JP3809111B2 - 魚釣用リールの逆転防止装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハンドルの操作に連動回転する回転軸の逆転防止を図る魚釣用リールの逆転防止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の逆転防止装置として、ロータ回転軸筒等の回転軸に設けた逆転防止爪車(逆転防止体)に、逆転防止爪(係止部材)を係脱自在に配置すると共に、ハンドル軸や当該ロータ回転軸筒等の外周に巻着した巻きバネ(摩擦作動体)の一端部を逆転防止爪に係止させて、当該逆転防止爪をハンドルの正逆転と連動(フリクション作用)させて逆転防止爪車に係脱させるものが広く知られている。
【0003】
しかし、この逆転防止装置は、線材によって巻きバネを常に一定形状に加工することが難しく、また、取扱時に変形し易いため、これをリール本体に組み込んだ際にバネ力にばら付きが生じて逆転防止機能が安定せず、更にまた、当該巻きバネを巻着したハンドル軸やロータ回転軸筒等の外周が摩耗してしまう等の問題点があった。
【0004】
そこで、斯かる問題点を解決するため、上述した巻きバネに代え、図11及び図12に示すように環状作動体(摩擦作動体)1をスピニングリール3のハンドル軸5に回動可能に装着した逆転防止装置7が特許第2805720号公報に開示されている。
環状作動体1は、その内周面にハンドル軸5を押圧する摩擦部材9が径方向に圧接自在に収容されると共に、その他端側に、ロータ回転軸筒11に取り付く逆転防止爪車13に係脱自在な逆転防止爪15を操作する係合部17が設けられており、当該逆転防止爪15は、上記逆転防止爪車13に常時係合するように付勢されてリール本体19に軸支され、そして、環状作動体1の係合部17に係合する作動突部21が設けられている。
【0005】
その他、図11に於て、23はリール本体19に挿着された従来周知の切換えカムを示し、当該切換えカム23の操作で逆転防止爪15を逆転防止爪車13から離間位置に切り換えることで、ロータ回転軸筒11に取り付くロータ25が正逆転自在となる。
また、図12に於て、27は前記摩擦部材9をハンドル軸5の外周にバネ付勢するコイルスプリングで、図示するように摩擦部材9とコイルスプリング27は、環状作動体1に設けた収納部29内に収納されている。
【0006】
而して、上記逆転防止装置7によれば、図11の如く切換えカム23の操作で逆転防止爪15を逆転防止爪車13に係合させてハンドル軸5を巻取り方向(図中、反時計回り方向)に回転させると、環状作動体1がハンドル軸5と共に回転し、係合部17が作動突部21に係合して逆転防止爪15を逆転防止爪車13から離間状態に保持したままハンドル軸5の回転に対して滑り、また、この状態に於て、ロータ25が釣糸繰出し方向である時計回り方向に逆転しようとすると、逆転防止爪15と逆転防止爪車13との係合作用でロータ25の逆転が防止されることとなる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし乍ら、上記環状作動体1は、図11に示すように収納部29がハンドル軸5の径方向外方に大きく延設されているため、リール本体19の限られたスペース内にコンパクトに装着できず、また、環状作動体1の構造上、ハンドル軸5の外周に圧接する摩擦部材9の圧接面が制約されて小さいため、安定した摩擦力が得られ難く耐久性にも劣る等の課題が残されていた。
【0008】
本発明は斯かる実情に鑑み案出されたもので、リール全体の小型化を可能としつつ、耐久性に優れ安定した逆転防止機能を有する魚釣用リールの逆転防止装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
斯かる目的を達成するため、請求項1に係る発明は、ハンドルの回転操作に連動して回転する回転軸の外周に取り付く摩擦作動体を係止部材に係合させ、ハンドル回転による当該摩擦作動体のフリクション作用で、当該係止部材を回転軸に設けた逆転防止体に係脱させる魚釣用リールの逆転防止装置に於て、上記摩擦作動体を、回転軸の周方向に亘って形成された左右一対の挟着体と、当該両挟着体を回転軸の径方向に圧接させる弾性部材とで構成したことを特徴とする。
【0010】
そして、請求項2に係る発明は、請求項1記載の逆転防止装置に於て、左右一対の挟着体は別体に形成されて連結されていることを特徴とし、請求項3に係る発明は、請求項1記載の逆転防止装置に於て、左右一対の挟着体は一体に形成されていることを特徴とする。
【0011】
(作用)
各請求項に係る発明によれば、弾性部材が左右一対の挟着体を回転軸の径方向に常時圧接させているが、ハンドルの巻取り方向への回転操作に伴い回転軸が同方向へ回転しようとすると、これに取り付く摩擦作動体のフリクション作用で係止部材と逆転防止体との係合状態が解除されて、回転軸の同方向への回転が可能となる。
【0012】
そして、回転軸が釣糸繰出し方向へ逆転しようとすると、係止部材と逆転防止体との係合作用で回転軸の逆転が防止されることとなる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0014】
図1は請求項1及び請求項2の一実施形態に係る逆転防止装置を装着したスピニングリール、図2は逆転防止装置の拡大正面図を示し、図2に於て、31は図示しない軸受を介してリール本体33の前部に回転可能に支持された中空なロータ回転軸筒で、その先端に図1に示すロータ35がナットで固定されている。そして、ロータ回転軸筒31の後端側外周に取り付くピニオン37にハンドル軸39に装着した駆動歯車41が噛合しており、ハンドル43の巻取り操作で、ロータ35がハンドル軸39,駆動歯車41,ピニオン37,ロータ回転軸筒31を介して釣糸巻取り方向へ回転するようになっている。
【0015】
そして、ロータ35の基部には一対の支持アーム45が一体成形されており、両支持アーム45の先端に、半環状のベール47が図示しないベールアームとベールホルダー49を介して釣糸巻取位置と釣糸放出位置へ反転自在に取り付けられている。
また、図2中、51はロータ回転軸筒31を挿通してリール本体33に取り付くスプール軸で、当該スプール軸51のロータ側突出端に図1に示すスプール53が取り付き、そして、スプール軸51の後端側にトラバース機構55が装着されている。
【0016】
トラバース機構55は、軸受57,59を介してリール本体33にスプール軸51と平行に支持されたトラバースカム軸61と、当該トラバースカム軸61のカム溝63に係合する図示しない係合爪を保持した摺動子65とで構成されており、当該摺動子65にスプール軸51の後端部がビス67で固定されている。
そして、トラバースカム軸61の前端部に固着された従動歯車69がピニオン37に噛合しており、ベール47を釣糸巻取位置側へ倒してハンドル操作でロータ35を巻取り方向へ回転させると、ピニオン37,従動歯車69によりトラバースカム軸61が回転して摺動子65がトラバースカム軸61上を往復動するので、当該摺動子65に連結されたスプール軸51を介してスプール53がリール本体33の前後方向へ往復動して、スプール53に釣糸が巻回されるようになっている。
【0017】
而して、本実施形態に係るスピニングリール71も、上述の如き従来と同様の構成に加え、図2に示すようにハンドル43の操作に連動回転するロータ回転軸筒31の逆転防止を図る逆転防止装置73がリール本体33内に装着されている。
即ち、図中、75はロータ回転軸筒31の後端側外周に装着された逆転防止爪車(逆転防止体)、77は当該逆転防止爪車75に常時係合するようにバネ部材79で付勢された逆転防止爪(係止部材)で、当該逆転防止爪77はリール本体33に軸支され、ハンドル軸39側に、後述する係合部81に係合する作動突部83と、切換えカム85の外周に設けた断面半円形状の切欠き部87に常時付勢された作動突部89とが設けられている。
【0018】
切換えカム85は、リール本体33の後方に突出する後端部に切換えレバー91が装着されており、図11の従来例と同様、切換えレバー91(切換えカム85)の操作で逆転防止爪77を逆転防止爪車75から離間位置に切り換えることで、ロータ回転軸筒31に取り付くロータ35が正逆両方向へ回転可能となる。そして、ハンドル軸39に、別体に形成された左右一対の挟着体93,95と、両挟着体93,95をハンドル軸39の径方向に圧接させるコイルスプリング(弾性部材)97からなる摩擦作動体99が回動可能に取り付けられている。
【0019】
図3乃至図8に示すように左右一対の挟着体93,95は、夫々、ハンドル軸39の周方向に沿って平面視略半円弧状に形成されており、一方の挟着体93は、図3乃至図5の如く一端側に連結ピン101がハンドル軸39と平行に突設された平面視略楕円形状の連結突片103が形成され、他端側には既述したコイルスプリング97の一端を係止する切欠き105が設けられた平面視略長円形状の係止突片107が形成されている。
【0020】
そして、挟着体93の内周に沿って両突片103,107間に、幅広な半円筒状の圧接体109がハンドル軸39の軸線方向に亘って設けられており、その内周面111がハンドル軸39の外周に圧接する圧接面として機能するようになっている。
また、図6乃至図8に示すように他方の挟着体95は、上記連結ピン101との連結孔113が開口する平面視略楕円形状の連結突片115が一端側に形成されると共に、当該連結突片115から他端側に至る幅広な半円筒状の圧接体117がハンドル軸39の軸線方向に亘って設けられており、その内周面119がハンドル軸39の外周に圧接する圧接面として機能するようになっている。そして、挟着体95の外周に、コイルスプリング97の他端を係止する切欠き121を設けた係止突片123が突設されている。
【0021】
而して、図2に示すように両挟着体93,95は、ハンドル軸39を左右から挟持した状態で連結ピン101を介して連結されており、両連結突片103,115が既述した係合部81を構成している。そして、係止突片107,123間の切欠き105,121間にコイルスプリング97が架け渡されており、当該コイルスプリング97のバネ力で両挟着体93,95がハンドル軸39の径方向に圧接されている。
【0022】
そして、図2の如く切換えレバー91(切換えカム85)の操作で逆転防止爪77を逆転防止爪車75に係合させて、ハンドル43を釣糸巻取り方向(図1中、反時計回り方向)に回転させると、摩擦作動体99がハンドル軸39と共に回転し、係合部81が作動突部83に係合して逆転防止爪77を逆転防止爪車75から離間状態に保持したままハンドル軸39の回転に対して滑り、また、この状態でロータ35(ロータ回転軸筒31)が釣糸繰出し方向に逆転しようとすると、逆転防止爪77と逆転防止爪車75との係合作用でロータ35の逆転が防止されるようになっている。
【0023】
本実施形態はこのように構成されているから、既述したように切換えレバー91の操作で逆転防止爪77を逆転防止爪車75に係合させて、ベール47を釣糸巻取位置側へ倒してハンドル43を釣糸巻取り方向に回転させれば、摩擦作動体99がハンドル軸39と共に回転し、係合部81が作動突部83に係合して逆転防止爪77を逆転防止爪車75から離間状態に保持したままハンドル軸39の回転に対して滑るので、ロータ35が釣糸巻取り方向へ回転し、そして、ピニオン37,従動歯車69によりトラバースカム軸61が回転して摺動子65がトラバースカム軸61上を往復動し、当該摺動子61に連結されたスプール軸51によりスプール53がリール本体33の前後方向へ往復動してスプール53に釣糸が巻回される。
【0024】
また、上述の如く逆転防止爪77が逆転防止爪車75に係合した状態でロータ35が釣糸繰出し方向に逆転しようとすると、逆転防止爪77と逆転防止爪車75との係合作用でロータ35の逆転が防止されることとなる。
そして、切換えレバー91を操作して逆転防止爪77を逆転防止爪車75から離間させておけば、ロータ回転軸筒31に取り付くロータ35が正逆両方向へ回転可能となる。
【0025】
このように、本実施形態は、既述した構成からなる左右一対の挟着体93,95とコイルスプリング97を用いて摩擦作動体99を形成したので、図11以下に示す環状作動体1に比し、挟着体93,95の内周面111,119によってハンドル軸39の外周に圧接する広い圧接面が確保でき、この結果、斯かる従来例に比し安定した摩擦力が得られると共に耐久性に優れるため、良好なフリクション作用が得られて安定した逆転防止機能を確保することが可能となった。
【0026】
而も、本実施形態によれば、上記従来例に比しハンドル軸39の径方向外方への突出量も少ないため、リール全体の小型化が図れる利点を有する。
尚、上記実施形態では、図3乃至図8に示すように左右一対の挟着体93,95を別体構造としてこれらを連結ピン101で連結したが、図9に示す請求項1及び請求項3の第一実施形態の如く、摩擦作動体99-1の左右一対の挟着体93-1,95-1を一体成形して、係止突片107,123の切欠き105,121間にコイルスプリング97を架け渡すと共に、逆転防止爪77の作動突部83に係合する係合部81-1を外方に突設させてもよい。
【0027】
また、図10は請求項1及び請求項3の第二実施形態に係る逆転防止装置73-2を示し、この実施形態は、摩擦作動体99-2の左右一対の挟着体93-2,95-2を一体成形して、逆転防止爪77の作動突部83に係合する係合部81-2を外方に突設すると共に、既述したコイルスプリング97に代え、平面視C字形状のバネ125を両挟着体93-2,95-2の外周に設けた取付溝127に装着して、当該バネ125のバネ力で両挟着体93-2,95-2をハンドル軸39の径方向に圧接させたものである。
【0028】
而して、これらの各逆転防止装置73-1,73-2によっても、図2の逆転防止装置73と同様、所期の目的を達成することが可能である。
尚、上述した各実施形態は、摩擦作動体をスピニングリールのハンドル軸に、そして、逆転防止爪車をロータ回転軸筒に装着したが、特許第2805720号公報に開示されるように環状作動体と逆転防止爪車をロータ回転軸筒に装着した逆転防止装置や、環状作動体と逆転防止爪車を両軸受リールのハンドル軸に装着した逆転防止装置に本発明を適用することが可能で、当該従来例の環状作動体に代えて上記摩擦作動体を装着することで、従来に比し安定した逆転防止機能を確保することができ、リール全体の小型化が図れる利点を有する。
【0029】
【発明の効果】
以上述べたように、各請求項に係る発明によれば、摩擦作動体の左右一対の挟着体によって、従来に比し回転軸の外周に圧接する広い圧接面が確保できるため、摩擦作動体の安定した摩擦力が得られると共に耐久性に優れ、この結果、良好なフリクション作用が得られて安定した逆転防止機能を確保することが可能となった。
而も、これらの発明によれば、従来に比し回転軸の径方向外方への摩擦作動体の突出量が少ないため、リール全体の小型化が図れる利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1及び請求項2の一実施形態に係る逆転防止装置を装着したスピニングリールの正面図である。
【図2】図1のスピニングリールに装着した逆転防止装置の拡大正面図である。
【図3】挟着体の正面図である。
【図4】挟着体の側面図である。
【図5】挟着体の背面図である。
【図6】挟着体の正面図である。
【図7】挟着体の側面図である。
【図8】挟着体の背面図である。
【図9】請求項1及び請求項3の第一実施形態に係る逆転防止装置の拡大正面図である。
【図10】請求項1及び請求項3の第二実施形態に係る逆転防止装置の拡大正面図である。
【図11】逆転防止装置を装着した従来のスピニングリールの要部切欠き正面図である。
【図12】環状作動体の分解斜視図である。
【符号の説明】
31 ロータ回転軸筒
33 リール本体
35 ロータ
39 ハンドル軸
51 スプール軸
53 スプール
71 スピニングリール
73,73-1,73-2 逆転防止装置
75 逆転防止爪車
77 逆転防止爪
81,81-1,81-2 係合部
93,93-1,93-2,95,95-1,95-2 挟着体
97 コイルスプリング
99,99-1,99-2 摩擦作動体
103,115 連結突片
107,123 係止突片

Claims (3)

  1. ハンドルの回転操作に連動して回転する回転軸の外周に取り付く摩擦作動体を係止部材に係合させ、ハンドル回転による当該摩擦作動体のフリクション作用で、当該係止部材を回転軸に設けた逆転防止体に係脱させる魚釣用リールの逆転防止装置に於て、
    上記摩擦作動体を、回転軸の周方向に亘って形成された左右一対の挟着体と、当該両挟着体を回転軸の径方向に圧接させる弾性部材とで構成したことを特徴とする魚釣用リールの逆転防止装置。
  2. 左右一対の挟着体は別体に形成されて連結されていることを特徴とする請求項1記載の魚釣用リールの逆転防止装置。
  3. 左右一対の挟着体は一体に形成されていることを特徴とする請求項1記載の魚釣用リールの逆転防止装置。
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