JP7257747B2 - 制震構造 - Google Patents
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これに対し、制震装置の設置台数を少なくし、建築計画上の自由度を向上させた制震構造も知られている(例えば、特許文献1参照)。
このように、本発明では、制震装置の減衰力を効率的に作用させることができるため、制震装置の設置台数を少なくすることができる。
このような構成とすることにより、制震装置の減衰力を多層構造物の図心を中心として作用させることができる。
このような構成とすることにより、コア部と基礎部との水平方向の相対変位を効率よく低減させることができる。
図1に示すように、本実施形態による制震構造1は、多層構造物2に採用されている。図2および図3に示すように、多層構造物2は、平面視形状が正方形に構築されている。多層構造物2の平面形状の正方形の辺が延びる方向をX方向、Y方向とする。
多層構造物2は、基礎部3と、基礎部3の上に設けられた多層構造の本体部7と、を有している。本体部7のうちの下部側を下層部分71とし、上部側を上層部分72とする。本実施形態では、下層部分71は、1階から6階までの6層の部分とし、上層部分72は、7階以上の部分とする。
下層部分71は、コア部4と周辺架構部5とを有している。
コア部4は、多層構造物2の平面形状をX方向およびY方向それぞれに等しい寸法の3つずつ9分割した中央部に設けられている。周辺架構部5は、コア部4の周囲全体に設けられている。コア部4は、多層構造物2の図心21を中心とするように設けられている。
図4に示すように、コア部4と基礎部3とは、水平方向に相対変位可能に構成されている。本実施形態では、基礎部3にコア部4の下端部近傍が配置されるピット31が設けられていて、ピット31の内周面とコア部4とが離間している。
周辺架構部5と基礎部3とは、連結され水平方向に相対変位しないように構成され、間に制震装置6は設けられていない。
上述した本実施形態による制震構造1では、下層部分71のコア部4が周辺架構部5に囲まれていることにより、コア部4は多層構造物2の内側に配置されている。そして、コア部4と基礎部3との間に制震装置6が設けられていることにより、制震装置6による減衰力を多層構造物2の内側に直接作用させることができる。その結果、地震によって多層構造物2が振動した際に、制震装置6による減衰力が多層構造物2の内側に直接作用するため、多層構造物2全体の振動を抑制することができる。
このように、本実施形態による制震構造1では、制震装置6の減衰力を効率的に作用させることができるため、制震装置6の設置台数を少なくすることができる。
非制震構造および、本実施形態による制震構造について比較を行う。
図5(a)には、非制震構造の下層階の平面図を示し、(b)には、非制震構造の縦断面図を示し、(c)には、本実施形態による制震構造1の下層階の平面図を示し、(d)には、本実施形態による制震構造1の縦断面図を示している。
以下の説明において、Case1は非制震構造8を示し、Case2およびCase3は本実施形態による制震構造1を示している。
Case2は、制震装置6(ダンパー)として慣性質量装置と粘性ダンパーとを並列配置した制震構造1であり、Case3は、制震装置6(ダンパー)として粘性ダンパーを設置した制震構造1である。慣性質量装置および粘性ダンパーは、現実的な使用に想定される慣性質量装置および粘性ダンパーであるものとする。
Case2とCase3とは、制震装置6以外は同じ形態であるものとする。
上記の実施形態と同様に、Case2およびCase3では、多層構造物2の1階から6階までが下層部分71となり、コア部4および周辺架構部5が設けられ、多層構造物2の7階以上が上層部分72となっている。コア部4と周辺架構部5とは、間にクリアランス43が設けられ離間している。
コア部4、周辺架構部5の質量は、その面積に比例して分配されている。
Case2およびCase3におけるコア部4、周辺架構部5および上層部分72の剛性は、その面積に応じて配分され、コア部4についてはブレースを設置するなどして、剛性が割り増しされている。つまり、コア部4の面積に対するコア部4の剛性は、その周辺部の面積に対する周辺部の剛性に比べて割増しされている。
減衰装置の減衰は、初期剛性比例型で1次固有振動数に対して2%に設定されている。
入力地震動は、超高層建物の設計で多用されてきたセンター波L2、解析時間は120秒とする。
図7および図8から、Case2、3は、ともにCase1に比べて応答低減が認められることがわかる。また、図9から、ダンパーの台数や、コア部4と周辺架構部5とのクリアランス43の寸法が現実的な数値に収まっていることがわかる。
図10には、Case4の解析モデルの概要を示す。コア部4は、X方向の一方の端部近傍でY方向の中央部に設けられている。
図11には、各階の回転慣性モーメント、および柱位置での水平剛性の諸元を示す。
Case4の解析モデルには、Case2の並進質量に加え、各階の各床の回転慣性モーメントを多層構造物2の図心21に設定した。また、Case4の解析モデルでは、Case2の水平剛性を柱位置(コア部4は4本、周辺架構部5は16本)に均等配分し、水平2方向(X方向、Y方向)のばねを定義した。地震波の入力方向はY方向とする。
Case4では,コア部4が多層構造物2の図心21からずれた位置に配置されていることにより上層階に捩れが生じ,外構面の層間変形はCase2に比べて増減するが,その差は1割程度に留まることが分かる。
以上より、本実施形態による制震構造1は、建物の建築計画の自由度の確保、制震装置6(ダンパー)の台数に配慮しながら、地震応答の低減を図る上で効果的であることがわかる。また,本実施形態による制震構造1は、コア部4が本体部7の図心21からずれて多層構造物2に対してある程度偏在していても有効であることがわかる。
例えば、上記の実施形態では、多層構造物2の平面視形状が正方形であるが、正方形以外の長方形や、凹凸のある形状であってもよい。また、多層構造物2の階数は、適宜設定されてよく、コア部4が設けられる下層部分71の層数(階数)も適宜設定されてよい。
また、上記の実施形態では、コア部4の全周に周辺架構部5が設けられているが、コア部4の周囲の少なくとも一部に周辺架構部5が配置されていればよい。
また、上記の実施形態では、コア部4は、多層構造物2の図心21を中心として設けられているが、多層構造物2の図心21とずれた位置に設けられていてもよい。
2 多層構造物
3 基礎部
4 コア部
5 周辺架構部
6 制震装置
7 本体部
21 図心
43 クリアランス
71 下層部分
72 上層部分
Claims (3)
- 基礎部と、前記基礎部の上部に設けられた多層構造の本体部と、を有する多層構造物の制震構造において、
前記本体部の下部側となる下層部分は、ブレースを備えたコア部と、
前記コア部の周囲に設けられた周辺架構部と、を有し、
前記コア部と前記周辺架構部との間には、クリアランスが形成され、
前記コア部と前記基礎部との間にのみ、前記コア部と前記基礎部との水平方向の相対変位を低減させる制震装置が設けられ、
前記周辺架構部と前記基礎部とは連結され、水平方向に相対変位しないように構成されていることを特徴とする制震構造。 - 前記コア部は、平面視において前記多層構造物の図心を中心として設けられていることを特徴とする請求項1に記載の制震構造。
- 前記制震装置は、慣性質量装置と、粘性ダンパーとを有し、
前記慣性質量装置と、前記粘性ダンパーとが並列配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の制震構造。
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