JP7276407B2 - 炭化珪素半導体装置 - Google Patents

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Description

この発明は、炭化珪素半導体装置に関する。
従来、高電圧や大電流を制御するパワー半導体装置の構成材料として、シリコン(Si)が用いられている。パワー半導体装置は、バイポーラトランジスタやIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)など複数種類あり、これらは用途に合わせて使い分けられている。
例えば、バイポーラトランジスタやIGBTは、MOSFETに比べて電流密度は高く大電流化が可能であるが、高速にスイッチングさせることができない。具体的には、バイポーラトランジスタは数kHz程度のスイッチング周波数での使用が限界であり、IGBTは数十kHz程度のスイッチング周波数での使用が限界である。一方、パワーMOSFETは、バイポーラトランジスタやIGBTに比べて電流密度が低く大電流化が難しいが、数MHz程度までの高速スイッチング動作が可能である。
しかしながら、市場では大電流と高速性とを兼ね備えたパワー半導体装置への要求が強く、IGBTやパワーMOSFETはその改良に力が注がれ、現在ではほぼ材料限界に近いところまで開発が進んでいる。パワー半導体装置の観点からシリコンに代わる半導体材料が検討されており、低オン電圧、高速特性、高温特性に優れた次世代のパワー半導体装置を作製(製造)可能な半導体材料として炭化珪素(SiC)が注目を集めている。
その背景には、SiCは化学的に非常に安定な材料であり、バンドギャップが3eVと広く、高温でも半導体として極めて安定的に使用できる。また、最大電界強度もシリコンより1桁以上大きいからである。SiCはシリコンにおける材料限界を超える可能性大であることからパワー半導体用途、特にMOSFETでは今後の伸長が大きく期待される。特にそのオン抵抗が小さいことが期待されているが高耐圧特性を維持したままより一層の低オン抵抗を有する炭化珪素MOSFETが期待できる。
従来の炭化珪素半導体装置の構造について、トレンチ構造の縦型MOSFETを例に説明する。図30は、従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。図30に示すように、n+型炭化珪素半導体基板101のおもて面に高濃度n型エピタキシャル層102が堆積され、高濃度n型エピタキシャル層102の表面にn-型ドリフト層103が堆積される。n-型ドリフト層103の表面にp+型ベース領域104が選択的に設けられる。
炭化珪素半導体装置のp+型ベース領域104側には、トレンチ構造が形成されている。具体的には、トレンチ115は、p+型ベース領域104のn+型炭化珪素半導体基板101側に対して反対側の表面からp+型ベース領域104を貫通してn-型ドリフト層103に達する。トレンチ115の内壁に沿って、トレンチ115の底部および側壁にゲート絶縁膜105が形成されており、トレンチ115内のゲート絶縁膜105の内側にゲート電極106が形成されている。また、p+型ベース層104の表面にn+型ソース領域108、p+型コンタクト領域107が選択的に設けられる。
ここで、図31は、従来の炭化珪素半導体装置の不純物濃度を示すグラフである。図31は、図30のA-A1部分の不純物濃度を示し、縦軸はp+型コンタクト領域107の表面からの深さを示し、横軸は不純物濃度を示す。また、横軸の点線は、n+型炭化珪素半導体基板101と高濃度n型エピタキシャル層102との界面を示す。図31に示すように、p+型コンタクト領域107の不純物濃度はp+型ベース領域104の不純物濃度より高く、n-型ドリフト層103、高濃度n型エピタキシャル層102、n+型炭化珪素半導体基板101の順に不純物濃度が高くなっている。
また、層間絶縁膜109は、トレンチ115に埋め込まれたゲート電極106を覆うように設けられている。ソース電極110は、層間絶縁膜109に開口されたコンタクトホールを介して、n+型ソース領域108およびp+型コンタクト領域107に接する。n+型炭化珪素半導体基板101の裏面には、ドレイン電極(不図示)が設けられている。
このような構造の縦型MOSFETは、ソース-ドレイン間にボディーダイオードとしてp+型ベース領域104とn-型ドリフト層103とで形成される寄生pnダイオードを内蔵する。この寄生pnダイオードは、ソース電極110に高電位を印加することで動作させることができ、p+型コンタクト領域107からp+型ベース領域104とn-型ドリフト層103と高濃度n型エピタキシャル層102とを経由してn+型炭化珪素半導体基板101への方向(図30において矢印Bで示す方向)に電流が流れる。このように、MOSFETではIGBTと異なり、寄生pnダイオードを内蔵しているため、インバータに用いる還流ダイオード(FWD:Free Wheeling Diode)を省略することができ、低コスト化および小型化に貢献する。これ以降、MOSFETの寄生pnダイオードを内蔵ダイオードと称する。
図32は、従来の炭化珪素半導体装置のホール密度を示すグラフである。また、図33は、従来の炭化珪素半導体装置の電子密度を示すグラフである。図32、図33は、図30のA-A1部分のホール密度、電子密度を示し、縦軸はp+型コンタクト領域107の表面からの深さを示し、横軸はそれぞれホール密度、電子密度を示す。また、横軸の点線は、n+型炭化珪素半導体基板101と高濃度n型エピタキシャル層102との界面を示す。
図32、図33に示すように、p+型コンタクト領域107にホールが存在し、n+型炭化珪素半導体基板101と高濃度n型エピタキシャル層102に電子が存在する、このため、内蔵ダイオードに電流が流れると、p+型コンタクト領域107からホールが注入され、n-型ドリフト層103またはn+型炭化珪素半導体基板101中で電子およびホールの再結合が発生する。このとき、n+型炭化珪素半導体基板101の結晶に欠陥があると、発生するバンドギャップ相当の再結合エネルギー(3eV)により、n+型炭化珪素半導体基板101に存在する結晶欠陥の一種である基底面転位が移動し、2つの基底面転位に挟まれる積層欠陥が拡張する。ここで、図34は、従来の炭化珪素半導体装置の積層欠陥を示す断面図である。図35は、従来の炭化珪素半導体装置の積層欠陥を示す上面図である。図34では、基底面転位111が積層欠陥112に成長する例を示す。図35は、電流印加後に積層欠陥が発生した素子のPL(Photo Luminescence)画像の例であり、三角積層欠陥113および帯状積層欠陥114が発生していることがわかる。
積層欠陥が拡張すると、積層欠陥は電流を流しにくいため、MOSFETのオン抵抗および内蔵ダイオードの順方向電圧が上昇する。このような動作が継続すると積層欠陥は累積的に拡張するため、インバータ回路に発生する損失は経時的に増加し、発熱量も大きくなるため、装置故障の原因となる。この問題を防ぐためにMOSFETと逆並列にSiC-SBD(Schottky Barrier Diode:ショットキーバリアダイオード)を接続し、電流がMOSFETの内蔵ダイオードに流れないように対策することができる。
また、図30のように、高濃度n型エピタキシャル層102を設けることで、積層欠陥を成長しないようにすることができる。このような高ドーピング層を形成することで、ライフタイムキラーを導入し、n-型ドリフト層103からのホールを捕捉して、積層欠陥
の発生およびその面積拡大を抑制している。
また、エピタキシャル成長時またはエピタキシャル成長後に、遷移金属ドーピング、または電子若しくはプロトン照射技術による固有内部成長欠陥若しくは外部生成固有欠陥のいずれかを用いて、ライフタイムキラーを導入することにより、境界層内で少数キャリアを減少させる技術が存在する(下記、特許文献1参照)。また、少なくともプロトン(proton)、ヘリウム(He)、希ガス、白金(Pt)、バナジウム(V)、4属イオン等を炭化珪素半導体基板に注入することにより結晶欠陥を形成する技術が存在する(下記、特許文献2参照)。
特許第4939777号公報 米国特許出願公開第2017/0012102号明細書
しかしながら、高濃度n型エピタキシャル層102は、例えば、5μm~10μmの膜厚と2×1018/cm3以上の不純物濃度が必要となる。このように厚い高濃度n型エピタキシャル層102の成膜は、エピタキシャル成長のスループット低下によるコスト増大、欠陥密度増加による歩留まり低下および基板の抵抗増大につながるという問題がある。また、高濃度n型エピタキシャル層102による、ライフタイムの精度は濃度、膜厚に依存してばらつきが大きいという問題がある。
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、低コストで安定して積層欠陥の拡張を抑制することができる炭化珪素半導体装置を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、次の特徴を有する。第2導電型の半導体基板上に、第1導電型の第1半導体層が設けられる。前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側に、第2導電型の第2半導体層が設けられる。前記第2半導体層の、前記第1半導体層に対して反対側の表面層に選択的に、前記第1半導体層より高不純物濃度の第1導電型の第1半導体領域が設けられる。前記第1半導体領域と前記第1半導体層とに挟まれた前記第2半導体層の表面上の少なくとも一部にゲート絶縁膜を介してゲート電極が設けられる。前記半導体基板の、前記第1半導体層側の表面から所定の深さの第1領域、前記第1半導体層の、前記半導体基板側の表面から所定の深さの第2領域、前記第1半導体層の、前記第2半導体層側の表面から所定の深さの第3領域、および、前記第2半導体層の、前記第1半導体層側の表面から所定の深さの第4領域にプロトンが注入されている。前記半導体基板の、前記第1半導体層側の表面から2μm以上の前記第1領域、および、前記第1半導体層の、前記半導体基板側の表面から3μm以上の前記第2領域に、1×10 13 /cm 3 以上1×10 15 /cm 3 以下の濃度のプロトンが注入されている。
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1領域および前記第2領域の厚さより、前記第3領域および前記第4領域の厚さが薄いことを特徴とする。
上述した発明によれば、第2導電型の半導体基板と第1導電型の第1半導体層との界面近傍、および第1導電型の第1半導体層と第2導電型の第2半導体層との界面近傍にライフタイムキラーとして、プロトンが注入されている。これにより、第2導電型の半導体基板と第1導電型の第1半導体層との界面、および第1導電型の第1半導体層と第2導電型の第2半導体層との界面のホール密度を低下させ、結晶欠陥の成長を抑制させることができる。
また、エピタキシャル成長で第1導電型の第1半導体層を形成する際、ライフタイムの精度は濃度、膜厚に依存してばらつきが大きい。一方、本発明では、プロトン照射をイオン注入で行うため、ライフタイムキラーのコントロール性がよく、安定して形成可能である。また、イオン注入で行うため、エピタキシャル成長より低コストで作成可能である。
本発明にかかる炭化珪素半導体装置によれば、低コストで安定して積層欠陥の拡張を抑制することができるという効果を奏する。
実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。 実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のプロトン濃度を示すグラフである。 実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のホール密度を示すグラフである。 実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のDLTS信号を示すグラフである。 実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造の一部を示すフローチャートである。 実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。 実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。 実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。 実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。 実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置のプロトン濃度を示すグラフである。 実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置のホール密度を示すグラフである。 実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の内蔵ダイオードの特性を示すグラフである。 実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の逆回復時の電流特性を示すグラフである。 実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。 実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置のプロトン濃度を示すグラフである。 実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置のホール密度を示すグラフである。 実施の形態4にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。 実施の形態4にかかる炭化珪素半導体装置のヘリウム濃度を示すグラフである。 実施の形態4にかかる炭化珪素半導体装置のホール密度を示すグラフである。 実施の形態5にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。 実施の形態5にかかる炭化珪素半導体装置のプロトン濃度を示すグラフである。 実施の形態5にかかる炭化珪素半導体装置のホール密度を示すグラフである。 実施の形態5にかかる炭化珪素半導体装置のIcVce特性を示すグラフである。 実施の形態6にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。 実施の形態6にかかる炭化珪素半導体装置のプロトン濃度を示すグラフである。 実施の形態6にかかる炭化珪素半導体装置のCV特性を示すグラフである。 実施例の炭化珪素半導体装置のプロトン濃度を示すグラフである。 実施例の炭化珪素半導体装置のホール密度を示すグラフである。 従来例の炭化珪素半導体装置のホール密度を示すグラフである。 従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。 従来の炭化珪素半導体装置の不純物濃度を示すグラフである。 従来の炭化珪素半導体装置のホール密度を示すグラフである。 従来の炭化珪素半導体装置の電子密度を示すグラフである。 従来の炭化珪素半導体装置の積層欠陥を示す断面図である。 従来の炭化珪素半導体装置の積層欠陥を示す上面図である。
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、“-”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“-”を付けることで負の指数をあらわしている。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。実施の形態1では、炭化珪素半導体装置が、MOSFETの場合を示す。図1に示すように、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置は、n+型炭化珪素半導体基板(第1導電型の半導体基板)1の第1主面(おもて面)、例えば(0001)面(Si面)、にn型境界層2、n-型ドリフト層(第1導電型の第1半導体層)3が堆積されている。
+型炭化珪素半導体基板1は、例えば窒素(N)がドーピングされた炭化珪素単結晶基板である。n型境界層2は、n+型炭化珪素半導体基板1よりも低い不純物濃度で、例えば窒素がドーピングされている。n型境界層2は、n+型炭化珪素半導体基板1の結晶欠陥がn-型ドリフト層3に伝わらないようにするために設けられている。n-型ドリフト層3は、n+型炭化珪素半導体基板1よりも低い不純物濃度で、例えば窒素がドーピングされている低濃度n型ドリフト層である。以下、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2とn-型ドリフト層3と後述するp+型ベース領域(第2導電型の第2半導体層)4とを併せて炭化珪素半導体基体とする。
+型炭化珪素半導体基板1の第2主面(裏面、すなわち炭化珪素半導体基体の裏面)には、裏面電極(不図示)が設けられている。裏面電極は、ドレイン電極を構成する。裏面電極の表面には、ドレイン電極パッド(不図示)が設けられている。
炭化珪素半導体基体の第1主面側(p+型ベース領域4側)には、トレンチ構造が形成されている。具体的には、トレンチ15は、p+型ベース領域4のn+型炭化珪素半導体基板1側に対して反対側(炭化珪素半導体基体の第1主面側)の表面からp+型ベース領域4を貫通してn-型ドリフト層3に達する。トレンチ15の内壁に沿って、トレンチ15の底部および側壁にゲート絶縁膜5が形成されており、トレンチ15内のゲート絶縁膜5の内側にゲート電極6が形成されている。ゲート絶縁膜5によりゲート電極6が、n-型ドリフト層3およびp+型ベース領域4と絶縁されている。ゲート電極6の一部は、トレンチ15上方(ソース電極10側)からソース電極10側に突出してもよい。
-型ドリフト層3の基体第1主面側には、p+型ベース領域4が設けられている。p+型ベース領域4の内部には、基体第1主面側にn+型ソース領域(第1導電型の第1半導体領域)8およびp+型コンタクト領域7が選択的に設けられている。n+型ソース領域8はトレンチ15に接している。また、n+型ソース領域8およびp+型コンタクト領域7は互いに接する。
図1では、4つのトレンチMOS構造のみを図示しているが、さらに多くのトレンチ構造のMOSゲート(金属-酸化膜-半導体からなる絶縁ゲート)構造が並列に配置されていてもよい。
層間絶縁膜9は、炭化珪素半導体基体の第1主面側の全面に、トレンチ15に埋め込まれたゲート電極6を覆うように設けられている。ソース電極10は、層間絶縁膜9に開口されたコンタクトホールを介して、n+型ソース領域8およびp+型コンタクト領域7に接する。ソース電極10は、層間絶縁膜9によって、ゲート電極6と電気的に絶縁されている。ソース電極10上には、ソース電極パッド(不図示)が設けられている。ソース電極10と層間絶縁膜9との間に、例えばソース電極10からゲート電極5側への金属原子の拡散を防止するバリアメタル(不図示)が設けられていてもよい。
実施の形態1の炭化珪素半導体装置では、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面近傍にライフタイムキラーとして、プロトンが注入されている。このプロトンがライフタイムキラーとなり、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面のホール密度を2桁以上低下させることができる。これにより、ホールと電子の再結合を減少させ、結晶欠陥の成長を抑制させることができる。
図2は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のプロトン濃度を示すグラフである。図2は、図1のA-A1部分のプロトン濃度を示し、縦軸はp+型コンタクト領域7の表面からの深さを示し、横軸はプロトン濃度を示す。また、横軸の点線は、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面を示す。
図1、図2に示すように、プロトンは、例えば、n+型炭化珪素半導体基板1の、n型境界層2側の表面から深さh1(例えば、2μm)以上の領域、および、n型境界層2の、n+型炭化珪素半導体基板1側の表面から深さh2(例えば、3μm)以上の領域にプロトンが注入されている。プロトンは、1×1013/cm3以上1×1015/cm3以下の濃度である。濃度が1×1013/cm3より低いとライフタイムキラーとして十分に機能せず、1×1015/cm3より高いと内蔵ダイオードに電流が流れなくなるためである。
例えば、プロトンを1×1014/cm3の濃度に設定することで、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面でのホール密度を1×1015/cm3以下にすることができ、1500A/cm2での電流密度でも結晶欠陥が発生しないようにすることができる。
また、図3は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のホール密度を示すグラフである。図3は、図1のA-A1部分のホール密度を示し、縦軸はp+型コンタクト領域7の表面からの深さを示し、横軸はホール密度を示す。また、横軸の点線は、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面を示す。図3に示すように、従来例(図32参照)と比較すると、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面でのホール密度が低下している。
ここで、図4は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のDLTS信号を示すグラフである。図4において、縦軸はDLTS信号の強度を示し、横軸は温度を示し、単位はK(ケルビン)である。DLTS(Deep Level Transient Spectroscopy)法は、半導体中の不純物や欠陥を高感度で測定可能な手法であり、図4は、プロトン注入を行った炭化珪素半導体のDLTS信号とプロトン注入を行わなかった炭化珪素半導体のDLTS信号を示す。図4に示すように、プロトン注入を行わなかった炭化珪素半導体では、300Kにピークを持ち、プロトン注入を行った炭化珪素半導体では、300Kと420Kにピークを持つことがわかる。このため、DLTS法により、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面にプロトンを注入した炭化珪素半導体装置を検知することが可能になる。
(実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。図5は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造の一部を示すフローチャートである。図6~図8は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を模式的に示す断面図である。図5では、本発明のプロトン照射に関する工程を詳しく記載している。
まず、n型の炭化珪素でできたn+型炭化珪素半導体基板1を用意する。そして、このn+型炭化珪素半導体基板1の第1主面上に、n型の不純物、例えば窒素原子をドーピングしながら炭化珪素でできたn型境界層2を、エピタキシャル成長させる。次に、このn型境界層2上に、n型の不純物、例えば窒素原子をドーピングしながら炭化珪素でできたn-型ドリフト層3を、エピタキシャル成長させる。ここまでの状態が図6に示されている。
次に、n-型ドリフト層3の表面上に、アルミニウム等のp型不純物をドーピングしたp+型ベース領域4を形成する。次に、p+型ベース領域4の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。この開口部にリン(P)等のn型の不純物をイオン注入し、p+型ベース領域4の表面の一部にn+型ソース領域8を形成する。n+型ソース領域8の不純物濃度は、p+型ベース領域4の不純物濃度より高くなるように設定する。
次に、n+型ソース領域8の形成に用いたイオン注入用マスクを除去し、同様の方法で、所定の開口部を有するイオン注入用マスクを形成し、p+型ベース領域4の表面の一部にアルミニウム等のp型の不純物をイオン注入し、p+型コンタクト領域7を形成する。p+型コンタクト領域7の不純物濃度は、p+型ベース領域4の不純物濃度より高くなるように設定する。ここまでの状態が図7に示されている。
次に、1700℃程度の不活性ガス雰囲気で熱処理(アニール)を行い、n+型ソース領域8、p+型コンタクト領域7の活性化処理を実施する。なお、上述したように1回の熱処理によって各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよいし、イオン注入を行うたびに熱処理を行って活性化させてもよい。
次に、p+型ベース領域4の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するトレンチ形成用マスクを例えば酸化膜で形成する。次に、ドライエッチングによってp+型ベース領域4を貫通し、n-型ドリフト層3に達するトレンチ15を形成する。次に、トレンチ形成用マスクを除去する。
次に、n+型ソース領域8およびp+型コンタクト領域7の表面と、トレンチ15の底部および側壁と、に沿ってゲート絶縁膜5を形成する。このゲート絶縁膜5は、酸素雰囲気中において1000℃程度の温度の熱処理によって熱酸化によって形成してもよい。また、このゲート絶縁膜5は高温酸化(High Temperature Oxide:HTO)等のような化学反応によって堆積する方法で形成してもよい。
次に、ゲート絶縁膜5上に、例えばリン原子がドーピングされた多結晶シリコン層を設ける。この多結晶シリコン層はトレンチ15内を埋めるように形成してもよい。この多結晶シリコン層をフォトリソグラフィによりパターニングし、トレンチ15内部に残すことによって、ゲート電極6を形成する。
次に、ゲート絶縁膜5およびゲート電極6を覆うように、例えばリンガラスを1μm程度の厚さで成膜し、層間絶縁膜9を形成する(ステップS1)。次に、層間絶縁膜9を覆うように、チタン(Ti)または窒化チタン(TiN)からなるバリアメタル(不図示)を形成してもよい。次に、層間絶縁膜9およびゲート絶縁膜5をフォトリソグラフィによりパターニングしn+型ソース領域8およびp+型コンタクト領域7を露出させたコンタクトホールを形成する(ステップS2)。その後、熱処理(リフロー)を行って層間絶縁膜9を平坦化する。
次に、炭化珪素半導体基体の第1主面側(p+型ベース領域4側)からプロトンを照射する(ステップS3)。プロトンは、図8の矢印Cのように、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面近傍に照射する。ここまでの状態が図8に示されている。
次に、コンタクトホール内および層間絶縁膜9の上に、ソース電極10となるニッケル(Ni)等の導電性の膜を形成する(ステップS4)。この導電性の膜をフォトリソグラフィによりパターニングし、コンタクトホール内にのみソース電極10を残す。
次に、n+型炭化珪素半導体基板1の第2主面上に、ニッケル等の裏面電極を設ける。この後、420℃以下の温度で熱処理(アニール)を行う(ステップS5)。420℃より高い温度では、注入したプロトンによる結晶欠陥がなくなり、ライフタイムキラーとして機能しなくなるためである。この後、n+型ソース領域8、p+型コンタクト領域7およびn+型炭化珪素半導体基板1とオーミック接合するソース電極10および裏面電極を形成する。
次に、n+炭化珪素半導体基板1の第1主面上に、スパッタ法によって5μm程度の厚さのアルミニウム膜を堆積し、フォトリソグラフィによりソース電極10および層間絶縁膜9を覆うようにアルミニウムを除去し、ソース電極パッドを形成する。
次に、裏面電極の表面に、例えばチタン(Ti)、ニッケルおよび金(Au)を順に積層することによって、ドレイン電極パッド(不図示)を形成する。以上のようにして、図1に示す炭化珪素半導体装置が完成する。
以上、説明したように、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置によれば、n+型炭化珪素半導体基板とn型境界層との界面近傍にライフタイムキラーとして、プロトンが注入されている。これにより、n+型炭化珪素半導体基板とn型境界層との界面のホール密度を低下させ、結晶欠陥の成長を抑制させることができる。このため、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置は、内蔵ダイオードに電流を流すことができ、内蔵ダイオードに帰還電流が流れるインバータに使用することができる。
また、エピタキシャル成長で高濃度n型エピタキシャル層を形成する際、ライフタイムの精度は濃度、膜厚に依存してばらつきが大きい。一方、実施の形態1では、プロトン照射をイオン注入で行うため、ライフタイムキラーのコントロール性がよく、安定して形成可能である。また、イオン注入で行うため、エピタキシャル成長より低コストで作成可能である。
(実施の形態2)
図9は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置が実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置と異なる点は、n-型ドリフト層3にもプロトンが注入されていることである。
図9に示すように、n-型ドリフト層3の、n型境界層2側の表面から深さh3の領域にプロトンが注入されている。深さh3は例えば、n-型ドリフト層3の膜厚である。図10は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置のプロトン濃度を示すグラフである。図10は、図9のA-A1部分のプロトン濃度を示し、縦軸はp+型コンタクト領域7の表面からの深さを示し、横軸はプロトン濃度を示す。また、横軸の点線は、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面を示す。
図10に示すように、n-型ドリフト層3のプロトンは、n+型炭化珪素半導体基板1、n型境界層2に注入されるプロトンよりも濃度が低い。n-型ドリフト層3に低濃度のプロトンを注入することにより、炭化珪素半導体装置のQrr(逆回復電荷量)を低下させることができ、インバータ等で使用した場合にスイッチングロスを低下させることができる。
また、図11は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置のホール密度を示すグラフである。図11は、図1のA-A1部分のホール密度を示し、縦軸はp+型コンタクト領域7の表面からの深さを示し、横軸はホール密度を示す。また、横軸の点線は、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面を示す。図12は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の内蔵ダイオードの特性を示すグラフである。図12において、縦軸は、順方向電流を示し、単位はAである。また、横軸は、順方向電圧を示し、単位はVである。
図11に示すようにプロトンを注入した場合、プロトン注入無しの場合と比べてn-型ドリフト層3のホール密度が低下する。しかし、図12に示すように、順方向電流の低下は少なくて、内蔵ダイオードを使用可能な範囲内である。また、図13は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の逆回復時の電流特性を示すグラフである。図13において、縦軸は、電流を示し、横軸は、時間を示す。図13に示すように、プロトンを注入した場合、逆回復時の電流の低下が少なく、Qrrが低下していることわかる。
(実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法において、炭化珪素半導体基体の第1主面側(p+型ベース領域4側)からn+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面近傍にプロトンを照射する前、または、照射後、n-型ドリフト層3にもプロトンを照射することで製造される。
以上、説明したように、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置によれば、n+型炭化珪素半導体基板とn型境界層との界面近傍にライフタイムキラーとして、プロトンが注入されている。これにより、実施の形態1と同様の効果を有する。また、実施の形態2では、n-型ドリフト層3にもプロトンが注入されている。これにより、炭化珪素半導体装置のQrrを低下させることができ、インバータ等で使用した場合にスイッチングロスを低下させることができる。
(実施の形態3)
実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の構造は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造と同様であるために記載は省略する。実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置が実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置と異なる点は、裏面からプロトンが注入されていることである。
(実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
図14は、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法において、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面近傍にプロトンを照射する際に、図14の矢印Cのようにn+型炭化珪素半導体基板1の第2主面(裏面、すなわち炭化珪素半導体基体の裏面)から、プロトンを照射することで製造される。
裏面からプロトンを照射する場合、例えば基板が100μmの膜厚である場合、4MeVの加速電圧でプロトンを照射する。裏面からプロトンを照射することで、ゲート絶縁膜5にプロトンが入ることを防止でき、炭化珪素半導体装置のしきい値が変化しない。
ここで、図15は、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置のプロトン濃度を示すグラフである。図16は、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置のホール密度を示すグラフである。図15、図16は、図1のA-A1部分のプロトン濃度、ホール密度を示し、縦軸はp+型コンタクト領域7の表面からの深さを示し、横軸はそれぞれプロトン濃度、ホール密度を示す。また、横軸の点線は、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面を示す。図15、図16に示すように、裏面からプロトンを照射する場合も、プロトン濃度、ホール密度は、第1主面側からプロトンを照射した場合と同様になる。
以上、説明したように、実施の形態3にかかる炭化珪素半導体装置によれば、n+型炭化珪素半導体基板とn型境界層との界面近傍にライフタイムキラーとして、裏面からプロトンが注入されている。これにより、実施の形態1と同様の効果を有する。また、実施の形態3では、ゲート絶縁膜にプロトンが入ることが防止されるため、炭化珪素半導体装置のしきい値が変化しない。
(実施の形態4)
図17は、実施の形態4にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。実施の形態4にかかる炭化珪素半導体装置が実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置と異なる点は、プロトンの代わりにヘリウム(He)が注入されていることである。
図17に示すように、ヘリウムは、例えば、n+型炭化珪素半導体基板1の、n型境界層2側の表面から深さh1’以上の領域、および、n型境界層2の、n+型炭化珪素半導体基板1側の表面から深さh2’以上の領域にプロトンが注入されている。ここで、h1’、h2’の値は、プロトン場合のh1(例えば、2μm)、h2(例えば、3μm)と同様の値でよい。
プロトンと同様にヘリウムがライフタイムキラーとなり、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面のホール密度を2桁以上低下させることができる。これにより、ホールと電子の再結合を減少させ、結晶欠陥の成長を抑制させることができる。
ここで、図18は、実施の形態4にかかる炭化珪素半導体装置のヘリウム濃度を示すグラフである。図19は、実施の形態4にかかる炭化珪素半導体装置のホール密度を示すグラフである。図18、図19は、図17のA-A1部分のヘリウム濃度、ホール密度を示し、縦軸はp+型コンタクト領域7の表面からの深さを示し、横軸はそれぞれヘリウム濃度、ホール密度を示す。また、横軸の点線は、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面を示す。図18、図19に示すように、ヘリウムを注入した場合でも、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面のホール密度を2桁以上低下させることができる。
(実施の形態4にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
実施の形態4にかかる炭化珪素半導体装置は、実施の形態4にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法において、炭化珪素半導体基体の第1主面側(p+型ベース領域4側)からn+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面近傍にプロトンを照射する代わりに、ヘリウムを照射することで製造される。ヘリウムは、例えば、3.5MeVの加速電圧で照射する。
以上、説明したように、実施の形態4にかかる炭化珪素半導体装置によれば、n+型炭化珪素半導体基板とn型境界層との界面近傍にライフタイムキラーとして、ヘリウムが注入されている。これにより、実施の形態1と同様の効果を有する。
(実施の形態5)
図20は、実施の形態5にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。実施の形態5では、炭化珪素半導体装置が、IGBTの場合を示す。図20に示すように、p型炭化珪素半導体基板16が設けられ、p+型ベース領域4の内部には、基体第1主面側にn+型エミッタ領域17が選択的に設けられている。
また、エミッタ電極18が、層間絶縁膜9に開口されたコンタクトホールを介して、n+型エミッタ領域17およびp+型コンタクト領域7に接する。p型炭化珪素半導体基板16の第2主面(裏面、すなわち炭化珪素半導体基体の裏面)には、裏面電極(不図示)が設けられている。裏面電極は、コレクタ電極を構成する。裏面電極の表面には、コレクタ電極パッド(不図示)が設けられている。実施の形態5にかかる炭化珪素半導体装置の他の構造は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置と同様である。
実施の形態5の炭化珪素半導体装置では、p型炭化珪素半導体基板16とn型境界層2との界面近傍およびn-型ドリフト層3とp+型ベース領域4との界面近傍にライフタイムキラーとして、プロトンが注入されている。IGBTはバイポーラ動作するため、n-型ドリフト層3とp+型ベース領域4との界面からも結晶欠陥が成長するため、n-型ドリフト層3とp+型ベース領域4との界面近傍にもプロトンが注入されている。
このプロトンがライフタイムキラーとなり、p型炭化珪素半導体基板16とn型境界層2との界面およびn-型ドリフト層3とp+型ベース領域4との界面のホール密度を低下させることができる。これにより、ホールと電子の再結合を減少させ、結晶欠陥の成長を抑制させることができる。
図21は、実施の形態5にかかる炭化珪素半導体装置のプロトン濃度を示すグラフである。図21は、図20のA-A1部分のプロトン濃度を示し、縦軸はp+型コンタクト領域7の表面からの深さを示し、横軸はプロトン濃度を示す。また、横軸の点線L1は、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面を示し、横軸の点線L2は、n-型ドリフト層3とp+型ベース領域4との界面を示す。
図20、図21に示すように、プロトンは、例えば、n+型炭化珪素半導体基板1の、n型境界層2側の表面から深さh1”以上の領域、および、n型境界層2の、n+型炭化珪素半導体基板1側の表面から深さh2”以上の領域にプロトンが注入されている。また、プロトンは、例えば、n-型ドリフト層3の、p+型ベース領域4側の表面から深さh4”以上の領域、および、p+型ベース領域4の、n-型ドリフト層3側の表面から深さh3”以上の領域にプロトンが注入されている。
また、図22は、実施の形態5にかかる炭化珪素半導体装置のホール密度を示すグラフである。図22は、図20のA-A1部分のホール密度を示し、縦軸はp+型コンタクト領域7の表面からの深さを示し、横軸はホール密度を示す。また、横軸の点線L1は、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面を示し、横軸の点線L2は、n-型ドリフト層3とp+型ベース領域4との界面を示す。図22に示すように、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面、およびn-型ドリフト層3とp+型ベース領域4との界面でのホール密度が低下している。
図23は、実施の形態5にかかる炭化珪素半導体装置のIcVce特性を示すグラフである。図23では、縦軸はコレクタ電流Icを示し、単位はAである。また、横軸はコレクタ-エミッタ間電圧を示し、単位はVである。図23に示すように、プロトンを注入してホール密度を減少させた場合でも、IGBTの特性を大きく変えることがない。
(実施の形態5にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
実施の形態5にかかる炭化珪素半導体装置は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法において、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面近傍にプロトンを照射する前、または、照射した後に、n-型ドリフト層3とp+型ベース領域4との界面近傍にプロトンを照射することで製造される。
以上、説明したように、実施の形態5にかかる炭化珪素半導体装置によれば、n+型炭化珪素半導体基板とn型境界層との界面近傍、およびn-型ドリフト層とp+型ベース領域との界面近傍にライフタイムキラーとして、プロトンが注入されている。これにより、IGBTにおいても実施の形態1と同様の効果を有する。
(実施の形態6)
図24は、実施の形態6にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。実施の形態6にかかる炭化珪素半導体装置が実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置と異なる点は、ゲート絶縁膜5にもプロトンが注入されていることである。
図25は、実施の形態6にかかる炭化珪素半導体装置のプロトン濃度を示すグラフである。図25は、図24のA-A1部分のプロトン濃度を示し、縦軸はp+型コンタクト領域7の表面からの深さを示し、横軸はプロトン濃度を示す。また、横軸の点線は、n+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面を示す。図24、図25に示すように、p+型ベース領域4のソース電極10側の表面から深さh3の領域にプロトンが注入されている。深さh3は、ゲート絶縁膜5が設けられているトレンチ15の深さである。
図26は、実施の形態6にかかる炭化珪素半導体装置のCV特性を示すグラフである。図26において、縦軸はゲート絶縁膜5の容量を示し、単位はFである。横軸はゲート電圧を示し、単位はVである。図26に示すように、プロトン注入によりゲート絶縁膜5のホール密度が低下することにより、CV特性が向上している。このため、プロトン注入により品質のよいゲート絶縁膜5を製造できる。
(実施の形態6にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
実施の形態6にかかる炭化珪素半導体装置は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法において、炭化珪素半導体基体の第1主面側(p+型ベース領域4側)からn+型炭化珪素半導体基板1とn型境界層2との界面近傍にプロトンを照射する前、または、照射後、ゲート絶縁膜5にもプロトンを照射することで製造される。
以上、説明したように、実施の形態6にかかる炭化珪素半導体装置によれば、n+型炭化珪素半導体基板とn型境界層との界面近傍にライフタイムキラーとして、プロトンが注入されている。これにより、実施の形態1と同様の効果を有する。また、実施の形態6では、ゲート絶縁膜5にもプロトンが注入されている。これにより、品質のよいゲート絶縁膜5を製造でき、CV特性を向上させることができる。
(実施例)
図27は、実施例の炭化珪素半導体装置のプロトン濃度を示すグラフである。また、図28は、実施例の炭化珪素半導体装置のホール密度を示すグラフである。また、図29は、従来例の炭化珪素半導体装置のホール密度を示すグラフである。図27において、縦軸はプロトン濃度を示し、単位は/cm3である。また、横軸はn-型ドリフト層3の表面からの深さを示し、単位はμmである。図28、図29において、縦軸はホール密度を示し、単位は/cm3である。また、横軸はn-型ドリフト層3の表面からの深さを示し、単位はμmである。
図27は、実施の形態1の炭化珪素半導体装置をシミュレーションした場合のプロトン濃度である。図28は、実施の形態1の炭化珪素半導体装置および従来例の炭化珪素半導体装置をシミュレーションした場合のホール密度である。図27、図28は、実施の形態1の炭化珪素半導体装置でn型境界層2を設けない場合の例である。また、図29は、従来例の炭化珪素半導体装置をシミュレーションした場合のホール密度である。
図28、図29に示すようにプロトンがライフタイムキラーとなり、n+型炭化珪素半導体基板1とn-型ドリフト層3との界面でホール密度が、プロトン注入がない場合よりも低下していることがわかる。
以上において本発明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、例えば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。また、本発明は、MOS構造を有する半導体装置について説明してきたが、バイポーラ半導体装置にも適用可能である。
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体装置は、炭化珪素MOSFETにダイオードを逆並列に接続したインバータ回路を用いる電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置などに有用である。
1、101 n+型炭化珪素半導体基板
2 n型境界層
3、103 n-型ドリフト層
4、104 p+型ベース領域
5、105 ゲート絶縁膜
6、106 ゲート電極
7、107 p+型コンタクト領域
8、108 n+型ソース領域
9、109 層間絶縁膜
10、110 ソース電極
15、115 トレンチ
16 p型炭化珪素半導体基板
17 n+型エミッタ領域
18 エミッタ電極
102 高濃度n型エピタキシャル層
111 基底面転位
112 積層欠陥
113 三角積層欠陥
114 帯状積層欠陥

Claims (2)

  1. 第2導電型の半導体基板と、
    前記半導体基板上に設けられた、第1導電型の第1半導体層と、
    前記第1半導体層の、前記半導体基板側に対して反対側に設けられた、第2導電型の第2半導体層と、
    前記第2半導体層の、前記第1半導体層に対して反対側の表面層に選択的に設けられた、前記第1半導体層より高不純物濃度の第1導電型の第1半導体領域と、
    前記第1半導体領域と前記第1半導体層とに挟まれた前記第2半導体層の表面上の少なくとも一部にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
    を備え、
    前記半導体基板の、前記第1半導体層側の表面から所定の深さの第1領域、前記第1半導体層の、前記半導体基板側の表面から所定の深さの第2領域、前記第1半導体層の、前記第2半導体層側の表面から所定の深さの第3領域、および、前記第2半導体層の、前記第1半導体層側の表面から所定の深さの第4領域にプロトンが注入され
    前記半導体基板の、前記第1半導体層側の表面から2μm以上の前記第1領域、および、前記第1半導体層の、前記半導体基板側の表面から3μm以上の前記第2領域に、1×10 13 /cm 3 以上1×10 15 /cm 3 以下の濃度のプロトンが注入されていることを特徴とする炭化珪素半導体装置。
  2. 前記第1領域および前記第2領域の厚さより、前記第3領域および前記第4領域の厚さが薄いことを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
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