JP7256249B2 - コグ付きvベルト - Google Patents
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Description
又は、ベルトに掛かる張力も莫大になるため、ベルトの弾性率を高くするといった対応が必要になる。なお、ベルトの弾性率は、抗張体である心線によって支配されるため、ベルトの弾性率を高くするには、剛性の大きい心線が用いられる。具体的に、心線の剛性を大きくするには、例えば弾性率の高い素材を用いたり、径を太くする他、心線の周回本数を増やすため、ベルト幅を増やしたり、幅が増やせない場合には間隔を狭めて密に配列したりする。そのため、心線を埋設した部位が剛直になってしまう。
そして、いずれの対応も、ベルトの屈曲性が損なわれる方法であって、屈曲変形によって受けるコグ谷の応力は莫大なものになる。
(1) ベルト長手方向に沿ってコグ山とコグ谷が交互に多数設けられたコグ部が、少なくともベルト内周側に設けられ、
ベルト厚みHが19~36mm、コグ高さH1が14~19mmである、コグ付きVベルトであって、
前記ベルト長手方向の断面における前記コグ谷の断面形状は、
連続する複数の円弧が組み合わされてなる底部と、
ベルト厚み方向に対して傾斜する前記コグ谷の側壁と、を備え、
前記底部を構成する複数の円弧は、前記コグ谷の最深部から離れるにつれて、曲率半径が小さくなり、
前記複数の円弧は、前記コグ谷の最深部を通り、前記コグ谷の最深部と両側の前記側壁との3点に接する仮想円よりも大径、かつ、7~10mmの曲率半径R1を有する第1円弧を含む、
ことを特徴とするコグ付きVベルト。
前記第2円弧の曲率半径R2は、1.8~2.5mmである、
(1)に記載のコグ付きVベルト。
前記心線の中心部から前記コグ谷の最深部までの距離である心-谷厚みH2が6~13mm、かつ、前記ベルト厚みHに対する前記心-谷厚みH2の比率が20~40%である、
(1)又は(2)に記載のコグ付きVベルト。
(1)~(3)のいずれかに記載のコグ付きVベルト。
(1)~(4)のいずれかに記載のコグ付きVベルト。
本実施形態に係るローエッジコグドVベルト(コグ付きVベルト)10は、最大規模の農業機械の動力伝達機構(特に、ベルト式変速装置)などに使用される大型サイズのベルトである。図1に示すように、ローエッジコグドVベルト10は、ベルト本体の内周側10iに、ベルト長手方向に沿ってコグ山11とコグ谷12とが交互に並んで形成されたコグ部13を有している。ローエッジコグドVベルト10は、積層構造を有しており、ベルト外周側10oからベルト内周側10i(コグ部13が形成された側)に向かって、補強布14、伸張ゴム層15、芯体層16及び圧縮ゴム層17が順次積層された構成を有する。すなわち、ローエッジコグドVベルト10は、芯体層16のベルト外周側10oに伸張ゴム層15が積層され、芯体層16のベルト内周側10iに圧縮ゴム層17が積層されている。
なお、本実施形態に係るコグ付きVベルト10の上幅Wとベルト厚みHとの関係、すなわち、ベルト厚みHに対する上幅Wの比率(「上幅W/ベルト厚みH」又は「アスペクト比」とも言う。)については特に限定されないが、耐側圧性を確保する観点から、好ましくは1.2~3.8であり、より好ましくは1.5~2.5である。
続いて、ローエッジコグドVベルト(コグ付きVベルト)10の各部に使用可能な材料を列記する。
圧縮ゴム層17は、第1のゴム成分を含むゴム組成物(加硫ゴム組成物)で形成されている。
第1のゴム成分としては、加硫又は架橋可能なゴムを用いることが好ましく、例えば、ジエン系ゴム[天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化ニトリルゴムなど]、エチレン-α-オレフィンエラストマー、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。これらのゴム成分は、単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
圧縮ゴム層17を形成するゴム組成物は、第1の短繊維を更に含んでいてもよい。第1の短繊維としては、ポリアミド短繊維(ポリアミド6短繊維、ポリアミド66短繊維、ポリアミド46短繊維、アラミド短繊維など)、ポリアルキレンアリレート短繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)短繊維、ポリエチレンナフタレート短繊維など)、液晶ポリエステル短繊維、ポリアリレート短繊維(非晶質全芳香族ポリエステル短繊維など)、ビニロン短繊維、ポリビニルアルコール系短繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)短繊維などの合成短繊維や、綿、麻、羊毛などの天然短繊維、及びカーボン短繊維などの無機短繊維などが挙げられる。これら第1の短繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、アラミド短繊維、PBO短繊維が好ましく、アラミド短繊維が特に好ましい。
圧縮ゴム層17を形成するゴム組成物は、加硫剤又は架橋剤(又は架橋剤系)(硫黄系加硫剤など)、共架橋剤(ビスマレイミド類など)、加硫助剤又は加硫促進剤(チウラム系促進剤など)、加硫遅延剤、金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、補強剤(カーボンブラックや、含水シリカなどの酸化ケイ素)、充填剤(クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカなど)、軟化剤(パラフィンオイルやナフテン系オイルなどのオイル類など)、加工剤又は加工助剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィン、脂肪酸アマイドなど)、老化防止剤(酸化防止剤、熱老化防止剤、屈曲き裂防止剤、オゾン劣化防止剤など)、着色剤、粘着付与剤、可塑剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(紫外線吸収剤、熱安定剤など)、難燃剤、帯電防止剤などが挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。なお、金属酸化物は架橋剤として作用してもよい。
ローエッジコグドVベルト10は、第2のゴム成分を含むゴム組成物(加硫ゴム組成物)で形成された伸張ゴム層15を更に含んでいてもよい。
第2のゴム成分としては、第1のゴム成分で例示されたゴム成分を利用でき、好ましい態様も第1のゴム成分と同一である。第2のゴム成分は、第1のゴム成分と異なるゴム成分であってもよいが、通常、第1のゴム成分と同一である。
芯体層16に含まれる心線18は、通常、ベルト幅方向に所定の間隔で配列した撚りコードである。心線18は、ベルト長手方向に延びて配設され、ベルト長手方向に平行な複数本の心線18が配設されていてもよいが、生産性の点から、通常、ローエッジコグドVベルト10の略ベルト長手方向に平行に、所定のピッチで並列的に延びて螺旋状に配設されている。螺旋状に配設する場合、ベルト長手方向に対する心線18の角度は、例えば5°以下であってもよく、ベルト走行性の点から、0°に近いほど好ましい。また、心線18のピッチは、2.0~2.5mmの範囲に設定されることが好ましく、2.2~2.4mmの範囲に設定されることがより好ましい。
心線18としては、通常、マルチフィラメント糸を使用した撚りコード(例えば、諸撚り、片撚り、ラング撚りなど)を使用できる。
心線18を構成する繊維としては、例えば、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、ポリアミド繊維(ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維、ポリアミド46繊維、アラミド繊維など)、ポリエステル繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維)[ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのポリC2-4アルキレン-C6-14アリレート系繊維など]、ビニロン繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などの合成繊維や、綿、麻、羊毛などの天然繊維、及び炭素繊維などの無機繊維などが汎用される。これらの繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
接着ゴム層35を形成する加硫ゴム組成物を構成するゴム成分としては、圧縮ゴム層17のゴム成分として例示されたゴム成分を利用でき、好ましい態様も圧縮ゴム層17のゴム成分と同様である。接着ゴム層35を形成するゴム組成物も、圧縮ゴム層17を形成するゴム組成物で例示された短繊維や他の成分を更に含んでいてもよい。
ローエッジコグドVベルト10において、補強布14を使用する場合、伸張ゴム層15の表面に補強布14を積層する形態に限定されず、例えば、伸張ゴム層15及び/又は圧縮ゴム層17の表面(コグ部13の表面)に補強布14を積層する形態であってもよく、伸張ゴム層15及び/又は圧縮ゴム層17に補強層を埋設する形態(例えば、日本国特開2010-230146号公報に記載の形態など)であってもよい。
続いて、本実施形態に係るローエッジコグドVベルト(コグ付きVベルト)10の特徴部である具体的構造について説明する。図2に示すように、コグ部13のベルト長手方向の断面形状は、ベルト幅方向に亘って同一寸法に形成されている。また、図2及び図3に示すように、コグ谷12の断面形状は、連続する複数の円弧(図2及び図3で示す実施形態では、第1円弧21及び一対の第2円弧22の3つの円弧)が組み合わされてなる底部25と、ベルト厚み方向(図2中、一点鎖線で示す方向)に対してコグ角度θ(片側)で傾斜する、コグ谷12の側壁23とを繋ぐことで形成される。
具体的に、図3に示すように、第1円弧21は、ベルト長手方向に直交する鉛直線VL上に中心O0を有し、コグ谷12の最深部Aを通り、コグ谷12の最深部Aと両側の側壁23との3点に接する仮想円VCよりも大径の円C1によって形成される。すなわち、第1円弧21の曲率半径R1は、仮想円VCの半径R0よりも大きくなっている。
また、本実施形態における第2円弧22は、第1円弧21の曲率半径R1より小さい曲率半径R2を有する円C2によって、第1円弧21と、コグ谷12の側壁23の延長線とを、それらに接するように曲線状に繋いで形成される。
なお、コグ山11の側壁23と頂部24との交点には、C0.5mm~C2.0mmのC面取りや、R0.5mm~R2.0mmのR面取りを施すことが、エッジ部の欠けを防止する上で好ましい。
次に、ローエッジコグドVベルト(コグ付きVベルト)10の製造方法について説明する。ローエッジコグドVベルト10の製造方法は、特に限定されず、各層の積層工程(ベルトスリーブの製造方法)に関しては、慣用の方法を利用できる。
例えば、少なくともベルト内周側10iにコグ部13が形成されたローエッジコグドVベルト10を作製する場合、円筒状の金型として、円筒の外周側表面にコグ形状に対応する凹凸面が刻設されたコグ付き型などが利用できる。
金型として、コグ形状に対応する凹凸面が刻設されていない平坦な円筒状の金型を用い、第1の製造方法とは逆の順序で、補強布、伸張ゴム層用未加硫シート、第2の接着ゴム層用未加硫シート(上接着ゴム)、心線、第1の接着ゴム層用未加硫シート(下接着ゴム)、予めコグ形状を形成した圧縮ゴム層用未加硫シートを巻き付けて、未加硫の積層体を得る。
その積層体の外周側に、コグ形状に対応する凹凸面が内周側表面に形成された円筒状のゴム母型を被せる。そして、ゴム母型の外周側からジャケットを被せた状態で加硫装置に設置して、温度120℃~200℃(特に好ましくは150℃~180℃)程度で加硫することにより、外周側にコグ形状が形成されたベルトスリーブ(加硫スリーブ)を調製する。得られた加硫スリーブをカッターなどを用いて所定幅に切断し、更に所定のV角度が得られるように側面をV状に切断加工した後、外周側と内周側とを反転させることにより、内周側にコグ部が形成されたローエッジコグドVベルト10を得る。
以下の解析では、ベルト厚みHが30mm、上幅Wが71mm(アスペクト比が2.4)の大型サイズのコグ付きVベルト10を用いて、第1円弧21の曲率半径R1、第2円弧22の曲率半径R2、コグ角度(片側)θを変化させた3次元モデルを作成し、コグ付きVベルト10が屈曲し、かつプーリとの接触面にかかる側圧を与えた場合に、コグ谷12に生じる応力を有限要素法解析によって、比較検証した。
また、心線層34のトラス要素部は線形材料モデルであり、ヤング率=28929MPa、ポアソン比=0.3、モデル上の線形材料一本当たりの断面積=3.14mm2(ただし、端の心線は半分の1.57mm2)に設定し、FEM解析を実施して、コグ谷12の最深部Aに発生する応力をMises応力で評価した。
以下に示す実施例及び比較例として検証した種々のコグ形状を有するコグ付きVベルト10に関して、3次元の有限要素モデルを作成して解析を行い、コグ谷12の最深部Aに発生するMises応力の最大値Xと、幅減少率の最大値Yを算出した。Mises応力の最大値X、幅減少率の最大値Yは、いずれも小さい方が優れており、以下の基準に基づいて優劣を判定した。
A判定:4.0MPa以下
B判定:4.0MPa超4.5MPa以下
C判定:4.5MPa超
A判定:5.6%以下
B判定:5.6%超5.8%以下
C判定:5.8%超
比較検証した実施例及び比較例のコグ付きVベルト10について、各ベルトの仕様と、有限要素法解析によって算出したコグ谷12の最深部Aに発生するMises応力値の最大値X及びベルト幅減少率の最大値Yとを、総合判定結果とともに表1~表6の各上段に示す。
なお、各ベルトの仕様につき、表1~表6については、ベルト厚みH、コグ高さH1、心-谷厚みH2、第1円弧の曲率半径R1、第2円弧の曲率半径R2、仮想円の半径R0、コグ角度θ及びコグピッチPを示し、表4~表6については更に、ベルト厚みに対する心-谷厚みの比率H2/H(%)、ベルト上幅W、及びベルト厚みに対する上幅の比率(W/H)を示す。
(総合判定)
Aランク:X,Yの両方がA判定である場合
Bランク:C判定ではないが、X,Yの一方又は両方がB判定である場合
Cランク:X,Yの一方又は両方がC判定である場合
表1は、実施例及び比較例ともに、ベルト厚みH=30mm、コグ高さH1=17mm、心-谷厚みH2=9mm、コグピッチP=26.0mmのローエッジコグドVベルト10において、第1円弧21の曲率半径R1、第2円弧22の曲率半径R2、及びコグ角度θを変化させたときのコグ谷12の最深部Aに発生する、Mises応力の最大値X(MPa)及びベルト幅減少率Y(%)を、総合判定結果とともに示す。
この小型サイズのコグ付きVベルトに対して、コグ部の輪郭形状をそのまま維持(すなわち、転用)して、本発明で対象とする大型サイズのベルト(厚みH=30.0mm)となるよう、各部寸法を相似形で拡大(拡大率:30/13.2=約2.272倍)したローエッジコグドVベルトを、比較例5とした。なお、相似拡大により、R1=約6.4mm,R2=約2.3mmとなる。
また、コグ高さH1及び心-谷厚みH2については、輪郭形状の維持に関して直接関わりはないため、相似拡大の対象とはしなかった。すなわち、コグ高さH1及び心-谷厚みH2は、各実施例との比較のため、各実施例と同様に、それぞれH1=17mm及びH2=9mmとした。さらに、コグ角度θについては、「参考」と同じく8.5°とし、コグピッチPについては各実施例と同じく26.0mmとした。また、コグ山は、特許文献1のベルトと同じく円弧で構成した。
表2は、実施例2のローエッジコグドVベルト10をベースにして、第1円弧21の曲率半径R1=8.5mmで一定として、第2円弧22の曲率半径R2を変化させた場合のコグ谷12の最深部Aに発生するMises応力の最大値X,ベルト幅減少率の最大値Yを解析した結果を示している。
第2円弧22の曲率半径R2が1.8mmの場合(実施例5)及び2.5mmの場合(実施例6)では、いずれも、本発明で規定する好ましい数値範囲(R2:1.8~2.5mm)を満足するため、Mises応力の最大値X,ベルト幅減少率の最大値Yの両方がA判定であり、総合判定でAランクとなった。
一方、曲率半径R2が1.5mmと小さい場合(実施例4)では、ベルト幅減少率の最大値Yが幾分大きくなり、B判定となったため、総合判定でBランクとなった。また、曲率半径R2が2.8mmと大きい場合(実施例7)では、Mises応力の最大値Xが幾分大きくなってB判定となったため、総合判定でBランクとなった。
表3は、実施例2のローエッジコグドVベルト10をベースにして、第1円弧21の曲率半径R1及び第2円弧の曲率半径R2の両方を変化させた場合の、コグ谷12の最深部Aに発生するMises応力の最大値X,ベルト幅減少率の最大値Yを解析した結果を示している。
実施例8(曲率半径R1=7.5mm,曲率半径R2=1.8mm)及び実施例9(曲率半径R1=9.5mm,曲率半径R2=2.5mm)では、いずれも本発明で規定する数値範囲(R1:7~10mm)及び本発明で規定する好ましい数値範囲(R2:1.8~2.5mm)を満足するため、Mises応力の最大値X,ベルト幅減少率の最大値Yの両方がA判定であり、総合判定でAランクとなった。
表4は、実施例2のローエッジコグドVベルト10をベースにして、心-谷厚みH2を変化させた場合の、コグ谷12の最深部Aに発生するMises応力の最大値X,ベルト幅減少率の最大値Yを解析した結果を示している。
表5は、心-谷厚みH2を更に小さくした場合の傾向を確認するため、実施例1~11のローエッジコグドVベルト10よりも若干小型(ベルト厚みH=27mm,ベルト上幅W=44mm)のローエッジコグドVベルト10において、心-谷厚みH2を変化させた場合の、コグ谷12の最深部Aに発生するMises応力の最大値X,ベルト幅減少率の最大値Yを解析した結果を示している。
一方、実施例12(心-谷厚みH2=5mm,H2/H=19%)では、ベルト幅減少率の最大値Yが幾分大きくなり、B判定となったため、総合判定でBランクとなった。
表6は、心-谷厚みH2を更に大きくした場合の傾向を確認するため、実施例1~11のローエッジコグドVベルト10よりも大型(ベルト厚みH=36mm,ベルト上幅W=77mm)のローエッジコグドVベルト10において、心-谷厚みH2を変化させた場合の、コグ谷12の最深部Aに発生するMises応力の最大値X,ベルト幅減少率の最大値Yを解析した結果を示している。
一方、実施例17(心-谷厚みH2=15mm,H2/H=42%)では、Mises応力の最大値Xが幾分大きくなり、B判定となったため、総合判定でBランクとなった。
大型サイズ(ベルト厚みH=19~36mm)のコグ付きVベルトとして、ベルト内周側10iにコグ部13が形成された、ベルト厚みH=30mmのローエッジコグドVベルトにおいて、上記[(1)3次元有限要素法(FEM)による解析]で示した各実施例及び比較例(実施例1~17及び比較例1~5)のコグ形状を有するローエッジコグドVベルトをそれぞれ作製し、各ベルトに耐久走行試験を行って耐久性を比較検証した。
圧縮ゴム層及び伸張ゴム層はゴム組成物A、接着ゴム層はゴム組成物Bを、それぞれバンバリーミキサーで混練りした後、混練りゴムをカレンダーロールに通して圧延する方法で、圧縮ゴム層用未加硫シート、伸張ゴム層用未加硫シート、接着ゴム層用未加硫シートを作製した。表7に、圧縮ゴム層、伸張ゴム層及び接着ゴム層のゴム組成物の組成を示す。
EPDM:ダウ・デュポン社製「NORDEL(登録商標)IP4640」、エチレン含有量55質量%、エチリデンノルボルネン含有量4.9質量%
アラミド短繊維:帝人(株)製「トワロン(登録商標)」、モジュラス88cN、繊度2.2dtex、繊維長3mm
ナフテン系オイル:出光興産(株)製「ダイアナ(登録商標)プロセスオイルNS-90S」
カーボンブラックHAF:東海カーボン(株)製「シースト(登録商標)3」
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製「ノクラック(登録商標)AD-F」
加硫促進剤DM:大内新興化学工業(株)製「ノクセラー(登録商標)DM」
加硫促進剤TT:大内新興化学工業(株)製「ノクセラー(登録商標)TT」
加硫促進剤CZ:大内新興化学工業(株)製「ノクセラー(登録商標)CZ」
シリカ:エボニックジャパン(株)製、「ULTRASIL(登録商標)VN3」、BET比表面積175m2/g
繊度1,680dtexのアラミド繊維のマルチフィラメントの束2本を引き揃えて下撚りし、これを3本合わせて下撚りとは反対方向に上撚りした総繊度10,080dtexの諸撚りコード(平均線径1.81mm)とし、更に接着処理を施した処理コードを調製した。
ポリエステル繊維と綿との混紡糸(ポリエステル繊維/綿=50/50質量比)の織布(120°広角織り、繊度は20番手の経糸と20番手の緯糸、経糸及び緯糸の糸密度75本/50mm、目付量280g/m2)を、予め混練りしたゴム組成物Bとともに、カレンダーロールを同時に通過させ、織布にゴム組成物Bを積層密着させる方法でコーティング処理して補強布前駆体を調製した。
実施例1~17及び比較例1~5のコグ形状を有するローエッジコグドVベルト10Aは、上記の各材料を用い、前述の<4-2.第2の製造方法>で記載した製造方法により作製した。
加硫は180℃で30分間行い、外周側に所定のコグ部が形成されたベルトスリーブ(加硫スリーブ)を調製し、得られた加硫スリーブをカッターで幅71mmに切断し、更にV角度28°で側面をV状に切断加工した。そして、内周側と外周側とを反転して、内周側にコグ部が形成された、周長2610mmの試供ローエッジコグドVベルト10Aを得た。
耐久走行試験は、以下の高負荷条件及び高熱・高速条件の2つの条件で行った。
図5Aに示すように、直径275.7mmの駆動プーリ41と、直径413.5mmの従動プーリ42とで構成する2軸走行試験機を用いた。各プーリ41,42に試供ローエッジコグドVベルト10Aを掛架し、駆動プーリ41を回転数900rpmで回転させ、従動プーリ42に1191N・mの負荷を付与し、室温にてベルトを170時間走行させ、ベルト側面(プーリと接触する面)を目視で経過観察し、亀裂や心線の離脱(ポップアウト)などの異常の有無を確認した。
図5Bに示すように、直径244.8mmの駆動プーリ43と、直径244.8mmの従動プーリ44とで構成する2軸走行試験機を用いた。各プーリ43,44に試供ローエッジコグドVベルト10Aを掛架し、駆動プーリ43を回転数1317rpmで回転させ、従動プーリ44に246N・mの負荷を付与し、雰囲気温度60℃にてベルトを380時間走行させ、ベルト側面(プーリと接触する面)を目視で経過観察し、亀裂や心線の離脱(ポップアウト)などの異常の有無を確認した。
例えば、上記実施形態では、コグ谷12の底部25は、第1円弧21及び第2円弧22で形成されていたが、本発明は、連続する複数の円弧であればよく、例えば、コグ谷12の最深部Aから離れるにつれて、曲率半径が小さくなる3つ以上の円弧で形成されていてもよい。
10i 内周側
11 コグ山
12 コグ谷
13 コグ部
18 心線
21 第1円弧(複数の円弧)
22 第2円弧(複数の円弧)
23 コグ谷の側壁(コグ山の側面)
24 頂部
25 コグ谷の底部
A コグ谷の最深部
H ベルト厚み
H1 コグ高さ
H2 心-谷厚み
P コグピッチ
R1 第1円弧の曲率半径
R2 第2円弧の曲率半径
VC 仮想円
W ベルト上幅
θ コグ角度
Claims (8)
- ベルト長手方向に沿ってコグ山とコグ谷が交互に多数設けられたコグ部が、少なくともベルト内周側に設けられ、ベルト厚みHが27~36mm、コグ高さH1が14~19mmである、コグ付きVベルトであって、
前記ベルト長手方向の断面における前記コグ谷の断面形状は、連続する複数の円弧が組み合わされてなる底部と、ベルト厚み方向に対して傾斜する前記コグ谷の側壁と、を備え、
前記底部を構成する複数の円弧は、前記コグ谷の最深部から離れるにつれて、曲率半径が小さくなり、
前記複数の円弧は、前記コグ谷の最深部を通り、前記コグ谷の最深部と両側の前記側壁との3点に接する仮想円よりも大径である第1円弧と、前記第1円弧と前記側壁の延長線とを、それらに接するように曲線状に繋いだ第2円弧と、から構成され、
前記第1円弧の曲率半径R1は7.5~9.5mmの範囲にあり、
前記第2円弧の曲率半径R2は、1.8~2.5mmの範囲にあり、
前記心線の中心部から前記コグ谷の最深部までの距離である心-谷厚みH 2 が6~13mmである、
ことを特徴とするコグ付きVベルト。 - 前記コグ山の側面及び頂部は、直線で形成される、
請求項1に記載のコグ付きVベルト。 - 前記ベルト厚みHに対する上幅Wの比率であるアスペクト比W/Hが、1.2~3.8である、
請求項1又は2に記載のコグ付きVベルト。 - 前記圧縮ゴム層は、第1のゴム成分を含むゴム組成物及び第1の短繊維を含んでおり、
前記第1の短繊維の割合が、前記第1のゴム成分100質量部に対して、5~50質量部である、
請求項1~3のいずれか1項に記載のコグ付きVベルト。 - ベルト幅方向に間隔をおいて配列された心線を含む芯体層、前記芯体層のベルト外周側に積層された伸張ゴム層、及び前記芯体層のベルト内周側に積層された圧縮ゴム層を有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載のコグ付きVベルト。 - 前記コグ部のコグ角度(片側)θが5~15°である、
請求項1~5のいずれか1項に記載のコグ付きVベルト。 - 前記コグ山の側壁と前記コグ山の頂部との交点には、C0.5mm~C2.0mmのC面取り、又は、R0.5mm~R2.0mmのR面取りが施されている、
請求項1~6のいずれか1項に記載のコグ付きVベルト。 - 大型農業機械のベルト式変速装置の伝動ベルトに使用される、
請求項1~7のいずれか1項に記載のコグ付きVベルト。
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