本発明のアンカーコート剤は、後述するように、樹脂フィルムと金属薄膜との密着性を向上させるために用いられ、具体的には、樹脂フィルムと金属薄膜との間に介在される。
本発明のアンカーコート剤は、水性ポリウレタン樹脂を含有する。
水性ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との反応生成物である。
イソシアネート基末端プレポリマーは、少なくとも、ポリイソシアネート、高分子量ポリオール、および、親水基を含有する活性水素化合物を含有するプレポリマー原料を反応させて得られる。すなわち、イソシアネート基末端プレポリマーは、プレポリマー原料の反応生成物である。
ポリイソシアネートは、必須成分として、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含有している。
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの含有割合は、イソシアネート基数を基準として求められる。具体的には、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の総モル数に対して、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアネート基が、50モル%以上、好ましくは、70モル%以上、さらに好ましくは、80モル%以上、とりわけ好ましくは、90モル%以上であり、通常、100モル%以下である。
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンには、シス-1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、シス1,4体とする。)、および、トランス-1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、トランス1,4体とする。)の立体異性体がある。
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、好ましくは、トランス1,4体を含有する。トランス1,4体の含有割合は、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのトランス1,4体およびシス1,4体の総量に対して、例えば、30モル%以上、好ましくは、50モル%以上、より好ましくは、70モル%以上、さらに好ましくは、80モル%以上、とりわけ好ましくは、90モル%以上である。
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、例えば、特開平7-309827号公報に記載される冷熱2段法(直接法)や造塩法、あるいは、特開2004-244349号公報や特開2003-212835号公報などに記載されるホスゲンを使用しない方法などにより、製造することができる。
また、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとしては、それらの誘導体が含まれる。
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの誘導体としては、例えば、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと、公知の低分子量モノオールまたは後述の低分子量ポリオールとの反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと後述の低分子量ポリオールとの反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
上記の低分子量ポリオールは、例えば、分子中に水酸基を2つ以上有し、分子量50以上400未満、好ましくは、300未満の化合物であって、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,2-トリメチルペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、アルカン(C7~20)ジオール、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、ビスフェノールA、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。これら低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
これら低分子量ポリオールは、誘導体の種類および用途に応じて、適宜選択される。
低分子量ポリオールは、例えば、誘導体の種類および用途に応じて、適宜選択される。例えば、ポリオール変性体における低分子量ポリオールとして、好ましくは、3価アルコールが挙げられ、より好ましくは、トリメチロールプロパンが挙げられる。
これらの誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
また、ポリイソシアネートは、任意成分として、その他のビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含有できる。
その他のビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを除くビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンである。具体的には、例えば、1,2-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどが挙げられ、好ましくは、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
ポリイソシアネートが1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含有する場合、その含有割合は、イソシアネート基数を基準として求められる。具体的には、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の総モル数に対して、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアネート基が、1モル%以上であり、50モル%以下、好ましくは、30モル%以下、さらに好ましくは、20モル%以下、とりわけ好ましくは、10モル%以下である。
1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンには、シス-1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、シス1,3体とする。)、および、トランス-1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(以下、トランス1,3体とする。)の立体異性体がある。
1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンは、好ましくは、トランス1,3体を含有する。トランス1,3体の含有割合は、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのトランス1,3体およびシス1,3体の総量に対して、例えば、30モル%以上、好ましくは、50モル%以上、より好ましくは、70モル%以上、さらに好ましくは、80モル%以上、とりわけ好ましくは、90モル%以上である。
また、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンには、上記と同種の誘導体が含まれる。
さらに、ポリイソシアネートは、任意成分として、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを除くイソシアネート(以下、その他のイソシアネートと称する。)を含有できる。
その他のイソシアネートとしては、例えば、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート(ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを除く。)などのポリイソシアネートなどが挙げられる。
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4-または2,6-トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m-、p-フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’-、2,4’-または2,2’-ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’-トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、キシリレンジイソシアネート(1,2-、1,3-または1,4-キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3-または1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:ヘキサメチレンジイソシアネート)(HDI)、2,4,4-または2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートなどの脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
脂環族ポリイソシアネート(ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを除く。)としては、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(別名:ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン)(4,4’-、2,4’-または2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)これらのTrans,Trans-体、Trans,Cis-体、Cis,Cis-体、もしくはその混合物)(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)、などの脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。好ましくは、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)が挙げられる。
その他のイソシアネートには、上記と同種の誘導体が含まれる。
これらその他のイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
ポリイソシアネートがその他のイソシアネートを含有する場合、その含有割合は、イソシアネート基数を基準として求められる。具体的には、ポリイソシアネート中のイソシアネート基の総モル数に対して、その他のイソシアネートのイソシアネート基が、1モル%以上であり、50モル%以下、好ましくは、30モル%以下、さらに好ましくは、20モル%以下、とりわけ好ましくは、10モル%以下である。
ポリイソシアネートは、熱膨張率を低減する観点から、好ましくは、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのみを含むか、または、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのみを含み、さらに好ましくは、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのみを含む。
換言すれば、ポリイソシアネートは、熱膨張率を低減する観点から、好ましくは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンからなる。
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400以上、好ましくは、500以上の有機化合物であって、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、ビニルモノマー変性ポリオールなどが挙げられる。
高分子量ポリオールとして、好ましくは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルポリオールなどが挙げられる。
ポリオキシアルキレンポリオールとしては、例えば、上記の低分子量ポリオールや、公知の低分子量ポリアミンなどを開始剤とする、アルキレンオキサイドの付加重合物が挙げられる。
アルキレンオキサイドとしては、例えば、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどが挙げられる。また、これらアルキレンオキサイドは、単独使用または2種類以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドが挙げられる。また、ポリオキシアルキレンポリオールとして、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとのランダムおよび/またはブロック共重合体などが含まれる。
ポリトリメチレンエーテルグリコールとしては、例えば、植物成分由来の1,3-プロパンジオールの重縮合反応により得られるグリコールなどが挙げられる。
ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物(ポリテトラメチレンエーテルグリコール(結晶性))や、テトラヒドロフランなどの重合単位に、アルキル置換テトラヒドロフランや、上記した2価アルコールを共重合した非晶性(非結晶性)ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量ポリオールと多塩基酸とを、公知の条件下、反応させて得られる重縮合物が挙げられる。
低分子量ポリオールとしては、上記した低分子量ポリオールが挙げられ、好ましくは、2価アルコールが挙げられ、より好ましくは、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールが挙げられる。
また、低分子量ポリオールとして、好ましくは、芳香環を含有する低分子量ポリオール(ビスフェノールAなど)が挙げられる。
低分子量ポリオールとして、芳香環を含有する低分子量ポリオールを用いることにより、分子骨格中に芳香環を含有するポリエステルポリオールが得られる。
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1-ジメチル-1,3-ジカルボキシプロパン、3-メチル-3-エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバシン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸(C11~13)、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、例えば、ヘキサヒドロフタル酸などの脂環族ジカルボン酸、例えば、ダイマー酸、水添ダイマー酸、ヘット酸などのその他のカルボン酸、および、それらカルボン酸から誘導される酸無水物、例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2-アルキル(C12~C18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水トリメリット酸、さらには、これらのカルボン酸などから誘導される酸ハライド、例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライドなどが挙げられる。
これら多塩基酸は、単独使用または2種類以上併用することができる。
多塩基酸として、好ましくは、飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、酸無水物が挙げられ、より好ましくは、芳香族ジカルボン酸およびその酸無水物が挙げられる。
多塩基酸として、芳香族ジカルボン酸および/またはその酸無水物を用いることにより、分子骨格中に芳香環を含有するポリエステルポリオールが得られる。
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、植物由来のポリエステルポリオール、具体的には、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、ヒドロキシル基含有植物油脂肪酸(例えば、リシノレイン酸を含有するひまし油脂肪酸、12-ヒドロキシステアリン酸を含有する水添ひまし油脂肪酸など)などのヒドロキシカルボン酸を、公知の条件下、縮合反応させて得られる植物油系ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオール(好ましくは、2価アルコール)を開始剤として、例えば、ε-カプロラクトン、γ-バレロラクトンなどのラクトン類や、例えば、L-ラクチド、D-ラクチドなどのラクチド類などを開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、さらには、それらに上記2価アルコールを共重合したものなどのラクトンベースポリエステルポリオールなどが挙げられる。
ポリエステルポリオールとして、熱膨張率を低減する観点から、好ましくは、芳香環を含有するポリエステルポリオールが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオール(好ましくは、上記2価アルコール)を開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物(結晶性ポリカーボネートポリオール)や、例えば、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオールや1,6-ヘキサンジオールなどの2価アルコールと、開環重合物とを共重合した非晶性ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
なお、非晶性とは、常温(25℃)において液状であることを示す。また、結晶性とは、常温(25℃)において固形状であることを示す。
これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
高分子量ポリオールとして、熱膨張率を低減する観点から、好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール(より好ましくは、結晶性ポリカーボネートポリオール)が挙げられる。また、密着性が要求される場合には、さらに好ましくは、ポリエステルポリオールが挙げられる。
また、ポリエステルポリオールは、要求される物性に応じて、選択される。
具体的には、熱膨張率をとりわけ良好に低減する観点から、好ましくは、芳香環を含有するポリエステルポリオールが挙げられる。一方、密着性の向上を図る観点から、好ましくは、芳香環を含有しないポリエステルポリオールが挙げられる。
換言すれば、密着性の向上を図りながら、とりわけ良好に熱膨張率を低減する場合、高分子量ポリオールとして、とりわけ好ましくは、芳香環を含有するポリエステルポリオールが挙げられる。
一方、密着性の向上を図りながら、適度な熱膨張率の低減と、適度な耐候性とを両立する場合、高分子量ポリオールとして、とりわけ好ましくは、芳香環を含有しないポリエステルポリオールが挙げられる。
高分子量ポリオールの数平均分子量は、例えば、400以上、好ましくは、500以上、より好ましくは、1000以上、さらに好ましくは、2000以上、とりわけ好ましくは、2500以上であり、例えば、10000以下、好ましくは、8000以下、より好ましくは、6000以下、さらに好ましくは、5000以下、とりわけ好ましくは、4000以下である。
なお、高分子量ポリオールの数平均分子量は、GPC法(標準ポリスチレン換算)により測定することができる。
親水基を含有する活性水素化合物は、ノニオン性基またはイオン性基などの親水性基を含有し、アミノ基または水酸基などの活性水素基を含有する化合物であり、具体的には、例えば、ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物、イオン性基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられる。
ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物としては、例えば、ポリオキシエチレン基を含有する活性水素化合物が挙げられる。
ポリオキシエチレン基を含有する活性水素化合物は、主鎖または側鎖にポリオキシエチレン基を含み、2つ以上の活性水素基を有する化合物である。活性水素基として、好ましくは、水酸基が挙げられる。
ポリオキシエチレン基を主鎖に含有する活性水素化合物としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール(例えば、数平均分子量200~6000、好ましくは300~3000)、片末端封止ポリオキシエチレングリコールなどが挙げられる。
片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールとしては、例えば、アルキル基で片末端封止したアルコキシエチレングリコール(モノアルコキシポリエチレングリコール)などが挙げられる。
モノアルコキシポリエチレングリコールにおいて、片末端を封止するためのアルキル基の炭素数は、例えば、1以上であり、例えば、20以下、好ましくは、10以下、より好ましくは、8以下、さらに好ましくは、4以下、とりわけ好ましくは、2以下である。すなわち、片末端を封止するためのアルキル基として、好ましくは、メチル基、エチル基が挙げられる。
そのようなアルキル基によって片末端封止されたモノアルコキシポリエチレングリコールとして、具体的には、メトキシポリエチレングリコール、エトキシポリエチレングリコールが挙げられ、好ましくは、メトキシポリエチレングリコールが挙げられる。
片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールの数平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)は、例えば、200以上、好ましくは、300以上であり、例えば、6000以下、好ましくは、3000以下である。
ポリオキシエチレン基を側鎖に含有する活性水素化合物としては、例えば、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールが挙げられる。
ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールは、側鎖にポリオキシエチレン基を含み、主鎖末端に2つ以上(好ましくは、2つ)の水酸基を有する有機化合物であって、次のように合成することができる。
すなわち、まず、ジイソシアネートと、上記片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールとを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールの水酸基に対して、ジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させ、必要により未反応のジイソシアネートを除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを得る。
ジイソシアネートとして、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネート、1,4-または1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、2,6-ビス(イソシアナトメチル)ノルボナン(NBDI)などの脂環族ジイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、HDIが挙げられる。
なお、これらの反応条件は、公知の条件でよく、目的および用途に応じて、適宜設定される。
次いで、得られるポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートと、ジアルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミンなど)とを、ジアルカノールアミンの2級アミノ基に対して、ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネートのイソシアネート基がほぼ等量となる割合でウレア化反応させる。
これにより、ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオール(好ましくは、ポリオキシエチレン側鎖含有ジオール)が得られる。
ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールの数平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)は、例えば、200以上、好ましくは、300以上であり、例えば、6000以下、好ましくは、3000以下である。
なお、ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物において、ノニオン性基、具体的には、ポリオキシエチレン基の数平均分子量は、例えば、600~6000である。
これらノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物として、好ましくは、ポリオキシエチレン側鎖含有ポリオールが挙げられる。
イオン性基を含有する活性水素基含有化合物としては、例えば、カルボキシ基などのアニオン性基と、2つ以上の水酸基またはアミノ基などの活性水素基とを併有する有機化合物(アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物)や、例えば、4級アミンなどのカチオン性基と、2つ以上の水酸基またはアミノ基などの活性水素基とを併有する有機化合物(カチオン性基を含有する活性水素基含有化合物)などが挙げられる。
イオン性基を含有する活性水素基含有化合物として、好ましくは、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられ、より好ましくは、アニオン性基と2つ以上の活性水素基とを併有する有機化合物が挙げられ、さらに好ましくは、カルボキシ基と2つの活性水素基とを併有する有機化合物(カルボキシ基を含有する活性水素基含有化合物)が挙げられる。イオン性基を含有する活性水素基含有化合において、活性水素基として、好ましくは、水酸基が挙げられる。
カルボキシ基を含有する活性水素化合物としては、例えば、2,2-ジメチロール酢酸、2,2-ジメチロール乳酸、2,2-ジメチロールプロピオン酸(以下、DMPAと略する。)、2,2-ジメチロールブタン酸(以下、DMBAと略する。)、2,2-ジメチロール酪酸、2,2-ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシルカルボン酸、例えば、リジン、アルギニンなどのジアミノカルボン酸、または、それらの金属塩類やアンモニウム塩類などが挙げられる。好ましくは、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、2,2-ジメチロールブタン酸(DMBA)が挙げられる。
これらイオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、単独使用または併用することができる。
これら親水性基を含有する活性水素基含有化合物は、単独使用または併用することができる。
親水性基を含有する活性水素基含有化合物として、熱膨張率を低減する観点から、好ましくは、ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられ、より好ましくは、アニオン性基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられ、さらに好ましくは、カルボキシ基を含有する活性水素化合物が挙げられる。
そして、イソシアネート基末端プレポリマーを得るには、上記各成分(プレポリマー原料)を、活性水素基(水酸基)に対するイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)において、1を超える割合、好ましくは、1.1~10の割合で配合する。そして、バルク重合や溶液重合などの公知の重合方法、好ましくは、反応性および粘度の調整がより容易な溶液重合によって、上記各成分を反応させる。
バルク重合では、例えば、窒素雰囲気下、上記成分を配合して、反応温度75~85℃で、1~20時間程度反応させる。
溶液重合では、例えば、窒素雰囲気下、有機溶媒(溶剤)に、上記成分を配合して、反応温度20~80℃で、1~20時間程度反応させる。
有機溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性で、かつ、親水性に富み、除去が容易な低沸点溶媒である、例えば、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、例えば、テトラヒドロフランなどのエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート類、例えば、メチルカルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテートなどのカルビトールアセテート類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類などが挙げられる。
また、上記重合反応においては、その目的および用途に応じて、上記した低分子量ポリオールを適宜配合することもできる。具体的には、プレポリマー原料は、耐候性の向上を図る観点から、低分子量ポリオールを含有することができる。
低分子量ポリオールとして、好ましくは、2価アルコールが挙げられ、より好ましくは、トリエチレングリコールが挙げられる。
低分子量ポリオールの配合割合は、熱膨張率を低減する観点から、高分子量ポリオール100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
また、低分子量ポリオールの配合割合は、重合反応における当量比(活性水素基に対するイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基))が上記範囲となるように、適宜設定される。
さらに、上記重合反応においては、必要に応じて、例えば、アミン系、スズ系、鉛系、ビスマス系などの公知のウレタン化触媒を添加してもよく、また、得られるイソシアネート基末端プレポリマーから遊離の(未反応の)ポリイソシアネートを、例えば、蒸留や抽出などの公知の除去手段により除去してもよい。
この重合反応は、反応溶液中のイソシアネート基含有率が15質量%以下、好ましくは、10質量%以下になるまで反応させる。
そして、得られるイソシアネート基末端プレポリマーにおいて、親水基として、アニオン性基またはカチオン性基が含まれている場合には、好ましくは、中和剤を添加して、アニオン性基またはカチオン性基の塩を形成させる。
例えば、アニオン性基が含まれている場合には、中和剤としては、慣用の塩基、例えば、有機塩基(例えば、第3級アミン類(トリメチルアミン、トリエチルアミンなどのトリC1-4アルキルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン、モルホリンなどの複素環式アミンなど))、無機塩基(アンモニア、アルカリ金属水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど))が挙げられる。これらの塩基は、単独使用または2種以上併用できる。
中和剤は、アニオン性基1当量あたり、0.4~1.2当量の割合で添加する。
このようにして得られるイソシアネート基末端プレポリマーは、その分子末端に、2つ以上の遊離のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーであって、そのイソシアネート基の含有量(イソシアネート基含量)が、例えば、0.3質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上、より好ましくは、1.0質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、12質量%以下、より好ましくは、10質量%以下である。
また、イソシアネート基の平均官能基数は、例えば、1.5以上、好ましくは、1.9以上、より好ましくは、2.0以上であり、また、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。
イソシアネート基の平均官能基数が上記範囲にあれば、安定した上記ポリウレタンディスパージョンを得ることができる。
また、イソシアネート基末端プレポリマーの数平均分子量(GPC測定によるポリスチレン換算分子量)が、例えば、500以上、好ましくは、800以上であり、また、例えば、100000以下、好ましくは、50000以下である。
水性ポリウレタン樹脂を得るには、次いで、上記により得られるイソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを反応させる。
鎖伸長剤は、必須成分として、下記式(1)で示される化合物を含有する。
(式中、R1およびR2は、同一または相異なって炭素数1~4のアルキル基を示す。R3およびR4は、同一または相異なって炭素数1~4のアルキレン基を示す。mは、1~3の整数を示す。)
上記式(1)において、R1およびR2としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1~4のアルキル基が挙げられる。また、R3およびR4としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの炭素数1~4のアルキレン基が挙げられる。
上記式(1)で示される化合物として、より具体的には、例えば、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルジエトキシシラン、N,N’-ビス〔γ-(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミンなどが挙げられる。好ましくは、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。
また、鎖伸長剤は、任意成分として、その他の鎖伸長化合物(上記式(1)で示される化合物を除く化合物)を含有できる。
その他の鎖伸長化合物としては、例えば、低分子量ポリオール、ポリアミン、アミノアルコールなどが挙げられる。
低分子量ポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールが挙げられる。
ポリアミンとしては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジアミンなどの芳香族ポリアミン、例えば、1,3-または1,4-キシリレンジアミンもしくはその混合物などの芳香脂肪族ポリアミン、例えば、3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルアミン(慣用名:イソホロンジアミン)、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3-もしくは1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンまたはそれらの混合物、1,3-もしくは1,4-シクロヘキサンジアミンまたはそれらの混合物などの脂環族ポリアミン、例えば、エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン(水和物を含む。)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどの脂肪族ポリアミンなどが挙げられる。
アミノアルコールとしては、例えば、2-((2-アミノエチル)アミノ)エタノール(別名:N-(2-アミノエチル)エタノールアミン)、2-((2-アミノエチル)アミノ)-1-メチルプロパノール(別名:N-(2-アミノエチル)イソプロパノールアミン)などが挙げられる。
これらその他の鎖伸長化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
その他の鎖伸長化合物として、好ましくは、ポリアミン、アミノアルコールが挙げられ、熱膨張率を低減する観点から、より好ましくは、ポリアミンが挙げられ、さらに好ましくは、脂肪族ポリアミンが挙げられる。
鎖伸長剤が、上記式(1)で示される化合物と、その他の鎖伸長化合物とを含有する場合、鎖伸長剤の総モル数に対して、上記式(1)で示される化合物が、例えば、5モル%以上、好ましくは、10モル%以上であり、例えば、50モル%以下、好ましくは、30モル%以下である。また、その他の鎖伸長化合物が、例えば、50モル%以上、好ましくは、70モル%以上であり、例えば、95モル%以下、好ましくは、90モル%以下である。
そして、水性ポリウレタン樹脂を得るには、上記により得られるイソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させて分散させる。これによって、イソシアネート基末端プレポリマーが鎖伸長剤によって鎖伸長された水性ポリウレタン樹脂を、水分散液(ディスパージョン)として得ることができる。
イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させるには、例えば、まず、イソシアネート基末端プレポリマーを水に添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを分散させる。次いで、これに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長する。
イソシアネート基末端プレポリマーを分散させるには、撹拌下、イソシアネート基末端プレポリマーを水に徐々に添加する。イソシアネート基末端プレポリマーは、水100質量部に対して、例えば、10~300質量部添加される。
そして、水中に分散したイソシアネート基末端プレポリマーに鎖伸長剤を、撹拌下、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤の活性水素基(水酸基およびアミノ基など)の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0.5~1.1、好ましくは、0.7~1の割合となるように、添加する。
また、鎖伸長剤のアミノ基は、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基との反応性が高く、また、反応により生成されるウレア結合は、分子間凝集力が非常に高いことから、鎖伸長剤とイソシアネートモノマーとの局所的な反応の低減が必要である。
そのため、鎖伸長剤は、好ましくは、水溶液もしくは溶液として配合する。水溶液もしくは溶液中の濃度は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
また、鎖伸長剤は、一括添加してもよく、また、分割添加してもよい。
また、鎖伸長剤は、好ましくは、40℃以下で分割添加し、添加終了後は、さらに撹拌しつつ、例えば、常温にて反応を完結させる。
なお、上記とは逆に、水をイソシアネート基末端プレポリマー中に添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長することもできる。
また、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させるときに、水に予め鎖伸長剤の一部を溶解させることもできる。具体的には、例えば、鎖伸長剤の一部(例えば、上記式(1)で示される化合物)が溶解された水溶液に、イソシアネート基末端プレポリマーを分散させ、さらに、鎖伸長剤の残部(例えば、その他の鎖伸長化合物)を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長させることもできる。
また、この方法では、必要に応じて、有機溶媒や水を除去することができ、さらには、水を添加して固形分濃度を調整することもできる。
これにより、水性ポリウレタン樹脂が水分散されてなるディスパージョン(ポリウレタンディスパージョン)が得られる。
水性ポリウレタン樹脂の数平均分子量(標準ポリスチレンを検量線とするGPC測定による数平均分子量)は、例えば、3000以上、好ましくは、5000以上であり、例えば、100000以下、好ましくは、80000以下である。
また、ポリウレタンディスパージョンにおいて、水性ポリウレタン樹脂の固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、45質量%以下である。
そして、このようにして得られる水性ポリウレタン樹脂のディスパージョン(ポリウレタンディスパージョン)を、そのまま、アンカーコート剤として用いることができる。
また、アンカーコート剤は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、上記した水性ポリウレタン樹脂の他に、添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、架橋剤、シランカップリング剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、防カビ剤、防錆剤、艶消し剤、難燃剤、揺変剤、粘着付与剤、増粘剤、滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、反応遅延剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、染料、無機顔料、有機顔料、体質顔料、硬化剤、タック防止剤、無機粒子、モンモリロナイト、合成マイカなどの水膨潤性無機層状化合物、有機粒子などが挙げられる。
これら添加剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
添加剤の添加割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
そして、このようにして得られるアンカーコート剤は、ポリイソシアネートが、イソシアネート基の総モル数に対して1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアネート基を50モル%以上の割合で含有し、また、所定の鎖伸長剤が用いられるため、アンカーコート層の熱膨張率を低減することができ、樹脂フィルムおよび金属薄膜と、アンカーコート層との熱膨張率の差異を抑制して、耐熱性の向上を図ることができ、さらに、耐候性の向上を図ることができる。
そのため、上記のアンカーコート剤は、樹脂フィルムおよび金属薄膜を含む多層フィルムにおいて、好適に用いられる。
以下において、多層フィルムについて、図1を参照して詳述する。
多層フィルム1は、樹脂フィルム2と、上記アンカーコート剤からなり、樹脂フィルム2の少なくとも一方面に積層されるアンカーコート層3と、アンカーコート層3の一方面に積層される金属薄膜4とを備えている。
樹脂フィルム2は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの樹脂からなるプラスチックフィルムである。樹脂フィルム2として、好ましくは、熱可塑性樹脂からなるプラスチックフィルムが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体など)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリアミド系樹脂(例えば、ナイロン6(登録商標)、ナイロン66(登録商標)、ポリメタキシリレンアジパミドなど)、ビニル系樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニルなど)、アクリル系樹脂(例えば、ポリメチルメタアクリレート、ポリアクリロニトリルなど)、ポリカーボネート系樹脂(例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、セルロース系樹脂(例えば、セロファン、酢酸セルロースなど)などが挙げられる。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が挙げられる。より好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6(登録商標)が挙げられる。
樹脂フィルム2は、単層、または、同種または2種以上の積層体からなる。
樹脂フィルム2は、無延伸基材、一軸または二軸延伸基材のいずれでもよく、また、樹脂フィルム2には、表面処理(プラズマ処理、コロナ放電処理など)がなされていてもよい。
樹脂フィルム2の厚みは、例えば、3μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、500μm以下、好ましくは、200μm以下である。
また、樹脂フィルム2の熱膨張率(JIS K 7197(2012年)に準拠)は、例えば、8×10-5/℃以下、好ましくは、2×10-5/℃以下である。
アンカーコート層3は、上記のアンカーコート剤からなり、具体的には、上記のアンカーコート剤を塗布および乾燥することにより形成されている。
より具体的には、アンカーコート層3を形成するには、上記方法により得られたアンカーコート剤を、樹脂フィルム2の上面に塗布し、乾燥させる。塗布方法としては、特に制限されず、例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ディッピング法などの公知のコーティング方法が挙げられる。
また、樹脂フィルム2を作製するときに、インラインでアンカーコート剤を塗布してもよい。具体的には、樹脂フィルム2の製膜時の縦方向の一軸延伸処理後にグラビアコート法などにより、アンカーコート剤を塗布および乾燥した後、二軸延伸処理することにより、アンカーコート層3を樹脂フィルム2上に設けることができる。
また、乾燥条件は、乾燥温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、0.1分以上、好ましくは、0.2分以上であり、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
これにより、樹脂フィルム2の上に、上記した水性ポリウレタン樹脂を含むアンカーコート層3を形成することができる。
アンカーコート層3の厚みは、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上であり、例えば、5.0μm以下、好ましくは、2.0μm以下である。
また、アンカーコート層3の熱膨張率(JIS K 7197(2012年)に準拠)は、例えば、8×10-5/℃以下、好ましくは、2×10-5/℃以下である。
金属薄膜4は、金属からなる無機質層であって、例えば、ガスバリア性の向上のために設けられる。すなわち、多層フィルム1は、ガスバリア性フィルムである。
金属薄膜4において、金属としては、例えば、例えば、周期表2族であるマグネシウム、カルシウム、バリウム、4族であるチタン、ジルコニウム、13族であるアルミニウム、インジウム、14族のケイ素、ゲルマニウム、スズなどが挙げられ、さらには、例えば、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化窒化ケイ素、酸化セリウム、酸化カルシウム、酸化スズ、ダイアモンド状炭素膜、あるいはそれらの混合物などが挙げられる。
これら金属は、単独使用または2種類以上併用することができる。
金属として、製造容易性の観点から、好ましくは、アルミニウム、ケイ素およびそれらの酸化物が挙げられ、より好ましくは、アルミニウムおよびその酸化物が挙げられ、さらに好ましくは、アルミニウムが挙げられる。
換言すれば、金属薄膜4として、好ましくは、アルミニウム層が挙げられる。なお、金属薄膜4は、条件により、経時的に酸化物に変化する場合がある。
金属薄膜4は、例えば、真空プロセスなどにより、アンカーコート層3の一方面に形成される。
真空プロセスとしては、特に限定されないが、例えば、真空蒸着法、反応性蒸着法、化学気相蒸着法(CVD法)などの蒸着法、例えば、スパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。また、真空蒸着法では、真空蒸着装置の加熱方式として、好ましくは、電子ビーム加熱方式、抵抗加熱方式および誘導加熱方式などが挙げられる。
金属薄膜4の厚みは、金属の種類などにより適宜選択されるが、例えば、1nm以上、好ましくは、5nm以上であり、例えば、500nm以下、好ましくは、100nm以下である。
多層フィルム1の総厚みは、目的および用途に応じて、適宜設定される。
そして、このような多層フィルム1によれば、アンカーコート層3の熱膨張率の差異を抑制して、耐熱性の向上を図ることができ、さらに、耐候性の向上を図ることができる。
より具体的には、例えば、アンカーコート剤において、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが用いられず、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが用いられる場合には、アンカーコート層3の熱膨張率が高く、アンカーコート層3の熱膨張率と、樹脂フィルム2の熱膨張率および無機薄膜4の熱膨張率とが大きく異なるため、熱履歴に応じて歪みを生じる場合があり、多層フィルム1の耐熱性が十分ではない場合がある。
また、例えば、アンカーコート剤において、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが用いられず、キシリレンジイソシアネートが用いられる場合には、着色を生じるなど、多層フィルム1の耐候性が十分ではない場合がある。
これらに対して、上記の多層フィルム1では、多層フィルム1は、アンカーコート層3が、上記したアンカーコート剤から形成されている。また、そのアンカーコート剤では、ポリイソシアネートが、イソシアネート基の総モル数に対して1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアネート基を50モル%以上の割合で含有し、また、所定の鎖伸長剤が用いられる。
そのため、多層フィルム1においては、アンカーコート層3の熱膨張率を低減することができ、樹脂フィルム2および金属薄膜4と、アンカーコート層3との熱膨張率の差異を抑制して、耐熱性の向上を図ることができ、さらに、耐候性の向上を図ることができる。
なお、上記した説明では、樹脂フィルム2の一方面にのみ、アンカーコート層3および金属薄膜4を積層したが、例えば、樹脂フィルム2の一方面および他方面の両方に、アンカーコート層3および金属薄膜4を積層することもできる。
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
合成例1(1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの合成)
国際公開WO2009/063729号パンフレットの製造例1に記載の方法に従って、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを製造した。
得られた1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの13C-NMR測定によるトランス/シス比は93/7であった。
合成例2(ポリオキシエチレン側鎖含有ジオールの合成)
撹拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、数平均分子量1000のメトキシポリエチレングリコール1000質量部(東邦化学工業株式会社製)と1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(商品名:タケネート-700、三井化学ポリウレタン株式会社製)1682質量部を仕込み、窒素雰囲気下90℃で9時間反応させた。得られた反応液を薄膜蒸留して、未反応の1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートを取り除き、ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネートを得た。次いで、攪拌機、温度計、還流管、および、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ジエタノールアミン82.5質量部を仕込み、窒素雰囲気下、空冷しながら上記ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネート917.5質量部を、反応温度が70℃を越えないように徐々に滴下した。滴下終了後、約1時間、窒素雰囲気下において70℃で攪拌し、イソシアネート基が消失したことを確認し、ポリオキシエチレン側鎖含有ジオールを得た。
合成例3(ポリエステルポリオールA)
以下の方法で、芳香環を含有しないポリエステルポリオールA(脂肪族系ポリエステルポリオール)を合成した。
すなわち、多塩基酸として、アジピン酸643.5g、低分子量ポリオールとして、1,6-ヘキサンジオール445.5gおよびネオペンチルグリコール146.9gとを混合した。そして、その混合液に、チタン酸ブチル(エステル化触媒)0.1gを添加し、窒素気流下、反応温度を180~220℃に調整し、多塩基酸と低分子量ポリオールとをエステル化反応させ、所定量の水を留出させて、ポリエステルポリオールAを得た。ポリエステルポリオールAの数平均分子量(Mn)は、2000であった。
合成例4(ポリエステルポリオールB)
以下の方法で、芳香環を含有するポリエステルポリオールB(芳香族系ポリエステルポリオール)を合成した。
すなわち、多塩基酸として、イソフタル酸240.5g、セバチン酸292.8gと、低分子量ポリオールとして、ネオペンチルグリコール290.5gおよびエチレングリコール50.8gとを混合した。そして、その混合液に、オクチル酸第一スズ(エステル化触媒)0.1gを添加し、窒素気流下、反応温度を180~220℃に調整し、多塩基酸と低分子量ポリオールとをエステル化反応させ、所定量の水を留出させて、ポリエステルポリオールBを得た。ポリエステルポリオールBの数平均分子量(Mn)は、3500であった。
<アニオン系アンカーコート剤>
実施例1
撹拌機、温度計、還流管、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ポリエステルポリオールA(合成例3)137.2g、トリエチレングリコール20.6g、2,2-ジメチロールプロピオン酸18.4g、アセトニトリル133.2gを入れ、混合した。
次いで、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(合成例1)46.6g、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(商品名タケネートT-600、三井化学製)46.6gを添加し、75℃で6時間反応させ、NCO%が2.9%となったところで40℃まで冷却し、トリエチルアミン13.6gにて中和して、イソシアネート基末端プレポリマー(A)を得た。
次いで、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名KBM-603、信越シリコーン製)5.8gをイオン交換水870.5gに溶解させた水溶液に、上記イソシアネート基末端プレポリマー(A)をホモディスパーにて分散および乳化し、5分間撹拌した。次いで、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン10.9gをイオン交換水43.5gに溶解したポリアミン水溶液を徐々に添加し、鎖伸張反応させ、さらに、アセトニトリル、過剰のイオン交換水を留去することにより、水性ポリウレタン樹脂の水分散液を得た。これをアンカーコート剤(A)とした。
実施例2~9および比較例1~6
表1に示す配合処方にて反応させた以外は、実施例1と同じ方法により、アンカーコート剤(B)~(O)を製造した。
表中の略号の詳細を下記する。
1,4-H6XDI:合成例1で得られた1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン
1,3-H6XDI:1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、商品名タケネートT-600、三井化学製
XDI:1,3-キシリレンジイソシアネート、商品名タケネート500、三井化学製
IPDI:3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシア、商品名VESTANAT IPDI、EVONIK製
ポリオキシエチレン側鎖含有ジオール:合成例2で得られたポリオキシエチレン側鎖含有ジオール
ポリエステルポリオールA:合成例3で得られた脂肪族系ポリエステルポリオール、数平均分子量(ポリスチレン換算)2000
ポリエステルポリオールB:合成例4で得られた芳香族系ポリエステルポリオール、数平均分子量(ポリスチレン換算)3500
ポリカーボネートジオール:商品名T-5652、旭化成ケミカルズ製、数平均分子量(ポリスチレン換算)2000、非晶性(常温液体)ポリカーボネートジオール
ポリエーテルポリオール:ポリテトラメチレンエーテルグリコール、商品名PTG-2000SN、保土谷化学製、数平均分子量(ポリスチレン換算)2000
トリエチレングリコール:東京化成工業製
DMPA:ジメチロールプロピオン酸、Perstop製
トリエチルアミン:東京化成工業製
スタノクト:錫系ウレタン化触媒、三菱ケミカル製
アセトニトリル:東京化成工業製
水:イオン交換水
N-(2-アミノエチル)エタノールアミン:東京化成工業製
ヒドラジン一水和物:東京化成工業製
KBM-603:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、信越シリコーン社製
<ノニオン系アンカーコート剤>
実施例10
撹拌機、温度計、還流管、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、ポリエステルポリオ
ールA(合成例3)139.0g、トリオキシエチレングリコール20.8g、ポリオキシエチレン側鎖含有ジオール(合成例2)58.7g、アセトニトリル135.3gを入れ、混合した。
次いで、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(合成例1)68.9g、75℃で6時間反応させ、NCO%が2.0%となったところで40℃まで冷却し、イソシアネート基末端プレポリマー(P)を得た。
次いで、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名KBM-603、信越シリコーン製)5.8gをイオン交換水870.5gに溶解させた水溶液に、上記イソシアネート基末端プレポリマー(P)をホモディスパーにて分散および乳化し、5分間攪拌した。
次いで、N-(2-アミノエチル)エタノールアミン10.9gをイオン交換水43.5gに溶解したポリアミン水溶液を徐々に添加し、鎖伸張反応させ、さらに、アセトニトリル、過剰のイオン交換水を留去することにより、水性ポリウレタン樹脂の水分散液を得た。これをアンカーコート剤(P)とした。
比較例7
表2に示す配合処方にて反応させた以外は、実施例10と同じ方法により、アンカーコート剤(Q)を製造した。
なお、表中の略号は、表1と同じである。
<評価>
(1)熱膨張率
各アンカーコート剤を、プラスチックトレイに入れ、25℃、相対湿度55%で1日乾燥させた後、110℃で1時間乾燥させた。これにより、厚さ約200μmのウレタン皮膜(アンカーコート層に相当するフィルム)を得た。
得られたウレタン皮膜を長さ20mm×幅5mmに裁断し、サンプルを得た。
そして、SHIMADZU社製の熱機械分析装置(製品名TMA-50)を用いて、窒素雰囲気下(ガス流量40mL/min)、荷重0.04N(アニオン系アンカーコート剤)または0.02N(ノニオン系アンカーコート剤)、昇温速度10℃/minの条件で、サンプルの熱膨張率を測定した。
その結果を、表1および表2に示す。
(2)耐候性
各アンカーコート剤をPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)板上に塗工し、110℃で5分間乾燥させた。これにより、ウレタン被膜(アンカーコート層に相当するフィルム)を得た。このウレタン皮膜をサンプルとした。
次いで、得られたサンプルを、促進耐候性試験機(デューパネル光コントロールウェザーメーター、スガ試験機社製)にて、昼間(60℃×相対湿度10%×4時間×光照射)、夜間(50℃×相対湿度95%×4時間×光照射なし)のサイクルで1000時間処理した。
そして、上記処理前後のサンプルの外観を、以下の評価基準にて目視により評価した。
〇:外観変化なし
△:やや黄変及び濁り有り
×:激しい黄変及び濁り有り
その結果を、表1および表2に示す。
(3)密着性
各アンカーコート剤をPETフィルム(東洋紡製、品名:E5102、厚み:12μm)またはナイロンフィルム(ユニチカ製、品名:ONBC、厚み:15μm)のコロナ処理面側に、ロッドコーターにて塗布し、110℃で1分間乾燥させることにより、アンカーコート層を得た。塗布量は、乾燥後に1.0μmになるようにした。
次いで、得られたフィルムのアンカーコート層側にポリウレタン系接着剤(A969V/A5/酢酸エチル=3/1/10.5(質量比)、A969V/A5:三井化学製)を用いて、未延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡製、品名:P1128、厚み:20μm)を貼り合わせた。続けて、50℃で72時間静置した後、長さ150mm、幅15mmの試験片3本を採取し、剥離試験を行なった。
そして、測定長さ50mm~100mmの間での強度の平均値を、アンカーコート層の密着力(N/15mm)とした。
なお、剥離試験条件を以下に示す。
・剥離試験機:引張り試験機、インテスコ製
・剥離角度:CPP側を180°に折り曲げ
・剥離速度:50mm/分
・剥離方向:縦方向
・測定環境:25℃、50%RH