JP7291653B2 - 建物 - Google Patents

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本発明は、内部に制振ダンパを有する建物に関する。
従来より、建物内部にダンパなどの制振装置を備えた建物がある(特許文献1参照)。
特許文献1には、建物内部の吹き抜け空間に揺動体が配置された建物が示されている。この揺動体の上端部は、建物の上部に固定され、その下端部は、オイルダンパを介して建物下部に連結されている。この建物では、地震や風によって建物に外力が作用し、建物に曲げ変形が生じると、オイルダンパがこの揺れを吸収する。
特許文献2には、吹き抜け部を囲む柱梁架構にダンパが設けられた制振建物が示されている。吹き抜け部には、複数階にわたって形成されてブレースが設けられている。ブレースの上部は、ダンパを介して、吹き抜け部の天井部の柱梁架構に連結されている。
特許文献3には、構造物は、鉄筋コンクリート造の中層部と、中層部の下に設けられる鉄骨造の低層部と、中層部の上に設けられる鉄骨造の高層部と、を備える。高層部には、斜めに延びる制振装置が設けられる。
特開2010-261247号公報 特開2018-135655号公報 特開2019-100156号公報
本発明は、吹き抜け空間を有しかつ優れた制振性能を確保できる建物を提供することを課題とする。
本発明者らは、吹き抜け空間を有する建物を対象とする制振構造として、吹き抜け空間を挟んで対向する建物内壁面同士の間または同一の建物内壁面内に、複数階を跨ぐように斜め方向に制振ダンパを設置することで、居室空間を狭めることなく、複数階の間で生じる相対変形によって振動エネルギーを吸収して高い制振性能を確保できる点に着眼して、本発明に至った。
第1の発明の建物(例えば、後述の建物1、1A、1B、1C)は、内部に制振ダンパ(例えば、後述の制振ダンパ40、40C)を有する建物であって、内部の吹き抜け空間(例えば、後述の吹き抜け空間20)に面する所定位置を第1点(例えば、後述の第1点P)とし、前記吹き抜け空間に面するとともに前記第1点から上下方向に複数階離れてかつ水平方向に所定距離だけ離れた位置を第2点(例えば、後述の第2点Q)とし、前記制振ダンパは、前記第1点と前記第2点との間に設けられることを特徴とする。
この発明によれば、吹き抜け空間に面して斜め方向に制振ダンパを配置したので、地震や強風により建物に揺れが発生しても、この建物の揺れを制振ダンパが吸収するから、建物の揺れを低減できる。よって、優れた制振性能を確保できる。
第2の発明の建物は、前記吹き抜け空間に面してかつ上下階の梁(例えば、後述の片持ち梁22A、22B、22C、22D)同士の間に設けられた間柱(例えば、後述の間柱30A、30B、30C、30D)を備え、前記第1点および前記第2点は、前記間柱と前記梁との接合部に設けられることを特徴とする。
この発明によれば、吹き抜け空間に面して上下階の梁同士の間に間柱を設け、この間柱と梁との接合部に制振ダンパを設けた。よって、間柱を介して、制振ダンパの圧縮力および引張力を各階の構造体である梁に伝達できるので、建物の制振性能を向上できる。
第3の発明の建物は、前記制振ダンパは、粘性ダンパであり、前記間柱の剛性は、前記間柱が接合される前記梁の剛性よりも大きいことを特徴とする。
この発明によれば、間柱の剛性をこの間柱が接合される梁の剛性よりも大きくしたので、間柱を介して、各階の梁に制振ダンパの圧縮力および引張力を均等に負担させることができる。
本発明によれば、吹き抜け空間を有しかつ優れた制振性能を確保できる建物を提供できる。
本発明の第1実施形態に係る建物の平面図である。 図1の建物のA-A断面図である。 建物の三次元モデルの縦断面図である。 建物の地震時の挙動をシミュレーションした結果を示す図である。 本発明の第2実施形態に係る建物の縦断面図である。 本発明の第3実施形態に係る建物の縦断面図である。 本発明の第4実施形態に係る建物の平面図である。 本発明の変形例に係る建物の平面図である。
本発明者らは、吹き抜け空間を有する建物を対象とする制振構造として、吹き抜け空間を挟んで対向する建物内壁面同士の間または同一の建物内壁面内に、複数階を跨ぐように斜め方向に制振ダンパを設置した建物である。この発明の特徴は、制振ダンパの両端が、複数階を跨いで間柱と梁との接合部に設けられる点である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態の説明にあたって、同一構成要件については同一符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る建物1の平面図である。図2は、図1の建物1のA-A断面図である。
建物1は、鉄筋コンクリート造の超高層マンションであり、柱10、梁11、床スラブ12を備える。この建物1の内部の中央部には、平面視で矩形状の吹き抜け空間20が設けられるとともに、この吹き抜け空間20を囲んで矩形枠状の床スラブ12からなる共用廊下21が設けられている。
共用廊下21は、4つの直線廊下21A、21B、21C、21Dで構成されている。直線廊下21Aは、隣り合う一対の片持ち梁22Aで支持されている。また、直線廊下21Cは、隣り合う一対の片持ち梁22Cで支持されている。これら片持ち梁22Aと片持ち梁22Cとは、互いに対向している。
上下に位置する片持ち梁22A、22Cの先端部同士の間には、間柱30A、30Cが設けられている。これら間柱30A、30Cは、吹き抜け空間20に面していることになる。間柱30A、30Cの剛性は、これら間柱30A、30Cが接合される片持ち梁22A、22Cの剛性よりも大きくなっている。
片持ち梁22Aと間柱30Aとの接合部(第1点Pとする)と、この片持ち梁22Aから離れた片持ち梁22Cと間柱30Cとの接合部(第2点Qとする)と、の間には、制振ダンパ40が設けられている。具体的には、第1点Pが設けられる片持ち梁22Aと間柱30Aとの接合部と、第2点Qが設けられる片持ち梁22Cと間柱30Aとの接合部とは、上下に3層離れてかつ互いに対向している。
制振ダンパ40は、粘性ダンパであり、軸方向の振動を吸収するものである。なお、図3に示すように、間柱30Aおよび制振ダンパ40は、建物1の1階部分に必ずしも設置する必要はなく、建物1の中間階に設置できればよい。
上述の建物1の三次元モデルMに対して地震時の挙動をシミュレーションした。
この三次元モデルMは、平面視で図1のような構造であり、縦断面視で図3のような構造である。具体的には、共用廊下を支持する片持ち梁を、400mm×800mm×2000mmの鉄筋コンクリート部材とし、この片持ち梁の剛性Kbを、154KN/mmとした。また、間柱を、250mm×12mm×3000mmの鉄骨部材とし、この間柱の剛性Kcを、781KN/mmとした。つまり、間柱の剛性を片持ち梁の剛性の約5倍とした。また、図3に示すように、制振ダンパは、2層置き(または3層置き)に架け渡して、この制振ダンパの最大減衰力を150tまたは200tとした。また、入力する地震動は、巨大地震を想定して、国土交通省にて示された設計用長周期地震動(「基整促波のOS2」)を用いた。その結果、図4に示すように、制振ダンパおよび間柱を設けない建物では、建物下層階にて最大層間変形角が1/100を大幅に超えたが、本発明の制振ダンパおよび間柱を設けた建物では、建物の全ての階において最大層間変形角が1/100を下回った。よって、本発明の制振ダンパおよび間柱を設けることにより、最大層間変形角を大幅に抑制できることが判った。
本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)吹き抜け空間20に面して斜め方向に制振ダンパ40を配置したので、地震や強風により建物1に揺れが発生しても、この建物1の揺れを制振ダンパ40が吸収するから、建物1の揺れを低減できる。言い換えると、複数階を跨ぐように斜め方向に制振ダンパ40を設けることで、地震や強風によって生じる建物変形や振動を、複数階の間で生じる相対変形によって吸収できる。よって、優れた制振性能を確保できる。
(2)吹き抜け空間20に面して上下階の片持ち梁22A、22C同士の間に間柱30A、30Cを設け、この間柱30A、30Cが接合された片持ち梁22A、22Cの先端部に制振ダンパ40を設けた。よって、間柱30A、30Cを介して、制振ダンパ40の圧縮力および引張力を各階の片持ち梁22A、22Cに伝達できる。具体的には、制振ダンパ40の両端部が、吹き抜け空間20を挟んで対向する間柱30A、30Cと梁22A、22Cとの接合部分に接合されることで、制振ダンパ40を介して伝達される圧縮力や引張力は、間柱30A、30Cによって各階に伝達される。よって、建物1の制振性能を向上できる。
(3)間柱30A、30Cの剛性をこの間柱30A、30Cが接合される片持ち梁22A、22Cの剛性よりも大きくしたので、間柱30A、30Cを介して、各階の片持ち梁22A、22Cに制振ダンパ40の圧縮力および引張力を均等に負担させることができる。言い換えると、高剛性の間柱30A、30Cを、上下階に亘って、片持ち梁22A、22C同士の間に連続して配置することで、間柱30A、30Cを介して、各階の片持ち梁22A、22Cが一体となって制振ダンパ40を支持する。つまり、制振ダンパ40の両端部が高剛性の間柱30A、30Cに接合されるため、制振ダンパ40が接合された当階のみでなく、間柱30A、30Cを介して、当階の上下階が制振ダンパ40を支持するようになる。
(4)制振ダンパ40を吹き抜け空間20に設けるため、居室の配置計画上の自由度を確保しつつ、地震や強風に対して高い制振性能を有する建物1を実現できる。また、本発明の制振ダンパ40は、新築建物だけでなく、既存建物にも適用可能である。
〔第2実施形態〕
図5は、本発明の第2実施形態に係る建物1Aの縦断面図である。
本実施形態では、所定階において、間柱30Cおよび制振ダンパ40が設けられていない点が、第1実施形態と異なる。
すなわち、x(xは自然数)階では、間柱30Aは設けられているが、間柱30Cおよび制振ダンパ40が設けられていない。
本実施形態によれば、上述の(1)~(4)と同様の効果がある。
〔第3実施形態〕
図6は、本発明の第3実施形態に係る建物1Bの縦断面図である。
本実施形態では、所定階において、間柱30A、30Cの代わりに壁23が設けられている点が、第1実施形態と異なる。
すなわち、y(yは自然数)階および(y+1)階は、機械室フロアであり、居住者の移動が少ないため、間柱30A、30Cが設けられておらず、その代わりに、共用廊下21の吹き抜け空間20に面する部分が壁23で塞がれている。
本実施形態によれば、上述の(1)~(4)と同様の効果がある。
〔第4実施形態〕
図7は、本発明の第4実施形態に係る建物1Cの平面図である。
本実施形態では、制振ダンパ40Cが、互いに対向する片持ち梁22A、22C同士の間ではなく、隣り合う片持ち梁22A~22D同士の間に設けられる点が、第1実施形態と異なる。
すなわち、直線廊下21Bは、隣り合う一対の片持ち梁22Bで支持されている。また、直線廊下21Dは、隣り合う一対の片持ち梁22Dで支持されている。これら片持ち梁22Bと片持ち梁22Dとは互いに対向している。
上下に位置する片持ち梁22B、22Dの先端部同士の間には、間柱30B、30Dが設けられている。これら間柱30B、30Dは、吹き抜け空間20に面していることになる。間柱30B、30Dの剛性は、これら間柱30B、30Dが接合される片持ち梁22B、22Dの剛性よりも高くなっている。
一部の制振ダンパ40Cは、片持ち梁22Aの先端部(第1点P)と、この片持ち梁22Aから上下に3層離れてかつこの片持ち梁22Aに隣接する片持ち梁22B、22Dの先端部(第2点Q)と、の間に設けられている。
また、残りの制振ダンパ40Cは、片持ち梁22Cの先端部(第1点P)と、この片持ち梁22Cから上下に3層離れてかつこの片持ち梁22Cに隣接する片持ち梁22B、22Dの先端部(第2点Q)と、の間に設けられている。
本実施形態によれば、上述の(1)~(4)と同様の効果がある。
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、上述の第1実施形態では、片持ち梁22A(と間柱30Aとの接合部)と、この片持ち梁22Aに対向する片持ち梁22C(と間柱30Cとの接合部)と、の間に制振ダンパ40を設けたが、これに限らず、図8に示すように、隣り合う片持ち梁22A、22C同士の間に制振ダンパ40を設けてもよい。
また、上述の各実施形態では、制振ダンパ40を、吹き抜け空間20を挟んで対向する片持ち梁22A、22C同士の間に設けたが、これに限らず、吹き抜け空間20を構成する建物内壁面の同一壁面内に設けてもよい。
また、上述の各実施形態では、本発明を建物1の共用廊下21で囲まれた吹き抜け空間20に適用したが、これに限らず、建物内のエレベータシャフトや、立体駐車場の車両を格納する空間にも適用してもよい。
1、1A、1B、1C…建物
10…柱 11…梁 12…床スラブ 20…吹き抜け空間
21…共用廊下 21A、21B、21C、21D…直線廊下
22A、22B、22C、22D…片持ち梁 23…壁
30A、30B、30C、30D…間柱
40、40C…制振ダンパ P…第1点 Q…第2点

Claims (2)

  1. 内部に制振ダンパを有する建物であって、
    内部の吹き抜け空間に面する所定位置を第1点とし、
    前記吹き抜け空間に面するとともに前記第1点から上下方向に複数階離れてかつ水平方向に所定距離だけ離れた位置を第2点とし、
    前記制振ダンパは、前記第1点と前記第2点との間に設けられ
    前記吹き抜け空間に面する上下階の梁同士の間には、間柱が設けられ、
    前記第1点および前記第2点は、前記間柱と前記梁との接合部に設けられることを特徴とする建物。
  2. 前記制振ダンパは、粘性ダンパであり、
    前記間柱の剛性は、前記間柱が接合される前記梁の剛性よりも大きいことを特徴とする請求項に記載の建物。
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