JP7259847B2 - インク組成物及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法 - Google Patents

インク組成物及び有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、インク組成物と、それを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法及び有機エレクトロルミネッセンス素子に関するものである。
近年、様々な分野で、有機材料のエレクトロルミネッセンス(ElectroLuminescence:以下、「EL」と略記する。)を利用した有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、「有機EL素子」と略記する。)が急速に普及しており、この有機EL素子は、数V~数十V程度の低電圧で発光が可能な薄膜型の完全固体素子であり、高輝度、高発光効率、薄型、軽量といった多くの優れた特徴を有している。
有機EL素子は、電子注入用電極とホール注入用電極とからそれぞれ電子とホールを発光層内に注入し、注入された電子とホールを発光層内で結合させて、有機材料を励起状態にして、この有機材料が励起状態から基底状態に戻るときに発光するようになっており、低い電圧で駆動できるという利点がある。面で発光するという利点を活かして、薄型でフレキシブルな照明用途として、表示装置、ディスプレイ、照明光源等の面発光体として、その適用分野の検討が精力的になされている。
従来、有機EL素子を製造する方法としては、化学蒸着法や真空蒸着法等を用いたドライプロセスにより作製する方法が広く知られているが、これらのドライプロセスの多くが、真空装置等の大型設備を必要とするため、コストが上昇し、かつ装置の制約から大面積の有機EL素子を作製するのが難しいという問題を抱えている。
上記問題に対し、有機EL素子の製造方法として、省エネルギー、大面積化、軽量・薄膜化や、形成精度を向上し、高い生産性を可能にする塗布方式、例えば、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等のウェットプロセスを用い、有機EL素子を構成する各種の有機機能層(以下、単に「有機層」ともいう。)を印刷法により形成する「プリンテッド・エレクトロニクス」の研究が盛んになされている。
しかしながら、各有機機能層をウェットプロセスで積層しようとする場合、既に形成してある下層成分の溶出が問題になる。下層成分が溶出すると、有機機能層の積層によるメリットが失われるだけでなく、膜厚均一性の低減などから、有機EL素子が短絡し、電界の集中などから劣化が早くなるなどといった問題が発生する。
このような問題に対処する方法として、有機EL素子を構成する各層を積層する時、例えば、基板上に形成された所定の有機層上に、上層となる有機層を積層するとき、下層の構成材料が溶解しにくい溶媒を用いて上層を塗布するという方法が知られている。例えば、通常、有機EL素子を構成する発光層は、トルエン等の非極性溶媒に溶け易く、極性溶媒に溶けにくいので、例えば、上層にあたる電子輸送層を積層する場合には、アルコール系等の極性溶媒で塗布する方法が提案されている。
ウェットプロセスを用いた有機EL素子の有機層の形成方法としては、例えば、特許文献1には、2層の有機層を形成する際に、1層の有機層を、フッ素含有化合物を含む溶媒で塗布し、他の1層はフッ素含有化合物を含まない溶媒で塗布する方法が開示されている。
また、特許文献2には、有機材料と含フッ素アルコールとを含む組成物を下層上に塗布した後、形成した塗膜より含フッ素アルコールを蒸発除去して有機EL素子を作製する方法が開示されている。
一方、ウェットプロセスを用いた、電子輸送層の形成方法として、特許文献3に記載の方法が挙げられる。特許文献3に記載されている方法では、アルコール溶媒に可溶で、金属に対してキレート配位子として働く電子輸送材料であるフォスフィンオキシド誘導体を金属錯体と共に塗設した有機ELデバイスの例が示されている。しかし、下層材料にはポリマーを使用した例のみが記載されているにすぎず、高純度で耐久性の高い素子を構成するために欠かせない低分子化合物で形成された構成層上への積層に関しては十分な技術とはいえない。また、より電子輸送性の高い電子輸送性材料と組み合わせる場合、そのような電子輸送材料の多くは、アルコールに不溶なものがほとんどであり、材料の選択巾に制約を受けている。
すなわち、電子輸送材料を溶解し、更に下層成分の溶出性がなく、外部量子効率(EQE)の高い素子を作製することができるウェットプロセスの膜形成技術が必要とされていた。
上記問題に対し、特許文献4では、ウェットプロセスを用いて有機EL素子の複数の有機層、例えば、下層の発光層上に電子輸送層を形成する場合、電子輸送層形成用塗布液として、電子輸送性化合物等を非フッ化アルコール溶媒に溶解し、更にフッ化アルコール溶媒を含有した構成の塗布液を調製し、スピンコート法を用いて、バッチ方式で積層する方法が開示されている。
一方、ウェットプロセスとして、大型設備を必要としない簡易的な方法により、任意のパターンを有する高精細な有機EL素子を得ることができる点で、インクジェット印刷法を用いた有機EL素子の製造方法が注目されている。
しかしながら、上記各特許文献で開示されているようなフッ素系溶媒を含有する組成物を用いて、ウェットプロセスとしてインクジェット印刷法を適用して有機層を形成する場合には、フッ素系溶媒がインクジェットヘッドを構成している部材を膨潤させてしまい、長期的な射出安定性を確保させることが難しい。また、スピンコート法で使用する溶媒は沸点が低く、蒸気圧が高いため、そのままインクジェット印刷法に適用しようとすると、溶媒がすぐに蒸発・飛散してしまい、ノズルの目詰まりが生じるという問題があった。
上記問題に対し、インク組成物の構成として非フッ素系溶媒を併用することで、有機EL素子製造時の構成層の溶媒耐性やインクジェットヘッドの構成材料の溶媒による影響はある程度防止できるが、反面、インク組成物を構成する材料に対する溶解性が低下するという問題は生じる。このような場合、材料の溶解性が低い溶媒が最後まで塗膜上に残留すると、塗膜が白くなってしまうことが判明した。
特開2002-216956号公報 特開2004-265672号公報 特開2010-278376号公報 特開2014-44972号公報
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、インクジェットヘッドにおける射出安定性及び部材適合性に優れたインクジェット印刷法に適用するインク組成物と、当該インク組成物を用い、有機EL素子の製造時の下層に対する溶媒耐性に優れ、かつ外部量子効率(EQE)の高い有機EL素子が得られる有機EL素子の製造方法を提供することである。
本発明の上記課題は以下の手段により解決される。
1.有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する有機層Aの形成に用いるインクジェット用のインク組成物であって、
少なくとも、前記有機層Aを形成する有機機能性材料と、少なくとも1種のフッ素系溶媒と、1atm(101.3kPa)下での沸点が99℃以上である非フッ素系溶媒とを含有し、かつ、
前記少なくとも1種のフッ素系溶媒が、インク組成中5質量%以上存在する全ての非フッ素系溶媒に比べ、25℃における蒸気圧が最も低いことを特徴とするインク組成物。
2.前記フッ素系溶媒として、25℃における蒸気圧が異なる2種以上のフッ素系溶媒を含有することを特徴とする第1項に記載のインク組成物。
3.少なくとも2種のフッ素系溶媒A1及びフッ素系溶媒A2と、非フッ素系溶媒Bを含有し、前記各々の溶媒の25℃における蒸気圧の序列が、下記関係式1で規定する条件を満たすことを特徴とする第1項又は第2項に記載のインク組成物。
(関係式1)
蒸気圧 フッ素系溶媒A2<非フッ素系溶媒B<フッ素系溶媒A1
4.前記2種のフッ素系溶媒A1とフッ素系溶媒A2との沸点の差が、1atm(101.3kPa)下で20℃以上であることを特徴とする第3項に記載のインク組成物。
5.インク組成物の総溶媒量に対する前記フッ素系溶媒の総量が、51質量%以上であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載のインク組成物。
6.前記有機層Aを構成する有機機能性材料が、電子輸送材料又は電子注入材料であることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載のインク組成物。
7.前記有機層Aを構成する有機機能性材料が、電子輸送材料であることを特徴とする第6項に記載のインク組成物。
8.有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
インクジェット印刷法を用いて、少なくとも1層の有機層Aを、第1項から第7項までのいずれか一項に記載のインク組成物を用いて形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
9.分子量が700~2000の範囲内にある有機化合物を含有する有機層B上に、前記インク組成物を用いて有機層Aを形成することを特徴とする第8項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
本発明により、インクジェットヘッドの射出安定性及び部材適合性に優れたインクジェット印刷法に適用するインク組成物と、当該インク組成物を用いて有機EL素子製造時の下層に対する溶媒耐性に優れ、かつ外部量子効率(EQE)の高い有機EL素子を提供することができる。
本発明のインク組成物を用いた有機EL素子の製造方法における技術的特徴とその効果の発現機構は、以下のように推察される。
本発明者らは、前述のようなフッ素系溶媒と非フッ素系溶媒を用いて、インクジェット印刷法で有機EL素子を作製しようとした場合に、発光層上に有機層、例えば、電子輸送層を塗布すると、塗膜が白くなり、発光ムラが発生する場合があることを見いだした。このような問題に対し、これら有機EL素子をインクジェット印刷法で作製するときの塗布溶媒について検討を重ね、有機機能層上に他の有機機能層を積層塗布するとき、例えば、有機層B上に有機層Aを塗布するとき、その形成に使用するインク組成物として、有機層Aを構成する有機機能性材料と、フッ素系溶媒と、1atm(101.3kPa)下での沸点が99℃以上である非フッ素系溶媒とを含有し、かつ、前記少なくとも1種のフッ素系溶媒が、インク組成中5質量%以上存在する全ての非フッ素系溶媒に比べ、25℃における蒸気圧が最も低い構成とすることにより、インクジェット印刷法を用いた塗布においても透明でムラがない有機機能層膜を形成できることを見出した。
インク組成物を構成する溶媒として、フッ素系溶媒を併用することにより、上記効果が発現する理由の詳細は定かではないが、以下のように考えられる。
フッ素系溶媒はフッ素の電気陰性度により、極性の高い溶媒となり、材料を溶解しやすい。一方でフッ素原子部分は他の物質と相互作用しにくい。そのため、フッ素系溶媒は下層となる発光層(有機層A)の材料との相互作用がほどよく、発光層上に他の有機機能層である有機層Aを、フッ素系溶媒を含むインク組成物を用いてインクジェット印刷するとき、フッ素系溶媒に下層が侵されにくいと同時に塗布性(濡れ性)がよいものと考えられる。
このため、フッ素系溶媒は、下地の有機層材料を溶出させることがなく、層界面の混合や乱れもなく有機層をムラなく塗布できるものと推察される。
また、下地の有機層材料は低分子材料(例えば、分子量が500以上)が好ましいが、その中でも分子量が700以上であると、非フッ素系溶媒に溶出しにくくなり好ましい。また、分子量が2000以下であることが、優れた有機EL素子性能が得られる観点からこのましい。
有機エレクトロルミネッセンス素子の構成の一例を示す概略断面図 インクジェット印刷方式に適用可能なインクジェットヘッドの構造の一例を示す概略斜視図 インクジェット印刷方式に適用可能なインクジェットヘッドの構造の一例を示す概略斜視図 インクジェット印刷方式に適用可能なインクジェットヘッドの構造の一例を示す底面図
本発明のインク組成物は、有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する有機層Aの形成に用いるインクジェット用のインク組成物であって、少なくとも、前記有機層Aを構成する有機機能性材料と、フッ素系溶媒と、1atm(101.3kPa)下における沸点が99℃以上である非フッ素系溶媒とを含有し、かつ、前記少なくとも1種のフッ素系溶媒が、インク組成中5質量%以上存在する全ての非フッ素系溶媒に比べ、25℃における蒸気圧が最も低いことを特徴とする。この特徴は、下記各実施形態に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施形態としては、本発明の目的とする効果をより発現できる観点から、インク組成物においては、フッ素系溶媒として、25℃における蒸気圧が異なる2種以上のフッ素系溶媒を含有すること、更には、少なくとも2種のフッ素系溶媒A1及びフッ素系溶媒A2と、沸点が99℃以上である非フッ素系溶媒Bを含有し、前記各々の溶媒の25℃における蒸気圧の序列が、前記関係式1で規定する条件を満たす構成とすること、また前記2種のフッ素系溶媒A1とフッ素系溶媒A2との沸点の差を20℃以上とすることにより、濡れ性の良いフッ素系溶媒A1が最初に気化し、ある程度均一な膜を形成し、その後、非フッ素系溶媒が気化し、最後に材料溶解性の高いフッ素系溶媒A2が気化することにより、インクジェット適性を備えながら、ムラのない塗膜を形成することができる点で、好ましい。
また、インク組成物の総溶媒量に対する前記フッ素系溶媒の総量を、51質量%以上とすることが、有機機能層を構成する材料に対する溶解性が向上し、かつ低分子量で構成されている下層、例えば、発光層上に、安定して、電子輸送層等を形成することができる点で好ましい。
すなわち、インクジェット印刷法を用いた有機EL素子の製造方法においては、有機EL素子を構成する分子量が700~2000の範囲内にある有機化合物を含有する有機層B上に、機能性材料と本発明で規定する構成のフッ素系溶媒と非フッ素系溶媒を含有するインク組成物を射出して、有機層Aを形成することが、既に下層に形成してある低分子材料で構成されている有機層Bの溶質等の溶解がなく、層界面における混合や乱れを生じることがなく、リンス耐性が向上し、安定して積層構造の有機機能層群を形成することができる点で好ましい。
上記のような有機機能層群の形成方法においては、有機層Bが発光層であり、有機層Aが、有機機能性材料として電子輸送材料又は電子注入材料を含有する電子輸送層又は電子注入層であること、更には電子輸送材料を含有する電子輸送層であることが好ましい構成である。
以下、本発明の構成要素、及び本発明を実施するための形態について、図を交えて詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
《インク組成物》
本発明のインク組成物は、少なくとも、有機ELを構成する有機層のインクジェット印刷法による形成に用い、有機機能性材料と、フッ素系溶媒と、1atm(101.3kPa)下における沸点が99℃以上である非フッ素系溶媒とを含有し、かつ、少なくとも1種のフッ素系溶媒が、含有する全ての溶媒の中で、25℃における蒸気圧(kPa)が最も低い構成とすることを特徴とする。
また、本発明のインク組成物の他の形態としては、少なくとも、有機層を構成する有機機能性材料と、2種のフッ素系溶媒A1及びフッ素系溶媒A2と、沸点が99℃以上である非フッ素系溶媒Bを含有し、各々の溶媒の25℃における蒸気圧(kPa)の関係が、下記関係式1で規定する条件を満たすことが好ましい。
(関係式1)
蒸気圧 フッ素系溶媒A2<非フッ素系溶媒B<フッ素系溶媒A1
本発明に係る各溶媒の25℃における蒸気圧(kPa)は、下記の方法に準じ、求めることができる。例えば、JIS K2258-1:2009に準拠したリード法やJIS K2258-2:2009に準拠した3回膨張法等を挙げることができる。また、一般的な蒸気圧の測定方法として知られている、静止法、沸点法、アイソテニスコープ、気体流通法、DSC法も適用することができる。更には、公知文献、例えば、「新版 溶剤ポケットブック」(有機合成化学教会編、オーム社)に記載されている蒸気圧データを活用することもできる。
次いで、本発明のインク組成物を構成する各溶媒について説明する。ただし、有機層を構成する各有機機能性材料の詳細については、有機EL素子の構成に合わせて記載する。また、以下の説明において、非フッ素系溶媒Bの沸点は、1atm(101.3kPa)下での沸点とする。
〔フッ素系溶媒〕
本発明のインク組成物においては、1)フッ素系溶媒と沸点が99℃以上である非フッ素系溶媒との構成、又は、2種のフッ素系溶媒A1及びフッ素系溶媒A2と沸点が99℃以上である非フッ素系溶媒Bによる構成において、少なくも1種のフッ素系溶媒の25℃における蒸気圧が溶媒の中で最も低い蒸気圧であることを特徴とする。
本発明に適用可能なフッ素系溶媒としては、構造中にフッ素原子を有するものであれば、特に制限はない。
例えば、フッ素含有炭化水素、フッ素含有アルコール、フッ素含有芳香族化合物、フッ素含有エーテル、フッ素含有ケトン、フッ素含有エステル、フッ素含有アミド、フッ素含有カルボン酸などが挙げられる。
本発明においては、これらの中でも、本発明の目的効果であるインクジェットヘッドに対する射出安定性及び部材適合性に優れ、かつインク組成物を用いた有機EL素子製造時の下層へのリンス耐性(耐溶剤性)に優れるなどの点から、フッ素系溶媒としては、フッ素含有アルコールを用いることが好ましい。
本発明に適用可能なフッ素系溶媒としては、下記一般式(a)で表される構造を有する化合物を挙げることができる。本発明のインク組成物において、フッ素系溶媒を2種用いる場合には、沸点が20℃以上異なるフッ素系溶媒の組み合わせにすることが好ましい。
一般式(a)
A-CH2OH
上記一般式(a)において、AはCF3又はCHF2(CF2nを表し、nは1~5の整数を表す。nとして好ましくは1~3であり、更に好ましくは1である。
本発明に係るフッ素系溶媒としては、更には、下記一般式(b)又は一般式(c)で表される構造を有するフッ素系溶媒が好ましい。
Figure 0007259847000001
上記一般式(b)及び一般式(c)において、A、B及びDは、それぞれCH3-xx又はCH3-xx(CH2-yynを表し、xは1~3、yは1~2、nは0又は1を表す。
本発明に係るフッ素系溶媒の具体例としては、例えば、下記に示す化合物が挙げられる。
a)2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール(略称:TFPO、沸点:109℃、蒸気圧:2.53kPa)、
b)2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール(略称:PFPO、沸点:81℃、蒸気圧:5.45kPa)、
c)2-トリフルオロメチル-2-プロパノール(略称:TFMPO、沸点:83℃、蒸気圧:11.47kPa(計算値))
d)2,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブタノール(略称:HFBO、沸点:114℃、蒸気圧:2.63kPa(計算値))、
e)2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンタノール(略称:OFPO、沸点:142℃、蒸気圧:0.51kPa)、
f)1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(略称:HxFPO、沸点:58℃、蒸気圧:20.84kPa(計算値))、
g)2,3-ジフルオロベンジルアルコール(略称:DFBA、沸点:88℃)、
h)2,2,2-トリフルオロエタノール(略称:TFEO、沸点:78℃、蒸気圧:7.09kPa)、
i)1,3-ジフルオロプロパン-2-オール(略称:DFPO、沸点:55℃、蒸気圧:4.52kPa)、
j)1,1,1-トリフルオロ-2-プロパノール(略称:TrF2PO、沸点:82℃)、
k)3,3,3-トリフルオロ-1-プロパノール(略称:TrF1PO、沸点:100℃、蒸気圧:5.14kPa(計算値))、
l)2,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブタノール(略称:HpFBO、沸点:97℃、蒸気圧:4.56kPa(計算値))、
m)3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-2-ペンタノール(略称:HpFPO、沸点:102℃、蒸気圧:4.08kPa(計算値))、
n)1H,1H-ペンタデカフルオロ-1-オクタノール(略称:PDFOO、沸点:163℃、蒸気圧:0.32kPa(計算値))、
p)1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-n-オクタノール(略称:TDFOO、沸点:88~95℃、蒸気圧:3.72kPa)、
q)1H,1H,7H-ドデカフルオロ-1-ヘプタノール(略称:DFHO、沸点:170℃、蒸気圧:0.14kPa(計算値))、
r)1H,1H,9H-ヘキサデカフルオロ-1-ノナノール(略称:HDFNO、沸点:156℃、蒸気圧:2.66kPa)、
s)1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デカノール(略称:HDFDO、沸点:115℃、蒸気圧:2.66kPa)、
t)2-パーフルオロヘキシルエタノール(略称:PFHEO、沸点:75~80℃、蒸気圧:1.86kPa)、
u)2-パーフルオロブチルエタノール(略称:PFBEO、沸点:140~143℃)、蒸気圧:0.38kPa(計算値)、
などが挙げられる。
本発明のインク組成物においては、2種のフッ素系溶媒A1及びフッ素系溶媒A2を併用し、蒸気圧の関係をフッ素系溶媒A2<非フッ素系溶媒B<フッ素系溶媒A1とすることが好ましく、また、フッ素系溶媒A1とフッ素系溶媒A2との沸点の差を20℃以上とする組み合わせが好ましい。具体的な組み合わせとしては、2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール(沸点:109℃、蒸気圧:2.53kPa、略称:TFPO)と2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンタノール(沸点:142℃、蒸気圧:0.51kPa、略称:OFPO)を併用することが好ましい。
これらのフッ素系溶媒は、市販品として容易に入手することができる。
本発明のインク組成物においては、インク組成物総量に対し、本発明に係るフッ素系溶媒の比率は、特に制限はなく、30~95質量%の範囲内とすることができるが、好ましくは51~95質量%の範囲内であり、更に好ましくは、70~90質量%の範囲内である。
〔非フッ素系溶媒〕
本発明のインク組成物においては、フッ素系溶媒とともに、1atm(101.3kPa)下での沸点が99℃以上である非フッ素系溶媒を併用することを特徴とし、非フッ素系溶媒は少なくとも1種のフッ素系溶媒よりも蒸気圧が高く、また、2種のフッ素系溶媒(フッ素系溶媒A1及びフッ素系溶媒A2)を含む系では、各々の溶媒の25℃における蒸気圧(kPa)の関係が、前記関係式1で規定する条件を満たすことが好ましい。
本発明のインク組成物に適用可能な非フッ素系溶媒としては、フッ素原子を含まない1atm(101.3kPa)下での沸点が99℃以上の有機溶媒であれば特に制限はなく、例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル・アセタール類、ケトン・アルデヒド類、エステル類、多価アルコール誘導体等、従来公知の有機溶媒から適宜選択することができる。
以下に、代表的な1atm(101.3kPa)下での沸点が99℃以上である非フッ素系溶媒の一例を示すが、本発明ではこれら例示する有機溶媒に限定されるものではない。
(1:炭化水素類)
a)o-キシレン(沸点:144℃、蒸気圧:0.88kPa)
b)p-キシレン(沸点:138℃、蒸気圧:0.87kPa)
c)メシチレン(沸点:165℃、蒸気圧:0.32kPa(計算値))
d)メチルシクロヘキサン(沸点:101℃、蒸気圧:4.92kPa)
(2:アルコール類)
a)n-アミルアルコール(沸点:138℃、蒸気圧:0.87kPa)
b)s-アミルアルコール(沸点:119℃、蒸気圧:1.55kPa)
c)t-アミルアルコール(沸点:102℃、蒸気圧:1.46kPa)
d)3-メチル-1-ブタノール(沸点:131℃、蒸気圧:0.31kPa)
e)イソブチルアルコール(沸点:108℃、蒸気圧:1.20kPa)
f)n-オクタノール(沸点:195℃、蒸気圧:0.02kPa)
g)1-ブタノール(沸点:118℃、蒸気圧:0.88kPa)
h)s-ブタノール(沸点:99.5℃、蒸気圧:2.66kPa)
i)3-メチル-2-ブタノール(沸点:112℃、蒸気圧:1.29kPa)
j)1-メトキシ-2-ブタノール(沸点:135℃)
k)1-メトキシ-2-プロパノール(略称:MeOPrO、沸点:120℃、蒸気圧:0.67kPa)
l)3-メトキシ-1-ブタノール(沸点:161℃、蒸気圧:0.16kPa(計算値))
m)n-ヘキサノール(沸点:157℃、蒸気圧:0.13kPa)
n)2-ヘキサノール(沸点:139℃、蒸気圧:0.35kPa)
o)2-メチル-1-プロパノール(沸点:108℃、蒸気圧:1.53kPa(計算値))
p)3-ペンタノール(沸点:116℃、蒸気圧:1.17kPa)
(3:エーテル・アセタール類)
a)ジエチルアセタール(沸点:108℃、蒸気圧:1.33kPa)
(4:ケトン・アルデヒド類)
a)ジエチルケトン(沸点:102℃、蒸気圧:3.99kPa)
b)シクロペンタノン(沸点:130℃、蒸気圧:1.38kPa(計算値))
c)シクロヘキサノン(沸点:156℃、蒸気圧:0.67kPa)
d)メチルイソブチルケトン(沸点:116℃、蒸気圧:2.11kPa)
e)アセチルアセトン(沸点:140℃、蒸気圧:0.80kPa)
f)メチル-n-プロピルケトン(沸点:103℃、蒸気圧:3.70kPa)
(5:エステル類)
a)ギ酸ブチル(沸点:107℃、蒸気圧:3.06kPa)
b)酢酸アミル(沸点:149℃、蒸気圧:1.29kPa)
c)酢酸アリル(沸点:104℃、蒸気圧:6.12kPa)
d)酢酸-n-ブチル(沸点:126℃、蒸気圧:1.60kPa)
e)酢酸プロピル(沸点102℃、蒸気圧:4.52kPa)
f)炭酸ジエチル(沸点:126℃、蒸気圧:7.18kPa)
g)プロピオン酸エチル(沸点:99.1℃、蒸気圧:1.11kPa)
h)プロピオン酸ブチル(沸点:147℃、蒸気圧:0.86kPa)
(6:多価アルコール誘導体)
a)エチレングリコール(略称:EG、沸点:197℃、蒸気圧:0.09kPa)
b)エチレングリコールジエチルエーテル(略称:EGDEE、沸点:121℃、蒸気圧:1.25kPa)
c)エチレングリコールモノエチルエーテル(略称:EGMEE、沸点:136℃、蒸気圧:0.65kPa(計算値))
d)エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート(略称:EGMEEAc、沸点:156℃、蒸気圧:0.30kPa(計算値))
e)エチレングリコールモノブチルエーテル(略称:EGMBE、沸点:171℃、蒸気圧:1.25kPa)
f)エチレングリコールモノメチルエーテル(略称:EGMME、沸点:124℃、蒸気圧:0.80kPa)
g)エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート(略称:EGMMEAc、沸点:145℃、蒸気圧:0.40kPa)
h)ジエチレングリコールジメチルエーテル(略称:DEGDME、沸点:162℃、蒸気圧:0.40kPa)
i)プロピレングリコール(略称:PG、沸点:187℃、蒸気圧:0.01kPa(計算値))
j)プロピレングリコールモノエチルエーテル(略称:PGMEE、沸点:133℃、蒸気圧:0.53kPa)
k)プロピレングリコールモノメチルエーテル(略称:PGMME、沸点:121℃、蒸気圧:1.45kPa)
l)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(略称:PGMMEAc、沸点:146℃、蒸気圧:0.49kPa)
その他には、沸点が99℃以上である、カルボン酸類、フェノール類、含窒素化合物、含硫黄化合物等を挙げることができる。
本発明のインク組成物においては、インク組成物総量に対し、本発明に係る非フッ素系溶媒の比率は、特に制限はなく、5~70質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5~45質量%の範囲内であり、更に好ましくは、10~30質量%の範囲内である。
〔有機機能性材料〕
本発明においては、フッ素系溶媒と沸点が99℃以上である非フッ素系溶媒を用いて、有機EL素子を構成する有機機能層(有機層A)を形成するための有機機能性材料を溶解して、インク組成物を形成する。
本発明でいう有機機能性材料としては、有機EL素子の有機機能層を形成するための材料であり、例えば、発光層を形成するためのリン光発光性化合物、又は蛍光発光性化合物、ホスト化合物等、正孔注入層を形成する正孔注入材料、電子注入層を形成するための電子注入材料、正孔輸送層を形成するための正孔輸送材料、電子輸送層を形成するための電子輸送材料や、正孔阻止層や電子阻止層の形成材料を挙げることができる。これら各有機機能性材料の詳細については後述する。
本発明においては、本発明の目的効果をより発現させることができる点で、有機EL素子を構成する分子量が700~2000の範囲内にある有機化合物を含有する有機層B上に射出して、本発明で規定する構成からなるインク組成物を用いて有機層Aを形成することが好ましい。例えば、分子量が700~2000の範囲内にある有機化合物を含有する発光層上に、本発明で規定する溶媒構成で、電子輸送材料を含むインク組成物を用いて電子輸送層を形成することが、特に好ましい。
〔インク組成物:その他の添加剤〕
本発明のインク組成物においては、上記本発明で規定する構成材料の他に、本発明の目的効果を損なわない範囲で、吐出安定性、プリントヘッド適合性、保存安定性、保存性、その他の諸性能向上の目的に応じて、公知の各種添加剤、例えば、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜形成剤、分散剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防バイ剤、防錆剤等を適宜選択して用いることができる。
《有機EL素子》
本発明においては、有機層を有する有機EL素子の製造において、インクジェットヘッドを用いて、少なくとも1層の有機層を、本発明のインク組成物を用いて形成することを特徴とする。
[有機EL素子の全体構成]
はじめに、有機EL素子の基本的な構成について説明する。
図1に、本発明の有機EL素子の代表的な構成の概略断面図を示す。
図1に示すように、有機EL素子1の各構成部材は基材2上に設けられており、基材2側から、第1電極3、有機材料等を用いて構成された有機機能層ユニットU、及び第2電極9をこの順に積層して構成されている。第1電極3の端部には、取り出し電極10が設けられている。第1電極3と外部電源(不図示)とは、取り出し電極10を介して、電気的に接続される。図1に示す有機EL素子1においては、発生させた発光光Lを、少なくとも基材2側から取り出すように構成されている。
また、有機EL素子1の構造は、特に限定されることはなく、一般的な層構造であって良い。有機EL素子1の具体的な構成の詳細を、図1を用いて説明する。
図1に示す具体的な構成において、第1電極3がアノード(すなわち陽極)として機能し、第2電極9がカソード(すなわち陰極)として機能する。この場合、例えば、有機機能層ユニットUは、アノードである第1電極3側から順に正孔注入層4/正孔輸送層5/発光層6/電子輸送層7/電子注入層8を積層した構成が例示されるが、このうち、少なくとも有機材料を用いて構成された発光層6を有することが必須の構成要件である。正孔注入層4及び正孔輸送層5は、正孔輸送注入層として設けられても良い。同様に、電子輸送層7及び電子注入層8は、電子輸送注入層として設けられても良い。また、これらの有機機能層ユニットUのうち、例えば、電子注入層8は無機材料で構成されている場合もある。
また、有機機能層ユニットUは、これらの層の他にも正孔阻止層や電子阻止層等が必要に応じて積層されていても良い。さらに、発光層6は、各波長領域の発光光を発生させる複数の各色発光層を有し、これらの各色発光層を、非発光性の中間層を介して積層させた構造としても良い。中間層は、正孔阻止層や電子阻止層としての機能を付加しても良い。更に、カソードである第2電極9も、必要に応じた積層構造であっても良い。このような構成において、第1電極3と第2電極9とで有機機能層ユニットUが挟持された部分のみが、有機EL素子1における発光領域LAとなる。
以上のような構成の有機EL素子1は、有機材料等を用いて構成された有機機能層ユニットUの劣化を防止することを目的として、基材2上に、封止用接着剤12を介して封止基材13で封止されている。また、第1電極3とその取り出し電極10及び第2電極9とその取り出し電極11の端子部分は、基材2上において、有機機能層ユニットUによって互いに絶縁性を保った状態で封止用接着剤12から露出させた状態で設けられている。
[有機EL素子の他の層構成]
本発明に適用が可能な有機EL素子ELの構成について、図1で示した構成の他に、下記に示す構成を挙げることができる。括弧内に記載している数字は、図1で示した有機EL素子の各構成要素の符号に相当する。
(i)基材2上に、第1電極3(陽極)/有機機能層ユニット(発光層6/電子輸送層7)/第2電極9(陰極)/封止用接着剤12/封止部材13が積層された構成、
(ii)基材2上に、第1電極3(陽極)/有機機能層ユニット(正孔輸送層5/発光層6/電子輸送層7)/第2電極9(陰極)/封止用接着剤12/封止部材13が積層された構成、
(iii)基材2上に、第1電極3(陽極)/有機機能層ユニット(正孔輸送層5/発光層6/正孔阻止層/電子輸送層7)/第2電極9(陰極)/封止用接着剤12/封止部材13が積層された構成、
(iv)基材2上に、第1電極3(陽極)/有機機能層ユニット(正孔輸送層5/発光層6/正孔阻止層/電子輸送層7/陰極バッファー層)/第2電極9(陰極)/封止用接着剤12/封止部材13が積層された構成、
(v)基材2上に、第1電極3(陽極)/有機機能層ユニット(陽極バッファー層/正孔輸送層5/発光層6/正孔阻止層/電子輸送層7/陰極バッファー層)/第2電極9(陰極)/封止用接着剤12/封止部材13が積層された構成、
等を挙げることができる。
本発明に適用可能な有機EL素子の構成のその他の概要については、例えば、特開2013-157634号公報、特開2013-168552号公報、特開2013-177361号公報、特開2013-187211号公報、特開2013-191644号公報、特開2013-191804号公報、特開2013-225678号公報、特開2013-235994号公報、特開2013-243234号公報、特開2013-243236号公報、特開2013-242366号公報、特開2013-243371号公報、特開2013-245179号公報、特開2014-003249号公報、特開2014-003299号公報、特開2014-013910号公報、特開2014-017493号公報、特開2014-017494号公報等に記載されている構成を挙げることができる。
また、タンデム型の有機EL素子の具体例としては、例えば、米国特許第6337492号明細書、米国特許第7420203号明細書、米国特許第7473923号明細書、米国特許第6872472号明細書、米国特許第6107734号明細書、米国特許第6337492号明細書、特開2006-228712号公報、特開2006-24791号公報、特開2006-49393号公報、特開2006-49394号公報、特開2006-49396号公報、特開2011-96679号公報、特開2005-340187号公報、特許第4711424号公報、特許第3496681号公報、特許第3884564号公報、特許第4213169号公報、特開2010-192719号公報、特開2009-076929号公報、特開2008-078414号公報、特開2007-059848号公報、特開2003-272860号公報、特開2003-045676号公報、国際公開第2005/009087号、国際公開第2005/094130号等に記載の素子構成や構成材料等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
[有機EL素子の各構成要素]
次いで、有機EL素子の各構成要素の詳細について説明する。
〔基材〕
有機EL素子1に適用可能な基材2としては、特に制限はなく、例えば、ガラス、樹脂基材等の種類を挙げることができ、好ましくは、有機EL素子にフレキシブル性を付与することができる観点からフレキシブル性樹脂基材である。
本発明に適用可能なフレキシブル性を備えた樹脂基材を構成する樹脂材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(略称:TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(略称:CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類及びそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート(略称:PC)、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(略称:PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル及びポリアリレート類、アートン(商品名、JSR社製)及びアペル(商品名、三井化学社製)等のシクロオレフィン系樹脂等を挙げることができる。
これら樹脂基材のうち、コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(略称:PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(略称:PEN)、ポリカーボネート(略称:PC)等のフィルムがフレキシブル性を有する樹脂基材として好ましく用いられる。
本発明において、樹脂基材の厚さとしては、3~200μmの範囲内とすることができ、好ましくは、10~100μmの範囲内であり、より好ましくは20~50μmの範囲内である。
本発明に係る基材は、有機EL素子の封止部材(透明基材)としても好適に用いることもできる。また、上記の樹脂基材は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。
本発明に適用可能な樹脂基材は、従来公知の一般的な製膜方法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押出機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の樹脂基材を製造することができる。また、未延伸の樹脂基材を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、樹脂基材の搬送方向(縦軸方向、MD方向)、又は樹脂基材の搬送方向と直角の方向(横軸方向、TD方向)に延伸することにより、延伸樹脂基材を製造することができる。この場合の延伸倍率は、樹脂基材の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2~10倍の範囲内であることが好ましい。
また、本発明に適用可能な光透過性を有する基材であるガラス基材としては、例えば、ソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。
〔第1電極:陽極〕
有機EL素子を構成する第1電極(以下、陽極ともいう)としては、酸化物半導体又は薄膜の金属若しくは合金で構成されていることが好ましい形態であり、例えば、Ag、Au等の金属又は金属を主成分とする合金、CuI、又はインジウム・スズの複合酸化物(ITO)、SnO2及びZnO等の酸化物半導体を挙げることができる。
陽極を、銀を主成分として構成する場合、銀の純度としては、99%以上であることが好ましい。また、銀の安定性を確保するためにパラジウム(Pd)、銅(Cu)及び金(Au)等が添加されていてもよい。
陽極として銀を主成分として構成する場合には、銀単独で形成しても、又は銀(Ag)を含有する合金から構成されていてもよい。そのような合金としては、例えば、銀-マグネシウム(Ag-Mg)、銀-銅(Ag-Cu)、銀-パラジウム(Ag-Pd)、銀-パラジウム-銅(Ag-Pd-Cu)、銀-インジウム(Ag-In)などが挙げられる。
上記陽極を構成する各構成材料の中でも、本発明に係る有機EL素子を構成する陽極としては、インジウム・スズの複合酸化物(ITO)又は銀を主成分として構成し、厚さが2~20nmの範囲内にある光透過性を有する陽極とすることが好ましく、より好ましくは厚さが4~12nmの範囲内である。厚さが20nm以下であれば、光透過性を有する陽極の吸収成分及び反射成分が低く抑えられ、高い光透過率が維持されるため好ましい。
本発明でいうインジウム・スズの複合酸化物(ITO)又は銀を主成分として構成されている層とは、陽極中のITO又は銀の含有量が60質量%以上であることをいい、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、特に好ましくはITO又は銀の含有量が98質量%以上である。また、本発明に係る光透過性を有する陽極でいう「光透過性」とは、波長550nmでの光透過率が50%以上であることをいう。
光透過性を有する陽極においては、ITO又は銀が主成分として構成されている層が、必要に応じて複数の層に分けて積層された構成であっても良い。
また、本発明においては、陽極が、銀を主成分として構成する光透過性を有する陽極である場合には、形成する光透過性を有する陽極の銀膜の均一性を高める観点から、その下部に、下地層を設けることができる。下地層としては、特に制限はないが、窒素原子又は硫黄原子を有する有機化合物を含有する層であることが好ましく、当該下地層上に、光透過性を有する陽極を形成する方法が好ましい態様である。
また、本発明に係る第1電極の引出電極10は、上記第1電極を延長する形態で同様の材料で形成する。本発明においては、第1電極3と引出電極10との区別は、発光領域を構成する電極を第1電極3と定義し、それ以外で導電部材と接続する電極を引出電極10と定義する。
〔有機機能層ユニットU〕
本発明の有機EL素子の製造においては、少なくとも有機層ユニットを構成する有機層の1層(有機層A)を、本発明のインク組成物を用いて形成することを特徴とする。
本発明に係る有機層Aとしては、特に制限はないが、有機機能性材料として電子輸送材料又は電子注入材料を含有する電子輸送層又は電子注入層であることが好ましく、特に好ましくは、電子輸送材料を含有する電子輸送層の形成に、本発明で規定する有機機能性材料と、フッ素系溶媒と、沸点が99℃以上である非フッ素系溶媒を含有するインク組成物を適用することが好ましい。
以下、有機機能層ユニットを構成する各層について、順次説明するが、はじめに、電子輸送層及び電子注入層について説明する。
(電子輸送層)
本発明において、電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。
本発明の有機EL素子において、電子輸送層の総膜厚については特に制限はないが、通常は2nm~5μmの範囲であり、より好ましくは2~500nmであり、さらに好ましくは5~200nmである。
また、有機EL素子においては、発光層で生じた光を電極から取り出す際、発光層から直接取り出される光と、光を取り出す電極と対極に位置する電極によって反射されてから取り出される光とが干渉を起こすことが知られている。光が陰極で反射される場合は、電子輸送層の総膜厚を数nm~数μmの間で適宜調整することにより、この干渉効果を効率的に利用することが可能である。
一方で、電子輸送層の膜厚を厚くすると電圧が上昇しやすくなるため、特に膜厚が厚い場合においては、電子輸送層の電子移動度は10-5cm2/Vs以上であることが好ましい。
電子輸送層に用いられる材料(以下、「電子輸送材料」という)としては、電子の注入性又は輸送性、正孔の障壁性のいずれかを有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。
本発明に係る電子輸送層に適用可能な電子輸送材としては、例えば、含窒素芳香族複素環誘導体(カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体(カルバゾール環を構成する炭素原子の一つ以上が窒素原子に置換されたもの)、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリダジン誘導体、トリアジン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、アザトリフェニレン誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンズオキサゾール誘導体、ベンズチアゾール誘導体等)、ジベンゾフラン誘導体、アザジベンゾフラン誘導体(ジベンゾフラン環を構成する炭素原子の一つ以上が窒素原子に置換されたもの)、ジベンゾチオフェン誘導体、アザジベンゾチオフェン誘導体(ジベンゾチオフェン環を構成する炭素原子の一つ以上が窒素原子に置換されたもの)、シロール誘導体、芳香族炭化水素環誘導体(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン等)等が挙げられる。
また、配位子にキノリノール骨格やジベンゾキノリノール骨格を有する金属錯体、例えば、トリス(8-キノリノール)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(5,7-ジクロロ-8-キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7-ジブロモ-8-キノリノール)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-キノリノール)アルミニウム、トリス(5-メチル-8-キノリノール)アルミニウム、ビス(8-キノリノール)亜鉛(略称:Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、後述する発光層に適用される有機機能材料であるジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型-Si、n型-SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
また、これらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
本発明に係る電子輸送層においては、電子輸送層にドープ材をゲスト材料としてドープして、n性の高い(電子リッチ)電子輸送層を形成してもよい。ドープ材としては、金属錯体やハロゲン化金属など金属化合物等のn型ドーパントが挙げられる。このような構成の電子輸送層の具体例としては、例えば、特開平4-297076号公報、同10-270172号公報、特開2000-196140号公報、同2001-102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等の文献に記載されたものが挙げられる。
本発明の有機EL素子に用いられる、公知の好ましい電子輸送材料の具体例としては、以下の文献に記載の化合物等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
米国特許第6528187号明細書、米国特許第7230107号明細書、米国特許出願公開第2005/0025993号明細書、米国特許出願公開第2004/0036077号明細書、米国特許出願公開第2009/0115316号明細書、米国特許出願公開第2009/0101870号明細書、米国特許出願公開第2009/0179554号明細書、国際公開第2003/060956号、国際公開第2008/132085号、Appl.Phys.Lett.75,4(1999)、Appl.Phys.Lett.79,449(2001)、Appl.Phys.Lett.81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.81,162(2002)、Appl.Phys.Lett.79,156(2001)、米国特許第7964293号明細書、米国特許出願公開第2009/030202号明細書、国際公開第2004/080975号、国際公開第2004/063159号、国際公開第2005/085387号、国際公開第2006/067931号、国際公開第2007/086552号、国際公開第2008/114690号、国際公開第2009/069442号、国際公開第2009/066779号、国際公開第2009/054253号、国際公開第2011/086935号、国際公開第2010/150593号、国際公開第2010/047707号、欧州特許第2311826号明細書、特開2010-251675号公報、特開2009-209133号公報、特開2009-124114号公報、特開2008-277810号公報、特開2006-156445号公報、特開2005-340122号公報、特開2003-45662号公報、特開2003-31367号公報、特開2003-282270号公報、国際公開第2012/115034号等に記載の化合物を挙げることができる。
本発明におけるより好ましい電子輸送材料としては、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、トリアジン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、アザジベンゾフラン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、アザジベンゾチオフェン誘導体、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、及び、これらの組合せでできる化合物が挙げられる。
本発明の有機EL素子の電子輸送層に用いる化合物として好ましい化合物は下記の一般式(1)で表される構造を有する化合物を挙げることができる。
Figure 0007259847000002
一般式(1)中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表す。X1~X12は、それぞれ独立に、CR1又は窒素原子を表す。X5及びX7のうち、一方が窒素原子を表し、他方がCR1を表す。X8及びX10のうち、一方が窒素原子を表し、他方がCR1を表す。R1は、水素原子又は置換基を表す。
1は単なる結合手であるか、ベンゼン環、ビフェニル環、ターフェニル環、ナフチル環、アントラセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピリミジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾチオフェン環、アザカルバゾール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環又はトリアゾール環を含む二価の連結基を表す。L1が単なる結合手であるか、置換基を有しないベンゼン環のみの場合は、複数のR1のうち少なくとも一つがヘテロアリール基を表すことが好ましい。
1は、縮合環を形成していてもよい。また、X8~X12が含まれる環は縮合環の一部であってもよい。一般式(1)における置換基としては、限定されるものではなく、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、イソプロピル基等)、アリール基(例えば、フェニル基等)、ヘテロアリール基(例えば、ピリジル基、カルバゾリル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子等)、シアノ基、若しくはフッ化アルキル基が挙げられ、後述する例示化合物で使用されているものも好ましい。
前記R1は、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピリミジン環、アザジベンフラン環、アザジベンゾチオフェン環、アザカルバゾール環、キナゾリン環、キノキサリン環、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾキノリン環、ベンゾイソキノリン環、インドール環、インダゾール環、イミダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンズトリアゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、チアゾール環又はカルバゾール環を含む置換基を表すことが好ましい。
また、前記一般式(1)中、X8及びX12が窒素原子を表し、X9~X11がCR1を表すこと、又は、X8及びX11が窒素原子を表し、X9、X10及びX12がCR1を表すこと、又はX8及びX10が窒素原子を表し、X9、X11及びX12がCR1を表すことが好ましい。
前記一般式(1)で表される構造を有する化合物は、下記一般式(2)で表される構造を有することが好ましい。
Figure 0007259847000003
一般式(2)中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、分子内の複数のXは互いに同じであっても異なっていてもよい。X1~X10及びX13~X16は、それぞれ独立に、CR1又は窒素原子を表す。X5及びX7のうち、一方が窒素原子を表し、他方がCR1を表す。X8及びX10のうち、一方が窒素原子を表し、他方がCR1を表す。R1は、水素原子又は置換基を表す。
1は単なる結合手であるか、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフチル環、ターフェニル環、アントラセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピリミジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾチオフェン環、アザカルバゾール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環又はトリアゾール環を含む二価の連結基を表す。L1が、単なる結合手であるか、置換基を有しないベンゼン環のみの場合は、複数のR1のうち少なくとも一つがヘテロアリール基を表すことが好ましい。
1は、縮合環を形成していてもよい。また、X8~X10及びX13~X16を含む環は、それぞれ縮合環の一部であってもよい。一般式(2)で用いられる置換基としては、一般式(1)と同様のものが好ましい。一般式(2)で用いられるR1も、一般式(1)と同様のものが好ましい。
なお、L1の具体例を以下に示すが、一例であってこれに限定されるものではない。
Figure 0007259847000004
Figure 0007259847000005
一般式(1)又は(2)で表される構造を有する化合物の具体例を、下記に示す。
Figure 0007259847000006
Figure 0007259847000007
Figure 0007259847000008
Figure 0007259847000009
Figure 0007259847000010
Figure 0007259847000011
Figure 0007259847000012
Figure 0007259847000013
また、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物は、下記一般式(3)で表される構造を有する化合物であることも好ましい。
Figure 0007259847000014
上記一般式(3)中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表す。X1、X2、X4~X12及びX17~X21は、それぞれ独立に、CR1又は窒素原子を表す。X5及びX7のうち、一方が窒素原子を表し、他方がCR1を表す。X8及びX10のうち、一方が窒素原子を表し、他方がCR1を表すか、又は、X17及びX19のうち、一方が窒素原子を表し、他方がCR1を表す。R1は、水素原子又は置換基を表す。
1及びL2は、単なる結合手であるか、ベンゼン環、ビフェニル環、ターフェニル環、ナフチル環、アントラセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピリミジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾチオフェン環、アザカルバゾール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環又はトリアゾール環を含む二価の連結基を表す。L1及びL2が、いずれも単なる結合手であるか、置換基を有しないベンゼン環のみの場合は、複数のR1のうち少なくとも一つがヘテロアリール基を表すことが好ましい。
1及びL2は、縮合環を形成していてもよい。また、X8~X12が含まれる環、又はX17~X21が含まれる環は縮合環の一部であってもよい。
一般式(3)で用いられる置換基としては、一般式(1)と同様の基が好ましい。一般式(3)で用いられるR1も、一般式(1)と同様のものが好ましい。L2で用いられる連結基の具体例としては、一般式(1)で挙げたL1の具体例と同様のものが挙げられる。
また、前記一般式(3)中、X8及びX12が窒素原子を表し、X9~X11がCR1を表すこと、又は、X8及びX11が窒素原子を表し、X9、X10及びX12がCR1を表すこと、又は、X8及びX10が窒素原子を表し、X9、X11及びX12がCR1を表すこと、及び/又は、X17及びX21が窒素原子を表し、X18~X20がCR1を表すこと、又は、X17及びX20が窒素原子を表し、X18、X19及びX21がCR1を表すこと、又は、X17及びX19が窒素原子を表し、X18、X20及びX21がCR1を表すことが好ましい。
また、前記一般式(3)で表される構造を有する化合物は、下記一般式(4)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
Figure 0007259847000015
上記一般式(4)中、Xは酸素原子又は硫黄原子を表し、分子内の複数のXは互いに同じであっても異なっていても良い。X1、X2、X4~X12、X17、X18、及びX22~X29はそれぞれ独立に、CR1又は窒素原子を表す。X5及びX7のうち、一方が窒素原子を表し、他方がCR1を表す。X22及びX24のうち、一方が窒素原子を表し、他方がCR1を表す。R1は、水素原子又は置換基を表す。
1、L2、L3は、単なる結合手であるか、ベンゼン環、ビフェニル環、ターフェニル環、ナフチル環、アントラセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピリミジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾチオフェン環、アザカルバゾール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環又はトリアゾール環を含む二価の連結基を表す。L1、L2、L3が、いずれも単なる結合手であるか、置換基を有しないベンゼン環のみの場合は、複数のR1のうち少なくとも一つがヘテロアリール基を表すことが好ましい。
1、L2、L3は、縮合環を形成していてもよい。また、X8~X12が含まれる環、又はX25~X29が含まれる環は、縮合環の一部であってもよい。
一般式(4)で用いられる置換基としては、一般式(1)と同様のものが好ましい。一般式(4)で用いられるR1も、一般式(1)と同様のものが好ましい。L2、L3で用いられる連結基の具体例としては、一般式(1)で挙げたL1の具体例と同様のものが挙げられる。
また、前記一般式(4)中、X8~X12の内、少なくとも1つが窒素原子を表し、残りがCR1を表すこと、及び/又は、X25~X29の内、少なくとも1つが窒素原子を表し、残りがCR1を表すことが好ましい。
さらに、前記一般式(2)で表される構造を有する化合物は、下記一般式(5)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
Figure 0007259847000016
上記一般式(5)中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、分子内の複数のXは互いに同じであっても異なっていても良い。X1~X10及びX13~X16は、それぞれ独立に、CR1又は窒素原子を表す。X5及びX7のうち、一方が窒素原子を表し、他方がCR1を表す。X8及びX10のうち、一方が窒素原子を表し、他方がCR1を表す。R1は、水素原子又は置換基を表す。
m1、m2は各々1、2又は3を表し、3≦m1+m2≦4である。
1は単なる結合手であるか、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフチル環、ターフェニル環、アントラセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピリミジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾチオフェン環、アザカルバゾール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環又はトリアゾール環を含む(m1+m2)価の連結基を表す。
1が単なる結合手であるか、置換基を有しないベンゼン環のみの場合は、複数のR1のうち少なくとも一つがヘテロアリール基を表すことが好ましい。
1は、縮合環を形成していてもよい。また、X1~X7を含む環、又は、X8~X10及びX13~X16を含む環は、それぞれ縮合環の一部であってもよい。
前記一般式(5)で用いられる置換基としては、一般式(1)と同様のものが好ましい。一般式(5)で用いられるR1も、一般式(1)と同様のものが好ましい。L1で用いられる連結基の具体例としては、一般式(1)で挙げたL1の具体例と同様のものが挙げられる。
また、前記一般式(4)で表される構造を有する化合物は、下記一般式(6)で表される構造を有する化合物であることも好ましい。
Figure 0007259847000017
上記一般式(6)中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、分子内の複数のXは互いに同じであっても異なっていても良い。X1、X2、X4~X12及びX17、X18、X21~X29は、それぞれ独立に、CR1又は窒素原子を表す。X5及びX7のうち、一方が窒素原子を表し、他方がCR1を表す。X22及びX24のうち、一方が窒素原子を表し、他方がCR1を表す。R1は、水素原子又は置換基を表す。
m1、m2は各々1、2又は3を表し、3≦m1+m2≦4である。
1、L2、L3は、単なる結合手であるか、ベンゼン環、ビフェニル環、ターフェニル環、ナフチル環、アントラセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピリミジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾチオフェン環、アザカルバゾール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環又はトリアゾール環を含む(m1+m2)価の連結基を表す。L1、L2、L3が、いずれも単なる結合手であるか、置換基を有しないベンゼン環のみの場合は、複数のR1のうち少なくとも一つがヘテロアリール基を表すことが好ましい。
1、L2、L3は、縮合環を形成していてもよい。また、X8~X12が含まれる環、又はX25~X29が含まれる環は縮合環の一部であってもよい。
一般式(6)で用いられる置換基としては、一般式(1)と同様のものが好ましい。一般式(6)で用いられるR1も、一般式(1)と同様のものが好ましい。L2、L3で用いられる連結基の具体例としては、一般式(1)で挙げたL1の具体例と同様のものが挙げられる。
また、前記一般式(6)中、X8~X12の内、少なくとも1つが窒素原子を表し、残りがCR1を表すこと、又は、X25~X29の内、少なくとも1つが窒素原子を表し、残りがCR1を表すことが好ましい。
また、前記一般式(2)で表される構造を有する化合物は、下記一般式(7)で表される構造を有する化合物であることも好ましい。
Figure 0007259847000018
一般式(7)中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、分子内の複数のXは互いに同じであっても異なっていても良い。X1、X2、X4~X10、X13~X18、X21~X29は、それぞれ独立に、CR1又は窒素原子を表す。X5及びX7のうち、一方が窒素原子を表し、他方がCR1を表す。X8及びX10のうち、一方が窒素原子を表し、他方がCR1を表す。X22及びX24のうち、一方が窒素原子を表し、他方がCR1を表す。R1は、水素原子又は置換基を表す。
m1、m2は各々1、2又は3を表し、2≦m1+m2≦4である。
1、L2、L3は、単なる結合手であるか、ベンゼン環、ビフェニル環、ターフェニル環、ナフチル環、アントラセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピリミジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾチオフェン環、アザカルバゾール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環又はトリアゾール環を含む(m1+m2)価の連結基を表す。L1、L2、L3が、いずれも単なる結合手であるか、置換基を有しないベンゼン環のみの場合は、複数のR1のうち少なくとも一つがヘテロアリール基を表すことが好ましい。
1、L2、L3は、縮合環を形成していてもよい。また、X8~X12が含まれる環、又はX25~X29が含まれる環は縮合環の一部であってもよい。
一般式(7)で用いられる置換基としては、一般式(1)と同様のものが好ましい。一般式(7)で用いられるR1も、一般式(1)と同様のものが好ましい。L2、L3で用いられる連結基の具体例としては、一般式(1)で挙げたL1の具体例と同様のものが挙げられる。
また、前記一般式(7)中、X25~X29の内、少なくとも1つが、窒素原子を表し、残りが、CR1を表すことが好ましい。
また、前記一般式(4)で表される構造を有する化合物は、下記一般式(8)で表される構造を有する化合物であることも好ましい。
Figure 0007259847000019
上記一般式(8)中、Xは、酸素原子又は硫黄原子を表し、分子内の複数のXは互いに同じであっても異なっていても良い。X1、X2、X4~X10、X13~X18、X21~X29は、それぞれ独立に、CR1又は窒素原子を表す。X5及びX7のうち、一方が窒素原子を表し、他方がCR1を表す。X8及びX10のうち、一方が窒素原子を表し、他方がCR1を表す。X22及びX24のうち、一方が窒素原子を表し、他方がCR1を表す。R1は、水素原子又は置換基を表す。
m1、m2は各々1、2又は3を表し、2≦m1+m2≦4である。
1、L2、L3は、単なる結合手であるか、ベンゼン環、ビフェニル環、ターフェニル環、ナフチル環、アントラセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ピリジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピリミジン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、カルバゾール環、アザジベンゾフラン環、アザジベンゾチオフェン環、アザカルバゾール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、インドール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環又はトリアゾール環を含む(m1+m2)価の連結基を表す。L1、L2、L3が、いずれも単なる結合手であるか、置換基を有しないベンゼン環のみの場合は、複数のR1のうち少なくとも一つがヘテロアリール基を表すことが好ましい。L1、L2、L3は、縮合環を形成していてもよい。また、X25~X29が含まれる環は縮合環の一部であってもよい。
一般式(8)で用いられる置換基としては、一般式(1)と同様のものが好ましい。一般式(8)で用いられるR1も、一般式(1)と同様のものが好ましい。L2、L3で用いられる連結基の具体例としては、一般式(1)で挙げたL1の具体例と同様のものが挙げられる。
また、前記一般式(8)中、X25~X29の内、少なくとも1つが、窒素原子を表し、残りが、CR1を表すことが好ましい。
一般式(3)~(8)で表される構造を有する化合物の例としては以下の化合物M-360~M-436が挙げられる。
Figure 0007259847000020
Figure 0007259847000021
Figure 0007259847000022
Figure 0007259847000023
Figure 0007259847000024
Figure 0007259847000025
Figure 0007259847000026
また、本発明の有機EL素子の電子輸送層に適用可能なその他の化合物としては、特許第5604848号公報に記載された化合物1~213や、特許第5589251号公報に記載された化合物1~264、なども好ましい。
本発明に係る電子輸送層は、少なくとも有機機能性材料、フッ素系溶媒及び沸点が99℃以上である非フッ素系溶媒を含有するインク組成物を、例えば、スピンコート法、キャスト法、グラビアコート法、インクジェット印刷法等の公知の方法により、薄膜化することで形成することができるが、本発明においては、特に、インクジェット印刷法を用いて形成することを特徴とする。
(電子注入層)
本発明においては、電子注入層を本発明のインク組成物を用いてインクジェット印刷法により形成する方法も、好ましい実施形態の一つとである。
電子注入層は、駆動電圧低下や発光輝度向上のために、陰極と発光層との間に設けられる層のことであり、陰極が本発明に係る光透過性を有する電極で構成されている場合には、当該光透過性を有する電極に隣接して設けられ、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123~166頁)に詳細に記載されている。
電子注入層は、特開平6-325871号公報、同9-17574号公報、同10-74586号公報等にもその詳細が記載されており、電子注入層に好ましく用いられる材料の具体例としては、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム等に代表されるアルカリ金属化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等に代表されるアルカリ金属ハライド層等に代表されるアルカリ土類金属化合物層、酸化モリブデン、酸化アルミニウム等に代表される金属酸化物、リチウム8-ヒドロキシキノレート(Liq)等に代表される金属錯体等が挙げられる。また、本発明における光透過性を有する電極が陰極の場合は、金属錯体等の有機材料が特に好適に用いられる。電子注入層はごく薄い膜であることが望ましく、構成材料にもよるが、その層厚は1nm~10μmの範囲が好ましい。
(発光層)
本発明の有機EL素子を構成する発光層には、発光材料としてリン光発光性化合物、又は蛍光発光性化合物を用いることができるが、本発明においては、特に、発光材料としてリン光発光化合物が含有されている構成が好ましい。
有機EL素子を構成する発光層は、電極又は電子輸送層から注入された電子と、正孔輸送層から注入された正孔とが再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接する層との界面であってもよい。
このような発光層としては、含まれる発光材料が発光要件を満たしていれば、その構成には特に制限はない。
発光層の厚さの総和は、1~100nmの範囲内にあることが好ましく、より低い駆動電圧を得ることができることから1~30nmの範囲内がさらに好ましい。なお、発光層の厚さの総和とは、発光層間に非発光性の中間層が存在する場合には、当該中間層も含む厚さである。
発光層においては、複数の発光材料を混合してもよく、リン光発光材料と蛍光発光材料とを同一発光層中に混合して用いてもよい。発光層の構成としては、ホスト化合物(発光ホスト等ともいう)及び発光材料(発光ドーパントともいう。)を含有し、発光材料より発光させることが好ましい。
以上のような発光層は、後述する発光材料やホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、クラビアコート法、LB法(ラングミュア・ブロジェット、Langmuir Blodgett法)及びインクジェット印刷法等の公知の方法により形成することができるが、本発明においては、ピンコート法、キャスト法、クラビアコート法、インクジェット印刷方式等の湿式塗布方式で形成することが好ましく、特に、インクジェット印刷方式で形成することが好ましい。
〈ホスト化合物〉
発光層に含有されるホスト化合物としては、室温(25℃)におけるリン光発光のリン光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。さらにリン光量子収率が0.01未満であることが好ましい。また、発光層に含有される化合物の中で、その層中での体積比が50%以上であることが好ましい。
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、又は複数種のホスト化合物を用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機電界発光素子を高効率化することができる。また、後述する発光材料を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
発光層に用いられるホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
本発明に適用可能なホスト化合物としては、例えば、特開2001-257076号公報、同2001-357977号公報、同2002-8860号公報、同2002-43056号公報、同2002-105445号公報、同2002-352957号公報、同2002-231453号公報、同2002-234888号公報、同2002-260861号公報、同2002-305083号公報、米国特許出願公開第2005/0112407号明細書、米国特許出願公開第2009/0030202号明細書、国際公開第2001/039234号、国際公開第2008/056746号、国際公開第2005/089025号、国際公開第2007/063754号、国際公開第2005/030900号、国際公開第2009/086028号、国際公開第2012/023947号、特開2007-254297号公報、欧州特許第2034538号明細書等に記載されている化合物を挙げることができる。
〈発光材料〉
本発明で用いることのできる発光材料としては、リン光発光性化合物(リン光性化合物、リン光発光材料又はリン光発光ドーパントともいう。)及び蛍光発光性化合物(蛍光性化合物又は蛍光発光材料ともいう。)が挙げられるが、特に、リン光発光性化合物を用いることが、高い発光効率を得ることができる観点から好ましい。
〈1〉リン光発光性化合物
リン光発光性化合物とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には室温(25℃)でリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率が0.1以上の化合物である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は、種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明においてリン光発光性化合物を用いる場合、任意の溶媒のいずれかにおいて、上記リン光量子収率として0.01以上が達成されればよい。
リン光発光性化合物は、一般的な有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、好ましくは元素の周期表で8~10族の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、白金化合物(白金錯体系化合物)又は希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
本発明においては、少なくとも一つの発光層が、2種以上のリン光発光性化合物が含有されていてもよく、発光層におけるリン光発光性化合物の濃度比が発光層の厚さ方向で変化している態様であってもよい。
本発明に使用できる公知のリン光発光性化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられる。
Nature 395,151(1998)、Appl.Phys.Lett.78, 1622(2001)、Adv.Mater.19,739(2007)、Chem.Mater.17,3532(2005)、Adv.Mater.17,1059(2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許出願公開第2006/835469号明細書、米国特許出願公開第2006/0202194号明細書、米国特許出願公開第2007/0087321号明細書、米国特許出願公開第2005/0244673号明細書等に記載の化合物を挙げることができる。
また、Inorg.Chem.40,1704(2001)、Chem.Mater.16,2480(2004)、Adv.Mater.16,2003(2004)、Angew.Chem.Int.Ed.2006,45,7800、Appl.Phys.Lett.86,153505(2005)、Chem.Lett.34,592(2005)、Chem.Commun.2906(2005)、Inorg.Chem.42,1248(2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2009/000673号、米国特許第7332232号明細書、米国特許出願公開第2009/0039776号明細書、米国特許第6687266号明細書、米国特許出願公開第2006/0008670号明細書、米国特許出願公開第2008/0015355号明細書、米国特許第7396598号明細書、米国特許出願公開第2003/0138657号明細書、米国特許第7090928号明細書等に記載の化合物を挙げることができる。
また、Angew.Chem.Int.Ed.47,1(2008)、Chem.Mater.18,5119(2006)、Inorg.Chem.46,4308(2007)、Organometallics 23,3745(2004)、Appl.Phys.Lett.74,1361(1999)、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2006/082742号、米国特許出願公開第2005/0260441号明細書、米国特許第7534505号明細書、米国特許出願公開第2007/0190359号明細書、米国特許第7338722号明細書、米国特許第7279704号明細書、米国特許出願公開第2006/103874号明細書等に記載の化合物も挙げることができる。
さらには、国際公開第2005/076380号、国際公開第2008/140115号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/073149号、特開2009-114086号公報、特開2003-81988号公報、特開2002-363552号公報等に記載の化合物も挙げることができる。
本発明においては、好ましいリン光発光性化合物としてはIrを中心金属に有する有機金属錯体が挙げられる。さらに好ましくは、金属-炭素結合、金属-窒素結合、金属-酸素結合、金属-硫黄結合の少なくとも一つの配位様式を含む錯体が好ましい。
上記説明したリン光発光性化合物は、例えば、Organic Letter誌、vol3、No.16、2579~2581頁(2001)、Inorganic Chemistry,第30巻、第8号、1685~1687頁(1991年)、J.Am.Chem.Soc.,123巻、4304頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第40巻、第7号、1704~1711頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第41巻、第12号、3055~3066頁(2002年)、New Journal of Chemistry.,第26巻、1171頁(2002年)、European Journal of Organic Chemistry,第4巻、695~709頁(2004年)、さらにこれらの文献中に記載されている参考文献等に開示されている方法を適用することにより合成することができる。
〈2〉蛍光発光性化合物
蛍光発光性化合物としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素又は希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
(電荷注入層)
電荷注入層は、駆動電圧低下や発光輝度向上のために、電極と発光層の間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123~166頁)にその詳細が記載されており、正孔注入層と前述の電子注入層とがある。
電荷注入層としては、一般には、正孔注入層であれば、陽極と発光層又は正孔輸送層との間、前述の電子注入層であれば陰極と発光層又は電子輸送層との間に存在させることができるが、光透過性を有する電極に隣接して電荷注入層を配置させる構成が好ましい。
正孔注入層は、駆動電圧低下や発光輝度向上のために、一方の電極である陽極に隣接して配置される層であり、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123~166頁)に詳細に記載されている。
正孔注入層は、特開平9-45479号公報、同9-260062号公報、同8-288069号公報等にもその詳細が記載されており、正孔注入層に用いられる材料としては、例えば、ポルフィリン誘導体、フタロシアニン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、トリアリールアミン誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、イソインドール誘導体、アントラセンやナフタレン等のアセン系誘導体、フルオレン誘導体、フルオレノン誘導体、及びポリビニルカルバゾール、芳香族アミンを主鎖又は側鎖に導入した高分子材料又はオリゴマー、ポリシラン、導電性ポリマー又はオリゴマー(例えば、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン):PSS(ポリスチレンスルホン酸)、アニリン系共重合体、ポリアニリン、ポリチオフェン等)等が挙げられる。
トリアリールアミン誘導体としては、4,4′-ビス〔N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ〕ビフェニル(略称:α-NPD)に代表されるベンジジン型や、4,4′,4″-トリス〔N-(3-メチルフェニル)-N-フェニルアミノ〕トリフェニルアミン)(略称:MTDATA)に代表されるスターバースト型、トリアリールアミン連結コア部にフルオレンやアントラセンを有する化合物等が挙げられる。
また、特表2003-519432号公報や特開2006-135145号公報等に記載されているようなヘキサアザトリフェニレン誘導体も同様に正孔輸送材料として用いることができる。
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層及び電子阻止層も正孔輸送層の機能を有する。正孔輸送層は単層又は複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴマー及びチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
正孔輸送材料としては、上記記載の化合物を使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物を用いることができ、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′-テトラフェニル-4,4′-ジアミノフェニル、N,N′-ジフェニル-N,N′-ビス(3-メチルフェニル)-〔1,1′-ビフェニル〕-4,4′-ジアミン(略称:TPD)、2,2-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N,N′,N′-テトラ-p-トリル-4,4′-ジアミノビフェニル、1,1-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、ビス(4-ジメチルアミノ-2-メチルフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N′-ジフェニル-N,N′-ジ(4-メトキシフェニル)-4,4′-ジアミノビフェニル、N,N,N′,N′-テトラフェニル-4,4′-ジアミノジフェニルエーテル、4,4′-ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル、N,N,N-トリ(p-トリル)アミン、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4′-〔4-(ジ-p-トリルアミノ)スチリル〕スチルベン、4-N,N-ジフェニルアミノ-(2-ジフェニルビニル)ベンゼン、3-メトキシ-4′-N,N-ジフェニルアミノスチルベンゼン及びN-フェニルカルバゾール等が挙げられる。
正孔輸送層は、上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、クラビアコート法、インクジェット印刷法を含む印刷法及びLB法(ラングミュア・ブロジェット、Langmuir Blodgett法)等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができるが、本発明においては、ピンコート法、キャスト法、クラビアコート法、インクジェット印刷法等の湿式塗布方式を適用することが好ましい。正孔輸送層の層厚については特に制限はないが、通常は5nm~5μm程度、好ましくは5~200nmの範囲である。この正孔輸送層は、上記材料の1種又は2種以上からなる1層構造であってもよい。
また、正孔輸送層の材料に不純物をドープすることにより、p性を高くすることもできる。その例としては、特開平4-297076号公報、特開2000-196140号公報、同2001-102175号公報及びJ.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
このように、正孔輸送層のp性を高くすると、より低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
(阻止層)
阻止層としては、正孔阻止層及び電子阻止層が挙げられ、上記説明したキャリア輸送機能層ユニット3の各構成層の他に、必要に応じて設けられる層である。例えば、特開平11-204258号公報、同11-204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層等を挙げることができる。
正孔阻止層とは、広い意味では、電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、電子輸送層の構成を必要に応じて、正孔阻止層として用いることができる。正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられていることが好ましい。
一方、電子阻止層とは、広い意味では、正孔輸送層の機能を有する。電子阻止層は、正孔を輸送する機能を有しつつ、電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、正孔輸送層の構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。本発明に適用する正孔阻止層の層厚としては、好ましくは3~100nmの範囲であり、さらに好ましくは5~30nmの範囲である。
〔第2電極:陰極〕
陰極は、有機機能層群や発光層に電子を供給するために機能する電極膜であり、金属、合金、有機又は無機の導電性化合物若しくはこれらの混合物が用いられる。具体的には、 蒸着法等の乾式形成方法を用いる場合には、金、アルミニウム、銀、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、イットリウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属、ITO、ZnO、TiO2及びSnO2等の酸化物半導体などが挙げられる。
また、湿式塗布方式を用いて形成する場合には、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合物(PEDOT:PSS)や銀ナノインク等を用いて、ピンコート法、キャスト法、クラビアコート法、インクジェット印刷法等により形成することができる。
陰極は、これらの導電性材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させて作製することができる。また、第2電極としてのシート抵抗は、数百Ω/sq.以下が好ましく、膜厚は通常5nm~5μm、好ましくは5~200nmの範囲で選ばれる。
なお、有機EL素子が、陰極側からも発光光Lを取り出す、両面発光型の場合には、光透過性の良好な陰極を選択して構成すればよい。
〔封止部材〕
有機EL素子を封止するのに用いられる封止手段としては、例えば、フレキシブル封止部材と、陰極及び透明基材とを封止用接着剤で接着する方法を挙げることができる。
封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されていればよく、凹板状でも、平板状でもよい。また透明性及び電気絶縁性は特に限定されない。
具体的には、フレキシブル性を備えた薄膜ガラス板、ポリマー板、フィルム、金属フィルム(金属箔)等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属フィルムとしては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる1種以上の金属又は合金が挙げられる。
本発明においては、封止部材としては、有機EL素子を薄膜化することできる観点から、ポリマーフィルム及び金属フィルムを好ましく使用することができる。さらに、ポリマーフィルムは、JIS K 7129-1992に準拠した方法で測定された温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が、1×10-3g/m2・24h以下であることが好ましく、さらには、JIS K 7126-1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が、1×10-3mL/m2・24h・atm(1atmは、1.01325×105Paである)以下であって、温度25±0.5℃、相対湿度90±2%RHにおける水蒸気透過度が、1×10-3g/m2・24h以下であることが好ましい。
封止用接着剤としては、例えば、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2-シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
《有機EL素子の製造方法》
本発明の有機EL素子の製造方法においては、インクジェットヘッドを用いて、インクジェット印刷法により、本発明に係る有機層Aを、本発明のインク組成物を用いて形成することを特徴とする。
(インクジェット印刷法)
以下、インクジェット印刷法による有機層の形成方法について、その一例を、図を交えて説明する。
図2は、インクジェット印刷方式を用いた有機EL素子の製造方法の一例を示す概略図である。
図2には、インクジェットヘッド30を具備したインクジェット印刷装置を用いて、基材(2)上に、有機EL素子の有機層を形成する有機機能性材料と、フッ素系溶媒と、沸点が99℃以上である非フッ素系溶媒を含有するインク組成物を吐出する方法の一例を示してある。
図2に示すように、一例として、基材2を連続的に搬送しながら、インクジェットヘッド30により、本発明で規定する構成からなるインク組成物を、インク液滴として順次、基材2上に射出して、有機EL素子の有機機能層群Uを形成する。
本発明の有機EL素子の製造方法に適用可能なインクジェットヘッド30としては、特に限定はなく、例えば、インク圧力室に圧電素子を備えた振動板を有し、この振動板によるインク圧力室の圧力変化でインク組成物を吐出させる剪断モード型(ピエゾ型)のヘッドでもよいし、発熱素子を有し、この発熱素子からの熱エネルギーによりインク組成物の膜沸騰による急激な体積変化によりノズルからインク組成物を吐出させるサーマルタイプのヘッドであってもよい。
インクジェットヘッド30には、射出用のインク組成物の供給機構などが接続されている。インク組成物のインクジェットヘッド30への供給は、タンク38Aにより行われる。インクジェットヘッド30内のインク組成物の圧力を常に一定に保つようにこの例ではタンク液面を一定にする。その方法としては、インク組成物をタンク38Aからオーバーフローさせてタンク38Bに自然流下で戻している。タンク38Bからタンク38Aへのインク組成物の供給は、ポンプ31により行われており、射出条件に合わせて安定的にタンク38Aの液面が一定となるように制御されている。
なお、ポンプ31によりタンク38Aへインク組成物を戻す際には、フィルター32を通してから行われている。このように、インク組成物はインクジェットヘッド30へ供給される前に絶対濾過精度又は準絶対濾過精度が0.05~50μmの濾材を少なくとも1回は通過させることが好ましい。
また、インクジェットヘッド30の洗浄作業や液体充填作業などを実施するためにタンク36よりインク組成物が、タンク37より洗浄溶媒がポンプ39によりインクジェットヘッド30へ強制的に供給可能となっている。インクジェットヘッド30に対してこうしたタンクポンプ類は複数に分けても良いし、配管の分岐を使用しても良い、またそれらの組み合わせでもかまわない。
図2では配管分岐33を使用している。さらにインクジェットヘッド30内のエアーを十分に除去するためにタンク36よりポンプ39を用いてインクジェット30にインク組成物を強制的に送液しながら下記に記すエアー抜き配管からインク組成物を抜き出して廃液タンク34に送ることもある。
図3A及び図3Bは、インクジェット印刷方式に適用可能なインクジェットヘッドの構造の一例を示す概略外観図である。
図3Aは、本発明に適用可能なインクジェットヘッド100を示す概略斜視図であり、図3Bは、インクジェットヘッド100の底面図である。
本発明に適用可能なインクジェットヘッド100は、インクジェット記録装置(図示略)に搭載されるものであり、インクをノズルから吐出させるヘッドチップと、このヘッドチップが配設された配線基板と、この配線基板とフレキシブル基板を介して接続された駆動回路基板と、ヘッドチップのチャネルにフィルターを介してインクを導入するマニホールドと、内側にマニホールドが収納された筐体56と、この筐体56の底面開口を塞ぐように取り付けられたキャップ受板57と、マニホールドの第1インクポート及び第2インクポートに取り付けられた第1及び第2ジョイント81a及び81bと、マニホールドの第3インクポートに取り付けられた第3ジョイント82と、筐体56に取り付けられたカバー部材59とを備えている。また、筐体56をプリンタ本体側に取り付けるための取り付け用孔68がそれぞれ形成されている。
また、図3Bで示すキャップ受板57は、キャップ受板取り付け部62の形状に対応して、外形が左右方向に長尺な略矩形板状として形成され、その略中央部に複数のノズルが配置されているノズルプレート61を露出させるため、左右方向に長尺なノズル用開口部71が設けられている。また、図3Aで示すインクジェットヘッド内部の具体的な構造に関しては、例えば、特開2012-140017号公報に記載されている図2等を参照することができる。
図3A及び図3Bにはインクジェットヘッドの代表例を示したが、そのほかにも、例えば、特開2012-140017号公報、特開2013-010227号公報、特開2014-058171号公報、特開2014-097644号公報、特開2015-142979号公報、特開2015-142980号公報、特開2016-002675号公報、特開2016-002682号公報、特開2016-107401号公報、特開2017-109476号公報、特開2017-177626号公報等に記載されている構成からなるインクジェットヘッドを適宜選択して適用することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」又は「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」又は「質量%」を表す。
《有機EL素子の作製》
〔有機EL素子1の作製〕
(1.ガスバリアー層を具備した基材の作製)
基材を構成する可撓性フィルムとして、ポリエチレンナフタレートフィルム(帝人フィルムソリューション社製フィルム、以下、PENと略記する)を用い、その陽極を形成する面側に、特開2004-68143号公報に記載の構成からなる大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、連続して可撓性フィルム上に、SiOxからなる無機物のガスバリアー膜を厚さ500nmとなるように形成し、酸素透過度が0.001mL/m2・24hr以下、水蒸気透過度が0.001g/m2・24hr以下のガスバリアー層を有する基材を作製した。
(2.第1電極(陽極)の形成)
準備したガスバリアー性の可撓性フィルム上に厚さ120nmのITO(インジウムチンオキシド)をスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、陽極を形成した。
なお、パターンは、発光面積が50mm2になるようなパターンとした。
(3.正孔注入層の形成)
パターニング後のITO基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。この基板上に、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)-ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSSと略記、ヘレウス製、Clevios P JET)を正孔注入層形成用のインク組成物として、前述の図3に記載の構造からなるピエゾ方式インクジェットプリンターヘッドであるコニカミノルタ社製のピエゾ方式インクジェットプリンターヘッド「KM1024i」を用いて、図2に示したインクジェット印刷法による有機EL素子の製造フローに従って、40℃で第1電極(陽極)上に、乾燥後の層厚が30nmとなる条件で射出したのち、200℃で1時間乾燥して、正孔注入層を形成した。
(4.正孔輸送層の形成)
上記基材に形成した正孔注入層上に、下記組成の正孔輸送層形成用のインク組成物を用い、前述の図3A及び図3Bに記載の構造からなるピエゾ方式インクジェットプリンターヘッドであるコニカミノルタ社製のピエゾ方式インクジェットプリンターヘッド「KM1024i」を用いて、図2に示したインクジェット印刷法による有機EL素子の製造フローに従って、40℃で、乾燥後の層厚が30nmとなる条件で射出したのち、160℃で30分間乾燥して、正孔輸送層を形成した。
〈正孔輸送層形成用のインク組成物〉
正孔輸送材料1(重量平均分子量Mw=80000) 2.5質量部
テトラリン 500質量部
(5.発光層の形成)
次いで、下記組成の発光層形成用のインク組成物を用い、前述の図3A及び図3Bに記載の構造からなるピエゾ方式インクジェットプリンターヘッドであるコニカミノルタ社製のピエゾ方式インクジェットプリンターヘッド「KM1024i」を用いて、図2に示したインクジェット印刷法による有機EL素子の製造フローに従って、40℃で、乾燥後の層厚が50nmとなる条件で正孔輸送層上に射出したのち、120℃で30分間乾燥して、発光層を形成した。
〈発光層形成用のインク組成物〉
ホスト化合物1 8.78質量部
リン光発光ドーパント化合物D-1 3.01質量部
リン光発光ドーパント化合物D-2 0.05質量部
リン光発光ドーパント化合物D-3 0.05質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 1000質量部
(6.電子輸送層の形成)
続いて、下記組成の電子輸送層形成用のインク組成物を用い、前述の図3A及び図3Bに記載の構造からなるピエゾ方式インクジェットプリンターヘッドであるコニカミノルタ社製のピエゾ方式インクジェットプリンターヘッド「KM1024i」を用いて、図2に示したインクジェット印刷法による有機EL素子の製造フローに従って、40℃で、乾燥後の層厚が30nmとなる条件で、発光層上に射出したのち、120℃で30分間乾燥して、電子輸送層を形成した。
〈電子輸送層形成用のインク組成物〉
8-ヒドロキシキノリナトリチウム 0.3質量部
電子輸送性化合物M-33 2.7質量部
酢酸セシウム 0.18質量部
2-ヘキサノール(沸点:140℃、蒸気圧:0.35kPa)
150質量部
2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンタノール(沸点:142℃、蒸気圧:0.51kPa、略称:OFPO)350質量部
(7.電子注入層及び陰極の形成)
続いて、基板を大気に曝露することなく真空蒸着装置へ取り付けた。また、モリブデン製抵抗加熱ボートにフッ化ナトリウム及びフッ化カリウムをそれぞれ入れたものを真空蒸着装置に取り付け、真空槽を4×10-5Paまで減圧した後、前記ボートに通電して加熱してフッ化ナトリウムを0.02nm/秒で前記電子輸送層上に蒸着させて膜厚1nmの薄膜を形成し、続けて同様にフッ化カリウムを0.02nm/秒で当該薄膜上に蒸着させて、膜厚1.5nmの電子注入層を設けた。
引き続き、電子注入層上にアルミニウムを蒸着して厚さ100nmの陰極を設けた。
(8.封止及び有機EL素子の作製)
引き続き、市販のロールラミネート装置を用いて封止部材を接着して、有機EL素子1を作製した。
詳しくは、封止部材として、可撓性の厚さ30μmのアルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製)に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(12μm厚)をドライラミネーション用の接着剤(2液反応型のウレタン系接着剤)を用いラミネートした(接着剤層の厚さ1.5μm)ものを用いた。
アルミニウム面に封止用接着剤として、熱硬化性接着剤を、ディスペンサーを使用してアルミ箔の接着面(つや面)に沿って厚さ20μmで均一に塗布した。これを100Pa以下の真空下で12時間乾燥させた。さらに露点温度が-80℃以下、酸素濃度0.8ppmの窒素雰囲気下へ移動し、12時間以上乾燥させ、封止用接着剤の含水率を100ppm以下となるように調整した。
熱硬化接着剤としては下記の(A)~(C)を混合したエポキシ系接着剤を用いた。
(A)ビスフェノールAジグリシジルエーテル(DGEBA)
(B)ジシアンジアミド(DICY)
(C)エポキシアダクト系硬化促進剤
以上のようにして、封止部材を、取り出し電極及び電極リードの接合部を覆うようにして密着・配置して、圧着ロールを用いて厚着条件、圧着ロール温度120℃、圧力0.5MPa、装置速度0.3m/minで密着封止して、有機EL素子1とした。
〔有機EL素子2~85の作製〕
上記有機EL素子1の作製において、電子輸送層形成用のインク組成物を構成する電子輸送材料の種類、フッ素系溶媒の種類、非フッ素系溶媒の種類、各溶媒の組成比を表I~表IIIに記載の組み合わせに変更した以外は同様にして、有機EL素子2~85を作製し
た。
Figure 0007259847000027
Figure 0007259847000028
Figure 0007259847000029
上記表I~表IIIに略称で記載した各構成材料の詳細は以下のとおりである。
(フッ素系溶媒)
TFPO:2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール(沸点:109℃、蒸気圧:2.53kPa)
OFPO:2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンタノール(沸点:142℃、蒸気圧:0.51kPa)
HDFDO:1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デカノール(沸点:115℃、蒸気圧:2.66kPa)、
TrF1PO:3,3,3-トリフルオロ-1-プロパノール(沸点:100℃、蒸気圧:5.14kPa(計算値))、
(非フッ素系溶媒)
MeOPrO:1-メトキシ-2-プロパノール(沸点:120℃、蒸気圧:0.67kPa)
EGMME:エチレングリコールモノメチルエーテル(沸点:124℃、蒸気圧:0.80kPa)
PGMEE:プロピレングリコールモノエチルエーテル(沸点:133℃、蒸気圧:0.53kPa)
各有機EL素子の作製に用いた電子輸送性化合物を除く化合物の詳細は、以下のとおりである。
Figure 0007259847000030
《インク組成物の評価》
下記の方法に従って、有機EL素子1~85の電子輸送層の形成に用いたインク組成物1~85について、下記の各評価を行った。
〔射出安定性の評価〕
各インク組成物を、図3A及び図3Bに記載の構造からなるピエゾ方式インクジェットプリンターヘッドであるコニカミノルタ社製のピエゾ方式インクジェットプリンターヘッド「KM1024i」(ノズル数:1024)に充填し、1分間連続射出した後、インクジェットプリ
ンターヘッドのノズル面を開放系にして、2分間放置した。次いで、インクジェットプリンターヘッド(ノズル数:1024)よりインク組成物を再射出し、ノズル詰りによるノズル欠や斜め射出を起こしているノズル数をカウントし、下記の基準に従って射出安定性の評価を行った。
○:全てのノズルで、ノズル欠や斜め射出が発生していない
△:1~5のノズルで、弱いノズル欠や斜め射出の発生は認められるが、実用上許容される範囲内である
×:6以上のノズルで、ノズル欠や斜め射出の発生は認めら、実用上問題となる品質である
〔部材適合性の評価〕
はじめに、評価用樹脂サンプルを準備した。2液混合型のエポキシ系樹脂であるセメダイン社製の「EP300」を用い、離型性を有するガラス基材上に、主剤と硬化剤を1:1の比率で、それぞれ0.5g採取・混練し、40℃のオーブン中で加熱硬化を12時間行って、プレート状の評価用樹脂サンプルを作製し、ガラス基材より剥離し、未処理の段階でその質量1を測定した。
次いで、各インク組成物50g中に、上記1gの評価用樹脂サンプルを浸漬し、密封した状態で60℃のオーブン内で7日間保存した。その後、評価用樹脂サンプルを取り出し、2-プロパノールで十分に洗浄した後、乾燥し、処理後の評価用樹脂サンプルの質量2を測定した。
次いで、未処理サンプルの質量1を100%とした時の処理後サンプルの質量2の質量変化率(相対値)を求め、下記の評価基準に則り、部材適合性の評価を行った。なお、本評価では、樹脂サンブルが上記処理により、溶解又は膨潤を起こすため、質量変化率は、絶対値で求めた。
◎:質量変化量(絶対値)が、2.0質量%未満である
○:質量変化量(絶対値)が、2.0質量%以上、5.0質量%未満である
△:質量変化率(絶対値)が、5.0質量%以上、10.0質量%未満である
×:質量変化量(絶対値)が、10.0質量%以上である
〔電子輸送性化合物(ET材)の溶解性〕
各インク組成物を構成する電子輸送性化合物を、固形分濃度が0.8質量%となる条件で、インク組成物を構成する混合溶媒(表I及び表IIに記載の溶媒A1、溶媒B及び溶媒A2の種類と組成比)に60℃で溶解してガラス瓶に充填・密封し、当該溶解液を25℃暗所にて24時間保管した後、溶解液の溶状を目視観察し、下記の基準に則り電子輸送性化合物のインク組成物を構成する混合溶媒に対する溶解性を評価した。
○:溶解液中に、析出物の発生は一切認められず、清澄である
△:溶解液中に、微細な析出物の発生は認められるが、実用上許容される範囲内である
×:調製時に電子輸送性化合物が溶解しない、又は24時間保存後で多量の析出物の発生が認められる
《有機EL素子性能の評価》
下記の方法に従って、有機EL素子1~82について、下記の各評価を行った。
〔下層(発光層)への溶媒耐性〕
ガラス基板上に、各有機EL素子の作製に用いた発光層形成用のインク組成物を、インクジェットプリンターヘッド「KM1024i」を用いて、乾燥後の層厚が50nmとなる条件で射出したのち、120℃で30分間乾燥し発光層を形成して、評価用サンプルを作製した。
次いで、上記作製した評価サンプルの発光層上に、各有機EL素子の電子輸送層の形成に用いた各電子輸送層形成用のインク組成物の溶媒を用い、60℃まで加温できるピエゾ素子を有するインクジェットヘッドを搭載したインクジェットプリンター(FUJIFILM Dimatix Inc.製 DMP-2831)を用いて、25℃で吐出し、下層の溶媒耐性(リンス耐性)を下記の方法で評価した。
リンス処理前後での評価用サンプルの250nmでの吸光度を日立製作所社製の分光光度計[UV-3300]を用いて測定した。
次いで、上記で求めたリンス処理前後での吸光度を用いて発光層の残存率(%)を下式より求め、下記の評価ランクに則り、発光層に対する溶媒耐性の評価を行った。
残存率(%)=(リンス処理後の吸光度)/(リンス処理前の吸光度)×100
○:残存率が90%以上で、かつ発送層面に白モヤの発生が認められない
△:残存率が80%以上、90%未満で、かつ発送層面の一部で弱い白モヤの発生が認められるが、実用上許容される品質である
×:残存率が80%未満、又は発送層の全面で白モヤの発生が認められる
〔外部取り出し量子効率(EQE)の評価〕
各有機EL素子を室温(約23℃)、2.5mA/cm2の定電流条件下による通電を行い、発光開始直後の発光輝度(L0)(cd/m2)を測定することにより、外部取り出し量子効率(EQE)を算出した。
ここで、発光輝度の測定は、分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタ(株)製)を用いて行い、外部取り出し量子効率は、有機EL素子8を1.00とする相対EQEを求め、下記の評価ランクに則り、外部取り出し量子効率(EQE)の評価を行った。
◎:相対EQEが、1.20以上である
○:相対EQEが、1.05以上、1.20未満である
△:相対EQEが、0.95以上、1.05未満である
×:相対EQEが、0.95未満である
以上により得られた結果を、表IV及び表Vに示す。
Figure 0007259847000031
Figure 0007259847000032
表IV及び表Vに記載の結果より明らかなように、本発明で規定する条件を満たす構成のインク組成物は、比較例に対し、ノズル面におけるノズル欠を生じることなく、射出安定性に優れ、ノズルプレートを構成する部材適合性(マテコン耐性)及び電子輸送性化合物の溶解性に優れていることが分かる。
更に、本発明のインク組成物を用いて電子輸送層をインクジェット印刷法で形成した本発明の有機EL素子は、下層に設けた発光層の溶出がなく、溶媒耐性に優れ、かつ外部取り出し量子効率(EQE)が高いことが分かる。
本発明により、インクジェットヘッドにおける射出安定性及び部材適合性に優れたインクジェット印刷法に適用するインク組成物を得ることができ、当該インク組成物を用い、有機EL素子の製造時の下層に対する溶媒耐性に優れ、かつ外部量子効率(EQE)の高い有機EL素子が得られる有機EL素子に適用することができる。
1 有機EL素子
2 基材
3 第1電極(陽極)
4 正孔注入層
5 正孔輸送層
6 発光層
7 電子輸送層
8 電子注入層
9 第2電極(陰極)
10 取り出し電極(第1電極)
11 取り出し電極(第2電極)
12 封止用接着層
13 封止基材
30、100 インクジェットヘッド
31、39 ポンプ
32 フィルター
33 配管分岐
34 廃液タンク
35 制御部
36、37、38A、38B タンク
56 筐体
57 キャップ受板
59 カバー部材
61 ノズルプレート
62 キャップ受板取り付け部
68 取り付け用孔
71 ノズル用開口部
81a 第1ジョイト
81b 第2ジョイント
82 第3ジョイント
LA 発光領域
U 有機機能層ユニット

Claims (9)

  1. 有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する有機層Aの形成に用いるインクジェット用のインク組成物であって、
    少なくとも、前記有機層Aを形成する有機機能性材料と、少なくとも1種のフッ素系溶媒と、1atm(101.3kPa)下での沸点が99℃以上である非フッ素系溶媒とを含有し、かつ、
    前記少なくとも1種のフッ素系溶媒が、インク組成中5質量%以上存在する全ての非フッ素系溶媒に比べ、25℃における蒸気圧が最も低いことを特徴とするインク組成物。
  2. 前記フッ素系溶媒として、25℃における蒸気圧が異なる2種以上のフッ素系溶媒を含有することを特徴とする請求項1に記載のインク組成物。
  3. 少なくとも2種のフッ素系溶媒A1及びフッ素系溶媒A2と、非フッ素系溶媒Bを含有し、前記各々の溶媒の25℃における蒸気圧の序列が、下記関係式1で規定する条件を満たすことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインク組成物。
    (関係式1)
    蒸気圧 フッ素系溶媒A2<非フッ素系溶媒B<フッ素系溶媒A1
  4. 前記2種のフッ素系溶媒A1とフッ素系溶媒A2との沸点の差が、1atm(101.3kPa)下で20℃以上であることを特徴とする請求項3に記載のインク組成物。
  5. インク組成物の総溶媒量に対する前記フッ素系溶媒の総量が、51質量%以上であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のインク組成物。
  6. 前記有機層Aを構成する有機機能性材料が、電子輸送材料又は電子注入材料であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のインク組成物。
  7. 前記有機層Aを構成する有機機能性材料が、電子輸送材料であることを特徴とする請求項6に記載のインク組成物。
  8. 有機層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
    インクジェット印刷法を用いて、少なくとも1層の有機層Aを、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載のインク組成物を用いて形成することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  9. 分子量が700~2000の範囲内にある有機化合物を含有する有機層B上に、前記インク組成物を用いて有機層Aを形成することを特徴とする請求項8に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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