JP7311005B2 - 車両構造 - Google Patents

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本発明は、車両構造に関し、特に易剥離性塗料を塗装することにより形成された剥がせる塗膜を備える車両構造に関する。
例えば特許文献1では、塗装完成車を輸送する際に塗装表面を一時的に保護するために、塗装表面に剥がし易いコート層を形成しておき、輸送後にコート層を剥がす技術が開示されている。該コート層は、ストリッパブルペイントをローラで塗布する塗布層と、スプレで塗布する塗布層とで構成されている。
特開平6-142604号公報
上述の技術では、コート層が塗布層によって構成されているが、塗膜によって形成される場合、塗膜の密着性及び剥がし易さを両立するのは難しくなる。言い換えれば、塗膜としては通常使用する時に剥がれにくく、且つ剥がしたい時に容易に剥がせる性質が求められているので、上述の技術ではそれに対応できないという問題があった。
本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、塗膜の密着性及び剥がし易さを両立することができる車両構造を提供することを目的とする。
本発明に係る車両構造は、車両の外板及び外装部品と、前記外板及び前記外装部品に易剥離性塗料を塗装することにより形成された剥がせる塗膜と、を備える車両構造であって、前記塗膜は、前記外板及び前記外装部品の外表面に形成された意匠部と、前記意匠部と連結されるとともに前記外板及び前記外装部品の側端面及び裏面に形成された非意匠部とを有し、前記塗膜の前記非意匠部と、前記外板及び前記外装部品の側端面又は裏面との少なくとも一方には、前記塗膜を剥がす起点となる起点部が少なくとも一つ設けられていることを特徴としている。
本発明に係る車両構造では、塗膜は車両の外板及び外装部品に易剥離性塗料を塗装することにより形成されるので、塗膜と車両の外板及び外装部品との密着性を容易に保つことができる。加えて、塗膜の非意匠部と、外板及び外装部品の側端面又は裏面との少なくとも一方に、塗膜を剥がす起点となる起点部が設けられるので、塗膜を剥がす際に該起点部を利用して容易に塗膜を剥がすことができる。従って、塗膜として通常使用する時に剥がれにくく、且つ剥がしたい時に剥がし易いことを実現できるので、塗膜の密着性及び剥がし易さを両立することができる。
本発明に係る車両構造において、前記起点部は、前記塗膜の前記非意匠部に形成された切り込み部であることが好ましい。このようにすれば、該切り込み部を起点として塗膜を容易に剥がすことができる。
本発明に係る車両構造において、前記起点部は、前記塗膜の前記非意匠部に形成され、且つ、前記意匠部よりも膜厚が厚いことが好ましい。膜厚が厚くなると剥がし易くなるので、膜厚が比較的に厚い起点部から塗膜を容易に剥がすことができる。
また、本発明に係る車両構造において、前記起点部は、前記塗膜の前記非意匠部に形成され、且つ、前記意匠部と前記外板及び前記外装部品との密着力よりも弱くなるように化学的に処理されていることが好ましい。このようにすれば、密着力が比較的に弱い起点部から塗膜を容易に剥がすことができる。
また、本発明に係る車両構造において、前記起点部は、前記外板及び前記外装部品の裏面に形成された凹凸部又は段差部であることが好ましい。凹凸部又は段差部に形成された塗膜は他の部位に形成された塗膜よりも比較的に剥がし易いので、それを起点として塗膜を容易に剥がすことができる。
また、本発明に係る車両構造において、前記起点部は、前記外板及び前記外装部品の裏面に形成され、且つ、前記外板及び前記外装部品と前記意匠部との密着力よりも弱い材質によって形成されていることが好ましい。このようにすれば、密着力が比較的に弱い材質によって形成された起点部から、塗膜を容易に剥がすことができる。
更に、本発明に係る車両構造において、前記起点部は、前記外板に取り付けられた取付部品に押圧されていることが好ましい。このようにすれば、取付部品の押圧力を利用して起点部を抑えることで、塗膜の密着力を高めることができる。
更に、本発明に係る車両構造において、前記起点部は、組み立てられた前記外板同士の間、組み立てられた前記外装部品同士の間、又は組み立てられた前記外板と前記外装部品との間に設けられていることが好ましい。外板同士、外装部品同士、又は外板と外装部品とが組み立てられた状態では互いに押圧力が作用するので、該押圧力を利用し起点部を抑えることで、塗膜の密着力を高めることができる。
本発明によれば、塗膜の密着性及び剥がし易さを両立することができる。
実施形態に係る車両構造を示す斜視図である。 フードパネルとフードパネルに形成された塗膜とを示す概略断面図である。 塗膜の外側にクリア層が形成される例を示す概略断面図である。 塗膜が直接電着層上に形成される例を示す概略断面図である。 電着層上に形成された塗膜の外側に更にクリア層が形成される例を示す概略断面図である。 フロントバンパカバーとフロントバンパカバーに形成された塗膜とを示す概略断面図である。 フロントバンパカバーの裏面に起点部を形成する例を示す概略図である。 起点部が凹凸部であることを示すイメージ図である。 起点部が凹凸部であることを示すイメージ図である。 起点部が段差部であることを示すイメージ図である。
以下、図面を参照して本発明に係る車両構造の実施形態を説明する。本実施形態でいう車両は、自動車や電車などを含むが、ここでは自動車のうちの乗用車の例を挙げて説明する。
図1は実施形態に係る車両構造を示す斜視図である。図1に示すように、車両1は、複数の外板及び外装部品を備えている。ここでの外板とは、車体を構成する部材であって外観上視認できる(言い換えれば、車両の外部から視認できる)外板パネルのことをいい、例えばフードパネル10、ルーフパネル11、トランクリッド12、フロントフェンダパネル13、リヤフェンダパネル14、フロントドアアウター15、リヤドアアウター16、フロントピラー17、センターピラー18、リヤピラー19などを含む。外板の材料として、例えば熱間圧延鋼板又は冷間圧延鋼板が採用されている。
一方、車両1の外装部品とは、車体に組み付けられるものであって外観上に視認できる艤装部品をいい、例えばフロントバンパカバー20、リヤバンパカバー21、ロッカパネルモールディング22、ドアハンドル23、給油口カバー24、サイドミラー25、シャークフィン(未図示)、ルーフモール(未図示)などを含む。外装部品の材料として、主に樹脂材料が採用されているが、給油口カバー24は鋼板により形成されるのが多い。
上述の外板及び外装部品には、剥がせる塗膜30がそれぞれ形成されている。より具体的には、これらの外板及び外装部品の外表面及び側端面、更に裏面の一部には、易剥離性塗料を塗装することにより形成された剥がせる塗膜30が設けられている。このように車両1の外板及び外装部品に易剥離性塗料を塗装することにより塗膜30を形成することで、塗膜30と車両1の外板及び外装部品との密着性を容易に保つことができる。
以下、図2~図4を参照して外板及び外装部品に形成された塗膜30を説明する。まず、外板に形成された塗膜30について、フードパネル10の例を挙げて説明する。
図2はフードパネルとフードパネルに形成された塗膜とを示す概略断面図である。図2において、紙面に対し上側はフードパネル10の表側(外側ともいう)、下側はフードパネル10の裏側(内側ともいう)である。図2に示すように、フードパネル10は、鋼板101と、鋼板101全体を覆うように形成された電着層102と、フードパネル10の表側において電着層102の上に順に形成された中塗り層103、ベース層104及びクリア層105とを有する。
そして、フードパネル10の外表面及び側端面の全体並びに裏面の一部には、塗膜30が形成されている。塗膜30は、上述のように易剥離性塗料を塗装することにより形成されるため、電着層102と中塗り層103とベース層104とクリア層105とからなる通常の塗膜と比べて剥がせるという性質を持っている。
そして、塗膜30は、フードパネル10の外表面に形成された意匠部301と、意匠部301と連結されるとともに、フードパネル10の側端面全体及び裏面の一部に形成された非意匠部302とを有する。すなわち、フードパネル10が車両1に取り付けられた状態では、意匠部301は外観上視認できる塗膜30の部分であり、非意匠部302は外観上視認できない塗膜30の部分である。なお、フードパネル10の側端面は、車両1の前後方向及び左右方向に延びる周縁端面を指す。
塗膜30は、例えば噴霧法で易剥離性塗料をフードパネル10に塗装することにより形成されている。易剥離性塗料としては、例えばキシレン、エチルベンゼン、酸化防止剤、メチルエチルケトン、シリカ反応物、酸化チタン(ナノ粒子)及び有機溶剤等からなる塗料が挙げられる。
なお、塗膜30の外側には、クリア層31が更に形成されても良い(図3A参照)。このようにクリア層31を形成することで、塗膜30の耐候性及び耐薬品性を高めることができるとともに、艶感及び高級感を一層引き立てることができる。
フードパネル10は、必ずしも鋼板101、電着層102、中塗り層103、ベース層104及びクリア層105を有するものでなければならず、例えば図3Bに示すように、鋼板101及び電着層102のみを有しても良い。この場合、塗膜30は直接電着層102上に形成される。また、この場合においても、塗膜30の外側にはクリア層31が更に形成されても良い(図3C参照)。
外板に設けられた塗膜30について、上述のようにフードパネル10の例を挙げて説明したが、ルーフパネル11、トランクリッド12、フロントフェンダパネル13、リヤフェンダパネル14、フロントドアアウター15、リヤドアアウター16、フロントピラー17、センターピラー18、及びリヤピラー19等の外板についても、同様に適用されるので、重複説明を省略する。
次に、外装部品に形成された塗膜30について、フロントバンパカバー20の例を挙げて説明する。
図4はフロントバンパカバーとフロントバンパカバーに形成された塗膜とを示す概略断面図である。図4において、紙面に対し上側はフロントバンパカバー20の表側(外側ともいう)、下側はフロントバンパカバー20の裏側(内側ともいう)である。フロントバンパカバー20は、バンパーの形で一体成型された樹脂部材201と、樹脂部材201の上に順に形成されたプライマー層202、ベース層203及びクリア層204とを有する。そして、フロントバンパカバー20の外表面及び側端面の全体並びに裏面の一部には、塗膜30が形成されている。なお、塗膜30の外側には、上述したクリア層31が更に形成されても良い。
そして、フロントバンパカバー20以外のリヤバンパカバー21、ロッカパネルモールディング22、ドアハンドル23などの樹脂製の外装部品についても、フロントバンパカバー20と同様に塗膜30が形成されているので、重複説明を省略する。なお、給油口カバー24が鋼板によって形成された場合、上述のフードパネル10と同様に塗膜30が形成される。
本実施形態において、塗膜30の非意匠部302と、外板及び外装部品の側端面又は裏面との少なくとも一方には、塗膜30を剥がす起点となる起点部40が少なくとも一つ設けられている。このように起点部40を設けることで、塗膜30を剥がしたい時に起点部40から容易に塗膜30を剥がすことができる。
起点部40については、様々な形態が考えられるが、主に、塗膜30側に工夫を施すことにより形成された形態と、外板及び外装部品側に工夫を施すことにより形成された形態と、塗膜と外板及び外装部品との双方に工夫を施すことにより形成された形態とに分けられる。
まず、起点部40が塗膜30側に工夫を施すことにより形成された形態について説明する。
図5はフロントバンパカバーの裏面に起点部を形成する例を示す概略図であり、図5において、分かり易くするために塗膜30をドット模様で示す。図5に示すように、フロントバンパカバー20の裏面には、塗膜30の非意匠部302が形成されており、非意匠部302には、複数の切り込み部401が設けられている。これらの切り込み部401は、起点部40を構成するものであって、非意匠部302をカッター等で矩形状に切り取ることにより形成されている。このようにすれば、塗膜30を剥がしたいときにこれらの切り込み部401を起点として塗膜30を容易に剥がすことができる。
切り込み部401の長さ、幅及び深さなどについては、例えばフロントバンパカバー20の大きさ、塗膜30の剥がし易さなどを考慮して設定されている。また、これらの切り込み部401は、フロントバンパカバー20の周方向に沿って所定の間隔で配置されている。切り込み部401の配置間隔は、例えばフロントバンパカバー20の大きさ、塗膜30を剥がし易さなどを考慮して設定されており、かならずしも等間隔である必要がない。また、切り込み部401の形状は、矩形状のほか、波状や鋸状などでも良い。
また、起点部40は、塗膜30の非意匠部302に形成され、且つ、意匠部301よりも膜厚が厚いものであっても良い。例えば噴霧法で塗装する際に、起点部40となる場所に他の場所よりも易剥離性塗料を吹き付ける回数を増やして、膜厚を厚くする。このようにすれば、膜厚が厚くなると剥がし易くなるので、膜厚が比較的に厚い起点部40から塗膜30を容易に剥がすことができる。
また、起点部40は、塗膜30の非意匠部302に形成され、且つ、意匠部301と外板及び外装部品との密着力よりも弱くなるように化学的に処理されたものであっても良い。より具体的には、外板及び外装部品と非意匠部302との密着力を、外板及び外装部品と意匠部301との密着力よりも弱くするように、非意匠部302の縁部に例えば離型剤を更に塗布する。このようにすれば、密着力が比較的に弱い起点部40から塗膜30を容易に剥がすことができる。なお、化学的な処理には、離型剤以外の薬剤を用いても良い。
次に、起点部40が外板及び外装部品側に工夫を施すことにより形成された形態について説明する。
例えば図6Aに示すように、起点部40は、外板及び外装部品の裏面の一部に形成された凹凸部である。該凹凸部は、複数の凹部402及び凸部403が交互に並んで形成されている。また、該凹凸部は、例えば図6Bに示すように、複数の溝部404が等間隔で配置されることにより形成されても良い。更に、図6Cに示すように、起点部40は、外板及び外装部品の裏面の一部に形成された段差部405であっても良い。このようにすれば、凹凸部又は段差部に形成された塗膜を他の部位に形成された塗膜よりも比較的に剥がし易くなるので、それを起点として塗膜30を容易に剥がすことができる。
更に、起点部40は、外板及び外装部品の裏面に形成され、且つ、外板及び外装部品と意匠部301との密着力よりも弱い材質によって形成されても良い。より具体的には、起点部40を形成しようとする外板及び外装部品の部分を密着力が比較的に弱いPP(ポリプロピレン)樹脂、ABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、布、木、ゴムなどの材料で形成する。特に、布、木及びゴムは塗料を吸い込むので、外板及び外装部品と非意匠部との密着力を弱くすることができる。このようにすれば、密着力が比較的に弱い材質によって形成された起点部40から、塗膜30を容易に剥がすことができる。
なお、起点部40が塗膜と外板及び外装部品との双方に工夫を施すことにより形成された形態は、上述した塗膜30側に工夫を施すことにより形成された形態と、外板及び外装部品側に工夫を施すことにより形成された形態とを組み合わせたものであるので、その詳細な説明を省略する。
また、起点部40は、外板に取り付けられた取付部品に押圧されていることが好ましい。例えばフードパネル10に形成された塗膜30の起点部40は、フードパネル10に取り付けられたヘッドライト(取付部品)の下に配置される。このようにすれば、ヘッドライトの押圧力を利用して起点部40を抑えることで、塗膜30の密着力を高めることができる。そして、フードパネル10に形成された塗膜30を剥がしたい時に、まずヘッドライトを取り外し、次に起点部40から塗膜30を剥がせば良い。
取付部品としては、ヘッドライトのほか、ヘッドライトウォッシャーノズル、テールライト、クリアランスソナーなどが挙げられる。
また、起点部40は、組み立てられた外板同士の間、組み立てられた外装部品同士の間、又は組み立てられた外板と外装部品との間に設けられても良い。例えばリヤフェンダパネル14に形成された塗膜30の起点部40は、該リヤフェンダパネル14に組み立てられた給油口カバー24に押圧されるように、リヤフェンダパネル14と給油口カバー24との間に設けられる。このようにすれば、リヤフェンダパネル14と給油口カバー24とが組み立てられた状態では、互いに押圧力が作用するので、押圧力を利用して起点部40を抑えることで塗膜30の密着力を高めることができる。そして、リヤフェンダパネル14に形成された塗膜30を剥がしたい時に、給油口カバー24を開いた状態で起点部40から塗膜30を剥がせば良い。
本実施形態に係る車両1の構造によれば、塗膜30として通常使用する時に剥がれにくく、且つ剥がしたい時に剥がし易いことを実現できるので、塗膜30の密着性及び剥がし易さを両立することができる。
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
1 車両
10 フードパネル
11 ルーフパネル
12 トランクリッド
13 フロントフェンダパネル
14 リヤフェンダパネル
15 フロントドアアウター
16 リヤドアアウター
17 フロントピラー
18 センターピラー
19 リヤピラー
20 フロントバンパカバー
21 リヤバンパカバー
22 ロッカパネルモールディング
23 ドアハンドル
24 給油口カバー
25 サイドミラー
30 塗膜
31 クリア層
301 意匠部
302 非意匠部
40 起点部
401 切り込み部
402 凹部
403 凸部
404 溝部
405 段差部

Claims (1)

  1. 車両の外板及び外装部品と、前記外板及び前記外装部品に易剥離性塗料を塗装することにより形成された剥がせる塗膜と、前記塗膜の外側に形成されたクリア層と、を備え、
    前記塗膜は、前記外板及び前記外装部品の外表面に形成された意匠部と、前記意匠部と連結されるとともに前記外板及び前記外装部品の側端面及び裏面に形成された非意匠部とを有し、
    前記非意匠部には、前記塗膜の端部であって、前記塗膜を剥がす際の起点となる起点部が少なくとも一つ設けられ、
    前記起点部は、前記意匠部よりも膜厚が厚い車両構造。
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