JP2004314025A - 高耐久性と剥離除去性を併せ持つ複合塗膜型塗装方法 - Google Patents

Abstract

【課題】高耐久性塗料は、長期間にわたって被塗装物の美観・外観を維持できるが、その塗膜層は強固であるが故に、補修や再塗装および模様替えなどのための塗膜の除去は非常に困難であった。また、強力な剥離剤などを使用すると素材そのものを痛めてしまうことがあった。このような堅牢な塗膜の除去を、必要に応じて簡単に行える方法を提供する。
【解決手段】可剥機能を持った塗料を被覆層全体に下塗り塗装し、この下塗り層２の可剥性能を利用して、これらの用途が終了した後には、必要に応じて被覆層全体を、容易に剥離除去した上で、再塗装を簡単に行えるようにした。また、この下塗り層２は単に無色透明塗装を行うのではなく、意匠性の高い有色塗装を行うことで、より高い加飾性と独創性とを付与しながら、二液型ウレタン塗料や紫外線硬化型塗料などの高耐久性塗料３の持つ、長期間に亘る初期の光沢と美観の維持も可能とした。
【選択図】 図１

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高耐久性と剥離除去性および加飾を同時に付与する複合塗膜型塗装方法に関する。
【０００２】
【従来の技術】
塗料は、木材やプラスチック・金属などの素材の、長期にわたる機能と美観の維持を主たる目的とした施工材料であり、この保護という目的に対して、乾燥硬化後に高耐久性塗膜を形成する、二液型のウレタン塗料や紫外線硬化型塗料などが最適で、幅広い用途に使用されてきた。
【０００３】
さらに、このような高耐久性塗膜層を、劣化による美観の低下やその後の意匠面での嗜好変化に応じて、再塗装を施す場合は、酸・アルカリやクロル系溶剤などで塗膜を膨潤剥離させ、除去後に再塗装するのが一般的であった。しかし、被塗装物の素材がプラスチック系の場合などは、剥離剤により素材までも侵される恐れがあるために、表層のみを研磨して再塗装を行っていた。
【０００４】
また、前述の高耐久性塗装とは異なり、被塗装物の一時的な保護や加飾という目的で、可剥塗料（ストリッパブルペイント）や保護粘着シートが使用されてきた。可剥塗料は、一般の塗料と違い、目的の期間の経過後、剥離することを前提に設計されたもので、剥離に際して、前述のような剥離剤を使用しなくても容易に剥がすことができ、且つ、素材や下層の塗膜を侵すことが少ない。
【０００５】
しかし、一般的な可剥性能を有する塗料は、表層の塗膜の耐久性が不十分で、紫外線や酸・アルカリなど外的要因で塗膜が劣化し、長期間が経過した後には、光沢の低下や汚損といった外観低下などの問題が発生し、本来の特徴であった剥離性能までもが失われてしまう場合などがあった。
【０００６】
また、保護粘着シートでは、曲面や三次元の被塗装物の場合はシワが寄るなど、外観が悪いばかりか、シートが既製品のために自由な意匠性や独創性を求めることは不可能であった。
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】
元来、塗膜の耐久性は塗料の種類により様々であるが、初期の光沢や質感を恒久的に維持することは極めて難しく、必要に応じて、塗膜を除去した後に再塗装を施す。しかし、耐久性に優れた塗膜の剥離除去は容易ではなく、剥離剤を用いた場合、素材を痛めてしまうこともあった。
【０００８】
また、一時的に別の色に意匠替えをしたい場合、例えば、自動車の車体に宣伝模様を入れたり、タイヤのホイールを季節やボディーカラーに応じて着色を施したい場合などには、利用後の原状復帰が求められ、可剥塗料などが利用される。しかし、一般的な可剥塗料は、耐久性が不十分であった。
【０００９】
このように耐久性と可剥性能は相反する性質があり、双方の性能を満足し得る塗料および塗装方法はなかったが、本考案の塗装方法によって、これらの課題を解決し、さらに剥離性を有する層を半透明着色層もしくは不透明着色層とすることで任意の加飾が可能となる。
【００１０】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明者は、従来では高耐久性塗料を被塗装物に直接塗装していたが、高耐久性塗料を簡単に剥離除去するために、被塗装物と高耐久性塗料との間に下塗り層を設け、その下塗り層には剥離機能を持たせた複合塗装型とすることにより、表層は耐久性に優れ、除去する場合は簡単に剥離が可能な可剥塗膜とすることとした。
【００１１】
下塗り層は剥離機能を持った塗料であればこの塗装方法の機能は発揮できるが、プラスチックやゴムなどの素材の場合は、溶解力が低いアルコール溶剤系、脂肪族系炭化水素溶剤系および水性系など、被塗装物の素材を侵す恐れの少ない塗料を下塗り層に用いる事が望ましい。
【００１２】
また、この下塗り層は単に無色透明塗装を行うのではなく、意匠性の高い有色塗装を行うことで、より高い質感と独創性とを付与しながら、高耐久性塗料で塗装した被塗装物の表層は、長期間に亘り光沢と美観とさらに硬度を維持し、これらの用途が終了した後に必要に応じて、塗膜層全体を容易に剥離除去した上で、無傷で原状復帰がされ、また再塗装が簡単に行えるようにした。
【００１３】
【発明の実施の形態】
本発明は、高耐久性の塗料で塗装した塗膜層を、必要に応じて剥離除去が容易に行えるようにするために、可剥機能を持った塗料で下塗りをして、さらに下塗り塗料には用途に応じて着色をしたりパールやラメなどを混合することで、剥離除去機能と意匠性付与機能を一つの工程で行うことを可能とした。
【００１４】
【実施例】
以下に本発明の実施例を述べるが、例示は単に本発明の説明のためであり、発明思考の限定を意図するものではない。
【００１５】
被塗装物として自動車のボディーに短期間の塗装を施し、利用後に原状復帰をすることを前提としての実施例を述べる。
【００１６】
被覆物の塗装部分を脂肪族系炭化水素系溶剤（ホワイトスピリッツやヘキサンなど）を用いて、脱脂洗浄を行い、ボディーに文字やイラストを、カッティングシートなどの型紙にして所定の場所に貼り付け、その他の非塗装面には高耐久性塗料の固着防止のために養生を行う。脂肪族系炭化水素系溶剤は、ゴム素材やプラスチック面、自動車ボディー塗膜などへの影響が少ないことから、脱脂用途にはこれらが適切である。
【００１６】
次に可剥性を有するアルコール可溶型ウレタン樹脂を主成分とした、下塗り塗料を１０〜２０ミクロン程度塗布する。アルコール溶剤系塗料としたのは、前述同様に素材や塗膜などをおかさないようにするためである。この下塗り塗料は薄すぎると後の剥離除去性が十分でないことがあり、また、厚すぎると上塗りの高耐久性塗料たとえば紫外線硬化塗料の硬化性に影響を及ぼすことがあるために注意を要する。
【００１７】
可剥性を有する下塗り塗料には必要に応じて、着色またはパール顔料やラメ材などを混合し加飾するが、混合する顔料などは耐久性に優れた有機・無機系顔料を目的の濃度に調整し混入する。
【００１８】
下塗り層の乾燥後（２０℃で１５〜２０分程度）、ウレタンアクリレート系高硬度型の紫外線硬化塗料を塗布する。一般に高耐久性塗料は硬化乾燥に時間を要するが、紫外線硬化塗料の場合は、数秒の紫外線ランプの照射で高耐久性塗膜が得られるので、極めて作業性に優れている。なお、その際に下塗り層が塗布された部分以外に紫外線硬化型塗料が塗装されると、従来通り剥離が困難になるため、周囲は丁寧に養生をする必要がある。
【００１９】
この紫外線塗料を希釈剤で塗装に適した粘度に調整し、所定の塗装方法で塗布する。この紫外線硬化塗料の塗装は、仕上がり上の観点からはエアースプレーが好適である。紫外線塗料の希釈に有機溶剤を使用した場合、紫外線照射は、この有機溶剤を完全に揮発させてから行う（通常２０℃で１５〜２０分程度）。有機溶剤が多量に残存していると、下塗り層が柔軟な可剥塗料という理由もあり、硬化時にワレなどを生じる恐れがあるので注意を要する。
【００２０】
紫外線硬化塗料は、適度な弾性回復力を持つタイプや高硬度のタイプなどがあり、被覆物の用途や性質などにより適宜選択する。
【００２１】
完全硬化したこの複合塗装膜は耐久性に優れ、少々の衝撃や酸・アルカリなど汚損物質などで簡単に剥離することはなく、数ヶ月間の利用に耐えうる。
【００２１】
剥離除去したい場合、被複層の一部をカッターなどで切り剥がし、きっかけを作ることで下塗り層と紫外線硬化型塗料との一体化した被覆膜全体を剥離除去することができる。
【００２２】
また、素材によっては界面活性剤１〜２％混合したアルコール系溶剤などに数分間浸漬することにより可剥層膜の膨潤を促し、さらに剥離除去が容易になる。
【００２３】
【発明の効果】
本発明は上述の構成により当初の目的を達成した。すなわち、従来では取り除くことが極めて困難であった高耐久性塗料による塗膜層を、可剥性能を有する下塗り塗料と複合化された塗膜系とすることにより、必要に応じて容易な剥離除去を行うことができる。さらにはこの下塗り塗料を意匠性の高いものとすることにより、可剥性付与と外観上の意匠性付与とを一つの工程で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施例を示す被覆層断面図。
【符号の説明】
１ 被塗装物
２ 可剥性下塗り塗料の塗装面
３ 高耐久性塗料（紫外線硬化型塗料）の塗装面

Claims (2)

1. 可剥性能を有する塗料を下塗りとし、上塗りに高耐久性塗料を塗布した複合塗膜型にすることで、表層は高耐久性塗膜層でありながら 容易に剥離除去できることを特徴とする塗装方法。
2. 上記の塗装方法の下塗り塗料は、透明のほかに半透明または完全隠蔽をするように着色した可剥性能を有する塗料を用いることで、剥離除去機能と加飾が、一つの工程で付与できることを特徴とする請求項１記載の塗装方法。

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