JP2010144854A - ゴム製歯付ベルト - Google Patents
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Abstract
【課題】歯付ベルトの強度向上により、動力伝達装置の正常な動きを維持できるベルトを提供する。
【解決手段】ベルト長手方向に沿って所定間隔で配置された複数の歯部7、心線9が埋設された背部4を含むゴムを基材としたベルト本体3と、前記複数の歯部7の表面を被覆する歯布11からなるゴム製歯付ベルト3であって、歯布11が多重織構造を有し、前記経糸6がナイロン繊維であり、前記2種類の緯糸8のうちの前記歯布11の表面側に位置する緯糸8がフッ素系繊維であり、該フッ素系繊維の周囲に、前記ベルト本体の加硫温度で軟化又は融解する、低沸点繊維が配されたものであり、前記少なくとも歯部7を構成するゴムが不飽和カルボン酸金属塩を含んだ水素化ニトリルゴムのみからなるポリマーであって、前記水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを100:70〜100:100の質量比で混合したポリマー成分から構成されているゴム製歯付ベルト。
【選択図】図1
【解決手段】ベルト長手方向に沿って所定間隔で配置された複数の歯部7、心線9が埋設された背部4を含むゴムを基材としたベルト本体3と、前記複数の歯部7の表面を被覆する歯布11からなるゴム製歯付ベルト3であって、歯布11が多重織構造を有し、前記経糸6がナイロン繊維であり、前記2種類の緯糸8のうちの前記歯布11の表面側に位置する緯糸8がフッ素系繊維であり、該フッ素系繊維の周囲に、前記ベルト本体の加硫温度で軟化又は融解する、低沸点繊維が配されたものであり、前記少なくとも歯部7を構成するゴムが不飽和カルボン酸金属塩を含んだ水素化ニトリルゴムのみからなるポリマーであって、前記水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを100:70〜100:100の質量比で混合したポリマー成分から構成されているゴム製歯付ベルト。
【選択図】図1
Description
本発明は、例えば、一般産業用で高負荷をベルトによって伝達する機械の同期伝動用等に使用される歯布被覆のゴム製歯付ベルトに関するものである。
歯付ベルトの故障形態は、心線の屈曲疲労及びゴムの耐熱性不足によるベルト切断に対しては、心線材質、心線構成の細径化等の改良、心線処理剤の耐熱性改良が実施されている。又、ゴムの耐熱性改良についても水素添加ニトリルゴムの使用等により故障は減少している。
特に、高負荷馬力を伝達する一般産業用機械に使用される歯付ベルトは、高負荷の為、負荷を受ける歯底部の摩耗が大きく、その歯底部の摩耗から歯欠けが発生し易い。
特許文献1には、歯布の一方の糸に高接着性を有する6−ナイロン或いは6・6ナイロンの繊維材料とし、他方の糸をフッ素系繊維或いはカーボン繊維とするものであることが開示されているが、歯布の他方の糸にフッ素系繊維又はカーボン繊維を使用するのみで、歯付ベルト歯部の寸法精度を容易に実現できない。さらには、高度な寸法精度を要する歯付ベルトとしては、使用可能な寸法が発現できなかった。
さらに、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩が含有された水素化ニトリルゴムとのブレンドしたゴム組成物が歯付ベルトの歯部に使用されていた。
しかし、このブレンドしたゴム組成物は、ゴム硬度が所定の硬度まで高くならず、そのため歯欠け等が発生し、高負荷で走行試験をしたときに短時間で寿命となっていた。
本発明は、このような問題点を解決するものであり、歯付ベルトの歯部に使用される歯布の摩擦係数を下げることにより、高負荷下で発生するベルト歯布の摩耗、摩耗による歯部の亀裂からなる歯の損傷が防止でき、さらに歯部のゴム硬度を高くすることにより動力伝達装置の正常な動きを維持できるベルトを提供することを目的とする。
本発明は、ベルト長手方向に沿って所定間隔で配置された複数の歯部、及び、心線が埋設された背部を含む、ゴムを基材としたベルト本体と、前記複数の歯部の表面を被覆する歯布とを有するゴム製歯付ベルトであって、前記歯布が、経糸と少なくとも2種類の緯糸とが織成された多重織構造を有し、前記経糸がナイロン繊維であり、前記2種類の緯糸のうちの前記歯布の表面側に位置する緯糸がフッ素系繊維であり、該フッ素系繊維の周囲に、前記ベルト本体の加硫温度で軟化又は融解する、低沸点繊維が配されたものであり、前記少なくとも歯部を構成するゴムが水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを100:70〜100:100の質量比で混合したポリマー成分から構成されているゴム製歯付ベルトにある。
歯布を織成する緯糸のうち、歯布の表面側に位置する緯糸をフッ素系繊維とすることによって、歯布と歯付プーリとの間の摩擦を低減することができる。又、歯布の歯部との接着側に位置する緯糸にはフッ素系繊維以外の繊維を使用することで、歯布と歯部のゴムとの接着力を高めることが可能となる。
又、ベルト本体のゴムを高温で硬化(加硫)させるときに、低融点繊維が軟化又は融解し、歯布を構成する繊維間に流れ込んだ後、低融点繊維が結晶化する。そのため、歯付プーリへのかみ込み時、或いは、歯付プーリからのかみ抜け時に、歯布表面に生じる衝撃や摩耗によってフッ素系繊維が切断・飛散するのが抑制される。これによりベルト本体をより長期間保護して、ベルトの歯欠けを防止することができ、高負荷走行時の高寿命化が可能となる。
又、ベルト歯表面の歯布がフッ素繊維とすることで、摩擦係数が小さくなり、プーリ上でプーリ幅方向へベルトが移動しやすくなっているが、プーリフランジとベルト歯の接触面積を小さくし、発音を抑制することができる。
又、ベルト本体のゴムを高温で硬化(加硫)させるときに、低融点繊維が軟化又は融解し、歯布を構成する繊維間に流れ込んだ後、低融点繊維が結晶化する。そのため、歯付プーリへのかみ込み時、或いは、歯付プーリからのかみ抜け時に、歯布表面に生じる衝撃や摩耗によってフッ素系繊維が切断・飛散するのが抑制される。これによりベルト本体をより長期間保護して、ベルトの歯欠けを防止することができ、高負荷走行時の高寿命化が可能となる。
又、ベルト歯表面の歯布がフッ素繊維とすることで、摩擦係数が小さくなり、プーリ上でプーリ幅方向へベルトが移動しやすくなっているが、プーリフランジとベルト歯の接触面積を小さくし、発音を抑制することができる。
又、前記歯部を構成するゴム組成物が不飽和カルボン酸金属塩を含んだ水素化ニトリルゴムのみからなるポリマーであって、前記水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを100:70〜100:100の質量比とすることによって、ベルト歯部を構成するゴムの硬度が高くなり、高負荷が歯部に掛かった場合でも歯欠け等の不具合を起こすことが無い。
請求項2に記載の発明は、前記低融点繊維が、少なくともポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、又はオレフィン系繊維から選ばれたものである請求項1に記載のゴム製歯付ベルトにある。
請求項3に記載の発明は、前記少なくとも歯部を構成するゴムにはシリカが含まれない請求項1又は2に記載のゴム製歯付ベルトにある。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1記載発明の効果に加えて、ゴムの発熱が抑制されることによって歯部の変形が抑えられ、プーリ歯溝とのかみ合いのズレが小さくなるという効果がある。
請求項4に記載の発明は、前記少なくとも歯部を構成するゴムにポリアミド短繊維が含まれた請求項1から3のいずれかに記載のゴム製歯付ベルトにある。
請求項4に記載の発明によれば、歯部の強度が向上し、歯部の変形が抑えられ、プーリ歯溝とのかみ合いのズレが小さくなるという効果がある。
請求項5に記載の発明は、前記少なくとも歯部を構成するゴムの70°C温度条件下での粘弾性(Tanδ/E´)が7.0×10−4〜9.0×10−4である請求項1から4のいずれかに記載のゴム製歯付ベルトにある。
請求項5に記載の発明によれば、高負荷が歯部に掛かった場合でも歯欠け等の不具合を起こすことが無い。
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る歯付ベルトの断面斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の歯付ベルト3は、ベルト長手方向に沿って所定間隔で配置された複数の歯部7、及び、複数の心線9が埋設された背部4とを有するベルト本体と、複数の歯部7の表面を被覆する歯布11とを有する。
複数の歯部2と背部4とを有するベルト本体10は、ゴムを基材とする。このベルト本体10に使用される原料ゴムは、水素化ニトリルゴム(HNBR)を始めとして、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン(ACSM)、クロロプレンゴムなどの耐熱老化性の改善されたものが使用されるが、少なくとも歯部に使用される原料ゴムは、不飽和カルボン酸を含んだ水素化ニトリルゴムのみを使用するのが好ましい。
ここで、前記少なくとも歯部7を構成するゴムとしては、水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸との質量比が100:70〜100:100としたものが好適に用いられる。
特に、少なくとも歯部7を構成するゴムの硬度が、JIS−A硬度で95度〜98度であることが好ましい。また、50%伸張時のモジュラスが少なくとも5MPa以上であることが好ましい。このような高モジュラスなゴムとして、例えば、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩である、ポリメタクリル酸亜鉛を高度に微分散させたもの(例えば、日本ゼオン製、商品名「ZSC」等)に、カーボン、及び、短繊維を配合して補強したものが好適に用いられる。これにより、ベルト本体10のモジュラスが高まり、高負荷走行時においても歯部2の歯付ベルト3とのかみ合いが維持される。
特に、少なくとも歯部7を構成するゴムの硬度が、JIS−A硬度で95度〜98度であることが好ましい。また、50%伸張時のモジュラスが少なくとも5MPa以上であることが好ましい。このような高モジュラスなゴムとして、例えば、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩である、ポリメタクリル酸亜鉛を高度に微分散させたもの(例えば、日本ゼオン製、商品名「ZSC」等)に、カーボン、及び、短繊維を配合して補強したものが好適に用いられる。これにより、ベルト本体10のモジュラスが高まり、高負荷走行時においても歯部2の歯付ベルト3とのかみ合いが維持される。
又、前記少なくとも歯部をゴムは、70°C雰囲気温度下での粘弾性(Tanδ/E´)が7.0×10−4〜9.0×10−4であることが好ましい。この範囲であれば、歯部の変形が抑制されることで、プーリ歯溝とのかみ合いに支障を来たさず、耐久性が向上する。
前記粘弾性を測定する方法としては、JIS6394に準じて試料を作製し、粘弾性測定装置のチャックにチャック間距離15mmとして、チャッキングし、初期歪1%を与える。次に−40°Cの雰囲気温度で5分間程度放置し、10Hzの周波数を1秒間与えることで0.5%歪をさらに与える。次に、1°Cずつ昇温させ、1°Cにつき0.5%の歪を与えながら150°C迄昇温させる。そして、70°C時点でのTanδとE´を求める。
ベルト本体3の背部4には、それぞれベルト長手方向に延在する複数の心線9が、ベルト幅方向に並べて背部4に埋設されている。この心線9は、化学繊維からなる下撚りコードを多数本撚り合わせた太径撚糸心線である。又、心線9を構成する化学繊維としては、例えば、PBO(ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、炭素繊維等を好適に使用できる。
歯布11は、ベルト幅方向に延在する経糸6とベルトの長手方向に延在する緯糸8とを織成してなる繊維織物を基材とする。又、この繊維織物は、平織物や綾織物、朱子織物などからなる。この繊維織物を構成する繊維材料としては、例えば、アラミド繊維、ウレタン弾性糸、脂肪族繊維糸(6ナイロン、66ナイロン、ポリエステル、ポリビニルアルコール等)等を使用できる。
さらに、前記繊維織物として、少なくとも2種類の緯糸8と1種類の経糸6とが織成された多重織(2重織)構造のものを採用することもできる。この場合、経糸6をナイロン繊維とし、緯糸8にはフッ素系繊維、ナイロン繊維、及び、ウレタン弾性糸を使用することが好ましい。又、緯糸8のうちの、少なくとも歯布11の表面側(歯付プーリとのかみ合い側)に位置する(露出する)緯糸8としては、歯布11と歯付プーリとの間の摩擦を低減するために、摩擦係数が低いフッ素系繊維(例えば、PTFE繊維)を使用することが好ましい。一方、歯布11の歯部7との接着側に位置する緯糸8には、フッ素系繊維以外の繊維(ナイロン繊維やウレタン弾性糸)を使用することで、歯布11と歯部7を構成するゴムとの接着力を高めることが可能となる。
又、フッ素系繊維の周囲に、ゴムを基材とするベルト本体3の加硫温度で融解又は軟化する性質を有する、低融点繊維が配されていることが好ましい。具体的には、例えば、フッ素系繊維と低融点繊維が混撚されている、又は、フッ素系繊維が低融点繊維によってカバーされているなどの形態が含まれる。尚、ベルト本体3の加硫条件(加硫温度や加硫時間)は、特に限定されるものではなく、加硫剤や加硫促進剤の種類や加硫手段等を考慮して、通常、ムーニー粘度計やその他の加硫挙動測定機を用いて測定した加硫曲線を参照して決定される。このようにして決定される一般的な加硫条件は、加硫温度100〜200°Cで、加硫時間1分〜5時間程度である。必要により二次加硫を行っても良い。
この場合、ベルト本体3の加硫時に低融点繊維が軟化又は融解し、歯布11を構成する繊維間に流れ込んだ後、低融点繊維が結晶化する。そのため、歯付プーリへのかみ込み時、或いは、歯付プーリからのかみ抜け時に、歯布11の表面に生じる衝撃や摩耗によってフッ素系繊維が切断・飛散するのが抑制される。これにより、ベルト本体3をより長期間保護して、ベルトの歯欠けを防止することができ、高負荷走行時の高寿命化が可能となる。
ここで、低融点繊維としては、例えば、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、又は、オレフィン系繊維を使用することができる。
低融点繊維として使用可能なポリアミド系繊維としては、W−アミノカルボン酸成分又はジカルボン成分とジアミンとの組み合わせからなる、共重合ポリアミド類のものがある。
ポリエステル系繊維としては芯鞘型複合繊維が好ましい。融点がベルト本体3の加硫温度よりも高い芯成分のポリエステル系ポリマーは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、それらの共重合体であり、加硫温度よりも融点の低い鞘成分の共重合ポリエステルは、二塩基酸とジオールの重縮合反応で得られ、その例としては、テレフタル酸とジエチレングリコールをベースに共重合成分として、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ジエチレングリコール、ブタンジオール、へキサンジオール、ポリエチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられ、その組み合わせ及び共重合比率により融点を調整可能である。
オレフィン系繊維としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維(例えば、高密度ポリエチレン繊維、中密度ポリエチレン繊維、低密度ポリエチレン繊維、直鎖状低密度ポリエチレン繊維、超高分子量ポリエチレン繊維)などが挙げられる。
又、これらを共重合させたものでも良く、さらには、ベルト加硫温度で軟化又は融解する繊維であれば、その撚糸方法や構成について特に限定されるものではない。さらに、これら低融点繊維の表面に、接着処理剤との親和性を上げることを目的として、プラズマ処理等がなされても良い。
この歯布11は、以下のような工程を含む一連の接着処理を経て、歯部7を構成するゴムに接着される。
(1)歯布11を構成する繊維織物を、レゾルシン−ホルマリン−ゴムラテックス処理液(以下、RFL処理液という)に含浸し、乾燥させる。
ここで、前記RFL処理液には、硫黄化合物の水分散物、キノンオキシム系化合物、メタアクリレート系化合物、マレイミド系化合物、のうち少なくとも一つの加硫助剤、又は、これらの加硫助剤を水に分散させたものを添加することが好ましい。
硫黄化合物の水分散物としては、例えば、硫黄の水分散物やテトラメチルチウラムジスルフィドなどが採用され得る。キノンオキシム系化合物としては、例えば、p−キノンジオキシムなどが採用され得る。メタアクリレート系化合物としては、例えば、エチレングリコールジメタクリレートやトリメチロールプロパントリメタクリレートなどが採用され得る。マレイミド系化合物としては、例えば、N,N´−m−フェニレンビスマレイミドやN,N´−(4,4´−ジフェニルメタンビスマレイミド)などが採用され得る。
尚、上述した「当該加硫助剤を水に分散させたもの」における「水」は、例えばアルコールなどのメタノールを若干程度含むものであっても良い。こけによれば、「当該加硫助剤」が水に対して不溶性の場合であっても、「当該加硫助剤」の水に対する親和性が向上して「当該加硫助剤」が分散し易くなる。
このように、RFL処理液に加硫助剤を添加することで以下の効果が期待される。即ち、RFL処理液中に含まれるゴムラテックス成分と外層ゴム(後記(2)のゴム糊処理や(3)のコート処理で使用されるゴム糊又は圧延ゴムを意味する。コート処理が省略される場合は歯部2を構成するゴムを意味する。)との層間の化学的結合力が強化されることで、接着性が向上し、歯布5の剥離が抑制される。更に期待される効果として、RFL処理液中に含まれるゴムラテックス成分自身の化学的結合力(架橋の力)が強化され、その結果、接着層の凝集破壊による剥離(即ち、層間剥離)よりも、接着対象である上記外層ゴムの破壊による剥離が先行すると考えられる。
又、RFL処理液に加硫助剤を添加する場合、繊維織物の含浸処理を2回に分けて実行しても良い。この場合、まず、1回目のRFL含浸処理においては、RFL処理液には、前述した何れの加硫助剤も添加しないこととする。これは、1回目の処理工程においては、ゴムラテックス成分の架橋よりもRFの熱硬化を優先するためである。
一方、2回目のRFL含浸処理においては、1回目のRFL処理液と比較してゴムラテックス成分を多く含み、硫黄化合物の水分散物、キノンオキシム系化合物、メタアクリレート系化合物、マレイミド系化合物、のうち少なくとも一つの加硫助剤、又は、加硫助剤を水に分散させたものを添加したRFL処理液を使用する。尚、1回目の含浸処理と2回目の含浸処理とで、RFL処理液のゴムラテックス成分の割合に差を設けるのは、親和性の異なる繊維とゴムの両方に対する、RFL層の接着性を高める為である。
(2)繊維織物に、ゴム組成物を溶剤に溶かしたゴム糊からなる接着処理剤を付着させた後にベーキング処理する、2種類のゴム糊処理(P1処理、S1処理)を行う。
(3)繊維織物の表面に、ゴム糊と圧延ゴムとをこの順にコーティングする。本工程は、コート処理とも称される。「この順に」とあるのは、詳細には「繊維織物から歯部2へ向かって、この順に」を意味する。ここで、RFL処理液に加硫助剤を添加した場合には、このコート処理で使用するゴム糊と圧延ゴムにも、RFL処理液に添加した処理助剤と同一の加硫助剤を添加することが好ましい。これにより、(a)RFL処理液で処理された繊維織物とゴム糊の間の接着力、の著しい改善が期待される。
尚、上記(1)〜(3)の処理は、全てを行う必要はなく、必要に応じて、いずれか一つ、或いは、2以上の複数を組み合わせて行う。例えば、(1)の処理においてRFL処理液に加硫助剤を添加する場合には、この処理のみで繊維織物とゴム間の接着力がかなり高められることから、(2)のゴム糊処理を省略しても良い。
(耐久試験)
次に、2軸高負荷走行試験を用いた耐久試験を行って、本発明の歯付ベルトの技術的効果を検証した。
次に、2軸高負荷走行試験を用いた耐久試験を行って、本発明の歯付ベルトの技術的効果を検証した。
[試験条件]
試験機:2軸高負荷走行試験機
評価ベルトサイズ:200G14M1400(ベルト歯数:100歯、歯型:G14M、ベルト幅:20mm)
駆動プーリ歯数:28歯
従動プーリ歯数:28歯
設定張力:530N
回転数:1800rpm
負荷:従動プーリに対して4181N
試験機:2軸高負荷走行試験機
評価ベルトサイズ:200G14M1400(ベルト歯数:100歯、歯型:G14M、ベルト幅:20mm)
駆動プーリ歯数:28歯
従動プーリ歯数:28歯
設定張力:530N
回転数:1800rpm
負荷:従動プーリに対して4181N
ベルト心線については、下糸太さが167tex、構成が3/6、撚係数Kが2.0である、アラミド心線を使用した。
その他、本耐久試験で使用されるベルトの、ゴム配合、歯布構成を、表1、及び表2にそれぞれ示す。又、表1には、使用されている6種類のゴム配合(R−0〜R−6)のそれぞれについて、硬度(JIS−A硬度)とM50(50%伸張モジュラス:MPa)も併記している。
表2に示すように、5種類の歯布のうち、F−2の緯糸には、フッ素系繊維であるPTFE繊維が配合されている。さらにF−3、F−4、F−5の3種類の歯布には、緯糸にPTFE繊維だけでなく、ゴム加硫温度で軟化又は融解する性質を有する低融点繊維である、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、オレフィン系繊維がそれぞれ配合されている。具体的には、本試験で使用したベルトのゴム加硫条件は、加硫温度165°C、加硫時間30分である。一方で今回使用したポリエステル系繊維(ユニチカ株式会社製「コルネッタ」)は、芯部融点が256°C、鞘部融点が160°Cである。又、ポリアミド系繊維(ユニチカ株式会社製「フロールM」)は融点が135°Cである。さらに、オレフィン系繊維(東洋紡績株式会社製「ダイニーマ」)は融点が140°Cである。
又、歯布接着処理に用いられる、RFL処理液の配合、ゴム糊処理(P1処理及びS1処理)の配合、及び、コート処理用ゴム配合を、表3、表4、及び表5にそれぞれ示す。
尚、上記表1〜5中、特記ない限り、数字の単位は、[質量部]であり、斜線は「添加なし」又は「処理なし」を意味する。
そして、表1〜表5に示す、ゴム配合、歯布構成、及び、歯布接着処理によって製造した10種類のベルトについて、上述した試験条件で耐久試験を行った。その結果を表6及び表7に示す。
又、70°C温度条件下でのゴム配合の粘弾性(Tanδ/E´)を測定した。サンプルとしてはJIS6394に準じてサンプルを作製した。さらに、粘弾性の測定条件としては、下記条件で行った。
試験機名:上島製作所 粘弾性測定装置 VR7121
試料サイズ:厚み2mm×幅4mm×長さ40mm
測定温度範囲:−40°C〜150°C
初期歪:1%
動歪:0.5%
周波数:10Hz
又、70°C温度条件下でのゴム配合の粘弾性(Tanδ/E´)を測定した。サンプルとしてはJIS6394に準じてサンプルを作製した。さらに、粘弾性の測定条件としては、下記条件で行った。
試験機名:上島製作所 粘弾性測定装置 VR7121
試料サイズ:厚み2mm×幅4mm×長さ40mm
測定温度範囲:−40°C〜150°C
初期歪:1%
動歪:0.5%
周波数:10Hz
又、粘弾性の測定方法としては、上記試料サイズのゴムを粘弾性測定装置のチャックにチャック間距離15mmとして、チャッキングし、初期歪1%を与える。次に−40°Cの雰囲気温度で5分間程度放置し、10Hzの周波数を1秒間与えることで0.5%歪をさらに与える。次に、1°Cずつ昇温させ、1°Cにつき0.5%の歪を与えながら150°C迄昇温させる。そして、70°C時点でのTanδとE´を求めた。
その結果を表6及び表7に示す。又、走行寿命とTanδ/E´との関係を図2に示す。
その結果を表6及び表7に示す。又、走行寿命とTanδ/E´との関係を図2に示す。
又、表6及び表7において、「予成型の有無」とは、ベルト製造工程において、「予成型工法」を採用したか否かを示している。「予成型工法」とは、歯型を有する金型によって歯布と歯部とを予め成型してから、得られた予備成形体の上に心線と背部を構成する未加硫ゴムを巻いた後、全体を加硫缶で加硫する工法のことである。この予成型工法においては加硫前に歯布と歯部が成型される為、加硫時に、背部を構成する未加硫ゴムを心線の間から内側(腹側)へ流動させ、歯布を緊張させて歯部を形成する必要がない。そのため、心線間距離(ピッチ)を狭くすることが可能となる。従って、実施形態の説明において述べたように、ベルト幅方向の心線ピッチを、無張力状態における心線径以下迄小さくした、高モジュラスのベルトを作製する場合には、この予成型工法が適している(表6及び表7のベルト実施例2〜5、比較例1〜6)。
[考察]
歯ゴムに不飽和カルボン酸金属塩を含んだ水素化ニトリルゴムのみのポリマーで、組成物にシリカを含まないゴム組成物のみを使用した実施例1から実施例5のベルトは、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を含んだゴムと、水素化ニトリルゴムをブレンドしたゴム組成物からなる歯部を有する比較例2から比較例6に比べて高負荷での耐久性が良いことがわかる。
これは、図2からもわかるように、70°C温度条件下での粘弾性であるTanδ/E´が低ければ低いほど耐久性が向上していることがわかる。好ましくは、70°C温度条件下でのTanδ/E´が7.0×10−4〜9.0×10−4のときに走行寿命が向上する。
歯ゴムに不飽和カルボン酸金属塩を含んだ水素化ニトリルゴムのみのポリマーで、組成物にシリカを含まないゴム組成物のみを使用した実施例1から実施例5のベルトは、水素化ニトリルゴムに不飽和カルボン酸金属塩を含んだゴムと、水素化ニトリルゴムをブレンドしたゴム組成物からなる歯部を有する比較例2から比較例6に比べて高負荷での耐久性が良いことがわかる。
これは、図2からもわかるように、70°C温度条件下での粘弾性であるTanδ/E´が低ければ低いほど耐久性が向上していることがわかる。好ましくは、70°C温度条件下でのTanδ/E´が7.0×10−4〜9.0×10−4のときに走行寿命が向上する。
又、実施例5は、比較例1と歯布の条件以外はほとんど同じであるが、走行試験において2.0倍の寿命が得られている。これは、比較例1では緯糸に低融点繊維が使用されていない歯布F−2を用いているのに対し、実施例1〜5では、緯糸に、低融点繊維であるポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、オレフィン系繊維とを使用している(表2参照)ことが要因である。即ち、緯糸のフッ素系繊維(PTFE繊維)の周りに低融点繊維が配されることによって、フッ素系繊維の切断・飛散が抑制され、ベルト本体のゴムが長期間に渡って保護されるからであると考えられる。
さらに、実施例2〜5は、ベルト製造工程において、「予成型工法」が採用されることにより、心線ピッチが、無張力状態における心線径よりも小さくなっている。このように、実施例1と比べてベルト幅方向に関して心線が密に配置されて、心線占有率が大きくなり(75%以上)、モジュラスが高くなっていることによって、耐久性が高くなっていると考えられる。
3 ゴム製歯付ベルト
4 背部
6 経糸
7 ベルト歯部
8 緯糸
9 心線
11 歯布
4 背部
6 経糸
7 ベルト歯部
8 緯糸
9 心線
11 歯布
Claims (5)
- ベルト長手方向に沿って所定間隔で配置された複数の歯部、及び、心線が埋設された背部を含む、ゴムを基材としたベルト本体と、前記複数の歯部の表面を被覆する歯布とを有するゴム製歯付ベルトであって、前記歯布が、経糸と少なくとも2種類の緯糸とが織成された多重織構造を有し、前記経糸がナイロン繊維であり、前記2種類の緯糸のうちの前記歯布の表面側に位置する緯糸がフッ素系繊維であり、該フッ素系繊維の周囲に、前記ベルト本体の加硫温度で軟化又は融解する、低沸点繊維が配されたものであり、前記少なくとも歯部を構成するゴムが不飽和カルボン酸金属塩を含んだ水素化ニトリルゴムのみからなるポリマーであって、前記水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩とを100:70〜100:100の質量比で混合したポリマー成分から構成されていることを特徴とするゴム製歯付ベルト。
- 前記低融点繊維が、少なくともポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、又はオレフィン系繊維から選ばれたものである請求項1に記載のゴム製歯付ベルト。
- 前記少なくとも歯部を構成するゴムにはシリカが含まれない請求項1又は2に記載のゴム製歯付ベルト。
- 前記少なくとも歯部を構成するゴムにポリアミド短繊維が含まれた請求項1から3のいずれかに記載のゴム製歯付ベルト。
- 前記少なくとも歯部を構成するゴムの70°C温度条件下での粘弾性(Tanδ/E´)が7.0×10−4〜9.0×10−4である請求項1から4のいずれかに記載のゴム製歯付ベルト。
Priority Applications (1)
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JP2008323542A JP2010144854A (ja) | 2008-12-19 | 2008-12-19 | ゴム製歯付ベルト |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2008323542A JP2010144854A (ja) | 2008-12-19 | 2008-12-19 | ゴム製歯付ベルト |
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JP2010144854A true JP2010144854A (ja) | 2010-07-01 |
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ID=42565489
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-
2008
- 2008-12-19 JP JP2008323542A patent/JP2010144854A/ja active Pending
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