JP2021181564A - 液晶膜形成用組成物、液晶膜、センサー、及び光学素子 - Google Patents

液晶膜形成用組成物、液晶膜、センサー、及び光学素子 Download PDF

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Seiichi Furuumi
響 下川
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Masashi Fukawa
直人 岩田
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Abstract

【課題】従来のドライ膜に比べ、劣化耐性に優れ、かつ、外力で例えばひずみが生じた際の波長シフト(色調変化)の大きい液晶膜の形成に適した液晶膜形成用組成物を提供する。【解決手段】水酸基の一部が不飽和二重結合を有する基に置換されたヒドロキシアルキルセルロースと、水を含む液体と、を含有する液晶膜形成用組成物である。【選択図】なし

Description

本開示は、液晶膜形成用組成物、液晶膜、センサー、及び光学素子に関する。
液晶材料は、液晶ディスプレイ等の表示材料に用いられるほか、液晶材料の持つ光学特性を利用して、フォトニックデバイスへの適応が進められている。液晶材料として、例えば、セルロース誘導体が知られている。
セルロース誘導体は、構造中の側鎖部位を適切な修飾を施すことにより、コレステリック液晶相由来のブラッグ反射を示す。その一例として、液晶性を備えたセルロース誘導体として、ヒドロキシプロピルセルロースが有する水酸基の水素原子が、カルバメート基(ウレタン結合)を有する置換基で置換されたセルロース誘導体が知られている。
また、特定セルロース誘導体と不飽和二重結合を有する基を分子内に有するモノマーとを含有し、ゴム弾性と室温で可視波長領域に反射特性(反射色)を示すリオトロピック液晶材料が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このリオトロピック液晶材料では、特定セルロース誘導体に由来の不飽和二重結合を含む側鎖と、重合性モノマーに含まれる不飽和二重結合と、が反応して架橋構造を形成することで、得られる液晶膜はゴム弾性を示し、外力(例えば機械的圧力)によりブラッグ反射の波長シフト、即ち色相変化が得られる。
国際公開第2019/151360号
従来の液晶材料は、セルロース誘導体の水酸基をアシル基等で置換し架橋構造が形成されているため、膜中に包含される溶媒含量の少ない液晶弾性膜(ドライ膜)として用いられるものに限られている。
また、ゴム弾性を示す液晶弾性膜は、液晶相を誘起するためにセルロース誘導体の側鎖を脂肪酸でエステル化されており、エステル部位の加水分解に起因した反射特性の劣化解消は用途の拡大に寄与するものと期待される。
本開示は、上記に鑑みてなされたものである。
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、従来のドライ膜に比べ、劣化耐性に優れ、かつ、外力で例えばひずみが生じた際の波長シフト(色調変化)の大きい液晶膜の形成に適した液晶膜形成用組成物を提供することにある。
本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、従来のドライ膜に比べ、劣化耐性に優れ、かつ、外力で例えばひずみが生じた際の波長シフト(色調変化)の大きい液晶膜、並びに、センサー及び光学素子を提供することにある。
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 水酸基の一部が不飽和二重結合を有する基に置換されたヒドロキシアルキルセルロースと、水を含む液体と、を含有する液晶膜形成用組成物である。
<2> 前記ヒドロキシアルキルセルロースの濃度が、液晶膜形成用組成物の全質量に対して、60質量%以上である前記<1>に記載の液晶膜形成用組成物である。
<3> 前記液体が、更に、水以外の極性溶媒を含む前記<1>又は前記<2>に記載の液晶膜形成用組成物である。
<4> 前記極性溶媒が、グリセリンを含む前記<3>に記載の液晶膜形成用組成物である。
<5> 前記液体は、水及びグリセリンの合計含有量に対するグリセリンの比率が5質量%〜45質量%である前記<4>に記載の液晶膜形成用組成物である。
<6> 前記ヒドロキシアルキルセルロースは、下記式1で求められる水酸基の置換度が、0.01〜0.4である前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載の液晶膜形成用組成物である。
水酸基の置換度=モノマー単位当たりに存在する不飽和二重結合を有する基の合計個数/3
・・・式1
<7> 前記ヒドロキシアルキルセルロースは、下記一般式(1A)で表される構造単位を有し、かつ、下記式(2)で求められる水酸基の置換度が0.01〜0.4である、前記<1>〜前記<6>のいずれか1つに記載の液晶膜形成用組成物である。
水酸基の置換度=R11、R12及びR13における不飽和二重結合を有する基の合計個数/3
・・・式2
Figure 2021181564
式(1A)において、X11、X12及びX13は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基、−(R14−O)−、又は、−C(=O)−R15−を表し、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、不飽和二重結合を有する基(以下、「架橋性基」ともいう。)、又は疎水基を表し、R14及びR15は、それぞれ独立にアルキレン基を表し、hは1以上10以下の整数を表し、n11は2以上800以下の整数を表す。
<8> 前記ヒドロキシアルキルセルロースが、ヒドロキシプロピルセルロースである前記<1>〜前記<7>のいずれか1つに記載の液晶膜形成用組成物である。
<9> 前記不飽和二重結合を有する基が、ハロゲン化アクリロイル、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、及び無水アクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物に由来する基である前記<7>又は前記<8>に記載の液晶膜形成用組成物である。
<10> 前記不飽和二重結合を有する基が、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートに由来する基である前記<7>〜前記<9>のいずれか1つに記載の液晶膜形成用組成物である。
<11> リオトロピック液晶膜の形成に用いられる前記<1>〜前記<10>のいずれか1つに記載の液晶膜形成用組成物である。
<12> 前記<1>〜前記<11>のいずれか1つに記載の液晶膜形成用組成物の架橋物である液晶膜である。
<13> 前記<12>に記載の液晶膜を備えたセンサーである。
<14> 前記<13>に記載のセンサーを備えた光学素子である。
本発明の一実施形態によれば、従来のドライ膜に比べ、劣化耐性に優れ、かつ、外力で例えばひずみが生じた際の波長シフト(色調変化)の大きい液晶膜の形成に適した液晶膜形成用組成物が提供される。
本発明の他の実施形態によれば、従来のドライ膜に比べ、劣化耐性に優れ、かつ、外力で例えばひずみが生じた際の波長シフト(色調変化)の大きい液晶膜、並びに、センサー及び光学素子が提供される。
液晶セルにおける液晶膜のUV光照射前後の透過率を示す透過スペクトルである。なお、実線がUV光照射前を示し、破線がUV光照射後を示す。 HPC−AcCを用いた液晶膜の乾燥硬化前後での圧縮過程における透過率を示す透過スペクトルである。 HPC−AcEを用いた液晶膜の乾燥硬化前後での圧縮過程における透過率を示す透過スペクトルである。 HPC−bAcCを用いた液晶膜の乾燥硬化前後での圧縮過程における透過率を示す透過スペクトルである。 HPC−MAcCを用いた液晶膜の乾燥硬化の前後での圧縮過程における透過率を示す透過スペクトルである。 グリセリン及び水を含有する液晶膜の乾燥後の圧縮過程における規格化波長とひずみとの関係を示す相関図である。 HPC誘導体の種類を変えた液晶膜の圧縮−解放の過程における膜の強度を示すS−Sカーブであり、(a)及び(b)は乾燥前の膜の強度を示し、(c)及び(d)は乾燥後の膜の強度を示す。 (a)及び(b)はAcC=0.03の液晶膜のUV光照射前後の透過率を示す透過スペクトルであり、(c)及び(d)はAcC=0.15の液晶膜のUV光照射前後の透過率を示す透過スペクトルであり、(e)及び(f)はAcC=0.31の液晶膜のUV光照射前後の透過率を示す透過スペクトルである。なお、実線がUV光照射前を示し、破線がUV光照射後を示す。 AcC導入量の異なるHPC−AcCを用いた液晶膜の乾燥後の圧縮過程における規格化波長とひずみとの関係を示す相関図である。 AcC導入量の異なる液晶膜の圧縮−解放の過程における膜の強度を示すS−Sカーブであり、(a)及び(b)は乾燥前の膜の強度を示し、(c)及び(d)は乾燥後の膜の強度を示す。 HPC−AcC濃度の異なる液晶膜のUV光照射前後の透過率を示す透過スペクトルのうち、(a)及び(b)はHPC−AcC濃度が66質量%の場合の透過率を示す。なお、実線がUV光照射前を示し、破線がUV光照射後を示す。 HPC−AcC濃度の異なる液晶膜のUV光照射前後の透過率を示す透過スペクトルのうち、(c)及び(d)はHPC−AcC濃度が68質量%の場合の透過率を示す。なお、実線がUV光照射前を示し、破線がUV光照射後を示す。 HPC−AcC濃度の異なる液晶膜のUV光照射前後の透過率を示す透過スペクトルのうち、(e)及び(f)はHPC−AcC濃度が70質量%の場合の透過率を示す。なお、実線がUV光照射前を示し、破線がUV光照射後を示す。 HPC−AcC濃度の異なる液晶膜の乾燥後の圧縮過程における規格化波長とひずみとの関係を示す相関図である。 HPC−AcC濃度の異なる液晶膜の圧縮−解放の過程における膜の強度を示すS−Sカーブであり、(a)は乾燥前の膜の強度を示し、(b)は乾燥後の膜の強度を示す。 グリセリンの含有濃度の異なる液晶膜のUV光照射前後の透過率を示す透過スペクトルである。なお、実線がUV光照射前を示し、破線がUV光照射後を示す。 グリセリンの含有濃度の異なる液晶膜の乾燥後の圧縮過程における規格化波長とひずみとの関係を示す相関図である。 グリセリンの含有濃度の異なる液晶膜の圧縮−解放の過程における膜の強度を示すS−Sカーブである。 (A)は実施例で用いた圧縮チューニングセルの概略断面図であり、(B)は(A)の概略斜視図である。 (a)は、第5弾性膜の主面を撮影した反射像の写真(撮影倍率:1倍)である。(b)は、第8弾性膜の主面を撮影した反射像の写真(撮影倍率:1倍)である。 (a)は第5弾性膜の主面の中央部の反射スペクトルの測定結果を示す。(b)は、第8弾性膜の主面の中央部の反射スペクトルの測定結果を示す。(c)は、第5弾性膜の主面の縁部の反射スペクトルの測定結果を示す。(d)は、第8弾性膜の主面の縁部の反射スペクトルの測定結果を示す。
以下、本開示の液晶膜形成用組成物、並びに、液晶膜、センサー及び光学素子について詳細に説明する。
本開示において、数値範囲を示す「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示において段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の成分の合計量を意味する。
本明細書における「固形分」の語は、溶媒を除く成分を意味し、溶剤以外の低分子量成分などの液状の成分も本明細書における「固形分」に含まれる。
また、本明細書では、アクリル及びメタクリルの双方或いはいずれかを「(メタ)アクリル」と表記する場合がある。例えば「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の双方を含むものである。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、置換又は無置換を明記していない化合物については、本開示における効果を損なわない範囲で、任意の置換基を有していてもよい。
なお、本開示において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
<液晶膜形成用組成物>
本開示の液晶膜形成用組成物は、水酸基の一部が不飽和二重結合を有する基に置換されたヒドロキシアルキルセルロースと、水を含む液体と、を含有する。本開示の液晶膜形成用組成物は、重合開始剤を含有することが好ましく、必要に応じて、更に添加剤等の他の成分を含有していてもよい。
従来から、例えば特許文献1のように、側鎖を嵩高い構造にして疎水化することで螺旋構造の安定化が図られ、架橋構造を形成することで液晶膜がゴム弾性を呈し、外力(例えば機械的圧力)が与えられた際にブラッグ反射の波長シフトが発現するリオトロピック液晶材料が提案されている。しかしながら、従来の液晶材料は、セルロース誘導体の水酸基をアシル基等で置換して架橋構造を形成するため、膜中に包含される溶媒量が少ない、いわゆるドライ状の膜(ドライ膜)として用いられてきた。目的とする使用態様によっては、膜中に水等の溶媒を包含する、いわゆるウェット状の膜(ウェット膜)が要求される場合がある。
一方、従来の液晶材料は、液晶相を誘起するためにセルロース誘導体の側鎖を脂肪酸でエステル化する必要があることから、エステル構造を有するが故に加水分解反応によって反射特性が経時的に劣化する場合がある。
本開示は、上記に鑑み、ヒドロキシアルキルセルロース(HAC)の側鎖にある水酸基の一部を不飽和二重結合を有する基に置換するに留め(即ち、側鎖の水酸基を意図的に残し)、側鎖の一部をカルバメート化するだけで安定な化学構造を有し、かつ、水を含む液体を包含させたウェット状の液晶膜に構成する。これにより、エステル構造に起因した劣化を低減して耐久性に優れ、かつ、従来のようなHACの疎水化及び架橋度が低く抑えられたため、HACを適度に架橋するが水溶性を維持し、外力が与えられた際(例えば圧縮時)のひずみにより波長シフト(色調変化)を発現させることができる。本開示の液晶膜形成用組成物により得られる液晶膜は、従来の例えば特許文献1のようなドライ膜とは異なり、水等の液体を包含するウェット状のリオトロピック・コレステリック液晶膜である。
本開示におけるヒドロキシアルキルセルロースは、後述の通り、未置換の水酸基を適度に含み、それ自体が液晶膜形成用組成物中において水溶性が維持される。したがって、本開示の液晶膜形成用組成物の形態としては、ヒドロキシアルキルセルロースと水を含む液体とが相溶した溶液であることが好ましい。
(ヒドロキシアルキルセルロース)
本開示の液晶膜形成用組成物は、水酸基の一部が不飽和二重結合を有する基に置換されたヒドロキシアルキルセルロースの少なくとも一種を含有する。
本開示におけるヒドロキシアルキルセルロースは、構造単位の側鎖に有する水酸基の一部が不飽和二重結合を有する基に置換されている。本開示では、ヒドロキシアルキルセルロースの構造単位の側鎖に有する水酸基の一部をカルバメート化し、側鎖の水酸基を意図的に残すことで、安定な化学構造を有している。これにより、エステル構造に起因した加水分解反応による劣化が抑えられ、耐久性に優れる。
具体的には、ヒドロキシアルキルセルロースは、下記式1で求められる水酸基の置換度が、0.01〜0.4の範囲であることが好ましい。水酸基の置換度が0.4以下であることは、ヒドロキシアルキルセルロース中のカルバメート化された水酸基の数が少ないことを表す。
水酸基の置換度=モノマー単位当たりに存在する不飽和二重結合を有する基の合計個数/3
・・・式1
水酸基の置換度とは、ヒドロキシアルキルセルロースの構造単位中にある3つの水酸基のうち、水酸基の一部が不飽和二重結合を有する基に置換された程度を指す指標であり、具体的には、不飽和二重結合を有する基で置換された平均個数(好ましくは0.4以下)を意味する。構造単位とは、ポリマーを構成しているモノマー単位(具体的には、D−グルコピラノース(β−グルコース)由来の構造単位)を指す。
水酸基の置換度が0.01以上であることは、不飽和二重結合を有する基が積極的に導入されていることを示す。また、水酸基の置換度が0.4以下であると、不飽和二重結合を有する基が弾性を発現する程度に導入されたセルロース誘導体であるといえる。
中でも、水酸基の置換度は、0.1〜0.4の範囲が好ましく、0.15〜0.35の範囲がより好ましい。更には、0.15〜0.25の範囲とすることも好ましい。
具体的には、水酸基の置換度は、ヒドロキシアルキルセルロースが後述する一般式(1A)で表される分子構造を有する場合は、一般式(1A)中、R11、R12、及びR13の位置に導入された「不飽和二重結合を有する基」の平均個数である。
即ち、ヒドロキシアルキルセルロースは、一般式(1A)で表される構造単位を有し、かつ、下記式(2)で求められる水酸基の置換度が0.01〜0.4である場合が好ましい。
水酸基の置換度=R11、R12及びR13における不飽和二重結合を有する基の合計個数/3
・・・式2
本開示におけるヒドロキシアルキルセルロースは、構造単位中に水酸基を含んでおり、水溶性を有している。かかる観点から、構造単位あたりの水酸基の平均個数としては、2.4個以上であることが好ましく、2.7個以上であることがより好ましい。
ヒドロキシアルキルセルロースとしては、下記一般式(1A)で表される分子構造を有するセルロース誘導体であることが好ましい。
なお、一般式(1A)で表される分子構造において、[ ]は、構造単位(モノマー単位)であることを表す。
Figure 2021181564
一般式(1A)において、X11、X12及びX13は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基、−(R14−O)−、又は、−C(=O)−R15−を表し、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、不飽和二重結合を有する基(架橋性基)、又は疎水基を表し、R14及びR15は、それぞれ独立にアルキレン基を表し、hは1以上10以下の整数を表し、n11は2以上800以下の整数を表す。
一般式(1A)において、X11、X12及びX13で表されるアルキレン基としては特に制限されないが、直鎖又は分岐の炭素数1〜18(好ましくは1〜12、より好ましくは1〜4)のアルキレン基、環状の炭素数3〜18(好ましくは3〜12)のシクロアルキレン基が挙げられる。直鎖又は分岐のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基、tert−ブチレン基、n−ペンチレン基、イソペンチレン基等が挙げられる。環状のアルキレン基としては、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。
一般式(1A)において、X11、X12及びX13で表される−(R14−O)−は、アルキレンオキシ基(アルキレンエーテル基)又はポリアルキレンオキシ基(ポリアルキレンエーテル基)である。−(R14−O)−で表される基におけるアルキレン基(−R14−)としては、前述で例示したアルキレン基(X11、X12及びX13で表されるアルキレン基)と同様のものが挙げられる。−(R14−O)−としては、例えば、エチレンオキシ基、ポリエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基等が挙げられる。
一般式(1A)において、hとしては、架橋によって適度な弾性を有する液晶膜を得る観点から、好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下、さらに好ましくは1以上3以下であり、特に好ましくは1である。
一般式(1A)において、X11、X12及びX13で表される−C(=O)−R15−で表される基におけるアルキレン基(−R15−)としては、前述で例示したアルキレン基(X11、X12及びX13で表されるアルキレン基)と同様のものが挙げられる。−C(=O)−R15−としては、例えば、−C(=O)−CH−、−C(=O)−C−、−C(=O)−C−等が挙げられる。
なお、上述のアルキレン基、−(R14−O)−、及び、−C(=O)−R15−は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、ハロゲン原子が挙げられる。なお、置換基が2以上ある場合には、それぞれの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
また、本開示におけるヒドロキシアルキルセルロースでは、X11、X12及びX13は、X11、X12及びX13の全てが単結合を表す構造を有しないことが好ましい。中でも、X11、X12及びX13は、以下の不等式を満たす構造であることがより好ましい。
単結合以外の基を表すX11、X12及びX13の個数 ≧ 2×n11
一般式(1A)において、R11、R12及びR13における不飽和二重結合を有する基としては特に制限されないが、例えば、後述する一般式(1C)で表される基、ビニル基、アリル基、ビニルオキシ基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、ゲラニル基、オレイル基、シクロアルケニル基(例えば、2−シクロペンテン−1−イル基、2−シクロヘキセン−1−イル基)、ビニルベンジル基、シンナミル基等が挙げられる。
11、R12及びR13における疎水性基としては、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数3〜18のシクロアルキル基、炭素数6〜18のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数2〜18の直鎖若しくは分岐のアシル基、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルコキシ基、−COOR1Aで表されるカルボン酸エステル基、又はハロゲン原子が好ましい。上記R1Aとしては、炭素数1〜12の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアリール基が挙げられる。
疎水性基の中でも、セルロース誘導体の合成のし易さの観点から、炭素数2〜18のアシル基(直鎖、分岐のいずれも可。以下同様。)がより好ましく、炭素数2〜8のアシル基がより好ましく、炭素数2〜4のアシル基がさらに好ましく、炭素数4のアシル基(すなわちブチリル基)が特に好ましい。
炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基は、無置換であっても置換されていてもよい。無置換の炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。置換されていてもよい炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルキル基における置換基としては、前述で例示した置換基と同様のものが挙げられる。
炭素数3〜18のシクロアルキル基は、無置換であっても置換されていてもよい。無置換の炭素数3〜18のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基等が挙げられる。置換されていてもよい炭素数3〜18のシクロアルキル基における置換基としては、前述で例示した置換基と同様のものが挙げられる。
炭素数6〜18のアリール基は、無置換であっても置換されていてもよい。無置換の炭素数6〜18のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。置換されていてもよい炭素数6〜18のアリール基における置換基としては、前述の置換基と同様のものが挙げられる。
炭素数7〜20のアラルキル基は、無置換であっても置換されていてもよい。無置換の炭素数7〜20のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルエテニル基等が挙げられる。置換されていてもよい炭素数7〜20のアラルキル基における置換基としては、前述で例示した置換基と同様のものが挙げられる。
炭素数2〜18の直鎖若しくは分岐のアシル基は、無置換であっても置換されていてもよい。無置換の炭素数2〜18の直鎖若しくは分岐のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、ベンゾイル基等が挙げられる。置換されていてもよい炭素数2〜18の直鎖若しくは分岐のアシル基における置換基としては、前述で例示した置換基と同様のものが挙げられる。
炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルコキシ基は、無置換であっても置換されていてもよい。無置換の炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。置換されていてもよい炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルコキシ基における置換基としては、前述で例示した置換基と同様のものが挙げられる。
−COOR1Aで表されるカルボン酸エステル基は、無置換であっても置換されていてもよい。無置換のカルボン酸エステル基としては、具体的には、炭素数2〜12の直鎖若しくは分岐のアルキルエステル基(メチルエステル基、エチルエステル基等)、炭素数4〜12のシクロアルキルエステル基(シクロプロピルエステル基、シクロブチルエステル基等)、炭素数7〜12のアリールエステル基(フェニルエステル基等)が挙げられる。
置換されていてもよいカルボン酸エステル基の上記R1A(炭素数1〜12の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、炭素数6〜12のアリール基)における置換基としては、前述で例示した置換基と同様のものが挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
一般式(1A)において、n11としては、架橋によって適度な弾性を有する液晶膜を得る観点から、30以上800以下であり、好ましくは30以上400以下、より好ましくは30以上300以下である。
n11が2以上である場合、複数の構造単位は、同一でもよいし、X11、X12及びX13並びにR11、R12及びR13の少なくとも1つが異なることにより互いに異なる構造単位であってもよい。
一般式(1A)において、R11、R12及びR13で表される不飽和二重結合を有する基の好ましい態様については後述する。
前記一般式(1A)で表される分子構造は、下記一般式(1A−1)で表される分子構造であることが好ましい。
Figure 2021181564
一般式(1A−1)において、Rは、それぞれ独立に、−CH−、−CH−CH−、又は、−CH−CH(CH)−を表し、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子、不飽和二重結合を有する基、又は、疎水性基を表し、m1、t1及びr1は、それぞれ独立に、0以上10以下の整数を表し、n13は、2以上800以下の整数を表す。
式中の3つのRは、全てが同一の基を表す態様でもよいし、3つのRのうち、1つが他の2つと異なる態様でもよい。例えば、全てのRが−CH−CH−又は−CH−CH(CH)−を表す態様でもよいし、1つのRが−CH−を表し、他の2つのRが−CH−CH(CH)−を表す態様でもよい。
一般式(1A−1)において、R11、R12及びR13は、前述の一般式(1A)におけるR11、R12及びR13と同義である。
一般式(1A−1)において、m1、t1及びr1としては、セルロース誘導体の合成のし易さの観点から、それぞれ独立に、好ましくは0以上8以下、より好ましくは0以上5以下、さらに好ましくは0以上3以下が好ましい。
一般式(1A−1)において、n13は、前述の一般式(1A)におけるn11と同義であり、好ましい範囲も同様である。即ち、一般式(1A−1)において、n13としては、架橋によって適度な弾性を有する液晶膜を得る観点から、30以上800以下であり、好ましくは30以上400以下、より好ましくは30以上300以下である。n13が2以上である場合、複数の構造単位は、同一でもよいし、互いに異なる構造であってもよい。
一般式(1A−1)において、全てのRが−CH−CH(CH)−を表す場合の分子構造は、以下の一般式(1a)で表される。
Figure 2021181564
一般式(1a)において、R11、R12、R13、及びn13は、一般式(1A−1)におけるR11、R12、R13、及びn13と同義である。また、m11、t11、r11は、一般式(1A−1)におけるm1、t1、r1と同義である。
一般式(1A−1)において、Rが−CH−CH−を表す場合の分子構造は、以下の一般式(1b)で表される。
Figure 2021181564
一般式(1b)において、R11、R12、R13、及びn13は、一般式(1A−1)におけるR11、R12、R13、及びn13と同義である。また、m12、t12、r12は、一般式(1A−1)におけるm1、t1、r1と同義である。
−不飽和二重結合を有する基−
次に、不飽和二重結合を有する基(架橋性基)について説明する。
一般式(1A)において、R11、R12及びR13で表される不飽和二重結合を有する基としては、架橋によって適度な弾性を有する液晶膜を得る観点から、下記一般式(1C)で表される基が好ましい。
Figure 2021181564
一般式(1C)において、R1Cは、水素原子又はメチル基を表し、X18は、単結合、又は、炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルキレン基、炭素数3〜18のシクロアルキレン基、炭素数6〜18のアリーレン基、−O−、−NH−、−S−、及び−C(=O)−からなる群より選ばれる1つ若しくは2つ以上を連結した連結基を表し、p1は、1又は2の整数を表す。但し、X18の価数は、p1+1である。
**は、上記一般式(1A)中、X11、X12、若しくはX13と結合する部分、又は、X11、X12、若しくはX13が単結合の場合はセルロース骨格の2位、3位、若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。また、**は、上記一般式(1B)中、X16若しくはX17と結合する部分、又は、X16若しくはX17が単結合の場合はセルロース骨格の3位若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。
一般式(1C)において、X18で表される炭素数1〜18の直鎖若しくは分岐のアルキレン基、及び、炭素数3〜18のシクロアルキレン基としては、前述の一般式(1A)におけるX11、X12及びX13で表されるアルキレン基と同様のものが挙げられる。
一般式(1C)において、X18で表される炭素数6〜18のアリーレン基としては特に制限はないが、例えばフェニレン基、ナフタレン基が挙げられる。
なお、上述のアルキレン基、直鎖若しくは分岐のアルキレン基、シクロアルキレン基及び、アリーレン基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、前述で例示した置換基と同様のものが挙げられる。
一般式(1C)において、X18で表される−O−、−NH−、−S−、及び−C(=O)−からなる群より選ばれる1つ若しくは2つ以上を連結した連結基としては特に制限はないが、例えば−C(=O)−NH−(CH−O−、−C(=O)−NH−(CH−O−(CH−O−、−C(=O)−NH−C(CH)−(CH−O−)が挙げられる。
一般式(1C)において、X18としては、単結合、又は、−C(=O)−NH−(CH−O−が好ましい。
なお、一般式(1C)で表される基において、R1Cが水素原子又はメチル基であり、X18が単結合であり、p1が1である基は、(メタ)アクリロイル基である。
一般式(1C)において、p1は、1であることが好ましい。
一般式(1C)で表される基の好ましい態様としては、後述する式(1C−1)〜(1C−6)で表される基が挙げられる。なお、一般式(1C)で表される基の具体例については後述する。
一般式(1A)で表される分子構造を有するセルロース誘導体の好ましい態様は、一般式(1a)で表される分子構造を有するセルロース誘導体、又は、一般式(1b)で表される分子構造を有するセルロース誘導体である。具体的には、一般式(1a)において、疎水性基(R11、R12又はR13)が、炭素数2〜4のアシル基(特に好ましくはブチリル基)であって、不飽和二重結合を有する基(R11、R12又はR13)が、(メタ)アクリロイル基、又は、−C(=O)−NH−(CH−O−C(=O)−CH=CHであって、m11、t11及びr11が、それぞれ独立に、0以上3以下の整数であって、n13が、2以上300以下である態様;一般式(1b)において、疎水性基(R11、R12又はR13)が、炭素数2〜4のアシル基(特に好ましくはブチリル基)であって、不飽和二重結合を有する基(R11、R12又はR13)が、(メタ)アクリロイル基、又は、−C(=O)−NH−(CH−O−C(=O)−CH=CHであって、m12、t12及びr12が、それぞれ独立に、0以上3以下の整数であって、n13が、2以上300以下である態様である。
以下に、一般式(1C)で表される基の一例(不飽和二重結合を有する基の一例)を示す。一般式(1C)で表される基はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、下記一般式(1C−1)〜(1C−6)中、**は、結合位置を表す。
Figure 2021181564
Figure 2021181564
なお、一般式(1C−5)で表される基は、一般式(1C)で表される基において、X18が下記一般式(1C−7)で表される3価の連結基であり、R1Cが水素原子であり、p1が2である基に該当する。なお、一般式(1C−7)中、***は、上記一般式(1C−5)における(COCH=CH)のCOに結合する炭素原子と結合する部分を表す。
Figure 2021181564
上記一般式(1C)で表される基(不飽和二重結合を有する基の一例)の中でも、架橋によって適度な弾性を有する液晶膜を得る観点から、一般式(1C−1)、(1C−3)、(1C−5)、(1C−6)で表される基が好ましく、一般式(1C−1)、(1C−3)で表される基がより好ましい。
上記のうち、不飽和二重結合を有する基としては、ハロゲン化アクリロイル(好ましくは塩化アクリロイル)、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、及び無水アクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物に由来する基が好ましく、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートに由来する基がより好ましい。
本開示におけるヒドロキシアルキルセルロースとしては、ヒドロキシプロピルセルロースであることが好ましい。
(水酸基の置換度)
水酸基の置換度は、核磁気共鳴(H−NMR)法により、各置換基が有する特徴的なプロトンピークの積分値から算出される。具体的には、ヒドロキシアルキルセルロースを重クロロホルムに溶解させた溶液について、以下の測定条件でH−NMRスペクトルを測定し、測定されたH−NMRスペクトルに基づき、不飽和二重結合を有する基に由来するプロトンピーク、セルロース骨格由来のプロトンピーク(例えばβ−グルコースモノマー単位にあるプロトンピーク等)、セルロース骨格がヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の場合、HPC由来のプロトンピーク鎖中のヒドロキシプロピル基が有するメチン基のプロトンピーク、等の積分値に基づき算出される。
構造単位(モノマー単位)あたりの水酸基の平均個数は、上記方法で算出された水酸基の置換度を3から減ずることで算出される。
−測定条件−
装置 :BRUKER製:ULTRASHIELD400PLUS(型番)
周波数:400MHz
(重量平均分子量)
ヒドロキシアルキルセルロースの重量平均分子量は、架橋によって適度な弾性を有する液晶膜を得る観点から、2万以上20万以下が好ましく、より好ましくは5万以上20万以下、更に好ましくは10万以上20万以下である。
重量平均分子量は、ゲルバーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により算出(ポリスチレン標準)される値である。詳細には、以下の測定条件で得られた測定結果からポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出される。
−測定条件−
装置 :東ソー社製:HLC−8220GPC(型番)
溶剤 :テトラヒドロフラン
カラム :東ソー社製:0021815 TSKgel SuperMultiporeHZ−N(粒子径3μm、内径4.6mm×長さ15cm)
流速 :0.15mL/分
試料濃度:2.0質量%
注入量 :10μL
検出器 :示差屈折検出器
温度 :40℃
以下、一般式(1A)で表される分子構造の具体例を示す。
なお、一般式(1A)で表される分子構造は、これらに制限されるものではない。分子構造中のt1、r1、m1、及びn13は、一般式(1A)の好ましい態様である一般式(1A−1)におけるt1、r1、m1、及びn13とそれぞれ同義であり、ヒドロキシアルキルセルロースの重量平均分子量の範囲で適宜選択すればよい。
Figure 2021181564
前記ヒドロキシアルキルセルロースの濃度としては、外力が与えられた際の波長シフト(色相変化)がより大きくなる点で、液晶膜形成用組成物の全質量に対して、60質量%以上であることが好ましい。また、同様の理由から、ヒドロキシアルキルセルロースの濃度の上限は、75質量%であることが好ましい。中でも、ヒドロキシアルキルセルロースの濃度は、60質量%〜70質量%がより好ましく、65質量%〜70質量%が更に好ましい。
(水を含む液体)
本開示の液晶膜形成用組成物は、水を含む液体を含有する。液晶膜を形成した際に、液晶膜中に水を含む液体が包含されるので、ウェット状の液晶膜が得られる。
水を含む液体とは、水のみでもよいし、水と他の液体との混合液体であってもよい。
他の液体としては、組成物及び作製される液晶膜の安定化の観点から、水と相溶性を有する液体が好ましい。水と相溶性であるとは、25℃の水1gに0.1g以上溶解する水溶性を有していることをいう。
他の液体としては、極性溶媒が好ましく、更には、乾燥後(即ち、水が揮発した後)においても、作製された膜がウェット状を維持し得る観点から、沸点が150℃以上の不揮発性溶媒がより好ましく、沸点が200℃以上の不揮発性溶媒がより好ましい。他の液体の具体例としては、アルコール、エーテル、イオン性液体等を挙げることができ、沸点が150℃以上(更には200℃以上)のアルコール、及び沸点が150℃以上(更には200℃以上)のエーテルからなる群より選ばれる溶媒がより好ましい。
アルコールとしては、2価以上のアルコールが好ましく、2価アルコール(例:エチレングリコール(沸点(bp)198℃)、1,3−プロパンジオール(bp215℃)、1,2−ブタンジオール(bp193℃)、1,2−ヘキサンジオール(bp223℃)等)、3価アルコール(例:グリセリン(bp290℃)等)が好適に挙げられる。中でも、グリセリンを含むことが好ましい。
エーテルとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、又はグリセリンのアルキルエーテル等が挙げられる。具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のアルキルエーテルが挙げられる
イオン性液体としては、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−アリル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド等が挙げられる。
他の液体を含む場合、他の液体及び水の混合液体中における他の液体の比率としては、質量基準で、0質量%超え45質量%以下の範囲が好ましく、5質量%〜45質量%の範囲がより好ましい。他の液体として例えばグリセリンを含む場合、他の液体及び水の混合液体中における他の液体の比率は、20質量%〜45質量%の範囲がより好ましく、30質量%〜45質量%の範囲が更に好ましく、40質量%〜45質量%の範囲が特に好ましい。
他の液体の含有比率が上記範囲内であると、外力が与えられた際の波長シフト(色相変化)が大きくなり、乾燥後の膜が柔軟性を有して波長シフトが急峻に発現しやすくなる。
水を含む液体の液晶膜形成用組成物中における含有量としては、液晶膜形成用組成物の全質量に対して、10質量%〜60質量%の範囲が好ましく、20質量%〜50質量%の範囲がより好ましい。
(重合開始剤)
本開示の液晶膜形成用組成物は、重合開始剤を含有することができる。
重合開始剤としては、公知の重合開始剤を用いることができ、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤が挙げられる。中でも、光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(HMPP)、アセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−4’−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノン(HHEMPP)、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノプロピオフェノン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−4’−モルホリノブチロフェノン、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1−ヒドロピロール−1−イル)フェニル)チタノセン等が挙げられる。
重合開始剤の液晶膜形成用組成物中における含有量としては、液晶膜形成用組成物の全質量に対して、0.03質量%〜0.06質量%の範囲が好ましく、0.03質量%〜0.05質量%の範囲がより好ましい。
(他の成分)
本開示の液晶膜形成用組成物は、本開示の効果を著しく損なわない範囲で他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、重合性モノマー、架橋剤、難燃剤、相溶化剤、酸化防止剤、離型剤(剥離剤)、耐光剤、耐候剤、改質剤、帯電防止剤、加水分解防止剤等が挙げられる。
本開示の液晶膜形成用組成物は、液晶膜の形成に用いられるものであり、リオトロピック液晶膜の形成に好適であり、リオトロピック・コレステリック液晶膜の形成により好適である。
<液晶膜>
本開示の液晶膜は、既述の本開示の液晶膜形成用組成物の架橋物である。
本開示の液晶膜は、本開示の液晶膜形成用組成物の架橋物であり、膜中に3次元構造を有している。本開示の液晶膜は、リオトロピック液晶膜であり、リオトロピック・コレステリック液晶膜であることが好ましい。
液晶膜は、ヒドロキシアルキルセルロースの構造単位中の不飽和二重結合を有する基の重合反応により三次元架橋構造が形成される。本開示では、ヒドロキシアルキルセルロースの構造単位中の水酸基の一部に不飽和二重結合を有する基が置換して架橋反応が進行するので、適度な架橋がなされ、膜に適度の強度を与えつつも、液晶膜は柔軟性を維持している。
これにより、液晶膜は、外力が与えられた際のひずみに敏感にかつ顕著に応答して色相変化を呈する。つまり、例えば圧縮力が液晶膜に与えられた場合に液晶膜におけるブラッグ反射する波長が変化することで圧縮力に対応した反射光(色相の変化)が得られる。
3次元架橋構造を有していることの確認は、溶媒(例えばアセトン)に対する架橋前後の液晶膜の溶解の可否によって行える。架橋後の液晶膜は、3次元架橋構造を有するため、溶媒には溶解しない。これに対して、3次元架橋構造を有しない架橋前の液晶膜は、溶媒に溶解する。液晶膜の溶媒への溶解の有無から3次元架橋構造が形成されていることを確認することができる。
−液晶膜の作製−
液晶膜の作製は、基板上に本開示の液晶膜形成用組成物を付与する工程(以下、「液晶材料付与工程」ともいう。)と、基板上に付与された液晶膜形成用組成物を熱処理する工程(以下、「熱処理工程」ともいう。)又は紫外線を照射する工程(以下、「紫外線照射工程」ともいう。)と、を有する方法により行うことができる。
(液晶材料付与工程)
液晶材料付与工程は、基板上に液晶膜形成用組成物を付与する工程である。
基板としては特に制限されず、目的に応じて通常用いられるものから適宜選択することができる。基板としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板(例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板、ポリカーボネート(PC)基板、ポリイミド(PI)基板等)、アルミ基板やステンレス基板等の金属基板、シリコン基板等の半導体基板等を用いることができる。
基板の厚さ、形状は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することが好ましい。
基板上への液晶材料の付与方法としては、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法等の塗布法;インクジェット法;スクリーン印刷法;減圧注入法等の注入法;等が挙げられる。
(熱処理工程)
熱処理工程は、基板上に付与された液晶膜形成用組成物に対して熱処理を施し、液晶膜形成用組成物を硬化させる工程である。
熱処理工程により、架橋前のヒドロキシアルキルセルロースが有する不飽和二重結合が開裂して重合反応して架橋構造が形成される。本開示では、液晶膜は、柔軟性を有しつつ、弾性を発現する。
熱処理方法は、特に制限されず、例えば、公知の加熱装置を用いた熱処理方法であってもよい。加熱装置としては、特に制限はなく、例えば、オーブン、赤外線ヒーター及びホットプレートが挙げられる。
熱処理の温度としては、適度なゴム弾性を有する観点、及び、ブラッグ反射の波長で配向を固定化する観点から、好ましくは25℃以上130℃以下、より好ましくは25℃以上120℃以下、さらに好ましくは25℃以上110℃以下である。熱処理の温度は、液晶材料が上記範囲になるように制御される。
(紫外線照射工程)
紫外線照射工程は、基板上に付与された液晶膜形成用組成物に対して紫外線を照射し、液晶膜形成用組成物を硬化させる工程である。
紫外線照射工程により、架橋前のヒドロキシアルキルセルロースが有する不飽和二重結合が開裂して重合反応して架橋構造が形成される。本開示では、液晶膜は、柔軟性を有しつつ、弾性を発現する。
紫外線を照射する際の温度(以下、UV照射温度)は、0℃〜100℃が好ましく、より好ましくは5℃〜50℃であり、さらに好ましくは10℃〜40℃である。UV照射温度は、液晶材料が上記範囲になるように制御される。
紫外線の照射強度(以下、UV照射強度)は、1mW/cm〜20mW/cmが好ましく、より好ましくは5mW/cm〜20mW/cmであり、さらに好ましくは10mW/cm〜20mW/cmである。
紫外線の照射時間(以下、UV照射時間)は、5秒〜40分であることが好ましく、5分〜20分であることがより好ましい。
紫外線照射工程では、UV照射温度とUV照射強度とを組み合わせて制御することによって、異なるブラッグ反射を呈する液晶膜を得ることができる。
UV照射温度を上記範囲に制御することによって、セルロース誘導体のリオトロピック液晶性が発現され、目的とする色に調整しやすくなり、所望の色が得られやすくなる。
UV照射温度を上記範囲に制御し、かつ、UV照射強度(好ましくはUV照射時間)を上記範囲に制御することで、UV照射温度によって得られた色を固定化することもできる。目的とする箇所に目的とする色を呈する多色からなる液晶膜が得られる。
多色からなる液晶膜(即ち、異なるブラッグ反射を呈する膜)は、例えばフォトマスクを用いることで容易に得ることができる。
(基板上に配向膜を形成する工程)
液晶膜の製造は、基板上に配向膜を形成する工程(以下、配向膜形成工程)を有してもよいが、本開示においては必ずしも配向膜の形成は不可欠とされるものではない。配向膜形成工程を設ける場合は、例えば液晶材料付与工程の前に有してもよい。基板上に配向膜を形成することにより、熱処理工程又は紫外線照射工程において、ブラッグ反射の波長での配向の固定化が容易に行える。
以上の工程を経ることにより、液晶膜を得ることができる。
液晶膜の厚さは特に制限されない。
液晶膜の厚さとしては、優れた液晶膜を得る観点から、50μm〜2000μmが好ましく、より好ましくは100μm〜1500μmであり、さらに好ましくは200μm〜1000μmである。
液晶膜は、基板から剥離して用いてもよいし、基板上に形成したまま用いてもよい。
本開示の液晶膜は、例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、反射防止フィルム、光拡散フィルム、輝度向上フィルム、防眩フィルム等の光学フィルム;物体のひずみ、伸縮、振動、衝撃等に起因する変形を、反射の波長(好ましくは反射色)によって検出するセンサー(圧力センサー、ひずみセンサー、伸縮センサー、振動センサー、衝撃センサー等);脈波、呼吸、心弾動等の生体情報を、反射の波長(好ましくは反射色)によって検出するウェアラブルセンサー;上記光学フィルムを利用した光学素子;前記以外の光学素子;液晶表示素子;等に搭載して利用することができる。
本開示の液晶膜は、適度な弾性と柔軟性とを兼ね備え、外力(例えば機械的圧力)が加えられた際のひずみによって外力(例えば機械的圧力)に対応する波長の反射光を得ることができる。特に、本開示の液晶膜は、膜中に水を含む液体が包含されたウェット状の膜であるので、指紋等の生体情報を検出するセンサーの用途に適している。
また、本開示の液晶膜は、外力(例えば機械的圧力)が加えられてひずみが生じた場合に発現する反射光を利用する光学素子に搭載して利用されることが好ましい。
<センサー>
本開示のセンサーは、既述の本開示の液晶膜を備えている。
本開示のセンサーとしては、圧力センサー、ひずみセンサー、伸縮センサー、振動センサー、衝撃センサー等が挙げられる。
センサーとしては、物体のひずみを検出するひずみセンサーが好ましい。
ひずみセンサーは、本開示の液晶膜を備えるため、物体に生じたひずみに起因する変形を反射の波長(好ましくは反射色)によって検出することができる。例えば、ひずみセンサーを、ひずみが生じやすい物体(例えば、橋梁、建物等の構造物)の箇所に予め設置しておくことによって、物体のひずみの程度を検出することができる。また、ひずみセンサーは、そのひずみ(変形)に起因する外力(例えば機械的圧力)を可視的に、すなわち反射の波長(好ましくは反射色)によって検出することができる。
センサーとしては、生体情報を検出するウェアラブルセンサーであることも好ましい。
ウェアラブルセンサーとは、身につけて使用できる比較的小型のセンサーを意味する。
ウェアラブルセンサーは、本開示の液晶膜を備えるため、生体情報を反射の波長(好ましくは反射色)によって検出することができる。例えば、ひずみセンサーを、生体情報を取得したい箇所(例えば肌)に直接貼り付ける若しくは装着することにより、又は衣類、下着、靴下、手袋、ネクタイ、ハンカチ、マフラー、時計、メガネ、靴、スリッパ、帽子等に貼り付ける若しくは装着することにより、生体情報(脈波、呼吸、心弾動、体動(筋肉の動き等)など)を可視的(即ち、反射の波長(好ましくは反射色))によって取得することができる。
<光学素子>
本開示の光学素子は、既述の本開示のセンサーを備えている。
例えば、人為的に外力(例えば機械的圧力)を加える、又は、自然に外力(例えば機械的圧力)がかかる箇所に、光学素子を予め設置することにより、その外力(例えば機械的圧力)に対応して異なる反射光が得られる。このような光学素子の用途としては、玩具、非常用光源、インテリア(置物、棚等)、建築部材(床、壁、階段等)、食器、容器などに用いることが挙げられる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
(HPC誘導体の合成)
以下の方法により架橋性基を有するHPC誘導体を合成した。
−HPC−AcCの合成−
下記構造(R:水素原子又はCHCH(OR)CH、n:繰り返し数)を含み、分子量が28000であるヒドロキシプロピルセルロース(HPC;富士フイルム和光純薬株式会社製、製品名;ヒドロキシプロピルセルロース2.0〜2.9、製品番号;082−07925)を用意した。HPCを減圧(0.2気圧)下、室温(25℃)で一晩(24時間以上)乾燥した。
Figure 2021181564
次いで、窒素が充填された200mLナスフラスコに3.0gのHPCを秤量し、15mLの超脱水アセトン(関東化学株式会社)を加えて混合し、撹拌しながら溶解し、HPC溶液を得た。
このとき、β−グルコースモノマーに由来する構成単位におけるヒドロキシ基のモル数は、MS値(β−グルコースモノマーに由来する構成単位当たりのヒドロキシプロピル基の平均個数)から23mmolと算出された。
HPC溶液をアルミホイルで遮光し、室温下でカレンズAOI(2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(下記構造)、昭和電工株式会社)適量(0.01eq)を加えて室温下、遮光した状態のまま、5日間攪拌を行った。
Figure 2021181564
5日間の攪拌を終了した後、エバポレーターを用いてアセトンを除去して乾燥させることで、HPC誘導体であるHPC−AcC(アクリロイルカルバメート化度(AcC;水酸基の置換度)=0.03)を得た。HPC−AcCの収量は2.9gであった。
H−NMRスペクトルの測定)
上記で合成したHPC−AcCのH−NMRスペクトルを測定した。
HPC−AcCに由来するピークとして、5.8ppm、6.1ppm及び6.4ppm付近にアクリロイル基の二重結合におけるプロトンのピークが認められ、4.7ppm〜5.2ppm付近に末端のヒドロキシプロピル基のメチン基のピークが認められた。また、2.7ppm〜4.5ppm付近にβ−グルコースモノマーユニットにあるプロトン、側鎖のヒドロキシプロピル基が有するメチン基のプロトンのピーク(HPC骨格由来するプロトンピーク)が認められた。
H−NMRスペクトルから、4.7ppm〜5.2ppmのピークは、末端のヒドロキシプロピル基がカルバメート化又はエステル化した場合のメチン基のプロトンと、β−グルコースモノマーユニットの2位又は3位がカルバメート化又はエステル化した場合のメチン基のプロトンと考えられる。
結果、HPC−AcCは、HPCの側鎖にある水酸基の水素原子がCH=CH−C(=O)−O−(CH−NHC(=O)−(アクリロイルエチルカルバメート基)で置換された化合物である。
即ち、HPC−AcCは、一般式(1A)において、R11、R12及びR13の一部がRNHCO−(R:CH=CH−C(=O)−O−(CH−)であり(他の一部は水素原子を表す)、X11、X12及びX13はそれぞれ独立に単結合又は(−CH−CH(CH)−O−)〔h=1〜10の整数〕であり、n11=70である分子構造を有するHPC誘導体である。
HPC−AcCを構成するn11個(=70)の構造単位には、構造の異なる複数種が混在して含まれていた。
上記ピークをもとに、HPC側鎖(水酸基中の水素原子)において、アクリロイルエチルカルバメート基(即ち、不飽和二重結合を有する基)への置換度を算出した。結果、アクリロイルエチルカルバメート基への置換度(水酸基の置換度)は0.03であった。
−HPC−AcEの合成−
上記「−HPC誘導体1の合成−」において、カレンズAOIを同量の塩化アクリロイル(下記構造)に代えたこと以外、同様にしてHPC誘導体であるHPC−AcE(アクリロイルエステル化度(AcE)=0.03,0.09;水酸基の置換度)を得た。HPC−AcEの収量は2.9gであった。
なお、HPC−AcEは、AcE=0.03の誘導体が後述する紫外線照射によって固定化されず硬化膜が得られにくいため、AcE=0.09の誘導体を合成した。
Figure 2021181564
−HPC−MAcCの合成−
上記「−HPC誘導体1の合成−」において、カレンズAOIを同量のカレンズMOI(2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(下記構造)、昭和電工株式会社)に代えたこと以外、同様にしてHPC誘導体であるHPC−MAcC(メタクリロイルカルバメート化度(MAcC)=0.03;水酸基の置換度)を得た。HPC−MAcCの収量は2.9gであった。
Figure 2021181564
−HPC−bAcCの合成−
上記「−HPC誘導体1の合成−」において、カレンズAOIを同量のカレンズBEI(1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(下記構造)、昭和電工株式会社)に代えたこと以外、同様にしてHPC誘導体であるHPC−bAcC(ビスアクリロイルカルバメート化度(bAcC)=0.03;水酸基の置換度)を得た。HPC−bAcCの収量は2.9gであった。
Figure 2021181564
(実施例1−1)
<液晶セルの作製>
−液晶膜形成用組成物1の調製−
2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルプロピオフェノン(HHEMPP;下記構造を有する水溶性の光重合開始剤)1質量部と、水600質量部と、を混合することによりHHEMPPを水に溶解し、開始剤水溶液1を調製した。
上記で合成したHPC−AcCを64質量部と、開始剤水溶液1を36質量部と、を混合して液晶膜形成用組成物1−1を調製した。
Figure 2021181564
−液晶セルの作製−
室温(25℃)下、市販の2枚のスライドガラス(基板)の間に、上記で得られた液晶膜形成用組成物1を挟み込み、紫外線(光源:水銀キセノンランプ、光学フィルター:UV−35/UV−D36A、波長:365nm)を基板の両側からそれぞれ10分/片面ずつ照射した。このようにして、膜厚500μmの液晶膜を有する液晶セルを作製した。
(実施例1−2)
次に、HPC−AcCを、HPC−AcE(AcE=0.03)に代えたこと以外は、実施例1−1と同様にして、膜厚500μmの液晶膜を有する液晶セルを作製した。
(実施例1−3)
次に、HPC−AcCを、HPC−MAcC(MAcC=0.03)に代えたこと以外は、実施例1−1と同様にして、膜厚500μmの液晶膜を有する液晶セルを作製した。
(実施例1−4)
次に、HPC−AcCを、HPC−bAcC(bAcC=0.03)に代えたこと以外は、実施例1−1と同様にして、膜厚500μmの液晶膜を有する液晶セルを作製した。
<紫外線照射前後における透過スペクトルの測定>
実施例1−1〜実施例1−4で作製した液晶セルを用い、液晶セルを室温(25℃)で波長365nmの紫外線(以下、UV光)を10分間照射する前後における透過スペクトルをそれぞれ測定した。測定結果を図1の(a)、(c)、(e)、及び(g)に示す。
なお、図1は、液晶セルにおける液晶膜のUV光照射前後の透過スペクトルを示す。
<圧縮時における波長のシフト変化(色相変化)>
液晶セルにおける液晶膜の透過スペクトルを以下の条件で測定した。
実施例1−1〜実施例1−4で作製した液晶セルにおける液晶膜の厚みを測定した。その後、図17(A)に示すように、液晶セルを自作の圧縮チューニングセル(図17参照)にセットした。自作の圧縮チューニングセル(図17参照)は、3個の精密マイクロメータヘッドによって液晶膜の膜厚を数百nmで制御できる。自作の圧縮チューニングセル(図17参照)を用いて30μmずつ液晶セルを厚み方向へ圧縮し、液晶膜にひずみを加えた。小型ファイバマルチチャンネル分光器(Ocean Optics社製、型番;USB−4000)を用いて、30μm毎に透過スペクトルを測定することで、圧縮時における波長のシフト変化を測定した。詳しくは、小型ファイバマルチチャンネル分光器は、白色光源部と、検出部とを備える。白色光源部及び検出部は、白色光源部と検出部との間に圧縮チューニングセルが位置するように配置されている。具体的に、白色光源部は、小型ファイバマルチチャンネル分光器にセットされた液晶膜に対して、精密マイクロメータヘッド側(図17(A)の図中の上側)に位置する。検出部は、小型ファイバマルチチャンネル分光器にセットされた液晶膜に対して、精密マイクロメータヘッド側とは反対側(図17(A)の図中の下側)に位置する。白色光源部は一般的なハロゲン光源であり、おおよそが360nmから2.4μmまでの広帯域の波長の光を発光する。検出部は、白色光源部から発光された光であって、自作の圧縮チューニングセルにセットされた液晶セルを透過した光を検出する。これにより、特定の膜厚に制御された液晶膜の透過スペクトルを得た。測定結果を図2〜図5の各(a)、(c)に示す。
なお、液晶膜は、直径4mm、膜厚500μmの円形状であり、初期状態の面積は4πmmであった。また、図2〜図5は、HPC−AcC、HPC−AcE、HPC−bAcC、又はHPC−MAcCを用いた液晶膜の乾燥硬化の前後での圧縮過程における透過スペクトルを示す。乾燥硬化は、室温で24時間の条件で行った。詳しくは、図2〜図5の各々は、圧縮チューニングセル(図17参照)を用いて、液晶膜の膜厚を500μm(無圧縮)、470μm、440μm、410μm、380μm、350μm、320μm、290μm、260μm、230μm、200μm、又は170μmとしたときの液晶膜の透過スペクトルの測定値を重ね合わせた図である。
図2〜図5中、「ε=0」は、液晶膜にひずみがないことを示し、「ε=0.2」は、液晶膜の膜厚を170μmとしたときの液晶膜のひずみを示し、矢印は、波長シフトを示す。
<解放時における膜強度(S−Sカーブ)>
上記の「圧縮時における波長のシフト変化」での圧縮状態を解放した際の乾燥硬化の前後における膜強度の変化を以下の方法で測定し、S−Sカーブを作成した。
液晶膜を、圧縮引張試験機((株)島津製作所製、型番;オートグラフAGS−X)を用いて、ロードセル荷重1000N、圧縮速度は0.5mm/分で液晶膜のひずみ(ε)が0.2となるように圧縮した。その後、液晶膜に圧縮力をかけずに液晶膜のひずみ(ε)が0になるまで液晶膜を解放した。この際、圧縮引張試験機((株)島津製作所製、型番;オートグラフAGS−X)を用いて、液晶膜の膜強度を連続的に測定した。
結果を図7の(a)、(c)に示す。なお、図7は、圧縮−解放におけるS−Sカーブを示す。図7の(a)は、乾燥前の液晶膜の膜強度を示す。図7の(c)は、乾燥後の液晶膜の膜強度を示す。
(実施例2−1)
<液晶セルの作製>
−液晶膜形成用組成物1の調製−
HHEMPP 1質量部と水 600質量部とを混合することによりHHEMPPを水に溶解した水溶液を調製し、これに更に、グリセリン 150質量部(水:グリセリン[質量比]=80:20)を混合して、開始剤水溶液2とした。
上記で合成したHPC−AcCを64質量部と、開始剤水溶液2を36質量部と、を混合して液晶膜形成用組成物2−1を調製した。
−液晶セルの作製−
実施例1−1において、液晶膜形成用組成物1−1を液晶膜形成用組成物2−1に代えたこと以外、実施例1−1と同様にして、膜厚500μmの液晶膜を有する液晶セルを作製した。
(実施例2−2)
次に、HPC−AcCを、HPC−AcE(AcE=0.09)に代えたこと以外は、実施例2−1と同様にして、膜厚500μmの液晶膜を有する液晶セルを作製した。
(実施例2−3)
次に、HPC−AcCを、HPC−MAcC(MAcC=0.03)に代えたこと以外は、実施例2−1と同様にして、膜厚500μmの液晶膜を有する液晶セルを作製した。
(実施例2−4)
次に、HPC−AcCを、HPC−bAcC(bAcC=0.03)に代えたこと以外は、実施例2−1と同様にして、膜厚500μmの液晶膜を有する液晶セルを作製した。
<紫外線照射前後における透過スペクトルの測定>
実施例2−1〜2−4で作製した液晶セルを用い、液晶セルを室温(25℃)で波長365nmの紫外線(UV)を10分間照射する前後における透過スペクトルをそれぞれ測定した。測定結果を図1の(b)、(d)、(f)、及び(h)に示す。
<圧縮時における波長のシフト変化(色相変化)>
実施例2−1〜実施例2−4で作製した液晶セルにおける液晶膜の、圧縮時における波長のシフト変化を、実施例1−1等と同様にして測定した。測定結果を図2〜図5の各(b)、(d)に示す。
<ひずみ>
実施例2−1〜実施例2−4で作製した液晶セルについて、3個の精密マイクロメータヘッドによって液晶膜の膜厚を数百nmで制御できる自作の圧縮チューニングセル(図17参照)を用い、液晶セルの両側より機械的圧力を加えて生じる乾燥後の液晶膜のひずみ(Strain)を測定した。
そして、乾燥後の液晶膜のひずみ(Strain)に対する、機械的圧力による圧縮前の波長λに対する圧縮後の波長λの比(λ/λ;規格化された波長)をプロットし、回帰直線を求めた。
結果を図6に示す。
なお、図6は、グリセリン及び水を含有する液晶膜の乾燥後の圧縮過程における規格化波長とひずみとの関係を示す相関図である。
<解放時における膜強度(S−Sカーブ)>
上記の「圧縮時における波長のシフト変化」での圧縮状態を解放した際の乾燥硬化の前後における膜強度の変化を実施例1−1等と同様にして測定し、S−Sカーブを作成した。乾燥硬化は、上述した<圧縮時における波長のシフト変化(色相変化)>における乾燥硬化と同様にして行った。測定結果を図7の(b)、(d)に示す。図7(b)は、乾燥硬化前の液晶膜の膜強度を示す。図7(d)は、乾燥硬化後の液晶膜の膜強度を示す。
(考察1)
実施例1−1〜実施例1−4及び実施例2−1〜実施例2−4で作製した液晶セルについて、UV照射前後における波長400nm〜900nmの範囲での透過率を測定したところ、図1に示す透過スペクトルが得られた。図1から、HPC−AcCを用いた液晶膜では、グリセリンの混合の有無及びUV硬化の前後において著しい変化は見られなかった。一方、HPC−AcE、HPC−bAcC又はHPC−MAcCを用いた液晶膜では、UV硬化前後での変化は殆ど見られないものの、グリセリンの混合によって透過率が著しく低下し、吸収ピークが波長800nm以上の近赤外域から波長600nm〜750nm付近の可視光域に短波長化したことが分かる。
次に、不飽和二重結合を有する基(架橋性基)を変化させた各HPC誘導体(HPC−AcC、HPC−AcE、HPC−bAcC又はHPC−MAcC)を用いた液晶膜の乾燥前後での圧縮過程における透過スペクトルを図2〜図5に示す。例えば、図2(a)と図2(c)とを対比すると、図2(c)の矢印(ベクトル)の大きさは、図2(a)の矢印(ベクトル)よりも小さい。そのため、いずれの液晶膜も、乾燥させて水を揮発させることによって圧縮の強さを変化させた際の波長シフト(色相変化)が小さくなることがわかる。また、グリセリン及び水を含有する液晶膜は、水のみを含有する液晶膜に比べて、乾燥後の圧縮による波長シフトは大きい。
また、図6は、グリセリン及び水を含有する液晶膜の乾燥後の圧縮過程における規格化波長とひずみとの相関を示す。HPC―AcCの液晶膜のStrainに対するNormalized Wavelengthの傾きは、図6に示すように、HPC―bAcC、HPC―MAcC、及びHPC―AcEの各々の液晶膜の傾きよりも大きい。そのため、図6から明らかなように、HPC−AcCが乾燥後の圧縮過程における波長シフトが最も大きい。外力を受けた際に力の変化が色の変化として敏感にかつ顕著に現れる液晶膜であるほど、実用化(センサー等への適用)に適していると考えられる。
図7は、架橋性基を変化させた各HPC誘導体(HPC−AcC、HPC−AcE、HPC−bAcC又はHPC−MAcC)を用いた液晶膜について、グリセリン含有の有無を含め、乾燥前後での圧縮−解放過程におけるS−Sカーブを示す。図7の(a)及び(b)は、乾燥前の膜の強度を示す。図7の(c)及び(d)は、乾燥後の膜の強度を示す。
各液晶膜のstressは、図7(a)及び図7(b)では1MPa未満であったのに対し、図7(c)及び図7(d)では2MPa超であった。そのため、いずれの液晶膜も、乾燥させることで硬化することが認められた。
水のみを含有する液晶膜と、グリセリン及び水を含有する液晶膜と、を対比すると、乾燥前の液晶膜では図7(a)及び図7(b)に示すように、双方に大きな差異は見られないものの、乾燥後の液晶膜では図7(c)及び図7(d)に示すように、双方に差異が認められた。また、HPC−MAcC、HPC−bAcC、及びHPC−AcCの各々の乾燥後の液晶膜のstressは、図7(d)では4MPa未満であったのに対し、図7(c)では4MPa超であった。更に、HPC−AcEの乾燥後の液晶膜のstressは、図7(d)では2MPa以下であったのに対し、図7(c)では2MPa超であった。即ち、HPC誘導体の如何によらず、グリセリン及び水を含有する液晶膜は、水のみを含有する液晶に比べて、軟らかい膜が得られていることが分かる。
膜の軟化は、外力を受けた際に力の変化が色の変化として敏感にかつ顕著に現れる液晶膜を得る観点から重要であると考えられる。かかる観点から、リオトロピック・コレステリック液晶材料としては、水に加えてグリセリンを含有した液晶膜は有用であることが実証された。
(実施例3)
上記「−HPC−AcCの合成−」において、HPC−AcCにおけるアクリロイルカルバメート化度(AcC;水酸基の置換度)を0.03から0.15、0.31に変更した以外は同様にして、アクリロイルカルバメート化度の異なるHPC−AcCを合成した。そして、実施例1−1及び実施例2−1において、AcC=0.03、0.15、0.31の3種のHPC−AcCを用いた液晶膜を有する液晶セルを用意した。
<紫外線照射前後における透過スペクトルの測定>
上記3種の液晶セルを用い、液晶セルを室温(25℃)で波長365nmの紫外線(UV)を10分間照射する前後における透過スペクトルをそれぞれ測定した。測定結果を図8に示す。
なお、図8は、各液晶セルにおける液晶膜のUV光照射前後の透過スペクトルを示す。
<圧縮時における波長のシフト変化(色相変化)>
AcC=0.03、0.15、0.31の3種のHPC−AcCを用いた液晶膜の、圧縮時における波長のシフト変化を、実施例1−1等と同様にして測定した。
<ひずみ>
上記3種の液晶セルについて、実施例2−1等と同様にして、乾燥後の液晶膜のひずみ(Strain)を測定し、回帰直線を求めた。結果を図9に示す。
図9は、AcC導入量の異なるHPC−AcCを用いた液晶膜(水:グリセリン=80:20)の乾燥後の圧縮過程における規格化波長とひずみとの相関を示す。
<解放時における膜強度(S−Sカーブ)>
上記の「圧縮時における波長のシフト変化」での圧縮状態を解放した際の乾燥硬化の前後における膜強度の変化を実施例1−1等と同様にして測定し、S−Sカーブを作成した。測定結果を図10に示す。
(考察2)
図8に示すように、UV硬化前後での変化は殆ど見られないものの、グリセリンの混合によって透過率が著しく低下し、吸収ピークが波長800nm以上の近赤外域から波長600nm〜750nm付近の可視光域に短波長化したことが分かる。
液晶膜の乾燥前後での圧縮過程における透過スペクトルについては図示しないが、図2と同様、グリセリン及び水を含有する乾燥後の液晶膜は、水のみを含有する乾燥後の液晶膜に比べて、乾燥後の圧縮による波長シフトは大きかった。
また、図9から明らかなように、AcC=0.31であるHPC−AcCは、他のHPC−AcCに比べて、乾燥後の圧縮過程における波長シフトの向上効果が著しいことが分かる。上記3種の液晶セルの中では、AcC=0.31であるHPC−AcCを用いた液晶膜を有する液晶セルが好適である。
図10は、3種の液晶膜について、AcC導入量の異なるHPC−AcCを用いた液晶膜(水:グリセリン=80:20)の乾燥前後での圧縮−圧縮解放の過程におけるS−Sカーブを示す。図10の(a)及び(b)は乾燥前の膜の強度を示す。
HPC−AcCの液晶膜のStressについて、図10の(a)及び(b)に示すように、AcC=0.03はAcC=0.15よりも低く、AcC=0.15はAcC=0.31よりも低かった。そのため、図10から、水のみを含有する液晶膜、及びグリセリン及び水を含有する液晶膜は、乾燥前において、いずれもAcCの導入量が多いほど硬い膜となることがわかる。
また、乾燥後においては、双方に大きな差異は見られないものの、AcCの導入量が多いほどstressが低くなっているので、軟らかい膜が得られていること分かる。
(実施例4)
実施例1−1及び実施例2−1において、液晶膜形成用組成物1−1を調製に用いたHPC−AcCの含有比率を64質量部(64質量%)から66質量%、68質量%、又は70質量%に変更したこと以外は、実施例1−1及び実施例2−1と同様にして、HPC−AcCの含有濃度の異なる3種の液晶セルを用意した。
<紫外線照射前後における透過スペクトルの測定>
上記3種の液晶セルを用い、液晶セルを室温(25℃)で波長365nmの紫外線(UV)を10分間照射する前後における透過スペクトルをそれぞれ測定した。測定結果を図11A、図11B及び図11Cに示す。
なお、図11A、図11B及び図11Cは、HPC−AcC濃度の異なる液晶膜のUV光照射前後の透過スペクトルを示す。
<圧縮時における波長のシフト変化(色相変化)>
上記3種の液晶セルにおける液晶膜の、圧縮時における波長のシフト変化を、実施例1−1等と同様にして測定した。
<ひずみ>
上記3種の液晶セルについて、実施例2−1等と同様にして、乾燥後の液晶膜のひずみ(Strain)を測定し、回帰直線を求めた。結果を図12に示す。
図12は、HPC−AcC濃度の異なる液晶膜(水:グリセリン=80:20)の乾燥後の圧縮過程における規格化波長とひずみとの相関を示す。
<解放時における膜強度(S−Sカーブ)>
上記の「圧縮時における波長のシフト変化」での圧縮状態を解放した際の乾燥硬化の前後における膜強度の変化を実施例1−1等と同様にして測定し、S−Sカーブを作成した。測定結果を図13に示す。
(考察3)
図11A、図11B及び図11Cから明らかなように、ポリマーであるHPC−AcCの濃度が高いほど、ピーク波長が短波長側へシフトしていることがわかる。ピーク波長とは、図11A〜図11Cにおいて、透過率(Transmittance)が極小を示す波長(Wavelength)を示す。そして、グリセリンの混合によって、ピーク波長が更に短波長側にシフトしている。
液晶膜の乾燥前後での圧縮過程における透過スペクトルについては図示しないが、図2と同様、グリセリン及び水を含有する液晶膜は、水のみを含有する液晶膜に比べて、乾燥後の圧縮による波長シフトは大きかった。
また、図12から明らかなように、HPC−AcCの濃度が低い液晶セルは、他の液晶セルに比べて、乾燥後の圧縮過程における波長シフトの向上効果が著しいことが分かる。これは、乾燥後における膜中に残留するグリセリンの濃度に依存するものと考えられる。上記3種の液晶セルの中では、HPC−AcCの濃度が66質量%である液晶セルが好適である。
図13は、3種の液晶セルについて、HPC−AcC濃度の異なる液晶膜(水:グリセリン=80:20)の乾燥前後での圧縮−圧縮解放の過程におけるS−Sカーブを示す。図13から分かるように、HPC−AcC濃度が高いほど液晶膜は硬く、乾燥後においてもこの傾向が保たれていた。
(実施例5)
実施例2−1において、液晶膜形成用組成物2−1を調製に用いたグリセリンの混合比率を20質量%から0質量%、10質量%、30質量%、又は40質量%に変更したこと以外は、実施例2−1と同様にして、グリセリンの含有濃度の異なる4種の液晶セルを用意した。そして、グリセリンの含有濃度の異なる5種(グリセリンの混合比率=0質量%、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%)の液晶セルを用いて、以下の測定及び評価を行った。
<紫外線照射前後における透過スペクトルの測定>
上記5種の液晶セルを用い、液晶セルを室温(25℃)で波長365nmの紫外線(UV)を10分間照射する前後における透過スペクトルをそれぞれ測定した。測定結果を図14に示す。
なお、図14は、グリセリンの含有濃度の異なる液晶膜のUV光照射前後の透過スペクトルを示す。
<圧縮時における波長のシフト変化(色相変化)>
上記3種の液晶セルにおける液晶膜の、圧縮時における波長のシフト変化を、実施例1−1等と同様にして測定した。
<ひずみ>
上記5種の液晶セルについて、実施例2−1等と同様にして、乾燥後の液晶膜のひずみ(Strain)を測定し、回帰直線を求めた。結果を図15に示す。
図15は、グリセリンの含有濃度の異なる液晶膜(水:グリセリン=80:20)の乾燥後の圧縮過程における規格化波長とひずみとの相関を示す。
<解放時における膜強度(S−Sカーブ)>
上記の「圧縮時における波長のシフト変化」での圧縮状態を解放した際の乾燥硬化の前後における膜強度の変化を実施例1−1等と同様にして測定し、S−Sカーブを作成した。測定結果を図16に示す。
(考察4)
図14から明らかなように、グリセリンの含有濃度が高くなるにつれてピーク波長は短波長側にシフトしている。これは、グリセリンの密度が水の密度に比べて大きいため、螺旋ピッチが拡大し得ないことに起因していると考えられる。
なお、グリセリンの含有比率が50質量%(水:グリセリン=50:50)に達すると、液晶膜形成用組成物の粘性が著しく高くなった。そして、水:グリセリン=60:40の割合では、液晶膜の透過率が約40%程度となった。したがって、グリセリンの含有濃度としては、45質量%以下の範囲が好ましい。
液晶膜の乾燥前後での圧縮過程における透過スペクトルについては図示しないが、図2と同様、グリセリン及び水を含有する液晶膜は、水のみを含有する液晶膜に比べて、乾燥後の圧縮による波長シフトは大きかった。
また、図15から明らかなように、グリセリンの含有濃度が高いほど、乾燥後の圧縮過程における波長シフトの向上効果が著しく発現することが分かる。これは、乾燥後における膜中に残留するグリセリンの濃度に依存するものと考えられる。乾燥後の圧縮過程における波長シフトは、グリセリンの含有濃度が20質量%以上になると急峻になり、グリセリンの含有濃度の増加に伴い、波長シフト(色相変化)も次第に大きくなる傾向を示した。
図16は、5種の液晶セルについて、グリセリンの含有濃度の異なる液晶膜(グリセリンの比率=0質量%〜40質量%)の乾燥前後での圧縮−解放の過程におけるS−Sカーブを示す。図16から分かるように、グリセリンの濃度が高いほど乾燥後の液晶膜として軟らかい膜が得られていることが分かる。
(実施例6)
実施例1−1と同様にして、液晶膜を有する液晶セルを作製した。液晶膜のサイズは、直径が2cm、膜厚が500μmであった。液晶セルに、乾燥処理を施して、水のみを含有するHPC−AcCを用いた乾燥後の液晶膜(以下、「第1弾性膜」という。)を得た。乾燥処理は、上述した<圧縮時における波長のシフト変化(色相変化)>における乾燥硬化と同様にして行った。第1弾性膜の主面(直径:2cm)を目視で観察したところ、第1弾性膜の主面の色は、全体的に均一な薄青色であった。
第1弾性膜の表面積が半分となるように弾性膜の表面を第1区域と第2区域との2つに分け、第1区域の全体をビニルテープで覆って、第2弾性膜を得た。第2弾性膜では、第1区域は露出しておらず、第2区域は露出している。
第2弾性膜と、水で濡らした脱脂綿とをスチロールケースに入れ、スチロールケースを密閉した状態で、室温(25℃)で2時間放置した。換言すると、第2弾性膜の第2区域の吸湿を行った。これにより、第3弾性膜を得た。
第3弾性膜からビニルテープを取り除いて、第4弾性膜を得た。第4弾性膜では、第1区域の水の含有量は比較的少なく、第2区域の水の含有量は比較的多い。第4弾性膜の主面を目視で観察したところ、第4弾性膜の第1区域の色は、第1弾性膜の主面の色と同様に、全体的に均一な薄青色であった。第4弾性膜の第2区域の色は、第1弾性膜の主面の色とは異なり、全体的に均一な黄緑色であった。
第4弾性膜を電子レンジで500W及び30秒の条件で加熱した。換言すると、第4弾性膜の全体を乾燥させた。この乾燥方法は、減圧乾燥2時間でもよい。これにより、第5弾性膜を得た。第5弾性膜の主面を、ハイパースペクトルカメラ(SPECIM社製、型番;ImSpector V8C)を搭載したイメージング分光システム(JFEテクノリサーチ(株)製、ミラースキャン型分光スキャナ装置)を用いて撮影した。図18(a)は、第5弾性膜の主面を撮影した反射像の写真(撮影倍率:1倍)である。第5弾性膜の主面を目視で観察したところ、第5弾性膜の主面の色は、図18(a)に示すように、第1弾性膜の主面の主面の色と同様に、全体的に均一な薄青色であった。第5弾性膜の第1区域と、第5弾性膜の第2区域との境目において、色の違いは見られなかった。
第5弾性膜の主面(直径4mmの面)上の一部を「T」の文字様に切り抜いたビニルテープ(以下、「T字マスキングテープ」という。)で覆って、第6弾性膜を得た。第6弾性膜では、T字マスキングテープから覆われていなかった露出部位(以下、「T字露出部位」という。)は、T字状を形成しており、第1区域と第2区域とに跨っていた。
第6弾性膜と、水で濡らした脱脂綿とをスチロールケースに入れ、スチロールケースを密閉した状態で、室温(25℃)で2時間放置した。換言すると、第6弾性膜のT字露出部位の吸湿を行った。これにより、第7弾性膜を得た。
第7弾性膜からT字マスキングテープを取り除いて、第8弾性膜を得た。第8弾性膜の主面を、ハイパースペクトルカメラ(SPECIM社製、型番;ImSpector V8C)を搭載したイメージング分光システム(JFEテクノリサーチ(株)製、ミラースキャン型分光スキャナ装置)を用いて撮影した。図18(b)は、第8弾性膜の主面を撮影した反射像の写真(撮影倍率:1倍)である。第8弾性膜では、T字マスキングテープで覆われた部位の水の含有量は比較的少なく、T字露出部位の水の含有量は比較的多い。第8弾性膜の主面を目視で観察したところ、第8弾性膜のT字マスクキングテープで覆われた部位の色は、第1弾性膜の主面の色と同様に、薄青色であった。第8弾性膜のT字露出部位の色は、第1弾性膜の主面の色とは異なり、全体的に均一な黄緑色であった。第8弾性膜のT字露出部位の第1区域の色と、第8弾性膜のT字露出部位の第2区域の色との境目において、色の違いは見られなかった。なお、第1弾性膜から第8弾性膜までの書き換えのサイクルは、少なくとも20回は繰り返し行うことができた。
また、ハイパースペクトルカメラ(SPECIM社製、型番;ImSpector V8C)を搭載したイメージング分光システム(JFEテクノリサーチ(株)製、ミラースキャン型分光スキャナ装置)を用いて、HPC−AcCを用いた液晶膜の各領域における反射スペクトルを測定した。詳しくは、第5弾性膜の主面の中央部P1(図18(a)参照」)、第5弾性膜の主面の縁部P2(図18(a)参照)、第8弾性膜の主面の中央部P1(図18(b)参照)、第8弾性膜の主面の縁部P2(図18(b)参照)の反射スペクトルを測定した。第8弾性膜の主面の中央部P1は、露出部である。第8弾性膜の主面の縁部P2は、T字マスキングテープで覆われていた部位である。
測定結果を図19に示す。詳しくは、図19(a)は、第5弾性膜の主面の中央部P1(図18(a)参照)の反射スペクトルの測定結果を示す。図19(b)は、第8弾性膜の主面の中央部P1(図18(b)参照)の反射スペクトルの測定結果を示す。図19(c)は、第5弾性膜の主面の縁部P2(図18(a)参照)の反射スペクトルの測定結果を示す。図19(d)は、第8弾性膜の主面の縁部P2(図18(b)参照)の反射スペクトルの測定結果を示す。
図19(a)に示すように、吸湿前である第5弾性膜の中央部P1の反射率の極大を示す波長は451nmであったの対し、図19(d)に示すように、吸湿後である第8弾性膜の中央部P1の反射率の極大を示す波長は528nmであった。つまり、第5弾性膜を吸湿させることで、反射率の極大を示す波長は、77nm程度長波長シフトした。
図19(c)に示すように、吸湿前である第5弾性膜の縁部P2の反射率の極大を示す波長は449mであったの対し、図19(b)に示すように、吸湿後である第8弾性膜の縁部P2の反射率の極大を示す波長は459nmであった。つまり、縁部P2はT字マスキングテープで覆われていたので、反射率の極大を示す波長はほとんど変化しなかった。
以上の結果から、水のみを含有するHPC−AcCを用いた乾燥後の液晶膜を部分的に吸湿させることで、従来よりも簡便にパターニングすることができ、かつパターニングされた液晶膜を乾燥させることで容易に書き換えが可能であることがわかった。従来では、液晶膜を昇温し、液晶膜の所定の部位に紫外光を照射して、パターニングを行う。

Claims (14)

  1. 水酸基の一部が不飽和二重結合を有する基に置換されたヒドロキシアルキルセルロースと、
    水を含む液体と、
    を含有する液晶膜形成用組成物。
  2. 前記ヒドロキシアルキルセルロースの濃度が、液晶膜形成用組成物の全質量に対して、60質量%以上である請求項1に記載の液晶膜形成用組成物。
  3. 前記液体が、更に、水以外の極性溶媒を含む請求項1又は請求項2に記載の液晶膜形成用組成物。
  4. 前記極性溶媒が、グリセリンを含む請求項3に記載の液晶膜形成用組成物。
  5. 前記液体は、水及びグリセリンの合計含有量に対するグリセリンの比率が5質量%〜45質量%である請求項4に記載の液晶膜形成用組成物。
  6. 前記ヒドロキシアルキルセルロースは、下記式1で求められる水酸基の置換度が、0.01〜0.4である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の液晶膜形成用組成物。
    式1:
    水酸基の置換度=モノマー単位当たりに存在する不飽和二重結合を有する基の合計個数/3
  7. 前記ヒドロキシアルキルセルロースは、下記一般式(1A)で表される構造単位を有し、かつ、下記式(2)で求められる水酸基の置換度が0.01〜0.4である、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の液晶膜形成用組成物。
    式2:
    水酸基の置換度=R11、R12及びR13における不飽和二重結合を有する基の合計個数/3
    Figure 2021181564

    式中、X11、X12及びX13は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基、−(R14−O)−、又は、−C(=O)−R15−を表し、R11、R12及びR13は、それぞれ独立に、水素原子又は不飽和二重結合を有する基を表し、R14及びR15は、それぞれ独立にアルキレン基を表し、hは1以上10以下の整数を表し、n11は2以上800以下の整数を表す。
  8. 前記ヒドロキシアルキルセルロースが、ヒドロキシプロピルセルロースである請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の液晶膜形成用組成物。
  9. 前記不飽和二重結合を有する基が、ハロゲン化アクリロイル、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、及び無水アクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物に由来する基である請求項7又は請求項8に記載の液晶膜形成用組成物。
  10. 前記不飽和二重結合を有する基が、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネートに由来する基である請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の液晶膜形成用組成物。
  11. リオトロピック液晶膜の形成に用いられる請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の液晶膜形成用組成物。
  12. 請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の液晶膜形成用組成物の架橋物である液晶膜。
  13. 請求項12に記載の液晶膜を備えたセンサー。
  14. 請求項13に記載のセンサーを備えた光学素子。
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