JP2016216699A - インクジェット用インク組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】色材や部材等に由来する異物の発生を抑制すると共に、保存安定性や吐出安定性にも優れたインクジェット用インク組成物を提供する。また、これらに加えて印刷品質にも優れたインクジェット用インク組成物を提供する。【解決手段】本発明に係るインクジェット用インク組成物は、色材としての顔料または分散染料と、イオン性液体とを含み、前記イオン性液体の含有量が0.05質量%以上5質量%以下であることを特徴とする。【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット用インク組成物に関する。
インクジェット記録方法は、微細なノズルからインクの小滴を吐出して飛翔させ、紙等の記録媒体に付着させて印刷を行う方法である。この方法は、比較的安価な装置で高解像度かつ高品位な画像を、高速で印刷可能であるという特徴を有する。
インクジェット記録に使用される典型的なインクとしては、染料インクや顔料インク等がある。顔料や分散染料などの色材を含むインクでは、これらの色材を分散媒中に安定に分散させることが重要であるが、この分散は必ずしも容易ではない。特に、色材の分散系に対する温度条件が変化すると分散剤の色材の吸着平衡がくずれ、これが色材粒子同士の相互作用に影響を及ぼし、長期の保存において物性変化及び/又は凝集異物を発生することがある。インクジェットプリンター用インクでのこうした物性変化(特に粘度変化)及び/又はヘッドにおける特性の変化は、吐出ノズルの目詰まりを引き起こし、適正な印字ができなくなる場合がある。
このような課題に対して、インク材料の分散安定化や溶解性・相溶性の向上、インク組成の最適化などにより、インクにおける物性変化及び/又は凝集異物の発生を抑制することが行われている(例えば、特許文献1参照)。また、あらかじめインクを加熱し発生した異物を除去してから使用するといった試みがなされている(例えば、特許文献2〜5参照)。
特許第5116002号公報 特開平03−64376号公報 特開平08−73785号公報 特開2002−30243号公報 特開2003−313475号公報
一般に、顔料や分散染料などの色材は、その製造(合成)工程において、不純物を完全に除去することは難しく、純度の高いグレードの製品であっても、ある程度の量の不純物が含まれることが通常である。そのような不純物の例としては、色材を構成する色素分子に構造的に類似する色素類似体がある。すなわち、色材の精製において、構造的に類似している分子を分離することは困難な状況である。そのような色材を分散媒中に分散させると、分散媒中に不純物が溶出して析出することがある。しかもこの現象は経時的に生じ得る。特に色素分子が平面的な構造を有する色材の場合には、色素分子が互いにスタックした状態で分散媒に分散されており、そのようなスタック状態から色素類似体が徐々に分散媒に溶け出していくと考えられる。平面的な色素分子の構造類似体は、本来の色素分子とは異なる溶解特性や分散特性を示すため、構造類似体が溶媒に溶け出すと、色材とは異なる析出物を生じ、異物となって溶媒中に析出、分散、浮遊することになる。
また、このような色材を分散させるインクには、色材を記録媒体上に定着させるための樹脂が含有される。かかる樹脂は、例えばエマルションの形態で含有され、インク中で安
定な分散体あるいは溶液となっている。しかし、特に産業用途向けのインクにおいて、定着樹脂エマルションを多く含む場合があるが、定着樹脂の含有量の増加に伴い、定着樹脂由来の異物が発生する懸念が高まっている。
さらに、産業用途向けのプリンターでは、稼働時間が比較的長いため、必然的にインクとプリンター内の部材とが接触する時間が増える。その結果、プリンターの部材から、例えば脂肪酸(塩)等の不純物がインク中に溶出して析出することで異物となり、不具合を生じる可能性が従来の汎用プリンターの場合よりも高くなっている。
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、上述の課題の少なくとも一部を解決することで、色材や部材等に由来する異物の発生を抑制すると共に、保存安定性や吐出安定性にも優れたインクジェット用インク組成物を提供するものである。また、本発明に係る幾つかの態様は、これらに加えて印刷品質にも優れたインクジェット用インク組成物を提供するものである。
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
[適用例1]
本発明に係るインクジェット用インク組成物の一態様は、
色材としての顔料または分散染料と、イオン性液体とを含み、
前記イオン性液体の含有量が0.05質量%以上5質量%以下であることを特徴とする。
適用例1のインクジェット用インク組成物によれば、イオン性液体によって色材や部材等に由来する異物が溶解されるため、異物の発生が抑制され、保存安定性が良好となる。そして、インク流路での異物の発生が抑制される結果、インクジェット記録装置の記録ヘッドからの吐出安定性や目詰まり回復性といった信頼性が良好となる。
[適用例2]
適用例1のインクジェット用インク組成物において、
前記イオン性液体が、150℃未満の温度で液体のイオン性化合物であることができる。
[適用例3]
適用例1または適用例2のインクジェット用インク組成物において、
前記イオン性液体と前記色材との含有比率(イオン性液体含有量/色材含有量)が0.01以上1以下であることができる。
適用例3のインクジェット用インク組成物によれば、イオン性液体と色材との含有割合のバランスが良好となるため、特に色材に由来する異物を効果的に抑制することができる。
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例のインクジェット用インク組成物において、さらに、ガラス転移温度が0℃以下の樹脂を含むことができる。
ガラス転移温度が0℃以下の樹脂を含有する場合、インク中で該樹脂の疎水性部位が絡み合って異物となりやすい。しかしながら、適用例4のインクジェット用インク組成物に
よれば、イオン性液体によって当該樹脂の絡み合いによる異物が溶解されるため、異物の発生が抑制され、保存安定性が良好となる。
[適用例5]
適用例4のインクジェット用インク組成物において、
前記イオン性液体と前記樹脂との含有比率(イオン性液体含有量/樹脂含有量)が0.01以上5以下であることができる。
適用例5のインクジェット用インク組成物によれば、イオン性液体と樹脂との含有割合のバランスが良好となるため、特に樹脂の絡み合いに由来する異物の発生を効果的に抑制することができる。
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか一例のインクジェット用インク組成物において、前記イオン性液体として、2種以上のイオン性液体を含むことができる。
適用例6のインクジェット用インク組成物によれば、色材や部材、樹脂などに由来する異物の特性に合わせて種類の異なる2種以上イオン性液体を含ませることにより、異物の発生を効果的に抑制することができる。
[適用例7]
適用例1ないし適用例6のいずれか一例のインクジェット用インク組成物において、さらに、溶剤として水を含み、前記イオン性液体が水溶性であることができる。
[適用例8]
適用例1ないし適用例6のいずれか一例のインクジェット用インク組成物において、さらに、溶剤として有機溶剤を含み、前記イオン性液体が非水溶性であることができる。
[適用例9]
適用例1ないし適用例6のいずれか一例のインクジェット用インク組成物において、さらに、重合性化合物を含み、前記イオン性液体が非水溶性であることができる。
適用例7〜9のインクジェット用インク組成物によれば、インク組成物の種類に応じてイオン性液体の種類を変えることにより、色材や部材、樹脂などに由来する異物の発生を効果的に抑制することができる。
以下に本発明の好適な実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
1.インクジェット用インク組成物
本発明に係るインクジェット用インク組成物は、色材としての顔料または分散染料と、イオン性液体とを含み、前記イオン性液体の含有量が0.05質量%以上5質量%以下であることを特徴とする。本発明に係るインクジェット用インク組成物には、必ず色材としての顔料または分散染料及びイオン性液体が含まれるが、これ以外に含まれる成分によって、水系インク組成物と、溶剤系インク組成物と、光硬化型インク組成物とに大別することができる。以下、水系インク組成物、溶剤系インク組成物、光硬化型インク組成物の順に、各インク組成物に含まれる成分について説明する。
1.1.水系インク組成物
本明細書における「水系インク組成物」とは、インク組成物の全質量(100質量%)に対して、水を30質量%以上含有するインク組成物のことをいう。
1.1.1.色材
本実施形態に係る水系インク組成物は、色材として、顔料または分散染料を含有する。本実施形態に係るインクジェット用インク組成物において、上述の異物発生のメカニズムは、顔料と分散染料とで同じであると考えられる。
1.1.1.1.顔料
顔料種としては、特に制限されるものではないが、平面的な骨格を有する分子を含む顔料を用いた場合に、顔料由来の異物の抑制効果が高くなる。平面的な骨格を有する分子を含む顔料の場合には、色素分子が互いにスタックした状態で溶媒に分散されており、そのようなスタック状態から色素類似体が徐々に溶媒中に溶け出していくと考えられる。このような平面的な色素分子の構造類似体は、本来の色素分子とは異なる溶解特性や分散特性を示すため、構造類似体が溶媒に溶け出すと、顔料とは異なる析出物を生じ、異物となって溶媒中に析出、分散、浮遊することになる。本実施形態に係る水系インク組成物に含まれるイオン性液体は、平面的な色素分子の構造類似体を溶解する能力が高いため、顔料由来の異物の発生を効果的に抑制することができる。
ここで「平面的な骨格」とは、以下に限定されるものではないが、例えば、ベンゼンが平面的に縮合したナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン等の縮合多環骨格、ポルフィリンのような多環骨格で窒素、酸素、硫黄、リン等の複素環を含む複素多環骨格、アゾベンゼン、ビシクロペンタジエニリデン等の2つの環系が平面性を保つ結合により連結された環集合骨格等の、平面的な共役系を有する骨格や共役系により平面性が保たれている骨格のことをいう。
したがって、「顔料が平面的な骨格を有する」とは、顔料を構成する色素分子が、上記の骨格を有していればよく、色素分子の全体がそのような骨格となっている必要はない。そのため、例えば一つの色素分子が平面的な骨格を複数有する場合でも、その色素分子は平面的な骨格を有することになる。さらに、色材の色素分子は、全体が平面的である必要はなく、例えば平面的な骨格に、各種の置換基等が配置されて、当該置換基が平面的な骨格の平面から外れていても構わない。また、例えば、複数の平面的な骨格が、互いに同一の平面に沿わなくてもよいし、平面的な骨格の平面が互いに平行でなくてもよい。
このような顔料としては、共役系を有し、当該共役系が光のエネルギーを吸収して呈色する有機色素分子が挙げられる。このような有機色素分子からなる顔料としては、例えばアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、縮合多環系顔料、ニトロ系顔料、ニトロソ系顔料、キナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アゾメチン系顔料が挙げられる。
本実施形態に係る水系インク組成物中における顔料の含有量は、特に制限されないが、水性インク組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下、より好ましくは2質量%以上10質量%以下、特に好ましくは3質量%以上8質量%以下である。
本実施形態に係る水系インク組成物では、顔料を均一かつ安定に分散させる観点から、
上記の顔料を樹脂で分散させた樹脂分散顔料又は自己分散顔料を用いることが好ましい。
<樹脂分散顔料>
樹脂分散顔料に用いられる樹脂分散剤としては、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体等およびこれらの塩が挙げられる。これらの中でも、疎水性官能基を有するモノマーと親水性官能基を持つモノマーとの共重合体、疎水性官能基と親水性官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
前記の塩としては、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリン等の塩基性化合物との塩が挙げられる。これら塩基性化合物の添加量は、前記樹脂分散剤の中和当量以上であれば特に制限はない。
樹脂分散剤の分子量は、重量平均分子量として1,000以上100,000以下の範囲であることが好ましく、3,000以上10,000以下の範囲であることがより好ましい。分子量が前記範囲であることにより、顔料が水中でより安定的に分散し、またインク組成物に適用した際の粘度制御等がしやすい。
樹脂分散剤としては、市販品を用いることもできる。具体的には、ジョンクリル67(重量平均分子量:12,500、酸価:213)、ジョンクリル678(重量平均分子量:8,500、酸価:215)、ジョンクリル586(重量平均分子量:4,600、酸価:108)、ジョンクリル611(重量平均分子量:8,100、酸価:53)、ジョンクリル680(重量平均分子量:4,900、酸価:215)、ジョンクリル682(重量平均分子量:1,700、酸価:238)、ジョンクリル683(重量平均分子量:8,000、酸価:160)、ジョンクリル690(重量平均分子量:16,500、酸価:240)(以上商品名、BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
樹脂分散顔料を水中に分散させる方法としては、上記の顔料、樹脂分散剤、水、必要に応じて水溶性有機溶剤、中和剤等を加えて、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータミル、ヘンシェルミキサー、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、ジェットミル、オングミル等の従来用いられている分散機にて行うことができる。この場合、顔料の粒径としては、平均粒子径が20nm以上500nm以下になるまで、より好ましくは40nm以上200nm以下になるまで分散することが、顔料の水中での分散安定性を確保する点で好ましい。
前記樹脂分散剤の添加量は、顔料100質量部に対し、好ましくは10質量部以上90質量部以下であり、より好ましくは30質量部以上80質量部以下である。樹脂分散剤の添加量が前記範囲内であることにより、顔料の水中での分散安定性が一層良好となる。
<自己分散顔料>
本実施形態に係る水系インク組成物は、顔料として自己分散顔料を含有することができる。自己分散顔料を用いることにより、水系インク組成物の粘度を適正な範囲に調整しやすくなるため、取扱いが容易となる。また、自己分散顔料は、分散剤を別途配合しなくても、水系インク組成物中で均一に分散させることができる。
本明細書における「自己分散顔料」とは、その表面にカルボニル基、カルボキシ基、アルデヒド基、ヒドロキシ基、スルホン基、アンモニウム基、及びこれらの塩よりなる群から選択される少なくとも1種の官能基が、直接またはアルキル基、アリール基等を介して間接に結合してなる表面改質された顔料のことをいう。
自己分散顔料を調製するには、真空プラズマ等の物理的処理や化学的処理により、官能基または官能基を含んだ分子を顔料の表面に配位、グラフト等の化学的結合をさせること等によって得ることができる。例えば、特開平8−3498号公報に記載の方法によって得ることができる。また、自己分散顔料としては、市販品を利用することも可能であり、例えば、オリエント化学工業(株)製の「マイクロジェットCW1」、「マイクロジェットCW2」、キャボット社製の「CAB−O−JET 200」、「CAB−O−JET
300」等を用いることができる。
以下、自己分散顔料の調製方法の具体的な一例について説明する。まず、溶剤に上記の顔料(表面改質される前の顔料)を添加し、これをハイスピードミキサー等で高速剪断分散するか、または、ビーズミルやジェットミル等で衝撃分散してスラリー状の顔料分散液を得る。該顔料分散液をゆっくり攪拌しながら、硫黄を含む処理剤(スルファミン酸、発煙硫酸、硫酸、クロロ硫酸、フルオロ硫酸、アミド硫酸等)を添加し、該顔料分散液を60℃以上200℃以下に加熱処理して、前記顔料表面に前記分散性付与基を導入する。該顔料分散液から溶剤を除去した後、水洗、限外濾過、逆浸透、遠心分離、濾過等を繰り返して前記硫黄を含む処理剤を取り除くことにより、自己分散顔料を得ることができる。自己分散顔料の平均粒子径は、20nm以上500nm以下であることが好ましく、40nm以上200nm以下であることがより好ましい。これにより、顔料の水中での分散安定性が一層良好となる。
1.1.1.2.分散染料
分散染料は、インク中において分散媒中に分散するものであり、加熱により昇華する性質を有する染料(昇華性染料)である。分散染料は、各種着色剤の中でも、鮮明な色相が得られること、被染色体に対する染色特性(例えば、染色再現性、堅牢性、耐白場汚染性等)等の点で優れている。その一方で、従来のインクにおいては、分散染料を含む場合に、インク中に分散染料を含む材料の凝集体としての異物が発生するという問題が発生しやすかったが、本発明においては、このような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、本発明によれば、分散染料を用いることの利点を発揮させつつ、上記のような問題の発生を防止することができる。
分散染料の具体例としては、C.I.ディスパースイエロー3、7、8、23、39、51、54、60、71、86;C.I.ディスパースオレンジ1、1:1、5、20、25、25:1、33、56、76;C.I.ディスパースブラウン2;C.I.ディスパースレッド11、50、53、55、55:1、59、60、65、70、75、93、146、158、190、190:1、207、239、240;C.I.バットレッド41;C.I.ディスパースバイオレット8、17、23、27、28、29、36、57;C.I.ディスパースブルー19、26、26:1、35、55、56、58、64、64:1、72、72:1、81、81:1、91、95、108、131、141、145、359;C.I.ソルベントブルー36、63、105、111等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
インク中における分散染料の含有量は、特に制限されないが、水系インク組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは1質量%以上10質量%以下、より好ましくは、2質量%以上8質量%以下である。これにより、十分な染着濃度と、吐出安定性や放置回復性といったインクジェット特性とを、より高いレベルで両立できる。また、インク中に複数種の分散染料が含まれる場合、これらの含有量の総和が前記範囲内であることが好ましい。
分散染料の分散には、分散樹脂を用いることができる。このような分散樹脂を含むことにより、インク中における分散染料の分散安定性、インクの保存安定性、インクジェット方式による液滴の吐出安定性を優れたものとすることができる。
分散樹脂としては、例えば、公知の分散樹脂を用いることが可能であり、好ましい具体例としては、スチレン−アクリル共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリカルボン酸塩等のアニオン系分散樹脂が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、分散染料の分散においては、アニオン性界面活性剤を用いることができる。アニオン性界面活性剤を含むことにより、分散染料の分散安定性を向上させることができる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物、β−ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、および、クレオソート油スルホン酸のホルマリン縮合物等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらアニオン性界面活性剤の中でも、芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物が好ましい。これにより、分散染料の分散安定性を特に高いものとすることができる。芳香族スルホン酸のホルマリン縮合物における「芳香族スルホン酸」としては、例えば、クレオソート油スルホン酸、クレゾールスルホン酸、フェノールスルホン酸、β‐ナフトールスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸等のアルキルナフタレンスルホン酸、β−ナフタレンスルホン酸とβ−ナフトールスルホン酸との混合物、クレゾールスルホン酸と2−ナフトール−6−スルホン酸との混合物、リグニンスルホン酸等が挙げられる。
水系インク組成物中におけるアニオン性界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、1質量%以上30質量%以下であるのが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。アニオン性界面活性剤の含有量を上記範囲にすることで、分散染料の分散安定性や、保存安定性をより向上させることができる。
1.1.2.イオン性液体
本実施形態に係る水系インク組成物は、イオン性液体を含む。イオン性液体は、イオンのみから成る塩の一種でありながら、分子の大きさ及び弱いイオン間相互作用のため、低い温度で液体の状態をとる物質である。イオン性液体は、一般的な無機塩(例えば、NaCl(融点:約800℃))に比べて非常に低温(典型的には200℃以下)で液体の状態を呈する。
本実施形態に係る水系インク組成物は、イオン性液体を含有することで、色材や部材、定着樹脂等に由来する異物が溶解されるため、インク中での異物の発生が抑制され、保存安定性が良好となる。そして、インク流路での異物の発生が抑制される結果、インクジェット記録装置の記録ヘッドからの吐出安定性や目詰まり回復性といった信頼性も良好となる。
本実施形態に係る水系インク組成物に配合されるイオン性液体は、上記の定義に当て嵌まるものであれば特に限定されず、公知のイオン性液体を用いることができる。イオン性液体の例としては、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、ピロリジニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩、グアニジニウム塩、イソウロニウム塩及びイソチオウロニウム塩から選択される少なくとも一種を挙げることができる。これらの塩は、複数種を混合して用いてもよい。これらの塩のアニオン種も特に限定されず、例えば、ハロゲン化物イオン(I、Cl、Br等)、SCN、BF 、PF 、ClO 、SbF 、(CFSO、(CFCFSO、Ph、(C、(CFSO、CFCOO、CFSO 、CSO 、MeO(EtO)SO 等が挙げられる。
イミダゾリウム塩のイオン性液体の具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(DMI・CFSO)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス[オキサレート(2−)]ボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(EMI・BF)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド(EMI・Br)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(EMI・Cl)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェイト(EMI・PF)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(EMI・CFSO)、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメチルサルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムp−トルエンスルホネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムチオシアネート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム2−(2−メトキシエトキシ)エチルサルフェート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート(BMI・CFSO)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェイト、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメチルサルフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(BMI・Cl)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド(BMI・Br)、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロアセテート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムオクチルサルフェート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド(HMI・Cl)、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(HMI・BF)、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェイト(HMI・PF)、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェイト、3−メチル−1−オクチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェイト(MOI・PF)、3−メチル−1−オクチルイミダゾリウムクロリド(MOI・Cl)、3−メチル−1−オクチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(MOI・BF)、3−メチル−1−オクチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、3−メチル−1−オクチルイミダゾリウムオクチルサルフェート、3−メチル−1−テトラデシルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ヘキサデシル−3−メチルイミダゾリウムクロリド、3−メチル−1−オクタデシルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェイト、3−メチル−1−オクタデシルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、3−メチル−1−オクタデシルイミダゾリウムトリ(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェイト、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムブロミド、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェイト、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムp−トルエンスルホネート、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−
2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェイト、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムオクチルサルフェート、1−ヘキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1−ヘキサデシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムクロリド、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(AEIm TFSI)、1,3−ジアリルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(AAIm TFSI)等が挙げられる。
ピリジニウム塩のイオン性液体の具体例としては、N−エチルピリジニウムクロリド(EPY・Cl)、N−エチルピリジニウムブロミド(EPY・Br)、N−ブチルピリジニウムクロリド(BPY・Cl)、N−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート(BPY・BF)、N−ブチルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェイト(BPY・PF)、N−ブチルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート(BPY・CFSO)、N−ヘキシルピリジニウムテトラフルオロボレート、N−ヘキシルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェイト、N−ヘキシルピリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、N−ヘキシルピリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、N−オクチルピリジニウムクロリド、4−メチル−N−ブチルピリジニウムクロリド、4−メチル−N−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、4−メチル−N−ブチルピリジニウムヘキサフルオロフォスフェイト、3−メチル−N−ブチルピリジニウムクロリド、4−メチル−N−ブチルピリジニウムブロミド、3,4−ジメチル−N−ブチルピリジニウムクロリド、3,5−ジメチル−N−ブチルピリジニウムクロリド等が挙げられる。
ピロリジニウム塩のイオン性液体の具体例としては、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムクロリド(BMP・Cl)、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムテトラフルオロボレート、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムヘキサフルオロフォスフェイト、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェイト、1−ブチル−1−メチルピロリジニウムトリフルオロアセテート、1−ヘキシル−1−メチルピロリジニウムクロリド、1−メチル−1−オクチルピロリジニウムクロリド等が挙げられる。
ホスホニウム塩のイオン性液体の具体例としては、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムクロリド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェイト、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムヘキサフルオロフォスフェイト、トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムビス[オキサレート(2−)]ボレート等が挙げられる。
アンモニウム塩のイオン性液体の具体例としては、メチルトリオクチルアンモニウムトリフルオロアセテート、メチルトリオクチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート、メチルトリオクチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド等が挙げられる。
グアニジニウム塩のイオン性液体の具体例としては、)N”−エチル−N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェイト、グアニジニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェイト、グアニジニウムトリフルオロメタンスルホネート、N”−エチル−N,N,N’,N’−テトラメチルグアニジニウムトリフルオロメタンスルホネートが挙げられる。
イソウロニウム塩のイオン性液体の具体例としては、O−エチル−N,N,N’,N’−テトラメチルイソウロニウムトリフルオロメタンスルホネート、O−エチル−N,N,N’,N’−テトラメチルイソウロニウムトリ(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェイトが挙げられる。
イソチオウロニウム塩のイオン性液体の具体例としては、S−エチル−N,N,N’,N’−テトラメチルイソチオウロニウムトリフルオロメタンスルホネート、S−エチル−N,N,N’,N’−テトラメチルイソチオウロニウムトリス(ペンタフルオロエチル)トリフルオロフォスフェイトが挙げられる。
本明細書では、150℃未満の温度で液体の状態を取り得るイオン性化合物を、イオン性液体と定義する。したがって、上記例示したイオン性液体のうち、融点が150℃未満のものを本実施形態のイオン性液体と称する。なお、イオン性液体は、低揮発性であり、広い液相温度域を有する、という特徴を有している。
粘度が小さく、ヘッドからの吐出安定性を確保するという観点からは、イオン性液体は、融点の低いものが好ましい。イオン性液体の融点は、主に有機イオンの構造や種類によって調節することができる。融点の低い傾向があるイオン性液体の種としては、炭素数が24以下、好ましくは18以下、より好ましくは12以下の、イミダゾリウム塩、ピリジニウム塩、アンモニウム塩、及びホスホニウム塩が挙げられ、またその対イオンとしてCl、BF 、PF 、(CFSOであるものが挙げられる。
本実施形態に係る水系インク組成物には、上記のイオン性液体が2種以上含まれてもよい。イオン性液体は、その種類によって溶解できる分子のサイズや種類が異なっている。そのため、イオン性液体を2種以上含むことにより、複数種の異物や、異物を構成する化合物が複数種である場合などに、それぞれの化合物を溶解させることができる。したがって、異物の発生をより効果的に抑制することや、発生した異物をより効率的に溶解させることができる。また、2種以上のイオン性液体を添加することで、添加するイオン性液体全体の合計量を少量とすることができる。複数種のイオン性液体を含有させる場合の、種類の数や組み合わせは、特に限定されず、異物の種類や状況に応じて設計できる。なお、イオン性液体は、定法に従って適宜に合成することができ、いわゆるデザインケミストリーの手法により合成することができる。また、イオン性液体は、市販品を入手して用いてもよい。
本実施形態に係る水系インク組成物中のイオン性液体の合計含有量は、イオン性液体が水系インク組成物中で溶媒と相溶できる範囲とすることができるが、水系インク組成物の総質量を100質量%としたときに、通常0.05質量%以上5.0質量%以下である。含有量の下限値は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上である。イオン性液体の含有量が前記下限値以上であれば、色材や部材、定着樹脂などに由来する異物をインク中で溶解する効果を発現でき、異物の発生を抑制することができる。含有量の上限値は、好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下である。イオン性液体の含有量が前記上限値以下であると、インクの粘度が大きくなり過ぎないためヘッドからの吐出安定性を確保でき、また記録媒体上に吐出されたインクが速やかに乾燥するため、インクの滲み等がなく、印刷品質に優れた画像を形成することができる。
本実施形態に係る水系インク組成物は、イオン性液体を含むことにより、インクに含まれる定着樹脂の絡み合いにより発生する異物、色材の不純物(典型的には色素類似体)に由来する異物、インクジェット記録装置の部材(チューブ等)から流路に溶出した不純物
(例えば、ステアリン酸(塩)等の炭素数10以上の高級脂肪酸(塩))に由来する異物、及び/又は、これらの不純物が混合してなる異物を、溶解することができる。これにより、水系インク組成物における異物の発生が抑制される。その結果、インクの保存安定性及び記録ヘッドからの吐出安定性が向上し目詰まりが抑制され、信頼性が良好となる。
また、本実施形態に係る水系インク組成物に含まれるイオン性液体は、水溶性であることが好ましい。本発明における「水溶性」とは、25℃の水100gに対して溶質が0.5g以上溶解することができる性質のことをいう。水系インク組成物では、イオン性液体が水に相溶することによって特に良好な異物の溶解効果を発現するため、25℃の水100gに対して0.5g以上50g以下、1g以上100g以下溶解するものを選択することがより好ましい。
1.1.3.その他の成分
<水>
本実施形態に係る水系インク組成物は、溶剤として水を含有する。水としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。本実施形態に係る水系インク組成物中における水の含有量は、水系インク組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上95質量%以下、特に好ましくは60質量%以上90質量%以下である。ここで、水の含有量は、水を添加した量に限られず、他の添加剤等を加える場合には添加剤中の水分も含むものである。
<極性有機溶剤>
本実施形態に係る水系インク組成物は、記録媒体上での濡れ拡がり性、浸透性、乾燥性を制御する観点から極性溶剤を含有することが好ましい。しかしながら、極性溶剤の中には、上述の色材由来成分を僅かではあるが溶解させるものが存在する。この溶解された色材由来成分の一部が、温度環境の変化などに伴って再析出することにより結晶性の異物を形成することが分かってきており、この異物が徐々にヘッドフィルターを詰まらせることで、インクの吐出不良を引き起こすという課題があった。本実施形態に係る水系インク組成物によれば、色材由来成分による異物をイオン性液体で溶解させることにより、かかる課題を解決することができる。
本実施形態に係る水系インク組成物で使用される極性溶剤としては、アルカンジオール類、アルキレングリコールエーテル類、ピロリドン類、アミド類及びラクトン類等が挙げられる。このような極性溶剤を含有する水系インク組成物は、他の溶剤に比べて上述の色材由来成分を溶解させやすいため、上述の異物によるインク吐出不良の問題が発生しやすい傾向がある。以下、本実施形態に係る水系インク組成物で使用可能な極性溶剤の具体例を列挙する。
(1)アルカンジオール類
アルカンジオール類としては、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール等の1,2−アルカンジオール;1,3−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,3−ヘプタンジオール、1,3−オクタンジオール等の1,3−アルカンジオール;2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジオール等のその他のジオール類が挙
げられる。
(2)アルキレングリコールエーテル類
アルキレングリコールエーテル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエチレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類が挙げられる。
(3)ピロリドン類
ピロリドン類としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン等が挙げられる。
(4)アミド類
アミド類としては、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、エクアミドM100(商品名、出光興産株式会社製)、エクアミドB100(商品名、出光興産株式会社製)等が挙げられる。
(5)ラクトン類
ラクトン類としては、α−アセトラクトン、α−エチルラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ζ−エナンチオラクトン、η−カプリロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−ノナラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、2−ブチル−2−エチルプロピオラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン等が挙げられる。
本実施形態に係る水系インク組成物中における極性溶剤の含有量は、水系インク組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは0.1質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。
<その他の有機溶剤>
本実施形態に係る水系インク組成物は、上記極性溶剤以外の水溶性有機溶剤を含有してもよい。このような水溶性有機溶剤としては、特に限定されないが、アルコール類(例えば、エチルアルコール、1−プロパノール、フッ化アルコール等)や、多価アルコール類(例えば、ポリアルキレングリコール、グリセリン等)を例示することができる。特にグリセリンは保湿剤として機能し、水系インク組成物が空気に触れている状態で放置しても、より乾燥し難くするという効果がある。これらの水溶性有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの水溶性有機溶媒を配合する場合には、水溶性有機溶剤の含有量は、水系インク組成物の総質量を100質量%としたときに、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜20質量%である。
<定着樹脂>
本実施形態に係る水系インク組成物は、上述の色材を記録媒体に定着させるための樹脂(本明細書において「定着樹脂」ともいう。)を含有してもよい。定着樹脂は、水溶性、ディスパージョンまたはエマルジョンの形態で供給されることが好ましい。
産業用途向けのインク組成物では、色材の記録媒体への定着を向上させるために、定着樹脂エマルジョンを多く添加する場合がある。定着樹脂の含有量の増加に伴い、定着樹脂由来の異物が発生する懸念が高まっている。特に、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下の定着樹脂を含む場合には、インク中で該樹脂の疎水性部位が絡み合って異物となりやすい傾向がある。しかしながら、本実施形態に係る水系インク組成物によれば、当該定着樹脂の絡み合いによる異物がイオン性液体によって溶解されるため、異物の発生が抑制され、保存安定性が良好となるのである。
定着樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂及びスチレン−アクリレート樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。これらの定着樹脂を含有することにより、記録媒体への定着性を向上でき、また耐擦性も向上する。
ウレタン樹脂としては、分子中にウレタン結合を有するものであれば特に制限されないが、ウレタン結合に加えて、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂等も使用することができる。
定着樹脂は、自己反応型の、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリレート樹脂を使用してもよい。このような自己反応型の樹脂としては、親水性基を有するブロック剤でブロック化したウレタン樹脂;親水性セグメントを付与したブロック化ウレタン樹脂;カルボキシル基、水酸基、アミノ基、メチロール基等の官能基を有するアクリルモノマーを共重合して得られるアクリル樹脂等が挙げられる。
ウレタン樹脂エマルションの市販品としては、例えばサンキュアー2710(日本ルーブリゾール社製)、パーマリンUA−150(三洋化成工業株式会社製)、スーパーフレックス150、420、460、470、610、700(以上、第一工業製薬株式会社製)、NeoRez R−9660、R−9637、R−940(以上、楠本化成株式会社製)、アデカボンタイター HUX−380,290K(以上、株式会社ADEKA製)、タケラック(R) W−605、W−635、WS−6021(以上、三井化学株式会社製)等が挙げられる。
スチレンアクリレート樹脂やアクリル樹脂の市販品としては、例えばモビニール966A、モビニール7320(日本合成化学株式会社製)、マイクロジェルE−1002、マイクロジェルE−5002(以上、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001、ボンコート5454(以上、株式会社DIC製)、SAE1014(日本ゼオン株式会社製)、サイビノールSK−200(サイデン化学株式会社製)、ジョンクリル7100、ジョンクリル390、ジョンクリル711、ジョンクリル511、ジョンクリル7001、ジョンクリル632、ジョンクリル741、ジョンクリル450、ジョンクリル840、ジョンクリル74J、ジョンクリルHRC−1645J、ジョンクリル734、ジョンクリル852、ジョンクリル7600、ジョンクリル775、ジョンクリル537J、ジョンクリル1535、ジョンクリルPDX−7630A、ジョンクリル352J、ジョンク
リル352D、ジョンクリルPDX−7145、ジョンクリル538J、ジョンクリル7640、ジョンクリル7641、ジョンクリル631、ジョンクリル790、ジョンクリル780、ジョンクリル7610(以上、BASF社製)、NKバインダー R−5HN(新中村化学工業株式会社製)、パラロイドB60(ローム・アンド・ハース社製)等が挙げられる。
本実施形態に係る水系インク組成物中における定着樹脂(固形分)の含有量は、水系インク組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上4質量%以下である。
<界面活性剤>
本実施形態に係る水系インク組成物は、界面活性剤を含んでもよい。界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれも使用することができ、さらにこれらは併用してもよい。
ノニオン性界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、及びシリコン系界面活性剤よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらのノニオン性界面活性剤は、水系インク組成物の表面張力及び界面張力を適正に保つ能力に優れている。これにより、表面張力及びヘッドノズル面等のインクと接触するプリンター部材との界面張力を適正に保つことができるため、これをインクジェット記録方式に適用した場合、吐出安定性を高めることができる。
上記のアセチレングリコール系界面活性剤及びアセチレンアルコール系界面活性剤としては、以下に限定されないが、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール及び2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのアルキレンオキシド付加物、並びに2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール及び2,4−ジメチル−5−デシン−4−オール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールのアルキレンオキサイド付加物から選択される一種以上を例示できる。また、アセチレングリコール系界面活性剤及びアセチレンアルコール系界面活性剤は市販品も利用することができ、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、市販されているものを用いてもよく、例えば、メガファックF−479(DIC株式会社製)、BYK−340(ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
シリコン系界面活性剤としては、市販されているものを用いることができ、例えば、オルフィンPD−501、オルフィンPD−502、オルフィンPD−570(いずれも、日信化学工業株式会社製)、BYK−347、BYK−348(いずれも、ビックケミー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
さらに、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アルキルグルコシド、ポリオキシアルキレングリコールアルキルエーテル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールアルキルフェニルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアセチレングリコール、ポリオキシアルキレングリコールアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミンオキサイド、脂肪酸アルカノールアミド、アルキロールアマイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等を用いてもよい。
また、ノニオン性界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤は、表面張力及び界面張力を適正に保つ能力が特に優れており、かつ、気泡性がほとんどないという特性を有する点から、より好ましく用いることができる。すなわち、気泡性が小さいため、例えば、水系インク組成物をインクジェット記録装置に適用する場合には、インク流路の段差部に気泡が固定されにくく望ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、石けん、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、モノアルキルリン酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレングリコールアルキルエーテルリン酸エステル塩等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム系としてアルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩およびアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アミン塩系としてN−メチルビスヒドロキエチルアミン脂肪酸エステル塩酸塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アミノ酸系としてアルキルアミノ脂肪酸塩、ベタイン系としてアルキルカルボキシルベタイン、アミンオキシド系としてアルキルアミンオキシドなどが挙げられる。両性界面活性剤は、これらに限定されるものではない。
界面活性剤の含有量は、水系インク組成物の総質量を100質量%としたときに、好ましくは0.1〜2質量%、より好ましくは0.2〜1質量%である。
<pH調整剤>
本実施形態に係る水系インク組成物は、pH調整剤を添加して好ましくはpHを6.0以上10.0以下、より好ましくは7.0以上9.5以下に調整するとよい。
pH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;タウリン等のアミノスルホン酸等が挙げられる。
<その他の成分>
キレート剤、防腐剤、粘度調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、防黴剤等については、公知の物質を用いることができる。
1.1.4.含有比率
本実施形態に係る水系インク組成物は、イオン性液体と色材との含有比率(イオン性液体含有量/色材含有量)が、好ましくは0.01以上1以下、より好ましくは0.1以上1以下、さらに好ましくは0.2以上1以下、特に好ましくは0.4以上1以下である。イオン性液体と色材との含有比率が前記範囲内にあると、水系インク組成物に含まれるイオン性液体と色材との含有割合のバランスが良好となるため、色材に由来する異物の発生を効率的に抑制でき、保存安定性が良好となる。また、水系インク組成物中の色材由来の異物の発生を抑制することで、ヘッドフィルターの異物による目詰まりが解消され、インクの吐出安定性が良好となる。イオン性液体と色材との含有比率(イオン性液体含有量/色材含有量)が0.01未満の場合、色材に対するイオン性液体の含有量が少ないため、水系インク組成物中に色材由来の異物を溶解させる効果が小さくなる。そのため、色材由来の異物が温度環境の変化などにより発生し、インクの吐出不良を引き起こす場合がある。一方、イオン性液体と色材との含有比率(イオン性液体含有量/色材含有量)が1を超える場合、色材に対するイオン性液体の含有量が多いため、水系インク組成物中に色材由来の異物を溶解させる効果については問題ないが、記録媒体上に吐出されたインクの乾燥性が低下するため、滲み等により印刷品質が損なわれる場合がある。
本実施形態に係る水系インク組成物は、イオン性液体と定着樹脂との含有比率(イオン性液体含有量/定着樹脂含有量)が、好ましくは0.01以上5以下、より好ましくは0.1以上4.5以下、さらに好ましくは0.2以上4以下、特に好ましくは0.4以上3以下である。イオン性液体と定着樹脂との含有比率が前記範囲内にあると、水系インク組成物に含まれるイオン性液体と定着樹脂との含有割合のバランスが良好となるため、定着樹脂に由来する異物の発生を効率的に抑制でき、保存安定性が良好となる。また、水系インク組成物中の定着樹脂由来の異物の発生を抑制することで、ヘッドフィルターの異物による目詰まりが解消され、インクの吐出安定性が良好となる。イオン性液体と定着樹脂との含有比率(イオン性液体含有量/定着樹脂含有量)が0.01未満の場合、定着樹脂に対するイオン性液体の含有量が少ないため、水系インク組成物中に定着樹脂由来の異物を溶解させる効果が小さくなる。そのため、定着樹脂由来の異物が温度環境の変化などにより発生し、インクの吐出不良を引き起こす場合がある。一方、イオン性液体と定着樹脂との含有比率(イオン性液体含有量/定着樹脂含有量)が5を超える場合、定着樹脂に対するイオン性液体の含有量が多いため、水系インク組成物中に定着樹脂由来の異物を溶解させる効果については問題ないが、記録媒体上に吐出されたインクの乾燥性が低下するため、滲み等により印刷品質が損なわれる場合がある。
1.1.5.物性
本実施形態に係る水系インク組成物をインクジェット用インクとして用いる場合には、例えば組成や配合を調節することで、粘度(25℃における粘度)を好ましくは2mPa・s以上20mPa・s以下、より好ましくは3mPa・s以上15mPa・s以下とする。これにより、インクジェット用インクの吐出安定性(吐出量の安定性、液滴の飛行特性等)、吐出応答性(応答速度、高周波対応性(周波数特性)等)等を優れたものとすることができる。なお、インクジェット用インクの粘度は、振動式粘度計を用いた、JIS
Z8809に準拠した測定により求めることができる。
1.2.溶剤系インク組成物
本明細書における「溶剤系インク組成物」とは、有機溶剤を主成分とするインクであり、実質的に水を含まないインクを意味する。ここで、「実質的に水を含まない」とは、インク組成物を製造する際に水を意図的に添加しないという意味であり、インク組成物を製造中または保管中に不可避的に混入する微量の水分を含んでいても構わない。
なお、「実質的に水を含まないインク」の具体的な水の含有量は、好ましくはインク中の水の含有量が3質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましく0.05質量%未満であり、一層好ましくは0.01質量%未満、さらに一層好ましくは0.005質量%未満、最も好ましくは0.001質量%未満であることをいう。
1.2.1.色材
本実施形態に係る溶剤系インク組成物は、色材としての顔料または分散染料を含有する。色材は、上述の水系インク組成物と同様の種類及び含有量とすることができる。
1.2.2.イオン性液体
本実施形態に係る溶剤系インク組成物は、イオン性液体を含有する。イオン性液体は、上述の水系インク組成物と同様の種類及び含有量とすることができる。なお、本実施形態に係る溶剤系インク組成物に含まれるイオン性液体は、非水溶性であることが好ましい。
また、本発明における「非水溶性」とは、上記「水溶性」でないことを指すが、25℃の疎水性有機溶剤(混合溶媒を含む)100gに対して溶質が0.5g以上相溶することができる性質としてもよい。イオン性液体は、疎水性有機溶剤に相溶することによって特に良好な異物の溶解効果を発現するため、25℃の疎水性有機溶剤100gに対して0.5g以上50g以下、1g以上100g以下相溶するものを選択することが好ましい。
1.2.3.その他の成分
<極性溶剤>
本実施形態に係る溶剤系インク組成物は、極性溶剤を含有する。この極性溶剤は、インク特性を制御する重要な成分であるため、溶剤系インク組成物中には必ず含まれている。極性溶剤の中には、上述の色材由来成分を僅かではあるが溶解させるものが存在する。この溶解された色材由来成分の一部が、温度環境の変化などに伴って再析出することにより結晶性の異物を形成することが分かってきており、この異物が徐々にヘッドフィルターを詰まらせることで、インクの吐出不良を引き起こすという課題があった。本実施形態に係る溶剤系インク組成物によれば、色材由来成分による異物をイオン性液体で溶解させることにより、かかる課題を解決することができる。
本実施形態に係る溶剤系インク組成物で使用される極性溶剤としては、アルカンジオール類、アルキレングリコールエーテル類、ピロリドン類、アミド類及びラクトン類等が挙げられる。このような極性溶剤を含有する溶剤系インク組成物は、上述の色材由来成分が溶解しやすいため、上述の異物によるインク吐出不良の問題が発生しやすい傾向がある。
本実施形態に係る溶剤系インク組成物中における極性溶剤の含有量は、インク組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは50質量%以上95質量%以下、より好ましくは60質量%以上90質量%以下である。以下、本実施形態に係る溶剤系インク組成物で使用可能な極性溶剤の具体例を列挙する。
(1)アルカンジオール類
アルカンジオール類としては、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール等の1,2−アルカンジオール;1,3−ブタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,3−ヘプタンジオール、1,3−オクタンジオール等の1,3−アルカンジオール;2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−エチ
ル−1,3−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,3−ジメチル−1,4−ブタンジオール等のその他のジオール類が挙げられる。
(2)アルキレングリコールエーテル類
アルキレングリコールエーテル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、トリエチレングリコールエチルメチルエーテル等のエチレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類が挙げられる。
(3)ピロリドン類
ピロリドン類としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリドン等が挙げられる。
(4)アミド類
アミド類を含有することにより、低吸収性記録媒体上に付着したインクの定着性を向上させることができる。アミド類の中でも下記一般式(1)で示される化合物であることが好ましい。
Figure 2016216699
式(1)中、Rは炭素数1〜8のアルキル基であり、当該アルキル基はエーテル基を含んでいてもよい。R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基である。R及びRは環状アルキル基で結合されていてもよい。炭素数1〜8のアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状でもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。
上記一般式(1)で示される化合物は、低吸収性記録媒体に記録する場合に、記録面を
溶解して内部にインクを効果的に浸透させることができる。このようにインクが浸透することで、インクが強固に定着し、かつ、インクの表面が乾燥しやすくなる。そのため、得られる画像は、表面乾燥性及び定着性に優れたものとなる。その反面、他の溶剤に比べて上述の色材由来成分が溶解しやすいため、上述の異物によるインク吐出不良の問題が発生しやすい傾向がある。
これらのアミド類の中でも、表面乾燥性及び定着性の観点から、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、エクアミドM100(商品名、出光興産株式会社製)、エクアミドB100(商品名、出光興産株式会社製)がより好ましい。
本実施形態に係るインク組成物中におけるアミド類の含有量は、インク組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは0.5質量%以上20質量%以下、より好ましくは1質量%以上15質量%以下である。
(5)ラクトン類
ラクトン類を含有することにより、低吸収性記録媒体上に付着したインクの定着性を向上させることができる。ラクトン類の中でも下記一般式(2)で示される化合物であることが好ましい。
Figure 2016216699
式(2)中、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜8のアルキル基であり、当該アルキル基はエーテル基を含んでいてもよい。R及びRは環状アルキル基で結合されていてもよい。炭素数1〜8のアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状でもよく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられる。
上記一般式(2)で示される化合物は、低吸収性記録媒体に記録する場合に、記録面を溶解して内部にインクを効果的に浸透させることができる。このようにインクが浸透することで、インクが強固に定着しやすくなる。そのため、得られる画像は、定着性に優れたものとなる。その反面、他の溶剤に比べて上述の色材由来成分が溶解しやすいため、上述の異物によるインク吐出不良の問題が発生しやすい傾向がある。
これらのラクトン類の中でも、定着性の観点から、α−アセトラクトン、α−エチルラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ζ−エナンチオラクトン、η−カプリロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−ノナラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、2−ブチル−2−エチルプロピオラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン等が好ましい。
本実施形態に係るインク組成物中におけるラクトン類の含有量は、インク組成物の全質量(100質量%)に対して、好ましくは1質量%以上30質量%以下、より好ましくは3質量%以上20質量%以下である。
<その他の有機溶剤>
上記極性溶剤以外の有機溶剤としては、特に限定されないが、アルコール類(例えば、エチルアルコール、1−プロパノール、フッ化アルコール等)やエーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル等)を例示することができる。これらの有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの有機溶剤を配合する場合には、有機溶剤の含有量は、インク組成物の総質量を100質量%としたときに、好ましくは0.1質量%以上30質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上20質量%以下である。
<定着樹脂>
本実施形態に係る溶剤系インク組成物は、上述の色材を記録媒体に定着させるための樹脂(定着樹脂)を含有してもよい。
定着樹脂としては、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ロジン変性樹脂、フェノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロースアセテートブチレート等の繊維系樹脂、ビニルトルエン−α−メチルスチレン共重合体樹脂等が挙げられる。これらの中でも、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂及び酢酸ビニル樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂であることが好ましい。これらの定着樹脂を含有することにより、記録媒体への定着性を向上でき、また耐擦性も向上する。
本実施形態に係る溶剤系インク組成物中における定着樹脂の固形分含有量は、好ましくは0.05質量%以上15質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上10質量%以下である。定着樹脂の含有量が前記範囲であると、極性溶剤中に溶解した定着樹脂によって、低吸収性記録媒体に対して優れた定着性が得られる。
<アクリル系樹脂>
アクリル樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂、スチレン−(メタ)アクリル共重合樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂、エチレンアルキル(メタ)アクリレート樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂などが挙げられる。
上記のアクリル樹脂としては、市販品を用いてもよく、例えばアクリペットMF(商品名、三菱レイヨン社製、アクリル樹脂)、スミペックスLG(商品名、住友化学社製、アクリル樹脂)、パラロイドBシリーズ(商品名、ローム・アンド・ハース社製、アクリル樹脂)、パラペットG−1000P(商品名、クラレ社製、アクリル樹脂)などが挙げられる。なお、本発明において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味するものとし、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリレートの両方を意味するものとする。
<塩化ビニル樹脂及び酢酸ビニル樹脂>
塩化ビニル樹脂及び酢酸ビニル樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル及び酢酸ビニルに由来する構成単位を含む共重合体(以下、「塩酢ビ共重合体」ともいう。)等が挙げられるが、これらの中でも塩酢ビ共重合体が好ましい。塩酢ビ共重合体は、上記極性溶剤に溶解させることができる。その結果、極性溶剤に溶解した塩酢ビ共重合体により、記録媒体の表面にインクを強固に定着させることができる。
塩酢ビ共重合体は、常法によって得ることができ、例えば懸濁重合によって得ることができる。具体的には、重合器内に水と分散剤と重合開始剤を仕込み、脱気した後、塩化ビ
ニル及び酢酸ビニルを圧入し懸濁重合を行うか、塩化ビニルの一部と酢酸ビニルを圧入して反応をスタートさせ、残りの塩化ビニルを反応中に圧入しながら懸濁重合を行うことができる。
塩酢ビ共重合体は、その構成として、塩化ビニル単位を70〜90質量%含有することが好ましい。上記範囲であれば、インク組成物中に安定して溶解するため長期の保存安定性に優れる。さらには、吐出安定性に優れ、記録媒体に対して優れた定着性を得ることができる。
また、塩酢ビ共重合体は、塩化ビニル単位及び酢酸ビニル単位とともに必要に応じて、その他の構成単位を備えていても良く、例えばカルボン酸単位、ビニルアルコール単位、ヒドロキシアルキルアクリレート単位が挙げられ、とりわけビニルアルコール単位が好ましく挙げられる。前述の各単位に対応する単量体を用いることで得ることができる。カルボン酸単位を与える単量体の具体例としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。ヒドロキシアルキルアクリレート単位を与える単量体の具体例としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテルなどが挙げられる。これらの単量体の含有量は、本発明の効果を損なわない限り限定されないが、例えば単量体全量の15質量%以下の範囲で共重合させることができる。
また、塩酢ビ共重合体は市販されているものを用いてもよく、例えば、ソルバインCN、ソルバインCNL、ソルバインC5R、ソルバインTA5R、ソルバインCL、ソルバインCLL(以上、日信化学工業社製)などが挙げられる。
これらの樹脂の平均重合度は、特に限定されないが、好ましくは150〜1100、より好ましくは200〜750である。これらの樹脂の平均重合度が上記の範囲である場合、本実施形態に係るインク組成物中に安定して溶解するため、長期の保存安定性に優れる。さらには、吐出安定性に優れ、記録媒体に対して優れた定着性を得ることができる。なお、これらの樹脂の平均重合度は、比粘度を測定し、これから算出されるものであり、「JIS K6720−2」に記載の平均重合度算出方法に準じて求めることができる。
また、これらの樹脂の数平均分子量は、特に限定されないが、好ましくは10000〜50000、より好ましくは12000〜42000である。なお、数平均分子量は、GPCによって測定することが可能であり、ポリスチレン換算とした相対値として求めることができる。
<界面活性剤>
本実施形態に係る溶剤系インク組成物は、表面張力を低下させ記録媒体との濡れ性を向上させる観点から、シリコン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、または非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン誘導体を添加してもよい。
シリコン系界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコンやポリエーテル変性シリコンを用いることが好ましい。具体例としては、BYK−315N、347、348、BYK−UV3500、3510、3530、3570(いずれもビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK−340(ビックケミー・ジャパン社製)が挙げられる。
また、ポリオキシエチレン誘導体としては、アセチレングリコール系界面活性剤を用い
ることが好ましい。具体例としては、サーフィノール82、104、465、485、TG(いずれもエアープロダクツジャパン社製)、オルフィンSTG、E1010(いずれも日信化学株式会社製)、ニッサンノニオンA−10R、A−13R(いずれも日油株式会社製)、フローレンTG−740W、D−90(共栄社化学株式会社製)、ノイゲンCX−100(第一工業製薬株式会社製)等が挙げられる。
本実施形態に係る溶剤系インク組成物中における界面活性剤の含有量は、好ましくは0.05質量%以上3質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上2質量%以下である。
<その他の成分>
本実施形態に係る溶剤系インク組成物には、上記の成分以外にも、エチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)等のキレート剤、防腐剤、粘度調整剤、溶解助剤、酸化防止剤、及び防黴剤など、所定の性能を付与するための物質を含有することができる。
1.2.4.含有比率
本実施形態に係る溶剤系インク組成物における、イオン性液体と色材との含有比率(イオン性液体含有量/色材含有量)及びイオン性液体と定着樹脂との含有比率(イオン性液体含有量/定着樹脂含有量)については、上述の水系インク組成物と同様である。
1.2.5.物性
本実施形態に係る溶剤系インク組成物をインクジェット用インクとして用いる場合には、例えば組成や配合を調節することで、粘度(25℃における粘度)を好ましくは2mPa・s以上20mPa・s以下、より好ましくは3mPa・s以上15mPa・s以下とする。これにより、インクジェット用インクの吐出安定性(吐出量の安定性、液滴の飛行特性等)、吐出応答性(応答速度、高周波対応性(周波数特性)等)等を優れたものとすることができる。なお、インクジェット用インクの粘度は、振動式粘度計を用いた、JIS Z8809に準拠した測定により求めることができる。
本実施形態に係る溶剤系インク組成物は、記録品質とインクジェット用インクとしての信頼性とのバランスの観点から、20℃における表面張力が20mN/m以上50mN/mであることが好ましく、25mN/m以上40mN/m以下であることがより好ましい。なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP−Z(協和界面科学社製)を用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
1.2.6.用途
本実施形態に係る溶剤系インク組成物は、低吸収性記録媒体、特に塩化ビニル系記録媒体などのフィルムメディアに記録した時の画質が優れるため、屋外で展示するサイン用途などに好適となる。塩化ビニル系記録媒体としては、塩化ビニル系樹脂を含有するものであれば特に限定されない。塩化ビニル系樹脂を含有する記録媒体としては、硬質もしくは軟質の塩化ビニル系フィルムまたはシート等が挙げられる。本実施形態に係る溶剤系インク組成物は、塩化ビニル系樹脂基材における無処理表面への画像の記録を可能ならしめるものであり、従来の受容層を有する記録媒体のごとく、高価な記録媒体の使用を不要とする優れた効果を有するが、インク受容層により表面処理された基材であっても適用できることは言うまでもない。
1.3.光硬化型インク組成物
本明細書における「光硬化型インク組成物」とは、重合性化合物を含むインクに光を照射することにより、重合性化合物が重合して固化するインクのことをいう。本実施形態に係る光硬化型インク組成物は、色材及びイオン性液体の他、重合性化合物や光重合開始剤
を含有する。
1.3.1.色材
本実施形態に係る光硬化型インク組成物は、色材としての顔料または分散染料を含有する。色材は、上述の水系インク組成物と同様の種類及び含有量とすることができる。
1.3.2.イオン性液体
本実施形態に係る光硬化型インク組成物は、イオン性液体を含有する。イオン性液体は、上述の水系インク組成物と同様の種類及び含有量とすることができる。なお、本実施形態に係る光硬化型インク組成物に含まれるイオン性液体は、非水溶性であることが好ましい。本発明における「非水溶性」の定義については、上述の通りである。
1.3.3.その他の成分
<重合性化合物>
上記インク組成物に含まれる重合性化合物は、後述する光重合開始剤の作用により、光照射時に重合されて、印刷されたインクを硬化させることができる。
重合性化合物としては、単官能、2官能、及び3官能以上の多官能といった種々の重合性基を有する化合物が使用可能である。その具体例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、及びマレイン酸などの不飽和カルボン酸並びにそれらの塩又はエステル、ウレタン、アミド及びその無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、及び不飽和ウレタン、N−ビニル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、及びポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、他の単官能モノマーや多官能モノマーとして、N−ビニル化合物を含んでいてもよい。N−ビニル化合物としては、N−ビニルフォルムアミド、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、及びアクリロイルモルホリン、並びにそれらの誘導体などが挙げられる。
重合性化合物の含有量は、硬化性及び吐出安定性が優れたものとなるため、インク組成物の総質量(100質量%)に対し、好ましくは1質量%以上95質量%以下、より好ましくは5質量%以上90質量%以下である。当該含有量は少ない方が吐出安定性により優れるが、吐出安定性は重合性化合物の種類などにもよる。そのため、含有量の上限は上記の範囲に限られるものではなく、硬化性がより優れたものとなる点で言えば、含有量は多い方が好ましい。
<光重合開始剤>
本実施形態に係る光硬化型インク組成物は、光重合開始剤を含む。光重合開始剤は、紫外線の照射による光重合によって、記録媒体の表面に存在するインクを硬化させて画像を形成するために用いられる。紫外線(UV)を用いることにより、安全性に優れ、且つ光源ランプのコストを抑えることができる。光(紫外線)のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、上記重合性化合物の重合を開始させるものであれば制限はないが、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができ、中でも光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
上記光ラジカル重合開始剤は、紫外線等の活性エネルギー線が照射されることによる光開裂や水素引抜き等によって、ラジカル(光ラジカル重合開始剤ラジカル)が生成し、ウレタン(メタ)アクリレートやラジカル重合性基を有する化合物(好ましくはラジカル重
合性(メタ)アクリレート)を攻撃することで光ラジカル重合を引き起こす。
上記光ラジカル重合開始剤としては、以下に限定されないが、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、α−アミノアルキルフェノン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、及びアルキルアミン化合物が挙げられる。
これらの中でも、インクの硬化性を一層優れたものとすることができるため、アシルホスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物のうち少なくともいずれかが好ましく、アシルホスフィンオキサイド化合物及びチオキサントン化合物の組み合わせがより好ましい。
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、以下に限定されないが、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p'−ジクロロベンゾフェノン、p,p'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンジルメチルケタール、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}2−メチルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]2−モルフォリノプロパン−1−オン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾフィルフォーメート、アゾビスイソブチリロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、及びジ−tert−ブチルペルオキシドが挙げられる。
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、IRGACURE 651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、IRGACURE 184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、DAROCUR 1173(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン)、IRGACURE 2959(1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン)、IRGACURE 127(2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン}、IRGACURE 907(2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン)、IRGACURE 369(2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1)、IRGACURE 379(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)、DAROCUR TPO(2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−
フェニルフォスフィンオキサイド)、IRGACURE 784(ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム)、IRGACURE OXE 01(1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)])、IRGACURE OXE 02(エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム))、IRGACURE 754(オキシフェニル酢酸、2−[2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステルとオキシフェニル酢酸、2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物)(以上、BASF社製)、Speedcure TPO、Speedcure DETX(2,4−ジエチルチオキサントン)、Speedcure ITX(2−イソプロピルチオキサントン)(以上、Lambson社製)、KAYACURE DETX−S(2,4−ジエチルチオキサントン)(日本化薬社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)製)、Lucirin TPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、及びユベクリルP36(UCB社製)などが挙げられる。
上記光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤の含有量は、インクの総質量(100質量%)に対し、好ましくは0.1質量%以上15質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下である。含有量が前記範囲内であると、紫外線硬化速度を十分に発揮させ、かつ、光重合開始剤の溶け残りや光重合開始剤に由来する着色を避けることができる。
<その他の成分>
本実施形態に係る光硬化型インク組成物は、上記の成分以外にも、スリップ剤(界面活性剤)、重合禁止剤、重合促進剤、浸透促進剤、溶剤、及び湿潤剤(保湿剤)、並びにその他の添加剤を含有することができる。上記のその他の添加剤として、例えば従来公知の、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、及び増粘剤が挙げられる。
1.3.4.含有比率
本実施形態に係る光硬化型インク組成物における、イオン性液体と色材との含有比率(イオン性液体含有量/色材含有量)及びイオン性液体と定着樹脂との含有比率(イオン性液体含有量/定着樹脂含有量)については、上述の水系インク組成物と同様である。
1.3.5.物性
本実施形態に係る光硬化型インク組成物をインクジェットヘッドのノズルから吐出する際、吐出安定性を良好なものとするため、インク組成物の20℃での粘度を35mPa・s以下とするのが好ましく、25mPa・s以下とするのがより好ましい。
また、本実施形態に係る光硬化型インク組成物は、通常のインクジェット用インクで使用される水系インク組成物よりも粘度が高いため、吐出時の温度変動による粘度変動が大きい。このようなインクの粘度変動は、液滴サイズの変化及び液滴吐出速度の変化に対して大きな影響を与え、ひいては画質劣化を引き起こし得る。したがって、吐出時のインクの温度はできるだけ一定に保つことが好ましい。
2.実施例
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り質量基準である。
2.1.水系インク組成物の調製及び評価
2.1.1.水系インク組成物の調製
表1に示す水系インク組成物を、下記に従って作製した。表1に示す材料を表1に示す含有量(単位:質量%)で、それぞれ混合し十分に撹拌した。この混合液を孔径5μmの金属フィルターで濾過した後、真空ポンプを用いて脱気処理して、実施例及び比較例で用いる各水系インク組成物を得た。
Figure 2016216699
また、表2に示す水系インク組成物を、下記に従って作製した。まず、分散染料としてC.I.ディスパースレッド60(DR60)、アニオン性界面活性剤としてリグニンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物(日本製紙ケミカル社製、商品名「パールレックスDP」)、及びイオン交換水からなる混合物を、0.2mm径ガラスビーズを用いてサンドミルにて、冷却下、約15時間分散処理を行った。分散処理後、イオン交換水を用いて希釈し、次いで、該分散液をガラス繊維濾紙GC−50(東洋濾紙株式会社製、フィルター孔径0.5μm)で濾過し、粒子サイズの大きい成分を除去することで水性分散液を得た。次に、上記のようにして得られた水性分散液と、表2に示す材料とを所定の割合で混合することにより、実施例及び比較例で用いる各水系インク組成物を得た。
Figure 2016216699
なお、表1及び表2で使用した各成分の略称は、以下の通りである。
<定着樹脂>
・ウレタン樹脂A(商品名「スーパーフレックス470」、第一工業製薬株式会社製、Tg=−31℃)
・ウレタン樹脂B(商品名「スーパーフレックス420」、第一工業製薬株式会社製、Tg=−20℃)
<界面活性剤>
・BYK−348(ビックケミー・ジャパン株式会社製、シリコン系界面活性剤)
<イオン性液体>
・EMI・Cl(1-Ethyl-3-Methylimidazolium Chloride、固体(融点78℃、和光純薬工業株式会社)
・BMI・Cl(1-Butyl-3-Methylimidazolium Chloride、固体(融点67℃、和光純薬工業株式会社)
2.1.2.水系インク組成物の評価方法
表1及び表2に示す各水系インク組成物をインクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)に初期充填後、下記に示す評価を行った。
(1)不純物の評価
水系インク組成物を充填したプリンターを40℃で3ヶ月間放置後、プリンターからヘッドを取りはずし、ノズル先端を目視で観察することにより異物の有無を確認した。
(2)保存安定性の評価
各水系インク組成物40gを50cc容のガラス瓶に入れ密栓した後に、これらのガラス瓶を60℃の恒温槽内に入れ、7日間放置した。7日後に取り出し、室温に戻した後、DVM−E型回転粘度計(東京計器株式会社製)を用いて25℃での粘度を測定した。そして、事前に測定した初期粘度に対する、7日間放置後の粘度の変動率を計算した。評価基準は以下の通りである。
<評価基準>
A:粘度の変動率が±3%未満。
B:粘度の変動率が±3%以上±5%未満。
C:粘度の変動率が±5%以上±10%未満。
D:粘度の変動率が±10%以上。
(3)目詰まり放置回復性の評価
各水系インク組成物を、インクジェットプリンターの専用カートリッジにそれぞれ充填した。そして、該カートリッジをインクジェットプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)に装着し、10分間連続して印刷し、全てのノズルから正常にインクが吐出していることを確認した。次に、インクカートリッジを取り外し、記録ヘッドをヘッドキャップから外した状態で、50℃の環境下に3ヶ月間放置した。放置後、全ノズルが初期と同等に吐出するまで、クリーニング動作を繰り返し、以下の判断基準により回復性を評価した。
<評価基準>
A:ヘッドクリーニング2回以下で初期と同等に印刷できる。
B:ヘッドクリーニング3回以上4回以下で初期と同等に印刷できる。
C:ヘッドクリーニング5回以上10回以下で初期と同等に印刷できる。
D:ヘッドクリーニング10回以下では初期と同等の印刷ができない。
(4)吐出安定性の評価
各水系インク組成物を、インクジェットプリンターの専用カートリッジにそれぞれ充填した。そして、該カートリッジをプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)に装着して、35℃で湿度35%RHの雰囲気下において、A4版のXerox P(商品名、富士ゼロックス株式会社製)に、マイクロソフトワード文章(文字サイズ11、標準、MSPゴシック)を4000字/頁の割合で、500頁印刷を行った。500頁目の文章に関して、下記評価基準に従って吐出安定性の評価を行った。
<評価基準>
A:全く印字乱れがない。
B:1〜3カ所の印字乱れがある。
C:3〜9カ所の印字乱れがある。
D:10カ所以上の印字乱れがある。
(5)印刷品質(滲み)の評価
表1に示す各水系インク組成物を、インクジェットプリンターの専用カートリッジにそれぞれ充填した。そして、該カートリッジをプリンターPX−G930(セイコーエプソン株式会社製)に装着して、所定の印刷パターンでA4版のXerox P用紙(商品名、富士ゼロックス株式会社製)に印刷した。その後、得られた印刷物のパターンに滲みが存在するか、光学顕微鏡を用いて、下記の基準で評価した。
<評価基準>
A:印字パターンに滲みがない。
B:1〜3カ所、印字パターンに滲みがある。
C:4〜9カ所、印字パターンに滲みがある。
D:10カ所以上、印字パターンに滲みがある。
2.2.溶剤系インク組成物の調製及び評価方法
2.2.1.溶剤系インク組成物の調製
表3に示す溶剤系インク組成物を、下記に従って作製した。まず容器に、表3に示す含有量(単位:質量%)で有機溶剤を混合し、スターラーを用いて30分間撹拌した。次に、得られた混合溶剤の一部を取り分けて、Solsperse37500(LUBRIZOL社製、分散剤)及びシアン顔料(クラリアント社製、C.I.ピグメントブルー15:3)を所定量添加して、ホモジナイザーを用いて粉砕処理した。その後、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填したビーズミルで分散処理を行うことにより、顔料分散液を得た。得られた顔料分散液に、有機溶剤の残部及び表3に記載の材料を所定量添加し、さらに1時間混合撹拌してから、5μmのPTFE製メンブレンフィルターを用いてろ過することにより、実施例及び比較例で用いる各溶剤系インク組成物を得た。
Figure 2016216699
なお、表3に示す各成分の略称は、以下の通りである。
<界面活性剤>
・BYK−315(ビックケミー・ジャパン株式会社製、シリコン系界面活性剤)
<定着樹脂>
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂(日信化学工業株式会社製、商品名「ソルバインCL」)
・パラロイドB60(ローム・アンド・ハース社製、アクリル樹脂)
<有機溶剤>
・エクアミドM100(出光興産株式会社製、塩化ビニル膨潤剤)
<イオン性液体>
・AEIm TFSI
((1-Allyl-3-ethylimidazolium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide、液体、関東化学株式会社)
・AAIm TFSI
((1,3-Diallylimidazolium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide、液体、関東化学株式
会社)
2.2.2.溶剤系インク組成物の評価方法
表3に示す各溶剤系インク組成物をプリンターに初期充填後、下記に示す評価を行った。
(1)不純物の評価
インクジェットプリンターSP−300V(ローランドDG社製)を使用した以外は、水系インク組成物と同様の方法で不純物の有無を確認した。
(2)保存安定性の評価
水系インク組成物と同様の方法で溶剤系インク組成物の保存安定性を評価した。
(3)吐出安定性の評価
各溶剤系インク組成物を、インクジェットプリンターの専用カートリッジに充填した。そして、該カートリッジをインクジェットプリンターSP−300V(ローランドDG社製)に装着して、10時間特定パターンの印刷を連続して行った。この際、印刷時のヒーター設定温度は50℃とし、Duty200%の条件で光沢ポリ塩化ビニルシートSV−G−1270G(ローランドDG社製)上に印刷を行った。10時間後に印刷した特定パターンに関して、下記評価基準に従って吐出安定性の評価を行った。
<評価基準>
A:印字パターンに乱れがない。
B:1〜3カ所、印字パターンに乱れがある。
C:4〜9カ所、印字パターンに乱れがある。
D:10カ所以上、印字パターンに乱れがある。
なお、本明細書において「Duty値」とは、下式で算出される値である。
Duty(%)=実吐出ドット数/(縦解像度×横解像度)×100
(式中、「実吐出ドット数」は単位面積当たりの実ドット数であり、「縦解像度」及び「横解像度」はそれぞれ単位面積当たりの解像度である。)
2.3.光硬化型インク組成物の調製及び評価方法
2.3.1.光硬化型インク組成物の調製
表4中の各材料を表4に示す含有量で十分に混合撹拌した後、真空ポンプで脱気することにより、各光硬化型インク組成物を得た。
Figure 2016216699
なお、表4に示す各成分の略称は以下の通りである。
<色材>
・PV19(C.I.ピグメントバイオレット19)
<ラジカル重合性化合物>
・VEEA(アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、日本触媒社製)
・PEA(フェノキシエチルアクリレート、大阪有機化学社製)
・DPGDA(ジプロピレングリコールジアクリレート、サートマー社製)
<光重合開始剤>
・IRGACURE 819(BASF社製商品名、固形分100%)
・DAROCURE TPO(BASF社製商品名、固形分100%)
・Speedcure DETX(Lambson社製商品名、固形分100%)
<重合禁止剤>
・MEHQ(p−メトキシフェノール)
<シリコン系界面活性剤>
・UV3500(ビックケミー・ジャパン株式会社製)
<イオン性液体>
・AEIm TFSI
((1-Allyl-3-ethylimidazolium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide、液体、関東化学株式会社)
・AAIm TFSI
((1,3-Diallylimidazolium bis(trifluoromethanesulfonyl)imide、液体、関東化学株式会社)
2.3.2.光硬化型インク組成物の調製
表4に示す各光硬化型インク組成物をプリンターに初期充填後、下記に示す評価を行った。
(1)不純物の評価
水系インク組成物と同様の方法で不純物の有無を確認した。
(2)保存安定性の評価
水系インク組成物と同様の方法で保存安定性の評価を行った。
(3)吐出安定性の評価
記録媒体としてPETフィルム(PET50A PLシン、リンテック社製)を用いた以外は、水系インク組成物と同様の方法で、吐出安定性の評価を行った。なお、500頁目のPETフィルムには紫外線(照射は、強度800mW/cm、ピーク波長395nm)を十分に照射し、光硬化型インク組成物を十分に硬化させた後、評価を行った。
2.4.評価結果
表1〜表4の結果から明らかなように、実施例1〜14のインクジェット用インク組成物によれば、水系インク、溶剤系インク、及び光硬化型インクのいずれの場合であってもイオン性液体を所定量含有することで、インク中の不純物の発生を抑制できることが分かった。その結果、インクの保存安定性や吐出安定性も良好となることが分かった。
また、インクに複数種のイオン性液体が配合されることにより、インクに1種のイオン性液体が配合された場合よりも良好な結果が得られることが分かる。これは、配合されたイオン性液体の種類が増えることにより、構造や溶解性においてより広い範囲の異物を溶解しやすくなったためと考えられる。
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。

Claims (9)

  1. 色材としての顔料または分散染料と、イオン性液体とを含み、
    前記イオン性液体の含有量が0.05質量%以上5質量%以下である、インクジェット用インク組成物。
  2. 前記イオン性液体が、150℃未満の温度で液体のイオン性化合物である、請求項1に記載のインクジェット用インク組成物。
  3. 前記イオン性液体と前記色材との含有比率(イオン性液体含有量/色材含有量)が0.01以上1以下である、請求項1または請求項2に記載のインクジェット用インク組成物。
  4. さらに、ガラス転移温度が0℃以下の樹脂を含む、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のインクジェット用インク組成物。
  5. 前記イオン性液体と前記樹脂との含有比率(イオン性液体含有量/樹脂含有量)が0.01以上5以下である、請求項4に記載のインクジェット用インク組成物。
  6. 前記イオン性液体として、2種以上のイオン性液体を含む、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載のインクジェット用インク組成物。
  7. さらに、溶剤として水を含み、
    前記イオン性液体が水溶性である、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のインクジェット用インク組成物。
  8. さらに、溶剤として有機溶剤を含み、
    前記イオン性液体が非水溶性である、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のインクジェット用インク組成物。
  9. さらに、重合性化合物を含み、
    前記イオン性液体が非水溶性である、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載のインクジェット用インク組成物。
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