JP7281293B2 - 成形体 - Google Patents
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Description
〔1〕
メタクリル系樹脂組成物からなる成形体であり、
前記メタクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂(A)100質量部と硬質系添加剤(B)0.3~5質量部と染料(C)とを含み、前記メタクリル系樹脂(A)の含有量は、前記メタクリル系樹脂組成物を100質量%として70質量%以上99.9質量%以下であり、
前記メタクリル系樹脂(A)は、前記メタクリル系樹脂(A)の総量に対して、メタクリル酸メチル単量体単位の含有量が70~99.9質量%であり、他のビニル単量体に由来する他のビニル単量体単位の含有量が、0.1~30質量%であり、
前記他のビニル単量体は、アクリル酸メチル、α,β-不飽和酸、不飽和基含有二価カルボン酸及びそれらのアルキルエステル、スチレン系単量体、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、2個のアルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの及び多価アルコール誘導体をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したものからなる群から選ばれる一種以上であり、
前記硬質系添加剤(B)は、メタクリル基を含有するシランカップリング剤を用いた表面処理がなされており、平均粒子径が0.1μm超2μm以下の球状であり、JIS Z 2244に準拠して室温(25℃)にて測定された値を、102HV=1GPaとして換算したビッカース硬度が5GPa以上20GPa以下であり、酸化亜鉛、二酸化亜鉛、ガラスビーズ、シリカ、二酸化ケイ素、ゼオライト、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、二酸化チタン、炭化チタン、ケイ酸、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、グラファイト、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母、アパタイト、及び合成コージライトからなる群より選ばれる1種以上を含み、
前記染料(C)は、3種以上の染料の組合せであり、前記染料(C)の含有量は、前記メタクリル系樹脂組成物を100質量%として0.01質量%以上1.5質量%以下であり、
表面の光学顕微鏡による撮影画像(倍率:150倍)を大津の手法によって二値化処理して得られる解析画像において、全面積に対する黒相の面積の割合が3.0%以下であり、
SCE方式で測定された明度L*が0.3以上2.5以下である
ことを特徴とする、成形体。
〔2〕
前記硬質系添加剤(B)が、ガラスビーズ、シリカ、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、及び合成コージライトからなる群より選ばれる1種以上を含む、〔1〕に記載の成形体。
〔3〕
射出成形体である、〔1〕又は〔2〕に記載の成形体。
〔4〕
光学用途、電気・電子用途、又は車両用途の筐体又は意匠材である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の成形体。
〔5〕
二輪車用又は自動車用の意匠材である、〔4〕に記載の成形体。
〔6〕
テールランプガーニッシュ、リアランプガーニッシュ、フロントランプガーニッシュ、ピラーガーニッシュ、フロントグリル、リアグリル、ライセンスガーニッシュ、ホイールセンターキャップ、ナンバープレートガーニッシュ、又はドラミラーカバーのいずれかである、〔5〕に記載の成形体。
なお、本明細書において、重合前のモノマー成分のことを「~単量体」といい、「単量体」を省略することもある。また、重合体を構成する構成単位のことを「~単量体単位」及び/又は「~構造単位」といい、単に「~単位」と表記することもある。
本実施形態の成形体は、メタクリル系樹脂(A)100質量部と硬質系添加剤(B)0.3~5質量部とを含み、表面の光学顕微鏡による撮影画像(倍率:150倍)を二値化処理して得られる解析画像において、全面積に対する黒相の面積の割合が3.0%以下である。
尚、本明細書において、成形する前の本実施形態の成形体の原料である混合物を「メタクリル系樹脂組成物」と称する場合がある。
以下、本実施形態の成形体を構成する各成分について説明する。
以下、メタクリル系樹脂(A)の詳細について述べる。
メタクリル系樹脂(A)は、メタクリル酸エステル単量体に由来する構成単位(本明細書において、単に「メタクリル酸エステル単量体単位」ともいう)からなる単独重合体であってもよいし、メタクリル酸エステル単量体単位と、メタクリル酸エステル単量体に共重合可能な他のビニル単量体に由来する構成単位(本明細書において、単に「他のビニル単量体単位」ともいう)とを含む共重合体であってもよい。このなかでも、共重合体が好ましい。
メタクリル系樹脂(A)を構成するメタクリル酸エステル単量体単位を形成するメタクリル酸エステル単量体としては、本発明の効果を達成できるものであれば特に限定されないが、好ましい例としては、下記一般式(I)で示される単量体が挙げられる。
メタクリル系樹脂(A)を構成する上述した他のビニル単量体単位を形成する他のビニル単量体(本明細書において、単に「他のビニル単量体」ともいう)としては、特に限定されないが、好ましい例としては、下記一般式(II)で表されるアクリル酸エステル単量体が挙げられる。
上記他のビニル単量体は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量及び分子量分布について説明する。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したメタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、50000~300000であることが好ましい。メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量が上記範囲内であることにより、流動性、機械的強度、及び耐溶剤性のバランスを図ることができ、良好な成形加工性が維持される傾向にある。特に、優れた機械的強度及び耐溶剤性を得る観点から、メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、50000以上が好ましく、60000以上がより好ましく、70000以上がさらに好ましく、80000以上がさらにより好ましく、90000以上が特に好ましい。また、メタクリル系樹脂(A)が良好な流動性を示す観点から、メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は300000以下であることが好ましく、250000以下がより好ましく、230000以下がさらに好ましく、210000以下がさらにより好ましく、180000以下が特に好ましい。
メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、GPCで測定することができ、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。具体的には、あらかじめ単分散の重量平均分子量が既知で試薬として入手可能な標準メタクリル系樹脂(A)と、高分子量成分を先に溶出する分析ゲルカラムを用い、溶出時間と重量平均分子量から検量線を作成しておき、続いて得られた検量線を元に、所定の測定対象のメタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求めることができる。得られた重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)から分子量分布を算出することができる。数平均分子量(Mn)とは、単純な分子1本あたりの分子量の平均であり、系の全重量/系中の分子数で定義される。重量平均分子量(Mw)とは、重量分率による分子量の平均で定義される。
耐溶剤性、流動性の観点から、GPC法により求めた上記メタクリル系樹脂(A)のGPC溶出曲線から得られるピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分が占める割合は、上記メタクリル系樹脂(A)のGPC溶出曲線の総面積に対して、好ましくは6~50%であり、より好ましくは7~45%であり、さらに好ましくは8~43%であり、よりさらに好ましくは9~40%であ、さらにより好ましくは10~38%である。ピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合が6%以上であることより、成形流動性がより向上する傾向にあり、成形体表面の分子配向が緩和されて耐擦傷性が良好となる傾向にある。また、ピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合が50%以下であることより、耐溶剤性がより向上する傾向にある。
ここで、「ピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分が占める割合(%)」とは、GPC溶出曲線の全エリア面積を100%とした場合の、ピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分に相当するエリア面積の割合であり、後述する実施例に記載する方法により測定することができる。なお、「ピークトップ分子量(Mp)」とは、GPC溶出曲線においてピークを示す重量分子量を指す。GPC溶出曲線においてピークが複数存在する場合は、存在量が最も多い重量分子量が示すピークにおける分子量を、ピークトップ分子量(Mp)とする。
なお、重量分子量が500以下のメタクリル系樹脂(A)成分は、成形時にシルバーと呼ばれる発泡様の外観不良の原因となるため、できる限り少ない方が好ましい。
メタクリル系樹脂(A)の溶融粘度は、ツインキャピラリーレオメーターによる250℃、シェアレート100/sの条件での測定において、800Pa・s以上1800Pa・s以下であることが、硬質系添加剤(B)の分散性の観点で好ましく、例えば、後述する溶融混練時に硬質系添加剤(B)の分散性が良好となる傾向にある。800Pa・s以上であることにより、分散性が良化傾向となり、1800Pa・s以下であることにより、流動性が良好となる傾向にある。
より好ましくは、900Pa・s以上1700Pa・s以下であり、さらに好ましくは、900Pa・s以上1600Pa・s以下であり、特に好ましくは、1000Pa・s以上1600Pa・s以下である。
メタクリル系樹脂(A)は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合法もしくは乳化重合法のいずれかの方法により製造することができる。このなかでも、好ましくは、塊状重合、溶液重合及び懸濁重合法であり、より好ましくは懸濁重合法である。
キュアの際に昇温させる温度は、重合体(i)の重合温度よりも5℃以上高くすることが好ましく、より好ましくは7℃以上、さらに好ましくは10℃以上である。さらに、キュアの際に昇温した温度で保持する時間は、10分間以上180分間以下が好ましく、より好ましくは15分間以上150分間以下である。
上記メタクリル系樹脂組成物は、さらに硬質系添加剤(B)を含む。
表面外観と耐擦傷性の観点から、酸化亜鉛、二酸化亜鉛、ガラスビーズ、シリカ、二酸化ケイ素、ゼオライト、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、二酸化チタン、炭化チタン、ケイ酸、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、グラファイト、カーボンナノチューブ、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母、アパタイト、グラフェン、合成コージライト等が含まれることが好ましい。
特に、ガラスビーズ、シリカ、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、合成コージライト等が好ましい。
上記の硬質系添加剤(B)は、一種類のみを単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、硬質系添加剤(B)の平均粒子径は、5μm未満であれば、マイクロトラック・ベル社製ナノトラック Nanotrac WaveIIシリーズ等を用いて動的光散乱法で測定することができ、5μm以上であれば、マイクロトラック・ベル社製マイクロトラック粒子径分布測定装置MT3000IIシリーズ等を用いてレーザー回折法で測定することができる。本明細書における硬質系添加剤(B)の平均粒子径は、一次粒子径をあらわす。
なお、ビッカース硬度は、JIS Z 2244に準拠して室温(25℃)にて測定された値を、102HV=1GPaとして換算した値を指す。
表面処理方法は、本発明の効果を損なわない範囲で選択することができ、例えば、界面活性剤によって表面を疎水化するフラッシング法、水性コロイド吸着によるコーティング法、および粒子表面の官能基に有機物を反応させるトポケミカルな手法等が挙げられる。中でも、目的とする官能基を有するシランカップリング剤と硬質系添加剤(B)の表面とを反応させる方法が好ましい。
上記シランカップリング剤としては、メタクリル基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基等を含有するものが挙げられる。初期の光沢度と耐擦傷性の観点で、メタクリル基を有するシランカップリング剤を用いたメタクリルシラン処理がより好ましい。
硬質系添加剤(B)に表面処理を行うことにより、メタクリル系樹脂(A)と硬質系添加剤(B)との界面密着性が良好となり、表面ぎらつき性や耐擦傷性が良化する傾向にある。
(添加剤)
本実施形態の成形体には、必要に応じて、各種の添加剤を添加してもよい。
上記添加剤としては、例えば、ポリエーテル系、ポリエーテルエステル系、ポリエーテルエステルアミド系、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩等の帯電防止剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤等の安定剤;難燃剤、難燃助剤、硬化剤、硬化促進剤、導電性付与剤、応力緩和剤、結晶化促進剤、加水分解抑制剤、衝撃付与剤、相溶化剤、核剤、強化剤、補強剤、流動調整剤、増感材、ゴム質共重合体、増粘剤、沈降防止剤、タレ防止剤、充填剤、染料、着色剤、顔料、消泡剤、カップリング剤、防錆剤、抗菌・防黴剤、防汚剤、導電性高分子、摺動剤等が挙げられる。
成形体の各種用途を想定して染料を添加してもよく、黒系調色する場合は、顔料としてカーボンブラックを添加することが、耐候性の観点で好ましい。
また、特に、熱安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、及び摺動剤等を添加することが幅広い屋内外用途として、好ましい。また、衝撃強度を上げるため、応力緩和剤や衝撃付与剤として、ゴム質共重合体を添加してもよい。
添加剤の含有量は、メタクリル系樹脂組成物の総量に対して、30質量%以下が好ましい。
メタクリル系樹脂組成物と種々の添加剤とを混合する場合の混練方法としては、後述する「メタクリル系樹脂組成物の製造方法」に記載した方法等が挙げられ、特に限定されるものではない。
上記メタクリル系樹脂組成物は、後述する成形体の各種用途を想定して、染料(C)を含んでいてもよい。
上記染料(C)は、赤系染料、黄系染料、緑系染料、青系染料、及び紫系染料からなる群より選ばれる1種以上の染料を含むことが好ましく、赤系染料、黄系染料、緑系染料、青系染料、及び紫系染料からなる群より選ばれる1種以上の染料であることがより好ましい。
さらに深みのある漆黒性を発現させる観点から、3種以上の染料を含むことが好ましく、それらの染料は、互いに色相の異なる3種以上の染料であるとより好ましく、赤系染料、黄系染料、緑系染料、青系染料及び紫系染料からなる群より選ばれる3種以上の染料であることが更に好ましい。単純に青系染料と黄系染料との組合せのみ、又は緑系染料と赤系染料との組合せのみという狭い範囲での組合せよりも、所謂光の3原色をまんべんなく含んだ組合せによって漆黒性を発現させる方が、より深みを増した漆黒性を発現させる観点で好ましいからである。そのような組合せとしては、例えば、紫系染料、緑系染料、黄系染料及び青系染料の組合せ;紫系染料、黄系染料、緑系染料及び赤系染料の組合せ;赤系染料、緑系染料及び青系染料の組合せ、といった、複数の系統の染料の適量ずつの組合せが挙げられ、これらの中では、既に多くの市販製品があり、後述する耐候性染料の種類も多いのでより所望の漆黒性を実現しやすいという観点から、赤系染料、緑系染料、黄系染料及び青系染料の組合せが好ましい。
アントラキノン系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent Violet 36、Solvent Green 3、同28、Solvent Blue 94、同97、及びDisperse Red 22等が挙げられる。
複素環式化合物系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Disperse Yellow 160等が挙げられる。
ペリノン系染料としては、カラーインデックスで表すと、例えば、Solvent red 179等が挙げられる。
これらはそれぞれ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
上記メタクリル系樹脂組成物を黒系調色する場合は、さらにカーボンブラック(D)を含むことが耐候性の観点で好ましい。カーボンブラック(D)は、特に限定されず、メタクリル系樹脂(A)と相溶性があり、かつその物性に影響を与え難い物質であれば好適に使用できる。
カーボンブラック(D)の種類としては、ファーネスブラックが好ましく、顕微鏡観察による算術平均粒径が10~50nmであることが、成形体表面の解析画像における黒相面積比率を所定の範囲に調整する上でより好ましい。
上記コーティング剤としては、特に限定されないが、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、メチレンビスステアリルアミド、及びエチレンビスステアリルアミド(EBS)からなる群より選ばれる1種以上の化合物を含むことが好ましく、1種以上の該化合物のみからなることがより好ましい。これらの中でも、ステアリン酸亜鉛及びEBSがより好ましい。このようなコーティング剤を用いることにより、より深みのある漆黒性を実現できる傾向にある。コーティング剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
カーボンブラックがコーティング剤によりその表面をコーティングされている場合、カーボンブラックの質量Wcとコーティング剤の質量Wsとの比率(Wc/Ws)は、好ましくは20/80~60/40であり、より好ましくは30/70~50/50である。Wc/Wsが上記範囲内であることにより、より深みのある漆黒性を実現することができる傾向にある。
上記熱安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工安定剤等の酸化防止剤等が挙げられる。このなかでも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。このような熱安定剤としては、特に限定されないが、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオンアミド、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、4,6-ビス(ドデシルチオメチル)-о-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[(4-tert-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリン)メチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミン)フェノール等が挙げられ、ペンタエリスリトールテラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、フェノール系化合物、オキサゾール系化合物、マロン酸エステル系化合物、シアノアクリレート系化合物、ラクトン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンズオキサジノン系化合物等が挙げられる。このなかでも、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾトリアジン系化合物が好ましい。これらは一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記難燃剤としては、特に限定されないが、例えば、環状窒素化合物、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、籠状シルセスキオキサン又はその部分開裂構造体、シリカ系難燃剤等が挙げられる。
上記摺動剤としては、特に限定されないが、例えば、フタル酸エステル系、脂肪酸エステル系、トリメリット酸エステル系、リン酸エステル系、ポリエステル系等の可塑剤、高級アルコール、高級脂肪酸およびその塩、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸のモノ、ジ、又はトリグリセリド系等の離型剤、シロキサン系化合物等が挙げられる。中でも、漆黒性の観点から、シロキサン系化合物が好ましい。
シロキサン系化合物のなかでも、ポリ(メタ)アクリル基を含有するシロキサン系化合物、ポリエステル基を有するシロキサン系化合物が好ましい。また、シロキサン系化合物は、直鎖状、環状、分岐状のいずれの構造を有してもよいが、このなかでも直鎖状のシロキサン系化合物が好ましい。
ゴム質共重合体としては、特に限定されないが、例えば、一般的なブタジエン系ABSゴム、アクリル系、ポリオレフィン系、シリコーン系、フッ素ゴム等の有機ゴム粒子を使用することができる。例えば、特公昭60-17406号公報、特開平8-245854公報、特公平7-68318号公報に開示されているアクリル系ゴム質重合体等が挙げられる。
硬質層を最内層と最外層に有することにより、ゴム粒子の変形が抑制される傾向にあり、中央層に軟質成分を有することにより良好な靭性が付与される傾向にある。
上記化合物の中でも特に好ましいのは、(メタ)アクリル酸アリルである。
特に、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-へキシルがより好ましい。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物には、必要に応じて、メタクリル系樹脂(A)以外のその他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂は、特に限定されるものではなく、公知の熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が好適に使用される。
その他の樹脂の含有量は、メタクリル系樹脂組成物100質量%において、メタクリル系樹脂(A)が50質量%以上のとき、50質量%未満としてよい。
本実施形態のメタクリル系樹脂組成物の製造方法は、本発明の効果を損なわない範囲で選択することができ、例えば、原料を溶融混練(コンパウンド)することによって得ることができる。
各原料の混合順序としては、例えば、メタクリル系樹脂(A)及び硬質系添加剤(B)とその他の添加剤等とを一括で撹拌によって十分混合させた後で、後述する混練機に供給する方法や、メタクリル系樹脂(A)、硬質系添加剤(B)、その他の添加剤等をそれぞれ別々のフィーダーを用いて供給する方法により混合することができる。各成分の全量を一括投入する方法に比べて、各成分を別々に全量または一部混合物としてから投入する方法は、生産安定性や品質面で好ましい。
また、硬質系添加剤(B)とその他添加剤等を用い、メタクリル系樹脂(A)をベースとした高濃度のマスターバッチを溶融混練して調製し、そのマスターバッチを他のメタクリル系樹脂(A)を用いて薄めて溶融混練しても、本実施形態に係るメタクリル系樹脂組成物を得ることができる。
混練温度は、メタクリル系樹脂(A)の好ましい加工温度に従えばよく、好ましくは140~300℃であり、より好ましくは180~290℃であり、さらに好ましくは160~280℃である。混練温度が300℃以下であることにより、メタクリル系樹脂(A)の熱分解による残存モノマーの発生をより抑制でき、残存モノマーの可塑化効果による耐熱性等の物性低下及び射出成形時のシルバーをより有効かつ確実に防止することができる傾向にある。
また、混練回転数は、メタクリル系樹脂組成物の着色や熱分解を防止する観点から、300rpm以下で行うことが好ましく、より好ましくは250rpm以下であり、さらに好ましくは200rpm以下である。
また、吐出量(kg/hr)/混練回転数(rpm)は、黒相面積の割合を制御する上で、1.0以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましく、0.3以下であることがさらに好ましい。
(成形体の光学顕微鏡による観察および画像解析)
本実施形態の成形体は、成形体表面の光学顕微鏡による撮影画像(倍率:150倍)を二値化処理して得られる解析画像において、解析画像の全面積に対する黒相の面積の割合が3.0%以下である。
解析画像の全面積に対する黒相の面積の割合が3.0%以下であることにより、成形体表面の凹凸が低減されて、後述する成形体の入射角20°での光沢度(G20)が大きくなり、目視での表面ぎらつき性が改善される傾向にある。より好ましくは、黒相の面積の割合が2.5%以下であり、さらに好ましくは、2.0%以下であり、さらにより好ましくは、1.5%以下であり、特に好ましくは、1.0%以下である。
なお、二値化処理した解析画像において、正反射する部位は白く、拡散反射する部位は黒く見える。よって、表面の凹凸はこの黒相の面積に相関する。
黒相の面積の割合は、以下の方法で求めることができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
成形体表面の光学顕微鏡による撮影画像(倍率:150倍、500μmスケール)をソフトフェア(ImageJ)で読み込み、大津の手法による二値化を実施する。その後、この二値化処理した解析画像を用いて、解析画像の面積に対する黒相の面積の割合(%)を算出する。測定は、成形体表面の任意の複数箇所で行い、それぞれの解析画像から得られた黒相の面積の割合を平均した値を用いるものとする。
使用装置:VHX-6000(キーエンス社製)
使用ソフトウェア:ImageJ
撮影モード:同軸落射像
画像解析方法(二値化):大津の手法
黒相の面積の割合を上記範囲に制御する方法としては、特に限定されないが、例えば、硬質系添加剤(B)の平均粒子径、カーボンブラック等の添加剤の平均粒子径、成形体を射出成形する際の金型温度、金型を研磨する際に用いるやすりの番手等を調整する方法が挙げられる。硬質系添加剤(B)の平均粒子径を2.0μm以下にすると黒相面積の割合が低下する傾向にあり、カーボンブラック等の添加剤の平均粒子径を50nm以下にすると黒相面積の割合が低下する傾向にあり、成形体を射出成形する際の金型温度を50℃以上にすると黒相面積の割合が低下する傾向にあり、金型を研磨する際に用いるやすりの番手を大きくすると黒相面積の割合が低下する傾向にある。
本実施形態の成形体の表面ぎらつき性は、JIS Z8741に準拠して測定した入射角20°での光沢度(G20)で評価できる。G20は、好ましくは75%以上であり、より好ましくは77%以上であり、さらに好ましくは78%以上であり、さらにより好ましくは79%以上であり、特に好ましくは80%以上である。G20が75%以上であることにより、目視での表面ぎらつきが少なくなり、表面外観が良好となる。
本実施形態の成形体は、JIS Z8741に準拠して測定した入射角60°での光沢度(G60)が、83%以上であることが好ましく、より好ましくは84%以上であり、さらに好ましくは85%以上である。G60が83%以上であることにより、成形体の外観が良好となる。
表面外観の指標としては、入手角60°での光沢度(G60)が一般的によく使用されているが、この値だけでは目視での表面ぎらつきの評価は困難であり、G20値が重要となる。
本実施形態の成形体の漆黒性は、JIS Z 8729において採用されているL*a*b*表色系におけるSCE方式での明度の値(L*)で評価できる。「SCE方式」とは、JIS Z 8722に準拠した分光測色計を用い、光トラップによって正反射光を除去して色を測る方法を意味する。
成形体のL*値は、漆黒性を有する観点で、0.3以上2.5以下であることが好ましい。L*値は、より好ましくは0.4以上2.0以下であり、さらに好ましくは0.4以上1.7以下であり、さらにより好ましくは0.5以上1.5以下であり、特に好ましくは0.5以上1.2以下であり、最も好ましくは0.5以上1.0以下である。
さらに、耐擦傷性試験(スチールウール0.2kg荷重下、試験距離50mm、試験速度100mm/sで5回往復摺動)前後のL*値の差であるΔL*(ΔL*=(耐擦傷性試験後のL*)-(耐擦傷性試験前のL*))が2.0以下であることが、耐擦傷性の観点で好ましい。より好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1.0以下、さらにより好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.6以下である。ΔL*が2.0以下であることにより、傷が付いていない周辺部との視認による区別が困難となり、傷が目立ち難くなる。
なお、L*及びΔL*は、具体的には、後述の実施例に記載の方法で測定することができ る。
本実施形態の成形体は、ビカット軟化温度(VST)が、好ましくは80℃以上であり、より好ましくは85℃以上であり、さらに好ましくは90℃以上であり、さらにより好ましくは、95℃以上である。また、ビカット軟化温度の上限は特にない。
なお、ビカット軟化温度は、ISO306 B50に準拠して測定することができ、具体的には、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
本実施形態の成形体は、例えば、下記のようにして製造することができる。まず、必要に応じてペレットの形態で得られた上記メタクリル系樹脂組成物を射出成形機の金型キャビティ内に投入する。この際、金型としては成形体の形状に対応する形状の金型キャビティを有し、かつ、ウエルド発生を抑制する観点で1点ゲートである金型を用いることが好ましい。また、その金型におけるゲートの位置は、最終的に得られる成形体において別部材によって覆われることで目視にて確認できなくなるような部分と接触する位置であると好ましい。次いで、その射出成形機により所定の条件にてメタクリル系樹脂組成物を射出成形する。
こうして本実施形態の射出成形体を得ることができる。
本実施形態の成形体は、高外観を有し、耐擦傷性が求められる用途に好適に用いることができる。
このような用途としては、特に限定されないが、例えば、家具類、家庭用品、収納・備蓄用品、壁・屋根等の建材、玩具・遊具、パチンコ面盤等の趣味用途、医療・福祉用品、OA機器、AV機器、電池電装用、照明機器、船舶、航空機の構造の車体部品、車両用部品等に使用可能であり、特に光学用途、電気・電子用途、車体部品や車両用部品等の車両用途の筐体又は意匠材に好適に用いることができる。
その他、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバー、EL照明等のカバー等としても利用することができる。
<I.メタクリル系樹脂(A)の分子量及び分子量分布>
メタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量、分子量分布を下記装置、及び条件で測定した。
測定装置:東ソー社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(HLC-8320GPC)
カラム :TSKgel SuperH2500 1本、TSKgel SuperHM-M 2本、TSKguardcolumn SuperH-H 1本、直列接続
本カラムでは、高分子量が早く溶出し、低分子量は溶出する時間が遅い。
検出器 :RI(示差屈折)検出器
検出感度 :3.0mV/min
カラム温度:40℃
サンプル :0.02gの熱可塑性樹脂のテトラヒドロフラン10mL溶液
注入量 :10μL
展開溶媒 :テトラヒドロフラン、流速;0.6mL/min
検量線用標準サンプルとして、単分散の重量ピーク分子量が既知で分子量が異なる以下の10種のポリメタクリル酸メチル(Polymethyl methacrylate Calibration Kit PL2020-0101 M-M-10)を用いた。
なお、検量線用標準サンプルに用いたポリメタクリル酸メチルは、それぞれの単ピークのピーク分子量は以下のものを使用した。
ピーク分子量
標準試料1 1,916,000
標準試料2 625,500
標準試料3 298,900
標準試料4 138,600
標準試料5 60,150
標準試料6 27,600
標準試料7 10,290
標準試料8 5,000
標準試料9 2,810
標準試料10 850
上記の条件で、メタクリル系樹脂(A)の溶出時間に対する、RI検出強度を測定した。
GPC溶出曲線におけるエリア面積と、3次近似式の検量線を基にメタクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、GPCピークトップ分子量(Mp)及びGPCピークトップ分子量(Mp)の1/5以下の分子量を有する成分の割合(%)を求めた。
1H-NMR測定によりメタクリル系樹脂(A)の構造単位を同定し、その存在量(質量%)を算出した。
1H-NMR測定の測定条件は、以下のとおりである。
装置:JEOL-ECA500
溶媒:CDCl3-d1(重水素化クロロホルム)
試料:メタクリル系樹脂(A)15mgをCDCl3-d1 0.75mLに溶解し、測定用サンプルとした。
メタクリル系樹脂(A)を80℃で16時間乾燥の後、溶融粘度(Pa・s)を以下の条件で測定した。
装置:ツインキャピラリーレオメーター(ロザンド社製)
温度:250℃
シェアレート:100/s
オリフィス/ロングダイ:L=16mm、D=1φmm、入射角度180°
ショートダイ:L=0.25mm、D=1φmm、入射角度180°
実施例、参考例及び比較例で得られた射出成形された平板状評価用試料を用い、光学顕微鏡にて、倍率150倍(500μmスケール)条件で平板試料の表面の凹凸状態を観察した。得られた光学顕微鏡画像をソフトフェア(ImageJ)で読み込み、大津の手法による二値化を実施した。その後、この二値化処理した解析画像を用いて、解析画像の全面積(1749.27μm×2332.36μm)に対する黒相の面積の割合(%)を算出した。解析画像は、試料表面の任意の3箇所で取得し、それぞれの解析画像から得られた黒相の面積の割合を平均した値を測定結果とした。
なお、二値化により、正反射する部位が白く、拡散反射する部位は黒く見える。よって、表面の凹凸は、この黒相の面積に相関する。
使用装置:VHX-6000(キーエンス社製)
使用ソフトウェア:ImageJ
撮影モード:同軸落射像
画像解析方法(二値化):大津の手法
表面ぎらつき性の評価として、実施例、参考例及び比較例で得られた射出成形された平板状評価用試料について、JIS Z8741に準拠し、日本電色(株)社製の光沢計VG7000を用いて、表面のG20(%)を測定した。なお、測定は、試料表面の中央付近の3ヵ所で行い、各測定値の平均を算出してG20とした。
〈評価基準〉
◎:G20≧80%(目視にてぎらつきが殆ど無し)
○:75%≦G20<80%(目視にてぎらつきがわずかにある)
×:G20<75%(目視にてぎらつきあり)
また、同様にして、表面のG60(%)を測定した。なお、測定は、試料表面の中央付近の3ヵ所で行い、各測定値の平均を算出してG60とした。
スチールウール摺動試験
耐擦傷性の評価として、スチールウール摺動試験を以下の方法で実施した。
実施例、参考例及び比較例で得られた射出成形された平板状評価用試料を用いて、学振型摩擦試験機(大栄科学精器製作所社製、RT-200)の1cm四角冶具の先端にスチールウール(品番:TSW0000-200、番手:#0000超極細)をセットし、スチールウールがずれないよう固定した後、荷重0.2kg下、試験距離50mm、試験速度100mm/sの条件にて、試料の表面上で樹脂の流動方向に対して垂直な方向に、スチールウールを5回往復摺動させた。耐傷擦性試験前後の明度L*を測定し、次式によりその差ΔL*を算出した。この値が小さい程、耐擦傷性に優れると判断した。
ΔL*=耐擦傷性試験後のL*-耐擦傷性試験前のL*
得られたΔL*を次の評価基準で判断した。
〈評価基準〉
◎(優れる):ΔL*≦1.0
○(やや優れる):1.0<ΔL*≦2.0
×(劣る):2.0<ΔL*
なお、明度L*は、JIS Z 8722に準拠した分光測色計(コニカミノルタジャパン社製、「CM-700d」)を用いて、SCE方式(10°視野/D65光源)にて測定した。
参考例11を除く、実施例及び比較例で得られた射出成形された平板状評価用試料について、JIS Z 8722に準拠した分光測色計(コニカミノルタジャパン社製、「CM-700d」)を用いて、明度L*を、SCE方式(10°視野/D65光源)にて測定した。
明度L*が低いほど黒色となり、漆黒性が良好であると判断した。
〈評価基準〉
◎(優れる):L*≦1.0
○(やや優れる):1.0<L*≦2.5
×(劣る):2.5<L*
耐熱性の評価として、実施例、参考例及び比較例のメタクリル系樹脂(A)及び射出成形により得られた平板状評価用試料を用いて、ビカット軟化温度(VST)(℃)を、HDT試験装置(ヒートディストーションテスター)(東洋精機製作所社製)を用いて、ISO306 B50に準じて、測定した。荷重は50Nとし、昇温速度は50℃/時間とした。
総合評価を以下の判定基準で実施した。
上記の表面ぎらつき性、漆黒性、耐擦傷性にて成形体評価を実施し、総合評価を以下の評価基準で行った。
〈評価基準〉
◎(優れる):上記評価でいずれか2つ以上が◎であり、×はなし
○(やや優れる):上記評価でいずれか1つが◎であり、×はなし
△(良好):上記評価ですべて○である
×(劣る):上記評価でいずれか1つでも×がある
後述する実施例、参考例及び比較例で、メタクリル系樹脂組成物の製造に用いたメタクリル系樹脂(A)、硬質系添加剤(B)、硬質系添加剤以外の添加剤、染料(C)、カーボンブラック(D)について、以下記載する。
(メタクリル系樹脂(A))
メタクリル系樹脂は、下記製造例A1~A3により製造した(A-1)~(A-3)のメタクリル系樹脂を使用した。
メタクリル系樹脂の原料
・メタクリル酸メチル(MMA):旭化成ケミカルズ製(重合禁止剤として中外貿易製2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール(2,4-di-methyl-6-tert-butylphenol)を2.5ppm添加されているもの)
・アクリル酸メチル(MA):三菱化学製(重合禁止剤として川口化学工業製4-メトキシフェノール(4-methoxyphenol)が14ppm添加されているもの)
・n-フェニルマレイミド(PMI):日本触媒製
・スチレン(St):旭化成製
・n-オクチルメルカプタン(n-octylmercaptan):アルケマ製
・2-エチルヘキシルチオグリコレート(2-ethylhexyl thioglycolate):アルケマ製
・ラウロイルパーオキサイド(lauroyl peroxide):日本油脂製
・第三リン酸カルシウム(calcium phosphate):日本化学工業製、懸濁剤として使用
・炭酸カルシウム(calcium calbonate):白石工業製、懸濁剤として使用
・ラウリル硫酸ナトリウム(sodium lauryl sulfate):和光純薬製、懸濁助剤として使用
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(a)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して80℃に昇温し、混合液(a)、メタクリル酸メチル:21.2kg、アクリル酸メチル:0.43kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn-オクチルメルカプタン:58gを投入した。
その後、約80℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ30mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A-1)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は10.2万であり、ピークトップ分子量(Mp)は10.9万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.85であった。さらに、Mp値の1/5以下の分子量成分の存在量(%)は、4.5%であった。また、構造単位はMMA/MA=98/2(質量%)、ビカット軟化温度は110℃であった。また、250℃、100/sシェアレートでの溶融粘度は、990Pa・sであった。
(1段目)
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(b)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:23kgを投入して80℃に昇温し、混合液(b)、メタクリル酸メチル:5.5kg、ラウロイルパーオキサイド:40g、及び2-エチルヘキシルチオグリコレート:90gを投入した。その後、約80℃を保って懸濁重合を行った。原料を投入してから80分後に発熱ピークが観測された。
(2段目)
次いで、92℃に1℃/min速度で昇温した後、30分間92℃~94℃の温度を保持した。その後、1℃/minの速度で80℃まで降温した後、次いで、メタクリル酸メチル:16.2kg、アクリル酸メチル:0.75kg、ラウロイルパーオキサイド:21g、n-オクチルメルカプタン:17.5gを投入し、引き続き約80℃を保って懸濁重合を行った。原料を投入してから105分後に発熱ピークが観測された。その後、92℃に1℃/minの速度で昇温した後、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次に、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ30mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A-2)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は17.2万であり、ピークトップ分子量(Mp)は19.7万であり、分子量分布(Mw/Mn)は3.65であった。さらに、Mp値の1/5以下の分子量成分の存在量(%)は24.5%であった。また、構造単位はMMA/MA=96.5/3.5(質量%)、ビカット軟化温度は107℃であった。また、250℃、100/sシェアレートでの溶融粘度は、1200Pa・sであった。
攪拌機を有する容器に、イオン交換水:2kg、第三リン酸カルシウム:65g、炭酸カルシウム:39g、ラウリル硫酸ナトリウム:0.39gを投入し、混合液(d)を得た。
次いで、60Lの反応器に、イオン交換水:26kgを投入して75℃に昇温し、混合液(d)、メタクリル酸メチル:16.8kg、フェニルマレイミド:2.93kg、スチレン:1.04kg、ラウロイルパーオキサイド:27g、及びn-オクチルメルカプタン:43gを投入した。その後、約75℃を保って懸濁重合を行い、発熱ピークを観測後、92℃に1℃/minの速度で昇温し、60分間熟成し、重合反応を実質終了した。
次いで、50℃まで冷却して懸濁剤を溶解させるために、20質量%硫酸を投入後、重合反応溶液を、1.68mmメッシュの篩にかけて凝集物を除去し、得られたビーズ状ポリマーを洗浄脱水乾燥処理し、ポリマー微粒子を得た。
得られたポリマー微粒子を240℃に設定したφ30mmの二軸押出機にて溶融混練し、ストランドを冷却裁断して樹脂ペレット〔メタクリル系樹脂(A-4)〕を得た。
得られた樹脂ペレットの重量平均分子量は12.3万であり、ピークトップ分子量(Mp)は10.9万であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.83であった。さらに、Mp値の1/5以下の分子量成分の存在量(%)は、4.0%であった。また、構造単位はMMA/PMI/St=81/14/5(質量%)、ビカット軟化温度は125℃であった。また、250℃、100/sシェアレートでの溶融粘度は、970Pa・sであった。
下記市販の硬質系添加剤を用いた。
B-1:非晶質シリカ(球状、平均粒子径0.3μm)(3SM-C1、メタクリルシラン表面処理、(株)アドマテックス社製、ビッカース硬度:9GPa)
B-2:非晶質シリカ(球状、平均粒子径0.5μm)(SC2500-SMJ、メタクリルシラン表面処理、(株)アドマテックス社製、ビッカース硬度:9GPa)
B-3:非晶質シリカ(球状、平均粒子径1.5μm)(SC5500-SMJ、メタクリルシラン表面処理、(株)アドマテックス社製、ビッカース硬度:9GPa)
B-4:非晶質シリカ(球状、平均粒子径0.5μm)(アドマファインS0-C2、表面未処理(株)アドマテックス社製、ビッカース硬度:9GPa)
B-5:非晶質シリカ(球状、平均粒子径1.5μm)(アドマファインS0-C5、表面未処理(株)アドマテックス社製、ビッカース硬度:9GPa)
B-6:酸化アルミニウム(球状、平均粒子径0.6μm)(A2-SM-C5、メタクリルシラン表面処理、(株)アドマテックス社製、ビッカース硬度:15GPa)
B’-1:ポリエステル基を有するポリシロキサン系化合物(TEGOMER(登録商標)H-Si 6440P、エボニック社製、ビッカース硬度:1GPa以下)
染料としては、表1に記載の市販品を用い、それらをコンパウンド原料とした。それぞれの配合量は表3に示す。
D-1については、表2に記載のカーボンブラックD-0に対して、コーティング剤を用いて表面コーティング処理を施した。具体的には、まず、カーボンブラックD-0の1.5倍の質量のコーティング剤を量り取り、それを融点以上である160℃に加熱して溶融させた後、所定量のカーボンブラックをその融液の中へ投入し撹拌した。なお、ステアリン酸亜鉛の融点は約140℃である。十分撹拌して分散させた後、冷却して、表面がコーティングされたカーボンブラックを得た。
表3に記載の配合割合になるよう、メタクリル系樹脂(A)、硬質系添加剤(B)、硬質系添加剤以外の添加剤、染料(C)、及びカーボンブラック(D)をそれぞれ計量した後、メタクリル系樹脂組成物を100質量部として、メタクリル系樹脂(A)80質量部と、残りのメタクリル系樹脂(A)と硬質系添加剤(B)とその他の成分との合計20質量部とを、同じバレルに別々のフィーダーを用いてφ26mmの二軸押出機に投入した。
溶融混練(コンパウンド)してストランドを生成し、ウォーターバスでそのストランドを冷却した後、ペレタイザーで切断してペレットを得た。なお、コンパウンドの際、押出機のベント部に真空ラインを接続し、水分やモノマー成分等の揮発成分を除去した。こうして、メタクリル系樹脂組成物を得た。なお、コンパウンド時の熱可塑樹脂組成物の混練温度及び吐出量(kg/hr)/回転数(rpm)を、表3に示す。
(射出成形)
得られたメタクリル系樹脂組成物のペレットを射出成形機に投入し、平板状(100mm×100mm×t3mm)に成形し、評価用試料とした。なお、金型は、金型表面(金型キャビティ内面)が8000番の磨き番手で研磨されているものを用いた。そして、その磨き番手で研磨されている側の金型表面が転写されている表面を評価用試料の試験面とした。
この評価用試料の成形条件は、表3に示すように設定した。
なお、得られた評価用試料の含有成分、及び各成分の質量割合はメタクリル系性樹脂組成物と同じであった。
また、実施例2の成形体の光学顕微鏡画像及び二値化処理した解析画像を、それぞれ図1A及びBに、実施例8の成形体の光学顕微鏡画像及び二値化処理した解析画像を、それぞれ図2A及びBに示す。
実施例7~9においては、成形時の金型温度が75、85、100℃で実施したため、実施例6に比べて、成形体表面の黒相面積比率が小さくなり、表面ぎらつき性や漆黒性がより実用上良好なレベルにあった。
参考例11では、染料(C)、カーボンブラック(D)を含有していなかったため、漆黒性は未評価であるが、その他は実用上優れたレベルにあった。
実施例12では、実施例2に対して、硬質系添加剤(B)以外の摺動剤をさらに添加したため、耐擦傷性がやや良化傾向にあった。
実施例13では、メタクリル系樹脂(A)として、溶融粘度がやや低い樹脂を使用したため、実施例2に比べて、硬質系添加剤(B)の分散性の違いにより、表面ぎらつき性や耐擦傷性がやや低下傾向にあったが、実用上優れたレベルにあった。
実施例14では、メタクリル系樹脂(A)として、耐熱系樹脂を用いたため、他の実施例に比べて、耐熱性の優れる成形体であった。
実施例15においては、硬質系添加剤(B)として表面処理がされていない添加剤を用いたため、他の実施例に比べて、物性値全体がやや劣る傾向にあったが、実用上優れたレベルにあった。
実施例16においては、硬質系添加剤(B)としてアルミナを使用したが、実用上優れたレベルにあった。
一方で、比較例1、2においては、成形体表面の解析画像における黒相面積比率が3.0%を超えたため、表面ぎらつき性が不十分であった。
比較例3では、硬質系添加剤(B)において、添加量が5質量部を超えていたため、成形体表面の黒相面積比率が3.0%を超え、表面ぎらつき性が不十分であった。
比較例4では、硬質系添加剤(B)を添加しておらず、耐擦傷性が不十分であった。
Claims (6)
- メタクリル系樹脂組成物からなる成形体であり、
前記メタクリル系樹脂組成物は、メタクリル系樹脂(A)100質量部と硬質系添加剤(B)0.3~5質量部と染料(C)とを含み、前記メタクリル系樹脂(A)の含有量は、前記メタクリル系樹脂組成物を100質量%として70質量%以上99.9質量%以下であり、
前記メタクリル系樹脂(A)は、前記メタクリル系樹脂(A)の総量に対して、メタクリル酸メチル単量体単位の含有量が70~99.9質量%であり、他のビニル単量体に由来する他のビニル単量体単位の含有量が、0.1~30質量%であり、
前記他のビニル単量体は、アクリル酸メチル、α,β-不飽和酸、不飽和基含有二価カルボン酸及びそれらのアルキルエステル、スチレン系単量体、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物、2個のアルコールの水酸基をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したもの及び多価アルコール誘導体をアクリル酸又はメタクリル酸でエステル化したものからなる群から選ばれる一種以上であり、
前記硬質系添加剤(B)は、メタクリル基を含有するシランカップリング剤を用いた表面処理がなされており、平均粒子径が0.1μm超2μm以下の球状であり、JIS Z 2244に準拠して室温(25℃)にて測定された値を、102HV=1GPaとして換算したビッカース硬度が5GPa以上20GPa以下であり、酸化亜鉛、二酸化亜鉛、ガラスビーズ、シリカ、二酸化ケイ素、ゼオライト、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、二酸化チタン、炭化チタン、ケイ酸、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、炭化ケイ素、グラファイト、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母、アパタイト、及び合成コージライトからなる群より選ばれる1種以上を含み、
前記染料(C)は、3種以上の染料の組合せであり、前記染料(C)の含有量は、前記メタクリル系樹脂組成物を100質量%として0.01質量%以上1.5質量%以下であり、
表面の光学顕微鏡による撮影画像(倍率:150倍)を大津の手法によって二値化処理して得られる解析画像において、全面積に対する黒相の面積の割合が3.0%以下であり、
SCE方式で測定された明度L*が0.3以上2.5以下である
ことを特徴とする、成形体。 - 前記硬質系添加剤(B)が、ガラスビーズ、シリカ、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、及び合成コージライトからなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1に記載の成形体。
- 射出成形体である、請求項1又は2に記載の成形体。
- 光学用途、電気・電子用途、又は車両用途の筐体又は意匠材である、請求項1~3のいずれか一項に記載の成形体。
- 二輪車用又は自動車用の意匠材である、請求項4に記載の成形体。
- テールランプガーニッシュ、リアランプガーニッシュ、フロントランプガーニッシュ、ピラーガーニッシュ、フロントグリル、リアグリル、ライセンスガーニッシュ、ホイールセンターキャップ、ナンバープレートガーニッシュ、又はドラミラーカバーのいずれかである、請求項5に記載の成形体。
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