JP7267863B2 - うるし化合物及び該うるし化合物の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、生漆とポリオールとイソシアネート化合物を含む漆層を塗布した後、ウレタンアクリレートを主成分とする紫外線硬化型透明オーバーコート層を設けて紫外線硬化させる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、うるし成分は反応せずにフリーの状態で塗膜中に存在するため、有機溶剤にウルシオールが溶出する、ウルシオールがオーバーコート層を超えてブリードする、かぶれやすい、うるし製品の質感と異なるといった問題が生じる。
例えば、うるしを揮発性溶剤で希釈しスプレーコーティングする際にイソシアネート系硬化剤を混合する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。また、イソシアネート系シランカップリング剤を混合してうるしを常温硬化させる方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、これら特許文献2や3に記載の方法では、うるし塗膜の乾燥(硬化)に少なくとも3時間を要するという問題がある。
後述する比較例でも示すように、ウルシオールに上記化合物(A)を反応させて得られるうるし化合物を冷暗所に保存すると、縮重合により、溶媒に溶解しない不純物が生じる。このような不純物が存在するうるし化合物を用いて、うるし塗膜を硬化させても、良好な品質のうるし硬化膜を形成することはできない。
(1)下記式(I)で表される、うるし化合物。
R1は炭素数1~30のアルキル基又はアルケニル基を示し、
R2及びR3の両方が下記式(II)で表される一価の基を示すか、或いは、R2及びR3のいずれか一方が下記式(II)で表される一価の基を示し、他方がOH基を示す。)
R4は炭素数1~4のアルキレン基、又は-R7-(OR6)n-で表される二価の基を示し、
R4のアルキレン基は、メチル基、及び下記式(III)で表される基のいずれか一方又は両方で置換されていてもよく、
R5は水素原子又はメチル基を示し、
R6は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
R7は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
nは1~4の整数を示す。)
(3)下記式(IV)で表されるうるし材料と、下記式(V)で表されるイソシアネート化合物と、を反応させる工程を含む、うるし化合物の製造方法。
R4は炭素数1~4のアルキレン基、又は-R7-(OR6)n-で表される二価の基を示し、
R4のアルキレン基は、メチル基、及び下記式(III)で表される基のいずれか一方又は両方で置換されていてもよく、
R5は水素原子又はメチル基を示し、
R6は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
R7は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
nは1~4の整数を示す。)
本発明のうるし化合物は、下記式(I)で表される。
R1は炭素数1~30のアルキル基又はアルケニル基を示し、
R2及びR3の両方が下記式(II)で表される一価の基を示すか、或いは、R2及びR3のいずれか一方が下記式(II)で表される一価の基を示し、他方がOH基を示す。)
R4は炭素数1~4のアルキレン基、又は-R7-(OR6)n-で表される二価の基を示し、
R4のアルキレン基は、メチル基、及び下記式(III)で表される基のいずれか一方又は両方で置換されていてもよく、
R5は水素原子又はメチル基を示し、
R6は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
R7は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
nは1~4の整数を示す。)
生漆は、漆の木から得られた樹液を濾過したものをいう。
「漆と高分子」、宮腰哲雄、高分子56巻8月号608-613ページ、2007年の文献に記載されているように、生漆の組成としては、脂質のウルシオール(60~65%)、水(25~30%)、水溶性成分のゴム質(多糖類)(5~7%)、酵素のラッカーゼ(0.1%程度)、水、及び有機溶剤に不溶性である含窒素糖タンパク(3~5%)が含まれており、W/O型のエマルジョンを構成している。
一方、ベトナム及び台湾の漆に含まれる脂質のラッコールは、3-ヘプタデセニルカテコール類であり、タイ及びミャンマーの漆に含まれる脂質のチチオールは、4-ヘプタデセニルカテコール類、3-置換及び4-置換ω-フェニルアルキルカテコール類、ω-フェニルアルキルレゾルシノール類の混合物である。ラッコールやチチオールはウルシオールと同様の反応機構で硬化する。
ここで「なやし」とは、生漆にせん断力を与えつつ撹拌してエマルジョン粒子を細かくすることを指し、近年では「3本ロールミルによる新精漆法」、大藪泰ほか、色材、65巻6月号349-355ページ、1992年の文献に記載されているように、3本ロールミルを使用して行われている。また、「くろめ」とは、「なやし」の後、40℃前後で加熱撹拌することを指し、これによって精製うるし中の水分を3~5%に調整することができる。
上記式(II)において、R4がアルキレン基である場合の炭素数は、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。
上記式(II)において、R4が-R7-(OR6)n-基である場合、R6及びR7の炭素数は、それぞれ2以下であることが好ましい。また、nは2以下であることが好ましく、1であることがより好ましい。
うるしに上記化合物(A)を反応させて得られる特許文献4に記載のうるし化合物を冷暗所に保存した場合には、溶剤不溶性の皮膜を生じる。このような不純物が存在するうるし化合物を用いて、うるし塗膜を硬化させても、光沢が低下する等、良好な品質のうるし硬化膜を形成することはできない。また、スクリーン印刷の場合は、不純物がメッシュに詰まるおそれがある。
一方、本発明のうるし化合物であると、不純物が存在しないため、本発明のうるし化合物を用いて、うるし塗膜を硬化させた場合には、良好な品質のうるし硬化膜を形成することができる。
尚、本発明において、冷暗所保存における温度条件としては、例えば、15℃以下、或いは20℃や25℃以下の温度条件が挙げられる。ただし、30℃程度までなら係る温度以下の温度条件も含めることができる。
本発明のうるし化合物を含む混合物を硬化してなるうるし硬化膜は、下記実施例でも示す通り、硬化後数日経っても溶出する成分の存在は認められず、保存安定性に優れ、また他の部材(基材等)との密着性にも優れ、良好な品質を有している。また、硬化膜はうるし製品の質感を有しているためオーバーコートも不要である。
本発明のうるし化合物は、下記式(IV)で表されるうるし材料と、下記式(V)で表されるイソシアネート化合物と、を反応させることにより製造することができる。
R4は炭素数1~4のアルキレン基、又は-R7-(OR6)n-で表される二価の基を示し、
R4のアルキレン基は、メチル基、及び下記式(III)で表される基のいずれか一方又は両方で置換されていてもよく、
R5は水素原子又はメチル基を示し、
R6は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
R7は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
nは1~4の整数を示す。)
上記式(IV)で表されるうるし材料は、例えば、生漆を精製又は単離等することにより、上記式(IV)で表されるうるし材料単独で或いは上記式(IV)で表されるうるし材料を含むうるし材料組成物として得ることができる。うるし材料組成物は、うるし材料とイソシアネート化合物との反応性の観点から、多量の水を含まないことが好ましい。ただし、生漆にはゴム質(多糖類)や含窒素糖タンパクが含まれており、これによる保護コロイド効果が高いため、溶剤抽出と濃縮によって完全に脱水することは現実的でない。また、精製うるしにイソシアネート化合物を反応させるとき、精製うるしはウルシオール等を油性分とするW/O型のエマルジョンを構成していることから、イソシアネート化合物が水と反応する前に速やかにウルシオールと反応するため、うるし材料組成物に少量の水分が含まれていることは問題にならない。したがって、うるし材料組成物における水分量は0.1~5%(質量比)であることが好ましい。
該連結基としては、例えば、オキシアルキレン基(炭素数1~4)、ポリオキシアルキレン基(オキシアルキレン単位は2~8、オキシアルキレン基の炭素数は1~4)、ビス(オキシアルキレン)(オキシアルキレン基の炭素数は1~4)基等が挙げられる。
また、上記式(IV)で表されるうるし材料とイソシアネート化合物とを反応させる際、該うるし材料を撹拌しながらイソシアネート化合物を徐々に添加するとよい。上記式(IV)で表されるうるし材料とイソシアネート化合物とが反応すると二酸化炭素の気泡を発生しながら発熱や粘度上昇が起きる。発熱により、該うるし材料における未反応のカテコール部位同士の縮重合が誘発され、不溶性のポリマーが生成するおそれがある。そこで、イソシアネート化合物を添加する際のうるし材料の温度は、50℃以下に抑えるようにして、イソシアネート化合物を添加することが好ましい。
本発明のうるし化合物を得るには、イソシアネート化合物をうるし材料に必要量添加し、2~6時間撹拌した後、2日程度室温で放置し、反応を完全に終了させ気泡を自然に脱気することが好ましい。
上記式(IV)で表されるうるし材料をうるし材料組成物として供給した場合、うるし材料組成物とイソシアネート化合物との反応により、本発明のうるし化合物がうるし材料組成物の他の成分との混合物として得られる。この場合、必要に応じて、該混合物から本発明のうるし化合物を精製又は単離等してもよい。
本発明のうるし化合物と、ラジカル重合性のモノマー及びオリゴマーの少なくともいずれかと、熱ラジカル重合開始剤又は光ラジカル重合開始剤とを混合し、熱硬化型或いは紫外線硬化型の重合性インキ組成物を作製することができる。
ここで、本発明のうるし化合物とラジカル重合性のモノマー及びオリゴマーの少なくともいずれかとの混合比率(質量比)は、1:99~80:20が好ましく、5:95~70:30がより好ましく、10:90~70:30がさらに好ましい。
インキ組成物の好ましい態様としては、例えば、本発明のうるし化合物、ラジカル重合性のモノマー及びオリゴマーの少なくともいずれか、光重合開始剤、及び着色剤を配合してなるインキ組成物を挙げることができる。
また他の好ましい態様としては、例えば、本発明のうるし化合物、ラジカル重合性のモノマー及びオリゴマーの少なくともいずれか、光重合開始剤、可撓性を有するラジカル重合性を有しない樹脂、着色剤、及び各種添加剤を配合してなるインキ組成物を挙げることができる。
2官能モノマーとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA型のアルキレンオキサイド付加物ジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
オリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ロジン変性(メタ)アクリレート、ポリエステルウレタン(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。オリゴマーは、ポリエステル(メタ)アクリレート又はウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートとして、ポリカーボネートウレタン(メタ)アクリレート、又はポリエステルウレタン(メタ)アクリレートを含むことがより好ましく、ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートを含むことがさらに好ましい。
ラジカル重合開始剤の添加量は、(インキ組成物全固形分量に対して)1~15質量%が好ましい。
可撓性を有するラジカル重合性を有しない樹脂の添加量は、(インキ組成物全固形分量に対して)1~10質量%が好ましい。
着色剤の添加量は、(インキ組成物全固形分量に対して)1~10質量%が好ましい。
これら添加剤の添加量は、インキ組成物全固形分量に対して添加剤合計で0.01~10質量%が好ましい。
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、p-ベンゾキノン、t-ブチルカテコール、フェノチアジン、ピクリン酸等が挙げられる。
ラジカル重合禁止剤の添加量は、インキ組成物の紫外線硬化を妨げない観点から、(インキ組成物全固形分量に対して)0.01~0.5質量%が好ましい。
金属ドライヤーの添加量は、(インキ組成物全固形分量に対して)0.01~1.5質量%が好ましい。
印刷インキ用溶剤としては、例えば、スピンドル油、3~8号ソルベント、ナフテン油、パラフィン等があげられる。
印刷インキ用溶剤の添加量は、揮発性有機化合物(VOC)の発生を抑制するという観点から、(インキ組成物全量に対して)5質量%以下であることが好ましい。
アンチブロッキング剤としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミドワックス、テフロンパウダー等が挙げられる。
本発明に係るうるし硬化膜は、他の部材(基材等)との密着性に優れるため、重ね印刷が容易にでき多色化しやすい。また、うるし化合物は長鎖アルキル基を有するウレタン変性フェノール化合物であるともいえるため、油脂、各種有機溶剤、ポリウレタン、エポキシ化ポリウレタン、エポキシ化アクリレート等、紫外線硬化性を構成する各種材料との親和性が高く、インキ組成物の成分が凝集・分離しにくい性質を有する。そのため、保存安定性が良好で光沢が得られやすい。本発明に係るうるし硬化膜は、硬化後数日経っても溶出する成分の存在は認められず、保存安定性に優れ、またうるし製品の質感を有しているためオーバーコートも不要である。
さらに、本発明に係るうるし硬化膜は、可撓性に優れるため、絞り加工や曲げ加工等によるクラックや剥離の問題も生じない。
本発明のうるし化合物を含有するインキ組成物を、基材上に塗布し、係るうるし塗膜に対して、紫外線等の活性エネルギー線又は熱を付与すると、インキ組成物が硬化してなるインキ層を形成することができる。
本発明では、うるし化合物を用いた製品の好ましい態様の1つとして、基材と基材上に形成されたインキ層とを有する積層体を挙げることができ、別の態様として、基材と、基材上の一方の面上に形成された接着層と、基材上の他方の面上に形成されたインキ層とを有するラベルを挙げることができる。
積層体のより具体的な製造方法について、以下説明する。
インキ組成物を基材に印刷し、係るインキ組成物の塗膜に対して、紫外線を照射する。これにより、塗膜を硬化させ、インキ層を形成する。
ここでインキ組成物を基材に印刷する印刷方法としては、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等が挙げられる。
オフセット印刷としては、一般的な湿し水を使用するオフセット印刷でも、湿し水を使用しない水無しオフセット印刷でも、いずれでもよい。
プラスチックフィルムの材質は、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、塩化ビニル、PET、A-PET等が挙げられる。
また、必要に応じて基材にコロナ放電処理を行ったり、アンカー剤を塗布したりしてもよい。
本発明では、うるし化合物を用いた製品の好ましい態様の1つとして、上述したラベルが貼付された成形体を挙げることができる。
ラベルを成形体に貼付する方法としては、特に制限はなく、成形体の成形方法に応じて適宜選択することができる。
例えば、成形体の成形方法としては、真空成型、圧空成形等のシート成形;感圧接着による成形;インサート成形;インモールド成形等を挙げることができる。
より具体的には、例えば、インサート成形やインモールド成形の場合、金型内に上述したラベルを装填した後、樹脂を注入して該ラベルを溶融樹脂で包んで固化させ、本発明のうるし化合物を用いたラベルと成形体が一体化した製品を製造することができる。
また、感圧接着による成形の場合、射出成型、ブロー成型等で得られた樹脂成形体にラベルを圧着してラベルと成形体が一体化した製品を製造することができる。
本発明のうるし化合物を含有するインキ層は、可撓性に優れるため、基材との密着性が高いという特徴があり、成形時の熱や圧力にさらされてもインキが割れたりはがれたりしにくく、基材の伸びや収縮に追従しやすい。絞り加工や曲げ加工等によるクラックや剥離の問題も生じない。
うるし化合物を脱気可能な遮光容器に入れ、15℃で3日放置後、クロロホルム中での溶解状況を目視で判断し、下記基準により評価した。
A 完全に溶解している
B ほぼ溶解しているが不溶物が浮遊している
C ほとんど不溶である。不溶物が膨潤する
D ほとんど不溶である。不溶物が膨潤しない
UV硬化性は、UV照射後の塗膜を指で押さえたときの挙動で判断し、下記基準により評価した。
A 硬化被膜表面に粘着性がない
B ゴム状で粘着性がある
C 表面に一部硬化した膜があるが内部は未硬化である
D 硬化した膜が全くなく液状である
上記UV硬化性の評価において、B以上の結果であった場合、同様にしてさらに試験片を作製し、密着性の評価を行った。
上記UV硬化性試験で得た試験片と同様にして作製した試験片1枚に対して、セロハンテープ(商品名:セロテープCT405AP-15、15mm幅)を硬化面に密着させ、手で180度剥離したときの挙動で判断し、下記基準により評価した。
A 基材内部で凝集破壊する
B 硬化面表面できれいに剥離する
C 基材表面で剥離するが剥離抵抗が感じられる
D 基材表面で剥離し、このとき剥離抵抗が感じられない
上記UV硬化性の評価において、B以上の結果であった場合、同様にしてさらに試験片を3枚作製し、密着性の評価を行った。
上記UV硬化性試験で得た試験片と同様にして作製した試験片3枚に対して、紙に挟んだ状態で、チャック付きポリ袋で1週間保管後、袋から取り出し、試験片をはさみで約7mm角に刻み、50mLのアセトンに1時間浸漬後、アセトン溶液をシャーレに移し、70℃の送風乾燥機で乾燥させ、乾燥後のシャーレをユポFGS110(5枚重ね)の上に置いて、目視で判断し、下記基準により評価した。UV硬化性及び溶出程度の評価がともにB以上であった場合に、塗膜が十分反応していると判断した。
A 着色物質が認められない
B 薄く着色物質が認められる
C 褐色の物質がはっきりと認められる
中国産生漆をJIS K 5950に準じて「くろめ」処理した精製うるし(水分3%)を用意した。
精製うるし32gを撹拌しながら2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート22.2g(イソシアネート化合物(1)、東京化成工業株式会社製、試薬)を2時間かけて滴下した。その後3時間撹拌を続けた。この時の最高温度は55℃であった。
さらに冷暗所(15℃)に3日放置した。完全に脱気され、粘稠な褐色の液体として実施例1のうるし化合物が得られた。
実施例1のうるし化合物の1H-NMR、13C-NMR、FT-IRの測定結果を図1A、図2A、図3Aにそれぞれ示す。また、比較のために、精製うるしの1H-NMR、13C-NMR、FT-IRの測定結果を図1B、図2B、図3Bにそれぞれ示す。
1H-NMRのデータから図1Aに示すように、5.8~5.9ppm付近、6.1~6.3ppm付近、及び6.4~6.5ppm付近にアクリル基に由来する3つのプロトンのシグナルが確認でき、3.5ppm付近及び4.3ppm付近に連結基のメチレンに由来する4つのプロトンのシグナルが確認できた。また、13C-NMRのデータから図2Aに示すように、129ppm付近及び132ppm付近にアクリル基に由来する2つの炭素のシグナル、166ppm付近にエステル基に由来する1つの炭素のシグナル、40ppm付近及び63ppm付近に連結基のメチレンに由来する2つの炭素のシグナル、154ppm付近にウレタン結合に由来する1つの炭素のシグナルが確認できた。また、FT-IRのデータから図3Aに示すように1726cm-1付近にエステル基のカルボニル、1535cm-1付近にウレタン結合のN-H、1636cm-1付近にアクリル基のC=Cのピークが検出された。これらの測定結果から、実施例1では、上記式(I)において、R2及びR3が、上記式(II)(R4は炭素数2のアルキレン基、R5は水素原子)で表されるうるし化合物が生成されていることが確認できた。
実施例1において、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネートの代わりに3-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート(イソシアネート化合物(2)、東京化成工業(株)製、試薬)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてイソシアネート化合物を添加した。気泡の発生、温度上昇、粘度上昇は穏やかであった。
イソシアネート化合物の滴下時間2時間、撹拌時間3時間とした。その間における最高温度は42℃であった。
その後、冷暗所(15℃)に3日放置した。表面に皮膜が生じており、皮膜を除去したところ、脱気された粘稠な褐色の液体として比較例1のうるし化合物が得られた。
実施例1のうるし化合物、及びポリマーポリオール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、有機ジイソシアネートからなるウレタンオリゴマーと、アクリル酸2-ヒドロキシエチルとの混合物(共栄社化学(株)製、製品名:UF-8001G)を同質量配合し、さらに光ラジカル重合開始剤(富士フイルム和光純薬株式会社製、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン)を質量比でインキ組成物全体の5%添加してインキ組成物を作製した。
インキ組成物をメイヤーバー(#8)で合成紙(株式会社ユポ・コーポレーション製、製品名:ユポFGS110、サイズ:10cm×8cm)の表面に塗布し、ネイルドライヤー硬化用UVライト(SUNUV社製、製品名:SUN4)にて30秒間紫外線を照射することにより、塗膜を硬化させて、試験片を得た。
実施例2で得られた試験片のUV硬化性は、Aランク、密着性は、Aランク、溶出程度は、Aランクであった。
実施例2において、実施例1のうるし化合物、及びポリマーポリオール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、有機ジイソシアネートからなるウレタンオリゴマーと、アクリル酸2-ヒドロキシエチルとの混合物の配合比を8:2としたこと以外は、実施例2と同様にしてUV照射を行ったところ、粘着性がある塗膜の試験片が得られた。
実施例3で得られた試験片のUV硬化性は、Bランク、密着性は、Bランク、溶出程度は、Bランクであった。
実施例2において、実施例1のうるし化合物の代わりに精製うるしを用いて実施例2と同様にして比較例2のインキ組成物を作製した。
比較例2で得られた試験片のUV硬化性は、Bランク、密着性は、Bランク、溶出程度は、Cランクであった。
実施例2において、実施例1のうるし化合物の代わりに比較例1のうるしを用いて実施例2と同様にして比較例3のインキ組成物を作製した。
比較例3で得られた試験片のUV硬化性は、Bランク、密着性は、Bランク、溶出程度は、Cランクであった。
実施例1で製造したうるし組成物、及びポリマーポリオール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、有機ジイソシアネートからなるウレタンオリゴマー(重合性不飽和結合数2)と、アクリル酸2-ヒドロキシエチルとの混合物(共栄社化学(株)製、製品名:UF-8001G)を同質量配合し、さらにカーボンブラック(三菱ケミカル(株)製、製品名:#2650)を質量比でインキ組成物全体の5%、光ラジカル重合開始剤(富士フイルム和光純薬(株)製、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン)を質量比でインキ組成物全体の5%添加してインキ組成物を作製した。
インキ組成物をスクリーン印刷法で合成紙(株式会社ユポ・コーポレーション製、品名:ユポFGS110、サイズ:10cm×8cm)の表面に印刷して、直後に紫外線照射(高圧水銀灯 積算光量800mJ/cm2)にて硬化させてラベルを得た。
ブロー成形用金型のキャビティ内に上記ラベルを真空吸引で固定し、高密度ポリエチレン(日本ポリプロ株式会社製、製品名:ノバッテックEA9)からなるパリソンをブロー成形して金型内でボトルを成形すると同時に上記ラベルを貼着した。
ラベルが貼付された成形品を目視観察した結果、ラベルの皺や容器の変形は見られなかった。
Claims (8)
- 請求項2に記載のうるし化合物を含むインキ組成物。
- 下記式(I)で表されるうるし化合物を含むインキ組成物。
R1は炭素数1~30のアルキル基又はアルケニル基を示し、
R2及びR3の両方が下記式(II)で表される一価の基を示すか、或いは、R2及びR3のいずれか一方が下記式(II)で表される一価の基を示し、他方がOH基を示す。)
R4は炭素数1~4のアルキレン基、又は-R7-(OR6)n-で表される二価の基を示し、
R4のアルキレン基は、メチル基、及び下記式(III)で表される基のいずれか一方又は両方で置換されていてもよく、
R5は水素原子又はメチル基を示し、
R6は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
R7は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
nは1~4の整数を示す。)
- さらに、ラジカル重合性のモノマー及びオリゴマーの少なくともいずれかと、光重合開始剤とを含む、請求項3または請求項4に記載のインキ組成物。
- 基材と、
請求項3~5のいずれかに記載のインキ組成物を硬化させてなる、前記基材上に形成されたインキ層と、
を有する積層体。 - 基材と、
前記基材の一方の面上に形成された接着層と、
請求項3~5のいずれかに記載のインキ組成物を硬化させてなる、前記基材の他方の面上に形成されたインキ層と、
を有するラベル。 - 請求項7に記載のラベルが貼付された成形体。
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