JP7085699B1 - 歯付ベルト - Google Patents

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    • F16G1/10Driving-belts made of rubber with reinforcement bonded by the rubber with textile reinforcement

Abstract

【課題】屈曲性を確保しつつ十分な耐歯元亀裂(歯欠け)性を確保した歯付ベルトを提供する。【解決手段】ベルト周方向に所定の間隔で配設された歯部3と、歯部3の輪郭に沿って埋設された補強層5とを有する歯付ベルト1に関して、補強層5は、位置H2(高さ)が、歯高さH1の30~100%の領域の範囲になるように歯部3に埋設され、補強層5はベルト周方向に配列された複数の補強繊維フィラメント51を含み、ベルト周方向に交差する繊維の単位面積当たりの重量が、補強繊維フィラメントの単位面積当たりの重量の30%以下であり、補強繊維フィラメント51が、無撚の状態で、ベルト周方向に配列しつつシート状になるように結合され、補強層5の厚みを0.05~0.2mmの範囲にし、補強繊維フィラメントの引張弾性率は、5≦[前記補強層の厚み(mm)]×[前記補強繊維フィラメントの引張弾性率(GPa)]≦60の条件を満たす。【選択図】図2

Description

本発明は、高負荷をベルトによって伝達する装置の同期伝動用に使用される歯付ベルトに関するものである。
動力を伝達する伝動ベルトは、摩擦伝動ベルトと、かみ合い伝動ベルトとに大別される。摩擦伝動ベルトとしては、平ベルト、Vベルト、Vリブドベルトなどが挙げられ、かみ合い伝動ベルトとしては、歯付ベルトが挙げられる。歯付ベルトは、心線をベルト周方向と略平行に埋設した背部と、ベルト周方向に所定間隔で配設された歯部と、歯部の表面を被覆する歯布とを有している。歯付ベルトの歯部は、これと相対する溝を有するプーリと嵌合することで動力の伝達を行う。歯付ベルトはプーリとの間でスリップが発生せず、高負荷を確実に伝動できる。近年では、産業用機械、自動車の内燃機関、自動二輪車の後輪駆動用として使用される例が増加しており、特に機械の小型化に伴い歯付ベルトも小型化(小径プーリへの対応、細幅化)が要求されている。その結果、小型化した歯付ベルトにおいても、より高い負荷が作用する条件での使用にも耐えられる耐用性の高い歯付ベルトが必要とされている。
歯付ベルトの故障形態のひとつに、歯部がベルト本体から欠落する歯欠けがある。この歯欠けは、歯部の根元に応力が集中的に作用する過程で、歯部が繰り返し変形することにより発生するものと考えられている。歯欠けが発生する原因としては、先ず、歯元に微小な亀裂が発生し、次いでその亀裂が成長するというメカニズムが考えられている。特に、歯付ベルトを高い負荷が作用する条件で使用した場合には、歯元部分に集中する応力が特段に大きくなり、歯元を起点に亀裂が生じて歯欠けに繋がりやすい。
そのため、歯部の変形抑制と、負荷の作用で応力(歯荷重)が集中する歯元部分を、特段に補強することが必要になる。即ち、歯部の剛性(耐変形性)とともに、耐歯元亀裂性(耐歯欠け性)を確保することが大きな課題となっている。
特開平3-265739号公報 WO2016/047052 特表2020-517877号公報 特開2010-196889号公報 特開2018-119680号公報
この点、歯付ベルトの歯部を補強する方法は、旧来から数多くの先行技術が開示され、種々の手段が提案されている。例えば、所定の部位に配向した短繊維や布層による補強、特に「布層を歯の形状(略輪郭)に沿って配置する補強層」を配置する方法を開示した文献としては、特許文献1~3が挙げられる。これらは、基本的に、歯付きベルトの補強として「歯元の補強、歯欠け防止」という課題を解決することを目的としている。
また、特許文献4には、歯付ベルトとは異なるコグドVベルトに関する発明であることから「歯元の補強、歯欠け防止」という課題は生じないが、Vベルトの補強として、圧縮ゴム層に繊維強化樹脂からなる補強層をコグ形状に沿って埋設させたコグドVベルトが開示されている。この補強層は、ベルト幅方向に配向したカーボン繊維を含んでいる。なお、特許文献4のコグドVベルトの外観は、歯付ベルトと類似する部分はあるものの、歯付ベルトは、歯部をプーリ溝と嵌合させて噛み合い伝動により動力を伝達する噛み合い伝動ベルトに分類されるのに対し、コグドVベルトは、ベルト下面(内周面)がプーリと接触することなく、ベルト側面をプーリと接触させて摩擦伝動を行う摩擦伝動ベルトに分類され、両者は動力伝達機構が全く異なる別の種類の伝動ベルトである。
また、特許文献5には、歯付ベルトとは異なるVベルトに関する発明であることから「歯元の補強、歯欠け防止」という課題は生じないが、Vベルトの補強として、繊維フィラメントを一方向に配向させたシート(一方向性繊維シート)を補強層として埋設させたVベルトが開示されている。
なお、Vベルトの補強層は、V字状の両側面がプーリから受ける側圧に対する耐性を高めるためにベルトの幅方向の補強が目的であることから、一方向性繊維シートの繊維フィラメントを幅方向に配向させている。これに対して、歯付ベルトの場合には、ベルト幅方向にはプーリと接触せず、ベルト周方向に歯部がプーリと接触するため、周方向の補強が必要になる。そのため、歯付ベルトでは、繊維フィラメントを周方向に配向させることになるが、周方向へ配向させると歯付ベルトの屈曲性(曲げやすさ)が低下して、プーリへの巻きつき性(プーリとの噛み合い性)が低下してしまう。
従って、歯付ベルトの補強層は、(補強と背反する)歯付ベルトの屈曲性(曲げやすさ)との両立を考慮した、独自の設計思想が必要となる。
そこで、本発明の目的は、屈曲性を確保しつつ、十分な耐歯元亀裂(歯欠け)性を確保した歯付ベルトを提供することである。
上記課題を解決するために、本発明は、ベルト周方向に所定の間隔で配設された歯部と、前記歯部の輪郭に沿って埋設された補強層と、を有する歯付ベルトであって、
前記補強層は、前記歯部の底部から当該補強層までの最大高さが、前記歯部の底部から歯先までの高さの30~100%の領域の範囲になるように前記歯部に埋設され、
前記補強層は、前記ベルト周方向に配列された複数の補強繊維フィラメントを含み、
前記補強層において、前記ベルト周方向に交差する繊維の単位面積当たりの重量が、前記補強繊維フィラメントの単位面積当たりの重量の30%以下であり、
前記補強層は前記補強繊維フィラメントが、無撚の状態で、前記ベルト周方向に配列しつつシート状になるように結合された構造をしており、
前記補強層の厚みは、0.05~0.2mmであり、
前記補強繊維フィラメントの引張弾性率(GPa)は、
5≦[前記補強層の厚み(mm)]×[前記補強繊維フィラメントの引張弾性率(GPa)]≦60
の条件を満たすことを特徴としている。
この構成によると、複数の補強繊維フィラメントが、ベルト周方向に配列しつつシート状で、補強層として歯付ベルトに埋設される。さらに、補強層を構成する複数の補強繊維フィラメントは、シート状になるように結合されているため、補強繊維フィラメントの配向の乱れを防止できる。
また、補強層は、ベルト周方向に交差する繊維を、補強繊維フィラメントの単位面積当たりの重量の30%以下しか含まない。そのため、補強層を設けない場合とほぼ同じ屈曲性を確保できる。つまり、歯付ベルトの屈曲性の低下を抑えることができる。また、補強繊維フィラメントが無撚の状態で埋設されることにより、補強層の厚みを薄くすることができる。これにより、屈曲性の低下をより抑えることができる。なお、本発明において、「無撚」とは、撚り数が1回/10cm以下であることを意味する。 また、補強繊維フィラメントが無撚の状態で埋設されるため、屈曲時に繊維同士の摩擦による発熱が生じにくい。また、屈曲性の低下を抑えたことで、歯付ベルトがプーリに巻きかかったり離れたりする際の屈曲による歯付ベルトの発熱を抑制できる。そのため、走行中の歯付ベルトの温度上昇を抑制できる。歯付ベルトの温度上昇を抑制したことで歯付ベルトをより長寿命化できる。
また、補強層の厚みは、0.05~0.2mmである。補強層の厚みが0.2mmを超えると、曲げ剛性の増加(屈曲性の低下)によって、耐屈曲疲労性が悪化する場合がある。本発明では、補強層の厚みを0.2mm以下とすることで、屈曲性の低下による耐屈曲疲労性を確実に抑制できる。一方、補強層の厚みが0.05mm未満であると、十分な耐歯元亀裂(歯欠け)性を確保できない場合がある。本発明では、無撚の補強繊維フィラメントによる耐歯元亀裂(歯欠け)性を向上させる効果が高いため、補強層が0.05~0.2mmという薄さであっても、耐屈曲疲労性の低下を抑制しつつ、十分な耐歯元亀裂(歯欠け)性を確保することができる。なお、本発明において、「補強層の厚み」とは、補強層が複数ある場合であっても、各補強層の厚みのことを指す。
また、補強層に含まれる補強繊維フィラメントの引張弾性率(GPa)は、補強層の剛性を表す指標値である、『[前記補強層の厚み(mm)]×[前記補強繊維フィラメントの引張弾性率(GPa)]』の値(指数Z)が5以上60以下の条件を満たすことにより、補強層の厚みが0.05~0.2mmの範囲で、耐屈曲疲労性の低下を抑制しつつ、十分な耐歯元亀裂性を確保することができる。
また、補強繊維フィラメントはシート状になるように結合されており、ばらけることがないため、歯付ベルト製造時に、補強層の取り扱いが容易である。具体的には、未加硫ゴムの上に補強層となるシートを巻き付ける作業や、補強層にRFL処理やゴム糊処理等の接着処理を施す作業を容易に行うことができる。
また、本発明は、上記歯付ベルトにおいて、前記補強繊維フィラメントの引張弾性率が、50~300GPaであることを特徴としてもよい。
補強繊維フィラメントの引張弾性率が50GPa未満であると、十分な耐歯元亀裂(歯欠け)性を確保できない場合がある。本発明では、補強繊維フィラメントの引張弾性率が50GPa以上にすることにより、補強層の厚みを小さくしても耐屈曲疲労性の低下を抑制しつつ、十分な耐歯元亀裂(歯欠け)性を確保することができる。
また、補強繊維フィラメントの引張弾性率が300GPa以下であれば、上記の不具合の抑制効果を確保することができ、歯付ベルトをより長寿命化できる。
また、本発明は、上記歯付ベルトにおいて、前記補強繊維フィラメントの太さが、0.1~50μmであることを特徴としてもよい。
上記構成によれば、製造工程での取扱性を確保しつつ、歯付ベルトの屈曲性を確保することができる。
また、本発明は、上記歯付ベルトにおいて、前記補強層が、前記ベルト周方向に交差する繊維を含まないことを特徴としてもよい。
即ち、補強層において、ベルト周方向に交差する繊維の単位面積当たりの重量が、補強繊維フィラメントの単位面積当たりの重量の0%である場合、歯付ベルトにおいて、補強層を設けない場合と同等の屈曲性を確保できる。
屈曲性を確保しつつ、十分な耐歯元亀裂(歯欠け)性を確保した歯付ベルトを提供することができる。
実施形態に係る歯付ベルトの断面斜視図である。 実施形態に係る歯付ベルトのベルト周方向の断面図である。 実施形態に係る歯付ベルトのベルト周方向の説明図である。 実施形態に係る補強層のベルト幅方向の断面図である。 歯付ベルトの製造方法に係る予備成形工程の説明図である。 歯付ベルトの製造方法に係る予備成形工程の説明図である。 歯付ベルトの製造方法に係る予備成形工程の説明図である。 歯付ベルトの製造方法に係る予備成形工程の説明図である。 実施例及び比較例に係る歯付ベルトの2次元の有限要素法解析モデルの説明図である。 実施例及び比較例に係る歯付ベルトの歯剪断試験の説明図である。 実施例及び比較例に係る歯付ベルトの歯剪断試験の説明図である。 実施例1~3及び比較例1~2に係る総合判定結果等をまとめた表である。 (A)図12における、H2/H1と歯剛性との関係性をグラフ化した図である。(B)図12における、H2/H1とMises応力との関係性をグラフ化した図である。 実施例1、実施例4~5、参考例1~2に係る総合判定結果等をまとめた表である。 (A)図14における、一方向性繊維弾性率と歯剛性との関係性をグラフ化した図である。(B)図14における、一方向性繊維弾性率とMises応力との関係性をグラフ化した図である。 実施例に係る歯剛性試験の説明図である。 実施例に係る歯剛性試験の結果を示す歯剛性の測定値のグラフである。
次に、本発明の実施形態に係る歯付ベルト1について図面を参照して説明する。
[歯付ベルト1]
本実施形態の歯付ベルト1は、無端状のかみ合い伝動ベルトであり、図1~図3に示すように、心線4がベルト周方向(ベルト長手方向)に延びて埋設された背部2と、背部2の内周面に沿って所定間隔で配設された、複数の歯部3と、を備えている。
さらに、本実施形態の歯付ベルト1の歯部3は、心線4のベルト内周面側において、第1ゴム層(表部ゴム層)33と第2ゴム層(内部ゴム層)34とで構成される歯ゴム層を有している。この歯ゴム層において、第1ゴム層33と第2ゴム層34との間に、歯部3の輪郭に沿ってベルト周方向に埋設された補強層5を有している。すなわち、第1ゴム層33は、歯部3の輪郭に沿って補強層5のベルト内周面側に配設され、第2ゴム層34は、補強層5と心線4との間に配設されている(補強層5及び心線4と接している)。なお、本明細書では、第1ゴム層33と第2ゴム層34とを総称して歯ゴム層と呼ぶ。
隣接する歯部3と歯部3との間には、平坦な歯底部7が存在し、歯部3と歯底部7とは、ベルト内周面において周方向(ベルト長手方向)に沿って交互に形成されている。図1~3で示す態様では、歯部3の表面および背部2の内周面(すなわち、歯底部7の表面)には、連続した1枚の歯布6が配設されている。歯布6は、歯部3の耐摩耗性、耐歯欠け性などの観点で、必要に応じて用いればよい。
なお、本明細書において、歯部3の表面を構成する歯布6は、歯部3の構成要件である一方で、歯底部7の表面を構成する歯布6は、背部2の構成要件である。また、歯部3を構成する各歯布6は、連続する歯布6の一部(図1における歯布6の一部)である。また、歯底部7においても、歯布6と心線4との間には、表部ゴム層としての第1ゴム層と、補強層と、内部ゴム層としての第2ゴム層とが介在している(図示せず)。歯底部7における第1ゴム層および第2ゴム層の厚みは、歯部3における第1ゴム層33および第2ゴム層34の厚みに比べて極めて薄肉である。
背部2は、心線4のベルト外周面側に配設された背ゴム層21を有しており、この背ゴム層21がベルト外周面を形成している。
心線4は、ベルト周方向(ベルト長手方向)に延在し、かつベルト幅方向に間隔をおいて配列されている。隣接する心線4の隙間は、背ゴム層21および/または第2ゴム層を構成するゴム組成物(特に、背ゴム層21を構成するゴム組成物)で形成されていてもよい。
歯付ベルト1は、産業用機械、自動車の内燃機関、自動二輪車の後輪駆動用等の高負荷伝動用途に使用される。例えば、歯付ベルト1が、駆動プーリ(歯付プーリ)と従動プーリ(歯付プーリ)との間に巻き掛けられた状態で、駆動プーリの回転により、駆動プーリ側から従動プーリ側に動力を伝達する。
なお、歯付ベルト1は、図1~図3に示す形態又は構造に限定されない。例えば、複数の歯部3は、歯付プーリと噛み合い可能であればよく、歯部3の断面形状(歯付ベルト1のベルト周方向の断面形状)は略台形状に限定されず、例えば、半円形、半楕円形、多角形(三角形、四角形(矩形など)など)などであってもよい。これらのうち、噛み合い伝動性などの観点から、略台形状が好ましい。
また、周方向に隣り合う歯部3の間隔(歯ピッチ)は、例えば2~25mmであってもよい。歯ピッチの数値は、歯部3のスケール(歯部3のベルト周方向の長さ、及び、歯部3の歯高さH1)の大きさにも対応している。すなわち、歯ピッチが大きいほど、相似的に歯部3のスケールも大きくなる。特に高い負荷が作用する用途ではスケールの大きい歯部3が必要とされ、歯ピッチが5mm以上であってもよく、8mm以上が好ましく、14mm以上がさらに好ましい。
さらに、歯部3の平均歯高さは、ベルト全体の平均厚みに対して、40~70%であってもよく、50~65%が好ましい。なお、図3に示すように、歯部3の平均歯高さは、ベルト内周面において、突出している歯部3の平均高さ(歯底部7から突出している歯部3の平均高さ)を意味する。
[歯部3]
歯部3は、表面が歯布6で構成されており、歯部3の輪郭に沿って、歯布6と接する側に配置される第1ゴム層33と、第1ゴム層33のベルト外周面側に配置される補強層5と、補強層5のベルト外周面側に配置される第2ゴム層34とを含む。第1ゴム層33と第2ゴム層34は、異なるゴム組成物で形成してもよく、同じゴム組成物で形成してもよい。
歯部3(第1ゴム層33、第2ゴム層34)は、JIS-D硬度(タイプDデュロメータを用いて測定した値)で60度以上66度以下となる硬度のゴム組成物で構成されるのが好ましい。ここで、JIS-D硬度とは、JIS K 6253(2012)に準拠した硬度であり、タイプDデュロメータを用いて測定した、歯付ベルト1の歯部3側面の硬度である。
通常、ゴム組成物のゴム硬度はJIS-A硬度(タイプAデュロメータを用いて測定した値)が用いられることが多いが、タイプAデュロメータを用いて測定した値が90度を超える場合は、タイプDデュロメータを用いるのが望ましいとされている。本実施形態の歯付ベルト1では、歯部3の硬度は、後述する背部2の硬度よりも高く、JIS-A硬度が90度を超える。そのため、歯部3の硬度はJIS-D硬度で評価している。
(歯ゴム層:架橋ゴム組成物)
(A)ゴム成分
歯部3(歯ゴム層)を構成するゴム組成物(架橋ゴム組成物)のゴム成分としては、例えば、ジエン系ゴム[天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(ニトリルゴム:NBR)、アクリロニトリル-クロロプレンゴム、水素化ニトリルゴム(HNBR)など]、エチレン-α-オレフィンエラストマー[エチレン-プロピレン共重合体(EPM)、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)など]、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴム(ACSM)、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが例示できる。これらのゴム成分は、カルボキシル化SBR、カルボキシル化NBRなどのように、カルボキシル化されていてもよい。これらのゴム成分は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
特に好ましいゴム成分は、水素化ニトリルゴム(HNBR)であり、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(EPDM)も好適に用いられる。特に高い負荷が作用する用途での好ましいゴム成分は、耐熱老化性の高いゴム、特に、水素化ニトリルゴムである。ゴム成分中、上記好ましいゴム成分の割合は、50質量%以上(例えば80~100質量%程度)が好ましく、特に100質量%であるのが好ましい。水素化ニトリルゴムの水添率は、50~100%程度の範囲から選択でき、70~100%であってもよい。
HNBRとは、従来のニトリルゴムの利点である耐油性を維持しつつ、熱老化中の硫黄の再結合反応によるゴム弾性の老化を防ぐため、従来のニトリルゴムが有する不飽和結合(炭素・炭素二重結合)を化学的に水素化することによって、熱老化中の再結合反応を起こりにくくし、耐熱性を改良したゴムを意味する。
HNBRのヨウ素価(単位:mg/100mg)は、例えば5~60(例えば7~50)、好ましくは8~40(例えば8~35)、さらに好ましくは10~30である。なお、ヨウ素価とは、不飽和結合の量を表す指標であり、ヨウ素価が高いほど、ポリマー分子鎖中に含まれる不飽和結合の量が多いことを表す。ヨウ素価は、測定試料に対して過剰のヨウ素を加えて完全に反応(ヨウ素と不飽和結合とを反応)させ、残ったヨウ素の量を酸化還元滴定により定量することで求められる。HNBRのヨウ素価が小さい場合は、HNBR同士の架橋反応が十分ではなく、架橋ゴムの剛性が低くなるため、ベルト走行時に耐変形性や耐歯欠け性が低下する虞がある。一方、HNBRのヨウ素価が大きい場合は、不飽和結合の量が過剰に多くなり、架橋ゴムの熱劣化や酸化劣化が進行してベルト寿命が短くなる虞がある。
ゴム成分は、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを含む複合ポリマーまたはポリマーアロイ(以下「不飽和カルボン酸金属塩を含むHNBR」と称する)を含むのが好ましい。このポリマーは、歯部の弾性率(モジュラス)や硬度を高めることができるとともに、ゴムの変形を抑制でき、歯元亀裂の成長を抑制する。
不飽和カルボン酸金属塩とは、1つまたは2つ以上のカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸と金属とがイオン結合した化合物であってもよい。
不飽和カルボン酸金属塩の不飽和カルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸、これらのジカルボン酸のモノアルキルエステルなどが例示できる。これらの不飽和カルボン酸は単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。好ましい不飽和カルボン酸は(メタ)アクリル酸である。
不飽和カルボン酸金属塩の金属としては、多価金属、例えば、周期表第2族元素(マグネシウム、カルシウムなど)、周期表第4族元素(チタン、ジルコニウムなど)、周期表第8族~第14族元素(例えば、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、アルミニウム、スズ、鉛など)などが例示できる。これらの金属も単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。好ましい金属は、周期表第2族元素(マグネシウムなど)、周期表第12族元素(亜鉛など)などである。
好ましい不飽和カルボン酸金属塩としては、(メタ)アクリル酸亜鉛、(メタ)アクリル酸マグネシウムなどが例示できる。不飽和カルボン酸金属塩も単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との質量比は、前者/後者=100/80~100/180程度の範囲から選択でき、好ましくは100/85~100/175、さらに好ましくは100/90~100/175である。不飽和カルボン酸金属塩の割合が少なすぎると、架橋ゴム組成物の弾性率(モジュラス)や硬度が低下する虞があり、逆に多すぎると、ベルトの加工性や屈曲性が低下する。
なお、前記「不飽和カルボン酸金属塩を含むHNBR」は市販品を使用してもよい。例えば、HNBRに不飽和カルボン酸金属塩としてメタクリル酸亜鉛を高度に微分散させたもの(例えば、日本ゼオン(株)製、商品名「Zeoforte(ZSC)」など)を用いることができる。
また、「不飽和カルボン酸金属塩を含むHNBR」は、不飽和カルボン酸金属塩を含まない水素化ニトリルゴム(HNBR)との混合物として用いられることが好ましい。水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との質量比は、市販の「不飽和カルボン酸金属塩を含むHNBR」と、市販の水素化ニトリルゴムとを混合して調整してもよい。弾性率(モジュラス)や硬度の調整は、両者の混合比率を変更することによって調整してもよい。
「不飽和カルボン酸金属塩を含むHNBR」の割合は、ゴム成分中10質量%以上であってもよく、特に歯部を形成するゴム組成物の場合、好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。これらの割合は、商品「Zeoforte(ZSC)」における割合であってもよい。
「不飽和カルボン酸金属塩を含むHNBR」と組み合わせる他のゴム成分としては、EPDMおよびCRからなる群より選択された少なくとも一種が好ましい。他のゴム成分の割合はゴム成分中80質量%以下であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、最も好ましくは10質量%以下である。
(B)充填系配合剤
また、架橋ゴム組成物は、充填系配合剤をさらに含んでいてもよい。充填系配合剤としては、補強性充填剤、非補強性充填剤、短繊維などが例示できる。
補強性充填剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカなどが例示できる。これらの補強性充填剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。補強性充填剤は、粉末状であってもよい。補強性充填剤の割合は、ゴム成分100質量部に対して10質量部以下であってもよく、好ましくは5質量部以下、さらに好ましくは1質量部、より好ましくは0質量部である。必要に応じて補強性充填剤を用いる場合、補強性充填剤の割合は、ゴム成分100質量部に対して、例えば0.1~8質量部、好ましくは0.5~5質量部、さらに好ましくは1~3質量部であってもよい。補強性充填剤の割合が多すぎると、ゴム組成物の発熱が大きくなって耐熱性が低下するため、熱劣化による亀裂や歯欠けが発生する虞がある。
非補強性充填剤としては、例えば、多価金属炭酸塩類(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、多価金属水酸化物(水酸化アルミニウムなど)、多価金属硫酸塩(硫酸バリウムなど)、ケイ酸塩(ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウムなどのケイ素の一部が多価金属原子で置換された天然又は合成ケイ酸塩;ケイ酸塩を主成分とする鉱物、例えば、ケイ酸アルミニウムを含むクレイ、ケイ酸マグネシウムを含むタルク及びマイカなどのケイ酸塩鉱物など)、リトポン、ケイ砂などが例示できる。これらの非補強性充填剤は単独で又は二種以上を組み合わせて使用できる。
好ましい非補強性充填剤は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、ケイ酸塩(ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウムなどのケイ酸塩、若しくはケイ酸塩鉱物(タルク、クレイ、マイカなど))から選択された少なくとも一種である。さらには、非補強性充填剤は、ベルトの加工性や配合剤の分散性の向上の効果が大きく、配合剤の分散不良を起こしにくい点から、炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム又はケイ酸マグネシウムを含むタルク、ケイ酸アルミニウム又はケイ酸アルミニウムを含むクレイから選択された少なくとも一種を含むのが好ましく、特に炭酸カルシウムを含むのが好ましい。非補強性充填剤としては、ゴムの充填剤として市販されている粉末状の充填剤を使用できる。
非補強性充填剤の平均粒子径(平均一次粒子径)は、例えば、0.01~25μm(例えば、0.2~20μm)、好ましくは0.5~17μm(例えば、1~15μm)程度の範囲から選択できる。非補強性充填剤の平均粒子径(平均一次粒子径)は、例えば、0.01~3μm(例えば、0.02~2μm)、好ましくは0.05~1.5μm(例えば、0.1~1μm)であってもよい。また、非補強性充填剤の平均粒子径(平均一次粒子径)は比較的大きくてもよく、例えば、0.2~5μm(例えば、0.3~3μm)、好ましくは0.5~2.5μm(例えば、1~2μm)であってもよい。なお、非補強性充填剤の種類、例えば、ケイ酸マグネシウム又はその鉱物などによっては、ゴム成分などとの混練過程で非補強性充填剤が解砕又は破砕される場合がある。このような解砕性又は破砕性を有する非補強性充填剤の平均粒子径は、ゴム成分などとの混練前の平均粒子径であってもよい。非補強性充填剤は、各架橋ゴム組成物中において、通常、前記範囲の平均粒子径(例えば、0.1~10μm、好ましくは0.5~5μm、さらに好ましくは1~3μm)を有していてもよい。非補強性充填剤の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置を利用して、体積平均粒子径として測定できる。また、ナノメータサイズの充填剤の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡写真を含む電子顕微鏡写真の画像解析により適当なサンプル数(例えば、50サンプル)の算術平均粒子径として算出できる。
非補強性充填剤の割合は、ゴム成分の総量100質量部に対して、例えば70質量部以下、好ましくは40質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。必要に応じて非補強性充填剤を用いる場合、非補強性充填剤の割合は、ゴム成分100質量部に対して、例えば3~70質量部、好ましくは5~40質量部、さらに好ましくは10~30質量部であってもよい。非補強性充填剤の割合が多すぎると、配合剤の分散性が不良となる虞がある。
短繊維は、バンバリーミキサーなどで混練したゴム組成物を、ロールまたはカレンダーなどで圧延して未架橋ゴムシートを調製する過程で、所定の方向に配向(配列)させることができる。歯部3を構成する歯ゴム層においては、短繊維の配向方向を、ベルト周方向に向けて配置するのが好ましい。さらに、短繊維は、歯布6に近い側は歯部3の輪郭に沿って配向し、心線4に近づくにつれて短繊維は心線4とほぼ平行となるように配向して配置するのが好ましい。
短繊維としては、例えば、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、ポリアミド繊維(ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維、ポリアミド46繊維、アラミド繊維など)、ポリエステル系繊維[ポリアルキレンアリレート系繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのC2-4アルキレンC8-14アリレート系繊維);ポリアリレート繊維、液晶ポリエステル系繊維などの完全芳香族ポリエステル系繊維など]、ビニロン繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維などの合成繊維;綿、麻、羊毛などの天然繊維、レーヨンなどの再生セルロース繊維、セルロースエステル繊維など;炭素繊維、ガラス繊維などの無機繊維などが例示できる。これらの短繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。特に、アラミド繊維、PBO繊維、ガラス繊維、炭素繊維などの弾性率(モジュラス)の高い繊維が好適に使用できる。
短繊維の平均繊維径は、例えば1~100μm(例えば3~70μm)、好ましくは5~50μm(例えば7~30μm)、さらに好ましくは10~25μm(特に12~20μm)である。短繊維の平均繊維長は、例えば0.3~10mm(例えば0.5~7mm)、好ましくは1~5mm(特に2~4mm)である。
短繊維を添加すると、架橋ゴム組成物の弾性率(モジュラス)や硬度を高めることができる反面、ゴム成分と短繊維との界面に微小亀裂が発生しやすくなる。そのため、適度な配合量に調整する必要がある。短繊維の割合は、ゴム成分100質量部に対して10質量部以下、好ましくは7質量部以下、さらに好ましくは5質量部以下である。
(C)架橋系配合剤
ゴム組成物は、ゴム成分を架橋させるための架橋剤(加硫剤)が配合され、必要に応じて、共架橋剤、架橋助剤(加硫助剤)、架橋促進剤(加硫促進剤)、架橋遅延剤(加硫遅延剤)などが配合される。これらのうち、架橋系配合剤は、少なくとも架橋剤および共架橋剤(架橋助剤)を含むのが好ましく、架橋剤と共架橋剤との組み合わせが特に好ましい。
架橋剤としては、ゴム成分の種類に応じて慣用の成分が使用でき、例えば、有機過酸化物、硫黄系架橋剤、金属酸化物などが例示できる。
(D)その他の配合剤
ゴム組成物は、歯付ベルト1のゴム組成物に使用される慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。慣用の添加剤としては、例えば、金属酸化物(酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、軟化剤(パラフィンオイルやナフテン系オイルなどのオイル類など)、加工剤または加工助剤(ステアリン酸またはその金属塩、ワックス、パラフィン、脂肪酸アマイドなど)、可塑剤[脂肪族カルボン酸系可塑剤(アジピン酸エステル系可塑剤、セバシン酸エステル系可塑剤など)、芳香族カルボン酸エステル系可塑剤(フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤など)、オキシカルボン酸エステル系可塑剤、リン酸エステル系可塑剤、エーテル系可塑剤、エーテルエステル系可塑剤など]、老化防止剤(酸化防止剤、熱老化防止剤、屈曲き裂防止剤、オゾン劣化防止剤など)、着色剤、粘着付与剤、可塑剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(紫外線吸収剤、熱安定剤など)、難燃剤、帯電防止剤などが挙げられる。また、ゴム組成物は、必要により、接着性改善剤(レゾルシン-ホルムアルデヒド共縮合物、アミノ樹脂など)を含んでいてもよい。これらの添加剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
また、本実施形態の歯部3に使用する架橋ゴム組成物は、JIS K6394(2007)に準じて測定された70℃雰囲気温度下での貯蔵弾性率(E´)が200~300MPaであり、かつ、損失係数(Tanδ)が0.1~0.2の範囲であることが好ましい。この範囲であれば、歯欠け等の不具合は起こりにくくなり、歯部3の変形が抑制されることで、歯付プーリ(駆動プーリ、従動プーリ)とのかみ合いに支障を来たさず、耐久性が向上する。
E´とは、周期振動を与える動的状態の試験から得られる弾性率であり、歪と同位相の弾性応力の比率として定義される。E´が高いほど物体は変形しにくくなり、高負荷条件のような強い外部の力でも変形量は小さくなるので、亀裂や切断などは発生しにくい。一方、E´が低くなると物体は変形しやすくなるため、小さな外部力でも物体は容易に切断、破壊が起こる。
Tanδとは、損失弾性率(E´´)をE´で除したものであり、振動1サイクルの間に熱として散逸されるエネルギーと貯蔵される最大エネルギーとの比の尺度となっている。即ち、Tanδはゴム組成物に加えられる振動エネルギーが熱として散逸され易さを表すものであり、Tanδが大きくなるほど外部から加えられるエネルギーの多くが熱に変換されるため、ゴム組成物は自己発熱により温度が高くなり、耐熱性が低下する。一方、Tanδが低いほど発熱量は低く抑えられるため、ゴム組成物の耐熱性は向上する。
[補強層5]
補強層5は、図1~図3に示すように、歯付ベルト1(主に歯部3)に、歯部3の形状(略輪郭)に沿って、第1ゴム層33と第2ゴム層34との間に埋設されている。この補強層5が歯部3に埋設されるベルト厚み方向の位置は、歯部3の底部31(歯布6を含む)から補強層5までの最大高さH2(以下、補強層5の位置H2)が、歯部3の底部31から歯先32(歯布6を含む)までの高さH1(以下、歯高さH1)の30~100%(H2/H1=0.3~1.0)の領域であればよく、50~100%(H2/H1=0.5~1.0)の領域であれば、より好ましい。補強層5の位置H2が小さすぎると(補強層5の位置H2が心線4に近すぎると)、曲げ剛性が大きくなりすぎる。前記所定の領域に調整することにより、背反関係にある歯付ベルト1の歯剛性と曲げ剛性とのバランスを好適に調整でき、屈曲性を確保しつつ、十分な耐歯元亀裂(歯欠け)性を確保できる。
なお、補強層5の位置H2が、歯高さH1の100%(H2/H1=1.0)の場合は、補強層5が歯布6と接する態様となる。すなわち、歯ゴム層が第2ゴム層34のみで、第1ゴム層33が存在しない態様となる。
補強層5は、ベルト周方向に配列した複数の補強繊維フィラメント51を含み(図4参照)、ベルト周方向に交差する繊維は、ベルト周方向に交差する繊維の単位面積当たりの重量が補強繊維フィラメント51の30%以下である。あるいは補強層5は、ベルト周方向に交差する繊維を、全く含まなくてもよい。これにより、補強層5を設けない場合とほぼ同じ屈曲性を確保できる。つまり、歯付ベルト1の屈曲性の低下を抑えることができる。
また、補強層5は、補強繊維フィラメント51が、無撚の状態で、ベルト周方向に配列しつつシート状になるように結合された構造をしている。これにより、補強層5の厚みを薄くすることができる。従って、屈曲性の低下をより抑えることができる。なお、本実施形態において、「無撚」とは、撚り数が1回/10cm以下であることを意味する。
また、補強繊維フィラメント51が無撚の状態で埋設されるため、屈曲時に繊維同士の摩擦による発熱が生じにくい。また、屈曲性の低下を抑えたことで、歯付ベルト1が歯付プーリ(駆動プーリ、従動プーリ)に巻きかかったり離れたりする際の屈曲による歯付ベルト1の発熱を抑制できる。そのため、走行中の歯付ベルト1の温度上昇を抑制できる。歯付ベルト1の温度上昇を抑制したことで歯付ベルト1をより長寿命化できる。
具体的には、補強層5は、1枚または積層された複数枚の一方向性繊維シート50(UDシート)からなる。各一方向性繊維シート50の構成が同じ場合、補強層5を構成する一方向性繊維シート50の枚数が多いほど、耐歯元亀裂(歯欠け)性を向上できる。また、各一方向性繊維シート50の構成が同じ場合、補強層5を構成する一方向性繊維シート50の枚数が少ないほど、歯付ベルト1の屈曲性の低下を抑えることができる。
図4に示すように、一方向性繊維シート50は、ベルト周方向に配列しつつシート状に結合している複数の補強繊維フィラメント51を有する。例えば、一方向性繊維シート50中の補強繊維フィラメント51のベルト幅方向の密度は、1×109~1×1011本/5cm程度であってもよい。補強繊維フィラメント51は、無撚の状態で配置されている。これにより、補強繊維フィラメント51の配向の乱れを防止できる。
補強繊維フィラメント51同士は熱硬化性樹脂52によって結合されている。熱硬化性樹脂52は補強繊維フィラメント51に含浸されている。熱硬化性樹脂52としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂などを用いることができるが、なかでもエポキシ樹脂が好ましい。
あるいは、熱硬化性樹脂52は、レゾルシンとホルムアルデヒドとの縮合物を含むレゾルシン-ホルマリン-ラテックス液(RFL液)で処理する方法で生成する硬化物であってもよい。RFL処理は、補強繊維フィラメント51を、RFL液に浸漬後、熱処理して、補強繊維フィラメント51にRFL液中の熱硬化性樹脂成分を付着させる処理である。RFL液は、レゾルシンとホルマリンとの初期縮合物をラテックスに混合したものであり、ラテックスとしてはスチレン・ブタジエン・ビニルピリジン三元共重合体、水素化ニトリルゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、エピクロルヒドリンなどが用いられる。
補強層5は、ベルト周方向に交差する繊維を補強繊維フィラメント51の単位面積当たりの重量の30%以下しか含まない。あるいは補強層は、ベルト周方向に交差する繊維を、全く含まなくてもよい。
補強層5の厚みは、0.05~0.2mmである。なお、補強層5の厚みには、補強繊維フィラメント51の周囲を覆う熱硬化性樹脂52の厚みも含まれる。補強層5の厚みが0.2mmを超えると、曲げ剛性の増加(屈曲性の低下)によって、耐屈曲疲労性が悪化する場合がある。本実施形態では、補強層5の厚みを0.2mm以下とすることで、屈曲性の低下による耐屈曲疲労性を確実に抑制できる。一方、補強層5の厚みが0.05mm未満であると、十分な耐歯元亀裂(歯欠け)性を確保できない場合がある。本実施形態では、無撚の補強繊維フィラメント51による耐歯元亀裂(歯欠け)性を向上させる効果が高いため、補強層5が0.05~0.2mmという薄さであっても、耐屈曲疲労性の低下を抑制しつつ、十分な耐歯元亀裂(歯欠け)性を確保することができる。なお、本実施形態において、「補強層5の厚み」とは、補強層5が複数ある場合であっても、各補強層5の厚みのことを指す。
また、一方向性繊維シート50の熱硬化性樹脂52を含む目付量は、50~400g/m2が好ましい。一方向性繊維シート50の目付量が50g/m2未満であると、十分な耐歯元亀裂(歯欠け)性を確保するために必要な補強層5を構成する一方向性繊維シート50の枚数が多くなり、歯付ベルト1の製造にかかる工数が増大してしまう。一方向性繊維シート50の目付量は50g/m2以上が好ましい。それにより、1枚または少ない枚数の一方向性繊維シート50で構成される補強層5によって、十分な耐歯元亀裂(歯欠け)性を確保できる。また、一方向性繊維シート50の目付量が400g/m2を超えると、補強層5が1枚の一方向性繊維シート50で構成される場合であっても、補強層5の厚みが厚くなりすぎて屈曲性が低下する場合がある。一方向性繊維シート50の目付量は400g/m2以下が好ましく、200g/m2以下(特に100g/m2以下)がより好ましい。それにより、屈曲性の低下を抑制できる。
補強繊維フィラメント51の太さは、特に限定されないが、例えば、0.1~50μm程度であり、5~25μm程度が好ましい。繊維径が細すぎると扱いが困難となり、太すぎるとベルトの屈曲性を低下させる虞がある。
補強繊維フィラメント51の引張弾性率(GPa)(ヤング率)は、『指数Z=[補強層の厚み(mm)]×[補強繊維フィラメントの引張弾性率(一方向性繊維弾性率)(GPa)]』で定義される、『指数Z』が、『5≦指数Z≦60』の条件を満たしている(好ましくは、10≦指数Z≦60)。補強層5に含まれる補強繊維フィラメント51の引張弾性率が、補強層5の剛性を表す指標値である、『指数Z』の値が5以上60以下の条件を満たすことにより、補強層5の厚みが0.05~0.2mmの範囲で、耐屈曲疲労性の低下を抑制しつつ、十分な耐歯元亀裂性を確保することができる。
更に、補強繊維フィラメント51の引張弾性率は、50~300GPaが好ましい。補強繊維フィラメント51の引張弾性率が50GPa未満であると、十分な耐歯元亀裂(歯欠け)性を確保できない場合がある。十分な補強効果を得るには、補強層5の厚みを0.2mmより大きくする必要があるが、厚みを大きくすると曲げ剛性の増加(屈曲性の低下)によって、耐屈曲疲労性が悪化する。そこで、一方向性繊維シート50に使用する補強繊維フィラメント51の引張弾性率を50GPa以上にすることにより、補強層5の厚みを小さく(0.05~0.2mm)して耐屈曲疲労性の低下を抑制しつつ、十分な耐歯元亀裂(歯欠け)性を確保することができる。
また、補強繊維フィラメント51の引張弾性率が300GPa以下であれば、上記の不具合の抑制効果を確保することができ、歯付ベルト1をより長寿命化できる。
例えば、補強層5の厚みが0.05mmであれば、補強繊維フィラメント51の引張弾性率は、100~1200GPa(5≦指数Z≦60)、好ましくは200~1200GPa(10≦指数Z≦60)、より好ましくは、補強繊維フィラメント51の引張弾性率の上限値及び下限値(50~300GPa)を踏まえて100~300GPa(更に好ましくは200~300GPa)である。
また、補強層5の厚みが0.10mmであれば、補強繊維フィラメント51の引張弾性率は、50~600GPa(5≦指数Z≦60)、好ましくは100~600GPa(10≦指数Z≦60)、より好ましくは、補強繊維フィラメント51の引張弾性率の上限値及び下限値(50~300GPa)を踏まえて50~300GPa(更に好ましくは100~300GPa)である。
また、補強層5の厚みが0.20mmであれば、補強繊維フィラメント51の引張弾性率は、25~300GPa(5≦指数Z≦60)、好ましくは50~300GPa(10≦指数Z≦60)である。
補強繊維フィラメント51の熱伝導率は、5.0W/(m・K)以上が好ましい。補強繊維フィラメント51の熱伝導率の上限は特に限定されないが、20W/(m・K)程度であってもよい。
補強繊維フィラメント51の繊維の種類は特に限定されず、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などが挙げられる。これらのうち、引張弾性率が高いことから、炭素繊維、アラミド繊維が好ましく、引張弾性率と熱伝導率が高いことから、炭素繊維が特に好ましい。一方向性繊維シート50を構成する補強繊維フィラメント51の繊維の種類は、1種類であっても、複数種類であってもよい。一方向性繊維シート50を構成する炭素繊維の具体例としては、例えば、東レ(株)製の「トレカ」、帝人(株)製の「テナックス」、三菱ケミカル(株)製の「パイロフィル」がある。一方向性繊維シート50としては、配列させた炭素繊維フィラメントを樹脂で結合してシートを作製してもよく、市販品を用いてもよい。市販品の具体例としては、例えば、東レ(株)製の「トレカプリプレグ」や、三菱ケミカル(株)製の「パイロフィルプリプレグ」がある。
一方向性繊維シート50を構成するアラミド繊維の具体例としては、例えば、東レ(株)製の「ケブラー」、帝人(株)製の「トワロン(登録商標)」、「コーネックス」、「ノーメックス」がある。一方向性繊維シート50の市販品の具体例としては、ファイベックス(株)製の「フィブラシート」がある。
補強層5は、周囲のゴム層(歯部3)との接着性を高めるための接着処理により接着成分(図示せず)が付着していてもよい。接着処理を行わなくても、補強繊維フィラメント51の表面を覆う熱硬化性樹脂52によって、ゴム層との接着性を確保できるが、より接着性を高めるためには、接着処理を行うことが好ましい。接着処理としては、前述のRFL処理や、ゴム糊処理(ソーキング処理)がある。RFL処理は、一方向性繊維シート50をRFL液に浸漬後、熱処理して、一方向性繊維シート50に接着成分(RF縮合物を含む樹脂成分)を付着させる処理である。なお、前述のように、熱硬化性樹脂52が、RFL液による処理で生成した熱硬化性樹脂成分(RF縮合物を含む樹脂成分)である場合には、さらなるRFLによる接着処理は不要となる。ゴム糊処理は、未加硫のゴム組成物を溶剤に溶かしてゴム糊状にしたものを、一方向性繊維シート50の表面に塗布した後、溶剤を蒸発させて一方向性繊維シート50の表面に未加硫ゴム組成物の膜(接着成分)を形成する処理である。ゴム糊処理は、RFL液を用いた接着処理の後に行ってもよい。
[歯布6]
ベルト内周面(歯部3および歯底部7の表面)を構成する歯布6は、例えば、織布、編布、不織布などの布帛などで形成してもよい。慣用的には織布(帆布)である場合が多く、ベルト幅方向に延在する経糸とベルト周方向に延在する緯糸とを織成してなる織物で構成される。織布の織り組織は、経糸と緯糸とが規則的に縦横方向に交差した組織であれば特に制限されず、平織、綾織(または斜文織)、朱子織(繻子織、サテン)などのいずれであってもよく、これらの組織を組み合わせた織り組織であってもよい。好ましい織布は、綾織および朱子織組織を有している。
歯布6の緯糸および経糸を形成する繊維としては、前記短繊維と同様の繊維に加えて、ポリフェニレンエーテル系繊維、ポリエーテルエーテルケトン系繊維、ポリエーテルスルホン系繊維、ポリウレタン系繊維などが例示できる。これらの繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらの繊維のうち、有機繊維が汎用され、綿やレーヨンなどのセルロース系繊維、ポリエステル系繊維(PET繊維など)、ポリアミド系繊維(ポリアミド66繊維などの脂肪族ポリアミド繊維、アラミド繊維など)、PBO繊維、フッ素樹脂繊維[ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)繊維など]などが好ましい。また、これらの繊維と、伸縮性を有する弾性糸(例えば、ポリウレタンで形成されたスパンデックスなどの伸縮性を有するポリウレタン系弾性糸、伸縮加工(例えば、ウーリー加工、巻縮加工など)した加工糸など)との複合糸も好ましい。
経糸および緯糸の形態は、特に限定されず、1本の長繊維であるモノフィラメント糸、フィラメント(長繊維)を引き揃えたり、撚り合わせたマルチフィラメント糸、短繊維を撚り合わせたスパン糸(紡績糸)などであってもよい。前記マルチフィラメント糸または前記スパン糸は、複数種の繊維を用いた混撚糸または混紡糸であってもよい。緯糸は、前記伸縮性を有する弾性糸を含むのが好ましく、経糸は、製織性の点から、通常、弾性糸を含まない場合が多い。歯布6のベルト周方向への伸縮性を確保するため、弾性糸を含む緯糸はベルト周方向に延在し、経糸はベルト幅方向に延在する。
繊維(または糸)の平均径は、例えば1~100μm(例えば3~50μm)、好ましくは5~30μm、さらに好ましくは7~25μmである。糸(撚糸)の平均繊維径(太さ)について、緯糸は、例えば100~1000dtex(特に300~700dtex)程度であってもよく、経糸は、例えば50~500dtex(特に100~300dtex)程度であってもよい。緯糸の密度(本/cm)は、例えば5~50(特に10~30)程度であってもよく、経糸の密度(本/cm)は、例えば10~300(特に20~100)程度であってもよい。
織布は、多重織構造(二重織構造など)を有していてもよく、経糸と緯糸とを備えた織り組織において、少なくとも一部の緯糸を、フッ素樹脂含有繊維(PTFEなどのフッ素樹脂で形成された繊維を含む複合糸など)などの低摩擦係数の繊維(または低摩擦性繊維)で形成してもよい。例えば、前記経糸をナイロン66などのポリアミド繊維、ポリエステル繊維などで形成し、緯糸を、前記フッ素樹脂で形成された繊維単独;前記フッ素樹脂で形成された繊維と、ポリアミド繊維、ポリウレタン繊維(弾性糸)などの第2の繊維との複合糸;この複合糸と、前記複数の第2の繊維で形成された第2の複合糸との複合糸などで形成してもよい。
この態様においては、緯糸のうちの、歯布6の表面側(歯付プーリとのかみ合い側)に位置する(露出する)緯糸として、歯布6と歯付プーリとの間の摩擦を低減するために、摩擦係数が低いフッ素系繊維(例えば、PTFE繊維)を使用することが好ましい。一方、歯布6の裏面側(歯ゴム層との接着側)に位置する緯糸には、フッ素系繊維以外の繊維(ナイロン繊維やウレタン弾性糸)を使用することで、歯布6と歯部3を構成するゴムとの接着力を高めることが可能となる。この態様の歯布6では、歯布6と歯付プーリとのかみ合いでの摩擦を低減でき、発音を抑制できる。
また、フッ素系繊維の周囲には、ゴムを基材とする歯部3及び背部2の架橋(加硫)温度で融解する融点を有する低融点繊維が配されていることが好ましい。具体的には、フッ素系繊維と低融点繊維とが混撚されている、又は、フッ素系繊維が低融点繊維によってカバーされているなどの形態が含まれる。なお、歯部3及び背部2の架橋(加硫)条件は、特に限定されるものではなく、一般的には、架橋(加硫)温度100~200℃で、架橋(加硫)時間1分~5時間程度である。
この場合、歯部3及び背部2の架橋(加硫)時に低融点繊維が融解し、歯布6を構成する繊維間に流れ込んだ後、融点以下まで冷却することで低融点繊維が結晶化する。そのため、歯付プーリへのかみ込み時、或いは、歯付プーリからのかみ抜け時に、歯布6の表面に生じる衝撃や摩耗によってフッ素系繊維が切断・飛散するのが抑制される。これにより、歯部3及び背部2をより長期間保護して、ベルトの歯欠けを防止することができ、高負荷走行時の長寿命化が可能となる。
歯布6(歯付ベルト1中の歯布6)の平均厚みは、例えば0.1~2mm、好ましくは0.2~1.5mmである。なお、原料としての歯布(成形前の歯布)の平均厚みは、例えば0.5~3mm、好ましくは0.75~2.5mmである。
第1ゴム層33との接着性を高めるため、歯布6を形成する布帛には接着処理を施してもよい。接着処理としては、例えば、布帛をRFL処理液に浸漬した後、加熱乾燥する方法;布帛をエポキシ化合物またはイソシアネート化合物で処理する方法;ゴム組成物を有機溶媒に溶解してゴム糊とし、このゴム糊に布帛を浸漬処理した後、加熱乾燥する方法;これらの処理方法を組み合わせた方法などが例示できる。これらの方法は、単独でまたは組み合わせて行うことができ、処理順序や処理回数も限定されない。例えば、布帛をエポキシ化合物またはイソシアネート化合物で前処理し、さらにRFL処理液に浸漬した後、加熱乾燥してもよい。
さらに、歯布6と第1ゴム層33との接着性を高める目的で、歯布6を形成する布帛の裏面側(歯ゴム層との接着側)表面に、ゴム組成物を圧延した未架橋ゴムシートを積層してもよい。このゴム組成物(架橋ゴム組成物)は、前述の歯ゴム層(第1ゴム層33、第2ゴム層34)を形成する架橋ゴム組成物として例示された架橋ゴム組成物から適宜選択でき、慣用の接着ゴム組成物であってもよい。なお、このゴム組成物による未架橋ゴムシートは、歯付ベルト1において、歯布6と第1ゴム層33との間に介在する第3ゴム層(接着ゴム層)を形成してもよい。以上の接着処理を施した布帛を、歯布前駆体と表記する。
[背部2(背ゴム層21)]
背部2は、内周面において歯部3および歯底部7が形成されるとともに、その外周面側では、ベルト外周面を形成する背ゴム層21を有している。さらに、背ゴム層21は、ゴム組成物(架橋ゴム組成物)で形成されている。図1~図3の態様では、歯部3が形成されていない側の他方の表面(ベルト背面)は布帛(織布、編布、不織布等)で被覆されていないが、必要に応じて被覆されていてもよい。この布帛は、好ましい態様も含めて、歯布6として例示された布帛から選択できる。
背部2(背ゴム層21)の硬度は、ベルトの曲げ剛性を小さくし、屈曲性(プーリとの巻き付け性)や耐屈曲疲労性を確保できる点から、歯部3の硬度よりも小さい方が好ましい。具体的には、背ゴム層21を形成する架橋ゴム組成物のゴム硬度Hsは、JIS-A硬度で、例えば80~89度である。なお、JIS-A硬度は、背ゴム層21の表面の硬度であり、JIS K 6253(2012)に準拠して、タイプAデュロメータを用いて測定できる。背ゴム層21のJIS-A硬度を前記範囲に調整することにより、背部2の曲げ剛性が低くなり、優れた耐屈曲疲労性が得られる。背部2のJIS-A硬度が低すぎると、異物の衝突等により、背部2にクラックが発生する虞があり、逆に高すぎると、耐屈曲疲労性が低下し、背部2にクラックが発生する虞がある。
背部2(背ゴム層21)を形成するゴム組成物は、背部2と歯部3との密着性を損なわれない限り、特に限定されず、例えば、歯ゴム層の架橋ゴム組成物として例示された架橋ゴム組成物から選択でき、ゴム硬度が前記範囲となるように、適宜調整できる。背部2は歯部3とは異なるゴム組成物で形成してもよく、同じゴム組成物で形成してもよい。通常、背部2と歯部3とは、同系列のゴム又はポリマー又は同種のゴム成分を含む場合が多い。
特に、背ゴム層21を構成する架橋ゴム組成物において、ゴム成分は、背ゴム層21と歯部3との密着性を向上できる点から、第2ゴム層34(内部ゴム層)と同系列または同種のゴム成分を含むのが好ましく、同種のゴム成分であるのがさらに好ましい。
背ゴム層21の平均厚みは、例えば0.3~3mm、好ましくは0.5~2mmである。背部2の平均厚み(歯底部7における背部2の平均厚み)は、例えば1~5mm、好ましくは1.5~4mmである。
[心線4]
背部2には、背ゴム層21の内周側において、ベルト周方向に沿って延びる心線4が埋設されている。この心線4は、抗張体として作用し、歯付ベルト1の走行の安定性及び強度を向上できる。さらに、背部2では、通常、ベルト周方向に沿って延びる撚りコードである心線4が、ベルト幅方向に所定の間隔を空けて埋設されており、ベルト周方向に平行な複数本の心線4が配設されていてもよいが、生産性の点から、通常、螺旋状に埋設されている。螺旋状に配設する場合、ベルト周方向に対する心線4の角度は、例えば5°以下であってもよく、ベルト走行性の点から、0°に近いほど好ましい。
より詳細には、心線4は、図1に示すように、背部2のベルト幅方向の一方の端から他方の端にかけて、所定の間隔(又はピッチ)をおいて(又は等間隔で)埋設されていてもよい。隣接する心線4の中心間の距離である間隔(スピニングピッチ)は、心線4の径よりも大きければよく、心線4の径に応じて、例えば0.5~3.5mm、好ましくは0.8~3mm、さらに好ましくは1~2.8mmである。
心線4は、複数のストランドやマルチフィラメント糸を撚り合わせた撚りコードで形成されていてもよい。これらのうち、ストランドの撚りコードが好ましく、1本のストランドは、フィラメント(長繊維)を束ねて形成してもよい。撚りコードを形成するフィラメントの太さ、フィラメントの収束本数、ストランドの本数、及び撚り方の撚り構成については、特に制限されない。
心線4を形成する撚りコードは、片撚り、諸撚り、ラング撚りのコードを用いてもよい。心線4を、下撚りの撚り方向と上撚りの撚り方向とが同じであるラング撚りとすることにより、諸撚りまたは片撚りに比較して曲げ剛性が低くなり、優れた耐屈曲疲労性が得られる。
心線4を形成する繊維としては、特に制限されず、例えば、ポリエステル系繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維、ポリパラフェニレンナフタレート系繊維)、ポリベンゾオキサゾール繊維、アクリル系繊維、ポリアミド系繊維(脂肪族ポリアミド繊維、アラミド繊維など)などの合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維(スチール繊維)などの無機繊維などが例示できる。これらの繊維は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。心線を形成する繊維としては、低伸度高強度の点から、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維などの合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維などが汎用される。
特に高い負荷が作用する用途では、炭素繊維のマルチフィラメント糸が好適に用いられる。炭素繊維は、例えば、東レ株式会社製、商品名「トレカ」等が用いられる。
炭素繊維のマルチフィラメント糸は、フィラメント数の異なる6K、12Kなどのマルチフィラメント糸から選択することができる。6Kはフィラメント数が6000本、12Kはフィラメント数が12000本のマルチフィラメント糸を表している。6Kのマルチフィラメント糸の繊度は約400tex、12Kのマルチフィラメント糸の繊度は約800texである。
炭素繊維のマルチフィラメント糸の繊度が1000texより大きいと、耐屈曲疲労性が低下する虞がある。逆に炭素繊維のマルチフィラメント糸の繊度が300texより小さいものは材料コストが上昇すると共に、十分な引張強力を有する心線4を作製するために必要な下撚り糸の本数が増加するために、作業工数の増加を招いてしまう。
本実施形態では、12Kのマルチフィラメント糸(繊度は約800tex)1本を片撚りした炭素繊維コード(12K-1/0)を心線4としている。あるいは、12Kのマルチフィラメント糸(繊度は約800tex)1本を下撚りして下撚り糸を作製し、作製した下撚り糸を4本合わせて上撚りした、ラング撚りの炭素繊維コード(12K-1/4)を心線4としてもよい。なお、「12K-1/0」は、12Kのマルチフィラメント糸1本を片撚りした撚りコードで、「12K-1/4」は、12Kのマルチフィラメント糸1本を下撚りして下撚り糸を作製し、作製した下撚り糸を4本合わせて上撚りした撚りコードであることを表している。同様に、例えば「12K-1/3」は、12Kのマルチフィラメント糸1本を下撚りして下撚り糸を作製し、作製した下撚り糸を3本合わせて上撚りした撚りコードであることを表し、「12K-4/0」は、12Kのマルチフィラメント糸を4本合わせて片撚りした撚りコードであることを表す。
心線4には、背ゴム層21及び第2ゴム層34との接着性を高めるために、接着処理を施してもよい。接着処理の方法としては、例えば、撚りコードをレゾルシン-ホルマリン-ラテックス処理液(RFL処理液)に浸漬後、加熱乾燥して、撚りコードの表面に均一な接着層を形成する方法であってもよい。RFL処理液は、レゾルシンとホルマリンとの初期縮合物をラテックスに混合した混合物であり、ラテックスは、例えば、クロロプレンゴム、スチレン-ブタジエン-ビニルピリジン三元共重合体(VPラテックス)、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴムなどであってもよい。さらに、接着処理の方法は、エポキシ化合物又はイソシアネート化合物で前処理を施した後に、RFL処理液で処理する方法であってもよい。
撚りコード(または心線4)の平均直径(平均線径)は、例えば0.2~2.5mm程度である。特に高い負荷が作用する用途では1.0mm~2.5mm、好ましくは0.5~2.3mm、さらに好ましくは0.7~2.2mmであり、特に高い負荷が作用する用途では0.8~2.1mmが好ましい。心線径が細すぎると、心線4の伸びが大きくなることにより、歯欠け(歯部3の欠損)が発生する虞がある。心線径が太すぎると、心線4の耐屈曲疲労性の低下により、心線切断が発生する虞がある。なお、本明細書の一実施形態では、心線径を1.1mmに調整している。
[歯付ベルトの製造方法]
本実施形態の歯付ベルト1は、例えば、以下の工法(予備成形工法)で作製してもよい。
まず、補強層5を形成する一方向性繊維シート、歯布6を形成する歯布前駆体、第1ゴム層33(表部ゴム層)を形成する未架橋ゴムシート、第2ゴム層34(内部ゴム層)を形成する未架橋ゴムシート、背ゴム層21を形成する未架橋ゴムシートを作製する。
(予備成形工程)
次に、図5に示すように、下型に歯付ベルト1の歯部3に対応する複数の溝部(凹条)を有するプレス用金型(平型)に、歯布6を形成する歯布前駆体を敷設する。続いて、その上面に第1ゴム層33を形成する未架橋ゴムシートを積層して積層体Aを作製する。そして、ゴム組成物が軟化する程度の温度(例えば、70~90℃程度)に加熱しつつ、複数の溝部ごとに対応した突起(凸条)を備えた押さえ盤で積層体Aを加圧し、積層体Aを溝部内に圧入して所定形状を得る。このとき、押さえ盤の突起の形状は、後で配設する補強層5の形状や位置H2に対応した形状に調整されている。
次に、図6に示すように、所定形状を成した積層体Aの上面に、補強層5を形成する一方向性繊維シートを、繊維フィラメントがベルト周方向に配列するように配設する。そして、図6及び図7に示すように、積層体Aの形状に沿うように一方向性繊維シートを型付けして積層体Bを得る。型付けの方法は特に制限されるものではないが、一例として、ピニオンロールを使用して、プレス用金型(平型)に並ぶ溝部を順に一歯ずつ押し込み、型付けする方法(特開2001-263432、特開2005-41165などに開示)を用いることができる。
ここで、一方向性繊維シートは、補強繊維フィラメント51がシート状に結合されており、ばらけることがないため、予備成形工程において、取り扱いが容易である。
次に、図8に示すように、所定形状を成した積層体Bの上面に、第2ゴム層34を形成する未架橋ゴムシートを配設し、ゴム組成物が軟化する程度の温度(例えば、70~90℃程度)に加熱しつつ、上型で第2ゴム層34を形成する未架橋ゴムシートを加圧して溝部内に圧入することで歯部3を形成し、半架橋状態の予備成形体を得る。この圧入させて歯部3を形成する過程で、歯布6が歯部3の輪郭に沿った形態に伸張して最表面に配置され、その内部側に向かって第1ゴム層33、補強層5(一方向性繊維シート)、第2ゴム層34が順に配置される層構造が形成される。予備成形体をプレス用金型から脱型した後、歯部3に対応する複数の溝部(凹条)を有する円筒状モールドに、予備成形体を巻き付けて装着(歯部3と溝部とを嵌合)して、次工程へ移る。
(架橋成形工程)
得られた予備成形体の外周面に、心線4を構成する撚りコードを螺旋状に所定のピッチで(円筒状モールドの軸方向に所定のピッチを有するように)巻き付ける。さらにその外周側に、背ゴム層21を形成する未架橋ゴムシートを巻き付けて未架橋のベルト成形体(未架橋積層体)を形成する。
続いて、未架橋のベルト成形体が、円筒状モールドの外周に配置された状態で、さらにその外側に、蒸気遮断材であるゴム製のジャケットが被せられる。続いて、ジャケットが被せられたベルト成形体および円筒状モールドは、加硫缶等の架橋成形装置の内部に収容される。そして、架橋成形装置の内部でベルト成形体を加熱加圧すると、所望の形状が形成されるとともに、ベルト成形体に含まれる未架橋および半架橋のゴム成分の架橋反応により各構成部材が接合して一体的に硬化され、スリーブ状の架橋成形体(架橋ベルトスリーブ)が形成される。
(切断工程)
最後に、円筒状モールドから脱型した架橋ベルトスリーブを所定の幅に切断することにより、複数の歯付ベルト1が得られる。
(2次元有限要素法(FEM)による解析)
実施例1~5、比較例1~2、参考例1~2では、全厚(t)5.6mm、歯高さH1(歯布含む)3.5mm、歯ピッチ(P)8mm、歯型G8Mの歯付ベルトを用いて、歯せん断試験を模擬した2次元モデルを作成し、歯付ベルトの歯部と歯付プーリとの接触面にかかる荷重を与えた場合に、歯元に生じる応力を有限要素法解析によって、比較検証した。
歯付ベルトの2次元の有限要素法解析モデルは、図9に示すように、背ゴム層(A)と歯ゴム層(E)にあたるゴム部と、心線にあたる心線層1(B)及び心線層2(C)、一方向性繊維シートからなる補強層D、歯布層Fとを有する。なお、第1ゴム層と第2ゴム層と総じて歯ゴム層(E)としている。
このモデルは、歯付ベルトの一歯分をモデル化しており、ベルト背面のY方向の面は面内に拘束されている(図10参照)。
そして、心線層のモデルは、ベルト厚み方向における中立面にトラス要素を配置し(心線層1)、周囲をソリッド要素で構成した(心線層2)。
解析において歯付ベルトの歯部と歯付プーリとの接触面にかかる荷重を与える方法としては、歯剪断試験をモデルとした。具体的には、図10及び図11に示すように、ベルト背面をY方向の面内に固定した上で、歯付ベルトの歯部を歯せん断治具(歯付プーリの歯形状を想定した剛体)に引っ掛け、心線中心部を引張り、変位させた。
ここで、解析に用いた物性値として、ソリッド要素に対しては超弾性材料モデルであるMooney-Rivlinの材料特性(C10,C01)であり、ゴム部(背ゴム層(A)、歯ゴム層(E))は、C10=5.0MPa、C01=1.25MPa、歯布層Fは、C10=10MPa、C01=1.2MPaに設定した。
また、心線層1(B)のトラス要素部は線形材料モデルであり、ヤング率=27000MPa、ポアソン比=0.4、心線層2(C)のソリッド要素部は線形材料モデルであり、ヤング率=2000MPa、ポアソン比=0.4に設定した。
補強層Dは線形材料モデルであり、ヤング率は変量し、ポアソン比=0.4に設定した。
また、補強層Dの厚み=0.1mmと設定した。
補強層Dの配置はモデル上で変量した。
以上のモデルを用いて、有限要素法解析を行い、変位に対する変位力(反力)を歯部の剛性(以下、歯剛性)と定義して評価した。さらに歯元に発生する応力をMises応力で評価した。
(有限要素法解析結果の合否判定基準)
以下に示す実施例及び比較例として検証した種々の歯付ベルトに関して、2次元の有限要素モデルを作成して解析を行い、歯剛性の最大値Xと、歯元に発生するMises応力の最大値Yを算出した。歯剛性の最大値Xは大きい方が優れており、Mises応力の最大値Yは、小さい方が優れている。以下の基準に基づいて優劣を判定した。
(歯剛性の最大値Xの判定基準)
A判定:100N/mm以上
B判定:62N/mm以上、100N/mm未満
C判定:62N/mm未満
(Mises応力の最大値Yの判定基準)
A判定:15.0MPa未満
B判定:15.0MPa以上、22.0MPa未満
C判定:22.0MPa以上
(有限要素法解析による検証結果)
比較検証した実施例及び比較例の歯付ベルトについて、各ベルトの仕様と、有限要素法解析によって算出した歯剛性の最大値X、及び、歯元に発生するMises応力値の最大値Yとを、総合判定結果とともに図12及び図14に示す。なお、図12及び図14において、各ベルトの仕様につき、歯部における補強層の位置を、歯高さH1に対する補強層の位置H2の割合[H2/H1×100(%)]で示した(図9参照)。さらに、一方向性繊維弾性率(GPa)、歯剛性の最大値X(N/mm)、歯元に発生するMises応力の分布図、歯元に発生するMises応力の値の最大値Y(MPa)を示した。一方向性繊維弾性率とは、一方向性繊維シート(補強層)を構成する補強繊維フィラメントの引張弾性率を意味する。
また、図13(A)では、図12における、歯高さH1に対する補強層の位置H2の割合[H2/H1×100(%)]と歯剛性との関係性をグラフ化したものである。また、図13(B)では、図12における、歯高さH1に対する補強層の位置H2の割合[H2/H1×100(%)]とMises応力との関係性をグラフ化したものである。また、図15(A)では、図14における、一方向性繊維弾性率と歯剛性との関係性をグラフ化したものである。また、図15(B)では、図14における、一方向性繊維弾性率とMises応力との関係性をグラフ化したものである。
(総合判定)
図12(及び図13)、図14(及び図15)に示す総合判定では、以下の基準に基づいてAランク~Cランクに分類した。
Aランク:X,Yが共にA判定である場合
Bランク:X,Yの一方又は両方がB判定である場合(C判定ではない)
Cランク:X,Yが一方でもC判定である場合
(実施例1~3及び比較例1~2:図12、図13)
実施例1~3及び比較例1~2について、歯ピッチ=8.0mm、歯型G8Mの歯付ベルトにおいて、一方向性繊維弾性率115GPaの一方向性繊維シートを補強層として、歯高さH1に対する補強層の位置H2を変化させたときの歯剛性の最大値X(N/mm)、及び、歯元に発生するMises応力の最大値Y(MPa)の解析結果及び総合判定結果を図12及び図13に示した。
補強層を埋設しない(即ち、歯高さH1に対する補強層の位置H2の割合H2/H1が0%)場合(比較例1)、歯剛性の最大値Xは61N/mmと小さく、歯元に発生するMises応力の最大値Yは26.2MPaと大きくなり、いずれもC判定で、総合判定がCランクとなった。
これに対して、補強層を歯の形状(略輪郭)に沿って埋設した場合には、以下のように歯剛性の最大値Xが増大し、且つ、歯元に発生するMises応力の最大値Yの減少が見られた。
例えば、歯高さH1に対する補強層の位置H2の割合H2/H1が6%(0.2/3.5≒0.06)の歯付ベルト(比較例2)では、歯剛性は最大値X=86N/mmでB判定に向上したが、歯元に発生するMises応力は最大値Y=24.0MPaで依然と大きく(C判定)、総合判定がCランクのままであった。
歯高さH1に対する補強層の位置H2の割合H2/H1が34%(1.2/3.5≒0.34)の歯付ベルト(実施例1)では、歯剛性は最大値X=133N/mm、歯元に発生するMises応力は最大値Y=12.5MPaで、いずれもA判定で、総合判定がAランクとなった。
歯高さH1に対する補強層の位置H2の割合H2/H1が63%(2.2/3.5≒0.63)の歯付ベルト(実施例2)では、歯剛性は最大値X=140N/mm、歯元に発生するMises応力は最大値Y=11.0MPaで、いずれもA判定で、総合判定がAランクとなった。
歯高さH1に対する補強層の位置H2の割合H2/H1が91%(3.2/3.5≒0.91)の歯付ベルト(実施例3)では、歯剛性は最大値X=137N/mm、歯元に発生するMises応力は最大値Y=10.9MPaで、いずれもA判定で、総合判定がAランクとなった。
以上の結果から、歯高さH1に対する補強層の位置H2の割合H2/H1が大きくなるにつれ、歯剛性の最大値Xが増大し、歯元に発生するMises応力の最大値Yが減少するが、H2/H1が34%以上の歯付ベルトがAランクとなり、34%以上では顕著な変化がなくなっている。
(実施例1、実施例4~5、参考例1~2:図14、図15)
実施例1の歯付ベルト(一方向性繊維弾性率が115GPa、歯高さH1に対する補強層の位置H2の割合H2/H1が34%)を基準(ベース)にして、H2/H1を34%で一定にしたまま、一方向性繊維弾性率を変化させた場合の歯剛性の最大値X、及び歯元に発生するMises応力の最大値Yの解析結果を図14及び図15に示した。
一方向性繊維弾性率が0.5GPaの歯付ベルト(参考例1)では、歯剛性は最大値X=64N/mmと小さくなり(B判定)、歯元に発生するMises応力は最大値Y=25.1MPaと大きくなり(C判定)、総合判定がCランクとなった。
一方向性繊維弾性率が5GPaの歯付ベルト(参考例2)では、歯剛性は最大値X=79N/mm、歯元に発生するMises応力は最大値Y=20.7MPaで、いずれもB判定で、総合判定がBランクとなった。
一方向性繊維弾性率が50GPaの歯付ベルト(実施例4)では、歯剛性は最大値X=118N/mm、歯元に発生するMises応力は最大値Y=13.7MPaで、いずれもA判定で、総合判定がAランクとなった。
実施例1よりも一方向性繊維弾性率が大きい歯付ベルト(230GPa:実施例5)では、歯剛性は最大値X=140N/mm、歯元に発生するMises応力は最大値Y=12.5MPaで、いずれもA判定で、総合判定がAランクとなった。
以上の結果から、一方向性繊維弾性率が大きくなるにつれて、歯剛性の最大値Xが増大し、歯元に発生するMises応力の最大値Yが減少するが、一方向性繊維弾性率が50GPa以上の歯付ベルトがAランクとなり、115GPa以上では顕著な変化がなくなっている。
(歯付ベルトの歯剛性評価)
実施例A~Mおよび比較例A~Gでは、下記表1~8に示す材料・構成に基づき作製した各歯付ベルトから試験片(幅20mm、長さ196mm)を採取し、歯剛性試験を行い、各歯付ベルトの歯剛性を比較評価した。
[ゴム組成物(質量部)]
Figure 0007085699000002
[ゴム組成物の使用材料]
HNBR:日本ゼオン(株)製「Zetpol2010」、ヨウ素価11mg/100mg
不飽和カルボン酸金属塩を含むHNBR:日本ゼオン(株)製「Zeoforte ZSC2295CX」、ベースHNBR:不飽和カルボン酸金属塩(質量比)=100:110、ベースHNBRのヨウ素価28mg/100mg
アラミド短繊維:帝人(株)製「コーネックス」、平均繊維長3mm、平均繊維径14μm
ステアリン酸:日油(株)製「ステアリン酸つばき」
カーボンブラックSRF:東海カーボン(株)製「シーストS」、平均粒子径66nm、ヨウ素吸着量26mg/g
シリカ:エボニック・デグサ・ジャパン(株)製「ウルトラシルVN-3」、比表面積155~195m2/g
炭酸カルシウム:丸尾カルシウム(株)製「スーパー#1500」、平均粒子径1.5μm
酸化亜鉛:堺化学工業(株)製「酸化亜鉛2種」、平均粒子径0.55μm
老化防止剤:p,p'-ジオクチルジフェニルアミン、精工化学(株)製「ノンフレックスOD3」
有機過酸化物:1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、理論活性酸素量9.45%
共架橋剤:N,N'-m-フェニレンジマレイミド、大内新興化学(株)製「バルノックPM」
可塑剤:(株)ADEKA製「アデカサイザーRS700」
[補強層]
一方向性繊維シート1:東レ(株)製「トレカT700S」炭素繊維フィラメント(引張弾性率230GPa、フィラメント径7μm、密度1.80g/cm3)を用い、エポキシ樹脂で結合して、3水準の厚み0.05mm(目付量60g/m2)、0.10mm(目付量120g/m2)、0.20mm(目付量240g/m2)のシートを調製した。
一方向性繊維シート2:帝人(株)製「テナックスIMS60」炭素繊維フィラメント(引張弾性率290GPa、フィラメント径6μm、密度1.73g/cm3)を用い、エポキシ樹脂で結合して、厚み0.10mm(目付量120g/m2)のシートを調製した。
一方向性繊維シート3:東レ(株)製「ケブラー49」アラミド繊維フィラメント(引張弾性率112GPa、フィラメント径12μm、密度1.45g/cm3)を用い、エポキシ樹脂で結合して、3水準の厚み0.05mm(目付量50g/m2)、0.10mm(目付量100g/m2)、0.20mm(目付量200g/m2)のシートを調製した。
一方向性繊維シート4:東レ(株)製「ケブラー119」アラミド繊維フィラメント(引張弾性率54.7GPa、フィラメント径12μm、密度1.44g/cm3)を用い、エポキシ樹脂で結合して、3水準の厚み0.05mm(目付量50g/m2)、0.10mm(目付量100g/m2)、0.20mm(目付量200g/m2)のシートを調製した。
すだれシート1:一方向に配向するアラミド繊維の撚りコード(1670dtex/1×2)が、綿の細糸(番手20S/1)で連結されたシート(通称、すだれコード)。撚りコードの密度を50本/5cmで、細糸の密度を4本/5cm、シートの厚みを0.7mmとした。
すだれシート2:一方向に配向するPET繊維の撚りコード(1100dtex/1×2)が、綿の細糸(番手20S/1)で連結されたシート(通称、すだれコード)。撚りコードの密度を50本/5cmで、細糸の密度を4本/5cm、、シートの厚みを0.6mmとした。
[心線]
12Kのマルチフィラメント糸[東レ(株)製「トレカT700SC-12000」、単糸繊度0.67dtex、総繊度800tex]1本を片撚りした炭素繊維コード(12K-1/0,引張弾性率230GPa)を作製し、HNBR系オーバーコート処理剤による接着処理を行って、心線径1.1mmの心線を得た。
[歯布および歯布の処理]
表2に示す織布をRFL処理液およびゴム糊を用いて浸漬処理して歯布前駆体を作製した。詳しくは、RFL処理は、表3に示す2種類のRFL処理液(RFL1、RFL2)を用い、RFL1、RFL2の順に浸漬処理を行った。さらに、ゴム糊処理も、表4に示す2種類のゴム糊(ゴム糊1、ゴム糊2)を用い、ゴム糊1、ゴム糊2の順に浸漬処理を行った。
(織布構成)
Figure 0007085699000003
※1:PTFE繊維[東レ(株)製「トヨフロン1330dtex」]
※2:ポリエステル繊維[ユニチカ(株)製「コルネッタ」、芯部融点256℃、鞘部融点160℃の芯鞘型複合繊維]
(RFL配合(質量部))
Figure 0007085699000004
(ゴム糊配合(質量部))
Figure 0007085699000005
[未架橋ゴムシートの作製]
歯部(第1ゴム層、第2ゴム層)および背部(背ゴム層)を形成するための未架橋ゴムシートとして、表1に示す配合の各ゴム組成物について、バンバリーミキサーを用いて混練し、得られた混練ゴムをカレンダーロールで所定の厚みに圧延し、未架橋ゴムシートを作製した。未架橋ゴムシート中に含まれるアラミド短繊維は、圧延方向に配向していた。
[歯付ベルトの製造]
実施例A~Mおよび比較例A~Gでは、以下に示すように、本実施形態で説明した予備成形工法を用いて、全厚9.0mm、歯型S14M、歯高さ(歯布含む)5.3mm、歯ピッチ14mm、歯数80、周長1120mm、幅20mmの歯付ベルトを作製した。
各実施例、比較例および参考例で作製した歯付ベルトについて、歯部の構成(補強層の構成)および歯剛性の測定結果を表5~8に示す。
Figure 0007085699000006
Figure 0007085699000007
Figure 0007085699000008
Figure 0007085699000009
(比較例B、C、実施例A~C)
歯付ベルトの歯部に対応する複数の溝部(凹条)を有するプレスモールド(平型)に、歯布を形成する歯布前駆体、第1ゴム層を形成する未架橋ゴムシート(ゴム組成物A)の順に積層し、温度90℃、プレス圧(面圧)20.2MPaの条件で加圧して半架橋状態の積層体Aを形成し、次いで補強層5を形成する一方向性繊維シート(一方向性繊維シート1;目付量120g/m2、厚み0.10mm)を型付けして積層体Bを形成し、さらに第2ゴム層を形成する未架橋ゴムシート(ゴム組成物A)を圧入して予備成形体を作製した。
次に、円筒状モールドに、予備成形体を巻き付けて装着(歯部と溝部とを嵌合)して、予備成形体の外周面に心線を構成する撚りコードを螺旋状にスピニングした(テンション:150~250N/本、スピニングピッチ:1.25mm、スピニング速度:1.5m/s)。さらにその外周側に、背ゴム層を形成する未架橋ゴムシート(ゴム組成物B)を巻き付けて未架橋のベルト成形体(未架橋積層体)を形成した。
続いて、加硫缶を用いて、加熱温度179℃、蒸気圧0.83MPaの条件で40分間の架橋成形を行い、架橋成形体(架橋ベルトスリーブ)を作製した。
最後に、円筒状モールドから脱型した架橋ベルトスリーブを幅20mmに切断することにより、歯付ベルトを得た。
なお、補強層5は、一方向性繊維シートに含まれる繊維フィラメントの配列方向がベルト長手方向となるように配置し、各例でのベルト厚み方向の位置H2は表5に記載の位置とした。
(実施例D、E)
補強層5を形成する一方向性繊維シート1について、実施例Dでは目付量を60g/m2(厚み0.05mm)に、実施例Eでは目付量を240g/m2(厚み0.20mm)に変更したこと以外は、実施例Bと同様に歯付ベルトを作製した。
(実施例F)
補強層5を形成する一方向性繊維シート1について、目付量を60g/m2(厚み0.05mm)に変更したこと以外は、実施例Cと同様に歯付ベルトを作製した。
(実施例G)
補強層5を形成する一方向性繊維シートを、一方向性繊維弾性率の異なる一方向性繊維シート2(目付量を120g/m2、厚み0.10mm)に変更したこと以外は、実施例Bと同様に歯付ベルトを作製した。
(実施例H~K)
実施例Hでは、補強層5を形成する一方向性繊維シートを、一方向性繊維弾性率の異なる一方向性繊維シート3(目付量を100g/m2、厚み0.10mm)に変更したこと以外は、実施例Bと同様に歯付ベルトを作製した。
実施例Iでは、補強層5を配置するベルト厚み方向の位置H2を5.3mm(H2/H1×100=100%)に変更したこと以外は、実施例Hと同様に歯付ベルトを作製した。
実施例Jでは、補強層5を形成する一方向性繊維シート3について、目付量を50g/m2(厚み0.05mm)に、実施例Kでは目付量を200g/m2(厚み0.20mm)に変更したこと以外は、実施例Hと同様に歯付ベルトを作製した。
(比較例E、実施例L、M)
実施例Lでは、補強層5を形成する一方向性繊維シートを、一方向性繊維弾性率の異なる一方向性繊維シート4(目付量を100g/m2、厚み0.10mm)に変更したこと以外は、実施例Bと同様に歯付ベルトを作製した。
比較例Eでは、補強層5を形成する一方向性繊維シート4について、目付量を50g/m2(厚み0.05mm)に、実施例Mでは目付量を200g/m2(厚み0.20mm)変更したこと以外は、実施例Lと同様に歯付ベルトを作製した。
(比較例D)
補強層5を配置するベルト厚み方向の位置H2を5.3mm(H2/H1×100=100%)に変更したこと以外は、比較例Eと同様に歯付ベルトを作製した。
(比較例F、G)
比較例Fでは、補強層5を形成する一方向性繊維シートを、すだれシート1(厚み0.70mm)に変更したこと以外は、実施例Bと同様に歯付ベルトを作製した。
比較例Gでは、補強層5を形成する一方向性繊維シートを、すだれシート2(厚み0.60mm)に変更したこと以外は、実施例Bと同様に歯付ベルトを作製した。
(比較例A)
補強層を設けない例として、本実施形態で説明した予備成形工法の中で、一方向性繊維シートを使用しない方法で予備成形体を作製した。すなわち、歯付ベルトの歯部に対応する複数の溝部(凹条)を有するプレスモールド(平型)に、歯布を形成する歯布前駆体、歯ゴム層(第1ゴム層と第2ゴム層)を形成する未架橋ゴムシート(ゴム組成物A、シート厚み2.3mm)の順に積層し、温度90℃、プレス圧(面圧)20.2MPaの条件で圧入し、半架橋状態の予備成形体を作製した。
以降の工程は、他の実施例および比較例と同様に歯付ベルトを作製した。
[歯剛性試験]
作製した歯付ベルトから試験片(幅20mm、長さ196mm)を採取し、図16(A)に示すように試験片の歯部を歯せん断治具(歯付プーリの歯形状を想定した剛体)の突起部に係合し、1つの歯を一定圧力(締め付けトルク0.98cNm/1mm幅)で押え付けた状態で、オートグラフによって2mm/minの速度で引っ張った時の変位量に対する荷重を測定(図17のグラフ)し、その傾きK1(N/mm)を算出した。このとき、試験片の両端をチャック(掴み具)で掴んだ掴み幅は126mmとした。なお、この方法で得られるK1は歯部の変形だけでなくベルトの弾性伸びによる変位の影響も含まれた測定値である。そのため、図16(B)に示すように、歯せん断治具と係合する部分を除いた方法で、同様に測定して得られた傾きK2をベルトの弾性伸びの影響による数値と見做した。そして、下記の式(1)の関係により、K1とK2とから算出したKの値を、歯部の剛性(歯剛性)を表す指標とした。
なお、表5~8では、この歯剛性の指標Kの値について、補強層(一方向性繊維シート)を含まない比較例AのK値を1.00とし、各実施例および比較例のK値を相対値に換算して示しており、この値が大きいほど、補強層の効果で歯部の剛性(耐変形性)が向上していることを示す。
Figure 0007085699000010
(歯剛性の判定基準)
歯付ベルトの歯剛性に関する判定は、以下の基準に基づいてAランク~Cランクに分類した。Cランク、Bランク、Aランクの順に歯剛性(耐変形性)に優れるグレードに位置づけされるが、実用的に補強層の効果が顕著に現れるのは、AランクまたはBランクの水準と判定した。
Aランク:K値(相対値)が1.7以上
Bランク:K値(相対値)が1.5以上1.7未満
Cランク:K値(相対値)が1.5未満
(検証結果)
[1]一方向性繊維シート1(230GPa)を用いた場合
(実施例A~C、比較例A~C)
補強層(一方向性繊維シート)を含まない比較例Aの歯付ベルト(歯剛性の指標K値1.00)に対して、一方向性繊維弾性率が高い炭素繊維のフィラメントで形成した一方向性繊維シート1(230GPa)を、厚み0.10mm(指数Z=230×0.10=23)で、ベルト厚み方向の位置H2(およびH2/H1の割合)を変量して配置した場合の歯剛性(K値)を比較した例である。
H2/H1の割合が小さい(すなわち心線に近い側に配置される)場合である、比較例B(9%)、比較例C(19%)では、歯剛性(K値)がCランクであった。実施例A(38%)、実施例B(53%)、実施例C(100%)ではAランクに向上した。
(実施例D~F)
実施例Bの補強層(H2/H1×100=53%、厚み0.10mm、指数Z=23)に対して、厚みを変量した実施例D(厚み0.05mm、指数Z=12)、実施例E(厚み0.20mm、指数Z=46)においても、歯剛性(K値)がAランクとなった。
また、実施例Cに対してさらに補強層の厚みを小さくした例、および実施例Dに対してH2/H1の割合を大きくした例に相当する、実施例Fにおいても歯剛性(K値)がAランクとなった。
[2]一方向性繊維シート2(290GPa)を用いた場合
(実施例G)
実施例Bの補強層の配置(H2/H1×100=53%、厚み0.10mm)において、より一方向性繊維弾性率が高いフィラメントで形成した一方向性繊維シート2(290GPa)を用いた実施例Gの補強層(指数Z=290×0.10=29)でも、歯剛性(K値)がAランクとなった。
[3]一方向性繊維シート3(112GPa)を用いた場合
(実施例H~K)
実施例Bの補強層の配置(H2/H1×100=53%、厚み0.10mm)において、一方向性繊維弾性率が小さいアラミド繊維のフィラメントで形成した一方向性繊維シート3(112GPa)を用いた実施例Hの補強層(指数Z=112×0.10=11)では、実施例Bよりは小さいが歯剛性(K値)がAランクとなった。
また、実施例Hの補強層に対して、補強層の配置をH2/H1×100が100%となる位置に変更した実施例Iでも、歯剛性(K値)がAランクとなった。
さらに、実施例Hの補強層(H2/H1×100=53%、厚み0.10mm、指数Z=11)に対して、厚みを大きくした実施例K(厚み0.20mm、指数Z=22)でも歯剛性(K値)がAランクとなったが、厚みを小さくした実施例J(厚み0.05mm、指数Z=5.6)では、歯剛性(K値)が若干不足してBランクとなった。
[4]一方向性繊維シート4(54.7GPa)を用いた場合
(実施例L~M、比較例D~E)
実施例Hの補強層の配置(H2/H1×100=53%、厚み0.10mm)において、より一方向性繊維弾性率が小さいアラミド繊維のフィラメントで形成した一方向性繊維シート4(54.7GPa)を用いた実施例Lの補強層(指数Z=54.7×0.10=5.5)では、歯剛性(K値)が実施例Hより小さくなりBランクとなった。
この実施例Lの補強層に対して、厚みを大きくした実施例M(厚み0.20mm、指数Z=11)では歯剛性(K値)がAランクとなった。
一方、実施例Lの補強層に対して、厚みを小さくした比較例E(厚み0.05mm、指数Z=2.7)では歯剛性(K値)が不足してCランクとなった。
さらに、比較例Eに対して、補強層の配置をH2/H1×100が100%となる位置に変更した比較例Dでは、一層歯剛性(K値)が不足しCランクとなった。
[5]すだれシート(通称、すだれコード)を用いた場合
実施例Bの補強層の配置(H2/H1×100=53%)において、一般的にすだれコードと称されて汎用されているすだれシート1(アラミド繊維)、すだれシート2(PET繊維)を用いて作製した歯付ベルトについて、それぞれ比較例F、比較例Gとして歯剛性(K値)を比較検証した。
比較例Fのすだれシートの厚み(すだれコードの厚み)は0.7mm、比較例Gのすだれシートの厚み(すだれコードの厚み)は0.6mmであった。いずれも、構成する撚りコードがベルト長手方向に配向するようにすだれシートを配置した。
これらのすだれシートは、本実施例で用いた一方向性繊維シートに比べて厚みが大きいにもかかわらず、歯剛性(K値)が不足してCランクとなった。
以上の結果から、補強層を設けない場合の歯剛性(K値)に対して、一方向性繊維シートによる補強層の配置により歯剛性(K値)が向上することが確認できた。
引張弾性率の高い繊維フィラメントで形成された一方向性繊維シートを用い、下記のパラメータの調整により、歯剛性(K値)に対する補強効果の高い好適な範囲を見出せた。
・補強層が配置される領域(歯部の底部から当該補強層までの最大高さH2が、歯部の底部から歯先までの高さH1の30~100%の領域)
・補強層(一方向性繊維シート)の厚みと、繊維フィラメントの引張弾性率との組み合わせ
・指数Zが5以上の場合、Bランク(K値が1.5以上1.7未満)
・指数Zが10以上(60以下)の場合、Aランク(K値が1.7以上)。
1 歯付ベルト
2 背部
21 背ゴム層
3 歯部
31 底部
32 歯先
33 第1ゴム層
34 第2ゴム層
4 心線
5 補強層
50 一方向性繊維シート
51 補強繊維フィラメント
52 熱硬化性樹脂
6 歯布
H1 歯高さ
H2 補強層の位置

Claims (3)

  1. ベルト周方向に所定の間隔で配設された歯部と、前記歯部の輪郭に沿って埋設された補強層と、を有する歯付ベルトであって、
    前記補強層は、前記歯部の底部から当該補強層までの最大高さが、前記歯部の底部から歯先までの高さの30~100%の領域の範囲になるように前記歯部に埋設され、
    前記補強層は、前記ベルト周方向に配列された複数の補強繊維フィラメントを含み、
    前記補強層において、前記ベルト周方向に交差する繊維の単位面積当たりの重量が、前記補強繊維フィラメントの単位面積当たりの重量の30%以下であり、
    前記補強層は前記補強繊維フィラメントが、無撚の状態で、前記ベルト周方向に配列しつつシート状になるように結合された構造をしており、
    前記補強層の厚みは、0.05~0.2mmであり、
    前記補強繊維フィラメントの引張弾性率(GPa)は、
    50~300GPaの範囲内であり、且つ、
    5≦[前記補強層の厚み(mm)]×[前記補強繊維フィラメントの引張弾性率(GPa)]≦60
    の条件を満たすことを特徴とする、歯付ベルト。
  2. 前記補強繊維フィラメントの太さは、0.1~50μmであることを特徴とする、請求項1に記載の歯付ベルト。
  3. 前記補強層は、前記ベルト周方向に交差する繊維を含まないことを特徴とする、請求項1又は2に記載の歯付ベルト。
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