JP7258024B2 - 温間プレス成形用樹脂被覆金属板および有機樹脂フィルム - Google Patents

温間プレス成形用樹脂被覆金属板および有機樹脂フィルム Download PDF

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Description

本発明は、金属板上に塗布される温間プレス成形用樹脂被覆金属板に関し、より詳細には温間プレス成形に供されるプレス成形性などに優れた樹脂被覆金属板およびそれに適用され得る有機樹脂フィルムに関する。
例えば現代の移動手段として不可欠な自動車は、鋼板をプレス成形することで製造されている。かようなプレス成形においては、樹脂や油脂などからなる潤滑剤を鋼板上に塗布することで成形性を向上させている(特許文献1及び特許文献2参照)。
また、近年では、低燃費化などの要請から、自動車用の素材として鋼板からアルミニウムなど他材料への転換が進んでいる。しかしながら例えばアルミニウムは鋼板に比して成形性が低いため、例えば自動二輪車のフレームや四輪車のドアパネルなど比較的構造が複雑な部位ではプレス成形などが困難となってくる。
このような難加工材に対するプレス成形として温間プレス成形による加工が注目され始めている。例えば特許文献3に示される温間プレス成形では、プレス加工時における荷重を小さくし、アルミニウム自体の加工性を向上させるために、プレス加工用の金型を例えば200~300℃程度の高温に加熱することが行われている。
また、特許文献4に示される温間プレス成形では、温間プレス成形に供されるアルミニウムに対してコロイダルシリカを含有した水溶性アクリル樹脂を被覆することで、アルミニウムの温間プレス成形性を向上させることが開示されている。
特開昭55-38840号公報 特開2010-197017号公報 特開2015-54422号公報 国際公開第2007/043332号公報
しかしながら上記した特許文献1~4を含む従来の技術では市場のニーズを満たしているとは言えず、以下に述べる課題が存在する。
まず特許文献1~3では、潤滑皮膜としてワックスを含有しているため、プレス成形時の加熱に対して皮膜の成分が揮発することで作業環境が劣化してしまう懸念がある。さらに潤滑皮膜が加熱により変質することで成形後に潤滑皮膜の残渣が発生する場合があり、例えば塗装などの後処理工程で重大な欠陥となることも否めない。
また、特許文献3及び特許文献4においてはアクリル樹脂にシリカを含有して温間プレス成形性を向上させてはいるものの、特許文献3ではそもそも上記したワックス含有が前提であってそのまま採用することが困難であり、特許文献4では具体的なシリカの粒径に関する言及はない。
本発明は、かような課題を一例として解決することを鑑みて為されたものであり、難加工材に対する温間プレス加工において優れたプレス成形性を具備する樹脂被覆金属板およびこの樹脂被覆金属板それに適用され得る有機樹脂フィルムを提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかる温間プレス成形用樹脂被覆金属板は、(1)金属板と、前記金属板上に形成されるアクリル樹脂層と、を含み、前記アクリル樹脂層はアクリル樹脂中に平均粒径が10nm未満のシリカが含有されてなることを特徴とする。
なお、上記した(1)に記載の温間プレス成形用樹脂被覆金属板においては、(2)前記アクリル樹脂層の厚みが1.5μm以上であることが好ましい。
また、上記した(1)に記載の温間プレス成形用樹脂被覆金属板においては、(3)前記金属板と前記アクリル樹脂層との間に介在するポリエステル樹脂層をさらに含み、前記ポリエステル樹脂層には第1炭素系粒子が含有されてなることが好ましい。
また、上記した(3)に記載の温間プレス成形用樹脂被覆金属板においては、(4)前記ポリエステル樹脂層は、親水基としてスルホン酸塩を含有し、且つ、ガラス転移温度(Tg)が100℃未満であることが好ましい。
また、上記(4)に記載の温間プレス成形用樹脂被覆金属板においては、(5)前記スルホン酸塩は、前記ポリエステル樹脂層における全ジカルボン酸成分に対して4mol%以上であることが好ましい。
また、上記(4)又は(5)に記載の温間プレス成形用樹脂被覆金属板においては、(6)前記スルホン酸塩は、ナトリウム塩であることが好ましい。
また、上記(6)に記載の温間プレス成形用樹脂被覆金属板においては、(7)前記ナトリウム塩は、5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩であることが好ましい。
上記(3)~(7)のいずれかに記載の温間プレス成形用樹脂被覆金属板においては、(8)前記第1炭素系粒子が前記ポリエステル樹脂層に対して4~30重量%含有されてなることが好ましい。
上記(3)~(8)のいずれかに記載の温間プレス成形用樹脂被覆金属板においては、(9)前記アクリル樹脂層に第2炭素系粒子が0.1重量%未満含有されてなることが好ましい。
上記(3)~(9)のいずれかに記載の温間プレス成形用樹脂被覆金属板においては、(10)前記アクリル樹脂層の厚みは0.5μm~3.0μmであることが好ましい。
上記(3)~(10)のいずれかに記載の温間プレス成形用樹脂被覆金属板においては、(11)前記アクリル樹脂層に前記シリカが10~70重量%含まれてなることが好ましい。
また、上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかる有機樹脂フィルムは、温間プレス成形される金属板に被覆される有機樹脂フィルムであって、アクリル樹脂層に平均粒径が10nm未満のシリカが含有されてなることを特徴とする。
本発明によれば、温間プレス成形時において優れた成形性を実現することができる樹脂被覆金属板を提供することが可能となる。また、成形性に加えて、スポット溶接時における導通性や、温間プレス成形後の脱膜性にも優れる樹脂被覆金属板を提供することも可能となる。
本実施形態に係る温間プレス成形用樹脂被覆金属板100の構造を模式的に示した断面図である。 本実施形態に係る温間プレス成形用樹脂被覆金属板200の構造を模式的に示した断面図である。 本実施形態に係る温間プレス成形用樹脂被覆金属板300の構造を模式的に示した断面図である。 本実施形態に係る有機樹脂フィルム10’の構造を模式的に示した断面図である。 本実施形態に係る有機樹脂フィルム20’の構造を模式的に示した断面図である。 本実施形態に係る有機樹脂フィルム30’の構造を模式的に示した断面図である。 実験例において温間摺動性試験の方法を模式的に示した図である。
<温間プレス成形用樹脂被覆金属板>
以下、本発明を実施するための実施形態について説明する。本実施形態における温間プレス成形用樹脂被覆金属板は、金属板1と、前記金属板上に形成されるアクリル樹脂層Aと、を含み、前記アクリル樹脂層Aはアクリル樹脂中に平均粒径が10nm未満のシリカSが含有されてなることを特徴とする。以下、図に基づいて本実施形態について説明する。
≪第1実施形態≫
本実施形態の樹脂被覆金属板100は、図1に示されるように、金属板1の少なくとも片面上に、有機樹脂層10が形成されてなることを特徴とする。
そして、本実施形態に係る有機樹脂層10は、アクリル樹脂層AにシリカSが含有されることを特徴とする。
本実施形態の樹脂被覆金属板100に用いられる金属板1としては、アルミニウム、鉄、銅、チタン及びマグネシウム並びにアルミニウム合金やステンレスなど上記金属の合金などを含む金属板が用いられる。特に温間加工の温度域(200~400℃)で加工性が顕著に向上するアルミニウム、マグネシウム、チタンおよびこれらの合金、並びにステンレスが好適である。これらのうち、強度と軽量性に優れるという観点においてはアルミニウム合金、マグネシウム合金、チタンおよびチタン合金が好ましく、アルミニウム合金としては3000系、5000系、6000系、7000系が挙げられ、マグネシウム合金としてはAZ31、AZ61、AZ91およびMg-Li系等が挙げられる。自動車用樹脂被覆金属板としては、特にアルミニウム合金の5000系、6000系が好適である。
この金属板1の厚みについては特に制限はない。すなわち金属板1の厚みはその用途等によって適宜選択可能であり、例えば5μm~5mmの厚みの金属板1を適用可能である。例として、自動車ボディパネル用であれば0.5~3mm、電子機器用であれば20μm~1.5mmなどが好適な厚みであるが、これに限られるものではない。
[アクリル樹脂層A]
本実施形態に用いられるアクリル樹脂としては、特に制限はなく公知のアクリル樹脂を使用することができる。具体的には、本実施形態におけるアクリル樹脂を構成するモノマーとしては例えば、アクリル酸、メタアクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の多価アルコールとアクリル酸又はメタクリル酸とのモノエステル化物;そのモノエステル化物のε-カプロラクトン付加体;マレイン酸、フマル酸、アクリルアミド、アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン等、が例示できる。
また、本実施形態においてアクリル樹脂は、機械的性質や耐薬品性、接着性などを向上させるために、エポキシ基で変性されていてもよい。アクリル樹脂にエポキシ基を導入する場合、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等、と共重合することによりエポキシ基を導入することが可能である。
本実施形態において、使用されるアクリル樹脂は、上記したモノマーのうち1種以上を重合して得られるアクリル樹脂であってもよいし、またこれらのアクリル樹脂の2種以上をブレンドしてなる樹脂を適用してもよい。なお、本実施形態において、アクリル樹脂は塗液として使用されるものであってもよく、その場合、溶剤系、無溶剤系、エマルジョン系、水系等の塗液のいずれであってもよい。
本実施形態におけるアクリル樹脂としては、下記のような耐熱性試験をした際に、沈み込み深さが0.3μm~3.0μmとなる樹脂を用いることが好ましい。このようなアクリル樹脂に後述するシリカSを含有させることにより、温間プレス成形時にシリカSが沈み込まず、表面に保持することが可能となる。その結果、温間プレス成形時における金型と金属板1の接触を適切にコントロールし、良好な成形性を得ることができる。
なお、ここで上記した耐熱性試験としては、、以下の方法で行われるものを指す。まず、樹脂被覆金属板の有機樹脂層10の上に重さ0.15gfのリング及び10gのおもりを載置する。その後、樹脂被覆金属板を、加熱装置により金属板1が250℃となるように加熱し、1分間維持する。次いで、樹脂被覆金属板が室温となるまで冷却し、おもりを有機樹脂層10上から除去した後に有機樹脂層10上の表面に生じた凹みの深さを測定し、上記の沈み込み深さとする。
本実施形態において、有機樹脂層10にはシリカSが含有されてなる。
本実施形態の有機樹脂層10に含有されるシリカSは、プレス成形の際等に好ましい成形性を付与するために添加される。本実施形態の有機樹脂層10に含有されるシリカ源としては、例えば、シリカ粉末であってもよいし、分散媒にシリカが分散されたコロイダルシリカやオルガノシリカ等であってもよい。コロイダルシリカやオルガノシリカ等の場合、シリカの分散媒としては、水であってもよいし、アルコール、エーテル、ケトン等の有機溶剤であってもよい。
また本実施形態において、有機樹脂層10に含有されるシリカSは、平均粒径が10nm未満であることを特徴とする。シリカSの平均粒径が10nm以上である場合、プレス成形等を行った場合に、好ましい成形性を得ることができない可能性があり好ましくない。
一方で、シリカSの平均粒径の下限値としては特に制限はないが、入手のし易さ等の観点からは、1nm以上であることが好ましい。
なお、本実施形態におけるシリカSの平均粒径としては、例えばシアーズ法により測定された値を用いることができる。また、使用するシリカSの製造者のパンフレットに公称値が記載されている場合には、この公称値を本実施形態におけるシリカSの平均粒径とすることもできる。
本実施形態における有機樹脂層10において、上記したシリカがアクリル樹脂層中においてどのような状態で存在するかは明らかとなっていない。しかしながら、図1に示すように、単独のシリカ粒子が個々に分散されていたり、あるいは複数のシリカ粒子がランダムに凝集した状態で存在していることが推定できる。また、有機樹脂層10の表面は平坦ではなく、図1に示されるように、有機樹脂層10の表面付近に存在するシリカ粒子により凹凸が形成された状態であると推定できる。そしてこの凹凸により、プレス成形時の動摩擦係数(μ)が軽減し、その結果として上記した成形性が向上すると推定できる。
本実施形態において、シリカSの平均粒径が10nm未満の場合、プレス成形時の成形性が優れる理由としては、以下のように考えることができる。
すなわち、シリカSの平均粒径が10nm未満である場合、金型の表面と有機樹脂層10の表面の接触面は、分散化されたシリカSにより各接触場所の接触面積が小さくなる。従って、各接触面での荷重は小さくなるため、垂直抗力が小さくなり、摩擦力が小さくなる。その結果として、金属板1の材料の変形・流動が円滑となるので、プレス成形時の成形性が向上すると考えられる。
一方でシリカSの平均粒径が10nm以上の場合、好ましい成形性を得ることができない理由としては以下のように考えられる。すなわち、シリカSの平均粒径が10nm以上である場合、成形時の金型の表面と、有機樹脂層10の表面の接触面が局所的に存在する事になるため、各接触面での荷重が大きくなると考えられる。その結果、垂直抗力が大きくなり、摩擦力が大きくなる。そのため、金属板1の変形・流動が阻害され、著しい場合には金属板1の破断に至り、プレス成形性が劣ることとなると予想できる。
さらに、本発明者らは、特に塗布から成膜した0.6μm以上の厚みの塗膜において、平均粒径が20nmと10nmにおいては動摩擦係数の改善がほとんどないのに対し、平均粒径を10nm未満とすることによって顕著に動摩擦係数が向上する理由について、次のように考える。すなわち、シリカSの平均粒径を10nm未満とすることにより、塗布の際に樹脂中にシリカが沈み込むことを抑制可能とし、結果、成形の際に寄与する表面あるいは表面近傍のシリカSが増え、さらに、耐熱性試験における凹み深さが3μm未満となるアクリル樹脂と組み合わせることにより、温間加工におけるこれらのシリカSの沈み込みをも抑制することが可能となり、結果、顕著に加工性が向上するものと考えられる。
本実施形態のシリカSの含有量が10重量%未満である場合、金属板1上に有機樹脂層10が形成されプレス成形される場合等に、好ましい成形性を得ることができない可能性がある。一方で、シリカSの含有量が70重量%を超える場合、有機樹脂層10を金属板1上に形成する際の成膜性が低下する可能性や、プレス成形時における成形性が低下する可能性があり、好ましくない。
シリカSの含有量が70重量%を超える場合に成形性が低下し得る理由としては以下のように考えられる。すなわち、シリカSの含有量が70重量%を超える場合には、有機樹脂層10の柔軟性が低下すると考えられる。その場合、プレス成形の際に、有機樹脂層10が金属板1の変形に追従できずに亀裂が発生し、その結果、金型と金属板1とが直接的に接触する可能性が高くなるため、優れたプレス成形性を得ることが困難であると考えられる。
なお、上記において、有機樹脂層10に含有される前記シリカSの含有量としては、より好ましくは、30~65重量%であり、さらにより好ましくは、45~60重量%である。
本実施形態の有機樹脂層10の厚みは、図1に示すように金属板1上に下層を介さず直接有機樹脂層10が形成される場合は、1.5μm以上であることが好ましく、1.8μm以上であることがより好ましい。有機樹脂層10の厚みが1.5μm未満である場合、厳しい条件で成形を付与した場合に金属板1が局所的に露出して、金型と金属板1との直接的な接触が生じる可能性が生じる。そのため、優れたプレス成形性を得ることが困難になるという問題があるため、好ましくない。
一方で、本実施形態において有機樹脂層10の厚みの上限は特に制限はないが、コストの観点、及び、有機樹脂層10を金属板1上に形成する際の容易性や加工性の観点から、適宜厚みを設定することが可能である。
例えば、有機樹脂層10を塗布により形成する場合には、塗布の難易性により、6.0μm以下が好ましく、より好ましくは5.0μm以下、さらに好ましくは4.0μm以下である。
一方で、有機樹脂層10を、フィルムを金属板1上に形成することにより得る場合には、厚みがある程度ある方がハンドリングしやすいため、この観点から、5.0μm~100.0μmでも問題ない。製造容易性やコストの観点からは、好ましくは10.0μm~60.0μm、より好ましくは20.0μm~30.0μmである。
なお、本実施形態において、有機樹脂層10の厚みは、重さから換算した値であってもよい。具体的には、有機樹脂層10の厚みと重さは以下のように換算可能である。
有機樹脂層10の厚み[μm]= 有機樹脂層10の重さ[g/m]×有機樹脂層10の単位重量当たりの体積[cm/g]
例えば有機樹脂層10中にアクリル樹脂50wt%、及びシリカ50wt%が含有される場合、有機樹脂層10の単位重量当たりの体積[μm/(g/m)]=0.64である。ここで、アクリルの比重を1.2g/cm、シリカの比重を2.2g/cmとすると、単位重量当たりの体積[cm/g]は、アクリルが0.83、シリカが0.45となる。また、[cm/g]は[μm/(g/m)]と等価である。
なお、有機樹脂層10の金属板1上への形成方法としては、上記したアクリル樹脂とシリカSを混合した塗液を作製した後、金属板1上にこの塗液を塗布する方法により形成する方法が挙げられる。
なお、この塗液のアクリル樹脂は、上述したように、溶剤系、無溶剤系、エマルジョン系、水系等のいずれであってもよい。また、この塗液には、必要に応じて、プレス成形性に影響を及ぼさない範囲で硬化剤や光開始剤を配合しても問題ない。さらには、塗布性を向上させる為に、レベリング剤や消泡剤等を添加してもよい。
上記塗液を金属板1へ塗布する方法としては、バーコーター、スピンコーター、スプレーコート、ロールコーター、塗液浸漬後に絞りロール、等の、公知の塗布手法を適用することができる。
この場合、まず、金属板1の表面にコーターロールにて粒径10nm未満のシリカを含むアクリル樹脂の塗液を塗布し、焼付け加熱炉により到達板温約80~220℃程度で加熱した後、空冷または冷却装置により冷却して樹脂被覆金属板を作製する。なお、上述の塗布の工程の前に、接着剤塗布ロールにて接着剤を塗布した後、焼き付け及び冷却を行い、接着剤層を形成させる工程を設けてもよい。また、乾燥のみで塗膜硬化が完了しない場合には、養生(例として、40℃3日間)やUV照射にて塗膜硬化を完了させることも可能である。
また、あるいは、本実施形態の樹脂被覆金属板の製造方法としては、有機樹脂フィルムを、接着剤を介してあるいは介さずに金属板1に貼付ける方法を採用してもよい。
一例として、有機樹脂フィルムを熱融着してラミネートすることにより、図1に示される樹脂被覆金属板を製造する方法について説明する。
金属板供給手段から連続的に送り出された金属板1を、加熱手段を用いて有機樹脂フィルムの融点以上の温度に加熱する。そして、金属板1の片面(又は両面)に、フィルム供給手段から送り出された有機樹脂フィルムが金属板1に接するように接触させる。一対のラミネートロールの間で重ね合わせ、圧着してラミネートした後に急冷して樹脂被覆金属板を作製することが可能である。
なお、本実施形態において、アクリル樹脂層Aには、成形加工性や耐食性を向上させるための種々の添加剤が含有されていてもよい。添加剤の例としては、公知のシランカップリング剤、潤滑剤、金属アルコキシド等が挙げられる。
添加剤の添加量としては特に制限はないが、本実施形態においては、シランカップリング剤や潤滑剤、金属アルコキシド等を含有していなくとも温間成形性を有することができるため、これらの添加量が0.05%未満であってもよい。
また、上記した添加剤は、それぞれが単独で含有されていてもよいし、2種以上が含有されていてもよい。
≪第2実施形態≫
次に、図2を用いて本実施形態に係る樹脂被覆金属板200を説明する。
なお、以下で説明する第2実施形態については、既述した第1実施形態と同じ作用効果を有する構成は同じ番号を付し、更にその説明は適宜省略する。
第2実施形態においては、第1実施形態において説明した樹脂被覆金属板の加工性を向上させ、さらに導通性機能を付加したことを特徴とする。
図2に示す本実施形態の樹脂被覆金属板200は、アクリル樹脂層Aと金属板1との間にポリエステル樹脂層Bが形成されている。さらに、このポリエステル樹脂層Bには、炭素系粒子C(第1炭素系粒子)が含有されている。
[ポリエステル樹脂層B]
本実施形態に用いられるポリエステル樹脂としては、以下に記載するような樹脂が適用可能である。
ポリエステル樹脂層Bを構成する多価カルボン酸成分としては、芳香族、脂肪族、脂環族のジカルボン酸や3価以上の多価カルボン酸、あるいはこれらのエステル誘導体を使用してもよい。そして、かようなポリエステル樹脂層Bとしては、例えばジカルボン酸とジオールから成るものを主体とするのが好ましい。
そして芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ジメチルテレフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、1,2-ビスフェノキシエタン-p,p’-ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸などを適宜用いてもよい。
さらに脂肪族および脂環族のジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ダイマー酸、ドデカンジオン酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸など、あるいはこれらのエステル形成性誘導体を用いてもよい。
一方でポリエステル樹脂層Bを構成するグリコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、2,4-ジメチル-2-エチルヘキサン-1,3-ジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-2-イソブチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、4,4’-チオジフェノール、ビスフェノールA、4,4’-メチレンジフェノール、4,4’-(2-ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’-ジヒドロキシビフェノール、o-,m-,およびp-ジヒドロキシベンゼン、4,4’-イソプロピリデンフェノール、4,4’-イソプロピリデンジオール、シクロペンタン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオールなどを用いてもよい。
かようなポリエステル樹脂層Bとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンイソフタレートをはじめ、エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、1,4シクロヘキサンジメチルテレフタレート、エチレンイソフタレート、ブチレンイソフタレート、エチレンナフタレート、エチレンアジペート、ブチレンアジペートの少なくともいずれか1種以上を重合してなるポリエステル樹脂が例示される。またこれらのポリエステル樹脂の2種以上をブレンドしてなる樹脂を適用してもよい。
また、本実施形態におけるポリエステル樹脂の分子量(数平均)は、20000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量が20000を超えると、高分子化のために重合時間が長くなることがあり生産性低下につながるという不都合が生じるからである。
本実施形態のポリエステル樹脂層Bの厚みは、特に制限はなく、種々の値を適用してもよい。
例えば、ポリエステル樹脂層Bを塗膜により形成する場合、厚みとしては0.3μm~5.0μmが好ましい。また、ポリエステル樹脂層Bの均一性の観点から、より好ましい厚みとしては0.5μm~4.0μmである。さらにポリエステル樹脂層Bの生産性も考慮すると、0.7μm~3.0μmが最も望ましい厚みである。
また、図2に示すように有機樹脂層20が2層構造である場合には、アクリル樹脂層Aの厚みは0.3μm~4.0μmが好ましく、より高い加工性を求める場合には0.5μm~3.0μmが好ましい。さらに好ましくは、0.8μm~2.5μmである。
アクリル樹脂層Aの厚みをこの範囲とすることで、250℃のプレス環境にて皮膜が引き伸ばされても、アクリル樹脂層が破れにくくシリカを担持することが可能であり、結果、低動摩擦係数を維持することができ、基材の変形・流動が円滑となるので温間プレス性をより向上することが可能となる。
本実施形態において有機樹脂層20全体の厚みとしては、0.8μm~9.0μmが好ましく、加工性の観点からは、1.5μm以上がより好ましい。
なお、本実施形態において、有機樹脂層20の厚みは、重さから換算する値であってもよい。具体的には、有機樹脂層20の厚みと重さは以下のように換算可能である。
有機樹脂層20の厚み[μm]=アクリル樹脂層Aの厚み[μm]+ポリエステル樹脂層Bの厚み[μm]
ここで、アクリル樹脂層Aの厚みは第1実施形態において説明したとおりである。一方で、ポリエステル樹脂層Bの厚み[μm]は、以下のように換算可能である。
ポリエステル樹脂層Bの厚み[μm]=ポリエステル樹脂層Bの重さ[g/m]×ポリエステル樹脂層Bの単位重量当たりの体積[cm/g]
例えばポリエステル樹脂層B中にポリエステル樹脂90wt%、及びアセチレンブラック10wt%が含有される場合、ポリエステル樹脂層Bの単位重量当たりの体積[cm/g]は0.73cm/gとなる。ここで、ポリエステルの比重を1.3g/cm、アセチレンブラックの比重を1.8g/cmとすると、単位重量当たりの体積[cm/g]は、ポリエステルが0.76、アセチレンブラックが0.55となる。また、[cm/g]は[μm/(g/m)]と等価である。
本実施形態のポリエステル樹脂層Bにおいて、ポリエステル樹脂は、アクリル変性されていないなど、アクリル成分を含有していないことが望ましい。
また、ポリエステル樹脂層Bは、ワックスを含有していないことが望ましい。ポリエステル樹脂層Bにワックスが含有されていると、プレス成形時の加温によってワックス成分が揮発して臭気が発生するからである。かような観点からすれば、ポリエステル樹脂層B中に含まれるワックスは、好ましくは5wt%未満、より好ましくは1wt%未満、さらに好ましくは0.1wt%未満である。
[炭素系粒子C]
本実施形態において、図2に示されるように、ポリエステル樹脂層Bには炭素系粒子C(第1炭素系粒子)が含まれる。アクリル樹脂層Aと金属板1との間に、炭素系粒子C(第1炭素系粒子)を含有したポリエステル樹脂層Bを設けることにより、アクリル樹脂層Aのみの構成に対し、成形加工性が顕著に向上する。
炭素系粒子Cを含有させることにより成形性が向上する理由としては次のように考えられる。すなわち、炭素系粒子Cを含有することにより、温間加工温度下において、ポリエステル樹脂層Bに対し増粘効果をもたらし、皮膜の凝集力を向上させることが可能となった結果、加工時の金型と金属板1の接触が抑制される。さらに、カーボン自体の潤滑効果も加わり、相乗的に加工性が向上する結果、アクリル樹脂A単層で構成される場合よりもさらに加工性の向上が可能となったものと考えられる。
本実施形態において炭素系粒子Cとしては、いわゆる導電性カーボンブラックを使用することができる。具体的には、ファーネス法、アセチレン法、ガス化法等の公知の手法で製造された、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の導電性カーボンブラックを適宜選択して使用することができる。
また、酸化(官能基付与)、多孔質化(賦活)、黒鉛化等の表面処理を付与した導電性カーボンブラックを適用しても問題無い。あるいは、カーボンナノチューブ、フラーレン等を適用することも可能である。
潤滑効果の観点からファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックが好ましく、より好ましくはファーネスブラック、アセチレンブラックである。
本実施形態において使用される炭素系粒子Cの平均粒径は、10nm~80nmであることが好ましい。
また、ポリエステル樹脂層Bにおける炭素系粒子Cの含有量としては、4~30重量%であることが好ましい。炭素系粒子Cの含有量が4%未満であると、上記効果が得られず、好ましい成形性が得られない可能性がある。また、本実施形態においては下層となるポリエステル樹脂層Bに含ませることで、上層に炭素系粒子を含まずとも、スポット溶接の際に好ましい導電性を付与できるメリットもあり、このような導電性の観点からは5%以上が好ましい。また、炭素系粒子Cの含有量が30%を超えると、塗液を均一に混ぜることが困難になり長時間の撹拌を要することとなる可能性や、金属板1上にポリエステル樹脂層Bを形成する際、均一な厚みでの形成や炭素系粒子の均一な分散が困難となる可能性があり、好ましくない。
本実施形態においては、アクリル樹脂層Aとポリエステル樹脂層Bの両方に炭素系粒子炭素系粒子が含まれていてもよい。アクリル樹脂層Aにおける炭素系粒子C’(第2炭素系粒子)の含有量は、30重量%未満が好ましく、ポリエステル樹脂層Bにおける炭素系粒子C(第1炭素系粒子)の含有量よりも小さいことがより好ましい。なお、本実施形態においてはアクリル樹脂層Aに炭素系粒子が含まれていなくても、良好な加工性および導通性を有することができるため、炭素系粒子C’の含有量が0.1重量%未満であってもよい。
なお、本実施形態の樹脂被覆金属板は、例えば搬送中の表面保護のためにプロシートのような剥離可能な保護層がアクリル樹脂層Aの上に、形成されていてもよいが、温間プレス成形の工程においては、最表面がアクリル樹脂層Aとなる。
≪第3実施形態≫
次に、図3を用いて本実施形態に係る樹脂被覆金属板300を説明する。
なお、以下で説明する第3実施形態については、既述した第1実施形態或いは第2実施形態と同じ作用効果を有する構成は同じ番号を付し、更にその説明は適宜省略する。
第3実施形態においては、第1実施形態或いは第2実施形態において説明した樹脂被覆金属板に、さらに脱膜性機能を付加したことを特徴とする。
ここで、温間プレス成形後の脱膜性に着目した技術としては、例えば国際公開第2007/023967号公報に開示された技術等が挙げられる。当該技術においては、温間プレス成形後の潤滑皮膜の残渣が後処理に影響する点を発見し、この残渣を適切に除去することで陽極酸化処理などの表面処理や塗装などの後処理を問題なく実行することができることが提案されている。
潤滑皮膜の残渣が品質に及ぼす影響は甚大であり、上記文献によればその影響は抑制されるともいえる。しかしながら上記文献は、70℃の温度環境下で超音波も用いて10分間処理を行うなど充分な条件下で残渣の除去しており、効率性を上げるという観点で改善の余地はある。換言すれば、例えば自動車などの製造では生産コストの削減も競争力を増す重要な因子であり、如何にして残渣が発生することなく潤滑皮膜を除去(脱膜)できるかが重要となってくる。
本実施形態おいては、ポリエステル樹脂層Bに、さらに親水基としてスルホン酸塩を含有する。このような構成とすることにより、樹脂被覆金属板を温間プレス成形した後に、より好ましい脱膜性を付与することが可能となる。
本実施形態において、上記したようなスルホン酸塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、及びカリウム塩、等を挙げることができる。そして、調達コストや汎用性の観点からは、スルホン酸塩としてナトリウム塩が好適であり、さらに後述するとおりナトリウム塩の中でも5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩(以下、「SIP」とも称する。)が最も望ましい。
なお、スルホン酸塩がナトリウム塩であるときにも、当該ナトリウム塩以外に他の塩が微量に含まれることを阻害するものではない。
さらに、本実施形態におけるポリエステル樹脂層Bは、ポリエステル樹脂としてガラス転移温度(Tg)が100℃未満の樹脂を使用することが好ましい。ガラス転移温度(Tg)が100℃を超える場合、アルカリ脱脂時に処理液に対して溶解しにくくなり、コストや作業環境などを鑑みた適切な脱膜処理を行うことが難しくなるからである。
より具体的に、ガラス転移温度(Tg)が100℃を超える場合、アルカリ脱脂の処理液に適切に溶解させるためには、脱膜時における処理液の浴温を高くしたり、ポリエステル樹脂中のスルホン酸塩の含有量を多量にしたりしなければならない。そして脱膜時の処理液の浴温を高温にする場合には、処理液が揮発して作業環境が悪化する恐れが生じる。また、例えばSIPなどのスルホン酸塩を多量にポリエステル樹脂層B中に入れると、ポリエステル樹脂層Bの金属板1への造膜性の低下や膜強度の低下の懸念などがあり、さらにはコスト高となって好ましくない。
なお、このポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは0℃~100℃であり、ポリエステル樹脂が5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩を含む場合には25℃~64℃であることが好ましい。
また、ポリエステル樹脂層Bに含有されるスルホン酸塩の含有量(mol%)は、全ジカルボン酸成分を100mol%とした場合において4mol%以上であることが好ましい。スルホン酸塩が全ジカルボン酸成分に対して4mol%を下回ると、特に温間プレス成形後における脱膜性が悪化してしまうためである。
なお、上記したスルホン酸塩の含有量(mol%)は、全ジカルボン酸成分を100mol%とした場合において、6~20mol%であることが更に好ましく、10~17mol%であることがより好ましい。そして、特に、上記したスルホン酸塩が5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩である場合、その含有量(mol%)は、全ジカルボン酸成分を100mol%とした場合において、6~17mol%であることが更に好ましく、10~17mol%であることがより好ましい。
また、ポリエステル樹脂の分子量(数平均)は、20000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量が20000を超えると、高分子化のために重合時間が長くなることがあり生産性低下につながるという不都合が生じるからである。また、分子量が高すぎるとアルカリ脱脂時の処理液に対して溶解しにくくなる恐れがあり、適切に溶解させるためには脱膜時の浴温を高くしたり、ポリエステル樹脂中のスルホン酸塩の含有量を多量にしたりしなければならない場合があるという不具合も生じ得るからである。
そして脱膜時における処理液の浴温を高温とすると、この処理液が揮発して作業環境が悪化するなどの恐れが出てくる。また、例えばSIPなどのスルホン酸塩を多量にポリエステル樹脂層B中に入れると、ポリエステル樹脂層Bの金属板1への造膜性の低下や皮膜自体における変質の懸念などがあり、さらにはコスト高となって好ましくない。
なお、ポリエステル樹脂の分子量は、10000~17000であることがより好ましい。
また、本実施形態においてはポリエステル樹脂層Bの厚みは、塗膜形成の場合にはコスト面から0.5μm~5.0μmが好ましく、均一性と脱膜性を求める場合には0.7μm~4.0μmがより好ましく、さらに生産性も考慮すると0.9μm~3.0μmが最も望ましい。
この場合、本実施形態の有機樹脂層30全体の厚みとしては、0.8μm~10.0μmが好ましい。加工性の観点から、1.5μm以上がより好ましく、脱膜性の観点から、8.0μm以下がより好ましく、6.0μm以下がさらに好ましい。
フィルムとして製膜後に貼り付ける場合には、厚みがある程度有る方がハンドリングし易いため、3.0μm~28.0μmが好ましい。コスト面から4.0μm~15.0μmがより好ましく、5.0μm~12.0μmがさらに好ましい。
本実施形態においては、アクリル樹脂層Aに炭素系粒子C’が含有される場合には、その含有量が0.1重量%未満であることが好ましい。炭素系粒子C’が0.1重量%以上含有されると、脱膜性が低下する可能性があり好ましくない。
なお、上記した第1実施形態~第3実施形態及び図1~図3においては、金属板1の片面に有機樹脂層が形成される例を示した。しかしながら本実施形態の樹脂被覆金属板はこれに制限されるものではなく、金属板1の両面に上記した有機樹脂層を形成させてもよい。また、金属板の両方の面で有機樹脂層の構成が同じである必要はなく、例えば、金属板1の片面上に有機樹脂層10を形成し、他方の面に有機樹脂層20を形成してもよい。
<<変形例>>
次に、第1実施形態~第3実施形態において説明した有機樹脂層10~有機樹脂層30が、金属板1に積層されず、有機樹脂フィルムとして使用される場合の形態について以下に記載する。
すなわち、第1実施形態~第3実施形態において説明した有機樹脂層10~有機樹脂層30は、金属板1に積層されない状態で、有機樹脂フィルムとして使用されてもよい。なお、本実施形態において、図4に示される有機樹脂フィルム10’は、図1に示される樹脂被覆金属板における有機樹脂層10と同様の構成を有するため、詳細な説明はここでは割愛する。また、図5に示される有機樹脂フィルム20’は、図2に示される樹脂被覆金属板における有機樹脂層20’と同様の構成を有し、さらに、図6に示される有機樹脂フィルム30’は、図3に示される有機樹脂層30’と同様の構成を有するため、詳細な説明はここでは割愛する。
本実施形態における有機樹脂フィルムは、例えばプレス成形(特に温間プレス成形)される金属板への被覆用途として好適である。
すなわち、本実施形態の有機樹脂フィルムを被覆した樹脂被覆金属板10’は、例えば温間プレス成形に際して、好ましい成形性を発揮する。
加えて、本実施形態おける有機樹脂フィルム20’は、例えば温間プレス成形時におけるより好ましい成形性に加えて、スポット溶接時における好ましい導通性を発揮し得る。
さらに、本実施形態おける有機樹脂フィルム30’は上記した成形性及び導通性に加えてさらに、プレス成形後の皮膜除去において良好な脱膜性を発揮し得る。
この場合、本実施形態の有機樹脂フィルム10’~有機樹脂フィルム30’の製造方法は特に制限はなく、公知のフィルムの製造方法を適用することができる。
例えば、テフロン(登録商標)などのベース基材上に、有機樹脂を含有する塗液を塗布して乾燥させた後に、これをベース基材上から剥離することで有機樹脂フィルム10’~有機樹脂フィルム30’を得ることができる。
なお、上記塗布乾燥後の有機樹脂フィルムを剥離可能であれば、ベース基材の種類は特に制限はなく、公知の種々の材質をベース基材として適用してもよいことは言うまでもない。
また、有機樹脂フィルム20’あるいは有機樹脂フィルム30’は2層構成のフィルムであるが、本発明の特徴を有する限りこれに限られず3層以上の構成のフィルムとしてもよい。
また、2層以上のフィルム構成とする場合の製造方法は、公知の方法を適用することができ、例えば塗液を塗布して乾燥させる工程を繰り返すことにより得ることが可能である。
以下に実験例を挙げて本発明について具体的に説明するが、本発明はこれら実験例に限定されるものではない。
[樹脂被覆金属板の準備]
まず、金属板1として、厚さ0.8mmのアルミニウム合金板(A5052 H34)(以下、アルミニウム板、AL板とも表記する)を準備した。アルミニウム板は、公知の方法により、脱脂(サーフクリーナーE370(5g/L)により、60℃において20秒浸漬)、脱スマッジ(硫酸70g/L、10秒)、及び、ドライヤによる乾燥を行った。
次に、金属板1の両面に、表1に示す樹脂種より適宜選択して、有機樹脂層部分が単層又は2層の樹脂被覆金属板を作製した。なお、金属板1上への有機樹脂層の形成は、塗液を金属板1上に塗布する方法により行った。
例えば、表2の実験例No.1-1に示す単層の樹脂被覆金属板は、以下のように作製した。まず、アクリル樹脂50wt%とコロイダルシリカ(シリカ平均粒径:4nm~6nm)50wt%とを含有する塗液を金属板上に塗布した。塗布量は、乾燥後の樹脂の厚さが2μmとなるように調整した。次いで、金属板1の温度を110℃となるように加熱し、塗液中の水分を蒸発させることにより乾燥させ、樹脂被覆金属板を作成した。
なお、本実験例においては、シリカ平均粒径に応じて、以下のコロイダルシリカ(いずれも日産化学工業社製)を使用した。
シリカ平均粒径(公称値):4nm~6nm・・・品名:ST-XS
シリカ平均粒径(公称値):10nm~15nm・・・品名:ST-O
シリカ平均粒径(公称値):20nm~25nm・・・品名:ST-CM
乾燥後の有機樹脂層の重さは3.2g/mであった。なお、有機樹脂層の厚みと重さは次のように換算可能である。
アクリルの比重を1.2g/cm、シリカの比重を2.2g/cmとすると、単位重量当たりの体積[cm/g]は、アクリルが0.83、シリカが0.45となる。アクリル50wt%、シリカ50wt%配合した皮膜の単位重量当たりの体積は0.64cm/gとなる。[cm/g]は[μm/(g/m)]と等価であるから、下記のように厚みに換算可能である。
0.64[μm/(g/m)]×3.2[g/m]=2.0[μm]
また、表2の実験例No.1-4に示す単層の樹脂被覆金属板は、以下のように作製した。まず、表1に示される樹脂種において「ポリエステルA3」の種類の樹脂を含有する塗液を、以下のように準備した。
グリコール成分としてはエチレングリコール及びジエチレングリコールを用いた。全グリコール成分を100mol%とした場合において、エチレングリコールが56mol%、ジエチレングリコールが44mol%であった。
多価カルボン酸成分としてはテレフタル酸(TA)及びイソフタル酸(IA)を用いた。多価カルボン酸成分の親水基として5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩(SIP)を用いた。TA/IA/SIPの割合(mol%)が表1のとおりとなるように共重合させたポリエステル樹脂を使用した。
このとき、作成した樹脂のTgは50℃、分子量は15000であった。なお、Tgの測定は、公知の示差熱走査熱量計で行った。
次いで、このポリエステル樹脂を水溶媒に分散させて水分散ポリエステル樹脂の塗液を準備した。そして、この塗液から乾燥により抽出した樹脂成分に対し、日本電子製JMN EX-400を用いたH-NMR分光法(プロトン-Nuclear Magnetic Resonance spectroscopy)によって成分分析を行った。このときのSIP量は、ポリエステル樹脂における全ジカルボン酸成分に対して16mol%であった。
なお、後述する実験例においても親水基としてSIPを用いているが、本発明では塗液内において親水基が-SO-の状態で溶解すればよいので、スルホン酸Na塩に限られずスルホン酸Li塩など他のスルホン酸塩にも同様の原理が当てはまる。かような観点から換言すれば、本発明の技術的範囲は、上記で用いたスルホン酸Na塩に限られず他のスルホン酸塩にも拡張されることは容易に推測できると言える。
上記構成のポリエステル樹脂80wt%とコロイダルシリカ(シリカ平均粒径:4nm~6nm)20wt%とを含有する塗液を、公知の#14バーコーターを用いて金属板上に塗布した。塗布量は、乾燥後の樹脂の厚みが6μmとなるように調整した。次いで、金属板1の温度を110℃となるように加熱し、塗液中の水分を蒸発させることにより乾燥させ、樹脂被覆金属板を作成した。
なお、上記では#14バーコーターを用いて樹脂の厚みが6μmとなるように塗液を金属板上に塗布したが、本実験例においては、乾燥後の樹脂の厚みが2μmとなるように塗布する際には#3バーコーターを用い、また、乾燥後の樹脂の厚みが1μmとなるように塗布する際には#2バーコーターを用いて塗布した。
また、表2の実験例No.2-1に示す2層の樹脂被覆金属板は、以下のようにして作製した。まず、ポリエステル樹脂層Bとして、樹脂種「ポリエステルA1」を選択し、炭素系粒子としてアセチレンブラックを表2に示す割合で混合して塗液を得た。この塗液を、金属板1上に、乾燥後の樹脂の厚さが1μmとなるように塗布した。次いで、アクリル樹脂50wt%とコロイダルシリカ(シリカ平均粒径:4nm~6nm)50wt%とを含有する塗液を、乾燥後の樹脂の厚さが2μmとなるように金属板上に公知の#3バーコーターを用いて塗布し、乾燥して2層の樹脂被覆金属板を得た。
なお、乾燥後の有機樹脂層の重さはポリエステルA1形成後が1.37g/mであり、アクリル樹脂形成後の増加分が3.2g/mであった。なお、有機樹脂層の厚みと重さは次のように換算可能である。アクリル樹脂層については上述の実験例No.1-1と同様であるため割愛する。
ポリエステルの比重を1.3g/cm、アセチレンブラックの比重を1.8g/cmとすると、単位重量当たりの体積[cm/g]は、ポリエステルが0.76、アセチレンブラックが0.55となる。ポリエステル90wt%、アセチレンブラック10wt%配合した皮膜の単位重量当たりの体積は0.73cm/gとなる。[cm/g]は[μm/(g/m)]と等価であるから、下記のように厚みに換算可能である。
0.73[μm/(g/m)]×1.37[g/m]=1.0[μm]
表2の実験例No.3-1に示す2層の樹脂被覆金属板は、以下のようにして作製した。まず、金属板1として、厚さ0.3mmのステンレス板(SUS304、以下「SUS板」とも表記する。)を準備した。該SUS板は、耐力255MPa、引張強さ590MPa、伸び60%である。該SUS板は公知の方法により、アルカリによる電解脱脂、酸洗、およびドライヤによる乾燥を行った。
次に、SUS板上に、上記実験例No.2-1と同様にして2層の有機樹脂層を形成することにより、樹脂被覆金属板を作製した。
表2中に示すその他の樹脂被覆金属板も、上記と同様の方法により準備した。
Figure 0007258024000001
[温間動摩擦係数(μ)の測定及び評価]
得られた表2に示される樹脂被覆金属板に対し、温間プレス成形を想定して、樹脂被覆金属板を250℃にて加熱を行った状態で、動摩擦係数(μ)を測定した。測定は、トライボギア表面性測定機TYPE:14(新東科学社製)を使用し、ボール圧子(SUS鋼球、直径10mm)を用いて、負荷荷重200gf、移動速度100mm/minの条件で行った。
その後、測定結果を基にして以下のように評価した。評価結果を表2に示す。
◎:μ=0.01~0.15
○:μ=0.16~0.19
●:μ=0.20~0.25
△:μ=0.26以上
[加熱時のタック試験、及び評価]
得られた表2に示される樹脂被覆金属板に対し、温間プレス成形を想定して、250℃にて加熱を行った状態で、以下のようなタック性(粘着力)の評価を行った。具体的には、樹脂被覆金属板の試験片(5cm四方)を、250℃に加熱したホットプレート上に載置して金属板の方向から加熱した。加熱後に、ガラス棒を有機樹脂層の表面に接触させてタック性(粘着力)の有無を評価した。タック性(粘着力)が無い場合には、温間プレス成形時において金型に樹脂が付着する可能性が低く、良好と判断した。
○:タック無し(ガラス棒に樹脂被覆金属板がくっつかない)
×:タック有り(ガラス棒に樹脂被覆金属板がくっつき、目視確認可能レベルで浮く)
Figure 0007258024000002
表2の結果より、以下のように評価することができる。
まず、温間プレス成形時において、温間動摩擦係数(μ)が高い場合には、金型と樹脂被覆金属板の界面の滑りが悪く、温間プレス成形が困難である可能性が高いと予測できる。
また、タック試験でタック有りと判断された場合、温間プレス成形時において、樹脂が金型に付着したり、樹脂被覆板の金属板が露出したりする可能性があるため、温間プレス成形が困難であると予測できる。
この点を鑑みると、表2によれば、有機樹脂層における表層(温間プレス成形時に金型と接触する層)がアクリル樹脂であり、且つ、含有されるシリカの平均粒径が10nmであった場合に、温間動摩擦係数(μ)及びタック性の両方が好適であり、温間プレス成形において優れた成形性を有すると評価することができる。
[樹脂の耐熱性試験および評価]
次に、表1に示す樹脂種のうち、表3に示すアクリル樹脂とポリエステル樹脂の耐熱性について以下のように耐熱性試験を行った。
具体的には、金属板(アルミ板)の表面に、各樹脂を5μm厚みに積層した樹脂被覆金属板上に、重さ0.15gfのセラミックリング及び10gの分銅を載置した。これを250℃のホットプレート上に金属板を加熱するように載置した。1分後に樹脂被覆金属板をホットプレートから降ろし、室温まで冷却した。その後、セラミックリングを樹脂被覆金属板上から取り除き、樹脂の凹み深さ(沈み込み深さ)を測定した。凹み深さの測定には、3次元表面粗さ形状測定機(東京精密製、サーフコム1400-3DF)を使用した。任意の0°及び90°方向でトレースし、検出された凹み4つの平均値を凹み深さとして、下記基準にて耐熱性を評価した。結果を表3に示す。
○:3.0μm未満
×:3.0μm以上
Figure 0007258024000003
表3の結果より、以下のように評価することができる。すなわち、有機樹脂層における表層(温間プレス成形時に金型と接触する層)が250℃加熱時の凹み深さが3.0μm未満であるアクリル樹脂である場合、温間プレス成形時において加工の力が加わった際も、含有されるシリカが樹脂中で流動しにくいと予測できる。そのため、金型と有機樹脂層との接触において、好適な摩擦状態を維持することができ、温間プレス成形時における成形性が良好であると評価できる。
[温間摺動性試験及び評価]
得られた樹脂被覆金属板に対し、以下のような条件で温間摺動性試験及び評価を行った。まず、金属板(アルミニウム板)を143mm×20mmの短冊状にカットし試験片とした。次に試験片を、230℃に加熱したシワ抑えに置いて、さらに250℃に加熱したダイを静置した。図7に示すように、シワ抑え力を印加し、3mm/minの速さで23mmの成形高さまでパンチを移動させ、成形の可否を確認した。なお、パンチ及びダイの条件は以下のとおりとした。
パンチ(直径=30mm、先端R=3mm、温度=40℃)
ダイ(穴直径=32mm、肩R=3mm、温度=250℃)
シワ抑え力を5kN~150kNまで段階的に増加させていき、成形可能なシワ抑え力を調べた。このシワ抑え力を大きくできる程、温間プレス加工時の成形性に優れると判断した。結果を表4及び表5に示す。
なお、比較例として行った実験例No.L-1~L-5について以下に説明する。実験例No.L-1~L-5は、有機樹脂層を形成せずに表4及び表5に示されるような条件で温間加工性(温間動摩擦係数、タック性、温間摺動性)の試験及び評価を行ったものである。実験例No.L-1~L-4においては、金属板として実験例No.1-1等と同様のアルミニウム合金板を使用した。一方で実験例No.L-5においては、金属板として実験例No.3-1等と同様のSUS板を使用した。
Figure 0007258024000004
Figure 0007258024000005
表4及び表5の結果より、以下のように評価できる。
まず、図7に示されるように、温間プレス成形において、成形荷重(F)は以下の式により表すことができる 。
成形荷重(F)=摩擦力(μ×BHF) + 曲げ荷重(fb)
ここで、μ=摩擦係数、BHF=シワ抑え力を表す。
上記式は、摩擦係数(μ)が小さい場合、シワ抑え力(BHF)を大きくした場合でも成形可能であることを意味する。
表4において、実験例No.1-1及びNo.1-9を比較すると、アクリル樹脂層Aの厚みを厚くした場合、シワ抑え力(BHF)をより大きくすることができ、その結果温間プレス成形性により優れると評価できる。その理由としては、金型及び樹脂被覆金属板の界面の摩擦係数μが減少し、プレス成形時の材料流動が平易となるためと考えられる。
また、表5において、実験例No.2-2及びNo.2-4を比較すると、有機樹脂層を2層構成とした場合、ポリエステル樹脂層Bに炭素系粒子(カーボンブラック)が含有されることにより、温間摺動性が向上することが示される。
さらに、表5において、実験例No.2-1~No.2-3を比較した場合、アクリル樹脂層Aの厚みや、アクリル樹脂層A中におけるシリカ含有量に応じても温間摺動性が変化することが示される。
さらに、実験例No.3-1を鑑みると、本発明の目的とする温間プレス成形性は金属板の種類を限定せずに達成可能であることが示された。
[導電性試験及び評価]
次に、得られた樹脂被覆金属板に対し、以下のようにして導電性試験を行った。測定装置としては、低抵抗率計(ロレスタGP MCP-T600、三菱化学(株)製)を用い、4探針法による抵抗値を測定した。測定条件は、固定乗数法を用い(補正係数4.532、リミッタ電圧10V)、プローブタイプはESPを使用した。評価基準は下記のとおりとした。結果を表6に示す。
A:抵抗値:<10-3Ω
B:抵抗値:10-3Ω~10+6Ω
C:抵抗値:>10+6Ω
Figure 0007258024000006
表6の結果より、以下のように評価できる。
上記したように、表5においては、有機樹脂層を2層構成とした場合、ポリエステル樹脂層Bに炭素系粒子(カーボンブラック)が含有されることにより、温間摺動性が向上することが示された。
ここで、さらに表6の実験例No.2-2及び実験例No.2-4の比較結果を鑑みると、有機樹脂層を2層構成とした場合、ポリエステル樹脂層Bに炭素系粒子(カーボンブラック)が含有されることにより、導通性も向上することが示された。
この結果、本発明により、温間プレス成形時における好ましい成形性と、スポット溶接時における好ましい導通性とを兼ね備える樹脂被覆金属板が提供されることが示された。
[脱膜性試験及び評価]
得られた樹脂被覆金属板に対し、表7に示すように、無加熱、及び、温間プレス成形を想定して「200℃、250℃、300℃」の温度にて10分間の加熱を行った。その後、室温まで冷却した。次いで、アルカリ脱脂剤(日本ペイント社製 EC90)の水溶液(pH:11.2)を用いて、50℃の条件で2分間の浸漬処理(スターラー撹拌500rpm併用)を行うことにより脱膜処理を施した。なお、アルカリ脱脂剤の温度(50℃)は、一般的には皮膜溶解が比較的困難な条件であるという理由で選択した値である。
上記脱脂の後、以下の態様にて脱膜性を評価した。
すなわち、実験例における脱膜性評価は、蛍光X線装置(リガク製ZSX100e)を用い、脱脂後の樹脂被覆金属板を測定した。樹脂皮膜が形成されている場合、すなわち、脱膜が完全でない場合には、C(カーボン)の強度(C-Kα線、ネット強度)が高く検出されることから、脱膜残渣の有無をC強度から判断した。
なお、簡易的な脱膜性の試験としては、以下のように判断できる。すなわち、本実験例のように金属板1としてアルミニウム板を使用した場合、金属板1のC強度は0.3~0.6kcps程度である。そのため、C強度が0.6kcps以下であれば、樹脂皮膜がすべて脱膜しており残渣なしと判断することも出来る。
一方で本実験例においては、より詳細に残渣がないかを確認するため、下記のような計算を用いて脱膜性を評価した。
すなわち、
IA:塗液を塗布する前の金属板1のC強度(脱脂、脱スマッジ(酸洗)後)
IB:塗液を金属板1に塗布してさらに乾燥した後のC強度
IC:温間加工想定の熱履歴を付与した後に脱膜試験を行った後のC強度
としたとき、
脱膜率は (IB-IC+IA)/IB ×100 (%)で表される。
そしてこの計算で求めた脱膜率がそれぞれ下記に示す値の場合、それぞれ1~4と評価する。
1:99.8%以上 完全脱膜、残渣なし
(なお、100%を若干超えることがあるのは基材由来の誤差範囲に依る。また、99.8%以上100%未満も金属板1由来の誤差範囲に依るとして完全脱膜と見做せる。以上を鑑みて、99.8%~100%を超える値を「1」評価とした。)
2:80%以上99.8%未満
3:20%以上80%未満
4:20%未満(脱膜できていない)
Figure 0007258024000007
表7の結果より、以下のように評価できる。
「ポリエステルF」の結果に鑑み、SIP量が3mol%を超える場合に脱膜性の向上が示された。
「ポリエステルG」の結果に鑑み、ポリエステル樹脂のTgが100℃未満の場合、脱膜性の向上が示された。
次に、有機樹脂層を2層構成とした場合においても、同様に脱膜処理を施し、脱膜性を評価した。結果を表8に示す。
Figure 0007258024000008
表8の結果より、以下のように評価できる。
実験例No.2-1~実験例No.2-3は、表5の結果より、温間プレス成形時における優れた成形性が示されたと共に、表6の結果より、スポット溶接時の優れた導通性が示された。また、上記表8の結果より優れた脱膜性が示された。
これらより、本発明により、好ましい成形性・導通性・脱膜性を兼ね備えた温間プレス成形用樹脂被覆金属板が提供されることが示された。
以上から明らかなとおり、本発明の各実験例では温間プレス成形で想定される温度内において、優れた成形性が示された。また、所定の構成により、成形性に加えて、スポット溶接に対して必要とされる導通性や、温間プレス成形で想定される温度の加熱後の脱膜における優れた脱膜性が示される結果となった。
本発明の各実験例では、樹脂にワックスを含有していないため、温間プレス成形時の加熱に対して皮膜の成分が揮発することがなく、作業環境の問題が改善され得る。
なお上記した実施形態と各実験例は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
以上説明したように、本発明の樹脂被覆金属板、及び樹脂被覆フィルムは、例えば温間プレス成形などで優れた成形性を示すものである。また、所定の構成により、成形性に加えて、スポット溶接に対して必要とされる導通性や、温間プレス成形で想定される温度の加熱後の脱膜における優れた脱膜性を両立し得るものでおり、自動車や電子機器を含む幅広い分野の産業への適用が可能である。
1 金属板
10 有機樹脂層
20 有機樹脂層
30 有機樹脂層
100 樹脂被覆金属板
200 樹脂被覆金属板
300 樹脂被覆金属板
A アクリル樹脂層
B ポリエステル樹脂層

Claims (9)

  1. 金属板と、
    前記金属板上に形成されるアクリル樹脂層と、
    前記金属板と前記アクリル樹脂層との間に介在するポリエステル樹脂層と、
    を含み、
    前記アクリル樹脂層はアクリル樹脂中に平均粒径が10nm未満のシリカが含有されてなり、
    前記ポリエステル樹脂層には第1炭素系粒子が含有されてなることを特徴とする、温間プレス成形用樹脂被覆金属板。
  2. 前記ポリエステル樹脂層は、親水基としてスルホン酸塩を含有し、且つ、ガラス転移温度(Tg)が100℃未満である請求項に記載の温間プレス成形用樹脂被覆金属板。
  3. 前記スルホン酸塩は、前記ポリエステル樹脂層における全ジカルボン酸成分に対して4mol%以上である請求項に記載の温間プレス成形用樹脂被覆金属板。
  4. 前記スルホン酸塩は、ナトリウム塩である請求項又はに記載の温間プレス成形用樹脂被覆金属板。
  5. 前記ナトリウム塩は、5-スルホイソフタル酸ナトリウム塩である請求項に記載の温間プレス成形用樹脂被覆金属板。
  6. 前記第1炭素系粒子が前記ポリエステル樹脂層に対して4~30重量%含有されてなる請求項1~5のいずれか一項に記載の温間プレス成形用樹脂被覆金属板。
  7. 前記アクリル樹脂層に第2炭素系粒子が0.1重量%未満含有されてなる請求項1~6のいずれか一項に記載の温間プレス成形用樹脂被覆金属板。
  8. 前記アクリル樹脂層の厚みは0.5μm~3.0μmである請求項1~7のいずれか一項に記載の温間プレス成形用樹脂被覆金属板。
  9. 前記アクリル樹脂層に前記シリカが10~70重量%含まれてなる請求項1~8のいずれか一項に記載の温間プレス成形用樹脂被覆金属板。
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