JP7291657B2 - 魚釣用スピニングリール - Google Patents

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本発明は、魚釣用スピニングリールに関する。
一般的な魚釣用スピニングリールは、リール本体に回転可能に支持されたロータにラインローラ(釣糸案内部)を有するベール支持部材が設けられている。ベール支持部材は、バネ部材の付勢力により釣糸巻取位置と釣糸放出位置に振り分け保持されている。
仕掛けを投擲する際には、ベール支持部材を釣糸放出位置に反転させ、釣竿を勢いよく振り下ろして釣糸を放出させる操作が行われる。しかしながら、このように釣竿を勢いよく振り下ろすと、その勢いでロータが回転してしまうことがあった。また、ハンドルの不要な回転等の影響によりロータが回転してしまうことがあった。
このようなロータの回転を生じると、ベール支持部材が釣糸放出位置から釣糸巻取位置に誤復帰して釣糸が仕掛けとともに切断されるおそれがある。
従来、このような誤復帰を防止する技術として特許文献1に開示された技術が知られている。
特許文献1では、ベール支持部材を釣糸放出位置に反転させる操作に連動して移動する係止部材を備えている。一方、リール本体前部には、環状の取付溝が形成され、この取付溝に環状の弾性部材が取着されている。係止部材は、反転操作時に、この弾性部材に向けて移動し、弾性部材の外周面に圧接することでロータに制動力を付与する作用をなす。
特許第5323790号公報
特許文献1では、弾性部材が取付溝の外側に移動することを防止するために、取付溝の開口縁に対して、内側へ突出する規制部を形成している。
ところで、ベール支持部材の反転操作で係止部材の先端部が弾性部材の外周面に圧接してロータに制動力を付与するが、取付溝や弾性部材の寸法のバラツキの影響で弾性部材が取付溝に対して滑ったり、弾性部材が係止部材で押されて周方向に波打つ現象が生じるおそれがあった。このような現象を生じると、ロータの制動ムラを来すおそれがある。
また、取付溝の規制部は、アンダーカット状に形成されているため、切削加工が必要であり、製造コストが高くなるという課題もあった。
本発明は、このような課題を解決するために創作されたものであり、製品の寸法のバラツキによる不具合を解消して安定したロータの制動を得ることができ、加えて製造コストを低減することができる魚釣用スピニングリールを提供することを課題とする。
前記課題を解決するため、本発明に係る魚釣用スピニングリールは、ハンドルの巻取操作に連動回転するロータと、前記ロータのアーム部に支持され、釣糸巻取位置と釣糸放出位置とに回動可能なベール支持部材と、前記ベール支持部材の釣糸放出位置への回動に連動してリール本体側に移動する移動部材と、前記リール本体側に設けられ、移動した前記移動部材の端部が圧接することで前記ロータに制動力を付与する制動部材と、前記リール本体に形成され、前記制動部材を収容する凹状の収容溝と、を備えている。前記制動部材は、前記移動部材が当接する外周部と、前記外周部に連続し径方向内方に向けて延在する前外面及び後外面と、を有している。前記収容溝は、前記前外面及び前記後外面がそれぞれ当接する前内面及び後内面を有している。前記前外面、前記後外面、前記前内面及び前記後内面のうち、少なくとも1つの面は、径方向外方から径方向内方に向かうにつれて窄まるように傾斜する傾斜面である。前記傾斜面は、前記制動部材の前記前外面、前記後外面、及び前記収容溝の前記前内面、前記後内面の全ての面に形成されている。
この魚釣用スピニングリールでは、ベール支持部材の反転操作に連動して移動部材が制動部材の外周部に圧接すると、傾斜面の存在により制動部材が収容溝に対して断面くさび状に圧縮変形して係合する。これにより、収容溝や制動部材の寸法のバラツキの影響で制動部材が収容溝に対して滑ったり、制動部材が移動部材で押されて周方向に波打つ現象等の不具合が解消される。したがって、ロータの制動ムラが防止され、安定したロータの制動を実現できる。
また、収容溝に対して従来のようなアンダーカット状の切削加工を行わずに、例えば金型成形も可能となるので、製造コストを低減できる。
また、断面くさび状の圧縮変形による係合であるので、収容溝から制動部材が脱落するのを確実に防止できる。
また、傾斜面が、制動部材の前外面、後外面、及び収容溝の前内面、後内面の全ての面に形成されている。この構成により、前後の両側が断面くさび状に圧縮変形して係合がさらに強まるので、製品の寸法のバラツキによる不具合を解消してより安定したロータの制動を得ることができ、加えて製造コストを低減することができる。
本発明によれば、製品の寸法のバラツキによる不具合を解消して安定したロータの制動を得ることができ、加えて製造コストを低減することができる魚釣用スピニングリールが得られる。
第1実施形態に係る魚釣用スピニングリールの全体構成を示す側面図である。 (a)は釣糸巻取位置における付勢機構の様子を示した説明図、(b)は釣糸放出位置における付勢機構の様子を示した説明図である。 第1実施形態に係る魚釣用スピニングリールの要部を拡大して示す断面図である。 第1実施形態に係る魚釣用スピニングリールの要部をさらに拡大して示す断面図である。 第1実施形態に係る魚釣用スピニングリールの第1変形例を示す断面図である。 第1実施形態に係る魚釣用スピニングリールの第2変形例を示す断面図である。 第2実施形態に係る魚釣用スピニングリールを示す図であり、(a)は要部拡大断面図、(b)は要部拡大分解図である。
以下、本発明の実施形態を適用した魚釣用スピニングリールR1について、適宜図面を参照して説明する。実施形態の説明において、「上下」、「前後」を言うときは、図1に示した方向を基準とする。各実施形態において、同一の部分については同様の符号を付し詳細な説明は省略する。
(第1実施形態)
図1に示すように、主として、魚釣用スピニングリールR1は、図示しない釣竿に装着するための脚部1Aが形成されたリール本体1と、リール本体1の前方に回転可能に設けられたロータ2と、このロータ2の回転運動と同期して前後方向移動可能に設けられたスプール3とを有する。
リール本体1には、図示しない軸受を介してハンドル軸4が回転可能に支持されており、その図示しない突出端部には、巻き取り操作されるハンドル5が取り付けられている。
ハンドル軸4には、図示しない軸筒が、回り止めされて固定されている。この軸筒には、ロータ2を巻き取り駆動するための内歯が形成されたドライブギヤ6が一体的に形成されている。このドライブギヤ6は、ハンドル軸4と直交する方向に延出するとともに内部に軸方向に延出する空洞部を有する駆動軸筒8のピニオンギヤ8aに噛合している。
駆動軸筒8は、軸受を介してリール本体1に回転可能に支持されており、その空洞部には、ハンドル軸4と直交する方向に延出し、先端側にスプール3が取り付けられるスプール軸9が、軸方向に移動可能に挿通され、支持されている。
スプール軸9の後端部には、スプール軸9を前後動させるための公知のオシレーティング機構が備わる。オシレーティング機構は、少なくとも、ドライブギヤ6の歯車6aに噛合する連動歯車6bに設けられた偏芯突部7aと、スプール軸9の後端部に取り付けられた摺動子7と、この摺動子7に設けられ、偏芯突部7aと係合する案内溝7bと、摺動子7と係合して摺動子7の往復動を案内する図示しないガイドと、を含んで構成されている。
駆動軸筒8はスプール3側に向けて延出しており、その前端部において、ナット9bを介してロータ2が取り付けられている。また、駆動軸筒8には、その中間部分に転がり式の一方向クラッチ10が取り付けられている。一方向クラッチ10は、ハンドル5(ロータ2)の逆転方向の回転(釣糸放出方向の回転)を規制する。
ロータ2は、スプール3のスカート部3a内に位置する円筒部2aと、一対のアーム部2b,2cと、を具備している。
各アーム部2b,2cの前端部には、ベール支持部材2d,2eが釣糸巻取位置と釣糸放出位置との間で回動自在に支持されており、これらのベール支持部材2d,2e間には、放出状態にある釣糸をピックアップするベール2f(図2(a)および(b)参照、以下同じ)が配設されている。ベール2fは、一方の基端部がベール支持部材2dに一体的に設けられたラインローラ2gに取り付けられており、他方の基端部がベール支持部材2eに取り付けられている。
スプール3は、図1に示すように、スカート部3aと前側フランジ3bとの間に図示しない釣糸が巻回される釣糸巻回胴部3cを備えており、スプール軸9に図示しないドラグ機構を介して摩擦結合され、ノブ9aを回動操作することでスプール3のドラグ力が調節される。
このような構成によって、ハンドル5を巻き取り操作することで、ロータ2がドライブギヤ6およびピニオンギヤ8aを介して回転駆動され、かつスプール3がピニオンギヤ8aおよびオシレーティング機構を介して前後動され、図示しない釣糸は、ラインローラ2gを介してスプール3の釣糸巻回胴部3cに均等に巻回される。
そして、ベール支持部材2d,2eは、アーム部2bに設けられた付勢機構30によって、釣糸巻取位置(図2(a)参照)または釣糸放出位置(図2(b)参照)に振り分け付勢保持されようになっている。
付勢機構30は、図2(a)に示すように、支軸31を介してアーム部2bに揺動可能に取り付けられた筒状の揺動部材32を備えている。また、付勢機構30は、ベール支持部材2dと揺動部材32とを接続し、かつ揺動部材32と協働してベール支持部材2dを2つの位置に振り分ける振り分け部材33と、振り分け部材33と揺動部材32との間に介挿された振分け付勢バネ34とを備えている。
ベール支持部材2dの後端部には、揺動部材32の後端部に押圧されて移動する移動部材40が設けられている。また、図3に示すように、移動部材40に対向するリール本体1側には、移動部材40の端部43が圧接する制動部材50が設けられている。後記するように、ベール支持部材2dが釣糸放出位置に反転操作された際に、移動部材40が制動部材50に圧接されて係合することでロータ2に制動力が付与されるように構成されている。移動部材40及び制動部材50の詳細は後記する。
ベール支持部材2dは、図2(a)に示すように、その基端がピン35によって軸支され、アーム部2bに設けられた図示しない規制部位によって、二つの位置(釣糸巻取位置、釣糸放出位置)の間を回動可能に設けられている。
振り分け部材33は、その先端部33aがピン35の中心から偏心した位置でベール支持部材2dの基部に回動可能に接続され、他端部33b側が揺動部材32の筒状部内に挿入されている。
振り分け部材33の外周には振分け付勢バネ34が巻装されている。振分け付勢バネ34は、一端側が、振り分け部材33に形成されたバネ受け部33cで保持され、他端側が、揺動部材32の筒状部内に挿入され、内側の段差部33dで保持されている。
図2(a)は、ベール支持部材2dが振分け付勢バネ34の付勢力によって釣糸巻取位置に振り分け保持された状態を示している。この状態で振分け付勢バネ34は、ピン35を中心としてベール支持部材2dを反時計回りに方向に付勢している。一方、図2(b)に示すように、付勢機構30のデッドポイントを越えて釣糸放出位置へベール支持部材2dを回動させると、振分け付勢バネ34がベール支持部材2dを時計回りに方向に付勢して、釣糸放出位置に保持する。
揺動部材32の後端部には、図3に示すように、移動部材40の基端部41が当接している。揺動部材32は、ベール支持部材2dの回動に伴って揺動し、移動部材40の基端部41を径方向内方に押圧する作用をなす。揺動部材32の後端部には、移動部材40の基端部41を逃がす凹部32aが設けられている。
揺動部材32は、ベール支持部材2dが釣糸巻取位置にあるときに、凹部32a内に基端部41を収容する(逃がす)。これにより、釣糸巻取位置では、基端部41に対して揺動部材32の押圧力が作用しないようになっている。
一方、この状態からベール支持部材2dが釣糸放出位置に反転操作されると、図2(b)に示すように、揺動部材32の揺動に伴って基端部41が凹部32aから立ち上がる傾斜面32bによって凹部32a外に押し出されるようにして移動し、基端部41に径方向内方への押圧力が付与される。
移動部材40は、図4に示すように、側面視で略く字状を呈する棒状の部材である。移動部材40は、ロータ2のアーム部2bの後端部に配設されている。移動部材40は、アーム部2bの後端に設けられたガイド部45に先端部42側が挿通されて支持されており、支持された状態で基端部41が揺動部材32の後端部に当接するように構成されている。
なお、ガイド部45に挿通された状態で、移動部材40の先端部42側の軸線O1は、スプール軸9の軸線(不図示)に対して直交している。また、移動部材40の基端部41側の軸線O2は、先端部42側の軸線O1に対してリール本体1の前方へ傾斜している。
移動部材40は、先端部42側に挿通された圧縮コイルバネ44(戻しバネ)で基端部41側(揺動部材32の後端部側、制動部材50から離れる側)に向けて付勢されている。
このような移動部材40は、ベール支持部材2dが釣糸放出位置に反転操作された際に、基端部41が揺動部材32の後端部で径方向内方に押圧されてリール本体1側に移動(突出)する。そして、先端部42の端部43が制動部材50に圧接されて係止されることで、ロータ2に制動力が付与される。
また、移動部材40は、ベール支持部材2dが釣糸巻取位置に返されると、圧縮コイルバネ44の付勢力によって基端部41が揺動部材32の凹部32aに収容される。これにより、先端部42の端部43が制動部材50から離れ、移動部材40と制動部材50との係合が解除される。
次に、制動部材50及びこれを収容する収容溝13について説明する。図4に示すように、リール本体1の前部11には、径方向に突出し周方向に環状とされたフランジ部12が形成されており、このフランジ部12に収容溝13が形成されている。
フランジ部12の後側には、リール本体1の前壁1fとの間に肉抜き部15が形成されている。また、フランジ部12の前側には、段差部12cが形成されている。段差部12cには、円筒状のキャップ1eの後端部が当接している。キャップ1eは、リール本体1の前部に形成された円筒状のフランジ部1aに螺合により固着されている。
収容溝13は、径方向外側に向けて開口する環状の凹状溝である。収容溝13は、断面形状が逆台形状を呈しており、前内面13aと後内面13bとが径方向外方から径方向内方へ向かうにつれて窄まるテーパ状の傾斜面とされている。本実施形態では、軸線O1に対する前内面13aの傾斜角度と後内面13bの傾斜角度とを同じ角度に設定してある。なお、前内面13aと後内面13bとの傾斜角度は、実施形態のものに限られることはなく、相互に異ならせてもよいし、前内面13aと後内面13bとのうち、一方または両方を傾斜角度を持たない略垂直な面として形成してもよい。
収容溝13の開口縁となる前外周縁12aと後外周縁12bとは、径寸法(径方向外方への突出高さ)を相互に異ならせている。本実施形態では、前外周縁12aの径寸法を後外周縁12bの径寸法よりも小さく設定して径方向外側への突出量を小さく設定している。これにより、前外周縁12aと対向配置される、ロータ2の円筒部2aの内面との間にスペースを確保している。
制動部材50は、合成ゴム等の弾性部材からなる環状の部材であり、収容溝13に嵌め込まれることで、フランジ部12に外嵌されている。制動部材50は、収容溝13に対応する断面逆台形状を呈している。制動部材50は、前外面53aと後外面53bとが径方向外方から径方向内方へ向かうにつれて窄まるテーパ状の傾斜面とされている。軸線O1に対する前外面53aの傾斜角度と後外面53bの傾斜角度とは、収容溝13の前内面13aと後内面13bの傾斜角度と同じ角度に設定してある。なお、前外面53aと後外面53bとの傾斜角度は、これに限られることはなく、相互に異ならせてもよいし、前外面53aと後外面53bとのうち、一方または両方を傾斜角度を持たない略垂直な面として形成してもよい。
制動部材50の下部51の前部及び後部には、切欠部54,54が形成されている。各切欠部54は、周方向に連続して形成されており、収容溝13との間に隙間を形成している。この隙間は、制動部材50が圧縮変形した際の逃げ部として機能する。
以上のような制動部材50は、収容溝13の底面14、前内面13a及び後内面13bに、内周面50b、前外面53a及び後外面53bが当接する状態に(略密着する状態に)収容される。制動部材50の外周面(外周部)50aは、収容溝13の後外周縁12bと略面一に配置される。
次に、以上のような構成を備えた魚釣用スピニングリールR1の作用について説明する。
仕掛けを投擲する際に、ベール2fおよびベール支持部材2d(2e)を図2(a)に示す釣糸巻取位置から図2(b)に示す釣糸放出位置に反転させると、揺動部材32の後端部が揺動し、移動部材40の基端部41を径方向内方へ押圧する。
この押圧で、基端部41が凹部32aの側方の外部へ押し出されるように移動し、移動部材40が圧縮コイルバネ44の付勢力に抗してリール本体1側に移動する。この移動により、先端部42の端部43が制動部材50の外周面50aに喰い込むように圧接し、端部43が制動部材50に係止される。
これによって、ロータ2に制動力が付与され、ロータ2の不要な回転が防止されるため、釣糸ピックアップ位置の変化や釣糸放出操作時のロータ2の回転による誤復帰が解消される。
以上説明した本実施形態の魚釣用スピニングリールR1では、ベール支持部材2dの反転操作に連動して移動部材40の端部43が制動部材50の外周面50aに圧接すると、収容溝13及び制動部材50のテーパ状の面の存在により制動部材50が収容溝13に対して断面くさび状に食い込むように圧縮変形して楔係合する。これにより、収容溝13や制動部材50の寸法のバラツキの影響で制動部材50が収容溝13に対して滑ったり、制動部材50が移動部材40で押されて周方向に波打つ現象等の不具合が解消される。したがって、ロータ2の制動ムラが防止され、安定したロータ2の制動を実現できる。
また、収容溝13に対して従来のようなアンダーカット状の切削加工を行わずに、例えば金型成形も可能となるので、製造コストを低減できる。
また、断面くさび状の圧縮変形による係合であるので、収容溝13に制動部材50がしっかりと密着して保持され、収容溝13から制動部材50が脱落するのを確実に防止できる。
さらに、制動部材50及び収容溝13の全ての面が傾斜面とされているので、制動部材50の前後両側が断面くさび状に略均等に圧縮変形して係合する。したがって、製品の寸法のバラツキによる不具合を解消して(寸法誤差の吸収変形をして)安定したロータ2の制動を得ることができ、加えて製造コストを低減することができる魚釣用スピニングリールR1が得られる。
また、制動部材50に傾斜面を形成することなく、収容溝13の前内面13a及び後内面13bの一方に傾斜面を形成した場合にも、制動部材50がその傾斜面に倣って断面くさび状に圧縮変形して係合する。したがって、ロータ2の制動ムラが防止され、安定したロータ2の制動を実現できる。また、制動部材50に傾斜面を形成することなく、収容溝13の両方の内面に傾斜面を形成した場合にも、制動部材50がより断面くさび状に圧縮変形するため、ロータ2の制動ムラがより防止されることとなり、一層安定したロータ2の制動を実現できる。
さらに、制動部材50の前外面53aとこれに対向する収容溝13の前内面13a、または、制動部材50の後外面53bとこれに対向する収容溝13の後内面13bに傾斜面を形成した場合にも同様の作用効果が得られる。つまり、制動部材50の前後の一方の側が断面くさび状に圧縮変形して係合が強まることとなるので、製品の寸法のバラツキによる不具合を解消して安定したロータ2の制動を得ることができ、加えて製造コストを低減することができる魚釣用スピニングリールが得られる。
図5は第1変形例を示す断面図であり、図6は第2変形例を示す断面図である。
図5に示す第1変形例は、前外周縁12aと制動部材50Aとの間、及び後外周縁12bと制動部材50Aとの間に、溝部18を設けたものである。
なお、制動部材50Aの下部51には、切欠部54(図4参照)が設けられていない。
この第1変形例では、前記実施形態の作用効果に加えて、制動部材50Aの圧縮変形時に、溝部18内に制動部材50Aが膨出変形するので、収容溝13に制動部材50Aがしっかりと密着して保持され、収容溝13から制動部材50Aが脱落するのを確実に防止できる。
図6に示す第2変形例は、制動部材50Bの下部51の中央部に切欠き凹部56を設けたものである。切欠き凹部56は、周方向に連続して形成されている。切欠き凹部56は、制動部材50Bが圧縮変形した際の逃げ部として機能する。なお、切欠き凹部56の大きさは適宜設定することができる。
この第2変形例においても、前記実施形態と同様の作用効果が得られる。
(第2実施形態)
図7(a)(b)を参照して第2実施形態の魚釣用スピニングリールについて説明する。
本実施形態が前記第1実施形態と異なるところは、図7(a)に示すように、保持部材16をリール本体1の前部11のフランジ部12Aに螺合することで収容溝13Aを構成した点である。収容溝13Aには、後外面53bのみが傾斜面とされた制動部材50Cが嵌め込まれている。
フランジ部12Aは、周方向に環状に形成されており、収容溝13Aの後内面13bを形成する周壁12f及び収容溝13Aの底面14を形成する突壁12dを備えている。後内面13bは、第1実施形態と同様の傾斜面とされている。突壁12dは、周壁12fから前方へ張り出しており、外周面が底面14を形成し、内周面が前部11の外面11fとの間にスペースS1を形成して離間している。突壁12dの内周面には、スペースS1に露出する雌ねじ12eが形成されている。
保持部材16は、前方からフランジ部12Aに取り付けられる環状の部材であり、断面L字形状を呈している。保持部材16は、スペースS1に挿入されて突壁12dに取り付けられる基部16bと、基部16bから径方向外側に延在する延在部16aとを備えている。基部16bの外周面には、突壁12dの雌ねじ12eに螺合する雄ねじ16eが形成されている。保持部材16は、この基部16bの雄ねじ16eを突壁12dの雌ねじ12eに螺合して締め付けることにより、フランジ部12Aに固着される。
延在部16aは、フランジ部12Aの底面14に直交する方向に延在しており、底面に垂直な収容溝13Aの前内面16gを形成している。
制動部材50Cは、収容溝13Aの後外周縁12bと略面一に配置される外周面50aと、保持部材16の延在部16aの前内面16gに当接する前外面53cと、フランジ部12Aの周壁12fの後内面13bに当接する後外面53bと、収容溝13Aの底面14に当接する内周面50bと、を備えている。制動部材50Cは、前外面53cが延在部16aの前内面16gに対向する垂直な面であり、後外面53bが周壁12fの後内面13bに対向する傾斜面である。
このような制動部材50Cは、図7(b)に示すように、保持部材16をフランジ部12Aに取り付ける前の段階で、フランジ部12Aに装着することができる。つまり、フランジ部12Aの前方からフランジ部12Aに嵌め込むことで制動部材50Cの装着が完了する。
以上説明した本実施形態の魚釣用スピニングリールR1は、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、フランジ部12Aの前方からフランジ部12Aに嵌め込むことで制動部材50Cの装着が完了するので、弾性を利用して径方向外側から嵌め込む場合に比べて、装着作業が簡単である。
なお、保持部材16をフランジ部12Aに螺合して締め付けることで、制動部材50Cに予め圧縮力が付与されるように構成してもよい。このようにすることで、収容溝13Aにおける制動部材50Cの保持性が高まる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、制動部材50(50A~50C)の形状は限定されるものではなく、断面くさび状に圧縮変形して係合するものであれば、断面四角形状や断面三角形状等、種々の形状のものを採用することができる。
また、収容溝13,13Aの形状も限定されるものではなく、アンダーカット状の切削加工を行わずに形成できるとともに、制動部材50(50A~50C)が断面くさび状に圧縮変形して係合可能なものであれば種々の形態、形状のものを採用することができる。
1 りール本体
2 ロータ
5 ハンドル
2d ベール支持部材
13 収容溝
13a 前内面
13b 後内面
40 移動部材
43 端部
50 制動部材
50a 外周部
50A~50C 制動部材
53a 前外面
53b 後外面
R1 魚釣用スピニングリール

Claims (1)

  1. ハンドルの巻取操作に連動回転するロータと、
    前記ロータのアーム部に支持され、釣糸巻取位置と釣糸放出位置とに回動可能なベール支持部材と、
    前記ベール支持部材の釣糸放出位置への回動に連動してリール本体側に移動する移動部材と、
    前記リール本体に設けられ、移動した前記移動部材の端部が圧接することで前記ロータに制動力を付与する制動部材と、
    前記リール本体側に形成され、前記制動部材を収容する凹状の収容溝と、を備え、
    前記制動部材は、前記移動部材が当接する外周部と、前記外周部に連続し径方向内方に向けて延在する前外面及び後外面と、を有し、
    前記収容溝は、前記前外面及び前記後外面がそれぞれ当接する前内面及び後内面を有し、
    前記前外面、前記後外面、前記前内面及び前記後内面のうち、少なくとも1つの面は、径方向外方から径方向内方に向かうにつれて窄まるように傾斜する傾斜面であり、
    前記傾斜面は、前記制動部材の前記前外面、前記後外面、及び前記収容溝の前記前内面、前記後内面の全ての面に形成されていることを特徴とする魚釣用スピニングリール。
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