1.2成分型硬化吹付材
本発明の2成分型硬化吹付材は、主剤と硬化剤とを備える。
具体的には、2成分型硬化吹付材は、スプレー塗布するためのコーティングキットであって、主剤と硬化剤とを別々に備える。
2.主剤
主剤は、所定割合のキシリレンジイソシアネートの単量体を含む。
キシリレンジイソシアネートとしては、例えば、1,2-キシリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネートなどが挙げられ、好ましくは、1,3-キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
これらキシリレンジイソシアネートの単量体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
キシリレンジイソシアネートの単量体の含有割合は、主剤に対して、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、15質量%以上、さらに好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、60質量%以下、さらに好ましくは、50質量%以下、とりわけ好ましくは、40質量%以下、最も好ましくは、30質量%以下である。
キシリレンジイソシアネートの単量体の含有割合が、上記下限以上であれば、臭気を低くでき、かつ、ゲルタイムを短くすることができる。
また、この2成分型硬化吹付材を用いて得られる硬化膜(後述)の物性(引張強度、引裂強度、破断時伸びおよび耐熱性)を向上させることができる。
このような主剤を調製する方法としては、キシリレンジイソシアネートの単量体が有するイソシアネート基が、マクロポリオール(後述)が有する水酸基に対して、モル基準で多くなるように、キシリレンジイソシアネートの単量体と、マクロポリオール(後述)とを反応させることにより、第1イソシアネート基末端プレポリマーを調製する方法(第1方法)、他のイソシアネート(キシリレンジイソシアネートの単量体を除くイソシアネート成分、後述。)と、マクロポリオール(後述)とを反応させることにより、第2イソシアネート基末端プレポリマーを調製し、その後、第2イソシアネート基末端プレポリマーと、キシリレンジイソシアネートの単量体とを混合する方法(第2方法)が挙げられる。
以下、上記した各方法について、詳述する。
2.1.第1方法
第1方法では、キシリレンジイソシアネートの単量体が有するイソシアネート基が、マクロポリオール(後述)が有する水酸基に対して、モル基準で多くなるように、キシリレンジイソシアネートの単量体と、マクロポリオール(後述)とを反応させることにより、第1イソシアネート基末端プレポリマーを調製することにより、主剤(第1主剤)を調製する。
詳しくは後述するが、第1方法では、キシリレンジイソシアネートの単量体が有するイソシアネート基が、マクロポリオール(後述)が有する水酸基に対して、モル基準で多くなるように、第1イソシアネート基末端プレポリマーを調製することにより、未反応のキシリレンジイソシアネートの単量体を残存させる。これにより、所定割合のキシリレンジイソシアネートの単量体を含む第1主剤を調製する。
第1イソシアネート基末端プレポリマーは、その分子末端に、2つ以上の遊離のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーである。
第1イソシアネート基末端プレポリマーを調製するには、キシリレンジイソシアネートの単量体を含む第1ポリイソシアネートと、マクロポリオールとを反応させる。
第1ポリイソシアネートは、キシリレンジイソシアネートの単量体のみを含む。
マクロポリオールは、水酸基を2つ以上、好ましくは、2つ有し、数平均分子量、例えば、250以上、好ましくは、400以上、好ましくは、500以上、また、例えば、3000以下、好ましくは、2500以下、より好ましくは、2000以下のオリゴマーであって、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、および、ビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。
マクロポリオールとしては、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなどのポリオキシアルキレンポリオールなどが挙げられる。
ポリオキシプロピレンポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオール(好ましくは、2価アルコール)または芳香族/脂肪族ポリアミンを開始剤とするプロピレンオキサイドの付加重合物(プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとのランダムおよび/またはブロック共重合体を含む。)が挙げられる。
ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物(ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG))や、テトラヒドロフランなどの重合単位にアルキル置換テトラヒドロフランや、上記した2価アルコールを共重合した非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールと多塩基酸とを、公知の条件下、反応させて得られる重縮合物が挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1-ジメチル-1,3-ジカルボキシプロパン、3-メチル-3-エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバシン酸、その他の飽和脂肪族ジカルボン酸(C11~13)、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、その他の不飽和脂肪族ジカルボン酸、例えば、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、その他の芳香族ジカルボン酸、例えば、ヘキサヒドロフタル酸、その他の脂環族ジカルボン酸、例えば、ダイマー酸、水添ダイマー酸、ヘット酸などのその他のカルボン酸、および、それらカルボン酸から誘導される酸無水物、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2-アルキル(C12~C18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、さらには、これらのカルボン酸などから誘導される酸ハライド、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライドなどが挙げられる。
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、植物由来のポリエステルポリオール、具体的には、低分子量ポリオールを開始剤として、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12-ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸など)などのヒドロキシカルボン酸を、公知の条件下、縮合反応させて得られる植物油系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトンなどのラクトン類や、例えば、L-ラクチド、D-ラクチドなどのラクチド類などを開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、さらには、それらに上記した2価アルコールを共重合したものなどのラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールを開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物や、例えば、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールや1,6-ヘキサンジオールなどの2価アルコールと、開環重合物とを共重合した非晶性ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
これらマクロポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
マクロポリオールとして、より好ましくは、ポリエーテルポリオール、より好ましくは、ポリオキシプロピレンポリオールが挙げられる。
そして、第1イソシアネート基末端プレポリマーを調製するには、第1ポリイソシアネートとマクロポリオールとを、反応させる。
詳しくは、第1ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートの単量体)とマクロポリオールとを、マクロポリオール中の活性水素基に対する第1ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートの単量体)中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、過剰となるように、例えば、2.01以上、好ましくは、3.5以上、より好ましくは、5.0以上、また、例えば、30以下、好ましくは、20以下となるように処方(混合)し、反応容器中にて、例えば、室温(25℃)以上、好ましくは、50℃以上、また、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下で、例えば、0.5時間以上、好ましくは、2時間以上、また、例えば、18時間以下、好ましくは、10時間以下反応(ウレタン化反応)させる。
上記の反応において、上記の当量比を、2.01以上とすれば、マクロポリオールの水酸基に対して、キシリレンジイソシアネートの単量体のイソシアネート基を、モル基準で、過剰にできる。そうすると、未反応のキシリレンジイソシアネートの単量体を、所定割合で残存させることができる。
また、ウレタン化反応では、必要により、有機溶媒を配合し、その存在下において、第1イソシアネート基末端プレポリマーを調製することができる。
有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのアルキルエステル類、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性非プロトン類などが挙げられる。
これら有機溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
なお、有機溶媒の配合割合は、目的および用途により、適宜設定される。
また、上記ウレタン化反応においては、必要に応じて、例えば、アミン類や有機金属化合物などのウレタン化触媒を添加することができる。
アミン類としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ビス-(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N-メチルモルホリンなどの3級アミン類、例えば、テトラエチルヒドロキシルアンモニウムなどの4級アンモニウム塩、例えば、イミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール類などが挙げられる。
有機金属化合物としては、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロリドなどの有機錫化合物、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛などの有機鉛化合物、例えば、ナフテン酸ニッケルなどの有機ニッケル化合物、例えば、ナフテン酸コバルトなどの有機コバルト化合物、例えば、オクテン酸銅などの有機銅化合物、例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどの有機ビスマス化合物などが挙げられる。
さらに、ウレタン化触媒として、例えば、炭酸カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどのカリウム塩が挙げられる。
これらウレタン化触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
これにより、第1ポリイソシアネートとマクロポリオールとが反応し、第1イソシアネート基末端プレポリマーが得られる。
そして、このような第1イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基の含有量(NCO基含量、NCO%)は、例えば、10質量%以上あり、また、例えば、15質量%以下である。
また、第1イソシアネート基末端プレポリマーは、上記した溶剤の溶液として調製することもでき、その場合には、その固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
また、上記したように、第1ポリイソシアネートとマクロポリオールとの反応において、マクロポリオールの水酸基に対して、キシリレンジイソシアネートの単量体のイソシアネート基が、モル基準で、過剰となっているため、未反応のキシリレンジイソシアネートの単量体が残存する。
そのため、第1主剤は、第1ポリイソシアネートとマクロポリオールとの反応生成物である第1イソシアネート基末端プレポリマーと、未反応のキシリレンジイソシアネートの単量体とを含む。
キシリレンジイソシアネートの単量体の含有割合は、第1主剤に対して、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、15質量%以上、さらに好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、60質量%以下、さらに好ましくは、50質量%以下、とりわけ好ましくは、40質量%以下、最も好ましくは、30質量%以下である。
第1主剤において、キシリレンジイソシアネートの単量体の含有割合が、上記下限以上であれば、臭気を低くでき、かつ、ゲルタイムを短くすることができる。
また、この2成分型硬化吹付材を用いて得られる硬化膜(後述)の物性(引張強度、引裂強度、破断時伸びおよび耐熱性)を向上させることができる。
なお、上記のキシリレンジイソシアネートの単量体の含有割合は、例えば、HPLC測定により求めることができる。
また、必要により、第1主剤から未反応のキシリレンジイソシアネートの単量体を、例えば、蒸留や抽出などの公知の除去手段により、所定量除去することもできる。
また、第1主剤には、必要により、可塑剤を配合することができる。
可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジオクチル(DOA)、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)、アジピン酸ジ-n-アルキルなどが挙げられ、好ましくは、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)が挙げられる。
可塑剤の配合割合は、第1主剤に対して、例えば、1質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下である。
第1主剤において、イソシアネート基の含有量(NCO基含量、NCO%)は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、20質量%以下である。
第1主剤の粘度(25℃)は、例えば、1500mPa・s以下、好ましくは、1000mPa・s以下、より好ましくは、700mPa・s以下、さらに好ましくは、500mPa・s以下であり、また、例えば、100mPa・s以上である。
上記の粘度が、上記上限以下であれば、第1主剤を、容易にスプレー噴射することができる。
また、第1主剤の粘度は、東機産業社製スピンドル型回転粘度計TV-25 L型などにより求めることができる。
2.2.第2方法
第2方法では、他のイソシアネートと、マクロポリオールとを反応させることにより、第2イソシアネート基末端プレポリマーを調製し、その後、第2イソシアネート基末端プレポリマーと、キシリレンジイソシアネートの単量体とを混合することにより、主剤(第2主剤)を調製する。
詳しくは後述するが、第2方法では、第2イソシアネート基末端プレポリマーに、所定割合のキシリレンジイソシアネートの単量体を配合することで、所定割合のキシリレンジイソシアネートの単量体を含む第2主剤を調製する。
第2イソシアネート基末端プレポリマーは、その分子末端に、2つ以上の遊離のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーである。
第2イソシアネート基末端プレポリマーを調製するには、他のイソシアネートを含む第2ポリイソシアネートと、マクロポリオールとを反応させる。
第2ポリイソシアネートは、他のイソシアネートのみを含む。換言すれば、第2ポリイソシアネートは、キシリレンジイソシアネートの単量体を含まない。
他のイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートを除く)、脂環族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートなどのポリイソシアネート単量体などが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、4,4′-、2,4′-または2,2′-ジフェニルメタンジイソシアネートもしくはその混合物(MDI)、2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TDI)、o-トリジンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、m-またはp-フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4′-ジフェニルジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物(TMXDI)、ω,ω′-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4′-、2,4′-または2,2′-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)もしくはその混合物(H12MDI)、1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(H6XDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(ヘキサンジイソシアネート)(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(ペンタンジイソシアネート)(PDI)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、1,2-、2,3-または1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
また、他のポリイソシアネートとしては、ポリイソシアネート誘導体、例えば、上記した他のポリイソシアネートの多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、上記した他のポリイソシアネートと、1価アルコールまたは2価アルコールとの反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、上記した他のポリイソシアネートと3価アルコール(例えば、トリメチロールプロパンなど)との反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、上記した他のポリイソシアネートと、水またはアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、上記した他のポリイソシアネートとジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、上記した他のポリイソシアネートと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(上記した他のポリイソシアネートの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体なども挙げられる。
他のポリイソシアネートとしては、好ましくは、ポリイソシアネート単量体、より好ましくは、芳香族ポリイソシアネートの単量体、より好ましくは、ゲルタイムを短くする観点から、トリレンジイソシアネートの単量体が挙げられる。
マクロポリオールとしては、上記した第1主剤で挙げたマクロポリオールと同様のものが挙げられ、好ましくは、ポリエーテルポリオール、より好ましくは、ポリオキシプロピレンポリオールが挙げられる。
そして、第2イソシアネート基末端プレポリマーを調製するには、第2ポリイソシアネートとマクロポリオールとを、マクロポリオール中の活性水素基に対する第2ポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、例えば、2未満、好ましくは、1.8以下、また、例えば、1.6以上となるように処方(混合)し、反応容器中にて、例えば、室温(25℃)以上、好ましくは、50℃以上、また、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下で、例えば、0.5時間以上、好ましくは、2時間以上、また、例えば、18時間以下、好ましくは、10時間以下反応(ウレタン化反応)させる。
また、ウレタン化反応では、必要により、上記した有機溶媒を配合し、その存在下において、第2イソシアネート基末端プレポリマーを調製することができる。
また、上記ウレタン化反応においては、必要に応じて、例えば、上記したウレタン化触媒を添加することができる。
これにより、第2ポリイソシアネートとマクロポリオールとが反応し、第2イソシアネート基末端プレポリマーが得られる。
そして、このような第2イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基の含有量(NCO基含量、NCO%)は、例えば、2.0質量%以上、好ましくは、3.0質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下である。
また、第2イソシアネート基末端プレポリマーは、上記した溶剤の溶液として調製することもでき、その場合には、その固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
次いで、第2方法では、第2イソシアネート基末端プレポリマーと、キシリレンジイソシアネートの単量体とを混合して、第2主剤を調製する。
第2イソシアネート基末端プレポリマーと、キシリレンジイソシアネートの単量体との総量100質量部に対して、第2イソシアネート基末端プレポリマーの配合割合は、例えば、60質量部以上であり、また、例えば、80質量部以下であり、また、キシリレンジイソシアネートの単量体の配合割合は、例えば、20質量部以上であり、また、例えば、40質量部以下である。
また、キシリレンジイソシアネートの単量体の含有割合は、第2主剤に対して、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、15質量%以上、さらに好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、60質量%以下、さらに好ましくは、50質量%以下、とりわけ好ましくは、40質量%以下、最も好ましくは、30質量%以下である。
第2主剤において、キシリレンジイソシアネートの単量体の含有割合が、上記下限以上であれば、臭気を低くでき、かつ、ゲルタイムを短くすることができる。
また、この2成分型硬化吹付材を用いて得られる硬化膜(後述)の物性(引張強度、引裂強度、破断時伸びおよび耐熱性)を向上させることができる。
これにより、第2ポリイソシアネートとマクロポリオールとの反応生成物である第2イソシアネート基末端プレポリマーと、キシリレンジイソシアネートの単量体とを含む第2主剤が得られる。
また、第2主剤には、必要により、上記した可塑剤を配合することができる。
可塑剤としては、好ましくは、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)が挙げられる。
可塑剤の配合割合は、第2主剤に対して、例えば、1質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、5質量%以下である。
なお、上記したように、第2方法では、第2ポリイソシアネートとマクロポリオールとを反応させることによって、第2イソシアネート基末端プレポリマーを調製しているため、未反応の第2ポリイソシアネート(第2ポリイソシアネートの単量体)が残存する場合がある。
このような場合には、第2主剤は、第2ポリイソシアネートとマクロポリオールとの反応生成物である第2イソシアネート基末端プレポリマーと、キシリレンジイソシアネートの単量体と、未反応の第2ポリイソシアネートとを含む。
未反応の第2ポリイソシアネートの含有割合は、第2主剤に対して、例えば、1質量%未満、好ましくは、0.8質量%以下である。
また、上記したように、第2ポリイソシアネートとマクロポリオールとの反応において、マクロポリオール中の活性水素基に対する第2ポリイソシアネート中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、2未満とすれば、未反応の第2ポリイソシアネートを少なくできる。
具体的には、未反応の第2ポリイソシアネートの含有割合を、第2主剤に対して、例えば、1質量%未満、好ましくは、0.8質量%以下とすることができる。
未反応の第2ポリイソシアネートの含有割合が、上記上限以下であれば、臭気を低くでき、かつ、ゲルタイムを短くすることができる。
なお、未反応の第2ポリイソシアネートの含有割合は、例えば、HPLC測定により求めることができる。
また、必要により、第2主剤から未反応の第2ポリイソシアネートを、例えば、蒸留や抽出などの公知の除去手段により、所定量除去することもできる。
第2主剤において、イソシアネート基の含有量(NCO基含量、NCO%)は、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、20質量%以下である。
第2主剤の粘度(25℃)は、例えば、1500mPa・s以下、好ましくは、1200mPa・s以下であり、また、例えば、100mPa・s以上である。
上記の粘度が、上記上限以下であれば、第2主剤を、容易にスプレー噴射することができる。
なお、第2主剤の粘度は、東機産業社製スピンドル型回転粘度計TV-25 L型などにより求めることができる。
上記したように、第1主剤は、第1ポリイソシアネートとマクロポリオールとの反応生成物である第1イソシアネート基末端プレポリマーを含む。
また、第2主剤は、第2ポリイソシアネートとマクロポリオールとの反応生成物である第2イソシアネート基末端プレポリマーを含む。
つまり、第1主剤および第2主剤は、ともに、ポリイソシアネート(第1主剤における第1ポリイソシアネート、または、第2主剤における第2ポリイソシアネート)と、マクロポリオールとの反応生成物であるイソシアネート基末端プレポリマー(第1主剤における第1イソシアネート基末端プレポリマー、または、第2主剤における第2イソシアネート基末端プレポリマー)を含む。
主剤が、ポリイソシアネートと、マクロポリオールとの反応生成物であるイソシアネート基末端プレポリマーを含めば、主剤の粘度が調整しやすくなり、得られた硬化膜(後述)の破断伸びを適切なものとすることができる。また、後述するスプレー塗布において、主剤および硬化剤の体積比を一定(例えば1:1)とする必要があり、プレポリマー化することにより適切な配合処方とすることができる。
上記した第1方法では、第1ポリイソシアネートは、キシリレンジイソシアネートの単量体のみを含むが、第1ポリイソシアネートは、上記した他のポリイソシアネートを含むこともできる。
他のポリイソシアネートとしては、ゲルタイムを短くする観点から、芳香族ポリイソシアネートの単量体、より好ましくは、トリレンジイソシアネートの単量体が挙げられる。
そして、このような場合には、第1ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートの単量体および他のポリイソシアネート)と、マクロポリオールとの反応において、未反応のキシリレンジイソシアネートの単量体を所定の割合で残存させる。
また、このような場合には、第1ポリイソシアネートにおいて、キシリレンジイソシアネートの単量体の配合割合と、他のポリイソシアネートの配合割合とは、適宜選択される。
また、このような場合には、第1主剤は、第1ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートの単量体および他のポリイソシアネート)とマクロポリオールとの反応生成物である第1イソシアネート基末端プレポリマーと、キシリレンジイソシアネートの単量体とを含むか、または、第1ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートの単量体および他のポリイソシアネート)とマクロポリオールとの反応生成物である第1イソシアネート基末端プレポリマーと、キシリレンジイソシアネートの単量体と、他のポリイソシアネートの単量体とを含む。
3.硬化剤
硬化剤は、ポリアミンと、触媒とを含む。
3.1.ポリアミン
ポリアミンとしては、例えば、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、アミノアルコール、ポリオキシエチレン基含有ポリアミン、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、ヒドラジンまたはその誘導体などのアミノ基含有化合物が挙げられる。
芳香族ポリアミンとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、トリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミンなどが挙げられ、好ましくは、ジエチルトルエンジアミンが挙げられる。
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3-または1,4-キシリレンジアミンもしくはその混合物などが挙げられる。
脂環族ポリアミンとしては、例えば、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物などが挙げられる。
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノペンタンなどが挙げられる。
アミノアルコールとしては、例えば、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノール(別名:N-(2-アミノエチル)エタノールアミン)、2-((2-アミノエチル)アミノ)-1-メチルプロパノール(別名:N-(2-アミノエチル)イソプロパノールアミン)などが挙げられる。
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。より具体的には、例えば、日本油脂製のPEG#1000ジアミンや、ハンツマン社製のジェファーミンED-2003、EDR-148、XTJ-512、D-2000などが挙げられる。
第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどの第1級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン)などの第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物などが挙げられる。
ヒドラジンまたはその誘導体としては、例えば、ヒドラジン(水和物を含む)、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
ポリアミンは、単独使用または2種類以上併用することができ、好ましくは、芳香族ポリアミンおよびポリオキシエチレン基含有ポリアミンを併用する。
芳香族ポリアミンおよびポリオキシエチレン基含有ポリアミンを併用する場合には、芳香族ポリアミンおよびポリオキシエチレン基含有ポリアミンの総量100質量部に対して、芳香族ポリアミンの配合割合は、例えば、15質量部以上であり、また、例えば、30質量部以下であり、また、ポリオキシエチレン基含有ポリアミンの配合割合は、例えば、70質量部以上であり、また、例えば、85質量部以下である。
3.2.触媒
触媒は、遊離のカルボン酸を含むか、または、カルボン酸の金属酸塩および遊離のカルボン酸を含むか、好ましくは、遊離のカルボン酸からなるか、または、カルボン酸の金属酸塩および遊離のカルボン酸からなる。
遊離のカルボン酸は、ウレア化反応を促進する触媒(ウレア化触媒)であって、例えば、遊離のオクチル酸、遊離のナフテン酸、遊離のオクテン酸、遊離のオクチル酸、遊離のネオデカン酸などが挙げられ、好ましくは、遊離のオクチル酸が挙げられる。
カルボン酸の金属酸塩は、ウレタン化反応を促進する触媒(ウレタン化触媒)であって、例えば、カルボン酸鉛塩、例えば、カルボン酸ビスマス塩、例えば、カルボン酸錫塩、ナフテン酸ニッケルなどのカルボン酸ニッケル塩、例えば、ナフテン酸コバルトなどのカルボン酸コバルト塩、例えば、オクテン酸銅などのカルボン酸銅塩などが挙げられる。
カルボン酸鉛塩としては、例えば、オクチル酸鉛、ネオデカン酸鉛、ステアリン酸鉛、オレイン酸鉛などが挙げられ、好ましくは、オクチル酸鉛、ネオデカン酸鉛、より好ましくは、オクチル酸鉛が挙げられる。
カルボン酸ビスマス塩としては、例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ステアリン酸ビスマス、オレイン酸ビスマスなどが挙げられ、好ましくは、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、より好ましくは、オクチル酸ビスマスが挙げられる。
カルボン酸錫塩としては、例えば、オクチル酸錫、ネオデカン酸錫、ステアリン酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫などが挙げられる。
カルボン酸の金属酸塩としては、好ましくは、ゲルタイムをより一層短くする観点から、カルボン酸鉛塩、カルボン酸ビスマス塩、カルボン酸錫塩からなる群から1種が選択され、より好ましくは、カルボン酸鉛塩、カルボン酸ビスマス塩が挙げられる。
カルボン酸の金属酸塩は、単独使用または2種類以上併用することができる。
そして、触媒が、カルボン酸の金属酸塩および遊離のカルボン酸を含む場合には、遊離のカルボン酸は、カルボン酸の金属酸塩よりも、質量基準で多く配合される。
遊離のカルボン酸が、カルボン酸の金属酸塩よりも、質量基準で多ければ、ゲルタイムを短くすることができる。
具体的には、質量基準で、遊離のカルボン酸の含有量は、触媒に対して、例えば、50質量%を超過、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは、70質量%以上であり、また、例えば、99質量%以下である。また、質量基準で、カルボン酸の金属酸塩の含有量は、触媒に対して、例えば、1質量%以上であり、また、例えば、50質量%未満、好ましくは、40質量%以下、より好ましくは、30質量%以下である。
遊離のカルボン酸の含有量が、上記下限以上であれば、ゲルタイムをより一層短くすることができる。
上記したように、触媒は、遊離のカルボン酸を含むか、または、カルボン酸の金属酸塩および遊離のカルボン酸を含むが、好ましくは、入手容易性の観点から、触媒は、カルボン酸の金属酸塩および遊離のカルボン酸を含み、より好ましくは、触媒は、カルボン酸の金属酸塩および遊離のカルボン酸からなる。
また、触媒が、カルボン酸の金属酸塩および遊離のカルボン酸を含む場合において、触媒は、遊離のカルボン酸に、カルボン酸の金属酸塩を配合することによって、調製することができる。
そして、質量基準における、遊離のカルボン酸の含有量およびカルボン酸の金属酸塩の含有量は、上記した調製における仕込み量から求めることができる。
3.3.硬化剤の調製
硬化剤を調製するには、ポリアミンと、触媒とを混合する。
触媒の配合割合は、ポリアミン100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
これにより、硬化剤が得られる。
硬化剤の粘度(25℃)は、例えば、1000mPa・s以下、好ましくは、700mPa・s以下、より好ましくは、500mPa・s以下であり、また、例えば、100mPa・s以上である。
上記の粘度が、上記上限以下であれば、硬化剤を、容易にスプレー噴射することができる。
なお、硬化剤の粘度は、東機産業社製スピンドル型回転粘度計TV-25 L型などにより求めることができる。
4.2成分型硬化吹付材の使用方法
2成分型硬化吹付材の使用方法は、2成分型硬化吹付材を準備する第1工程と、2成分型硬化吹付材を、施工面にスプレー塗布する第2工程とを備える。
第1工程では、2成分型硬化吹付材を準備する。
具体的には、上記した方法によって、主剤および硬化剤のそれぞれを調製する。
第2工程では、2成分型硬化吹付材を、施工面にスプレー塗布する。
具体的には、まず、主剤および硬化剤のそれぞれを公知のスプレー装置に送液する。
公知のスプレー装置としては、例えば、主剤および硬化剤を高圧で噴射させ、主剤および硬化剤を空中で混合させる高圧衝突混合タイプのスプレー装置、例えば、主剤および硬化剤を、予め装置内で混合するスタティックミキサータイプのスプレー装置などが挙げられる。
高圧衝突混合タイプのスプレー装置としては、具体的には、Reactor(グラコ社製)などが挙げられる。
スタティックミキサータイプのスプレー装置としては、具体的には、ジェットスプレー(カワタ社製)などが挙げられる。
そして、公知のスプレー装置を用いて、主剤および硬化剤を、硬化剤中のアミノ基に対する、主剤中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/アミノ基)が、例えば、0.6以上、好ましくは、1.0以上、また、例えば、2以下となるように所定の流量比で噴出させ、施工面にスプレー塗布する。
噴出圧力(液圧力)は、例えば、0.8N/mm2以上であり、また、例えば、1.5N/mm2以下である。
噴出した主剤および硬化剤は、施工面に塗布される。その後、施工面において、例えば、3秒以上、好ましくは、5秒以上、より好ましくは、10秒以上、また、例えば、20秒以下、好ましくは、15秒以下、より好ましくは、12秒以下(ゲルタイム)で硬化し、硬化膜(ウレア膜)が形成する。
ゲルタイムが、上記下限以上であれば、公知のスプレー装置に、2成分型硬化吹付材が固着することを抑制することができる。また、プレー塗布を、数回繰返す場合に、層間剥離を抑制することができる。
ゲルタイムが、上記上限以下であれば、2成分型硬化吹付材を、立面にスプレー塗布した場合に、液ダレが生じることを抑制できる。
すなわち、ゲルタイムが上記範囲内であれば、2成分型硬化吹付材を、平場および立面に対して、連続してスプレー塗布することができる。
また、スプレー装置として、スタティックミキサータイプのスプレー装置を用いる場合には、主剤および硬化剤を、予め装置内で混合するため、ゲルタイムが短すぎると、装置内に2成分型硬化吹付材が固着する場合がある。
一方、この2成分型硬化吹付材において、ゲルタイムを、上記範囲内(好ましくは、10秒以上15秒以下)とすることができるため、主剤および硬化剤を、予め装置内で混合し、噴出されるまでの時間を稼ぐことができる。
硬化膜の厚みは、例えば、0.5mm以上であり、また、例えば、4mm以下である。
なお、上記のスプレー塗布する際に、主剤および硬化剤の粘度を低くする観点から、必要により、主剤および硬化剤を、例えば、40℃以上、70℃以下に加熱することもできる。
詳しくは、スプレー装置として、高圧衝突混合タイプのスプレー装置を用いる場合には、主剤および硬化剤を、例えば、50℃以上、70℃以下に加熱し、スプレー装置として、スタティックミキサータイプのスプレー装置を用いる場合には、主剤および硬化剤を、例えば、25℃以上、40℃以下に加熱する。
また、必要により、上記のスプレー塗布を、数回繰返し、硬化膜の厚みを所定の厚みに調整することもできる。
スプレー塗布を繰り返す場合には、1回のスプレー塗布で、硬化膜の厚みが、例えば、0.3mm以上0.6mm以下となるように、2成分型硬化吹付材をスプレー塗布する。
得られた硬化膜のショアA硬度(JIS K7312(1996)に準拠)は、例えば、80A以上、好ましくは、85A以上、より好ましくは、87A以上、さらに好ましくは、88A以上であり、また、例えば、95A以下、好ましくは、90A以下である。
そして、この2成分型硬化吹付材では、主剤が、所定の割合のキシリレンジイソシアネートの単量体を含むため、この2成分型硬化吹付材を用いて得られる硬化膜の物性(引張強度、引裂強度、破断時伸びおよび耐熱性)を向上させることができる。
具体的には、硬化膜の引張強度(JIS K7312(1996)に準拠)は、例えば、10MPa以上、好ましくは、12MPa以上であり、また、例えば、30MPa以下である。
また、硬化膜の引裂強度(JIS K7312(1996)に準拠)は、例えば、46N/mm以上、好ましくは、52N/mm以上、より好ましくは、55N/mm以上であり、また、例えば、70N/mm以下である。
また、硬化膜の破断時伸び(JIS K7312(1996)に準拠)は、例えば、300%以上、好ましくは、350%以上、より好ましくは、370%以上であり、また、例えば、480%以下である。
そして、この2成分型硬化吹付材によれば、上記した物性に優れる硬化膜を形成することができるため、例えば、建材用途の床材、防水材、工業用のライニング材、厚膜保護材および防錆材などに好適に用いることができる。
5.作用効果
この2成分型硬化吹付材は、主剤と硬化剤とを備える。
主剤(第1主剤および第2主剤)は、所定の割合のキシリレンジイソシアネートの単量体を含む。
これにより、臭気を低くでき、かつ、ゲルタイムを短くすることができる。
また、この2成分型硬化吹付材を用いて得られる硬化膜の物性(引張強度、引裂強度、破断時伸びおよび耐熱性)を向上させることができる。
また、硬化剤は、遊離のカルボン酸を含むか、または、所定の配合比率で、カルボン酸の金属酸塩および遊離のカルボン酸を含む。
これにより、ゲルタイムを短くすることができる。
以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
1.成分の詳細
各実施例および各比較例で用いた各成分を以下に記載する。
PPG D-2000:ポリオキシプロピレングリコール、数平均分子量2000、三井化学製
PPG D-700:ポリオキシプロピレングリコール、数平均分子量700、三井化学製
PPG D-400:ポリオキシプロピレングリコール、数平均分子量400、三井化学製
コスモネートT-80:2,4-異性体/2,6-異性対比80/20のトリレンジイソシアネート、三井化学社製
DETDA:ジエチルトルエンジアミン、エタキュア#100、アルベマール社製
ジェファーミンD-2000:ポリオキシエチレンエーテルジアミン、分子量2000、ハンツマン社製
ネオスタンU-600:オクチル酸ビスマス含量58%のオクチル酸ビスマス/オクチル酸混合物、日東化工社製
ニッカオクチックス鉛24%:オクチル酸鉛含量58%のオクチル酸鉛/ミネラルスピリット混合物、日本化学産業社製
2.2成分型硬化吹付材の調製
2.1.未反応のキシリレンジイソシアネートの単量体の濃度、または、未反応のトリレンジイソシアネートの単量体の濃度の測定
未反応のキシリレンジイソシアネートの単量体の濃度、または、未反応のトリレンジイソシアネートの単量体の濃度は、HPLC測定により求めた。
HPLC測定の測定条件を以下に示す。
測定条件
装置:島津製作所社製高速液体クロマトグラフィーLC-20型
カラム:島津製作所Shim-Pack CLC-SIL (6mmID×15cm)
カラム温度:25℃
移動相:n-ヘキサン/ジクロロエタン/メタノール
XDIのリテンションタイム:6.1分
定量方法:検量線法
2.2.主剤の調製
調製例1(主剤1)
PPG D-2000 616.9g、PPG D-700 22.9g、キシリレンジイソシアネート360.1gを1Lのセパラブルフラスコに仕込み、当量比(NCO/OH)が5.6となるように、90℃で4時間反応させた。
これにより、イソシアネート基末端プレポリマー(XDIプレポリマー)を得た。
また、上記の反応においては、未反応のキシリレンジイソシアネートの単量体は、24質量%であった。
これにより、イソシアネート基末端プレポリマー(XDIプレポリマー)と、キシリレンジイソシアネートの単量体(24質量%)とを含む主剤1を調製した。
また、主剤1において、イソシアネート基の含有量は、13.2質量%であり、粘度(25℃)は、420mPa・sであり、液比重は、1.07であった。
調製例2(主剤2)
PPG D-2000 849.7g、PPG D-400 8.6g、コスモネートT-80 141.8gを仕込み、当量比(NCO/OH)が1.8となるように、90℃で3時間反応させた。
これにより、イソシアネート基末端プレポリマー(TDIプレポリマー、イソシアネート基の含有量3.0質量%、粘度(25℃)22000mPa・s、未反応のトリレンジイソシアネートの単量体の含有量0.7質量%)を得た。
次いで、上記のTDIプレポリマー 729.2gに対し、キシリレンジイソシアネートの単量体245.8g、可塑剤として、DINA(アジピン酸ジイソノニル)25.0gを加えた。
これにより、イソシアネート基末端プレポリマー(TDIプレポリマー)と、キシリレンジイソシアネートの単量体(24.5質量%)とを含む主剤2を調製した。
また、主剤2において、イソシアネート基の含有量は、13.2質量%であり、粘度(25℃)は、1000mPa・sであり、液比重は、1.05であった。
調製例3(主剤3)
上記のTDIプレポリマー 679.7gに対し、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI) 295.3g、可塑剤としてDINA(アジピン酸ジイソノニル)25.0gを加えた。
これにより、イソシアネート基末端プレポリマー(TDIプレポリマー)と、IPDIの単量体(29.5質量%)とを含む主剤3を調製した。
また、主剤3において、イソシアネート基の含有量は、13.2質量%であり、粘度(25℃)は、900mPa・sであり、液比重は、1.03であった。
調製例4(主剤4)
PPG D-2000 559.7g、PPG D-700 20.8g、IPDI 419.5g、反応触媒として、スタナスオクトエートを200ppm加え、当量比(NCO/OH)が6.1となるように、80℃で5時間反応させた。
これにより、イソシアネート基末端プレポリマー(IPDIプレポリマー)を得た。
また、上記の反応においては、未反応のIPDIの単量体は、28.2質量%であった。
これにより、イソシアネート基末端プレポリマー(IPDIプレポリマー)と、IPDIの単量体(28.2質量%)とを含む主剤4を調製した。
また、主剤4において、イソシアネート基の含有量は、13.2質量%であり、粘度(25℃)は、550mPa・sであり、液比重は、1.03であった。
調製例5(主剤5)
PPG D-2000 587.1g、PPG D-700 21.8g、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI) 391.1g、反応触媒として、スタナスオクトエートを200ppmとなるように加え、当量比(NCO/OH)が5.9となるように、80℃で5時間反応させた。
これにより、イソシアネート基末端プレポリマー(NBDIプレポリマー)を得た。
また、上記の反応においては、未反応のNBDIの単量体は、25.7質量%であった。
これにより、イソシアネート基末端プレポリマー(NBDIプレポリマー)と、NBDIの単量体(25.7質量%)とを含む主剤5を調製した。
また、主剤5において、イソシアネート基の含有量は、15.3質量%であり、粘度(25℃)は、430mPa・sであり、液比重は、1.07であった。
2.3.硬化剤の調製
調製例6(硬化剤1)
DETDA 20.1g、ジェファーミンD-2000 79.9g、触媒として、ネオスタンU-600 2.0g、オクチル酸 2.0gを配合した。
これにより、硬化剤1(液密度1.00、粘度(25℃)360mPa・s)を調製した。
調製例7~調製例10(硬化剤2~硬化剤5)
配合処方を、表1の記載に従って変更した以外は、調製例6と同様に処理して、硬化剤2~硬化剤5を調製した。
なお、硬化剤2~硬化剤5の液密度はいずれも1.00であり、硬化剤2の粘度(25℃)は、370mPa・sであり、硬化剤3の粘度(25℃)は、360mPa・sであり、硬化剤4の粘度(25℃)は、380mPa・sであり、硬化剤5の粘度(25℃)は、400mPa・sであった。
2.4.2成分型硬化吹付材の調製
実施例1~実施例5、比較例1~比較例4
上記したように、主剤と硬化剤とを別々に調製し、表1に従って、主剤と硬化剤とを組み合わせて、主剤と硬化剤とを備える2成分型硬化吹付材を調製した。
3.評価
(スプレー成形(スプレー条件))
各実施例および各比較例の2成分型硬化吹付材を用いて、スプレー成形を実施した。
具体的には、リアクターにプロブラーガンを備える2液高圧スプレーマシン(グラコ社製)に、主剤および硬化剤のそれぞれを送液した。なお、ミキシングチャンバーはNo.1を使用した。そして、主剤および硬化剤の温度を、約60℃にし、液圧力をそれぞれ10.3N/mm2として、常温のポリプロピレン板(厚み約2mm)上にスプレーした。
なお、主剤および硬化剤の配合比(質量比および体積比)および当量比(イソシアネート基/アミノ基)は、表1に従って、変更した。
(臭気性)
上記したスプレー条件に基づいて、2成分型硬化吹付材をスプレーした時の臭気性を評価した。
具体的には、スプレーブース内でのスプレー噴霧時の雰囲気を官能評価した。
臭気性について、以下の基準で評価した。
〇:臭気が気にならなかった。
×:臭気が気になった。
その結果を表1に示す。
(ゲルタイム)
上記したスプレー条件に基づいて、各実施例および各比較例の2成分型硬化吹付材をスプレーした後、指触でゲルタイムを測定した。
その結果を表1に示す。
(硬さ(ショアA))
上記したスプレー条件に基づいて、各実施例および各比較例の2成分型硬化吹付材をスプレーした後、1週間常温で養生し、硬化膜を得た。
その後、硬化膜の硬さ(ショアA)を、テクロック社製のShore A型デュロメータGS-719Nを用いて測定した。
(引張強度、引裂強度および破断時伸び)
上記したスプレー条件に基づいて、各実施例および各比較例の2成分型硬化吹付材をスプレーした後、1週間常温で養生し、硬化膜を得た。
その後、硬化膜の引張強度、引裂強度および破断時伸びを、島津製作所社製の万能引張試験装置オートグラフAGS-X型を用い、クロスヘッドスピード500mm/分で測定した。
その結果を表1に示す。
(耐熱性)
上記したスプレー条件に基づいて、各実施例および各比較例の2成分型硬化吹付材をスプレーした後、1週間常温で養生し、硬化膜を得た。
その後、硬化膜を5cm×5cmに切り出し、これをサンプルとした。次いで、このサンプルを、120±℃に温度調節できるSPH-202型恒温器(エスペック社製)に入れ、120℃で1週間静置した後、目視および指触で表面を確認した。
耐熱性について、以下の基準で評価した。
〇:サンプルが融解しなかった。
△:サンプルの表面が融解した。
×:サンプルが融解した。