以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
なお、本明細書において、「板」、「シート」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「導電体付きシート」は板やフィルムと呼ばれ得るような部材をも含む概念であり、したがって、「導電体付きシート」は、「導電体付き板(基板)」や「導電体付きフィルム」と呼ばれる部材と、呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
また、「シート面(板面、フィルム面)」とは、対象となるシート状(板状、フィルム状)の部材を全体的かつ大局的に見た場合において対象となるシート状部材(板状部材、フィルム状部材)の平面方向と一致する面のことを指す。
また、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。
図1~図22は、本発明による一実施の形態を説明するための図である。このうち図1は、合わせ板を備えた自動車を概略的に示す図であり、図2は、合わせ板をその板面の法線方向から見た図であり、図3は、図2のIII-III線に沿った合わせ板の断面図である。
図1に示されているように、移動体の一例としての自動車1は、フロントウィンドウ、リアウィンドウ、サイドウィンドウ等の窓ガラスを有している。ここでは、フロントウィンドウ5が合わせ板10で構成されているものを例示する。この合わせ板10は、例えばデフロスタ(霜取り装置)、アンテナ、電磁波シールド、タッチパネル等に用いられる。また、自動車1はバッテリー等の電源7を有している。
この合わせ板10をその板面の法線方向から見たものを図2に示す。また、図2の合わせ板10のIII-III線に対応する断面図を図3に示す。図3に示された例では、合わせ板10は、一対の透明基板11,12と、一対の透明基板11,12の間に配置された導電体付きシート20と、透明基板11,12と導電体付きシート20とを接合する接合層13,14と、を有している。なお、図1および図2に示した例では、合わせ板10は湾曲しているが、その他の図では、理解の容易化のために、合わせ板10および透明基板11,12を平板状に図示している。
導電体付きシート20は、基材フィルム21と、一対のバスバー25と、基材フィルム21の一方の透明基板11に対面する面上に設けられたパターン導電体30と、を有する。
また、図2によく示されているように、合わせ板10は、パターン導電体30に通電するための配線部15を有している。図示された例では、バッテリー等の電源7によって、配線部15から導電体付きシート20のパターン導電体30に通電し、パターン導電体30を抵抗加熱により発熱させる。パターン導電体30で発生した熱は透明基板11,12に伝わり、透明基板11,12が温められる。これにより、透明基板11,12に付着した結露による曇りを取り除くことができる。また、透明基板11,12に雪や氷が付着している場合には、この雪や氷を溶かすことができる。したがって、乗員の視界が良好に確保される。尚、図示は省略しているが、通常、電源7とパターン導電体30に接続されたバスバー25との間に開閉器が挿入(直列に接続)される。そして、合わせ板10の加熱が必要な時のみ開閉器を閉じてパターン導電体30に通電する。
以下、合わせ板10の各構成要素について説明する。
まず、透明基板11,12について説明する。透明基板11,12は、図1で示された例のように自動車のフロントウィンドウに用いる場合、乗員の視界を妨げないよう可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。このような透明基板11,12の材質としては、ソーダライムガラスや青板ガラスが例示できる。あるいは、透明基板11,12の材質は、ポリカーボネート樹脂などの樹脂ガラスであってもよい。透明基板11,12の可視光透過率は90%以上であることが好ましい。ここで、透明基板11,12の可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。なお、透明基板11,12の一部または全体に着色するなどして、この一部分の可視光透過率を低くしてもよい。この場合、太陽光の直射を遮ったり、車外から車内を視認しにくくしたりすることができる。
また、透明基板11,12は、1mm以上5mm以下の厚みを有していることが好ましい。このような厚みであると、強度及び光学特性に優れた透明基板11,12を得ることができる。一対の透明基板11,12は、同一の材料で同一に構成されていてもよいし、或いは、材料および構成の少なくとも一方において互いに異なるようにしてもよい。
次に、接合層13,14について説明する。一方の接合層13が、一方の透明基板11と導電体付きシート20との間に配置され、一方の透明基板11と導電体付きシート20とを互いに接合する。他方の接合層14が、他方の透明基板12と導電体付きシート20との間に配置され、他方の透明基板12と導電体付きシート20とを互いに接合する。
このような接合層13,14としては、種々の接着性または粘着性を有した材料からなる層を用いることができる。また、接合層13,14は、可視光透過率が高いものを用いることが好ましい。典型的な接合層としては、ポリビニルブチラール(PVB)からなる層を例示することができる。接合層13,14の厚みは、それぞれ0.15mm以上1mm以下であることが好ましい。一対の接合層13,14は、同一の材料で同一に構成されていてもよいし、或いは、材料および構成の少なくとも一方において互いに異なるようにしてもよい。
なお、合わせ板10には、図示された例に限られず、特定の機能を発揮することを期待されたその他の機能層が設けられても良い。また、1つの機能層が2つ以上の機能を発揮するようにしてもよいし、例えば、合わせ板10の透明基板11,12、接合層13,14、後述する導電体付きシート20の基材フィルム21の、少なくとも一つに何らかの機能を付与するようにしてもよい。合わせ板10に付与され得る機能としては、一例として、反射防止(AR)機能、耐擦傷性を有したハードコート(HC)機能、赤外線遮蔽(反射)機能、紫外線遮蔽(反射)機能、防汚機能等を例示することができる。
次に、導電体付きシート20について説明する。導電体付きシート20は、基材フィルム21と、一対のバスバー25と、基材フィルム21の一方の透明基板11に対面する面上に設けられたパターン導電体30と、を有する。本実施の形態において、導電体付きシート20は、透明基板11,12と略同一の平面寸法を有して、合わせ板10の全体にわたって配置されているが、図1の例における運転席の正面部分等、合わせ板10の一部にのみ配置されてもよい。以下、導電体付きシート20の各構成要素について説明する。
基材フィルム21は、パターン導電体30を支持する基材として機能する。基材フィルム21は、可視光線波長帯域の波長(380nm~780nm)を透過する一般に言うところの透明である電気絶縁性のフィルムである。基材フィルム21としては、可視光を透過し、パターン導電体30を適切に支持し得るものであればいかなる材質のものでもよいが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、環状ポリオレフィン等を挙げることができる。あるいは、基材フィルム21は、ポリビニルブチラール(PVB)等の接着性を有する透明な材料からなっていてもよい。基材フィルム21が接着性を有する場合、基材フィルム21によって少なくとも一方の基板11,12と導電体付きシート20とを接着することができる。このため、基材フィルム21が接着性を有する場合、接合層13,14のうち少なくとも一方を合わせ板10から省略してもよい。また、基材フィルム21は、光透過性や、パターン導電体30の適切な支持性等を考慮すると、0.03mm以上0.80mm以下の厚みを有していることが好ましい。
なお、「透明」とは、当該基材フィルムを介して当該基材フィルムの一方の側から他方の側を透視し得る程度の透明性を有していることを意味しており、例えば、30%以上、より好ましくは70%以上の可視光透過率を有していることを意味する。可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm~780nmの範囲内で測定したときの、各波長における透過率の平均値として特定される。
バスバー25は、対応する配線部15と電気的に接続されている。一対のバスバー25間には、配線部15と接続された電源7の電圧が印加されるようになる。
次に、図4を参照しながら、パターン導電体30について説明する。図4は、導電体付きシート20をそのシート面の法線方向から見た平面図である。
パターン導電体30は、一対のバスバー25の間に配置されており、一対のバスバー25間を結ぶようにそれぞれ電気的に接続されている。パターン導電体30は、所定の配置パターンで配置された線状導電体31によって形成されている。パターン導電体30は、配線部15及びバスバー25を介して電圧を印加されると、抵抗加熱によって発熱する。そして、この熱が接合層13,14を介して透明基板11,12に伝わることで、透明基板11,12が温められる。
パターン導電体30の配列パターンのとしては、図4に示された一例のように、パターン導電体30は、線状導電体31が多数の開口領域33を画成するメッシュ状のパターンで配置されることによって形成され得る。パターン導電体30は、2つの分岐点32の間を延びて、開口領域33を画成する複数の接続要素34を含んでいる。すなわち、パターン導電体30の線状導電体31は、両端において分岐点32を形成する複数の接続要素34の集まりとして構成されている。
しかしながら、図4に示された例に限らず、図5に示された他の例のように、パターン導電体30は、一対のバスバー25を連結する複数の線状導電体31からなっていてもよい。図5に示された例において、複数の線状導電体31が、一方向に隙間35を空けて配置されている。各線状導電体31は、全体的に見た場合に、前記一方向と非平行な方向に延びている。各線状導電体31は、一方のバスバー25から他方のバスバー25へ延在している。そして、複数の線状導電体31は、当該線状導電体31の延在方向と非平行な方向に、互いから離間して配列されている。とりわけ、複数の線状導電体31は、当該線状導電体31の延在方向と直交する方向に配列されている。これにより、隣接する2つの線状導電体31の間には、隙間35が形成されている。
線状導電体31の配置密度D〔m/m2〕は、例えば100m/m2以上1300m/m2以下となっている。ここで、線状導電体31の配置密度Dとは、合わせ板10の平面視において単位面積〔m2〕あたりに配置されている線状導電体31の延在している長さ〔m〕の合計を意味する。とりわけ、線状導電体31が合わせ板10の全体に配置されており且つ線状導電体31の幅Wが合わせ板10の全体において一定である場合、線状導電体31の配置密度Dは、合わせ板10の全体の平面視での線状導電体31の面積を、平面視での合わせ板10の面積及び線状導電体31の幅で割った値となる。
このようなパターン導電体30及びバスバー25を構成するための材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、タングステン等の金属、及び、これらの金属の1種以上を含んでなる合金の一以上を例示することができる。パターン導電体30及びバスバー25は、同一の材料を用いて形成されていてもよいし、或いは、互いに異なる材料を用いて形成されていてもよい。
パターン導電体30は、上述したように不透明な金属材料を用いて形成され得る。その一方で、パターン導電体30によって覆われていない基材フィルム21上の領域の割合、すなわち開口率は、70%以上90%以下程度と高くなっている。また、線状導電体31の線幅は、2μm以上20μm以下程度となっている。このため、パターン導電体30が設けられている領域は、全体として透明に把握され、パターン導電体30の存在が合わせ板10の透視性を害さないようになっている。
図3に示された例では、線状導電体31は、全体として台形形状の断面を有している。線状導電体31の幅W、すなわち、合わせ板10の板面に沿った幅Wは2μm以上20μm以下とし、高さ(厚さ)H、すなわち、合わせ板10の板面への法線方向に沿った高さ(厚さ)Hは1μm以上60μm以下とすることが好ましい。このような寸法の線状導電体31によれば、その線状導電体31が十分に細線化されているので、パターン導電体30を効果的に不可視化することができる。
とりわけ、図3に示された例では、線状導電体31の幅は、基材フィルム21に接する側よりも、基材フィルム21に対向する側において、狭くなっている。さらに、線状導電体31の幅は、基材フィルム21の側から離間するにつれて、次第に狭くなっている。線状導電体31の断面における脚、すなわち線状導電体31の側面が、合わせ板10の板面に沿った方向及び合わせ板10の板面への法線方向に対して傾斜して一方の透明基板11の側を向いている。なお、線状導電体31の側面は、断面において、図示された例のように直線に限られず、曲線状であってもよい。
さらに、線状導電体31の各位置において、線状導電体31の線幅Wに対する高さHの比(H/W)は、0.5以上1.8以下であることが好ましく、0.7以上1.5以下であることがより好ましく、0.9以上1.35以下であることがさらに好ましい。このような寸法比の線状導電体31は、製造が容易であり、また高さに対して幅が大きすぎて透視性を害さないようにできる。また、このような寸法比の線状導電体31を合わせ板10の法線方向に傾斜した方向から観察しても、視認される線状導電体31の幅がほとんど変わらない。言い換えると、合わせ板10の法線方向に傾斜した方向から観察しても、透視性が害されにくい。
なお、前述したように、合わせ板10の透視性または合わせ板10を介した視認性を確保する観点から、開口率(非被覆率とも呼ばれる)が高くなるように、パターン導電体30の線状導電体31は基材フィルム21上に形成されている。その結果、図3に示すように、接合層13と導電体付きシート20の基材フィルム21とは、線状導電体31の開口領域33、すなわち隣り合う線状導電体31の間となる領域を介して接触している。すなわち、パターン導電体30は、接合層13内に埋め込まれた状態となっている。
また、図3に示された線状導電体31は、導電性金属層36、導電性金属層36の表面のうち、透明基板11に対向する側の面及び両側面を覆う黒化粗化層38を有している。優れた導電性を有する金属材料からなる導電性金属層36は、比較的高い反射率を呈する。そして、パターン導電体30の線状導電体31をなす導電性金属層36によって光が反射されると、その反射した光が視認されるようになり、ちらつきが発生する場合がある。そこで、黒化粗化層38が、導電性金属層36の表面を覆っている。黒化粗化層38は、導電性金属層36よりも可視光の反射率が低い層である。具体的には、黒化粗化層38は、可視光の反射率が15%以下、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下となっている。また、黒化粗化層38は、少なくとも表面が粗化されている。反射率が低く且つ表面が粗い黒化粗化層38によって、導電性金属層36での反射光が視認されにくくなり、ちらつきの発生を抑制することができる。とりわけ、黒化粗化層38によれば、単なる暗色層(黒化層)と比較して、ちらつきの発生を飛躍的に抑制することができる。黒化粗化層38によるちらつき抑制効果については、後に詳述する。このような黒化粗化層38は、例えば金属酸化物からなる酸化層として、形成される。
黒化粗化層38が導電性金属層36を覆う厚さtは、0.7μm以上、好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは1.3μm以上となっている。黒化粗化層38が十分な厚さを有していると、黒化粗化層38によって導電性金属層36での反射を抑制することができるため、ちらつきの発生を効果的に抑制することができる。しかしながら、黒化粗化層38は導電性金属層36に比べて抵抗が大きいため、線状導電体31を有するパターン導電体30を抵抗加熱により適切に発熱させるためには、黒化粗化層38の厚さtは、線状導電体31の幅Wに対して、小さくなっていることが望まれる。具体的には、黒化粗化層38の厚さtは、線状導電体31の幅Wの50%未満、好ましくは40%未満、さらに好ましくは20%未満となっていることが望まれる。なお、黒化粗化層38の厚さtを調節することで、線状導電体31及びパターン導電体30の抵抗を適宜調節し、パターン導電体30を抵抗加熱により適切に発熱させることができる。黒化粗化層38の厚さtの具体的な測定方法については、後述する。
なお、線状導電体31は、導電性金属層36の表面のうち、基材フィルム21に対向する側の面を覆う暗色層をさらに有していてもよい。暗色層は、導電性金属層36よりも可視光の反射率が低い層である。したがって、暗色層によれば、黒化粗化層38と同様に、導電性金属層36での反射光が視認されにくくなり、ちらつきの発生を抑制することができる。
次に、図6~図11を参照して、合わせ板10の製造方法の一例について説明する。図6~図11は、合わせ板10の製造方法の一例を順に示す断面図である。
まず、図6に示すように、導電性金属層36を形成するようになる金属膜36aを基材フィルム21上に設ける。金属膜36aは、導電性金属層36をなす材料として既に説明したように、金、銀、銅、白金、アルミニウム、クロム、モリブデン、ニッケル、チタン、パラジウム、インジウム、タングステン、及び、これらの合金の一以上を用いて形成され得る。金属膜36aは、公知の方法で形成され得る。例えば、銅箔等の金属箔を貼着する方法、電界めっき及び無電界めっきを含むめっき法、スパッタリング法、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法、又はこれらの二以上を組み合わせた方法を採用することができる。
次に、図7に示すように、金属膜36a上に、レジストパターン41を設ける。レジストパターン41は、形成されるべきパターン導電体30に対応した形となっている。ここで説明する方法では、最終的にパターン導電体30をなす箇所の上にのみ、レジストパターン41が設けられている。このレジストパターン41は、公知のフォトリソグラフィー技術を用いたパターニングにより形成することができる。
次に、図8に示すように、レジストパターン41をマスクとして、金属膜36aをエッチングする。形成される線状導電体31の幅に対してレジストパターン41の幅が十分に大きくなっている。このため、エッチング液は、まずレジストパターン41の隙間から金属膜36aを溶解する。そして溶解した金属膜36aの部分にエッチング液が侵入して、図8の矢印Aで示すように、基材フィルム21に沿った方向に、金属膜36aを溶解させる。すなわち、エッチングが金属膜36aの側方から進行する。このエッチングにより、金属膜36aがレジストパターン41と略同一のパターンにパターニングされる。この結果、パターニングされた金属膜36aから、線状導電体31の一部をなすようになる導電性金属層36が、形成される。
なお、エッチング方法は特に限られることはなく、公知の方法が採用できる。公知の方法としては、例えば、エッチング液を用いるウェットエッチングや、プラズマエッチングなどが挙げられる。その後、図9に示すように、レジストパターン41を除去する。
次に、図10に示すように、導電性金属層36の基材フィルム21に対向する側の面31bと反対側の面31a及び側面31c,31dに黒化粗化層38を形成する。黒化粗化層38は、例えば、亜塩素酸ナトリウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液の混合液に、基材フィルム21に設けられた導電性金属層36を浸漬させることで設けることができる。混合液における亜塩素酸ナトリウムの濃度は、9%以上であることが好ましく、14%以上であることがより好ましい。また、混合液における水酸化ナトリウムの濃度は、1.5%以上であることが好ましく、2%以上であることがより好ましい。混合液の温度は、例えば50℃である。導電性金属層36が設けられた基材フィルム21を混合液に浸漬させる時間は、3分以上20分以下であることが好ましい。
最後に、図11に示すように、パターン導電体30の側から接合層13及び透明基板11を積層して、導電体付きシート20と透明基板11とを接合する。同様に、基材フィルム21の側から接合層14及び透明基板12を積層して、導電体付きシート20と透明基板12とを接合する。これにより、図3に示した合わせ板10が作製される。
なお、導電性金属層36の表面のうち、基材フィルム21に対向する側の面を覆う暗色層を設ける場合、暗色層は、基材フィルム21上に設けられる金属膜36aの基材フィルム21側の面を黒化処理することで形成される。あるいは、暗色層は、基材フィルム21上に暗色層を形成するようになる暗色膜を設け、金属膜36aとともにエッチングされることで形成されてもよい。このような暗色膜は、例えば、電界めっき及び無電界めっきを含むめっき法、スパッタリング法、CVD法、PVD法、イオンプレーティング法、又はこれらの二以上を組み合わせた方法により設けることができる。暗色膜の材料としては、種々の公知のものを用いることができる。例えば窒化銅、酸化銅、窒化ニッケル等が例示できる。
ところで、上述したように、従来の透明な合わせ板を介した視界においては、ちらつきが発生することがあった。ちらつきは、外部から合わせ板に光が入射した際に、合わせ板のパターン導電体での反射光が強く視認されることで生じていた。ちらつきは、合わせ板を介した視界を悪化させるため、ちらつきの発生を抑制することが課題となっていた。そこで、ちらつきの発生を抑制するために、パターン導電体を形成する線状導電体がその表面に低反射性の暗色層(黒化層)を有するように設けて、パターン導電体での光の反射を低減することが行われていた。しかしながら、本件発明者らが確認したところ、線状導電体の表面に暗色層を設けても、パターン導電体での光の反射を十分に低減することはできず、合わせ板を介した視界において、ちらつきがなお発生していた。そこで、本件発明者らは検討を重ね、パターン導電体を形成する線状導電体が、その表面に、単なる反射率の低い暗色層ではなく、光拡散性を有する粗化された暗色層、すなわち黒化粗化層を有することで、ちらつきの発生を低減することができることを知見した。
図19は、導電性金属層136のみからなる線状導電体131の表面を拡大して示す写真である。また、図20は、表面に暗色層を有する線状導電体131の表面を拡大して示す写真である。図19及び図20に示されているように、いずれの線状導電体131においても、表面はほとんど粗化されていない。図21は、図19に示した導電性金属層136のみからなる線状導電体131の断面を示す写真である。図21において、線状導電体131(導電性金属層136)の周囲の黒色となっている部分は、基材フィルム及び断面の観察のために設けられた後述するエポキシ樹脂である。図21に示された線状導電体131の断面からも、線状導電体131の表面がほとんど粗化されていないことが理解される。
図21のような従来の線状導電体131は、表面がほとんど粗化されておらずほぼ平坦であるため、図22に示すように、外部からの光L21は、線状導電体131で反射されると概ね同一の方向に向かう。したがって、合わせ板110を介した視界において、外部からの光の反射光が強く観察され得る。すなわち、外部からの光によって、合わせ板110を介した視界においてちらつきが発生し、視界の妨げとなる。とりわけ、ちらつきは、合わせ板のパターン導電体での反射によって生じるため、外部からの光の入射方向と合わせ板の法線方向との角度によって決まる特定の方向に強く発生し得る。
一方、図12は、本実施の形態の表面に黒化粗化層38を有する線状導電体31の表面を拡大して示す写真である。図12に示されているように、本実施の形態の線状導電体31の表面は、図19及び図20に示した従来の線状導電体131に比べて、粗化されており凹凸が目立っている。図13は、本実施の形態の線状導電体31の断面を示す写真である。図13において、線状導電体31(導電性金属層36及び黒化粗化層38)の周囲の黒色となっている部分は、基材フィルム21及び断面の観察のために設けられた後述するエポキシ樹脂である。図13に示された線状導電体31の断面からも、線状導電体31の表面が粗化されていることが理解される。
本実施の形態の線状導電体31では、表面が粗化されているため、図14に示すように、外部からの光L15は、線状導電体31で反射されると様々な方向に拡散される。したがって、合わせ板10を介した視界において、外部からの光の反射光が特定の方向に強く視認さにくくなる。これにより、合わせ板10を介した視界においてちらつきが発生しにくくなり、視界を良好に保つことができる。
黒化粗化層38は、図12及び図13に示すようなポーラス状(多孔質状)であることが好ましい。黒化粗化層38がポーラス状であることで、図12に示すように、線状導電体31の粗化された表面に様々な方向に延びる細長状の部分ができやすくなる。細長状の部分に入射した光は、様々な方向に反射される。したがって、黒化粗化層38がポーラス状であると、外部からの光の反射光が特定の方向に強く視認されにくくなり、合わせ板10を介した視界においてちらつきが発生しにくくなる。
このような黒化粗化層38が十分な厚さである場合、線状導電体31の表面が十分に粗化され、外部からの光を様々な方向に拡散反射することができる。したがって、合わせ板10を介した視界においてちらつきが発生しにくくなると考えられる。本件発明者らが確認したところ、黒化粗化層38の厚さtが、0.7μm以上となっている場合、合わせ板10を介した視界においてちらつきの発生が抑制され、1.0μm以上となっている場合、ちらつきの発生が顕著に抑制され、1.3μm以上となっている場合、ちらつきがほとんど発生しなくなった。
ここで、黒化粗化層38の厚さtは、線状導電体31の断面を走査電子顕微鏡(SEM)等で観察することにより、測定される。走査電子顕微鏡で観察可能な線状導電体31の断面は、エポキシ樹脂で保護された線状導電体31を、イオンミリング法を用いて削ることで得る。図13に示されている線状導電体31の断面の画像は、イオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製 E-3500)を用いて得られた断面を、走査電子顕微鏡(日本電子製 JSM-7800F Prime)を用いて5000倍の倍率で観察することで得た。走査電子顕微鏡での観察条件は、加速電圧を15kV、作動距離を15mmとした。
観察された線状導電体31の断面の画像の階調について、特定の閾値を基準として2値化処理する。画像の最も明るい部分を100%、最も暗い部分を0%とし、その他の部分の明るさを0~100%で規定する。明るさが20%~80%の部分を黒、0~20%及び80~100%の部分を白として、線状導電体31の断面の画像について白黒の2値化処理を行う。2値化処理された画像では、黒化粗化層38が黒となり、導電性金属層36及びエポキシ樹脂が白となる。したがって、導電性金属層36と黒化粗化層38との境界を規定することができる。2値化処理された画像の黒の部分の幅を測定することで、黒化粗化層38の厚さが測定される。具体的には、線状導電体31の高さ(厚さ)方向において導電性金属層36と黒化粗化層38との境界に沿って等間隔に20点の測定位置を設け、各測定位置における黒の部分の幅を測定する。測定された20箇所での黒の部分の幅の平均を、黒化粗化層38の厚さtと規定する。
本件発明者らが検討を重ねたところ、ちらつきは、一例として、図15に示すように、合わせ板10に平行光線を照射するように光源51を配置し、合わせ板10の平行光線を照射される側とは反対側で平行光線の照射方向d1に対して一側d2へ70°傾斜した方向d3への輝度を輝度計52で測定することによって評価することができた。輝度計52による輝度の測定は、合わせ板10に平行光線を照射した状態で、平行光線の照射方向d1と平行光線の照射方向d1に対して一側d2へ70°傾斜した方向d3との両方に垂直な軸線(すなわち図15の紙面方向)を中心として合わせ板10の法線方向ndを平行光線の照射方向d1に対して一側d2へ角度θ1〔°〕傾斜させながら実施される。輝度の測定は、光源51及び輝度計52の位置を固定し、合わせ板10の傾斜角度θ1のみを変化させることで行われる。
なお、輝度の測定は、例えば標本化定理に基づいて、傾斜角度θ1を細かく変化させながら行われる。とりわけ、測定される輝度がピークを有する場合、ピークを示す傾斜角度θ1の近傍では、傾斜角度θ1を十分に細かく変化させながら、輝度の測定が行われることが好ましい。
合わせ板10の各傾斜角度θ1で測定された輝度を、傾斜角度θ1が0°のときの輝度が1となるように規格化する。すなわち、各傾斜角度θ1で測定された輝度について、傾斜角度θ1が0°のときの輝度で除算する。これにより、光源51の光の強さ、光源51と合わせ板10との距離や合わせ板10と輝度計52との距離等の影響のない、傾斜角度θ1のみに依存した規格した輝度を得ることができる。
輝度計52で測定される光には、光源51からの光を線状導電体31で反射した光と、合わせ板10の透明基板11,12等で散乱した光とが、含まれている。線状導電体31で反射した光は、ある方向にピークを有するように反射されると考えられる。したがって、線状導電体31で反射した光の分布は、その方向に対応する傾斜角度θ1pでピークとなる正規分布で近似することができる。透明基板11,12等に入射する光は、傾斜角度θ1が0°のときに最も大きく、傾斜角度θ1が大きくなるにつれて少なくなり、傾斜角度θ1が90°のときに0となる余弦関数で表される。また、散乱光の大きさは入射光の大きさに比例すると考えられる。したがって、透明基板11,12等で散乱する光の分布は、余弦関数の分布で近似することができる。
以上のことから、輝度計52で測定される輝度を規格化した規格化輝度は、パラメータL1p,θ1w、θ1pを用いて、以下の関数L1n(θ1)で近似して表すことができる。
L1n(θ1)=L1pexp(-2((θ1-θ1p)/θ1w)2)+cosθ1
ここで、パラメータL1p,θ1w、θ1pは、各傾斜角度θ1で輝度計52によって測定された輝度を規格化した規格化輝度を、関数L1n(θ1)に対して最小二乗法によってフィッティングすることで、得ることができる。
パラメータθ1wは、線状導電体31で反射した光がピーク値のexp(-2)倍となる半幅を表している。言い換えると、パラメータθ1wの2倍が、線状導電体31で反射した光のピークの幅を表している。合わせ板10を介した視界におけるちらつきは、反射光が特定の方向に強く視認されることで発生する。したがって、反射光が強く視認される方向が狭くなることで、ちらつきの発生を抑制することができる。具体的には、線状導電体31で反射した光のピークの幅2θ1wは、次の関係(i)を満たしていると、ちらつきの発生が抑制されることが確認された。
2θ1w<16° ・・・(i)
パラメータL1pは、線状導電体31で反射した光のピークでの強さを表している。輝度で表すことで、線状導電体31が配置された合わせ板10を平面状の光源と見た時のちらつきの強さと相関を持つ。合わせ板10を介した視界におけるちらつきは、反射光が特定の方向に強く視認されることで発生する。したがって、パラメータL1pが小さくなっていると、特定方向への反射光が弱くなっていることになるため、ちらつきの発生が抑制される。具体的には、パラメータL1pは、以下の関係(ii)を満たしていると、ちらつきの発生が抑制されることが確認された。
L1p<1.3 ・・・(ii)
また、パラメータL1pをDで除算した値L1p/Dは、単位面積あたりに配置されている線状導電体31の長さの合計あたりの、線状導電体31で反射した光のピークでの強さを表している。すなわち、線状導電体31を線状の光源と見たときのちらつきの強さと相関を持つ。ここで、Dは、上述した線状導電体31の配置密度〔m/m2〕を意味している。L1p/Dが小さくなっていると、ちらつきの発生が抑制される。具体的には、L1p/Dが以下の関係(iii)を満たしていると、ちらつきの発生が抑制されることが確認された。
L1p/D<0.002 ・・・(iii)
また、ちらつきは、他の例として、図16に示すように、合わせ板10の法線方向から一側d2の逆側である他側へ45°傾斜した方向から合わせ板10に平行光線を照射するように光源51を配置し、合わせ板10の平行光線を照射される側とは反対側での輝度を輝度計52で測定することによって評価することができた。輝度計52による輝度の測定は、合わせ板10に平行光線を照射した状態で、平行光線の照射方向d1と合わせ板10の法線方向ndとの両方に垂直な軸線(すなわち図16の紙面方向)を中心として合わせ板10の法線方向ndに対して一側d2へ輝度計52を角度θ2傾斜させた位置で実施される。輝度の測定は、光源51及び合わせ板の傾斜角度を固定し、合わせ板10の法線方向ndに対する輝度計52の傾斜角度θ2のみを変化させることで行われる。
なお、輝度の測定は、例えば標本化定理に基づいて、傾斜角度θ2を細かく変化させながら行われる。とりわけ、測定される輝度がピークを有する場合、ピークを示す傾斜角度θ2の近傍では、傾斜角度θ2を十分に細かく変化させながら、輝度の測定が行われることが好ましい。
輝度計52の各傾斜角度θ2で測定された輝度を、傾斜角度θ2が0°のときの輝度が1となるように規格化する。すなわち、各傾斜角度θ2で測定された輝度について、傾斜角度θ2が0°のときの輝度で除算する。これにより、光源51の光の強さ、光源51と合わせ板10との距離や合わせ板10と輝度計52との距離等の影響のない、傾斜角度θ2のみに依存した規格化した輝度を得ることができる。
輝度計52で測定される光には、光源51からの光を線状導電体31で反射した光と、合わせ板10の透明基板11,12等で散乱した光とが、含まれている。線状導電体31で反射した光は、ある方向にピークを有するように反射されると考えられる。したがって、線状導電体31で反射した光の分布は、その方向に対応する傾斜角度θ2pでピークとなる正規分布で近似することができる。透明基板11,12等で散乱する光は、均等散乱と考えた場合は、光の分布は一定である。
以上のことから、輝度計52で測定される輝度を規格化した規格化輝度は、パラメータL2p,θ2w、θ2pを用いて、以下の関数L2n(θ2)で近似して表すことができる。
L2n(θ2)=L2pexp(-2((θ2-θ2p)/θ2w)2)+1
ここで、パラメータL2p,θ2w、θ2pは、各傾斜角度θ2で輝度計52によって測定された輝度を規格化した規格化輝度を関数L2n(θ2)に対して、最小二乗法によってフィッティングすることで、得ることができる。
パラメータθ2wは、線状導電体31で反射した光がピーク値のexp(-2)倍となる半幅を表している。言い換えると、パラメータθ2wの2倍が、線状導電体31で反射した光のピークの幅を表している。合わせ板10を介した視界におけるちらつきは、反射光が特定の方向に強く視認されることで発生する。したがって、反射光が強く視認される方向が狭くなることで、ちらつきの発生を抑制することができる。具体的には、線状導電体31で反射した光のピークの幅2θ2wは、次の関係(iv)を満たしていると、ちらつきの発生が抑制されることが確認された。
2θ2w<16° ・・・(iv)
パラメータL2pは、線状導電体31で反射した光のピークでの強さを表している。合わせ板10を介した視界におけるちらつきは、反射光が特定の方向に強く視認されることで発生する。したがって、パラメータL2pが小さくなっていると、特定方向への反射光が弱くなっていることになるため、ちらつきの発生が抑制される。具体的には、パラメータL2pは、以下の関係(v)を満たしていると、ちらつきの発生が抑制されることが確認された。
L2p<1.85 ・・・(v)
図19乃至図22に示すような従来の線状導電体131では、低反射性及び光拡散性を有する黒化粗化層を有しなかったため、線状導電体131で反射した光は拡散されにくい。したがって、線状導電体131で反射した光について、輝度の全体的なばらつきや全体的な大きさの変化を小さくしにくく、線状導電体31で反射した光のピークの幅や、線状導電体31で反射した光のピークでの強さが、小さくなりにくい。すなわち、従来の合わせ板においては、関係(i)~(v)を満たすことは困難であった。
一方、図12乃至図14に示すような本実施の形態の線状導電体31では、その表面に低反射性及び光拡散性を有する黒化粗化層38を有するため、とりわけ黒化粗化層38の厚さtが0.7μm以上、好ましくは1.0μm以上、さらに好ましくは1.3μm以上であるため、外部からの光の線状導電体31での反射を低減するだけでなく、線状導電体31で反射した光を拡散することができる。したがって、線状導電体31で反射した光のピークの幅や、線状導電体31で反射した光のピークでの強さを小さくすることができる。すなわち、本実施の形態の合わせ板においては、関係(i)~(v)を満たすことが可能となる。このことについては、後述する実施例および比較例からも理解される。
加えて、線状導電体31の表面が粗化されていることで、線状導電体31の表面からの輻射によって合わせ板10の局所的な加熱を回避して合わせ板10を均一に加熱しながら、透明基板11,12に熱を伝達させることができる。言い換えると、透明基板11,12を効率よく発熱させることができる。さらに、線状導電体31の表面が黒化されていることで、線状導電体31の表面からの輻射を促進することができる。このため、線状導電体31の表面からの輻射によって合わせ板10の局所的な加熱を効果的に回避して合わせ板10を均一に加熱しながら、透明基板11,12に効率よく熱を伝達させることができる。言い換えると、より効率よく透明基板11,12を発熱させることができる。
また、本実施の形態において、線状導電体31は、合わせ板10の板面に沿った方向及び合わせ板10の板面への法線方向に対して傾斜した面である側面を含んでいる。線状導電体31からの輻射する熱は、線状導電体31の表面の略法線方向に出射される。したがって、線状導電体31の側面からの輻射によって伝達される熱は、透明基板11、12に向かいやすくなっている。すなわち、透明基板11,12の方へ熱を伝えやすくなっている。
とりわけ、線状導電体31の傾斜した側面が黒化粗化層38に覆われていることで、線状導電体31の側面からの輻射を促進し、透明基板11,12に効率よく熱を伝達させることができる。言い換えると、より効率よく透明基板11,12を発熱させることができる。
加えて、基材フィルム21に支持されたパターン導電体30を透明基板11,12の間に配置して導電体付きシート20と透明基板11,12とを接合する工程において、線状導電体31の断面における脚、すなわち線状導電体31の側面が、合わせ板10の板面の法線方向に対して傾斜している場合、パターン導電体30が接合層13に埋め込まれる際に、接合層13とパターン導電体30との間に、空気等が入り込むことを効果的に抑制することができる。したがって、気泡によって合わせ板10を介した視界が悪化することを避けることができる。また、空気に触れた接合層13が酸化して黄変することや、空気に触れたパターン導電体30が酸化して導電性が低下することを効果的に抑制することができる。
以上のように、本実施の形態の合わせ板10は、一対の透明基板11,12と、一対の透明基板11,12の間に配置されたパターン導電体30と、を備える合わせ板であって、パターン導電体30は、複数の線状導電体31を含み、合わせ板10に平行光線を照射した状態で、合わせ板10の平行光線を照射される側とは反対側で平行光線の照射方向d1に対して一側d2へ70°傾斜した方向d3において測定される輝度であって、平行光線の照射方向d1と平行光線の照射方向d1に対して一側d2へ70°傾斜した方向d3との両方に垂直な軸線を中心として合わせ板10の法線方向ndを平行光線の照射方向d1に対して一側d2へ角度θ1傾斜させて測定される輝度について、各傾斜角度θ1で測定された輝度を傾斜角度0°で測定された輝度で除算することで算出される各傾斜角度θ1での規格化輝度を、平行光線の照射方向d1に対する傾斜角度θ1を変数とする次の関数L1n(θ1)に対して、最小二乗法によってフィッティングすることで得られるパラメータL1p、θ1wが、次の関係(i)及び(iii)を満たす。
L1n(θ1)=L1pexp(-2((θ1-θ1p)/θ1w)2)+cosθ1
2θ1w<16° ・・・(i)
L1p<1.3 ・・・(ii)
このような合わせ板10によれば、線状導電体31で反射した光のピークの幅2θ1wが十分に小さくなっており、且つ線状導電体31で反射した光のピークでの強さが十分に小さくなっている。したがって、特定の方向に反射光が強く観察されにくくなり、ちらつきの発生を抑制することができる。
また、本実施の形態の合わせ板10は、一対の透明基板11,12と、一対の透明基板11,12の間に配置されたパターン導電体30と、を備える合わせ板であって、パターン導電体30は、複数の線状導電体31を含み、合わせ板10に平行光線を照射した状態で、合わせ板10の平行光線を照射される側とは反対側で平行光線の照射方向d1に対して一側d2へ70°傾斜した方向d3において測定される輝度であって、平行光線の照射方向d1と平行光線の照射方向d1に対して一側d2へ70°傾斜した方向d3との両方に垂直な軸線を中心として合わせ板10の法線方向ndを平行光線の照射方向d1に対して一側d2へ角度θ1傾斜させて測定される輝度について、各傾斜角度θ1で測定された輝度を傾斜角度0°で測定された輝度で除算することで算出される各傾斜角度θ1での規格化輝度を、平行光線の照射方向に対する傾斜角度θ1を変数とする次の関数L1n(θ1)に対して、最小二乗法によってフィッティングすることで得られるパラメータL1p、θ1wと、線状導電体31の配置密度D〔m/m2〕とが、次の関係(i)及び(iii)を満たす。
L1n(θ1)=L1pexp(-2((θ1-θ1p)/θ1w)2)+cosθ1
2θ1w<16° ・・・(i)
L1p/D<0.002 ・・・(iii)
このような合わせ板10によれば、線状導電体31で反射した光のピークの幅2θ1wが十分に小さくなっており、且つ合わせ板10全体での線状導電体31で反射した光のピークでの強さが十分に小さくなっている。したがって、特定の方向に反射光が強く観察されにくくなり、ちらつきの発生を抑制することができる。
さらに、本実施の形態の合わせ板10は、一対の透明基板11,12と、一対の透明基板11,12の間に配置されたパターン導電体30と、を備える合わせ板であって、パターン導電体30は、複数の線状導電体31を含み、合わせ板10の法線方向ndから一側d2の逆側である他側へ45°傾斜した方向から合わせ板10に平行光線を照射した状態で、合わせ板10の平行光線を照射される側とは反対側で測定される輝度であって、平行光線の照射方向d1と合わせ板10の法線方向ndとの両方に垂直な軸線を中心として合わせ板10の法線方向ndに対して一側d2へ角度θ2傾斜した方向で測定される輝度について、各傾斜角度θ2で測定された輝度を傾斜角度0°で測定された輝度で除算することで算出される各傾斜角度θ2での規格化輝度を、合わせ板10の法線方向ndに対する輝度が測定される方向の傾斜角度θ2を変数とする次の関数L2n(θ2)に対して、最小二乗法によってフィッティングすることで得られるパラメータL2p、θ2wが、次の関係(iv)及び(v)を満たす。
L2n(θ2)=L2pexp(-2((θ2-θ2p)/θ2w)2)+1
2θ2w<16° ・・・(iv)
L2p<1.85 ・・・(v)
このような合わせ板10によれば、線状導電体31で反射した光のピークの幅2θ2wが十分に小さくなっており、且つ線状導電体31で反射した光のピークでの強さが十分に小さくなっている。したがって、特定の方向に反射光が強く観察されにくくなり、ちらつきの発生を抑制することができる。
また、本実施の形態の合わせ板10は、一対の透明基板11,12と、一対の透明基板11,12の間に配置されたパターン導電体30と、を備える合わせ板であって、パターン導電体30は、複数の線状導電体31を含み、線状導電体31は、その表面に黒化粗化層38を有し、黒化粗化層38の厚さは、0.7μm以上であり且つ線状導電体31の幅Wの50%未満である。このような合わせ板10によれば、線状導電体31の表面を0.7μm以上黒化することで線状導電体31の表面での外部からの光の反射を低減し、また、線状導電体31の表面を0.7μm以上粗化することで外部からの光を様々な方向に拡散反射することができる。線状導電体31がその表面に厚さ0.7μm以上の黒化粗化層38を有することで、線状導電体31での反射光が特定の方向で強く視認されにくくなり、合わせ板10を介した視界においてちらつきが発生しにくくすることができる。また、黒化粗化層38の厚さが線状導電体31の幅Wの50%未満であるため、線状導電体31を有するパターン導電体30を抵抗加熱により適切に発熱させることができる。
なお、上述した実施の形態に対して様々な変更を加えることが可能である。
上述した実施の形態では、合わせ板10が、基材フィルム21を有している導電体付きシート20を備える例を示したが、製造過程において基材フィルム21を剥離させる等によって、合わせ板10中に基材フィルム21を有さないようにしてもよい。この場合、合わせ板10の全体を薄型にすることができ、また軽量化することができる。さらに、パターン導電体30から生じる熱を、合わせ板10全体により早く伝達させることもできる。
前述した実施の形態において、合わせ板10が曲面状に形成されている例を示したが、この例に限られず、合わせ板10が、平板状に形成されていてもよい。
合わせ板10は、デフロスタとして、自動車1のリアウィンドウ、サイドウィンドウやサンルーフに用いてもよい。また、自動車以外の、鉄道車両、建設機械、航空機、船舶、宇宙船等の移動体の窓或いは扉の透明部分に用いてもよい。
さらに、合わせ板10は、移動体以外にも、特に室内と室外とを区画する箇所、例えばビルや店舗、住宅の窓或いは扉の透明部分、建物の窓又は扉、冷蔵庫、展示箱、戸棚等の收納乃至保管設備の窓あるいは扉の透明部分等に使用することもできる。
なお、合わせ板10は、デフロスタ以外の用途、例えばヒータ等として用いられてもよい。デフロスタ以外の用途についても、合わせ板10は、自動車等の移動体の窓や建物の窓等の透明部分に使用することができる。
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
実施例1~3、比較例1及び参考例1として、線状導電体がその表面に図12に示すような黒化粗化層を有する合わせ板を用意した。実施例1~3、比較例1及び参考例1では、黒化粗化層の厚さが異なっている。また、比較例2,3として、図20に示すような線状導電体が表面に粗化されていない暗色層を有する合わせ板を用意した。比較例2及び3では、線状導電体の配置密度Dが異なっている。さらに、比較例4,5として、図19に示すような線状導電体が導電性金属層のみからなる合わせ板を用意した。比較例4,5では、線状導電体の配置密度Dが異なっている。
各実施例、比較例及び参考例について、図15に示すように、合わせ板に平行光線を照射するように光源51を配置し、合わせ板の平行光線を照射される側とは反対側で平行光線の照射方向d1に対して一側d2へ70°傾斜した方向d3への輝度を輝度計52で測定した。輝度計52による輝度の測定は、平行光線の照射方向d1と平行光線の照射方向d1に対して一側d2へ70°傾斜した方向d3に垂直な軸線(すなわち図15の紙面方向)を中心として合わせ板の法線方向ndを平行光線の照射方向d1に対して一側d2へ角度θ1傾斜させて実施した。
各実施例、比較例及び参考例の合わせ板の各傾斜角度θ1で測定された輝度を、傾斜角度θ1が0°のときの輝度が1となるように規格化する。すなわち、各傾斜角度θ1で測定された輝度について、傾斜角度θ1が0°のときの輝度で除算する。これにより、各実施例、比較例及び参考例について、傾斜角度θ1のみに依存した規格化した輝度を得ることができる。輝度計52で測定される輝度を規格化した輝度は、パラメータL1p,θ1w、θ1pを用いて、以下の関数L1n(θ1)で近似して表すことができる。
L1n(θ1)=L1pexp(-2((θ1-θ1p)/θ1w)2)+cosθ1
各実施例、比較例及び参考例について、各傾斜角度θ1で輝度計52によって測定された輝度を規格化した規格化輝度を関数L1n(θ1)に対して、最小二乗法によってフィッティングし、パラメータL1p,θ1wを得た。実施例1~3、比較例1及び参考例1の各傾斜角度θ1に対する規格化輝度のグラフを図17に、比較例2~5の各傾斜角度θ1に対する規格化輝度のグラフを図18に、それぞれ示す。また、線状導電体での反射光のピークでの強さであるパラメータL1p,パラメータθ1wの2倍であるピークの幅の2θ1w、線状導電体の配置密度D、合わせ板全体での線状導電体での反射光のピークでの強さL1p/Dについて、実施例1~3、比較例1及び参考例1については以下の表1に、比較例2~5については以下の表2に、それぞれ示す。また、実施例、参考例及び比較例について、ちらつきの発生の有無を目視にて確認した。以下の表1及び表2において、目視ではちらつきの発生が確認されなかったものにはAを、目視で目立つほどのちらつきの発生が確認されなかったものにはBを、目視で目立ったちらつきの発生が確認されたものにはCを、それぞれ付している。さらに、実施例1~3、参考例1及び比較例1については、黒化粗化層の厚さt及び黒化粗化層の線状導電体の幅に対する割合t/Wについても、以下の表1に示している。
図17及び図18から明らかなように、比較例1~3及び5では、平行光線が合わせ板に対して特定の角度で入射する場合、輝度計52で測定される輝度に幅の広いピークが生じていた。表1及び表2に記載されているように、比較例1~3及び5において、線状導電体での反射光のピークの幅の2θ1wは、16°以上となっている。また、比較例2,4では、平行光線が合わせ板に対して特定の角度で入射する場合、輝度計52で測定される輝度に大きなピークが生じていた。表2に記載されているように、比較例2,4において、線状導電体での反射光のピークでの強さであるパラメータL1pは、1.3以上となっている。さらに、比較例3~5では、パラメータL1pをDで除算した値であって、合わせ板全体での線状導電体での反射光のピークでの強さを示す値であるL1p/Dは、0.002以上となっている。これらは、合わせ板に特定の角度で入射した光の反射光が特定の方向で明るく観察されることを意味する。すなわち、比較例1~5の合わせ板では、ちらつきが発生していると考えられる。実際に比較例1~5の合わせ板では、目視により、ちらつきの発生が確認された。
一方、図17から明らかなように、実施例1~3及び参考例1では、平行光線の合わせ板10への入射角度に対する輝度に幅の広いピークや輝度の大きなピークが生じていなかった。表1に記載されているように、実施例1~3及び参考例1において、線状導電体での反射光のピークの幅の2θ1wは、16°未満となっており、線状導電体での反射光のピークでの強さであるパラメータL1pは、1.3未満となっており、合わせ板全体での線状導電体での反射光のピークでの強さを示すL1p/Dは、0.002未満となっている。これらは、合わせ板に入射した光が特定の方向で明るく観察されることがないことを意味する。すなわち、実施例1~3及び参考例1の合わせ板では、ちらつきの発生は抑制されていると考えられる。実際に実施例1~3及び参考例1の合わせ板では、目視では、ちらつきの発生が確認されなかった。
なお、参考例1の合わせ板では、ちらつきの発生を抑制することはできるが、黒化粗化層の厚さt及び黒化粗化層の線状導電体の幅に対する割合t/Wが50%以上となっている。このため、線状導電体の抵抗が大きくなりすぎて、線状導電体を有するパターン導電体を適切に発熱させることができない。したがって、参考例1の合わせ板は、デフロスタ等の用途で用いることは困難なものとなっている。