JP7274303B2 - 熱可塑性プリプレグ用液晶性樹脂粉体及び熱可塑性プリプレグ - Google Patents
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Description
[1]平均粒径が、5μm以上100μm以下であり、示差走査熱量計で測定される融点Tm2が250℃以上400℃以下であり、エボナイトに対する付着量が5mg/cm2以上50mg/cm2以下である、熱可塑性プリプレグ用液晶性樹脂粉体。
[2]カールフィッシャー水分計で測定される水分量が、50ppm以上3000ppm以下である、[1]に記載の熱可塑性プリプレグ用液晶性樹脂粉体。
[3]前記融点Tm2と示差走査熱量計で測定される融点Tm1のオンセット温度との差ΔTm(Tm2-Tm1オンセット温度)が30℃以上90℃以下である、[1]又は[2]に記載の熱可塑性プリプレグ用液晶性樹脂粉体。
[4]前記融点Tm2よりも10~30℃高いシリンダー温度及びせん断速度100sec-1で測定した溶融粘度が、10Pa・s以上1000Pa・s以下である、[1]から[3]のいずれかに記載の熱可塑性プリプレグ用液晶性樹脂粉体。
[5]液晶性樹脂粉体の最大粒径と平均粒径との比(最大粒径/平均粒径)が、5以下である、[1]から[4]のいずれかに記載の熱可塑性プリプレグ用液晶性樹脂粉体。
[6]液晶性樹脂粉体が、全芳香族ポリエステル及び全芳香族ポリエステルアミドから選択される少なくとも一種の樹脂を含む、[1]から[5]のいずれかに記載の熱可塑性プリプレグ用液晶性樹脂粉体。
[7][1]から[6]のいずれかに記載の液晶性樹脂粉体と繊維とを少なくとも用いてなる熱可塑性プリプレグ。
本実施形態に係る熱可塑性プリプレグ用液晶性樹脂粉体(以下、「液晶性樹脂粉体」ともいう。)は、液晶性樹脂微粒子を含有する粉体であり、熱可塑性プリプレグのマトリックス樹脂を構成するための粉体材料である。なお、本明細書において、「微粒子」との用語は、0.1μm~1000μm程度の平均粒径を有する粒子のことをいい、「平均粒径」とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定法による体積基準の算術平均粒子径を意味する。平均粒径は、例えば、株式会社堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920を用いて測定することができる。
(1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上からなるポリエステル;
(2)主として
(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、
(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上とからなるポリエステル;
(3)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステル;
(4)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド;
(5)主として(a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、(b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上と、(d)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール、及びそれらの誘導体の1種又は2種以上、とからなるポリエステルアミド等、を挙げることができる。さらに上記の構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用してもよい。
粉粒状充填剤としては、カーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラスバルーン、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、クレー、硅藻土、ウォラストナイト等の硅酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナ等の金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化硅素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
板状充填剤としては、マイカ、ガラスフレーク、タルク、各種の金属箔等が挙げられる。
これらの無機及び有機充填剤は一種又は二種以上併用することができる。
なお、融点Tm2は、JIS K-7121(1999)に基づいた方法により、室温から20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)した際に観測される吸熱ピークにおけるピークトップの温度(融点Tm1)の測定後、(融点Tm1+40)℃で2分間保持し、次いで20℃/分の降温速度で室温まで冷却し、再度室温から20℃/分の昇温速度で加熱(2ndRUN)した際に観測される2ndRUNの吸熱ピークにおけるピークトップの温度とする。後述する融点Tm1のオンセット温度(ピークの立ち上がり開始温度)は、1stRUNの吸熱ピークにおけるオンセットの温度とする。
熱可塑性プリプレグは、液晶性樹脂粉体と繊維とを少なくとも用いて形成されており、連続した繊維(長繊維)が複数本集合した繊維束中に液晶性樹脂粉体が溶融含浸されて複合化されたものであることが好ましい。
繊維は、樹脂中に存在させて樹脂の強度を向上させる作用を有する強化繊維であることが好ましく、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、鉱物繊維、炭化ケイ素繊維等を用いることができ、これらの繊維を2種以上混在させることもできる。これらの中でも、軽量かつ高強度、高弾性率の成形品を得る観点から、炭素繊維を用いるのが好ましい。繊維の平均繊維径は、プリプレグに求められる物性に応じて適宜選択することができ、例えば、1~20μmのものを用いることができる。
熱可塑性プリプレグは、繊維束中に液晶性樹脂粉体を溶融含浸させることにより作製することができる。繊維束中に液晶性樹脂粉体を溶融含浸させる方法は、従来公知の方法を用いることができ、溶融法(ホットメルト法)、溶剤法、パウダー法(ドライパウダーコーティング法、パウダーサスペンション法)、樹脂フィルム含浸法(フィルムスタッキング法)、混織法(コミングル)等を用いることができる。中でも、高品質の熱可塑性プリプレグを作製可能であることや、得られるプリプレグの形状や寸法の自由度が高い点で、パウダー法が好ましい。
液晶性樹脂粉体を生産性良く含浸させる点で、加熱と同時に又はその直後に、加圧することが好ましい。加圧する場合の圧力は、例えば、1MPa以上5MPa以下とすることができる。その後、冷却、固化させることで熱可塑性プリプレグを得ることができる。この熱可塑性プリプレグは、上記した液晶性樹脂粉体を用いて形成されているので、優れた耐熱性を有するとともに、品質が安定した熱可塑性プリプレグとすることができる。
繊維強化複合材料は、熱可塑性プリプレグを用いて成形した成形品であり、通常は、シート状の熱可塑性プリプレグを2層以上積層し、加熱成形して一体化させることにより得ることができる。加熱成形方法は、特に限定されず、オートクレーブ成形、プレス成形、インサート成形、アウトサート成形等を用いることができる。加熱成形時の温度は特に限定されず、(融点Tm2-30)℃以上(融点Tm2+30)℃以下とすることができる。なお、融点Tm2の測定方法は、上記のとおりである。
繊維強化複合材料は、上記の熱可塑性プリプレグを用いて成形されたものであるので、優れた耐熱性を有しかつかつ高品質な繊維強化複合材料である。
[製造例1]LCP1:全芳香族ポリエステル
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に325℃まで3.5時間かけて昇温し、そこから20分かけて5Torr(即ち667Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら重縮合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてLCP1ペレットを得た。
(原料)
4-ヒドロキシ安息香酸;1660g(73モル%)
2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;837g(27モル%)
金属触媒(酢酸カリウム触媒);165mg
アシル化剤(無水酢酸);1714g
重合容器に下記の原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に340℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら重縮合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出し、ストランドをペレタイズしてLCP2ペレットを得た。
(原料)
4-ヒドロキシ安息香酸;1380g(60モル%)
2-ヒドロキシ-6-ナフトエ酸;157g(5モル%)
テレフタル酸;484g(17.5モル%)
4,4’-ジヒドロキシビフェニル;388g(12.5モル%)
4-アセトキシアミノフェノール;160g(5モル%)
金属触媒(酢酸カリウム触媒);110mg
アシル化剤(無水酢酸);1659g
LCP2ペレットを、窒素雰囲気下で室温から290℃まで20分かけて昇温し、3時間保持した後、放冷し、LCP3ペレットを得た。
LCP1をマスコロイダー(増幸産業株式会社製、MKZA10-15JP)を用いて、水温35℃の環境下で湿式粉砕処理した後、スプレードライして液晶性粉体を得た。この液晶性樹脂粉体の、エボナイト付着量、水分量、溶融粘度、平均粒径及び最大粒径、並びに融点(Tm2,Tm1オンセット温度)を、後述の方法で測定した。結果を表1に示した。
得られた液晶性樹脂粉体、及び繊維束(炭素繊維束、東邦テナックス株式会社製、「STS40」)を使用して、ドライパウダーコーティング法によって、体積含有率の平均がおよそ30%となるように液晶性樹脂粉体の散布量と繊維束の引き取り速度を調整して、熱可塑性プリプレグを製造した。
液晶性樹脂を表1に示すとおりとした以外は、実施例1と同様にして熱可塑性プリプレグを製造した。実施例1と同様にして、樹脂粉体の、エボナイト付着量、水分量、溶融粘度、平均粒径及び最大粒径、並びに融点(Tm2,Tm1オンセット温度)を測定した。結果を表1に示した。
LCP2をメッシュミル型粉砕機(株式会社ホーライ製、HA-2542)を用いて凍結粉砕処理して液晶性粉体を得た以外は、実施例1と同様にして熱可塑性プリプレグを製造した。実施例1と同様にして、樹脂粉体の、エボナイト付着量、水分量、溶融粘度、平均粒径及び最大粒径、並びに融点(Tm2,Tm1オンセット温度)を測定した。結果を表1に示した。
株式会社日興エボナイト製作所製「センター磨きエボナイト棒(直径10mm×30mm)」を、ポリエチレンフィルムで10回摩擦することにより帯電させた後、100mLビーカーに入れた液晶性樹脂粉体20g中に埋没させた後取り出し、埋没前後のエボナイト棒の重量を測定した。埋没前後のエボナイト棒の重量差をエボナイト棒の表面積で除してエボナイト付着量を算出した。
カールフィッシャー水分計(株式会社三菱ケミカルアナリテック製、CA-200)を用いて、試料0.5gを340℃、200mL/minの窒素気流下の条件で水分量を測定した。
キャピラリー式レオメーター(株式会社東洋精機製作所製キャピログラフ1D:ピストン径10mm)を用いて、以下の条件で、ISO 11443に準拠し、見かけの溶融粘度を測定した。測定には、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いた。
シリンダー温度:
300℃(LCP1)
350℃(LCP2、LCP3)
せん断速度:100sec-1
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、LA-920)を用い、分散溶媒としてメタノールを用いて、平均粒径及び最大粒径を測定した。なお、平均粒径は、体積基準の算術平均粒子径である。
示差走査熱量計(株式会社日立ハイテクサイエンス製、DSC7000X)を用いて、室温から20℃/分の昇温速度で加熱(1stRUN)した際に観測される吸熱ピークにおけるピークトップの温度(融点Tm1)の測定後、(融点Tm1+40)℃の温度で2分間保持し、次いで20℃/分の降温速度で室温まで冷却し、再度室温から20℃/分の昇温速度で加熱した際に観測される2ndRUNの吸熱ピークにおけるピークトップの温度を融点Tm2として測定した。また、1stRUNの吸熱ピークにおけるオンセットの温度(ピークが立ち上がり始める温度)を融点Tm1オンセット温度として測定し、Tm2と融点Tm1のオンセット温度との差ΔTm(Tm2-Tm1オンセット温度)を算出した。
(繊維の体積含有率Vfのばらつき)
実施例及び比較例で得られた熱可塑性プリプレグについて、任意の5箇所で切り出し、以下の方法でそれぞれの繊維の体積含有率Vfを算出してそのばらつき(平均値からの差)を求め、以下の基準に従って評価した。結果を表1に示した。
熱可塑性プリプレグの密度ρmを電子比重計(ミラージュ社製、SD-120L)を用いて測定し、炭素繊維の密度ρf(1.78g/cm3)と液晶性樹脂の密度ρp(1.41g/cm3)から繊維の体積含有率Vfを以下の式(IV)から算出した。
×(不良):1個以上の試験片について上記ばらつきが5%以上であった。
熱可塑性プリプレグ表面のボイドの有無を視認した。実施例の熱可塑性プリプレグは、いずれもボイドは確認されなかった。
Claims (8)
- 体積基準の平均粒径が、5μm以上100μm以下であり、示差走査熱量計で測定される融点Tm2が250℃以上400℃以下であり、
カールフィッシャー水分計で測定される水分量が、50ppm以上3000ppm以下である、ドライパウダーコーティング法による熱可塑性プリプレグ用液晶性樹脂粉体。 - 体積基準の平均粒径が、30μm以上100μm以下であり、示差走査熱量計で測定される融点Tm2が250℃以上400℃以下であり、
カールフィッシャー水分計で測定される水分量が、50ppm以上3000ppm以下である、熱可塑性プリプレグ用液晶性樹脂粉体。 - 前記融点Tm2と示差走査熱量計で測定される融点Tm1のオンセット温度との差ΔTm(Tm2-Tm1オンセット温度)が30℃以上90℃以下である、請求項1又は2に記載の熱可塑性プリプレグ用液晶性樹脂粉体。
- 前記融点Tm2よりも10~30℃高いシリンダー温度及びせん断速度100sec-1で測定した溶融粘度が、10Pa・s以上1000Pa・s以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の熱可塑性プリプレグ用液晶性樹脂粉体。
- 液晶性樹脂粉体の最大粒径と平均粒径との比(最大粒径/平均粒径)が、5以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の熱可塑性プリプレグ用液晶性樹脂粉体。
- 液晶性樹脂粉体が、全芳香族ポリエステル及び全芳香族ポリエステルアミドから選択される少なくとも一種の樹脂を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の熱可塑性プリプレグ用液晶性樹脂粉体。
- 請求項1から6のいずれか一項に記載の液晶性樹脂粉体と繊維とを少なくとも用いてなる熱可塑性プリプレグ。
- 請求項1から7のいずれか一項に記載の液晶性樹脂粉体を含むドライパウダーを繊維束に付着させること、及びその後、加熱して液晶性樹脂粉体を繊維束に溶融含浸させることを含む、熱可塑性プリプレグの製造方法。
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