JP7282596B2 - フェノール樹脂発泡体組成物及びフェノール樹脂発泡体 - Google Patents

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Description

本発明は、フェノール樹脂発泡体組成物、及びこのフェノール樹脂発泡体組成物からなるフェノール樹脂発泡体に関する。
フェノール樹脂発泡体は、断熱性、難燃性に優れており、建築材の断熱用途に広く使用されている。とくに、レゾール型フェノール樹脂を原料とする酸硬化型フェノール樹脂発泡体は、上記要求特性がより優れていることから、内壁材、外壁材、天井材等、様々な用途で使用されている。
フェノール樹脂発泡体は、一般的には、レゾール型フェノール樹脂、発泡剤及び酸硬化剤を含むフェノール樹脂発泡体組成物を、合成繊維からなる不織布や織布もしくは各種紙製品等からなる面材で挟んだ状態で発泡、硬化させることによって製造される。
このようにして製造されるフェノール樹脂発泡体では、使用される用途に応じて、様々な特性が要求され、その要求される特性に応じて、様々の添加剤を加えたフェノール樹脂発泡体組成物やフェノール樹脂発泡体が各種提案されている。
例えば、特許文献1には、「液体状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤及び酸硬化剤を含む発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料において、添加剤として塩化アンモニウム及び/又は硝酸アンモニウムが混合され、さらに含窒素架橋型環式化合物が混合されている発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。」が提案されている。
この技術は、フェノール樹脂成形材料に塩化アンモニウムや硝酸アンモニウムとともに含窒素架橋型環式化合物を含有させることによって、樹脂硬化時に脱水縮合反応による収縮が発生することを抑制し、面材と樹脂部分との剥離を防止することを目的として開発されている。
特許文献2では、「密度が15kg/m2以上50kg/m2以下、独立気泡率が70%以上の範囲にあり、炭化水素及びフタル酸系化合物を含有するフェノール樹脂発泡体の少なくとも上下面に面材が配されたフェノール樹脂発泡体積層板であって、前記面材が可撓性面材であり、前記面材を剥離した母材の平滑評価レベルが1.0mm以下であるフェノール樹脂発泡体積層板。」が提案されている。
この技術では、可撓性のある面材を用いてフェノール樹脂発泡体積層板を製造する際に、フタル酸系化合物のような可塑剤を使用した場合に、フェノール樹脂の発泡性を抑制しきれずに面材を剥離した後の母材(発泡体)表面が平滑にならないという問題を解決するために、フェノール樹脂発泡体の製造時に発泡核剤を含有させることによって、フェノール樹脂発泡体の表面平滑性を良好にしている。
この技術で用いる発泡核剤としては、窒素、ヘリウム、アルゴン、空気等、発泡剤よりも50℃以上低い低沸点物質や、水酸化アルミニウム粉、酸化アルミニウム粉、炭酸カルシウム粉、タルク、はくとう土(カオリン)、珪石粉、珪砂、マイカ、珪酸カルシウム粉等の固体状物質が例示されている。
一方、特許文献3では、「液体状レゾール型フェノール樹脂、発泡剤、整泡剤及び酸硬化剤と共に、金属炭酸塩を含み、且つ金属炭酸塩が、400~2000cm2の範囲内の比表面積を有している一方、前記発泡剤が、イソプロピルクロライドとノルマルペンタン及び/ 又はイソペンタンとの混合物であることを特徴とする発泡性レゾール型フェノール樹脂成形材料。」が提案されている。
この技術では、液体状レゾール型フェノール樹脂を硬化するための酸硬化剤が水で抽出されると、発泡体近傍に存在する金属部材が腐食しやすいという問題を解決するために、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛等の金属炭酸塩をフェノール樹脂成形材料に含有させて、フェノール樹脂発泡体のpHの上昇を図っている。
またこの技術では、フェノール樹脂発泡体のアルデヒド放散量を抑制すると共に、強度を増大させ、且つ脆性を減少させるという観点から、尿素のような有機含有アミノ酸を加えることも提案されている。
特許第5588109号公報 特許第5795410号公報 特許第5400485号公報
建築材の断熱材用途として用いられるフェノール樹脂発泡体は、基本的な要求特性は、断熱性、難燃性に優れていることである。このうち難燃性については、レゾール型フェノール樹脂を用いることによって、優れた難燃性が実現できる。
これに対して、フェノール樹脂発泡体の断熱性に関しては、フェノール樹脂発泡体の独立気泡率、気泡の平均粒径等にも影響され、独立気泡率が高く、気泡の平均粒径(平均気泡径)が小さいほど、断熱性の評価基準となる熱伝導率を低くできることは知られている。しかしながら、いかにすればフェノール樹脂発泡体中の独立気泡率を高くでき、且つ平均気泡径を小さくできるかについては、様々な要因によって影響され、そのための技術は確立されているわけではない。又、フェノール樹脂発泡体では、独立気泡率が高く且つ平均気泡径が小さい領域が均一に形成されている必要がある。
これまで提案されているフェノール樹脂発泡体の技術は、用途に応じた要求特性を向上させるために、各種添加剤を加えている。上記特許文献1~3の技術では、用途に応じた要求特性を満足させるという観点からすれば極めて有用な技術である。
しかしながら、建築材の断熱材用途として用いられるフェノール樹脂発泡体として、その基本的な要求特性としての断熱性については、それほど改善されているとは言えないのが実情である。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、フェノール樹脂発泡体の気泡の分散状態を良好にし、優れた断熱性、難燃性を均一に発揮するフェノール樹脂発泡体を得ることのできるフェノール樹脂発泡体組成物、及びこのようなフェノール樹脂発泡体組成物からなるフェノール樹脂発泡体を提供することを目的とする。
本発明者は、フェノール樹脂発泡体の特性を改善すべく、その要件について様々な角度から鋭意検討した。その結果、フェノール樹脂発泡体組成物に、セルロースナノファイバーを含めて、下記の構成を有するフェノール樹脂発泡体組成物とすれば、フェノール樹脂発泡体の特性、特に断熱性の評価基準となる熱伝導率を低減することができ、上記課題が解決できることを見出し、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることによって本発明を完成した。
すなわち、本発明の一局面は、液体状レゾール型フェノール樹脂、界面活性剤、発泡剤、酸硬化剤及びセルロースナノファイバーを含むことを特徴とするフェノール樹脂発泡体組成物である。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体組成物において、前記セルロースナノファイバーの含有量は、液体状レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して0.1~2質量部であることが好ましい。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体組成物における必須の成分は上記の通りであるが、必要によって、更に、可塑剤、有機アミノ基含有化合物及び金属炭酸塩の少なくとも1種を含有することもできる。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体は、上記のようなフェノール樹脂発泡体組成物からなるフェノール樹脂発泡体であって、発泡体中の独立気泡率が90%以上であり、熱伝導率が0.019W/m・K以下であることを特徴とし、断熱性、難燃性に極めて優れたフェノール樹脂発泡体となる。
本発明のフェノール樹脂発泡体組成物によれば、優れた断熱性、難燃性を均一に発揮するフェノール樹脂発泡体が得られ、このようなフェノール樹脂発泡体は、建築材の断熱材用途に使用される素材として極めて有用である。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体組成物は、液体状レゾール型フェノール樹脂、界面活性剤、発泡剤、酸硬化剤及びセルロースナノファイバーを基本成分として含む。以下に夫々の成分について説明する。
[液体状レゾール型フェノール樹脂]
液体状レゾール型フェノール樹脂は、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシン等のフェノール類、若しくはそれらの誘導体と、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等のアルデヒド類とを原料とし、それらをアルカリ触媒下で反応して得られる。
液体状レゾール型フェノール樹脂は、発泡及び硬化させることによって、フェノール樹脂発泡体の骨格となる。フェノール樹脂を骨格とするフェノール樹脂発泡体は、その骨格となるフェノール樹脂の特性が反映され、耐熱性に極めて優れている。また強固な樹脂骨格が形成されることによって、発泡体の気泡中のガスが外気と入れ替わることに起因する経年劣化を抑制し、他の樹脂を用いた発泡体と比べて耐久性の点でも優れている。
[界面活性剤]
本実施形態のフェノール樹脂発泡体組成物に含有する界面活性剤は、フェノール樹脂発泡体を形成するときに通常用いられている界面活性剤を使用できる。例えば、ノニオン系界面活性剤として、ポリシロキサン系、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ヒマシ油エチレンオキサイド付加物等が非限定的に挙げられる。但し、本実施形態のフェノール樹脂発泡体組成物で用いる界面活性剤は、ノニオン系界面活性剤に限らず、アニオン系界面活性剤を用いることもできる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
界面活性剤は、発泡体の製造段階において気泡が潰れるのを抑制しつつ、均一な気泡を形成する作用を発揮すると考えられる。界面活性剤の含有量については、何ら限定するものではないが、液体状レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して、1~6質量部程度が好ましく、より好ましくは2~5質量部程度である。界面活性剤の含有量が、1質量部よりも少なくなると、上記効果が発揮されず、6質量部よりも過剰になるとフェノール樹脂発泡体の吸水性が高くなるとともに、製造コストが上昇する。
[発泡剤]
発泡剤は、構成成分として炭化水素を含む。炭化水素としては、炭素数が3~7の環状又は鎖状のアルカン、アルケン、アルキンが好ましく、具体的には、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、2,2-ジメチルブタン、2,3-ジメチルブタン、シクロヘキサン等を挙げることができる。その中でも、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン等のペンタン類及びノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン等のブタン類が好適に用いられる。これら炭化水素は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
又、塩素化脂肪族炭化水素等の塩素化炭化水素を使用することもできる。塩素化脂肪族炭化水素としては、炭素数が2~5の直鎖状または分岐状のものが用いられる。結合している塩素原子の数は限定されるものではないが、1~4が好ましく、例えばジクロロエタン、プロピルクロリド、イソプロピルクロリド、ブチルクロリド、イソブチルクロリド、ペンチルクロリド、イソペンチルクロリド等が挙げられる。これらのうち、クロロプロパンであるプロピルクロリド、イソプロピルクロリドがより好ましく用いられる。これら塩素化脂肪族炭化水素は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
更に、含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素を使用することもできる。含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素としては、フッ素化不飽和炭化水素(但し、フッ素原子以外のハロゲン原子を含まない。)、塩素化フッ素化不飽和炭化水素、臭素化フッ素化不飽和炭化水素、ヨウ素化フッ素化不飽和炭化水素等が挙げられる。これらの含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
含フッ素ハロゲン化不飽和炭化水素は、水素原子の全てがハロゲン原子で置換された不飽和炭化水素でもよいし、水素原子の一部がハロゲン原子で置換された不飽和炭化水素でもよい。
フッ素化不飽和炭化水素としては、分子内に炭素-炭素二重結合とフッ素原子と水素原子とを有するヒドロフルオロオレフィン(以下、「HFO」ともいう。)が挙げられる。HFOとしては、例えば、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)(E及びZ異性体)、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(HFO-1336mzz)(E及びZ異性体)(SynQuest Laboratories社製、製品番号:1300-3-Z6)等が挙げられる。
前記塩素化フッ素化不飽和炭化水素としては、分子内に炭素-炭素二重結合とフッ素原子と塩素原子と水素原子を有するヒドロクロロフルオロオレフィン(以下、「HCFO」ともいう。)、分子内に炭素-炭素二重結合とフッ素原子と塩素原子とを有し、水素原子を有しないクロロフルオロオレフィン等が挙げられる。HCFOとしては、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zd)(E及びZ異性体)、1-クロロ-2,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yd)(E及びZ異性体)、1-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233zb)(E及びZ異性体)、2-クロロ-1,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xe)(E及びZ異性体)、2-クロロ-2,2,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xc)、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233xf)、3-クロロ-1,2,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1233ye)(E及びZ異性体)、3-クロロ-1,1,2-トリフルオロプロペン(HCFO-1233yc)、3,3-ジクロロ-3-フルオロプロペン、1,2-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン(HCFO-1223xd)(E及びZ異性体)、及び2-クロロ-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(E及びZ異性体)等が挙げられる。クロロフルオロオレフィンとしては、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエテン(E及びZ異性体)、及び2-クロロ-1,1,1,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-2-ブテン(E及びZ異体体)等が挙げられる。
発泡剤は、発泡体の製造段階において気泡を形成すると考えられる。発泡剤の含有量については、その種類によっても異なり、何ら限定するものではないが、液体状レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して、5~15質量部程度が好ましく、より好ましくは8~12質量部程度である。発泡剤の含有量が、5質量部よりも少なくなると、上記効果が発揮されず、15質量部よりも過剰になると断熱性能が低下するとともに、製造コストが上昇する。
[酸硬化剤]
本実施形態のフェノール樹脂発泡体組成物で用いる酸硬化剤としては、液体状レゾール型フェノール樹脂を硬化できる酸性の硬化剤であればよい。例えば、硫酸、リン酸等の無機酸の他、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸、等が非限定的に挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸硬化剤の含有量については、その種類によっても異なり、何ら限定するものではないが、液体状レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して、5~25質量部程度が好ましく、より好ましくは10~20質量部程度である。酸硬化剤の含有量が、5質量部よりも少なくなると、液体状レゾール型フェノール樹脂の硬化が遅く、25質量部よりも過剰になると硬化が速くなり、均一な発泡体が得られない。
[セルロースナノファイバー]
セルロースナノファイバーは、セルロースを素材とした繊維状の形態を有する。その繊維径は、数nm~数百nm程度であり、繊維長は数百nm~数μm程度である。
セルロースナノファイバーは、多数の微細気泡を均一に分散させると考えられる。セルロースナノファイバーの含有量は、何ら限定するものではないが、液体状レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して、0.1~2質量部程度であることが好ましく、より好ましくは0.2~1質量部であり、更に好ましくは0.2~0.4質量部である。セルロースナノファイバーの含有量が、0.1質量部よりも少なくなると多数の微細気泡を均一に分散させることが困難となり、2質量部を超えて含有させても製造コストが高くなる。
セルロースナノファイバーの素材については、何ら限定するものではないが、例えばカルボキシメチル化したセルロースナノファイバーが好ましい例として挙げられる。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体組成物には、必要によって、可塑剤、有機アミノ基含有化合物及び金属炭酸塩の少なくとも1種を含有することもできる。
[可塑剤]
本実施形態のフェノール樹脂発泡体組成物で用いることのできる可塑剤としては、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジメチル等、従来から知られているフタル酸系化合物や、フタル酸とジエチレングリコールの反応生成物であるポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、併用してもよい。
可塑剤は、フェノール樹脂発泡体組成物における各原料の相溶性を良好にし、発泡体製造時の発泡効率を高めると考えられる。可塑剤を含有させるときの量については、何ら限定するものではないが、液体状レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して、0.01~5質量部程度であることが好ましい。可塑剤の含有量が、0.01質量部よりも少なくなると可塑化効果が発揮されにくくなり、5質量部を超えると発泡が過度に進行し得られる発泡体の強度が低下する。
[有機アミノ基含有化合物]
本実施形態のフェノール樹脂発泡体組成物で用いることのできる有機アミノ基含有化合物としては、代表的には尿素が挙げられる。有機アミノ基含有化合物は、フェノール樹脂発泡体からのホルムアルデヒド放散を抑制し、発泡体の強度を増大させると考えられる(前記特許文献3)。
こうした効果を発揮させるためには、有機アミノ基含有化合物の含有量は、液体状レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましい。しかしながら、有機アミノ基含有化合物の含有量が過剰になってもその効果が飽和するので、10質量部以下であることが好ましい。
[金属炭酸塩]
本実施形態のフェノール樹脂発泡体組成物においては、必要によって金属炭酸塩を含有させてもよい。この金属炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛等が挙げられる(前記特許文献3)。
フェノール樹脂発泡体中には酸硬化剤が含まれ、これが水で抽出されると、発泡体近傍に存在する金属部材が腐食しやすいという問題が生じる。こうした問題を解決するために、金属炭酸塩をフェノール樹脂発泡体組成物に含有させることによって、酸硬化剤と中和させてフェノール樹脂発泡体のpHの上昇を図り、発泡体近傍に存在する金属部材の腐食が進行することを防止できると考えられる。
金属炭酸塩を含有させるときの量については、何ら限定するものではないが、液体状レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して、1~5質量部程度であることが好ましい。金属炭酸塩の含有量が、1質量部よりも少なくなるとpH上昇効果が発揮されにくくなり、5質量部を超えても整泡を阻害し均一な発泡体が得られなくなる。
[フェノール樹脂発泡体]
フェノール樹脂発泡体組成物からフェノール樹脂発泡体を得るには、例えば次のような方法が採用できる。すなわち、送給コンベアの上方と下方に面材を連続的に供給し、両面材の間にフェノール樹脂発泡体組成物を挟み込んだ状態で加熱炉に導き、この加熱炉内でフェノール樹脂発泡体組成物を加熱しつつ発泡及び硬化させ、フェノール樹脂発泡体を得ることができる。また加熱炉内には、複数対の抑えローラが配置されており、この抑えローラによって面材の両外側から加圧され、過剰な発泡を抑えながら、フェノール樹脂発泡体の厚さを調整する。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体組成物からなるフェノール樹脂発泡体では、発泡体の独立気泡率が90%以上であり、熱伝導率が0.019W/m・K以下であるような優れた特性を発揮できる。特に、フェノール樹脂発泡体の熱伝導率を低くできることは、建築材の断熱用途にフェノール樹脂発泡体を使用したときに、素材厚さを薄く設計できるという特有の効果が発揮される。
上述したように、本発明の一局面は、液体状レゾール型フェノール樹脂、界面活性剤、発泡剤、酸硬化剤及びセルロースナノファイバーを含むことを特徴とするフェノール樹脂発泡体組成物である。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体組成物を用いることによって、優れた断熱性、難燃性を均一に発揮するフェノール樹脂発泡体が得られ、このようなフェノール樹脂発泡体は、建築材の断熱材用途に使用される素材として極めて有用である。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体組成物において、セルロースナノファイバーの含有量は、液体状レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して、0.1~2質量部であることが好ましい。
こうした要件を満足させることによって、フェノール樹脂発泡体における断熱性、難燃性等の特性がより有効に発現できる。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体組成物においては、必要によって、更に、可塑剤、有機アミノ基含有化合物及び金属炭酸塩の少なくとも1種を含有することも有用である。
これらの成分を含有させることによって、各成分に応じて、(a)フェノール樹脂発泡体組成物の各原料の相溶性を良好にする、(b)フェノール樹脂発泡体からのホルムアルデヒド放散を抑制し、発泡体の強度を増大させる、(c)フェノール樹脂発泡体のpHの上昇を図り、発泡体近傍に存在する金属部材の腐食が進行することを防止する、等の効果が発揮される。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体組成物からなるフェノール樹脂発泡体では、発泡体中の独立気泡率が90%以上であり、熱伝導率が0.019W/m・K(W:ワット、m:メートル、K:ケルビン)以下、であるような優れた特性を発揮できる。
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
なお、本実施例で使用した各成分の詳細は以下の通りである。
(1)液体状レゾール型フェノール樹脂:品番 PF-339(旭有機材工業株式会社製)
(2)界面活性剤:ヒマシ油エチレンオキサイド付加物(付加モル数30)
(3)酸硬化剤:パラトルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸の混合物
(4)セルロースナノファイバー
カルボキシメチル化したセルロースナノファイバー
(5)発泡核剤:微細SiO2粉(比較例2だけに添加)
(6)発泡剤:イソプロピルクロリドとイソペンタンの混合物
(7)可塑剤:フタル酸とジエチレングリコールをモル比1:2で反応してなるポリエステルポリオール
(8)有機アミノ基含有化合物(ホルムアルデヒドキャッチャー剤):尿素
(9)金属炭酸塩:炭酸カルシウム
これらの原料を用い、表1に示す割合(表中の成分の数値はすべて質量部を示す)で混合してフェノール樹脂発泡体組成物を調製し、これを一対の面材(パルプとガラスの混抄紙製)で挟みつつ発泡、硬化させて発泡体を作製した。
具体的には、液状レゾール型フェノール樹脂に、可塑剤としてフタル酸とジエチレングリコールをモル比1:2で反応してなるポリエステルポリオール、整泡剤(界面活性剤)としてヒマシ油エチレンオキサイド付加物(付加モル数30)、ホルムアルデヒドキャッチャー剤として尿素を加えて、全体を混合し、20℃で8時間放置した。
このフェノール樹脂混合物に対し、金属炭酸塩として炭酸カルシウム、発泡剤としてイソプロピルクロリドとイソペンタン(重量比で5.5:1)、酸硬化剤としてパラトルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸の混合物を攪拌機に供給し、全体を攪拌・混合して発泡性フェノール樹脂成形材料を調製した。
続いて、この成形材料を予め75℃に調整した型枠(W300×D300×H45mm
)に吐出し、これを75℃の乾燥機に入れ、樹脂温度が下がり始めるまで硬化させて成形
し、成型物を型枠から取り出した後85℃の乾燥機に入れ、4.5時間養生させてフェノール樹脂発泡体を作製した。
Figure 0007282596000001
上述のようにして得られた各フェノール樹脂発泡体(実施例1~3及び比較例1、2)について、以下の方法に従って、熱伝導率、独立気泡率、及び平均気泡径を測定した。なお、発泡体の独立気泡率については、断面厚さ方向の3分割した夫々の領域(上層、中層、下層)について測定した。
[熱伝導率]
フェノール樹脂発泡体の熱伝導率は、JIS A 1412-2に従い測定した。熱伝導率は、断熱性の評価基準となるものであり、熱伝導率の低い方が良好な断熱性を示していることを意味する。この熱伝導率が0.019W/m・K以下であれば、極めて優れた断熱性を示している。
[独立気泡率]
フェノール樹脂発泡体中の独立気泡率は、JIS K 7138:2006に従い測定した。このとき、フェノール樹脂発泡体の厚さ方向で3等分し、夫々の箇所(上層、中層、下層)で独立気泡率を測定し、その平均値も求めた。
[平均気泡径(セル径)]
平均気泡径は、下記の方法によって測定した。まずフェノール樹脂発泡体の厚さ方向のほぼ中央から試験片を切出した。試験片の厚さ方向の切断面を50倍拡大で撮影し、撮影された画像に、長さ9cmの直線を4本引いた。このとき、ボイド(2mm2以上の空隙)を避けるように直線を引いた。各直線が横切った気泡の数(JIS K6400-1:2004に準じて測定したセル数)を直線毎に計数し、直線1本当たりの平均値を求めた。気泡の数の平均値で1800μmを除し、求められた値を平均気泡径とした。
本実施形態のフェノール樹脂発泡体の平均気泡径は、200μm以下であり、50μm以上200μm以下が好ましく、50μm以上150μm以下がより好ましく、50μm以上130μm以下が更に好ましく、50μm以上115μm以下が最も好ましい。平均気泡径が上記範囲内であれば、フェノール樹脂発泡体の断熱性をより高められる。
該平均気泡径は、発泡剤の種類又は組成、界面活性剤の種類、発泡条件(加熱温度、加熱時間等)等の組み合わせにより調節される。
これらの評価結果を、表2に示す。
Figure 0007282596000002
この結果から次のように考察できる。すなわち、本発明で規定する要件を満足するフェノール樹脂発泡体組成物からなるフェノール樹脂発泡体(実施例1~3)は、どの領域においても90%以上の高い独立気泡率を達成しており、熱伝導率が0.019W/m・K以下であるような優れた特性を発揮していることが分かる。
これに対し、本発明で規定するいずれかの要件を満足しないフェノール樹脂発泡体組成物からなるフェノール樹脂発泡体(比較例1、2)では、いずれかの特性で劣っている。
具体的には、比較例1は、セルロースナノファイバーを含有しないフェノール樹脂発泡体組成物からなるフェノール樹脂発泡体は、各領域で独立発泡率が異なっており、その特性において均一となっていない。
比較例2は、微細SiO2を発泡核剤として含有させたフェノール樹脂発泡体組成物からなるフェノール樹脂発泡体であり、平均の独立気泡率が90%を満たしておらず、熱伝導率が0.020W/m・Kと高くなっている。

Claims (3)

  1. 液体状レゾール型フェノール樹脂、界面活性剤、発泡剤、酸硬化剤及びセルロースナノファイバーを含み、
    前記セルロースナノファイバーの含有量が、前記液体状レゾール型フェノール樹脂100質量部に対して0.1~0.4質量部であることを特徴とするフェノール樹脂発泡体組成物。
  2. 更に、可塑剤、有機アミノ基含有化合物及び金属炭酸塩の少なくとも1種を含有する請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体組成物。
  3. 請求項1または2に記載のフェノール樹脂発泡体組成物からなるフェノール樹脂発泡体であって、発泡体中の独立気泡率が90%以上であり、熱伝導率が0.019W/m・K以下であることを特徴とするフェノール樹脂発泡体。
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