JP7296124B2 - リオトロピック液晶材料、リオトロピック液晶フィルム及びその製造方法、センサー、並びに、光学素子 - Google Patents
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Description
従って、セルロース誘導体を原料として用いた液晶材料等の開発は、安全性の観点及び環境負荷を低減する観点からも有用であり、セルロース誘導体が持つ液晶性、光学特性等を、液晶材料、液晶フィルム、フォトニックデバイス等への利用が更に期待されている。
<1> 下記一般式(1A)で表される分子構造を有し、かつ、下記関係式(I)を満たすセルロース誘導体と、
不飽和二重結合を有する基を分子内に有するモノマーと、
を含有するリオトロピック液晶材料。
0.01≦R11、R12及びR13で表される不飽和二重結合を有する基の個数/(3*n11)≦1.0 (I)
<5> 前記疎水性基が、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数2~4のアシル基である、<3>又は<4>に記載のリオトロピック液晶材料。
<6> 前記アシル基が、直鎖又は分岐鎖のプロピオニル基である、<5>に記載のリオトロピック液晶材料。
<7> 前記モノマーが有する不飽和二重結合を有する基は、(メタ)アクリロイル基である、<1>~<6>のいずれか1つに記載のリオトロピック液晶材料。
<8> 前記モノマーは、(メタ)アクリロイル基以外の官能基を更に有する、<1>~<7>のいずれか1つに記載のリオトロピック液晶材料。
<9> 前記(メタ)アクリロイル基以外の官能基は、水酸基、カルボキシ基及びアルコキシ基から選択される少なくとも1種である、<8>に記載のリオトロピック液晶材料。
<10> 前記モノマーは、不飽和二重結合を有する基を2つ以上分子内に有するか、又は、カルボキシ基を分子内に有する、<1>~<9>のいずれか1つに記載のリオトロピック液晶材料。
<11> 前記一般式(1A)における前記不飽和二重結合を有する基は、ウレタン結合を有する2価の連結基と、(メタ)アクリロイル基とを含む<1>~<10>のいずれか1つに記載のリオトロピック液晶材料。
下記一般式(1A)で表される構成単位と、
不飽和二重結合を有する基を分子内に有するモノマーに由来する構成単位と、
を含有する三次元構造を有するリオトロピック液晶フィルム。
前記疎水性基が、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~18のアルキル基、炭素数3~18のシクロアルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数2~18のアシル基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~18のアルコキシ基、-COOR1Aで表されるカルボン酸エステル基、又はハロゲン原子であり、前記R1Aが、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、又は、炭素数6~12のアリール基である、<12>又は<13>に記載のリオトロピック液晶フィルム。
<16> 前記疎水性基が、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~4のアシル基である、<14>又は<15>に記載のリオトロピック液晶フィルム。
<17> 前記アシル基が、直鎖又は分岐鎖のプロピオニル基である、<16>に記載のリオトロピック液晶フィルム。
<18> 前記モノマーが有する不飽和二重結合を有する基は、(メタ)アクリロイル基である、<12>~<17>のいずれか1つに記載のリオトロピック液晶フィルム。
<19> 前記モノマーは、更に、(メタ)アクリロイル基以外の官能基を有する、<12>~<18>のいずれか1つに記載のリオトロピック液晶フィルム。
<20> 前記(メタ)アクリロイル基以外の官能基は、水酸基、カルボキシ基及びアルコキシ基から選択される少なくとも1種である、<19>に記載のリオトロピック液晶フィルム。
<21> 前記モノマーは、不飽和二重結合を有する基を2つ以上分子内に有するか、又は、カルボキシ基を分子内に有する、<12>~<20>のいずれか1つに記載のリオトロピック液晶フィルム。
<22> 前記一般式(1A)における前記不飽和二重結合を有する基は、ウレタン結合を有する2価の連結基と、(メタ)アクリロイル基とを含む<12>~<21>のいずれか1つに記載のリオトロピック液晶フィルム。
基板上に付与された前記リオトロピック液晶材料に、熱処理する工程又は紫外線を照射する工程と、
を有するリオトロピック液晶フィルムの製造方法。
<25> 物体の歪みを検出する歪みセンサーである<24>に記載のセンサー。
<26> 生体情報を検出するウェアラブルセンサーである<24>に記載のセンサー。
<27> <12>~<22>のいずれか1つに記載のリオトロピック液晶フィルムを備える光学素子。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本実施形態のリオトロピック液晶材料(以下、単に「液晶材料」とも称する。)は、下記一般式(1A)で表される分子構造を有し、かつ、下記関係式(I)を満たすセルロース誘導体(以下、「特定セルロース誘導体」とも称する。)と、不飽和二重結合を有する基を分子内に有するモノマー(以下、「重合性モノマー」とも称する。)と、を少なくとも含有する。
このメカニズムは明らかではないが、以下のように推測される。
本実施形態の液晶材料より形成されたエラストマー膜は、重合性モノマーを含むことにより流動性が高くなり、かつ、優れたコレステリック液晶配向状態を示すため、機械的圧力を加えたときの影響を受けやすい構造を有している。そのため、エラストマー膜を膜厚方向に圧縮したときの短波長側への波長のシフト変化が大きく、かつ、波長反射率も高い。
以下、本実施形態の液晶材料の各成分について詳細に説明する。
本実施形態の液晶材料が含有する特定セルロース誘導体は、下記一般式(1A)で表される分子構造を有する。
特定セルロース誘導体は、特定構造の側鎖を有するので、後述の重合性モノマーと反応して、リオトロピック液晶性を発現する。
環状のアルキレン基としては、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。
-(R14-O)h-としては、例えば、エチレンオキシ基、ポリエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基等が挙げられる。
-(R14-O)h-は、より具体的には、-(-O-(CH2)n-)h-で表すことができる。ただし、nは1以上5以下の整数である。
-C(=O)-R15-としては、例えば、-C(=O)-CH2-、-C(=O)-C2H4-、-C(=O)-C3H6-等が挙げられる。
炭素数1~18の無置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
無置換の炭素数6~18のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
無置換の炭素数7~20のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルエテニル基等が挙げられる。
炭素数2~18のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基(プロパノイル基)、ブチリル基、イソブチリル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
炭素数1~18のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
カルボン酸エステル基中のR1Aとしては、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12の環状のアルキル基、炭素数6~12のアリール基が挙げられる。
置換基としては、既述のアルキレン基、-(R14-O)h-、及び、-C(=O)-R15-における置換基と同様のものが挙げられる。
架橋によって適度な弾性を有する液晶フィルムを得る観点から、n11としては、好ましくは2以上400以下、より好ましくは2以上300以下である。
一般式(1A-1)中、m1、t1及びr1としては、セルロース誘導体の合成のし易さの観点から、それぞれ独立に、好ましくは0以上8以下、より好ましくは0以上5以下、更に好ましくは0以上3以下である。
架橋によって適度な弾性を有する液晶フィルムを得る観点から、n13としては、好ましくは2以上400以下、より好ましくは2以上300以下である。
具体的には、一般式(1a)において、疎水性基(R11、R12又はR13)が、炭素数2~4のアシル基(特に好ましくはプロピオニル基)であって、不飽和二重結合を有する基(R11、R12又はR13)が、(メタ)アクリロイル基、又は、-C(=O)-NH-(CH2)2-O-C(=O)-CH=CH2であって、m11、t11及びr11が、それぞれ独立に、0以上3以下の整数であって、n13が、2以上300以下である態様;一般式(1b)において、疎水性基(R11、R12又はR13)が、炭素数2~4のアシル基(特に好ましくはプロピオニル基)であって、不飽和二重結合を有する基(R11、R12又はR13)が、(メタ)アクリロイル基、又は、-C(=O)-NH-(CH2)2-O-C(=O)-CH=CH2であって、m12、t12及びr12が、それぞれ独立に、0以上3以下の整数であって、n13が、2以上300以下である態様である。
前記一般式(1A)及び一般式(1A-1)中、R11、R12及びR13で表される不飽和二重結合を有する基としては、架橋によって適度な弾性を有する液晶フィルムを得る観点から、それぞれ独立に、下記一般式(1C)及び一般式(2C)の少なくとも一方で表される基であることが好ましい。
**は、一般式(1A)中、X11、X12、若しくはX13と結合する部分、又は、X11、X12、若しくはX13が単結合の場合はセルロース骨格の2位、3位、若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。
置換基としては、既述のアルキレン基、-(R14-O)h-、及び、-C(=O)-R15-における置換基と同様のものが挙げられる。
架橋反応の観点から、一般式(1C)で表される基は、(メタ)アクリロイル基を少なくとも含むことが好ましい。
一般式(1C-7)中、***は、上記一般式(1C-5)における(COCH=CH2)のCOに結合する炭素原子と結合する部分を表す。
架橋によって適度な弾性を有する液晶フィルムを得る観点から、R1Dで表される直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~18のアルキレン基としては、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数3~18のアルキレン基であることが好ましく、直鎖の炭素数3~18のアルキレン基であることがより好ましく、直鎖の炭素数6~12のアルキレン基であることが更に好ましい。
以下、R11、R12及びR13で表される不飽和二重結合を有する基の個数/(3*n11)」を「一般式(1A)で表される構成単位あたりの不飽和二重結合を有する基の置換度」と称する場合がある。
以下、「一般式(1A)で表される構成単位あたりの疎水性基の置換度」と称する場合がある。
また、一般式(1A)で表される構成単位あたりの不飽和二重結合を有する基の置換度が、構成単位あたり1.0以下であると、架橋点が多くなりすぎず、架橋反応により形成された三次元構造がゴム弾性を発現することができる。
特定セルロース誘導体において、不飽和二重結合を有する基の個数と、疎水性基の個数との好ましい比(不飽和二重結合を有する基/疎水性基)は、架橋によって適度な弾性を有する液晶フィルムを得る観点から、好ましくは3.0×10-3以上0.5以下であり、より好ましくは3.0×10-3以上3.6×10-1以下、より好ましくは6.7×10-3以上5.3×10-2以下である。
具体的には、本実施形態におけるセルロース誘導体を重クロロホルムに溶解させた溶液について、以下の測定条件でH1-NMRスペクトルを測定し、測定されたH1-NMRスペクトルに基づき、後述する実施例に示すように、不飽和二重結合を有する基に由来するプロトンピーク;疎水性基に由来するプロトンピーク;セルロース骨格由来のプロトンピーク(例えば、β-グルコースに由来する構成単位にあるプロトンピーク等);セルロース骨格がヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の場合、HPC由来のプロトンピーク鎖中のヒドロキシプロピル基が有するメチン基のプロトンピーク;等の積分値に基づき算出される。
なお、構成単位あたりの水酸基の平均個数は、上記方法で算出された不飽和二重結合を有する基の数及び疎水性基の数を、3から減ずることで算出される。
装置 :BRUKER製:ULTRASHIELD400PLUS(型番)
周波数:400MHz
特定セルロース誘導体の重量平均分子量(Mw)は、架橋によって適度な弾性を有する液晶フィルムを得る観点から、好ましくは2万以上20万以下、より好ましくは2万以上10万以下、更に好ましくは3万以上5万以下である。
より詳細には、以下の測定条件で得られた測定結果からポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出される。
装置 :HLC-8220GPC(東ソー(株)製)
溶剤 :テトラヒドロフラン(THF)
カラム :0021815 TSKgel SuperMultiporeHZ-N(粒子径3μm、内径4.6mm×長さ15cm、東ソー(株)製)
流速 :0.15mL/分
試料濃度:2.0質量%
注入量 :10μL
検出器 :示差屈折検出器
温度 :40℃
上記例以外の具体例としては、m1、t1、及びr1を、それぞれ独立に0以上10以下に置き換えた分子構造が挙げられる。
上記例以外の具体例としては、m1、t1、及びr1を、それぞれ独立に0以上10以下に置き換えた分子構造が挙げられる。
特定セルロース誘導体の含有量が70質量%以上99質量%以下であると、機械的圧力を加えた際に伴う反射ピークのシフトが増大する傾向がある。
特定セルロース誘導体の合成方法の一例として、一般式(1A)で表される分子構造を有するヒドロキシプロピルセルロース誘導体を合成する方法について説明する。但し、本実施形態のセルロース誘導体の合成方法については、これに限定されない。
HPC溶液と、不飽和二重結合を有する基を持つ化合物(以下、「重合性化合物」とも称する。)及び疎水性基を有する化合物(以下、「疎水性化合物」とも称する。)の少なくとも1つを混合し、混合液を調製する。
次に、この混合溶液中で、HPCと、重合性化合物及び疎水性化合物を反応させ、HPCに由来する構成単位に含まれる3つの水酸基の水素原子を、不飽和二重結合を有する基又は疎水性基で置換する。すなわち、HPCの側鎖(末端)に不飽和二重結合を有する基又は疎水性基が導入される。
なお、HPC溶液と、重合性化合物及び疎水性化合物の一方を混合して、HPCの側鎖に一方を導入した後、他方を混合してHPCの側鎖に他方を導入することが好ましい。これにより、一般式(1a)(一般式(1A)の一例)で表される分子構造を有するHPC誘導体が得られる。
一般式(1A)で表される分子構造を有するセルロース誘導体は、例えば、以下の方法で得ることができる。
まず、セルロース骨格の2位、3位、6位に結合する酸素原子と水素原子との間に、公知の方法により、アルキレン基、-(R14-O)h-(R14;アルキレン基、h;1以上10以下の整数)、又は、-C(=O)-R15-(R15;アルキレン基)を有する連結基を導入したセルロース誘導体を準備し、これを出発物質とする。次に、このセルロース誘導体(出発物質)の末端にある水素原子を、上記方法に準じる方法により不飽和二重結合を有する基又は疎水性基で置換する。これにより、一般式(1A)で表される分子構造を有するセルロース誘導体が得られる。
溶媒としては、出発物質を溶解できるものであれば特に制限されない。
溶媒としては、例えばアセトン等のケトン;メトキシプロパノール、エトキシエタノール、プロパノールなどのアルコール;テトラヒドロフラン等を挙げられる。
中でも、重合性化合物としては、ハロゲン化(メタ)アクリロイル(例えば、塩化(メタ)アクリロイル、臭化(メタ)アクリロイル等);イソシアナート(メタ)アクリレート(例えば、昭和電工(株)製のカレンズMOI(2-イソシアナトエチルメタクリレート)、カレンズAOI(2-イソシアナトエチルアクリラート)、カレンズBEI(1,1-ビスアクリロイルオキシメチル(エチルイソシアナート))、カレンズMOI-EG等);であることが好ましい。
中でも、疎水性化合物としては、ハロゲン化アシル(例えば、塩化アシル(塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブチリル、塩化ペンタノイル等)、臭化アシル(臭化アセチル、臭化プロピオニル、臭化ブチリル、臭化ペンタノイル等);であることが好ましく、塩化アシルであることがより好ましく、液晶性の観点から、塩化アセチル又は塩化プロピオニルであることが更に好ましい。
なお、具体的なセルロース誘導体の合成方法の一例については、後述する実施例の項にて説明する。
液晶材料は、不飽和二重結合を有する基を分子内に有するモノマー(重合性モノマー)を含有する。
液晶材料は、特定セルロース誘導体と、重合性モノマーと、を少なくとも含有することで、リオトロピック液晶性を発現することができ、かつ、重合性モノマーが特定セルロース誘導体の側鎖が有する不飽和二重結合と反応して架橋構造を形成することで、優れたゴム弾性を発現する。
重合反応性及び特定セルロース誘導体との相溶性の観点から、不飽和二重結合を有する基としては、(メタ)アクリロイル基であることが好ましく、アクリロイル基であることがより好ましい。
無置換のアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-t-シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、相溶性及びゴム弾性に優れる観点から、水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの少なくとも一方であることがより好ましい。
これらの中でも、相溶性及びゴム弾性に優れる観点から、カルボキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
これらの中でも、相溶性及びゴム弾性に優れる観点から、アルコキシ基を有する(メタ)アクリレートとしては、メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート及びメトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、2-(エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートであることが更に好ましい。
反射色の復元時間をより遅らせる点から、重合性モノマーは、カルボキシ基を分子内に有することが好ましい。
一般式(1A)及び一般式(1A-1)中、R11、R12及びR13で表される不飽和二重結合を有する基が、一般式(2C)で表される基である場合、液晶性の観点から、重合性モノマーの含有量としては、液晶材料全質量に対して、1質量%~10質量%であることが好ましく、2質量%~8質量%であることがより好ましい。
本実施形態の液晶材料は、本実施形態の効果が得られる範囲内において、特定セルロース誘導体及び重合性モノマー以外の成分(以下、「その他の成分」とも称する。)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、例えば、重合開始剤、架橋剤、難燃剤、相溶化剤、酸化防止剤、離型剤(剥離剤)、耐光剤、耐候剤、改質剤、帯電防止剤、加水分解防止剤等が挙げられる。
重合開始剤としては、公知の重合開始剤(例えば熱重合開始剤、光重合開始剤)を用いることができる。
本実施形態のリオトロピック液晶フィルム(以下、単に「液晶フィルム」とも称する。)は、本実施形態のリオトロピック液晶材料の架橋物であって、三次元構造を有する。
したがって本実施形態の液晶フィルムは、優れたゴム弾性を有することで、ブラッグ反射の波長で配向が固定化される。さらに、機械的圧力を加えることによって、その圧力に対応する波長の反射光が得られる。
架橋後の液晶フィルムは、三次元構造が形成されているため、溶媒に溶解しない。これに対して、三次元構造が形成されていない架橋前の液晶フィルム(即ち、液晶材料)は溶媒に溶解するため、三次元構造の形成を確認することができる。
なお、液晶フィルムの三次元構造の形成方法には特に制限はなく、例えば、架橋剤を用いて、一般式(1A)で表される構成単位と、重合性モノマーに由来する構成単位とを架橋させて三次元構造を形成させてもよい。
本実施形態の液晶フィルムの製造方法は、基板上に、本実施形態の液晶材料を付与する工程(以下、「液晶材料付与工程」とも称する。)と、基板上に付与された液晶材料に、熱処理する工程(以下、「熱処理工程」とも称する。)又は紫外線を照射する工程(以下、「紫外線照射工程」とも称する。)と、を有する。
本実施形態の液晶フィルムの製造方法では、上記工程を経ることにより、ゴム弾性を有し、かつ、ブラッグ反射が特定の波長で固定化された液晶フィルムを得ることができる。 さらに、機械的圧力を加えることによって、その圧力に対応する波長の反射光が得られる液晶フィルムを製造することができる。
液晶材料付与工程は、基板上に、上記実施形態の液晶材料を付与する工程である。
基板としては特に制限されず、目的に応じて通常用いられるものから適宜選択することができる。
基板としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板(例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板、ポリカーボネート(PC)基板、ポリイミド(PI)基板等)、アルミ基板やステンレス基板等の金属基板、シリコン基板等の半導体基板等を用いることができる。
基板上への液晶材料の付与方法としては、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法等の塗布法;インクジェット法;スクリーン印刷法;減圧注入法等の注入法;等が挙げられる。
熱処理工程は、基板上に付与された液晶材料に、熱処理して、液晶材料を硬化させる工程である。
熱処理工程により、架橋前の特定セルロース誘導体が有する不飽和二重結合が開裂して、一般式(1A)で表される構成単位と重合性モノマーに由来する構成単位とが反応し、又は特定セルロース誘導体若しくは重合性モノマーが反応し、架橋構造が形成されるため、液晶フィルムはゴム弾性を発現し、かつ、ブラッグ反射の波長で配向が固定化される。
加熱装置としては、特に制限はなく、例えば、オーブン、赤外線ヒーター及びホットプレートが挙げられる。
熱処理の温度は、液晶材料が上記範囲になるように制御される。
紫外線照射工程は、基板上に付与された液晶材料に、紫外線を照射し、液晶材料を硬化させる工程である。
紫外線照射工程により、架橋前の特定セルロース誘導体が有する不飽和二重結合が開裂して一般式(1A)で表される構成単位と重合性モノマーに由来する構成単位とが反応し、又は特定セルロース誘導体若しくは重合性モノマーが反応し、架橋構造が形成されるため、液晶フィルムはゴム弾性を発現し、かつ、ブラッグ反射の波長で配向が固定化される。
UV照射温度は、液晶材料が上記範囲になるように制御される。
UV照射温度を上記範囲に制御することによって、セルロース誘導体のリオトロピック液晶性が発現され、目的とする色に調整しやすくなり、所望の色が得られやすくなる。
UV照射温度を上記範囲に制御し、かつ、UV照射強度(好ましくはUV照射時間)を上記範囲に制御することで、UV照射温度によって得られた色を固定化することができ、目的とする箇所に目的とする色を呈する多色からなる液晶フィルムが得られる。
多色からなる液晶フィルム(すなわち、異なるブラッグ反射での配向が固定化されたフィルム)は、例えばフォトマスクを用いることで容易に得ることができる。
本実施形態の液晶フィルムの製造方法は、基板上に配向膜を形成する工程(以下、「配向膜形成工程」とも称する。)を有してもよい。
配向膜形成工程は、例えば、液晶材料付与工程の前に有してもよい。
基板上に配向膜を形成することにより、熱処理工程又は紫外線照射工程において、ブラッグ反射の波長での配向の固定化が容易に行える。優れた液晶フィルムを得る観点から、配向膜は、ラビング処理が施されていることが好ましい。
液晶フィルムの厚さは特に制限されない。
優れた液晶フィルムを得る観点から、液晶フィルムの厚さとしては、好ましくは50μm以上2000μm以下、より好ましくは100μm以上1500μm以下、さらに好ましくは200μm以上1000μm以下である。
液晶フィルムは、基板から剥離して用いてもよいし、基板上に形成したまま用いてもよい。
本実施形態の液晶フィルムは、例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、反射防止フィルム、光拡散フィルム、輝度向上フィルム、防眩フィルム等の光学フィルム;物体の歪み、伸縮、振動、衝撃等に起因する変形を、反射の波長(好ましくは反射色)によって検出するセンサー(圧力センサー、歪みセンサー、伸縮センサー、振動センサー、衝撃センサー等);脈波、呼吸、心弾動等の生体情報を、反射の波長(好ましくは反射色)によって検出するウェアラブルセンサー;上記光学フィルムを利用した光学素子;前記以外の光学素子;液晶表示素子;等に搭載して利用することができる。
本実施形態の液晶フィルムは、弾性を有し、機械的圧力を加えることによって、機械的圧力に対応する波長の反射光を得ることができるので、反射の波長(好ましくは反射色)によって機械的圧力を検出できるセンサー、又は、機械的圧力を加えることによって反射光が得られる光学素子に搭載して利用することが好ましい。
本実施形態のセンサーは、本実施形態の液晶フィルムを備える。
センサーとしては、例えば、上記で例示した各種センサーが挙げられる。
本実施形態のセンサーは、物体の歪みを検出する歪みセンサーであることが好ましい。
歪みセンサーは、本実施形態の液晶フィルムを備えるため、物体の歪みに起因する変形を反射の波長(好ましくは反射色)によって検出することができる。
例えば、歪みセンサーを、歪みが生じやすい物体(例えば、橋梁、建物等の構造物)の箇所に予め設置しておくことによって、物体の歪みの程度を検出することができる。また、歪みセンサーは、その歪み(変形)に起因する機械的圧力を可視的に、すなわち反射の波長(好ましくは反射色)によって検出することができる。
本実施形態のセンサーは、生体情報を検出するウェアラブルセンサーであることが好ましい。ウェアラブルセンサーとは、身につけて使用できる比較的小型のセンサーを意味する。
ウェアラブルセンサーは、本実施形態の液晶フィルムを備えるため、生体情報を、反射の波長(好ましくは反射色)によって検出することができる。
例えば、歪みセンサーを、生体情報を取得したい箇所(例えば、肌)に直接貼り付ける若しくは装着する、又は、衣類、下着、靴下、手袋、ネクタイ、ハンカチ、マフラー、時計、メガネ、靴、スリッパ、帽子等に貼り付ける若しくは装着することによって、生体情報(脈波、呼吸、心弾動、体動(筋肉の動き等)など)を可視的(すなわち、反射の波長(好ましくは反射色))によって取得することができる。
本実施形態の光学素子は、本実施形態の液晶フィルムを備える。
例えば、人為的に機械的圧力を加える、又は、自然に機械的圧力がかかる箇所に、光学素子を予め設置することにより、その機械的圧力に対応して異なる反射光が得られる。
このような光学素子の用途としては、玩具、非常用光源、インテリア(置物、棚等)、建築部材(床、壁、階段等)、食器、容器などに用いることが挙げられる。
[HPC誘導体1の合成]
下記スキームに従って、HPC誘導体1を合成した。
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(和光純薬工業(株)製、製品名;ヒドロキシプロピルセルロース2.0~2.9、製品番号;082-07925、)を減圧下、室温(25℃)で24時間以上乾燥した。窒素を充填した三口フラスコに6.0gのHPCを秤量し、30mLの脱水アセトンに撹拌しながら溶解し、HPC溶液を得た。このとき、β-グルコースモノマーに由来する構成単位におけるヒドロキシ基のモル数は、MS値(β-グルコースモノマーに由来する構成単位当たりのヒドロキシプロピル基の平均個数)から45mmolと算出された。
反応終了後、遮光状態を維持したまま、反応溶液を1000mLの超純水に投入し、黒色のもち状生成物を得た。この生成物を超純水で洗浄し乾燥させた後、少量のアセトンに生成物を溶解させた後、500mLの超純水に投入して再析出した。この再溶解及び再析出の操作を5回繰り返して、白色もち状の生成物を得た。
上記で合成したHPC誘導体1の1H-NMRスペクトルを測定した。
本実施例に係るHPC誘導体1に由来するピーク(具体的には、HPC-AcC/PrE由来のピーク)として、5.8ppm、6.1ppm及び6.4ppm付近のピーク(図2のa、b及びc)は、それぞれアクリロイル基の二重結合につくプロトンのピークであり、4.7ppm~5.2ppm付近のピーク(図2のe及びj)は、末端のヒドロキシプロピル基のメチン基である。2.7ppm~4.5ppm付近のピークは、β-グルコースモノマーユニットにあるプロトン、側鎖のヒドロキシプロピル基が有するメチン基のプロトン(HPC骨格由来するプロトンピーク(スペクトル中「HPC」と表示))である。
HPC誘導体1は、アクリロイルエチルカルバメート基(不飽和二重結合を有する基)への置換度は0.16であり、プロピオニル基(疎水性基)への置換度は2.75(HPC-AcC/PrE(AcC:PrE=0.16:2.75))であった。
マイクロチューブに上記で合成したHPC誘導体1を0.1g程度量り取った。4-ヒドロキシブチルアクリレート(東京化成工業(株)製、製品コード;A1390、4HBA、ガラス転移温度(Tg);-32℃)及びHPC誘導体1の全質量に対するHPC誘導体1の含有量が79.9質量%になるように、量り取ったHPC誘導体1に4HBAを滴下し、次いで、ミックスローター(DLAB Scientific Instrument Inc社製品)を用いて1週間撹拌し、液晶材料1を調製した。
液晶配向膜として2.0質量%のポリビニルアルコール(PVA)(シグマアルドリッチ社製、重量平均分子量(Mw):1.3×104~2.3×104、加水分解度(hydrolyzed):87%~89%)水溶液を調製した。スピンコーター(Active社製:ACT-220D II)を用いて、市販のスライドガラス(基板)に2.0質量%PVA水溶液を800rpmで10秒間、続けて2000rpmで20秒間スピン塗布し、100℃のホットステージ上で1時間程度熱処理した。2.0質量%PVA水溶液を同様の条件でスピン塗布し、同条件で熱処理しPVA塗布基板を得た。
その後、キュプラで巻いた棒を用いてPVA塗布基板を1軸方向に50回擦り、ラビング処理を施した。
さらに、剥離操作に備えて、剥離剤を200rpmで10秒間、続けて500rpmで10秒間スピン塗布し、100℃のホットステージ上で5分程度熱処理した。これにより、ラビング処理及び剥離処理が施されたPVAガラス基板(以下、「ラビング・剥離処理PVAガラス基板」とも称する。)を得た。
なお、ラビング・剥離処理PVAガラス基板は計2枚作製した。
さらに、せん断配向処理を施し、半日静置することで、液晶分子が均質に配向し、かつ、厚さ500μmの液晶材料1を備えた液晶セルを得た。
10mW程度の365nmの紫外線を、15分間、室温(25℃)で液晶セルに照射し、液晶セルの隙間にピンセットを差し込み、ゆっくりと引き上げて膜を剥離し、液晶フィルム1を得た。
<FT-IRスペクトルの測定>
上記で作製した液晶材料1(HPC-AcC/PrE)を用いて、FT-IR(赤外全反射吸収測定法:ATR法)により、FT-IRスペクトルを測定した。結果を図3に示す。
図3に示すように、1730cm-1付近にC=O伸縮振動のピークが強く表れた。また、3300cm-1~3600cm-1付近のOH伸縮振動のピークが減少した。
実施例1で作製した液晶材料1は、アクリロイルエチルカルバメート基及びプロピオニル基への置換度が十分であることが確認された。
実施例1で得た液晶セル(液晶フィルムの厚さ:500μm)を用いて、液晶セルを室温(25℃)で365nmの紫外線を10分間照射する前と後における、透過スペクトルを測定した。結果を図4に示す。
-圧縮時における波長のシフト変化-
上記で作製した液晶フィルム1(エラストマー膜)の反射スペクトルを以下の条件で測定した。作製した液晶フィルム1の厚みを測定し、その後、自作の圧縮チューニングセルを用いて30μmずつ液晶フィルム1を厚み方向へ圧縮した。小型ファイバマルチチャンネル分光器(Ocean Optics社製、型番;USB-4000)を用いて、30μm毎に透過スペクトルを測定することで、圧縮時における波長のシフト変化を測定した。その結果を図5に示す。
実施例1の液晶材料1の作製において、4HBAをイソノニルアクリレート(INA)(東京化成工業(株)製、製品番号;I1071、ガラス転移温度(Tg);-62℃)に変更し、INA及びHPC誘導体1の全質量に対するHPC誘導体1の含有量が82質量%になるようにINAを滴下した以外は、実施例1と同様にして液晶材料2を調製した。また調製した液晶材料2を用い、実施例1と同様にして液晶セル及び液晶フィルム2を作製し、評価を行った。得られた結果を図6に示す。
実施例1の液晶材料1の作製において、HPC誘導体1の含有量が、4HBA及びHPC誘導体1の全質量に対して85.8質量%になるように4HBAを滴下した以外は、実施例1と同様にして液晶材料3を調製した。
また調製した液晶材料3を用い、実施例1と同様にして液晶セル及び液晶フィルム3を作製し、評価を行った。得られた結果を図7に示す。
実施例1の液晶材料1の作製において、4HBAをエトキシエトキシエチルアクリレート(EEEA)(東京化成工業(株)製、E0652、ガラス転移温度(Tg);-67℃)に変更し、HPC誘導体1の含有量が、EEEA及びHPC誘導体1の全質量に対して85.9質量%になるようにEEEAを滴下した以外は、実施例1と同様にして液晶材料4を調製した。また調製した液晶材料4を用い、実施例1と同様にして液晶セル及び液晶フィルム4を作製し、評価を行った。得られた結果を図8に示す。
実施例1の液晶材料1の作製において、4HBAをブチルアクリレート(BA)(東京化成工業(株)製、A0142、ガラス転移温度(Tg);-40℃)に変更し、HPC誘導体1の含有量が、BA及びHPC誘導体1の全質量に対して82.2質量%になるようにBAを滴下した以外は、実施例1と同様にして液晶材料5を調製した。また調製した液晶材料5を用い、実施例1と同様にして液晶セル及び液晶フィルム5を作製し、評価を行った。得られた結果を図9に示す。
実施例1の液晶材料1の作製において、4HBAをオクチルアクリレート(分岐鎖異性体混合物)(ΟA)(東京化成工業(株)製、製品番号;I0639)、ガラス転移温度(Tg);-65℃)に変更し、HPC誘導体1の含有量が、OA及びHPC誘導体1の全質量に対して86.0質量%になるようにOAを滴下した以外は、実施例1と同様にして液晶材料6を調製した。また調製した液晶材料6を用い、実施例1と同様にして液晶セル及び液晶フィルム6を作製し、評価を行った。得られた結果を図10に示す。
実施例1の液晶材料1の作製において、4HBAをフェノキシエチルアクリレート(PEA)(東京化成工業(株)製、製品番号;A1400、ガラス転移温度(Tg);-65℃)に変更し、HPC誘導体1の含有量が、PEA及びHPC誘導体1の全質量に対して82.0質量%になるようにPEAを滴下した以外は、実施例1と同様にして液晶材料7を調製した。また調製した液晶材料7を用い、実施例1と同様にして液晶セル及び液晶フィルム7を作製し、評価を行った。得られた結果を図11に示す。
実施例1の液晶材料1の作製において、4HBAを2-メトキシエチルアクリレート(2MEA)(東京化成工業(株)製、製品番号;A1405)、ガラス転移温度(Tg);-50℃)に変更し、HPC誘導体1の含有量が、2MEA及びHPC誘導体1の全質量に対して82.2質量%になるように2MEAを滴下した以外は、実施例1と同様にして液晶材料8を調製した。また調製した液晶材料8を用い、実施例1と同様にして液晶セル及び液晶フィルム8を作製し、評価を行った。得られた結果を図12に示す。
[HPC誘導体2の合成]
下記スキームに準じて、HPC誘導体2を合成した。
最初に添加する試薬を10-ウンデセノイルクロライド(東京化成工業(株)製、製品番号;U0008)2.4mL(11mmol)、塩化アクリロイル(東京化成工業(株)製、A0147)0.55mL(6.8mmol)及び、塩化プロピオニルの添加量を13.0mL(145.2mmol)に変更した以外は、HPC誘導体1と同様にして、HPC誘導体2(以下、「HPC-UndE/AcE/PrE」とも称する。)を得た。なお、HPC-UndE/AcE/PrEの収量は2.5gであった。
また、既述の方法により、HPC-UndE/AcE/PrEの重量平均分子量を測定した結果、重量平均分子量は、1.5×105であった。
上記で合成したHPC誘導体2の1H-NMRスペクトルを測定した。
本実施例に係るHPC誘導体2に由来するピーク(具体的にはHPC-UndE/AcE/PrE由来)のピークとして、5.8ppm、6.1ppm及び6.4ppm付近のピーク(図13のa、b、c、d及びe)は、それぞれビニル基の二重結合につくプロトンのピークであり、4.7ppm~5.2ppm付近のピークは、末端のヒドロキシプロピル基のメチン基及びウンデセノイル基末端のプロトンのピークである。2.7ppm~4.5ppm付近のピークは、ウンデセノイル基のメチレン基(図13のh、i及びj)、β-グルコースモノマーユニットにあるプロトン、側鎖のヒドロキシプロピル基が有するメチン基のプロトンである。
HPC誘導体2は、ウンデセノイル基(不飽和二重結合を有する基)への置換度は0.61であり、アクリロイル基(不飽和二重結合を有する基)への置換度は0.13あり、プロピオニル基(疎水性基)への置換度は2.22(HPC-UndE/AcE/PrE(UndE:AcE:PrE=0.61:0.13:2.22))であった。
マイクロチューブに上記で合成したHPC誘導体2(HPC-UndE/AcE/PrE)を0.1g程度量り取った。エトキシエトキシエチルアクリレート(EEEA)(ガラス転移温度(Tg);-67℃)及びHPC誘導体2の全質量に対するHPC誘導体2の含有量が93.0質量%になるように量り取ったHPC誘導体2にEEEAを滴下し、次いで、ミックスローター(DLAB Scientific Instrument Inc社製品)を用いて1週間撹拌し、液晶材料9を調製した。
実施例1の液晶セルの作製において、液晶材料1を液晶材料9に代えた以外は、実施例1と同様にして、液晶フィルム9を作製し、評価を行った。得られた結果を図14に示す。
実施例9において、液晶材料9のEEEAをイソノニルアクリレート(INA)(東京化成工業(株)製、製品番号;I1071、ガラス転移温度(Tg);-62℃)に変更し、HPC誘導体2の含有量が、INA及びHPC誘導体2の全質量に対して96.8質量%になるようにINAを滴下した以外は、実施例9と同様にして液晶材料10を調製した。また調製した液晶材料10を用い、実施例1と同様にして液晶セル及び液晶フィルム10を作製し、評価を行った。得られた結果を図15に示す。
実施例9において、液晶材料9のEEEAをブチルアクリレート(BA)(東京化成工業(株)製、製品番号;A0142、ガラス転移温度(Tg);-40℃)に変更し、HPC誘導体2の含有量が、BA及びHPC誘導体2の全質量に対して97.0質量%になるようにBAを滴下した以外は、実施例9と同様にして液晶材料11を調製した。また調製した液晶材料11を用い、実施例1と同様にして液晶セル及び液晶フィルム11を作製し、評価を行った。得られた結果を図16に示す。
下記スキームに準じて、HPC誘導体3を合成した。
最初に添加する試薬をヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(和光純薬工業(株)製、製品名;ヒドロキシプロピルセルロース6.0~10.0、製品番号;086-07945、)6.0gにして、塩化アクリロイル0.88mL(11mmol)及び塩化アセチル(東京化成工業(株)製、製品番号;A0082)9.6mL(136mmol)に変更した以外は、HPC誘導体1と同様にして、HPC誘導体3(以下、「HPC-AcE/EtE」とも称する。)を得た。なお、HPC-AcE/EtEの収量は5.0gであった。
また、既述の方法により、HPC-AcE/EtEの重量平均分子量を測定した結果、重量平均分子量は、1.5×105であった。
HPC-AcE/EtEは、一般式(1A)において、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、アクリロイル基又はアセチル基であり、X11、X12及びX13は、それぞれ独立に、単結合又は(-CH2-CH(CH3)-O-)h(但し、hは、0以上10以下の整数である)であり、n11が70である分子構造を有するHPC誘導体3である。
HPC誘導体3は、アクリロイル基(不飽和二重結合を有する基)への置換度は0.89であり、アセチル基(疎水性基)への置換度は2.01(HPC-AcE/EtE(AcE:EtE=0.89:2.01))であった。
<液晶材料12-1、12-2、12-3及び12-4の作製>
マイクロチューブに上記で合成したHPC誘導体3(HPC-AcE/EtE)を0.1g程度量り取り、HPC誘導体3の含有量が、2-メトキシエチルアクリレート(2MEA)及びHPC誘導体3の全質量に対して、82.1質量%、79.6質量%、78.2質量%又は76.3質量%になるように2MEAをそれぞれ滴下し、ミックスローター(DLAB Scientific Instrument Inc社製品)を用いて1週間撹拌し、液晶材料12-1、12-2、12-3及び12-4をそれぞれ調製した。
なお、回帰直線の傾きが大きいほど、反射波長のシフト変化が大きいことを示す。
[HPC誘導体1-2の合成]
実施例1において、不飽和二重結合を有する基への置換度(すなわち、アクリロイルエチルカルバメート化度)が0.08、疎水性基への置換度(すなわち、プロピオニルエステル化度)が2.75になるように調製した以外は実施例1と同様にしてHPC誘導体1-2(HPC-AcC/PrE(AcC:PrE=0.08:2.75))を合成した。
マイクロチューブに上記で合成したHPC誘導体1-2を0.1g程度量り取り、HPC誘導体1-2の含有量が、エトキシエトキシエチルアクリレート(EEEA)及びHPC誘導体1-2の全質量に対して、85.9質量%、82.9質量%、80.0質量%又は78.0質量%になるようにEEEAをそれぞれ滴下し、ミックスローター(DLAB Scientific Instrument Inc社製品)を用いて1週間撹拌し、液晶材料13-1、13-2、13-3及び13-4をそれぞれ調製した。
実施例1の液晶セルの作製において、液晶材料1を液晶材料13-1、13-2、13-3又は13-4に代えた以外は、実施例1と同様にして、液晶セルを作製した。この液晶セルを用いて、実施例1と同様にして液晶フィルム13-1、13-2、13-3及び13-4を作製し、評価を行った。HPC誘導体1-2の含有量がEEEAの全質量に対して80.0質量%である、液晶材料13-3より作製した液晶フィルム13-3の評価結果を図19に示す。
上記で作製した液晶フィルム13-4(エラストマー膜)の端部(長さ方向の一端)を、自作の引張試験機の把持具に取り付けて把持し、引張速度0.4mm/秒、室温(25℃)の条件で、液晶フィルムに対して180°の方向に引っ張り、液晶フィルムが破断するまでの長さを測定し、下記式より破断伸度(%)を求めた。
破断伸度(%)=100×(破断するまでの液晶フィルムの長さ(mm)-伸張させる前の液晶フィルムの長さ(mm))/伸張させる前の液晶フィルムの長さ(mm)
<液晶材料14-1、14-2及び14-3の作製>
実施例13において、液晶材料13に含まれるEEEAをブチルアクリレート(BA)に変更し、HPC誘導体1-2の含有量が、BA及びHPC誘導体1-2の全質量に対して86.1質量%、82.0質量%又は78.0質量%になるようにBAをそれぞれ滴下した以外は、実施例13と同様にして液晶材料14-1、14-2及び14-3を調製した。この液晶材料を用いて液晶セルを作製し、実施例1と同様にして液晶フィルム14-1、14-2及び14-3を作製し、評価を行った。HPC誘導体1-2の含有量がBA及びHPC誘導体1-2の全質量に対して86.1質量%である、液晶材料14-1より作製した液晶フィルム14-1の評価結果を図21に示す。
<液晶材料15-1、15-2及び15-3の作製>
実施例13において、液晶材料13に含まれるEEEAを4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)に変更し、HPC誘導体1-2の含有量が4HBA及びHPC誘導体1-2の全質量に対して86.0質量%、81.9質量%又は78.0質量%になるように4HBAをそれぞれ滴下した以外は、実施例13と同様にして液晶材料15-1、15-2及び15-3を調製した。この液晶材料を用いて液晶セルを作製し、実施例1と同様にして液晶フィルム15-1、15-2及び15-3を作製し、評価を行った。HPC誘導体1-2の含有量がBA及びHPC誘導体1-2の全質量に対して81.9質量%である液晶材料15-2より作製した液晶フィルム15-2の評価結果を図23に示す。また、液晶材料15-3より作製した液晶フィルム15-3の膜の延伸性の評価結果を表3に示す。
上記で合成したHPC誘導体1-2を、不飽和二重結合を有する基を分子内に有するモノマーと混合せずに、サーモトロピックコレステリック液晶材料とした。このサーモトロピックコレステリック液晶材料を用いて、実施例1と同様にして液晶セルを作製した。
液晶セル全体を熱処理した後、水銀キセノンランプを光源とし、光学フィルター(UV-35 /UV-D36A)を介して、10mW程度の365nmの紫外線を、室温(25℃)、15分間、液晶セルに照射した。次いで、液晶セルの隙間にピンセットを差し込み、ゆっくりと引き上げて膜を剥離し、熱処理によりブラッグ反射の波長で配向が固定化された液晶フィルムを得た。
この液晶フィルムを用いて、実施例13と同様にして膜の延伸性についての評価を行った。結果を表3に示す。
[HPC誘導体1-3の合成]
実施例1に示す合成スキームに準じて、HPC誘導体1-3を合成した。
最初に添加するカレンズAOI(2-イソシアナトエチルアクリレート、昭和電工(株)製)の試薬量を1.43mL(9.0mmol)及び、塩化プロピオニル(東京化成工業(株)製、製品番号;P0516)の試薬量を11.9mL(120.7mmol)にそれぞれ変更した以外は、HPC誘導体1と同様にして、HPC誘導体1-3を得た。なお、HPC誘導体1-3の収量は4.8gであった。
上記で合成したHPC誘導体1-3の1H-NMRスペクトルを測定した。
実施例1の1H-NMRスペクトルの測定と同様にしてHPC誘導体1-3の解析を行った。HPC誘導体1-3は、アクリロイルエチルカルバメート基(不飽和二重結合を有する基)への置換度は0.08であり、プロピオニル基(疎水性基)への置換度は2.90(HPC-AcC/PrE(AcC:PrE=0.08:2.90))であった。
実施例1の液晶材料1の作製において、マイクロチューブに量り取るHPC誘導体1をHPC誘導体1-3に変更し、4HBAをアクリル酸(AA)(東京化成工業(株)製、製品番号;A0141)に変更し、AA及びHPC誘導体1-3の全質量に対するHPC誘導体1-3の含有量が84質量%になるように、量り取ったHPC誘導体1-3にAAを滴下した以外は、実施例1と同様にして液晶材料16-1を調製した。
剥離操作に備えて、市販のスライドガラス基板に離型フィルム(パナック(株)製、型番;SPPET50O1BU)を貼り付けた。これにより、離型フィルムガラス基板を得た。なお、離型フィルムガラス基板は計2枚作製した。
さらに、半日静置することで液晶分子が均質に配向し、かつ、厚さ500μmの液晶材料16-1を備えた液晶セルを得た。
10mW程度の365nmの紫外線を、30分間、室温(25℃)で液晶セルに照射し、液晶セルの隙間にピンセットを差し込み、ゆっくりと引き上げて膜を剥離し、液晶フィルム16-1を得た。
実施例1の評価-圧縮時における波長のシフト変化-において、圧縮した液晶フィルム1を液晶フィルム16-1に変更し、厚み方向へ10μmずつ圧縮したこと、及び、10μm毎に透過スペクトルを測定した以外は、実施例1と同様にして液晶フィルム16-1の圧縮時における波長のシフト変化を測定した。その結果を図25に示す。
圧縮後、液晶フィルム16-1をもとの膜厚まで戻し、透過スペクトルの測定を適宜行った。その結果を図26に示す。
実施例16の液晶材料16-1の作製において、AA及びHPC誘導体1-3の全質量に対するHPC誘導体1-3の含有量が86質量%又は88質量%になるように、量り取ったHPC誘導体1-3にAAを滴下した以外は、実施例16と同様にして液晶材料16-2及び16-3を調製した。
液晶材料16-1を液晶材料16-2又は16-3に変更した以外は前述と同様にして液晶セル、及び液晶フィルム16-2、16-3を作製し、評価を行った。得られた結果を図27~図30に示す。
実施例16の液晶材料16-1の作製において、AAを4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)(東京化成工業(株)製、製品番号;A1390、ガラス転移温度(Tg);-32℃)に変更し、HPC誘導体1-3の全質量に対するHPC誘導体1-3の含有量が84.0質量%になるように、量り取ったHPC誘導体1-3に4HBAを滴下した以外は、実施例16と同様にして液晶材料17を調製した。また、調製した液晶材料17を用い、実施例16と同様にして液晶セル及び液晶フィルム17を作製し、評価を行った。
図31に示す通り、HPC-AcC/PrE_AAにより作製した液晶フィルムは、HPC-AcC/PrE_4HBAにより作製した液晶フィルムに比べて、圧縮、解放後における反射波長の復元が遅いということが分かった。
[HPC誘導体1-4の合成]
実施例1において、不飽和二重結合を有する基への置換度(すなわち、アクリロイルエチルカルバメート化度)が0.12、疎水性基への置換度(すなわち、プロピオニルエステル化度)が2.80になるように調製した以外は実施例1と同様にしてHPC誘導体1-4(HPC-AcC/PrE(AcC:PrE=0.12:2.80))を合成した。
実施例1の液晶材料1の作製において、マイクロチューブに量り取るHPC誘導体1をHPC誘導体1-4に変更し、4HBAをアクリル酸(AA)(東京化成工業(株)製、製品番号;A0141)に変更し、かつ、光重合開始剤である2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(HMPP)をさらに用い、HPC誘導体1-4、AA及びHMPPを質量比で86:13:1となるように混合した以外は、実施例1と同様にして液晶材料18を調製した。
実施例16の液晶フィルム16-1の作製において、液晶材料16-1を液晶材料18に変更し、紫外線を2分間照射した以外は、実施例16と同様にして液晶フィルム18を得た。なお、液晶フィルム18の膜厚は570μmであった。
実施例18の液晶材料18の作製において、AAを4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)(東京化成工業(株)製、製品番号;A1390、ガラス転移温度(Tg);-32℃)に変更し、かつ、HPC誘導体1-4、4HBA及びHMPPを質量比で83:16:1となるように混合した以外は、実施例18と同様にして液晶材料19を調製した。そして、実施例18と同様にして液晶フィルム19を作製した。なお、液晶フィルム19の膜厚は410μmであった。
<液晶材料20の作製>
実施例18の液晶材料18の作製において、AAを1,4-ビス(アクリロイルオキシ)ブタン(BAOB)(東京化成工業(株)製、製品番号;B5356)に変更し、かつ、HPC誘導体1-4、BAOB及びHMPPを質量比で83:16:1となるように混合した以外は、実施例18と同様にして液晶材料20を調製した。
実施例16の液晶フィルム16-1の作製において、液晶材料16-1を液晶材料20に変更し、紫外線を2分間照射した以外は、実施例16と同様にして液晶フィルム20を得た。なお、液晶フィルム20の膜厚は540μmであった。
これらの結果よりBAOBを用いて作製した液晶フィルムは8.0MPa程度の圧力で反射波長が2割ほど短波長シフトすることが分かった。
<液晶材料21の作製>
実施例18の液晶材料18の作製において、AAを4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)(東京化成工業(株)製、製品番号;A1390、ガラス転移温度(Tg);-32℃)に変更し、かつ、HPC誘導体1-4、4HBA及びHMPPを質量比で83:16:1となるように混合した以外は、実施例18と同様にして液晶材料21を調製した。
液晶材料21を2枚のガラス基板の間に挟み込み静置した後、365nmの紫外線を約2分間照射することで液晶フィルム21を作製した。作製した液晶フィルムをガラス基板から剥離した。液晶フィルムの膜厚は410μmであった。
これらの結果より4HBAを用いて作製した液晶フィルム21は6.0MPa程度の圧力で反射波長が2割ほど短波長シフトすることが分かった。
[HPC誘導体4の合成]
下記スキームに従って、HPC誘導体4を合成した。
まず、ヘキサメチレンジイソシアネートに4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)を加えて、室温下、遮光中にてヘキサメチレンジイソシアネートの片末端のイソシアネート基が4HBAの水酸基とカルバメート化したDi4Hを合成した。その後、このDi4Hをヒドロキシプロピルセルロース(HPC)に加え、45℃にて20時間反応させた後、引き続き塩化プロピオニルを加え、室温下にて24時間反応させてHPC誘導体4(以下、「HPC-Di4HC/PrE」とも称する。)を得た。
HPC誘導体4は、不飽和二重結合を有する基への置換度は0.02であり、疎水性基への置換度は2.7(HPC-Di4HC/PrE(Di4HC:PrE=0.02:2.7)であった。
実施例18の液晶材料18の作製において、HPC誘導体1-4をHPC誘導体4に変更し、かつ、AAを4HBAに変更し、かつ、HPC誘導体1-4、4HBA及びHMPPを質量比で87:12:1となるように混合した以外は、実施例18と同様にして液晶材料22を調製した。
実施例16の液晶フィルム16-1の作製において、液晶材料16-1を液晶材料22に、PTFEスペーサーの厚みを400μmに変更し、紫外線を60分間照射した以外は、実施例16と同様にして液晶フィルム22を作製した。
[HPC誘導体1-5の合成]
実施例1において、不飽和二重結合を有する基への置換度(すなわち、アクリロイルエチルカルバメート化度)が0.06、疎水性基への置換度(すなわち、プロピオニルエステル化度)が2.90になるように調製した以外は実施例1と同様にしてHPC誘導体1-5(HPC-AcC/PrE(AcC:PrE=0.06:2.90))を合成した。
実施例18の液晶材料18の作製において、マイクロチューブに量り取るHPC誘導体1-4をHPC誘導体1-5に変更し、HPC誘導体1-5、4HBA及びHMPPを質量比で87:12:1となるように混合した以外は、実施例18と同様にして液晶材料23を調製した。
実施例16の液晶フィルム16-1の作製において、液晶材料16-1を液晶材料23に、PTFEスペーサーの厚みを400μmに変更し、紫外線を60分間照射した以外は、実施例16と同様にして液晶フィルム23を作製した。液晶フィルム23の膜厚は460μmであった。
上記で合成したHPC誘導体1-5を、4HBAと混合せずに、HMPPと質量比で99:1となるようなサーモトロピック液晶材料とした。実施例16の液晶フィルム16-1の作製において、液晶材料16-1を上記のサーモトロピック液晶材料に、PTFEスペーサーの厚みを400μmに変更し、紫外線を60分間照射した以外は、実施例16と同様にして比較例2の液晶フィルムを作製した。
また、図48の結果から、液晶フィルム22は、1.0MPa未満の低い圧力で反射波長が短波長シフトしていることが分かった。
<液晶材料24の作製>
実施例18の液晶材料18の作製において、AAをブチルアクリレート(BA)(東京化成工業(株)製、A0142、ガラス転移温度(Tg);-40℃)に変更し、かつ、HPC誘導体1-4、BA及びHMPPを質量比で83:16:1となるように混合した以外は、実施例18と同様にして液晶材料24を調製した。
実施例16の液晶フィルム16-1の作製において、液晶材料16-1を液晶材料24に変更し、紫外線を2分間照射した以外は、実施例16と同様にして液晶フィルム24を得た。作製した液晶フィルム24をガラス基板から剥離した。液晶フィルムの膜厚は580μmであった。
これらの結果よりBAを用いて作製した液晶フィルムは2.4MPa程度の圧力で反射波長が2割ほど短波長シフトすることが分かった。
これらの結果より作製した液晶フィルムは、HPC誘導体に添加するアクリレート溶媒を選択することで、検知できる圧力の範囲を調整することが可能であると分かった。
<液晶材料25の作製>
実施例18の液晶材料18の作製において、HPC誘導体1-4をHPC誘導体1-3に変更し、かつ、AAを4HBAに変更し、かつ、HPC誘導体1-3、4HBA及びHMPPを質量比で79.8:19:1.2となるように混合した以外は、実施例18と同様にして液晶材料25を調製した。
実施例16の液晶フィルム16-1の作製において、液晶材料16-1を液晶材料25に変更し、紫外線を2分間照射した以外は、実施例16と同様にして液晶フィルム25を得た。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
Claims (25)
- 下記一般式(1A)で表される分子構造を有し、かつ、下記関係式(I)を満たすセルロース誘導体と、
不飽和二重結合を有する基を分子内に有するモノマーと、
を含有し、
前記一般式(1A)で表される分子構造が、下記一般式(1A-1)で表される分子構造であるリオトロピック液晶材料。
0.01≦R11、R12及びR13で表される不飽和二重結合を有する基の個数/(3*n11)≦0.15 (I)
[一般式(1A)中、X11、X12及びX13は、全てが単結合ではなく、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基、-(R14-O)h-、又は、-C(=O)-R15-を表し、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、不飽和二重結合を有する基、又は、疎水性基を表し、R14及びR15は、それぞれ独立に、アルキレン基を表し、hは、1以上10以下の整数を表し、n11は、2以上800以下の整数を表す。前記疎水性基は、炭素数3~18のシクロアルキル基、炭素数6~24のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数2~18のアシル基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~18のアルコキシ基、-COOR1Aで表されるカルボン酸エステル基、又はハロゲン原子であり、前記R1Aが、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、又は、炭素数6~12のアリール基である。]
[一般式(1A-1)中、R 1 は、-CH 2 -CH 2 -、又は、-CH 2 -CH(CH 3 )-を表し、R 11 、R 12 及びR 13 は、それぞれ独立に、水素原子、不飽和二重結合を有する基、又は、疎水性基を表し、m1、t1及びr1は、全てが0ではなく、それぞれ独立に、0以上10以下の整数を表し、n13は、2以上800以下の整数を表す。前記疎水性基は、炭素数3~18のシクロアルキル基、炭素数6~24のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数2~18のアシル基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~18のアルコキシ基、-COOR 1A で表されるカルボン酸エステル基、又はハロゲン原子であり、前記R 1A が、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、又は、炭素数6~12のアリール基である。] - 前記一般式(1A)及び一般式(1A-1)中の不飽和二重結合を有する基が、下記一般式(1C)及び一般式(2C)の少なくとも一方で表される基であり、
前記疎水性基が、炭素数3~18のシクロアルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数2~18のアシル基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~18のアルコキシ基、-COOR1Aで表されるカルボン酸エステル基、又はハロゲン原子であり、前記R1Aが、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、又は、炭素数6~12のアリール基である、請求項1に記載のリオトロピック液晶材料。
[一般式(1C)中、R1Cは、水素原子又はメチル基を表し、X18は、単結合、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~18のアルキレン基、炭素数3~18のシクロアルキレン基、炭素数6~18のアリーレン基、又は、-O-、-NH-、-S-、及び-C(=O)-からなる群より選ばれる1つ若しくは2つ以上を連結した連結基を表し、p1は、1又は2の整数を表す。但し、X18の価数は、p1+1である。**は、上記一般式(1A)中、X11、X12、若しくはX13と結合する部分、又は、セルロース骨格の2位、3位、若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。]
[一般式(2C)中、R1Dは、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~18のアルキレン基を表し、p1及び**は、前記一般式(1C)におけるp1及び**と同義である。] - 前記一般式(1C)において、X18が、単結合、又は、-C(=O)-NH-(CH2)2-O-であり、p1が1である、請求項2に記載のリオトロピック液晶材料。
- 前記疎水性基が、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数2~4のアシル基である、請求項2又は請求項3に記載のリオトロピック液晶材料。
- 前記アシル基が、直鎖又は分岐鎖のプロピオニル基である、請求項4に記載のリオトロピック液晶材料。
- 前記モノマーが有する不飽和二重結合を有する基は、(メタ)アクリロイル基である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のリオトロピック液晶材料。
- 前記モノマーは、(メタ)アクリロイル基以外の官能基を更に有する、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のリオトロピック液晶材料。
- 前記(メタ)アクリロイル基以外の官能基は、水酸基、カルボキシ基及びアルコキシ基からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項7に記載のリオトロピック液晶材料。
- 前記モノマーは、不飽和二重結合を有する基を2つ以上分子内に有するか、又は、カルボキシ基を分子内に有する、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載のリオトロピック液晶材料。
- 前記一般式(1A)における前記不飽和二重結合を有する基は、ウレタン結合を有する2価の連結基と、(メタ)アクリロイル基とを含む請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のリオトロピック液晶材料。
- 請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のリオトロピック液晶材料の架橋物であって、
下記一般式(1A)で表される構成単位と、
不飽和二重結合を有する基を分子内に有するモノマーに由来する構成単位と、
を含有する三次元構造を有し、
前記一般式(1A)が、下記一般式(1A-1)で表されるリオトロピック液晶フィルム。
[一般式(1A)中、X11、X12及びX13は、全てが単結合ではなく、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基、-(R14-O)h-、又は、-C(=O)-R15-を表し、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、不飽和二重結合を有する基、又は、疎水性基を表し、R14及びR15は、それぞれ独立に、アルキレン基を表し、hは、1以上10以下の整数を表し、n11は、2以上800以下の整数を表す。前記疎水性基は、炭素数3~18のシクロアルキル基、炭素数6~24のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数2~18のアシル基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~18のアルコキシ基、-COOR1Aで表されるカルボン酸エステル基、又はハロゲン原子であり、前記R1Aが、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、又は、炭素数6~12のアリール基である。]
[一般式(1A-1)中、R 1 は、-CH 2 -CH 2 -、又は、-CH 2 -CH(CH 3 )-を表し、R 11 、R 12 及びR 13 は、それぞれ独立に、水素原子、不飽和二重結合を有する基、又は、疎水性基を表し、m1、t1及びr1は、全てが0ではなく、それぞれ独立に、0以上10以下の整数を表し、n13は、2以上800以下の整数を表す。前記疎水性基は、炭素数3~18のシクロアルキル基、炭素数6~24のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数2~18のアシル基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~18のアルコキシ基、-COOR 1A で表されるカルボン酸エステル基、又はハロゲン原子であり、前記R 1A が、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、又は、炭素数6~12のアリール基である。] - 前記一般式(1A)及び一般式(1A-1)中の不飽和二重結合を有する基が、下記一般式(1C)及び一般式(2C)の少なくとも一方で表される基であり、
前記疎水性基が、炭素数3~18のシクロアルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数2~18のアシル基、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~18のアルコキシ基、-COOR1Aで表されるカルボン酸エステル基、又はハロゲン原子であり、前記R1Aが、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、又は、炭素数6~12のアリール基である、請求項11に記載のリオトロピック液晶フィルム。
[一般式(1C)中、R1Cは、水素原子又はメチル基を表し、X18は、単結合、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~18のアルキレン基、炭素数3~18のシクロアルキレン基、炭素数6~18のアリーレン基、又は、-O-、-NH-、-S-、及び-C(=O)-からなる群より選ばれる1つ若しくは2つ以上を連結した連結基を表し、p1は、1又は2の整数を表す。但し、X18の価数は、p1+1である。**は、上記一般式(1A)中、X11、X12、若しくはX13と結合する部分、又は、セルロース骨格の2位、3位、若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。]
[一般式(2C)中、R1Dは、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~18のアルキレン基を表し、p1及び**は、前記一般式(1C)におけるp1及び**と同義である。] - 前記一般式(1C)において、X18が、単結合、又は、-C(=O)-NH-(CH2)2-O-であり、p1が1である、請求項12に記載のリオトロピック液晶フィルム。
- 前記疎水性基が、直鎖又は分岐鎖の炭素数2~4のアシル基である、請求項12又は請求項13に記載のリオトロピック液晶フィルム。
- 前記アシル基が、直鎖又は分岐鎖のプロピオニル基である、請求項14に記載のリオトロピック液晶フィルム。
- 前記モノマーが有する不飽和二重結合を有する基は、(メタ)アクリロイル基である、請求項11~請求項15のいずれか1項に記載のリオトロピック液晶フィルム。
- 前記モノマーは、(メタ)アクリロイル基以外の官能基を更に有する請求項11~請求項16のいずれか1項に記載のリオトロピック液晶フィルム。
- 前記(メタ)アクリロイル基以外の官能基は、水酸基、カルボキシ基及びアルコキシ基から選択される少なくとも1種である、請求項17に記載のリオトロピック液晶フィルム。
- 前記モノマーは、不飽和二重結合を有する基を2つ以上分子内に有するか、又は、カルボキシ基を分子内に有する、請求項11~請求項18のいずれか1項に記載のリオトロピック液晶フィルム。
- 前記一般式(1A)における前記不飽和二重結合を有する基は、ウレタン結合を有する2価の連結基と、(メタ)アクリロイル基とを含む請求項11~請求項19のいずれか1項に記載のリオトロピック液晶フィルム。
- 請求項1~請求項10のいずれか1項に記載のリオトロピック液晶材料を基板上に付与する工程と、
基板上に付与された前記リオトロピック液晶材料に、熱処理する工程又は紫外線を照射する工程と、
を有するリオトロピック液晶フィルムの製造方法。 - 請求項11~請求項20のいずれか1項に記載のリオトロピック液晶フィルムを備えるセンサー。
- 物体の歪みを検出する歪みセンサーである請求項22に記載のセンサー。
- 生体情報を検出するウェアラブルセンサーである請求項22に記載のセンサー。
- 請求項11~請求項20のいずれか1項に記載のリオトロピック液晶フィルムを備える光学素子。
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