JP7022515B2 - 制振建物 - Google Patents
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Description
例えば、耐震構造は、特別な装置を用いる必要がないため数多くの建物に採用されているが、大地震時に建物の一部にひび割れや破壊が起きることを予め許容した構造形式であるため、修復や建て替えが必要であった。
また、免震構造は、建物に作用する地震エネルギーを免震装置に集中的に吸収させる構造である。免震装置の上部側に設ける建物の柱梁架構については、地震時に一部が降伏することを前提とするものではないので、細径の柱や梁が実現可能であった。例えば、特許文献1には、第1構造体を支持する第1免震層と、第1構造体上に設けられ、第2構造体を支持する第2免震層とを備える免震建物が開示されている。しかし、免震建物の場合、居住空間とは異なる階層に免震層を設ける必要があるため、建物が免震層の上階と下階とに分断されてしまい、吹き抜け空間が設けられる建物には不向きである。
また、制振構造は、当該階と上下階との間に制振部材(ダンパー、壁、ブレース)を配置して、柱梁架構より先に制振部材を降伏させて地震エネルギーを吸収させるものである。柔構造である超高層建物では、層間変形量が大きいために制振部材が有効であり、制振構造が数多く採用されてきた。特に、高層建物の場合、コア部を構成する柱梁構面部分に複数階に亘ってダンパー付きブレースを設けて、ダンパーの変形により地震エネルギーを吸収させる各階設置型ダンパー方式の制振構造が採用される場合がある。例えば、特許文献2には、所定階の水平剛性を所定階以外の他の階の水平剛性よりも小さくするとともに、当該階に粘性ダンパーを設けてエネルギー吸収率を高める制振建物(ソフトファーストストーリー建物)が開示されている。単一階のみ、または複数階に亘る所定階のみを柔構造としたソフトファーストストーリー建物の場合、地震発生時に建物が一方向側のみに大きく揺れる1次固有モードに対しては効率的であるものの、建物の上層階において多方向に複雑に変形する2次、3次固有モード応答に対しては、効果的に変形を集中させることが困難であった。
前記課題を解決するために、第一の発明の制振建物は、複数の集中制振層が高さ方向に間隔をあけて設けられた制振建物であって、下層階側の下段集中制振層と上層階側の上段集中制振層との間、及び前記上段集中制振層の上層階には、当該上段集中制振層及び前記下段集中制振層より水平剛性が高められた一般層が形成されており、前記一般層は、鉄骨柱と鉄骨造の梁とブレースとにより形成されたブレース構造であり、前記集中制振層には、吹き抜け空間を囲む吹抜け柱梁構面、及び/または、柱間距離が上下階の柱間距離よりも長い長スパン柱梁構面が設けられており、前記吹抜け柱梁構面及び/または前記長スパン柱梁構面は、鉄骨柱と鉄骨造の梁とが剛結合されたラーメン構造により構成されていて、エネルギー吸収装置が設置されており、前記集中制振層は、単層階及び/または連続した複層階にて形成され、前記下段集中制振層の水平剛性が、前記上段集中制振層の水平剛性よりも小さく、前記下段集中制振層及び前記上段集中制振層を設けることで、単一層のみに前記集中制振層を設ける場合に比べて、1次固有周期が長期化されていることを特徴としている。
かかる制振建物によれば、地震発生時等に生じる建物の変形を、集中制振層に集中させることで、他の階に生じる応答変形量、及び揺れの応答加速度を低減し、建物の構造安全性能を確保することができる。また、当該制振建物によれば、少ない制振装置により建物の変形を集中制振層に吸収させることができる。
また、エネルギー吸収装置が設けられた集中制振層を複数段備えているため、地震発生時に生じる1次固有モード(大きく揺れる方向を示す振動形態)だけではなく、2次固有モード、3次固有モードであっても、他の階に生じる建物の応答変形量を低減することができる。よって、結果として、建物の最上階での応答変形量を抑制できる。
なお、吹き抜け空間または長スパン柱梁架構を有する建物は、柱梁架構が略均等に配置された建物に比べて、水平方向の剛性が小さくなることが多いため、柱の高剛性化や柱梁架構内に耐震壁を設置するなどして水平剛性を増大させるのが一般的である。一方、本発明の制振建物によれば、複数階に跨って集中的に制振部材を設置することで、地震エネルギーを効率的に吸収できるため、従来の建物のように、柱の高剛性化や耐震壁の増設を行うことで水平剛性を増大させて地震荷重にせん断抵抗させる必要がない。
かかる制振建物によれば、上述の作用効果に加えて、集中制振層の水平剛性が、当該集中制振層の上下階の水平剛性より小さいことで、集中制振層に応答変形を集中させて大変形を生じさせることができる。よって、本発明の制振建物では、各階設置型ダンパー方式にて地震エネルギーを吸収させる場合に比べて、集中制振層に配置されたエネルギー吸収装置によって効率的に地震エネルギーを吸収することができる。
また、第三の発明の制振建物では、前記エネルギー吸収装置は、ブレースの上部両側に複数段配設されていることを特徴とする。
かかる制振建物によれば、上述の作用効果に加えて、ブレース上端部の左右両側にエネルギー吸収装置を多段配置することで、特殊な大口径サイズの制振装置を使用しなくても、比較的小口径サイズの制振装置であっても高い減衰性能を確保することができる。また、比較的小口径サイズの制振装置を使用すれば、制振装置を居室側に突出させることなく、柱梁架構の架構厚さ内に収めることができるために、建物内における居住空間の配置計画上の自由度を確保できる。
具体的には、第一実施形態は、吹き抜け空間を囲む1階~2階に至る柱梁構面内と、吹き抜け空間の上層階側の柱梁構面内に、其々エネルギー吸収装置が設けられた2重に集中制振層を備えた制振建物である(図1~図3)。その第一実施形態の変形例(図4)は、吹き抜け空間が建物外周面に接して設けられる点が、第一実施形態と異なる。
また、第二実施形態の制振建物(図7、図8)では、吹き抜け空間の上層階側の長スパン柱梁構面内にエネルギー吸収装置が設置される点が、第一実施形態と異なる。
第三実施形態の制振建物(図9)は、中高層建物の内部側に、当該中高層建物と分断された新たな低層建物があり、その低層建物の上面に下層階側のエネルギー吸収装置が設置されるとともに、中高層建物の上層階側の柱梁構面内にエネルギー吸収装置が設置される点が、第一、第二実施形態と異なる。第四実施形態の制振建物(図10)は、中高層建物の上層階側の長スパン柱梁構面内にエネルギー吸収装置が設置される点が、第一、第二、第三実施形態と異なる。
以下、添付図面を参照して、本発明による制振建物の各構成と、制振性能に関する検証解析結果について、説明する。
第一実施形態の制振建物1は、図1(a)~(c)に示すように、建物下部に吹き抜け空間11を有する高層建物である。
図1(a)は制振建物1の軸組図(図1(b)および(c)のC-C面)であり、図1(b)は(a)の制振建物1における下段集中制振層2のA-A平断面図で、図1(c)は(a)の制振建物における上段集中制振層3のB-B平断面図である。本実施形態の吹き抜け空間11は、2階(1階の床から2階の天井)分の高さを有しているが、複数階分の高さを有していれば吹き抜け空間11の高さ(階層数)は限定されるものではない。吹き抜け空間11は、図1(b)に示すように、制振建物1の平面中央部に形成されている。また、吹き抜け空間11は、必ずしも下層階部分に形成する必要はなく、中層階や上層階に設けてもよい。
図1(a)に示すように、制振建物1には、2段の集中制振層2,3が上下に間隔をあけて設けられている。上下2段の集中制振層2,3のうち、下側に配設された下段集中制振層2は、吹き抜け空間11に対応する階層部分(1階~2階部分)に形成されている。一方、上側に配設された上段集中制振層3は、5階部分に形成されている。なお、下段集中制振層2および上段集中制振層3が配設される階は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
下段集中制振層2と上段集中制振層3との間、および、上段集中制振層3よりも上層階には、一般層4が形成されている。一般層4は、鉄骨柱41と鉄骨造の大梁42とにより形成された柱梁構面43内に鉄骨造のブレース44が配設されたブレース構造とする。ブレース44の上端および下端は、柱と梁の角部または梁の中央部にそれぞれ剛結合されている。すなわち、一般層4は、水平力に対して、ブレース44によって抵抗することで、水平剛性が高められた構造となっている。一方、集中制振層2,3は、一般層4よりも水平剛性が低くなるように形成されていて、地震発生時等に生じる建物の変形を吸収するように構成されている。なお、一般層4は、必ずしも鉄骨造である必要はない。
吹き抜け空間11を囲む柱梁構面23では、隣り合う長柱21同士の間に逆V字状のブレース24が配設されている。ブレース24は、一対のブレース部材241,241を逆V字状に組み合わせることにより形成されている。ブレース部材241の下端は、長柱21の脚部に固定されており、ブレース部材241の上端は、他方のブレース部材231の上端と接合されている。ブレース24の上端は、梁22の下面に横移動可能に取り付けられている。ブレース24の上端部の左右には、エネルギー吸収装置(ダンパー25)がそれぞれ2段ずつ配設されている。ダンパー25の一端は、ブレース24の上端部(ブレース上端部242)に固定されていて、ダンパー25の他端は、接合部材251を介して梁22に固定されている。すなわち、ダンパー25は、吹き抜け空間11を囲む柱梁構面23内に設けられている。なお、ダンパー25の段数は限定されるものではなく、1段でもよいし、3段以上であってもよい。また、ダンパー25の固定方法や配置は限定されるものではなく、例えば、長柱21の側面に他端が固定されていてもよい。本実施形態の吹き抜け空間11を囲む柱梁構面23のうち、吹き抜け空間11を挟んで対向する1対の柱梁構面23aには、ブレース24に代えて接合梁26が配設されている。接合梁26は、2階と2階の床部分にそれぞれ配設されている。接合梁26の両端は、長柱21にピン接合されている。
また、下段集中制振層2では、図1(b)に示すように、制振建物1の外周囲を囲う柱梁構面23のうち、対向する1組の面(図1(b)における左右の辺)に形成された柱梁構面23に対して、吹き抜け空間11を囲む柱梁構面23と同様に、ブレース24およびダンパー25が配設されている。なお、ブレース24およびダンパー25が配設される柱梁構面23の配置は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
上段集中制振層3の柱梁構面33の一部(例えば、吹き抜け空間11の延長線上に形成された柱梁構面33)には、隣り合う柱31同士の間に逆V字状のブレース34が配設されている。ブレース34は、図3に示すように、一対のブレース部材341,341を逆V字状に組み合わせることにより形成されている。ブレース部材341の下端は、柱31の脚部に固定されていて、ブレース部材341の上端は、他方のブレース部材341の上端と接合されている。ブレース34の上端は、梁32の下面に横移動可能に取り付けられている。ブレース34の上端部には、エネルギー吸収装置(ダンパー35)が配設されている。ダンパー35の一端は、ブレース34の上端部(ブレース上端部342)に固定されており、ダンパー35の他端は、取り付け部材351を介して梁32に固定されている。本実施形態のダンパー35は、ブレース34と当該ブレース34に隣接する一方(本実施形態では右側)の柱31との間に横架されている。なお、ダンパー35は、ブレース34の左右に配設されていてもよい。また、ダンパー35は、複数段配設されていてもよい。ブレース34およびダンパー35が設置される柱梁構面33は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
また、集中制振層2,3を上下に2段備えているため、地震発生時に生じる1次固有モード(大きく揺れる方向を示す振動形態)だけではなく、2次固有モードであっても、一般層4に生じる応答変形量を低減することができる。よって、結果として、制振建物1の最上階における応答変形量を抑制できる。
また、制振建物1は、集中制振層2,3によって地震エネルギーを効率的に吸収するため、水平剛性を増大させる必要がなく、経済的である。
図4は、第一実施形態の変形例による制振建物の説明図であり、図4(a)は制振建物の軸組図(図4(b)のD-D面)、図4(b)は(a)の制振建物における下段集中制振層の平断面図である。
第一実施形態では、吹き抜け空間11が制振建物1の平面中央部に形成されていたが、吹き抜け空間11の配置は限定されるものではない。例えば、図4(b)に示すように、制振建物1の外周面に面して吹き抜け空間11が形成されていてもよい。
また、第一実施形態では、下段集中制振層2として、吹き抜け空間11の高さに応じて、ブレース24が1階から2階に跨って配設されているものとしたが(図1(a)参照)、図4(a)に示すように、各階にブレース24およびダンパー25を配設してもよい。
以下、本実施形態の制振建物1を対象に、集中制振層を高さ方向に間隔をあけて2重に設けた2重集中制振建物モデル(実施例)と、単一層のみに集中制振層を設けた1重集中制振建物モデル(比較例)を用いて、建物の制振効果を確認するために、1次~3次固有モード形までの固有値解析と、多質点系振動解析を行った。
図5は、1次~3次固有モードに対する固有周期と振動モード形の比較図であって、(a)は実施例、(b)は比較例である。図6(a)は、建物階数と層間変形角の関係であり、図6(b)は建物階数と層せん断力係数の関係である。
表1に、振動解析を行った解析モデルの諸元を示す。なお、表1に示す各階毎の等価曲げせん断剛性(水平剛性)は、柱や大梁等を線材置換した立体骨組みモデルを用いた荷重漸増解析結果による層せん断力~層間変形角の関係に基づき算出している。
表1に示すように、2重集中制振建物モデル(実施例)は、地上10階、地下5階建ての建物で、1階~2階部分および5階~6階部分に、集中制振層2,3が設けられた多質点系振動モデルである。また、比較例は、実施例の建物を対象とした1~2階のみに集中制振層を形成された多質点系振動モデルである。
振動解析では、地上10階建て建物を11質点系モデルに置換し、代表的な観測地震波(Taft、EW波)を入力地震波として、建物各階の層間変形角と、層せん断力係数を算出した。層間変形角とは、建物の各階ごとの水平変位を階高で除した値であり、原則として層間変形角を1/100以内とするように設計されることが多い。また、地震時に建物の各階に作用す地震荷重(せん断力、または地震層せん断力)は、層せん断力係数に、その階より上層階側の鉛直荷重を乗じた値であり、層せん断力係数は、地震荷重を当該階より上層階側の鉛直荷重で除した値である。よって、層せん断力係数は、建物の上層階ほど大きく揺れるので、生じる加速度も上層階ほど大きくなるので上層階ほど大きくなる傾向であるが、制振効果が高められた建物では小さくなる。
実施例(2重集中制振建物モデル、1、2階、及び5、6階)、及び比較例(1重集中制振建物モデル、1、2階)による集中制振層の水平剛性は、集中制振層と非集中制振層を其々平均剛性モデルとして評価すると、非集中制振層に該当する建物階に比べて、20%程度である。
具体的には、比較例(1重集中制振建物モデル、1、2階)の場合、集中制振層(1、2階)の平均水平剛性は380kN/mmで、非集中制振層(3~10階)の平均水平剛性は2613kN/mmであり、非集中制振層に対する集中制振層の平均水平剛性比は、15%程度である。
また、実施例(2重集中制振建物モデル、1、2階、及び5、6階)の場合、集中制振層(1、2階、及び5、6階)の平均水平剛性は430kN/mm、605kN/mmで、非集中制振層(3、4階、及び7~10階)の平均水平剛性は2200kN/mmであり、非集中制振層に対する集中制振層(1、2階、及び5、6階)の平均水平剛性比は、20%程度と28%程度である。
実施例(2重集中制振建物モデル)を直列バネ形式による4質点系の等価剛性モデルとして評価すると、集中制振層(図1の下段集中制振層2):非集中制振層(図1の一般層4):集中制振層(図1の上段集中制振層3):非集中制振層(図1の一般層4)の等価剛性比は、0.45:2.82、0.62:1.00となった。
実施例(2重集中制振建物モデル)の1次固有周期は、表2に示すように、比較例(1重集中制振建物モデル)の2.00秒より長周期化されて、2.41秒であった。また、実施例の2次固有周期は、1次固有周期と同様に、比較例(0.56秒)より周期が長く、0.76秒であった。
また、図5(b)に示すように、比較例では、1次固有モードについては、集中制振層に変形が集中しているものの、2次固有モードでは、変形集中効果が低かった。一方、実施例では、図5(a)に示すように、1次固有モード、2次固有モード共に下段集中制振層2、上段集中制振層3に変形集中が現れた。したがって、本実施形態の制振建物1によれば、1次固有モード、2次固有モード共に効率的にエネルギーを吸収することが確認できた。また、2次固有モードまでを集中制振モードとすることで、3次固有モードの刺激関数を小さくすることにも成功しており、3次固有モード以上のモードの応答も低減可能であることが確認できる。
固有モードの変形集中率を算出すると、表3に示すように、実施例では、1次固有モード、2次固有モード共に73%であった。一方、比較例では、1次固有モードで55%、2次固有モードで29%であった。したがって、集中制振層を2段にすることで、集中制振層へより変形が集中することが確認できた。
第二実施形態の制振建物1は、図7(a)に示すように、建物下部(1階~2階部分)に吹き抜け空間11を有しているとともに、建物中間階(5階部分)に大空間(大広間)12を有する高層建物である。なお、大空間12の広さは限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
図7(a)は制振建物の軸組図(図7(b)のE-E面)、図7(b)は(a)の制振建物における下段集中制振層の平断面図(図7(a)のF-F断面)である。
制振建物1には、2段の集中制振層2,3が上下に間隔をあけて設けられている。上下2段の集中制振層2,3のうち、下側に配設された下段集中制振層2は、吹き抜け空間11を囲む階層部分(1階~2階部分)に形成されている。一方、上側に配設された上段集中制振層3は、大空間12を有する5階部分に形成されている。なお、下段集中制振層2および上段集中制振層3が配設される階は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
下段集中制振層2と上段集中制振層3との間、および、上段集中制振層3よりも上層階には、一般層4が形成されている。なお、一般層4および下段集中制振層2の構成は、第一実施形態で示した内容と同様なため詳細な説明は省略する。
なお、第二実施形態では、長スパン柱梁構面36内にブレース34およびダンパー35からなる制振装置を配設する場合について説明したが、図7(b)に示すように、制振装置は、長スパン柱梁構面36と直交する柱梁構面33内に配設してもよい。
第三実施形態の制振建物1は、建物下部に吹き抜け空間11を有する高層建物である。本実施形態の吹き抜け空間11は、図9に示すように、2階(1階の床から2階の天井)分の高さを有しているが、複数階分の高さを有していれば吹き抜け空間11の高さ(階層数)は限定されるものではない。吹き抜け空間11は、制振建物1の平面中央部に形成されている。
制振建物1には、2段の集中制振層2,3が上下に間隔をあけて設けられている。本実施形態の制振建物1では、上下2段の集中制振層2,3のうち、下側に配設された下段集中制振層2は、吹き抜け空間11に対応する階層部分(1階~2階部分)に形成されている。一方、上側に配設された上段集中制振層3は、4階部分に形成されている。
下段集中制振層2と上段集中制振層3との間、および、上段集中制振層3よりも上層階には、一般層4が形成されている。一般層4の詳細は、第一実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
低層構造体27の上面は、ダンパー25および免震装置28を介して、上階の一般層4と接続されている。一方、低層構造体27の側面は、隣接する他の躯体とは分離されている。すなわち、本実施形態の低層構造体27は、上面に設けられたダンパー25および免震装置28を除いて、制振建物1の他の躯体とは分離されている。なお、低層構造体27は、側面にダンパー25等が配設されていてもよい。
また、上層部分の軸力の一部を、免震装置28を介して低層構造体27により支持しているため、建物に作用する地震荷重を低減させることができる。
また、低層構造体27の上面と一般層4の下面との間に介設された免震装置28により、各階ごとの層間変位量ではなく、複数階に亘った大きな相対水平変位量を取り込むことができる。その結果、建物の安全性能を高めることができる。
低層構造体27は、上端部が免震装置28を介して一般層4に接続されているため、地面(基礎)から片持ち形式で支持されている場合に比べて固定度が高く、合理的に設計をすることができる。
この他の本実施形態の制振建物1の作用効果は、第一実施形態の制振建物1と同様なため、詳細な説明は省略する。
第四実施形態の制振建物1は、図10に示すように、建物下部(1階~2階部分)に吹き抜け空間11を有しているとともに、建物中間階(4階部分)に大空間(大広間)12を有する高層建物である。なお、大空間12の広さは限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
制振建物1には、2段の集中制振層2,3が上下に間隔をあけて設けられている。本実施形態の制振建物1では、上下2段の集中制振層2,3のうち、下側に配設された下段集中制振層2は、吹き抜け空間11に対応する階層部分(1階~2階部分)に形成されている。一方、上側に配設された上段集中制振層3は、大空間12を有する4階部分に形成されている。なお、下段集中制振層2および上段集中制振層3が配設される階は限定されるものではなく、適宜決定すればよい。
下段集中制振層2と上段集中制振層3との間、および、上段集中制振層3よりも上層階には、一般層4が形成されている。一般層4の詳細は、第一実施形態で示した内容と同様なため、詳細な説明は省略する。
低層構造体27の上面は、ダンパー25および免震装置28を介して、上階の一般層4と接続されている。一方、低層構造体27の側面は、隣接する他の躯体とは分離されている。すなわち、本実施形態の低層構造体27は、上面に設けられたダンパー25および免震装置28を除いて、制振建物1の他の躯体とは分離されている。なお、低層構造体27は、側面にダンパー25等が配設されていてもよい。
本実施形態の制振建物1によれば、第三実施形態の制振建物1と同様の効果を得ることができる。
2 下段集中制振層
21 長柱
22 梁
23 柱梁構面
24 ブレース
25 ダンパー(エネルギー吸収装置)
27 低層構造体
3 上段集中制振層
31 柱
32 梁
33 柱梁構面
34 ブレース
35 ダンパー
4 一般層
Claims (2)
- 複数の集中制振層が高さ方向に間隔をあけて設けられた制振建物であって、
下層階側の下段集中制振層と上層階側の上段集中制振層との間、及び前記上段集中制振層の上層階には、当該上段集中制振層及び前記下段集中制振層より水平剛性が高められた一般層が形成されており、
前記一般層は、鉄骨柱と鉄骨造の梁とブレースとにより形成されたブレース構造であり、
前記集中制振層には、吹き抜け空間を囲む吹抜け柱梁構面、及び/または、柱間距離が上下階の柱間距離よりも長い長スパン柱梁構面が設けられており、
前記吹抜け柱梁構面及び/または前記長スパン柱梁構面は、鉄骨柱と鉄骨造の梁とが剛結合されたラーメン構造により構成されていて、エネルギー吸収装置が設置されており、
前記集中制振層は、単層階及び/または連続した複層階にて形成され、
前記下段集中制振層の水平剛性が、前記上段集中制振層の水平剛性よりも小さく、
前記下段集中制振層及び前記上段集中制振層を設けることで、単一層のみに前記集中制振層を設ける場合に比べて、1次固有周期が長期化されていることを特徴とする、制振建物。 - 前記エネルギー吸収装置は、ブレースの上部両側に複数段配設されていることを特徴とする請求項1に記載の制振建物。
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