以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1. 第1実施形態
1.1. 繊維体成形装置
1.1.1. 構成
まず、第1実施形態に係る繊維体成形装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、第1実施形態に係る繊維体成形装置100を模式的に示す図である。
繊維体成形装置100は、例えば、原料としての使用済みの古紙を乾式で解繊して繊維化した後、加圧、加熱、切断することによって、新しい紙を製造するのに好適な装置である。繊維体成形装置100では、紙の密度や厚さ、形状をコントロールして成形することで、A4やA3のオフィス用紙、名刺用紙など、用途に合わせて、さまざまな厚さ・サイズの紙を製造することができる。
繊維体成形装置100は、例えば、供給部10と、粗砕部12と、解繊部20と、選別部40と、第1ウェブ形成部45と、回転体49と、堆積部60と、第2ウェブ形成部70と、搬送部79と、シート形成部80と、切断部90と、を含む。
さらに、繊維体成形装置100は、例えば、原料に対する加湿、および原料が移動する空間を加湿する目的で、加湿部202,204,206,208,210,212を含む。
加湿部202,204,206,208は、例えば、気化式または温風気化式の加湿器で構成されている。すなわち、加湿部202,204,206,208は、水を浸潤させる図示しないフィルターを有し、フィルターに空気を通過させることにより、湿度を高めた加湿空気を供給する。加湿部202,204,206,208は、加湿空気の湿度を効果的に高める図示しないヒーターを備えてもよい。
加湿部210,212は、例えば、超音波式加湿器で構成されている。すなわち、加湿部210,212は、水を霧化する図示しない振動部を有し、振動部により発生するミストを供給する。
供給部10は、粗砕部12に原料を供給する。粗砕部12に供給される原料は、繊維を含むものであればよく、例えば、紙、パルプ、パルプシート、不織布、布、あるいは織物等が挙げられる。以下では、繊維体成形装置100が古紙を原料とする構成を例示する。供給部10は、例えば、古紙を重ねて蓄積するスタッカーと、スタッカーから古紙を粗砕部12に送り出す自動投入装置と、を有している。また、必ずしも古紙を整列させて重ねる必要はなく、種々のサイズの古紙や種々の形状の古紙をばらばらにスタッカーに供給してもよい。
粗砕部12は、供給部10によって供給された原料を粗砕刃14によって裁断して、粗砕片にする。粗砕刃14は、大気中等の気中で原料を裁断する。粗砕部12は、例えば、原料を挟んで裁断する一対の粗砕刃14と、粗砕刃14を回転させる駆動部と、を有し、いわゆるシュレッダーと同様の構成とすることができる。粗砕片の形状や大きさは、任意であり、解繊部20における解繊処理に適していればよい。粗砕部12は、原料を、例えば1cm~数cm四方またはそれ以下のサイズの紙片に裁断する。
粗砕部12は、粗砕刃14により裁断されて落下する粗砕片を受けるシュート9を有する。シュート9は、例えば、粗砕片が流れる方向において、徐々に幅が狭くなるテーパー形状を有する。そのため、シュート9は、多くの粗砕片を受けとめることができる。シュート9には、解繊部20に連通する管2が連結され、管2は、粗砕片を、解繊部20に搬送させるための搬送路を形成する。粗砕片は、シュート9により集められ、管2を通って解繊部20に搬送される。粗砕片は、例えば図示しないブロアーが発生する気流により、管2中を解繊部20に向けて搬送される。
粗砕部12が有するシュート9、あるいはシュート9の近傍には、加湿部202により加湿空気が供給される。これにより、粗砕刃14により裁断された粗砕物が、静電気によってシュート9や管2の内面に吸着する現象を抑制できる。また、粗砕刃14が裁断した粗砕物は、加湿された高湿度の空気とともに解繊部20に搬送されるので、解繊部20の内部における解繊物の付着を抑制する効果も期待できる。また、加湿部202は、粗砕刃14に加湿空気を供給して、供給部10が供給する原料を除電する構成としてもよい。また、加湿部202とともにイオナイザーを用いて除電してもよい。
解繊部20は、粗砕部12で裁断された粗砕物を解繊する。より具体的には、解繊部20は、粗砕部12によって裁断された原料を解繊処理し、解繊物を生成する。ここで、「解繊する」とは、複数の繊維が結着されてなる原料を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。解繊部20は、原料に付着した樹脂粒やインク、トナー、にじみ防止剤等の物質を
、繊維から分離させる機能を有する。
解繊部20を通過したものを解繊物という。解繊物には、解きほぐされた解繊物繊維の他に、繊維を解きほぐす際に繊維から分離した樹脂粒、すなわち複数の繊維同士を結着させるための樹脂粒や、インク、トナーなどの色材や、にじみ防止剤、紙力増強剤等の添加剤を含んでいる場合もある。解きほぐされた解繊物の形状は、ひも状や平ひも状である。解きほぐされた解繊物は、他の解きほぐされた繊維と絡み合っていない状態、すなわち独立した状態で存在してもよいし、他の解きほぐされた解繊物と絡み合って塊状となった状態、すなわちダマを形成している状態で存在してもよい。
解繊部20は、乾式で解繊を行う。ここで、液体中ではなく、大気中等の気中において、解繊等の処理を行うことを乾式と称する。解繊部20は、例えば、インペラーミルを用いて構成されている。具体的には、解繊部20は、図示しないが、高速回転するローターと、ローターの外周に位置するライナーと、を有している。粗砕部12で裁断された粗砕片は、解繊部20のローターとライナーとの間に挟まれて解繊される。解繊部20は、ローターの回転により気流を発生させる。この気流により、解繊部20は、原料である粗砕片を管2から吸引し、解繊物を排出口24へと搬送できる。解繊物は、排出口24から管3に送り出され、管3を介して選別部40に搬送される。
このように、解繊部20で生成される解繊物は、解繊部20が発生する気流により解繊部20から選別部40に搬送される。さらに、図示の例では、繊維体成形装置100は、気流発生装置である解繊ブロアー26を備え、解繊ブロアー26が発生する気流により解繊物が選別部40に搬送される。解繊ブロアー26は、管3に取り付けられ、解繊部20から解繊物とともに空気を吸引し、選別部40に送風する。
選別部40には、管3から解繊部20により解繊された解繊物が気流とともに流入する導入口42が設けられている。選別部40は、導入口42に導入する解繊物を、繊維の長さによって選別する。詳細には、選別部40は、解繊部20により解繊された解繊物のうち、予め定められたサイズ以下の解繊物を第1選別物とし、第1選別物より大きい解繊物を第2選別物として、選別する。第1選別物は、繊維または粒子等を含み、第2選別物は、例えば、大きい繊維、未解繊片、十分に解繊されていない粗砕片、解繊された繊維が凝集し、あるいは絡まったダマ等を含む。
選別部40は、例えば、ドラム部41と、ドラム部41を収容するハウジング部43と、を有している。
ドラム部41は、モーターによって回転駆動される円筒の篩である。ドラム部41は、網を有し、篩として機能する。この網の目により、ドラム部41は、網の目開きの大きさより小さい第1選別物と、網の目開きより大きい第2選別物と、を選別する。ドラム部41の網としては、例えば、金網、切れ目が入った金属板を引き延ばしたエキスパンドメタル、金属板にプレス機等で穴を形成したパンチングメタルを用いることができる。
導入口42に導入された解繊物は、気流とともにドラム部41の内部に送り込まれ、ドラム部41の回転によって第1選別物がドラム部41の網の目から下方に落下する。ドラム部41の網の目を通過できない第2選別物は、導入口42からドラム部41に流入する気流により流されて排出口44に導かれ、管8に送り出される。
管8は、ドラム部41の内部と管2とを連結する。管8を通って流される第2選別物は、粗砕部12により裁断された粗砕片とともに管2を流れ、解繊部20の導入口22に導かれる。これにより、第2選別物は解繊部20に戻されて、解繊処理される。
また、ドラム部41により選別される第1選別物は、ドラム部41の網の目を通って空気中に分散し、ドラム部41の下方に位置する第1ウェブ形成部45のメッシュベルト46に向けて降下する。
第1ウェブ形成部45は、メッシュベルト46と、ローラー47と、吸引部48と、を有している。メッシュベルト46は、無端形状のベルトであって、3つのローラー47に懸架され、ローラー47の動きにより、図中矢印で示す方向に搬送される。メッシュベルト46の表面は、所定サイズの開口が並ぶ網で構成される。選別部40から降下する第1選別物のうち、網の目を通過するサイズの微粒子は、メッシュベルト46の下方に落下し、網の目を通過できないサイズの繊維がメッシュベルト46に堆積し、メッシュベルト46とともに矢印方向に搬送される。メッシュベルト46から落下する微粒子は、解繊物の中で比較的小さいものや密度の低いもの、すなわち、繊維と繊維との結着に不要な樹脂粒や色材や添加剤などを含み、繊維体成形装置100がシートSの製造に使用しない除去物である。
メッシュベルト46は、シートSを製造する通常動作中には、一定の速度V1で移動する。ここで、通常動作中とは、繊維体成形装置100の始動制御、および停止制御の実行中を除く動作中であり、より詳細には、繊維体成形装置100が望ましい品質のシートSを製造している間を指す。
したがって、解繊部20で解繊処理された解繊物は、選別部40で第1選別物と第2選別物とに選別され、第2選別物が解繊部20に戻される。また、第1選別物から、第1ウェブ形成部45によって除去物が除かれる。第1選別物から除去物を除いた残りは、シートSの製造に適した材料であり、この材料はメッシュベルト46に堆積して第1ウェブW1を形成する。
吸引部48は、メッシュベルト46の下方から空気を吸引する。吸引部48は、管23を介して集塵部27に連結される。集塵部27は、フィルター式あるいはサイクロン式の集塵装置であり、微粒子を気流から分離する。集塵部27の下流には捕集ブロアー28が設置され、捕集ブロアー28は、集塵部27から空気を吸引する集塵用吸引部として機能する。また、捕集ブロアー28が排出する空気は、管29を経て繊維体成形装置100の外に排出される。
繊維体成形装置100は、捕集ブロアー28により、集塵部27を通じて吸引部48から空気が吸引される。吸引部48では、メッシュベルト46の網の目を通過する微粒子が、空気とともに吸引され、管23を通って集塵部27に送られる。集塵部27は、メッシュベルト46を通過した微粒子を気流から分離して蓄積する。
したがって、メッシュベルト46の上には、第1選別物から除去物を除去した繊維が堆積して第1ウェブW1が形成される。捕集ブロアー28が吸引を行うことで、メッシュベルト46上における第1ウェブW1の形成が促進され、かつ、除去物が速やかに除去される。
ドラム部41を含む空間には、加湿部204により加湿空気が供給される。この加湿空気によって、選別部40の内部で第1選別物を加湿する。これにより、静電力による第1選別物のメッシュベルト46への付着を弱め、第1選別物をメッシュベルト46から剥離し易くすることができる。さらに、静電力により第1選別物が回転体49やハウジング部43の内壁に付着することを抑制することができる。また、吸引部48によって除去物を効率よく吸引できる。
なお、繊維体成形装置100において、第1選別物と第2選別物とを選別し、分離する構成は、ドラム部41を備える選別部40に限定されない。例えば、解繊部20で解繊処理された解繊物を、分級機によって分級する構成を採用してもよい。分級機としては、例えば、サイクロン分級機、エルボージェット分級機、エディクラシファイヤーを用いることができる。これらの分級機を用いれば、第1選別物と第2選別物とを選別し、分離することが可能である。さらに、上記の分級機により、解繊物の中で比較的小さいものや密度の低いもの、すなわち、繊維と繊維との結着に不要な樹脂粒や色材や添加剤などを含む除去物を、分離して除去する構成を実現できる。例えば、第1選別物に含まれる微粒子を、分級機によって、第1選別物から除去する構成としてもよい。この場合、第2選別物は、例えば解繊部20に戻され、除去物は、集塵部27により集塵され、除去物を除く第1選別物が管54に送られる構成とすることができる。
メッシュベルト46の搬送経路において、選別部40の下流側には、加湿部210によって、ミストを含む空気が供給される。加湿部210が生成する水の微粒子であるミストは、第1ウェブW1に向けて降下し、第1ウェブW1に水分を供給する。これにより、第1ウェブW1が含む水分量が調整され、静電気によるメッシュベルト46への繊維の吸着等を抑制できる。
繊維体成形装置100は、メッシュベルト46に堆積した第1ウェブW1を分断する回転体49を有している。第1ウェブW1は、メッシュベルト46がローラー47により折り返す位置で、メッシュベルト46から剥離して、回転体49により分断される。
第1ウェブW1は、繊維が堆積してウェブ形状となった柔らかい材料であり、回転体49は、第1ウェブW1の繊維をほぐす。
回転体49の構成は任意であるが、図示の例では、回転体49は、板状の羽根を有し回転する回転羽形状を有している。回転体49は、メッシュベルト46から剥離する第1ウェブW1と羽根とが接触する位置に配置される。回転体49の回転、例えば図中矢印Rで示す方向への回転により、メッシュベルト46から剥離して搬送される第1ウェブW1に羽根が衝突して分断し、細分体Pを生成する。
なお、回転体49は、回転体49の羽根がメッシュベルト46に衝突しない位置に設置されることが好ましい。例えば、回転体49の羽根の先端とメッシュベルト46との間隔を、0.05mm以上0.5mm以下とすることができ、この場合、回転体49によって、メッシュベルト46に損傷を与えることなく第1ウェブW1を効率よく分断することができる。
回転体49によって分断された細分体Pは、管7の内部を下降して、管7の内部を流れる気流によって管54へ搬送される。
また、回転体49を含む空間には、加湿部206により加湿空気が供給される。これにより、管7の内部や、回転体49の羽根に対し、静電気により繊維が吸着する現象を抑制することができる。
ブロアー56が発生する気流により、管7を降下する細分体Pは、管54の内部に吸引され、ブロアー56内部を通過する。ブロアー56が発生する気流、およびブロアー56が有する羽根等の回転部の作用により、細分体Pは、管54を通って堆積部60に搬送される。
堆積部60は、解繊部20で解繊された解繊物を堆積させる。より具体的には、堆積部60は、細分体Pを導入口62から導入し、絡み合った解繊物をほぐして、空気中で分散させながら降らせる。これにより、堆積部60は、第2ウェブ形成部70に、解繊物を均一性よく堆積させることができる。
堆積部60は、ドラム部61と、ドラム部61を収容するハウジング部63と、を有している。ドラム部61は、モーターによって回転駆動される円筒の篩である。ドラム部61は、網を有し、篩として機能する。この網の目により、ドラム部61は、網の目開きのより小さい繊維や粒子を通過させ、ドラム部61から下降させる。ドラム部61の構成は、例えば、ドラム部41の構成と同じである。
なお、ドラム部61の「篩」は、特定の対象物を選別する機能を有していなくてもよい。すなわち、ドラム部61として用いられる「篩」とは、網を備えたもの、という意味であり、ドラム部61は、ドラム部61に導入された解繊物の全てを降らしてもよい。
ドラム部61の下方には第2ウェブ形成部70が配置される。第2ウェブ形成部70は、堆積部60を通過した通過物を堆積して、第2ウェブW2を形成する。第2ウェブ形成部70は、例えば、メッシュベルト72と、ローラー74と、サクション機構76と、を有している。
メッシュベルト72は、無端形状のベルトであって、複数のローラー74に懸架され、ローラー74の動きにより、図中矢印で示す方向に搬送される。メッシュベルト72は、例えば、金属製、樹脂製、布製、あるいは不織布等である。メッシュベルト72の表面は、所定サイズの開口が並ぶ網で構成されている。ドラム部61から降下する繊維のうち、網の目を通過するサイズの繊維は、メッシュベルト72の下方に落下し、網の目を通過できないサイズの繊維がメッシュベルト72に堆積し、メッシュベルト72とともに矢印方向に搬送される。メッシュベルト72は、シートSを製造する通常動作中には、一定の速度V2で移動する。通常動作中とは、上述した通りである。
メッシュベルト72の網の目は、微細であり、ドラム部61から降下する繊維の大半を通過させないサイズとすることができる。
サクション機構76は、メッシュベルト72の下方に設けられる。サクション機構76は、サクションブロアー77を備え、サクションブロアー77の吸引力によって、サクション機構76に下方に向く気流を発生させることができる。
サクション機構76によって、堆積部60により空気中に分散された解繊物をメッシュベルト72上に吸引する。これにより、メッシュベルト72上における第2ウェブW2の形成を促進し、堆積部60からの排出速度を大きくすることができる。さらに、サクション機構76によって、解繊物の落下経路にダウンフローを形成することができ、落下中に解繊物が絡み合うことを防ぐことができる。
サクションブロアー77は、サクション機構76から吸引した空気を、図示しない捕集フィルターを通じて、繊維体成形装置100の外に排出してもよい。あるいは、サクションブロアー77が吸引した空気を集塵部27に送り込み、サクション機構76が吸引した空気に含まれる除去物を捕集してもよい。
ドラム部61を含む空間には、加湿部208により加湿空気が供給される。この加湿空気によって、堆積部60の内部を加湿することができ、静電力によるハウジング部63への繊維の付着を抑え、繊維をメッシュベルト72に速やかに降下させ、好ましい形状の第
2ウェブW2を形成させることができる。
以上のように、堆積部60および第2ウェブ形成部70を経ることにより、空気を多く含み柔らかくふくらんだ状態の第2ウェブW2が形成される。メッシュベルト72に堆積された第2ウェブW2は、シート形成部80へと搬送される。
メッシュベルト72の搬送経路において、堆積部60の下流側には、加湿部212によって、ミストを含む空気が供給される。これにより、加湿部212が生成するミストが第2ウェブW2に供給され、第2ウェブW2が含む水分量が調整される。これにより、静電気によるメッシュベルト72への繊維の吸着等を抑制できる。
繊維体成形装置100は、メッシュベルト72上の第2ウェブW2を、シート形成部80に搬送する搬送部79を有している。搬送部79は、例えば、メッシュベルト79aと、ローラー79bと、サクション機構79cと、を有している。
サクション機構79cは、図示しないブロアーを備え、ブロアーの吸引力によってメッシュベルト79aに上向きの気流を発生させる。この気流は、第2ウェブW2を吸引し、第2ウェブW2は、メッシュベルト72から離れてメッシュベルト79aに吸着される。メッシュベルト79aは、ローラー79bの自転により移動し、第2ウェブW2をシート形成部80に搬送する。メッシュベルト72の移動速度と、メッシュベルト79aの移動速度とは、例えば、同じである。
このように、搬送部79は、メッシュベルト72に形成された第2ウェブW2を、メッシュベルト72から剥がして搬送する。
シート形成部80は、堆積部60で堆積させた堆積物からシートSを形成する。より具体的には、シート形成部80は、メッシュベルト72に堆積され搬送部79により搬送された第2ウェブW2を、加圧加熱してシートSを成形する。
シート形成部80は、第2ウェブW2を加圧する加圧部82と、加圧部82により加圧された第2ウェブW2を加熱する加熱部84と、を有している。
加圧部82は、一対のカレンダーローラー85で構成され、第2ウェブW2を所定のニップ圧で挟んで加圧する。第2ウェブW2は、加圧されることによりその厚さが小さくなり、第2ウェブW2の密度が高められる。一対のカレンダーローラー85の一方は、図示しないモーターにより駆動される駆動ローラーであり、他方は従動ローラーである。カレンダーローラー85は、モーターの駆動力により回転して、加圧により高密度になった第2ウェブW2を、加熱部84に向けて搬送する。
加熱部84は、例えば、加熱ローラー、熱プレス成形機、ホットプレート、温風ブロアー、赤外線加熱器、フラッシュ定着器などによって構成されている。図示の例では、加熱部84は、一対の加熱ローラー86を備える。加熱ローラー86は、内部または外部に設置されるヒーターによって、予め設定された温度に加温される。加熱ローラー86は、カレンダーローラー85によって加圧された第2ウェブW2を挟んで熱を与え、シートSを形成する。
一対の加熱ローラー86の一方は、図示しないモーターにより駆動される駆動ローラーであり、他方は従動ローラーである。加熱ローラー86は、モーターの駆動力により回転して、加熱したシートSを、切断部90に向けて搬送する。
このように、堆積部60で形成された第2ウェブW2は、シート形成部80で加圧および加熱されて、シートSとなる。
なお、加圧部82が備えるカレンダーローラー85の数、および加熱部84が備える加熱ローラー86の数は、特に限定されない。
切断部90は、シート形成部80によって成形されたシートSを切断する。図示の例では、切断部90は、シートSの搬送方向と交差する方向にシートSを切断する第1切断部92と、搬送方向に平行な方向にシートSを切断する第2切断部94と、を有している。第2切断部94は、例えば、第1切断部92を通過したシートSを切断する。
以上により、所定のサイズの単票のシートSが成形される。切断された単票のシートSは、排出部96へと排出される。排出部96は、所定サイズのシートSを載せるトレイあるいはスタッカーを有している。
なお、図示はしないが、加湿部202,204,206,208は、1台の気化式加湿器で構成されていてもよい。この場合、1台の加湿器が生成する加湿空気が、粗砕部12、ハウジング部43、管7、およびハウジング部63に分岐して供給される。この構成は、加湿空気を供給するダクトを分岐して設置することにより、容易に実現できる。また、2台あるいは3台の気化式加湿器によって加湿部202,204,206,208を構成することも可能である。
また、加湿部210,212は、1台の超音波式加湿器で構成されていてもよいし、2台の超音波式加湿器で構成されていてもよい。例えば、1台の加湿器が生成するミストを含む空気が、加湿部210,212に分岐して供給される。
1.1.2. 液体塗布装置
次に、繊維体成形装置100の液体塗布装置について、図面を参照しながら説明する。図2は、繊維体成形装置100の液体塗布装置102を模式的に示す図である。繊維体成形装置100は、図2に示すように、液体塗布装置102を含む。
なお、便宜上、図1では、液体塗布装置102の図示を省略している。また、図1では、第2ウェブW2は、加圧部82から斜め下方向に向かって搬送される例を図示しているが、図2では、第2ウェブW2は、加圧部82から水平方向に向かって搬送される例を図示している。
液体塗布装置102は、複数の繊維を含む第2ウェブW2に、複数の繊維を結着させる樹脂粒子を含む液体Lを塗布する。以下、「第2ウェブW2」を単に「ウェブW2」ともいう。
液体塗布装置102は、インクジェットヘッドであり、インクジェット方式で液体Lを塗布する。液体塗布装置102は、ウェブW2の幅以上の幅を有するラインヘッド方式のインクジェットヘッドであってもよい。これにより、生産性の向上を図ることができる。なお、液体塗布装置102は、ラインヘッド方式ではなく、ヘッド自体が動く方式であってもよい。
液体塗布装置102は、例えば、2つ設けられている。図示の例では、2つの液体塗布装置102の間に、ウェブW2が位置している。2つの液体塗布装置102のうちの一方の液体塗布装置102は、ウェブW2の一方の面A1に液体Lを塗布し、2つの液体塗布装置102のうちの他方の液体塗布装置102は、ウェブW2の他方の面A2に液体Lを
塗布する。
図示の例では、2つの液体塗布装置102は、ウェブW2の厚さ方向において、互いに重なって設けられている。2つの液体塗布装置102は、同時にウェブW2に液体Lを塗布してもよい。
加圧部82は、液体塗布装置102によって液体Lが塗布されたウェブW2を加圧する。加圧部82がウェブW2に加える圧力は、例えば、30kgf/cm2以上1000kgf/cm2以下であり、好ましくは200kgf/cm2以上700kgf/cm2以下である。
加熱部84は、液体塗布装置102によって液体Lが塗布されたウェブW2を加熱する。図示の例では、加熱部84は、加圧部82によって加圧されたウェブW2を加圧する。加熱部84により加熱されてウェブW2は、シートSとなる。加熱部84の温度は、例えば、70℃以上220℃以下であり、好ましくは100℃以上180℃以下である。
液体Lは、ウェブW2の複数の繊維を結着させる樹脂粒子を含む。液体Lは、樹脂粒子が分散されたエマルジョンである。樹脂粒子は、複数の繊維を結着させるためのバインダーである。液体Lが塗布される前のウェブW2には、例えば、複数の繊維を結着させる樹脂粒子は、含まれていない。樹脂粒子は、粒子状の樹脂であり、その形状は、例えば、略球状、好ましくは球状である。
液体Lに含まれる樹脂粒子は、例えば、熱可塑性樹脂または熱硬化樹脂である。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレンブタジエン共重合体、アクリロニトリルブタジエン共重合体、アクリル酸エステル共重合体、スチレンアクリル酸共重合体、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ビニルエステル樹脂、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。液体Lは、これらの樹脂を単独で含んでいてもよいし、複数含んでもよい。
液体Lに含まれる、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のガラス転移温度は、例えば、-50℃以上130℃以下であり、好ましくは、-30℃以上100℃以下である。樹脂粒子のガラス転移温度がこの範囲であれば、繊維の結着を向上させ、紙力を高めることができる。
液体Lにおける樹脂粒子の含有量は、例えば、0.1質量%以上30.0質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上20.0質量%以下である。当該含有量が0.1質量%以上30.0質量%以下であれば、液体塗布装置102から液体Lを十分に吐出できる程度に、液体Lの粘度を小さくすることができる。
樹脂粒子の平均粒径は、例えば、5nm以上8μm以下であり、好ましくは9nm以上6μm以下であり、より好ましくは10nm以上5μm以下であり、さらにより好ましくは10nm以上300nm以下である。このような平均粒径の範囲であれば、樹脂粒子が繊維表面に十分に分散させることができ、繊維接着接点を増やすことができるため、シートSの紙力を高めることができる。
なお、「平均粒径」とは、液体Lを水、例えば純水で希釈し、その希釈された状態で粒度分布を、例えば日機株式会社正の粒度分布計「マイクロトラックUPA-150」で測定した場合における、50%の累積粒径値を意味する。
ウェブW2に含まれる複数の繊維は、加熱部84に加熱されることにより、液体Lに含まれる樹脂粒子によって結着する。なお、図示はしないが、加熱部84の他に、別途、熱風、赤外線、電磁波、熱ローラー、熱プレスなどによって、液体Lが付着したウェブW2を加熱してもよい。これにより、液体Lに含まれる樹脂粒子の溶融結着や糊化の促進、および水等の乾燥の促進を図ることができる。
液体Lの表面張力は、20℃において、50mN/m以下であり、好ましくは20mN/m以上50mN/m以下であり、より好ましくは45mN/m以上50mN/m以下である。液体Lの表面張力を、20℃において、50mN/m以下とすることにより、液体LをウェブW2の内部まで浸透させることができ、紙粉の発生を抑えることができる。また、液体Lの表面張力を、20℃において、20mN/m以上とすることにより、インクジェットヘッドのノズルプレートの撥インク性が低下を抑制でき、吐出不良を防止することができる。なお、表面張力は、表面張力計によって測定することができる。
液体Lの粘度は、20℃において、8.0mPa・s以下であることが好ましい。液体L粘度が8.0mPa・sを越えると、粘度が大きすぎて、液体塗布装置102から液体Lを吐出させることが困難になる場合がある。
液体Lは、浸透剤を含んでいてもよい。これにより、ウェブW2の厚さ方向における液体Lの浸透性を向上させることができる。そのため、シートS内部の繊維結着を向上させ、シートSの層間剥離の低減や引張り強度を高めることができる。液体Lに含まれる浸透剤としては、例えば、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、リエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールメチルブチルエーテルなどのグリコールエーテル類、シリコーン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。液体Lは、これらの浸透剤を単独で含んでいてもよいし、複数含んでもよい。
液体Lにおける浸透剤の含有量は、例えば、0.1質量%以上30.0質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上20.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以上10.0質量%以下である。当該含有量が0.1質量%以上30.0質量%以下であれば、ウェブW2の内部まで液体Lが浸透することを促進することができ、シートSの紙力を高めることができる。
液体Lは、保湿剤を含んでいてもよい。これにより、液体Lを吐出する際に、液体塗布装置102のノズル孔の目詰まりを発生し難くすることができる。液体Lに含まれる保湿剤としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリンなどが挙げられる。液体Lは、これらの保湿剤を単独で含んでいてもよいし、複数含んでもよい。
液体Lにおける保湿剤の含有量は、例えば、1.0質量%以上30.0質量%以下であり、好ましくは3.0質量%以上20.0質量%以下であり、さらに好ましくは、5.0
質量%以上16質量%以下である。当該含有量が1.0質量%以上30.0質量%以下であれば、液体塗布装置102のノズル孔の目詰まりを十分に抑えることができる。
液体Lは、水を含んでいてもよい。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水が挙げられる。また、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌処理された水は、カビやバクテリアの発生を防止して長期保存を可能とする点で好ましい。
液体Lが含有可能なその他の添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、光定剤、消光剤、酸化防止剤、耐水化剤、防黴剤、防腐剤、増粘剤、流動性改良剤、pH調整剤、消泡剤、抑泡剤、レベリング剤、帯電防止剤等が挙げられる。
1.1.3. 特徴
繊維体成形装置100は、例えば、以下の特徴を有する。
繊維体成形装置100では、複数の繊維を含むウェブW2に、複数の繊維を結着させる樹脂粒子を含む液体Lを塗布する液体塗布装置102を含み、液体Lの表面張力は、20℃において、50mN/m以下である。そのため、繊維体成形装置100では、後述する「3. 実施例および比較例」に示すように、20℃の表面張力が50mN/mより大きい場合に比べて、液体LをウェブW2の内部まで浸透させることができ、紙粉の発生を抑えることができる。これにより、シートSをインクジェットプリンターで印刷する場合、紙紛がインクジェットプリンターのノズル孔を塞ぐことにより発生するドット抜けを防止することができる。特に、紙粉は、シートSを裁断する際に発生し易いため、液体LをウェブW2の内部まで浸透させることが好ましい。
さらに、繊維体成形装置100では、ウェブW2に、複数の繊維を結着させる樹脂粒子を含む液体Lを塗布するため、樹脂粒子の単位質量当たりの表面積が大きく、繊維と樹脂粒子との接触面積を大きくすることができる。そのため、複数の繊維の結着力を高めることができ、紙粉の発生を抑えることができる。例えば、複数の繊維を結着させる樹脂粒子を粉体としてウェブに供給する場合は、樹脂粒子が凝集してしまい、繊維と樹脂粒子との接触面積を大きくすることが困難である。また、液体Lは、複数の繊維の結着力を高めることができるので、その分、樹脂粒子の量を減らすことができる。
繊維体成形装置100では、液体Lに含まれる樹脂粒子の平均粒径は、好ましくは10nm以上5μm以下である。そのため、繊維体成形装置100では、後述する「3. 実施例および比較例」に示すように、樹脂粒子の平均粒径が上記の範囲外の場合に比べて、液体LをウェブW2の内部まで浸透させることができ、紙粉の発生を抑えることができる。さらに、液体Lの粘度の安定性を高めることができる。
繊維体成形装置100では、液体Lに含まれる樹脂粒子は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂である。そのため、繊維体成形装置100では、液体Lが塗布されたウェブW2を加熱することにより、ウェブW2に含まれる複数の繊維を結着させることができる。
繊維体成形装置100では、液体Lは、浸透剤を含む。そのため、繊維体成形装置100では、液体Lの浸透性を向上させることができる。
繊維体成形装置100では、液体Lは、保湿剤を含む。そのため、繊維体成形装置100では、液体塗布装置102から液体Lを吐出させ易くすることができる。
繊維体成形装置100では、液体Lが塗布されたウェブW2を加圧する加圧部82を含
む。そのため、繊維体成形装置100では、加圧部82によって、ウェブW2のかさ密度を高くすることができる。
繊維体成形装置100では、液体Lが塗布されたウェブW2を加熱する加熱部84を含む。そのため、繊維体成形装置100では、液体Lが塗布されたウェブW2を加熱部84によって加熱することにより、ウェブW2に含まれる複数の繊維を結着させることができる。
繊維体成形装置100では、液体塗布装置102は、インクジェットヘッドである。そのため、繊維体成形装置100では、液体塗布装置がローラーでありローラーによって液体を塗布する場合に比べて、塗布された液体Lの均一性がよく、ウェブW2の破損を防止することができる。例えばローラーによって液体を塗布すると、ローラーにウェブが張り付くことがあり、塗布された液体Lの均一性が悪くなる場合がある。また、ウェブW2の破損やローラーが汚染されることがあり、ローラーの清掃が必要となる。インクジェットヘッドによる塗布では、上記のような問題を回避することができる。
さらに、繊維体成形装置100では、液体塗布装置がスプレーでありスプレーによって液体を塗布する場合に比べて、効率よく液体Lを塗布することができる。スプレーによる塗布の場合は、スプレーから液体が噴射されてもウェブに密着または浸透されない液体が多いため、実際にウェブに塗布される液体の量よりも多くの量を噴射する必要があり、効率が悪い。さらに、スプレーによる塗布の場合は、スプレーの噴射による圧力により、ウェブが破損する場合がある。インクジェットヘッドによる塗布では、上記のような問題を回避することができる。
1.2. 繊維体成形方法
次に、第1実施形態に係る繊維体成形方法について、図面を参照しながら説明する。図3は、第1実施形態に係る繊維体成形方法を説明するためのフローチャートである。第1実施形態に係る繊維体成形方法は、例えば、繊維体成形装置100を用いて繊維を成形する。
まず、「1. 繊維体成形装置」で説明したように、繊維体成形装置100を用いて、複数の繊維を含むウェブW2を準備する(ステップS2)。
次に、ウェブW2に、液体塗布装置102によって、複数の繊維を結着させる樹脂粒子を含む液体Lを塗布する(ステップS4)。本工程では、インクジェット方式で液体Lを塗布する。
次に、加圧部82によって、液体Lが塗布されたウェブW2を加圧する(ステップS6)。
次に、加熱部84によって、液体Lが塗布されたウェブW2を加熱する(ステップS8)。
上記の工程の他、第1実施形態に係る繊維体成形方法は、「1. 繊維体成形装置」で説明した工程を含むことができる。
1.3. 繊維体成形装置の変形例
1.3.1. 第1変形例
次に、第1実施形態の第1変形例に係る繊維体成形装置について、図面を参照しながら説明する。図4は、第1実施形態の第1変形例に係る繊維体成形装置110を模式的に示
す図である。
以下、第1実施形態の第1変形例に係る繊維体成形装置110において、上述した第1実施形態に係る繊維体成形装置100の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。このことは、以下に示す第1実施形態の第2,第3変形例に係る繊維体成形装置において同様である。
上述した繊維体成形装置100では、図2に示すように、液体塗布装置102は、2つ設けられ、一方の液体塗布装置102は、ウェブW2の一方の面A1側に設けられ、他方の液体塗布装置102は、ウェブW2の他方の面A2側に設けられていた。
これに対し、繊維体成形装置110では、図4に示すように、液体塗布装置102は、ウェブW2の一方の面A1側にのみ設けられている。繊維体成形装置110では、液体塗布装置102が2つ設けられている場合に比べて、部品数を減らすことができる。ただし、ウェブW2の他方の面A2まで確実に液体Lを浸透させることを考慮すると、上述した繊維体成形装置100のように、液体塗布装置102を2つ設けることが好ましい。
1.3.2. 第2変形例
次に、第1実施形態の第2変形例に係る繊維体成形装置について、図面を参照しながら説明する。図5は、第1実施形態の第2変形例に係る繊維体成形装置120を模式的に示す図である。なお、図5は、ウェブW2の搬送方向からみた図である。
上述した繊維体成形装置100では、液体塗布装置102は、インクジェットヘッドであった。
これに対し、繊維体成形装置120では、図5に示すように、液体塗布装置102は、スプレーである。液体塗布装置102の数は、特に限定されないが、図示の例では、液体塗布装置102は、ウェブW2の一方の面A1側に4つ設けられ、ウェブW2の他方の面A2側に4つ設けられている。一方の面A1側において、4つの液体塗布装置102は、ウェブW2の幅方向に並んで設けられ、他方の面A2側において、4つの液体塗布装置102は、ウェブW2の幅方向に並んで設けられている。これにより、ウェブW2の幅方向において、液体Lを均一性よく塗布することができる。なお、ウェブW2の幅方向は、ウェブW2の厚さ方向およびウェブW2の搬送方向と直交する方向である。
1.3.3. 第3変形例
次に、第1実施形態の第3変形例に係る繊維体成形装置について、図面を参照しながら説明する。図6は、第1実施形態の第3変形例に係る繊維体成形装置130を模式的に示す図である。
繊維体成形装置130は、図6に示すように、液体塗布装置102の配置が上述した繊維体成形装置100と異なる。
繊維体成形装置130では、例えば、まず、一方の液体塗布装置102は、ウェブW2の一方の面A1に液体Lを塗布し、次に、他方の液体塗布装置102は、ウェブW2の他方の面A2に液体Lを塗布する。2つの液体塗布装置102は、例えば、重力の方向に向けて液体Lを吐出する。そのため、より確実に、液体LをウェブW2に塗布することができる。
例えば、2つの液体塗布装置102のうちの少なくとも一方が、重力の方向と反対方向に向けて液体Lを吐出する場合は、重力の作用により、液体LをウェブW2に塗布するこ
とができない場合がある。
図示の例では、ウェブW2は、第1方向に搬送されて一方の面A1に液体Lが塗布された後、2つの搬送ローラー132によって重力方向に搬送され、さらに、第1方向とは反対方向の第2平方向に搬送されて他方の面A2に液体Lが塗布される。第1方向および第2方向は、水平方向である。
なお、図7に示すように、ウェブW2の搬送方向は、重力の方向であり、2つの液体塗布装置102は、重力の方向と直交する方向に向けて液体Lを吐出してもよい。この場合、2つの液体塗布装置102は、同時にウェブW2に液体Lを塗布してもよい。
2. 第2実施形態
2.1. 繊維体成形装置
次に、第2実施形態に係る繊維体成形装置について、図面を参照しながら説明する。図8は、第2実施形態に係る繊維体成形装置200を模式的に示す図である。
以下、第2実施形態に係る繊維体成形装置200において、上述した第1実施形態に係る繊維体成形装置100の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
繊維体成形装置200では、図8に示すように、加圧部214を含む点において、上述した繊維体成形装置100と異なる。
加圧部214は、一対のカレンダーローラー215で構成され、第2ウェブW2を所定のニップ圧で挟んで加圧する。ウェブW2は、加圧部214によって加圧されることによりその厚さが小さくなり、ウェブW2のかさ度が高められる。一対のカレンダーローラー215の一方は、図示しないモーターにより駆動される駆動ローラーであり、他方は従動ローラーである。
加圧部214は、ウェブW2を加圧することにより、ウェブW2のかさ密度を、例えば、0.09g/cm3以上、好ましくは0.09g/cm3以上0.80g/cm3以下、より好ましくは0.40g/cm3以上0.60g/cm3以下にする。なお、「かさ密度」とは、ゆるみかさ密度を意味する。
加圧部214がウェブW2に加える圧力は、例えば、1kgf/cm2以上600kgf/cm2以下であり、好ましくは1kgf/cm2以上500kgf/cm2以下であり、より好ましくは3kgf/cm2以上300kgf/cm2以下である。
液体塗布装置102は、加圧部214によって加圧されたウェブW2に、液体Lを塗布する。液体塗布装置102は、例えば、加圧部214のカレンダーローラー215と、加圧部82のカレンダーローラー85と、の間に設けられている。カレンダーローラー85の径は、カレンダーローラー215の径よりも小さい。そのため、加圧部82は、加圧部214よりも大きな力でウェブW2を加圧することができる。さらに、ウェブW2の搬送方向に向かうにつれて、カレンダーローラーの径が小さくなるため、カレンダーローラー85,215がウェブW2に対して滑ることを防止することができる。
繊維体成形装置200は、例えば、以下の特徴を有する。
繊維体成形装置200では、液体塗布装置102は、かさ密度が0.09g/cm3以上のウェブW2に液体Lを塗布する。そのため、繊維体成形装置200では、かさ密度が
0.09g/cm3より小さいウェブに液体を塗布する場合に比べて、ウェブW2の空隙が小さく、液体LのウェブW2への浸透において、毛細管現象が発現し易い。これにより、液体LをウェブW2の内部まで浸透させることができる。
繊維体成形装置200では、液体塗布装置102は、かさ密度が0.80g/cm3以下のウェブW2に液体Lを塗布する。そのため、繊維体成形装置100では、かさ密度が大きすぎて、毛細管現象が発現し難くなることを防ぐことができる。
繊維体成形装置100では、液体Lが塗布されたウェブW2を加圧する加圧部82を含む。そのため、繊維体成形装置100では、ウェブW2に対する液体Lの浸透性をより高めることができる。
例えば、加圧部214によって加圧されたウェブW2は、繊維のばね性によって若干かさ密度が低くなる、スプリングバックという現象が起こる。さらに、液体Lが塗布されたウェブW2は、繊維の膨潤によって若干かさ密度が低くなる。そのため、毛細管現象が発現し難く、ウェブW2に対する液体Lの浸透性が低下する場合がある。
繊維体成形装置200では、スプリングバックおよび繊維の膨潤によってウェブW2のかさ密度が低下したとしても、加圧部82によってかさ密度を回復させることができる。そのため、ウェブW2に対する液体Lの浸透性をより高めることができる。
2.2. 繊維体成形方法
次に、第2実施形態に係る繊維体成形方法について、図面を参照しながら説明する。図9は、第2実施形態に係る繊維体成形方法を説明するためのフローチャートである。第2実施形態に係る繊維体成形方法は、例えば、繊維体成形装置200を用いて繊維を成形する。
まず、繊維体成形装置200を用いて、複数の繊維を含むウェブW2を準備する(ステップS2)。
次に、加圧部214によって、ウェブW2を加圧する。本工程により、ウェブW2のかさ密度を、例えば、0.09g/cm3以上0.80g/cm3以下にする。
次に、加圧されたウェブW2に、液体塗布装置102によって、複数の繊維を結着させる樹脂粒子を含む液体Lを塗布する(ステップS4)。本工程では、かさ密度が、例えば、0.09g/cm3以上0.80g/cm3以下のウェブW2に液体Lを塗布する。
次に、加圧部82によって、液体Lが塗布されたウェブW2を加圧する(ステップS6)。
次に、加熱部84によって、液体Lが塗布されたウェブW2を加熱する(ステップS8)。
上記の工程の他、第2実施形態に係る繊維体成形方法は、「1. 繊維体成形装置」で説明した工程を含むことができる。
2.3. 変形例
次に、第2実施形態の変形例に係る繊維体成形装置について、図面を参照しながら説明する。図10は、第2実施形態の変形例に係る繊維体成形装置220を模式的に示す図である。
以下、第2実施形態の変形例に係る繊維体成形装置220において、上述した第2実施形態に係る繊維体成形装置200の例と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
繊維体成形装置220では、図10に示すように、ウェブW2を加圧する加圧部222,224を含む点において、上述した繊維体成形装置100と異なる。
加圧部222は、加圧部214によって加圧されたウェブW2を加圧する。加圧部224は、加圧部222によって加圧されたウェブW2を加圧する。液体塗布装置102は、加圧部224によって加圧されたウェブW2に液体Lを塗布する。
加圧部222は、一対のカレンダーローラー223で構成され、ウェブW2を所定のニップ圧で挟んで加圧する。ウェブW2は、加圧部222によって加圧されることによりその厚さが小さくなり、ウェブW2のかさ度が高められる。一対のカレンダーローラー223の一方は、図示しないモーターにより駆動される駆動ローラーであり、他方は従動ローラーである。
加圧部224は、一対のカレンダーローラー225で構成され、ウェブW2を所定のニップ圧で挟んで加圧する。ウェブW2は、加圧部224によって加圧されることによりその厚さが小さくなり、ウェブW2のかさ度が高められる。一対のカレンダーローラー225の一方は、図示しないモーターにより駆動される駆動ローラーであり、他方は従動ローラーである。
カレンダーローラー223の径は、カレンダーローラー215の径よりも小さい。そのため、加圧部222は、加圧部214よりも大きな力でウェブW2を加圧することができる。カレンダーローラー225の径は、カレンダーローラー223の径よりも小さい。そのため、加圧部224は、加圧部222よりも大きな力でウェブW2を加圧することができる。さらに、ウェブW2の搬送方向に向かうにつれて、カレンダーローラーの径が小さくなるため、カレンダーローラー215,223,225がウェブW2に対して滑ることを防止することができる。
なお、図示の例では、繊維体成形装置220は、4つの加圧部82,214,222,224を有しているが、その数は、特に限定されない。例えば、繊維体成形装置220は、加圧部224を有していなくてもよいし、5つ以上の加圧部を有していてもよい。
3. 実施例および比較例
以下に実施例および比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例および比較例によって何ら限定されるものではない。
図1および図2に示す繊維体成形装置100に対応する繊維体成形装置を用いて、シートを成形した。液体塗布装置としてインクジェットヘッドを用いて、液体L1~L5をウェブの両面に塗布した。液体L1~L5の塗布量は、ウェブの片面に対して8g/m2とし、ウェブの両面の塗布量総量で16g/m2とした。加熱部の温度を150℃とした。原料としては、再生紙「G80」(三菱製紙社製)を用いた。
図11は、液体L1~L5の組成を示す表である。表中の数字の単位は、質量%である。残量として水を加えて、合計100質量%とした。表中、「PU」は、ポリウレタンであり、以下の方法で作製した。
攪拌機、還流冷却管および温度計を挿入した反応容器に、分子量3000のポリカーボネートジオールを1500g、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)320g、およびbp(boiling point)245℃の2-ピロリドン1347gを窒素気流下で仕込み、60℃に加熱してDMPAを溶解させた。4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートを1245g、楠本化成社製の「ウレタン化触媒XK-614」を2.6g加え90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、ウレタンプレポリマーを得た。
次に、反応混合物を80℃まで冷却しこれにトリエタノールアミン220gを添加・混合したものの中から4340gを抜き出して、強攪拌下のもと水5400gおよびトリエタノールアミン22gの混合溶液の中に加えた。次に氷1500gを投入し、35%の2-メチル-1,5-ペンタンジアミン水溶液42gを加えて鎖延長反応を行い、固形分濃度が30%となるように溶媒を留去し、ウレタン樹脂粒子の水分散体を得た。また、反応調整することで、平均粒径の異なるウレタン樹脂粒子の水分散体を得た。
以上の方法により、ポリウレタンを作製した。
また、図11の表中、「AC」は、スチレンアクリル酸共重合体であり、BASF社製の「ジョンクリル61」を用いた。「SB」は、スチレンブタジエン共重合体であり、日本ゼオン社製の「2507H」を用いた。「E1010」は、日信化学社製のオルフィンE1010である。「TEGmBE」はトリエチレングリコールモノブチルエーテル、「Gly」はグリセリンである。
20℃に調整した液体L1~L5の表面張力を、協和界面科学社製の表面張力計「DY-500」を用いて測定した。
また、液体L1~L5に含まれる樹脂粒子の平均粒径を、日機装株式会社製の粒度分布計「マイクロトラックUPA-150」を用いて測定した。
また、液体L1~L5が塗布される前のウェブに圧力を加えた。当該圧力を変化させて、液体L1~L5が塗布される前のウェブのかさ密度を変化させた。なお、ウェブのかさ密度は、「JIS P 8118」に記載された方法に基づいて、下記式で求めた。
かさ密度(g/cm3)=坪量(g/cm2)/厚さ(nm)×1000
上記のような評価サンプルに対して、連続印字性および液体安定性を評価した。
連続印字性は、作成したサンプル40枚を、セイコーエプソン社製のインクジェットプリンター「PXS160T」で連続印字して、ドット抜けを評価した。評価基準は、以下のとおりである。
A:30枚以上でもドット抜けが生じなかった。
B:20枚以上30枚未満でドット抜けが生じた。
C:10枚以上20枚未満でドット抜けが生じた。
D:10枚未満でドット抜けが生じた。
液体安定性は、液体L1~L5を50g、ガラス瓶に密閉充填し、60℃で1週間貯蔵した後で、貯蔵前後の粘度を測定し、貯蔵前の粘度に対する、貯蔵後の粘度の変化率を、液体安定性として評価した。粘度は、セコニック社製の振動式粘度計「VM100A」を用いて測定した。評価基準は、以下のとおりである。
A:粘度の変化率は、10%未満だった。
B:粘度の変化率は、10%以上20%未満だった。
C:粘度の変化率は、20%以上だった。
図12は、実施例1~14および比較例1の連続印字性および液体安定性の評価結果を示す表である。
図12に示すように、実施例1~14は、比較例1に比べて、連続印字性が良好だった。これは、実施例1~12は、表面張力が50mN/m以下であり、液体L1~L5の表面張力が比較例1に比べて小さいので、ウェブの内部にまで液体L1~L5が浸透し、紙粉が発生し難く、インクジェットプリンターで印刷する際に、紙紛がインクジェットプリンターのノズル孔を塞ぐ可能性を低減できたためである。
また、実施例1~6は、実施例7に比べて、連続印字性がよかった。これは、実施例1~6は、樹脂粒子の平均粒径が5μm以下であり、実施例7に比べて小さいので、樹脂粒子の単位質量当たりの表面積が大きく、繊維と樹脂粒子との接触面積が大きいためである。また、実施例9,10を比較することにより、樹脂粒子の平均粒径を10μm以上とすることで、液体安定性を向上できることがわかった。
また、実施例9~11は、実施例8に比べて、連続印字性がよかった。これは、実施例9~11は、かさ密度が0.09g/cm3以上であるため、実施例8に比べて毛細管現象が発現し易く、液体L1がウェブの内部にまで浸透したためである。また、実施例12は、かさ密度が大きすぎて、実施例11の場合に比べて毛細管現象が発現し難く、液体L1がウェブの内部にまで浸透し難くなったために、実施例11よりも連続印字性の評価結果が悪かったと考えられる。
本発明は、本願に記載の特徴や効果を有する範囲で一部の構成を省略したり、各実施形態や変形例を組み合わせたりしてもよい。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。