ところで、上述した特許文献1の物品取付具では、種々の物品を当該物品取付具それ自体(具体的には、当該物品取付具の頭部)に取付可能とした上で、当該物品取付具を複数の釘、ビス等の固定片を互いに斜めで収束する方向に打ち込むことで、石膏ボードよりなる壁面に固定するようにしているから、十分な強度で前記壁面に固定されることができる。しかし、前記本体は、例えば略円柱状とされ、また、種々の物品を当該物品取付具の頭部に形成された前記取付用部分には、雌ネジ孔や雌ネジ孔部が形成され、あるいは、雄ねじ片が装着されていて、それら雌ネジ孔や雌ネジ孔部や雄ねじ片を用いて前記取付用部分に前記物品を保持するように構成されている。従って、当該物品取付具で前記壁面に取付(固定)できる物品は、雌ネジ孔、雌ネジ孔部あるいは雄ねじ片、又は、それらの類似物によって前記取付用部分に保持できるものに限定される、という難点がある。
上述した特許文献2の物品固定構造では、前記基盤体の前記窪み部に、前記内周斜面から前記裏側に向けて斜めに貫通する前記複数の指向性ガイド孔を形成することで、前記ガイド孔の各々に挿入した釘が壁面中に四方に放射状に拡開して広範囲に進入するようになっているから、石膏ボードよりなる壁面に対し、棚、フック、手すり、タオル掛け等の物品(被固定物)を、従来構造(円錐状又は角錐状の本体の底面中心の近傍に複数の釘が互いに接近して収束するようにしたもの)よりも強固に固定することができる。しかし、前記基盤体は、球面状の表面に碗状の窪み部が形成された円盤状とされ、また、前記基盤体と石膏ボードよりなる壁面とで種々の物品を挟持するようになっているため、当該物品固定構造で前記壁面に固定できる物品は、前記基盤体と前記壁面とで挟持できるものに限定される、という難点がある。
さらに、上述した特許文献2の物品固定構造では、2以上の物品を前記壁面に固定しようとすると、当該物品固定構造をそれら物品と同数、前記壁面に設置することが必要である、という難点もある。
さらに、上述した特許文献1の物品取付具でも、上述した特許文献2の物品固定構造でも、そのベースにある発想は、「物品取付具や基盤体それ自体により、石膏ボードよりなる壁面の所望の箇所に所望の物品を取付又は固定する」というものであるから、取付又は固定が可能な物品は、物品取付具や基盤体それ自体で前記壁面に取付又は固定できる程度の大きさ、形状、構成又は重量を持つものに限定されてしまう、という難点もある。
本発明は、以上のような従来の事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、石膏ボード等からなる脆弱な壁面に対し、所望の物品が取付可能な物品取付用部材を簡単な作業により十分な強度で固定することができる、物品取付用部材の固定具と、当該固定具を用いた物品取付用部材の固定構造を提供することにある。
本発明の他の目的は、上述した特許文献1の物品取付具や特許文献2の物品固定構造のような、「石膏ボードアンカー」を使用せずにフックやハンガー等の物品を石膏ボードよりなる壁面に固定できるように工夫した製品等を使用しなくても、石膏ボード等からなる脆弱な壁面に対して所望の物品を取り付けることが可能な、物品取付用部材の固定具と、当該固定具を用いた物品取付用部材の固定構造を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、石膏ボード等からなる脆弱な壁面に対して取付可能な物品の種類と数の双方を、従来よりも大幅に拡大することが可能な、物品取付用部材の固定具と、当該固定具を用いた物品取付用部材の固定構造を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、石膏ボード等からなる脆弱な壁面を有する建築物の使用者や購入者だけでなく、この種の建築物の建築に携わる建築業者にも、高い利便性を提供することができる、物品取付用部材の固定具と、当該固定具を用いた物品取付用部材の固定構造を提供することにある。
ここに明記しない本発明のさらに他の目的は、以下の説明及び添付図面から明らかである。
(1) 本発明の物品取付用部材の固定具は、
石膏ボード等からなる脆弱な壁面に対し、所望の物品が取付可能な物品取付用部材を固定するのに用いられる固定具であって、
前記物品取付用部材の所定の被係合部と係合するように形成された係合壁と、
前記係合壁の接続部に接続され、且つ、前記係合壁と交差するように形成された側壁と、
前記側壁に形成された、釘又はピンを挿通させて所定方向にガイドするための複数のガイド孔を有する1又は複数の係止部とを備え、
前記複数のガイド孔のうちの第1部分は、挿通された釘又はピンを第1方向に案内するように形成されていると共に、前記複数のガイド孔のうちの第2部分は、挿通された釘又はピンを前記第1方向とは異なる第2方向に案内するように形成されており、
前記第1部分に属する前記1又は複数のガイド孔は、前記側壁の一方の側において、前記側壁の外面に沿って間隔をあけて並列されており、
前記第2部分に属する前記1又は複数のガイド孔は、前記側壁の他方の側において、前記側壁の外面に沿って間隔をあけて並列されており、
前記係合壁と前記側壁は、前記物品取付用部材の前記被係合部を受け入れ可能な空間を形成していると共に、前記被係合部と前記係合壁は、前記空間に前記被係合部を受け入れた状態で結合手段(例えばネジ部材、釘又はピン、接着剤、粘着剤、磁石等)によって相互に結合可能とされており、
前記1又は複数の係止部は、前記壁面に接触させた状態で、前記第1部分及び前記第2部分に属する前記複数のガイド孔にそれぞれ釘又はピンを挿通させて前記壁面に押し込むことで、前記壁面に係止されるように構成されており、
前記物品取付用部材を前記壁面の所望の位置に固定する際には、前記第1部分に属する前記1又は複数のガイド孔に挿通されて前記壁面に前記第1方向に押し込まれた釘又はピンと、前記第2部分に属する前記1又は複数のガイド孔に挿通されて前記壁面に(前記第1方向とは異なる)前記第2方向に押し込まれた釘又はピンとによって、前記1又は複数の係止部が前記壁面に係止せしめられ、
前記空間に受け入れられた前記物品取付用部材の前記被係合部と前記係合壁とが前記結合手段によって相互に結合せしめられることによって、前記物品取付用部材が前記所望の位置に固定されるようになっていることを特徴とするものである。
本発明の物品取付用部材の固定具は、上述したような構成を有しているので、前記1又は複数の係止部を前記壁面に接触させた状態で、前記第1部分に属する前記1又は複数のガイド孔に挿通させた釘又はピンを前記壁面に前記第1方向に押し込むと共に、前記第2部分に属する前記1又は複数のガイド孔に挿通させた釘又はピンを前記壁面に前記第1方向とは異なる前記第2方向に押し込むことによって、前記1又は複数の係止部を前記壁面に係止すると、前記壁面には、前記係合壁と前記側壁とによって形成された前記空間が配置される。前記空間は、前記物品取付用部材の前記被係合部を受け入れ可能とされており、また、前記空間に受け入れられた前記物品取付用部材の前記被係合部は、前記係合壁と係合せしめられるようになっている。
そこで、例えば、複数の釘又はピンを用いて上述したようにして前記1又は複数の係止部を前記壁面に係止する前に、前記空間に前記物品取付用部材の前記被係合部を受け入れて(係合させて)おき、その状態で、前記被係合部と前記係合壁とを前記結合手段によって相互に結合させておけば、前記1又は複数の係止部を前記壁面に係止するだけで、前記物品取付用部材を前記壁面の前記所望の位置に固定することが可能となる。
あるいは、複数の釘又はピンを用いて上述したようにして前記1又は複数の係止部を前記壁面に係止した後に、前記空間に前記物品取付用部材の前記被係合部を受け入れさせ(係合させ)、その状態で、前記被係合部と前記係合壁とを前記結合手段によって相互に結合させれば、前記壁面に係止された前記1又は複数の係止部だけで、前記物品取付用部材を前記壁面の前記所望の位置に固定することが可能となる。
また、前記1又は複数の係止部に形成された前記複数のガイド孔は、挿通された釘又はピンを前記第1方向に案内するように形成された前記第1部分と、挿通された釘又はピンを前記第1方向とは異なる前記第2方向に案内するように形成された前記第2部分とを含んでいる。しかも、前記第1部分に属する前記1又は複数のガイド孔は、前記側壁の一方の側(例えば左側)において、前記側壁の外面に沿って並列されており、前記第2部分に属する前記1又は複数のガイド孔は、前記側壁の他方の側(例えば右側)において、前記側壁の外面に沿って並列されているから、前記第1部分に属する前記1又は複数のガイド孔に挿通されて前記壁面に押し込まれた釘又はピンと、前記第2部分に属する前記1又は複数のガイド孔に挿通されて前記壁面に押し込まれた釘又はピンとは、互いに離れた(ずれた)位置(領域)にあり、また、前記壁面の内側では互いに異なる方向に押し込まれている。このため、当該固定具は、互いに離れた(ずれた)位置(領域)において、互いに異なる方向に延在する複数の釘又はピンによって、前記壁面に機械的に支持されることになる。従って、当該固定具が前記壁面に固定される際の機械的強度は、十分なものとなる。
しかも、当該固定具を前記壁面に固定するために必要なのは、複数の釘又はピンを用いて上述したようにして前記1又は複数の係止部を前記壁面に係止する作業と、前記空間に前記物品取付用部材の前記被係合部を受け入れさせ(係合させ)てから、前記被係合部と前記係合壁とを前記結合手段によって相互に結合する作業だけである。従って、当該固定具が前記壁面に固定されるために必要な作業は、簡単なものである。
よって、本発明の物品取付用部材の固定具では、(a)石膏ボード等からなる脆弱な壁面に対し、所望の物品が取付可能な物品取付用部材を簡単な作業により十分な機械的強度で固定することができる、という効果が得られる。この機械的強度としては、前記物品取付用部材の重量だけでなく、後に前記物品取付用部材に取り付けられると想定される1又は2以上の種々の物品(被取付物品)の重量をも含めた総重量を支持するのに十分な機械的強度を実現できることが、本発明者により確認済みである。
なお、本発明の物品取付用部材の固定具は、前記物品取付用部材の前記被係合部の形状及び数に応じて、2個以上組み合わせて使用するのが好ましい。前記物品取付用部材の前記被係合部のすべてを2個以上の当該固定具を用いて2か所以上で固定することになるから、当該固定具が1個の場合よりも高い機械的強度で前記壁面に固定されることができ、前記物品取付用部材の全体としての固定強度をいっそう高めることができるからである。
本発明の物品取付用部材の固定具は、上述した効果に加えて、以下のような効果をも有する。
すなわち、本発明の物品取付用部材の固定具を用いれば、上述したように、石膏ボード等からなる脆弱な壁面に対し、所望の物品が取付可能な物品取付用部材を十分な機械的強度で固定することができるから、こうして固定された物品取付用部材を使って、所望の物品を任意に取り付けることが可能となる。よって、本発明の物品取付用部材の固定具では、(b)上述した特許文献1の物品取付具や特許文献2の物品固定構造のような、「石膏ボードアンカー」を使用せずにフックやハンガー等の物品を石膏ボードよりなる壁面に固定できるように工夫した製品等を使用しなくても、石膏ボード等からなる脆弱な壁面に対して所望の物品を取り付けることが可能である、という効果がさらに得られる。
さらに、本発明の物品取付用部材の固定具を用いれば、上述したように、石膏ボード等からなる脆弱な壁面に対し、所望の物品が取付可能な物品取付用部材を十分な機械的強度で固定することができるから、こうして固定された物品取付用部材を使って、所望の物品を所望の数だけ任意に取り付けることが可能となる。すなわち、所望の物品は、前記壁面に直接的に固定されるのではなく、当該固定具を用いて前記壁面に固定された前記物品取付用部材に固定されるため、前記物品取付用部材の形状や材質を適宜選定することにより、前記壁面に所望の物品をネジや釘を用いて機械的に取り付けたり、磁力等を用いて物理的に取り付けたりすることが可能である。例えば、前記物品取付用部材として木製の板材を使用すれば、例えばフック、ハンガー等の物品をネジや釘を用いて機械的に取付可能であるし、前記物品取付用部材として鉄製の板材を使用すれば、例えば磁力を用いてフック、ハンガー等の物品を物理的に取付可能となる。しかも、取り付ける物品の個数は、前記物品取付用部材の大きさや耐重量(限界許容重量)に応じて許容される値まで増やすことができる。
よって、本発明の物品取付用部材の固定具では、(c)石膏ボード等からなる脆弱な壁面に対して取付可能な物品の種類と数の双方を、従来よりも大幅に拡大することが可能である、という効果がさらに得られる。
さらに、本発明の物品取付用部材の固定具を用いれば、上述したように、石膏ボード等からなる脆弱な壁面に対し、所望の物品が取付可能な物品取付用部材を十分な機械的強度で固定することができるから、こうして固定された物品取付用部材を使って、所望の物品を所望の数だけ任意に取り付けることが可能となる。これは、石膏ボード等からなる脆弱な壁面を有する建築物の使用者や購入者にとっては、当該固定具を購入してそれを前記壁面に固定する簡単な作業をするだけで、日常生活での利便性が飛躍的に高まることを意味する。
また、これは、この種の建築物の建築に携わる建築業者にとっては、内装工事の際に、当該固定具を石膏ボード等からなる脆弱な壁面の適当な箇所に設置する作業を追加するだけで、(多少の追加コストはかかるが、)この種の建築物の使用者や購入者にとっての「日常生活の利便性向上」という長所・利点が付加されることを意味する。従って、安価であるが非常に丈夫であり、しかも断熱性・遮音性が高いという特性を持つ石膏ボード(やその類似物)を使用した建築物に関し、広告・宣伝では潜在顧客に対し、「ネジや釘を用いた物品の取付が困難」という石膏ボード(やその類似物)の持つ難点が解消されるだけでなく、「石膏ボードよりなる壁面に固定できるように工夫した製品を使用しなくても、壁面に直接、所望の物品をいくつでも取り付けできる」という高い利便性を訴求できることになる。これは、建築業者にとっても、利便性が高いことを意味する。
よって、本発明の物品取付用部材の固定具では、(d)石膏ボード等からなる脆弱な壁面を有する建築物の使用者や購入者だけでなく、この種の建築物の建築に携わる建築業者に対しても、高い利便性が提供される、という効果もさらに得られる。
(2) 本発明の物品取付用部材の固定具の好ましい例では、前記被係合部と前記係合壁とを結合するための前記結合手段が、雄ネジを持つネジ部材(例えば木ネジ、タッピングネジ、ボルト等)とされる。
この例では、前記空間に前記被係合部を受け入れた状態で、前記係合壁を貫通するように前記ネジ部材を前記被係合部にねじ込む(前記被係合部に直接ねじ込む、又は、前記被係合部に埋設されたナットにねじ込む)だけで、当該固定具を前記被係合部に結合することができるので、前記被係合部と前記係合壁とを結合する作業が非常に簡単である、という利点が得られる。この場合、前記係合壁を貫通するように前記ネジ部材を前記被係合部にねじ込む際に、その作業が容易になるように、前記ネジ部材が貫通する貫通孔を前記係合壁に予め形成しておくのが好ましい。
(3) 本発明の物品取付用部材の固定具の他の好ましい例では、前記被係合部と前記係合壁とを結合するための前記結合手段が、結合用の釘又はピンとされる。
この例では、前記空間に前記被係合部を受け入れた状態で、前記係合壁を貫通するように前記結合用の釘又はピン(前記第1係止部又は前記第2係止部を係止するための釘又はピンとは異なる)を前記被係合部に押し込む(打ち込む)だけで、当該固定具を前記被係合部に結合することができるので、前記被係合部と前記係合壁とを結合する作業が非常に簡単である、という利点が得られる。この場合、前記係合壁を貫通するように前記結合用の釘又はピンを押し込む際に、その作業が容易になるように、前記結合用の釘又はピンが貫通する貫通孔を前記係合壁に予め形成しておくのが好ましい。
(4) 本発明の物品取付用部材の固定具のさらに他の好ましい例では、前記被係合部と前記係合壁とを結合するための前記結合手段が、接着剤又は粘着剤とされる。
この例では、前記空間に前記被係合部を受け入れた状態で、前記係合壁と前記被係合部の間に前記接着剤又は前記粘着剤を配置するだけで、当該固定具を前記被係合部に結合することができるので、前記被係合部と前記係合壁とを結合する作業が非常に簡単である、という利点が得られる。
(5) 本発明の物品取付用部材の固定具のさらに他の好ましい例では、前記被係合部と前記係合壁とを結合するための前記結合手段が、磁石とされる。
この例では、例えば、前記被係合部と前記係合壁にそれぞれ小型の磁石を配置・埋設等しておけば、前記空間に前記被係合部を受け入れた状態で、磁力によって当該固定具を前記被係合部に結合することができるので、前記被係合部と前記係合壁とを結合する作業が非常に簡単(ほぼ不要)である、という利点が得られる。なお、物品取付用部材それ自体が鉄製であるか、少なくとも前記被係合部が鉄製である場合は、前記磁石を前記係合壁に埋設しておくだけでよく、便利である。
(6) 本発明の物品取付用部材の固定具のさらに他の好ましい例では、前記1又は複数の係止部として、前記側壁の一方の端部又はその近傍に形成された第1係止部と、前記側壁の他方の端部又はその近傍に形成された第2係止部とを含んでおり、
前記第1部分に属する前記1又は複数のガイド孔が、前記第1係止部に配置されていると共に、前記第1係止部の表面は、前記第1方向に対してほぼ直交する斜面が形成され、
前記第2部分に属する前記1又は複数のガイド孔が、前記第2側壁に配置されていると共に、前記第2係止部の表面には、前記第2方向に対してほぼ直交する斜面が形成される。
この例では、挿通された釘又はピンを前記第1方向に案内する前記1又は複数のガイド孔が形成された前記第1係止部が、前記側壁の一方の端部又はその近傍に形成され、挿通された釘又はピンを前記第2方向に案内する前記1又は複数のガイド孔が形成された前記第2係止部が、前記側壁の他方の端部又はその近傍に形成されているため、前記第1係止部と前記第2係止部とは十分に離れた位置にあり、従って、作業者は、前記第1係止部と前記第2係止部の位置を確実に把握することができる。
しかも、挿通された釘又はピンを前記第1方向に案内する前記1又は複数のガイド孔が形成された前記第1係止部の表面には、前記第1方向に対してほぼ直交する斜面が形成されているため、作業者は、前記第1係止部にある前記1又は複数のガイド孔が、挿通された釘又はピンを前記第1方向に案内するものであることを、容易に知ることができる。これは、前記第2係止部についても同様である。
よって、作業者が釘又はピンを挿通する際に、その挿通方向や挿通後の打ち込み方向を迷ったり間違ったりする恐れがなくなる、という利点がある。
(7) 本発明の物品取付用部材の固定具のさらに他の好ましい例では、前記複数のガイド孔が、前記第1部分及び前記第2部分に加えて、挿通された釘又はピンを前記第1方向及び前記第2方向とは異なる第3方向に案内するように形成された第3部分を含んでおり、
前記第3部分に属する前記1又は複数のガイド孔は、前記側壁の中央部又はその近傍において、前記側壁の外面に沿って配置され、
前記1又は複数の係止部は、前記壁面に接触させた状態で、前記第1部分前記第2部分及び前記第3部分に属する前記複数のガイド孔にそれぞれ釘又はピンを挿通させて前記壁面に押し込むことで、前記壁面に係止されるように構成され、
前記物品取付用部材を前記壁面の所望の位置に固定する際には、前記第1部分に属する前記1又は複数のガイド孔に挿通されて前記壁面に前記第1方向に押し込まれた釘又はピンと、前記第2部分に属する前記1又は複数のガイド孔に挿通されて前記壁面に前記第2方向に押し込まれた釘又はピンと、前記第3部分に属する前記1又は複数のガイド孔に挿通されて前記壁面に前記第3方向に押し込まれた釘又はピンとによって、前記1又は複数の係止部が前記壁面に係止せしめられ、さらに、前記空間に受け入れられた前記物品取付用部材の前記被係合部と前記係合壁とが前記結合手段によって相互に結合せしめられることによって、前記物品取付用部材が前記所望の位置に固定されるようにされる。
この例では、前記1又は複数の係止部に形成された前記複数のガイド孔は、挿通された釘又はピンを前記第1方向に案内するように形成された前記第1部分と、挿通された釘又はピンを前記第1方向とは異なる前記第2方向に案内するように形成された前記第2部分に加えて、挿通された釘又はピンを前記第1方向及び前記第2とは異なる前記第3方向に案内するように形成された前記第3部分を含んでいる。しかも、前記第3部分に属する前記1又は複数のガイド孔は、前記側壁の中央部又はその近傍において、前記側壁の外面に沿って配置されている。このため、前記第1部分及び前記第2部分に属する前記1又は複数のガイド孔に挿通されて前記壁面に押し込まれた釘又はピンに加えて、前記第1部分及び前記第2部分とは異なる位置において且つ異なる方向に釘又はピンが前記壁面に押し込まれることになる。従って、当該固定具が前記壁面に固定される際の機械的強度は、前記第3部分を有しない場合よりも高くなる、という利点がある。
(8) 本発明の物品取付用部材の固定具のさらに他の好ましい例では、前記第3係止部の表面に、前記第3方向に対してほぼ直交する斜面が形成される。
この例では、挿通された釘又はピンを前記第3方向に案内する前記1又は複数のガイド孔が形成された前記第3係止部の表面には、前記第3方向に対してほぼ直交する斜面が形成されているため、作業者は、前記第3係止部にある前記1又は複数のガイド孔が、挿通された釘又はピンを前記第3方向に案内するものであることを、容易に知ることができる。
よって、前記側壁に前記第1係止部、前記第2係止部及び前記第3係止部が形成されているにもいかかわらず、作業者がそれら三つの係止部の各々に形成された前記複数のガイド孔に釘又はピンを挿通する際に、その挿通方向や挿通後の打ち込み方向を迷ったり間違ったりする恐れがなくなる、という利点がある。
(9) 本発明の物品取付用部材の固定具のさらに他の好ましい例では、前記第1係止部の複数の前記ガイド孔が、前記側壁の内側に向かって傾斜し、且つ、前記側壁の外面に沿って前記側壁の中央部に向かって傾斜していて、前記第1係止部の複数の前記ガイド孔にその全体がそれぞれ挿通された釘又はピンの先端が、前記側壁の内側に位置し、
前記第2係止部の複数の前記ガイド孔が、前記側壁の内側に向かって傾斜し、且つ、前記側壁の外面に沿って前記側壁の中央部に向かって傾斜していて、前記第2係止部の複数の前記ガイド孔にその全体がそれぞれ挿通された釘又はピンの先端が、前記側壁の内側に位置するように構成される。
この例では、前記側壁の内側に向かって傾斜し、且つ、前記側壁の外面に沿って前記側壁の中央部に向かって傾斜した前記第1係止部の複数の前記ガイド孔に、その全体がそれぞれ挿通された釘又はピンの先端が、前記側壁よりも内側に位置し、さらに、前記側壁の内側に向かって傾斜し、且つ、前記側壁の外面に沿って前記側壁の中央部に向かって傾斜した前記第2係止部の複数の前記ガイド孔に、その全体がそれぞれ挿通された釘又はピンの先端が、前記側壁よりも内側に位置しているので、前記釘又はピンが前記壁面からより脱落し難くなる。従って、当該固定具が前記壁面に固定される際の機械的強度が簡単な構成で高められる、という利点がある。
(10) 本発明の物品取付用部材の固定具のさらに他の好ましい例では、前記第1係止部の複数の前記ガイド孔が、前記側壁の内側に向かって傾斜し、且つ、前記側壁の外面に沿って前記側壁の中央部に向かって傾斜していて、前記第1係止部の複数の前記ガイド孔にその全体がそれぞれ挿通された釘又はピンの先端が、前記側壁の内側に位置し、
前記第2係止部の複数の前記ガイド孔が、前記側壁の内側に向かって傾斜し、且つ、前記側壁の外面に沿って前記側壁の中央部に向かって傾斜していて、前記第2係止部の複数の前記ガイド孔にその全体がそれぞれ挿通された釘又はピンの先端が、前記側壁の内側に位置し、
前記第3係止部の1又は複数の前記ガイド孔が、前記側壁の内側に向かって傾斜し、且つ、前記側壁の外面に沿って前記接続部に直交する方向に傾斜していて、前記第2係止部の複数の前記ガイド孔にその全体がそれぞれ挿通された釘又はピンの先端が、前記側壁の内側に位置するように構成される。
この例では、前記側壁の内側に向かって傾斜し、且つ、前記側壁の外面に沿って前記側壁の中央部に向かって傾斜した前記第1係止部の複数の前記ガイド孔に、その全体がそれぞれ挿通された釘又はピンの先端が、前記側壁よりも内側に位置し、前記側壁の内側に向かって傾斜し、且つ、前記側壁の外面に沿って前記側壁の中央部に向かって傾斜した前記第2係止部の複数の前記ガイド孔に、その全体がそれぞれ挿通された釘又はピンの先端が、前記側壁よりも内側に位置し、さらに、前記側壁の内側に向かって傾斜し、且つ、前記側壁の外面に沿って前記接続部に直交する方向に傾斜した前記第3係止部の複数の前記ガイド孔に、その全体がそれぞれ挿通された釘又はピンの先端が、前記側壁の内側に位置しているので、前記第1係止部及び前記第2係止部だけを有する場合よりも、前記釘又はピンが前記壁面からいっそう脱落し難くなる。従って、当該固定具が前記壁面に固定される際の機械的強度が簡単な構成でいっそう高められる、という利点がある。
(11) 本発明の物品取付用部材の固定構造は、上述した(1)~(10)のいずれかに記載の本発明の物品取付用部材の固定具を複数個備えており、
複数個の前記固定具の各々では、
前記1又は複数の係止部が、前記壁面に接触された状態にあって、前記第1部分に属する前記1又は複数のガイド孔に挿通されて前記壁面に前記第1方向に押し込まれた複数の釘又はピンと、前記第2部分に属する前記1又は複数のガイド孔に挿通されて前記壁面に(前記第1方向とは異なる)前記第2方向に押し込まれた釘又はピンとによって、前記1又は複数の係止部が前記壁面に係止せしめられ、
前記空間に受け入れられた前記物品取付用部材の前記被係合部と前記係合壁とが前記結合手段によって相互に結合せしめられることによって、前記物品取付用部材が前記所望の位置に固定されるようになっていることを特徴とするものである。
本発明の物品取付用部材の固定構造は、上述した(1)~(10)のいずれかに記載の本発明の物品取付用部材の固定具を複数個備えており、複数個の前記固定具の各々では、上述したようにして、前記1又は複数の係止部が、前記第1部分に属する前記1又は複数のガイド孔及び前記第2部分に属する前記1又は複数のガイド孔に挿通されて前記壁面に異なる2つの方向に押し込まれた複数の釘又はピンによって、前記壁面に係止せしめられていると共に、前記係合壁が、前記空間に受け入れられた前記物品取付用部材の前記被係合部と前記結合手段によって結合せしめられており、それによって前記物品取付用部材が前記所望の位置に固定されている。従って、本発明の物品取付用部材の固定具について上述したのと同じ理由により、(a)石膏ボード等からなる脆弱な壁面に対し、所望の物品が取付可能な物品取付用部材を簡単な作業により十分な機械的強度で固定することができる、という効果が得られる。この機械的強度としては、前記物品取付用部材の重量だけでなく、後に前記物品取付用部材に取り付けられると想定される1又は2以上の種々の物品(被取付物品)の重量をも含めた総重量を支持するのに十分な機械的強度を実現できることが、本発明者により確認済みである。
本発明の物品取付用部材の固定構造は、上述した効果に加えて、以下のような効果も有する。
すなわち、本発明の物品取付用部材の固定構造を用いれば、上述したように、石膏ボード等からなる脆弱な壁面に対し、複数個の前記固定具を用いて、所望の物品が取付可能な物品取付用部材を十分な機械的強度で固定することができるから、こうして固定された物品取付用部材を使って、所望の物品を任意に取り付けることが可能となる。よって、本発明の物品取付用部材の固定構造では、(b)上述した特許文献1の物品取付具や特許文献2の物品固定構造のような、「石膏ボードアンカー」を使用せずにフックやハンガー等の物品を石膏ボードよりなる壁面に固定できるように工夫した製品等を使用しなくても、石膏ボード等からなる脆弱な壁面に対して所望の物品を取り付けることが可能である、という効果がさらに得られる。
さらに、本発明の物品取付用部材の固定構造を用いれば、上述したように、石膏ボード等からなる脆弱な壁面に対し、複数個の前記固定具を用いて、所望の物品が取付可能な物品取付用部材を十分な機械的強度で固定することができるから、こうして固定された物品取付用部材を使って、所望の物品を所望の数だけ任意に取り付けることが可能となる。すなわち、所望の物品は、前記壁面に直接的に固定されるのではなく、当該固定具を用いて前記壁面に固定された前記物品取付用部材に固定されるため、前記物品取付用部材の形状や材質を適宜選定することにより、前記壁面に所望の物品をネジや釘を用いて機械的に取り付けたり、磁力等を用いて物理的に取り付けたりすることが可能である。例えば、前記物品取付用部材として木製の板材を使用すれば、例えばフック、ハンガー等の物品をネジや釘を用いて機械的に取付可能であるし、前記物品取付用部材として鉄製の板材を使用すれば、例えば磁力を用いてフック、ハンガー等の物品を物理的に取付可能となる。しかも、取り付ける物品の個数は、前記物品取付用部材の大きさや耐重量(限界許容重量)に応じて許容される値まで増やすことができる。
よって、本発明の物品取付用部材の固定構造では、(c)石膏ボード等からなる脆弱な壁面に対して取付可能な物品の種類と数の双方を、従来よりも大幅に拡大することが可能である、という効果がさらに得られる。
さらに、本発明の物品取付用部材の固定構造を用いれば、上述したように、石膏ボード等からなる脆弱な壁面に対し、所望の物品が取付可能な物品取付用部材を十分な機械的強度で固定することができるから、こうして固定された物品取付用部材を使って、所望の物品を所望の数だけ任意に取り付けることが可能となる。これは、石膏ボード等からなる脆弱な壁面を有する建築物の使用者や購入者にとっては、当該固定具を購入してそれを前記壁面に固定する簡単な作業をするだけで、日常生活での利便性が飛躍的に高まることを意味する。
また、これは、この種の建築物の建築に携わる建築業者にとっては、内装工事の際に、当該固定具を石膏ボード等からなる脆弱な壁面の適当な箇所に設置する作業を追加するだけで、(多少の追加コストはかかるが、)この種の建築物の使用者や購入者にとっての「日常生活の利便性向上」という長所・利点が付加されることを意味する。従って、安価であるが非常に丈夫であり、しかも断熱性・遮音性が高いという特性を持つ石膏ボード(やその類似物)を使用した建築物に関し、広告・宣伝では潜在顧客に対し、「ネジや釘を用いた物品の取付が困難」という石膏ボード(やその類似物)の持つ難点が解消されるだけでなく、「石膏ボードよりなる壁面に固定できるように工夫した製品を使用しなくても、壁面に直接、所望の物品をいくつでも取り付けできる」という高い利便性を訴求できることになる。これは、建築業者にとっても、利便性が高いことを意味する。
よって、本発明の物品取付用部材の固定構造では、(d)石膏ボード等からなる脆弱な壁面を有する建築物の使用者や購入者だけでなく、この種の建築物の建築に携わる建築業者に対しても、高い利便性が提供される、という効果もさらに得られる。
(12) 本発明の物品取付用部材の固定構造の好ましい例では、前記物品取付用部材が木製、鉄製又は合成樹脂製の板状部材とされる。
この例では、前記物品取付用部材が木製の板状部材である場合は、ピンや釘を用いて機械的に、前記物品取付用部材が鉄製の板状部材である場合は、磁力を用いて物理的に、前記物品取付用部材が合成樹脂製の板状部材である場合は、粘着剤を用いて物理的に、1又は複数の所望の物品(例えばフック、ハンガー等び)を前記物品取付用部材に取り付けることが可能であるから、前記壁面が実際は石膏ボードよりなるものであるにもかわらず、前記壁面が木製又は鉄製のものである場合と同様にして、1又は複数の所望の物品(例えばフック、ハンガー等)を自由に取り付けることが可能となる、という利点が得られる。
(13) なお、本発明において、「固定具」の素材は、前記物品取付用部材の重量だけでなく、後に前記物品取付用部材に取り付けられると想定される1又は2以上の種々の物品(被取付物品)の重量をも含めた総重量を支持するのに十分な機械的強度を実現できる剛性が得られるものであれば、任意に設定可能である。例えば、剛性、耐衝撃性、加工容易性のすべてにおいて優れているABS樹脂や、ABS樹脂に近似する物性を持つ合成樹脂を用いるのが好ましいが、これらに限定されるものではない。これら以外の合成樹脂も使用可能であるし、金属材料も使用可能である。
本発明において、「物品取付用部材」とは、所望の物品(以下、被取付物品ともいう)が取り付けられる部材を意味し、その形状や材質は任意である。所望の物品は、ピンや釘や磁力等を用いて「物品取付用部材」に直接取り付けられたり、適当な部材や器具を介して「物品取付用部材」に間接的に取り付けられたりするが、いずれの方法で取り付けられてもよい。
「物品取付用部材」は、前記壁面に固定されることを考慮すると、板状又は略板状とされるのが通常である。しかし、板状又は略板状状には限定されず、「物品取付用部材」が固定される前記壁面の所望の場所に応じて、板状以外の任意の形状としてもよいことは言うまでもない。
「物品取付用部材」の材質は、好ましくは、木製又は鉄製の板状部材とされる。これは、前記壁面には、所望の物品をピンや釘を用いて機械的に取り付けることが多いからであり、また、その点を重視する場合は、木製とするのが好ましいと考えられるからである。さらに、前記壁面には、所望の物品を磁力を用いて物理的に取り付けることもしばしばあるから、その点を重視する場合は、鉄製とするのが好ましいと考えられるからである。
本発明において、「物品取付用部材」に取り付けられる「物品」とは、前記壁面にしばしば取り付けられるの任意の物品であり、例えばフックやハンガー、ラック、時計、手すり、タオル掛け等、多くの物品が当該「物品」に該当する。当該「物品」は、「物品取付用部材」に直接、ネジや釘を用いて取り付けられてもよいし、物品の取付を容易にする何らかの器具を介して取り付けられてもよい。
本発明の物品取付用部材の固定具と、当該固定具を用いた物品取付用部材の固定構造では、(a)石膏ボード等からなる脆弱な壁面に対し、所望の物品が取付可能な物品取付用部材を簡単な作業により十分な強度で固定することができる、(b)上述した特許文献1の物品取付具や特許文献2の物品固定構造のような、「石膏ボードアンカー」を使用せずにフックやハンガー等の物品を石膏ボードよりなる壁面に固定できるように工夫した製品等を使用しなくても、石膏ボード等からなる脆弱な壁面に対して所望の物品を取り付けることが可能である、(c)石膏ボード等からなる脆弱な壁面に対して取付可能な物品の種類と数の双方を、従来よりも大幅に拡大することが可能である、(d)石膏ボード等からなる脆弱な壁面を有する建築物の使用者や購入者だけでなく、この種の建築物の建築に携わる建築業者にも、高い利便性を提供することができる、といった効果が得られる。
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。
(物品取付用部材の固定具の構成)
まず、本発明の一実施形態に係る物品取付用部材の固定具1の構成について、添付図面を参照しながら説明する。
本実施形態に係る物品取付用部材の固定具1は、図1~図6に示すように、矩形板状の係合壁11を一面(表面、すなわち、壁面50aに固定した状態で壁面50aとは反対側の面)に有している。これは、この固定具1が、矩形板状の物品取付部材40(図10及び図23参照)の被係合部41としての1つの側縁部を係合させることで、石膏ボード50よりなる壁面50a(図9及び図10参照)に物品取付部材40を固定することを企図しているからである。係合壁11とは反対側の面(裏面、すなわち、壁面50aに固定した状態で壁面50aと同じ側の面)には、係合壁は存在せず、外部に開放されている。
固定具1は、ここでは、剛性と耐衝撃性が共に高く、加工も容易なABS樹脂(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレンを共重合して得られる合成樹脂)に近似した物性を持つ合成樹脂によって製作されているが、当該樹脂に限定されるわけではない。当該樹脂と同様の特性(剛性、耐衝撃性、加工容易性等)を持つ他の合成樹脂によっても製作可能であることは言うまでもない。
矩形状の係合壁11の一方の長辺に対応する側縁部は、接続部19となっており、矩形板状の側壁12の一方の長辺に対応する側縁部が接続されている。係合壁11の前記側縁部と側壁12の前記側縁部の接続角度は直角である。これは、矩形板状の物品取付部材40の表面40aに係合壁11を接触・係合させながら、側壁12が物品取付部材40の例えば上位側面40bに沿って延在する状態を作り出すためである。従って、本実施形態に係る物品取付用部材の固定具1は、接続部19において直角に接続された矩形板状の係合壁11及び側壁12を備えているのであり、全体が略L字状の断面を有している。
上述したように、側壁12と係合壁11は、それらの長辺に対応する側縁部同士が接続部19で接続されているから、接続部19は側壁12及び係合壁11の双方の長辺(長軸)に平行に延在しており、側壁12及び係合壁11の双方の短辺(短軸)に対して直角をなしている。
係合壁11の裏側には、係合壁11と側壁12によって画定された空間Sが形成されている。空間Sは、物品取付部材40の1つの被係合部41を受け入れるための空間である。空間Sの大きさは、後述する矩形板状の物品取付部材40(図25参照)の被係合部41としての1つの側縁部(これは矩形状の断面を持つ)を係合空間Sに挿入することが可能であり、且つ、挿入された被係合部41(前記側縁部)が係合壁11と側壁12とによって2方向から係合・保持されるような大きさに設定されている。
係合壁11の他方の長辺に対応する側縁部(接続部19とは反対側の側縁部)には、他の側壁は接続されておらず、外部に開放されている。係合壁11の2つの短辺に対応する2つの側縁部にも、他の側壁は接続されておらず、外部に開放されている。側壁12の他方の長辺に対応する側縁部12a(接続部19とは反対側の側縁部)にも、側壁12の2つの短辺に対応する2つの側縁部にも、何も接続されておらず、外部に開放されている。これは、物品取付部材40の被係合部41としての1つの側縁部を、空間Sに受け入れできるようにするためである。
係合壁11には、その中央部において接続部19とは反対側の側縁部に近い位置に、木ネジ30をねじ込むための貫通孔11aが形成されている。係合壁11の外側から貫通孔11aに木ネジ30をねじ込むことで、係合壁11ひいては固定具1を、空間Sに係合せしめられた物品取付部材40の対応する被係合部41と結合できるようになっている。木ネジ30は、係合壁11と被係合部41とを結合するための結合手段を構成する。
貫通孔11aの周囲には、テーパー面11bが形成されている。貫通孔11aとテーパー面11bは、木ネジ30の頭部の外形とほぼ整合するように形成されているため、係合壁11の外側から貫通孔11aに木ネジ30をねじ込むことで、木ネジ30のねじ部は被係合部41の内部に押し込まれ、木ネジ30の頭部は係合壁11の内部に埋め込まれる(図8及び図9参照)。従って、木ネジ30の頭部が係合壁11の外側に突出することがなくなり、固定具1を用いて物品取付部材40を壁面50aに固定する作業を行う作業者や、固定された物品取付部材40の使用者がケガをする恐れがない、という利点がある。
側壁12の接続部19とは反対側(固定具1の裏面側)の側縁部12aには、第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15が、側壁12の外面から外方に向かって少し突出した帯状体として形成されている。第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15は、側壁12の側縁部12aにおいて、接続部19(側縁部12a)に沿って間隔をあけて配置されている。第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15は、側壁12の中央線(側壁12の外面の中央を通り、且つ、側壁12の2つの短辺(短軸)に平行な直線、図示せず)に対して対称に形成されている。
第1係止部13は、側壁12の外面上に側壁12と一体的に形成されていると共に、接続部19に沿って一定の高さ(側壁12の外面からの長さ)で延在する角錐台状の突起とされている。第1係止部13は、側壁12の外面に沿った断面が略台形状とされている。また、第1係止部13は、接続部19に沿って、幅(側壁12の外面に沿った長さ)が徐々に変化していて、第3係止部15側の端部が太く、それとは反対側の端部が細くなっている。前記幅が変化する度合いは、後述するガイド孔13aの延在方向(第1方向)を反映したものになっている。第1係止部13の表面側には、斜面13aaが形成されている。斜面13aaは、側壁12の外面に対する角度が鈍角となるような傾斜を持っている。斜面13aaの傾斜方向と傾斜角度も、後述するガイド孔13aの延在方向(第1方向)を反映したものになっている。
第2係止部14は、側壁12の前記中央線に対して、第1係止部13と対称に形成されている。すなわち、第2係止部14は、前記中央線に関して第1係止部13とは反対側にあり、しかも、第2係止部14と第1係止部13は、前記中央線から等距離にある。また、第2係止部14の形状は、第1係止部13の形状と対称な形状(第1係止部13を前記中央線について鏡映した形状)となっている。
すなわち、第2係止部14も、第1係止部13と同様に、側壁12の外面上に側壁12と一体的に形成されていると共に、接続部19に沿って一定の高さ(側壁12の外面からの長さ)で延在する角錐台状の突起とされている。第2係止部14は、側壁12の外面に沿った断面が略台形状とされている。また、第2係止部14は、接続部19に沿って、幅(側壁12の外面に沿った長さ)が徐々に変化していて、第3係止部15側の端部が太く、それとは反対側の端部が細くなっている。前記幅が変化する度合いは、後述するガイド孔14aの延在方向(第2方向)を反映したものになっている。第3係止部14の表面側には、斜面14aaが形成されている。斜面14aaは、側壁12の外面に対する角度が鈍角となるような傾斜を持っている。斜面14aaの傾斜方向と傾斜角度も、後述するガイド孔14aの延在方向(第2方向)を反映したものになっている。
第3係止部15は、側縁部12aの中央に、換言すれば、側壁12の前記中央線上に位置している。第3係止部15は、側壁12の外面上に側壁12と一体的に形成されていると共に、接続部19に沿って一定の高さ(側壁12の外面からの長さ)で延在する角錐台状の突起とされている。第3係止部15は、側壁12の外面に沿った断面が略台形状とされている。また、第3係止部15は、第1係止部13側の端部から第2係止部14側の端部まで太さが同じであるが、これは、後述するガイド孔15aの延在方向(第3方向)を反映したものになっている。第3係止部15の表面側には、斜面15aaが形成されている。斜面15aaは、側壁12の外面に対する角度が鈍角となるような傾斜を持っている。斜面15aaの傾斜角度も、後述するガイド孔15aの延在方向(第3方向)を反映したものになっている。
第1係止部13は、側壁12の側縁部12aの一方の角部(図5では左端部、図6では右端部)の近傍にあり、挿通された釘20を前記第1方向に案内するように形成されたガイド孔13aを2個有している。ガイド孔13aは、いずれも、前記第1方向に延在していると共に、第1係止部13の表面側にある斜面13aaからその裏面側にある接触面13bまで貫通している。第1係止部13の表面側にある斜面13aaは、前記第1方向に延在するガイド孔13aに対してほぼ直交する平面である。これは、作業者が、斜面13aaの向きを知ることで、ガイド孔13aに挿通すべき釘20の差し込み方向と押し込み方向を容易に判断できるようにするためである。
ガイド孔13aの延在方向であり、釘20の挿通方向でもある前記第1方向は、次のように設定されている。すなわち、前記第1方向は、係合壁11及び側壁12の外面に直交する平面内では、側壁12の前記中央線に対して側壁12の内側(空間Sの側)に向かって傾斜し(図13参照)、係合壁11の外面を含む平面内では係合壁11の中央に向かって傾斜し(図12参照)、側壁12の外面を含む平面内では側壁12の中央に向かって傾斜している(図14参照)。そして、第1係止部13のガイド孔13aにその全体がそれぞれ挿通された釘20の先端が、側壁12の内側(空間Sの内部)に位置するような方向である。その結果、これらのガイド孔13aに固定具1の表面側から挿通された釘20は、図7~図9に示すように、側壁12に対して斜めに押し込まれて、釘20の先端部が側壁12の内側(空間Sの内部)に入り込み、空間Sと重なる状態となる。前記第1方向をこのように設定することにより、押し込まれた釘20が壁面50aから脱落し難くなり、その結果、固定具1が壁面50aに固定される際の機械的強度を高めることができる。
第2係止部14は、側壁12の側縁部12aの他方の角部(図5では右端部、図6では左端部)の近傍にあり、挿通された釘20を前記第2方向に案内するように形成されたガイド孔14aを2個有している。ガイド孔14aは、いずれも、前記第2方向に延在していると共に、第2係止部14の表面側にある斜面14aaからその裏面側にある接触面14bまで貫通している。第2係止部14の表面側にある斜面14aaは、前記第2方向に延在するガイド孔14aに対してほぼ直交する平面である。これは、作業者が、斜面14aaの向きを知ることで、ガイド孔14aに挿通すべき釘20の差し込み方向と押し込み方向を容易に判断できるようにするためである。
ガイド孔14aの延在方向であり、釘20の挿通方向でもある前記第2方向は、次のように設定されている。すなわち、前記第2方向は、係合壁11及び側壁12の外面に直交する平面内では、側壁12の前記中央線に対して側壁12の内側(空間Sの側)に向かって傾斜している(図13参照)が、これは、第1係止部13のガイド孔13aと同じである。前記第2方向は、係合壁11の外面を含む平面内では、係合壁11の中央に向かって傾斜している(図12参照)が、第1係止部13のガイド孔13aとは傾斜の向きが逆になっている。前記第2方向は、側壁12の外面を含む平面内では、側壁12の中央に向かって傾斜している(図14参照)が、第1係止部13のガイド孔13aとは傾斜の向きが逆になっている。そして、第2係止部14のガイド孔14aにその全体がそれぞれ挿通された釘20の先端が、側壁12の内側(空間Sの内部)に位置するようになっている。その結果、これらのガイド孔14aに固定具1の表面側から挿通された釘20は、図7~図9に示すように、第1係止部13のガイド孔13aとは逆向きに、側壁12に対して斜めに押し込まれて、釘20の先端部が側壁12の内側(空間Sの内部)に入り込み、空間Sと重なる状態となる。前記第2方向をこのように設定することにより、押し込まれた釘20が壁面50aから脱落し難くなり、その結果、固定具1が壁面50aに固定される際の機械的強度を高めることができる。
上述したように、前記第2方向は、側縁部12aの前記中央線に関して、前記第1方向と対称な方向となっているから、第1係止部13のガイド孔13aに挿通された釘20が、壁面50aの内部に前記第1方向に押し込まれ、それと同時に、第2係止部14のガイド孔14aに挿通された釘20が、壁面50aの内部に前記第1方向に対称な前記第2方向に押し込まれるから、本実施形態に係る固定具1は、第1係止部13と第2係止部14を介して、壁面50aの内部にそれを2つの異なる側から挟み込むように押し込まれた複数の釘20によって、支持されることになる。よって、固定具1は、十分に高い機械的強度で壁面50aに固定されることができる。
第3係止部15は、側壁12の側縁部12aの中央、換言すれば、側縁部12aの前記中央線上にあり、挿通された釘20を前記第3方向に案内するように形成されたガイド孔15aを1個有している。ガイド孔15aは、前記第3方向に延在していると共に、第3係止部15の表面側にある斜面15aaからその裏面側にある接触面15bまで貫通している。第3係止部15の表面側にある斜面15aaは、前記第3方向に延在するガイド孔15aに対してほぼ直交する平面である。これは、作業者が、斜面15aaの向きを知ることで、ガイド孔15aに挿通すべき釘20の差し込み方向と押し込み方向を容易に判断できるようにするためである。
ガイド孔15aの延在方向であり、釘20の挿通方向でもある前記第3方向は、次のように設定されている。すなわち、前記第3方向は、係合壁11及び側壁12の外面に直交する平面内では、側壁12の前記中央線に対して側壁12の内側(空間Sの側)に向かって傾斜している(図13参照)が、これは、第1係止部13のガイド孔13a及び第2係止部14のガイド孔14aと同じである。前記第3方向は、係合壁11の外面を含む平面内では傾斜していないし(図12参照)、側壁12の外面を含む平面内でも傾斜していない(図14参照)。つまり、前記第3方向は、係合壁11及び側壁12の外面に直交する平面内にあるのである。そして、第3係止部15のガイド孔15aにその全体が挿通された釘20の先端が、側壁12の内側(空間Sの内部)に位置するようになっている。その結果、このガイド孔15aに固定具1の表面側から挿通された釘20は、図7~図9に示すように、係合壁11及び側壁12の外面に直交する平面内で、側壁12に対して斜めに押し込まれて、釘20の先端部が側壁12の内側(空間Sの内部)に入り込み、空間Sと重なる状態となる。前記第3方向をこのように設定することにより、押し込まれた釘20が壁面50aから脱落し難くなり、その結果、固定具1が壁面50aに固定される際の機械的強度を高めることができる。
上述したように、前記第3方向は、係合壁11及び側壁12の外面に直交する平面内において、側壁12の前記中央線に対して側壁12の内側(空間Sの側)に向かって傾斜しているから、第1係止部13のガイド孔13aに挿通された釘20が、壁面50aの内部に前記第1方向に押し込まれ、それと同時に、第2係止部14のガイド孔14aに挿通された釘20が、壁面50aの内部に前記第1方向に対称な前記第2方向に押し込まれ、さらに、第3係止部15のガイド孔15aに挿通された釘20が、係合壁11及び側壁12の外面に直交する平面内で側壁12の内側(空間Sの側)に向かって傾斜しているから、本実施形態に係る固定具1は、第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15を介して、壁面50aの内部にそれを2つの側から挟み込むように、前記第1方向及び前記第2方向に押し込まれた複数の釘20に加えて、前記第1方向及び前記第2方向とは異なる前記第3方向に押し込まれた釘20によっても支持されることになる。よって、固定具1が壁面50aに固定される際の機械的強度を、前記第1方向及び前記第2方向に押し込まれた複数の釘20で支持する場合よりも、いっそう高めることができる。
第1係止部13の裏面側にある接触面13b、第2係止部14の裏面側にある接触面14b、及び、第3係止部15の裏面側にある接触面15bは、いずれも、側縁部12aの端縁、すなわち接触面12aaと面一である、つまり、側縁部12aの接触面12aaと同一の平面内にある。これは、本実施形態に係る固定部1の固定時に、側壁12の接触面12aと、その外面に形成された接触面13b、14b及び15bが、壁面50aに同時に密着して接触するようにするためである。
第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15の斜面13a、14a及び15aが、上述したように形成されていることにより、釘20が側壁12に対して斜め内側に傾斜して押し込まれるため、対応するガイド孔13a、14a又は15aに挿通された釘20の頭部は、常に、側壁12から外方に向かって少し離れた箇所に位置し、側壁12が邪魔にならない。従って、釘20の挿入作業とその押し込み(打ち込み)作業が容易であるという利点がある。
側壁12の外面には、さらに、一対の角棒状の突起16及び17と、丸棒状の突起18が形成されている。これらの突起16、17及び18は、いずれも、石膏ボード50よりなる壁面50aに固定具1を用いて物品取付部材40を固定した後に、固定具1の表面を覆う化粧用キャップ部材(図示せず)を係止するために設けられている。この化粧用キャップ部材は、固定具1が釘20によって壁面50aに係止された時に、物品取付部材40の表面40aの側に露出するため、看者(使用者等)に悪印象を与える恐れがある恐れがあることを考慮し、係止後の固定具1の外観の見た目を良くするために付加されるものであるが、本発明との関係が薄いため、それについての説明は省略する。なお、これらの係止用突起16、17及び18は、固定具1の機能に必須ではないから省略可能である。
(物品取付用部材の構成)
以上のような構成を持つ本実施形態に係る固定具1によって壁面50aに固定される物品取付部材40の例を、図25に示す。同図から分かるように、物品取付部材40は、本実施形態では、矩形板状とされている。物品取付部材40の矩形で平坦な表面40aは、室内等に露出して種々の物品(被取付物品)が取り付けられる面であり、物品取付部材40の矩形で平坦な裏面、つまり表面40aの反対側の面は、壁面50aに対向・接触せしめられる面である。物品取付部材40は、表面40aの周囲に4つの側面、すなわち、上位側面40b、左側面40c、下位側面40d及び右側面40eを有している。ここでは、物品取付部材40の4つの側面40b、40c、40d及び40eの各々の中央部が、固定具1と係合せしめられる被係合部41とされている。物品取付部材40は、図11に示したように、その裏面の全体が壁面50aに対向・接触せしめられた状態で、4つの固定具1によって壁面50aに固定される。
本実施形態に係る固定具1を用いて、壁面50aに矩形の物品取付部材40を固定する際の他の配置例を図26(a)及び(b)に示す。
図26(a)の例は、図25に示した物品取付部材40の4つの側面40b、40c、40d及び40eのうち、最も大きい力が作用する上位側面40bに被係合部41を2個設け、それらの被係合部41に計2個の固定部1を配置するようにしたものである。作用する力がそれほど大きくない左側面40c、下位側面40d及び右側面40eの各々には、被係合部41を1個設けて、固定部1を1個配置するようにしている。このように、本実施形態に係る固定具1は、同一形状の物品取付部材40であっても、その使用状況(用途)や設置場所に応じて、物品取付部材40の固定に使用する固定具1の個数(総数)とその配置(レイアウト)を任意に調整することが可能である。
図26(b)の例は、図25に示した物品取付部材40の4つの側面40b、40c、40d及び40eに、計10個の被係合部41を設け、それら10個の被係合部41の各々に固定部1を配置するようにしたものである。図26(b)の物品取付部材40は、その全体形状が縦に長い矩形であるため、その形状を考慮して、相対的に短い上位側面40bと下位側面40dの各々には、被係合部41を2個設け、相対的に長い左側面40cと右側面40eの各々には、被係合部41を3個設けており、それら被係合部41の各々に固定具1を1個ずつ配置するようにしている。このように、本実施形態に係る固定具1は、物品取付部材40それ自体の形状に応じて、物品取付部材40の固定に使用する固定具1の個数(総数)とその配置(レイアウト)を任意に調整することが可能である。
(物品取付用部材の固定具の使用形態)
次に、上述した構成を有する本発明の一実施形態に係る物品取付用部材の固定具1の使用形態について説明する。
本実施形態に係る固定具1の使用形態の説明の前提として、図9に示すように、住宅やオフィスビル等の内壁として、石膏ボード50が垂直方向に固定されており、従って、石膏ボード50よりなる壁面50aが垂直方向に形成されている、と仮定する。そして、固定具1を合計4個用いることで、矩形板状の物品取付部材40(図11及び図25参照)を垂直な壁面50aの所望の箇所に固定する場合を考える。
上述したように、本実施形態に係る固定具1の空間Sは、このような形状の物品取付部材40の1つの被係合部41(これは矩形の断面を持つ四角柱状である)を、係合壁11とは反対側(固定具1の裏面側)にある開口を介して挿入されると共に、被係合部41が係合壁11と側壁12とによって係合・保持されるように、その形状及び大きさが調整されている。
まず、石膏ボード50よりなる垂直な壁面50aにおいて、所望の設置箇所に矩形板状の物品取付部材40を仮に押し当てて、物品取付部材40の被係合部41が配置される位置(4箇所)に、鉛筆等でL字状の印を付ける。こうして、壁面50aにおいて物品取付部材40の4つの被係合部41の位置決めをするのである。
次に、物品取付部材40を壁面50aから引き離してから、物品取付部材40の4つの被係合部41に第1~第4の固定具1の空間Sをそれぞれ挿入して係合させる。この時、物品取付部材40の被係合部41が配置されている側面(例えば、上位側面40b)が、対応する固定具1の係合壁11及び側壁12の内面にそれぞれ接するようにして、当該対応する固定具1の係合壁11とは反対側にある開口を介して、当該被係合部41がその空間Sに押し込まれるようにする。
そして、その係合状態を保持しながら、各々の固定具1の係合壁11に設けられた貫通孔11aに、係合壁11の外側から木ネジ30をねじ込み、第1~第4の固定具1を物品取付部材40の対応する被係合部41にそれぞれ固定する。このとき、各々の木ネジ30の先端部は物品取付部材40の内部に入り込むため、4つの固定具1は物品取付部材40の4つの対応する被係合部41にそれぞれ固定される。この状態では、各々の被係合部41は、対応する固定具1の係合壁11と共に、その側壁12にも係合しているから、各々の被係合部41が係合壁11のみと係合している場合よりも、各々の被係合部41を壁面50aに固定する強度と安定性が高まり、好ましい。
続いて、4つの固定具1が対応する4つの被係合部41にそれぞれ固定された物品取付部材40を、先ほど壁面50aに付けた4つのL字状の印を参照しながら、物品取付部材40の位置と姿勢を調整し、壁面50aの所望の設置箇所に押し当てる。
その後、例えば、物品取付部材40の上位側面40bの被係合部41に配置された第1の固定具1について、その第1係止部13の2つのガイド孔13a、第2係止部14の2つのガイド孔14a及び第3係止部15の1つのガイド孔15aのいずれか1つに、第1の釘20をその先端部が壁面50aに届く程度まで挿し込む。そして、当該釘20の頭部を適当な工具(例えば小型ハンマーや専用治具等)で叩き、当該釘20を壁面50aに仮に押し(打ち)込む。
以後、同様にして、第1の固定具1の第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15の残った4つのガイド孔13a、14a又は15aのそれぞれに、第2~第5の釘20をその先端部が壁面50aに届く程度まで挿し込み、当該釘20の頭部を前記工具で叩いて、当該第2~第5の釘20を壁面50aに仮に押し(打ち)込む。
最後に、第1の固定具1に係る前記第1~第5の釘20を前記工具でさらに叩いて、これらの釘20の頭部が第1係止部13、第2係止部14又は第3係止部15の対応する斜面13aa、14aa又は15aaに密着するまで、押し(打ち)込む。これにより、押し(打ち)込んだ第1~第5の釘20によって、第1の固定具1の第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15が壁面50aに係止されるため、第1の固定具1それ自体も壁面50aに固定されることになる。これで、第1の固定具1の壁面50aへの固定は完了である。
以上のような工程を経ることで、第1の固定具1に係る第1~第5の釘20の先端部は、壁面50aを貫通して石膏ボード50の内部に深く入り込む。この時、第1係止部13のガイド孔13aに案内された計2本の釘20は、石膏ボード50の内部に前記第1方向に入り込む。また、第2係止部14のガイド孔14aに案内された計2本の釘20は、石膏ボード50の内部に前記第2方向に入り込む。さらに、第3係止部15のガイド孔15aに案内された計1本の釘20は、石膏ボード50の内部に前記第3方向に入り込む。
ここで、前記第1方向は、上述したように、側壁12の内側に向かって傾斜し、且つ、側壁12の外面に沿って側縁部12aの中央部(第3係止部15)に向かって傾斜していて、第1係止部13のガイド孔13aにその全体がそれぞれ挿通された釘20の先端が、側壁12の内側に位置するような方向である。従って、これらのガイド孔13aに第1の固定具1の表面側から挿通された計2本の釘20は、図7~図9に示すように、側壁13に対して斜めに押し込まれて、釘20の先端部が側壁13の内側に入り込み、空間Sと重なる状態となる。
また、前記第2方向は、上述したように、側縁部12aの中央線(側縁部12aの中央を通り、且つ、側壁12の2つの短辺に平行な直線)に関して、前記第1方向と対称な方向であるから、これらのガイド孔14aに第1の固定具1の表面側から挿通された計2本の釘20は、図7~図9に示すように、ガイド孔13aに挿通された計2本の釘20とは反対方向に斜めに押し込まれて、釘20の先端部が側壁13の内側に入り込み、空間Sと重なる状態となる。つまり、第1の固定具1は、第1係止部13と第2係止部14を介して、壁面50aの内部にそれを2つの側から挟み込むように押し込まれた計4本の釘20によって支持される。
さらに、前記第3方向は、上述したように、側壁12の内側に向かって傾斜し、且つ、側壁12の外面に沿って接続部19に直交する方向に傾斜していて、第3係止部15のガイド孔15aにその全体が挿通された釘20の先端が、側壁12の内側に位置するような方向である。従って、ガイド孔15aに固定具1の表面側から挿通された釘20は、図7~図9に示すように、側壁13に対して斜めに押し込まれて、釘20の先端部が側壁13の内側に入り込み、空間Sと重なる状態となる。このため、壁面50aの内部にそれを2つの側から挟み込むように、前記第1方向及び前記第2方向に押し込まれた複数の釘20に加えて、前記第1方向及び前記第2方向とは異なる前記第3方向に押し込まれた釘20によっても支持される。
よって、物品取付部材40の当該被係合部41は、第1の固定具1によって十分に高い強度で壁面50aに保持されることができる。さらに、物品取付部材40の重量だけでなく、後に物品取付部材40の表面40aに取り付けられる種々の物品(例えば、棒状ハンガー、ポール状フック等)の重量をも、十分に保持できる強度とすることができる。
例えば、物品取付部材40に対して設定される耐重量(限界許容重量)に応じて、第1の固定具1に使用する釘20の総数、あるいは、個々の釘20の強度(例えば、直径や全長、材質等)、又はそれらの双方を調整したり、固定具1それ自体の剛性や耐衝撃性、耐久性等を調整したりすることで、物品取付部材40の耐重量(限界許容重量)を超える強度を、容易に実現することができる。
次に、第2の固定具1についても、上記と同様にして壁面50aに固定する、すなわち、この段階では、物品取付部材40の1つの被係合部41が第1の固定具1によって壁面50aに固定されているから、物品取付部材40は第1の固定具1のみによって壁面50aに保持された状態にある。そこで、第2の固定具1について、上記と同様にして、第1~第5の釘20によって順次、固定していけばよい。
例えば、物品取付部材40の右側面40eの被係合部41に配置された第2の固定具1について、その第1係止部13の2つのガイド孔13a、第2係止部14の2つのガイド孔14a及び第3係止部15の1つのガイド孔15aのいずれか1つに、第1の釘20をその先端部が壁面50aに届く程度まで挿し込む。そして、当該釘20の頭部を適当な工具(例えば小型ハンマーや専用治具等)で叩き、当該釘20を壁面50aに仮に押し(打ち)込む。
以後、同様にして、第2の固定具1の第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15の残った4つのガイド孔13a、14a又は15aのそれぞれに、第2~第5の釘20をその先端部が壁面50aに届く程度まで挿し込み、当該釘20の頭部を前記工具で叩いて、当該第2~第5の釘20を壁面50aに仮に押し(打ち)込む。
最後に、第2の固定具1に係る前記第1~第5の釘20を前記工具でさらに叩いて、これらの釘20の頭部が第1係止部13、第2係止部14又は第3係止部15の対応する斜面13aa、14aa又は15aaに密着するまで、押し(打ち)込む。これにより、押し(打ち)込んだ第1~第5の釘20によって、第2の固定具1の第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15が壁面50aに係止されるため、第2の固定具1それ自体も壁面50aに固定されることになる。これで、第2の固定具1の壁面50aへの固定が完了する。
さらに続いて、例えば、物品取付部材40の左側面40cの被係合部41に配置された第3の固定具1について、上記と同様にして、第3の固定具1に係る第1~第5の釘20を、これらの釘20の頭部が第1係止部13、第2係止部14又は第3係止部15の対応する斜面13aa、14aa又は15aaに密着するまで、押し(打ち)込む。これにより、第3の固定具1の第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15が第1~第5の釘20によって壁面50aに係止されるため、第3の固定具1それ自体も壁面50aに固定されることになる。これで、第3の固定具1の壁面50aへの固定が完了する。
最後に、例えば、物品取付部材40の下位側面40dの被係合部41に配置された第4の固定具1について、上記と同様にして、第4の固定具1に係る第1~第5の釘20を押し(打ち)込む。これにより、第4の固定具1の第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15が第1~第5の釘20によって壁面50aに係止されるため、第4の固定具1それ自体も壁面50aに固定されることになる。これで、第4の固定具1の壁面50aへの固定が完了する。
以上のようにして、合計20本の釘20を用いて第1~第4の固定具1を壁面50aに固定する作業が完了すると、物品取付部材40は、その4つの被係合部41に配置された第1~第4の固定具1によって、図11に示すような状態で、壁面50aに固定される。この状態では、第1~第4の固定具1によって、物品取付部材40の4つの被係合部41が十分な強度で壁面50aに保持される。しかも、その強度は、物品取付部材40の重量に、後に物品取付部材40の表面40aに取り付けられる種々の物品(例えば、棒状ハンガー、ポール状フック等)の重量を加えた総重量を、安定して保持するに十分なものとなる。
なお、図11に示された、物品取付部材40が4つの固定具1によって壁面50aに固定された構造は、本発明の一実施形態に係る物品取付用部材の固定構造をも示している。
図11の状態では、矩形板状の物品取付部材40が、その4つの被係合部41に配置された第1~第4の固定具1によって、壁面50aに固定されているが、こうして固定された物品取付部材40の表面40aには、所望の物品、例えば、図15及び図16に示すようなポール状フックが取り付けられる。この場合、まず、物品取付部材40に固定部材(図17及び図18参照)がタッピングネジ等によって固定され、その後、そうして固定された固定部材にポール状フックが取り付けられる。なお、必要に応じて、例えば、物品取付部材40のサイズを拡大する等により、単一つの物品取付部材40に複数の物品を同時に取り付けできるようにしてもよい。
物品取付部材40に取り付けられる物品(被取付物品)は、図15及び図16に示したようなポール状フックに限定されず、これ以外の任意の物品(例えば、棚、鉤状フック、手すり、タオル掛け、時計、ラック等)を取付可能であることは言うまでもない。また、被取付物品用の固定部材についても、図17及び図18に示したものに限定されず、これ以外の任意の取付部材を使用可能であることは言うまでもない。
さらに言えば、石膏ボードよりなる壁面50aは、ネジや釘を用いた物品の取付が困難であるが、本実施形態では、4つの固定具1により壁面50aに木製の物品取付用部材40が固定されているため、上述した特許文献1の物品取付具や特許文献2の物品固定構造のような、「石膏ボードアンカー」を使用せずにフックやハンガー等の物品を石膏ボードよりなる壁面に固定できるように工夫した製品等を使用する必要がない。ネジや釘を用いて木製等の壁面に取付可能な多くの物品を、そのまま、石膏ボードよりなる壁面50a(具体的には、物品取付部材40の表面40a)に取り付け可能であるのは、非常に便利である。
(効果確認試験)
本発明者は、以上説明した構成を持つ本発明の一実施形態に係る物品取付用部材の固定具1を実際に製作し、その固定強度を確認するために試験(効果確認試験)を行った。そこでは、株式会社島津製作所製の精密万能試験機AG-X 50kNを用いて、固定具1の固定強度を室温(約20℃)にて測定した。併せて、比較例(後述)についても、同様の試験を行った。試験要領は次のとおりとした。
(本発明の一実施形態に係る固定具1の試験)
本発明の一実施形態に係る固定具1は、図1~図6に示した構成を有しており、図12~図14に示すような寸法で、ABS樹脂に近似した物性を持つ合成樹脂より、3Dプリンタを用いて製作した。
図12~図14から分かるように、当該試験のために製作した固定具1の寸法は、次の通りとした。
すなわち、矩形状の係合壁11の長辺の長さが51.6mm、短辺の長さが11mm、厚さが1.5mmである。係合壁11の貫通孔11aの直径は4mmである。
矩形状の側壁12の長辺の長さが51.6mm、短辺の長さが14mm、厚さが1.5mmである。第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15は、いずれも、側壁12の外面からの外向きの突出量が3.5mmである。
第1係止部13の端部よりのガイド孔13aは、側壁12の対応する端面から5.5mmの位置に形成され、第1係止部13の中央よりのガイド孔13aは、側壁12の対応する端面から10.8mmの位置に形成されている。従って、第1係止部13の2つのガイド孔13aの間の距離は、5.3mmである。第3係止部15のガイド孔15aは、第1係止部13の中央よりのガイド孔13aから15mmの位置に形成されている。第2係止部14及びそのガイド孔14aの位置及び形状は、第1係止部13及びそのガイド孔13aの位置及び形状を、固定具1の中央線に関して鏡像となるように設定されている。第3係止部15及びそのガイド孔15aは、固定具1の中央線上にある。
第1係止部13の2つのガイド孔13aの、側壁12の短辺(短軸)(側壁12の前記中央線)に対する傾斜角は、係合壁11の外面を含む平面内では係合壁11の中央に向かって約35°(図12参照)、側壁12の外面を含む平面内では側壁12の中央に向かって約16°(図14参照)、係合壁11及び側壁12の外面に直交する平面内では空間Sに向かって約23°(図13参照)である。第2係止部14の2つのガイド孔14aの、側壁12の短辺(短軸)(側壁12の前記中央線)に対する傾斜角は、固定具1の中央線に関して、第1係止部13のガイド孔13aのそれと対称な傾斜角となっている。第3係止部15のガイド孔15aの傾斜角は、係合壁11及び側壁12の外面に直交する平面内で、第1係止部13のガイド孔13a及び第2係止部14の2つのガイド孔14aのそれと同じ角度である。
第1係止部13の斜面13aaは、上述した第1係止部13の2つのガイド孔13aの延在方向に対してほぼ直角である。
第1係止部13のガイド孔13a、第2係止部14のガイド孔14a及び第3係止部15のガイド孔15aの直径は、いずれも1.2mmである。使用した釘20の外径は1mmである。
建築物の躯体として、矩形状に組まれたパイン集成材からなる枠材の一方の開口面に、標準石膏ボード50を固定して、当該開口面を塞いだものを用意した。前記枠材(躯体)の他方の開口面は、開放したままとした。前記躯体の具体的な構造と寸法は、図19に示す通りとした。すなわち、図19に示すように、石膏ボード50(吉野石膏製)は、縦横450mmの正方形で、その厚さは12.5mmである。前記躯体を構成する左右の縦板は、それぞれ、縦450mm、横113mmの長方形状で、厚みは25mmである。前記躯体を構成する上下の横板は、それぞれ、縦400mm、横90mmの長方形状で、厚さは25mmである。前記躯体に固定された石膏ボード50よりなる壁面50aの中央部には、図20(a)及び(b)に示すように、物品取付用部材40として縦横250mmの正方形で、厚みが12mmのJAS認定構造用合板を、本発明の一実施形態に係る固定具1を4つ用いて固定した。
物品取付用部材40としてのJAS認定構造用合板の中央部には、壁面50aに対して直角となるように、物品取付用部材40に取り付けられる物品の例として、市販のポール状フック(合成樹脂製)を取り付けた。当該フックの構造と寸法は、図15及び図16に示した通りである。すなわち、円板状の基部と、同じく円板状の先端部と、前記基部と前記先端部の間に形成された円柱状の保持部とを備えている。前記基部は、直径45mm、高さ11.5mmである。前記先端部は、直径37mm、高さ8mmである。前記保持部は、直径30mm、高さ44.7mmである。
図15及び図16に示した前記ポール状フックは、その本体(フック本体)を、図17(b)及び図18(b)に示すような構成を持つ専用の固定部材を用いて、物品取付用部材40としてのJAS認定構造用合板の中央部に固定した。その際に、当該フックに付属のタッピングネジではなく、別途用意した市販の「木材用サラ頭タッピングビス 3mm×12mm」を2本用いた。これは、付属のタッピングネジの全長が長いため、物品取付用部材40(前記構造用合板)を貫通して石膏ボード50にまで到達してしまったからである。石膏ボード50を貫通しないように、前記木材用サラ頭タッピングビスを代替使用したものである。
図15及び図16の前記ポール状フックの前記フック本体を前記固定部材に係止する際には、次のようにした。すなわち、物品取付用部材40(前記構造用合板)に固定された専用の前記固定部材は、図17(b)及び図18(b)に示すように、その左右両側の外縁が平行になっていて、その全体が上下方向に延在する「突条」を形成している。他方、前記フック本体の底面(円板状の前記基部の裏面)には、図16(a)及び(b)に示すように、「縦溝(係合溝)」(上下方向に延びる窪み)が形成されており、当該「縦溝」が前記固定部材の前記「突条」に嵌合するようになっている。そこで、当該「縦溝」の下端を、前記固定部材の前記「突条」の上端から前記「突条」に嵌合させながら下方に押し込むと、当該「縦溝」は前記「突条」に嵌合しながら下降するが、当該「縦溝」の上端のストッパー部(図16(b)参照)が前記「突条」の上端の当接部(図17(b)及び図18(b)参照)に当接し、それ以上の下降ができなくなる。こうして、前記フック本体は、その停止位置において、前記固定部材によって確実に、物品取付用部材40(前記構造用合板)に保持・固定される(図20(a)及び(b)参照)。前記フック本体の前記固定部材への係止は、このようにして行った。
物品取付用部材40(前記構造用合板)の中央部に前記ポール状フックが固定された前記躯体は、図20(a)及び(b)に示すようにして、前記精密万能試験機の定盤上に固定した。具体的には、水平に配置された前記定盤上に、石膏ボード50の壁面50aに対して垂直となるように前記躯体を固定した。その固定には、2つの棒状の連結部材と4本の六角ボルトを用いた。2つの前記連結部材は、前記躯体の上端面に間隔をおいて配置した。さらに、2本の六角ボルトは、前記躯体の前方に配置して、それらの上端部を対応する前記連結部材の前端部に係合させ、前記六角ボルトの前記上端部に六角ナットをそれぞれねじ込んで固定した。同様に、他の2本の六角ボルトは、前記躯体の後方に配置して、それらの上端部を対応する前記連結部材の後端部に係合させ、前記六角ボルトの前記上端部に六角ナットを、それぞれ、ねじ込んで固定した。この時の状態は、図20(a)及び(b)に示す通りである。
以上のようにして準備を完了した後、前記精密万能試験機により、図15及び図16に示した前記ポール状フックの中央の円柱状の前記保持部(前記基部と前記先端部の間にある部分)の中心に対し、鉛直下向きの荷重を連続的に印加した(図20(b)の矢印A参照)。そして、最大荷重に達した後、荷重が最大荷重の60%に低下するまで、又は、変位が10mm以上に達するまで、鉛直下向きの荷重の印加を継続した。
(比較例の試験)
上述した本発明に係る固定具1の試験結果と比較するため、比較例について、同様の試験を行った。比較例の試験では、上述した本発明に係る固定具1に対する試験で用いたのと同様の構成を持つ躯体を使用した。比較例の試験で使用した躯体は、上述した本発明に係る固定具1の試験で使用された前記躯体と同様に、矩形状に組まれたパイン集成材からなる枠材の一方の開口面に、標準石膏ボード50を固定して当該開口面を塞いだものを用いた。前記枠材(躯体)の他方の開口面は、開放したままとした。前記躯体の具体的な構造と寸法は、図19に示す通りとした。ただし、上述した本発明に係る固定具1の試験で使用された前記躯体とは異なり、前記躯体に固定された石膏ボード50よりなる壁面50aの中央部には、物品取付用部材40としてのJAS認定構造用合板は固定しなかった。従って、比較例の試験では、前記躯体に固定された石膏ボード50よりなる壁面50aの全体が露出したものを使用した(図21(a)及び(b)参照)。
前記躯体に固定された石膏ボード50の中央部には、壁面50aに対して直角となるように、上述した本発明に係る固定具1の試験で使用されたのと同一の市販のポール状フック(合成樹脂製)を取り付けた。当該フックの構造と寸法は図15及び図16に示した通りである。
図15及び図16に示した前記ポール状フックは、その本体(フック本体)を、図17(a)及び図18(a)に示すような構成を持つ専用の固定部材を用いて、石膏ボード50の中央部に固定した。その際に、当該フックに付属の専用ピンを8本用いた。
図15及び図16の前記ポール状フックの前記フック本体を前記固定部材に係止する際には、本発明に係る固定具1の場合と同様に、前記フック本体の底面の前記「縦溝」の下端を、前記固定部材の前記「突条」の上端から前記「突条」に嵌合させながら下方に押し込み、当該「縦溝」を前記「突条」に嵌合しながら、当該「縦溝」の上端のストッパー部(図16(b)参照)が前記「突条」の上端の当接部(図17(b)及び図18(b)参照)に当接するまで、下降させた。これにより、前記フック本体は、その停止位置において、前記固定部材によって確実に、壁面50aに保持・固定された(図21(a)及び(b)参照)。
前記石膏ボード50の壁面50aの中央部に前記ポール状フックが固定された前記躯体は、図21(a)及び(b)に示すようにして、前記精密万能試験機の定盤上に固定した。その固定方法は、上述した本発明に係る固定具1の試験で使用されたのと同一とした。
以上のようにして準備を完了した後、前記精密万能試験機により、図15及び図16に示した前記ポール状フックの中央の円柱状の前記保持部(前記基部と前記先端部の間にある部分)の中心に対し、鉛直下向きの荷重を連続的に印加した(図21(b)の矢印B参照)。そして、最大荷重に達した後、荷重が最大荷重の60%に低下するまで、又は、変位が10mm以上に達するまで、鉛直下向きの荷重の印加を継続した。これは、上述した本発明に係る固定具1の試験と同一である。
(試験結果)
以上のようにして行った効果確認試験の試験結果を図22~図24に示す。この試験結果から明らかなように、上述した本発明に係る固定具1の試料1では、394.51Nの最大荷重が得られており、試料2では348.87N、試料3では439.77Nの最大荷重が得られている。いずれも、石膏ボード50等からなり、ネジや釘を用いた物品の取付が困難な脆弱な壁面50aに対し、所望の物品をネジや釘を用いて機械的に固定したり、磁力等を用いて物理的に固定したりするのには十分な強度である。また、最大変位は、前記試料1では5.07mm、前記試料2では4.24mm、前記試料3では6.97mmとなっているが、後述するように、固定具1や物品取付用部材40(前記構造用合板)には何ら異常がなかったから、上述した本発明に係る固定具1では、この程度の変位があっても問題は生じないと推測される。
しかも、上述した本発明に係る固定具1には何ら異常は見られなかったし、物品取付用部材40(前記構造用合板)のガタやズレも生じなかった。上述した本発明に係る固定具1の前記試料1~3のいずれについても、固定具1が破壊される前に前記ポール状フックを固定するタッピングネジが部分的に外れて(抜けて)、脱落しそうになった。
これに対し、比較例の試験においては、比較例の試料1では80.80Nの最大荷重であり、試料2では65.93N、試料3では74.85Nの最大荷重が得られている。従って、比較例における最大荷重は、本発明に係る固定具1でのそれの(1/4)~(1/6)の低さであることが分かる。また、比較例の最大変位は、前記試料1では4.32mm、前記試料2では6.77mm、前記試料3では5.47mmとなっているから、本発明に係る固定具1のそれとほぼ同等であることが分かる。比較例では、前記固定部材が8本の専用ピンで固定されていたため、前記試料1~3のいずれについても、印加荷重に耐えきれず、前記専用ピンが石膏ボード50から脱落してしまい、結果として、前記フックそれ自体も脱落した。よって、比較例では、本発明に係る固定具1の最大荷重の(1/4)~(1/6)しか得られないため、重量の大きい物品は取付できないが、本発明に係る固定具1では十分大きい(比較例の約4~6倍)の最大荷重が得られるため、物品取付用部材40(前記構造用合板)の重量に、物品取付用部材40の上に取り付けられる物品(被取付物品)の重量を加算した重量、すなわち物品取付用部材40と被取付物品の総重量にも、十分に耐えられることが分かる。
なお、上述した効果確認試験は、本発明に係る固定具1の実際の使用状況を想定した状態で、合計4つの固定具1の全体による強度を測定しており、単一の固定具1による強度を測定してはいないが、何ら問題は生じないと解される。なぜならば、本発明に係る固定具1は、上記実施形態で説明したように、物品取付用部材40の形状や物品取付用部材40の被係合部40aの数に応じて、複数個の固定具1が組み合わされて使用されることを前提としたものだからである。
(物品取付用部材の固定具の効果)
以上詳細に説明したところから明らかなように、本発明の一実施形態に係る物品取付用部材の固定具1は、上述した構成を有しているので、第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15の接触面13b、14b及び15bと、側壁12の接触面12aaとを、石膏ボード50の壁面50aに接触させた状態で、第1係止部13に形成されたガイド孔13aに挿通させた釘20を壁面50aに前記第1方向に押し込むと共に、第2係止部14に形成されたガイド孔14aに挿通させた釘20を壁面50aに前記第2方向(前記第1方向とは異なる)に押し込み、さらに、第3係止部15に形成されたガイド孔15aに挿通させた釘20を壁面50aに前記第3方向(前記第1方向及び前記第2方向とは異なる)に押し込むことによって、第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15を壁面50aに係止すると、壁面50aには、係合壁11と側壁12とによって形成された空間Sが配置される。空間Sは、物品取付用部材40の被係合部41を受け入れ可能とされており、また、空間Sに受け入れられた物品取付用部材40の被係合部41は、係合壁11と係合せしめられるようになっている。
そこで、例えば、複数の釘20を用いて上述したようにして、第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15を壁面50aに係止する前に、空間Sに物品取付用部材40の被係合部41を受け入れて(係合させて)おき、その状態で、被係合部41と係合壁11とを、結合手段としての木ネジ30によって相互に結合させておけば、第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15を壁面50aに係止するだけで、物品取付用部材41を壁面50aの前記所望の位置に固定することが可能となる。
あるいは、複数の釘20を用いて上述したようにして、第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15を壁面50aに係止した後に、空間Sに物品取付用部材40の被係合部41を受け入れさせ(係合させ)、その状態で、被係合部41と第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15とを木ネジ30によって相互に結合させれば、壁面50aに係止された第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15だけで、物品取付用部材40を壁面50aの前記所望の位置に固定することが可能となる。
また、第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15に形成されたガイド孔13a、14a及び15aは、挿通された釘20を前記第1方向に案内するように形成された第1係止部13と、挿通された釘20を前記第1方向とは異なる前記第2方向に案内するように形成された第2係止部14と、挿通された釘20を前記第1方向及び前記第2方向とは異なる前記第3方向に案内するように形成された第3係止部15とを含んでいる。しかも、第1係止部13のガイド孔13aは、側壁12の一方の端部(側縁部12a)又はその近傍において、側壁12の外面に沿って並列されており、第2係止部14のガイド孔14aは、側壁12の同じ端部(側縁部12a)又はその近傍において、側壁12の外面に沿って並列されており、第3係止部15のガイド孔15aは、側壁12の同じ端部(側縁部12a)又はその近傍において、側壁12の外面に沿って形成されているから、第1係止部13のガイド孔13aに挿通されて壁面50aに押し込まれた釘20と、第2係止部14のガイド孔14aに挿通されて壁面50aに押し込まれた釘20と、第3係止部15のガイド孔15aに挿通されて壁面50aに押し込まれた釘20とは、互いに離れた(ずれた)位置(領域)にあり、また、壁面50aの内側では互いに異なる方向に押し込まれている。このため、固定具1は、互いに離れた(ずれた)位置(領域)において、互いに異なる方向に延在する複数の釘20によって、壁面50aに機械的に支持されることになる。従って、固定具1が壁面50aに固定される際の機械的強度は、十分なものとなる。
しかも、固定具1を壁面50aに固定するために必要なのは、複数の釘20を用いて上述したようにして第1係止部13、第2係止部14及び第3係止部15を壁面50aに係止する作業と、空間Sに物品取付用部材40の被係合部41を受け入れさせ(係合させ)てから、被係合部41と係合壁11とを結合手段としての木ネジ30によって相互に結合する作業だけである。従って、固定具1が壁面50aに固定されるために必要な作業は、簡単なものである。
よって、本実施形態に係る物品取付用部材の固定具1では、(a)石膏ボード50等からなる脆弱な壁面50aに対し、所望の物品が取付可能な物品取付用部材40を簡単な作業により十分な機械的強度で固定することができる、という効果が得られる。この機械的強度としては、物品取付用部材40の重量だけでなく、後に物品取付用部材40に取り付けられると想定される1又は2以上の種々の物品(被取付物品)の重量をも含めた総重量を支持するのに十分な機械的強度を実現できることが、本発明者により確認済みである(上述した効果確認試験を参照)。
なお、本実施形態に係る物品取付用部材の固定具1は、物品取付用部材40の被係合部41の形状及び数に応じて、2個以上組み合わせて使用するのが好ましい。物品取付用部材40の被係合部41のすべてを2個以上の固定具1を用いて2か所以上で固定することになるから、固定具1が1個の場合よりも高い機械的強度で壁面50aに固定されることができ、物品取付用部材40の全体としての固定強度をいっそう高めることができるからである。
本実施形態に係る固定具1は、上述した効果に加えて、以下のような効果をも有する。
すなわち、本実施形態に係る固定具1を用いれば、上述したように、石膏ボード50等からなる脆弱な壁面50aに対し、所望の物品が取付可能な物品取付用部材40を十分な機械的強度で固定することができるから、こうして固定された物品取付用部材40を使って、所望の物品を任意に取り付けることが可能となる。よって、本実施形態に係る固定具1では、(b)上述した特許文献1の物品取付具や特許文献2の物品固定構造のような、「石膏ボードアンカー」を使用せずにフックやハンガー等の物品を石膏ボードよりなる壁面に固定できるように工夫した製品等を使用しなくても、石膏ボード等からなる脆弱な壁面に対して所望の物品を取り付けることが可能である、という効果がさらに得られる。
さらに、本実施形態に係る固定具1を用いれば、上述したように、石膏ボード50等からなる脆弱な壁面50aに対し、所望の物品が取付可能な物品取付用部材40を十分な機械的強度で固定することができるから、こうして固定された物品取付用部材40を使って、所望の物品を所望の数だけ任意に取り付けることが可能となる。すなわち、所望の物品は、壁面50aに直接的に固定されるのではなく、固定具1を用いて壁面50aに固定された物品取付用部材40に固定されるため、物品取付用部材40の形状や材質を適宜選定することにより、壁面50aに所望の物品をネジや釘を用いて機械的に取り付けたり、磁力等を用いて物理的に取り付けたりすることが可能である。例えば、物品取付用部材40として木製の板材を使用すれば、例えばフック、ハンガー等の物品をネジや釘を用いて機械的に取付可能であるし、物品取付用部材40として鉄製の板材を使用すれば、例えば磁力を用いてフック、ハンガー等の物品を物理的に取付可能となる。しかも、取り付ける物品の個数は、物品取付用部材40の大きさや耐重量(限界許容重量)に応じて許容される値まで増やすことができる。
よって、本実施形態に係る固定具1では、(c)石膏ボード50等からなる脆弱な壁面50aに対して取付可能な物品の種類と数の双方を、従来よりも大幅に拡大することが可能である、という効果がさらに得られる。
さらに、本実施形態に係る固定具1を用いれば、上述したように、石膏ボード50等からなる脆弱な壁面50aに対し、所望の物品が取付可能な物品取付用部材40を十分な機械的強度で固定することができるから、こうして固定された物品取付用部材40を使って、所望の物品を所望の数だけ任意に取り付けることが可能となる。これは、石膏ボード50等からなる脆弱な壁面50aを有する建築物の使用者や購入者にとっては、固定具1を購入してそれを壁面50aに固定する簡単な作業をするだけで、日常生活での利便性が飛躍的に高まることを意味する。
また、これは、この種の建築物の建築に携わる建築業者にとっては、内装工事の際に、固定具1を石膏ボード50等からなる脆弱な壁面50aの適当な箇所に設置する作業を追加するだけで、(多少の追加コストはかかるが、)この種の建築物の使用者や購入者にとっての「日常生活の利便性向上」という長所・利点が付加されることを意味する。従って、安価であるが非常に丈夫であり、しかも断熱性・遮音性が高いという特性を持つ石膏ボード(やその類似物)を使用した建築物に関し、広告・宣伝では潜在顧客に対し、「ネジや釘を用いた物品の取付が困難」という石膏ボード(やその類似物)の持つ難点が解消されるだけでなく、「石膏ボードよりなる壁面に固定できるように工夫した製品を使用しなくても、壁面に直接、所望の物品をいくつでも取り付けできる」という高い利便性を訴求できることになる。これは、建築業者にとっても、利便性が高いことを意味する。
よって、本実施形態に係る固定具1では、(d)石膏ボード50等からなる脆弱な壁面50aを有する建築物の使用者や購入者だけでなく、この種の建築物の建築に携わる建築業者に対しても、高い利便性が提供される、という効果もさらに得られる。
なお、本発明に係る物品取付用部材の固定構造では、本実施形態に係る物品取付用部材の固定具1によって得られる上述した効果と同じ効果が得られることが、明らかである。
(他の実施形態)
上述した実施形態は、本発明を具体化した例を示すものである。従って、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を外れることなく種々の変形が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態の固定具1は、接続部19において直角に接続された、矩形板状の係合壁11及び側壁12を備えていて、全体が略L字状の断面を有しているが、本発明はこれには限定されない。固定具1は、係合壁11と、係合壁11の接続部19に接続され、且つ、係合壁11と交差するように形成された側壁12とを有していて、それらによって物品取付用部材40の被係合部41を受け入れ可能な空間Sが形成されていれば足りるのであり、空間Sの形状と大きさは任意である。
換言すれば、空間Sは、物品取付用部材40の1つの被係合部41を受け入れることができると共に、受け入れた被係合部41が係合壁11と係合可能な形状と大きさであればよい。空間Sに受け入れられた被係合部41は、側壁12と係合しても、係合しなくてもよい。しかし、空間Sに受け入れられた被係合部41が、係合壁11と係合しているだけでなく、側壁12とも係合している方が、当該被係合部41が係合壁11のみと係合している場合よりも、当該被係合部41を壁面50aに固定する強度と安定性が高まるから、好ましい。
また、上述した実施形態の固定具1では、係合壁11が矩形とされているが、本発明はこれには限定されず、係合壁11の形状は任意であることは言うまでもない。係合壁11は、物品取付用部材40の対応する被係合部41が係合して物品取付用部材40を壁面50aに所望の強度で保持できるものであればよいのであり、従って、係合壁11の形状は強度面や装飾面を考慮して任意に決定することが可能である。
さらに、上述した実施形態の固定具1において、係合壁11の接続部19とは反対側の側縁部の形状も、適宜変更することができる。例えば、係合壁11の前記側縁部を凸円弧状又は凹円弧状にしてもよい。
さらに、上述した実施形態の固定具1において、側壁12の形状も適宜変更することができるが、側壁12はその第1~第3の係止部13、14及び15を利用して壁面50aに係止されるから、上述した実施形態のように矩形板状とするのが好ましい。しかし、機械的強度や耐久性に問題が生じなければ、側壁12は、例えば、一部に透孔や空所を設けた矩形板状としてもよい。側壁12は、その係合壁11とは反対側の側縁部12aに第1~第3の係止部13、14及び15が形成されて、第1~第3の係止部13、14及び15を介して係合壁11を壁面50aに係止する、という機能を果たせればよいのであり、その形状や大きさは任意に設定可能である。
さらに、上述した実施形態の固定具1において、第1~第3の係止部13、14及び15の形状も、適宜変更することができる。第1~第3の係止部13、14及び15の各々は、上述した実施形態のような形状とするのが好ましいが、機械的強度や耐久性に問題が生じなければ、第1~第3の係止部13、14及び15の各々は、上述した実施形態とは異なる任意の形状としてもよい。側壁12に対して、第1~第3の係止部13、14及び15をそれぞれ一体的に形成することで、単一の係止部としてもよい。この場合、当該単一の係止部に第1~第3の係止部13、14及び15のガイド孔13a、14a及び15aと同様のガイド孔を形成すれば、上述した実施形態の固定具1と同一の機能を果たすことが可能である。釘20又はピンを用いて、側壁12を介して係合壁11を壁面50aに係止する、という機能を果たせればよいのであり、第1~第3の係止部13、14及び15の形状や大きさや数は任意に設定可能である。
さらに、上述した実施形態の固定具1では、接続部19は、係合壁11の一方の側縁部に設けられているが、本発明はこれに限定されない。接続部19は、側壁12と係合壁11が接続される部分であれば足り、それ自体の形状と位置は任意である。従って、接続部19は、係合壁11の一方の側縁部である必要はなく、接続部19を当該側縁部よりも内側に設けて、係合壁11の前記側縁部が側壁12の外側に突出するようにしてもよい。
さらに、上述した実施形態の固定具1では、係合壁11に結合手段としての木ネジ30を挿通させるための透孔11aが設けられているが、透孔11aは省略してもよい。この場合は、例えば、結合手段として、係合壁11と物品取付部材40の被係合部41の間に適当な接着剤あるいは粘着剤を配置することで、係合壁11と被係合部41とを結合することができる。木ネジ30に代えて、結合手段としての結合用の釘又はピンを係合壁11の貫通孔に挿通するようにしてもよい。また、係合壁11に貫通孔を形成し、被係合部41に小ボルトを埋め込んでおけば、被係合部41の小ボルトの露出した端部を係合壁11の貫通孔に貫通させてから、ナットをねじ込むことで、係合壁11と被係合部41とを結合することができる。さらに、被係合部41と係合壁11にそれぞれ小型の磁石を配置しておく等しておけば、空間Sに被係合部41を受け入れた状態で、磁力によって固定具1を被係合部41に結合することができる。物品取付用部材40それ自体が鉄製であるか、少なくともその被係合部41が鉄製である場合は、前記磁石を係合壁11に埋設しておくだけで、磁力によって固定具1を被係合部41に結合することが可能となる。
さらに、上述した実施形態の固定具1では、物品取付部材40が木製の矩形板とされており、その4つの角部がそれぞれ被係合部41とされている(図25参照)が、これは、石膏ボード50の壁面50aにその一部を覆うように物品取付部材40を固定する場合を念頭に置いたためであり、その作業を行う建築業者の作業性の向上を考慮している。しかし、物品取付部材40の形状、大きさ、材質はいずれも任意であり、必要に応じて選定することができる。他方、物品取付部材40それ自体を壁面50aの装飾としても使用するような場合も考えられる。その場合には、物品取付部材40の形状を、設置場所をも考慮して、デザイン性(装飾性)を加味した形状(例えば、八角形、ハート形、山形、島形等)とすることができる。
さらに、上述した実施形態の固定具1は、ABS樹脂に近似した物性を持つ合成樹脂より3Dプリンタを用いて形成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。固定具1は、当該樹脂以外の合成樹脂、例えばABS樹脂やABS樹脂以外の合成樹脂によっても形成可能であり、また、量産する場合は、3Dプリンタではなく公知の一体成型法を使用する方が好ましく、3Dプリンタや一体成型法以外の方法によっても、形成可能であることは言うまでもない。
さらに、上述した実施形態の固定具1は、固定される対象である物品取付用部材40が木製とされているが、本発明はこれに限定されるものではない。物品取付用部材40は、木製以外の任意の材料により製造されたもの、例えば鉄製の板材も使用可能であることは言うまでもない。この場合、所望の物品(被取付物品)を、例えば磁力を用いて物品取付用部材40に取り付けることが可能である。合成樹脂製の板材も、物品取付用部材40として使用可能である。この場合、所望の物品(被取付物品)を、例えば粘着剤を用いて物品取付用部材40に取り付けることが可能である。
さらに、上述した実施形態の固定具1では、石膏ボード50からなる壁面50aについて説明したが、本発明はこれには限定されないことは言うまでもない。石膏ボード50以外の材料からなる壁面であっても、石膏ボード50と同様に、ネジや釘を用いた物品の取付が困難な壁面であれば、本発明は適用可能である。
さらに、上述した実施形態では、固定具1を壁面50aに固定するために釘20が使用されているが、本発明はこれには限定されない。釘20に代えて、ピンを使用してもよい。辞書によれば、釘は、「一端をとがらせた金属や竹・木などの細い棒。打ち込んで物と物とを接合・固定したり、物を掛けたりするのに用いる。」とされている
(https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E9%87%98/ 参照)。これに対し、ピンは、「つき刺したりはさんだりして、物を留める道具。虫ピン・ネクタイピン・ヘアピン・安全ピンなど。」とされている(https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E3%83%94%E3%83%B3/#jn-189018 参照)。従って、釘もピンも、物を固定するための道具である点で共通しているが、釘は、ある程度重量の大きい物を固定するのに適しているものを指すと解され、ピンは、釘の使用対象よりも軽量の物を固定するのに適しているものを指すと解されるから、両者はその点で相違していると言うことができる。しかし、要は、固定具1のガイド孔14a又は15aに挿通されて壁面50aに押し込まれることが可能であり、それによって、固定具1を壁面50aに固定できるものであれば足りるから、その要件を満たすものであれば、「釘」又は「ピン」のいずれの呼称に該当するかにかかわらず、本発明に適用可能である。