以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
また本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
更に、実施の形態で用いる図面においては、断面図であっても図面を見やすくするためにハッチング(網掛け)を省略する場合もある。また、平面図であっても図面を見やすくするためにハッチングを付す場合もある。
(実施の形態)
<落橋防止装置>
本発明の一実施形態である実施の形態の落橋防止装置について説明する。本実施の形態の落橋防止装置は、下部工と、下部工上に設けられた支承と、支承上に設けられた橋桁(上部工)と、を備えた橋梁に備えられた橋桁が支承から落下することを防止する落橋防止装置である。
図1は、実施の形態の落橋防止装置の一部断面を含む側面図である。図2は、実施の形態の落橋防止装置の一部断面を含む平面図である。図2(a)は、図1のA-A線に沿った断面を示し、図2(b)は、図1のB-B線に沿った断面を示している。図1、図2(a)及び図2(b)は、橋桁4が下部工2に対して相対移動していない場合を示している。
図3は、実施の形態の落橋防止装置の一部断面を含む側面図である。図4は、実施の形態の落橋防止装置の一部断面を含む平面図である。図4(a)は、図3のA-A線に沿った断面を示し、図4(b)は、図3のB-B線に沿った断面を示している。図3、図4(a)及び図4(b)は、橋桁4の下部工2に対する相対移動距離MD1が閾値TS1に達した場合を示している。即ち、図3、図4(a)及び図4(b)は、橋桁4の下部工2に対する相対移動距離MD1が閾値TS1に達したときの位置関係を説明するための図である。
図1、図2(a)及び図2(b)に示すように、また、前述したように、本実施の形態の落橋防止装置1は、下部工2と、下部工2上に設けられた支承3と、支承3上に設けられた橋桁4と、を備えた橋梁5に備えられた橋桁4が支承3から落下することを防止する。下部工2としては、特に限定されるものではないが、例えば鉄筋コンクリート(Reinforced Concrete:RC)製の下部工、又は、鋼製の下部工を用いることができる。また、支承3としては、特に限定されるものではないが、例えば鋼製支承、又は、鋼以外の材料よりなる支承を用いることができる。また、橋桁4としては、特に限定されるものではないが、例えば鋼桁、又は、コンクリート桁を用いることができる。
また、図1、図2(a)及び図2(b)に示すように、本実施の形態の落橋防止装置1は、アンカーバー10と、部材11と、部材12と、を有する。即ち、本実施の形態の落橋防止装置1は、2種類の定着治具として、部材11と、部材12と、を用いるものである。
アンカーバー10は、上下方向に延在している。また、アンカーバー10は、橋桁4の側方に配置され且つ下部工2から上方に突出した部分PR1、を含む。アンカーバー10は、例えば金属材料よりなり、好適には鋼よりなる鋼棒である。
部材11は、板部11bを含む。板部11bは、例えば金属材料よりなり、好適には鋼よりなる鋼板である。また、部材11は、板部11bを上下方向に貫通し、アンカーバー10の部分PR1のうち下部工2よりも上方に配置された部分PR2が挿通可能な孔部11hを含む。また、部材11は、アンカーバー10の部分PR2が孔部11hに挿通された状態で、部材11が橋桁4に固定されることによりアンカーバー10の部分PR2を橋桁4に連結する。このとき、孔部11hが形成された板部11bにより、アンカーバー10の部分PR2を平面視で囲む枠部11fが形成されたことになる。なお、部材11が橋桁4に固定される方法は、特に限定されるものではないが、部材11が橋桁4に固定される方法として、例えば、溶接により固定される方法、又は、ボルトとナットとにより構成された固定部材により固定される方法、を用いることができる。
なお、アンカーバー10の部分PR2は、部材11の孔部11hに固定されていても固定されていなくてもよいが、部分PR2が孔部11hに固定されている場合、部分PR2を橋桁4により強固に連結することができる(実施の形態の第1変形例及び実施の形態の第2変形例においても同様)。
部材12は、板部12bを含む。板部12bは、例えば金属材料よりなり、好適には、鋼よりなる鋼板である。また、部材12は、板部12bを上下方向に貫通し、アンカーバー10の部分PR1のうち下部工2よりも上方で且つ部分PR2よりも下方に配置された部分PR3が挿通可能な孔部12hを含む。また、部材12は、アンカーバー10の部分PR3が孔部12hに挿通された状態で、橋桁4に固定されている。このとき、孔部12hが形成された板部12bにより、アンカーバー10の部分PR3を平面視で囲む枠部12fが形成されたことになる。なお、部材12が橋桁4に固定される方法は、特に限定されるものではないが、部材12が橋桁4に固定される方法として、例えば、溶接により固定される方法、又は、ボルトとナットとにより構成された固定部材により固定される方法、を用いることができる。
孔部11hの内径ID1は、孔部12hの内径ID2よりも小さい。孔部11hの内径ID1は、アンカーバー10の部分PR2の外径(アンカーバー10の外径OD)と略等しく、部分PR2の外周面と孔部11hの内周面とは互いに接触している。一方、部分PR3の径方向において部分PR3の外周面と孔部12hの内周面との間に遊間としての隙間GP1が形成されている。
アンカーバー10の外径ODを、例えば10~100mm程度とすることができ、好適には、例えば50mm程度とすることができる。また、部材11及び部材12の上下方向の厚さを、例えば300~400mm程度とすることができる。このとき、隙間GP1の間隔を、例えば200~300mm程度とすることができる。
図3、図4(a)及び図4(b)に示すように、橋桁4が下部工2に対して水平方向である方向DR1に相対移動距離MD1だけ相対移動したとき、アンカーバー10の部分PR3は下部工2に対して方向DR1に相対移動距離MD1よりも小さい距離だけ相対移動(相対変位)するものとする。また、方向DR1における橋桁4の下部工2に対する相対移動距離MD1が閾値TS1に達したとき、孔部12hの内周面は、下部工2に対して方向DR1に相対移動距離MD1よりも小さい距離だけ相対移動(相対変位)した部分PR3の外周面に接触するものとする。また、相対移動距離MD1が閾値TS1未満のとき、孔部12hの内周面は、下部工2に対して方向DR1に相対移動距離MD1よりも小さい距離だけ相対移動(相対変位)した部分PR3の外周面に接触しないものとする。
このような場合、部材12は、相対移動距離MD1が閾値TS1以上のとき、孔部12hの内周面が、下部工2に対して方向DR1に相対移動距離MD1よりも小さい距離だけ相対移動(相対変位)した部分PR3の外周面に接触することにより、橋桁4の下部工2に対する方向DR1への相対移動を規制することになる。
本実施の形態では、相対移動距離MD1が閾値TS1未満のとき、橋桁4に作用する慣性力が、治具としての部材11を介してアンカーバー10の頂部に作用し、アンカーバー10が曲げ変形することで、エネルギー吸収機能が発揮される。また、相対移動距離MD1が閾値TS1以上のとき、即ち橋桁4と下部工2との間に過大な相対変位が生じたときは、アンカーバー10と治具としての部材12とが衝突し、アンカーバー10のせん断抵抗力により落橋を防止する。
なお、図3では、方向DR1が橋桁4の長さ方向である場合を例示しているが、方向DR1は、水平方向であればよく、橋桁4の幅方向その他の方向であってもよい。
ここで、落橋防止装置により橋桁が支承から落下することを防止する際の問題点について説明する。
所謂鋼棒ストッパー方式及びチェーン方式の落橋防止装置は、橋桁が落下する機能、即ち落橋を防止する機能しか有していない。そのため、地震が発生して支承に作用力等が印加された時に橋桁が応答して支承に対して相対移動する相対移動距離、即ち地震応答(応答値)を低減するために、落橋防止装置とは別に制震装置が設けられる必要があった。また、チェーン方式の落橋防止装置を用いる場合には、ブラケット等の取り付け部が設けられる必要があるが、橋桁下を鉄道が交差する箇所等、橋桁下の空間に制約があり、取り付け部が設けられないため、チェーン方式の落橋防止装置を適用することができない、という問題があった。
一方、上記特許文献1及び上記特許文献2に記載された技術では、地震が発生した時に、地震の揺れの力を吸収し、支承に印加される作用力等の地震応答(地震応答値)を低減する制振機能、及び、落橋防止機能のいずれをも有する。しかし、上記特許文献1及び上記特許文献2に記載された技術では、制振機能を確保するために用いられるゴム等の弾性体が高価である、という問題があった。また、上記特許文献1及び上記特許文献2に記載された技術では、落橋防止装置が、制振機能を確保するために、複雑な構造を有し、ゴム等の弾性体を容易に点検することができず、容易に維持管理することができない、という問題があった。
また、上記特許文献1に記載された技術、及び、上記特許文献2に記載された技術では、アンカーバーとして、橋桁に設けられたアンカーキャップにアンカーバーを挿入する。そのため、下部工、支承及び橋桁を設置した後にアンカーバーを設置する場合、橋桁を移動又は撤去する必要があり、落橋防止装置を容易に設置することができない、という問題があった。
一方、本実施の形態の落橋防止装置は、アンカーバー10と、部材11と、部材12と、を有し、アンカーバー10の部分PR2が部材11の孔部11hに挿通された状態で、部材11が橋桁4に固定されることにより部分PR2を橋桁4に連結し、アンカーバー10の部分PR3が部材12の孔部12hに挿通された状態で、部材12が橋桁4に固定され、部分PR3の外周面と孔部12hの内周面との間に遊間としての隙間GP1が形成されている。
また、橋桁4が下部工2に対して水平方向である方向DR1に相対移動したとき、アンカーバー10の部分PR3は下部工2に対して方向DR1に相対移動(相対変位)し、方向DR1における橋桁4の下部工2に対する相対移動距離MD1が閾値TS1に達したとき、孔部12hの内周面は、下部工2に対して方向DR1に相対移動距離MD1よりも小さい距離だけ相対移動(相対変位)した部分PR3の外周面に接触する。また、部材12は、相対移動距離MD1が閾値TS1以上のとき、孔部12hの内周面が、下部工2に対して方向DR1に相対移動距離MD1よりも小さい距離だけ相対移動(相対変位)した部分PR3の外周面に接触することにより、橋桁4の下部工2に対する方向DR1への相対移動を規制する。
即ち、本実施の形態の落橋防止装置1では、アンカーバー10と、定着治具としての部材11及び部材12と、を用いる。また、本実施の形態の落橋防止装置1にダンパー機能(制振機能)を発揮させるため、アンカーバー10の頂部に、アンカーバー10を橋桁4と接続するための定着治具としての部材11が設けられ、部材11を介して橋桁4とアンカーバー10とが互いに接続される。地震が発生した時には、アンカーバー10に曲げモーメントが作用し、塑性変形を起こすことで、エネルギー吸収機能が発揮され、橋梁5の地震応答を低減させることができる。また、落橋防止機能を発揮させるため、アンカーバー10の基部に、別の定着治具としての部材12が、アンカーバー10と一定の遊間を確保して設けられる。
これにより、橋桁4が下部工2に対して相対移動(相対変位)した相対移動距離(変位量)MD1が小さいか又は中程度である場合には、ダンパー機能(制振機能)を発揮することができる。一方、相対移動距離MD1が大きい場合には、橋桁4が落下すること、即ち落橋することを防止することができる。また、相対移動距離MD1が大きい場合には、部材12をアンカーバー10の基部と接触させることにより、アンカーバー10の曲げ耐力よりはるかに大きいせん断耐力が期待できる。
即ち、本実施の形態の落橋防止装置によれば、高価なゴム等の弾性体を用いることなく、簡単な構造で容易に点検することができ、且つ、制振機能を確保することができる。言い換えれば、アンカーバー10と橋桁4とを接続する接続治具のみの簡単且つ点検が容易な構造を用いて、橋梁の地震応答を低減する制震機能と、落橋防止機能と、を兼用するシステムを実現することができる。
また、本実施の形態の落橋防止装置では、アンカーバーとして、橋桁の側方に配置されたアンカーバーを用いるので、橋桁に設けられたアンカーキャップにアンカーバーを挿入する必要がない。そのため、下部工、支承及び橋桁を設置した後においても、橋桁を移動又は撤去することなくアンカーバーを容易に設置することができ、落橋防止装置を容易に設置することができる。
<曲げ降伏時の荷重とせん断降伏時の荷重との間の大小関係>
次に、図5を参照し、曲げ降伏時の荷重とせん断降伏時の荷重との間の大小関係について説明する。図5は、アンカーバーのうち下部工から上方に突出した部分を模式的に示す図である。図5は、曲げ降伏時の荷重とせん断降伏時の荷重との間の大小関係を説明するための図である。
図5に示すように、鋼材よりなるアンカーバー10(図1参照)のうち下部工2(図1参照)の上面2aから上方に突出した部分を部分PR1とし、部分PR1の上端に水平方向に荷重LD1が印加されるものとし、部分PR1のうち荷重LD1が印加される部分である上端が上下方向において下部工2の上面2aから突出した高さをh[mm]とし、アンカーバー10(図1参照)の外径OD(図2参照)をD[mm]とし、印加される荷重LD1をP[N]とする(以下、荷重Pと表記する場合がある)。
まず、荷重Pが曲げ降伏時の荷重である場合を考える。このような場合、鋼材よりなるアンカーバー10(図1参照)の引張降伏強さを、fsyk[N/mm2]とすると、引張降伏強さfsykは、以下の数式(1)で表される。
fsyk=M/z=P×h/(πD3/32) ・・・(1)
ここで、M[Nm]はアンカーバー10(図1参照)の部分PR1の下端に印加される曲げモーメントであり、zは断面係数である。
上記数式(1)において、一例として、fsyk=235[N/mm2]と設定し、設定された引張降伏強さfsykを上記数式(1)に代入し、引張降伏強さfsykが代入された上記数式(1)を荷重Pについて解くと、曲げ降伏時の荷重Pは、以下の数式(2)で表される。
P=23.07×D3/h ・・・(2)
次に、荷重Pがせん断降伏時の荷重である場合を考える。このような場合、荷重Pは、以下の数式(3)で表される。
P=A×fsvyk=πD2/4×135 ・・・(3)
ここで、A[mm2]はアンカーバー10の断面積であり、fsvykは鋼材よりなるアンカーバー10のせん断降伏強さ[N/mm2]である。
上記数式(3)において、一例として、fsvyk=135[N/mm2]と設定し、設定されたせん断降伏強さfsvykを上記数式(3)に代入すると、せん断降伏時の荷重Pは、以下の数式(4)で表される。
P=106.03×D2 ・・・(4)
上記数式(2)と上記数式(4)とを比較すると、以下の結論が得られる。
・h/Dが極端に小さくない限り、せん断降伏時の荷重Pの方が、曲げ降伏時の荷重Pよりも大きい。
・高さhがある程度高い場合(数100mm程度である場合)は、治具としての部材11を介して力が伝達される。
・高さhが低い場合(鋼棒よりなるアンカーバー10の基部付近が部材12に衝突する場合)は、治具としての部材12を介して力が伝達される。また、高さhが低い場合、鋼材よりなるアンカーバー10に印加される曲げモーメントは小さくなるため、アンカーバー10に印加される荷重Pが上記数式(4)で表されるせん断降伏時の荷重Pの値に達するまで耐えることができる。
このように、部材12をアンカーバー10の基部と接触させることにより、アンカーバー10の曲げ耐力よりはるかに大きいせん断耐力が期待できることが示された。なお、h、Dを調整することで、制震機能又は落橋防止機能の要求性能に応じた任意の制震機能又は落橋防止機能を得ることが可能である。
<落橋防止装置の第1変形例>
次に、実施の形態の落橋防止装置の第1変形例について説明する。本第1変形例の落橋防止装置では、実施の形態の落橋防止装置で1個設けられていた部材12に相当する部材が、2個設けられている。
図6は、実施の形態の落橋防止装置の第1変形例の一部断面を含む側面図である。図7は、実施の形態の落橋防止装置の第1変形例の一部断面を含む平面図である。図7(a)は、図6のA-A線に沿った断面を示し、図7(b)は、図6のB1-B1線に沿った断面を示し、図7(c)は、図6のB2-B2線に沿った断面を示している。
図6及び図7(a)乃至図7(c)に示すように、本第1変形例の落橋防止装置1は、実施の形態の落橋防止装置1と同様に、アンカーバー10と、部材11と、部材12と、を有する。アンカーバー10は、橋桁4の側方に配置され且つ下部工2から上方に突出した部分PR1、を含む。
本第1変形例の落橋防止装置1が有する部材11及び部材12については、実施の形態の落橋防止装置1が有する部材11及び部材12と同様にすることができ、その説明を省略する。また、本第1変形例の落橋防止装置1でも、実施の形態の落橋防止装置1と同様に、高価なゴム等の弾性体を用いることなく、簡単な構造で容易に点検することができ、且つ、制振機能を確保することができる。
一方、本第1変形例の落橋防止装置1は、実施の形態の落橋防止装置1と異なり、部材11及び部材12に加えて、部材11と部材12との間に配置された部材13を有する。即ち、本第1変形例の落橋防止装置1は、3種類の定着治具として、部材11と、部材12と、部材13と、を用いるものである。
部材13は、板部13bを含む。板部13bは、例えば金属材料よりなり、好適には鋼よりなる鋼板である。また、部材13は、板部13bを上下方向に貫通し、アンカーバー10の部分PR1のうち部分PR3よりも上方で且つ部分PR2よりも下方に配置された部分PR4が挿通可能な孔部13hを含む。また、部材13は、アンカーバー10の部分PR4が孔部13hに挿通された状態で、橋桁4に固定されている。このとき、孔部13hが形成された板部13bにより、アンカーバー10の部分PR4を平面視で囲む枠部13fが形成されたことになる。なお、部材13が橋桁4に固定される方法は、特に限定されるものではないが、部材13が橋桁4に固定される方法として、例えば、溶接により固定される方法、又は、ボルトとナットとにより構成された固定部材により固定される方法、を用いることができる。
本第1変形例でも、実施の形態と同様に、孔部11hの内径ID1は、孔部12hの内径ID2よりも小さい。孔部11hの内径ID1は、部分PR2の外径(アンカーバー10の外径OD)と略等しく、部分PR2の外周面と孔部11hの内周面とは互いに接触している。また、部分PR3の径方向において部分PR3の外周面と孔部12hの内周面との間に遊間としての隙間GP1が形成されている。
一方、本第1変形例では、実施の形態と異なり、部分PR4の径方向において部分PR4の外周面と孔部13hの内周面との間に遊間としての隙間GP2が形成されている。隙間GP2の間隔は、隙間GP1の間隔よりも小さい(狭い)。即ち、孔部13hの内径ID3は、孔部11hの内径ID1よりも大きく、且つ、孔部12hの内径ID2よりも小さい。前述したように、隙間GP1の間隔を、例えば200~300mm程度としたとき、隙間GP2の間隔を、例えば100~150mm程度とすることができる。
本第1変形例も、図3、図4(a)及び図4(b)に示した実施の形態と同様に、橋桁4が下部工2に対して水平方向である方向DR1(図3参照)に相対移動したとき、アンカーバー10の部分PR3は下部工2に対して方向DR1に相対移動(相対変位)するものとする。
一方、本第1変形例では、図3、図4(a)及び図4(b)に示した実施の形態と異なり、橋桁4が下部工2に対して水平方向である方向DR1(図3参照)に相対移動したとき、アンカーバー10の部分PR4も下部工2に対して方向DR1に相対移動(相対変位)するものとする。また、方向DR1(図3参照)における橋桁4の下部工2に対する相対移動距離MD1(図3参照)が閾値TS1(図3参照)に達したとき、孔部12hの内周面が、下部工2に対して方向DR1に相対移動距離MD1よりも小さい距離だけ相対移動(相対変位)した部分PR3の外周面に接触するか、又は、相対移動距離MD1が閾値TS2(図3参照)に達したとき、孔部13hの内周面が、下部工2に対して方向DR1に相対移動距離MD1よりも小さい距離だけ相対移動(相対変位)した部分PR4の外周面に接触するものとする。また、相対移動距離MD1が閾値TS1未満のとき、孔部12hの内周面は、下部工2に対して方向DR1に相対移動距離MD1よりも小さい距離だけ相対移動(相対変位)した部分PR3の外周面に接触しないものとし、相対移動距離MD1が閾値TS2未満のとき、孔部13hの内周面は、下部工2に対して方向DR1に相対移動距離MD1よりも小さい距離だけ相対移動(相対変位)した部分PR4の外周面に接触しないものとする。
このような場合、部材12は、相対移動距離MD1(図3参照)が閾値TS1(図3参照)以上のとき、孔部12hの内周面が、下部工2に対して方向DR1(図3参照)に相対移動距離MD1よりも小さい距離だけ相対移動(相対変位)した部分PR3の外周面に接触することにより、橋桁4の下部工2に対する方向DR1への相対移動を規制することになる。また、部材13は、相対移動距離MD1が閾値TS2(図3参照)以上のとき、孔部13hの内周面が、下部工2に対して方向DR1に相対移動距離MD1よりも小さい距離だけ相対移動(相対変位)した部分PR4の外周面に接触することにより、橋桁4の下部工2に対する方向DR1への相対移動を規制することになる。
また、本第1変形例では、孔部12hの内径ID2と、孔部13hの内径ID3とを調整し、閾値TS2(図3参照)を閾値TS1(図3参照)に等しくすることができる。このような場合、橋桁4の下部工2に対する方向DR1(図3参照)への相対移動を規制する力を増加させることができる。
具体的には、相対移動距離MD1(図3参照)が閾値TS1(図3参照)未満のとき、閾値TS2(図3参照)未満でもあるから、橋桁4に作用する慣性力が、治具としての部材11を介してアンカーバー10の頂部に作用し、アンカーバー10が曲げ変形することで、エネルギー吸収機能が発揮される。また、相対移動距離MD1が閾値TS1以上のとき、即ち橋桁4と下部工2との間に過大な相対変位が生じたときは、閾値TS2以上でもあるから、アンカーバー10と治具としての部材12とが衝突することに加えて、アンカーバー10と治具としての部材13とが衝突し、橋桁4の下部工2に対する方向DR1への相対移動を規制する力を更に増加させることができ、アンカーバー10のせん断抵抗力により落橋を防止する効果が更に高まる。
なお、本第1変形例では、落橋防止装置1が、アンカーバー10との間に遊間を有する治具として部材12及び部材13を有し、アンカーバー10との間に遊間を有する治具の数が2個である例を例示して説明した。しかし、アンカーバー10との間に遊間を有する治具の数は、2個に限定されず、3個、4個又は5個以上であってもよい。
<落橋防止装置の第2変形例>
次に、実施の形態の落橋防止装置の第2変形例について説明する。本第2変形例の落橋防止装置1では、実施の形態の落橋防止装置1が有する部材11(図1参照)及び部材12(図1参照)が一体化し、上下方向において遊間が連続的に変化している。
図8は、実施の形態の落橋防止装置の第2変形例の一部断面を含む側面図である。図9は、実施の形態の落橋防止装置の第2変形例の一部断面を含む平面図である。図9(a)は、図8のA-A線に沿った断面を示し、図9(b)は、図8のB1-B1線に沿った断面を示し、図9(c)は、図8のB2-B2線に沿った断面を示している。
図8及び図9(a)乃至図9(c)に示すように、本第2変形例の落橋防止装置1は、実施の形態の落橋防止装置1と同様に、アンカーバー10と、部材11と、部材12と、を有する。アンカーバー10は、橋桁4の側方に配置され且つ下部工2から上方に突出した部分PR1、を含む。
本第2変形例の落橋防止装置1が有する部材11については、実施の形態の落橋防止装置1が有する部材11と同様にすることができ、その説明を省略する。
一方、本第2変形例の落橋防止装置1では、実施の形態の落橋防止装置1と異なり、部材12は、部材11下に配置され、且つ、部材11と一体的に形成されている。孔部12hは、孔部11hと連通し、孔部12hの内周面は、孔部12hの下端から孔部12hの上端に向かって孔部12hの内径ID2が漸次減少する円錐台形状を有する。即ち、部分PR3の外周面と孔部12hの内周面との間の隙間GP1の間隔は、孔部12hの下端から孔部12hの上端に向かって漸次減少する。また、孔部12hの下端における隙間GP1の間隔を、例えば200~300mm程度とすることができる。
また、本第2変形例の落橋防止装置の構成は、以下のように言い換えることができる。即ち、本第2変形例の落橋防止装置1は、部材11及び部材12に代えて、部材20を有するとみなすことができる。部材20は、板部20bを含む。また、部材20は、板部20bを上下方向に貫通し、アンカーバー10の部分PR1のうち、部分PR2、及び、下部工2よりも上方で且つ部分PR2よりも下方に配置された部分PR3、が挿通可能な孔部20hを含む。
また、部材20は、本体部21(部材12に相当)と、本体部21よりも上方に配置され、且つ、本体部21と一体的に形成された上層部22(部材11に相当)と、を含む。上層部22は、板部22bを含む。また、上層部22は、板部22bを上下方向に貫通し、アンカーバー10の部分PR2が挿通可能な孔部22hを含む。このとき、孔部22hが形成された板部22bにより、アンカーバー10の部分PR2を平面視で囲む枠部22fが形成されたことになる。本体部21は、板部21bを含む。また、本体部21は、板部21bを貫通し、孔部22hと連通し且つアンカーバー10の部分PR3が挿通可能な孔部21hを含む。このとき、孔部21hが形成された板部21bにより、アンカーバー10の部分PR3を平面視で囲む枠部21fが形成されたことになる。また、孔部22hと孔部21hとにより孔部20hが形成されている。
部材20は、アンカーバー10の部分PR2が孔部22hに挿通され、アンカーバー10の部分PR3が孔部21hに挿通された状態で、部材20が橋桁4に固定されることにより部分PR2を橋桁4に連結する。孔部21hの内周面は、孔部21hの下端から孔部21hの上端に向かって孔部21hの内径(孔部12hの内径ID2)が漸次減少する円錐台形状を有する。アンカーバー10の部分PR3の径方向において部分PR3の外周面と孔部21hの内周面(孔部12hの内周面)との間に隙間GP1が形成されている。
本第2変形例も、図3、図4(a)及び図4(b)に示した実施の形態と同様に、橋桁4が下部工2に対して水平方向である方向DR1(図3参照)に相対移動したとき、アンカーバー10の部分PR3は下部工2に対して方向DR1に相対移動(相対変位)するものとする。また、方向DR1における橋桁4の下部工2に対する相対移動距離MD1(図3参照)が閾値TS1(図3参照)に達したとき、孔部12h(孔部21h)の内周面が、下部工2に対して方向DR1に相対移動距離MD1よりも小さい距離だけ相対移動(相対変位)した部分PR3の外周面に接触するものとする。また、相対移動距離MD1が閾値TS1未満のとき、孔部12h(孔部21h)の内周面は、下部工2に対して方向DR1に相対移動距離MD1よりも小さい距離だけ相対移動(相対変位)した部分PR3の外周面に接触しないものとする。
このような場合、部材12(本体部21)は、相対移動距離MD1(図3参照)が閾値TS1(図3参照)以上のとき、孔部12h(孔部21h)の内周面が、下部工2に対して方向DR1に相対移動距離MD1よりも小さい距離だけ相対移動(相対変位)した部分PR3の外周面に接触することにより、橋桁4の下部工2に対する方向DR1への相対移動を規制することになる。
これにより、実施の形態と同様に、高価なゴム等の弾性体を用いることなく、簡単な構造で容易に点検することができ、且つ、制振機能を確保することができる。
また、本第2変形例では、孔部12h(孔部21h)の内周面が有する円錐台形状を調整することにより、相対移動距離MD1が閾値TS1に達したとき、孔部12h(孔部21h)の内周面のうちアンカーバー10の部分PR3の外周面に接触する領域の面積を増加させることができる。このような場合、橋桁4の下部工2に対する方向DR1への相対移動を規制する力を増加させることができる。
具体的には、相対移動距離MD1(図3参照)が閾値TS1(図3参照)未満のとき、橋桁4に作用する慣性力が、治具としての部材11(上層部22)を介してアンカーバー10の頂部に作用し、アンカーバー10が曲げ変形することで、エネルギー吸収機能が発揮される。また、相対移動距離MD1が閾値TS1以上のとき、即ち橋桁4と下部工2との間に過大な相対変位が生じたときは、アンカーバー10と治具としての部材12(本体部21)とが衝突するが、実施の形態に比べて、孔部12h(孔部21h)の内周面のうちアンカーバー10の部分PR3の外周面に接触する領域の面積を増加させることができるので、橋桁4の下部工2に対する方向DR1への相対移動を規制する力を更に増加させることができ、アンカーバー10のせん断抵抗力により落橋を防止する効果が更に高まる。
なお、孔部12h(孔部21h)の内径ID2が孔部12hの下端から孔部12hの上端に向かって漸次減少するだけでもよい。従って、孔部12hの内周面は、円錐台形状を有していなくてもよい。
<落橋防止装置の第3変形例>
次に、実施の形態の落橋防止装置の第3変形例について説明する。本第3変形例の落橋防止装置では、アンカーバー10の部分PR2の外周面と孔部11hの内周面との間に緩衝材が設けられている。
図10は、実施の形態の落橋防止装置の第3変形例の一部断面を含む側面図である。図11は、実施の形態の落橋防止装置の第3変形例の一部断面を含む平面図である。図11(a)は、図10のA-A線に沿った断面を示し、図11(b)は、図10のB-B線に沿った断面を示している。
図10、図11(a)及び図11(b)に示すように、本第3変形例の落橋防止装置1は、実施の形態の落橋防止装置1と同様に、アンカーバー10と、部材11と、部材12と、を有する。アンカーバー10は、橋桁4の側方に配置され且つ下部工2から上方に突出した部分PR1、を含む。
本第3変形例の落橋防止装置1が有する部材11及び部材12については、後述するように、アンカーバー10の部分PR2の外周面と部材11の孔部11hの内周面との間に隙間GP3が形成されている点を除いて、実施の形態の落橋防止装置1が有する部材11及び部材12と同様にすることができ、その説明を省略する。
一方、本第3変形例の落橋防止装置1では、実施の形態の落橋防止装置1と異なり、孔部11hの内径ID1は、アンカーバー10の部分PR2の外径(アンカーバー10の外径OD)よりも大きい。その結果、前述したように、アンカーバー10の部分PR2の第2径方向において部分PR2の外周面と孔部11hの内周面との間に隙間GP3が形成され、部分PR2の外周面と孔部11hの内周面との間に充填材としての緩衝材23が充填されている。充填材としての緩衝材23の弾性率は、アンカーバー10の弾性率及び部材11の弾性率のいずれよりも小さい(低い)。また、隙間GP3の間隔を、例えば5~15mm程度とすることができる。
本第3変形例の落橋防止装置1でも、実施の形態の落橋防止装置1と同様に、簡単な構造で容易に点検することができ、且つ、制振機能を確保することができる。一方、本第3変形例の落橋防止装置1では、実施の形態の落橋防止装置1と異なり、高価なゴム等の弾性体を全く用いないわけではないものの、少量の弾性体を用いるだけで、温度変化によってアンカーバー10又は橋桁4に応力が発生することを抑制することができる。
橋桁4が鋼材よりなる場合、即ち橋桁4が鋼桁である場合を考える。このような場合、温度変化によって、橋桁4の長さ方向における端部が移動して変位が生じると、連結治具としての部材11と鋼棒よりなるアンカーバー10とが互いに接触して歪み、アンカーバー10又は橋桁4に応力が発生することが想定される。
一方、本第3変形例では、連結治具としての部材11に含まれる孔部11hの内周面と、アンカーバー10の部分PR2の外周面との間に、若干の遊間が設けられ、緩衝材23が挟まれる。これにより、温度変化によってアンカーバー10又は橋桁4に応力が発生することを抑制することができる。
なお、本第3変形例と、実施の形態の第1変形例及び実施の形態の第2変形例のいずれかと、を組み合わせ、実施の形態1の第1変形例及び実施の形態の第2変形例のいずれかにおいて、アンカーバー10の部分PR2の外周面と孔部11hの内周面との間に緩衝材を設けることができる。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
例えば、前述の各実施の形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除若しくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略若しくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。