本発明のポリウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート成分、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤を含有する原料成分の反応生成物を、主成分として含有する。
なお、主成分とは、ポリウレタン樹脂組成物(主成分と副成分(添加剤など)との総量)に対して、例えば、80質量%以上、好ましくは、90質量%以上、通常、100質量%以下の割合であることを示す。
原料成分において、ポリイソシアネート成分、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤は、必須成分である。
ポリイソシアネート成分は、ペンタメチレンジイソシアネート、および、炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネートを含有し、好ましくは、ポリイソシアネート成分は、ペンタメチレンジイソシアネート、および、炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネートからなる。
ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)としては、例えば、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,4-ペンタメチレンジイソシアネート、1,3-ペンタメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
なお、ペンタメチレンジイソシアネートは、例えば、市販品として入手することもできるが、公知の方法、例えば、生化学的手法などによりペンタメチレンジアミンまたはその塩を製造し、そのペンタメチレンジアミンまたはその塩を、ホスゲン化法、カルバメート化法などの方法でイソシアネート化反応させることにより、製造することができる。
ペンタメチレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
ペンタメチレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,5-ペンタメチレンジイソシアネートが挙げられる。
炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネートは、炭素数6以上の脂肪族炭化水素基(脂環族炭化水素基を含む。)と、2つ以上のイソシアネート基とを有する有機化合物である。
すなわち、炭素数とは、脂肪族炭化水素基(脂環族炭化水素基を含む。)中の炭素数を示し、イソシアネート基(NCO基)が有する炭素を含まない。
炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネートとして、より具体的には、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプエートなどの炭素数6以上20以下の非環式(直鎖または分岐鎖)脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
また、炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネートは、炭素数6以上の脂環式ポリイソシアネートを含んでいる。
炭素数6以上の脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’-、2,4’-または2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、これらのトランス-トランス体、トランス-シス体、シス-シス体、もしくはその混合物))(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)、2,5(6)-ジイソシアナトメチル[2,2,1]ヘプタン(各種異性体もしくはその混合物)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,2-、1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン)(H6XDI)などの炭素数6以上20以下の脂環式ジイソシアネートが挙げられる。
これら炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネートとして、好ましくは、炭素数6以上12以下の脂肪族ポリイソシアネート、より好ましくは、炭素数6以上10以下の脂肪族ポリイソシアネート、さらに好ましくは、炭素数6以上8以下の脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。また、ポリウレタン水分散液(後述)またはポリウレタン溶液(後述)の低粘度化を図る観点から、炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネートとして、好ましくは、非環式(直鎖または分岐鎖)脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。
機械物性および耐汚染性の向上を図り、ポリウレタン水分散液(後述)またはポリウレタン溶液(後述)の低粘度化を図る観点から、とりわけ好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
換言すれば、ポリイソシアネート成分は、とりわけ好ましくは、ペンタメチレンジイソシアネートと、ヘキサメチレンジイソシアネートとを含有し、さらに好ましくは、ペンタメチレンジイソシアネートと、ヘキサメチレンジイソシアネートとからなる。
機械物性および耐汚染性の観点から、ペンタメチレンジイソシアネートの含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、5モル%以上、好ましくは、10モル%以上、より好ましくは、20モル%以上、さらに好ましくは、30モル%以上であり、50モル%未満、好ましくは、48モル%以下、より好ましくは、45モル%以下、さらに好ましくは、40モル%以下である。
ペンタメチレンジイソシアネートの含有割合が上記範囲であれば、ポリウレタン水分散液(後述)またはポリウレタン溶液(後述)の乾燥物に適度な親水性および疎水性を付与することができるため、優れた耐汚染性を得ることができる。
すなわち、ペンタメチレンジイソシアネートは、炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネートに比べ、直鎖炭素数が少ないため、比較的親水性である。すなわち、ペンタメチレンジイソシアネートにより、ポリウレタン水分散液(後述)またはポリウレタン溶液(後述)の乾燥物(乾燥塗膜など)に、親水性が付与される。
そのため、ペンタメチレンジイソシアネートの含有割合が上記上限を上回る場合には、ポリウレタン水分散液(後述)またはポリウレタン溶液(後述)の乾燥物が、過度に親水性となり、水性の汚染に対して馴染みやすくなるため、耐汚染性が不十分となる。
一方、ペンタメチレンジイソシアネートの含有割合が上記下限を下回る場合には、ポリウレタン水分散液(後述)またはポリウレタン溶液(後述)の乾燥物の親水性が不十分となる。換言すれば、乾燥物が、過度に疎水性となり、油性の汚染に対して馴染みやすくなるため、耐汚染性が不十分となる。
これらに対して、ペンタメチレンジイソシアネートの含有割合が上記範囲であれば、ポリウレタン水分散液(後述)またはポリウレタン溶液(後述)の乾燥物の親水性および疎水性を、適度に確保することができ、水性汚染に対する耐汚染性と、油性の汚染に対する耐汚染性との両立を図ることができ、さらには、機械物性の向上を図ることができる。
また、炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネート(好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート)の含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、50モル%を超過し、好ましくは、52モル%以上、より好ましくは、55モル%以上、さらに好ましくは、60モル%以上であり、95モル%以下、好ましくは、90モル%以下、より好ましくは、80モル%以下、さらに好ましくは、70モル%以下である。
炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネートの含有割合が上記範囲であれば、ポリウレタン水分散液(後述)またはポリウレタン溶液(後述)の乾燥物に適度な親水性および疎水性を付与することができるため、優れた耐汚染性を得ることができる。
すなわち、炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネートは、ペンタメチレンジイソシアネートに比べ、直鎖炭素数が多いため、比較的疎水性である。すなわち、炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネートにより、ポリウレタン水分散液(後述)またはポリウレタン溶液(後述)の乾燥物に疎水性が付与される。
そのため、炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネートの含有割合が上記上限を上回る場合には、ポリウレタン水分散液(後述)またはポリウレタン溶液(後述)の乾燥物が、過度に疎水性となり、油性の汚染に対して馴染みやすくなるため、耐汚染性が不十分となる場合がある。
一方、炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネートの含有割合が上記下限を下回る場合には、ポリウレタン水分散液(後述)またはポリウレタン溶液(後述)の乾燥物の疎水性が不十分となる。換言すれば、乾燥物が、過度に親水性となり、水性の汚染に対して馴染みやすくなるため、耐汚染性が不十分となる場合がある。
これらに対して、炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネートの含有割合が上記範囲であれば、ポリウレタン水分散液(後述)またはポリウレタン溶液(後述)の乾燥物の親水性および疎水性を、適度に確保することができ、水性の汚染に対する耐汚染性、および、油性の汚染に対する耐汚染性を、両立することができる。
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有し、数平均分子量400以上、好ましくは、500以上の有機化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられ、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレン(炭素数2~3)ポリオール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなどが挙げられる。
ポリオキシアルキレン(炭素数2~3)ポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールや、公知の低分子量ポリアミンなどを開始剤とする、炭素数2~3のアルキレンオキサイドの付加重合物が挙げられる。
低分子量ポリオールとしては、例えば、分子中に水酸基を2つ以上有し、分子量50以上400未満、好ましくは、300以下の有機化合物が挙げられる。
低分子量ポリオールとして、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、アルカン(C7~20)ジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ビスフェノールA、炭素数4~6のエーテルジオール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなど)などの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。
これら低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
低分子量ポリオールとして、好ましくは、2価アルコール、3価アルコールが挙げられ、より好ましくは、2価アルコールが挙げられる。
炭素数2~3のアルキレンオキサイドとしては、例えば、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドなどが挙げられる。また、これらアルキレンオキサイドは、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリオキシアルキレン(炭素数2~3)ポリオールとして、具体的には、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとのランダムおよび/またはブロック共重合体などが挙げられる。
また、ポリオキシアルキレン(炭素数2~3)ポリオールとしては、さらに、ポリトリメチレングリコールなども含まれる。
ポリトリメチレンエーテルグリコールとしては、例えば、植物成分由来の1,3-プロパンジオールの重縮合反応により得られるグリコールなどが挙げられる。
ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物(ポリテトラメチレンエーテルグリコール(結晶性))や、テトラヒドロフランなどの重合単位に、アルキル置換テトラヒドロフランや、上記した2価アルコールを共重合した非晶性(非結晶性)ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールと多塩基酸とを、公知の条件下、反応させて得られる重縮合物が挙げられる。
低分子量ポリオールとしては、上記した低分子量ポリオールが挙げられ、好ましくは、2価アルコールが挙げられ、より好ましくは、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールが挙げられる。
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1-ジメチル-1,3-ジカルボキシプロパン、3-メチル-3-エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバシン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸(C11~13)、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、例えば、ヘキサヒドロフタル酸などの脂環族ジカルボン酸、例えば、ダイマー酸、水添ダイマー酸、ヘット酸などのその他のカルボン酸、および、それらカルボン酸から誘導される酸無水物、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2-アルキル(C12~C18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、さらには、これらのカルボン酸などから誘導される酸ハライド、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライドなどが挙げられる。
これら多塩基酸は、単独使用または2種類以上併用することができる。
多塩基酸として、好ましくは、飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、酸無水物が挙げられ、より好ましくは、アジピン酸、フタル酸、無水フタル酸が挙げられ、さらに好ましくは、アジピン酸が挙げられる。
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、植物由来のポリエステルポリオール、具体的には、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12-ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸など)などのヒドロキシカルボン酸を、公知の条件下、縮合反応させて得られる植物油系ポリエステルポリオールなども挙げられる。
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオール(好ましくは、2価アルコール)を開始剤として、例えば、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトンなどのラクトン類や、例えば、L-ラクチド、D-ラクチドなどのラクチド類などを開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、さらには、それらに上記2価アルコールを共重合したアルコール変性ラクトンポリオールなどの、ラクトンベースポリエステルポリオールなどが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオール(好ましくは、上記2価アルコール)を開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物(結晶性ポリカーボネートポリオール)や、例えば、炭素数4~6の2価アルコールと、開環重合物とを共重合した非晶性ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。また、イソソルバイドなど植物由来原料から誘導された植物由来ポリカーボネートポリオールなども使用することができる。
これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
高分子量ポリオールとして、耐汚染性の向上を図る観点から、好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが挙げられ、機械物性の向上を図る観点から、より好ましくは、ポリカーボネートポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、結晶性ポリカーボネートポリオールが挙げられる。
高分子量ポリオールの数平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)は、400以上、好ましくは、500以上、より好ましくは、600以上、さらに好ましくは、800以上であり、例えば、10000以下、好ましくは、8000以下、より好ましくは、5000以下、さらに好ましくは、3000以下である。
また、高分子量ポリオールの平均水酸基価(JIS K 1557-1(2007年)に準拠)は、例えば、10mgKOH/g以上、好ましくは、20mgKOH/g以上、より好ましくは、40mgKOH/g以上であり、例えば、500mgKOH/g以下、好ましくは、300mgKOH/g以下、より好ましくは、100mgKOH/g以下である。
なお、高分子量ポリオールの配合割合は、後述する反応当量比が後述する範囲となるように、適宜調整される。
鎖伸長剤としては、少なくとも1つのアミノ基(-NH-または-NH2)を含有する低分子量化合物(分子量400未満)が挙げられ、具体的には、例えば、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、ヒドラジン、モノアミン、アミノアルコール、ポリオキシエチレン基含有ポリアミン、アルコキシシリル化合物などが挙げられる。
芳香族ポリアミンとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、トリレンジアミンなどが挙げられる。
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3-または1,4-キシリレンジアミンもしくはその混合物などが挙げられる。
脂環族ポリアミンとしては、例えば、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3-および1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物などが挙げられる。
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン(ペンタメチレンジアミン)、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノペンタンなどが挙げられる。
モノアミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-t-ブチルアミン、ジヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、3-メトキシプロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、3-(2-エチルヘキシルオキシプロピルアミン)、3-(ドデシルオキシ)プロピルアミン、モルホリンなどが挙げられる。
ヒドラジンとしては、例えば、ヒドラジン無水物、水和ヒドラジン(ヒドラジン一水和物など)などが挙げられる。
アミノアルコールとしては、例えば、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノール(別名:N-(2-アミノエチル)エタノールアミン)、2-((2-アミノエチル)アミノ)-1-メチルプロパノール(別名:N-(2-アミノエチル)イソプロパノールアミン)などが挙げられる。
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。より具体的には、例えば、日本油脂製のPEG#1000ジアミンや、ハンツマン社製のジェファーミンED―2003、EDR-148、XTJ-512などが挙げられる。
アルコキシシリル化合物としては、アミノ基を含有するアルコキシシリル化合物が挙げられ、具体的には、例えば、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物が挙げられる。
第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物としては、例えば、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどの第2級アミノ基を有さず第1級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン(別名:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン)などの第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物などが挙げられる。
これら鎖伸長剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
鎖伸長剤として、好ましくは、脂肪族ポリアミン、ヒドラジン、モノアミン、アミノアルコール、アルコキシシリル化合物が挙げられる。
とりわけ、ポリウレタン樹脂組成物が、後述するポリウレタン水分散液として調製される場合、鎖伸長剤として、安定性の観点から、より好ましくは、ヒドラジン、アミノアルコール、アルコキシシリル化合物が挙げられ、機械物性および耐汚染性の観点から、さらに好ましくは、アミノアルコール、アルコキシシリル化合物が挙げられ、とりわけ好ましくは、アミノアルコールおよびアルコキシシリル化合物の併用が挙げられる。
また、ポリウレタン樹脂組成物が、後述するポリウレタン溶液として調製される場合、鎖伸長剤として、安定性の観点から、より好ましくは、脂肪族ポリアミン、モノアミンが挙げられ、とりわけ好ましくは、脂肪族ポリアミンおよびモノアミンの併用が挙げられる。
なお、鎖伸長剤の配合割合は、後述する反応当量比が後述する範囲となるように、適宜調整される。
また、鎖伸長剤の配合割合は、高分子量ポリオール100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下である。
また、上記した高分子量ポリオールとして、ポリカーボネートポリオールが用いられる場合、機械物性の向上を図る観点から、鎖伸長剤として、好ましくは、アミノアルコールとアルコキシシリル化合物との併用が挙げられる。
アミノアルコールとアルコキシシリル化合物とが併用される場合、それらの含有割合は、アミノアルコールとアルコキシシリル化合物との総量100質量部に対して、アミノアルコールが、例えば、40質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、60質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、80質量部以下、より好ましくは、70質量部以下である。また、アルコキシシリル化合物が、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、30質量部以上であり、例えば、60質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、40質量部以下である。
上記の割合でアミノアルコールとアルコキシシリル化合物とが併用されていれば、機械物性の向上を図ることができる。
また、原料成分は、任意成分として、親水性基含有ポリオールを含むことができる。
原料成分が親水性基含有ポリオールを含む場合、その原料成分の反応生成物(ポリウレタン樹脂組成物)は、親水性基を有するため、水に対する分散性に優れる。
そのため、ポリウレタン樹脂組成物を水に分散させる場合、原料成分は、好ましくは、親水性基含有ポリオールを含む。
親水性基含有ポリオールは、ノニオン性基またはイオン性基などの親水性基と、2つ以上の水酸基とを含有する有機化合物であって、例えば、ノニオン性基を含有するポリオール(以下、ノニオン性基含有ポリオール)、イオン性基を含有するポリオール(以下、イオン性基含有ポリオール)などが挙げられる。
ノニオン性基含有ポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレン基含有ポリオール、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールなどが挙げられる。
ポリオキシエチレン基含有ポリオールは、分子内にポリオキシエチレン基を有するとともに、水酸基を2つ以上有する化合物であって、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレントリオール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドとのランダムおよび/またはブロック共重合体(例えば、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンコポリマージオールあるいはトリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンブロックポリマージオールあるいはトリオール、ポリプロピレングリコールの末端にエチレンオキサイドを付加重合させたプルロニックタイプのポリプロピレングリコールあるいはトリオールなど)などが挙げられる。
また、ポリオキシエチレン基含有ポリオールとしては、さらに、ポリオキシエチレン基を側鎖に有するポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールなども挙げられる。
より具体的には、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールは、側鎖にポリオキシエチレン基を含み、主鎖末端に2つ以上(好ましくは、2つ)の水酸基を有する有機化合物であって、次のように合成することができる。
すなわち、まず、ジイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートなど)と片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(例えば、メトキシポリオキシエチレングリコールなど)とを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールの水酸基に対してジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させ、必要により未反応のジイソシアネートを除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを得る。
次いで、得られるポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートと、ジアルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミンなど)とを、ジアルカノールアミンの2級アミノ基に対して、ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネートのイソシアネート基がほぼ等量となる割合でウレア化反応させる。これにより、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオール(好ましくは、ポリオキシエチレン側鎖含有ジオール)が得られる。
片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールとしては、例えば、アルキル基(炭素数1~10)で片末端封止したモノアルコキシポリオキシエチレングリコールなどが挙げられる。そのようなアルキル基によって片末端封止されたモノアルコキシポリオキシエチレングリコールとして、具体的には、メトキシポリオキシエチレングリコール、エトキシポリオキシエチレングリコールが挙げられ、好ましくは、メトキシポリオキシエチレングリコールが挙げられる。
これらノニオン系親水性基含有ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
ノニオン系親水性基含有ポリオールの数平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)は、例えば、200以上、好ましくは、300以上であり、例えば、6000以下、好ましくは、3000以下である。
イオン性基含有ポリオールは、例えば、カルボン酸基(カルボキシ基)、スルホン酸基などのアニオン性基や、4級アンモニウム基などのカチオン性基と、2つ以上の水酸基とを併有する有機化合物である。
イオン性基含有ポリオールとして、好ましくは、アニオン性基を含有するポリオール(以下、アニオン性基含有ポリオール)が挙げられる。
アニオン性基含有ポリオールとしては、例えば、カルボン酸基含有ポリオール、スルホン酸基含有ポリオールなどが挙げられる。
カルボン酸基含有ポリオールとして、具体的には、例えば、2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、2,2-ジメチロールブタン酸(DMBA)、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸などのポリヒドロキシルカルボン酸などが挙げられる。これらカルボン酸基含有ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
スルホン酸基含有ポリオールとしては、例えば、エポキシ基含有化合物と酸性亜硫酸塩との合成反応から得られる、ジヒドロキシブタンスルホン酸、ジヒドロキシプロパンスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノブタンスルホン酸などが挙げられる。これらスルホン酸基含有ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
これらイオン性基含有ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
これら親水性基含有ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
親水性基含有ポリオールとして、好ましくは、イオン性基含有ポリオール、より好ましくは、アニオン性基含有ポリオール、さらに好ましくは、カルボン酸基含有ポリオール、とりわけ好ましくは、2,2-ジメチロールプロピオン酸が挙げられる。
なお、親水性基含有ポリオールの配合割合は、後述する反応当量比が後述する範囲となるように、適宜調整される。
また、親水性基含有ポリオールの配合割合は、高分子量ポリオール100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば、20質量部以下、好ましくは、15質量部以下である。
さらに、原料成分は、任意成分として、低分子量ポリオールを含有することもできる。
低分子量ポリオールとしては、上記した低分子量ポリオールが挙げられ、好ましくは、2価アルコール、3価アルコールが挙げられ、より好ましくは、2価アルコールが挙げられ、さらに好ましくは、炭素数4~6のエーテルジオールが挙げられ、とりわけ好ましくは、トリエチレングリコール(TEG)が挙げられる。
なお、低分子量ポリオールの配合割合は、後述する反応当量比が後述する範囲となるように、適宜調整される。
また、低分子量ポリオールの配合割合は、高分子量ポリオール100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上であり、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
このように、原料成分は、必須成分として、ポリイソシアネート成分、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤を含む。また、原料成分は、任意成分として、親水性基含有ポリオールおよび/または低分子量ポリオールを含むことができる。
そして、上記の原料成分が反応することにより、反応生成物として、ポリウレタン樹脂組成物が得られる。
また、ポリウレタン樹脂組成物は、製造性、環境性などの観点から、好ましくは、ポリウレタン樹脂組成物が水に分散された水分散液(以下、ポリウレタン水分散液とする。)として製造される。
より具体的には、ポリウレタン樹脂組成物が水に分散される場合、原料成分は、好ましくは、ポリイソシアネート成分、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤と、親水性基含有ポリオールとを含む。より好ましくは、原料成分は、ポリイソシアネート成分、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤と、親水性基含有ポリオールとからなるか、または、ポリイソシアネート成分、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤と、親水性基含有ポリオールと、低分子量ポリオールとからなる。
そして、ポリウレタン水分散液は、以下のようにして製造される。
すなわち、この方法では、まず、ポリイソシアネート成分と、高分子量ポリオールおよび親水性基含有ポリオール(さらに、必要に応じて、低分子量ポリオール)とを反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを得る。
イソシアネート基末端プレポリマーを合成するには、上記各成分を、高分子量ポリオールおよび親水性基含有ポリオール(さらに、必要に応じて、低分子量ポリオール)中の水酸基に対する、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の反応当量比(イソシアネート基/水酸基)において、1を超える割合、好ましくは、1.1~10の割合で配合する。そして、バルク重合や溶液重合などの公知の重合方法によって、上記各成分を反応させる。
バルク重合では、例えば、窒素雰囲気下、上記成分を配合して、反応温度75~85℃で、1~20時間程度反応させる。
溶液重合では、例えば、窒素雰囲気下、有機溶剤に、上記成分を配合して、反応温度20~80℃で、1~20時間程度反応させる。なお、有機溶剤としては、イソシアネート基に対して不活性で、かつ、親水性に富み、除去が容易な低沸点溶媒である、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、例えば、テトラヒドロフランなどのエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート類、例えば、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテートなどのカルビトールアセテート類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などが挙げられる。
この重合反応は、反応溶液中のイソシアネート基含有率が10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、3質量%以下になるまで反応させる。
また、上記重合では、必要に応じて、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などの反応触媒を添加してもよく、また、得られるイソシアネート基末端プレポリマーから遊離の(未反応の)ポリイソシアネート成分を、例えば、蒸留や抽出などの公知の方法により、除去することもできる。
そして、得られるイソシアネート基末端プレポリマーにおいて、親水基として、アニオン性基またはカチオン性基が含まれている場合には、好ましくは、中和剤を添加して、アニオン性基またはカチオン性基の塩を形成させる。
例えば、アニオン性基が含まれている場合には、中和剤としては、慣用の塩基、例えば、有機塩基(例えば、第3級アミン類(トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのトリC1-4アルキルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン、モルホリンなどの複素環式アミンなど))、無機塩基(アンモニア、アルカリ金属水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど))が挙げられる。これらの塩基は、単独使用または2種以上併用できる。
中和剤は、アニオン性基1当量あたり、0.4当量以上、好ましくは、0.6当量以上の割合で添加し、また、例えば、1.2当量以下、好ましくは、1当量以下の割合で添加する。
このようにして得られるイソシアネート基末端プレポリマーは、その分子末端に、2つ以上の遊離のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーであって、そのイソシアネート基の含有量(溶剤を除いた固形分換算のイソシアネート基含量(NCO%))が、例えば、0.3質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上、より好ましくは、1.0質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、12質量%以下、より好ましくは、10質量%以下である。
また、イソシアネート基の平均官能基数は、例えば、1.5以上、好ましくは、1.9以上であり、また、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。
また、その数平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)が、例えば、500以上、好ましくは、800以上であり、また、例えば、100000以下、好ましくは、50000以下である。
次いで、この方法では、上記により得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤とを、例えば、水中で反応させる。
これにより、イソシアネート基末端プレポリマーが鎖伸長剤によって鎖伸長された反応生成物として、ポリウレタン樹脂組成物を得ることができ、また、そのポリウレタン樹脂組成物が水に分散(ポリウレタン樹脂組成物の一部が水に溶解される形態を含む。)されたポリウレタン水分散液(ポリウレタンディスパージョン)を得ることができる。
イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させるには、例えば、まず、イソシアネート基末端プレポリマーを水に添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを分散させる。次いで、これに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長する。
イソシアネート基末端プレポリマーを水に分散させるには、撹拌下、イソシアネート基末端プレポリマーを水に徐々に添加する。イソシアネート基末端プレポリマーは、水100質量部に対して、例えば、10~500質量部添加される。
そして、水中に分散したイソシアネート基末端プレポリマーに鎖伸長剤を、撹拌下、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤のアミノ基の反応当量比(アミノ基/イソシアネート基)が、例えば、0.5~1.1、好ましくは、0.7~1の割合となるように、添加する。なお、アミノ基は、第1級アミノ基および第2級アミノ基を含む。
また、鎖伸長剤のアミノ基は、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基との反応性が高く、また、反応により生成されるウレア結合は、分子間凝集力が非常に高いことから、鎖伸長剤とイソシアネートモノマーとの局所的な反応の低減が必要である。
そのため、鎖伸長剤は、好ましくは、水溶液もしくは有機溶剤溶液、より好ましくは、水溶液として配合する。水溶液もしくは溶液中の濃度は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
また、鎖伸長剤は、一括添加してもよく、また、分割添加してもよい。
また、鎖伸長剤は、好ましくは、40℃以下で分割添加し、添加終了後は、さらに撹拌しつつ、例えば、常温にて反応を完結させる。
なお、上記とは逆に、水をイソシアネート基末端プレポリマー中に添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長することもできる。
また、イソシアネート基末端プレポリマーを、水分散させるときに、水に予め鎖伸長剤の一部を溶解させることもできる。
具体的には、例えば、鎖伸長剤の一部(例えば、アルコキシシリル化合物など)が溶解された水溶液に、イソシアネート基末端プレポリマーを分散させ、さらに、鎖伸長剤の残部(例えば、アミノアルコールなど)を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長させることもできる。
また、この方法では、必要に応じて、有機溶剤や水を除去することができ、さらには、水を添加して固形分濃度を調整することもできる。
これにより、ポリウレタン樹脂組成物が水に分散されたポリウレタン水分散液が、得られる。
ポリウレタン水分散液において、ポリウレタン樹脂組成物の数平均分子量(標準ポリスチレンを検量線とするGPC測定による数平均分子量)は、例えば、3000以上、好ましくは、5000以上であり、例えば、100000以下、好ましくは、80000以下である。
また、ポリウレタン水分散液において、ポリウレタン樹脂組成物の固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、45質量%以下である。
また、ポリウレタン水分散液の25℃における粘度は、固形分濃度が30質量%程度に調整された場合において、例えば、3000mPa・s(25℃)以下、好ましくは、1000mPa・s(25℃)以下、さらに好ましくは、500mPa・s(25℃)以下であり、通常、5mPa・s(25℃)以上である。
なお、粘度は、SB型粘度計を用いて、JIS K 7117-1(1999)に準拠して測定される(以下同様)。
また、ポリウレタン水分散液における固形分中のウレタン基濃度は、仕込み計算値で、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
また、ポリウレタン水分散液中のポリウレタン樹脂組成物の平均粒子径は、例えば、5nm以上、好ましくは、10nm以上であり、例えば、1000nm以下、好ましくは、500nm以下である。
なお、平均粒子径は、サブミクロン粒子アナライザーN5(ベックマン・コールター社製)により測定される。
また、ポリウレタン樹脂組成物は、上記したポリウレタン水分散液として製造される他、例えば、ポリウレタン樹脂組成物が有機溶剤(後述)に溶解された溶液(以下、ポリウレタン溶液とする。)として製造されていてもよい。
より具体的には、ポリウレタン樹脂組成物が有機溶剤(後述)に溶解される場合、原料成分は、好ましくは、親水性基含有ポリオールを含まず、ポリイソシアネート成分、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤とを含む。より好ましくは、原料成分は、ポリイソシアネート成分、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤からなるか、または、ポリイソシアネート成分、高分子量ポリオールおよび鎖伸長剤と、低分子量ポリオールとからなる。
そして、ポリウレタン溶液は、以下のようにして製造される。
すなわち、この方法では、まず、ポリイソシアネート成分と、高分子量ポリオール(さらに、必要に応じて、低分子量ポリオール)とを反応させ、イソシアネート基末端プレポリマーを得る。
イソシアネート基末端プレポリマーを合成するには、上記各成分を、高分子量ポリオール(さらに、必要に応じて、低分子量ポリオール)中の水酸基に対する、ポリイソシアネート成分中のイソシアネート基の反応当量比(イソシアネート基/活性水素基)において、1を超える割合、好ましくは、1.1~10の割合で配合する。そして、上記バルク重合や上記溶液重合などの公知の重合方法によって、上記各成分を反応させる。
この重合反応は、反応溶液中のイソシアネート基含有率が10質量%以下、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、3質量%以下になるまで反応させる。
また、上記重合では、必要に応じて、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などの反応触媒を添加してもよく、また、得られるイソシアネート基末端プレポリマーから遊離の(未反応の)ポリイソシアネート成分を、例えば、蒸留や抽出などの公知の方法により、除去することもできる。また、必要に応じて、イソシアネート基末端プレポリマーを、公知の方法で脱水処理することができる。
このようにして得られるイソシアネート基末端プレポリマーは、その分子末端に、2つ以上の遊離のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーであって、そのイソシアネート基の含有量(溶剤を除いた固形分換算のイソシアネート基含量)が、例えば、0.3質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上、より好ましくは、1.0質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、12質量%以下、より好ましくは、10質量%以下である。
また、イソシアネート基の平均官能基数は、例えば、1.5以上、好ましくは、1.9以上、より好ましくは、2.0以上であり、また、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。
また、その数平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)が、例えば、500以上、好ましくは、800以上であり、また、例えば、100000以下、好ましくは、50000以下である。
次いで、この方法では、上記により得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤とを、例えば、有機溶剤中で反応させる。
これにより、イソシアネート基末端プレポリマーが鎖伸長剤によって鎖伸長された反応生成物として、ポリウレタン樹脂組成物を得ることができ、また、そのポリウレタン樹脂組成物が有機溶剤に溶解(ポリウレタン樹脂組成物の一部が有機溶剤に分散される形態を含む。)されたポリウレタン溶液を得ることができる。
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのアルキルエステル類、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、エチル-3-エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類、例えば、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、臭化メチル、ヨウ化メチレン、ジクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素類、例えば、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、N,N’-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホニルアミドなどの極性非プロトン類、さらには、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタートなどが挙げられる。これら有機溶剤は、単独使用または2種類以上併用することもできる。有機溶剤として、好ましくは、極性非プロトン類が挙げられ、より好ましくは、N,N’-ジメチルアセトアミドが挙げられる。
イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを有機溶剤中で反応させるには、例えば、まず、イソシアネート基末端プレポリマーを有機溶剤に添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを溶解させる。次いで、これに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長する。
イソシアネート基末端プレポリマーを有機溶剤に溶解させるには、撹拌下、イソシアネート基末端プレポリマーを有機溶剤に徐々に添加する。イソシアネート基末端プレポリマーは、有機溶剤100質量部に対して、例えば、10~500質量部添加される。
そして、有機溶剤中に溶解したイソシアネート基末端プレポリマーに鎖伸長剤を、撹拌下、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤の活性水素基(水酸基およびアミノ基など)の反応当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0.5~1.1、好ましくは、0.7~1の割合となるように、添加する。
また、鎖伸長剤のアミノ基は、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基との反応性が高く、また、反応により生成されるウレア結合は、分子間凝集力が非常に高いことから、鎖伸長剤とイソシアネートモノマーとの局所的な反応の低減が必要である。
そのため、鎖伸長剤は、好ましくは、水溶液もしくは有機溶剤溶液、好ましくは、有機溶剤溶液として配合する。水溶液もしくは溶液中の濃度は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
また、鎖伸長剤は、一括添加してもよく、また、分割添加してもよい。
また、鎖伸長剤は、好ましくは、40℃以下で分割添加し、添加終了後は、さらに撹拌しつつ、例えば、常温にて反応を完結させる。
なお、上記とは逆に、有機溶剤をイソシアネート基末端プレポリマー中に添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを有機溶剤に溶解させ、次いで、それに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長することもできる。
また、イソシアネート基末端プレポリマーを、有機溶剤に溶解させるときに、有機溶剤に予め鎖伸長剤の一部を溶解させることもできる。
具体的には、例えば、鎖伸長剤の一部(例えば、アルコキシシリル化合物など)が溶解された有機溶剤に、イソシアネート基末端プレポリマーを分散させ、さらに、鎖伸長剤の残部(例えば、アミノアルコールなど)を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長させることもできる。
また、この方法では、必要に応じて、有機溶剤や水を除去することができ、さらには、有機溶剤を添加して固形分濃度を調整することもできる。
これにより、ポリウレタン樹脂組成物が有機溶剤に溶解されたポリウレタン溶液が、得られる。
上記したポリウレタン溶液において、ポリウレタン樹脂組成物の数平均分子量(標準ポリスチレンを検量線とするGPC測定による数平均分子量)は、例えば、3000以上、好ましくは、5000以上であり、例えば、100000以下、好ましくは、80000以下である。
また、ポリウレタン溶液において、ポリウレタン樹脂組成物の固形分濃度は、例えば、5質量%以上、好ましくは、18質量%以上、より好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、40質量%以下、好ましくは、30質量%以下、より好ましくは、25質量%以下である。
また、ポリウレタン溶液の25℃における粘度は、固形分濃度が30質量%程度に調整された場合において、例えば、3000mPa・s(25℃)以下、好ましくは、1000mPa・s(25℃)以下、さらに好ましくは、500mPa・s(25℃)以下であり、通常、5mPa・s(25℃)以上である。
なお、粘度は、SB型粘度計を用いて、JIS K 7117-1(1999)に準拠して測定される。
また、ポリウレタン溶液における固形分中のウレタン基濃度は、仕込み計算値で、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、30質量%以下である。
また、ポリウレタン樹脂組成物、ポリウレタン水分散液および/またはポリウレタン溶液には、必要に応じて、各種の添加剤を配合することができる。
添加剤としては、例えば、架橋剤、シランカップリング剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、防カビ剤、防錆剤、艶消し剤、難燃剤、揺変剤、粘着付与剤、増粘剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、反応遅延剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、染料、無機顔料、有機顔料、体質顔料、硬化剤、タック防止剤、無機粒子、モンモリロナイト、合成マイカなどの水膨潤性無機層状化合物、有機粒子などが挙げられる。
これら添加剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
添加剤の添加割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
なお、添加剤は、上記各原料成分に予め配合してもよく、また、イソシアネート基末端プレポリマー、ポリウレタン水分散液および/またはポリウレタン溶液に配合してもよい。
ポリウレタン水分散液および/またはポリウレタン溶液として、製造性および環境性の観点から、好ましくは、ポリウレタン水分散液が挙げられる。
そして、このようなポリウレタン樹脂組成物では、原料成分中のポリイソシアネート成分が、親水性を担保するペンタメチレンジイソシアネートと、疎水性を担保する炭素数6以上の脂肪族ポリイソシアネートとを、所定割合で含有する。
そのため、水性の汚染に対する耐汚染性と、油性の汚染に対する耐汚染性とを両立することができ、さらに、機械物性にも優れる乾燥物(硬化物)を得ることができる。
なお、ポリウレタン樹脂組成物の乾燥物を得る方法としては、特に制限されず、例えば、上記のポリウレタン水分散液および/またはポリウレタン溶液を、公知の基材に対して、公知の方法で塗布および乾燥させればよい。
乾燥条件としては、特に制限されないが、例えば、常温(20~30℃)において、例えば、5時間以上、好ましくは、10時間以上であり、例えば、48時間以下、好ましくは、24時間以下である。
また、上記の乾燥(一次乾燥)の後、さらに、二次乾燥させることもできる。二次乾燥条件としては、特に制限されないが、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃において、例えば、10分以上、好ましくは、30分以上であり、例えば、5時間以下、好ましくは、2時間以下である。
これにより、ポリウレタン水分散液および/またはポリウレタン溶液の乾燥物として、ポリウレタン樹脂組成物の硬化物が得られる。
このような乾燥物は、上記したように、機械物性に優れ、さらに、耐汚染性に優れる。
そのため、上記のポリウレタン樹脂組成物は、ポリウレタン水分散液および/またはポリウレタン溶液として製造され、コーティング剤、接着剤、塗料および合成擬革などの各種産業分野において、好適に用いられる。
より具体的には、本発明のコーティング剤は、上記のポリウレタン樹脂組成物を、主成分として含んでおり、好ましくは、ポリウレタン水分散液および/またはポリウレタン溶液からなる。なお、主成分とは、溶媒および分散媒を除く成分(固形物成分)中、例えば、80質量%以上、好ましくは、90質量%以上、通常、100質量%以下の割合であることを示す(以下同様。)。
このようなコーティング剤によれば、機械物性に優れ、さらに、耐汚染性に優れる乾燥物(コーティング膜、コート層)を得ることができる。
上記ポリウレタン樹脂組成物がコーティング剤として用いられる場合、コーティング剤の用途としては、例えば、各種プラスチックコート、フィルムコート(加飾フィルム、保護フィルム、食品包装フィルムなど)、ガラスコート、光学部材コート、木工コート、金属部材コート、布帛や織物のコートなどが挙げられる。
また、本発明の塗料は、上記のポリウレタン樹脂組成物を、主成分として含んでおり、好ましくは、ポリウレタン水分散液および/またはポリウレタン溶液からなる。このような塗料によれば、機械物性に優れ、さらに、耐汚染性に優れる乾燥物を得ることができる。
上記ポリウレタン樹脂組成物が塗料として用いられる場合、塗料の用途としては、例えば、木工用塗料、各種プラスチック塗料、自動車内装塗料、自動車外装塗料、筐体(携帯電話、スマートフォン、タブレット)塗料、電子機器塗料、家具、建材、スポーツ部材(ゴルフボールなど)、炉ボット部材、印刷部材、インキ、金属(缶用)塗料などが挙げられる。
また、本発明の接着剤は、上記のポリウレタン樹脂組成物を、主成分として含んでおり、好ましくは、ポリウレタン水分散液および/またはポリウレタン溶液からなる。このような接着剤によれば、機械物性に優れ、さらに、耐汚染性に優れる乾燥物(接着層など)を得ることができる。
上記ポリウレタン樹脂組成物が接着剤として用いられる場合、接着剤の用途としては、例えば、靴用接着剤、食品包装用接着剤、詰め替え包材用接着剤、自動車用接着剤、電子機器用接着剤、皮革用接着剤、各種粘着剤、フィルム用接着剤、布帛用接着剤、繊維用接着剤、木工用接着剤、紙用接着剤などが挙げられる。
また、本発明の合成擬革は、上記のポリウレタン樹脂組成物を含んでいる。より具体的には、合成擬革としては、例えば、人工皮革、合成皮革などが挙げられる。
人工皮革は、例えば、ポリウレタン水分散液および/またはポリウレタン溶液を、極細繊維からなる不織布に含浸させた後、抽出または乾燥によって溶剤を除去することにより、得ることができる。
合成皮革は、例えば、公知の基材にポリウレタン水分散液および/またはポリウレタン溶液を塗布および乾燥させることにより、得ることができる。
また、合成皮革は、例えば、離型紙上にポリウレタン水分散液および/またはポリウレタン溶液を塗布および乾燥させた後、その塗膜上に、公知の樹脂組成物を塗布および乾燥させて中間層および/または接着層を形成し、その後、さらに、中間層および/または接着層に、公知の基材を貼り合わせることによって、得ることができる。また、基材との貼り合わせにおいては、熱圧着ロールなどを使用することもできる。
基材としては、例えば、各種不織布、編み物、織布などが挙げられる。
また、繊維基材層、スポンジ層、ポリ塩化ビニル(PVC)層からなるPVC系合成皮革に対して、ポリウレタン水分散液および/またはポリウレタン溶液を塗布および乾燥させることにより、合成皮革を得ることもできる。
このような合成擬革は、機械物性に優れ、さらに、耐汚染性に優れる。
上記ポリウレタン樹脂組成物が合成擬革に用いられる場合、合成擬革の用途としては、例えば、自動車内装材(シート、クッション、ヘッドレスト、インパネなど)、鉄道(新幹線など)内装部材、航空機内装部材、家具、クッション、鞄、財布、靴、各種ケース、衣料品などが挙げられる。
そのため、上記のポリウレタン樹脂組成物、コーティング剤、接着剤、塗料および合成擬革は、例えば、自動車内装材、自動車外装材、電子機器、医療、建材、衣料品、家具、光学用部材、輸送機部材、食品包装部材などの各種産業分野において、好適に用いられる。
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
<ポリウレタン水分散液>
実施例1
窒素雰囲気下、撹拌機、温度計、還流管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、予め減圧脱水処理した、ポリエステルジオール(高分子量ポリオール、タケラックU-5620、三井化学社製、水酸基価:56mgKOH/g、PES)154.5質量部と、トリオキシエチレングリコール(低分子量ポリオール、TEG)23.2質量部と、ジメチロールプロピオン酸(アニオン性基含有ポリオール、DMPA)16.3質量部と、メチルエチルケトン(有機溶剤、MEK)134.2質量部とを入れて混合した。
次いで、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(スタビオPDI、三井化学社製、PDI)5.85質量部と、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(タケネート700、三井化学社製、HDI)73.32質量部と(PDI8モル%、HDI92モル%)を添加し、75℃で4時間反応させた。
次いで、NCO%が2.64質量%となったところで40℃まで冷却し、トリエチルアミン(中和剤、TEA)12.0質量部を添加して中和させて、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを得た。
次いで、KBM-603(鎖伸長剤、アルコキシシリル化合物、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製)5.10質量部をイオン交換水876.7質量部に溶解させた水溶液に、上記イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーをホモディスパーにて分散および乳化し、5分間撹拌した。
次いで、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(鎖伸長剤、アミノアルコールEA、日本乳化剤製)9.56質量部をイオン交換水38.2質量部に溶解したポリアミン水溶液を徐々に添加し、鎖伸長反応させた。
その後、メチルエチルケトンおよび過剰のイオン交換水を留去することにより、ポリウレタン水分散液を得た。
実施例2~6および比較例1~2
表1に記載の配合処方に変更した以外は、実施例1と同じ方法で、ポリウレタン水分散液を得た。
実施例7
窒素雰囲気下、撹拌機、温度計、還流管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、予め減圧脱水処理した、ポリエステルジオール(高分子量ポリオール、タケラックU-5620、三井化学社製 水酸基価:56mgKOH/g、PES)118.6質量部と、トリオキシエチレングリコール(低分子量ポリオール、TEG)17.8質量部と、ジメチロールプロピオン酸(アニオン性基含有ポリオール、DMPA)12.5質量部と、メチルエチルケトン(有機溶剤、MEK)107.5質量部とを入れて混合した。
次いで、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(スタビオPDI、三井化学社製、PDI)11.22質量部と、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(ベスタナットH12MDI、エボニック社製、H12MDI)28.63質量部と(PDI40モル%、H12MDI60モル%)を添加し、75℃で4時間反応させた。
次いで、NCO%が2.52質量%となったところで40℃まで冷却し、トリエチルアミン(中和剤、TEA)9.2質量部を添加して中和させて、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを得た。
次いで、KBM-603(鎖伸長剤、アルコキシシリル化合物、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製)3.92質量部をイオン交換水702.7質量部に溶解させた水溶液に、上記イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーをホモディスパーにて分散および乳化し、5分間撹拌した。
次いで、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(鎖伸長剤、アミノアルコールEA、日本乳化剤製)7.34質量部をイオン交換水29.4質量部に溶解したポリアミン水溶液を徐々に添加し、鎖伸長反応させた。
その後、メチルエチルケトンおよび過剰のイオン交換水を留去することにより、ポリウレタン樹水分散液を得た。
実施例8
窒素雰囲気下、撹拌機、温度計、還流管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、予め減圧脱水処理した、ポリカーボネートジオール(高分子量ポリオール、デュラノールT-6002、旭化成社製、水酸基価:56mgKOH/g、PCD)261.8質量部と、ジメチロールプロピオン酸(アニオン性基含有ポリオール、DMPA)7.0質量部と、アセトニトリル(有機溶剤、AN)154.7質量部とを入れて混合した。
次いで、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(スタビオPDI、三井化学社製、PDI)7.9質量部と、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(タケネート700、三井化学社製、HDI)34.5質量部と(PDI20モル%、HDI80モル%)を添加し、75℃で6時間反応させた。
次いで、NCO%が1.33質量%となったところで、アセトニトリル(有機溶剤)232.0質量部を入れ希釈し、40℃まで冷却し、トリエチルアミン(中和剤、TEA)5.2質量部にて中和して、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを得た。
次いで、撹拌した状態の上記イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーに対して、イオン交換水851.2質量部を少しずつ添加して、乳化させた。
その後、乳化液に、ヒドラジン一水和物(鎖伸長剤、HYD)3.49質量部をイオン交換水13.9質量部に溶解させたポリアミン水溶液を徐々に添加し、鎖伸長反応させた。
その後、アセトニトリルおよび過剰のイオン交換水を留去することにより、ポリウレタン水分散液を得た。
実施例9~10よび比較例3~4
表2に記載の配合処方に変更した以外は、実施例6と同じ方法で、ポリウレタン水分散液を得た。
実施例11
窒素雰囲気下、撹拌機、温度計、還流管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、予め減圧脱水処理した、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(高分子量ポリオール、PTG2000SN、保土ヶ谷化学社製、水酸基価:56mgKOH/g、PTMEG)262.4質量部と、ジメチロールプロピオン酸(アニオン性基含有ポリオール、DMPA)7.03質量部と、アセトニトリル(有機溶剤、AN)154.7質量部とを入れて混合した。
次いで、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート15.85質量部(スタビオPDI、三井化学社製、PDI)と、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(タケネート700、三井化学社製、HDI)25.95質量部と(PDI40モル%、HDI60モル%)を添加し、75℃で6時間反応させた。
次いで、NCO%が1.33質量%となったところで、アセトニトリル(有機溶剤)232.0質量部を入れ希釈し、40℃まで冷却し、トリエチルアミン(中和剤、TEA)5.2質量部にて中和して、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーを得た。
次いで、撹拌した状態の上記イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーに対して、イオン交換水851.2質量部を少しずつ添加して、乳化させた。
その後、乳化液に、ヒドラジン一水和物(鎖伸長剤、HYD)3.49質量部をイオン交換水14.0質量部に溶解させたポリアミン水溶液を徐々に添加し、鎖伸長反応させた。
その後、アセトニトリルおよび過剰のイオン交換水を留去することにより、ポリウレタン水分散液を得た。
<ポリウレタン溶液>
参考例12
窒素雰囲気下、撹拌機、温度計、還流管および窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、予め減圧脱水処理した、ポリカーボネートジオール(高分子量ポリオール、デュラノールT-6002、旭化成社製、水酸基価:56mgKOH/g、PCD)81.7質量部を入れ、撹拌した。
次いで、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(スタビオPDI、三井化学社製、PDI)3.8質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネート7.7質量部(タケネート700、三井化学社製、HDI)と(PDI35モル%、HDI65モル%)を添加し、撹拌速度200rpmにて、75℃まで昇温した。
次いで、75℃で1時間反応させた後、ウレタン化触媒として、オクチル酸第一錫(スタノクト)0.004質量部を添加し、同温度にて6時間反応させた後、さらに、イソシアネート基濃度が2.84質量%になるまで反応させて、イソシアネート基末端プレポリマーを得た。
次いで、イソシアネート基末端プレポリマーを50℃まで冷却した後、イソシアネート基末端プレポリマー濃度が15質量%となるように、撹拌速度300rpmにて、予めモレキュラーシーブス4Aを浸漬して脱水したN,N’-ジメチルアセトアミド(有機溶剤、DMAc)484.3質量部を徐々に添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを溶解させた。
次いで、イソシアネート基末端プレポリマーの溶液を、15℃以下まで冷却した。
次いで、ペンタメチレンジアミン(鎖伸長剤、脂肪族ポリアミン、PDA)2.78質量部、および、ジエチルアミン(鎖伸長剤、モノアミン,DEA)0.21質量部をN,N’-ジメチルアセトアミド26.9質量部にて10質量%に希釈したアミン溶液を、20分かけて徐々に徐々に添加し、鎖伸長反応させた。
更に80℃にて1時間反応させて、ポリウレタン溶液を得た。
比較例5
表3に記載の配合処方に変更した以外は、実施例9と同じ方法で、ポリウレタン溶液を得た。
<<評価>>
<ポリウレタン水分散液および/またはポリウレタン溶液の性状>
(1)粘度
ポリウレタン水分散液およびポリウレタン溶液の25℃における粘度を、SB型粘度計を用いて、JIS K 7117-1(1999)に準拠して測定した。
(2)ウレタン基濃度
ポリウレタン水分散液およびポリウレタン溶液のウレタン基濃度を、仕込み計算値として求めた。
<乾燥塗膜の物性>
(1)機械物性
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のトレーに、乾燥後の厚みが200μmとなるように、ポリウレタン水分散液またはポリウレタン溶液を流し込み、23℃で12時間乾燥させ、さらに、110℃で1時間乾燥させた。これにより、フィルムを得た。
次いで、上記で得られたフィルムを1cmの短冊状に切断し、引張速度200mm/分の条件で、万能引張試験機(インテスコ社製 205N)により引張試験し、破断時の応力(破断強度(MPa)、伸び率(破断伸び(%)および100%モジュラス(MPaを測定した。
(2)耐汚染性
ガラス板上に、乾燥後の塗膜厚みが約3μmとなるように、ポリウレタン水分散液またはポリウレタン溶液を塗布した後、23℃で12時間乾燥させ、さらに、110℃で1時間乾燥させた。これにより、コート膜を得た。
次いで、ガラス板上のコート膜に、予め調製したコーヒー(水性汚染、ネスカフェゴールドブレンド(50質量%水溶液))または、ソース(油性汚染、ブルドックソース)をスポイトで1滴滴下し、23℃で24時間静置した。
その後、コート膜を水により洗浄し、23℃50%相対湿度下に静置して、外観を目視で確認した。評価基準を下記する。なお、数字が大きいほど、耐汚染性に優れることを示す。
・水性汚染耐性(耐コーヒー性)
5:痕跡が確認されなかった。
4:わずかに変色が確認された。
3:薄く変色が確認された。
2:変色および痕跡が確認された。
1:茶色く変色していた。
・油性汚染耐性(耐ソース性)
5:痕跡が確認されなかった。
4:わずかに痕跡あり
3:薄く痕跡が確認された。
2:痕跡が確認された。
1:痕跡が確認され、べたつきを生じていた。
なお、表中の略号の詳細を下記する。
PCD(T-6002):ポリカーボネートジオール、デュラノールT-6002、旭化成社製、水酸基価:56mgKOH/g
PES(U-5620):ポリエステルジオール、タケラックU-5620、三井化学社製、水酸基価:56mgKOH/g
PTMEG(PTG2000SN):ポリテトラメチレンエーテルグリコール、PTG2000SN、保土ヶ谷化学社製、水酸基価:56mgKOH/g
TEG:トリオキシエチレングリコール
MEK:メチルエチルケトン
AN:アセトニトリル
DMAc:N,N’-ジメチルアセトアミド
DMPA:ジメチロールプロピオン酸、アニオン性基含有ポリオール
TEA:トリエチルアミン
PDI:1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、スタビオPDI、三井化学社製
HDI:1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、タケネート700、三井化学社製
H12MDI:4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ベスタナットH12MDI、エボニック社製
KBM-603:アルコキシシリル化合物、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業社製
HYD:ヒドラジン一水和物
A-EA:N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、アミノアルコールEA、日本乳化剤製
PDA:ペンタメチレンジアミン
DEA:ジエチルアミン