JP7306869B2 - 二色射出成形体 - Google Patents

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Description

本発明は、二色射出成形体に関する。
従来、自動車の内外装部品向けにハードコート処理が施されたポリカーボネートやABS樹脂、漆黒調に塗装されたASA、ABS樹脂等の成形品が用いられている。しかしながら、ハードコート処理(HC処理)では、コート斑発生による不良や生産性が低いといった問題があり、塗装では塗料に含まれる揮発性有機化合物(VOC)の問題が挙げられる。こういった問題を背景にコスト削減の観点から、HC処理や塗装をしない成形品が切望されており、コンパウンドによる樹脂への代替について、近年盛んに検討されている。
その中でも熱可塑性樹脂としては、主にメタクリル系樹脂が検討されることが多くなっている。その理由は、メタクリル系樹脂が耐候性に優れることと、樹脂の中で最も表面硬度の高い部類に属し、外観に優れているためである。
しかし、メタクリル系樹脂は機械強度が他の樹脂に比べて低い傾向にあり、特に自動車用の内装部材や外装部材としての前方、側面の意匠部材としては、殆ど採用されていない現状にある。そこで、成形体の表層にメタクリル系樹脂を使用し、下地層を異樹脂で補強する二色成形体が知られている。また、表層をメタクリル系樹脂にすることにより、艶のある高外観を発現することが可能である。
表層に外観の良い樹脂を使用し、下地層を異樹脂で補強し、耐衝撃性を改良する技術としては、特許文献1や特許文献2に二層射出成形体として、開示されている。
しかしながら、二色成形体の下地層にメタクリル系樹脂以外の熱可塑性樹脂を用いた場合、例えば、経年耐侯劣化により、二色成形体の表層と下地層の接触面で劣化が起こり、外観不良が発生するという問題がある。
この下地層の耐候劣化を解消すべく、例えば、特許文献3では、二色成形体の表面にハードコート処理を行い、紫外線をカットする技術が開示されている。
特開平9-85779号公報 特開平11-157018号公報 特開昭63-153703号公報
特許文献1は、衝撃強度は改良されているものの、実施例においては表層にポリプロピレン、基材(下地層)にエラストマーを使用しており、耐候劣化の懸念がある。また、耐候性においては、課題や解決手段等の記載も示唆もない。
また、特許文献2では、表層にASA系樹脂(アクリロニトリル、スチレン、アクリルゴム系共重合体)を使用し、コア層が少なくともエポキシ化合物を含有する樹脂組成物で形成されており、機械強度の改良と表層とコア層の二層の耐剥離性についての記載はあるが、二層成形体としての外観と耐候劣化、表面硬度においては懸念がある。
また、特許文献3は、ハードコート処理のため、生産性が低く、透明なメタクリル系樹脂を使用しているため、やはり表層と下地層との接触面での耐候劣化の懸念がある。
以上のような状況の中、本発明においては上述の従来技術の問題点に鑑み、塗装やHCレスで環境負荷が少なく、表面硬度、外観、耐候性及び耐衝撃性に優れる二色射出成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、メタクリル系樹脂を含む表層を有し、SCE測定での明度(L*)が0.01以上2.5以下に制御した二色射出成形体にすることで、上述の従来技術における課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1]
メタクリル系樹脂を含む表層を有し、
SCE測定での明度(L)が0.01以上2.5以下であり、
前記メタクリル系樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量が50000~300000であり、
前記メタクリル系樹脂のGPC溶出曲線から得られるピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合が、前記メタクリル系樹脂の前記GPC溶出曲線の総面積に対して、6~50%であり、
前記表層の厚さt1(単位:mm)と下地層の厚さt2(単位:mm)とが、下記式(1)で表される関係を満たし、
0.9≦t1/t2≦3 ・・・(1)
前記表層と前記下地層との2層の積層体であり、
全体の厚みが2.2~4mmである、
ことを特徴とする二色射出成形体。
[2]
前記下地層が熱可塑性樹脂を含み、
前記熱可塑性樹脂のVICAT軟化点温度が100℃以上である、[1]に記載の二色射出成形体。
[3]
前記下地層が熱可塑性樹脂を含み、
前記熱可塑性樹脂が、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン・スチレン系共重合体)、AS系樹脂(アクリロニトリル、スチレン系共重合体)、MBS系樹脂(メチルメタクリレート、ブタジエン・スチレン系共重合体)、AAS系樹脂(アクリロニトリル、アクリルゴム、スチレン系共重合体)、ASA系樹脂(アクリロニトリル、スチレン、アクリルゴム系共重合体)、及びAES系樹脂(アクリロニトリル、エチレン・プロピレン・ジエン、スチレン)からなる群より選ばれる1種以上である、[1]又は[2]に記載の二色射出成形体。
[4]
前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート系樹脂、及びABS系樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン・スチレン系共重合体)からなる群より選ばれる1種以上である、[3]に記載の二色射出成形体。
[5]
二輪車用又は自動車用の意匠材である、[1]~[4]のいずれかの二色射出成形体。
[6]
自動車外装用意匠材である、[5]の二色射出成形体。
[7]
テールランプガーニッシュ、リアランプガーニッシュ、フロントランプガーニッシュ、ピラーガーニッシュ、フロントグリル、リアグリル、ライセンスガーニッシュ、ホイールセンターキャップ、ナンバープレートガーニッシュ、ドアミラーカバー、又はスライドベルトモールである、[6]の二色射出成形体。
本発明によれば、塗装やHCレスで環境負荷が少なく、表面硬度、外観、耐候性及び耐衝撃性に優れる二色射出成形体を提供することができる。
実施例の外観評価におけるリメルトの説明図である。 実施例の外観評価におけるウエルドの説明図である。 実施例の外観評価におけるヒケの説明図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と言う。)について、詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
なお、本明細書において、重合前のモノマー成分のことを「~単量体」といい、単に「単量体」と表記することもある。また、重合体を構成する構成単位のことを「~単量体単位」といい、単に「~単位」と表記することもある。
本実施形態の二色射出成形体は、メタクリル系樹脂を含む表層を有し、SCE測定での明度(L*)が0.01以上2.5以下であることを特徴とする。本実施形態の二色射出成形体は、さらに下地層を有することが好ましく、上記表層と上記下地層とが接していることがより好ましい。また、本実施形態の二色射出成形体は、上記表層と上記下地層との2層の積層体であることが好ましい。
[メタクリル系樹脂]
以下、表層に含まれるメタクリル系樹脂の詳細について述べる。
上記メタクリル系樹脂は、メタクリル酸エステル単量体単位(「メタクリル酸エステル単量体」に由来する単量体単位)からなる単独重合体であっても、メタクリル酸エステル単量体単位と、該メタクリル酸エステル単量体に共重合可能な他のビニル単量体単位(「他のビニル単量体」に由来する単量体単位)とを含む共重合体であってもよい。このなかでも、共重合体が好ましい。
(メタクリル酸エステル単量体)
上記メタクリル酸エステル単量体としては、本発明の効果を達成できるものであれば特に限定されないが、好ましい例としては、下記一般式(I)で示される単量体が挙げられる。
Figure 0007306869000001
(一般式(I)中、Rは炭素原子が1~18個からなる炭化水素基であって、該炭化水素基の炭素上の水素原子は水酸基やハロゲン基によって置換されていてもよい。)
上記メタクリル酸エステル単量体としては、特に限定されないが、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸(2-エチルヘキシル)、メタクリル酸(t-ブチルシクロヘキシル)、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸(2,2,2-トリフルオロエチル)等が挙げられる。このなかでも、取扱いや入手のし易さの観点より、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル等がより好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましい。上記メタクリル酸エステル単量体は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
メタクリル系樹脂が共重合体である場合、上記メタクリル酸エステル単量体単位の含有量は、メタクリル系樹脂の総量に対して、好ましくは80~99.9質量%であり、より好ましくは88~99質量%であり、さらに好ましくは90~98質量%である。メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が80質量%以上であることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。また、メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が99.9質量%以下であることにより流動性がより向上する傾向にある。
(他のビニル単量体)
上記他のビニル単量体としては、特に限定されないが、好ましい例としては、下記一般式(II)で表されるアクリル酸エステル単量体が挙げられる。
Figure 0007306869000002
(一般式(II)中、Rは炭素原子が1~18個からなる炭化水素基であって、該炭化水素基の炭素上の水素原子が水酸基やハロゲン基によって置換されていてもよい。)
上記アクリル酸エステル単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸(2-エチルヘキシル)、アクリル酸(t-ブチルシクロヘキシル)、アクリル酸ベンジル、アクリル酸(2,2,2-トリフルオロエチル)等が挙げられる。このなかでも、取り扱いや入手のし易さの観点より、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル等がより好ましく、アクリル酸メチルが特に好ましい。
また、メタクリル酸エステル単量体に共重合可能な、一般式(II)で表されるアクリル酸エステル単量体以外の他のビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸やメタクリル酸等のα,β-不飽和酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、桂皮酸等の不飽和基含有二価カルボン酸及びそれらのアルキルエステル;スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメチルスチレン、3,5-ジメチルスチレン、p-エチルスチレン、m-エチルスチレン、о-エチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、イソプロペニルベンセン(α-メチルスチレン)等のスチレン系単量体;1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、1,1-ジフェニルエチレン、イソプロペニルトルエン、イソプロペニルエチルベンゼン、イソプロペニルプロピルベンゼン、イソプロペニルブチルベンゼン、イソプロペニルペンチルベンゼン、イソプロペニルヘキシルベンゼン、イソプロペニルオクチルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド等;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート等の2個のアルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール誘導体をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ジビニルベンゼン等の多官能モノマー;等が挙げられる。
一般式(II)で表される上記アクリル酸エステル単量体や、一般式(II)で表されるアクリル酸エステル単量体以外の他のビニル単量体等の他のビニル単量体は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
他のビニル単量体に由来する単量体単位の含有量は、メタクリル系樹脂の総量に対して、好ましくは0.1~20質量%であり、より好ましくは1.0~15質量%であり、さらに好ましくは1.5~12質量%であり、特に好ましくは2.0~10質量%である。他のビニル単量体に由来する単量体単位の含有量が0.1質量%以上であることにより、流動性及び耐熱性がより向上する傾向にある。また、他のビニル単量体に由来する単量体単位の含有量が20質量%以下であることにより、耐熱性がより向上する傾向にある。
メタクリル系樹脂においては、耐熱性、加工性等の特性を向上させる目的で、上記例示したビニル単量体以外のビニル系単量体を適宜添加して共重合させてもよい。
(メタクリル系樹脂の重量平均分子量及び分子量分布)
上記メタクリル系樹脂の重量平均分子量及び分子量分布について説明する。
上記メタクリル系樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)は、50000~300000であることが好ましい。メタクリル系樹脂の重量平均分子量が上記範囲内であることにより、流動性、機械的強度、及び耐溶剤性のバランスを図ることができ、良好な成形加工性が維持される傾向にある。特に、優れた機械的強度及び耐溶剤性を得る観点から、メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、50000以上が好ましく、60000以上がより好ましく、70000以上がさらに好ましく、80000以上がさらにより好ましく、90000以上がよりさらに好ましい。また、メタクリル系樹脂が良好な流動性を示す観点から、メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は300000以下であることが好ましく、250000以下がより好ましく、230000以下がさらに好ましく、210000以下がさらにより好ましく、180000以下がよりさらに好ましい。
メタクリル系樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.6~6.0であり、より好ましくは1.7~5.0であり、さらに好ましくは1.8~5.0である。メタクリル系樹脂の分子量分布が上記範囲内であることにより成形加工流動と機械強度のバランスがより優れる傾向にある。ここで、Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。
メタクリル系樹脂の分子量分布の制御方法としては、後述するメタクリル系樹脂の製造時に連鎖移動剤やイニファータを段階的に添加する方法や、低分子量成分と高分子量成分を別々に重合して溶融ブレンドする方法等が挙げられる。
メタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPCで測定することができ、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
具体的には、あらかじめ単分散の重量平均分子量が既知で試薬として入手可能な標準メタクリル系樹脂と、高分子量成分を先に溶出する分析ゲルカラムを用い、溶出時間と重量平均分子量から検量線を作成しておき、続いて得られた検量線を元に、所定の測定対象のメタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求めることができる。得られた重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)から分子量分布を算出することができる。数平均分子量(Mn)とは、単純な分子1本あたりの分子量の平均であり、系の全重量/系中の分子数で定義される。重量平均分子量(Mw)とは、重量分率による分子量の平均で定義される。
(ピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合)
耐溶剤性、流動性の観点から、メタクリル系樹脂のGPC溶出曲線から得られるピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合は、メタクリル系樹脂のGPC溶出曲線の総面積に対して、好ましくは3~50%であり、より好ましくは4~50%であり、さらに好ましくは6~50%であり、さらに好ましくは7~45%であり、さらに好ましくは8~43%であり、よりさらに好ましくは9~40%であ、さらにより好ましくは10~38%である。メタクリル系樹脂中のピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合が6%以上であることより、成形流動性がより向上する傾向にあり、表層のヒケやウエルド等の外観不良が抑制される傾向にある。また、メタクリル系樹脂中のピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合が50%以下であることより、耐溶剤性がより向上する傾向にある。
ここで、「ピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合(%)」とは、GPC溶出曲線の全エリア面積を100%とした場合の、ピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分に相当するエリア面積の割合であり、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。なお、「ピークトップ分子量(Mp)」とは、GPC溶出曲線においてピークを示す重量分子量を指す。GPC溶出曲線においてピークが複数存在する場合は、存在量が最も多い重量分子量が示すピークにおける分子量を、ピークトップ分子量(Mp)とする。
なお、重量平均分子量が500以下のメタクリル系樹脂成分は、成形時にシルバーと呼ばれる発泡様の外観不良の発生を防止するため、できる限り少ない方が好ましい。
(メタクリル系樹脂の製造方法)
メタクリル系樹脂は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合法もしくは乳化重合法のいずれかの方法により製造することができる。このなかでも、好ましくは、塊状重合、溶液重合及び懸濁重合法であり、より好ましくは懸濁重合法である。
重合温度は、重合方法に応じて適宜最適の重合温度を選択すればよいが、好ましくは50℃以上100℃以下であり、より好ましくは60℃以上90℃以下である。
メタクリル系樹脂を製造する際には、重合開始剤を用いてもよい。重合開始剤としては、特に限定されないが、ラジカル重合を行う場合は、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ステアリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシネオデカネート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等のアゾ系の一般的なラジカル重合開始剤;が挙げられる。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらのラジカル開始剤と適当な還元剤とを組み合わせてレドックス系開始剤として用いてもよい。
これらのラジカル重合開始剤及び/又はレドックス系開始剤は、メタクリル系樹脂の重合の際に使用する全単量体の総量100質量部に対して、0~1質量部の範囲で用いるのが一般的であり、重合を行う温度と重合開始剤の半減期を考慮して適宜選択することができる。
メタクリル系樹脂の重合方法として、塊状重合法、キャスト重合法、又は懸濁重合法を選択する場合には、メタクリル系樹脂の着色を防止する観点から、有機過酸化物を重合開始剤として用いて重合することが好ましい。このような有機過酸化物としては、上記と同様のものが挙げられ、このなかでもラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、及びt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等が好ましく、ラウロイルパーオキサイドがより好ましい。
また、メタクリル系樹脂を、90℃以上の高温下で溶液重合法により重合する場合には、10時間半減期温度が80℃以上で、かつ用いる有機溶媒に可溶である有機過酸化物及びアゾビス開始剤等を重合開始剤として用いることが好ましい。このような有機過酸化物及びアゾビス開始剤としては、上記と同様のものが挙げられ、このなかでも1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等が好ましい。
メタクリル系樹脂を製造する際には、必要に応じて、メタクリル系樹脂の分子量の制御を行ってもよい。メタクリル系樹脂の分子量を制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、重合方法又は重合条件を変える方法、重合開始剤の選択、連鎖移動剤やイニファータ等の量を調整する方法等が挙げられる。これらの分子量制御方法は、一種の方法のみを用いてもよく、二種以上の方法を併用してもよい。
イニファータとしては、特に限定されないが、例えば、ジチオカルバメート類、トリフェニルメチルアゾベンゼン、テトラフェニルエタン誘導体等が挙げられる。
連鎖移動剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキルメルカプタン類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、トリエチルアミン等が挙げられる。このなかでも、取扱性や安定性の観点から、アルキルメルカプタン類が好ましい。当該アルキルメルカプタン類としては、特に限定されないが、例えば、n-ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、n-オクタデシルメルカプタン、2-エチルヘキシルチオグリコレート、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が挙げられる。
連鎖移動剤及びイニファータは、目的とするメタクリル系樹脂(A)の分子量に応じて適宜添加することができ、連鎖移動剤及びイニファータの添加量を調整することにより、分子量を調整することが可能である。一般的には、メタクリル系樹脂(A)の重合の際に使用する全単量体の総量100質量部に対して0.001質量部~5質量部の範囲で用いられる。
また、GPC溶出曲線から得られるピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合が、6~50%の範囲であるメタクリル系樹脂を製造する方法としては、低分子量のメタクリル系樹脂と高分子量のメタクリル系樹脂とを溶融ブレンドする方法や、多段重合法により製造する方法等が挙げられる。上記のMpの1/5以下の分子量を有する成分の割合が6~50%のメタクリル系樹脂を製造する場合、その方法については特に限定されるものではないが、品質安定性の観点から多段重合法を使用することがより好ましい。
多段重合法を使用する場合、まず、1段目の重合において、メタクリル酸エステル単量体と他のビニル単量体とを重合し、GPCで測定した重量平均分子量が5000~50000である重合体(i)を製造することが好ましい。次に、重合系内を1段目の重合温度よりも高い温度に一定時間保持する。その後、重合体(i)の存在下で、メタクリル酸エステル単量体と他のビニル単量体とをさらに重合し、重量平均分子量が60000~350000である重合体(ii)を製造することが好ましい。なお、メタクリル系樹脂が単独重合体である場合には、他のビニル単量体を用いずに、1段目及び2段目の重合において、単独重合を行う。また、メタクリル系樹脂が単独重合体と共重合体の混合物であるような場合には、1段目の重合において単独重合を行い、2段目の重合において共重合を行うこともできる。
製造時の重合安定性及びメタクリル系樹脂の流動性や樹脂成形体の機械的強度を向上させる観点そして成形体表面の分子配向緩和の観点から、重合体(i)の含有量は、メタクリル系樹脂の総量に対して、好ましくは5~50質量%であり、重合体(ii)の含有量は、メタクリル系樹脂の総量に対して、好ましくは95~50質量%である。重合安定性、流動性、成形体の機械的強度、成形体表面の分子配向緩和のバランスを考慮すると、重合体(i)/重合体(ii)の含有量比率は、より好ましくは7~47質量%/93~53質量%、さらに好ましくは10~45質量%/90~65質量%であり、さらにより好ましくは13~43質量%/87~57質量%であり、よりさらに好ましくは15~40質量%/85~60質量%である。
さらに、重合体(i)は、メタクリル酸エステル単量体単位80~100質量%及び他のビニル単量体単位0~20質量%を含む重合体であることが好ましく、メタクリル酸エステル単量体単位90~100質量%及び他のビニル単量体単位0~10質量%を含む重合体であることがより好ましく、メタクリル酸エステル単量体単位95~100質量%及び他のビニル単量体単位0~5質量%を含む重合体であることがさらに好ましい。重合体(i)を構成する単量体単位の比率は、多段重合の重合体(i)の重合工程において添加する単量体量を制御することにより調整することができる。重合体(i)は、他のビニル単量体の含有量が少ない方が好ましく、他のビニル単量体を含まなくてもよい。
また、成形時のシルバー等の不具合抑制、重合安定性、流動性の観点から、重合体(i)の重量平分均子量は、好ましくは5000~50000であり、より好ましくは10000~45000であり、さらに好ましくは18000~42000であり、特に好ましくは20000~40000である。重合体(i)の重量平均分子量は、上述したように、連鎖移動剤やイニファータを用いたり、これらの量を調整したり、重合条件を適宜変更することにより制御できる。重合体(i)の重量平分均子量は、上記同様、GPCで測定することができる。
重合体(ii)は、メタクリル酸エステル単量体単位80~99.9質量%及び他のビニル単量体単位0.1~20質量%を含む重合体であることが好ましく、メタクリル酸エステル単量体単位90~99.9質量%及び他のビニル単量体単位0.1~10質量%を含む重合体であることがより好ましく、メタクリル酸エステル単量体単位92.5~99.8質量%及び他のビニル単量体単位0.2~7.5質量%を含む重合体であることがさらに好ましい。重合体(ii)を構成する単量体単位の比率は、多段重合の重合体(ii)の重合工程において添加する単量体量を調整することにより制御することができる。
また、耐溶剤性、流動性の観点から、重合体(ii)の重量平分均子量は、好ましくは60000~350000であり、より好ましくは100000~320000であり、さらに好ましくは130000~300000であり、よりさらに好ましくは150000~270000である。重合体(ii)の重量平均分子量は、上述したように、連鎖移動剤やイニファータを用いたり、これらの量を調整したり、重合条件を適宜変更することにより制御できる。重合体(ii)の重量平分均子量は、上記同様、GPCで測定することができる。
上記多段重合法は、重合体(i)と重合体(ii)のそれぞれの組成を制御しやすく、重合時の重合発熱による温度上昇が押さえられ、系内の粘度も安定化できる。この場合、重合体(i)の重合が完了しないうちに重合体(ii)の原料組成混合物は一部重合が開始されている状態であってもよいが、一度キュア(この場合、系内を重合温度より高い温度に保つこと)を行い、重合を完了させた後に重合体(ii)の原料組成混合物を添加する方が好ましい。1段目にキュアを行うことにより、重合が完了するだけでなく、未反応の単量体、開始剤、連鎖移動剤等を除去又は失活させることができ、2段目の重合に悪影響を及ぼさなくなる。結果として、目的の重量平均分子量を得ることができる。
重合温度は、重合方法に応じて適宜最適の重合温度を選択して製造すればよいが、好ましくは50℃以上100℃以下であり、より好ましくは60℃以上90℃以下である。重合体(i)及び重合体(ii)の重合温度は、同じであっても異なっていてもよい。
キュアの際に昇温させる温度は、重合体(i)の重合温度よりも5℃以上高くすることが好ましく、より好ましくは7℃以上、さらに好ましくは10℃以上である。さらに、キュアの際に昇温した温度で保持する時間は、10分間以上180分間以下が好ましく、より好ましくは15分間以上150分間以下である。
(添加剤や着色剤の混練方法)
メタクリル系樹脂と後述の各種添加剤や着色剤とを混練してメタクリル系樹脂組成物を得る方法としては、例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、ローラミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練製造する方法等が挙げられる。特に、押出機による混練が、生産性の面で好ましい。なお、メタクリル系樹脂組成物は、ペレットとしてもよい。
混練温度は、メタクリル系樹脂の好ましい加工温度に従えばよく、目安としては150~350℃の範囲である。
メタクリル系樹脂組成物を得た後、これを用いて二色成形等することにより二色射出成形体が得られる。メタクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂のみとしてもよいし、メタクリル系樹脂と添加剤や着色剤等との混合物としてもよい。
[熱可塑性樹脂]
以下、下地層に含まれる熱可塑性樹脂について述べる。
下地層に含まれる熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、メタクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シンジオタクテックポリスチレン系樹脂、ABS系樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン・スチレン系共重合体)、AS系樹脂(アクリロニトリル、スチレン系共重合体)、MBS系樹脂(メチルメタクリレート、ブタジエン・スチレン系共重合体)、AAS系樹脂(アクリロニトリル、アクリルゴム、スチレン系共重合体)、ASA系樹脂(アクリロニトリル、スチレン、アクリルゴム系共重合体)、AES系樹脂(アクリロニトリル、エチレン・プロピレン・ジエン、スチレン)、生分解性樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂等が挙げられる。この中でも、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂、AS系樹脂、MBS系樹脂、AAS系樹脂、ASA系樹脂、及びAES系樹脂からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましく、耐衝撃性の観点で、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂、ASA系樹脂、AES系樹脂がより好ましい。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、特に非晶性樹脂が表層のメタクリル系樹脂との密着性の観点で好ましく、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂、AS系樹脂、ASA系樹脂、AES系樹脂がより好ましい。
また、上記熱可塑性樹脂は、複数の樹脂を混合したポリマーアロイであってもよく、ポリカーボネートとABS系樹脂とを含むポリマーアロイが好ましく、ポリカーボネートとABS系樹脂とのみからなるポリマーアロイがより好ましい。
また、下地層の熱可塑性樹脂に後述の着色剤を含有しても良い。
上記熱可塑性樹脂は、VICAT軟化点温度が100℃以上の熱可塑性樹脂であることがより好ましい。
VICAT軟化点温度が100℃以上の熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、耐熱アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シンジオタクテックポリスチレン系樹脂、ABS系樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン・スチレン系共重合体)、AS系樹脂(アクリロニトリル、スチレン系共重合体)、MBS系樹脂(メチルメタクリレート、ブタジエン・スチレン系共重合体)、AAS系樹脂(アクリロニトリル、アクリルゴム、スチレン系共重合体)、ASA系樹脂(アクリロニトリル、スチレン、アクリルゴム系共重合体)、AES系樹脂(アクリロニトリル、エチレン・プロピレン・ジエン、スチレン)、生分解性樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂等が挙げられる。この中でも、耐熱アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂、AS系樹脂、MBS系樹脂、AAS系樹脂、ASA系樹脂、及びAES系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、耐衝撃性の観点で、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂、ASA系樹脂、AES系樹脂がより好ましい。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、特に非晶性樹脂が表層のメタクリル系樹脂との密着性の観点で好ましく、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂、AS系樹脂、ASA系樹脂、AES系樹脂がより好ましい。
また、上記熱可塑性樹脂は、複数の樹脂を混合したポリマーアロイであってもよく、ポリカーボネートとABS系樹脂とを含むポリマーアロイが好ましく、ポリカーボネートとABS系樹脂とのみからなるポリマーアロイがより好ましい。
また、下地層の熱可塑性樹脂に後述の着色剤を含有しても良い。
上記熱可塑性樹脂のVICAT軟化点温度は、100℃以上であることにより、リメルトによる外観不良が抑制される傾向に有り、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは115℃以上である。
VICAT軟化点温度は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
(添加剤や着色剤の混練方法)
下地層に含まれる熱可塑性樹脂と後述の各種添加剤や着色剤とを混練して熱可塑性樹脂組成物を得る方法としては、例えば、押出機、加熱ロール、ニーダー、ローラミキサー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練製造する方法等が挙げられる。特に、押出機による混練が、生産性の面で好ましい。なお、熱可塑性樹脂組成物は、ペレットとしてもよい。
混練温度は、熱可塑性樹脂の好ましい加工温度に従えばよく、目安としては150~350℃の範囲である。
熱可塑性樹脂組成物を得た後、これを用いて二色成形等することにより二色射出成形体が得られる。熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂のみとしてもよいし、熱可塑性樹脂と添加剤や着色剤等との混合物としてもよい。
[その他の添加剤]
本実施形態の二色射出成形体を構成する表層のメタクリル系樹脂及び下地層の熱可塑性樹脂には、必要に応じて、各種のその他の添加剤を添加してもよい。
上記添加剤としては、例えば、ポリエーテル系、ポリエーテルエステル系、ポリエーテルエステルアミド系、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩等の帯電防止剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤等の安定剤;難燃剤;難燃助剤;硬化剤;硬化促進剤;導電性付与剤;応力緩和剤;結晶化促進剤;加水分解抑制剤;衝撃付与剤;相溶化剤;核剤;強化剤;補強剤;流動調整剤;増感剤;ゴム質重合体;増粘剤;沈降防止剤;タレ防止剤;充填剤;消泡剤;カップリング剤;防錆剤;抗菌・防黴剤;防汚剤;導電性高分子;等が挙げられる。
特に、熱安定剤、紫外線吸収剤及び難燃剤等を添加することが幅広い屋内外用途として、好ましい。また、応力緩和剤や衝撃付与剤として、ゴム質共重合体を添加してもよい。
また、下地層にメタクリル系樹脂を用いる場合は、耐衝撃性の観点で、ゴム質共重合体を添加することが好ましい。
(熱安定剤)
熱安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工安定剤等の酸化防止剤等が挙げられる。このなかでも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。このような熱安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-о-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリン)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミン)フェノール等が挙げられ、ペンタエリスリトールテラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられる。このなかでも、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物が好ましい。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、優れた成形加工性を得る観点から、紫外線吸収剤の20℃における蒸気圧(P)は、好ましくは1.0×10-4Pa以下であり、より好ましくは1.0×10-6Pa以下であり、さらに好ましくは1.0×10-8Pa以下である。ここで、「優れた成形加工性」とは、例えば射出成形時に、金型表面への紫外線吸収剤等の付着が少ないことや、フィルム成形時に、紫外線吸収剤等のロールへの付着が少ないこと等を意味する。紫外線吸収剤がロールへ付着すると、最終的に目的とする成形体の表面に紫外線吸収剤が付着してしまい、外観性、光学特性を悪化させるおそれがあるため、成形体を光学用材料として使用する場合は特に上記成形加工性に優れていることが重要である。
また、ブリードアウト防止の観点から、紫外線吸収剤の融点(Tm)は、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは130℃以上であり、さらにより好ましくは160℃以上である。
さらに、ブリードアウト防止の観点から、23℃から260℃まで20℃/minの速度で昇温した場合の紫外線吸収剤の質量減少率は、好ましくは50%以下であり、より好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは15%以下であり、さらにより好ましくは10%以下であり、よりさらに好ましくは5%以下である。
(難燃剤)
難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、環状窒素化合物、リン系難燃剤、シリコン系難燃剤、籠状シルセスキオキサン又はその部分開裂構造体、シリカ系難燃剤等が挙げられる。
種々な添加剤を混合する場合の混練方法としては、上述の方法等に従えばよく、特に限定されるものではない。
[着色剤]
上記表層、及び/又は上記下地層は、着色剤を含んでいてもよい。
着色剤としては特に限定されないが、耐候性の観点から、アントラキノン系染料、複素環式化合物系染料及びペリノン系染料からなる群より選ばれるものが好ましい。アントラキノン系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent Violet 36、Solvent Green 3、同28、Solvent Blue 94、同97、及びDisperse Red 22等が挙げられる。複素環式化合物系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Disperse Yellow 160等が挙げられる。ペリノン系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent red 179等が挙げられる。
その他着色剤として、カーボンブラック、ケッチェンブラック、ライオナイトブラック、カーボンナノチューブ、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、マイカ、ウォラストナイト、カーボンナノチューブ等を使用しても良い。
上記着色剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
表層であるメタクリル系樹脂により漆黒性の深みを増す観点から、表層中の着色剤の含有量は、メタクリル系樹脂100質量部に対し、0.1質量部~2質量部を含むことが好ましい。0.1質量部以上であることにより、隠蔽性が発現し、2質量部以下であることにより、ブリードアウトや耐候性の低下が抑制できる。0.1質量部~1.7質量部がより好ましく、0.2質量部~1.6質量部がさらに好ましく、0.3質量部~1.5質量部がさらにより好ましい。
[二色射出成形体の特性]
以下、本実施形態の二色射出成形体の特性について説明する。
(二色射出成形体の明度(L*))
本実施形態の二色射出成形体の「明度(L*)」とは、JIS Z8729において採用されているL***表色系における色彩値のうちの明度の値(L*)を意味し、「SCE方式」とは、JIS Z8722に準拠した分光測色計を用い、光トラップによって正反射光を除去して色を測る方法を意味する。
本実施形態の二色射出成形体のSCE測定での明度(L*)は、0.01以上2.5以下であり、好ましくは0.01以上2.3以下であり、より好ましくは0.01以上2.0以下であり、さらに好ましくは0.01以上1.5以下、特に好ましくは0.01以上1.2以下である。L*が上記範囲であることにより、下地層への光の透過が抑制でき、下地層と表層との界面での耐侯劣化が低減される。
上記の明度L*を発現するためには、表層に含まれるメタクリル系樹脂に上記着色剤を添加し調整することが好ましい。特に、表層に含まれるメタクリル系樹脂を漆黒調にすることにより、より高外観で耐候性に優れる二色射出成形体を得ることができる。
また、表層に着色剤を添加しない場合は、下地層に上記着色剤を添加し、明度L*を調整することも可能であり、二色射出成形体のL*が上記範囲にあることにより、着色剤により光吸収が発生し、下地層の耐候劣化が低減される傾向にある。
(成形体の表層の厚さと下地層の厚さの関係)
本実施形態の二色射出成形体は、表層の厚さt1(単位:mm)と下地層の厚さt2(単位:mm)とが、下記式(1)で表される関係を満たすことが好ましい。
0.9≦t1/t2≦3 ・・・(1)
成形体が、上記式(1)で表される関係を有することにより、成形体の外観や機械強度に優れる。
t1/t2は、好ましくは1.0~2.8であり、さらに好ましくは1.1~2.6であり、さらにより好ましくは、1.2~2.5である。t1/t2が1以上であることにより、表層のヒケやウエルドといった外観が解消できる傾向にあり、t1/t2が3以下であることにより、下地層の強度が保持できる傾向にある。
二色射出成形体の全体の厚みとしては、4mm以下であることが好ましく、3.5mm以下であることがより好ましく、3mm以下であることがさらにより好ましい。4mm以下であることより、部材の軽量化や材料コストを低減可能である。
[二色射出成形体の製造方法]
本実施形態の二色射出成形体は、例えば、下記のようにして製造することができ、二色成形法により製造することが好ましい。
まず、下地層を形成するため、必要に応じてペレットの形態である熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物を射出成形機の金型キャビティ内に投入する。この際、金型としては成形体の形状に対する形状の金型キャビティを有し、樹脂の流動を高め、成形歪低減のために2点ゲート以上である金型を用いることがより好ましい。特に耐熱温度や機械強度が強い熱可塑性樹脂を成形する場合は、2点ゲート以上での成形が有効である。またゲート種類は、ピンゲート、サイドゲート等が好ましい。
次いで、その射出成形機により所定の条件にて、表層としてメタクリル系樹脂組成物を射出成形する。この際、金型としては成形体の形状に対応する形状の金型キャビティを有し、かつ、表面のウエルド発生を抑制するために、1点ゲートである金型を用いることが好ましい。
また、その金型におけるゲートの位置は、最終的に得られる成形体において別部材によって覆われることで目視にて確認できなくなるような部分と接触する位置であると好ましく、ゲート種類は、サイドゲード、ファンゲート、タブゲート、ホットランナーバルブゲート等が好ましい。こうして本実施形態の二色射出成形体を得ることができる。
二色射出成形体の長さは100mm以上であることが長尺成形体を得るうえで、好ましい。110mm以上であることがさらに好ましく、120mm以上であることがさらにより好ましい。
また、二色射出成形体は、サンドイッチ成形により作製されてもよく、その場合は、下地層は、コア層となる。
表層の射出成形時の金型温度は、成形するメタクリル系樹脂のVICAT軟化点温度に対して、VICAT-65℃~VICAT-5℃の範囲に調整することが好ましい。金型温度は、より好ましくは、VICAT-60℃~VICAT-10℃の範囲であり、さらに好ましくは、VICAT-55℃~VICAT-15℃の範囲であり、最も好ましくは、VICAT-50℃~VICAT-20℃の範囲である。この範囲に調整することで、外観に優れた二色射出成形体を得ることができる。
上記熱可塑性樹脂としてポリカーボネート系樹脂を用いる場合、ポリカーボネート系樹脂の射出成形時の金型温度は、ポリカーボネート系樹脂のVICAT軟化点温度に対して、VICAT-110℃~VICAT-20℃の範囲に調整することが好ましい。金型温度は、より好ましくは、VICAT-100℃~VICAT-30℃の範囲であり、さらに好ましくは、VICAT-90℃~VICAT-40℃の範囲である。この範囲に調整することで、外観に優れた二色射出成形体を得ることができる。
上記熱可塑性樹脂としてABS系樹脂を用いる場合、ABS系樹脂の射出成形時の金型温度は、ABS系樹脂のVICAT軟化点温度に対して、VICAT-75℃~VICAT-5℃の範囲に調整することが好ましい。金型温度は、より好ましくは、VICAT-70℃~VICAT-10℃の範囲であり、さらに好ましくは、VICAT-65℃~VICAT-15℃の範囲であり、最も好ましくは、VICAT-60℃~VICAT-20℃の範囲である。この範囲に調整することで、外観に優れた二色射出成形体を得ることができる。
上記熱可塑性樹脂としてポリカーボネート系樹脂とABS系樹脂とのポリマーアロイ(PC/ABS系樹脂)を用いる場合、ポリカーボネート(PC)系樹脂とABS系樹脂のポリマーアロイの射出成形時の金型温度は、成形するPC/ABS系樹脂のVICAT軟化点温度に対して、VICAT-100℃~VICAT-10℃の範囲に調整することが好ましい。金型温度は、より好ましくは、VICAT-90℃~VICAT-15℃の範囲であり、さらに好ましくは、VICAT-80℃~VICAT-20℃の範囲である。この範囲に調整することで、外観に優れた二色射出成形体を得ることができる。
また、本発明の成形方法は下地層成形後に稼働側金型を回転させて表層を連続的に成形する二色成形の他、別途成形した下地層に相当する成形体を金型にはめ込んで、表層を成形するインサート成形でも実施することが出来る。
[二色射出成形体の用途]
本実施形態の二色射出成形体は、表面硬度、高外観、耐候性かつ耐衝撃性が要求される各種用途に好適に使用できる。このような用途としては特に限定されないが、例えば、家具類、家庭用品、収納・備蓄用品、壁・屋根等の建材、玩具・遊具、パチンコ面盤等の趣味用途、医療・福祉用品、OA機器、AV機器、電池電装用、照明機器、船舶、航空機の構造の車体部品、車両用部品等に使用可能であり、特に車体部品や車両用部品等の車両用途や、光学用途、電気・電子用途に好適に用いることができる。光学用途としては、例えば、各種レンズ、タッチパネル等、また、太陽電池に用いられる透明基盤等が挙げられる。
その他、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバーEL照明等のカバー等としても利用することができる。
電気・電子用途としては、例えば、パソコン、ゲーム機、テレビ、カーナビ、電子ペーパー等のディスプレイ装置、プリンター、コピー機、スキャナー、ファックス、電子手帳やPDA、電子式卓上計算機、電子辞書、カメラ、ビデオカメラ、携帯電話、電池パック、記録媒体のドライブや読み取り装置、マウス、テンキー、CDプレーヤー、MDプレーヤー、携帯ラジオ・オーディオプレーヤー等が挙げられる。特に、テレビ、パソコン、カーナビ、電子ペーパー等の筐体の意匠性部品等に好適に用いることができる。
特に、二輪車用又は自動車用の意匠材として用いられることが好ましく、自動車用の意匠材として用いられることがより好ましい。自動車用の意匠材としては、例えば自動車外装用意匠材及び自動車内装用意匠材が挙げられるが、本発明による作用効果をより有利に活用する観点から、自動車外装用意匠材が好ましい。本実施形態の自動車外装用意匠材としては、例えば、テールランプガーニッシュ、リアランプガーニッシュ、フロントランプガーニッシュ、ピラーガーニッシュ、フロントグリル、リアグリル、ライセンスガーニッシュ、ホイールセンターキャップ、ナンバープレートガーニッシュ、ドアミラーカバー、及びスライドベルトモールが挙げられ、これらが好適である。これらの用途は総じて、薄肉の長手部品であり、意匠性が重要視されるものである。
以下、実施例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態は、後述する実施例に限定されるものではない。
なお、実施例1、2、5~7、10、11、13、15、16、18~21は、参考例として記載するものである。
〔実施例及び比較例において用いた原料〕
二色射出成形体の製造に用いた原料は下記のとおりである。
(メタクリル系樹脂の原料)
・メタクリル酸メチル(MMA):旭化成ケミカルズ製(重合禁止剤として中外貿易製2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール(2,4-di-methyl-6-tert-butylphenol)を2.5ppm添加されているもの)
・アクリル酸メチル(MA):三菱化学製(重合禁止剤として川口化学工業製4-メトキシフェノール(4-methoxyphenol)が14ppm添加されているもの)
・アクリル酸エチル(EA):三菱化学製
・シクロヘキシルマレイミド:日本触媒製
・スチレン:旭化成製
・n-オクチルメルカプタン(n-octylmercaptan):アルケマ製
・2-エチルヘキシルチオグリコレート(2-ethylhexyl thioglycolate):アルケマ製
・ラウロイルパーオキサイド(lauroyl peroxide):日本油脂製
・第3リン酸カルシウム(calcium phosphate):日本化学工業製、懸濁剤として使用
・炭酸カルシウム(calcium calbonate):白石工業製、懸濁剤として使用
・ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate):和光純薬製、懸濁助剤として使用
(熱可塑性樹脂)
・PC/ABS:テクニエースH-270、色番901(日本エイアンドエル製)、VICAT軟化点温度=130℃
・PC-1:ユーピロンS-3000UR、色番9001(三菱エンジニアリングプラスチック製)、VICAT軟化点温度=148℃
・PC-2:ユーピロンS-3000、透明(三菱エンジニアリングプラスチック製)、VICAT軟化点温度=148℃
・着色(2)PC-2:PC-2、100質量部に、B-2:0.0005質量部、B-3:0.001質量部、B-5:0.001質量部の着色剤を配合した。VICAT軟化点温度=148℃。
・着色(3)PC-2:PC-2、100質量部に、B-1:0.1質量部、B-2:0.025質量部、B-3:0.15質量部、B-4:0.05質量部、C-A1:0.02質量部の着色剤を配合した。VICAT軟化点温度=148℃。
・ABS-1:スタイラックABS183、色番S133ST(黒色)(旭化成製)、VICAT軟化点温度=114℃
・ABS-2:スタイラックABS220、色番S133ST(黒色)(旭化成製)、VICAT軟化点温度=98℃
・ABS-3:スタイラックABS185(旭化成製)100質量部に、B-1:0.1質量部、B-2:0.03質量部、B-3:0.2質量部、B-4:0.05質量部、C-A1:0.02質量部の着色剤を配合した。VICAT軟化点温度=124℃
〔測定、評価方法〕
<I.メタクリル系樹脂の分子量及び分子量分布の測定方法>
メタクリル系樹脂の重量平均分子量、分子量分布を下記の装置、及び条件で測定した。
測定装置:東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC-8320GPC)
カラム :TSKgel SuperH2500 1本、TSKgel SuperHM-M 2本、TSKguardcolumn SuperH-H 1本、直列接続
本カラムでは、高分子量が早く溶出し、低分子量は溶出する時間が遅い。
検出器 :RI(示差屈折)検出器
検出感度 :3.0mV/min
カラム温度:40℃
サンプル :0.02gの樹脂のテトラヒドロフラン10mL溶液
注入量 :10μL
展開溶媒 :テトラヒドロフラン、流速;0.6mL/min
検量線用標準サンプルとして、単分散の重量ピーク分子量が既知で分子量が異なる以下の10種のポリメタクリル酸メチル(Polymethyl methacrylate Calibration Kit PL2020-0101 M-M-10)を用いた。
なお、検量線用標準サンプルに用いたポリメタクリル酸メチルは、それぞれ単ピークのものであるため、(Mp)をピーク分子量と表記し、ピークが複数ある場合の表記「ピークトップ分子量」と区別した。
ピーク分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準試料10 850
上記の条件で、熱可塑性樹脂の溶出時間に対する、RI検出強度を測定した。
GPC溶出曲線におけるエリア面積と、3次近似式の検量線を基にメタクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、GPCピーク分子量(Mp)及びGPCピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合(%)を求めた。
<II.デュポン衝撃強度>
デュポン式落下衝撃試験機(東洋精機製、落下高さ最大1000mm、間隔25mm、直径12.7mmの撃ち型、直径12.7mmの受け台、落下ウエイト100~1000gを使用)を用いて、JIS K7211-1(2006)に従い、温度23℃の雰囲気下において、50%衝撃破壊エネルギー衝撃強度を測定した。衝撃強度の数値が大きいほど耐衝撃性に優れることを示す。試験面は、必ず表層側から衝撃を与えて評価した。
<III.明度>
実施例及び比較例で得られた二色射出成形体について、分光測色計(コニカミノルタジャパン社製、「CM-700d」)を用いて明度L*を、SCE方式(10°視野/D65光源)にて測定した。明度L*が低いほど黒色となり、高外観や耐候性に優れる二色射出成形体となる。
<IV.外観評価>
(リメルト)
得られた二色射出成形体について、下地層のゲート付近から半円状に発生したリメルト(再溶融)の長さで外観評価する。ここで、リメルトとは、下地層を形成した後に表層成形する際に、表層と下地層との間に、下地層の溶融跡が発生することをいう(図1A)。なお、図1A~Cでは、説明のしやすさのため、2点設置した下地層のサイドゲートのうち、実施例11、21以外で使用した、表層のサイドゲートと同じ側の幅70mmの中央部に設けたサイドゲートのみを示した。
リメルト判定基準
○(優れる):外観不良(再溶融)が無い
△(良好):外観不良が10mm未満
×(劣る):外観不良が10mm以上
(ウエルド)
得られた二色射出成形体の流動末端側に発生するウエルド(樹脂同士がぶつかった痕)の長さで外観評価する。ここで、ウエルドとは、表層成形時に、表層末端付近(サイドゲートと逆側の幅70mmの端付近)にスジ状の不良が発生することをいう。ウエルドは、金型側面付近を通って流れる樹脂と、金型中央部を通って流れる樹脂とが合流する箇所で起こることが多い。
ウエルド判定基準
○(優れる):ウエルドなし
△(良好):ウエルド長さ10mm未満
×(劣る):ウエルド長さ10mm以上
(ヒケ)
得られた二色射出成形体の流動末端側のヒケ(歪み)の外観評価を肉厚の減少率で評価する。ゲート側と流動末端側の肉厚を測定し、肉厚減少率を算出して評価する。ここで、ヒケとは、表層成形時に、表層末端付近に薄肉部が発生することをいう。
肉厚減少率(%):(ゲート側肉厚-流動末端側肉厚)×100/ゲート側肉厚
ヒケ判定基準
○(優れる):肉厚減少率が3%未満
△(良好):肉厚減少率が3%以上、6%未満
×(劣る):肉厚減少率が6%以上
上記3つの観点での成形体外観評価を実施し、外観総合評価を以下の◎~×判定で行った。
◎(優れる):上記外観評価が全て○
○(やや優れる):上記外観評価のいずれか一つが△
△(良好):上記外観評価のいずれか二つが△
×(劣る):上記外観評価のいずれか一つが×
<V.表面鉛筆硬度評価>
JIS K5600規格に準拠して測定を行い、二色射出成形体の表面鉛筆硬度の指標とした。
<VI.耐候性>
まず、JIS K7350-4の手法を用いて二色射出成形体の曝露試験を行った。曝露条件は、ブラックパネルの温度設定が63±3℃、水の噴霧時間設定は(18±0.5)分間、噴霧停止時間設定は(102±0.5)分間とし、総曝露時間は2000時間とした。この条件下で二色射出成形体の表層側を曝露した。曝露後、意匠面は水洗し、下記の耐候性の評価に備えた。
耐候性は、上記曝露試験前後の色差にて評価した。色差としては、ΔE(デルタイー)の
値を用いた。色差測定は、分光測色計(コニカミノルタジャパン社製、「CM-700d」)を用い、SCE方式(10°視野/D65光源)において、二色射出成形体の初期表層と、曝露後の同成形体の表層のL***を測定し、色差ΔEを算出した。
耐候性は、2000時間曝露でのΔEを下記評価で判定した。
○(優れる):ΔE<3
△(良好):3≦ΔE<5
×(劣る):ΔE≧5
<VII.総合評価>
二色射出成形体の総合評価を以下判定基準で実施した。
◎(優れる):表面鉛筆硬度がH以上、耐候性が○判定、外観総合評価が○判定、Dupont衝撃強度が15kg・cm以上、の全てを満たす場合
○(やや優れる):表面鉛筆硬度がH以上、耐候性が○判定、外観総合評価が△判定、Dupont衝撃強度が15kg・cm以上の全てを満たす場合
△(良好):表面鉛筆硬度がH以上、外観総合評価が○又は△判定であり、耐候性が△判定及び/又はDupont衝撃強度が7kg・cm以上15kg・cm未満を満たす場合
×(劣る):表面鉛筆硬度がH未満、Dupont衝撃強度が5kg・cm以下、耐候性が×判定、外観総合評価が×判定、のいずれか一つ以上に該当する場合
<VIII.耐熱性>
耐熱性の評価として、後述する実施例及び比較例の表層および下地層の各樹脂のビカット軟化温度(VST)を、HDT試験装置 (ヒートディストーションテスター)(東洋精機製作所社製)を用いて、ISO 306 B50に準じて、測定した。荷重は50Nとし、昇温速度は50℃/時間とした。
<製造例A1(メタクリル系樹脂(A-1)の製造)>
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(a)を得た。次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(a)、メタクリル酸メチル:21.2kg、アクリル酸メチル:0.43kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn-オクチルメルカプタン:62gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ30mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット(メタクリル系樹脂(A-1))を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は10.2万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.85であった。また、構造単位はMMA/MA=98質量%/2質量%であった。さらに、Mp値の1/5以下の分子量を有する成分の割合(%)は4.6%であった。
VICAT軟化点温度は、110℃であった。
<製造例A2(メタクリル系樹脂(A-2)の製造)>
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(b)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(b)及びメタクリル酸メチル:3.76kg、アクリル酸エチル:0.1kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、2-エチルヘキシルチオグリコレート:62gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行った。原料を投入してから80分後に発熱ピークが観測された。その後、92℃に1℃/min速度で昇温した後、30分間92℃~94℃の温度を保持した。その後、1℃/minの速度で80℃まで降温した後、次いで、メタクリル酸メチル:17.4kg、アクリル酸エチル:1.35kg、ラウロイルパーオキサイド:23g、n-オクチルメルカプタン:35gを投入し、引き続き約80℃を保って懸濁重合を行った。原料を投入してから105分後に発熱ピークが観測された。
その後、92℃に1℃/minの速度で昇温した後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次に、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を230℃に設定したφ30mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット(メタクリル系樹脂(A-2))を得た。
得られたビーズの重量平均分子量は11.8万であり、ピークトップ分子量(Mp)は12.5万であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.45であった。また、構造単位はMMA/EA=93.5質量%/6.5質量%であった。さらに、Mp値の1/5以下の分子量を有する成分の割合(%)は13.5%であった。VICAT軟化点温度は、103℃であった。
<製造例A3(メタクリル系樹脂(A-3)の製造)>
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(c)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(c)、メタクリル酸メチル:17.3kg、シクロヘキシルマレイミド:1.77kg、スチレン:1.88kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn-オクチルメルカプタン:43gを投入した。その後、約77℃を保って60分間懸濁重合を行い、次いで約80℃まで昇温後、75分間懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、120分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ26mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A-3)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は12.6万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.93であった。また、構造単位はMMA/CMI/St=83/8/9質量%であった。さらに、Mp値の1/5以下の分子量を有する成分の割合(%)は5.5%であった。VICAT軟化点温度は、117℃であった。
〔実施例1~21〕〔比較例1~7〕
表2に記載の配合割合になるようにメタクリル系樹脂のペレタイズ時に、表1に記載の着色剤を添加して調色を行い、後述記載の二色射出成形体の製造方法に成形体を作製し、評価を行った。
Figure 0007306869000003
Figure 0007306869000004
〔二色射出成形体の製造方法〕
(射出成形)
メタクリル系樹脂と熱可塑性樹脂のペレットを二色射出成形機に投入し、二色射出成形体(幅70mm×長さ150mm、長さ150mmの長辺に高さ5mmのリブを設置、肉厚は70mm×150mm面、リブ共に同じ肉厚であり表層:0.5~3mm、下地層:0.5~3mm)に成形し、評価用成形体とした。
表層のゲートは、幅70mmの中央部にサイドゲート1点で設置した。下地層のゲートは、幅70mmの中央部にサイドゲート1点、及び1点目のゲートと逆側に2点目のサイドゲートを設置した。また、下地層のゲートは1点ゲートと2点ゲートの両方を選択できるようにした。なお、成形条件は、下記のように設定した。
射出成形機:住友重機械工業製SE-280D-CI(型締め力280t、二色成形)
射出条件
金型温度:70℃
充填速度:100mm/s
保圧時間:10sec
冷却時間:20sec
各層の成形サイクル:50sec
下地層+表層の成形サイクル:100sec
成形温度
メタクリル系樹脂:260℃又は270℃
PC :300℃
PC/ABS:280℃
ABS :260℃又は270℃
なお、実施例10は、下地層のゲートをサイド2点ゲートに変更して射出成形を実施した。
また、実施例21は、以下の条件でサンドイッチ成形を実施した。
メタクリル系樹脂と熱可塑性樹脂のペレットを成形機に投入し、成形体(幅70mm×長さ150mm、長さ150mmの長辺に高さ5mmのリブを設置、肉厚は70mm×150mm面、リブ共に同じ肉厚であり表層:0.5~3mm、下地層:0.5~3mm)に成形し、評価用成形体とした。
表層のゲートは、幅70mmの中央部にサイドゲート1点で設置した。コア層のゲートは、幅70mmの中央部にサイドゲート1点で設置し、表層を成形後、コア層を成形した。
なお、成形条件は、下記のように設定した。
射出成形機:日本製鋼所製JT220RAD-2M(型締め力220t、サンドイッチ成形)
射出条件
金型温度:70℃
充填速度:100mm/s
保圧時間:10sec
冷却時間:20sec
各層の成形サイクル:50sec
下地層+表層の成形サイクル:100sec
成形温度
メタクリル系樹脂:260℃
PC :300℃
実施例1では、表層のメタクリル系樹脂を調色し、L*値を請求項1の範囲に制御したため、耐候性が良好であった。一方で、表層と下地層の厚み比がさらに好ましい範囲から外れていたため、ウエルド外観が△であったが、その他の物性は実用レベルにあった。
実施例2では、表層と下地層の厚み比が好ましい範囲からやや外れていたため、ヒケやウエルドの外観が△であったが、その他の物性は実用レベルにあった。
実施例3や4では、表層のメタクリル系樹脂の重量平均分子量及びピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合が好ましい範囲であったため、実施例1に比べて、高外観である成形体が得られ、L*値も適切であったため、耐候性に優れる二色射出成形体であった。
実施例5では、表層のメタクリル系樹脂の着色剤量がやや少なく、L*値が請求項1の範囲の上限に近かったため、耐候性が△となったが、その他の物性は実用レベルであった。
実施例6は、表層と下地層の厚み比が好ましい範囲から外れていたため、耐衝撃性が低下したが、その他の物性は実用レベルにあった。
実施例7は、二色射出成形体としての薄肉化を目指して、下地層の厚みを実施例1に比べて薄くしたため、表層のヒケが△となり、耐衝撃性がやや低下したが、その他の物性は実用レベルであった。
実施例8では、表層のメタクリル系樹脂の重量平均分子量及びピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合が好ましい範囲であり、下地層にPC/ABSを使用したため、表面硬度、高外観、耐候性かつ耐衝撃性に優れ、実施例1に比べて、より薄い二色射出成形体が得られた。
実施例9では、表層と下地層の厚み比がより好ましい範囲であったため、表面硬度、高外観、耐候性かつ耐衝撃性に優れる成形体が得られた。
実施例10では、実施例7の下地層の成形時に、サイド2点ゲートを使用したため、より高外観で耐衝撃性に優れる成形体が得られた。
実施例11では、下地層にVICAT軟化点温度が100℃に近いABSを使用し、L*値が請求項1の範囲の上限に近かったため、耐候性が△、リメルトが△であったが、その他の物性は実用レベルであった。
実施例12では、表層のメタクリル系樹脂の重量平均分子量及びピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合が好ましい範囲であったため、リメルト評価が良好であり、L*値が、請求項1の範囲の上限に近かったため、耐候性が△であったが、その他の物性は実用レベルであった。
実施例13では、L*値が請求項1の範囲の上限に近かったため、耐候性が△、リメルトが△であったが、その他の物性は実用レベルであった。
その他の物性は実用レベルであった。
実施例14では、表層と下地層の厚み比やL*値が適切な範囲であり、表面硬度、高外観及び耐衝撃性に優れる二色射出成形体であった。
実施例15では、下地層にVICAT軟化店温度が124℃であるABSを使用し、L*値が、適切な範囲であり、表面硬度、高外観及び耐衝撃性に優れる二色射出成形体であった。
実施例16では、L*値が請求項1の範囲の上限に近かったため、耐候性が△、リメルトが△であったが、その他の物性は実用レベルであった。
実施例17では、表層のメタクリル系樹脂の重量平均分子量及びピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合が好ましい範囲であったため、リメルト評価が良好であり、L*値が、請求項1の範囲の上限に近かったため、耐候性が△であったが、その他の物性は実用レベルであった。
実施例18では、下地層に透明PCを使用したが、L*値が請求項1の範囲であったため、表面硬度、高外観及び耐衝撃性に優れる二色射出成形体であった。
実施例19では、表層において、耐熱系アクリルを使用したが、実施例7と同様に実用面に優れる二色射出成形体が得られた。
実施例20では、下地層にVICAT軟化点温度が98℃であるABSを使用し、L*値が、請求項1の範囲の上限に近かったため、耐候性が△であったが、その他の物性は実用レベルであった。
実施例21では、サンドイッチ成形を実施し、実施例1に比べてヒケが△、衝撃強度がやや低下したが、その他の物性は実用レベルであった。
比較例1では、表層のメタクリル系樹脂が透明であったため、L*値が請求項の範囲から外れ、耐候性が実用レベルでなかった。
比較例2では、表層にポリカーボネートを使用したため、成形流動性が悪く、表層の外観が実用レベルでなく、表面硬度も実用レベルになかった。さらに、L*値が請求項の範囲から外れていたため、耐候性も実用レベルでなかった。
比較例3では、下地層にVICAT軟化点温度が98℃であるABSを使用し、L*値が、L*値が請求項の範囲から外れていたため、耐候性やリメルト評価が実用レベルでなかった。
比較例4では、L*値が請求項の範囲から外れ、耐候性やリメルト評価が実用レベルでなかった。
比較例5、6では、L*値が請求項の範囲から外れ、耐候性が実用レベルでなかった。
比較例7では、単層のため、衝撃強度が実用レベルでなかった。
本実施形態の二色射出成形体の利用に関しては、塗装レス、表面硬度、高外観、耐候性及び耐衝撃性の要求される用途に対して全般的に産業上利用可能である。
1 表層
2 下地層
3 サイドゲート

Claims (7)

  1. メタクリル系樹脂を含む表層を有し、
    SCE測定での明度(L)が0.01以上2.5以下であり、
    前記メタクリル系樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量が50000~300000であり、
    前記メタクリル系樹脂のGPC溶出曲線から得られるピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合が、前記メタクリル系樹脂の前記GPC溶出曲線の総面積に対して、6~50%であり、
    前記表層の厚さt1(単位:mm)と下地層の厚さt2(単位:mm)とが、下記式(1)で表される関係を満たし、
    0.9≦t1/t2≦3 ・・・(1)
    前記表層と前記下地層との2層の積層体であり、
    全体の厚みが2.2~4mmである、
    ことを特徴とする、二色射出成形体。
  2. 前記下地層が熱可塑性樹脂を含み、
    前記熱可塑性樹脂のVICAT軟化点温度が100℃以上である、請求項1に記載の二色射出成形体。
  3. 前記下地層が熱可塑性樹脂を含み、
    前記熱可塑性樹脂が、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS系樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン・スチレン系共重合体)、AS系樹脂(アクリロニトリル、スチレン系共重合体)、MBS系樹脂(メチルメタクリレート、ブタジエン・スチレン系共重合体)、AAS系樹脂(アクリロニトリル、アクリルゴム、スチレン系共重合体)、ASA系樹脂(アクリロニトリル、スチレン、アクリルゴム系共重合体)、及びAES系樹脂(アクリロニトリル、エチレン・プロピレン・ジエン、スチレン)からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の二色射出成形体。
  4. 前記熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート系樹脂、及びABS系樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン・スチレン系共重合体)からなる群より選ばれる1種以上である、請求項3に記載の二色射出成形体。
  5. 二輪車用又は自動車用の意匠材である、請求項1~4のいずれか一項に記載の二色射出成形体。
  6. 自動車外装用意匠材である、請求項5に記載の二色射出成形体。
  7. テールランプガーニッシュ、リアランプガーニッシュ、フロントランプガーニッシュ、ピラーガーニッシュ、フロントグリル、リアグリル、ライセンスガーニッシュ、ホイールセンターキャップ、ナンバープレートガーニッシュ、ドアミラーカバー、又はスライドベルトモールである、請求項6に記載の二色射出成形体。
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