JP4233166B2 - スピニングリールのスプール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スプール、特に、リール本体に対して前後移動自在なスピニングリールのスプールに関する。
【0002】
【従来の技術】
スピニングリールのスプールは、釣り糸が巻かれる糸巻胴部を含むスプール本体と、スプール本体の前端に配置された大径のフランジ部と、フランジ部をスプール本体に固定するためのカラー部材とを有している。そしてドラグ機構付きのスピニングリールでは、糸巻胴部の内部にドラグ機構を収納するための空間が形成されている。
【0003】
この種のスプールでは、フランジ部には円周方向に間隔をあけて貫通孔が形成されている。一方、スプール本体にはその内周側に突出して厚肉部が形成されており、この厚肉部に前記貫通孔と連通するネジ孔が設けられている。そして、フランジ部の貫通孔にビスを挿入し、スプール本体のネジ孔にビスを螺合することにより、フランジ部がスプール本体に固定されている。またフランジ部にはさらに別の貫通孔が形成されるとともに、スプール本体の他の厚肉部にはこれらの貫通孔に連通するようにネジ孔が設けられている。そして、カラー部材にはこれらの貫通孔及びネジ孔に対応する位置に貫通孔が形成されており、これらの貫通孔及びネジ孔を利用してビスにより、カラー部材がフランジ部を通してスプール本体に固定されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようなスピニングリールのスプールでは、フランジ部及びカラー部材は、ビスによってスプール本体にそれぞれ直接固定されている。このためスプール本体側には前述したような多くの厚肉部を形成する必要がある。しかしスプール本体に厚肉部を形成すると、スプールの重量が増加し、リールの軽量化が妨げられる。
【0005】
本発明の課題は、スピニングリールのスプールにおいて、スプール本体の軽量化を図ることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明1に係るスピニングリールのスプールは、リール本体に対して前後移動自在なスピニングリールのスプールであって、糸巻胴部を有する筒状のスプール本体と、糸巻胴部の前端に別体で装着され糸巻胴部の外径より大きい外径を有する環状のフランジ部と、フランジ部の前方側の面に別体で取り付けられたカラー部材と、フランジ部にカラー部材を固定するための固定手段とを備えている。糸巻胴部は、筒状部と、筒状部の内周側に円周方向に間隔を隔てて形成された厚肉部とを有している。フランジ部は、厚肉部の前部にビスにより固定されている。カラー部材の後部には、カラー部材をフランジ部に装着したとき、ビスの頭部が収納可能な収納孔が設けられている。
【0007】
このスピニングリールのスプールでは、スプール本体にフランジ部が装着され、フランジ部にカラー部材が取り付けられている。ここではフランジ部にカラー部材が取り付けられているので、従来のようにカラー部材をスプール本体に取り付けるための厚肉部をスプール本体に設ける必要がなくなり、スプール本体の軽量化を図ることができる。さらに、この場合は、フランジ部は糸巻胴部にビスにより固定されているので、両部材の固定が容易になる。
【0008】
発明2に係るスピニングリールのスプールは、発明1のスピニングリールのスプールにおいて、固定手段は、フランジ部に形成されたネジ孔と、カラー部材に設けられた貫通孔と、貫通孔に挿入されネジ孔に螺合するビスとを有している。この場合、容易にかつ確実に両部材を固定することができる。
【0009】
発明3に係るスピニングリールのスプールは、発明1のスピニングリールのスプールにおいて、固定手段は、フランジ部の内周部に形成された切欠き部と、カラー部材側に突出して設けられ、切欠き部を挿通可能でかつ先端部にフランジ部に係止可能な係止部を有する突出部とを有している。
【0010】
このようなスピニングリールのスプールでは、まずカラー部材の突出部をフランジ部の切欠き部に挿入する。そして、カラー部材をたとえば回転させることにより、突出部の係止部をフランジ部に係止して固定する。この場合は、たとえばバヨネット構造を有する回転押圧結合等によって、容易にかつ確実に両部材を固定することができる。
【0011】
発明4に係るスピニングリールのスプールは、発明1のスピニングリールのスプールにおいて、固定手段は、フランジ部の内周部に形成された係合孔と、カラー部材に設けられ弾性圧入により係合孔に係合可能な係合部とを有している。
【0012】
このようなスピニングリールのスプールでは、カラー部材の係合部をフランジ部の係合孔に挿入し、係合部をフランジ部に係合して固定している。この場合、さらに容易にかつ確実に両部材を固定することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を採用したスピニングリールは、図1に示すように、ハンドル1を回転自在に支持するリール本体2と、ロータ3と、スプール4とを備えている。ロータ3は、リール本体2の前部に回転自在に支持されている。スプール4は、釣り糸を外周面に巻き取るものであり、ロータ3の前部に前後移動自在に配置されている。
【0014】
リール本体2は、リールボディ2aと、リールボディ2aから斜め上前方に延びる竿取付脚2bとを有している。リールボディ2aは、図2に示すように内部に空間を有しており、その空間内には、ロータ3をハンドル1の回転に連動して回転させるロータ駆動機構5と、スプール4を前後に移動させて釣り糸を均一に巻き取るためのオシレーティング機構6とが設けられている。
【0015】
ロータ駆動機構5は、ハンドル1が固定されたハンドル軸10とともに回転するフェースギア11と、このフェースギア11に噛み合うピニオンギア12とを有している。ピニオンギア12は筒状に形成されており、その前部はロータ3の中心部を貫通しており、ナット13によりロータ3と固定されている。ピニオンギア12は、その軸方向の中間部と後端部とが、それぞれ軸受14a、14bを介してリール本体2に回転自在に支持されている。
【0016】
オシレーティング機構6は、スプール4の中心部にドラグ機構60を介して連結されたスプール軸15を前後方向に移動させてスプール4を同方向に移動させるための機構である。オシレーティング機構6は、スプール軸15の下方に平行に配置された螺軸21と、螺軸21に沿って前後方向に移動するスライダ22と、螺軸21の先端に固定された中間ギア23とを有している。スライダ22にはスプール軸15の後端が回転不能に固定されている。中間ギア23は、ピニオンギア12に噛み合っている。
【0017】
ロータ3は、図2に示すように、円筒部30と、円筒部30の側方に互いに対向して設けられた第1及び第2ロータアーム31、32とを有している。円筒部30と両ロータアーム31、32とは、たとえばアルミニウム合金製であり、一体成形されている。
【0018】
円筒部30の前部には前壁33が形成されており、前壁33の中央部にはボス部34が形成されている。ボス部34の中心部には貫通孔が形成されており、この貫通孔をピニオンギア12及びスプール軸15が貫通している。前壁33の前部にナット13が配置されており、このナット13の内部にスプール軸15を回転自在に支持する軸受35が配置されている。
【0019】
第1ロータアーム31は、円筒部30から外方に凸に湾曲して前方に延びており、円筒部30との接続部は円筒部30の周方向に広がり湾曲している。第1ロータアーム31の先端の外周側には、第1ベール支持部材40が揺動自在に装着されている。第1ベール支持部材40の先端には、釣り糸をスプール4に案内するためのラインローラ41が装着されている。
【0020】
第2ロータアーム32は、円筒部30から外方に凸に湾曲して前方に延びている。第2ロータアーム32は、先端部から円筒部30との接続部分に向けて2股に分岐しており、周方向に間隔を隔てた2箇所で円筒部30に接続されている。第2ロータアーム32の先端内周側には、第2ベール支持部材42が揺動自在に装着されている。
【0021】
ラインローラ41と第2ベール支持部材42との間には線材を略U状に湾曲させた形状のベール43が固定されている。これらの第1及び第2ベール支持部材40、42、ラインローラ41及びベール43により釣り糸をスプール4に案内するベールアーム44が構成される。ベールアーム44は、図2に示す糸案内姿勢とそれから反転した糸開放姿勢(図示せず)との間で揺動自在である。
【0022】
ロータ3の円筒部30の内部にはロータ3の逆転を禁止・解除するための逆転防止機構50が配置されている。逆転防止機構50は、図2に示すように、内輪が遊転するローラ型のワンウェイクラッチ51と、ワンウェイクラッチ51を作動状態(逆転禁止状態)と非作動状態(逆転許可状態)とに切り換える切換機構52とを有している。
【0023】
スプール4は、ロータ3の第1ロータアーム31と第2ロータアーム32との間に配置されており、スプール軸15の先端にドラグ機構60を介して装着されている。スプール4は、スプール本体7と、スプール本体7の前端に装着された大径のフランジ部8と、フランジ部8の前方側に装着されたカラー部材9とを有している。
【0024】
スプール本体7は、図3に拡大して示すように、外周に釣り糸が巻かれる筒状の糸巻胴部7aと、糸巻胴部7aの後部に一体で形成された大径筒状のスカート部7bとを有している。スプール本体7は、たとえばアルミニウム合金を鍛造成形して得られた大小2段の円筒状の部材であり、軸受53によりスプール軸15に回転自在に装着されている。
【0025】
糸巻胴部7aは、図3及び図4に示すように、筒状部16と、筒状部16の内周側に円周方向に間隔を隔てて4箇所に形成された厚肉部17と、厚肉部17の内周側に形成され内部空間にドラグ機構60を収納可能なドラグ収納部18とを有している。またスカート部7bは、図2に示すように、ロータ3の円筒部30を覆うように筒状に糸巻胴部7aと一体で鍛造形成されている。
【0026】
筒状部16の外周面は、スプール軸芯Xとほぼ平行でストレートな円周面16aと、円周面16aの両端から徐々に縮径する1対のテーパ面16bとで構成されている。なお、前側のテーパ面16bの先端には、全周にわたって外周側に突出する突起部が形成されている。円周面16aは、筒状部16の軸方向の中央部に形成され、1対のテーパ面16bは、その両側に同じ軸方向長さで形成されている。筒状部16の周面には、たとえば断面が三角形状の多数の環状溝(図示せず)が軸方向に間隔を隔てて形成されている。
【0027】
厚肉部17は筒状部16の内周側にそれぞれが対称となる位置に4箇所設けられている。これらの厚肉部17の前方には、フランジ部8を固定するためのビス19が螺合可能なネジ孔17aがそれぞれ1箇所ずつ計4箇所形成されている。
【0028】
フランジ部8は、金属製又は硬質セラミック製の傷つきにくいリング状の部材であり、その外径はスプール本体7の糸巻胴部7aの外径よりも大径となっている。フランジ部8は、図3及び図5に示すように、外周側が前方に傾斜するように屈曲した屈曲部8aと、中央部にカラー部材9及びドラグ機構60が挿入可能な孔部8bとを有している。この孔部8bの一部には、スプール本体7側のネジ孔17aと連通するように4つの切欠き部8cが形成されている。そして各切欠き部8cの間には、カラー部材9を固定するためのビス20が螺合可能なネジ孔8dが4箇所形成されている。
【0029】
カラー部材9は、図3及び図6に示すように、外周が前方に傾斜するように突出し、その後部が屈曲部8aの前方側の面と密着するように形成された外縁部9aを有する円板状の部材である。なおカラー部材9はドラグ機構60のつまみ部61(後述)とフランジ部8との間に釣り糸が侵入するのを防ぐためのものである。カラー部材9の中央部にはドラグ機構60が装着される孔部9bを開口とする円筒部9cが軸方向後方に突出して形成されている。円筒部9cの外周面はフランジ部8の孔部8b及びドラグ収納部18に収納されるように装着されている。孔部9bの周囲には、ビス20が挿入可能な貫通孔9dと、ビス20の頭部を収納するための貫通孔9dより大径の収納孔9eとが、フランジ部8側のネジ孔8dと連通するようにそれぞれ4箇所ずつ形成されている。またカラー部材9をフランジ部8に装着したとき、ビス19の頭部が収納可能な収納孔9fが、カラー部材9の後方に4箇所設けられている。
【0030】
ドラグ機構60は、スプール4とスプール軸15との間に装着されスプール4にドラグ力を作用させるための機構である。ドラグ機構60は、図3に示すように、ドラグ力を手で調整するためのつまみ部61と、つまみ部61によりスプール4側に押圧される複数枚のドラグ板62a、62b及び62cを含む摩擦部62とを有している。つまみ部61は、発音機構61aとスプール軸15に螺合するナット61bとを内部に有している。ドラグ板62aは、スプール軸15に回転不能に係止され、つまみ部61に接触する金属製の円板部材である。ドラグ板62bは、たとえば、フェルト製の円板部材である。ドラグ62cは、スプール軸15に回転不能に係止された金属製の円板部材であり、その後端部にドラグが作動してスプール軸15とスプール4とが相対回転すると発音する発音機構(図示せず)が装着されている。
【0031】
次にリールの操作及び動作を簡単に説明する。
【0032】
キャスティング時にはベールアーム44を糸開放姿勢に反転させる。これにより第1ベール支持部材40及び第2ベール支持部材42は揺動する。この状態で釣竿を握る手の人差し指で釣り糸を引っかけながら釣竿をキャスティングする。すると釣り糸は仕掛けの重さにより勢いよく放出される。仕掛けが着水した後ハンドル1を糸巻取方向に回転させると、ロータ駆動機構5によりロータ3が糸巻取方向に回転し、ベールアーム44がベール反転機構(図示せず)により糸巻取位置に復帰しロータ3の逆転が禁止されているので釣り糸の放出が止まる。
【0033】
釣り糸を巻き取る際には、ハンドル1を糸巻取方向に回転させる。すると、その回転がフェースギア11、ピニオンギア12を介してロータ3に伝達されロータ3が回転する。ロータ3が回転すると、ラインローラ41に案内された釣り糸がスプール4に巻き付けられる。
【0034】
このようなスピニングリールのスプール4では、スプール本体7にフランジ部8が装着され、フランジ部8にカラー部材9が装着されている。ここではフランジ部8にカラー部材9が取り付けられているので、カラー部材9をスプール本体7に取り付けるための厚肉部を別に設ける必要がなくなり、スプール本体7の軽量化を図ることができる。
【0035】
〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態におけるフランジ部8とカラー部材9との固定手段はビス20による結合であったが、図7から図9に示すように、バヨネット構造を有する回転押圧結合としてもよい。この場合、カラー部材9に設けられた突出部9gを、フランジ部8の孔部8bの一部に形成された切欠き部8eに挿入する。そしてカラー部材9を回転し、たとえばテーパ面を有する係止部9hをフランジ部8に係止することにより、フランジ部8にカラー部材9を固定することができる。
【0036】
(b) フランジ部8とカラー部材9との固定手段は、図10に示すように、フランジ部8の孔部8bにカラー部材9に設けられた係合部9iを弾性圧入係合してもよい。
【0037】
(c) フランジ部8及びカラー部材9は、図11に示すように、フランジ部8の屈曲部8aの端面とカラー部材9の外縁部9aの外周面が当接するように形成してもよい。この場合、エッジ合わせをなくすことにより、屈曲部8aと外縁部9aとの接合面をきれいに見せることができる。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、スピニングリールのスプールにおいて、スプール本体にはフランジ部が装着され、フランジ部にはカラー部材が取り付けられている。したがってスプール本体にはカラー部材を取り付けるための厚肉部を設ける必要がなくなり、スプール本体の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態によるスピニングリールの右側面図。
【図2】 前記スピニングリールの左側面断面図。
【図3】 前記スピニングリールのスプール部分の拡大断面図。
【図4】 前記スプールのスプール本体部の正面図。
【図5】 前記スプールのフランジ部の正面図。
【図6】 前記スプールのカラー部材の正面図。
【図7】 他の実施形態のスプール部分の拡大断面図。
【図8】 他の実施形態のフランジ部の背面図。
【図9】 他の実施形態のカラー部材の背面図。
【図10】 さらに他の実施形態のスプール部分の拡大断面図。
【図11】 さらに他の実施形態のスプール部分の拡大断面図。
【符号の説明】
2 リール本体
4 スプール
7 スプール本体
7a 糸巻胴部
7b スカート部
8 フランジ部
9 カラー部材
16 筒状部
17 厚肉部
18 ドラグ収納部
19、20 ビス
Claims (4)
- リール本体に対して前後移動自在なスピニングリールのスプールであって、
糸巻胴部を有する筒状のスプール本体と、
前記糸巻胴部の前端に別体で装着され、前記糸巻胴部の外径より大きい外径を有する環状のフランジ部と、
前記フランジ部の前方側の面に別体で取り付けられたカラー部材と、
前記フランジ部に前記カラー部材を固定するための固定手段とを備え、
前記糸巻胴部は、筒状部と、前記筒状部の内周側に円周方向に間隔を隔てて形成された厚肉部とを有し、
前記フランジ部は、前記厚肉部の前部にビスにより固定されており、
前記カラー部材の後部には、前記カラー部材を前記フランジ部に装着したとき、前記ビスの頭部が収納可能な収納孔が設けられている、スピニングリールのスプール。 - 前記固定手段は、前記フランジ部に形成されたネジ孔と、前記カラー部材に設けられた貫通孔と、前記貫通孔に挿入され前記ネジ孔に螺合するビスとを有している、請求項1に記載のスピニングリールのスプール。
- 前記固定手段は、前記フランジ部の内周部に形成された切欠き部と、前記カラー部材側に突出して設けられ、前記切欠き部を挿通可能でかつ先端部に前記フランジ部に係止可能な係止部を有する突出部とを有している、請求項1に記載のスピニングリールのスプール。
- 前記固定手段は、前記フランジ部の内周部に形成された係合孔と、前記カラー部材に設けられ弾性圧入により前記係合孔に係合可能な係合部とを有している、請求項1に記載のスピニングリールのスプール。
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