JP2024025563A - セルロース誘導体、液晶材料、液晶フィルム及び液晶フィルムの製造方法 - Google Patents

セルロース誘導体、液晶材料、液晶フィルム及び液晶フィルムの製造方法 Download PDF

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裕己 荻原
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直人 岩田
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Abstract

【課題】新規の偏光特性を有する液晶フィルムを形成可能なセルロース誘導体を提供する。【解決手段】水酸基を含み、前記水酸基の一部が不飽和二重結合を有する基及びアルキル基で置換されたセルロース誘導体。【選択図】なし

Description

本開示は、セルロース誘導体、液晶材料、液晶フィルム及び液晶フィルムの製造方法に関する。
液晶材料は、液晶ディスプレイの表示材料のみならず、近年ではその光学特性を利用して、フォトニックデバイスへの適応が進められている。液晶材料として、例えば、セルロース誘導体が知られている。
液晶性を備えたセルロース誘導体として、ヒドロキシプロピルセルロースが有する水酸基の水素原子に、カルバメート基(ウレタン結合)を有する置換基が導入されたセルロース誘導体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
膜を形成した場合の圧縮時における波長のシフト変化が大きく、かつ、膜を形成した場合の延伸性に優れるリオトロピック液晶材料として、架橋性セルロース誘導体と、不飽和二重結合を有する基を分子内に有するモノマーと、を含有するリオトロピック液晶材料が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2015-48365号公報 国際公開第2019/151360
ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、エチルセルロース(EC)等は、紙、綿、パルプの主成分であるセルロース誘導体であり、また、人体及び環境に対して無害であるため、医薬品、サプリメント等にも使用されている汎用性の高い高分子である。また、セルロースは、天然に最も豊富に存在する原料であるため安価な材料である。
従って、セルロース誘導体を原料として用いた液晶材料等の開発は、安全性の観点及び環境負荷を低減する観点からも有用であり、セルロース誘導体が持つ液晶性、光学特性等を、液晶材料、液晶フィルム、フォトニックデバイス等への利用がさらに期待されている。
特許文献2に開示されている液晶材料より形成されたエラストマー膜は、棒状の液晶分子が向きを変えながら積層した分子らせん構造を形成しており、優れたコレステリック液晶配向状態を示す。当該エラストマー膜は、らせんの掌性と同じ向きの円偏光をブラッグ反射する。具体的には、ヒドロキシプロピルセルロース誘導体から構成され、コレステリック液晶配向状態を示すエラストマー膜は、右円偏光をブラッグ反射する。
前述のように、セルロース誘導体が持つ液晶性、光学特性等を、液晶材料、液晶フィルム、フォトニックデバイス等への利用がさらに期待されており、新規の偏光特性等を有する液晶フィルムを形成可能なセルロース誘導体を開発することが望ましい。
本開示は、新規の偏光特性を有する液晶フィルムを形成可能なセルロース誘導体及び液晶材料、この液晶材料を硬化してなる液晶フィルム、並びにこの液晶材料を用いた液晶フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1> 水酸基を含み、前記水酸基の一部が不飽和二重結合を有する基及びアルキル基で置換されたセルロース誘導体。
<2> 前記不飽和二重結合を有する基は、(メタ)アクリロイル基を有する基である<1>に記載のセルロース誘導体。
<3> 前記アルキル基はエチル基であり、エチルセルロース骨格を含む<1>又は<2>に記載のセルロース誘導体。
<4> 水酸基の少なくとも一部がアシル基で置換されたセルロース誘導体と、
不飽和二重結合を有する基を含む重合性モノマーと、
を含む、左円偏光及び右円偏光の両偏光反射特性を有する液晶フィルムを形成するための液晶材料。
<5> 前記セルロース誘導体は、ヒドロキシアルキルセルロース骨格を含む<4>に記載の液晶材料。
<6> <1>~<3>のいずれか1つに記載のセルロース誘導体と、
不飽和二重結合を有する基を含む重合性モノマーと、
を含む液晶材料。
<7> 左円偏光及び右円偏光の両偏光反射特性を有する液晶フィルムを形成するための<6>に記載の液晶材料。
<8> <4>~<7>のいずれか1つの液晶材料を硬化してなり、左円偏光及び右円偏光の両偏光反射特性を有する液晶フィルム。
<9> <4>~<7>のいずれか1つに記載の液晶材料を硬化してなり、リタデーションが200nm以上である領域を含む液晶フィルム。
<10> <4>~<7>のいずれか1つに記載の液晶材料を硬化してなり、厚さが200μm以上である液晶フィルム。
<11> <4>~<7>のいずれか1つに記載の液晶材料にせん断力を加えるせん断工程と、
せん断工程後の前記液晶材料を放置して配向させる配向工程と、
配向工程後の前記液晶材料を硬化させる硬化工程と、
を含む液晶フィルムの製造方法。
本開示によれば、新規の偏光特性を有する液晶フィルムを形成可能なセルロース誘導体及び液晶材料、この液晶材料を硬化してなる液晶フィルム、並びにこの液晶材料を用いた液晶フィルムの製造方法が提供される。
図1(a)は、液晶材料1を用い、せん断速度0.2s-1の条件にて液晶フィルム1を作製した場合の左円偏光の透過スペクトルの変化を示す図であり、図1(b)は、この場合の右円偏光の透過スペクトルの変化を示す図である。 図2(a)は、液晶材料1を用い、せん断速度0.5s-1の条件にて液晶フィルム1を作製した場合の左円偏光の透過スペクトルの変化を示す図であり、図2(b)は、この場合の右円偏光の透過スペクトルの変化を示す図である。 図3(a)は、液晶材料2を用い、せん断速度0.2s-1の条件にて液晶フィルム2を作製した場合の左円偏光の透過スペクトルの変化を示す図であり、図3(b)は、この場合の右円偏光の透過スペクトルの変化を示す図である。 図4(a)は、液晶材料3を用い、せん断速度0.5s-1の条件にて液晶フィルム3を作製した場合の左円偏光の透過スペクトルの変化を示す図であり、図4(b)は、この場合の右円偏光の透過スペクトルの変化を示す図である。 図5(a)は、液晶材料2を用い、せん断配向処理後の待機時間が200秒間の条件にて液晶フィルム4を作製した場合の左円偏光の透過スペクトルの変化を示す図であり、図5(b)は、この場合の右円偏光の透過スペクトルの変化を示す図である。 図6(a)は、液晶材料4を用いて液晶フィルム5を作製した場合の左円偏光の透過スペクトルの変化を示す図であり、図6(b)は、この場合の右円偏光の透過スペクトルの変化を示す図である。 図7(a)は、液晶材料5を用いて液晶フィルム6を作製した場合の左円偏光の透過スペクトルの変化を示す図であり、図7(b)は、この場合の右円偏光の透過スペクトルの変化を示す図である。 図8(a)は、液晶材料6を用いて液晶フィルム7を作製した場合の左円偏光の透過スペクトルの変化を示す図であり、図8(b)は、この場合の右円偏光の透過スペクトルの変化を示す図である。 図9(a)は、液晶材料7を用いて液晶フィルム8(液晶フィルム8の厚さ:560μm)を作製した場合の左円偏光の透過スペクトルの変化を示す図であり、図9(b)は、この場合の右円偏光の透過スペクトルの変化を示す図である。 図10(a)は、液晶材料7を用いて液晶フィルム9(液晶フィルム9の厚さ:178μm)を作製した場合の左円偏光の透過スペクトルの変化を示す図であり、図10(b)は、この場合の右円偏光の透過スペクトルの変化を示す図である。 図11は、液晶フィルム8及び液晶フィルム9について、平面視における中心からの距離と複屈折との関係を示す図である。 図12は、液晶フィルム8及び液晶フィルム9について、平面視における中心からの距離とリタデーションとの関係を示す図である。 図13(a)~図13(f)は、それぞれ液晶フィルム12-6~12-1のr=3mm又はr=9mmでの右円偏光及び左円偏光のスペクトルの変化を示す図である。 図14は、液晶フィルム12-1~12-6について、平面視における中心からの距離とリタデーションとの関係を示す図である。 図15は、液晶フィルム12-1~12-6について、平面視における中心からの距離と複屈折との関係を示す図である。 図16は、液晶フィルム12-1~12-6について、リタデーションと左右円偏光のピーク強度の比との関係を示す図である。 図17(a)及び図17(b)は、それぞれ液晶フィルム13-1及び13-2のr=3mm又はr=9mmでの右円偏光及び左円偏光のスペクトルの変化を示す図である。 図18は、液晶フィルム13-1及び13-2について、平面視における中心からの距離とリタデーションとの関係を示す図である。 図19は、液晶フィルム13-1及び13-2について、平面視における中心からの距離と複屈折との関係を示す図である。 図20は、液晶フィルム13-1及び13-2について、リタデーションと左右円偏光のピーク強度の比との関係を示す図である。 図21(a)及び図21(b)は、それぞれ液晶フィルム14-1及び14-2のr=3mm又はr=9mmでの右円偏光及び左円偏光のスペクトルの変化を示す図である。 図22は、液晶フィルム14-1及び14-2について、平面視における中心からの距離とリタデーションとの関係を示す図である。 図23は、液晶フィルム14-1及び14-2について、平面視における中心からの距離と複屈折との関係を示す図である。 図24は、液晶フィルム14-1及び14-2について、リタデーションと左右円偏光のピーク強度の比との関係を示す図である。 図25(a)及び図25(b)は、それぞれ液晶フィルム15のr=0mm、3mm、6mm又は9mmでの左円偏光及び右円偏光のスペクトルの変化を示す図である。 図26は、液晶フィルム15のr=0mm~5mmでの左円偏光のスペクトルの変化を示す図である。 図27は、液晶フィルム15について、平面視における中心からの距離とリタデーションとの関係を示す図である。 図28(a)及び図28(b)は、液晶フィルム16~18のr=4mm又はr=9mmでの左円偏光のスペクトルの変化を示す図であり、図28(c)及び図28(d)は、液晶フィルム16~18のr=4mm又はr=9mmでの右円偏光のスペクトルの変化を示す図である。 図29は、液晶フィルム16~18について、平面視における中心からの距離とリタデーションとの関係を示す図である。 参考例1における円偏光透過スペクトルの測定結果を示す図である。 図31(a)は、液晶材料Aを用い、せん断配向処理が施された液晶フィルムAを作製した場合の左円偏光の透過スペクトルの変化を示す図であり、図31(b)は、この場合の右円偏光の透過スペクトルの変化を示す図である。 図32は、液晶材料Aを用い、せん断配向処理が施されていない液晶フィルムBを作製した場合の左円偏光及び右円偏光の透過スペクトルの変化を示す図である。
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」及び「メタクリレート」の少なくとも一方を意味し、「(メタ)アクリロイル」は「アクリロイル」及び「メタクリロイル」の少なくとも一方を意味する。
本開示において、置換基としては、例えば、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数6~12のアリール基、ハロゲン原子が挙げられる。置換基が2以上ある場合には、それぞれの置換基は同一であって異なっていてもよい。
[セルロース誘導体]
本開示のセルロース誘導体は、水酸基を含み、前記水酸基の一部が不飽和二重結合を有する基及びアルキル基で置換されている。本開示のセルロース誘導体を含む液晶材料を用いて液晶フィルムを作製することによって新規の偏光特性を有する液晶フィルムを形成可能である。例えば、上記液晶材料にせん断力を加え、当該液晶材料に含まれるセルロース誘導体を配向させ、次いで液晶材料を硬化させることで左円偏光及び右円偏光の両偏光反射特性を有する液晶フィルムを形成可能である。
本開示のセルロース誘導体は、架橋性のエチルセルロース誘導体等のアルキル基を有する架橋性のセルロース誘導体である。当該セルロース誘導体を含む液晶材料から構成される液晶フィルムは、分子らせん構造を形成したコレステリック液晶配向状態を示しており、白色光を配向面に対して垂直に照射することで左円偏光を選択的に反射する。
一方、上記セルロース誘導体を含む液晶材料にせん断力を加え、当該液晶材料に含まれるセルロース誘導体を配向させ、次いで液晶材料を硬化させることで、分子らせん構造が傾斜した液晶フィルムを得ることができる。分子らせん構造が傾斜している状態で白色光を配向面に対して垂直に照射することで左円偏光及び右円偏光の両方が反射される。これは、白色光を配向面に対して斜入射させたときに左円偏光及び右円偏光の両方が反射されるメカニズムと同様である、と推測される。
さらに、セルロース誘導体を含む液晶材料にせん断力を加えることで、せん断方向に分子が配向して複屈折が増加する傾向にある。複屈折が増加した液晶フィルムでは、入射した右円偏光の一部が左円偏光に変化したり、反射された左円偏光の一部が右円偏光に変化したりしやすくなる。その結果、反射光として反射された左円偏光及び変化した右円偏光の両円偏光が確認できる、と推測される。
以下、本開示のセルロース誘導体(以下、「第1のセルロース誘導体」とも称する)の好ましい形態について説明する。
第1のセルロース誘導体は、水酸基、水酸基の一部が置換された不飽和二重結合を有する基及びアルキル基を含むセルロース誘導体である。セルロース誘導体に含まれる水酸基は、セルロース骨格の構成単位における2位、3位、若しくは6位に結合した水酸基であることが好ましい。
第1のセルロース誘導体に含まれる不飽和二重結合を有する基としては、特に制限されず、例えば、(メタ)アクリロイル基を有する基、ビニル基、アリル基、ビニルオキシ基、イソプロペニル基、1-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、2-ペンテニル基、ゲラニル基、オレイル基、シクロアルケニル基(例えば、2-シクロペンテン-1-イル基、2-シクロヘキセン-1-イル基)、ビニルベンジル基、シンナミル基等が挙げられる。不飽和二重結合を有する基としては、架橋によって適度な弾性を有する液晶フィルムを得る観点から、(メタ)アクリロイル基を有する基であることが好ましい。
(メタ)アクリロイル基を有する基は、下記一般式(1C)及び一般式(2C)の少なくとも一方で表される基であることが好ましい。
一般式(1C)中、R1Cは、水素原子又はメチル基を表し、X18は、単結合、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~18のアルキレン基、炭素数3~18のシクロアルキレン基、炭素数6~18のアリーレン基、又は、-O-、-NH-、-S-、及び-C(=O)-からなる群より選ばれる1つ若しくは2つ以上を連結した連結基を表し、p1は、1又は2の整数を表す。但し、X18の価数は、p1+1である。
**は、セルロース骨格の構成単位における2位、3位、若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。
18で表される、直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基、シクロアルキレン基及びアリーレン基は、置換基を有していてもよい。
18で表される炭素数6~18のアリーレン基としては、特に制限はなく、例えば、フェニレン基、ナフタレン基等が挙げられる。
18で表される-O-、-NH-、-S-、及び-C(=O)-からなる群より選ばれる1つ若しくは2つ以上を連結した連結基としては、特に制限はなく、例えば、「-C(=O)-NH-(CH-O-」、「-C(=O)-NH-(CH-O-(CH-O-」及び「-C(=O)-NH-C(CH)-(CH-O-)」が挙げられる。
架橋反応の観点から、一般式(1C)中、p1は、1の整数であることが好ましい。
一般式(1C)中、R1Cが水素原子又はメチル基であり、X18が単結合であり、p1が1である場合、一般式(1C)で表される基は、(メタ)アクリロイル基である。
以下に、一般式(1C)で表される基の一例を示す。一般式(1C)で表される基はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、下記一般式(1C-1)~(1C-8)中、**は、セルロース骨格の構成単位における2位、3位、若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。

一般式(1C-5)で表される基は、一般式(1C)で表される基中、X18が下記一般式(1C-7)で表される3価の連結基であり、R1Cが水素原子であり、p1が2である。
一般式(1C-7)中、***は、上記一般式(1C-5)における(COCH=CH)のCOに結合する炭素原子と結合する部分を表す。
一般式(2C)中、R1Dは、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~18のアルキレン基を表し、p1及び**は、前記一般式(1C)におけるp1及び**と同義である。
架橋によって適度な弾性を有する液晶フィルムを得る観点から、R1Dで表される直鎖若しくは分岐鎖の炭素数1~18のアルキレン基としては、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数3~18のアルキレン基であることが好ましく、直鎖の炭素数3~18のアルキレン基であることがより好ましく、直鎖の炭素数6~12のアルキレン基であることがさらに好ましい。
架橋反応の観点から、一般式(2C)中、p1は、1の整数であることが好ましい。
以下に、一般式(2C)で表される基の一例を示す。一般式(2C)で表される基はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、下記一般式(2C-1)~(2C-4)中、**は、セルロース骨格の構成単位における2位、3位、若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。

第1のセルロース誘導体に含まれるアルキル基としては、特に制限されず、例えば、炭素数1~18のアルキル基が挙げられる。
炭素数1~18のアルキル基は、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基であってもよく、無置換又は置換されていてもよい。
炭素数1~18の無置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
炭素数3~18の無置換の環状のアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基等が挙げられる。
第1のセルロース誘導体に含まれるアルキル基は、セルロース骨格の構成単位における2位、3位、若しくは6位にある酸素原子と結合するアルキル基であることが好ましい。
アルキル基はエチル基であり、第1のセルロース誘導体はエチルセルロース骨格を含むことが好ましい。
第1のセルロース誘導体は下記一般式(A)で表される構成単位を含むことが好ましい。
一般式(A)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水酸基、不飽和二重結合を有する基又はアルキル基を表す。第1のセルロース誘導体は上記一般式(A)で表される構成単位を複数含むことが好ましい。複数含まれる上記一般式(A)で表される構成単位は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
第1のセルロース誘導体が上記一般式(A)で表される構成単位を含む場合、構成単位あたりの不飽和二重結合を有する基の置換度は、0.01~0.3であってもよく、0.01~0.2であってもよく、0.01~0.1であってもよい。
構成単位あたりの不飽和二重結合を有する基の置換度は、第1のセルロース誘導体の全構成単位中に含まれる不飽和二重結合を有する基の合計数S(R、R又はRで表される不飽和二重結合を有する基の合計数)を第1のセルロース誘導体の構成単位の合計数Nで割った値(S/N、上限3)である。
第1のセルロース誘導体が上記一般式(A)で表される構成単位を含む場合、構成単位あたりのアルキル基の置換度は、1.5~2.9であってもよく、2.0~2.8であってもよく、2.3~2.7であってもよい。
構成単位あたりのアルキル基の置換度は、第1のセルロース誘導体の全構成単位中に含まれるアルキル基の合計数T(R、R又はRで表される不飽和二重結合を有する基の合計数)を第1のセルロース誘導体の構成単位の合計数Nで割った値(T/N、上限3)である。
構成単位あたりの不飽和二重結合を有する基の置換度及び構成単位あたりのアルキル基の置換度は、H-NMRにより、各置換基が有する特徴的なプロトンピークの積分値から算出してもよい。
[液晶材料]
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態の液晶材料は、前述の第1のセルロース誘導体と、後述の不飽和二重結合を有する基を含む重合性モノマーと、を含む。第1実施形態の液晶材料は、左円偏光及び右円偏光の両偏光反射特性を有する液晶フィルムを形成するために用いられることが好ましい。
第1のセルロース誘導体の含有量としては、液晶材料全質量に対して、30質量%~70質量%であってもよく、35質量%~65質量%であってもよく、40質量%~60質量%であってもよい。
(第2実施形態)
液晶材料は、前述の第1のセルロース誘導体以外のセルロース誘導体を含んでいてもよい。本開示の第2実施形態の液晶材料は、水酸基の少なくとも一部がアシル基で置換されたセルロース誘導体(以下、「第2のセルロース誘導体」とも称する。)と、後述の不飽和二重結合を有する基を含む重合性モノマーと、を含む、左円偏光及び右円偏光の両偏光反射特性を有する液晶フィルムを形成するための液晶材料である。
第2実施形態の液晶材料を用いて液晶フィルムを作製することによって新規の偏光特性を有する液晶フィルムを形成可能である。例えば、上記液晶材料にせん断力を加え、当該液晶材料に含まれるセルロース誘導体を配向させ、次いで液晶材料を硬化させることで左円偏光及び右円偏光の両偏光反射特性を有する液晶フィルムを形成可能である。
第2実施形態の液晶材料に含まれる第2のセルロース誘導体は、アシル基で置換されたヒドロキシプロピルセルロース誘導体等のアシル基を有するセルロース誘導体である。第2のセルロース誘導体を含む液晶材料から構成される液晶フィルムは、分子らせん構造を形成したコレステリック液晶配向状態を示しており、白色光を配向面に対して垂直に照射することで右円偏光を選択的に反射する。
一方、第2のセルロース誘導体を含む液晶材料にせん断力を加え、当該液晶材料に含まれる第2のセルロース誘導体を配向させ、次いで液晶材料を硬化させることで、分子らせん構造が傾斜した液晶フィルムを得ることができる。分子らせん構造が傾斜している状態で白色光を配向面に対して垂直に照射することで左円偏光及び右円偏光の両方が反射される。
さらに、第2のセルロース誘導体を含む液晶材料にせん断力を加えることで、せん断方向に分子が配向して複屈折が増加する傾向にある。複屈折が増加した液晶フィルムでは、入射した左円偏光の一部が右円偏光に変化したり、反射された右円偏光の一部が左円偏光に変化したりしやすくなる。その結果、反射光として反射された右円偏光及び変化した左円偏光の両円偏光が確認できる、と推測される。
以下、第2のセルロース誘導体の好ましい形態について説明する。
<第2のセルロース誘導体>
第2のセルロース誘導体は、水酸基の少なくとも一部がアシル基で置換されたセルロース誘導体であり、水酸基の一部が残存していてもよく、すべての水酸基がアシル基で置換されていてもよく、すべての水酸基がアシル基及び不飽和二重結合を有する基で置換されていてもよい。
第2のセルロース誘導体に含まれるアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基(プロパノイル基)、ブチリル基、イソブチリル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
第2のセルロース誘導体では、水酸基の一部が不飽和二重結合を有する基で置換されていてもよい。当該不飽和二重結合を有する基の好ましい形態は、前述の第1のセルロース誘導体に含まれる不飽和二重結合を有する基の好ましい形態と同様である。
第2のセルロース誘導体は下記一般式(B)で表される構成単位を含むことが好ましい。
一般式(B)中、X11、X12及びX13は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基、-(R14-O)-、又は、-C(=O)-R15-を表し、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、不飽和二重結合を有する基、又は、アシル基を表し、R14及びR15は、それぞれ独立に、アルキレン基を表し、hは、1以上10以下の整数を表す。
第2のセルロース誘導体は上記一般式(B)で表される構成単位を複数含むことが好ましい。複数含まれる上記一般式(B)で表される構成単位は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
一般式(B)中、X11、X12及びX13で表されるアルキレン基は、制限されない。
アルキレン基としては、直鎖又は分岐鎖の炭素数1~18(好ましくは1~12)のアルキレン基、環状の炭素数3~18(好ましくは3~12)のシクロアルキレン基が挙げられる。直鎖又は分岐鎖のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基等が挙げられる。
環状のアルキレン基としては、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。
一般式(B)中、-(R14-O)-で表される基におけるアルキレン基(-R14-)としては、上記X11、X12及びX13と同様のアルキレン基が挙げられる。
-(R14-O)-としては、例えば、エチレンオキシ基、ポリエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基等が挙げられる。
-(R14-O)-は、より具体的には、-(-O-(CH)-)-で表すことができる。ただし、nは1以上5以下の整数である。
一般式(B)中、hとしては、架橋によって適度な弾性を有する液晶フィルムを得る観点から、好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下、さらに好ましくは1以上3以下である。
一般式(B)中、X11、X12及びX13で表される-C(=O)-R15-で表される基におけるアルキレン基(-R15-)としては、上記X11、X12及びX13と同様のアルキレン基が挙げられる。
-C(=O)-R15-としては、例えば、-C(=O)-CH-、-C(=O)-C-、-C(=O)-C-等が挙げられる。
アルキレン基、-(R14-O)-、 及び、-C(=O)-R15-は、置換基を有していてもよい。
一般式(B)中、R11、R12及びR13で表される不飽和二重結合を有する基の好ましい形態としては、前述の第1のセルロース誘導体に含まれる不飽和二重結合を有する基の好ましい形態と同様である。
一般式(B)中、R11、R12及びR13で表されるアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基(プロパノイル基)、ブチリル基、イソブチリル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。
一般式(B)で表される構成単位は、下記一般式(B-1)で表される構成単位であることが好ましい。
一般式(B-1)中、Rは、-CH-CH-、又は、-CH-CH(CH)-を表し、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、不飽和二重結合を有する基、又は、アシル基を表し、m1、t1及びr1は、それぞれ独立に、0以上10以下の整数を表す。
一般式(B-1)中、R11、R12及びR13は、一般式(B)におけるR11、R12及びR13と同義である。
一般式(B-1)中、m1、t1及びr1としては、セルロース誘導体の合成のし易さの観点から、それぞれ独立に、好ましくは0以上8以下、より好ましくは0以上5以下、さらに好ましくは0以上3以下である。
第2のセルロース誘導体が上記一般式(B)で表される構成単位を含む場合、構成単位あたりのアシル基の置換度は、2.00~3.00であってもよく、2.30~2.98であってもよく、2.50~2.95であってもよく、2.60~2.95であってもよい。
構成単位あたりのアシル基の置換度は、第2のセルロース誘導体の全構成単位中に含まれるアシル基の合計数S’(R11、R12又はR13で表されるアシル基の合計数)を第2のセルロース誘導体の構成単位の合計数N’で割った値(S’/N’、上限3)である。
第2のセルロース誘導体が上記一般式(B)で表される構成単位を含み、水酸基の一部が不飽和二重結合を有する基で置換されている場合、構成単位あたりの不飽和二重結合を有する基の置換度は、0.01~0.3であってもよく、0.01~0.2であってもよく、0.01~0.1であってもよい。
構成単位あたりの不飽和二重結合を有する基の置換度は、第2のセルロース誘導体の全構成単位中に含まれる不飽和二重結合を有する基の合計数T’(R11、R12又はR13で表される不飽和二重結合を有する基の合計数)を第2のセルロース誘導体の構成単位の合計数N’で割った値(T’/N’、上限3)である。
構成単位あたりのアシル基の置換度及び構成単位あたりの不飽和二重結合を有する基の置換度の合計は、特に限定されず、2.00以上であってもよく、2.40以上であってもよく、水素結合減少による液晶材料の粘度低減、偏光特性等の観点から、2.70以上であってもよく、2.80以上であってもよい。
構成単位あたりのアシル基の置換度及び構成単位あたりの不飽和二重結合を有する基の置換度は、H-NMRにより、各置換基が有する特徴的なプロトンピークの積分値から算出してもよい。
第2のセルロース誘導体は、ヒドロキシアルキルセルロース骨格を含むことが好ましく、ヒドロキシプロピルセルロース骨格を含むことがより好ましく、第2のセルロース誘導体が一般式(B-1)で表される構成単位を含む場合に、一般式(B-1)中のRは、-CH-CH(CH)-であることがさらに好ましい。
第2のセルロース誘導体の含有量としては、液晶材料全質量に対して、50質量%~99質量%であってもよく、60質量%~95質量%であってもよく、70質量%~90質量%であってもよい。
<重合性モノマー>
第1実施形態の液晶材料及び第2の実施形態の液晶材料は、それぞれ独立に、不飽和二重結合を有する基を含む重合性モノマー(以下、「重合性モノマー」とも称する)を含有する。
重合性モノマーは、第1のセルロース誘導体及び第2のセルロース誘導体の少なくとも一方(以下、「特定セルロース誘導体」とも称する。)と相溶性があり、かつ、特定セルロース誘導体と相溶した場合にリオトロピック液晶性を発現することが可能であれば、特に制限はない。
重合性モノマーと特定セルロース誘導体との相溶性を確認する方法としては、例えば、重合性モノマーと特定セルロース誘導体とを、例えば、1:3の割合で混合し、ミックスローター(DLAB Scientific Instrument Inc社製品)によって、1週間ほど撹拌し、目視で沈殿物の可否を確認することで、相溶性を判断することができる。
また、特定セルロース誘導体と重合性モノマーとが相溶した場合に、リオトロピック液晶性の発現を確認する方法としては、例えば、特定セルロース誘導体と重合性モノマーとの混合物について、ブラッグ反射の可否を目視で確認することで、液晶性の発現を確認することができる。
重合性モノマーに含まれる不飽和二重結合を有する基としては、重合反応を起こし得る基であれば特に制限されず、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリール基等が挙げられる。
重合反応性及び特定セルロース誘導体との相溶性の観点から、不飽和二重結合を有する基としては、(メタ)アクリロイル基であることが好ましく、アクリロイル基であることがより好ましい。
重合性モノマーが(メタ)アクリロイル基を含むモノマー(以下、「(メタ)アクリル系モノマー」とも称する。)である場合、(メタ)アクリル系モノマーとしては、1分子中に(メタ)アクリロイル基を1つ含む単官能(メタ)アクリレートであってもよく、1分子中に(メタ)アクリロイル基を2つ以上含む多官能(メタ)アクリレートであってもよい。
単官能(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数は、液晶性の観点から、1~18の範囲であることが好ましく、3~15の範囲であることがより好ましく、3~12の範囲であることがより好ましい。
上記アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-t-シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
多官能(メタ)アクリレートとしては、特に制限はなく、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート(1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート及び1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート(1,4-ビス(アクリロイルオキシ)ブタン))、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
単官能(メタ)アクリルモノマーは、(メタ)アクリロイル基以外の官能基をさらに含む(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。(メタ)アクリロイル基以外の官能基としては、特に制限はなく、例えば、水酸基、カルボキシ基、アルコキシ基、アミド基、アミノ基及びグリシジル基が挙げられる。
水酸基を含む(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート及び3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
これらの中でも、相溶性及びゴム弾性に優れる観点から、水酸基を含む(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの少なくとも一方であることがより好ましい。
カルボキシ基を含む(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、相溶性及びゴム弾性に優れる観点から、カルボキシ基を含む(メタ)アクリレートとしては、(メタ)アクリル酸であることが好ましい。
アルコキシ基を含む(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びメトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。
グリシジル基を含む(メタ)アクリレートとしては、アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
特定セルロース誘導体との相溶性及び液晶性が得られる観点から、重合性モノマーとしては、アクリロイル基を有するモノマーであることが好ましい。
重合性モノマーは、アルキル(メタ)アクリレート、水酸基を含む(メタ)アクリレート及びカルボキシ基を含む(メタ)アクリレートの少なくとも1つを含んでいてもよい。液晶フィルムにおける両円偏光の反射特性向上の観点から、重合性モノマーは、水酸基を含む(メタ)アクリレート及びカルボキシ基を含む(メタ)アクリレートの少なくとも1つ(以下、「特定の(メタ)アクリレート化合物」とも称する。)を含むことが好ましい。例えば、特定セルロース誘導体がヒドロキシプロピルセルロース誘導体等のアルキルセルロース誘導体を含む場合、特定の(メタ)アクリレート化合物を用いることで液晶フィルムにおける左円偏光の反射特性が向上する傾向にある。特定セルロース誘導体がエチルセルロース誘導体等のアルキルセルロース誘導体を含む場合、特定の(メタ)アクリレート化合物を用いることで液晶フィルムにおける右円偏光の反射特性が向上する傾向にある。
特定の(メタ)アクリレート化合物を用いることで両円偏光の反射特性が向上する理由としては、特定の(メタ)アクリレート化合物に含まれる水酸基又はカルボキシ基により形成される水素結合が反射特性に影響を及ぼすためと推測される。なお、本開示は、上記推測に限定されない。
特定セルロース誘導体における構成単位あたりの不飽和二重結合を有する基の置換度及び構成単位あたりのアシル基の置換度の合計が大きい場合、例えば、2.95以上、2.98以上又は3.00以上の場合、本開示の液晶材料は、水酸基を含む(メタ)アクリレート及びカルボキシ基を含む(メタ)アクリレートの少なくとも1つ(特定の(メタ)アクリレート化合物)を含むことが好ましい。これにより、特定セルロース誘導体における水酸基の割合が少ない場合に、特定の(メタ)アクリレート化合物に含まれる水酸基又はカルボキシ基により形成される水素結合が反射特性に影響を及ぼし、液晶フィルムにおける両円偏光の反射特性が向上する傾向にある。
不飽和二重結合を有する基を2つ以上含む重合性モノマーとしては、例えば、前述の多官能(メタ)アクリレートが挙げられ、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
カルボキシ基を分子内に有する重合性モノマーとしては、例えば、前述のカルボキシ基を有する(メタ)アクリレートが挙げられ、アクリル酸が好ましい。
液晶性の観点から、重合性モノマーの含有量としては、液晶材料全質量に対して、1質量%~60質量%であってもよく、2質量%~50質量%であってもよく、3質量%~40質量%であってもよい。
重合性モノマーの含有量は、特定セルロース誘導体の種類(例えば、アルキルセルロース誘導体、ヒドロキシアルキルセルロース誘導体)、特定セルロース誘導体に導入された不飽和二重結合を有する基又はアシル基の量、種類等(例えば、構成単位あたりの不飽和二重結合を有する基の置換度、構成単位あたりのアシル基の置換度、アシル基の炭素数)、使用される重合性モノマーの種類などによって適宜変更してもよい。
<その他の成分>
本開示の液晶材料は、本開示の効果が得られる範囲内において、特定セルロース誘導体及び重合性モノマー以外の成分(以下、「その他の成分」とも称する。)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、例えば、重合開始剤、架橋剤、難燃剤、相溶化剤、酸化防止剤、離型剤(剥離剤)、耐光剤、耐候剤、改質剤、帯電防止剤、加水分解防止剤等が挙げられる。
重合開始剤としては、公知の重合開始剤(例えば熱重合開始剤、光重合開始剤)を用いることができる。
本開示の液晶材料が熱重合開始剤、光重合開始剤等の重合開始剤を含む場合、重合開始剤(好ましくは光重合開始剤)の含有量は、液晶材料全質量に対して、0.1質量%~5質量%であってもよく、0.2質量%~3質量%であってもよく、0.3質量%~2質量%であってもよい。
[液晶フィルム]
本開示の液晶フィルムは、前述の本開示の液晶材料を硬化してなり、左円偏光及び右円偏光の両偏光反射特性を有する。本開示の液晶フィルムは、上記液晶材料にせん断力を加え、当該液晶材料に含まれるセルロース誘導体を配向させ、次いで液晶材料を硬化させることで得られた液晶フィルムであってもよい。
本開示の液晶フィルムは、良好な偏光特性を有する観点から、前述の本開示の液晶材料を硬化してなり、リタデーションが200nm以上である領域を含む液晶フィルムであってもよい。セルロース誘導体がヒドロキシアルキルセルロース骨格(好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース骨格)を含む場合、左円偏光の反射光の割合が高くなり、良好な両偏光反射特性が得られやすい観点から、リタデーションが300nm以上である領域を含む液晶フィルムが好ましい。
本開示において、リタデーションの値はセナルモン法によって測定される値である。
本開示において、測定領域によってリタデーションの値が相違していてもよい。例えば、印加されるせん断力が大きい領域ではリタデーションの値が200nm以上であり、印加されるせん断力が小さい領域ではリタデーションの値が200nm未満であってもよい。
液晶フィルムは、リタデーションが300nm~1000nmである領域を含んでいてもよく、リタデーションが400nm~600nmである領域を含んでいてもよい。
本開示の液晶フィルムは、良好な偏光特性を有する観点から、前述の本開示の液晶材料を硬化してなり、厚さが200μm以上である液晶フィルムであってもよい。液晶フィルムの厚さは、300μm~1000μmであってもよく、400μm~800μmであってもよい。セルロース誘導体がヒドロキシアルキルセルロース骨格(好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース骨格)を含む場合、リタデーションの値が増加することで左円偏光の反射光の割合が高くなり、良好な両偏光反射特性が得られやすい観点から、液晶フィルムの厚さは、300μm以上であることが好ましく、300μm~600μm以上であることがより好ましい。
なお、液晶フィルムの厚さは、前述の数値範囲に限定されない。液晶フィルムの製造条件を変更、例えば、せん断工程時のせん断速度を調整する、配向工程での配向時間を調整する等の手法により、リタデーションの値を増加させることができる。そのため、液晶フィルムの厚さが薄い場合であっても、良好な両偏光反射特性を有する液晶フィルムを得ることができる。
<液晶フィルムの製造方法>
本開示の液晶フィルムの製造方法は、前述の本開示の液晶材料にせん断力を加えるせん断工程と、せん断工程後の前記液晶材料を放置して配向させる配向工程と、配向工程後の前記液晶材料を硬化させる硬化工程と、を含む。
本開示の液晶フィルムの製造方法では、上記の各工程を経ることにより、左円偏光及び右円偏光の両偏光反射特性を有する液晶フィルムを製造することができる。
(せん断工程)
せん断工程は、前述の本開示の液晶材料にせん断力を加える工程である。
前述の本開示の液晶材料にせん断力を加えることで、液晶材料に含まれる、分子らせん構造を形成したコレステリック液晶配向状態を示すセルロース誘導体がせん断方向に配向する。このとき、分子らせん構造がせん断方向に傾斜する。さらに、せん断方向に分子が配向して複屈折が増加する。
液晶材料にせん断力を加える方法は、分子らせん構造をせん断方向に傾斜することができれば特に限定されない。例えば、レオメーター等を用いて一定方向のせん断ひずみを液晶材料に印加してもよい。レオメーターを用いる場合は、液晶材料を下部治具に付与し、パラレルプレート、コーンプレート等の上部治具と下部治具とで液晶材料を挟み、一定方向のせん断ひずみを液晶材料に印加すればよい。
せん断工程を行う際の温度は、特に限定されず、室温(25℃程度)であってもよく、加熱しながらせん断工程及び後述の各工程を行ってもよい。
液晶材料にせん断力を加える際のせん断速度は、特に限定されず、セルロース誘導体の種類(例えば、セルロース誘導体における水酸基の置換度合い)、重合性モノマーの種類(例えば、水酸基、カルボキシ基の有無)等によって適宜調整してもよい。
(配向工程)
配向工程は、せん断工程後の液晶材料を放置して配向させる工程である。
これにより、せん断処理により乱れたコレステリック液晶を再配向させることができ、鮮やかな反射色が得られる。
せん断工程後の液晶材料を放置する時間(待機時間)は、特に限定されず、せん断ひずみの大きさ、セルロース誘導体の種類(例えば、セルロース誘導体における水酸基の置換度合い)、重合性モノマーの種類(例えば、水酸基、カルボキシ基の有無)等によって適宜調整してもよい。また、待機時間を長くすることで分子らせん構造の傾斜が回復する傾向にある。そのため、待機時間を調整することで、分子らせん構造の傾斜も調整可能であり、液晶フィルムの反射波長も調整可能となる。
待機時間は、例えば、10秒間~5時間であってもよく、100秒間~1時間であってもよく、200秒間~30分間であってもよい。
(硬化工程)
硬化工程は、配向工程後の液晶材料を硬化させる工程である。
配向工程後の液晶材料を硬化させることで、特定のセルロース誘導体、重合性モノマー等が架橋反応し、分子らせん構造が傾斜し、かつ複屈折が増加した状態で架橋構造が形成される。これにより、傾斜した分子らせん構造が固定化され、複屈折が増加した液晶フィルムが得られる。
硬化方法としては、液晶材料に対して熱処理して硬化する方法、液晶材料に対して紫外線等の光を照射して硬化する方法が挙げられる。熱処理して硬化する場合、液晶材料は、熱重合開始剤を含むことが好ましく、光を照射して硬化する場合、液晶材料は光重合開始剤を含むことが好ましい。
熱処理方法は特に制限されず、例えば、公知の加熱装置を用いた熱処理方法であってもよい。
加熱装置としては、特に制限はなく、例えば、オーブン、赤外線ヒーター及びホットプレートが挙げられる。
熱処理の温度としては、好ましくは25℃以上130℃以下、より好ましくは25℃以上120℃以下、さらに好ましくは25℃以上110℃以下である。
熱処理の温度は、液晶材料が上記範囲になるように制御される。
熱処理工程は、温度、加熱時間等の熱処理条件を制御することにより、ブラッグ反射の波長で配向を固定化することができる。
液晶材料に紫外線等の光を照射する際の温度(以下、「UV照射温度」とも称する。)は、好ましくは0℃以上100℃以下、より好ましくは5℃以上50℃以下、さらに好ましくは10℃以上40℃以下である。
UV照射温度は、液晶材料が上記範囲になるように制御される。
また、紫外線等の光の照射強度は、好ましくは1mW/cm以上200mW/cm以下、より好ましくは5mW/cm以上150mW/cm以下、さらに好ましくは10mW/cm以上100mW/cm以下である。
紫外線等の光の照射時間は、5秒~40分であることが好ましく、2分~20分であることがより好ましい。
液晶フィルムにおける左円偏光又は右円偏光の有無は、肉眼で区別できない。そのため、左円偏光による反射色又は右円偏光による反射色で、文字、図形等をパターニングすることで、偽造防止技術への応用等が期待できる。
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り「%」はすべて質量基準である。
(実施例1)
[HPC誘導体1の合成]
下記スキームに従って、HPC誘導体1を合成した。
窒素を充填した200mLのナスフラスコに30mLの脱水アセトンを加え、次いで6.00g(15.2mmol)のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(Mw=4.5×10、 PDI=1.9)を秤量し、脱水アセトンに撹拌しながら溶解し、HPC溶液を得た。
HPC溶液をアルミホイルで遮光し、室温下でカレンズAOI(2-イソシアナトエチルアクリレート、昭和電工(株)製、登録商標)1.29g(水酸基に対して0.2当量)を加え、室温下、遮光中で24時間反応させた後、プロピオニルクロリド6.33g(水酸基に対して1.5当量)を加え、さらに22時間反応させた。
反応終了後、反応溶液を超純水に滴下し、生成物を析出させた。この生成物を超純水で洗浄し乾燥させ、次いで少量のアセトンに生成物を溶解させた後、超純水に滴下して再析出させた。この再溶解及び再析出の洗浄操作を行った後、1Lのアセトンを用いて透析を2回行った。次いで、この生成物を超純水に滴下して析出させた後、減圧乾燥を行うことでHPC誘導体1(以下、「HPC-AcC/PrE」とも称する。)が得られた。
H-NMRスペクトルの測定)
上記で合成したHPC誘導体1のH-NMRスペクトルを測定した。
本実施例に係るHPC誘導体1に由来するピーク(具体的には、HPC-AcC/PrE由来のピーク)として、5.8ppm、6.1ppm及び6.4ppm付近のピークは、それぞれアクリロイル基の二重結合につくプロトンのピークであり、4.7ppm~5.2ppm付近のピークは、末端のヒドロキシプロピル基のメチン基である。2.7ppm~4.5ppm付近のピークは、β-グルコースモノマーユニットにあるプロトン、側鎖のヒドロキシプロピル基が有するメチン基のプロトン(HPC骨格由来するプロトンピーク)である。
2.3ppm付近のピークは、カルボキシル基に隣接するプロピオニル基のメチレン基のプロトンである。1.0ppm~1.3ppm付近のピークは、ヒドロキシプロピル基の末端のメチル基、プロピオニル基のメチル基のプロトンピークであると帰属した。
すなわち、4.7ppm~5.2ppmのピークは、末端のヒドロキシプロピル基がカルバメート化又はエステル化した場合のメチン基のプロトンと、β-グルコースモノマーユニットの2位又は3位がカルバメート化若しくはエステル化した場合のメチン基のプロトンの可能性がある。
以上の結果から、HPC誘導体1は、HPCの側鎖である水酸基の水素原子が、CH=CH-C(=O)-O-(CH-NHC(=O)-(アクリロイルエチルカルバメート基)、及び、プロピオニル基で置換された「HPCアクリロイルエチルカルバメート/プロピオニル混合エステル」であった。
帰属したピークをもとに、HPC側鎖(水酸基中の水素原子)において、不飽和二重結合を有する基(すなわち、アクリロイルエチルカルバメート基)への置換度及びアシル基(すなわち、プロピオニル基)への置換度を算出した。
HPC誘導体1は、アクリロイルエチルカルバメート基(不飽和二重結合を有する基)への置換度は0.23であり、プロピオニル基(アシル基)への置換度は2.62(HPC-AcC/PrE(AcC:PrE=0.23:2.62))であった。
<液晶材料1の作製>
上記のようにして得たHPC誘導体1、ブチルアクリレート(BA)(東京化成工業(株)製、A0142、ガラス転移温度(Tg);-40℃)及び光重合開始剤である2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(HMPP)を用いて液晶材料1を作製した。具体的には、HPC誘導体1、BA及びHMPPを質量比で87.9:11.5:0.6となるようによく混合した後、わずかな時間真空脱泡して液晶材料1を作製した。
<液晶フィルム1の作製>
レオメーター内で上記のようにして作製した液晶材料1にせん断配向処理を施し、次いでせん断配向処理後の液晶材料1を一定時間待機させた後に光を照射して液晶フィルム1を作製した。詳細には、上部治具として直径25mmのパラレルプレート、及び下部治具としてペルチェ素子を備えるガラスプレートを有し、下部治具側から紫外線を照射可能なレオメーターを準備した。上部治具及び下部治具には離型シートが貼り付けられている。25℃に調整したガラスプレート上に液晶材料1を付与し、パラレルプレート及びガラスプレートで液晶材料1を挟んだ。このとき、パラレルプレートとガラスプレートとの間のギャップdは500μmとした。パラレルプレート及びガラスプレートで挟んだ液晶材料1に対してせん断速度0.2s-1又は0.5s-1の条件にてせん断配向処理を300秒間施した。せん断速度は平面視における中心からの距離に比例して増大し、本実験では、中心からの距離がもっとも離れた位置(すなわち、中心からの距離r:12.5mm)でのせん断速度を上記の値に調整した。乱れた液晶構造を再配向させて鮮やかな反射色を示す液晶フィルムを得るため、せん断配向処理後の液晶材料1を200秒間待機させた。待機後の液晶材料1にLED光源を用いて波長365nm、強度80mW/cmの紫外線を6分間照射した。以上により、液晶材料1を硬化させて液晶フィルム1を得た。
<円偏光透過スペクトルの測定>
実施例1で得た液晶フィルム1(液晶フィルム1の厚さ:約500μm)を用いて、円偏光透過スペクトルを測定した。円偏光透過スペクトルの測定では、白色光源、直線偏光子、1/4波長板、アクロマティック集光レンズ、分光器を備える光学測定系を用い、1/4波長板とアクロマティック集光レンズとの間に液晶フィルム1を有するガラスプレートを配置し、白色光源から光を液晶フィルム1に照射し、分光器にて透過光を受光した。円偏光透過スペクトルの測定結果を図1及び図2に示す。図1(a)は、せん断速度0.2s-1の条件にて液晶フィルム1を作製した場合の左円偏光の透過スペクトルの変化を示す図であり、図1(b)は、せん断速度0.2s-1の条件にて液晶フィルム1を作製した場合の右円偏光の透過スペクトルの変化を示す図である。図2(a)は、せん断速度0.5s-1の条件にて液晶フィルム1を作製した場合の左円偏光の透過スペクトルの変化を示す図であり、図2(b)は、せん断速度0.5s-1の条件にて液晶フィルム1を作製した場合の右円偏光の透過スペクトルの変化を示す図である。図1、2中のrは、平面視における液晶フィルムの中心からの距離を意味する(図3以降も同様)。
図1及び図2に示すように、液晶フィルム1では、右円偏光及び左円偏光を反射することが確認できた。せん断速度0.2s-1の条件及びせん断速度0.5s-1の条件での液晶フィルム1の反射波長は、右円偏光又は左円偏光、液晶フィルムの測定位置によって変動し、570nm~630nmの範囲内であった。なお、せん断配向処理を行っていない状態の液晶フィルム1の反射波長は、642nmであった。
(実施例2)
<液晶材料2の作製>
上記のようにして得たHPC誘導体1、4-ヒドロキシブチルアクリレート(東京化成工業(株)製、製品コード;A1390、4HBA、ガラス転移温度(Tg);-32℃)及びHMPPを用いて液晶材料2及び3を作製した。具体的には、HPC誘導体1、4HBA及びHMPPを質量比で90.8:8.5:0.7となるようによく混合した後、わずかな時間真空脱泡して液晶材料2を作製した。さらに、HPC誘導体1、4HBA及びHMPPを質量比で91.0:8.4:0.6となるようによく混合した後、わずかな時間真空脱泡して液晶材料3を作製した。
<液晶フィルム2~4の作製>
液晶材料1の替わりに液晶材料2を用い、せん断速度0.2s-1の条件にてせん断配向処理を施し、せん断配向処理後の液晶材料2を300秒間待機させた以外は、液晶フィルム1の作製と同様にして液晶フィルム2を作製した。
液晶材料1の替わりに液晶材料3を用い、せん断速度0.5s-1の条件にてせん断配向処理を施し、せん断配向処理後の液晶材料2を300秒間待機させた以外は、液晶フィルム1の作製と同様にして液晶フィルム3を作製した。
液晶材料2を用い、せん断配向処理後の液晶材料2を200秒間待機させた以外は、液晶フィルム2の作製と同様にして液晶フィルム4を作製した。
<円偏光透過スペクトルの測定>
実施例2で得た液晶フィルム2(液晶フィルム2の厚さ:約500μm)、液晶フィルム3(液晶フィルム3の厚さ:約500μm)及び液晶フィルム4(液晶フィルム4の厚さ:約500μm)をそれぞれ用いて、液晶フィルム1と同様にして円偏光透過スペクトルを測定した。円偏光透過スペクトルの測定結果を図3~図5に示す。
図3~図5に示すように、液晶フィルム2~液晶フィルム4では、右円偏光及び左円偏光を反射することが確認できた。液晶フィルム3では、r=0mm及び3mm付近にて緑色の反射光を確認でき、せん断が小さいrが5mm以下の領域にて右円偏光及び左円偏光を良好に示すことが確認できた。液晶フィルム2と液晶フィルム4とを比較すると、配向時間を長くすることで、右円偏光及び左円偏光の反射光がより明確になることが確認できた。液晶フィルム2~液晶フィルム4の反射波長は、右円偏光又は左円偏光、液晶フィルムの測定位置によって変動し、500nm~560nmの範囲内であった。なお、せん断配向処理を行っていない状態では、液晶フィルム2の反射波長は、572nmであり、液晶フィルム3の反射波長は、586nmであり、液晶フィルム4の反射波長は、572nmであった。
(実施例3)
[HPC誘導体2の合成]
下記スキームに従って、HPC誘導体2を合成した。
窒素を充填した200mLのナスフラスコに30mLの脱水アセトンを加え、次いで6.00g(15.2mmol)のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(Mw=4.5×10、 PDI=1.9)を秤量し、脱水アセトンに撹拌しながら溶解し、HPC溶液を得た。
HPC溶液をアルミホイルで遮光し、室温下でカレンズAOI(2-イソシアナトエチルアクリレート、昭和電工(株)製、登録商標)0.97g(水酸基に対して0.15当量)を加え、室温下、遮光中で24時間反応させた後、ブチリルクロリド14.6g(水酸基に対して3.0当量)を加え、さらに22時間反応させた。
反応終了後、実施例1のHPC誘導体1を得る際の操作と同様の操作を行うことでHPC誘導体2(以下、「HPC-AcC/BuE」とも称する。)が得られた。
H-NMRスペクトルの測定を行い、帰属したピークをもとに、HPC側鎖(水酸基中の水素原子)において、不飽和二重結合を有する基(すなわち、アクリロイル基)への置換度及びアシル基(すなわち、ブチリル基)への置換度を算出した。
HPC誘導体2は、アクリロイル基(不飽和二重結合を有する基)への置換度は0.05であり、ブチリル基(アシル基)への置換度は2.83(HPC-AcC/BuE(AcC:BuE=0.05:2.83))であった。
<液晶材料4の作製>
上記のようにして得たHPC誘導体2、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)及びHMPPを用いて液晶材料4を作製した。具体的には、HPC誘導体2、4HBA及びHMPPを質量比で90.5:8.6:0.9となるようによく混合した後、わずかな時間真空脱泡して液晶材料4を作製した。
<液晶フィルム5の作製>
液晶材料1の替わりに液晶材料4を用い、せん断速度1.0s-1の条件にてせん断配向処理を施し、せん断配向処理後の液晶材料4を60秒間待機させた以外は、液晶フィルム1の作製と同様にして液晶フィルム5を作製した。
<円偏光透過スペクトルの測定>
実施例3で得た液晶フィルム5(液晶フィルム5の厚さ:約500μm)を用いて、液晶フィルム1と同様にして円偏光透過スペクトルを測定した。円偏光透過スペクトルの測定結果を図6に示す。
図6に示すように、液晶フィルム5では、右円偏光及び左円偏光を反射することが確認できた。液晶フィルム5の反射波長は、右円偏光又は左円偏光、液晶フィルムの測定位置によって変動し、550nm~600nmの範囲内であった。なお、せん断配向処理を行っていない状態の液晶フィルム5の反射波長は、627nmであった。
(実施例4)
[HPC誘導体3の合成]
カレンズAOIの使用量を0.64g(水酸基に対して0.1当量)及びブチリルクロリドの使用量を15.0g(水酸基に対して3当量)に変更した以外はHPC誘導体2の合成と同様にしてHPC誘導体3(以下、「HPC-AcC/BuE」とも称する。)を合成した。
H-NMRスペクトルの測定を行い、帰属したピークをもとに、HPC側鎖(水酸基中の水素原子)において、不飽和二重結合を有する基(すなわち、アクリロイル基)への置換度及びアシル基(すなわち、ブチリル基)への置換度を算出した。
HPC誘導体3は、アクリロイル基(不飽和二重結合を有する基)への置換度は0.04であり、ブチリル基(アシル基)への置換度は2.97(HPC-AcC/BuE(AcC:BuE=0.04:2.97))であった。不飽和二重結合を有する基及びアシル基の合計が3.00を超えていることは、HPCにおけるほぼ全ての水酸基が不飽和二重結合を有する基又はアシル基に置換されていることを意味する。
(実施例5)
[HPC誘導体4の合成]
カレンズAOIの使用量を0.97g(水酸基に対して0.15当量)及びブチリルクロリドの使用量を15.0g(水酸基に対して3当量)に変更した以外はHPC誘導体2の合成と同様にしてHPC誘導体4(以下、「HPC-AcC/BuE」とも称する。)を合成した。
H-NMRスペクトルの測定を行い、帰属したピークをもとに、HPC側鎖(水酸基中の水素原子)において、不飽和二重結合を有する基(すなわち、アクリロイル基)への置換度及びアシル基(すなわち、ブチリル基)への置換度を算出した。
HPC誘導体3は、アクリロイル基(不飽和二重結合を有する基)への置換度は0.09であり、ブチリル基(アシル基)への置換度は2.92(HPC-AcC/BuE(AcC:BuE=0.09:2.92))であった。
<液晶材料5、6の作製>
上記のようにして得たHPC誘導体3、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)及びHMPPを用いて液晶材料5を作製した。具体的には、HPC誘導体3、4HBA及びHMPPを質量比で89.3:10.4:0.2となるようによく混合した後、わずかな時間真空脱泡して液晶材料5を作製した。
さらに、上記のようにして得たHPC誘導体4、アクリル酸及びHMPPをよく混合した後、わずかな時間真空脱泡して液晶材料6を作製した。
<液晶フィルム6、7の作製>
液晶材料1の替わりに液晶材料5及び液晶材料6を用い、せん断速度1.0s-1の条件にてせん断配向処理を施し、せん断配向処理後の液晶材料5及び液晶材料6を60秒間待機させた以外は、液晶フィルム1の作製と同様にして液晶フィルム6及び液晶フィルム7を作製した。
<円偏光透過スペクトルの測定>
実施例4で得た液晶フィルム6(液晶フィルム6の厚さ:約500μm)及び実施例5で得た液晶フィルム7(液晶フィルム6の厚さ:約500μm)を用いて、液晶フィルム1と同様にして円偏光透過スペクトルを測定した。円偏光透過スペクトルの測定結果を図7及び図8に示す。
図7及び図8に示すように、液晶フィルム6及び液晶フィルム7では、右円偏光及び左円偏光を反射することが確認できた。液晶フィルム7の反射波長は、右円偏光及び左円偏光ともに、約570nmであった。なお、せん断配向処理を行っていない状態の液晶フィルム7の反射波長は、597nmであった。
(実施例6)
[HPC誘導体5の合成]
下記スキームに従って、HPC誘導体5を合成した。
窒素を充填した200mLのナスフラスコに30mLの脱水アセトンを加え、次いで6.00g(15.2mmol)のヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(Mw=4.5×10、 PDI=1.9)を秤量し、脱水アセトンに撹拌しながら溶解し、HPC溶液を得た。
HPC溶液をアルミホイルで遮光し、室温下でカレンズAOI(2-イソシアナトエチルアクリレート、昭和電工(株)製、登録商標)1.29g(水酸基に対して0.2当量)を加え、室温下、遮光中で24時間反応させた後、アセチルクロリド4.66g(水酸基に対して1.3当量)を加え、さらに22時間反応させた。
反応終了後、実施例1のHPC誘導体1を得る際の操作と同様の操作を行うことでHPC誘導体5(以下、「HPC-AcC/EtE」とも称する。)が得られた。
H-NMRスペクトルの測定を行い、帰属したピークをもとに、HPC側鎖(水酸基中の水素原子)において、不飽和二重結合を有する基(すなわち、アクリロイル基)への置換度及びアシル基(すなわち、アセチル基)への置換度を算出した。
HPC誘導体5は、アクリロイル基(不飽和二重結合を有する基)への置換度は0.02であり、アセチル基(アシル基)への置換度は2.92(HPC-AcC/EtE(AcC:EtE=0.02:2.90))であった。
<液晶材料7の作製>
上記のようにして得たHPC誘導体5、ブチルアクリレート(BA)及びHMPPを用いて液晶材料7を作製した。具体的には、HPC誘導体5、BA及びHMPPを質量比で72.7:26.4:0.8となるようによく混合した後、わずかな時間真空脱泡して液晶材料7を作製した。
<液晶フィルム8の作製>
液晶材料1の替わりに液晶材料7を用い、せん断速度0.5s-1の条件にてせん断配向処理を施し、せん断配向処理後の液晶材料7を200秒間待機させた以外は、液晶フィルム1の作製と同様にして液晶フィルム8を作製した。
<円偏光透過スペクトルの測定>
実施例6で得た液晶フィルム8(液晶フィルム8の厚さ:560μm)を用いて、液晶フィルム1と同様にして円偏光透過スペクトルを測定した。円偏光透過スペクトルの測定結果を図9に示す。
図9に示すように、液晶フィルム8では、右円偏光及び左円偏光を反射することが確認できた。図2及び図6と比較すると、HPC誘導体1(HPC-AcC/PrE)を用いて作製した液晶フィルム1、及びHPC誘導体2(HPC-AcC/BuE)を用いて作製した液晶フィルム5よりも、HPC誘導体5(HPC-AcC/EtE)を用いて作製した液晶フィルム8の方が反射特性が良好であった。
<液晶フィルム9の作製>
液晶フィルムの厚さが右円偏光及び左円偏光の反射特性に与える影響を確認するため、反射特性が良好であった液晶材料7を用いて液晶フィルム8と厚さの異なる液晶フィルム9を作製した。具体的には、パラレルプレートとガラスプレートとの間のギャップdを500μmから150μmに変更した以外は液晶フィルム8と同様にして液晶フィルム9を作製した。
<円偏光透過スペクトルの測定>
液晶フィルム9(液晶フィルム9の厚さ:178μm)を用いて、液晶フィルム1と同様にして円偏光透過スペクトルを測定した。円偏光透過スペクトルの測定結果を図10に示す。
図10に示すように、液晶フィルム9では、右円偏光の反射は明確に確認できたが、左円偏光の反射はほとんど確認できなかった。図9及び図10の結果から、液晶フィルムの厚さを変更することで右円偏光及び左円偏光の反射特性が変化することが確認できた。
液晶フィルムの厚さが薄いときに左円偏光の反射が確認しにくくなった理由としては、リタデーションの減少が推測される。図11は、液晶フィルム8及び液晶フィルム9について、平面視における中心からの距離と複屈折との関係を示す図である。図12は、液晶フィルム8及び液晶フィルム9について、平面視における中心からの距離とリタデーションとの関係を示す図である。1/4波長板と直線偏光子を用いるセナルモン法によって液晶フィルム8及び液晶フィルム9のリタデーションを測定し、測定したリタデーションの値を液晶フィルム8及び液晶フィルム9の厚さで割ることによって液晶フィルム8及び液晶フィルム9の複屈折を求めた。
図11に示すように、液晶フィルム8及び液晶フィルム9の複屈折は大きな差が見られず、両方とも中心からの距離が大きくなるにつれて値が大きくなる傾向にあった。パラレルプレートを用いてせん断配向処理を行ったため、中心からの距離が大きくなるにつれてせん断速度も増大しており、その結果、複屈折も増加していることが確認できた。図12に示すように、液晶フィルム8及び液晶フィルム9のリタデーションは大きな差が見られ、液晶フィルム8の方が液晶フィルム9よりもリタデーションが大きくなる傾向にあった。
複屈折の結果から、せん断配向処理による液晶の配向度は液晶フィルム8及び液晶フィルム9で大きくは変わらないことが推測される。一方、リタデーションの結果から、厚さの減少によって反射された右円偏光の一部が左円偏光に変化する能力が減少することで左円偏光の反射が確認しにくくなることが推測される。
(実施例7)
[HPC誘導体6の合成]
カレンズAOIの使用量を1.29g(水酸基に対して0.2当量)及びアセチルクロリドの使用量を4.65g(水酸基に対して1.3当量)に変更した以外はHPC誘導体5の合成と同様にしてHPC誘導体6(以下、「HPC-AcC/EtE」とも称する。)を合成した。
H-NMRスペクトルの測定を行い、帰属したピークをもとに、HPC側鎖(水酸基中の水素原子)において、不飽和二重結合を有する基(すなわち、アクリロイル基)への置換度及びアシル基(すなわち、アセチル基)への置換度を算出した。
HPC誘導体6は、アクリロイル基(不飽和二重結合を有する基)への置換度は0.03であり、アセチル基(アシル基)への置換度は2.87(HPC-AcC/EtE(AcC:EtE=0.03:2.87))であった。
<液晶材料8の作製>
上記のようにして得たHPC誘導体6、ブチルアクリレート(BA)及びHMPPを用いて液晶材料8を作製した。具体的には、HPC誘導体6、BA及びHMPPを質量比で77.9:21.4:0.5となるようによく混合した後、わずかな時間真空脱泡して液晶材料8を作製した。
<液晶フィルム10の作製>
液晶材料1の替わりに液晶材料8を用い、せん断速度0.5s-1の条件にてせん断配向処理を施し、フォトマスクを用いることでせん断配向処理後の液晶材料8の待機時間を場所によって変更した以外は液晶フィルム1の作製と同様にして液晶フィルム10を作製した。ガラスプレートと、下部治具側の離型シートとの間にフォトマスクを配置することで液晶材料8の中心付近にのみ紫外線が照射されるようにした。待機時間については、せん断配向処理後の待機時間を30秒とし、30秒経過後にLED光源を用いて波長365nm、強度10mW/cmの紫外線を液晶材料8の中心付近に30秒間照射した。紫外線照射後にフォトマスクを取り外し、次いで待機時間を3時間とし、3時間経過後にLED光源を用いて波長365nm、強度80mW/cmの紫外線を液晶材料8の全体に6分間照射した。
(実施例8)
[HPC誘導体7の合成]
カレンズAOIの使用量を1.29g(水酸基に対して0.2当量)及びプロピオニルクロリドの使用量を5.98g(水酸基に対して1.5当量)に変更した以外はHPC誘導体1の合成と同様にしてHPC誘導体7(以下、「HPC-AcC/PrE」とも称する。)を合成した。
H-NMRスペクトルの測定を行い、帰属したピークをもとに、HPC側鎖(水酸基中の水素原子)において、不飽和二重結合を有する基(すなわち、アクリロイル基)への置換度及びアシル基(すなわち、プロピオニル基)への置換度を算出した。
HPC誘導体3は、アクリロイル基(不飽和二重結合を有する基)への置換度は0.16であり、プロピオニル基(アシル基)への置換度は2.75(HPC-AcC/PrE(AcC:PrE=0.16:2.75))であった。
<液晶材料9の作製>
上記のようにして得たHPC誘導体7、ブチルアクリレート(BA)及びHMPPを用いて液晶材料9を作製した。具体的には、HPC誘導体7、BA及びHMPPを質量比で87.5:11.7:0.9となるようによく混合した後、わずかな時間真空脱泡して液晶材料9を作製した。
<液晶フィルム11の作製>
液晶材料8の替わりに液晶材料9を用い、せん断速度8.0s-1の条件にてせん断配向処理を施し、せん断配向処理後の液晶材料9の待機時間を変更した以外は液晶フィルム10の作製と同様にして液晶フィルム11を作製した。ガラスプレートと、下部治具側の離型シートとの間にフォトマスクを配置することで液晶材料9の中心付近にのみ紫外線が照射されるようにした。待機時間については、せん断配向処理後の待機時間を30秒とし、30秒経過後にLED光源を用いて波長365nm、強度10mW/cmの紫外線を液晶材料9の中心付近に30秒間照射した。紫外線照射後にフォトマスクを取り外し、次いで待機時間を10分間とし、10分間経過後にLED光源を用いて波長365nm、強度80mW/cmの紫外線を液晶材料9の全体に6分間照射した。
作製した液晶フィルム10及び液晶フィルム11に白色光を照射し、左円偏光の反射光を確認した。液晶フィルム10の反射波長は、右円偏光及び左円偏光ともに、約500nmであり、測定箇所によって大きな差はなかった。液晶フィルム11の反射波長は、右円偏光及び左円偏光ともに、待機時間が30秒である中心付近では525nm、待機時間が10分である外側では630nmであった。なお、せん断配向処理を行っていない状態にて、液晶フィルム10の反射波長は、502nmであり、液晶フィルム11の反射波長は、626nmであった。液晶フィルム10の中心付近及び液晶フィルム11の中心付近については中心付近以外の部分よりも波長の短い反射光がそれぞれ確認された。液晶のらせん軸がより傾斜していることで短波長シフトが確認されるため、らせん軸の傾斜は待機時間の経過によって回復することが推測される。一方、液晶フィルム10及び液晶フィルム11のそれぞれについて、中心付近及び中心付近以外の部分にて左円偏光の反射光が確認された。左円偏光の反射は複屈折増加に起因しており、複屈折の増加は待機時間が経過しても維持されやすいことが推測される。
(実施例9)
[HPC誘導体8の合成]
カレンズAOIの使用量を3.87g(水酸基に対して0.6当量)及びアセチルクロリドの使用量を14.3g(水酸基に対して4.0当量)に変更した以外はHPC誘導体5の合成と同様にしてHPC誘導体8(以下、「HPC-AcC/EtE」とも称する。)を合成した。
H-NMRスペクトルの測定を行い、帰属したピークをもとに、HPC側鎖(水酸基中の水素原子)において、不飽和二重結合を有する基(すなわち、アクリロイル基)への置換度及びアシル基(すなわち、アセチル基)への置換度を算出した。
HPC誘導体8は、アクリロイル基(不飽和二重結合を有する基)への置換度は0.14であり、アセチル基(アシル基)への置換度は2.71(HPC-AcC/EtE(AcC:EtE=0.14:2.71))であった。
<液晶材料10の作製>
上記のようにして得たHPC誘導体8、ブチルアクリレート(BA)及びHMPPを用いてHPC誘導体の濃度が77質量%である液晶材料10を作製した。
<液晶フィルム12の作製>
実施例1と同様に、レオメーター内で上記のようにして作製した液晶材料10にせん断配向処理を施し、次いでせん断配向処理後の液晶材料10を一定時間待機させた後に光を照射して液晶フィルム12を作製した。液晶フィルム12の作製条件としては、パラレルプレートとガラスプレートとの間のギャップdを100μm~800μmとし、せん断速度を0.5s-1、せん断処理時間を300秒とし、待機時間を200秒とし、紫外線照射条件を波長365nm、強度80mW/cm、照射時間6分とした。以上により、液晶材料10を硬化させて液晶フィルム12を得た。ギャップdと、得られた液晶フィルム12の厚さとの関係を表1に示す。厚さの異なる液晶フィルム12は、それぞれ液晶フィルム12-1~12-6とした。
<円偏光透過スペクトルの測定>
実施例9で得た液晶フィルム12-1~12-6を用いて、実施例1と同様にして円偏光透過スペクトルを測定した。円偏光透過スペクトルの測定結果を図13に示す。図13(a)~図13(f)は、それぞれ液晶フィルム12-6~12-1のr=3mm又はr=9mmでの右円偏光及び左円偏光のスペクトルの変化を示す図である。
液晶フィルム12-1~12-6の円偏光透過スペクトルを測定したところ、反射波長はおよそ400nmであり、液晶フィルムの厚さの減少にしたがってピーク強度は低下し、ピーク強度の低下は左円偏光において顕著であった。
次に、実施例6と同様にして液晶フィルム12-1~12-6のリタデーションを測定し、測定したリタデーションの値を液晶フィルム12-1~12-6の厚さで割ることによって液晶フィルム12-1~12-6の複屈折を求めた。図14は、液晶フィルム12-1~12-6について、平面視における中心からの距離とリタデーションとの関係を示す図である。図15は、液晶フィルム12-1~12-6について、平面視における中心からの距離と複屈折との関係を示す図である。
液晶フィルム12-1~12-6のリタデーションの値と、左右円偏光のピーク強度との関係を検討するため、左右円偏光のピーク強度の比をリタデーションの値(r=1~10でのリタデーションの値)に対してプロットした。プロットの結果を図16に示す。左右円偏光のピーク強度の比は、(I-I)/(I+I)で表され、Iは左円偏光透過スペクトルのピーク強度であり、Iは右円偏光透過スペクトルのピーク強度であり、ベースラインの透過率からピークトップの透過率を引いた値である。ここでは、波長680nmでの透過率をベースラインの透過率として用いた。
図16に示すように、リタデーションの値が200nmから増加するにつれて左円偏光の反射光の割合が徐々に増加した。リタデーションの値が300nm付近からは、リタデーションの値が増加してもピーク強度の比はほとんど変わらず、左円偏光及び右円偏光の反射光の強度はほぼ同程度であった。この結果から、青色(例えば、400nm)の左右両円偏光を同程度の強度で反射する液晶フィルムを作製するには、リタデーションの値が300nm以上とすることが望ましい、と推測される。
(実施例10)
[HPC誘導体9の合成]
カレンズAOIの使用量を2.58g(水酸基に対して0.4当量)及びアセチルクロリドの使用量を4.66g(水酸基に対して1.3当量)に変更した以外はHPC誘導体5の合成と同様にしてHPC誘導体9(以下、「HPC-AcC/EtE」とも称する。)を合成した。
H-NMRスペクトルの測定を行い、帰属したピークをもとに、HPC側鎖(水酸基中の水素原子)において、不飽和二重結合を有する基(すなわち、アクリロイル基)への置換度及びアシル基(すなわち、アセチル基)への置換度を算出した。
HPC誘導体9は、アクリロイル基(不飽和二重結合を有する基)への置換度は0.02であり、アセチル基(アシル基)への置換度は2.85(HPC-AcC/EtE(AcC:EtE=0.02:2.85))であった。
<液晶材料11の作製>
上記のようにして得たHPC誘導体9、ブチルアクリレート(BA)及びHMPPを用いてHPC誘導体の濃度が75質量%である液晶材料11を作製した。
<液晶フィルム13の作製>
実施例1と同様に、レオメーター内で上記のようにして作製した液晶材料11にせん断配向処理を施し、次いでせん断配向処理後の液晶材料11を一定時間待機させた後に光を照射して液晶フィルム13を作製した。液晶フィルム13の作製条件としては、パラレルプレートとガラスプレートとの間のギャップdを300μm又は800μmとし、せん断速度を0.5s-1、せん断処理時間を300秒とし、待機時間を200秒とし、紫外線照射条件を波長365nm、強度80mW/cm、照射時間6分とした。以上により、液晶材料11を硬化させて液晶フィルム13を得た。ギャップdを300μmとした場合を液晶フィルム13-1とし、ギャップdを800μmとした場合を液晶フィルム13-2とした。液晶フィルム13-1の厚さは339μmであり、液晶フィルム13-2の厚さは821μmであった。
<円偏光透過スペクトルの測定>
実施例10で得た液晶フィルム13-1及び13-2を用いて、実施例1と同様にして円偏光透過スペクトルを測定した。円偏光透過スペクトルの測定結果を図17に示す。図17(a)及び図17(b)は、それぞれ液晶フィルム13-1及び13-2のr=3mm又はr=9mmでの右円偏光及び左円偏光のスペクトルの変化を示す図である。
液晶フィルム13-1及び13-2の円偏光透過スペクトルを測定したところ、反射波長はおよそ540nmであり、液晶フィルムの厚さが薄くなるとピーク強度は低下した。
次に、実施例6と同様にして液晶フィルム13-1及び13-2のリタデーションを測定し、測定したリタデーションの値を液晶フィルム13-1及び13-2の厚さで割ることによって液晶フィルム13-1及び13-2の複屈折を求めた。図18は、液晶フィルム13-1及び13-2について、平面視における中心からの距離とリタデーションとの関係を示す図である。図19は、液晶フィルム13-1及び13-2について、平面視における中心からの距離と複屈折との関係を示す図である。
液晶フィルム13-1及び13-2のリタデーションの値と、左右円偏光のピーク強度との関係を検討するため、左右円偏光のピーク強度の比をリタデーションの値(r=1~10でのリタデーションの値)に対してプロットした。プロットの結果を図20に示す。図16と同様に、左右円偏光のピーク強度の比は、(I-I)/(I+I)で表される。ここでは、波長680nmでの透過率をベースラインの透過率として用いた。
図20に示すように、リタデーションの値が増加するにつれて左円偏光の反射光の割合が徐々に増加した。リタデーションの値が300nm付近からは、リタデーションの値が増加してもピーク強度の比はほとんど変わらず、左円偏光及び右円偏光の反射光の強度はほぼ同程度であった。この結果から、緑色(例えば、540nm)の左右両円偏光を同程度の強度で反射する液晶フィルムを作製するには、リタデーションの値が300nm以上とすることが望ましい、と推測される。
(実施例11)
<液晶材料12の作製>
実施例10と同様にして得たHPC誘導体9、ブチルアクリレート(BA)及びHMPPを用いてHPC誘導体の濃度が73質量%である液晶材料12を作製した。
<液晶フィルム14の作製>
実施例1と同様に、レオメーター内で上記のようにして作製した液晶材料12にせん断配向処理を施し、次いでせん断配向処理後の液晶材料12を一定時間待機させた後に光を照射して液晶フィルム14を作製した。液晶フィルム14の作製条件としては、実施例10と同様である。ギャップdを300μmとした場合を液晶フィルム14-1とし、ギャップdを800μmとした場合を液晶フィルム14-2とした。液晶フィルム14-1の厚さは345μmであり、液晶フィルム14-2の厚さは803μmであった。
<円偏光透過スペクトルの測定>
実施例11で得た液晶フィルム14-1及び14-2を用いて、実施例1と同様にして円偏光透過スペクトルを測定した。円偏光透過スペクトルの測定結果を図21に示す。図21(a)及び図21(b)は、それぞれ液晶フィルム14-1及び14-2のr=3mm又はr=9mmでの右円偏光及び左円偏光のスペクトルの変化を示す図である。
液晶フィルム14-1及び14-2の円偏光透過スペクトルを測定したところ、反射波長はおよそ610nmであり、液晶フィルムの厚さが薄くなるとピーク強度は低下した。
次に、実施例6と同様にして液晶フィルム14-1及び14-2のリタデーションを測定し、測定したリタデーションの値を液晶フィルム14-1及び14-2の厚さで割ることによって液晶フィルム14-1及び14-2の複屈折を求めた。図22は、液晶フィルム14-1及び14-2について、平面視における中心からの距離とリタデーションとの関係を示す図である。図23は、液晶フィルム14-1及び14-2について、平面視における中心からの距離と複屈折との関係を示す図である。
液晶フィルム14-1及び14-2のリタデーションの値と、左右円偏光のピーク強度との関係を検討するため、左右円偏光のピーク強度の比をリタデーションの値(r=1~10でのリタデーションの値)に対してプロットした。プロットの結果を図24に示す。図16と同様に、左右円偏光のピーク強度の比は、(I-I)/(I+I)で表される。ここでは、波長720nmでの透過率をベースラインの透過率として用いた。
図24に示すように、リタデーションの値が増加するにつれて左円偏光の反射光の割合が徐々に増加した。リタデーションの値が300nm付近からは、リタデーションの値が増加してもピーク強度の比はほとんど変わらず、左円偏光及び右円偏光の反射光の強度はほぼ同程度であった。この結果から、赤色(例えば、610nm)の左右両円偏光を同程度の強度で反射する液晶フィルムを作製するには、リタデーションの値が300nm以上とすることが望ましい、と推測される。
(実施例12)
[HPC誘導体10の合成]
HPC溶液をアルミホイルで遮光し、室温下でカレンズAOI(2-イソシアナトエチルアクリレート、昭和電工(株)製、登録商標)1.29g(水酸基に対して0.2当量)を加え、室温下、遮光中で24時間反応させた後、アセチルクロリド4.66g(水酸基に対して1.3当量)を加え、さらに22時間反応させた。
反応終了後、実施例1のHPC誘導体1を得る際の操作と同様の操作を行うことでHPC誘導体10(以下、「HPC-AcC/EtE」とも称する。)が得られた。
H-NMRスペクトルの測定を行い、帰属したピークをもとに、HPC側鎖(水酸基中の水素原子)において、不飽和二重結合を有する基(すなわち、アクリロイル基)への置換度及びアシル基(すなわち、アセチル基)への置換度を算出した。
HPC誘導体10は、アクリロイル基(不飽和二重結合を有する基)への置換度は0.03であり、アセチル基(アシル基)への置換度は2.87(HPC-AcC/EtE(AcC:EtE=0.03:2.87))であった。
<液晶材料13の作製>
上記のようにして得たHPC誘導体10、ブチルアクリレート(BA)及びHMPPを用いてHPC誘導体の濃度が78.2質量%である液晶材料13を作製した。
<液晶フィルム15の作製>
実施例1と同様に、レオメーター内で上記のようにして作製した液晶材料13にせん断配向処理を施し、次いでせん断配向処理後の液晶材料13を一定時間待機させた後に光を照射して液晶フィルム15を作製した。液晶フィルム15の作製条件としては、パラレルプレートとガラスプレートとの間のギャップdを500μmとし、せん断速度を5s-1、せん断処理時間を300秒とし、待機時間を200秒とし、紫外線照射条件を波長365nm、強度80mW/cm、照射時間6分とした。以上により、液晶材料13を硬化させて液晶フィルム15を得た。
<円偏光透過スペクトルの測定>
実施例12で得た液晶フィルム15を用いて、実施例1と同様にして円偏光透過スペクトルを測定した。円偏光透過スペクトルの測定結果を図25及び図26に示す。図25(a)及び図25(b)は、それぞれ液晶フィルム15のr=0mm、3mm、6mm又は9mmでの左円偏光及び右円偏光のスペクトルの変化を示す図である。図26は、液晶フィルム15のr=0mm~5mmでの左円偏光のスペクトルの変化を示す図である。
液晶フィルム15の円偏光透過スペクトルを測定したところ、反射波長はおよそ450nm~480nmであった。図25の(b)に示すように、サンプル全体(r=0~9mmの領域)にて右円偏光の反射ピークが確認された。一方、図25の(a)及び図26に示すように、サンプルの中心付近(r=0~3mmの領域)にて左円偏光の反射ピークが確認され、特に、r≦2mmの領域にて右円偏光の反射ピークと同程度の強度の左円偏光の反射ピークが確認された。液晶フィルム15を作製する際のせん断速度5s-1は、外周部分(r=12.5mm)のせん断速度の値であるため、r≦2mmの領域でのせん断速度は0.8s-1以下と算出される。
実施例6と同様にして液晶フィルム15のリタデーションを測定した。図27は、液晶フィルム15について、平面視における中心からの距離とリタデーションとの関係を示す図である。図27に示すように、r≦1の領域では、rの値が増加するにつれてリタデーションの値も増加し、r>1の領域では、rの値が増加するにつれてリタデーションの値が減少し、r≧6の領域にてリタデーションの値がほぼ一定となった。
図25~図27の結果から、rの増加、すなわち、せん断速度の増加による左円偏光の反射ピークの消失は、リタデーションの値の減少に起因すると推測される。リタデーションの値が300nm以上であれば、左右両円偏光を同程度の強度で反射する液晶フィルムが製造しやすくなることが推測される。r=0mmで、リタデーションの値がほぼ0の場合であっても、左円偏光の反射強度が大きい理由としては、r=0mmの位置のみが、せん断速度0s-1となり、周囲のせん断によってr=0mmの位置における液晶分子の配向が乱れていることに起因すると推測される。
(実施例13)
前述のようにして合成したHPC誘導体10を用いて、好ましい配向時間を検討した。
<液晶材料13及び14の作製>
上記のようにして得たHPC誘導体10、ブチルアクリレート(BA)及びHMPPを用いてHPC誘導体の濃度が78.2質量%である液晶材料13(実施例12の液晶材料13と同様)を作製した。
さらに、上記のようにして得たHPC誘導体10、ブチルアクリレート(BA)及びHMPPを用いてHPC誘導体の濃度が77.8質量%である液晶材料14を作製した。
<液晶フィルム16~18の作製>
実施例1と同様に、レオメーター内で上記のようにして作製した液晶材料13にせん断配向処理を施し、次いでせん断配向処理後の液晶材料13を一定時間待機させた後に光を照射して液晶フィルム16を作製した。液晶フィルム16の作製条件としては、パラレルプレートとガラスプレートとの間のギャップdを500μmとし、せん断速度を0.5s-1、せん断処理時間を300秒とし、待機時間を10秒とし、紫外線照射条件を波長365nm、強度80mW/cm、照射時間6分とした。以上により、液晶材料13を硬化させて液晶フィルム16を得た。
さらに、液晶材料14にせん断配向処理を施し、次いでせん断配向処理後の液晶材料14を一定時間待機させた後に光を照射して液晶フィルム17及び18を作製した。液晶フィルム17及び18の作製条件としては、液晶材料14を用い、かつ待機時間を100秒又は1200秒にした以外は液晶フィルム16の作製条件と同様である。なお、待機時間100秒として液晶フィルム17を作製し、待機時間1200秒として液晶フィルム18を作製した。
<円偏光透過スペクトルの測定>
実施例13で得た液晶フィルム16~18を用いて、実施例1と同様にして円偏光透過スペクトルを測定した。円偏光透過スペクトルの測定結果を図28に示す。図28(a)及び図28(b)は、液晶フィルム16~18のr=4mm又はr=9mmでの左円偏光のスペクトルの変化を示す図である。図28(c)及び図28(d)は、液晶フィルム16~18のr=4mm又はr=9mmでの右円偏光のスペクトルの変化を示す図である。
図28に示すように、配向時間の増加に伴って円偏光透過スペクトルのピークは鋭くなる傾向にあった。また、反射波長は配向時間によらずほとんど等しく、配向時間が1200秒と長い場合も液晶フィルム16~18による反射強度は維持されていた。配向時間が100秒の場合と1200秒の場合でピークの幅は大きく変わらないため、配向時間は200秒程度で十分であると推測される。
実施例6と同様にして液晶フィルム16~18のリタデーションを測定した。図29は、液晶フィルム16~18について、平面視における中心からの距離とリタデーションとの関係を示す図である。図29に示すように、配向時間が長くなった場合であっても、リタデーションの値が維持される傾向にあった。
(参考例1)
実施例1にて作製した液晶材料1にせん断配向処理を施さずに光を照射して液晶フィルム19を作製した。詳細には、離型シートを貼付したスライドガラス(2.5cm×2.5cm)に、厚さ0.5mmのPTFE製スペーサーとともに液晶材料1を挟み込み、次いで30分ほど静置して配向させた後にLED光源を用いて波長365nm、強度80mW/cmの紫外線を6分間照射して液晶フィルム19を作製した。
<円偏光透過スペクトルの測定>
参考例1で得た液晶フィルム19(液晶フィルム19の厚さ:約500μm)を用いて、円偏光透過スペクトルを測定した。参考例1における円偏光透過スペクトルの測定結果を図30に示す。図30に示すように、せん断配向処理が施されていない液晶フィルム19では、右円偏光の反射は明確に確認できたが、左円偏光の反射は確認できなかった。一方、図1及び図2に示すように、液晶材料1を用い、かつせん断配向処理が施された液晶フィルム1では、右円偏光及び左円偏光の反射を確認できていた。以上により、せん断配向処理による偏光特性の変化を確認できた。
(実施例14)
[EC誘導体1の合成]
下記スキームに従って、EC誘導体1を合成した。
窒素を充填した100mLのナスフラスコに13.3mLの脱水テトラヒドロフランを加え、次いで2.0g(モノマー単位の物質量:8.9mmol)のエチルセルロース(EC)を秤量し、脱水テトラヒドロフランに撹拌しながら溶解し、EC溶液を得た。
EC溶液をアルミホイルで遮光し、室温下でカレンズAOI(2-イソシアナトエチルアクリレート、昭和電工(株)製、登録商標)3.6g(26mmol)を加え、室温下、遮光中で24時間反応させた。
反応終了後、HPC誘導体1と同様にして精製処理を行うことで、EC誘導体1(以下、「EC-AcC」とも称する。)が得られた。
H-NMRスペクトルの測定を行い、帰属したピークをもとに、EC側鎖(水酸基中の水素原子)において、不飽和二重結合を有する基(すなわち、アクリロイル基)への置換度及びアシル基(すなわち、エチル基)への置換度を算出した。
HPC誘導体3は、アクリロイル基(不飽和二重結合を有する基)への置換度は0.05であり、エチル基(アシル基)への置換度は2.50であった。
<液晶材料Aの作製>
上記のようにして得たEC誘導体1、アクリル酸(AA)及びHMPPを用いて液晶材料Aを作製した。具体的には、EC誘導体1、AA及びHMPPを質量比で49.7:49.5:0.8となるようによく混合した後、わずかな時間真空脱泡して液晶材料Aを作製した。
<液晶フィルムAの作製>
レオメーター内で上記のようにして作製した液晶材料Aにせん断配向処理を施し、次いでせん断配向処理後の液晶材料Aを一定時間待機させた後に光を照射して液晶フィルムAを作製した。詳細には、上部治具として直径25mmのパラレルプレート、及び下部治具としてペルチェ素子を備えるガラスプレートを有し、下部治具側から紫外線を照射可能なレオメーターを準備した。上部治具及び下部治具には離型シートが貼り付けられている。25℃に調整したガラスプレート上に液晶材料Aを付与し、パラレルプレート及びガラスプレートで液晶材料Aを挟んだ。このとき、パラレルプレートとガラスプレートとの間のギャップdは500μmとした。パラレルプレート及びガラスプレートで挟んだ液晶材料Aに対してせん断速度0.2s-1の条件にてせん断配向処理を300秒間施した。せん断速度は平面視における中心からの距離に比例して増大し、本実験では、中心からの距離がもっとも離れた位置(すなわち、中心からの距離r:12.5mm)でのせん断速度を上記の値に調整した。せん断配向処理後の液晶材料Aを600秒間待機させた。待機後の液晶材料AにLED光源を用いて波長365nm、強度80mW/cmの紫外線を6分間照射した。以上により、液晶材料Aを硬化させて液晶フィルムAを得た。
<液晶フィルムBの作製>
前述の液晶フィルムAの作製にて、せん断配向処理及びその後の待機を行わずに液晶材料Aを硬化させて液晶フィルムBを得た。詳細には、離型シートを貼付したスライドガラス(2.5cm×2.5cm)に、厚さ0.5mmのPTFE製スペーサーとともに液晶材料Aを挟み込み、次いで30分ほど静置して配向させた後にLED光源を用いて波長365nm、強度80mW/cmの紫外線を6分間照射して液晶フィルムBを作製した。
<円偏光透過スペクトルの測定>
液晶フィルムA(液晶フィルムAの厚さ:約500μm)及び液晶フィルムB(液晶フィルムAの厚さ:約500μm)を用いて、液晶フィルム1と同様にして円偏光透過スペクトルを測定した。円偏光透過スペクトルの測定結果を図31及び図32に示す。
図31に示すように、せん断配向処理が施された液晶フィルムAでは、右円偏光及び左円偏光を反射することが確認できた。一方、図32に示すように、せん断配向処理が施されていない液晶フィルムBでは、左円偏光は確認できたが、右円偏光は確認できなかった。
液晶フィルムBの反射波長は、489nmであった。
通常、EC誘導体1のアクリル酸溶液を用いて液晶フィルムを作製した場合、図32に示すように、左円偏光のみを反射する液晶フィルムが得られる。一方、EC誘導体1のアクリル酸溶液を用い、かつせん断配向処理を施して液晶フィルムを作製した場合、図31に示すように、左円偏光及び右円偏光の両方を反射する液晶フィルムを得ることができる。
以上の結果から、HPC誘導体又はEC誘導体を用い、せん断配向処理を施して液晶フィルムを作製することで左円偏光及び右円偏光の両方を反射する液晶フィルムが得られることが示された。HPC誘導体又はEC誘導体以外のセルロース誘導体を用いた場合であっても、せん断配向処理を施して液晶フィルムを作製することで左円偏光及び右円偏光の両方を反射する液晶フィルムが得られることが推測される。

Claims (11)

  1. 水酸基を含み、前記水酸基の一部が不飽和二重結合を有する基及びアルキル基で置換されたセルロース誘導体。
  2. 前記不飽和二重結合を有する基は、(メタ)アクリロイル基を有する基である請求項1に記載のセルロース誘導体。
  3. 前記アルキル基はエチル基であり、エチルセルロース骨格を含む請求項1に記載のセルロース誘導体。
  4. 水酸基の少なくとも一部がアシル基で置換されたセルロース誘導体と、
    不飽和二重結合を有する基を含む重合性モノマーと、
    を含む、左円偏光及び右円偏光の両偏光反射特性を有する液晶フィルムを形成するための液晶材料。
  5. 前記セルロース誘導体は、ヒドロキシアルキルセルロース骨格を含む請求項4に記載の液晶材料。
  6. 請求項1に記載のセルロース誘導体と、
    不飽和二重結合を有する基を含む重合性モノマーと、
    を含む液晶材料。
  7. 左円偏光及び右円偏光の両偏光反射特性を有する液晶フィルムを形成するための請求項6に記載の液晶材料。
  8. 請求項4又は請求項7の液晶材料を硬化してなり、左円偏光及び右円偏光の両偏光反射特性を有する液晶フィルム。
  9. 請求項4~請求項7のいずれか1項に記載の液晶材料を硬化してなり、リタデーションが200nm以上である領域を含む液晶フィルム。
  10. 請求項4~請求項7のいずれか1項に記載の液晶材料を硬化してなり、厚さが200μm以上である液晶フィルム。
  11. 請求項4~請求項7のいずれか1項に記載の液晶材料にせん断力を加えるせん断工程と、
    せん断工程後の前記液晶材料を放置して配向させる配向工程と、
    配向工程後の前記液晶材料を硬化させる硬化工程と、
    を含む液晶フィルムの製造方法。
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