JP7287925B2

JP7287925B2 - 抗菌性を有する水解性トイレットロール

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Publication number: JP7287925B2
Application number: JP2020135371A
Authority: JP
Inventors: 賢弥谷川; 秀太保井
Original assignee: Daio Paper Corp
Current assignee: Daio Paper Corp
Priority date: 2020-08-07
Filing date: 2020-08-07
Publication date: 2023-06-06
Anticipated expiration: 2040-08-07
Also published as: EP4018896A1; EP4018896A4; WO2022030393A1; CN114401655A; US20220354315A1; JP2022031007A

Description

本発明は、抗菌性を有する水解性トイレットロールに関する。

昨今、日常生活において、抗菌に対する意識が高まっており、一部の敏感な使用者は、トイレットペーパー自体に抗菌性を求めている。また、温水便座の普及に伴い、使用時に水で破れないように、積層枚数が多いトイレットペーパーが求められる傾向にある。

トイレットロールに抗菌性を持たせるために、紙管やロール端部に抗菌剤をスプレー噴霧する方法等があるが、抗菌効果が持続しなかったり、抗菌剤の付着量が限られており、効果が望めないことがある。
逆に、付着量が多いと、ロールの端部が弛んだり、紙同士が付着し、不具合が生じることがある。トイレットペーパー表面に抗菌剤を塗布する方法は、トイレットペーパーの品質を大きく損なうことがある。

また、キッチンペーパーやトイレットペーパー等のシート製品は、エンボス加工等で接着されることがあるが、エンボス加工凸部に接着剤としてカルボキシメチルセルロース（ＣＭＣ）又はポリビニルアルコール（ＰＶＡ）を使い、糊付けされるものが、特許文献1で提案されている。

特許４４２０８７２号公報

抗菌に対する意識の高まりから、トイレットペーパーに抗菌剤を入れることが使用者から望まれているが、抗菌性と水解性の両方を有するトイレットペーパーの開発はあまり進んでいなかった。

そこで本発明の主たる課題は、使用時に抗菌効果が発揮され、柔らかく、水解性が十分得られる、トイレットロールを提供することにある。

上記課題を解決した吸収性物品は以下のとおりである。
３枚又は４枚のシート層が積層されロール状に巻回されたものであり、
各シートの坪量が１０．０～１８．０ｇ／ｍ^２であり、
各シートの紙厚が６０～１７０μｍであり、
トイレットロールの外側シート及び中間シートが共に、ロールの外側からエンボスされた多数の大きい第１のシングルエンボスが形成され、
トイレットロールの内側シートに小さい第２のエンボスが形成され、
前記内側シートと対面する前記中間シートとの間が、前記第１のシングルエンボスの凸部の接合点においてのみ接着剤により接合され、かつ前記接合点はトイレットロールの前記内側シートと前記中間シートとの間のみであり、
前記第１のシングルエンボスが占める面積が１ｍ ^２当たり２．５～３０％であり、
前記接着剤はポリビニルアルコールであり、かつ、前記接着剤中に塩化ベンザルコニウムが含まれている、
ことを特徴とするトイレットロール。

本発明によれば、使用時に抗菌性が発揮され、複数枚のシート層からなる、水解性を有するトイレットロールを提供するものとなる。

本発明に係るトイレットペーパーの平面図である。本発明に係るトイレットペーパーの接合用エンボス加工部分の断面図である。本発明に係るトイレットペーパーの製造工程を示す概略図である。本発明に係るトイレットペーパーの製造工程のうち、ラミネートエンボス加工を示す概略図である。

以下、本発明に係る抗菌剤を含む水溶性接着剤で接着されたトイレットロールにおけるトイレットペーパーについて、添付図面を参照しつつ詳説する。図２及び４は、４プライのトイレットペーパーについて示すが、これに限定されることはなく、本発明は、３プライ、２プライのトイレットペーパーにも適用可能である。
特に、体液中の水分又は温水便座による洗浄水との接触により、破断を防止して抗菌性を確実に発揮するためには、３プライ又は４プライのトイレットペーパー（トイレットロール）であるのが望ましい。

製品の坪量をプライ数で割った各シートの坪量は１０．０～１８．０ｇ／ｍ^２、特に１２．０～１６．０ｇ／ｍ^２、製品の紙厚をプライ数で割った各シートの紙厚は６０～１７０μｍ、特に８０～１４０μｍであるのが望ましい。
坪量及び紙厚が過度に低いものであると、特に水分の接触により破断しやすく、坪量及び紙厚が過度に高いものであると、コスト高となるほか柔軟性を損なう。

ここでの坪量とは、ＪＩＳＰ８１２４（１９９８）の米坪測定方法によるものであり、紙厚とは、ＪＩＳＰ８１１１（１９９８）の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ（厚み測定器）「ＰＥＡＣＯＣＫＨ型」（尾崎製作所製）を用いて５回測定した平均値をいう。また、米坪、紙厚は多プライのまま測定する。

少なくとも一つの隣接するシート間、後述するように、好適には一つの隣接するシート間のみで、多数の接合点において接着剤により接合され、前記接着剤はポリビニルアルコールであり、かつ、前記接着剤中に塩化ベンザルコニウムが含まれている。

ポリビニルアルコールは水溶性接着剤である。この接着剤には抗菌剤としての塩化ベンザルコニウムが含まれている。
使用時に水や排泄物から出た体液中の水分（あるいは温水便座用の温水分）がシート内部に浸透し、抗菌剤を含む水溶性接着剤と接し、水溶性接着剤の一部が溶け出し、接着剤中の抗菌剤と接することで、抗菌効果を発揮し、菌が手に移ることを防ぐことができる。

一般的にトイレットペーパーの接着剤として、材料的に柔軟である観点からカルボキシメチルセルロース（ＣＭＣ）が使用される。
しかるに、抗菌剤として安全で抗菌効果が高い塩化ベンザルコニウムを混ぜると、ＣＭＣが凝集し、接着性を失う傾向にあり、また、この接着剤を転写塗布方式によりシートに転写しようとする場合、粘度低下により転写量が減る、あるいはピックアップできない事態を招き、積層の操業に支障が生じることが知見された。

これに対し、カルボキシメチルセルロースの代わりに、ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）を使うと、塩化ベンザルコニウムによる接着剤の凝集は生じないことを知見した。
その反面、ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）は、カルボキシメチルセルロースと比較して接着剤の材料として固いものであり、その結果、積層シートの柔軟性を損なうと考えられた。
しかし、隣接するシート間を全面接合するのではなく、多数の接合点において、好適には一つの隣接するシート間のみにおける多数の接合点において、接着剤により接合する構成によれば、積層シートの柔軟性が損なわれることはないことが知見された。

この観点からも、糊付けに関わるエンボス加工ＥＬが占める面積としては、１ｍ^２当たり、２．５～３０％、特に５～１５％が望ましい。面積割合が小さいと図案として現出しかね、また過度に大きいと過剰な図案となり、商品デザインとして望ましくないものとなる。しかも、エンボスが占める面積が大きいと、接着剤の使用量が多くなりポリビニルアルコール（ＰＶＡ）による固さが顕在化してしまう。

他方、接着剤の濃度を調整し、ＣＭＣなどの場合、例えば０．０６５～０．０８％程度（固形分比率換算）が考えられるところ、ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）の場合、例えば０．０４～０．０６％程度（固形分比率換算）と濃度を低くして、一つの接合点について、ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）の適用量を低くすることで、積層シートの柔軟性が損なわれることはないことが知見された。
ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）の適用量を低くしても、接着強度が十分であり、プライ離れが生じることがないことが知見された。

実施の形態のトイレットペーパーは、十分な水解性を示す。例えば、１０５℃の絶乾状態の乾燥機中に１０分間熱風乾燥した後の、ＪＩＳＰ４５０１に基づく水解性が８０秒以内であるのが望ましい。
これは、単位面積当たりの接着剤の使用量が多くなく、かつ、接着剤による接合点（面積率）が小さいためでもある。

実施の形態として、抗菌剤としての、５０％塩化ベンザルコニウム溶液（有姿）は７倍希釈した２５％ポリビニルアルコール（７倍希釈、実質３．６％）に対して、１．２～１７．８質量％、特に３．６～１４．４質量％含むのが望ましい。

塩化ベンザルコニウムの量が少ないと、水分との接触によるポリビニルアルコールの溶出量に限度がある結果、塩化ベンザルコニウムの抗菌効果が発現しにくい。塩化ベンザルコニウムの量が多いと、塩化ベンザルコニウムを含む接着剤の粘性が低下し、接着性が低下する。

塩化ベンザルコニウムを含有したポリビニルアルコール接着剤のｐＨは６．０～７．０で管理するのが望ましい。そして、接着剤を適宜の希釈率（例えば希釈率として、接着剤：水＝１：５～１：９、比率で例えば１０～１７％）で希釈し、ｐＨを例えば５．０～６．０（弱酸性）に調整すると、ポリビニルアルコール接着剤は十分な接着性を発揮し、ラミネートの操業に適した例えば、粘度８．０～１４．８（ｍＰａ・ｓ）、望ましくは粘度８．８～１１．８（ｍＰａ・ｓ）とすることができる。

この観点とともに、そもそもポリビニルアルコール（ＰＶＡ）接着剤は、塩化ベンザルコニウムを配合しても接着性を失わず、粘性も大きく変化しない。したがって、安定した操業が可能となる。これはポリビニルアルコールの負に帯電する－ＯＨ（水酸基）が、カルボキシメチルセルロースの－ＯＨ基よりも少なく、塩化ベンザルコニウムよりも凝集しずらく、接着性や粘度を低下させることがないためと考えられる。

トイレットペーパーの単位質量に対して、塩化ベンザルコニウムの付与量は０．０１～０．１質量％とするのが望ましい。人体への安全性を保ちながら、抗菌効果を発揮でき、かつ、粘度が維持され、接着性を発揮するうえで望ましい付与量である。

積層プライのトイレットペーパーに対するラミネート接着剤（ポリビニルアルコール）の付与量は、０．０２～０．１０％（固形分換算）、特に０．０４～０．０６質量％（固形分換算）が望ましい。付与量が少ないと、プライ離れが生じやすいばかりでなく、抗菌効果が十分でなくなるおそれがある。付与量が多いと、得られるシートの柔軟性を損なう。

抗菌剤として塩化ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの第４級アンモニウム塩、その他に、例えばピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、イソキノリニウム塩などの抗菌性のあるカチオン界面活性剤を使用することができる。

前述のように、トイレットペーパーの冷水抽出ｐＨ値は６．０～８．０となるよう管理するのが望ましい。
トイレットペーパーの冷水抽出ｐＨ値の測定方法は、ＪＩＳＰ８１３３－１９９８７．２冷水抽出法により測定できる。
冷水抽出法によるｐＨが６．０以上、８．０以下が適正なｐＨの範囲であり、好適である。接着剤のｐＨが６．０～７．０であるとき、塩化ベンザルコニウムを含む接着剤の粘着性や接着機能が適正に保たれる。
このとき多層のトイレットペーパーに塩化ベンザルコニウムを含む接着剤を適用したときの冷水抽出ｐＨは６．０～８．０となり、抗菌効果と接着剤の接着機能がバランスよく保持された、多層ラミネートトイレットペーパーが可能となる。

最も内側のシートはマイクロエンボスがついており、隣接するシートのエンボスと接着されるのが望ましい。
前記接着剤の塗布量は、製品重量に対し、０．０２～０．１０％（固形分換算）、特に０．０４～０．０６質量％（固形分換算）であるのが望ましい。

全エンボスの凸部の面積率が１５．０～２５．０％が望ましい。
エンボス凸部のうち、接着剤（ポリビニルアルコール）が塗布されている大きい（深い）エンボス部分の面積率が１０．０～１５．０％であるのが望ましい。マイクロエンボスの面積率が５．０～１０．０％であるのが望ましい。
エンボスはデザイン性を高めるほか、製品トイレットペーパーに柔軟性を与える。また、エンボスによるプライ間の空間が形成される結果、水解性にも影響を与える。

エンボスは意匠性、嵩高性、柔らかさ、表面の滑らかさの向上のために紙面の広範に付与されるものであり、コンタクトエンボス加工等のプライ圧着におけるエンボス加工とは異なる技術である。

エンボス加工によって付与された凹凸のパターンによる柄等の意匠、凹部の深さ（エンボス深さ）、凹部の密度（エンボス密度）、個々の凹部の平面形状、凹部の総面積（エンボス付与面積）は、意匠性、嵩高性、柔らかさの向上性、表面の滑らかさを考慮して、適宜定められるものであり、必ずしも限定されるものではないが、本実施形態では、プライ圧着された２～３プライの積層連続シートにエンボス加工を行うとともに、後段で１～２プライの積層連続シートと積層接着するため、接着性と意匠性と嵩高性との観点から、凹部の深さは、０．０５～２．０ｍｍ、一つの凹部の底面面積は０．３～５．０ｍｍ^２、エンボス面積率５．０～１５％、エンボス密度３～２５個／ｃｍ²とするのが望ましい。もちろん、異なる複数種の凹部の形状があってよい。

ここで、エンボス密度は、１０ｃｍ×１０ｃｍの範囲のエンボスの個数を数えて１ｃｍ×１ｃｍあたりに換算した値である。なお、１０ｃｍ×１０ｃｍの範囲５個所の平均値とする。エンボス面積率は、１０ｃｍ×１０ｃｍの範囲で測定する。
そして、その範囲内における凹部の個数に凹部の底面面積を乗じたエンボス総面積の割合をエンボス面積率とする。エンボス密度と同様に、１０ｃｍ×１０ｃｍの範囲５個所の平均値とする。
凹部の底面面積は、株式会社キーエンス社製ワンショット３Ｄ測定マクロスコープＶＲ－３２００又はその相当機と、画像解析ソフトウェア「ＶＲ－Ｈ２Ａ」により測定する。なお、凹部の底面面積は、設計上の同一形状の凹部５つの平均値とする。凹部の深さは、株式会社キーエンス社製ワンショット３Ｄ測定マクロスコープＶＲ－３２００又はその相当機と、画像解析ソフトウェア「ＶＲ－Ｈ２Ａ」又はその相当ソフトウェアにより測定する。測定は、倍率１２倍、視野面積２４ｍｍ×１８ｍｍの条件で測定する。但し、倍率と視野面積は、凹部の大きさによって、適宜変更することができる。具体的な測定手順は、上記ソフトウェア等を用いて、平面視点で示される画像部中の一つのエンボスの周縁の最長部を横切る線分におけるエンボス深さ（測定断面曲線）プロファイルを得る。このエンボス深さプロファイルの断面曲線からλｃ：８００μｍ（但し、λcはＪＩＳ－Ｂ０６０１「３.１.１.２」に記載の「粗さ成分とうねり成分との境界を定義するフィルタ」）より短波長の表面粗さの成分を低域フィルタによって除去して得られる断面視点で示される画像部の輪郭曲線のうち、上に凸で最も曲がりが強くなる２つの凹部エッジ点と、凹部エッジ点で挟まれる最小値を求め、深さの最小値Ｍｉｎとする。さらに、凹部エッジ点の深さの値の平均値を深さの最大値Ｍａｘとする。このようにして、エンボス深さ＝最大値Ｍａｘ－最小値Ｍｉｎとする。又、凹部エッジ点の平面上の距離（長さ）を最長部の長さと規定する。上記の上に凸で最も曲がりが強くなる２つの凹部エッジ点は目視にて選択する。なお、その選択にあたっては、当該測定中の凹部の平面視点の画像中の輪郭を参考としてもよい。同様にして、最長部に垂直な方向での最短部についてもエンボス（凹部）の深さを測定し、大きい方の値をエンボス（凹部）の深さとして採用する。以上の測定を、表面の任意の１０個のエンボスについて行い、その平均値を凹部の深さとする。

（トイレットペーパー又はトイレットロールの構造例）
トイレットペーパーの各プライは積層されてトイレットロールとされる。
そして、少なくとも一つの隣接するシート間が多数の接合点において接着剤により接合される。
図２は、４プライのトイレットペーパーの構造を示す。トイレットロールの外側をＯＵＴ、トイレットロールの内側をＩＮとして図示してある。実施の形態では、外側ＯＵＴから３プライ１、２、３は、これらには一体で大きな（深い）エンボス加工が施されており、外側ＯＵＴに凹部７、内側ＩＮに凸部８が形成されている。
外側ＯＵＴから３番目のプライ３の内側と、内側ＩＮのプライ４とは、接着剤１０により接合されている。
この接着剤１０がポリビニルアルコールとされ、かつ、接着剤１０中に塩化ベンザルコニウムが含まれている。

実施の形態では、２つのエンボス加工ＥＬ及びＥＳが形成されている。すなわちプライ１、２、３に対して大きい（深い）エンボス加工ＥＬがなされ、積層されることにより、各プライ間の剥離が抑制され、プライ４には小さい（マイクロ）エンボス加工ＥＳがなされ、プライ３とプライ４とが接着剤１０により接合され、一体化される。

必要により、プライ１、２、３の少なくともプライ間を接合点をもって接着剤により接合することができるが、一つのプライ間での接着剤による接合が望ましい。通常は、プライ１、２、３はエンボス加工ＥＳでプライ離れが防止できる。必要により、プライ１、２、３に対して、あるいはプライ４も含めて、望ましくはトイレットロールとしたときの両サイド部分にコンタクトエンボス加工に適用してプライ離れを防止できる。

ここで、接着剤１０中には、インキ等を配合して着色されたものでもよい。接着剤１０を着色されたものとすると、エンボス加工による接着部（接合部）が着色され、例えば図１の柄が表れ、これを視認可能となりデザイン性が向上する。

（抗菌物質入り接着剤について）
抗菌剤として各種の界面活性剤が知られており、その中で強い抗菌性を示すものが塩化ベンザルコニウムに代表される第４級アンモニウム塩であり、家庭や医療現場で広く殺菌に使われている。塩化ベンザルコニウムは、カチオン界面活性剤であり、抗菌作用が強い上に、無臭で水溶性が大きく、低刺激であるという長所がある。このため、塩化ベンザルコニウムのみに限定されることはなく、同じ第４級アンモニウム塩である塩化ベンゼトニウムや、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、イソキノリニウム塩などの抗菌性のあるカチオン界面活性剤を使用することができる。

（抗菌剤入り接着剤の塗布方法）
原紙の繊維原料は、特に限定されないが、トイレットペーパーに用いられる適宜の原料パルプを選択して使用することができる。好ましくは、ＮＢＫＰ（針葉樹クラフトパルプ）とＬＢＫＰ（広葉樹クラフトパルプ）とを適宜に割合で配合したものが挙げられる。
その場合の配合割合（ＪＩＳＰ８１２０）は、ＮＢＫＰ：ＬＢＫＰ＝２０：８０～８０：２０がよく、特に、ＮＢＫＰ：ＬＢＫＰ＝３０：７０～６０：４０が望ましい。

紙料に添加する薬品例としては、上記乾燥紙力増強剤、柔軟剤、一過性湿潤紙力増強剤を適宜添加できる。

図３及び図４に、４プライのトイレットペーパーの例を示す。４つの原反ロール１２から、送られてきた４プライの連続シートが、３プライのシート層３Ｐと１プライのシート１Ｐに分かれて、ラミネートエンボス設備１３に入る。３プライのシート層３Ｐは、ラバーロール１７とエンボスロール１８の間でエンボス加工によるエンボス７，８が施される。続いて、アニロックスロール１５から供給され、版１６の全面に塗られた抗菌剤を含む接着剤１０が、３プライのシート層３Ｐに形成された凸部８先端に塗布され、マリッジロール２１へ送られる。
一方、１プライのシート１Ｐは、ラバーロール１９とエンボスロール２０の間でマイクロエンボス加工４が施され、マリッジロール２１へ送られる。そして、マリッジロール２１で、３プライのシート層３に塗布された抗菌剤入り接着剤により１プライのシート４が、ラミネート接着され、４プライになる。４プライのトイレットペーパー４Ｐは、リワインダー１４で巻き取られる。
３プライの場合には、２プライと１プライとの組み合わせになるだけで、同様の製造方法によって製造できる。

（トイレットペーパーの実施例）
第１の例は、複数枚のシート層からなるトイレットペーパーについてであり、一つのシート間の多数点で、抗菌剤を含む水溶性接着剤で接着されているものである。実施例で説明すると、４プライの坪量１４．６ｇ/ｍ^２、紙厚３９５μｍである。

接着剤としてポリビニルアルコールを使用し、塩化ベンザルコニウムを添加し、かつ着色剤も添加した。
塩化ベンザルコニウム含むポリビニルアルコールをｐＨ５．０～８．０で管理し、接着剤の塗布時に希釈率１：６で希釈し、ｐＨを５．０～６．０の弱酸性に調整をして、使用した。
その結果、ポリビニルアルコールは接着性を維持し、ラミネート操業に適した粘度１０．３ｍＰａ・ｓとなった。一度調整したｐＨは、時間が経っても大きな変化は見られず、ｐＨ７．０以下の接着剤は粘度があり、図３及び図４の形態で、トイレットペーパーシートに安定して塗布することができた。

（抗菌剤配合率によるｐＨ変化）
表１は、有効成分２５％のポリビニルアルコール（１３０Ｍ、ｐＨ５．９７）を７倍希釈したものに対して、５０％塩化ベンザルコニウム（カチオンＧ－５０、三洋化成工業社製、ｐＨ＝９．０）の配合割合を変化させた場合の、経時的なｐＨ変化を示す。

理論上、ｐＨ７．０以下であれば粘度があるとされるため、ｐＨが９．０の塩化ベンザルコニウムの抗菌剤が０．２０％以上では、粘度が下がり塗布するのに適していないことが分かった。

（抗菌剤配合率によるｐＨ変化）
表２は、有効成分２５％のポリビニルアルコール（１３０Ｍ、ｐＨ５．９７）を７倍希釈したものに対して、５０％塩化ベンザルコニウム（カチオンＦ２－５０Ｒ、ｐＨ＝７）の配合割合を変化させた場合の、ｐＨ値、粘度の測定結果を示す。

ｐＨが７．０の塩化ベンザルコニウムの添加割合を１０％まで増やしても、粘度が下がらなかったことから、ｐＨが７．０の塩化ベンザルコニウム溶液であれば、粘度が下がらず、問題ないことが分かった。

（ＣＭＣとＰＶＡの柔らかさ等比較）
表３は、ＴＳＡ（日本ルフト社販売「ｅｍｔｅｃＴＳＡ」）によるトイレットペーパーの柔らかさ等を測定した結果を示す。
ＨＦ：手触りのパラメーター。数値が高いほど手触りが良い。
ＴＳ７：柔らかさのパラメーター。数値が低いほど柔らかい。
ＴＳ７５０：滑らかさのパラメーター。数値が低いほど滑らか。
Ｄ：剛性のパラメーター。数値が低いほど硬い。

接着剤にカルボキシメチルセルロース（ＣＭＣ）を使った場合と、ポリビニルアルコール（ＰＶＡ）を使った場合に、紙質の差は見られなかった。ポリビニルアルコールも手触りや肌触りがカルボキシメチルセルロースを使った場合と同程度維持される。

（ＣＭＣとＰＶＡの水解性比較）
表４は、トイレットペーパーが水に溶けるまでの時間を測定した結果を示す。

ポリビニルアルコールを４プライのトイレットペーパーに使った場合、接着剤にカルボキシメチルセルロースを使った３プライ及び４プライのトイレットペーパーよりも、水に溶けるまでの時間は早かった。水解性は若干ポリビニルアルコールの方が良いものとなった。

（抗菌試験）
表５は、シャーレ内で大腸菌、黄色ブドウ球菌及び白色カンジダ菌のそれぞれの培養液０．１ｍＬに２０ｍｍ×３０ｍｍのサンプル紙片を浸し、その培養液を５ｍＬのＰＢＳで懸濁後、１．０ｍＬを取り、シャーレで培養し、菌のコロニー数を数えた結果を示す。試験は３回繰り返し、抗菌率を計算した。対照は、サンプル紙片を浸さない培養液とした。

抗菌試験結果は、１００のコロニー中菌の繁殖を抑制したコロニー数を示す。コロニーの繁殖を５０以上抑制していれば抗菌効果があり、９０以上抑制していれば強い抗菌効果があるものとされる。
ポリビニルアルコールを使ったサンプル紙片は、塩化ベンザルコニウムがサンプル紙片の質量に対して０．０５％含まれている時、大腸菌及び黄色ブドウ球菌のコロニーを５０以上抗菌した。塩化ベンザルコニウムがサンプル紙片の質量に対して０．０８、０．１０％含まれている時も、大腸菌、黄色ブドウ球菌及び白色カンジダ菌のコロニーを５０以上抗菌したため、抗菌効果が認められた。その中でも、塩化ベンザルコニウムがサンプル紙片の質量に対して０．１０％含まれた実施例３では、大腸菌に対して強い抗菌効果が認められるものであった。

上記実施例を総合的に判断すると、塩化ベンザルコニウム抗菌剤を接着剤に添加しても、接着剤機能を十分に発揮したトイレットペーパー又はトイレットロールを安定して製造できることが確認できた。

本発明は、３プライ又は４プライのトイレットペーパー又はトイレットロールに抗菌性を付与できるものである。

１、２、３、４…プライ、７，８…エンボス、１０…接着剤、１３…ラミネートエンボス設備、ＯＵＴ…ロール外側、ＩＮ…ロール内側、ＥＬ…大きいエンボス、ＥＳ…小さいエンボス。

Claims

３枚又は４枚のシート層が積層されロール状に巻回されたものであり、
各シートの坪量が１０．０～１８．０ｇ／ｍ^２であり、
各シートの紙厚が６０～１７０μｍであり、
トイレットロールの外側シート及び中間シートが共に、ロールの外側からエンボスされた多数の大きい第１のシングルエンボスが形成され、
トイレットロールの内側シートに小さい第２のエンボスが形成され、
前記内側シートと対面する前記中間シートとの間が、前記第１のシングルエンボスの凸部の接合点においてのみ接着剤により接合され、かつ前記接合点はトイレットロールの前記内側シートと前記中間シートとの間のみであり、
前記第１のシングルエンボスが占める面積が１ｍ ^２当たり２．５～３０％であり、
前記接着剤はポリビニルアルコールであり、かつ、前記接着剤中に塩化ベンザルコニウムが含まれている、
ことを特徴とするトイレットロール。
塩化ベンザルコニウムがポリビニルアルコールに対して、１．２～１７．８質量％を含んでいる請求項１記載のトイレットロール。
前記接着剤は、積層シートに対して０．０２～０．０８質量％のポリビニルアルコールを含んでいる請求項２記載のトイレットロール。