に非水系電解液27が満たされている。また、この負極23は、上述した芳香族ジカルボン酸金属塩の層状構造体を負極活物質として有する。また、非水系電解液27には、第2族カチオンとフッ素含有スルホニルイミドとが添加剤として含まれている。
以上詳述した蓄電デバイスでは、層状構造体を負極活物質に用いたものにおいて、充放電特性をより向上することができる。このような効果が得られる理由は、例えば、以下のように推察される。金属有機構造体である芳香族カルボン酸アニオンを含む有機骨格層と有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体を負極活物質として用いた負極は, 充放電電位がリチウム基準電位で0.5〜0.8V(約0.7V)であり、従来用いられる黒鉛負極の充放電電位であるリチウム基準電位で0.1Vと比較して高い。このため、層状構造体では、低温時の充電や急速充電時に問題となりセルの内部短絡を引き起こすとされる「リチウム金属析出」が起こりにくく, より安全性の高い蓄電デバイスを作成することができる。一方、層状構造体は、充放電電位が黒鉛に比して高いため, 黒鉛上で起こるような電解液の還元分解が十分に起こらず、電極表面に安定な被膜(SEI)を形成することが困難であった。このため、層状構造体を負極活物質とする電極では、充放電時のクーロン効率が低く、サイクル寿命も低いことなどが課題としてあった。このため、層状構造体を負極活物質とする電極の表面に安定的で抵抗の増加を抑制するような好適な被膜を形成する添加剤を検討する必要がある。そして、本開示では、層状構造体の負極活物質を用いた負極に対して、第2族カチオン及びフッ素含有スルホニルイミドを添加することにより、負極と電解液界面に低抵抗な皮膜を形成することができる。例えば、第2族カチオンは、一価のアルカリ金属カチオンよりも、被膜の主成分であるRCOO−と強く相互作用するため、被膜を安定化し、被膜の溶出を防ぐことで、負極表面からの自己放電や副反応を防ぐことができる。これにより、サイクル特性の向上や、クーロン効率向上などの効果が得られるものと推察される。
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
以下には、本開示の蓄電デバイスを具体的に作製した例について説明する。まず、層状構造体をスプレードライ法及び溶液混合法により合成し、電極を作製して評価した例を参考例として説明する。
[参考例1]
(噴霧乾燥法での4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムの層状構造体の合成)
スプレードライ法により層状構造体を作製した。4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムの合成には、出発原料として4,4’−ビフェニルジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)を用いた。0.44mol/Lとなるように水に水酸化リチウムを加え撹拌し、水溶液を調製した。そして、4,4’−ビフェニルジカルボン酸のモル数A(mol)に対する水酸化リチウムのモル数B(mol)であるモル比B/Aが2.2となるように、すなわち、4,4’−ビフェニルジカルボン酸が0.20mol/Lとなるように水溶液を調製した。調製した水溶液を用いてスプレードライヤー(Mini Spray Dryer B−290、日本ビュッヒ製)を用いて噴霧乾燥させ、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムを析出させた。用いたスプレードライヤーのノズル直径は1.4mm、溶液の噴霧量は0.4L/時間、乾燥温度は150℃で行い、4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムを合成した。
(4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム電極の作製)
上記手法で作製した4,4’−ビフェニルジカルボン酸リチウムを79質量%、粒子状炭素導電材としてカーボンブラック(東海カーボン、TB5500)を14質量%、水溶性ポリマーであるポリビニルアルコール(ゴウセネックス,T−330,日本合成化学)を2.8質量%、スチレンブタジエン共重合体(SBR:日本ゼオン、BM−400B)を4.2質量%を混合し、分散剤として水を適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚の銅箔集電体に単位面積当たりの4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム活物質が3mg/cm2となるように均一に塗布し、120℃で真空加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2cm2の面積に打ち抜いて円盤状の電極を準備した。
(蓄電デバイス:二極式評価セルの作製)
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で30:40:30の割合で混合した非水溶媒に、支持電解質の六フッ化リン酸リチウムを1.0mol/Lになるように添加して非水電解液を作製した。上記の手法にて作製した4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム電極を作用極とし、リチウム金属箔(厚さ300μm)を対極として、両電極の間に上記非水電解液を含浸させたセパレータ(東レ東燃製)を挟んで二極式評価セルを作製した。
[参考例2〜4]
スプレードライヤーにて4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウムを合成した後に、120℃で真空乾燥を行った以外は,参考例1と同様の処理を行ったものを参考例2とした。4,4’−ビフェニルジカルボン酸に対する水酸化リチウムのモル比を2.5として水溶液を調製し,スプレードライヤーにて合成した以外は,参考例1と同様の処理を行ったものを参考例3とした。また、スプレードライヤーにて4,4’−ビフェニルジカルボン酸リチウムを合成した後に、120℃で真空乾燥を行った以外は参考例3と同様の処理を行ったものを参考例4とした。
[参考例5]
溶液混合法により層状構造体を作製した。出発原料として4,4’−ビフェニルジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)を用いて、水酸化リチウム1水和物(0.556g)にメタノール(100mL)を加え撹拌した後に4,4’−ビフェニルジカルボン酸1.0gを加え、1時間撹拌した。その後、撹拌後溶媒を除去し、真空下150℃で16時間乾燥することにより、白色の粉末試料の4,4’−ビフェニルジカルボン酸リチウムを得た。これを用いた以外は、参考例1と同様の処理を行ったものを参考例5とした。
[参考例6,7]
(噴霧乾燥法での2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムの層状構造体の合成)
スプレードライ法により層状構造体を作製した。2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムの合成には、出発原料として2,6−ナフタレンジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物(LiOH・H2O)を用いた。2,6−ナフタレンジカルボン酸が0.2mol/L、水酸化リチウムが0.44mol/Lとなるように水に水酸化リチウムを加え撹拌し、調製溶液(水溶液)を調製した。この調製溶液をスプレードライヤー(マイクロミストスプレードライヤーMDL−050、藤崎電機製)を用いて噴霧乾燥させ、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウム(SD−Naph)の粉末を析出させた。調製溶液の噴霧量(供給量)は0.04L/分、乾燥温度は200℃とした。
上記手法で作製した噴霧乾燥法での2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウムを74.1質量%、粒子状炭素導電材としてカーボンブラック(東海カーボン、TB5500)を18.5質量%、結着材としてのポリビニルアルコール(PVA:ゴウセネックス,T−330,日本合成化学)を7.4質量%を混合し、分散剤として水を適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚の銅箔集電体に単位面積当たりの活物質が3mg/cm2となるように均一に塗布し、120℃で真空加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、2cm2の面積に打ち抜いて円盤状の電極を作製し、これを参考例6の電極とした。また、結着材としてカルボキシメチルセルロース(CMC:ダイセルファインケム、CMCダイセル1120)を1.9質量%及びポリビニルアルコール(PVA)を5.6質量%用いた以外は、参考例6と同様に作製した電極を参考例7とした。
[参考例8]
溶液混合法により層状構造体を作製した。出発原料として2,6−ナフタレンジカルボン酸および水酸化リチウム1水和物を用い、水酸化リチウム1水和物(0.556g)にメタノール(100mL)を加え撹拌した後に2,6−ナフタレンジカルボン酸を1.0g加え、1時間撹拌した。撹拌したのち溶媒を除去し、真空下150℃で16時間乾燥することにより、白色の粉末試料の2,6−ナフタレンジカルボン酸ジリチウム(Naph)を得た。この溶液混合法により作製したNaphを活物質として81.0質量%、結着材としてCMCを1.9質量%、SBRを2.9質量%用いた以外は、参考例6と同様に作製したものを参考例8の電極とした。
(X線回折測定)
参考例1〜8の電極のX線回折測定を行った。測定は、放射線としてCuKα線(波長1.54051Å)を使用し、X線回折装置(リガク製UltimaIV)を用いて行った。また、測定は、X線の単色化にはグラファイトの単結晶モノクロメーターを用い、印加電圧を40kV、電流30mAに設定し、5°/分の走査速度で、電極活物質については2θ=5°〜60°の角度範囲で行い、電極については2θ=5°〜35°の角度範囲で行った。
(充放電特性評価)
上記作製した二極式評価セルを20℃の温度環境下、0.1mAで0.5Vまで還元した容量を放電容量とした。また、その後0.1mAで1.5Vまで酸化した容量を充電容量とした。また、得られた充放電カーブを用い、電位差に対して充放電カーブの微分値を算出し微分曲線を得た。また、この微分曲線にある2つの異なる内部抵抗性微分カーブのピーク差から充放電分極を算出し、印加電流を考慮してIV抵抗を算出した。なお、IV抵抗は、2サイクル目の充放電カーブを用いた。
(結果と考察)
表1に参考例1〜5の製造方法、電極のピーク強度比とIV抵抗値とをまとめて示した。また、図3は、参考例1〜5の電極のXRD測定結果である。図3に示すように、スプレードライ法により作製した電極活物質を含む参考例1〜4の電極においては、従来の溶液混合法と同じ2θ位置にピークが出現した。ピーク強度においてはスプレードライ法により作製した電極において、n00面に相当するピーク強度が大きくなる傾向を示した。これは電極内部に存在する活物質の小さな剥片が特異的な配向をしていることを示す。特に、参考例1〜4の電極では、X線回折測定において(300)のピーク強度が(111)や(011)のピーク強度の2倍以上を示し、また、(100)のピーク強度が(111)や(011)のピーク強度の5倍以上を示すことがわかった。具体的には、ピーク強度比P(300)/P(111)が2.0以上、P(300)/P(011)が2.0以上、P(100)/P(111)が6.0以上、P(100)/P(011)が5.0以上、及びP(100)/P(300)が1.5以上を示した。このピーク強度比は、いずれか1以上を満たせば、剥片状の配向した活物質であると推定できるものと推察された。また、表1に示すように、スプレードライ法で合成した層状構造体により作製した電極では、溶液混合法に比してIV抵抗がより低減することがわかった。また、上記ピーク強度比を満たせば、層状構造体がスプレードライ法で作成されたものであると特定できることがわかった。
表2に参考例6〜8の面指数、ピーク強度比Px/P011をまとめた。ピーク強度比は、[011]面のピーク強度P011に対する[X]面のピーク強度Pxの比とした。図4は、参考例6〜8の電極のXRD測定結果である。表2、図4に示すように、スプレードライ法により作製した電極活物質を含む参考例6、7の電極においては、従来の溶液混合法により作製した電極活物質を含む参考例8の電極と同じ2θ位置にピークが出現した。また、溶液混合法で合成した参考例8のXRDパターンに対して、参考例6、7のXRDパターンでは、[110]面、[11−1]面、[10−2]面、[102]面及び[112]面のピークが相違していた。具体的には、スプレードライ法により作製した電極活物質を含む参考例6、7の電極では、[011]面ピーク強度に対する[110]面ピーク強度の比である強度比P110/P011が0.6以下、特に0.2以上0.4以下の範囲内であった。また、参考例6、7では、[011]面ピーク強度に対する[11−1]面ピーク強度の比である強度比P11-1/P011が0.2以上、特に0.2以上0.5以下の範囲内であった。また、参考例6、7では、[011]面ピーク強度に対する[10−2]面ピーク強度の比である強度比P10-2/P011が0.2以上、特に0.2以上0.5以下の範囲内であった。また、参考例6、7では、[011]面ピーク強度に対する[102]面ピーク強度の比である強度比P102/P011が0.4以上、特に0.6以上を示した。また、参考例6、7では、[011]面ピーク強度に対する[112]面ピーク強度の比である強度比P112/P011が0.4以上、特に0.5以上を示した。このように、このピーク強度比のいずれか1以上を満たせば、ナフタレン構造を含む層状構造体がスプレードライ法で作成されたものであると特定できることがわかった。
次に、非水系電解液に支持塩のほかに添加剤を添加して充放電特性を評価した結果を実験例として説明する。なお、実験例2〜12が実施例に相当し、実験例1が比較例に相当する。
(4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム負極の作製)
スプレードライ法で作製した4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム(SD−Bph)を85.0質量%、導電材としてカーボンブラック(東海カーボン、TB5500(直径約50nm))を15.0質量%、結着材としてのCMCを3.0質量%、スチレンブタジエン共重合体(日本ゼオン、BM−400B)を4.5質量%となるように秤量して混合し、分散剤として水を適量添加、分散してスラリー状合材とした。このスラリー状合材を10μm厚の銅箔の集電体に単位面積当たりの4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム活物質が2.5mg/cm2となるように均一に塗布し、加熱乾燥させて塗布シートを作製した。その後、塗布シートを加圧プレス処理し、10cm2の面積に打ち抜いて負極とした。
(二極式評価セルの作製)
エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)を体積比で30:40:30の割合で混合した溶媒にLiPF6を1.0mol/Lになるように添加して非水系電解液を作製した。上記4,4’−ビフェニルジカルボン酸ジリチウム負極を作用極とし、リチウム金属箔(厚さ300μm)を対極とし、両電極の間に上記非水電解液を含浸させたセパレータ(東レ東燃製)を挟んで二極式評価セルを作製した。
[実験例1〜7]
上述した二極式評価セルを実験例1とした。また、非水系電解液に、カルシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Ca(TFSI)2)を添加剤として0.1質量%、0.2質量%、0.5質量%、1.0質量%、3.0質量%、5.0質量%添加したものをそれぞれ実験例2〜7の二極式評価セルとした。
[実験例8〜12]
非水系電解液に、カルシウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Mg(TFSI)2)を添加剤として0.1質量%、0.5質量%、1.0質量%、3.0質量%、5.0質量%添加したものをそれぞれ実験例8〜12の二極式評価セルとした。
(電極容量、IV抵抗の評価)
この二極式評価セルを用いて、容量を確認すると共に、SOC調整を行った。電極容量の測定は、電圧範囲を0.5V〜1.5V、電流値を0.5mA(C/10相当)とし、25℃で10サイクル行った。この連続充放電サイクルからクーロン効率や容量維持率を算出した。10サイクル時の充電容量÷放電容量の値をクーロン効率とした。この充放電操作の1回目の充電容量をQ1、10回目の充電容量をQ10とし、Q10/Q1を充放電サイクル後の容量維持率(−)とした。また、得られた充放電カーブを電荷量に対して微分することにより、電位変化の微分曲線(微分(dQ/dV曲線)を求めた。充電および放電方向の微分曲線の極大値及び極小値から充放電分極を求め、試験電流を用いてIV抵抗(Ω)を算出した。抵抗値は、実験例1を100として規格化した値(%)で評価した。
[結果と考察]
表3に実験例1〜12の添加剤の種別、添加量、10サイクル後のクーロン効率(−)、10サイクル後の電極容量(mAh/g)及び10サイクル後の容量維持率(−)をまとめた。図5は、実験例1〜3、5〜7のサイクル数に対する放電容量の関係図である。図6は、実験例1〜3、5〜7のサイクル数に対するクーロン効率の関係図である。図7は、実験例1〜7の添加剤添加量と10サイクル後の充放電特性との関係図であり、図7Aがクーロン効率及び容量維持率、図7Bが放電容量の図である。図8は、実験例1〜7の添加剤添加量と抵抗値との関係図である。図9は、実験例1、8〜12のサイクル数に対する放電容量の関係図である。図10は、実験例1、8〜12のサイクル数に対するクーロン効率の関係図である。図11は、実験例1、8〜12の添加剤添加量と充放電特性との関係図であり、図11Aがクーロン効率及び容量維持率、図11Bが放電容量の図である。
表3、図5〜8に示すように、支持塩としてLiPF6を用い、更に添加剤としてCa(TFSI)2)を添加した実験例2〜7は、クーロン効率、電極容量及び容量維持率のいずれも添加剤を添加しない実験例1に比して良好な値を示した(図7参照)。図7に示すように、添加量と充放電時の性能の関係において、Ca(TFSI)2)は、添加量が3質量%以上では、それ以上の容量維持率やクーロン効率の向上が見られないことから、添加量は3質量%以下とするのが好ましい。さらに、図8に示すように、添加量を増加させると抵抗値が上昇することから、添加量は、抵抗値の観点からは1質量%以下がより好ましいことがわかった。また、この添加量は、クーロン効率や電極容量、容量維持率の観点からは、0.1質量%以上、より好ましくは、0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であった。
表3、図9〜11に示すように、支持塩としてLiPF6を用い、更に添加剤としてMg(TFSI)2)を添加した実験例8〜12は、クーロン効率、電極容量及び容量維持率のいずれも添加剤を添加しない実験例1に比して良好な値を示した(図11参照)。図11に示すように、添加量と充放電時の性能の関係において、Mg(TFSI)2)は、添加量が3質量%以上では、それ以上の容量維持率やクーロン効率の向上が見られないことから、添加量は3質量%以下とするのが好ましい。さらに、図8に示すように、添加量を増加させると抵抗値が上昇することから、添加量は、抵抗値の観点からは1質量%以下がより好ましいことがわかった。また、この添加量は、クーロン効率や電極容量、容量維持率の観点からは、0.1質量%以上、より好ましくは、0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上であった。
本開示は、上記の実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
本開示は、電池産業の分野に利用可能である。
20 蓄電デバイス、21 電池ケース、22 正極、23 負極、24 セパレータ、25 ガスケット、26 封口板、27 非水系電解液。

Claims (6)

  1. 正極と、
    芳香族ジカルボン酸アニオンを含む有機骨格層と前記有機骨格層のカルボン酸に含まれる酸素にアルカリ金属元素が配位して骨格を形成するアルカリ金属元素層とを備える層状構造体を負極活物質として含む負極と、
    支持塩と有機溶媒と第2族カチオンとフッ素含有スルホニルイミドとを含み、前記正極と前記負極との間に介在し、アルカリ金属イオンを伝導する非水系電解液と、
    を備えた、蓄電デバイス。
  2. 前記非水系電解液は、第2族カチオンとして、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンのうち1以上を含み、前記フッ素含有スルホニルイミドとして、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)及びビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)のうち1以上を含む、請求項1に記載の蓄電デバイス。
  3. 前記非水系電解液は、前記第2族カチオン及び前記フッ素含有スルホニルイミドを0.1質量%以上5.0質量%以下の範囲で含有する、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
  4. 前記非水系電解液は、前記第2族カチオン及び前記フッ素含有スルホニルイミドを0.2質量%以上3.0質量%以下の範囲で含有する、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス。
  5. 前記負極は、式(1)〜(3)のうち1以上で表される構造を有する前記層状構造体を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
  6. 前記負極は、リチウム、ナトリウム及びカリウムのうち1以上を有する前記アルカリ金属元素層を備える前記層状構造体を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の蓄電デバイス。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023026476A1 (ja) * 2021-08-27 2023-03-02 国立大学法人東北大学 アルカリ金属二次電池用電解液およびアルカリ金属二次電池

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