JP7267863B2 - うるし化合物及び該うるし化合物の製造方法 - Google Patents

うるし化合物及び該うるし化合物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、うるし化合物及び該うるし化合物の製造方法に関する。
生漆を生成して得られる精製うるしは、水分の存在下ラッカーゼの働きによって6時間から数日かけて硬化する性質を有している。従来、うるし製品の質感をできるだけ失わずに硬化速度を早くする試みがなされてきた。
例えば、生漆とポリオールとイソシアネート化合物を含む漆層を塗布した後、ウレタンアクリレートを主成分とする紫外線硬化型透明オーバーコート層を設けて紫外線硬化させる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、うるし成分は反応せずにフリーの状態で塗膜中に存在するため、有機溶剤にウルシオールが溶出する、ウルシオールがオーバーコート層を超えてブリードする、かぶれやすい、うるし製品の質感と異なるといった問題が生じる。
一方、オーバーコート不要のうるし塗膜についての方法が開示されている。
例えば、うるしを揮発性溶剤で希釈しスプレーコーティングする際にイソシアネート系硬化剤を混合する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。また、イソシアネート系シランカップリング剤を混合してうるしを常温硬化させる方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
しかしながら、これら特許文献2や3に記載の方法では、うるし塗膜の乾燥(硬化)に少なくとも3時間を要するという問題がある。
また、ウルシオールに、不飽和結合とイソシアネート基とを有する下記化合物(A)を反応させてうるし化合物を得て、このうるし化合物にラジカル重合可能なバインダーと光ラジカル開始剤とを混合して塗料組成物を製造し、この塗料組成物をコーティングした後、紫外線硬化させる方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
Figure 0007267863000001
特開平4-129735号公報 特開平11-200229号公報 特開2009-183903号公報 特表2013-516511号公報
上記特許文献4に記載の塗料組成物は、UV硬化により速やかに硬化される。しかし、本発明者が検討したところ、ウルシオールに上記化合物(A)を反応させて得られる上記特許文献4に記載のうるし化合物は、保存安定性が悪いことがわかった。
後述する比較例でも示すように、ウルシオールに上記化合物(A)を反応させて得られるうるし化合物を冷暗所に保存すると、縮重合により、溶媒に溶解しない不純物が生じる。このような不純物が存在するうるし化合物を用いて、うるし塗膜を硬化させても、良好な品質のうるし硬化膜を形成することはできない。
そこで、本発明は、冷暗所における保存安定性が優れたうるし化合物であって、該うるし化合物をラジカル重合可能な物質と混合した際、該うるし化合物を含む混合物が紫外線等の活性エネルギー線照射又は加熱により速やかに反応し得る、うるし化合物を提供することを目的とする。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)下記式(I)で表される、うるし化合物。
Figure 0007267863000002
(式(I)中、
は炭素数1~30のアルキル基又はアルケニル基を示し、
及びRの両方が下記式(II)で表される一価の基を示すか、或いは、R及びRのいずれか一方が下記式(II)で表される一価の基を示し、他方がOH基を示す。)
Figure 0007267863000003
(式(II)中、
は炭素数1~4のアルキレン基、又は-R-(OR-で表される二価の基を示し、
のアルキレン基は、メチル基、及び下記式(III)で表される基のいずれか一方又は両方で置換されていてもよく、
は水素原子又はメチル基を示し、
は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
nは1~4の整数を示す。)
Figure 0007267863000004
(2)活性エネルギー線照射又は加熱により硬化可能である、前記(1)に記載のうるし化合物。
(3)下記式(IV)で表されるうるし材料と、下記式(V)で表されるイソシアネート化合物と、を反応させる工程を含む、うるし化合物の製造方法。
Figure 0007267863000005
(式(IV)中、Rは炭素数1~30のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
Figure 0007267863000006
(式(V)中、
は炭素数1~4のアルキレン基、又は-R-(OR-で表される二価の基を示し、
のアルキレン基は、メチル基、及び下記式(III)で表される基のいずれか一方又は両方で置換されていてもよく、
は水素原子又はメチル基を示し、
は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
nは1~4の整数を示す。)
Figure 0007267863000007
(4)前記(1)に記載のうるし化合物を含むインキ組成物。
(5)さらに、ラジカル重合性のモノマー及びオリゴマーの少なくともいずれかと、光重合開始剤とを含む、前記(4)に記載のインキ組成物。
(6)基材と、
前記(4)又は(5)に記載のインキ組成物を硬化させてなる、前記基材上に形成されたインキ層と、
を有する積層体。
(7)基材と、
前記基材の一方の面上に形成された接着層と、
前記(4)又は(5)に記載のインキ組成物を硬化させてなる、前記基材の他方の面上に形成されたインキ層と、
を有するラベル。
(8)前記(7)に記載のラベルが貼付された成形体。
本発明によれば、冷暗所における保存安定性が優れたうるし化合物であって、該うるし化合物をラジカル重合可能な物質と混合した際、該うるし化合物を含む混合物が紫外線等の活性エネルギー線照射又は加熱により速やかに反応し得る、うるし化合物を提供することができる。
本発明のうるし化合物のH-NMRの測定結果を示す概略図である。 実施例で使用した精製うるしのH-NMRの測定結果を示す概略図である。 本発明のうるし化合物の13C-NMRの測定結果を示す概略図である。 実施例で使用した精製うるしの13C-NMRの測定結果を示す概略図である。 本発明のうるし化合物のFT-IRの測定結果を示す概略図である。 実施例で使用した精製うるしのFT-IRの測定結果を示す概略図である。
以下、本発明のうるし化合物、及びその製造方法について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の一実施態様としての一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
(うるし化合物)
本発明のうるし化合物は、下記式(I)で表される。
Figure 0007267863000008
(式(I)中、
は炭素数1~30のアルキル基又はアルケニル基を示し、
及びRの両方が下記式(II)で表される一価の基を示すか、或いは、R及びRのいずれか一方が下記式(II)で表される一価の基を示し、他方がOH基を示す。)
Figure 0007267863000009
(式(II)中、
は炭素数1~4のアルキレン基、又は-R-(OR-で表される二価の基を示し、
のアルキレン基は、メチル基、及び下記式(III)で表される基のいずれか一方又は両方で置換されていてもよく、
は水素原子又はメチル基を示し、
は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
nは1~4の整数を示す。)
Figure 0007267863000010
本発明のうるし化合物は、下記式(IV)で表されるうるし材料と、イソシアネート化合物と、を反応させることで得られるが、本発明のうるし化合物の製造方法についての詳しい説明は後述する。
Figure 0007267863000011
(式(IV)中、Rは炭素数1~30のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
上記式(IV)で表されるうるし材料は、例えば、漆の木から採取される生漆を精製又は抽出して得られる精製うるしに含有されている。
生漆は、漆の木から得られた樹液を濾過したものをいう。
「漆と高分子」、宮腰哲雄、高分子56巻8月号608-613ページ、2007年の文献に記載されているように、生漆の組成としては、脂質のウルシオール(60~65%)、水(25~30%)、水溶性成分のゴム質(多糖類)(5~7%)、酵素のラッカーゼ(0.1%程度)、水、及び有機溶剤に不溶性である含窒素糖タンパク(3~5%)が含まれており、W/O型のエマルジョンを構成している。
漆の主成分であるウルシオールは、3-ペンタデセニルカテコール類であり、カテコールの3位の位置に炭素数15又は17で、不飽和結合を0~3個有する直鎖炭化水素を有する。うるし製品においては水分の存在下ラッカーゼの働きでカテコール酸化を伴う縮重合が起きて硬化し、さらに自動酸化によって側鎖の不飽和結合同士の酸化重合が起き、3次元網目構造が得られるとされている。
漆の脂質成分は、漆属の種類によりさまざまであり、例えば、上記ウルシオールは、日本及び中国の漆にみられる。
一方、ベトナム及び台湾の漆に含まれる脂質のラッコールは、3-ヘプタデセニルカテコール類であり、タイ及びミャンマーの漆に含まれる脂質のチチオールは、4-ヘプタデセニルカテコール類、3-置換及び4-置換ω-フェニルアルキルカテコール類、ω-フェニルアルキルレゾルシノール類の混合物である。ラッコールやチチオールはウルシオールと同様の反応機構で硬化する。
生漆の精製方法としては、従来の漆工芸で行われている「なやし」と「くろめ」による方法や生漆を溶剤抽出して溶剤を減圧留去する方法等が挙げられる。
ここで「なやし」とは、生漆にせん断力を与えつつ撹拌してエマルジョン粒子を細かくすることを指し、近年では「3本ロールミルによる新精漆法」、大藪泰ほか、色材、65巻6月号349-355ページ、1992年の文献に記載されているように、3本ロールミルを使用して行われている。また、「くろめ」とは、「なやし」の後、40℃前後で加熱撹拌することを指し、これによって精製うるし中の水分を3~5%に調整することができる。
本発明のうるし化合物は、上記式(I)で表される構造を有する化合物であり、下記式(Ia)で表される構造を有する化合物であってもよい。
Figure 0007267863000012
上記式(Ia)中、RからRは、上記式(I)のRからRと同義である。
上記式(I)及び(Ia)において、Rの炭素数は、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。また、Rの炭素数は、25以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。
上記式(II)において、Rがアルキレン基である場合の炭素数は、3以下であることが好ましく、2以下であることがより好ましい。
上記式(II)において、Rが-R-(OR-基である場合、R及びRの炭素数は、それぞれ2以下であることが好ましい。また、nは2以下であることが好ましく、1であることがより好ましい。
本発明のうるし化合物は、漆に含まれる脂質のウルシオール、ラッコール、或いはチチオールが、イソシアネート化合物と反応することにより得られるウルシオール誘導体、ラッコール誘導体、或いはチチオール誘導体である。
本発明のうるし化合物は、下記実施例でも示す通り、冷暗所で保存しても、溶剤不溶性の皮膜を生じることがなく、保存安定性に優れている。
うるしに上記化合物(A)を反応させて得られる特許文献4に記載のうるし化合物を冷暗所に保存した場合には、溶剤不溶性の皮膜を生じる。このような不純物が存在するうるし化合物を用いて、うるし塗膜を硬化させても、光沢が低下する等、良好な品質のうるし硬化膜を形成することはできない。また、スクリーン印刷の場合は、不純物がメッシュに詰まるおそれがある。
一方、本発明のうるし化合物であると、不純物が存在しないため、本発明のうるし化合物を用いて、うるし塗膜を硬化させた場合には、良好な品質のうるし硬化膜を形成することができる。
尚、本発明において、冷暗所保存における温度条件としては、例えば、15℃以下、或いは20℃や25℃以下の温度条件が挙げられる。ただし、30℃程度までなら係る温度以下の温度条件も含めることができる。
本発明のうるし化合物は、活性エネルギー線照射又は加熱により反応可能な化合物であり、例えば、本発明のうるし化合物をラジカル重合可能な物質と混合した場合、該うるし化合物を含む混合物は紫外線照射により数秒で、加熱により数分から数十分で、速やかに反応し得る。
本発明のうるし化合物を含む混合物を硬化してなるうるし硬化膜は、下記実施例でも示す通り、硬化後数日経っても溶出する成分の存在は認められず、保存安定性に優れ、また他の部材(基材等)との密着性にも優れ、良好な品質を有している。また、硬化膜はうるし製品の質感を有しているためオーバーコートも不要である。
(うるし化合物の製造方法)
本発明のうるし化合物は、下記式(IV)で表されるうるし材料と、下記式(V)で表されるイソシアネート化合物と、を反応させることにより製造することができる。
Figure 0007267863000013
(式(IV)中、Rは炭素数1~30のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
Figure 0007267863000014
(式(V)中、
は炭素数1~4のアルキレン基、又は-R-(OR-で表される二価の基を示し、
のアルキレン基は、メチル基、及び下記式(III)で表される基のいずれか一方又は両方で置換されていてもよく、
は水素原子又はメチル基を示し、
は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
nは1~4の整数を示す。)
Figure 0007267863000015
上記式(IV)で表されるうるし材料とは、精製うるし中の脂質成分を示し、より具体的には、精製うるし中のウルシオール、ラッコール、或いはチチオール等を示す。
上記式(IV)で表されるうるし材料は、例えば、生漆を精製又は単離等することにより、上記式(IV)で表されるうるし材料単独で或いは上記式(IV)で表されるうるし材料を含むうるし材料組成物として得ることができる。うるし材料組成物は、うるし材料とイソシアネート化合物との反応性の観点から、多量の水を含まないことが好ましい。ただし、生漆にはゴム質(多糖類)や含窒素糖タンパクが含まれており、これによる保護コロイド効果が高いため、溶剤抽出と濃縮によって完全に脱水することは現実的でない。また、精製うるしにイソシアネート化合物を反応させるとき、精製うるしはウルシオール等を油性分とするW/O型のエマルジョンを構成していることから、イソシアネート化合物が水と反応する前に速やかにウルシオールと反応するため、うるし材料組成物に少量の水分が含まれていることは問題にならない。したがって、うるし材料組成物における水分量は0.1~5%(質量比)であることが好ましい。
本発明で使用するイソシアネート化合物は、一方の末端にカテコール基と反応してウレタン結合を与えるイソシアネート基、もう一方の末端にラジカル重合速度が速いアクリロイル基又はメタクリロイル基を有し、両末端を連結基で結合してなる化合物である。
該連結基としては、例えば、オキシアルキレン基(炭素数1~4)、ポリオキシアルキレン基(オキシアルキレン単位は2~8、オキシアルキレン基の炭素数は1~4)、ビス(オキシアルキレン)(オキシアルキレン基の炭素数は1~4)基等が挙げられる。
イソシアネート化合物の具体例としては、例えば、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(CAS No.30674-80-7)、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(CAS No.13641-96-8)、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート(CAS No.886577-76-0)、2-(2-メタクリロイルオキシエトキシ)エチルイソシアネート(CAS No.107023-60-9)が挙げられる。
上記式(IV)で表されるうるし材料とイソシアネート化合物とを反応させる際の、上記式(IV)で表されるうるし材料に対するイソシアネート化合物の添加割合としては、上記式(IV)で表されるうるし材料のカテコール部位1モル当たり、イソシアネート化合物のイソシアネート部位0.8~2.0モルであることが好ましく、1.05~1.8モルであることがより好ましく、1.1~1.5モルであることがさらに好ましい。イソシアネート化合物の添加量を、上記範囲より少なくして、うるし材料とイソシアネート化合物とを反応させた場合、反応により得られたうるし化合物を単離又は精製等せずにそのまま使用すると、うるし化合物を硬化してなる被膜に未反応のうるし材料が多く含まれ、これが溶出して皮膚に接触するとかぶれなどを引き起こす場合がある。また、イソシアネート化合物の添加量を、上記範囲より多くすると、うるし化合物を含有する塗膜中に未反応のイソシアネートが残存したり、失活して不純物が生じる場合がある。またコスト高でもある。
上記式(IV)で表されるうるし材料とイソシアネート化合物とを反応させる際、該うるし材料をトルエン、アセトン等の活性水素を持たない有機溶剤に溶解してもよい。ただし、反応後に有機溶剤を除去する工程が不要で輸送コストが抑えられるという観点からは、有機溶剤を使用せずに反応を行う方がより好ましい。
また、上記式(IV)で表されるうるし材料とイソシアネート化合物とを反応させる際、該うるし材料を撹拌しながらイソシアネート化合物を徐々に添加するとよい。上記式(IV)で表されるうるし材料とイソシアネート化合物とが反応すると二酸化炭素の気泡を発生しながら発熱や粘度上昇が起きる。発熱により、該うるし材料における未反応のカテコール部位同士の縮重合が誘発され、不溶性のポリマーが生成するおそれがある。そこで、イソシアネート化合物を添加する際のうるし材料の温度は、50℃以下に抑えるようにして、イソシアネート化合物を添加することが好ましい。
本発明のうるし化合物を得るには、イソシアネート化合物をうるし材料に必要量添加し、2~6時間撹拌した後、2日程度室温で放置し、反応を完全に終了させ気泡を自然に脱気することが好ましい。
上記式(IV)で表されるうるし材料をうるし材料組成物として供給した場合、うるし材料組成物とイソシアネート化合物との反応により、本発明のうるし化合物がうるし材料組成物の他の成分との混合物として得られる。この場合、必要に応じて、該混合物から本発明のうるし化合物を精製又は単離等してもよい。
上記式(IV)で表されるうるし材料とイソシアネート化合物とが反応して、本発明のうるし化合物が生じていることはH-NMR、13C-NMR、赤外吸収スペクトル等の測定方法を利用して、(メタ)アクリロイル基、連結基、ウレタン結合に基づくシグナルや吸収ピークの測定結果から確認することができる。
(うるし化合物を含むインキ組成物)
本発明のうるし化合物と、ラジカル重合性のモノマー及びオリゴマーの少なくともいずれかと、熱ラジカル重合開始剤又は光ラジカル重合開始剤とを混合し、熱硬化型或いは紫外線硬化型の重合性インキ組成物を作製することができる。
ここで、本発明のうるし化合物とラジカル重合性のモノマー及びオリゴマーの少なくともいずれかとの混合比率(質量比)は、1:99~80:20が好ましく、5:95~70:30がより好ましく、10:90~70:30がさらに好ましい。
インキ組成物には、さらに必要に応じて、可撓性を有するラジカル重合性を有しない樹脂、着色剤、又は各種添加剤を配合してもよい。
インキ組成物の好ましい態様としては、例えば、本発明のうるし化合物、ラジカル重合性のモノマー及びオリゴマーの少なくともいずれか、光重合開始剤、及び着色剤を配合してなるインキ組成物を挙げることができる。
また他の好ましい態様としては、例えば、本発明のうるし化合物、ラジカル重合性のモノマー及びオリゴマーの少なくともいずれか、光重合開始剤、可撓性を有するラジカル重合性を有しない樹脂、着色剤、及び各種添加剤を配合してなるインキ組成物を挙げることができる。
ラジカル重合性のモノマーやオリゴマーとは、分子内に不飽和結合を1~3個有する化合物をいう。モノマーとしては、例えば、脂肪族ビニル化合物、芳香族ビニル化合物、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエーテル化合物等が挙げられる。モノマーは、(メタ)アクリル酸エステルを含むことが好ましい。
単官能モノマーとしては、例えば、アクリロイルモロホリン、エチルカルビトールアクリレート、イソボロニルアクリレート、N,N-ジメチルアクリルアマイド、ジシクロペンテニルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、N-ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
2官能モノマーとしては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ビスフェノールA型のアルキレンオキサイド付加物ジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
オリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ロジン変性(メタ)アクリレート、ポリエステルウレタン(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。オリゴマーは、ポリエステル(メタ)アクリレート又はウレタン(メタ)アクリレートを含むことが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートとして、ポリカーボネートウレタン(メタ)アクリレート、又はポリエステルウレタン(メタ)アクリレートを含むことがより好ましく、ポリエステルウレタン(メタ)アクリレートを含むことがさらに好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン等のアセトフェノン類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン等のベンゾフェノン類;ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、メチルベンゾイルフォーメート等のカルボニル化合物;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン等のチオキサンソン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のリン化合物;2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルホリノプロパン-1等のイオウ化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゾインパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物が挙げられる。
ラジカル重合開始剤の添加量は、(インキ組成物全固形分量に対して)1~15質量%が好ましい。
可撓性を有するラジカル重合性を有しない樹脂としては、例えば、ロジン変性フェノール樹脂及び/又はロジン変性マレイン酸樹脂、アルキッド樹脂、石油樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリエステル樹脂、及びこれらの変性樹脂等が挙げられる。
可撓性を有するラジカル重合性を有しない樹脂の添加量は、(インキ組成物全固形分量に対して)1~10質量%が好ましい。
着色剤としては、例えば、二酸化チタン、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、プルシアンブルー、硫化カドミウム、酸化鉄、鉛、亜鉛等の無機顔料;アゾ顔料、レーキ顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、アントアンスロン顔料、トリフェンジオキサジン顔料、イソインドリン顔料、アントラキノン顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料;酸性染料、直接染料、分散染料、油溶性染料、含金属油溶性染料等の染料が挙げられる。
着色剤の添加量は、(インキ組成物全固形分量に対して)1~10質量%が好ましい。
各種添加剤としては、例えば、増感剤、ラジカル重合禁止剤、金属ドライヤー、印刷インキ用溶剤、界面活性剤、アンチブロッキング剤等が挙げられる。
これら添加剤の添加量は、インキ組成物全固形分量に対して添加剤合計で0.01~10質量%が好ましい。
増感剤としては、例えば、トリエタノールアミン、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル等のアミン化合物が挙げられる。
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、p-ベンゾキノン、t-ブチルカテコール、フェノチアジン、ピクリン酸等が挙げられる。
ラジカル重合禁止剤の添加量は、インキ組成物の紫外線硬化を妨げない観点から、(インキ組成物全固形分量に対して)0.01~0.5質量%が好ましい。
金属ドライヤーとしては、例えば、カルシウム、コバルト、鉛、鉄、マンガン、亜鉛、ジルコニウムの塩が挙げられる。ここで金属の対イオンとしては酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、2-エチル酪酸、ナフテン酸、オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、2-エチルヘキサン酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ネオデカン酸、バーサチック酸、セカノイック酸、ジメチルヘキサノイック酸、3,5,5-トリメチルヘキサノイック酸、ジメチルオクタノイック酸などの有機カルボン酸が挙げられる。これらの中でも、金属としてコバルト、鉄、マンガン、亜鉛、ジルコニウムを使用することが好ましい。金属ドライヤーは、うるし化合物を構成するアルケニル基の酸化重合を促進し、硬化被膜の耐溶剤性を向上させる効果を奏する。
金属ドライヤーの添加量は、(インキ組成物全固形分量に対して)0.01~1.5質量%が好ましい。
印刷インキ用溶剤としては、例えば、スピンドル油、3~8号ソルベント、ナフテン油、パラフィン等があげられる。
印刷インキ用溶剤の添加量は、揮発性有機化合物(VOC)の発生を抑制するという観点から、(インキ組成物全量に対して)5質量%以下であることが好ましい。
界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンフィトスタノール、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物等の非イオン界面活性剤;アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N-アシルアミノ酸とその塩、N-アシルメチルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキルスルホカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等のアニオン界面活性剤が挙げられる。
アンチブロッキング剤としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーン樹脂、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミドワックス、テフロンパウダー等が挙げられる。
上述した各インキ組成物の構成成分を混合し、ニーダー、三本ロール、アトライター、サンドミル、ゲートミキサー等の機械を使用して練肉、混合、分散等を行ってインキ組成物を製造するとよい。このとき、うるし化合物同士の縮重合による不溶物を発生させにくくする観点から、60℃以下の温度でインキ組成物を製造することが好ましい。
本発明に係るインキ組成物は、平版印刷(オフセット印刷)、凸版印刷、スクリーン印刷、枚葉印刷等の印刷インキ組成物として有用である。また、その他にも、オーバープリントワニス、塗料、光学材料、接着剤、注型、絶縁塗料、防水塗料等の広い分野に用いることができる。
本発明に係るインキ組成物を、紫外線等の活性エネルギー線又は熱を用いて硬化することにより得られるうるし硬化膜(インキ層)は、品質が良好なうるし硬化膜となる。
本発明に係るうるし硬化膜は、他の部材(基材等)との密着性に優れるため、重ね印刷が容易にでき多色化しやすい。また、うるし化合物は長鎖アルキル基を有するウレタン変性フェノール化合物であるともいえるため、油脂、各種有機溶剤、ポリウレタン、エポキシ化ポリウレタン、エポキシ化アクリレート等、紫外線硬化性を構成する各種材料との親和性が高く、インキ組成物の成分が凝集・分離しにくい性質を有する。そのため、保存安定性が良好で光沢が得られやすい。本発明に係るうるし硬化膜は、硬化後数日経っても溶出する成分の存在は認められず、保存安定性に優れ、またうるし製品の質感を有しているためオーバーコートも不要である。
さらに、本発明に係るうるし硬化膜は、可撓性に優れるため、絞り加工や曲げ加工等によるクラックや剥離の問題も生じない。
(うるし化合物を用いたラベル)
本発明のうるし化合物を含有するインキ組成物を、基材上に塗布し、係るうるし塗膜に対して、紫外線等の活性エネルギー線又は熱を付与すると、インキ組成物が硬化してなるインキ層を形成することができる。
本発明では、うるし化合物を用いた製品の好ましい態様の1つとして、基材と基材上に形成されたインキ層とを有する積層体を挙げることができ、別の態様として、基材と、基材上の一方の面上に形成された接着層と、基材上の他方の面上に形成されたインキ層とを有するラベルを挙げることができる。
積層体のより具体的な製造方法について、以下説明する。
インキ組成物を基材に印刷し、係るインキ組成物の塗膜に対して、紫外線を照射する。これにより、塗膜を硬化させ、インキ層を形成する。
ここでインキ組成物を基材に印刷する印刷方法としては、例えば、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷等が挙げられる。
オフセット印刷としては、一般的な湿し水を使用するオフセット印刷でも、湿し水を使用しない水無しオフセット印刷でも、いずれでもよい。
基材としては、例えば、アート紙、顔料コート紙、樹脂ラミネート紙、合成紙、プラスチックフィルム、金属板等が挙げられる。
プラスチックフィルムの材質は、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、塩化ビニル、PET、A-PET等が挙げられる。
また、必要に応じて基材にコロナ放電処理を行ったり、アンカー剤を塗布したりしてもよい。
インキ組成物の塗膜に対する紫外線照射による硬化は、常法により行うことができる。例えば、低圧又は高圧水銀灯、メタルハライドランス、セキノンランプ、UV-LED等を用いて紫外線を照射することができる。
また、ラベルの製造方法は、基材の一方の面上に接着層を形成し、その後、基材の他方の面にインキ組成物を印刷すること以外は、積層体と同様の製造方法であることができる。接着層の形成方法としては、塗工法、共押出法、溶融押出ラミネーション法、樹脂組成物からなるフィルムの熱ラミネーション法、又は樹脂組成物からなるフィルムのドライラミネーション法などの方法が挙げられる。
(うるし化合物を用いたラベルが貼付された成形体)
本発明では、うるし化合物を用いた製品の好ましい態様の1つとして、上述したラベルが貼付された成形体を挙げることができる。
ラベルを成形体に貼付する方法としては、特に制限はなく、成形体の成形方法に応じて適宜選択することができる。
例えば、成形体の成形方法としては、真空成型、圧空成形等のシート成形;感圧接着による成形;インサート成形;インモールド成形等を挙げることができる。
より具体的には、例えば、インサート成形やインモールド成形の場合、金型内に上述したラベルを装填した後、樹脂を注入して該ラベルを溶融樹脂で包んで固化させ、本発明のうるし化合物を用いたラベルと成形体が一体化した製品を製造することができる。
また、感圧接着による成形の場合、射出成型、ブロー成型等で得られた樹脂成形体にラベルを圧着してラベルと成形体が一体化した製品を製造することができる。
本発明のうるし化合物を含有するインキ層は、可撓性に優れるため、基材との密着性が高いという特徴があり、成形時の熱や圧力にさらされてもインキが割れたりはがれたりしにくく、基材の伸びや収縮に追従しやすい。絞り加工や曲げ加工等によるクラックや剥離の問題も生じない。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」、「%」等の記載は、断りのない限り、質量基準の記載を意味する。
(冷暗所保存性)
うるし化合物を脱気可能な遮光容器に入れ、15℃で3日放置後、クロロホルム中での溶解状況を目視で判断し、下記基準により評価した。
A 完全に溶解している
B ほぼ溶解しているが不溶物が浮遊している
C ほとんど不溶である。不溶物が膨潤する
D ほとんど不溶である。不溶物が膨潤しない
(UV硬化性)
UV硬化性は、UV照射後の塗膜を指で押さえたときの挙動で判断し、下記基準により評価した。
A 硬化被膜表面に粘着性がない
B ゴム状で粘着性がある
C 表面に一部硬化した膜があるが内部は未硬化である
D 硬化した膜が全くなく液状である
(密着性)
上記UV硬化性の評価において、B以上の結果であった場合、同様にしてさらに試験片を作製し、密着性の評価を行った。
上記UV硬化性試験で得た試験片と同様にして作製した試験片1枚に対して、セロハンテープ(商品名:セロテープCT405AP-15、15mm幅)を硬化面に密着させ、手で180度剥離したときの挙動で判断し、下記基準により評価した。
A 基材内部で凝集破壊する
B 硬化面表面できれいに剥離する
C 基材表面で剥離するが剥離抵抗が感じられる
D 基材表面で剥離し、このとき剥離抵抗が感じられない
(溶出程度)
上記UV硬化性の評価において、B以上の結果であった場合、同様にしてさらに試験片を3枚作製し、密着性の評価を行った。
上記UV硬化性試験で得た試験片と同様にして作製した試験片3枚に対して、紙に挟んだ状態で、チャック付きポリ袋で1週間保管後、袋から取り出し、試験片をはさみで約7mm角に刻み、50mLのアセトンに1時間浸漬後、アセトン溶液をシャーレに移し、70℃の送風乾燥機で乾燥させ、乾燥後のシャーレをユポFGS110(5枚重ね)の上に置いて、目視で判断し、下記基準により評価した。UV硬化性及び溶出程度の評価がともにB以上であった場合に、塗膜が十分反応していると判断した。
A 着色物質が認められない
B 薄く着色物質が認められる
C 褐色の物質がはっきりと認められる
(実施例1)
中国産生漆をJIS K 5950に準じて「くろめ」処理した精製うるし(水分3%)を用意した。
精製うるし32gを撹拌しながら2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート22.2g(イソシアネート化合物(1)、東京化成工業株式会社製、試薬)を2時間かけて滴下した。その後3時間撹拌を続けた。この時の最高温度は55℃であった。
さらに冷暗所(15℃)に3日放置した。完全に脱気され、粘稠な褐色の液体として実施例1のうるし化合物が得られた。
実施例1のうるし化合物は、クロロホルムに完全に溶解した。
実施例1のうるし化合物のH-NMR、13C-NMR、FT-IRの測定結果を図1A、図2A、図3Aにそれぞれ示す。また、比較のために、精製うるしのH-NMR、13C-NMR、FT-IRの測定結果を図1B、図2B、図3Bにそれぞれ示す。
H-NMRのデータから図1Aに示すように、5.8~5.9ppm付近、6.1~6.3ppm付近、及び6.4~6.5ppm付近にアクリル基に由来する3つのプロトンのシグナルが確認でき、3.5ppm付近及び4.3ppm付近に連結基のメチレンに由来する4つのプロトンのシグナルが確認できた。また、13C-NMRのデータから図2Aに示すように、129ppm付近及び132ppm付近にアクリル基に由来する2つの炭素のシグナル、166ppm付近にエステル基に由来する1つの炭素のシグナル、40ppm付近及び63ppm付近に連結基のメチレンに由来する2つの炭素のシグナル、154ppm付近にウレタン結合に由来する1つの炭素のシグナルが確認できた。また、FT-IRのデータから図3Aに示すように1726cm-1付近にエステル基のカルボニル、1535cm-1付近にウレタン結合のN-H、1636cm-1付近にアクリル基のC=Cのピークが検出された。これらの測定結果から、実施例1では、上記式(I)において、R及びRが、上記式(II)(Rは炭素数2のアルキレン基、Rは水素原子)で表されるうるし化合物が生成されていることが確認できた。
(比較例1)
実施例1において、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネートの代わりに3-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート(イソシアネート化合物(2)、東京化成工業(株)製、試薬)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてイソシアネート化合物を添加した。気泡の発生、温度上昇、粘度上昇は穏やかであった。
イソシアネート化合物の滴下時間2時間、撹拌時間3時間とした。その間における最高温度は42℃であった。
その後、冷暗所(15℃)に3日放置した。表面に皮膜が生じており、皮膜を除去したところ、脱気された粘稠な褐色の液体として比較例1のうるし化合物が得られた。
比較例1のうるし化合物を製造したときに生じた皮膜は、クロロホルムに浸漬したとき膨潤するが溶解しなかった。また、内部液状部にもクロロホルム未溶解物が存在した。
(実施例2)
実施例1のうるし化合物、及びポリマーポリオール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、有機ジイソシアネートからなるウレタンオリゴマーと、アクリル酸2-ヒドロキシエチルとの混合物(共栄社化学(株)製、製品名:UF-8001G)を同質量配合し、さらに光ラジカル重合開始剤(富士フイルム和光純薬株式会社製、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン)を質量比でインキ組成物全体の5%添加してインキ組成物を作製した。
インキ組成物をメイヤーバー(#8)で合成紙(株式会社ユポ・コーポレーション製、製品名:ユポFGS110、サイズ:10cm×8cm)の表面に塗布し、ネイルドライヤー硬化用UVライト(SUNUV社製、製品名:SUN4)にて30秒間紫外線を照射することにより、塗膜を硬化させて、試験片を得た。
実施例2で得られた試験片のUV硬化性は、Aランク、密着性は、Aランク、溶出程度は、Aランクであった。
(実施例3)
実施例2において、実施例1のうるし化合物、及びポリマーポリオール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、有機ジイソシアネートからなるウレタンオリゴマーと、アクリル酸2-ヒドロキシエチルとの混合物の配合比を8:2としたこと以外は、実施例2と同様にしてUV照射を行ったところ、粘着性がある塗膜の試験片が得られた。
実施例3で得られた試験片のUV硬化性は、Bランク、密着性は、Bランク、溶出程度は、Bランクであった。
(比較例2)
実施例2において、実施例1のうるし化合物の代わりに精製うるしを用いて実施例2と同様にして比較例2のインキ組成物を作製した。
比較例2で得られた試験片のUV硬化性は、Bランク、密着性は、Bランク、溶出程度は、Cランクであった。
(比較例3)
実施例2において、実施例1のうるし化合物の代わりに比較例1のうるしを用いて実施例2と同様にして比較例3のインキ組成物を作製した。
比較例3で得られた試験片のUV硬化性は、Bランク、密着性は、Bランク、溶出程度は、Cランクであった。
実施例1及び比較例1についての冷暗所保存性の評価結果を表1に示す。実施例2~3及び比較例2~3についてのUV硬化性、密着性、溶出程度についての評価結果を表2に示す。
Figure 0007267863000016
Figure 0007267863000017
(実施例4)
実施例1で製造したうるし組成物、及びポリマーポリオール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、有機ジイソシアネートからなるウレタンオリゴマー(重合性不飽和結合数2)と、アクリル酸2-ヒドロキシエチルとの混合物(共栄社化学(株)製、製品名:UF-8001G)を同質量配合し、さらにカーボンブラック(三菱ケミカル(株)製、製品名:#2650)を質量比でインキ組成物全体の5%、光ラジカル重合開始剤(富士フイルム和光純薬(株)製、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン)を質量比でインキ組成物全体の5%添加してインキ組成物を作製した。
インキ組成物をスクリーン印刷法で合成紙(株式会社ユポ・コーポレーション製、品名:ユポFGS110、サイズ:10cm×8cm)の表面に印刷して、直後に紫外線照射(高圧水銀灯 積算光量800mJ/cm)にて硬化させてラベルを得た。
ブロー成形用金型のキャビティ内に上記ラベルを真空吸引で固定し、高密度ポリエチレン(日本ポリプロ株式会社製、製品名:ノバッテックEA9)からなるパリソンをブロー成形して金型内でボトルを成形すると同時に上記ラベルを貼着した。
ラベルが貼付された成形品を目視観察した結果、ラベルの皺や容器の変形は見られなかった。
実施例の結果から、本発明のうるし化合物は冷暗所保存性が良好で、該うるし化合物を含有するインキ組成物からなるインキ層は、良好なUV硬化性、及び密着性を示すことが確認された。また、実施例2の本発明のうるし化合物を含有するインキ層では、UV照射7日後でも溶出成分が認められなかったのに対し、比較例2で従来の精製うるしを使用してUV照射させたインキ硬化層は、UV照射7日後には溶出成分が現れていた。これにより、本発明のうるし化合物は、ラジカル重合性のモノマー及びオリゴマーと良好に反応していることが示された。
本発明のうるし化合物を含有する、活性エネルギー線又は熱により硬化可能なインキ組成物を作製することにより、本発明のうるし化合物を、伝統工芸品の装飾、電化製品などの筐体の加飾、建築内外装材の加飾、車用内装材の加飾、印刷用インキ、画材等に好ましく使用することができる。

Claims (8)

  1. ウルシオール、ラッコールまたはチチオールと、下記式(V)で表されるイソシアネート化合物と、を反応させる工程を含む、うるし化合物の製造方法。
    Figure 0007267863000018
    (式(V)中、
    は炭素数1~4のアルキレン基、又は-R-(OR-で表される二価の基を示し、
    のアルキレン基は、メチル基、及び下記式(III)で表される基のいずれか一方又は両方で置換されていてもよく、
    は水素原子又はメチル基を示し、
    は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
    は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
    nは1~4の整数を示す。)
    Figure 0007267863000019
  2. ウルシオール、ラッコールまたはチチオールと、下記式(V)で表されるイソシアネート化合物との反応生成物である、うるし化合物。
    Figure 0007267863000020
    (式(V)中、
    は炭素数1~4のアルキレン基、又は-R -(OR -で表される二価の基を示し、
    のアルキレン基は、メチル基、及び下記式(III)で表される基のいずれか一方又は両方で置換されていてもよく、
    は水素原子又はメチル基を示し、
    は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
    は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
    nは1~4の整数を示す。)
    Figure 0007267863000021
  3. 請求項2に記載のうるし化合物を含むインキ組成物。
  4. 下記式(I)で表されるうるし化合物を含むインキ組成物
    Figure 0007267863000022
    (式(I)中、
    は炭素数1~30のアルキル基又はアルケニル基を示し、
    及びRの両方が下記式(II)で表される一価の基を示すか、或いは、R及びRのいずれか一方が下記式(II)で表される一価の基を示し、他方がOH基を示す。)
    Figure 0007267863000023
    (式(II)中、
    は炭素数1~4のアルキレン基、又は-R-(OR-で表される二価の基を示し、
    のアルキレン基は、メチル基、及び下記式(III)で表される基のいずれか一方又は両方で置換されていてもよく、
    は水素原子又はメチル基を示し、
    は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
    は炭素数1~3のアルキレン基を示し、
    nは1~4の整数を示す。)
    Figure 0007267863000024
  5. さらに、ラジカル重合性のモノマー及びオリゴマーの少なくともいずれかと、光重合開始剤とを含む、請求項3または請求項4に記載のインキ組成物。
  6. 基材と、
    請求項3~5のいずれかに記載のインキ組成物を硬化させてなる、前記基材上に形成されたインキ層と、
    を有する積層体。
  7. 基材と、
    前記基材の一方の面上に形成された接着層と、
    請求項3~5のいずれかに記載のインキ組成物を硬化させてなる、前記基材の他方の面上に形成されたインキ層と、
    を有するラベル。
  8. 請求項7に記載のラベルが貼付された成形体。
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