JP6924713B2 - 黒鍵 - Google Patents
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Description
樹脂への代替例の一つとしてフェノール樹脂に木粉を混ぜたものが用いられている。しかし、フェノール樹脂の原料が環境負荷の高いものであったり、フェノール樹脂は熱硬化性樹脂であるため生産性に劣る、成形品の仕上げ工程にコストがかかるという問題があるため、熱可塑性樹脂への代替が近年盛んに検討されている。
染料以外にも、カーボンブラックをコンパウンドして漆黒性を発現する方法も提案されている。例えば、特許文献1では、特定量の揮発成分を有する市販のカーボンブラックを用いることで、従来にない成形板表面平滑性及び漆黒性を実現することを意図した方法が提案されている。また、特許文献2では、特定の粒径範囲のカーボンブラックをアクリル樹脂及び分散剤等の添加剤と共に2回ペレット化してマスターバッチを作製し、そのマスターバッチを使用してアクリル樹脂にコンパウンドすることで、カーボンブラックの凝集がなく、漆黒性を発現させたアクリル樹脂を実現することを意図した方法が提案されている。他方で、メタクリル系樹脂は、熱可塑性樹脂の中でも高い表面鉛筆硬度及び耐引掻性を有することが一般的に知られており、特許文献3のようにグラフト共重合体を分散させることで加工性、演奏性能、物性を向上させ鍵盤材として用いられている。
[2]前記メタクリル系樹脂組成物を用いて幅10mm、長さ88mm、厚み3mmで成形された試験片を、ポリメタクリル酸メチルを用いて厚み10mmで成形された平板の上に置き、前記平板を6°/分の速度で傾けていったときに前記試験片が動き始めた瞬間の角度である滑り出し角Sが、10°以上25°以下である、[1]に記載の黒鍵。
[3]前記メタクリル系樹脂組成物が、メタクリル系樹脂(A)と、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属水酸化物、金属硫化物、金属酸化物から選ばれる少なくとも1種の金属化合物(B)とを含有する、[1]又は[2]に記載の黒鍵。
[4]前記金属化合物(B)の平均粒径が、2μm以上30μm以下である、[3]に記載の黒鍵。
[5]前記メタクリル系樹脂組成物が、有機化合物(C)をメタクリル系樹脂100質量部に対して0.2質量部〜10質量部さらに含有する、[3]又は[4]に記載の黒鍵。
[6]前記メタクリル系樹脂組成物が、染料・顔料(D)をさらに含有し、
前記染料・顔料(D)は、カーボンブラックと、赤系染料、黄系染料、緑系染料、青系染料、紫系染料からなる群から選ばれる2種以上の染料・顔料とを含む、
[3]〜[5]のいずれかに記載の黒鍵。
[7]前記金属化合物(B)の含有量Bの前記染料・顔料(D)の含有量Dに対する割合B/Dが、10以上140以下である、[6]に記載の黒鍵。
[8]前記メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量Mwが、60,000以上300,000以下である、[3]〜[7]のいずれかに記載の黒鍵。
[9]前記メタクリル系樹脂(A)の極大ピーク分子量Pが、60,000以上500,000以下であり、かつ、分子量分布Mw/Mnが、2.4以上5.6以下である、[3]〜[8]のいずれかに記載の黒鍵。
なお、以下において、本実施形態のメタクリル系樹脂をなす重合体を構成する構成単位のことを、「〜単量体単位」、及び/又は複数の該「〜単量体単位」を含む「〜構造単位」という。
また、かかる「〜単量体単位」の構成材料のことを、「単位」を省略して、単に「〜単量体」と記載する場合もある。
本実施形態の黒鍵とは、ピアノ式鍵盤またはボタン式鍵盤がある楽器に用いられる黒鍵のキートップ部分を表す。また、本実施形態の黒鍵は、メタクリル系樹脂組成物を含むものであり、その含有量は、60質量%以上としてよく、80質量%以上が好ましく、メタクリル系樹脂組成物からなるものとしてもよい。
本実施形態の射出成形体に含まれるメタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸エステル単量体単位50〜99.99質量%と、メタクリル酸エステル単量体に共重合可能な少なくとも1種のビニル単量体からなるビニル単量体単位0.01〜50質量%を含むメタクリル系樹脂であることが好ましい。
メタクリル系樹脂(A)は、一種単独のメタクリル系樹脂を用いてもよいが、二種以上のメタクリル系樹脂を併用したものであってもよい。
メタクリル系樹脂(A)において、メタクリル酸エステル単量体単位の含有量が50〜99.99質量%の範囲内である場合、良好な耐熱性を発現する。十分な耐熱性を有することにより、高温にさらされる用途においても、本実施形態の射出成形体の寸法安定性の低下を効果的に防止できる。
また、メタクリル酸エステル単量体と共重合可能な少なくとも1種のビニル単量体からなるビニル単量体単位の含有量が0.01〜50質量%の範囲内である場合、射出成形体を成形する際のシルバー発生を効果的に抑制することができる。
良好な耐熱性を維持しながらも、成形時のシルバー発生を効果的に抑制するために、メタクリル酸エステル単量体の含有量は、70〜99.9質量%であることがより好ましく、80〜99.8質量%であることがさらに好ましい。また、メタクリル酸エステル単量体と共重合させるビニル単量体の含有量は、0.1〜30質量%であることがより好ましく、0.2〜20質量%であることがさらに好ましい。
入手のしやすさ、価格の観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルが好ましい。
前記メタクリル酸エステル単量体は、一種のみを単独で使用してもよく、又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
その他にも(メタ)アクリレート基を2つ以上有する、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のエチレングリコール又はそのオリゴマーの両末端水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート等の2個のアルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール誘導体をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの;といったアクリル酸エステル単量体が挙げられる。
特に、入手しやすさの観点から、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチルが好ましい。
これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
上記メタクリル酸エステル単量体に共重合可能なアクリル酸エステル単量体や、前記例示したアクリル酸エステル単量体以外のビニル系単量体は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上組み合わせて使用してもよい。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物に含まれるメタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量及び分子量分布について説明する。
メタクリル系樹脂(A)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定した重量平均分子量(Mw)が60,000〜300,000であることが好ましい。
優れた機械的強度及び耐溶剤性を得るためには、メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)の下限は、60,000以上が好ましく、70,000以上がより好ましく、80,000以上がさらに好ましく、90,000以上がさらにより好ましい。
また、メタクリル系樹脂組成物が良好な流動性を示すためには、メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)の上限は300,000以下であることが好ましく、250,000以下がより好ましく、230,000以下がさらに好ましく、210,000以下がさらにより好ましい。
前記メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が60,000〜300,000の範囲であることにより、流動性、機械的強度、及び耐溶剤性のバランスを図ることができ、良好な成形加工性が維持される。
ここで、極大ピーク分子量Pは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量波形が最大強度を示す重量平均分子量を表す。Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。
メタクリル系樹脂(A)の極大ピーク分子量P、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPCで測定することができ、具体的には、後述する〔実施例〕に記載の方法により測定することができる。
具体的には、あらかじめ単分散の重量平均分子量が既知で試薬として入手可能な標準メタクリル系樹脂と、高分子量成分を先に溶出する分析ゲルカラムを用い、溶出時間と重量平均分子量から検量線を作成しておく。続いて得られた検量線を元に、所定の測定対象のメタクリル系樹脂(A)の極大ピーク分子量P、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求めることができ、これらにより極大ピーク分子量Pおよび分子量分布(Mw/Mn)を算出することができる。数平均分子量(Mn)とは、単純な分子1本あたりの分子量の平均であり、系の全重量/系中の分子数で定義される。重量平均分子量(Mw)とは、重量分率による分子量の平均で定義される。
重合温度は、重合方法に応じて適宜最適の重合温度を選択すればよいが、好ましくは50℃以上100℃以下であり、より好ましくは60℃以上90℃以下である。
これらのラジカル重合開始剤及び/又はレドックス系開始剤は、メタクリル系樹脂(A)の重合の際に使用する全単量体の総量100質量部に対して、0〜1質量部の範囲で用いるのが一般的であり、重合を行う温度と重合開始剤の半減期を考慮して適宜選択することができる。
前記過酸化系重合開始剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ラウロイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられ、ラウロイルパーオキサイドがより好ましい。
また、メタクリル系樹脂(A)を、90℃以上の高温下で溶液重合法により重合する場合には、10時間半減期温度が80℃以上で、かつ用いる有機溶媒に可溶である過酸化物、アゾビス開始剤等を重合開始剤として用いることが好ましい。
当該過酸化物、アゾビス開始剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、1,1−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等が挙げられる。
前記連鎖移動剤としては、取扱性や安定性の観点から、アルキルメルカプタン類が好ましく、当該アルキルメルカプタン類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、n−オクタデシルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス(チオグリコート)、ペンタエリスリトールテトラキス(チオグリコレート)等が挙げられる。
これらは、目的とするメタクリル系樹脂の分子量に応じて適宜添加することができるが、一般的には、メタクリル系樹脂の重合の際に使用する全単量体の総量100質量部に対して0.001質量部〜5質量部の範囲で用いられる。
また、その他の分子量制御方法としては、重合方法を変える方法、重合開始剤、上述した連鎖移動剤やイニファータ等の量を調整する方法、重合温度等の各種重合条件を変更する方法等が挙げられる。
これらの分子量制御方法は、一種の方法のみを用いてもよく、二種以上の方法を併用してもよい。
また、分子量分布(Mw/Mn)が2.4〜5.6でかつ極大ピーク分子量Pが60,000以上500,000以下のメタクリル系樹脂(A)を製造する方法としては、低分子量のメタクリル系樹脂と高分子量のメタクリル系樹脂とを溶融ブレンドする方法や、多段重合法により製造する方法等が挙げられる。
メタクリル系樹脂(A)の含有量は、メタクリル系樹脂組成物100質量%に対して50〜99.8質量%であり、60〜95質量%であることがより好ましく、70〜90質量%であることがさらに好ましい。
本発明のメタクリル系樹脂組成物には必須ではないが、金属化合物(B)を含有させると良い。金属化合物を含有させることで表面に露出した金属化合物が演奏時の染料・顔料の退色を防いだり、布等でこすった時の傷付きを抑制することが出来る。金属化合物(B)の種類としてはこれに限定されるものではないが、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属水酸化物、金属硫化物、金属酸化物、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化チタン、硫酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸鉄、酸化鉄、炭酸カルシウム等が挙げられる。金属化合物の中でも金属硫酸塩、金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩を用いることが成形不良防止の観点から好ましい。
これらの金属化合物の粒径は平均粒径2μm以上30μm以下であると良い。平均粒径が2μm以上であると樹脂に練り込み分散させることが容易になり、樹脂中に良好に分散させることが出来、傷付きの抑制や、染料・顔料の退色防止を効果的に行うことが出来る。また平均粒径が30μm以下であるとクレーズやクラック発生の起点になりづらくなり、機械物性の低下を抑えることが出来る。金属化合物の平均粒径は3μm以上26μm以下が好ましく、4μm以上24μm以下がより好ましく、4μm以上20μm以下がさらに好ましい。
ここでいう平均粒径とは、金属化合物粒子をベックマンコールター社製粒径測定装置LS13320のレーザー散乱方式によって測定された平均径のことを言う。
本発明のメタクリル系樹脂組成物中に金属化合物(B)を含有させ場合、金属化合物(B)の含有量は、メタクリル系樹脂100質量部に対し、1質量部以上40質量部以下であることが好ましく、であることがより好ましく、10質量部以上20質量部以下であることがさらに好ましい。
本発明のメタクリル系樹脂組成物中に金属化合物(B)を含有させる場合、金属化合物(B)の含有量Bを染料・顔料(後述の(D))の含有量Dの10倍以上とすることで、効果的に退色を抑えることが出来る。また、140倍以下にすることで、良好な漆黒性、外観を有する黒鍵を成形できる。金属化合物含有量は染料・顔料含有量の15倍以上130倍以下が好ましく、染料・顔料含有量の20倍以上120倍以下がより好ましく、染料・顔料含有量の20倍以上110倍以下がさらに好ましい。
ここでいう金属化合物(B)の含有量Bとは、金属化合物(B)そのものの含有量を表し、もし金属化合物表面に化合物や分子が修飾されている場合は修飾されているものを除いた質量が金属化合物(B)の含有量Bとなる。
本発明のメタクリル系樹脂組成物中には必須ではないが、有機化合物(C)をつや消し剤として含有することが出来る。メタクリル系樹脂組成物中に有機化合物(C)を含有することで従来の黒鍵に外観をより近づけることが出来る。
有機化合物(C)の含有量は、メタクリル系樹脂(A)100質量部に対し、0.2〜10質量部であると良い。0.2質量部以上とすることで効果的につや消し効果を発現することが出来、10質量部以下とすることで機械強度の低下を抑制することが出来る。有機化合物(C)の含有量は0.3〜8.6質量部が好ましく、より好ましくは0.4〜7.8質量部、さらに好ましくは0.6〜7質量部である。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物は、カーボンブラックと、それ以外の染料・顔料を1種又は2種以上含むことが、より黒色の深みを増す上で好ましい。更に深みのある黒色を発現させる観点から、染料・顔料(D)は、カーボンブラック以外に2種以上の染料・顔料を含むことが好ましい。
上記染料は、互いに補色関係にある2種以上の染料であるとより好ましい。そのような組合せとしては、例えば、赤系染料と緑系染料、黄系染料と紫系染料が挙げられる。3種類以上の染料を用いるときも同様に考え、光の3原色をまんべんなく含んだ組合せにすることが好ましい。そのような組み合わせとしては、例えば、紫系染料、緑系染料、黄系染料及び青系染料の組合せ、紫系染料、緑系染料、黄系染料及び赤系染料の組合せ、赤系染料、緑系染料、及び青系染料の組合せ、赤系染料、黄系染料、及び青系染料の組合せ、といった複数の系統の染料の適量ずつの組合せが挙げられる。
これらの染料は各色毎に、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
そのような組合せとしては、例えば、赤系顔料と緑系顔料、黄色系顔料と紫系顔料が挙げられる。3種類以上の顔料を用いるときも同様に考え、光の3原色をまんべんなく含んだ組合せにすることが好ましい。そのような組み合わせとしては、例えば、紫系顔料、緑系顔料、黄系顔料及び青系顔料の組合せ、紫系顔料、緑系顔料、黄系顔料及び赤系顔料の組合せ、赤系顔料、緑系顔料、及び青系顔料の組合せ、赤系顔料、黄系顔料、及び青系顔料の組合せ、といった複数の系統の顔料の適量ずつの組合せが挙げられる。
赤系顔料としては、例えば、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料等が挙げられる。黄系顔料としては、例えば、アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、ニッケル錯体アゾ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料等が挙げられる。青系顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、銅フタロシアニン系顔料、コバルトフタロシアニン系顔料等が挙げられる。緑系顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、銅フタロシアニン系顔料等が挙げられる。紫系顔料としては、例えば、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられる。
なお、顔料の種類は特に限定されず、これらはそれぞれ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
カーボンブラックとしては、以下に限定されるものではないが、例えば、HCF、MCF、RCF、LFF、SCFグレードのカーボンブラックが挙げられる。特に、HCF、RCFグレードのカーボンブラックが好ましい。
カーボンブラック粒子を電子顕微鏡で観察して求めた算術平均粒子径が、10〜100nmであるものが好ましく、10〜70nmであるものがより好ましく、10〜30nmであるものが更に好ましい。
また、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積(JISK6217))が、20〜500m2/gであるものが好ましく、50〜400m2/gであるものがより好ましく、80〜370m2/gであるものが更に好ましい。
また、カーボンブラックの揮発分(950℃で7分間加熱した際の減量分)が、0.3〜10%であるものが好ましく、0.5〜9%であるものがより好ましく、0.8〜8%であるものが更に好ましい。
このカーボンブラックは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、カーボンブラックは、コーティング剤等で表面コーティングされていてもよい。コーティング剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアリルアミド、及びエチレンビスステアリルアミド(EBS)が挙げられる。特に、良好な発色性の観点からステアリン酸亜鉛、EBSが好ましい。
コーティング剤に対するカーボンブラックの質量割合は、20〜100質量%であることが好ましく、50〜75質量%であることがより好ましい。
染料・顔料(D)の含有量Dは、染料・顔料(D)がコーティング剤等でコーティングされていた場合、コーティング剤を除いた染料・顔料そのものの質量を染料・顔料(D)の含有量Dとする。
染料・顔料(D)の含有量Dは、経済性、退色性の観点から、メタクリル系樹脂100質量部に対し0.5質量部以下が好ましく、0.4質量部以下がより好ましく、0.35質量部以下がさらに好ましい。また、発色性の観点から0.1質量部以上添加することが好ましく、0.12質量部以上添加することがより好ましく、0.14質量部以上添加することがさらに好ましい。
0.5<x/y<4.5 …(II)
一般的に、染料はカーボンブラックよりも高価なため、x/yを4.5未満とすることにより、カーボンブラックに対する染料の割合が適度に高くなり、染料を添加することによる発色が更に向上する。一方、x/yが0.5を超えると、染料の割合を低くして、コスト的なメリットを向上させることができる。同様の観点から、比率x/yは、下記式(IIa)で表される条件を満足することがより好ましく、下記式(IIb)で表される条件を満足することが更に好ましい。
0.6<x/y<4 …(IIa)
1.0<x/y<3 …(IIb)
ここで、カーボンブラックの総質量xは、カーボンブラックがコーティング剤等でコーティングされていた場合、コーティング剤を除いたカーボンブラックそのものの質量をカーボンブラックの総質量xとする。
特に、カーボンブラックの含有量は、メタクリル系樹脂100質量部に対して0.05質量部以上0.5質量部であることが好ましく、0.08〜0.3質量部であることがより好ましく、0.1〜0.2質量部であることがさらに好ましい。
(その他の樹脂)
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、樹脂成分の総質量に占める割合が最も大きい主たる樹脂以外の樹脂を含有してもよい。主たる樹脂以外の樹脂の含有量は、メタクリル系樹脂組成物100質量%に対して0.5〜20質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。
使用に供される樹脂は、特に限定されるものではなく、公知の硬化性樹脂、熱可塑性樹脂が好適に使用される。
熱可塑性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、シンジオタクテックポリスチレン系樹脂、ABS系樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系共重合体)、メタクリル系樹脂、AS系樹脂(アクリロニトリル−スチレン系共重合体)、BAAS系樹脂(ブタジエン−アクリロニトリル−アクリロニトリルゴム−スチレン系共重合体、MBS系樹脂(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン系共重合体)、AAS系樹脂(アクリロニトリル−アクリロニトリルゴム−スチレン系共重合体)、生分解性樹脂、ポリカーボネート−ABS樹脂のアロイ、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリアルキレンアリレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。
特に、AS樹脂、BAAS樹脂は、流動性を向上させるために好ましく、ABS樹脂、MBS樹脂は耐衝撃性を向上させるために好ましく、また、ポリエステル樹脂は耐薬品性を向上させるために好ましい。
また、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、フェノール系樹脂等は難燃性を向上させるために好ましい。
前記硬化性樹脂としては、以下に限定されるものではないが、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、キシレン樹脂、トリアジン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ウレタン樹脂、オキセタン樹脂、ケトン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、スチリルピリジン樹脂、シリコン樹脂、合成ゴム等が挙げられる。
上述した樹脂は、一種のみを単独で用いても、二種以上の樹脂を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で各種の添加剤を添加してもよい。添加剤の含有量は、メタクリル系樹脂組成物100質量%に対して0.01〜35質量%であることが好ましく、10〜20質量%であることがより好ましい。
前記添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系等の可塑剤;高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸のモノ、ジ、又はトリグリセリド系等の離型剤;ポリエーテル系、ポリエーテルエステル系、ポリエーテルエステルアミド系、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩等の帯電防止剤;酸化防止剤、及び紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤等の安定剤;難燃剤、難燃助剤、硬化剤、硬化促進剤、導電性付与剤、応力緩和剤、結晶化促進剤、加水分解抑制剤、潤滑剤、衝撃付与剤、摺動性改良剤、相溶化剤、核剤、強化剤、補強剤、流動調整剤、染料、増感材、着色用顔料、ゴム質重合体、増粘剤、沈降防止剤、タレ防止剤、充填剤、消泡剤、カップリング剤、防錆剤、抗菌・防黴剤、防汚剤、導電性高分子、カーボンブラック等が挙げられる。特に、離型剤、染料、着色用顔料、無機充填剤としての金属化合物、熱安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、及びカーボンブラック等を添加することが好ましい。
熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工安定剤等の酸化防止剤等が挙げられる。特に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
熱安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N'−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド、3,3',3'',5,5',5''−ヘキサ−tert−ブチル−a,a',a''−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−о−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、1,3,5−トリス[(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−キシリン)メチル]−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミン)フェノール等が挙げられ、ペンタエリスリトールテラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。
紫外線吸収剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられ、好ましくはベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物である。
これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、紫外線吸収剤を添加する場合、優れた成形加工性を得る観点から、20℃における蒸気圧(P)が1.0×10-4Pa以下であるものが好ましく、より好ましくは1.0×10-6Pa以下であり、さらに好ましくは1.0×10-8Pa以下である。
「優れた成形加工性」とは、例えば射出成形時に、金型表面への紫外線吸収剤の付着が少ないことを意味する。
また、紫外線吸収剤の融点(Tm)は、ブリードアウトの観点から80℃以上であることが好ましく、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは130℃以上、さらにより好ましくは160℃以上である。
前記紫外線吸収剤は、ブリードアウトの観点から、23℃から260℃まで20℃/minの速度で昇温した場合の質量減少率が50%以下であることが好ましく、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは15%以下、さらにより好ましくは10%以下、よりさらに好ましくは5%以下である。
難燃剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、環状窒素化合物、リン系難燃剤、シリコン系難燃剤、籠状シルセスキオキサン又はその部分開裂構造体、シリカ系難燃剤が挙げられる。
メタクリル系樹脂組成物と種々の添加剤や、上述した他の樹脂とを混合する場合の混練方法は、特に限定されるものではない。
本実施形態に係るメタクリル系樹脂組成物は、例えば、メタクリル系樹脂(A)及び必要に応じて配合される染料・顔料(D)等のその他の原料を撹拌によって十分混合させた後で、溶融混練(コンパウンド)することによって得ることができる。あるいは、それらカーボンブラック及び/又は染料・顔料(D)を用い、メタクリル系樹脂(A)をベースとした高濃度のマスターバッチを溶融混練して調製し、そのマスターバッチを他のメタクリル系樹脂(A)を用いて薄めて溶融混練しても、本実施形態に係るメタクリル系樹脂組成物を得ることができる。
特に、押出機による混練が、生産性の観点から好ましく、単軸よりも二軸押出機が好ましい。混練温度は、本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を構成するメタクリル系樹脂(A)の好ましい加工温度に従えばよく、好ましくは140〜300℃の範囲、より好ましくは180〜280℃の範囲、さらに好ましくは160〜260℃の範囲である。
また、混練回転数は、メタクリル系樹脂組成物の着色や熱分解を防止する観点から、600rpm以下で行うことが好ましく、より好ましくは500rpm以下、さらに好ましくは300rpm以下である。
その樹脂組成物の温度が300℃以下であることにより、メタクリル系樹脂(A)の熱分解による残存モノマーの発生をより抑制でき、残存モノマーの可塑化効果による耐熱性等の物性低下及び射出成型時のシルバーをより有効かつ確実に防止することができる。
本実施形態の成形体は、例えば、下記のようにして製造することができる。まず、必要に応じてペレットの形態で得られた上記メタクリル系樹脂組成物を射出成形機の金型キャビティ内に投入する。この際、金型としては成形体の形状に対応する形状の金型キャビティを有し、かつ、1点ゲートである金型を用いることが好ましい。また、その金型におけるゲートの位置は、最終的に得られる成形体において別部材によって覆われることで目視にて確認できなくなるような部分と接触する位置であると好ましい。次いで、その射出成形機により所定の条件にてメタクリル系樹脂組成物を射出成形する。こうして本実施形態の成形体を得ることができる。
また、射出成形時の金型温度は、金型表面を研磨した場合に研磨された金型表面の転写性をより高める観点、及び、メタクリル系樹脂(A)のガラス転移温度を考慮して過度な冷却を抑制する観点から、50℃以上100℃以下であると好ましく、60℃以上90℃以下であるとより好ましく、65℃以上85℃以下であると更に好ましい。シルバー発生量が少なく、良好な成型品外観を得るためには、成型時のシリンダー温度は300℃以下であることが好ましい。
メタクリル系樹脂組成物を用いて幅10±0.5mm、長さ88±1mm、任意の厚みで射出成形された試験片の滑り出し角Sは、10°以上25°以下であると良い。滑り出し角Sが10°以上であれば演奏中に汗をかいた指が滑り、ミスタッチするのを防ぐことが出来る。また、25°以下であれば演奏時に指が引っ掛かるような感覚がなく、黒檀性の黒鍵、木材を塗装した黒鍵、フェノール樹脂組成物製の黒鍵と同様のタッチ感を得ることが出来る。滑り出し角Sは、高速で弾かなければいけないパッセージでの滑りによるミスタッチ抑制の観点から、好ましくは11°以上、より好ましくは12゜以上、さらに好ましくは13゜以上である。また、引っ掛かりによるミスタッチ抑制の観点から、好ましくは23°以下であり、より好ましくは22°以下、さらに好ましくは21°以下、特に好ましくは20゜未満である。
ここでいう滑り出し角Sとは、メタクリル系樹脂組成物を用いて幅10±0.5mm、長さ88±1mm、任意の厚みで射出成形された試験片を、ポリメタクリル酸メチルを用いて厚み10mmで成形された平板の上に置き、平板を6°/分の速度で傾けていったときに試験片が動き始めた瞬間の角度(°)である。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物を含む成形体は、ピアノ式鍵盤、またはボタン式鍵盤がある楽器に用いられる黒鍵として用いられる。例えば、電子ピアノ、シンセサイザー・キーボード等の電子式ピアノ、グランドピアノ、アップライトピアノ等のアコースティクピアノ、オルガン等がピアノ式鍵盤に挙げられ、アコーディオン、バンドネオン等がボタン式鍵盤に挙げられる。
メタクリル系樹脂組成物の製造に用いたメタクリル系樹脂(A)の原料は下記のとおりである。
・メタクリル酸メチル(MMA):旭化成社製(重合禁止剤として中外貿易社製2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール(2,4−di−methyl−6−tert−butylphenol)を2.5ppm添加されているもの)
・アクリル酸メチル(MA):三菱化学社製(重合禁止剤として川口化学工業社製4−メトキシフェノール(4−methoxyphenol)が14ppm添加されているもの)
・アクリル酸エチル(EA):三菱化学社製
・n−フェニルマレイミド(PMI):日本触媒社製
・スチレン(St):旭化成社製
・n−オクチルメルカプタン(n−octylmercaptan):アルケマ社製
・2−エチルヘキシルチオグリコレート(2−ethylhexyl thioglycolate):アルケマ社製
・ラウロイルパーオキサイド(lauroyl peroxide):日本油脂社製
・第三リン酸カルシウム(calcium phosphate):日本化学工業社製、懸濁剤として使用
・炭酸カルシウム(calcium calbonate):白石工業社製、懸濁剤として使用
・ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate):和光純薬工業社製、懸濁助剤として使用
・酸化鉄:戸田工業社製
・硫酸バリウム(8μm):竹原化学社製
・硫酸バリウム(16μm):堺化学社製
・水酸化アルミニウム:昭和電工社製
・炭酸カルシウム:三共製粉社製
・メタブレンF−410:三菱レイヨン社製
・タフチックC−12:東洋紡社製
・三菱カーボンブラック#2650、#2600、#52:三菱化学社製
・エチレンビスステアリン酸アミド(EBS):和光純薬工業社製
・ステアリン酸亜鉛:和光純薬工業社製
・ダイアレジンイエローH2G:三菱化学社製
・ダイアレジンブルーN:三菱化学社製
・スミプラストグリーンG:住化ケムテックス社製
・プラストレッド8350:有本化学社製
・プラストブルー8510:有本化学社製
・プラストバイオレット8855:有本化学社製
・プラストイエロー8050:有本化学社製
・プラストグリーン8645:有本化学社製
・マクロレックスバイオレット3R:ランクセス社製
・スモイルPS−120、PS−260:松村石油化学社製
・アサプレン610A:旭化成社製
<I.メタクリル系樹脂(A)の分子量及び分子量分布の測定方法>
メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、極大ピーク分子量Pを下記の装置、及び条件で測定した。
・測定装置:東ソー株式会社製、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC−8320GPC)
・測定条件:
カラム:TSKguardcolumn SuperH−H 1本、TSKgel SuperHM−M 2本、TSKgel SuperH2500 1本を順に直列接続して使用した。本カラムでは、高分子量が早く溶出し、低分子量が遅く溶出する。
展開溶媒:テトラヒドロフラン、流速;0.6mL/分、内部標準として、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を、0.1g/L添加した。
検出器:RI(示差屈折)検出器
検出感度:3.0mV/分
カラム温度:40℃
サンプル:0.02gのメタクリル系樹脂(A)のテトラヒドロフラン20mL溶液
注入量:10μL
検量線用標準サンプル:単分散の重量ピーク分子量が既知で分子量が異なる、以下の10種のポリメタクリル酸メチル(Polymer Laboratories製、PMMA Calibration Kit M−M−10)を用いた。
なお、検量線用標準サンプルに用いた標準試料のポリメタクリル酸メチルは、それぞれ単ピークのものであるため、それぞれに対応するピークを重量ピーク分子量Mpと表記した。この点、一試料についてピークが複数ある場合に算出されるピークトップ分子量と区別した。
重量ピーク分子量(Mp)
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準試料10 850
GPC溶出曲線におけるエリア面積と、3次近似式の検量線とを基に、メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、極大ピーク分子量Pを求めた。
ここでいう極大ピーク分子量Pは、GPCで測定した分子量波形が最大強度を示す重量平均分子量を表す。
1H−NMR測定により構造単位を同定し、その存在量(質量%)を算出した。
1H−NMR測定の測定条件は、以下のとおりである。
装置:JEOL−ECA500
溶媒:CDCl3−d1(重水素化クロロホルム)
試料:成分(A)15mgをCDCl3−d1 0.75mLに溶解し、測定用サンプルとした。
アップライトピアノに一般的に用いられている木材を塗装した市販の黒鍵と比較し同等の質感であると5人中5人が判断すれば○(優れる)、5人中2人以上が判断すれば△(同等)、それ以下では×(不良)とした。
後述の実施例によって調製した試験片の外観持続性について、スガ試験機製サンシャインウェザーメーターを用いて、照射60℃、4時間、湿潤(結露)40℃、4時間の条件で1000時間連続して試験した。試験を行った試験片と行っていない試験片の外観を比較し、目視評価で外観にほとんど変化がなければ○(優れる)、外観が変化しているものの気にならない程度であれば△(許容できる変化)、外観が大きく変化していれば×(不良)とした。
メタクリル系樹脂組成物を用いて幅10±0.5mm、長さ88±1mm、厚み3±0.2mmで射出成形した試験片に対して、80℃で24時間アニーリングを行い、その後、23±2℃、湿度50±5%の環境下で168時間状態調節をする。この時射出成形条件は、樹脂の過充填、樹脂の充填不足が起きない範囲であれば任意で調節してよい。
状態調節後、除電刷毛でほこりを除いた幅130mm、長さ150mm、厚み5mmの押出PMMA板を設置した。なお、押出PMMA板は、温度23±2℃、湿度50±5%の環境下で168時間状態調節したものである。このPMMA板の上に、状態調節したサンプル表面から除電刷毛でほこりを除き、滑り出し方向に対し、平行になるよう静かに置き、6°/分の速度でPMMA板を傾けていきサンプルが動いた瞬間の角度を測定した。この測定を10回繰り返し、測定値の平均値を滑り出し角S(°)とした。前述の市販の黒鍵と比較し、13゜以上22゜以下であれば○(同等のタッチ性)、10°以上13°未満、22°以上25゜以下であれば△(ややタッチ性が異なるが問題なし)、10°未満又は25°超であれば×(ミスタッチを生じる恐れがある)とした。なお、一般的に用いられている黒鍵の滑り出し角Sは、20°であった。
後述の実施例に従って調製した試験片、前述の市販の黒鍵を下記条件にて摺動し、綿手袋に付着した色素が市販の黒鍵よりも少なければ○(優れる)、市販の黒鍵と同等であれば△(同等)、市販の黒鍵よりも多ければ×(不良)とした。
相手材:酸性人工汗液0.1mLを染み込ませた綿手袋
試験区間:120mm
荷重:500gf
摺動回数:3000往復
試験速度:80mm/秒
得られたメタクリル系樹脂組成物のペレットを射出成形機に投入し、下記条件で平板状(10mm×88mm×3mm)を、樹脂を切り替えた後に10ショット廃棄した後に連続して50ショット成形し、成形性の評価を行った。なお、金型は、金型表面(金型キャビティ内面)が8000番の磨き番手で研磨されているものを用いた。そして、その8000番の磨き番手で研磨されている側の金型表面が転写されている成形品表面を、この評価用試験片の試験面とした。
樹脂温度:270℃
金型温度:70℃
シルバー等の成形不良が50個中、2個以下であれば○(優れる)、3個以上10個以下であれば△(良好)、10個を超える場合は×(不良)とした。また、成形片が作成できなかった場合も×(不良)と評価した。
上述の各評価の総合評価を下記基準に従って行った。
成形性、外観、外観持続性、滑り出し角、退色性のいずれも良好な場合「◎」、滑り出し角は良好だが、他の特性のうち一つが少し劣るものをば○、滑り出し角が12゜以下又は20°超の場合は△、評価項目のうち二つ以上劣る場合は×として評価した。
後述する実施例及び比較例で、メタクリル系樹脂組成物の構成成分として用いたメタクリル系樹脂(A)、表面コーティング剤によりコーティングされたカーボンブラック、金属化合物(B)及び有機化合物(C)について、以下記載する。
メタクリル系樹脂(A)は、下記製造例A1〜A6により製造したメタクリル系樹脂(A−1)〜(A−6)を使用した。
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(a)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(a)、メタクリル酸メチル:21.2kg、アクリル酸メチル:0.43kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn−オクチルメルカプタン:75gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ26mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A−1)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は8.2万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.85であった。さらに極大ピーク分子量Pは7.2万であった。また、構造単位はMMA/MA=98/2質量%であった。
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(b)を得た。
次いで、60Lの反応器にイオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(b)、メタクリル酸メチル:21.2kg、アクリル酸エチル:1.35kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn−オクチルメルカプタン:45.4gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温した。
その後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ26mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A−2)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は14.1万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.85であった。さらに極大ピーク分子量Pは12.7万であった。また、構造単位はMMA/EA=94/6質量%であった。
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(c)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:23kgを投入して80℃に昇温し、混合液(c)、メタクリル酸メチル:5.5kg、ラウロイルパーオキサイド:40g、及び2−エチルヘキシルチオグリコレート:90gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行った。原料を投入してから80分後に発熱ピークが観測された。
次いで、92℃に1℃/min速度で昇温した後、30分間92℃〜94℃の温度を保持した。その後、1℃/minの速度で80℃まで降温した後、次いで、メタクリル酸メチル:16.2kg、アクリル酸メチル:0.75kg、ラウロイルパーオキサイド:21g、n−オクチルメルカプタン:17.5gを投入し、引き続き約80℃を保って懸濁重合を行った。原料を投入してから105分後に発熱ピークが観測された。
その後、92℃に1℃/minの速度で昇温した後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次に、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ26mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A−3)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は17.2万であり、極大ピーク分子量は18.4万であり、分子量分布(Mw/Mn)は3.65であった。また、構造単位はMMA/MA=96.5/3.5質量%であった。
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(c)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:23kgを投入して80℃に昇温し、混合液(c)、メタクリル酸メチル:5.5kg、ラウロイルパーオキサイド:40g、及び2−エチルヘキシルチオグリコレート:90gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行った。原料を投入してから80分後に発熱ピークが観測された。
次いで、92℃に1℃/min速度で昇温した後、30分間92℃〜94℃の温度を保持した。その後、1℃/minの速度で80℃まで降温した後、次いで、メタクリル酸メチル:16.2kg、アクリル酸メチル:0.75kg、ラウロイルパーオキサイド:21g、n−オクチルメルカプタン:24.5gを投入し、引き続き約80℃を保って懸濁重合を行った。原料を投入してから105分後に発熱ピークが観測された。
その後、92℃に1℃/minの速度で昇温した後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次に、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ26mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A−4)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は14.2万であり、極大ピーク分子量Pは15.5万であり、分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。単位はMMA/MA=96.5/3.5質量%であった。
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(d)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:23kgを投入して80℃に昇温し、混合液(d)及びメタクリル酸メチル:4.95kg、アクリル酸メチル:50g、ラウロイルパーオキサイド:36g、2−エチルヘキシルチオグリコレート:110gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、30分間92℃〜94℃の温度を保持した。その後、1℃/minの速度で80℃まで降温した後、次いで、メタクリル酸メチル:15.0kg、アクリル酸メチル:0.3kg、ラウロイルパーオキサイド:22g、n−オクチルメルカプタン:25gを投入し、引き続き約80℃を保って懸濁重合を行った。
発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温した後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次に、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を230℃に設定したφ26mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断してメタクリル系樹脂ペレット(A−5)を得た。
得られたメタクリル系樹脂ペレットの組成比は、Mwは12.0万であり、極大ピーク分子量Pは12.6万であり、分子量分布(Mw/Mn)は3.35であった。さらに、構造単位はMMA/MA=98.1/1.9wt%であった。
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:90g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.52gを投入し、混合液(e)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(e)、メタクリル酸メチル:16.8kg、フェニルマレイミド:2.93kg、スチレン:1.04kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn−オクチルメルカプタン:43gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ30mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A−6)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は12.3万であり、極大ピーク分子量Pは10.5万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.87であった。また、構造単位はMMA/PMI/St=81/14/5質量%であった。
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(a)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(a)、メタクリル酸メチル:21.2kg、アクリル酸メチル:0.43kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn−オクチルメルカプタン:100gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ26mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A−7)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は6万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.86であった。さらに極大ピーク分子量Pは5.3万であった。また、構造単位はMMA/MA=98/2質量%であった。
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(a)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(a)、メタクリル酸メチル:21.2kg、アクリル酸メチル:0.43kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn−オクチルメルカプタン:8.2gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ26mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A−8)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は35万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.95であった。さらに極大ピーク分子量Pは33.1であった。また、構造単位はMMA/MA=98/2質量%であった。
金属化合物(B)として、先記市販の金属化合物を用いた。
配合量は表2に示す。
有機化合物(C)として、上記市販の添加剤を用いた。
配合量は表2に示す。
<コーティング剤により表面コーティングされたカーボンブラックの製造>
表1にそれぞれ記載のコーティング剤を用いてカーボンブラックにコーティング処理を施した。
具体的には、まず、カーボンブラックの1.5倍の質量のコーティング剤を量り取り、それを融点以上に加熱して溶融させた後、所定量のカーボンブラックをその融液の中へ投入し撹拌した。なお、ステアリン酸亜鉛の融点は約140℃、エチレンビスステアリルアミド(EBS)の融点は約140〜145℃である。十分撹拌して分散させた後、冷却して、表面がコーティングされたカーボンブラックを得た。
上記市販の染料・顔料を用いた。
その他の添加剤としては、先記記載の市販品を用い、それらをコンパウンド原料とした。
それぞれの配合量は表2に示す。
表2に記載の配合割合になるよう、メタクリル系樹脂(A)、表面コーティング剤によりコーティングされたカーボンブラック、金属化合物(B)、有機化合物(C)、染料・顔料(D)、その他添加剤をそれぞれ計量した後、ヘンシェルミキサーへ投入し、それらを撹拌によって混合し分散させた。十分撹拌によって混合させた後、φ26mmの二軸押出機にその混合原料を投入し、溶融混練(コンパウンド)してストランドを生成し、ウォーターバスでそのストランドを冷却した後、ペレタイザーで切断してペレットを得た。なお、コンパウンドの際、押出機のベント部に真空ラインを接続し、水分やモノマー成分等の揮発成分を除去した。こうして、メタクリル系樹脂組成物を得た。なお、コンパウンド時の樹脂組成物の温度は、250〜270℃であった。表2中の部数とは、基材となるメタクリル系樹脂(A)の質量を100質量部としたときの添加剤の配合部数(質量部)を表す。
コンパウンド時の樹脂温度を300℃とした以外は上記実施例1等と同様に造粒し、メタクリル系樹脂組成物を得た。
(射出成形)
得られたメタクリル系樹脂組成物のペレットを射出成形機に投入し、平板状(10mm×88mm×3mm)に成形し、評価用試験片とした。なお、金型は、金型表面(金型キャビティ内面)が8000番の磨き番手で研磨されているものを用いた。そして、その8000番の磨き番手で研磨されている側の金型表面が転写されている成形品表面を、この評価用試験片の試験面とした。
なお、この評価用試験片の成形条件は、下記のように設定した。
樹脂温度:230℃〜270℃
金型温度:70℃
ここで、比較例5では270℃では成形片を得ることができなかったので、樹脂温度310℃として成形を実施した。
また、射出成形時の金型温度は、8000番の磨き番手で研磨された金型表面の転写性を高めるため、より高温に保つことが重要である。しかし、メタクリル系樹脂(A)のガラス転移温度が100℃前後である事から、高過ぎても冷却時間が長すぎる事となり、実用的ではなくなる。それらを良質させる温度範囲は、50℃以上100℃以下であり、より好ましくは60℃以上90℃以下、更に好ましくは65℃以上85℃以下であり、今回はその中の70℃を選択した。
一般的に用いられている木材を塗装した黒鍵を比較例1とし、実施例との比較を行った。
実施例1に関しては、実用上十分ではあるが、退色性において比較例に比べ同等レベルであった。実施例2に関しては、比較例に比べ滑り出し角Sがやや小さく、実用上問題ないレベルであるがタッチ性がやや異なる。実施例3、4に関しては、比較例と比べ外観がやや異なり、また滑り出し角Sがやや小さく、実用上問題ないレベルであるがタッチ性がやや異なる。実施例8、9に関しては、比較例と比較すると実用上問題ないレベルであるが外観がやや異なる。比較例2に関しては、外観がやや異なり、退色性も劣るものであった。比較例3においては、外観がやや異なり、外観の変化が見られた。
実施例12と比較例4を比較すると、ベース樹脂の分子量の低い比較例4では、(B)成分との混合性に劣り、成形性に劣るため、外観がやや異なるものとなった。また、滑り出し角Sや外観持続性、耐色性においてもやや劣っており、産業上で利用を考えたとき、製品としての物性バランスにおいて各実施例に劣っている。
比較例5においては、流動性が良好でなく試験片作製においてメタクリル系樹脂組成物に適した成形温度での成形が出来なかった。また、高い成形温度に由来して成形体の外観がやや異なっていた。産業上での利用を考えると成形不良が多く発生し、各実施例に比べ歩留まりが悪化すると考えられる。
Claims (7)
- 重量平均分子量Mwが、60,000以上300,000以下であるメタクリル系樹脂(A)100質量部と、金属硫酸塩、金属炭酸塩、金属水酸化物、金属硫化物、金属酸化物から選ばれる少なくとも1種の金属化合物(B)1質量部以上40質量部以下とからなるメタクリル系樹脂組成物を含むことを特徴とする、黒鍵。
- 前記メタクリル系樹脂組成物を用いて幅10mm、長さ88mm、厚み3mmで成形された試験片を、ポリメタクリル酸メチルを用いて厚み10mmで成形された平板の上に置き、前記平板を6°/分の速度で傾けていったときに前記試験片が動き始めた瞬間の角度である滑り出し角Sが、10°以上25°以下である、請求項1に記載の黒鍵。
- 前記金属化合物(B)の平均粒径が、2μm以上30μm以下である、請求項2に記載の黒鍵。
- 前記メタクリル系樹脂組成物が、有機化合物(C)をメタクリル系樹脂100質量部に対して0.2質量部〜10質量部さらに含有する、請求項2又は3に記載の黒鍵。
- 前記メタクリル系樹脂組成物が、染料・顔料(D)をさらに含有し、
前記染料・顔料(D)は、カーボンブラックと、赤系染料、黄系染料、緑系染料、青系染料、紫系染料からなる群から選ばれる2種以上の染料・顔料とを含む、
請求項2〜4のいずれか一項に記載の黒鍵。 - 前記金属化合物(B)の含有量Bの前記染料・顔料(D)の含有量Dに対する割合B/Dが、10以上140以下である、請求項5に記載の黒鍵。
- 前記メタクリル系樹脂(A)の極大ピーク分子量Pが、60,000以上500,000以下であり、かつ、分子量分布Mw/Mnが、2.4以上5.6以下である、請求項2〜6のいずれか一項に記載の黒鍵。
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