JP3592062B2 - 塗装フィルム一体化サイドプロテクターモールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車が隣合う車両や壁等に接触したとき、自動車のボディ側面、主としてドアを衝撃から保護するための自動車用サイドプロテクターモール(以下、「サイドモール」という。)の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
サイドモールは、樹脂の押出成形、射出成形等で作られ、車両本体の保護及び装飾性の向上に寄与している。特に、射出成形で成形されたサイドモールは、端末まで一体に且つ3次元的に作ることが可能で、デザイン的に自由度があり、又、車両当たり面側のリブ等の補強も可能で、車両本体の保護(プロテクター効果)にすぐれている。
サイドモールは、取付けられる場所が自動車のボディ側面であることから、その意匠性が重視される傾向にある。特に最近では、車両の高級化に伴い、サイドモールのカラー化が要求されている。
【0003】
なお、高い剛性を有し、大きな衝撃からドアを保護することができるサイドモールとしては、同一出願人による特開平8−175288号公報に開示されたものがあるが、このようなサイドモールにおいても、意匠性については特に考慮していない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
サイドモールのカラー化の方法としては、塗装が一般的である。そして、塗装用の塗料としては、一般的に、熱硬化性のウレタン塗料が用いられるが、その塗料は、弾性率の低い物を使用しても、塗料に伸びもなく、衝撃に弱い(例えば、弾性率7000kg/cm2の塗料を使用しても5〜10%しか伸びない)。
そのため、単に塗装されただけのサイドモールは、外部からの衝撃に弱く、塗料面が割れたり剥がれたりし易いという問題がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、サイドプロテクターモール本体に塗装フィルムが射出成形によって一体化されてなる塗装フィルム一体化サイドプロテクターモールの製造方法において、フッ素樹脂とアクリル樹脂の混合物を溶剤に溶解させたものを、キャリアシート上に塗布して乾燥させてクリア層を形成し、次に、前記クリア層の上に、フッ素樹脂とアクリル樹脂の混合物を溶剤に溶解させた後に顔料を添加したものを塗布して乾燥させて塗料層を形成し、さらに、前記塗料層の上に、熱可塑性材料からなる接着剤を介して、熱可塑性材料からなるバッキングシートを固着させることにより、前記クリア層、前記塗料層、及び前記バッキングシートの3層からなる塗装フィルムを前記キャリアシート上に形成し、前記射出成形前に前記塗装フィルムから前記キャリアシートを剥がし、前記バッキングシートを内側にして金型の内面に取付け射出成形を行うことを特徴とする塗装フィルム一体化サイドプロテクターモールの製造方法によって、前記の課題を解決した。
【0006】
熱可塑性樹脂をベースとする塗装フィルムとしては、クリア層と、塗料層と、バッキングシートとを積層させたものが好適である。
【0007】
【作用】
サイドモールの本体に射出成形によって一体化された塗装フィルムは、その塗装面が衝撃に強く、剥げにくい。
また、この塗装フィルムは、サイドモールの成形と同時にサイドモール本体の表面に一体化されるので、面倒な塗装作業の手間も省ける。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1(a)は、本発明の塗装フィルム一体化サイドモール10の縦断面図であり、図1(b)は図1(a)のサイドモール10に一体化される塗装フィルム20の構成を示す部分拡大図である。
図1(b)は、塗装フィルム20の構成の概要を示し、塗装フィルム20を構成する各層の具体的な要件は、後述するそれぞれの実施形態によって異なる。
図2は、図1の構成のサイドモール10が、ドア42に取付けられた車体40の斜視図である。
【0009】
本発明の塗装フィルム一体化サイドモール10は、サイドモール本体30の表面にバッキングシート26、塗料層24、クリア層22が積層されてなる塗装フィルム20が射出成形によって一体化されて構成されている(図1(b)参照)。
サイドモール本体30と一体化される塗装フィルム20は、キャリアシート(図示せず。)上に、クリア層22、塗料層24、及びバッキングシート26の3つの層を順次積層して、予め作製される。
ここで使用されるキャリアシートは、上記のクリア層22、塗料層24、及びバッキングシート26からなる塗装フィルム20を積層するためのベースとして使用されるものであり、上記の3層を積層した後に容易に剥がすことができるように、ポリエステルフィルム等の素材からなる。
【0010】
次に、塗装フィルム20を構成する各層について説明する。
まず、熱可塑性樹脂であるフッ素樹脂とアクリル樹脂の混合物を、アセトン等の溶剤に溶解させたものを、キャリアシート(図示せず。)上にロールコート等の方法で塗布して乾燥させ、第1の層であるクリア層22を作製する。
塗装フィルム20がサイドモール本体30に一体化されると、このクリア層22は最外側に位置して外部から加えられる衝撃から塗装フィルム20を保護するとともに、無色透明であるので後述する塗膜層24の色彩に影響を与えることがない。
次に、クリア層22で使用したフッ素樹脂とアクリル樹脂の混合物を、アセトン等の溶剤に溶解させたものに色彩を出すための顔料を添加し、これを上記のクリア層22の上に塗布して乾燥させ、第2の層である塗料層24を作製する。
さらに、上述の塗料層24の上に、熱可塑性材料で形成された第3の層であるバッキングシート26が接着剤等を介して固着される。
このバッキングシート26は、次の工程の射出成形用の材料と相溶性のよい熱可塑性材料で形成する。サイドモール本体30の射出成形の際に加熱されるので、このバッキングシート26は、積層されたクリア層22及び塗料層24とともに金型の形状に応じて変形し、サイドモール本体30と隙間なく、一体化されることになる。
【0011】
以上のように、ベースであるキャリアシート上にクリア層22、塗料層24、及びバッキングシート26の3層からなる塗装フィルム20が積層して作製された後、キャリアシートが剥がされる。
この塗装フィルム20を、バッキングシート26を内側にして射出成形の金型の内面に取付け、金型の空間にサイドモール材を流し込んで射出成形を行なう。塗装フィルム20は、シート状のままであることも、或いは、射出成形の金型に合わせて予備成形されることもある。
【0012】
上記の方法で作製される塗装フィルム20を使用した本発明の塗装フィルム一体化サイドモール10について、以下の実施形態により、具体的に説明する。
第1実施形態
弾性率8000kg/cm2、厚さ500μの 熱可塑性オレフィンからなるバッキングシートに、厚さ30μのクリア層と、厚さ25μの塗料層からなり、弾性率6000kg/cm2 、伸び率40%の塗装フィルムを固着させた。
この塗装フィルムを、バッキングシートを内側にして射出成形の金型のキャビティー面に取付けた後、金型の空間に弾性率10000kg/cm2のポリプロピレンを射出してサイドモールを成形した。
【0013】
このようにして成形された本発明の第1実施形態のサイドモールと、従来のサイドモールについて、外部からの衝撃に対する傷付き易さを比較したところ、表1に示す結果が得られた。
なお、従来のサイドモールとしては、弾性率10000kg/cm2のポリプロピレンを本発明のサイドモールと同形状に射出成形した後、ウレタン塗装が施されたものを使用したものである。
【表1】
上記の表1から、本発明の第1実施形態による塗装フィルム一体化サイドモールの塗装面は、従来のサイドモールと比較して、より大きな外力(10倍以上)が加わっても傷付きにくいことが分かる。
【0014】
次に、上記の方法で成形したサイドモールの第2乃至第4実施形態について具体的に示す。
第2実施形態
弾性率8000kg/cm2、厚さ500μの 熱可塑性オレフィンからなるバッキングシートに、厚さ30μのクリア層と、厚さ35μの塗料層からなり、弾性率4000kg/cm2 、伸び率100%の塗装フィルムを固着させた。
第3実施形態
弾性率10000kg/cm2、厚さ300μの 熱可塑性オレフィンからなるバッキングシートに、厚さ40μのクリア層と、厚さ50μの塗料層からなり、弾性率10000kg/cm2、伸び率40%の塗装フィルムを固着させた。
第4実施形態
弾性率8000kg/cm2、厚さ500μの 熱可塑性オレフィンからなるバッキングシートに、厚さ50μのクリア層と、厚さ50μの塗料層からなり、弾性率500kg/cm2、 伸び率300%の塗装フィルムを固着させた。
【0015】
これらの塗装フィルムを、それぞれバッキングシートを内側にして射出成形の金型のキャビティー面に取付けた後、金型に熱可塑性オレフィンのモールディング材を射出して、塗装フィルムと一体化されたサイドモールを形成した。
以上のように成形された、本発明の塗装フィルム一体化サイドモールについて、外部からの衝撃に対する傷付き易さを比較したところ、表2に示す結果が得られた。
【表2】
以上から、本発明の第2実施形態乃至第4実施形態の塗装フィルム一体化サイドモールの塗装面も、前述の従来のサイドモールと比較して、より大きな外力が加わっても傷付きにくいことが分かる。
【0016】
なお、本発明の射出成形方法としては、ガスアシスト射出成形を採用すると好適であり、それにより、プロテクター効果にすぐれたサイドモールを得ることができる。ガスアシスト射出成形自体は周知であるので、詳細な説明は省略する。
【0017】
また、本発明で使用するサイドモール本体の材料としては、ポリプロピレン、又は熱可塑性オレフィンが好適である。
【0018】
塗装フィルムの弾性率と伸び率については、種々実験の結果、弾性率は100乃至15000kg/cm2、伸び率は20乃至300%の範囲にあることが好適であることが分かった。この範囲外では、従来の塗装による場合と比較して、顕著な改良が見られない。
【0019】
【発明の効果】
本発明によれば、サイドモール本体の表面に射出成形によって一体化された熱可塑性樹脂をベースとする塗装フィルムの塗料層は、衝撃に強く、伸び率が高いので、従来のものよりも塗装面が剥げにくいという効果を奏する。
また、この塗装フィルムは、サイドモールの成形と同時にサイドモール本体に一体化されるので、別に塗装作業の必要がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は本発明の塗装フィルム一体化サイドモールの縦断面図であり、図1(b)は図1(a)の部分拡大図である。
【図2】本発明の塗装フィルム一体化サイドモールが取付けられた車体の斜視図である。
【符号の説明】
10:塗装フィルム一体化サイドモール
20:塗装フィルム
22:クリア層
24:塗料層
26:バッキングシート
30:サイド(プロテクター)モール本体
Claims (5)
- サイドプロテクターモール本体に塗装フィルムが射出成形によって一体化されてなる塗装フィルム一体化サイドプロテクターモールの製造方法において、
フッ素樹脂とアクリル樹脂の混合物を溶剤に溶解させたものを、キャリアシート上に塗布して乾燥させてクリア層を形成し、
次に、前記クリア層の上に、フッ素樹脂とアクリル樹脂の混合物を溶剤に溶解させた後に顔料を添加したものを塗布して乾燥させて塗料層を形成し、
さらに、前記塗料層の上に、熱可塑性材料からなる接着剤を介して、熱可塑性材料からなるバッキングシートを固着させることにより、前記クリア層、前記塗料層、及び前記バッキングシートの3層からなる塗装フィルムを前記キャリアシート上に形成し、
前記射出成形前に前記塗装フィルムから前記キャリアシートを剥がし、前記バッキングシートを内側にして金型の内面に取付け射出成形を行うことを特徴とする、
塗装フィルム一体化サイドプロテクターモールの製造方法。 - 前記キャリアシートがポリエステルからなる、請求項1の塗装フィルム一体化サイドプロテクターモールの製造方法。
- 請求項1の製造方法によって製造された、塗装フィルム一体化サイドプロテクターモール。
- 前記塗装フィルムが、その弾性率が100乃至15000kg/cm2、伸び率が20乃至300%の範囲にある、請求項1の塗装フィルム一体 化サイドプロテクターモールの製造方法。
- 前記サイドプロテクターモールの本体がポリプロピレン、又は熱可塑性オレフィンで成形されたものである、請求項1の塗装フィルム一体化サイドプロテクターモールの製造方法。
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