JP7278490B2 - 消弧用絶縁材料成形体、回路遮断器、混合フィラーの製造方法および消弧用絶縁材料成形体の製造方法 - Google Patents

消弧用絶縁材料成形体、回路遮断器、混合フィラーの製造方法および消弧用絶縁材料成形体の製造方法 Download PDF

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Description

本開示は、開離した電極間に発生するアークの消弧を促進する消弧用絶縁材料成形体、回路遮断器、混合フィラーの製造方法および消弧用絶縁材料成形体の製造方法に関する。
回路遮断器は、過負荷または短絡などの要因で二次側の負荷回路および電線を含む回路に異常な電流が流れたときに電路を開放し、一次側からの電源供給を遮断することによって、二次側の回路を損傷から回避するために用いられる装置である。このような回路遮断器は、例えば、一般家庭、工場および事業所等で用いられている。
一般に、回路遮断器は、消弧室、可動接触子および固定接触子を備える。これらの接触子のそれぞれは、接点を有し、消弧室内に収容されている。通電時、可動接触子と固定接触子とは接触している。このような回路遮断器において、過剰電流または定格電流の通電時に、可動接触子の接点と固定接触子の接点とを開離させることによって、強制的に電流が遮断される。このとき、可動接触子と固定接触子との間には、アークが発生、すなわち点弧する。これは、可動接触子と固定接触子とが離れても、電流が流れ続けようとするためである。
アークは、回路遮断器の構成部品への熱的および電磁力的な負担となるので、速やかな消弧が求められる。このため、回路遮断器では、遮断時に発生するアークの消弧を促進するため、アーク発生部の周辺に、アークの消弧に寄与する消弧用絶縁材料成形体を有する消弧装置が配置される。消弧用絶縁材料成形体は、アークに曝露されると、消弧用絶縁材料成形体を構成する材料自体が分解してガスを発生し、発生したガスによるアークの冷却、および発生したガスの吹きつけによるアークの延伸などによって、アークの速やかな消弧に寄与する。
特許文献1には、消弧装置に用いられる消弧用絶縁材料成形体が開示されている。特許文献1に記載の消弧用絶縁材料成形体は、主成分をエポキシ変性メラミン樹脂とし、主フィラーを粉末パルプであるセルロース繊維とし、添加剤をε-カプロラクタムまたはガラス繊維として含有した消弧用絶縁材料によって形成される。メラミン系の樹脂を用いた消弧用絶縁材料は、アーク暴露時に生じる熱分解ガスの発生量が多く、アークの消弧性能に優れる。また、消弧用絶縁材料成形体へ粉末パルプを添加することによって、ガラス繊維と比較して熱分解ガスの発生量を低減することなく、機械的強度および耐熱変形性に優れた消弧用絶縁材料成形体を実現可能である。
特開平6-325653号公報
しかしながら、特許文献1に記載の消弧用絶縁材料成形体は、アークに曝露した際、回路遮断器の内部および消弧用絶縁材料成形体の表面の絶縁性能の低下を引き起こしやすいという問題があった。これは、アーク暴露時に生じる高熱によって、成形体に含まれる有機成分、特に粉末パルプから導電性の炭素粒子が飛散し、この炭素粒子が回路遮断器の構成部材の表面に付着することが原因の一つであると推測される。そこで、粉末パルプの添加量を減らしてガラス繊維に置き換えることで、導電性の炭素粒子の生成量と成形体の損耗量とを低減することが可能であるが、ガラス繊維の添加量の増大に伴い熱分解ガス量が低減し、消弧性能が低下してしまうという問題があった。
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、アーク暴露時の熱分解ガスの発生量が従来に比して低減することなく、アークに暴露した際の表面の絶縁性能の低下を従来に比して抑制することができる消弧用絶縁材料成形体を得ることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の消弧用絶縁材料成形体は、分子構造中に酸素原子を含む樹脂を主成分とする樹脂組成物を含むマトリックス樹脂と、マトリックス樹脂に添加され、多糖類の微細繊維または針状結晶である多糖類微粒子を無機充填剤に吸着させた混合フィラーと、を含む。
本開示によれば、アーク暴露時の熱分解ガスの発生量が従来に比して低減することなく、アークに暴露した際の表面の絶縁性能の低下を従来に比して抑制することができるという効果を奏する。
実施の形態1による消弧用絶縁材料成形体の構成の一例を模式的に示す断面図 実施の形態2による回路遮断器における消弧装置の遮断時の様子の一例を模式的に示す正面図 実施の形態2による回路遮断器における消弧装置の遮断時の様子を模式的に示す断面図であり、図2のIII-III断面図 実施の形態2による回路遮断器における消弧装置の消弧動作の一例を模式的に示す図 実施の形態2による回路遮断器の一例を模式的に示す断面図 実施の形態2による回路遮断器の一例を模式的に示す一部断面図 実施の形態2での固定接触子および可動接触子からなる接触子対と消弧用絶縁材料成形体との間の配置関係の一例を示す側面図 実施の形態2での接触子対と消弧用絶縁材料成形体との間の配置関係の一例を示す上面図 絶縁性および消弧性能の試験にて用いる装置の構成の一例を示す断面図 絶縁性および消弧性能の試験に用いる装置の構成の一例を示す側面図 比較例1,2による消弧用絶縁材料成形体の構成の一例を模式的に示す断面図
以下に、本開示の実施の形態にかかる消弧用絶縁材料成形体、回路遮断器、混合フィラーの製造方法および消弧用絶縁材料成形体の製造方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に示す図面においては、理解の容易のため、各部の縮尺が実際のものとは異なる場合がある。また、各図面間においても同様である。
実施の形態1.
実施の形態1では、消弧用絶縁材料成形体について説明する。消弧用絶縁材料成形体は、回路遮断器に用いられる。消弧用絶縁材料成形体の回路遮断器内での配置等については、実施の形態2で詳しく述べる。
図1は、実施の形態1による消弧用絶縁材料成形体の構成の一例を模式的に示す断面図である。消弧用絶縁材料成形体10は、分子構造中に酸素原子(O)を含む樹脂を主成分とする樹脂組成物を含むマトリックス樹脂11と、マトリックス樹脂11に添加され、微細繊維または針状結晶の形状である多糖類からなる粒子である多糖類微粒子122を無機充填剤121に吸着させた混合フィラー12と、を含む。多糖類微粒子122の一部は、マトリックス樹脂11中の無機充填剤121間に分散されているが、大部分は、無機充填剤121の表面の近傍に存在している。多糖類微粒子122は、一例では、無機充填剤121の表面に吸着されている。
マトリックス樹脂11に酸素原子を含むことによって、アーク曝露時に生じる樹脂の熱分解ガス中の酸素原子を分子中に含む気体の割合が増大し、消弧用絶縁材料成形体10の表面における導電性粒子の生成を防ぐことから絶縁性を維持することができる。また、多糖類微粒子122を無機充填剤121に吸着させて、マトリックス樹脂11に添加することによって、粉末パルプのような多糖類以外の不純物を多量含む従来の有機繊維と比較して、アーク暴露時の熱分解反応およびガス化反応の収率を向上することが可能となり、導電性の炭素粒子の発生量を低減することができる。またこのとき、消弧性能の高い水素および一酸化炭素等の低分子気体を従来材料よりも高い割合で含むガスが放出されるため、機械強度を低下させることなくアーク遮断性能を向上させることができる。
マトリックス樹脂11は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびポリアミド樹脂の群から選択される少なくとも1種類の樹脂を主成分とすることが好ましい。つまり、マトリックス樹脂11は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびポリアミド樹脂の群から選択される少なくとも1種類の樹脂を主成分とする樹脂組成物である。熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂および不飽和ポリエステル樹脂は、酸化性気体の生成による導電性粒子生成抑制効果に加えて、アーク暴露時の損耗量および熱変形量を低減することができる。また、熱可塑性樹脂であるポリアミド樹脂は、アーク暴露時に多量の熱分解ガスを発生することで、消弧用絶縁材料成形体10の表面への導電性粒子の付着を防ぐことができる。
エポキシ樹脂を含む組成物であるエポキシ樹脂組成物としては、消弧用絶縁材料成形体10の耐熱性および機械的強度等の物性に優れるという点から、脂肪族環または芳香族環を含むエポキシ化合物の主剤と、酸無水物またはアミンからなる硬化剤と、を含む樹脂を使用することが好ましい。特に主鎖に単結合の環構造を含む場合、芳香族環と比較して熱分解に要するエネルギが小さく、アーク曝露時に生成する炭素粒子の生成量を抑制することが可能であることから、脂肪族環を含むエポキシ化合物を主剤とすることが好ましい。また、エポキシ樹脂組成物が硬化した硬化体に含まれる酸素原子の割合を増大できるという点から、酸無水物を硬化剤とすることが好ましい。環構造を含む樹脂は元素組成が同等である直鎖高分子と比較して、主鎖の剛直性、および梯子状構造を有する等の理由によって、耐熱性および耐熱変形性に優れた消弧用絶縁材料成形体10を得ることが可能である。これらはアークの高温に曝される部材としてより適当な性質を有するといえる。
実施の形態1で使用されるエポキシ化合物としては、先に示した条件の範囲内であれば、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物であればよく、その構造に特に限定はない。例えば脂環式エポキシ化合物として、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、1,4-シクロヘキサンジメタノール ビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、4-ビニルシクロヘキサンジオキサイド、2-(3,4-エポキシ)-シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等が挙げられる。また、その他のエポキシ化合物として、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、レゾルシノール等とエピクロロヒドリンの反応により得られる、グリシジルエーテル型のエポキシ化合物等が挙げられる。これらのエポキシ化合物は単独で使用されてもよいし、2種類以上を同時に混合して使用されてもよい。
実施の形態1で使用される硬化剤としては、先に示した条件の範囲内であれば、その構造に特に限定はない。酸無水物からなる硬化剤である酸無水物硬化剤として、例えばビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチル-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチルシクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物等が挙げられる。また、アミンからなる硬化剤であるアミン系硬化剤は、第一級または第二級アミンとして、トリエチレンテトラミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、メチルシクロヘキシルアミン等を使用することができ、第三級アミンとして、N,N-ベンジルジメチルアミン、ジメチルアニリン、ジアザビシクロウンデセン等を使用することができる。これらの硬化剤は単独で使用されてもよいし、2種類以上を同時に混合して使用されてもよい。以下では、第一級または第二級アミンからなるアミン系硬化剤は、第一級または第二級アミン硬化剤と称され、第三級アミンからなるアミン系硬化剤は、第三級アミン硬化剤と称される。
エポキシ化合物に対する酸無水物硬化剤の配合量は、エポキシ化合物100質量部に対して90質量部以上150質量部以下であることが好ましい。エポキシ化合物に対する第一級または第二級アミン硬化剤の配合量は、エポキシ化合物100質量部に対して10質量部以上50質量部以下であることが好ましい。エポキシ化合物に対する第三級アミン硬化剤の配合量は、エポキシ化合物100質量部に対して0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。これは、硬化剤を上記の範囲外とすると、硬化物の電気的特性または機械的特性が消弧用絶縁材料成形体10に求められる性能を得られない可能性があるためであり、硬化剤を上記の範囲とすることで、電気的特性および機械的特性に優れた硬化物が得られる。なお、エポキシ化合物に対する酸無水物硬化剤の配合量は、110質量部以上140質量部以下であることがより好ましい。エポキシ化合物に対する第一級または第二級アミン硬化剤の配合量は、20質量部以上40質量部以下であることがより好ましい。エポキシ化合物に対する第三級アミン硬化剤の配合量は、0.2質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。このような配合量の硬化剤を添加することによって、機械的強度および電気的特性に優れるとともに、アーク暴露時の特性、より具体的には導電性粒子生成を抑制する効果に優れた硬化物が得られる。
また、実施の形態1でエポキシ化合物を硬化する際に、硬化促進剤を添加してもよい。硬化促進剤とは、エポキシ化合物と硬化剤とが反応する際に、硬化反応を促進する機能を有する化合物のことをいう。実施の形態1で用いられる硬化促進剤は、一般に使用されるものであれば特に制限はない。特に、酸無水物硬化剤を使用する場合には、イミダゾール系硬化促進剤またはジアザビシクロウンデセン系硬化促進剤を使用することが好ましい。この場合には、イミダゾール系硬化促進剤またはジアザビシクロウンデセン系硬化促進剤が単独で用いられてもよいし、イミダゾール系硬化促進剤またはジアザビシクロウンデセン系硬化促進剤と50質量%までの他のエポキシ樹脂用硬化促進剤とを混合させた混合物が用いられてもよい。このような硬化促進剤は、先述したエポキシ化合物の合計量100質量部当たり、0.1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。これは、エポキシ化合物の合計量100質量部当たりの硬化促進剤の量が0.1質量部未満では硬化促進効果が不十分となる可能性があり、また5質量部を超えると、硬化物の色相が悪化する可能性があるからである。また、硬化促進剤は、エポキシ化合物の合計量100質量部当たり、0.2質量部以上3質量部以下の割合で用いられることがより好ましい。このような配合量の硬化促進剤を添加することによって、硬化の促進および色相の悪化防止を両立しつつ、機械的強度、電気的特性およびアーク暴露時の特性が良好な範囲となる硬化物を得ることができる。
不飽和ポリエステル樹脂を含む組成物である不飽和ポリエステル樹脂組成物としては、不飽和ポリエステルをラジカル重合性モノマーに溶解させ、硬化することにより得られる樹脂を使用することが好ましい。不飽和ポリエステルとしては、不飽和多塩基酸またはその無水物と、多価アルコールと、任意成分である飽和多塩基酸またはその無水物と、を反応させて得られるものであれば、その種類は特に限定されるものではない。不飽和ポリエステルの重量平均分子量は、限定されるものではないが、1000以上30000以下であることが好ましい。また、不飽和ポリエステル樹脂に含まれる酸素原子の割合を増大し、導電性の炭素粒子の生成を抑制するという点から、脂肪族環等の単結合から形成される成分を多く含むことが好ましい。
不飽和多塩基酸またはその無水物としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、メチルシクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物等が挙げられる。これらの不飽和多塩基酸またはその無水物は、単独で使用されてもよいし、あるいはこれらの不飽和多塩基酸およびその無水物のうち2種類以上を混合した混合物が使用されてもよい。
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ビスフェノールA等が挙げられる。これらの多価アルコールは、単独で使用されてもよいし、またはこれらの多価アルコールのうち2種類以上を混合した混合物が使用されてもよい。
飽和多塩基酸またはその無水物としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物等が挙げられる。これらの飽和多塩基酸は、単独で使用されてもよいし、またはこれらの飽和多塩基酸およびその無水物のうち2種類以上を混合した混合物が使用されてもよい。
ラジカル重合性モノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、ブタジエン等が挙げられる。これらのラジカル重合性モノマーは、単独で使用されてもよいし、またはこれらのラジカル重合性モノマーのうち2種類以上を混合した混合物が使用されてもよい。これらのラジカル重合性モノマーの中でも、成長ラジカルの安定性が高く、不飽和結合の未反応部位を低減することで硬化物の特性を向上することができるという観点から、スチレンが好ましい。
また、不飽和ポリエステル樹脂組成物には、硬化剤が添加されてもよい。ここで示す硬化剤とは、不飽和ポリエステル樹脂とラジカル重合性モノマーとの架橋反応を促進する作用を有する化合物のことをいう。硬化剤としては、不飽和ポリエステル樹脂の硬化剤として一般に使用されるものであれば制限はないが、有機過酸化物系の硬化剤を用いることが好ましい。硬化剤は単独で使用されてもよいし、または2種類以上の硬化剤が混合された混合物が使用されてもよい。有機過酸化物系硬化剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ-t―ブチルパーオキサイド等が挙げられる。有機過酸化物系硬化剤は、種々の硬化促進剤と共に用いることができる。硬化促進剤は、有機過酸化物系硬化剤の分解、つまりラジカルの生成を促進することで、不飽和ポリエステル樹脂の硬化を加速させる作用を有する。硬化促進剤としては、不飽和ポリエステル樹脂の硬化促進剤として一般に使用されるものであれば制限はなく、金属石鹸、第三級アミン等を用いることができる。
また、不飽和多塩基酸またはその無水物と、多価アルコールと、任意成分である飽和多塩基酸またはその無水物と、を反応させて得られる不飽和ポリエステル樹脂の代わりに、任意のエポキシ化合物と不飽和一塩基酸との付加反応により合成されるビニルエステル樹脂が用いられてもよい。
上記ポリアミド樹脂としては、ジアミン類とジカルボン酸類とを反応させて得られるものであれば、その種類は特に限定されるものではない。消弧用絶縁材料成形体10の高耐熱性と高消弧性能を両立する点から、融点が230℃以上となる脂肪族ポリアミド樹脂を使用することが好ましい。ポリアミド樹脂の重量平均分子量は、限定されるものではないが、5000以上50000以下であることが好ましく、消弧性能と耐熱性を両立する点から7000以上20000以下であることがより好ましい。
ポリアミド樹脂としては、例えばポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド4,6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10、ポリアミド6,12等の脂肪族ポリアミド、あるいはポリアミド6,C等の脂環式ポリアミドが挙げられる。これらのポリアミド樹脂は、単独で使用されてもよいし、またはこれらのポリアミド樹脂のうち2種類以上を混合した混合物が使用されてもよい。消弧用絶縁材料成形体10の消弧性能と耐熱性とを両立するためには、特に、ポリアミド6、ポリアミド4,6、ポリアミド6,6またはポリアミド6,Cを用いることが好ましい。
上記無機充填剤121は、成形体の消弧性能および絶縁性能の向上の観点から、金属酸化物、金属水酸化物、混合酸化物、粘土鉱物および固形化酸の群から選択される少なくとも1種類の材料である。これらの無機充填剤121は、多糖類微粒子122を担持する成分であり、アーク暴露時に周囲の多糖類微粒子122およびマトリックス樹脂11に対して触媒として作用し、有機成分の熱分解とガス化を促進することができる。消弧用絶縁材料成形体10の全重量に対する無機充填剤121の充填割合は、3重量%以上65重量%未満である。これは、無機充填剤121の充填割合が65重量%以上である場合には、熱硬化性樹脂のアーク曝露によって生成する熱分解ガスの発生量が不足し、アークの遮断効果が低下してしまうからである。また、無機充填剤121の充填割合を3重量%未満とした場合には、多糖類微粒子122を十分に吸着することができず、導電性の炭素粒子の生成を抑制し、消弧性能を向上する効果が損なわれてしまうからである。なお、消弧用絶縁材料成形体10の全重量に対する無機充填剤121の充填割合は、好ましくは3重量%以上40重量%以下である。このような無機充填剤121の充填割合とすることで、硬化物の機械的強度、電気的特性およびアーク暴露時の特性が良好な範囲となるように維持しつつ、成形性に優れた消弧用絶縁材料成形体10を得ることができる。
上記金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタンまたは酸化ジルコニウム等が挙げられる。一例では、これらの金属酸化物は単独で使用される。
上記金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛または水酸化カルシウム等が挙げられる。アーク暴露に伴う脱水反応の後に、金属酸化物として多糖類の熱分解に有効に作用できるという点から、特に水酸化アルミニウムを用いることが好ましい。
上記混合酸化物は、金属酸化物を2種類以上混合したものである。混合酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウムまたは二酸化ケイ素等の金属酸化物を2種類以上混合したものが挙げられる。
上記粘土鉱物としては、カオリナイト、ベントナイト、モンモリロナイトまたはゼオライト等が挙げられる。これらの粘土鉱物は、単独で使用されてもよいし、またはこれらの粘土鉱物のうち2種類以上のものを混合した混合物が使用されてもよい。
上記固形化酸は、二酸化ケイ素または酸化アルミニウム等に硫酸、リン酸または酢酸等の酸を含浸させ、あるいは二酸化ケイ素または酸化アルミニウム等を硫酸、リン酸または酢酸等の酸で洗浄し、表面を改質させたものである。
また上記無機充填剤121としては、ニッケル(Ni)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)から選ばれる少なくとも1種類の遷移金属あるいはその誘導体を、多孔質無機材料に対して含浸または担持させた材料を使用することができる。これらの金属原子は有機物の水素化等の反応に高い活性を有するために、アーク暴露時に消弧用絶縁材料成形体10から生じる熱分解ガスの消弧性能を一段と高めることが可能となる。
上記多孔質無機材料は、有機成分の熱分解とガス化とを促進することが可能な金属水酸化物等の物質から選ばれる。多孔質無機材料として、特に酸化アルミニウム、各種ゼオライト等の多孔質体を用いることが好ましい。
上記無機充填剤121の数平均粒子径は、0.1μm以上50μm以下の範囲であることが好ましい。これは、数平均粒子径が0.1μmよりも小さいと消弧用絶縁材料成形体10の分散性および成形性が顕著に低下してしまうからである。また、数平均粒子径が50μmよりも大きいと多糖類微粒子122の担持量が著しく低下するため、導電性の炭素粒子の低減および熱分解ガスの組成の改質の効果を得ることができなくなるからである。特に、無機充填剤121の数平均粒子径は、0.5μm以上30μm以下であることが好ましい。このような無機充填剤121の数平均粒子径の範囲とすることで、硬化物の機械的強度、電気的特性およびアーク暴露時の特性が良好な範囲となるように維持しつつ、成形性に優れた消弧用絶縁材料成形体10を得ることができる。
また、上記無機充填剤121は、数平均粒子径が5μm以上となる粒子の割合が30質量%以上であることが好ましい。数平均粒子径が5μm以上の粒子の割合を増やすことで、5μm未満の粒子を使用した場合と比較してマトリックス樹脂11の消耗量を増加させることができ、消弧性能を向上させることが可能である。これらの無機充填剤121は、成形体内に一様に分散可能なものであれば、その形状とサイズとを限定することなく用いることが可能である。無機充填剤121と多糖類微粒子122との接触面積を増加させるという点から、多孔質体の無機充填剤121を用いてもよい。なお、一例では、無機充填剤121の数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)で撮像した撮像データを用いて算出することができる。
上記多糖類微粒子122は、多糖類を主成分とする微細繊維または針状結晶である。ここで微細繊維とは、素材のアスペクト比が30以上のものをいい、針状結晶とは、素材のアスペクト比が5以上30未満となるものをいう。素材のアスペクト比は、素材の短径に対する素材の長径の比である。多糖類は、単結合のみで構成された環状構造を有し、アーク暴露のような急速加熱条件下では水素など消弧性能の高い低分子気体を熱分解ガスとして放出する物質である。上記多糖類微粒子122の添加量は、100質量部の無機充填剤121に対して多糖類微粒子122が0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましい。これは、多糖類微粒子122が0.01質量部未満である場合には、アーク暴露時に十分な量の熱分解ガスを生成することができず、消弧用絶縁材料成形体10の強度が低下してしまうからである。また、多糖類微粒子122が5質量部よりも多い場合には、多糖類微粒子122同士の凝集が生じやすくなるため、均質な消弧用絶縁材料成形体10を得ることが困難となるからである。特に、多糖類微粒子122の添加量は、100質量部の無機充填剤121に対して多糖類微粒子122が0.05質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。このような多糖類微粒子122の添加量とすることで、多糖類微粒子122同士の凝集を抑止し、無機充填剤121への吸着に優れた消弧用絶縁材料成形体10を得ることができる。
上記多糖類微粒子122は、セルロース、キチンおよびキトサンの群から選択される少なくとも1種類の材料からなる。これらの素材は生物の体を構成する成分であることから環境負荷が小さく、軽量で高強度である。また、これらの素材は融点が高いあるいは存在しないため、ある程度高温で成形する樹脂に対して添加することが可能である。また、微細化のための処理を施して、アーク暴露時に導電性の炭素粒子へ変異しやすいリグニン等の非多糖類成分の割合を極小化することによって、アーク暴露後の絶縁性を損ねることなく、消弧用絶縁材料成形体10の強度および消弧性能を向上させることができる。実施の形態1では、既知の化学的または物理的手法で微細に開繊された繊維を使用することができる。また、これらの多糖類微粒子122は事前に調製したものを使ってもよいし、市販されているものを使ってもよい。市販されているものとしては、0.5質量%以上3質量%以下の水分散液の状態が挙げられる。
上記多糖類微粒子122の平均繊維径は、1nm以上30nm以下の範囲であることが好ましい。これは、平均繊維径が1nm未満である場合には、開繊および成形に困難が生じるからである。また、平均繊維径が30nmよりも大きい場合には、繊維同士を結合する非多糖類成分量が増大するため、アーク暴露時の導電性の炭素粒子の生成量を増大させてしまうからである。なお、ここでいう平均繊維径は、電界放出型走査電子顕微鏡(Field Emission-SEM:FE-SEM)によって観察された微細繊維または針状結晶の径を平均することによって得られたものである。また、多糖類微粒子122の平均繊維径は、特に1nm以上10nm以下であることが好ましい。このような多糖類微粒子122の平均繊維径の範囲では、多糖類微粒子122は単繊維レベルとなり、非多糖類成分がほぼ含まれず、特に、炭素粒子の生成量を低減することができる。さらに、従来使用される粉末パルプは、通常、5μm以上の粒子径を有しており、繊維同士を結合する非多糖類成分量が多く含まれている。つまり、実施の形態1で使用される多糖類微粒子122は、粉末パルプと比較して非多糖類成分量がきわめて少ない、微細繊維または針状結晶からなる多糖類である。
上記したように、実施の形態1では、無機充填剤121に対して多糖類微粒子122を吸着させた混合フィラー12が用いられる。多糖類微粒子122を単独でアーク暴露した場合と比較して、多糖類微粒子122が無機充填剤121の極近傍でアーク由来の高温に曝されることによって、多糖類微粒子122のガス化が促進され消弧用絶縁材料成形体10から生成する導電性の炭素粒子量が低減される。同時に、消弧に有効なガス成分の割合を増大させる効果により、消弧性能を向上させることが可能となる。
つぎに、実施の形態1による消弧用絶縁材料成形体10の製造方法について説明する。まず、実施の形態1による消弧用絶縁材料成形体10で使用される混合フィラー12を製造する。混合フィラー12を製造する際には、多糖類微粒子122、すなわち多糖類からなる微細繊維または針状結晶を水系溶媒に分散させた分散液と、無機充填剤121と、を混合する。このとき、無機充填剤121は事前に溶媒に分散させたものを使用してもよい。混合の際は、無機充填剤121の分散液に対し、多糖類繊維等の分散液を、3回以上に分けて少量ずつ添加することが好ましい。このような手順をとることで分散液の安定性を損なわずに、無機充填剤121へ多糖類微粒子122を吸着することが可能となる。混合する装置は、特に限定されず、少量であればフラスコを用いた手撹拌またはメカニカルスターラを用いることができ、一般にはプラネタリミキサ、ホモジナイザ、自転公転ミキサ等を用いることができる。無機充填剤121と多糖類微粒子122とは、そのまま用いてもよいし、あらかじめ表面処理を行ってもよい。表面処理の種類としては主にシランカップリング剤を用いた疎水化が挙げられる。無機充填剤121へ多糖類繊維が吸着しやすくなることから、特に無機充填剤121と多糖類微粒子122とが双方ともに疎水化処理されていることが好ましい。
混合フィラー12を樹脂成分へ添加する際は、水系溶媒に分散させた混合フィラー12から溶媒を溜去し、乾燥した状態のものが用いられる。乾燥には、例えば加熱乾燥、減圧乾燥または凍結乾燥等より選択される方法を使用することができる。混合物の乾燥によって、多糖類微粒子122が無機充填剤121の表面に吸着した混合フィラー12を得ることができる。乾燥条件は、装置および混合フィラー12の量によって適宜最適化されるが、100℃以上200℃未満の温度範囲内で加温することが好ましい。このような加温条件とすることで、多糖類成分を劣化することなく乾燥することができる。
ついで、マトリックス樹脂11に混合フィラー12を添加して撹拌する。その後、混合フィラー12を添加したマトリックス樹脂11を硬化させることによって、消弧用絶縁材料成形体10が製造される。マトリックス樹脂11がエポキシ樹脂組成物である場合には、エポキシ化合物の主剤に硬化剤を加えて撹拌してエポキシ樹脂組成物を形成する。ついで、エポキシ樹脂組成物に混合フィラー12を添加して均質になるまで撹拌する。その後、混合フィラー12を添加したエポキシ樹脂組成物を加熱しながら硬化させる。
実施の形態1において使用されるエポキシ樹脂組成物の硬化方法としては、特に限定されず、密閉式硬化炉または連続硬化が可能なトンネル炉等の当該技術分野において公知の方法で行うことができる。硬化温度は、100℃以上250℃以下の範囲であり、硬化時間は、30秒以上15時間以下の範囲であることが好ましい。内部応力が低減され、耐熱性に優れた成形体を得るために、硬化温度が100℃以上150℃以下の範囲で、硬化時間が0.5時間以上5時間以下の範囲である条件で前硬化した後、硬化温度が180℃以上250℃以下の範囲で、硬化時間が0.5時間以上15時間以下の範囲である条件で後硬化を実施する、2段階硬化を実施してもよい。このようにして得られたエポキシ樹脂組成物の硬化物は、耐熱性および機械的強度等に優れ、単位体積当たりに含まれる酸素原子量の多い消弧用絶縁材料成形体10として用いることができる。
マトリックス樹脂11が不飽和ポリエステル樹脂である場合には、不飽和ポリエステルをラジカル重合性モノマーに溶解させて不飽和ポリエステル樹脂を形成する。ついで、不飽和ポリエステル樹脂に混合フィラー12を添加して均質になるまで撹拌する。その後、混合フィラー12を添加した不飽和ポリエステル樹脂組成物を加熱しながら硬化させる。
実施の形態1において使用される不飽和ポリエステル樹脂組成物の硬化方法としては、特に限定されず、密閉式硬化炉または加熱金型等の当該技術分野において公知の方法で行うことができる。硬化温度は、20℃以上200℃以下の範囲であり、硬化時間は、10秒以上24時間以下の範囲であればよい。特に、硬化温度が、60℃以上170℃以下の範囲であり、硬化時間が、10秒以上12時間以下の範囲で加熱硬化することが、耐熱性および機械的強度を向上させる観点から好ましい。
マトリックス樹脂11がポリアミド樹脂組成物である場合には、加熱したポリアミド樹脂に混合フィラー12を添加して均質になるまで撹拌する。その後、混合フィラー12を添加したポリアミド樹脂を冷却して硬化させる。ポリアミド樹脂組成物の硬化方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。
なお、乾燥した混合フィラー12を樹脂成分へ添加する方法としては、特に限定されず、混錬機等の当該技術分野において公知の方法で行うことができる。
また、消弧用絶縁材料成形体10の製造方法としては、特に限定されず、射出成形法、反応射出成形法、注型法、圧縮成形法、トランスファ成形法等の当該技術分野において公知の方法で行うことができる。また、実施の形態1による消弧用絶縁材料成形体10には、実施の形態1による効果を損なわない範囲でガラス繊維、セラミック繊維、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、安定剤または着色剤等の公知の添加剤を添加することが可能である。これらを添加した場合には、消弧用絶縁材料成形体10の耐熱性および機械的強度等を向上させる効果を得ることができる。
実施の形態1では、消弧用絶縁材料成形体10は、分子構造中に酸素原子を含む樹脂を主成分とする樹脂組成物を含むマトリックス樹脂11と、無機充填剤121と多糖類微粒子122とを含み、マトリックス樹脂11に添加される混合フィラー12と、を含む。多糖類微粒子122の大部分は、無機充填剤121に吸着されている。この構成によって、多糖類以外の不純物を多量に含む従来の有機繊維が添加される場合と比較して、アーク暴露時に樹脂および多糖類が熱分解して生じる導電性の炭素粒子の生成量を低減し、同時に熱分解ガスに含まれる水素および一酸化炭素等の低分子気体の割合を増加させて消弧性能を高めることができる。
また、実施の形態1による混合フィラー12の製造方法は、無機充填剤121と多糖類微粒子122とを、溶媒に分散させて混合し、多糖類微粒子122を無機充填剤121に吸着または担持させる工程と、無機充填剤121と多糖類微粒子122とを含む溶媒を溜去して乾燥させる工程と、を含む。これによって、マトリックス樹脂11へ添加した後も無機充填剤121と多糖類成分とが近接して存在できるため、混合フィラー12を添加したマトリックス樹脂11を硬化させることによって形成した消弧用絶縁材料成形体10において、アーク暴露時の導電性の炭素粒子の生成抑制と消弧性能の向上とを両立することができる。
実施の形態2.
実施の形態2では、消弧用絶縁材料成形体10を用いた回路遮断器について説明する。図2は、実施の形態2による回路遮断器における消弧装置の遮断時の様子の一例を模式的に示す正面図である。図3は、実施の形態2による回路遮断器における消弧装置の遮断時の様子を模式的に示す断面図であり、図2のIII-III断面図である。図2および図3において、固定接触子21が配置される面内において、固定接触子21の延在方向をX軸方向とし、X軸方向と直交する方向をY方向とする。また、X軸方向およびY軸方向に垂直な方向をZ軸方向とする。
回路遮断器20は、X軸方向に延在する固定接触子21と、ZX面内方向で移動可能な可動接触子23と、消弧用絶縁材料成形体10と、を備える。固定接触子21は、可動接触子23と対向する面における、固定接触子21の延在方向の一端に固定接点22を有する。可動接触子23は、可動接点24を有する。可動接点24は、固定接触子21と対向する面において、固定接点22と対応する位置に設けられている。可動接点24が固定接点22と接触した状態において、可動接触子23は、X軸方向に延在した形状を有する。一例では、可動接触子23の可動接点24が設けられる端部とは反対側の端部で、可動接触子23はZX面内方向で回動可能に固定される。
消弧用絶縁材料成形体10は、可動接点24と固定接点22とが開離するときに可動接点24と固定接点22との間で発生するアークに曝される位置に配置される。図2および図3の例では、固定接触子21および可動接触子23のY軸方向の両側に消弧用絶縁材料成形体10が配置されている。この消弧用絶縁材料成形体10は、実施の形態1で説明したものであり、分子構造中に酸素原子(O)を含む樹脂を主成分とする樹脂組成物を含むマトリックス樹脂11と、無機充填剤121および多糖類微粒子122を含み、マトリックス樹脂11に添加される混合フィラー12と、を含む樹脂によって形成されている。多糖類微粒子122の大部分は、無機充填剤121に吸着された構造を有する。すなわち、無機充填剤121の表面における多糖類微粒子122の密度は、隣接する無機充填剤121の間の領域における多糖類微粒子122の密度よりも大きい。
次に、回路遮断器20の動作について説明する。図2および図3において、図示しない開閉機構部が動作して可動接触子23が回動することによって、可動接点24と固定接点22とが接触または開離する仕組みとなっている。つまり、開閉機構部が、可動接点24が固定接点22と接触または開離するように可動接触子23を作動させる。接点同士を接触させることによって、電力が電源から負荷に供給される。通電の信頼性を確保するために可動接点24は固定接点22に規定の接触圧力で押さえつけられている。
短絡事故などが起こり回路に大きな過電流が流れると、可動接点24と固定接点22との間の接触面における電磁反発力が非常に強くなる。電磁反発力が、可動接点24に加わっている接触圧力に打ち勝つと、可動接触子23は回動し、可動接点24と固定接点22とが開離する。さらに、開閉機構部および図示しない引き外し装置の動作によって、固定接点22と可動接点24との開離距離が増大する。開離距離が増大すると、アーク抵抗が増大し、これによってアーク電圧が上昇する。
このような遮断動作中において、可動接点24と固定接点22との間には、アークによって数ミリ秒の短時間のうちに大量のエネルギが発生する。このとき、消弧装置の側面に設けられた消弧用絶縁材料成形体10がアークに曝されることによって熱分解ガスが発生し、発生した熱分解ガスによってアークが冷却され消弧される。
図4は、実施の形態2による回路遮断器における消弧装置の消弧動作の一例を模式的に示す図である。図4では、回路遮断器20のオフ状態である遮断時の様子が示されている。消弧装置30は、金属製のU字型またはV字型の切欠部31aを有する複数の消弧板31を有する。複数の消弧板31は、一定間隔で積層して配置される。このような回路遮断器20では、可動接点24と固定接点22との間に発生したアーク100は、磁気力によって消弧板31の方向へ引き付けられ伸長するために、アーク電圧はさらに上昇する。また、消弧装置30である消弧板31にアーク100を取り込むことで過電流を限流させ、アーク100が消弧され、回路が遮断される。
上記回路遮断器20について、より詳細に説明する。図5は、実施の形態2による回路遮断器の一例を模式的に示す断面図である。図5では、回路遮断器20の接触時、すなわちオン状態の様子が示されている。図6は、実施の形態2による回路遮断器の一例を模式的に示す一部断面図である。図6は、図5に示される回路遮断器20が遮断時、すなわちオフ状態のときの一部を抜き出した図である。
回路遮断器20は、銅などの導体からなる可動接触子23と、可動接触子23の一端に固着された可動接点24と、可動接点24と接離する固定接点22と、固定接点22が固着された銅などの導体からなる固定接触子21と、固定接触子21の他端部に構成された電源側の端子部41と、負荷側の端子部42と、を備える。端子部41には、外部電源からの配線が接続される。端子部42には、負荷からの配線が接続される。
回路遮断器20は、可動接触子23を回動して開閉駆動する開閉機構部60と、開閉機構部60を手動で操作するためのハンドル61と、引き外し装置部70と、を備える。
回路遮断器20は、上記の各部品を収納または固定し、筐体50の一部を構成するカバー51およびベース52を備える。また、回路遮断器20は、端子部41を筐体50内と隔離するエンドプレート53を備える。エンドプレート53は、ベース52に設けられたガイド溝51aに挿入され、装着されている。エンドプレート53は、アーク100により生じたホットガスを排出する排気孔53aを有する。
回路遮断器20は、消弧装置30を備える。消弧装置30は、可動接点24と固定接点22との間に発生したアーク100を冷却および消弧する磁性体の金属からなるグリッドと呼ばれる複数の消弧板31と、複数の消弧版31を両側で保持する消弧側板32と、消弧用絶縁材料成形体10と、を有する。複数の消弧板31は、互いに空隙を介して積層配列されている。図5および図6の例では、消弧側板32は片側のみ示されている。消弧用絶縁材料成形体10および消弧側板32は、絶縁材料からなり、消弧用絶縁材料成形体10は、実施の形態1で説明した材料を含む。
図7は、実施の形態2での固定接触子および可動接触子からなる接触子対と消弧用絶縁材料成形体との間の配置関係の一例を示す側面図であり、図8は、実施の形態2での接触子対と消弧用絶縁材料成形体との間の配置関係の一例を示す上面図である。消弧用絶縁材料成形体10は、図6の状態における可動接点24および固定接点22の間に設けられている。図7および図8において、消弧用絶縁材料成形体10は、接触子対付近に設けられている。また、図8に示されるように上面から見ると、消弧用絶縁材料成形体10は、固定接点22を露出させ、アーク100に曝される固定接触子21の他の大部分を覆うように設けられている。この消弧用絶縁材料成形体10は、アーク100が固定接触子21の固定接点22以外の部分に移動しないようにするための絶縁部材の働きもしている。
消弧用絶縁材料成形体10は、分解ガスの吹き付けによるアーク100の冷却および消弧、分解ガスのガス流によるアーク100の消弧板31への誘導、並びに消弧装置30内の絶縁遮蔽を目的として設置される。実施の形態2では、無機充填剤121に対し多糖類微粒子122を吸着させた混合フィラー12を含む樹脂を用いた成形体とすることで、アーク100への暴露時に消弧性能の高い分解ガスを多量生成するとともに、アーク100の発生後に回路遮断器20の内部での導電性の炭素粒子の生成を抑制する。これによって、回路遮断器20の消弧性能を高め、消弧用絶縁材料成形体10の表面および回路遮断器20の内部における絶縁性を維持することができるという効果を有する。この効果によって、材料沿面におけるアーク100の再点弧を抑制するなど、繰返し使用時の安全かつ迅速な消弧に寄与する。
実施の形態2による回路遮断器20における消弧用絶縁材料成形体10の形状および配置は、上記で説明した内容に限定されるものではない。すなわち、回路遮断器20において、アーク100の発生箇所の近傍であって、熱分解ガスを十分な量で発生させることができ、かつアーク100の移動を妨げる位置に、消弧用絶縁材料成形体10が配置されていればよい。例えば、磁界の作用によるアーク100の引付けおよび伸長を目的として回路遮断器20の内部に設置される磁石の周囲または近傍に、消弧用絶縁材料成形体10を配置してもよい。
(混合フィラーの調製および消弧用絶縁材料成形体の製造方法)
[実施例1]
平均粒子径が9μmの酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、AS‐50)20g、イオン交換水50gおよび3‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン株式会社製、KBM‐403)0.5gを混合し、これにセルロースナノファイバの水分散液50gを添加して均一になるまで撹拌する。以下では、セルロースナノファイバは、CNFと表記されることがある。ここで、CNFの平均繊維径は5nmであり、CNFの平均繊維長は500nmであり、CNFの水分散液におけるCNFの濃度は0.1質量%である。CNFの水分散液の添加を4回繰り返すことで、270gの混合水溶液を得る。その後、ロータリエバポレータにて90℃で減圧乾燥し、概ね水分が除去されたスラリーを、乾燥炉にて180℃で3時間放置し、CNFを吸着した酸化アルミニウムの混合フィラー12を得る。
ついで、エポキシ化合物100質量部に対し、130質量部の酸無水物硬化剤と1質量部の硬化促進剤とを加えて撹拌した後、70質量部の混合フィラー12を添加して均質になるまで攪拌する。得られた混合物を型枠内へ注入し、加熱硬化処理を実施することによって、縦40mm、横60mm、厚さ2mmの消弧用絶縁材料成形体10を得る。加熱硬化処理として、120℃で2時間の前硬化処理と、200℃で4時間の後硬化処理と、を実施する。
[実施例2]
酸化アルミニウムを平均粒子径が7μmの水酸化アルミニウム(日本軽金属株式会社製、SB103)に変更すること以外は実施例1と同様にして、CNFを吸着した水酸化アルミニウムの混合フィラー12を調製する。また、このCNFを吸着した水酸化アルミニウムの混合フィラー12を用いて、実施の形態1と同様にして、消弧用絶縁材料成形体10を製造する。
[実施例3]
実施例1と同様にして、混合フィラー12を調製する。また、不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対し、ラジカル重合性モノマー60質量部と硬化剤1質量部とを加えて撹拌した後、50質量部のCNFを吸着した酸化アルミニウムの混合フィラー12を添加して均質になるまで攪拌する。得られた混合物を型枠内へ注入し、加熱硬化処理を実施することによって、縦40mm、横60mm、厚さ2mmの消弧用絶縁材料成形体10を得る。加熱硬化処理として、120℃で2時間の前硬化処理と、150℃で4時間の後硬化処理と、を実施する。なお、ラジカル重合性モノマーとして、スチレンが使用される。
[実施例4]
酸化アルミニウムを平均粒子径が7μmの水酸化アルミニウムに変更すること以外は実施例1と同様にして、CNFを吸着した水酸化アルミニウムの混合フィラー12を調製する。また、このCNFを吸着した水酸化アルミニウムの混合フィラー12を用いて、実施例3と同様にして、消弧用絶縁材料成形体10を製造する。
[比較例1]
エポキシ化合物100質量部に対し、酸無水物硬化剤130質量部と硬化促進剤1質量部とを加えて撹拌した後、70質量部の平均粒子径が9μmの酸化アルミニウムまたは平均粒子径が7μmの水酸化アルミニウムと、0.7質量部のCNFと、を添加して均質になるまで攪拌する。得られた混合物を型枠内へ注入し、加熱硬化処理を実施することによって、縦40mm、横60mm、厚さ2mmの消弧用絶縁材料成形体10を得る。加熱硬化処理として、120℃で2時間の前硬化処理と、200℃で4時間の後硬化処理と、を実施する。以上のように、比較例1では、実施例1から4で示した混合フィラー12を使用せず、消弧用絶縁材料成形体10を製造する際に、CNFおよび酸化アルミニウムを、あるいはCNFおよび水酸化アルミニウムをそれぞれ個別に添加している。
[比較例2]
不飽和ポリエステル樹脂100質量部に対し、ラジカル重合性モノマー60質量部と硬化剤1質量部とを加えて撹拌した後、50質量部の平均粒子径が9μmの酸化アルミニウムまたは平均粒子径が7μmの水酸化アルミニウムと、0.5質量部のCNFと、を添加して均質になるまで攪拌する。得られた混合物を型枠内へ注入し、加熱硬化処理を実施することによって、縦40mm、横60mm、厚さ2mmの消弧用絶縁材料成形体10を得る。加熱硬化処理として、120℃で2時間の前硬化処理と、150℃で4時間の後硬化処理と、を実施する。以上のように、比較例2では、実施例1から4で示した混合フィラー12を使用せず、消弧用絶縁材料成形体10を製造する際に、CNFおよび酸化アルミニウムを、あるいはCNFおよび水酸化アルミニウムをそれぞれ個別に添加している。
(絶縁性および消弧性能確認試験)
実施例1から4および比較例1,2で得られた消弧用絶縁材料成形体10の絶縁性および消弧性能に関する試験を実施する。図9は、絶縁性および消弧性能の試験にて用いる装置の構成の一例を示す断面図であり、図10は、絶縁性および消弧性能の試験に用いる装置の構成の一例を示す側面図である。図9および図10に示される試験装置80は、試験容器81と、試験容器81内で試料85を支持する試料台82と、一対の試料85間に一対の電極83a,83bが予め定められた距離を置いて対向して配置される対向電極83と、を備える。試料台82上では、電極83a,83b間の間隙を含む対向電極83の側面を覆うように一対の試料85が配置される。試料85は、実施の形態1で説明した消弧用絶縁材料成形体10である。試料85は、支柱84によって予め定められた間隔をおいて配置される。対向電極83は、銅製導電体円柱と電極接点とを備える。試験は、300V、20kAの過電流が流れる電気回路で行われる。電極接点にはAg(銀)60wt%-WC(炭化タングステン)36wt%-グラファイト4wt%の組成の材料が使用される。この測定は、電気回路に過電流が流れたときアークが発生し、これにより図2、図3および図5から図8に示される消弧用絶縁材料成形体10が熱分解する現象を模擬したものである。アーク暴露後の消弧用絶縁材料成形体10、すなわち試料85を回収し、アーク発生点付近である成形体中央部と、成形体端部と、において表面抵抗率を測定し、評価する。また、アーク発生時に回路に流れる電流値をオシロスコープで計測し、20kAから計測電流値を差し引いた値である限流値を消弧性能として評価する。
表1は、実施例1から4および比較例1,2における消弧用絶縁材料成形体10の材料組成と特性評価の結果とをまとめたものである。
Figure 0007278490000001
実施例1から4による消弧用絶縁材料成形体10は、図1に示されるように、ベースとなるマトリックス樹脂11に対して、無機充填剤121と多糖類微粒子122との混合フィラー12を添加したものである。図1に示されるように、消弧用絶縁材料成形体10は、多糖類微粒子122であるCNFが無機充填剤121の周囲に集中した分散状態となる。これは、混合フィラー12を構成する多糖類微粒子122と無機充填剤121とが強く吸着することで、マトリックス樹脂11との混錬後も、多糖類微粒子122が無機充填剤121に吸着した構造を概ね保つことができることによるものである。
図11は、比較例1,2による消弧用絶縁材料成形体の構成の一例を模式的に示す断面図である。なお、図1と同一の構成要素には同一の符号を付している。比較例1,2による消弧用絶縁材料成形体10Aでは、図11に示されるように、無機充填剤121と多糖類微粒子122であるCNFとを別々にマトリックス樹脂11へ添加したために、図1の場合と比較して、無機充填剤121と隣接して存在する多糖類微粒子122の量が相対的に減少している。つまり、マトリックス樹脂11に均一に多糖類微粒子122が分散した状態となっており、無機充填剤121の表面と、隣接する無機充填剤121間の領域と、の間で多糖類微粒子122の密度に偏りはない。このような状態であると、実施の形態1で説明したような導電性の炭素粒子を低減する効果を十分に発揮することができず、絶縁性能および消弧性能に乏しい消弧用絶縁材料成形体10Aとなり得る。
表1に示されるように、実施例1から4では、試験実施後の消弧用絶縁材料成形体10における表面抵抗率が、消弧用絶縁材料成形体10の中央部および端部のいずれにおいても、1015Ω以上の高値を維持できることが確認される。これに対して、比較例1,2では、消弧用絶縁材料成形体10Aの表面抵抗率は、中央部で3.5×1012Ω以上5.0×1013Ω以下の範囲であり、端部で6.0×1010Ω以上2.1×1012Ω以下の範囲となっている。これは、実施例1から4では、消弧用絶縁材料成形体10中で無機充填剤121と多糖類微粒子122であるCNFとが隣接して存在することにより、アーク発生に伴う高熱環境に消弧用絶縁材料成形体10が暴露された際に、CNFでは揮発性物質への熱分解のモードが促進され、導電性の炭素粒子の生成量が低下したことが一因であると考えられる。また、この効果によって、限流値が8.3kA以上8.5kA以下である比較例1,2と比較して、実施例1から4では、限流値は8.9kA以上と大きくなっていることから、単純に多糖類微粒子122と無機充填剤121とをそれぞれ添加した比較例1,2による消弧用絶縁材料成形体10Aに比して、消弧性能にも優れた成形体を得ることが可能となる。
以上の結果から、実施例1から4によれば、アーク曝露時に消弧用絶縁材料成形体10表面における絶縁性能を維持することが可能であり、また、消弧性能および機械的強度等に優れた消弧用絶縁材料成形体10を提供することが可能である。
以上の実施の形態に示した構成は、一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、実施の形態同士を組み合わせることも可能であるし、要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。
10,10A 消弧用絶縁材料成形体、11 マトリックス樹脂、12 混合フィラー、20 回路遮断器、21 固定接触子、22 固定接点、23 可動接触子、24 可動接点、30 消弧装置、31 消弧板、31a 切欠部、32 消弧側板、41,42 端子部、50 筐体、51 カバー、51a ガイド溝、52 ベース、53 エンドプレート、53a 排気孔、60 開閉機構部、61 ハンドル、70 引き外し装置部、80 試験装置、81 試験容器、82 試料台、83 対向電極、83a,83b 電極、84 支柱、85 試料、100 アーク、121 無機充填剤、122 多糖類微粒子。

Claims (10)

  1. 分子構造中に酸素原子を含む樹脂を主成分とする樹脂組成物を含むマトリックス樹脂と、
    前記マトリックス樹脂に添加され、多糖類の微細繊維または針状結晶である多糖類微粒子を無機充填剤に吸着させた混合フィラーと、
    を含むことを特徴とする消弧用絶縁材料成形体。
  2. 前記樹脂組成物は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂およびポリアミド樹脂の群から選択される少なくとも1種類の樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の消弧用絶縁材料成形体。
  3. 前記無機充填剤は、金属酸化物、金属水酸化物、混合酸化物、粘土鉱物および固形化酸の群から選択される少なくとも1種類の材料であることを特徴とする請求項1または2に記載の消弧用絶縁材料成形体。
  4. 前記無機充填剤は、Ni,Ru,Rh,PdおよびPtの群から選択される少なくとも1種類の遷移金属またはその誘導体を、多孔質無機材料に対して含浸または担持させた材料であることを特徴とする請求項1または2に記載の消弧用絶縁材料成形体。
  5. 前記無機充填剤の数平均粒子径は、0.1μm以上50μm以下の範囲にあり、このうち数平均粒子径が5μm以上となる前記無機充填剤の粒子の割合が、前記無機充填剤の全粒子の30質量%以上であることを特徴とする請求項3または4に記載の消弧用絶縁材料成形体。
  6. 前記多糖類微粒子は、セルロース、キチンおよびキトサンの群から選択される少なくとも1種類の材料であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の消弧用絶縁材料成形体。
  7. 前記多糖類微粒子の平均繊維径は、1nm以上30nm以下の範囲にあることを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の消弧用絶縁材料成形体。
  8. 無機充填剤と、多糖類の微細繊維または針状結晶である多糖類微粒子と、を、溶媒に分散させて混合し、前記多糖類微粒子を前記無機充填剤に吸着または担持させる工程と、
    前記無機充填剤と前記多糖類微粒子とを含む前記溶媒を溜去して乾燥させる工程と、
    を含むことを特徴とする混合フィラーの製造方法。
  9. 無機充填剤と、多糖類の微細繊維または針状結晶である多糖類微粒子と、を、溶媒に分散させて混合し、前記多糖類微粒子を前記無機充填剤に吸着または担持させる工程と、
    前記無機充填剤と前記多糖類微粒子とを含む前記溶媒を溜去して乾燥させて混合フィラーを調製する工程と、
    分子構造中に酸素原子を含む樹脂を主成分とする樹脂組成物を含むマトリックス樹脂に、前記混合フィラーを添加して撹拌する工程と、
    前記混合フィラーを添加した前記マトリックス樹脂を硬化させる工程と、
    を含むことを特徴とする消弧用絶縁材料成形体の製造方法。
  10. 固定接点を有する固定接触子と、
    可動接点を有する可動接触子と、
    前記可動接点が前記固定接点と接触または開離するように前記可動接触子を作動させる開閉機構部と、
    前記固定接点および前記可動接点が開離するときに発生するアークに曝される位置に配置され、請求項1から7のいずれか1つに記載の消弧用絶縁材料成形体と、
    を備えることを特徴とする回路遮断器。
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